(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】生産状況可視化システム、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240516BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240516BHJP
G06F 3/0481 20220101ALI20240516BHJP
G06F 3/14 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
G06F3/0481
G06F3/14 320A
(21)【出願番号】P 2021009125
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小八重 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】肖 立
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-197308(JP,A)
【文献】特開2012-008729(JP,A)
【文献】特開2014-138157(JP,A)
【文献】特開2015-108904(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0082738(US,A1)
【文献】国際公開第2019/003524(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
G06F 3/0481
G06F 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
要素物品を用いて成果物品を製作する複数の工程によって製品を生産する状況を可視化する生産状況可視化システムであって、
前記複数の工程のそれぞれについて、当該工程の成果物品を製作するのに必要な要素物品およびその個数を表す所要要素物品および所要要素物品個数と、当該工程で製作された前記成果物品をどの工程に提供するかを表す移動先とを知得可能にする生産工程モデル情報を作成する生産工程モデル生成部と、
前記複数の工程のそれぞれで所定の単位時間に製作することが計画されている成果物品の個数である生産計画数を示す計画数情報と、前記工程で製作され前記移動先にて用いられる前の状態にある成果物品の在庫数を示す在庫数情報と、を取得し、前記複数の工程について、当該工程に提供される当該工程の要素物品の個数に基づき、当該工程で当該工程の成果物品を製作できる最大個数を示す生産可能数と前記生産計画数とのいずれか小さい方の値を生産予定数とし、前記生産予定数と前記在庫数の和を当該工程が前記移動先へ提供する成果物品の個数を示す出力数として特定する能力演算部と、
前記複数の工程のそれぞれについて、当該工程の出力数に相当する高さを有する部分と当該工程の在庫数と生産可能数の和に相当する高さを有する部分とを含む画像オブジェクトであるノードオブジェクトを生成し、当該工程の前記出力数に相当する高さで当該工程のノードオブジェクトと第1端部が接続し、当該工程の前記出力数が当該工程の成果物品を要素物品とする次工程にて何個の成果物品を製作する分であるかに相当する高さで、前記次工程のノードオブジェクトに第2端部が接続する帯状の画像オブジェクトであるフローオブジェクトを生成し、前記ノードオブジェクトと前記フローオブジェクトを表示装置に表示させる表示処理部と、
を有する生産状況可視化システム。
【請求項2】
前記ノードオブジェクトは、
前記ノードオブジェクトの横方向全体にわたる横幅と前記在庫数に相当する高さを有する矩形の在庫数矩形領域と、前記生産可能数に相当する高さを有する矩形の生産可能数矩形領域と、前記生産計画数に相当する高さを有する矩形の生産予定数矩形領域と、前記生産予定数に相当する高さを有する矩形の生産予定数矩形部分と、を含み、
前記在庫数矩形領域と前記生産可能数矩形領域と前記生産予定数矩形部分が互いに近接して横方向に並び、かつ、前記在庫数矩形領域と前記生産可能数矩形領域と前記生産予定数矩形部分の上底辺または下底辺が前記在庫数矩形領域の下底辺または上底辺に近接し、かつ、前記在庫数矩形領域と前記生産可能数矩形領域と前記生産予定数矩形部分の横幅の合計が前記在庫数矩形領域の横幅と一致している、
請求項1に記載の生産状況可視化システム。
【請求項3】
前記表示処理部は、前記生産可能数が前記生産計画数より少ない場合に前記生産可能数矩形領域を強調表示する、
請求項2に記載の生産状況可視化システム。
【請求項4】
前記能力演算部は、前記製品を成果物品とする工程をルート工程とし、前記複数の工程のそれぞれについて、前記ルート工程において計画数の前記製品を製作できるようにするために当該工程で製作すべき成果物品の個数を、当該工程における要求数として算出し、
前記表示処理部は、前記複数の工程のそれぞれについて、生産予定数が、要求数から前記在庫数を減算した値よりも小さければ、対応する生産予定数矩形領域を強調表示し、生産計画数が、前記要求数から前記在庫数を減算した値より小さければ、対応する生産計画数矩形領域を強調表示し、生産可能数が、前記要求数から前記在庫数を減算した値よりも小さければ、対応する生産可能数矩形領域を強調表示する、
請求項2に記載の生産状況可視化システム。
【請求項5】
前記表示処理部は、前記生産予定数が前記要求数から前記在庫数を減算した値よりも小さい工程に第1端部が接続されているフローオブジェクトを強調表示する、
請求項4に記載の生産状況可視化システム。
【請求項6】
前記表示処理部は、在庫数の数値を在庫数矩形領域の近傍でフローオブジェクト上に表示し、生産予定数の数値を生産予定数矩形部分の近傍でフローオブジェクト上の表示し、前記フローオブジェクトを強調表示する場合、前記在庫数と前記生産予定数の和が、前記強調表示されたフローオブジェクトの第1端部が接続されている前記工程において成果物品を前記生産計画数だけ製作できる分に満たない分の数値を、生産予定数の数値の近傍にマイナス付きで表示する、
請求項5に記載の生産状況可視化システム。
【請求項7】
前記表示処理部は、複数のフローオブジェクトが第2端部を1つのノードオブジェクトに接続する場合に、前記複数のフローオブジェクトが重なり合う部分でそれぞれが視認可能となるような透明度で前記複数のフローオブジェクトを表示する、
請求項1に記載の生産状況可視化システム。
【請求項8】
前記複数の工程において、第1工程が第2工程の前工程となり前記第1工程の成果物品が前記第2工程へ提供されることを提供関係とし、
前記能力演算部は、前記複数の工程を前記提供関係の順に辿りながら、前記複数の工程のそれぞれについて当該工程に前記前工程から提供される前記前工程の成果物の個数に基づき、当該工程で当該工程の成果物を製作することができる最大個数を示す生産可能数を算出する、
