(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】生分解性織物、マスターバッチ、および生分解性繊維を作製する方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/22 20060101AFI20240516BHJP
D01F 6/92 20060101ALI20240516BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240516BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20240516BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20240516BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240516BHJP
【FI】
C08J3/22 CFD
D01F6/92 308E
D01F6/92 ZBP
C08L67/02
C08L77/00
C08L23/00
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2020573432
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(86)【国際出願番号】 US2019031662
(87)【国際公開番号】W WO2020005399
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-10
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520510058
【氏名又は名称】イントリンシック・アドバンスト・マテリアルズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】フェリス,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】マッキントッシュ,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ラオ,スディープ・モチュパリ
(72)【発明者】
【氏名】アッシャー,ジュニア,ロバート・エイ
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-173864(JP,A)
【文献】特表2011-514450(JP,A)
【文献】特開平05-070696(JP,A)
【文献】特表2019-513911(JP,A)
【文献】特表2016-508190(JP,A)
【文献】特表2017-521571(JP,A)
【文献】特開平04-146952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/22
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
D01F 6/62
D01F 6/92
D04H 1/435
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスターバッチであって、
0.9~1.1重量%のCaCO
3と、
39~49重量%のポリカプロラクトンと、
残りのポリエチレンテレフタレートと、を含む、マスターバッチ。
【請求項2】
5~10重量%のポリ乳酸(PLA)、5~10重量%の
ポリヒドロキシアルカノエート(
PHA)、5~10重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、10~20重量%のポリブチレンサクシネート(PBS)、1重量%の二酸化ケイ素、およびこれらの組成物の組み合わせからなる群から選択される組成物をさらに含む、請求項1に記載のマスターバッチ。
【請求項3】
溶融中間体であって、
請求項1に記載のマスターバッチと、
ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、オレフィン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも90重量%のポリマーと、を含む、溶融中間体。
【請求項4】
請求項3に記載の溶融中間体から形成された、クエンチされた、複数のポリマーペレットであって、前記ペレットのサイズ分布の最端部で粒子を除去した、前記ペレット。
【請求項5】
請求項3に記載の溶融中間体から形成された、クエンチされた、ポリマーフィラメント。
【請求項6】
前記マスターバッチが、9~11重量パーセントの量のポリブチレンサクシネートをさらに含む、請求項3に記載の溶融中間体。
【請求項7】
0.05~0.1重量%のポリ乳酸(PLA)、0.05~0.1重量%の
ポリヒドロキシアルカノエート(
PHA)、0.05~0.1重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、0.10~0.20重量%のポリブチレンサクシネート(PBS)、0.01重量%の二酸化ケイ素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される組成物をさらに含む、請求項3に記載の溶融中間体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物に好適であり、またほとんどの一般的なポリマーと比較して、合理的かつ有用に短い時間スパンで生分解可能なポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
織物は、人間の文化の基本であり、何千年もの間人間によって作製され、使用されてきた。最も初期の織物は、亜麻、ウール、シルク、綿などの天然繊維から織られ、そのように続いている。より近年では、織物繊維、糸、および生地はまた、ポリエステル、ナイロンオレフィン、他の熱可塑性ポリマー、およびそれらの組み合わせなどのポリマーから工業的に製造されている。多くの近代的なポリマーは、魅力的な、耐久性および耐水性があるほぼ無限の多様な形状および製品に作製することができる。多くの場合、これらの合成繊維または糸を(所望の技術および最終製品に応じて)天然繊維とブレンドして、天然および合成材料の両方の所望の特色を有する最終製品を得ることができる。
【0003】
