(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 3/02 20210101AFI20240516BHJP
F24C 3/08 20060101ALI20240516BHJP
A47J 37/06 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
F24C3/02 F
F24C3/08 V
F24C3/08 N
A47J37/06 366
(21)【出願番号】P 2021026519
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直行
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-199203(JP,A)
【文献】特開2003-004209(JP,A)
【文献】特表2010-516988(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0138789(US,A1)
【文献】特開2018-019942(JP,A)
【文献】特開平10-038228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/02
F24C 3/08
A47J 37/06
F23D 14/10
F23D 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫と、
グリル庫の左右側壁の外側に配置され、左右側壁に設けられた導入口を介して、左右側壁の外方からグリル庫の内方に向かって燃焼排気を噴出する左右一対のグリルバーナと、を備える加熱調理器であって、
左右一対のグリルバーナはそれぞれ、グリル庫の前後方向に長手のバーナ本体を有し、
バーナ本体は、グリル庫の内方側に前後方向に長手の炎孔部を有し、
炎孔部は、斜め上向きに燃焼排気を噴出する上向き炎孔が形成された上向き炎孔部と、斜め下向きに燃焼排気を噴出する下向き炎孔が形成された下向き炎孔部とを有し、
上向き炎孔部と下向き炎孔部とは、下向き炎孔部が上向き炎孔部の下方に配置され、且つ上向き炎孔部と下向き炎孔部とが前後方向に重ならないように配置されており、
下向き炎孔部は、前後方向に所定の間隔で複数の下向き炎孔が並設された下向き炎孔群を3群以上、前後方向に連続して有しており、
3群以上、前後方向に連続する下向き炎孔群は、隣接する下向き炎孔群間の距離が当該隣接する下向き炎孔群それぞれの下向き炎孔の間隔よりも長くなるように並設されている加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
下向き炎孔部の3群以上、前後方向に連続する下向き炎孔群はそれぞれ、前後方向に所定の間隔で並設された2~5個の下向き炎孔を有する加熱調理器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱調理器において、
バーナ本体は、前後方向に長手の扁平な形状を有し、
バーナ本体は、グリル庫の内方側に位置する内方側壁部と、グリル庫の外方側に位置し、内方側壁部と所定箇所で空隙を介して対向する外方側壁部とを有しており、
内方側壁部は、前後方向に長手で内方側に突出し、炎孔部を構成する凸条部を有し、
凸条部は、下方から斜め上内方に向かって傾斜する第1傾斜面部と、第1傾斜面部よりも上方に位置し、下方から斜め上外方に向かって傾斜する第2傾斜面部と、第1傾斜面部と第2傾斜面部とを連結する繋ぎ部とを有しており、
下向き炎孔は、第1傾斜面部に上下方向に長いスリット状に形成され、
上向き炎孔は、第2傾斜面部に上下方向に長いスリット状に形成されている加熱調理器。
【請求項4】
請求項3に記載の加熱調理器において、
繋ぎ部は、前後方向に延びる略平面部を形成するように第1傾斜面部及び第2傾斜面部とは異なる傾斜角度を有する加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル庫内を加熱するグリルバーナを備える加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