請求項1に記載の生産状況可視化システム。
【請求項9】
要素物品を用いて成果物品を製作する複数の工程によって製品を生産する状況を可視化するための生産状況可視化方法であって、
コンピュータが、
前記複数の工程のそれぞれについて、当該工程の成果物品を製作するのに必要な要素物品およびその個数を表す所要要素物品および所要要素物品個数と、当該工程で製作された前記成果物品をどの工程に提供するかを表す移動先とを知得可能にする生産工程モデル情報を作成し、
前記複数の工程のそれぞれで所定の単位時間に製作することが計画されている成果物品の個数である生産計画数を示す計画数情報と、前記工程で製作され前記移動先にて用いられる前の状態にある成果物品の在庫数を示す在庫数情報と、を取得し、前記複数の工程について、当該工程に提供される当該工程の要素物品の個数に基づき、当該工程で当該工程の成果物品を製作できる最大個数を示す生産可能数と前記生産計画数とのいずれか小さい方の値を生産予定数とし、前記生産予定数と前記在庫数の和を当該工程が前記移動先へ提供する成果物品の個数を示す出力数として特定し、
前記複数の工程のそれぞれについて、当該工程の出力数に相当する高さを有する部分と当該工程の在庫数と生産可能数の和に相当する高さを有する部分とを含む画像オブジェクトであるノードオブジェクトを生成し、当該工程の前記出力数に相当する高さで当該工程のノードオブジェクトと第1端部が接続し、当該工程の前記出力数が当該工程の成果物品を要素物品とする次工程にて何個の成果物品を製作する分であるかに相当する高さで、前記次工程のノードオブジェクトに第2端部が接続する帯状の画像オブジェクトであるフローオブジェクトを生成し、前記ノードオブジェクトと前記フローオブジェクトを表示装置に表示させる、
生産状況可視化方法。
【請求項10】
要素物品を用いて成果物品を製作する複数の工程によって製品を生産する状況を可視化する処理をコンピュータに実行させるための生産状況可視化プログラムであって、
前記複数の工程のそれぞれについて、当該工程の成果物品を製作するのに必要な要素物品およびその個数を表す所要要素物品および所要要素物品個数と、当該工程で製作された前記成果物品をどの工程に提供するかを表す移動先とを知得可能にする生産工程モデル情報を作成し、
前記複数の工程のそれぞれで所定の単位時間に製作することが計画されている成果物品の個数である生産計画数を示す計画数情報と、前記工程で製作され前記移動先にて用いられる前の状態にある成果物品の在庫数を示す在庫数情報と、を取得し、前記複数の工程について、当該工程に提供される当該工程の要素物品の個数に基づき、当該工程で当該工程の成果物品を製作できる最大個数を示す生産可能数と前記生産計画数とのいずれか小さい方の値を生産予定数とし、前記生産予定数と前記在庫数の和を当該工程が前記移動先へ提供する成果物品の個数を示す出力数として特定し、
前記複数の工程のそれぞれについて、当該工程の出力数に相当する高さを有する部分と当該工程の在庫数と生産可能数の和に相当する高さを有する部分とを含む画像オブジェクトであるノードオブジェクトを生成し、当該工程の前記出力数に相当する高さで当該工程のノードオブジェクトと第1端部が接続し、当該工程の前記出力数が当該工程の成果物品を要素物品とする次工程にて何個の成果物品を製作する分であるかに相当する高さで、前記次工程のノードオブジェクトに第2端部が接続する帯状の画像オブジェクトであるフローオブジェクトを生成し、前記ノードオブジェクトと前記フローオブジェクトを表示装置に表示させる、
ことを前記コンピュータに実行させる生産状況可視化プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製品の生産の状況を可視化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、製造プロセスを可視化するシステムが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された可視化システムは、複数の製造工程を順に経て製造される製品の製造状況を可視化すると共に、各製造工程で発生した工程特性要因の変化を視認可能に表示するコンピュータシステムである。
【0004】
この可視化システムは、製品の製造単位毎に、第1の工程の開始時刻又は終了時刻と、第1の工程に続く第2の工程の開始時刻又は終了時刻と、を結ぶ線分を生成する第1生成部と、各製造工程の工程特性要因の変化ログに基づいて、第1の工程及び第2の工程それぞれで発生した工程特性要因の変化を特定し、工程特性要因の変化の大きさ又は変化した工程特性要因の属性を表す領域を含む表示オブジェクトを生成する第2生成部と、各時間軸を示す線分、第1生成部で生成された線分、及び表示オブジェクトを、ディスプレイ装置に表示させると共に、表示オブジェクトを、工程別の各時間軸上における開始時刻又は終了時刻の位置に重ねて配置して、ディスプレイ装置に表示させる表示制御部と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO2019/003524号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の工程を経て最終的な製品を製造する製品製造の方法がある。その際、ある工程Aで部品aを組み込んで部品bを製作し、次の工程Bで部品bを組み込んで最終的な製品cを製作するというように、前段の工程で製作された成果物品が後段の工程で用いられる要素物品となることがある。その場合、前段の工程が滞って十分な個数の成果物品を製作できなければ、後段の工程が進められないといったことが起こる。所望される数の製品を効率よく製造するためには、複数段の工程を総合的に管理することが求められる。例えば、どこかの工程である部品が不足することが予測される場合、その部品を製作する前工程を強化することを検討すべきである。
【0007】
特許文献1の可視化システムは、複数の製造工程を順に経て製造される製品の製造状況を可視化するものである。これによれば、製造工程がどこまで進行しているかが視認可能となる。しかしながら、特許文献1の可視化システムでは工程間の部品供給の状況は視認可能にならない。例えば、各工程で部品が足りているか不足しているかといったことは視認可能にならない。
【0008】
本開示のひとつの目的は、工程間の物品の供給の状況を視認可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のひとつの態様による生産状況可視化システムは、複数の工程のそれぞれについて、所要要素物品および所要要素物品個数と、成果物品の移動先とを知得可能にする生産工程モデル情報を作成し、複数の工程について、要素物品の個数に基づき、当該工程で成果物品を製作できる最大個数を示す生産可能数と生産計画数とのいずれか小さい方の値を生産予定数とし、生産予定数と在庫数の和を出力数として特定し、出力数に相当する高さを有する部分と在庫数と生産可能数の和に相当する高さを有する部分とを含むノードオブジェクトと、出力数に相当する高さでノードオブジェクトと接続し、次工程にて何個の成果物品を製作する分であるかに相当する高さで次工程のノードオブジェクトに接続する帯状のフローオブジェクトを表示する。