耐久性および耐水性が望ましいが、これらの同じ特性は、二次的な環境問題につながり得る。ポリマー繊維から製造される織物は、綿およびウールなどの天然繊維と同じ様式では自然に生分解されず、埋立地および水(例えば、湖、海洋)に数百年以上残留し得る。米国環境保護庁によると、ほぼ4,400万ポンドの合成(ポリマー)織物が、毎日埋立地に送られている。加えて、洗濯洗浄サイクル中に衣類から放出されるマイクロファイバーの大部分が、廃水処理プラントの汚泥に捕捉される。汚泥は、最終的には埋立地に送られるか、または肥料として使用されるバイオソリッドとなる。次いで、これらの高分子マイクロファイバーは、土壌または他の地盤環境に蓄積され、移動し、最終的に陸域環境から水域環境に向かう場合さえある。いくつかの推定によると、織物の洗浄から生じる、年間ほぼ50万トンのプラスチックマイクロファイバーが、海洋中に放出されていると推定される。ある特定の高表面積マイクロファイバーは、多くの毒素充填量を吸収し得、かつ微小プランクトンに似ており、それにより、食物連鎖において数倍生物蓄積されることになる。人間は、典型的には捕食者の頂点の種を摂取するので、かかるマイクロファイバーによる汚染は、ひいては、ヒトの健康に悪影響を及ぼし得る。
【0004】
さらなる問題として、(住宅用および商業用の両方の)カーペットおよび室内装飾品などの物品は、衣類と比較して嵩が高く、典型的にはより太く嵩の高い糸を組み込んでおり、したがって、かなりの埋立空間を占め得る。
【0005】
不織布の背景では、現在、あらゆる種類の偏在する「ワイプ」(典型的には不織布シートまたはいくつかの層状シート)も同様に、かなりの空間を占め、特に低容量、低流量の洗面所の使用が増加していることを考慮すると、「水に流すことができる」と見なされている場合でさえも、自治体の下水システムを詰まらせる傾向を有し得る。
【0006】
これらの環境問題に鑑みて、生分解性ポリマーの創出は、学術的および業界的に関心の高い対象となっている。これらとしては、包括的ではなく代表的なものである以下の例が挙げられる。
【0007】
Shahらは、「Microbial degradation of aliphatic and aliphatic-aromatic co-polyesters」、Appl.Microbiol.Biotechnol(2014)98:3437-3447で、ポリエステルの分解に関する文献についての書評を書いており、「生分解性プラスチックの大部分は、潜在的には加水分解性エステル結合を有するポリエステルであり、これらはデポリメラーゼによって加水分解されやすい」と述べており、脂肪族ポリエステルは、それらの可撓性ポリマー鎖に起因して芳香族エステルと比較して容易に分解されると述べている。PETなどのいくつかのポリエステルは生分解性ではなく、その用語は、本明細書に記載の本発明ではそのように使用される。
【化1】
【0008】
数多くの特許が、生分解性ポリマー組成物について記載している。例えば、Rhodia PoliamidaのWO2016/079724では、ポリアミド組成物は、生分解性ポリアミド繊維を製造するために修飾される。本特許では、生分解速度を、ASTM D5511試験基準に従って測定する。8~9ページでは、光分解、遷移金属塩などの分解促進添加剤(prodegradant additives)、および高い界面積および低い構造強度を有する多孔質構造を残して迅速に分解される生分解性ポリマーを含む、生分解に対する従来技術のアプローチについて考察しており、デンプン系ポリマー、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンテレフタレート-コアジペート(coadipate)、およびいくつかの他のものを含むこれらの生分解性ポリマー10が列挙されているが、しかしながら、特許出願は、「残念ながら、ポリマーを生分解性にするためにはより多くの量が必要であり、相溶化添加剤および可塑化添加剤もまた必要である。」と述べている。例示的な生分解剤として、本特許は、Lakeらの米国公開特許出願第2008/0103232 15号を参照する。生分解剤は、有利には、少なくとも6つの添加剤:(1)化学誘引剤または走化性化合物、(2)グルタル酸、(3)5~18個の炭素の鎖長を有するカルボン酸、(4)生分解性ポリマー、(5)担体樹脂、および(6)膨張剤、を含むマスターバッチである。本発明の実施例は、2%の市販の生分解剤Eco-One(登録商標)のマスターバッチを使用して溶融紡績することによってポリアミド繊維を作製した。得られた繊維は、ASTM D5511基準を介して試験し、300日後に13.9%または15.5%分解されることが見出された。生分解剤を含まない繊維は、同じASTM D5511試験下で2.2および2.3%分解された。
【0009】
LaPrayらは、US2018/0100060で、ポリマーと炭水化物系ポリマーとのブレンドから作製されるフィルム、バッグ、ボトル、キャップ、シート、ボックス、または他の容器、プレートなどの生分解性物品を製造している。生分解性は、ASTM D-5511およびASTM D-6691(模擬海洋条件)などの確立された基準に従って試験される。
【0010】
Tokiwaらは、生分解性樹脂およびマンナン(多糖類)消化生成物を含む生分解性樹脂組成物について記載している。Tokiwaらは、様々なマンノオリゴ糖を含む、生分解性マンナン消化生成物を列挙している。
【0011】
Bastioliらは、米国特許第308,466,237号で、少なくとも50%のブラシル酸(1,11-ウンデカンジカルボン酸)を含む51~37%の脂肪酸と、49~63%の芳香族カルボン酸とから作製された生分解性脂肪族芳香族コポリエステルについて記載している。生分解性ポリマーは、デンプンまたはポリブチレンサクシネートを添加し、乳酸またはポリカプロラクトンと共重合することによってさらに修飾することができる。
【0012】
Lakeらは、米国特許第9,382,416号で、化学誘引剤化合物、グルタル酸、5カルボン酸、および膨張剤を含むポリマー材料の生分解性添加剤について記載している。細菌の誘引剤としてのフラノン化合物が考察されている。
【0013】
Wnukらは、米国特許第5,939,467号で、ポリカプロラクトンなどの第2の生分解性ポリマーを含有する生分解性ポリヒドロキシアルカノエートポリマー、例えば鋳造フィルムおよびブローフィルムについて記載している。
【0014】
多様な生分解性配合物が既知であり、これらは典型的には織物の分野外であり、耐洗濯性の問題に対処しておらず、そのうちのいくつかは、炭酸カルシウムを利用し得る。例えば、Yoshikawaらの米国公開特許出願第2013/0288322号、JeongらのWO/2005/017015、Tashiroらの米国特許第9,617,462号、およびWhitehouseの米国特許出願第2007/0259584号である。
【0015】
これらの集中的な努力にもかかわらず、耐久性および耐水性を有するが、廃水処理嫌気性消化装置、埋立地条件、および海洋環境で分解される合成織物を提供する、新規の方法および材料に対する必要性が依然として存在する。したがって、それらの望ましい特性を維持するが、廃水処理中、嫌気性消化装置、埋立地条件、および海洋環境において、従来の合成織物材料よりも迅速に分解される合成織物を創出することはまた有益であろう。
【発明の概要】
【0016】