被調理物載置手段であるグリルプレートによって上下に分離されたグリル庫内の空間を加熱するため、グリル庫の左右側壁の外側に左右一対の下火バーナを配設し、これらの下火バーナの内方側端面にそれぞれ、斜め上内方に向かって開口する複数のスリット状の上向き炎孔と、斜め下内方に向かって開口する複数のスリット状の下向き炎孔とを設けることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ところで、グリルプレートを用いて加熱調理する場合、グリルプレート上に載置された被調理物の下面は、主として下火バーナから噴出する燃焼排気で加熱されるグリルプレートからの伝熱によって加熱される。そのため、下火バーナから噴出する燃焼排気を外方側から下火バーナの上下を通過して内方側に供給される二次空気によってグリル庫内の遠方まで飛ばす必要がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにグリル庫の外側に上向き炎孔及び下向き炎孔を有する下火バーナが設けられていると、下火バーナの上方からの二次空気が下方に位置する下向き炎孔に供給され難い。そのため、下向き炎孔から噴出する燃焼排気がグリルプレート下方の左右中央部まで飛び難い。また、二次空気不足により下向き炎孔に形成される火炎が肥大化して燃焼が不安定となりやすい。その結果、グリルプレートの左右中央部よりも両端部が高温に加熱されて、被調理物が不均一に加熱されるという問題がある。特に、扁平な下火バーナを立設状態で配置させると、下火バーナ自体が障壁となるため、上方からの下向き炎孔への二次空気の供給がさらに妨げられ、被調理物の加熱むらが生じやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、本発明の目的は、グリル庫内に収容された被調理物をバランスよく加熱調理可能な加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
グリル庫と、
グリル庫の左右側壁の外側に配置され、左右側壁に設けられた導入口を介して、左右側壁の外方からグリル庫の内方に向かって燃焼排気を噴出する左右一対のグリルバーナと、を備える加熱調理器であって、
左右一対のグリルバーナはそれぞれ、グリル庫の前後方向に長手のバーナ本体を有し、
バーナ本体は、グリル庫の内方側に前後方向に長手の炎孔部を有し、
炎孔部は、斜め上向きに燃焼排気を噴出する上向き炎孔が形成された上向き炎孔部と、斜め下向きに燃焼排気を噴出する下向き炎孔が形成された下向き炎孔部とを有し、
上向き炎孔部と下向き炎孔部とは、下向き炎孔部が上向き炎孔部の下方に配置され、且つ上向き炎孔部と下向き炎孔部とが前後方向に重ならないように配置されており、
下向き炎孔部は、前後方向に所定の間隔で複数の下向き炎孔が並設された下向き炎孔群を3群以上、前後方向に連続して有しており、
3群以上、前後方向に連続する下向き炎孔群は、隣接する下向き炎孔群間の距離が当該隣接する下向き炎孔群それぞれの下向き炎孔の間隔よりも長くなるように並設されている加熱調理器が提供される。
【0008】
上記加熱調理器によれば、グリルバーナの上向き炎孔部と下向き炎孔部とは、下向き炎孔部が上向き炎孔部の下方に配置され、上向き炎孔部と下向き炎孔部とが前後方向に重ならないように配置されており、下向き炎孔部は、前後方向に所定の間隔で複数の下向き炎孔が並設された下向き炎孔群を3群以上、前後方向に連続して有しているから、グリルバーナの上方から下向き炎孔部が形成されている領域に向かう二次空気の侵入経路を確保することができ、一定のまとまった量の二次空気を上方から下向き炎孔部に供給することができる。従って、下向き炎孔から噴出する燃焼排気をグリルプレート下方の左右中央部まで飛ばすことができる。また、上記グリルバーナによれば、3群以上、前後方向に連続する下向き炎孔群は、隣接する下向き炎孔群間の距離が当該隣接する下向き炎孔群それぞれの下向き炎孔の間隔よりも長くなるように並設されているから、隣接する下向き炎孔群間での火炎の干渉が抑えられ、安定した火炎を形成することができる。これにより、グリルプレートを均一に加熱することができ、被調理物をバランスよく加熱することができる。
【0009】
好ましくは、上記加熱調理器において、
下向き炎孔部の3群以上、前後方向に連続する下向き炎孔群はそれぞれ、前後方向に所定の間隔で並設された2~5個の下向き炎孔を有する。
【0010】
上記加熱調理器によれば、3群以上、前後方向に連続する下向き炎孔群はそれぞれ、一定の幅を有するから、グリルバーナの上方から下向き炎孔部が形成されている領域に向かう二次空気の侵入経路を確実に確保することができる。また、各下向き炎孔群における隣接する下向き炎孔の火炎の干渉を抑えることができるから、安定した火炎を形成することができる。
【0011】
好ましくは、上記加熱調理器において、
バーナ本体は、前後方向に長手の扁平な形状を有し、
バーナ本体は、グリル庫の内方側に位置する内方側壁部と、グリル庫の外方側に位置し、内方側壁部と所定箇所で空隙を介して対向する外方側壁部とを有しており、