【発明の効果】
【0010】
本開示のひとつの態様によれば、工程間の物品の供給の状況が視認可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】生産状況可視化システムのブロック図である。
【
図3】生産工程モデル生成処理のフローチャートである。
【
図5】部品構成データの一例を示すテーブルである。
【
図6】生産計画データの一例を示すテーブルである。
【
図7】生産工程モデルデータの一例を示すテーブルである。
【
図9】生産能力データの一例を示すテーブルである。
【
図11】図表示処理により表示される画面の一例を示す図である。
【
図12】図表示処理により表示される画面の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態による生産状況可視化システムのブロック図である。
【0014】
生産状況可視化システム10は、生産能力演算部1と表示処理部2とデータベース9とを有している。生産能力演算部1は、生産工程モデル生成部1-1と能力演算部1-2とを有している。表示処理部2は図表示部2-1を有し、表示装置2-2と接続されている。データベース9には、部品構成データ3と生産計画データ4と在庫数データ5が記録されている。
【0015】
生産状況可視化システム10は、複数の工程によって製品を生産する状況を可視化するコンピュータシステムである。複数の工程は、それぞれ要素物品を用いて成果物品を製作する工程である。ある工程である部品を組み込んで複雑な部品を製作し、次の工程でその複雑な部品を組み込んで最終的な製品を製作するというように、前段の工程の成果物品が後段の工程で要素物品として必要とされる。最終的な製品を製作する工程(以下、「ルート工程」ともいう)の成果物品は製品である。ルート工程以外の工程の成果物品は、後段の工程の要素物品となる部品である。
【0016】
生産能力演算部1は、生産能力演算処理を実行し、部品構成データ3、生産計画データ4、および在庫数データ5に基づいて、生産工程モデルデータ6および生産能力データ7を生成する。
【0017】
図2は、生産能力演算処理のフローチャートである。
図2を参照すると、生産能力演算処理S100は、生産工程モデル生成処理S101と能力演算処理S102を含む。
【0018】
生産工程モデル生成部1-1は生産工程モデル生成処理S101を実行する。生産工程モデル生成処理S101は、部品構成データ3および生産計画データ4に基づいて生産工程モデルデータ6を生成する処理である。
【0019】
部品構成データ3は、製品およびその製品に用いられる部品のそれぞれについて、それを製作するのにどの部品が何個用いられるかを示すデータである。生産計画データ4は、それぞれの工程について、成果物品としてどの製品あるいは部品を所定の単位時間に何個製作し、製作した成果物品をどこに移動させるかについての計画を示すデータである。移動先は例えば次の工程や出荷場である。ここで用いる単位時間は特に限定されないが、例えば1日あるいは1週間といった生産管理に適した期間が好ましい。部品構成データ3および生産計画データ4の詳細は後述する。
【0020】
生産工程モデルデータ6は、それぞれの工程について、当該工程の成果物品を製作するのに必要な部品およびその個数と、当該工程で製作された成果物品の移動先とを含む各種情報を記録したデータである。生産工程モデルデータ6の詳細は後述する。
【0021】
また、生産工程モデル生成処理S101の詳細は後述する。
【0022】
能力演算部1-2は能力演算処理S102を実行する。能力演算処理S102は、生産計画データ4、在庫数データ5、および生産工程モデルデータ6に基づいて、生産能力データ7を生成する処理である。
【0023】
在庫数データ5は、各工程にて製作され移動先にて用いられる前の状態の成果物品である部品の個数を示すデータである。各工程で製作され移動先にて用いられる前の状態にある成果物品は、当該工程の製造ライン付近の保管場所(部品ストア)、複数の工程の成果物品が共に保管される保管場所、あるいは移動先の製造ライン付近の保管場所など様々な場所に保管されることが想定される。ここでは、その物品がどこに保管されているかに関わらず在庫として個数等が管理される。在庫数データ5の詳細は後述する。
【0024】
生産能力データ7は、それぞれの工程について、要求数と、生産計画数と、生産可能数と、生産予定数と、出力数と、を含むデータである。要求数は、ルート工程において製品を計画されている個数だけ製作できるようにするために当該工程で製作すべき成果物品の個数である。生産計画数は、当該工程で所定の単位時間に製作することが計画されている成果物品の個数である。生産可能数は、当該工程で成果物品を所定の単位時間に製作できる最大個数である。生産予定数は、当該工程で所定の単位時間に製作することが計画されかつ製作することが可能な成果物品の個数であり、生産可能数と生産計画数のいずれか小さい方の値である。出力数は、当該工程が移動先へ提供する成果物品の個数であり、当該工程の生産予定数と在庫数の和である。
【0025】
能力演算処理S102の詳細は後述する。
【0026】
図1に戻り、表示処理部2は、図表示部2-1により図表示処理を実行し、それにより生成した画面を表示装置2-2に表示する。図表示処理は、複数の工程によって製品を生産する状況を可視化する画面を生成する処理である。図表示処理の詳細は後述する。
【0027】
図1に示した生産状況可視化システム10の物理構成は特に限定されないが、一例として、生産状況可視化システム10はプロセッサ(不図示)および記憶装置(不図示)を備えたコンピュータである。記憶装置にはソフトウェアプログラムと、データベース9を含む各種データとが格納される。プロセッサが、ソフトウェアプログラムを実行し、各種データに対する演算を行うことにより、上述した生産能力演算部1および表示処理部2が実現される。生産能力演算部1と表示処理部2は同一のプロセッサにより実現されても良いし、それぞれ別個のプロセッサにより実現されてもよい。また、生産状況可視化システム10は複数のコンピュータにより構成されてもよい
【0028】
図3は、生産工程モデル生成処理のフローチャートである。
図4は、能力演算処理のフローチャートである。
【0029】
図3を参照すると、生産工程モデル生成部1-1は、ステップS201にて、部品構成データ3および生産計画データ4を取得する。
【0030】
図5は、部品構成データの一例を示すテーブルである。
【0031】