一態様では、本発明は、0.2~5質量%のCaCO3と、エステル基間の鎖に2~6個の炭素を有する繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステルであって、2~6個の炭素鎖繰り返し単位が、側鎖炭素を含まない、脂肪族ポリエステルと、PET、ナイロン、オレフィン、他の熱可塑性ポリマー、およびそれらの組み合わせを含む担体ポリマーと、を含む、マスターバッチを提供する。鎖繰り返し単位の2~6個の炭素は、エステル(COOR)部分に炭素を含まず、側鎖炭素が存在する場合、繰り返し基に6個超の炭素(+エステル炭素)が存在し得る。
【0017】
本発明の態様のうちのいずれかのいくつかの好ましい実施形態では、脂肪族ポリエステルは、エステル基間の鎖に3~6個の炭素、または2~4個の炭素を有する繰り返し単位を含む。特に好ましい実施形態では、脂肪族ポリエステルは、ポリカプロラクトンを含む。いくつかの好ましい実施形態では、マスターバッチは、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-テレフタレート)(PBST)、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート/イソフタレート)-コ-(ラクテート)PBSTIL、およびそれらの組み合わせをさらに含む。
【0018】
好ましくは、マスターバッチ(および織物)は、本質的に糖類を含まない。
【0019】
別の態様では、本発明は、PET以外の、エステル基間の鎖に2~6個の炭素を有する繰り返し単位を含む、脂肪族ポリエステルであって、2~6個の炭素鎖繰り返し単位が、側鎖炭素を含まない、脂肪族ポリエステルと、0.01~0.2質量%のCaCO3と、少なくとも90質量%のPET、ナイロン、オレフィン、他の熱可塑性ポリマー、およびそれらの組み合わせと、を含む、溶融中間体を提供する。本明細書で使用される場合、語句「PET以外」は、「ポリエチレンテレフタレート以外」、または「脂肪族ポリエステルがポリエチレンテレフタレートではないことを条件として」として表現され得る。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、PET以外の、エステル基間の鎖に2~6個の炭素を有する繰り返し単位を含む、脂肪族ポリエステルであって、2~6個の炭素鎖繰り返し単位が、側鎖炭素を含まない、脂肪族ポリエステルと、0.01~0.2質量%のCaCO3と、少なくとも90質量%のPET、ナイロン、オレフィン、他の熱可塑性ポリマー、およびそれらの組み合わせと、を含む、繊維を提供する。
【0021】
様々な実施形態では、織物は、次の特性:266日間ASTM D5511の条件に供されると、織物が、少なくとも40%、または少なくとも50%、または40%~約80%の範囲、または40%~約75%の範囲で分解されるような生分解性であって、ASTM試験からの分解生成物が、主にメタンおよび二酸化炭素である、生分解性;家庭洗濯試験(Home Laundering Test)AATCC 135-2015 1IIAii(80°Fでの洗濯機洗浄、タンブラー乾燥、5回の洗濯サイクル)の条件に供されると、織物が、その形状を維持し、10%未満、または5%未満、または3%未満収縮するような寸法安定性であって、AATCC 61-2013 2A(mod 105°F)、またはAATCC 8-2016、またはAATCC 16.3-2014(オプション3、20AFU)の条件に供されると、織物が染色されており、少なくともグレード3、または少なくともグレード4、またはグレード5の染色堅ろう度を有する、寸法安定性;ASTM D3786/D3886M-13の条件に供されると、少なくとも20psi、好ましくは少なくとも50psi、または少なくとも100psi、または50~約200psi、または50~約150psiの範囲の破裂強度;ならびにAATCC 197-2013、オプションBの条件に供されると、織物が、2分間で少なくとも10mm、または少なくとも20mm、または約10もしくは約20mm~約150mmの範囲の距離を上回って吸水するような吸水能力、のうちの1つまたはいずれかの組み合わせを有し得る。
【0022】
さらに別の態様では、本発明は、本明細書に記載のマスターバッチを、PET、ナイロン、オレフィン、他の熱可塑性ポリマー、およびそれらの組み合わせを含むポリマーにブレンドして、溶融混合物を形成することと、混合物を押し出してフィラメントを形成することと、フィラメントを冷却することと、を含む、繊維、糸、または生地を作製する方法を提供する。これらのフィラメントは、テクスチャ加工およびニット加工(「フィラメント糸」)され、不織布ウェブを形成することができるか、または織布、不織布、およびニット生地の用途のためにステープルに切断することができる。あるいは、溶融混合物を押し出してペレットを形成することができ、その後混合物を押し出して繊維を形成するステップの前にペレットを再溶融することができる。さらなる態様では、本発明は、CaCO3と、少なくとも90質量%のPET、ナイロン、オレフィン、他の熱可塑性ポリマー、およびそれらの組み合わせと、を含み、266日間ASTM D5511の条件に供されると、織物が、少なくとも40%、または少なくとも50%、または40%~約80%の範囲、または40%~約75%の範囲で分解されるような生分解性を有する繊維を含む、織物であって、織物が、次の特性:家庭洗濯試験5 AATCC 135-2015 1IIAii(80°Fでの洗濯機洗浄、タンブラー乾燥、5回の洗濯サイクル)の条件に供されると、織物が、その形状を維持し、10%未満、または5%未満、または3%未満収縮するような寸法安定性であって、AATCC 61-2013 2A(mod 105°F)、またはAATCC 8-2016、またはAATCC 16.3-2014(オプション3、20AFU)の条件に供されると、織物が染色されており、少なくともグレード3、または少なくともグレード4、または少なくともグレード5の染色堅ろう度を有する、寸法安定性;ASTM D3786/D3886M-13の条件に供されると、少なくとも20psi、好ましくは少なくとも50psi、または少なくとも100psi、または50~約200psi、または50~約150psiの範囲の破裂強度;ならびにAATCC 197-2013、オプションBの条件に供されると、織物が、2分間で少なくとも10mm、または少なくとも20mm、または約10もしくは約20mm~約150mmの範囲の距離を上回って吸水するような吸水能力、のうちの1つ以上を含む、織物を提供する。
【0023】
本発明の利点としては、いくつかの好ましい実施形態では、マスターバッチの質量%当たりの向上した生分解性、他の生分解性処理と比較して繊維または織物のより高い耐久性、繊維または織物特性のより良好な維持を挙げることができる。
【0024】