内方側壁部は、前後方向に長手で内方側に突出し、炎孔部を構成する凸条部を有し、
凸条部は、下方から斜め上内方に向かって傾斜する第1傾斜面部と、第1傾斜面部よりも上方に位置し、下方から斜め上外方に向かって傾斜する第2傾斜面部と、第1傾斜面部と第2傾斜面部とを連結する繋ぎ部とを有しており、
下向き炎孔は、第1傾斜面部に上下方向に長いスリット状に形成され、
上向き炎孔は、第2傾斜面部に上下方向に長いスリット状に形成される。
【0012】
上記加熱調理器によれば、スリット状の下向き炎孔に形成される火炎をより水平方向に寝かせることができ、下向き炎孔から噴出する燃焼排気をさらにグリルプレート下方の左右中央部まで飛ばすことができる。また、上向き炎孔の火炎と下向き炎孔の火炎との干渉も抑えられるから、炎孔部に均一な燃焼分布を形成することができる。
【0013】
好ましくは、上記加熱調理器において、
繋ぎ部は、前後方向に延びる略平面部を形成するように第1傾斜面部及び第2傾斜面部とは異なる傾斜角度を有する。
【0014】
上記加熱調理器によれば、凸条部の内方側への突出量を大きくすることなく、第1傾斜面部及び第2傾斜面部の面積を確保することができるから、第1傾斜面部及び第2傾斜面部の傾斜角度を小さくすることができ、上向き炎孔及び下向き炎孔から噴出する燃焼排気を効率的に上下に分流させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、グリル庫の左右側壁の外側に配設され、左右側壁の外側からグリル庫の内方に向かって燃焼排気を噴出するグリルバーナを用いて、バランスよく被調理物を加熱調理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の一例を示す概略縦断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の一例を示す概略横断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器に用いられる下火バーナの一例を示す概略斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器に用いられる下火バーナの炎孔パターンの一例を示す要部概略平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器に用いられる下火バーナ周辺を示す要部概略斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器に用いられる下火バーナの炎孔パターンの他の一例を示す要部概略平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器に用いられる下火バーナの炎孔パターンのさらに他の一例を示す要部概略平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器に用いられる下火バーナの他の一例を示す要部概略斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器に用いられる下火バーナのさらに他の一例を示す要部概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、ガスコンロに適用した本実施の形態に係る加熱調理器について具体的に説明する。
図1は、本実施の形態に係るガスコンロを示す概略斜視図である。
図1に示すように、加熱調理器は、天板9の上面に設けられた複数のコンロバーナ1と、被調理物を載置する被調理物載置手段であるグリルプレート80を用いた調理を行うためのグリル2とを備える。なお、図示しないが、グリルプレート80の代わりに焼網を用いてもよい。
【0018】
図1及び
図2に示すように、グリル2は、コンロ本体10の内部に搭載され、前方に開口する矩形箱状のグリル庫20と、グリル庫20の前面開口部100を前方から被閉するグリル扉5を備える。グリル扉5の後面下方には、グリル庫20内へ向かって連結板210が延設されており、連結板210にグリルプレート80を下方から支持する支持枠220が連結されている。これにより、グリル扉5を手前に引くことで、支持枠220とともにグリルプレート80がグリル庫20の前方に引き出され、グリル扉5を後方に押すことで、支持枠220とともにグリルプレート80がグリル庫20内に収容されるように構成されている。なお、本明細書では、グリル扉5が設けられている面を正面とし、グリル扉5側から見たときのグリル扉5とグリル庫20の奥側とが対向する方向を前後方向、グリル庫20の幅方向を左右方向、グリル庫20の高さ方向を上下方向という。