部品構成データ3は、例えば、いわゆるBOM(Bill Of Materials)である。
図5を参照すると、部品構成データ3には、親部品名(
図5では「親部品」)と、子部品番号(
図5では「子部品No.」)と、子部品名(
図5では「子部品」)と、所要子部品個数(
図5では「数量」)とが互いに対応付けられている。子部品番号および/または子部品名により特定される子部品(要素物品)として、その子部品を所要子部品個数だけ用いて、親部品名により特定される親部品(成果物品)が製作される。親部品は、更に他の物品の一部をなすいわゆる部品である場合もあるし、それ自体が最終的な製品である場合もある。なお、
図5のテーブルには、最終的な製品として、製品Aを生産するための部品構成の情報と、製品Bを生産するための部品構成の情報とが混在している。
【0032】
例えば、
図5のテーブルの2行目のレコードには、子部品No.が2の子部品である部品Aを1個用いて、親部品である製品Aが製作されるという情報が設定されている。なお、
図5のテーブルの1行目のレコードには、管理および処理の都合により、子部品である製品Aを1個用いて親部品である製品Aが製作されるという情報が設定されている。
【0033】
図6は、生産計画データの一例を示すテーブルである。
図6を参照すると、生産計画データ4には、各工程が行われる製造ラインを示す製造ライン名(
図6では「ライン」)と、成果物品番号(
図6では「品番」)と、移動先(
図6でも「移動先」)と、生産計画数(
図6では「計画数」)とが互いに対応付けられている。成果物品番号は、当該工程で製作される成果物品を示す。移動先は、当該工程の成果物品の移動先を示す。生産計画数は、当該工程において単位期間に製作する計画となっている成果物品の個数を示す。なお、
図6のテーブルには、最終的な製品として、製品Aを生産するための生産計画の情報と、製品Bを生産するための生産計画の情報とが混在している。
【0034】
例えば、
図6のテーブルの1行目のレコードには、製造ライン名がライン1である工程において、所定の単位時間に、成果物品番号が製品Aである成果物品が1000個製作され、移動先である出荷場Aに提供されることが計画されていることが示されている。
【0035】
図3に戻り、生産工程モデル生成部1-1は、ステップS202aとステップS202bの間にあるステップS203~S218により示される一連の処理を、製品および各工程(製造ライン)について繰り返し実行する。なお、製品は、
図5における親部品名と子部品名とが一致するレコード(行)に対応し、各工程は、
図5におけるそれ以外のレコードに対応する。したがって、生産工程モデル生成部1-1は、
図5のテーブルの各レコードに順次着目して、上記一連の処理を実行することとなる。
【0036】
ステップS203では、生産工程モデル生成部1-1は、空の生産工程モデルデータ6を用意し、部品構成データ3から子部品の情報を取得して生産工程モデルデータ6の空の行の成果物品の欄に設定する。
【0037】
図7は、生産工程モデルデータの一例を示すテーブルである。生産工程モデルデータ6では、各工程について、最終的な製品に対応する工程キーと、当該工程の製造ライン名(
図7では「ライン」)と、子部品番号(
図7では「子部品No.」)と、成果物品番号(
図7では「品番」)と、最終的な製品までに経る工程を階層化した当該工程の階層レベルと、次工程の成果物品を1つ製作するのに必要となる当該工程の成果物品の所要個数(
図7では「数量」)と、当該工程の成果物品の移動先と、当該工程の成果物品に複数の移動先が存在することを示す共通部品フラグとが互いに対応付けられている。
【0038】
ステップS203にて用意された生産工程モデルデータ6は全ての欄が空の状態である。その状態から、生産工程モデル生成部1-1は、部品構成データ3から子部品の子部品番号と子部品名とを取り出し、生産工程モデルデータ6の子部品番号(
図7の「子部品No.」)の欄と成果物品番号(
図7の「品番」)の欄にそれぞれ設定する。
【0039】
ステップS204では、生産工程モデル生成部1-1は、その成果物品番号により示される成果物品を製作する工程の製造ライン名を生産計画データ4から取得し、親ラインという名称の変数に設定する。
【0040】
ステップS205にて、生産工程モデル生成部1-1は、階層レベルという名称の変数に1を設定するとともに、生産工程モデルデータ6の階層レベルの欄に1を設定する。
【0041】
ステップS206にて生産工程モデル生成部1-1は、親ラインという名称の変数に設定されている製造ライン名を、生産工程モデルデータ6の製造ライン名の欄に設定する。更に、生産工程モデル生成部1-1は、処理の対象になっている最終的な製品に対応する工程キーを、生産工程モデルデータ6の工程キーの欄に設定する。更に、生産工程モデル生成部1-1は、生産工程モデルデータ6の成果物品番号により示される成果物品を子部品名として有する部品構成データ3におけるレコードから所要子部品個数(
図5では「数量」)の値を取得し、生産工程モデルデータ6の所要個数(
図7では「数量」)の欄に設定する。更に、生産工程モデル生成部1-1は、親ラインという変数に設定されている製造ライン名を有する生産計画データ4のレコードから移動先に設定されている情報を取得し、生産工程モデルデータ6の移動先の欄に設定する。
【0042】
ステップS207では、生産工程モデル生成部1-1は、部品構成データ3から、親部品名が、ステップS203で設定した成果物品と一致するレコードのうち、その親部品名が子部品名と一致しないレコードの情報を取得し、更に、生産計画データ4から、その子部品名と一致する成果物品番号(
図6における「品番」)を有するレコードの情報を取得する。
【0043】
ステップS208では、生産工程モデル生成部1-1は、ステップS207にて取得された情報があるか否か判定する。生産工程モデル生成部1-1は、取得された情報があればステップS209に進み、取得された情報がなければステップS202aとステップS202bの間の一連の処理を終了する。
【0044】
ステップS209では、生産工程モデル生成部1-1は、階層レベルという変数に1を加算する。
【0045】
続いて、生産工程モデル生成部1-1は、ステップS210aとステップS210bの間にあるステップS211~S216により示される一連の処理を、ステップS207で情報が取得された各レコード(子部品名)について繰り返し実行する。
【0046】
ステップS211では、生産工程モデル生成部1-1は、生産計画データ4における移動先が、親ラインという名称の変数と一致するか、またはその移動先が複数の製造工程ラインで共通するものであるかを判定する。
【0047】
ステップS212では、生産工程モデル生成部1-1は、ステップS211の判定にて移動先が親ラインという名称の変数と一致した場合には、その移動先を生産工程モデルデータ6の移動先の欄に設定し、ステップS211の判定にて移動先が複数の製造工程ラインで共通するものであった場合には、生産工程モデルデータ6の共通部品フラグに1を設定する。