本発明の前述および他の目的および利点、ならびにそれらが達成される様式は、添付の図面と併せて次の詳細な説明に基づいてより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】セルロース材料および従来のポリマーの対照例と共に、本発明のいくつかの実施形態の経過時間(日数で表される)に対する生分解パーセンテージ(%)のプロットである。
【
図2】セルロース材料および従来のポリマーの対照例と共に、本発明のいくつかの実施形態の経過時間(日数で表される)に対する生分解パーセンテージ(%)のプロットである。
【
図3】セルロース材料および従来のポリマーの対照例と共に、本発明のいくつかの実施形態の経過時間(日数で表される)に対する生分解パーセンテージ(%)のプロットである。
【
図4】セルロース材料および従来のポリマーの対照例と共に、本発明のいくつかの実施形態の経過時間(日数で表される)に対する生分解パーセンテージ(%)のプロットである。
【
図5】セルロース材料および従来のポリマーの対照例と共に、本発明のいくつかの実施形態の経過時間(日数で表される)に対する生分解パーセンテージ(%)のプロットである。
【
図6】部分的に消化された、本発明による繊維のSEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
用語集
「脂肪族ポリエステル」は、開鎖(芳香族ではない)を含む炭化水素鎖を有する繰り返しエステル単位を含有する。これらは、脂肪族基のみを含有するホモポリマー、コポリマー、または脂肪族基およびアリール基の両方を含有するコポリマーであり得る。
【0027】
「担体ポリマー」は、マスターバッチがブレンドされるポリマーと同じであるか、またはそのポリマーと相溶性および混和性であるマスターバッチ中のポリマーである。
【0028】
デニール(Dpf)は、9,000メートルの個々のフィラメントのグラム単位での重量である。これは、糸デニールを取り、糸束中のフィラメント数で除算することによって計算することができる。
【0029】
本発明の目的のために、非生分解性ポリマーは、ASTM D-5511に従う試験の266日後に10%以下分解されるポリマーである。[033]PET、ナイロン、およびスパンデックスは、従来の意味を有する。ナイロンはポリアミドであり、1つの好ましいナイロンはナイロン6,6である。スパンデックスは、ポリエーテル-ポリウレアコポリマーである。
【0030】
ポリマーは、多くの繰り返し単位を含む大分子(100ダルトンを超える分子量、典型的には数千ダルトン)である。
【0031】
織物は、天然、および/または合成5繊維、フィラメント、または糸で構成される材料の種類であり、ニット、織布、または不織布形態であってもよい。
【0032】
「不織布生地」という用語は、当業者によって十分に理解されており、Tortora,Phyllis G.,and Robert S.Merkel.Fairchild’s Dictionary of Textiles.7th ed.New York,NY:Fairchild Publications,2009,page 387における定義などの定義を含む、かかる理解と一致して本明細書で使用される。
【0033】
したがって、不織布生地は、「繊維の結合もしくは連結、またはその両方によって製造される織物構造であり、機械的、化学的、熱的、または溶媒手段、およびそれらの組み合わせによって達成される。」基本ウェブを形成する例示的な方法としては、カーディング繊維、エアレイ、および湿式形成が挙げられる。これらのウェブは、ウェブの間に散在する低融点繊維を含む接着剤の使用、適切な熱可塑性ポリマーのための熱結合、ニードルパンチ、スパンレース(水流絡合)、およびスパンボンドプロセスによって固定または結合することができる。
【0034】
当業者は、織物分野では、「紡績(spinning)」という単語は、2つの異なる定義を有することを理解しており、これらの両方は背景的に明確である。合成フィラメントの形成では、「紡績」という用語は、溶融ポリマーをフィラメントに押し出すステップを指す。
【0035】
天然繊維、またはテクスチャ加工された合成フィラメントから切断されたステープル繊維の背景では、「紡績」という用語は、凝集力のある糸構造にフィラメントをねじり、これから生地を織ることができるという、(古代から始まる)その最も歴史的な意味で使用される。
【0036】
一般的な参考文献としてのPhyllis G.Tortora and Robert S.Merkel,Fairchild’s Dictionary of Textiles 7th Edition,New York,Fairchild Publications 2009は、本分野の一般的な技能を有する者(当業者)によって認識されている多くの他の定義を提供する。
【0037】
ASTMおよびAATCC試験プロトコルは、業界基準と見なされている。これらのプロトコルは、典型的には長年顕著な変化はないが、しかしながら、本明細書で指定されていないこれらの基準の日付けに関して疑問が生じた場合は、2018年1月に有効な基準を選択するものとする。
【0038】
逆に定義されない限り、「パーセンテージ」という用語または記号「%」は、本明細書において「重量パーセンテージ」または「重量パーセント」と同じ意味を有する、質量パーセンテージ(「質量%」)を指す。”これらの使用法は、当業者によって背景上十分に理解されている。
【0039】
生分解を可能にするマスターバッチ配合物は、典型的には、担体ポリマーを含む。担体ポリマーは、好ましくは、マトリックス(すなわち、非生分解性ポリマー)に適合するように配合される。したがって、例示的な実施形態では、担体ポリマーは、PET、ナイロン、オレフィン、他の熱可塑性ポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施例によって実証されるように、PETおよびナイロンは、本発明の他の構成成分と組み合わせて、洗濯可能な織物において優れた生分解性をもたらすことが示されている。
【0040】
驚くべきことに、本発明者らは、マスターバッチに炭酸カルシウムを添加することにより、得られる織物の生分解性を実質的に増加させながら、耐洗濯性への悪影響を回避することを発見した。
【0041】
本発明は、炭酸カルシウムが作用するメカニズムによって限定されず、本発明者らは、任意の特定の理論によって拘束されることを望まないが、次の仮説は妥当であると思われる。均質な有機ポリマーマトリックス中に混合された炭酸カルシウムの微小な無機粒子の存在により、生分解性のための多数の核形成点が導入される。この炭酸カルシウムは、他の生分解性成分と同時に配合され、核形成点がこれらの成分と近接するようになる。カルシウムイオンは、細菌成長において重要な役割を果たすことができる。細菌に存在するカルシウム結合タンパク質は、シグナル伝達を助け、細菌がより高い濃度の化学物質に向かって移動する正の走化性の重要なプロセスを補助し得る。
【0042】