【0019】
グリル扉5の左側に形成された操作部には、後述する上下火バーナ56,55の点・消火と火力調節機能を兼備したグリル用スイッチ41と、その下方のカンガルー式の操作ユニット40とが設けられている。操作ユニット40は、使用者が操作部の下方の前面パネル401を押し操作することにより、手前に傾斜して使用者が操作可能に構成されている。また、使用者が前面パネル401を閉じると、操作ユニット40がコンロ本体10内に格納される。
【0020】
図2及び
図3に示すように、グリル庫20の上壁24には、被調理物を上方から加熱するための上火バーナ56が設けられている。上火バーナ56は、例えば、下面がセラミック製の板体で構成された表面燃焼式のセラミックバーナであり、上記板体の下面に炎孔56aが開設されている。従って、混合管(図示せず)から燃料ガスと一次空気とが供給されて、上火バーナ56が点火されると、板体の下面に燃料ガスの火炎が形成され、その輻射熱や燃焼排気がグリル庫20内の下方に向けて放射される。図示しないが、上火バーナ56の炎孔56aには、燃料ガスを点火させるための点火電極の電極部と、火炎を検知するための熱電対の炎検出部とが臨んでいる。
【0021】
グリル庫20の左右側壁21,22の下方領域には、後述する下火バーナ55の炎孔部550が外方から臨む前後方向に長い導入口201,202が開口されている。グリル庫20の左右側壁21,22の外側には、左右側壁21,22に沿って前後方向に延びる左右一対の下火バーナ55が配設されている。従って、本実施の形態では、下火バーナ55がグリルバーナを構成する。各下火バーナ55は、前後方向に長手の扁平略矩形状のバーナ本体500を有する。バーナ本体500は、短辺が略垂直に立設する姿勢でグリル庫20に固定されている。このように扁平な下火バーナ55を縦置き状態で配設することにより、グリル2全体の左右方向の幅を短縮することができるから、コンパクトな加熱調理器を製作することができる。また、下火バーナ55を設けるスペースを小さくできるから、小サイズのグリル2であっても、グリル庫20内でグリルプレート80を収容するための一定のスペースを確保することができる。なお、左右の下火バーナ55は、左右対称である以外は同一の構成を有するため、下火バーナ55及びその周辺の構成については、右の下火バーナ55を例に挙げて説明する。
【0022】
下火バーナ55のバーナ本体500は、例えば、所定形状に打ち抜かれた2枚の平板状の金属板にそれぞれ絞り加工またはプレス加工を施すとともに、一方の金属板に炎孔を形成するための打ち抜き加工を施し、所定箇所で2枚の金属板が空隙を介して対向するように重ね合わせて、周縁部を溶接またはかしめ加工して接合することにより製作される。従って、本実施の形態では、下火バーナ55を右側壁22の外側に設置したとき、内方側に位置する一方の金属板が、バーナ本体500の内方側壁部501を構成し、外方側に位置する他方の金属板が、バーナ本体500の外方側壁部502を構成する。なお、バーナ本体500は、所定形状に加工した一枚の金属板をバーナ本体500の上縁または下縁となる折り曲げ線で合掌状態に折り曲げることにより製作してもよい。
【0023】
図4及び
図5に示すように、内方側壁部501は、上下中央部に、後端部から前後中央部まで左右方向断面視略半円状に内方側に膨出し、前後中央部から前端部近傍まで左右方向断面視略横V字状に内方側に膨出する内方側膨出部510を有する。また、内方側壁部501は、内方側膨出部510の周縁から上下及び前方に延びる内方側フランジ部511を有する。従って、内方側膨出部510の前方側に位置する断面略横V字状に膨出する部分は、下方から斜め上内方に向かって傾斜する下傾斜面部531(第1傾斜面部)と、下傾斜面部531の上方に位置し、下方から斜め上外方に向かって傾斜する上傾斜面部532(第2傾斜面部)と、下傾斜面部531及び上傾斜面部532を繋ぐ繋ぎ部535とから構成されている。そして、下傾斜面部531及び上傾斜面部532にはそれぞれ、後述する下向き炎孔551及び上向き炎孔552が上下方向に長手のスリット状に開設されており、繋ぎ部535には、中炎孔553が上下方向に長手のスリット状に開設されている。従って、本実施の形態では、下傾斜面部531、上傾斜面部532、及び繋ぎ部535によって、炎孔部550を構成する内方側に突出する凸条部が形成されている。
【0024】
図3及び