【0048】
ステップS213では、生産工程モデル生成部1-1は、処理対象になっている部品構成データ3のレコードに記載されている子部品名を、生産工程モデルデータ6の成果物品番号(
図7では「品番」)の欄に設定する。
【0049】
ステップS214では、生産工程モデル生成部1-1は、親ラインという名称の変数に設定されている製造ライン名を、生産工程モデルデータ6の製造ライン名の欄に設定する。更に、生産工程モデル生成部1-1は、処理の対象になっている最終的な製品に対応する工程キーを、生産工程モデルデータ6の工程キーの欄に設定する。更に、生産工程モデル生成部1-1は、生産工程モデルデータ6の成果物品番号により示される成果物品を子部品名として有する部品構成データ3におけるレコードから所要子部品個数(
図5では「数量」)の値と子部品番号(
図5では「子部品No.」)の値とを取得し、生産工程モデルデータ6の所要個数(
図7では「数量」)の欄と子部品番号(
図7では「子部品No.」)の欄にそれぞれ設定する。更に、生産工程モデル生成部1-1は、親ラインという変数に設定されている製造ライン名を有する生産計画データ4のレコードから移動先に設定されている情報を取得し、生産工程モデルデータ6の移動先の欄に設定する。
【0050】
ステップS215では、生産工程モデル生成部1-1は、部品構成データ3から、親部品名が、ステップS213で設定した成果物品と一致するレコードのうち、その親部品名が子部品名と一致しないレコードの情報を取得し、更に、生産計画データ4から、その子部品名と一致する成果物品番号(
図6における「品番」)を有するレコードの情報を取得する。
【0051】
ステップS216では、生産工程モデル生成部1-1は、ステップS215にて取得された情報があるか否か判定する。生産工程モデル生成部1-1は、取得された情報があれば、生産計画データ4における情報が取得されたレコードの製造ライン名(
図5では「ライン」)の値を、親ラインという名称の変数に設定し、ステップS209からの処理を再帰呼び出しにより実行する。ステップS215にて取得された情報がなければ、生産工程モデル生成部1-1は、ステップS210aとステップS210bの間の一連の処理を終了する。
【0052】
ステップS218では、生産工程モデル生成部1-1は、現在の処理対象が再帰呼び出しによるものであるか否か判定する。現在の処理対象が再帰呼び出しによるものであれば、生産工程モデル生成部1-1は、生産工程モデル生成処理を終了する。現在の処理対象が再帰呼び出しによるものでなければ、生産工程モデル生成部1-1は、ステップS202aとステップS202bの間の処理を継続する。
【0053】
次に、能力演算処理S102について説明する。
【0054】
上述したように、
図4に示した能力演算処理S102は、生産計画データ4、在庫数データ5、および生産工程モデルデータ6に基づいて、生産能力データ7を生成する処理である。
【0055】
図8は、在庫数データの一例を示すテーブルである。
図8を参照すると、在庫数データ5において、各工程の製造ライン名(
図8では「ライン」)と、その工程で成果物品を製作するのに要素物品として用いられる部品の部品番号(
図8では「品番」)と、その部品の在庫数(
図8では「在庫数」)とが互いに対応づけて記録されている。
【0056】
例えば、在庫数データ5のテーブルの1行目のレコードには、製造ライン名がライン1である工程において用いられる、部品番号が部品Aである部品の在庫が100個あることが示されている。
【0057】
図9は、生産能力データの一例を示すテーブルである。
図9を参照すると、生産能力データ7では、各工程について、最終的な製品に対応する工程キーと、当該工程の製造ライン名(
図9では「ライン」)と、子部品番号(
図9では「子部品No.」)と、成果物品番号(
図9では「品番」)と、最終的な製品までに経る工程を階層化した当該工程の階層レベルと、次工程の成果物品を製作するのに必要となる当該工程の成果物品の所要個数(
図9では「数量」)と、当該工程の成果物品の移動先と、当該工程の成果物品に複数の移動先が存在することを示す共通部品フラグと、当該工程から移動先の工程に提供され移動先で成果物品を製作するのに要素物品として用いられる部品の在庫数(
図9では「在庫数」)と、当該工程で所定の単位時間に製作することが計画されている成果物品の個数を示す生産計画数(
図9では「計画数」)と、ルート工程において製品を計画されている個数だけ製作できるようにするために当該工程で製作すべき成果物品の個数を示す要求数と、当該工程で成果物品を所定の単位時間に製作できる最大個数を示す生産可能数と、当該工程で所定の単位時間に製作することが計画されかつ製作することが可能な成果物品の個数を示す生産予定数と、当該工程で所定の単位時間に生産予定数を超えて製作することが可能な成果物品の個数を示す生産余力数と、当該工程が移動先へ提供する成果物品の個数を示す出力数と、当該工程の出力数が要求数に満たない分の成果物品の個数を示す不足数と、が互いに対応付けられている。生産余力数は、生産可能数から生産予定数を減算した値である。不足数は、要求数から出力数を減算した値である。
【0058】
なお、生産能力データ7における、工程キーと、製造ライン名(
図9では「ライン」)と、子部品番号(
図9では「子部品No.」)と、成果物品番号(
図9では「品番」)と、階層レベルと、所要個数(
図9では「数量」)と、移動先と、共通部品フラグとは、それぞれ
図7に示した生産工程モデルデータ6に含まれるものと共通である。
図4の能力演算処理では、生産工程モデルデータ6にそれ以外の欄の情報を追加で設定することにより、生産能力データ7を生成する。
【0059】
図4を参照すると、能力演算部1-2は、ステップS301にて、生産計画データ4と、在庫数データ5と、生産工程モデルデータ6とを取得する。
【0060】
ステップS302にて、能力演算部1-2は、生産工程モデルデータ6の全レコードについて、その成果物品番号(
図6では「品番」)と移動先とに一致する部品番号(
図8では「品番」)と製造ライン名(
図8では「ライン」)とを有する在庫数データ5のレコードに記録されている在庫数を取得する。
【0061】
続いて、能力演算部1-2は、ステップS303aとステップS303bの間にある一連の処理を生産工程モデルデータ6に存在する工程キーの個数分だけ繰り返す。
【0062】
また、能力演算部1-2は、ステップS304aとステップS304bの間にある一連の処理を生産工程モデルデータ6に存在する階層レベルの1から最大値までに対して繰り返す。つまり、階層レベルをトップダウンでたどりながら、全ての工程について各種数値を算出していく。
【0063】