この仮説によれば、嫌気性細菌の作用によるエステル結合の加水分解による、ポリマーのモノマーおよびオリゴマーへの分解は、分散された炭酸カルシウムの存在によって加速される。代謝副生成物である二酸化炭素の存在はまた、ポリマーマトリックス中に存在する炭酸カルシウムの溶解を向上することができる。
【0043】
細菌中のカルシウムおよびカルシウム結合タンパク質が重要な役割を果たすことができる別のメカニズムは、クオラムセンシング、すなわち、集団成長のために最適化された細菌のコミュニケーション手段にある。個々の細菌は、細菌と、調整された機能的なコミュニティを創出する余分な細胞性高分子材料とで構成されるヒドロゲルを創出するように作用する。この肉眼で見える構造は、細菌作用を増強し、本発明によるポリマー、特にかかるヒドロゲルに組み込まれ得る高表面積マイクロファイバーの生分解をもたらすのを助ける。
【0044】
マスターバッチ配合物は、ポリマーマトリックス内に埋め込まれる。仮説のさらなる態様として、ポリマー鎖に対する加水分解攻撃のうちの化学的な部分は、内部から始まる。マトリックス内に分散したマスターバッチは、攻撃のための核形成ポイントを創出し、繊維表面積を急激に増大させる。細菌酵素は、外から内へと攻撃する。1ミクロンの範囲にある細菌は、最初は外から織物繊維に作用するが、ポリマーマトリックスが溶媒和し分解されると、新しい表面積が露出する。ヒドロゲル中の調整された細菌コミュニティの形成により、大きなポリマー鎖がオリゴマー鎖に分解され、モノマーにさらに分解され、CO2およびCH4に消化される。
【0045】
その結果、本発明のマスターバッチは、より小片に分解するための最初の生理化学的段階、および25材料を消化するための後半の生化学的段階、の2つの段階で作用すると考えることができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、糸または織物中の繊維は、1~50もしくは2~30の範囲、または1,000ほどの、フィラメントあたりのデニール(dpf)を有する。繊維状織物は、一般に細菌成長を支持するのに十分な表面積を有するので、繊維のデニールは、生分解性において重要であるとは考えられない。
【0047】
例示的な実施形態では、マスターバッチは、少なくとも0.5質量%の炭酸カルシウム、いくつかの実施形態では最大10%の炭酸カルシウム、場合によっては約0.5~5%の炭酸カルシウム、および典型的には少なくとも約1.0%の炭酸カルシウムを含む。好ましくは、本発明の組成物は、好ましくは15ミクロン(μm)以下、10μm以下、いくつかの実施形態では7μm以下の質量平均粒径を有する微細炭酸カルシウム粉末を使用し、0.1~10μm、または1~8μm、または5~8μmの質量平均粒径の範囲内であり得る。従来と同様に、粒径は、市販の光分析装置または他の従来の手段によって測定することができる。炭酸カルシウム粉末は、少なくとも0.5平方メートル/グラム(m2/g)、場合によっては少なくとも1.0m2/g、いくつかの実施形態では0.5~10m2/gの表面積を有する。従来と同様に、表面積は、ひいてはBrunauer-Emmett-Teller(BET)理論に基づく固体の比表面積を計算するための、ISO9277基準などの方法によって決定することができる。
【0048】
いくつかの好ましい実施形態では、マスターバッチ配合物は、次のうちの1つまたは任意の組み合わせ:ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、およびポリ(テトラメチレンアジペート-コテレフタレート)を含有する。驚くべきことに、PCLがポリ乳酸(PLA)、PHB、およびPBSを上回る性能を発揮することが見出されたので、ポリカプロラクトン、または主要な脂肪族ポリエステル構成成分としてPCLを含むブレンドが好ましいと思われる。
【0049】
織物は耐久性が必要であるので、マスターバッチおよび織物組成物は、耐久性に悪影響を及ぼす構成成分を避けるべきである。好ましくは、組成物は、5質量%未満、より好ましくは2%未満、もしくは1%未満の糖類、またはこれらの量未満のフラノン、またはこれらの量未満の洗濯中に浸出する有機(炭素系)構成成分を有する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、洗濯耐久性を実質的に低下させる任意の構成成分を欠く。
【0050】
織物は、好ましくは、家庭洗濯試験AATCC 135-2015 1IIAii(80Fでの洗濯機洗浄、タンブラー乾燥、5回の洗濯サイクル)によって測定して、織物がその形状を維持し、10%未満、または5%未満、または3%未満収縮するような寸法安定性を有する。
【0051】
織物または繊維は、着色され得(赤、青、緑など)、好ましくは、AATCC 61-2013 2A(mod 105F)、またはAATCC 8-2016、またはAATCC 16.3-2014(オプション3、20AFU)によって測定して、少なくともグレード3、または少なくともグレード4、またはグレード5の染色堅ろう度を有する。(例えば、シャツまたはパンツから切断された生地試料としての)織物のシートは、好ましくは少なくとも20psi、好ましくは少なくとも50psi、または少なくとも100psi、または50~約200psi、または50~約150psiの範囲の破裂強度を有し、破裂強度は、ASTM D3786/D3886M-13に従って30で測定される。
【0052】
いくつかの好ましい実施形態では、生地は、パイリングまたはけばを有さない(ASTM 3512M-16によるグレード5)。
【0053】
いくつかの実施形態では、織物は、吸水し、これは、汗を着用者から離して吸収する衣類において特に望ましく、いくつかの好ましい実施形態では、AATCC 197-2013によって測定して、生地は、2分間で少なくとも10mm、または少なくとも20mm、または約10もしくは約20mm~約150mmの範囲の距離を上回って吸水する。本発明のいくつかの実施形態に従って作製される織物の測定値は、性能試験比較表(すなわち、表1~7)に示される。
【0054】
場合によっては、繊維内の正確な化学構造は不明であり、上述の特性のうちの1つまたは組み合わせは、織物を特徴付ける最も正確かつ/または的確な方式である。マスターバッチは、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、オレフィン、他の熱可塑性ポリマー、およびそれらの組み合わせなどの非生分解性ポリマーとブレンドされる。本発明の目的のために、非生分解性ポリマーは、ポリマーが添加剤を含有しないとき(言い換えれば、マスターバッチとブレンドする前)、ASTM D-5511による試験の266日後に10%以下(好ましくは5%以下、いくつかの実施形態では3%以下、およびいくつかの実施形態では2~10%または2~5%)分解されるポリマーである。繊維は、少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも70%、なおより好ましくは少なくとも90%、または少なくとも95%、およびいくつかの実施形態では少なくとも99%の、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、オレフィン、他の熱可塑性ポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む。