図6に示すように、外方側壁部502は、上下中央部に、後端部から前端部近傍まで左右方向断面視略半円状に外方側に膨出する外方側膨出部520を有する。また、外方側壁部502は、外方側膨出部520の周縁から上下及び前方に延びる外方側フランジ部521を有する。これらの外方側膨出部520及び外方側フランジ部521はそれぞれ、内方側壁部501と外方側壁部502とを重ね合わせた状態で、内方側膨出部510及び内方側フランジ部511と対向する位置に形成されている。また、外方側フランジ部521は、内方側フランジ部511よりも上下及び前方に若干大きく形成されており、外方側壁部502の周縁には複数の折り曲げ片522が形成されている(
図4及び
図5参照)。従って、内方側壁部501と外方側壁部502とを重ね合わせた状態で、外方側壁部502の周縁の折り曲げ片522を内方側に折り曲げ、内方側壁部501の周縁を抱き込んでかしめ加工することにより、内方側壁部501と外方側壁部502とが一体に接合される。また、前後で隣接する折り曲げ片522間には切欠523が形成されている(
図4及び
図5参照)。これらの切欠523には、後述する電極用固定部材320及び熱電対用固定部材360の爪片330,370が係止される。
【0025】
内方側壁部501と外方側壁部502とを対向させて接合させると、内方側膨出部510と外方側膨出部520とによって内方側壁部501と外方側壁部502とが空隙を介して対向する。そして、膨出する部分以外では、内方側フランジ部511及び外方側フランジ部521が面接触し、これらの周縁は閉塞端となっている。これにより、内方側膨出部510及び外方側膨出部520によって、後端部に後方に開口するガス導入口509が形成される。
【0026】
ガス導入口509には、燃料ガスを供給するノズル(図示せず)が差し込まれる。ガス導入口509の開口面積はノズルの先端開口のそれよりも十分に大きく形成されており、ノズルから噴出される燃料ガスとともに、外部の空気が一次空気として下火バーナ55に供給される。従って、ガス導入口509からバーナ本体500内に燃料ガスが導入されると、バーナ本体500内には、ガス導入口509から供給される混合気を、炎孔部550に導く略直線状のガス通路が画成される。
【0027】
下傾斜面部531には、複数の下向き炎孔551を有する2つの下向き炎孔部560,570が形成されている。また、上傾斜面部532には、複数の上向き炎孔552を有する2つの上向き炎孔部580が形成されている。2つの下向き炎孔部560,570と2つの上向き炎孔部580とは、上下及び前後にずれて交互に配置されている。また、上向き炎孔部580と下向き炎孔部560,570との間の繋ぎ部535にはそれぞれ、中炎孔553を有する保炎部590が形成されている。すなわち、本実施の形態では、炎孔部550は、上傾斜面部532の後端部と前端部近傍とに離間して形成された2つの上向き炎孔部580と、2つの上向き炎孔部580の間の下傾斜面部531の前後中央部に形成された下向き炎孔部560と、下傾斜面部531の前端部に形成された補助下向き炎孔部570(以下、これらを総称する場合、単に「下向き炎孔部560等」という)と、前後方向における上向き炎孔部580と下向き炎孔部560等との間に形成された保炎部590とを有する。なお、補助下向き炎孔部570は、後述するように炎孔部550の前端部近傍の中炎孔553で炎検出を行う場合、好ましく形成される。
【0028】
下向き炎孔部560は、複数(ここでは、2個または3個)の下向き炎孔551が所定の間隔Pdで並設された複数(ここでは、7群)の下向き炎孔群561を有する。1つの下向き炎孔群561に含まれる隣接する下向き炎孔551の間隔Pdは、他の下向き炎孔群561に含まれる隣接する下向き炎孔551のそれと略同一に形成されている。また、下向き炎孔部560における前後方向で隣接する下向き炎孔群561間の距離Gdは、略同一に設定されている。また、前後方向で隣接する下向き炎孔群561間の距離Gdは、隣接する下向き炎孔群561のそれぞれに含まれる下向き炎孔551の間隔Pdよりも大きく設定されている。これにより、隣接する下向き炎孔群561間での火炎の干渉を抑えることができ、火炎の肥大化を防止することができる。また、補助下向き炎孔部570は、複数(ここでは、2個)の下向き炎孔551が所定の間隔Pdで並設された1つの下向き炎孔群561を有する。
【0029】
2つの上向き炎孔部580はそれぞれ、複数(ここでは、2個または3個)の上向き炎孔552が所定の間隔Puで並設された複数(ここでは、3群)の上向き炎孔群581を有する。1つの上向き炎孔群581に含まれる隣接する上向き炎孔552の間隔Puは、他の上向き炎孔群581に含まれる隣接する上向き炎孔552のそれと略同一に設定されている。また、1つの上向き炎孔部580における前後方向で隣接する上向き炎孔群581間の距離Guは、略同一に設定されている。また、前後方向で隣接する上向き炎孔群581間の距離Guは、隣接する上向き炎孔群581のそれぞれに含まれる隣接する上向き炎孔552の間隔Puよりも大きく設定されている。これにより、隣接する上向き炎孔群581間での火炎の干渉を抑えることができ、火炎の肥大化を防止することができる。