また、能力演算部1-2は、ステップS305aとステップS305bの間にある一連の処理を、生産工程モデルデータ6において同一の工程キーを有し同一の階層レベルを有する全てのレコードに対して繰り返す。
【0064】
ステップS306では、能力演算部1-2は、生産工程モデルデータ6における処理対象となっているレコードに共通部品フラグ=1が設定されているか否か判定する。能力演算部1-2は、共通部品フラグ=1が設定されていなければ、生産工程モデルデータ6における処理対象のレコードの製造ライン名(
図7および
図6では「ライン」)と成果物品番号(
図7および
図6では「品番」)と移動先とをキーとして生産計画データ4を検索し、生産計画数(
図6では「計画数」)を取得する。また、ステップS306の判定で共通部品フラグ=1が設定されていればステップS308に進む。
【0065】
ステップS308では、能力演算部1-2は、現在の処理対象となっている階層レベルが1であるか否か判定する。階層レベルが1であれば、能力演算部1-2は、生産能力データ7の要求数の欄に、生産能力データ7の生産計画数の値を設定する。一方、階層レベルが1でなければ、能力演算部1-2は、生産能力データ7の要求数の欄に、当該工程の成果物品を要素物品として用いる次工程の成果物品の要求数に、次工程の成果物品を製作するのに必要となる当該工程の成果物品の所要個数(
図9では「数量」)を乗算した値を設定する。
【0066】
ステップS311では、能力演算部1-2は、生産能力データ7において、共通部品フラグが1に設定されている各レコードについて、生産工程モデルデータ6における当該レコードの成果物品の当該レコードの移動先以外の工程での要求数から在庫数を減算した値を、当該レコードの工程の成果物品の生産計画データ4における生産計画数から減算した値を、当該レコードの生産計画数に設定する。ここでは、複数の工程で共通的に用いられる成果物品については、当該レコードの工程の成果物品が当該レコードの工程の移動先以外の工程で計画通りの全ての個数が用いられると仮定した場合に残る個数すなわち最悪値を生産計画数としている。
【0067】
続いて、能力演算部1-2は、ステップS312aとステップS312bの間にある一連の処理を、生産工程モデルデータ6に存在する工程キーの分だけ繰り返し実行する。
【0068】
また、能力演算部1-2は、ステップS313aとステップS313bの間にある一連の処理を、生産工程モデルデータ6に存在する階層レベルの最大値から1までの値に対してその順に繰り返し実行する。つまり、階層レベルをボトムアップでたどりながら、各種数値を算出していく。
【0069】
また、能力演算部1-2は、ステップS314aとステップS314bの間にある一連の処理を、生産能力データ7において、処理対象となっている工程キーおよび階層レベルと一致する工程キーおよび階層レベルを有する全てのレコードに対して繰り返し実行する。
【0070】
ステップS315では、能力演算部1-2は、生産能力データ7において、処理対象のレコードの製造ライン名が移動先として設定されているレコードを検索する。
【0071】
ステップS316では、能力演算部1-2は、ステップS315の検索でレコードが見つかったか否か判定する。
【0072】
レコードが見つかった場合には、能力演算部1-2は、ステップS317にて、生産能力データ7における処理対象のレコードの製造ライン名が移動先として設定されている各レコードについて出力数を所要個数で除算した値を算出し、その得られた値のうち最小の値を、生産能力データ7における処理対象のレコードの生産可能数の欄に設定する。
【0073】
一方、ステップS315の検索でレコードが見つからなかった場合には、能力演算部1-2は、ステップS318にて、生産能力データ7の処理対象となっているレコードの生産計画数の値をそのままそのレコードの生産可能数の欄に設定する。
【0074】
ステップS319では、能力演算部1-2は、生産能力データ7の処理対象になっているレコードの生産予定数の欄に、そのレコードの生産計画数と生産可能数のうちいずれか小さい方の値を設定する。
【0075】
ステップS320では、能力演算部1-2は、生産能力データ7の処理対象になっているレコードの生産余力数の欄に、そのレコードの生産可能数から生産予定数を減算した値を設定する。
【0076】
ステップS321では、能力演算部1-2は、生産能力データ7の処理対象になっているレコードの出力数の欄に、そのレコードの生産予定数と在庫数の和を設定する。
【0077】
ステップS322では、能力演算部1-2は、生産能力データ7の処理対象になっているレコードの不足数の欄に、そのレコードの要求数から出力数を減算した値を設定する。
【0078】
ステップS323では、能力演算部1-2は、上述した処理により生産工程モデルデータ6に情報を追加することにより得られた生産能力データ7を記録する。
次に、図表示処理について説明する。
【0079】
図10は、図表示処理のフローチャートである。
図11は、図表示処理により表示される画面の一例を示す図である。
【0080】
図11の画面には、複数のノードオブジェクト81と複数のフローオブジェクト82が描かれている。ノードオブジェクト81は、工程を表す画像オブジェクトである。ノードオブジェクト81には、当該工程の在庫数を高さで表す矩形領域と、当該工程の生産可能数を高さで表す矩形領域と、当該工程の生産予定数を高さで表す矩形領域と、当該工程の生産可能数を高さで表す矩形領域とで構成されている。フローオブジェクト82は、工程から工程へ物品を提供する流れを表す帯状の画像オブジェクトである。フローオブジェクト82の高さは、工程間で提供される物品の個数を表している。
【0081】
図10を参照すると、図表示部2-1は、ステップS401にて、生産能力データ7を取得する。
【0082】
ステップS402では、図表示部2-1は、生産能力データ7における階層レベルを横軸に、階層レベル毎のレコード数を縦軸に取り、各工程のノードオブジェクト81を描画する位置を決定する。
【0083】
更に、図表示部2-1は、生産能力データ7に含まれているレコードを、工程キー、階層レベル、および子部品番号によってソートする。生産能力データ7のレコードは、工程キーの値が小さい順に、同じ工程キーを有する場合には階層レベルの値が小さい順に、同じ階層レベルを有する場合には子部品番号の値が小さい順に整列する。図表示部2-1は、ソートされた順番で全てのレコードに対してステップS403aとステップS403bの間にある一連の処理を実行する。
【0084】
ステップS404では、図表示部2-1は、生産能力データ7から、処理対象となっているレコードの工程の成果物品の在庫数、生産可能数、生産計画数、および生産予定数を取得し、それらの数値を基にノードオブジェクト81を生成し、それらノードオブジェクト81を画面にマッピングする。このとき、図表示部2-1は、当該工程の成果物品の在庫数、生産可能数、生産計画数、および生産予定数の各数値を、次工程にて成果物品を製作するための要素物品として用いる当該工程の成果物品の所要個数で除算し、得られた値に基づき、各数値に対応する矩形領域の相対的な高さを決める。