【0055】
本発明は、単一の構成成分織物、または他の繊維との混合物のいずれかとして、これらの繊維を含む織物を含む。多くの織物は、繊維の混合物(ブレンド)を含み、例えば、スパンデックスを含有する織物は、多くの場合、綿繊維を含む。いくつかの実施形態では、織物は、少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも50%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または100%のポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、オレフィン、他の熱可塑性ポリマー、およびそれらの組み合わせから作製される繊維を含む。
【0056】
マスターバッチから製造される繊維は、典型的には、少なくとも90質量%の非生分解性ポリマーを含む。マスターバッチは、好ましくは0.5~5%、好ましくは少なくとも1%、いくつかの実施形態では1~5%、いくつかの実施形態では2~5%の量で添加され、マスターバッチのすべてが得られる組成物中に存在するので、得られる繊維は、対応する量の材料を含有するであろう。
【0057】
本発明はまた、ブレンド中間体、繊維、糸、および織物を含む。本発明によって仕上げられた製品の例としては、ニット生地、織布生地、不織布生地、アパレル、室内装飾品、カーペット、シーツまたは枕カバーなどの寝具、農業または建設用の産業使用生地が挙げられる。
アパレルの例としては、シャツ、パンツ、ブラジャー、パンティ、帽子、下着、コート、スカート、ドレス、タイツ、ストレッチパンツ、およびスカーフが挙げられる。
【0058】
炭酸カルシウム粒子は、当然本発明に有用なサイズに粉砕される。機能面から表現すると、粉砕粒子は、可能な限り小さくてもよく、非常に小さい粒子が有利である。
【0059】
しかしながら、粒径の上限は、デニールによって部分的に定義されており、これは当業者でない者には直径の観点で説明する。これらの表現では、平均炭酸カルシウム粒径は、押し出されたフィラメントの直径の10%以下であるべきであり、フィラメントの直径の約10%超の粒径は、製造および使用のすべての段階で破損につながる可能性がかなり高いので、最大粒径は、押し出されたフィラメントの直径の20%以下であるべきである。
【0060】
上述のように、下限はあまり重要ではなく、主な考慮事項は、さらにより小さい粒子を生成する難易度およびコストの増加である。
【0061】
したがって、実例として、1デニール(1D)ポリエステル繊維は10ミクロン(μ)の直径を有し、これは炭酸カルシウム粒径が、約1μを超えるべきではないことを意味する。当業者は、この一般的な10%の関係に基づいて関連する粒径を選択することが可能であろう。
【0062】
同様の関係において、マスターバッチ組成物は、保管および輸送のために固体チップ形態で製造してもよい。次いで、最終使用者は、特定の最終使用用途のための所望のサイズにチップを粉砕することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、次いで粉砕されたマスターバッチ粒子は、ひいては所望の最終ポリマーと混和性である液体と混合される。一例として(限定されないが)、ポリエチレングリコールまたはエチルアルコールが、ポリエステルプロセスに好適である。
【0064】
さらなる考慮事項として、調製したマスターバッチは、代替的な製造段階で標的ポリマーに添加され得る。1つの選択肢として、マスターバッチは、ポリマーが作製された後にポリマー製造ラインに添加することができるが、ポリマーは溶融状態のままである。
【0065】
あるいは、マスターバッチは、標的ポリマーの重合中に連続ポリマーラインに添加され得る。かかる配置でのマスターバッチは、重合の最後の段階と混和性である場合、例えば、連続ラインの高重合装置において、良好に機能する。
【0066】
スパンデックス本発明の背景では、スパンデックスは、スパンデックスが溶融紡績可能であることを条件として、マスターバッチプロセスの標的ポリマーであり得る。当業者は、スパンデックスのバリエーションが溶融紡績ではなく溶媒紡績であることを認識しており、本発明は溶融紡績バージョンで使用される。
【0067】
本説明全体を通した実施例は、限定を意図するものではないが、様々な実施形態での本発明は、特色の任意の選択された組み合わせを特徴とし得る。いくつかの実施形態では、組成物は、ある特定の構成成分が部分的に存在しないことによって定義され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、デンプンまたは糖類を含むことを避け、かかる構成成分は、過度に可溶性であり得、十分な耐久性を欠く織物をもたらし得る。ポリブチレンサクシネートなどの添加剤は、好ましくは、非生分解性ポリマーと共重合されないが、組成物内で分解性相を形成する。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脂肪族芳香族ポリエステルを避ける。
【0069】
実施例に記載のASTMおよび/またはAATCC試験などによって、本発明の繊維、糸、および生地は、それらの物理的特性によって特徴付けることができる。例えば、繊維、糸、および生地は、繊維中の生分解剤の質量%に基づいて、ASTM試験による分解の程度によって定義することができる。
前駆体、中間体、および最終生成物の分子組成は、ゲル透過クロマトグラフィー、より好ましくはポリマーブレンドの勾配分析などの従来の方法によって決定することができる。
【0070】
当業者は、マスターバッチをメインポリマーと併用すると、メインポリマーに添加されるマスターバッチの相対量に比例して組成数が変化するであろうことを当然理解するであろう。
【0071】
また、本発明がその実施形態で溶融中間体と見なされるとき、溶融体は、最も一般的な織物用途においてパレットまたはフィラメントのいずれかの形態で押し出すことができることを当業者は理解するであろう。ペレットとして溶融物を押し出しクエンチすることにより、ペレットを異なる所在地、例えば顧客の所在地に保管、出荷、および再溶融する機会を提供する。
【0072】
組成物からクエンチされたフィラメントが、当業者によって十分に理解されている技術を使用してテクスチャ加工され得るとき、テクスチャ加工に続いて、テクスチャ加工されたフィラメント(「フィラメント糸」)から直接生地を形成することができるか、またはテクスチャ加工されたフィラメントをステープル繊維に切断することができる。ひいては、かかるステープル繊維は、最も一般的にはオープンエンドシステム、同様に明らかにリングスピニングで糸に紡績することができる。ひいては、糸は、生地(織布、ニット、不織布)に形成してもよいか、または別のポリマー(例えば、レーヨン)もしくは天然繊維(綿またはウール)とブレンドしてブレンド糸を形成し、ひいてはこれをブレンド繊維の特徴を有する生地に作製してもよい。