【0030】
1つの下向き炎孔群561に含まれる下向き炎孔551の数及び1つの上向き炎孔群581に含まれる上向き炎孔552の数はそれぞれ、好ましくは、2個以上、5個以下であり、より好ましくは、2個以上、4個以下である。炎孔数が2個以上であれば、前後方向で1つのまとまった大きさの火炎を形成することができる。また、炎孔数が5個以下であれば、1つの下向き炎孔群561及び1つの上向き炎孔群581における火炎の干渉を抑えることができ、火炎の肥大化を防止することができる。
【0031】
各下向き炎孔群561における隣接する下向き炎孔551の間隔Pd及び各上向き炎孔群581における隣接する上向き炎孔552の間隔Puの大きさは、グリル庫20の大きさやそれに応じた下火バーナ55の大きさなどによって適宜、設定することができるが、火炎の干渉と火移り性の両立を考慮すれば、下向き炎孔群561及び上向き炎孔群581いずれでも、好ましくは、1mm以上、1.5mm以下である。同様の理由から、隣接する下向き炎孔群561間の距離Gd及び隣接する上向き炎孔群581間の距離Guはいずれも、好ましくは、2.8mm以上、3.2mm以下である。なお、隣接する下向き炎孔551の間隔Pd及び隣接する下向き炎孔群561間の距離Gdはそれぞれ、上向き炎孔部580におけるそれらと同一でも、異なってもよい。下向き炎孔551及び上向き炎孔552の各スリットの上下方向の長辺の長さは、好ましくは、2.8mm以上、3.5mm以下であり、前後方向の短辺の長さは、好ましくは、0.5mm以上、0.7mm以下であり、長辺/短辺比は、好ましくは、4以上、7以下である。
【0032】
下向き炎孔部560に含まれる下向き炎孔群561の数は、好ましくは、3群以上、10群以下であり、より好ましくは、3群以上、7群以下である。炎孔群の数が3群以上であれば、炎孔部550に一定のまとまった下向きの火炎を形成することができる。また、炎孔群の数が10群以下であれば、下向き炎孔部560の隣接する下向き炎孔群561間の火炎の干渉を抑えることができ、火炎の肥大化を防止することができる。また、炎孔部550からより下向きの燃焼排気をグリルプレート80下方に噴出させるため、好ましくは、下向き炎孔部560における下向き炎孔群561は、隣接する上向き炎孔部580における上向き炎孔群581よりも多く形成される。補助下向き炎孔部570を設ける場合、補助下向き炎孔部570に含まれる下向き炎孔群561の数は、好ましくは、1群以上、2群以下である。
【0033】
1つの上向き炎孔部580に含まれる上向き炎孔群581の数は、好ましくは、1群以上、5群以下であり、より好ましくは、2群以上、3群以下である。炎孔群の数が1群以上であれば、炎孔部550に一定のまとまった上向きの火炎を形成することができる。また、炎孔群の数が5群以下であれば、上向き炎孔部580の隣接する上向き炎孔群581間の火炎の干渉を抑えることができ、火炎の肥大化を防止することができる。
【0034】
3つの保炎部590はそれぞれ、好ましくは、1個以上、3個以下の中炎孔553を有する。隣接する中炎孔553と下向き炎孔551または上向き炎孔552との間隔は、隣接する下向き炎孔551の間隔Pdまたは隣接する隣接する上向き炎孔552の間隔Puと略同一に設定されている。これにより、円滑に上向き炎孔部580と下向き炎孔部560等との間で火移りさせることができる。各保炎部590が2個以上の中炎孔553を有する場合、隣接する中炎孔553の間隔は、上向き炎孔552または下向き炎孔551のそれと同一または異なってもよい。中炎孔553のスリットの上下方向の長辺の長さは、好ましくは、2.5mm以上、3mm以下であり、前後方向の短辺の長さは、好ましくは、0.5mm以上、0.7mm以下であり、長辺/短辺比は、好ましくは、3.5以上、6以下である。
【0035】
中炎孔553の上端は、繋ぎ部535を越えて上傾斜面部532の下端まで延びており、中炎孔553の下端は、繋ぎ部535を越えて下傾斜面部531の上端まで延びている。また、炎孔部550の前後中央部において、上向き炎孔部580と下向き炎孔部560との境界に位置する上向き炎孔552は、上傾斜面部532の下端を越えて繋ぎ部535まで延びており、上向き炎孔部580と下向き炎孔部560との境界に位置する下向き炎孔551は、下傾斜面部531の上端を越えて繋ぎ部535まで延びている。このため、上向き炎孔部580と下向き炎孔部560との境界に位置する上向き炎孔552に形成される火炎及び下向き炎孔551に形成される火炎はそれぞれ、隣接する中炎孔553に形成される火炎と前方視で重なるように形成される。