【0085】
図11における囲み破線92で囲われた部分に示されているように、当該工程の成果物品の在庫数、生産可能数、生産計画数、および生産予定数の各数値により矩形領域の相対的な高さを決めているので、各矩形領域が棒グラフとなり、各数値の関係を容易に視認可能にしている。
【0086】
また、このとき、当該工程の成果物品の各数値により矩形領域の相対的な高さ決めるのではなく、その各数値を、次工程の成果物品に用いられる所要個数で除算した値により矩形領域の相対的な高さを決めるので、工程間の物品の供給の状況を容易に視認可能となっている。
【0087】
また、図表示部2-1は、画面の横軸に右から左に向かう方向に階層レベルの昇順で配置し、画面の縦軸に上から下に向かう方向に子部品番号の昇順で配置する。
【0088】
ステップS405では、図表示部2-1は、処理対象になっているレコードの工程の生産予定数が、要求数から在庫数を減算した値よりも小さいか否か判定する。生産予定数が、要求数から在庫数を減算した値よりも小さければ、図表示部2-1は、ステップS406にて、当該ノードオブジェクトの生産予定数の矩形領域をボトルネックとして強調表示する。
【0089】
強調表示は、例えば、当該領域を他の領域と区別可能な色で表示することにしてもよい。あるいは、当該領域を、太い囲み線で囲むことにしてもよい。あるいは、当該領域を、他の領域と異なる色の囲み線で囲むことにしてもよい。あるいは、当該領域を、第1の色と第2の色を交互に切り替える点滅表示としてもよい。あるいは、当該領域を表す文字列を他の領域の文字列よりも大きなフォントで表示することにしてもよい。
【0090】
なお、
図11では、矩形領域の強調表示はひし形グリッドのハッチングで描かれている。
図11において囲み破線94で囲われた部分には、生産計画数の矩形領域と生産予定数の矩形領域がボトルネックとして強調表示されたノードオブジェクト81が示されている。
【0091】
ステップS407では、図表示部2-1は、処理対象になっているレコードの工程の生産計画数が、要求数から在庫数を減算した値よりも小さいか否か判定する。生産計画数が、要求数から在庫数を減算した値よりも小さければ、図表示部2-1は、ステップS408にて、当該ノードオブジェクトの生産計画数の矩形領域をボトルネックとして強調表示する。
【0092】
ステップS409にて、図表示部2-1は、処理対象になっているレコードの工程の生産可能数が生産計画数よりも小さいか否か判定する。生産可能数が生産計画数よりも小さければ、図表示部2-1は、ステップS410にて、当該ノードオブジェクトの生産可能数の矩形領域をボトルネックとして強調表示する。
【0093】
ステップS411にて、図表示部2-1は、処理対象になっているレコードの工程の生産可能数が、要求数から在庫数を減算した値よりも小さいか否か判定する。生産可能数が、要求数から在庫数を減算した値よりも小さければ、図表示部2-1は、上記ステップS410を実行する。
【0094】
ステップS412にて、図表示部2-1は、処理対象になっているレコードの工程の生産予定数の矩形領域が強調表示になっているか否か判定する。
【0095】
生産予定数の矩形領域が強調表示になっていれば、図表示部2-1は、ステップS413にて、当該工程のノードオブジェクトと当該工程の移動先となっている工程のノードオブジェクトとをつなぐ3次ベジェ曲線による帯状の画像オブジェクトであるフローオブジェクト82を生成し、ボトルネックとして強調表示する。
【0096】
なお、
図11では、フローオブジェクト82の強調表示は、横ストライプのハッチングにより示されている。
図11において囲み破線95で示された部分には、成果物品の移動先である次工程の生産計画数を満たさない工程からのフローオブジェクト82が強調表示されている様子が示されている。これにより、どの工程から供給されるどの部品が不足しているかを容易に確認することができる。
【0097】
また、このとき、フローオブジェクト82の高さは、当該工程の出力数を表す。すなわち、フローオブジェクト82の高さは、当該工程のノードオブジェクト81における在庫数の矩形領域の高さと生産予定数の矩形領域の高さを足し合わせた高さとなる。
【0098】
一方、ステップS412の判定で生産予定数の矩形領域が強調表示になっていなければ、図表示部2-1は、ステップS414にて、当該工程のノードオブジェクト81と当該工程の移動先となっている工程のノードオブジェクト81とをつなぐ3次ベジェ曲線による帯状の画像オブジェクトであるフローオブジェクト82を生成し、半透明表示する。1つのノードオブジェクト81に複数のフローオブジェクト82が接続される場合、それらのフローオブジェクト82が重なり合うが、半透明表示により各フローオブジェクト82を視認可能となる。
図11の囲み破線91で示された部分を見ると、半透明表示により2つのフローオブジェクトの高さが視認可能になっている。
【0099】
なお、1つの工程に複数の前段工程から同じ部品が提供される場合には、それら前段工程からのフローオブジェクト82の曲線は重なり合うのではなく、
図11の囲み破線93で囲われた部分にあるように、複数のフローオブジェクト82は互いに接するように配置される。
【0100】
ステップS415では、図表示部2-1は、各ノードオブジェクト81の近傍あるいはフローオブジェクト82上に、当該工程の生産計画数と、在庫数と、生産予定数と、出力数と、不足数とのそれぞれの数値を描画する。
【0101】
図11では、当該工程の生産計画数、在庫数、生産予定数、出力数はその数値が描画され、不足数は、かっこ内のマイナス付き数値として描画されている。
【0102】
なお、
図11に示した画面は一例であり、これに限定されることはない。
図11には、生産計画数と、在庫数と、生産予定数と、出力数と、不足数とのそれぞれの数値がノードオブジェクト81の近傍あるいはフローオブジェクト82上に描画されているが、これとは異なる画面表示であってもよい。また、画面に数値を表示しないことにしてもよい。また、通常は画面上に数値が表示されておらず、マウスクリックやマウスオン等によりある箇所が指定されると、その箇所の数値を表示するものであってもよい。数値を表示する場合、各工程における要素物品や成果物品の個数あるいはその過不足が視覚的に認識できればよく、表示項目、表示位置、および表示形式は特に限定されない。例えば、ノードオブジェクト81の近傍に、在庫数、生産可能数、生産計画数、生産予定数といった項目名とそれらの数値とを一覧にまとめて表示することにしてもよい。
【0103】
図12は、図表示処理により表示される画面の他の例を示す図である。
図12の例では、