【0073】
表1からのいずれかのレシピは、本明細書で言及されるフィラメント、ペレット、ステープル繊維、テクスチャ加工ステープル繊維、テクスチャ加工フィラメント、または生地のうちのいずれかで使用することができる。
【0074】
本明細書で使用される場合、「ナップ」ならびに「ナッピング」または「ナップ加工した」という用語は、製造された織物のための、上記の378~79ページのTortoraなどの十分に理解されている仕上げステップを指す。この背景では、本発明は、極性フリース、すなわち、典型的にはポリエステルから作製される柔らかいナップ加工断熱性生地にも有用である。
【0075】
適切なフィラメントに形成されると、本発明による組成物は、断熱性衣服の充填材としても非常に良好に機能することが期待される。
【0076】
断熱性衣類の性質、構造、および多くのバリエーションは、当業者に十分に理解されている。基本的に、断熱性材料は、低デニールナイロンが典型的であり、多くの場合、少なくともいくらかの降水に耐えることができる撥水処理を含む軽量シェルに囲まれている。
【0077】
当然、ダウンは、重量対重量の圧縮性、ロフト、および暖かさ対重量比に基づいた最良の断熱性材料であるが、本発明などの合成充填材は、わずかに重く、わずかに圧縮性が低いが、より低いコスト、および湿潤時により良好な断熱性特性を提供する。
【0078】
別の例として、本発明によるフィラメント、繊維、および糸は、生分解性カーペット、またはかかるカーペットの一部分として非常に良好な性能を発揮することが期待される。当業者によって十分に理解されるように、カーペットは、典型的には裏地に取り付けられたパイル糸またはタフティング糸で形成される、床を覆う織物である。合成材料が登場する前には、現在も依然として使用されている典型的なパイルは、ウールから作製され、裏地は、糸を織る、タフティングする、またはそれ以外の方法で取り付けることができる織布生地で作製されていた。
【0079】
当業者は、典型的には、「カーペット」および「ラグ」という用語を互換的に使用するが、いくつかの背景では、「カーペット」は、部屋全体を覆い(「壁から壁までのカーペット」)、「ラグ」は、部屋全体よりも小さい領域を覆う。
【0080】
ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、およびこれらのウールとのブレンドなどの合成材料は、有用なカーペット材料であるので、本発明から形成された繊維または糸は、カーペットに完全に適切かつ有用である。当業者は、多種多様な裏地材料、裏地構造、およびパイルまたはタフトを裏地に取り付ける手段を認識している。かかる可能性をすべて繰り返すことは、明確にするのではなくむしろ冗長であり、当業者は、任意の所与の背景において、過度の実験を用いることなく必要な材料およびステップを採用することができる。
【実施例】
【0081】
表1に示される組成物を有する多様なマスターバッチ組成物を調製した。
【表1】
【0082】
これらのマスターバッチをポリエチレンテレフタレートにブレンドし(マスターバッチの1%が典型的である)、クローズループの重量フィーダーを用いてツインスクリューを備える溶融押し出し機に供給した。添加剤バッチを250℃で混合し、ストランドダイを介して水浴または同等のクエンチ装置に押し出す。分類装置で、ペレットのサイズ分布の最端部で粒子を除去した後、ペレットを乾燥させ袋詰めする。
【0083】
試験で利用した炭酸カルシウムは、6.5ミクロンの質量平均粒径、および1グラム当たり約1.5平方メートルの表面積を有した。
【0084】
1%の充填速度で配合物をPETに押し出し、ASTM D5511に従って、押し出しプロセスと最も適合性のあるレシピの分解について試験した。
図1および表2に266日間、
図2および表3に353日間での結果を示す。
【表2】
【表3】
【0085】
初期読み取り値を59日目に取り、この非常に早い読み取りでは、レシピ13(表1)は、3.9%の分解を示したと思われるが、レシピ14は、全く分解が開始されていないように思われた。しかしながら、気圧事象およびデータのノイズに基づいて、レシピ13および14からのデータは、信頼性がなく、再現性がないように思われる。加えて、かかる低い分解読み取り値は、ベースラインに近すぎて信頼できない(添加剤を含まないPETでは3%の分解)ので、これらのレシピの試験は中止した。
【0086】
上に示される結果は、従来技術よりも優れていることを実証している。これらの埋立地条件において、PET繊維は、メタンおよび二酸化炭素に分解される。266日後、1質量%の表のマスターバッチレシピ#2、3、6、7、および11で作製したPET試料は、それぞれ43.6、66.1、56.5、21.3、および38.3%が分解された。無修飾のPETは、同じ条件下で3.2%分解された。最も高い分解は、ポリカプロラクトン49%およびポリヒドロキシブチレート10%を含有するマスターバッチで起こったが、最も低い分解は、ポリカプロラクトン39%およびポリブチレンサクシネート20%を含有するマスターバッチで起こった。ポリカプロラクトン49%およびポリヒドロキシブチレート10%から作製した材料はまた、ポリカプロラクトン39%、ポリヒドロキシブチレート10%、およびポリブチレンサクシネート10%を含有する1%のマスターバッチで修飾されたPETよりも実質的に良好に分解される。
【0087】
上の結果は、市販の生分解剤Eco-One(登録商標)(https://ecologic-lIc.com/about/eco-one-video-tour、2019年2月11日にアクセス)の2%のマスターバッチを使用してポリアミド繊維を溶融紡績した、WO2016/079724(「表1-300日後の結果」)に報告されている結果と比較することができる。得られた繊維は、ASTM D5511基準を介して試験し、300日後に13.9%(「PA6.6」)または15.5%(「PA5.6」)分解されることが見出された。生分解剤を含まないWO2016/079724の繊維は、同じASTM D5511試験下で2.2および2.3%分解された。
【0088】
無修飾の繊維に基づき、266日と300日との間の差を無視すると、従来のPET(本明細書の表2)は、WO2016/079724でのポリアミド繊維よりも3.2/2.25=1.42倍分解性であると思われる。比較して、本発明による修飾PETは、WO2016/079724の修飾ポリアミド繊維よりも21.3/15.5=1.37倍~66.1/15.5=4.26倍分解性であった。WO2016/079724のポリアミド繊維が、マスターバッチの2倍(2%対1%)で修飾されたという事実をもとに修正すると、本発明によるPETは、2.74倍~8.52倍分解性であった。無修飾ポリエステルとポリイミドとの間の2.74/1.42の差をもとに修正すると、本発明は、1.92倍~3.00倍高い生分解性を実証した。