【0036】
一方、炎孔部550の前端部において、上向き炎孔部580と補助下向き炎孔部570との境界に位置する上向き炎孔552は、下端が中炎孔553の上端よりは下方であるが、下端が繋ぎ部535よりも上方に位置するように形成されている。また、上向き炎孔部580と補助下向き炎孔部570との境界に位置する下向き炎孔551は、上端が中炎孔553の下端よりは上方であるが、上端が繋ぎ部535よりも下方に位置するように形成されている。このため、炎孔部550の前端部における上向き炎孔552の下端と中炎孔553の上端との上下方向の重なり及び下向き炎孔551の上端と中炎孔553の下端との上下方向の重なりはそれぞれ、炎孔部550の前後中央部におけるそれらよりも小さく設定されている。これにより、上向き炎孔部580と補助下向き炎孔部570との境界に位置する上向き炎孔552に形成される火炎及び下向き炎孔551に形成される火炎はそれぞれ、隣接する中炎孔553に形成される火炎と前方視でより重なりが少なくなるように形成される。
【0037】
下火バーナ55の後端側には点火電極300が設置されている。点火電極300の先端部である電極部301は、炎孔部550の後端近傍に位置する上向き炎孔部580の1つの上向き炎孔(点火用炎孔)552に臨んでいる。点火電極300の電極本体部302は、電極部301から斜め上後方に向かって延びている。これにより、内方側から見たとき、電極本体部302は下向き炎孔551だけでなく、上向き炎孔552にも重ならないから、電極本体部302が火炎に炙られず、点火電極300の劣化を防止することができる。点火用炎孔である上向き炎孔552から吹き出す混合気に点火電極300から火花放電を生じさせると、混合気が点火し、点火によって生じた火炎が他の炎孔551,552,553から吹き出す混合気に火移りすることで、下火バーナ55が燃焼状態となる。
【0038】
点火電極300は、右側壁22の導入口202の周縁に設けられた設置部(図示せず)にネジ固定する電極用固定部材320に取り付けられている。電極用固定部材320は、例えば、金属板を所定形状に曲げ加工することにより製作される。電極用固定部材320は、左右方向断面視略コ字状で、前後方向に延びる制限部321と、制限部321の内方側上端部から上方に屈曲して延びる上添設片322と、制限部321の内方側下端部から下方に屈曲して延びる下添設片323と、上添設片322の上縁の前後中央部から斜め上外方に向かって延びる取付片324と、上添設片322の上縁の後端部から内方側に屈曲し、さらに上方に向かって屈曲して延びる略L字状の固定片325とを有する。
【0039】
電極用固定部材320は、制限部321が外方側壁部502の外方側膨出部520の後端側の一部を外方側から所定距離、離間して覆うように配設される。上添設片322及び下添設片323は、外方側壁部502の外方側フランジ部521の外面に略当接しており、上添設片322の上縁及び下添設片323の下縁にはそれぞれ、内方側に向かって折り曲げられる複数の爪片330が設けられている。これらの爪片330は、既述した外方側壁部502の周縁の折り曲げ片522間に設けられた切欠523に対応する位置に設けられている。従って、爪片330を切欠523で内方側に折り曲げ、外方側壁部502及び内方側壁部501の上下周縁を抱き込んでかしめ加工することによって、電極用固定部材320が下火バーナ55に一体に接合される。取付片324には、棒状の電極本体部302が嵌合する嵌合部326が設けられている。固定片325には、電極用固定部材320を設置部にネジ固定するためのネジ挿通孔が開口している。
【0040】
下火バーナ55の前端側には、炎検出手段である熱電対340が設置されている。熱電対340の先端部である炎検出部341は、炎孔部550の前端部近傍に位置する1つの中炎孔(TC炎孔)553に臨んでいる。熱電対340の支持本体部342は、炎検出部341から下向き炎孔551が形成されていない下傾斜面部531に対向する姿勢で斜め下後方に向かって延びている。従って、熱電対340の支持本体部342は、内方側から見たとき、上向き炎孔552及び下向き炎孔551のいずれとも重ならないから、支持本体部342が火炎に炙られず、誤検知を防止することができる。なお、熱電対340は、支持本体部342が炎検出部341から上向き炎孔552が形成されていない上傾斜面部532に対向する姿勢で斜め上後方に向かって延びるように配設されてもよい。