図11の例と異なり、各工程の要素物品や成果物品の個数を示す数値は表示されていない。図表示部2-1は、
図12に示したように、要素物品や成果物品の個数を示す数値を含まない画面を表示してもよい。また、図表示部2-1は、
図11の画面と
図12の画面を切り替え可能に表示してもよい。また、図表示部2-1は、
図12に示したような画面を表示し、マウスクリックやマウスオンにより指定された工程の数値を表示することにしてもよい。
【0104】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0105】
また、上述した実施形態には以下に示す各事項が含まれている。ただし、実施形態に含まれる事項が以下に示すものに限定されるものではない。
(事項1)
【0106】
要素物品を用いて成果物品を製作する複数の工程によって製品を生産する状況を可視化する生産状況可視化システムは、前記複数の工程のそれぞれについて、当該工程の成果物品を製作するのに必要な要素物品およびその個数を表す所要要素物品および所要要素物品個数と、当該工程で製作された前記成果物品をどの工程に提供するかを表す移動先とを知得可能にする生産工程モデル情報を作成する生産工程モデル生成部と、前記複数の工程のそれぞれで所定の単位時間に製作することが計画されている成果物品の個数である生産計画数を示す計画数情報と、前記工程で製作され前記移動先にて用いられる前の状態にある成果物品の在庫数を示す在庫数情報と、を取得し、前記複数の工程について、当該工程に提供される当該工程の要素物品の個数に基づき、当該工程で当該工程の成果物品を製作できる最大個数を示す生産可能数と前記生産計画数とのいずれか小さい方の値を生産予定数とし、前記生産予定数と前記在庫数の和を当該工程が前記移動先へ提供する成果物品の個数を示す出力数として特定する能力演算部と、前記複数の工程のそれぞれについて、当該工程の出力数に相当する高さを有する部分と当該工程の在庫数と生産可能数の和に相当する高さを有する部分とを含む画像オブジェクトであるノードオブジェクトを生成し、当該工程の前記出力数に相当する高さで当該工程のノードオブジェクトと第1端部が接続し、当該工程の前記出力数が当該工程の成果物品を要素物品とする次工程にて何個の成果物品を製作する分であるかに相当する高さで、前記次工程のノードオブジェクトに第2端部が接続する帯状の画像オブジェクトであるフローオブジェクトを生成し、前記ノードオブジェクトと前記フローオブジェクトを表示装置に表示させる表示処理部と、を有する。そのため、工程間の物品供給がノードオブジェクトとフローオブジェクトにより表示されるので、工程間の物品の供給の状況を視認可能になる。
(事項2)
【0107】
上記事項1において、前記ノードオブジェクトは、前記ノードオブジェクトの横方向全体にわたる横幅と前記在庫数に相当する高さを有する矩形の在庫数矩形領域と、前記生産可能数に相当する高さを有する矩形の生産可能数矩形領域と、前記生産計画数に相当する高さを有する矩形の生産予定数矩形領域と、前記生産予定数に相当する高さを有する矩形の生産予定数矩形部分と、を含み、前記在庫数矩形領域と前記生産可能数矩形領域と前記生産予定数矩形部分が互いに近接して横方向に並び、かつ、前記在庫数矩形領域と前記生産可能数矩形領域と前記生産予定数矩形部分の上底辺または下底辺が前記在庫数矩形領域の下底辺または上底辺に近接し、かつ、前記在庫数矩形領域と前記生産可能数矩形領域と前記生産予定数矩形部分の横幅の合計が前記在庫数矩形領域の横幅と一致している。これにより、生産計画数、生産予定数、生産可能数、在庫数の関係が容易に視認可能になる。
(事項3)
【0108】
上記事項2において、前記表示処理部は、前記生産可能数が前記生産計画数より少ない場合に前記生産可能数矩形領域を強調表示する。これにより、ボトルネックの生産可能数が強調表示により視認容易となる。
(事項4)
【0109】
上記事項2において、前記能力演算部は、前記製品を成果物品とする工程をルート工程とし、前記複数の工程のそれぞれについて、前記ルート工程において計画数の前記製品を製作できるようにするために当該工程で製作すべき成果物品の個数を、当該工程における要求数として算出し、前記表示処理部は、前記複数の工程のそれぞれについて、生産予定数が、要求数から前記在庫数を減算した値よりも小さければ、対応する生産予定数矩形領域を強調表示し、生産計画数が、前記要求数から前記在庫数を減算した値より小さければ、対応する生産計画数矩形領域を強調表示し、生産可能数が、前記要求数から前記在庫数を減算した値よりも小さければ、対応する生産可能数矩形領域を強調表示する。これにより、ボトルネックの生産可能数、生産計画数、生産予定数が強調表示により視認容易となる。
(事項5)
【0110】
上記事項4において、前記表示処理部は、前記生産予定数が前記要求数から前記在庫数を減算した値よりも小さい工程に第1端部が接続されているフローオブジェクトを強調表示する。これにより、要改善フローが強調表示により視認容易となる。
(事項6)
【0111】
上記事項5において、前記表示処理部は、在庫数の数値を在庫数矩形領域の近傍でフローオブジェクト上に表示し、生産予定数の数値を生産予定数矩形部分の近傍でフローオブジェクト上の表示し、前記フローオブジェクトを強調表示する場合、前記在庫数と前記生産予定数の和が、前記強調表示されたフローオブジェクトの第1端部が接続されている前記工程において成果物品を前記生産計画数だけ製作できる分に満たない分の数値を、生産予定数の数値の近傍にマイナス付きで表示する。これにより、生産予定数の不足分がマイナス付きの数値が表示され、容易に視認可能になる。
(事項7)
【0112】
上記事項1において、前記表示処理部は、複数のフローオブジェクトが第2端部を1つのノードオブジェクトに接続する場合に、前記複数のフローオブジェクトが重なり合う部分でそれぞれが視認可能となるような透明度で前記複数のフローオブジェクトを表示する。これにより、複数の前工程からの物品の供給が容易に視認可能になる。
(事項8)
【0113】
上記事項1において、前記複数の工程において、第1工程が第2工程の前工程となり前記第1工程の成果物品が前記第2工程へ提供されることを提供関係とし、前記能力演算部は、前記複数の工程を前記提供関係の順に辿りながら、前記複数の工程のそれぞれについて当該工程に前記前工程から提供される前記前工程の成果物の個数に基づき、当該工程で当該工程の成果物を製作することができる最大個数を示す生産可能数を算出する。
【符号の説明】
【0114】
1…生産能力演算部、1-1…生産工程モデル生成部、1-2…能力演算部、2…表示処理部、2-1…図表示部、2-2…表示装置、3…部品構成データ、4…生産計画データ、5…在庫数データ、6…生産工程モデルデータ、7…生産能力データ、81…ノードオブジェクト、82…フローオブジェクト、9…データベース、10…生産状況可視化システム