【0089】
表4および
図3は、レシピ2(表1)および対照ポリエステルから作製した生地の生分解の改善を示す。
【表4】
【0090】
ASTM D5210-下水汚泥の存在下での嫌気性分解
2つの配合物から仕上げた生地をストーンウォッシュ加工(stone tumbled)してマイクロファイバーを創出し、水処理施設で典型的に経験する条件をモデルとするASTM D5210よる、55日間の分解について、マイクロファイバーを試験した。結果を表5および
図4に示す。
【表5】
【0091】
ASTM D6691-好気性分解モデリング5海洋環境
1つの配合物から仕上げた生地をストーンウォッシュ加工してマイクロファイバーを創出し、ASTM D6691による112日間の分解について、マイクロファイバーを試験した。結果を表6および
図5に要約する。
【表6】
【0092】
実施例-非毒性
ASTM E1963方法、すなわち、豆類、トウモロコシ、およびエンドウ豆などの陸域植物種を使用する植物毒性試験を行うためのプロトコルを使用して、植物成長および発達に対する試験物質の影響を決定するために、組成物を試験した。エンドウ豆は土壌条件に非常に敏感であるので、良好な指標である。このASTM E1963試験には、レシピ2からのASTM D5511試験からの副生成物を含有する残留土壌の浸出液を使用した。
図7は、ASTM E1963試験からの結果を示す。
【0093】
自然界(1列目)および試料(3列目)での植物の成長を検査することにより、関連する副生成物試料からの浸出液が植物の成長に阻害効果がないことを実証している。
【0094】
表7-マスターバッチの有無での織物特性の例
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【0095】
細菌分解に供される繊維の顕微鏡分析
ASTM D5511において、本発明による繊維の細菌分解に供された繊維の電子顕微鏡画像を、
図6のSEM画像(SEM HV:15kV、視野173ミクロン、SEM倍率1.5、Tescan(商標)Vega3(商標)タングステン熱イオン放出SEMシステム(https://www.tescan.com/en-us/technology/sem/vega3)、2019年2月12日にアクセス)に示し、細菌に>1年曝露させた後の、本発明によるポリエステル未染色繊維の表面上の細菌のコロニー形成を示す。
【0096】
図面および明細書には、本発明の好ましい実施形態が記載されており、特定の用語が用いられているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定の目的ではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲に定義される。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[態様1]
マスターバッチであって、
0.2~5質量%のCaCO
3
と、
エステル基間の鎖に2~6個の炭素を有する繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステルであって、前記鎖中の前記2~6個の炭素が、側鎖炭素を含まないことを条件とする、脂肪族ポリエステルと、
PET、ナイロン、オレフィン、他の熱可塑性ポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、担体ポリマーと、を含む、マスターバッチ。
[態様2]
前記脂肪族ポリエステルが、ポリカプロラクトンを含む、態様1に記載のマスターバッチ。
[態様3]
PBS、PLA、PBSA、PES、PHB、PHBV、PBAT、PBST、PBSTIL、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーをさらに含む、態様1に記載のマスターバッチ。
[態様4]
前記脂肪族ポリエステルが、エステル基間の前記鎖に3~6個の炭素を有する繰り返し単位を含む、態様1に記載のマスターバッチ。
[態様5]
前記脂肪族ポリエステルが、側鎖炭素を含まずに、エステル基間の前記鎖に4~5個の炭素を有する繰り返し単位を含む、態様1に記載のマスターバッチ。
[態様6]
0.9~1.1質量パーセントの炭酸カルシウムを含み、
前記2~6個の炭素の脂肪族エステルが、44~54質量パーセントの量のポリカプロラクトンであり、
9~11質量パーセントの量のポリブチレンサクシネートをさらに含み、
前記マスターバッチの残りが、前記担体ポリマーとしてのポリエチレンテレフタレートである、態様3に記載のマスターバッチ。
[態様7]
態様6に記載のマスターバッチの1重量%(質量)と、残りのポリエチレンテレフタレートとから本質的になる、ポリエステル組成物。
[態様8]
39~48重量%のポリエステルと、
39~49重量%のPLCと、
1重量%の炭酸カルシウムと、から本質的になる、態様1に記載のマスターバッチ。
[態様9]
5~10重量%のPLA、5~10重量%のPHA、5~10重量%のPBAT、10~20重量%のPBS、1重量%の二酸化ケイ素、およびこれらの組成物の組み合わせからなる群から選択される組成物をさらに含む、態様8に記載のマスターバッチ。
[態様10]
溶融中間体であって、
態様1~9のいずれかに記載のマスターバッチと、
PET、ナイロン、オレフィン、他の熱可塑性ポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも90質量%のポリマーと、を含む、溶融中間体。
[態様11]
態様10に記載の溶融中間体から形成された、クエンチされ、サイズによって特徴付けされる、複数のポリマーペレット。
[態様12]
態様10に記載の溶融中間体から形成された、クエンチされた、ポリマーフィラメント。
[態様13]
0.9~1.1質量パーセントの炭酸カルシウムから本質的になり、
前記2~6個の炭素の脂肪族エステルが、44~54質量パーセントの量のポリカプロラクトンであり、
9~11質量パーセントの量のポリブチレンサクシネートをさらに含み、
前記マスターバッチの残りが、前記担体ポリマーとしてのポリエチレンテレフタレートである、態様10に記載の溶融中間体。
[態様14]
0.39~0.48重量%のポリエステルと、
0.39~0.49重量%のPLCと、
0.01重量%の炭酸カルシウムと、
少なくとも90質量%のPETと、から本質的になる、態様13に記載の溶融中間体。
[態様15]
0.05~0.1重量%のPLA、0.05~0.1%のPHA、0.05~0.1%のPBAT、0.10~0.20重量%のPBS、0.01重量%の二酸化ケイ素、およびこれらの組成物の組み合わせからなる群から選択される組成物をさらに含む、態様14に記載の溶融中間体。