【0041】
既述したように、中炎孔553は、略水平に混合気を噴出する繋ぎ部535に上下方向に長いスリット状に形成されているから、中炎孔553に形成される火炎を短炎化することができる。また、中炎孔553の前後に隣接して、上向き炎孔552または下向き炎孔551が形成されており、中炎孔553は、中炎孔553の上端が前後方向で隣接する上向き炎孔552の下端よりも上方に位置し、中炎孔553の下端が前後方向で隣接する下向き炎孔551の上端よりも下方に位置している。このため、中炎孔553に形成される火炎と上向き炎孔552及び下向き炎孔551に形成される火炎は前方視で重なるように形成される。これにより、中炎孔553の上端及び下端が上向き炎孔552及び下向き炎孔551の火炎によって加熱されるから、中炎孔553に形成される火炎のリフトが防止され、保炎性を向上させることができる。
【0042】
また、熱電対340の炎検出部341が臨む中炎孔553の上端及び下端それぞれと、それに隣接する上向き炎孔552の下端及び下向き炎孔551の上端との上下方向の重なりは、炎孔部550の他の中炎孔553の上端及び下端のそれぞれと、それに隣接する上向き炎孔552の下端及び下向き炎孔551の上端との上下方向の重なりよりも小さく設定されている。このため、熱電対340の炎検出部341が臨む中炎孔553に形成される火炎と上向き炎孔552及び下向き炎孔551に形成される火炎との干渉がより抑えられる。このように、熱電対340の炎検出部341が臨む中炎孔553と上向き炎孔552及び下向き炎孔551との上下方向の重なりをより小さく設定することにより、火炎のリフトを防止しながら、中炎孔553に形成される火炎の酸欠を防止でき、TC炎孔での短炎化と、上向き炎孔部580と下向き炎孔部560との間の火移り性とを両立させることができる。また、中炎孔553に熱電対340の炎検出部341をより近づけることができ、グリル2の幅を短縮化することができる。
【0043】
熱電対340は、右側壁22の導入口202の周縁に設けられた設置部にネジ固定する熱電対用固定部材360に取り付けられている。熱電対用固定部材360は、例えば、金属板を所定形状に曲げ加工することにより製作される。熱電対用固定部材360は、左右方向断面視略コ字状で、前後方向に延びる制限部361と、制限部361の内方側上端部から上方に屈曲して延びる上添設片362と、制限部361の内方側下端部から下方に屈曲して延びる下添設片363と、下添設片363の下縁の前後中央部から内方側に向かって折り曲げられ、さらに下方に向かって屈曲して延びる取付片364と、制限部361の前端部から内方側に屈曲し、さらに前方に向かって屈曲して延びる略L字状の固定片365とを有する。
【0044】
熱電対用固定部材360の制限部361、上添設片362、及び下添設片363はそれぞれ、電極用固定部材320のそれらと同様の構成を有している。このため、熱電対用固定部材360の上添設片362の上縁及び下添設片363の下縁に設けられた爪片370を切欠523で内方側に折り曲げ、外方側壁部502及び内方側壁部501の上下周縁を抱き込んでかしめ加工することによって、熱電対用固定部材360が下火バーナ55に一体に接合される。取付片364は、下添設片363の下縁から内方側に向かって水平に延びる第1取付片と、第1取付片の内方端から下方に向かって屈曲して延びる第2取付片とを有する。第1取付片には、熱電対340の支持本体部342を挿通させる挿通孔が設けられており、第2取付片には、支持本体部342を第2取付片に押し付ける係止片371を係止させるための係止用切欠が設けられている。固定片365には、熱電対用固定部材360を設置部にネジ固定するためのネジ挿通孔が開口している。
【0045】
電極用固定部材320と熱電対用固定部材360とは、電極用固定部材320と熱電対用固定部材360とが下火バーナ55に接合されたとき、これらの制限部321,361がそれぞれ上向き炎孔部580の外方側に位置し、下向き炎孔部560と重ならないように、前後方向で所定距離、離間して設けられている。このため、前後方向における電極用固定部材320と熱電対用固定部材360との間の隙間は、下向き炎孔部560の外方側に位置する。
【0046】
図1~
図2に戻って、グリル庫20の後方上部には、排気通路31と連通する排気用開口11が開設されている。グリル庫20の後壁25には、排気ダクト30が連設されており、排気ダクト30が排気通路31を構成している。
【0047】
グリルプレート80は、伝熱性に優れるアルミニウム製の成形体または鋳造体からなり、上面にはフッ素樹脂などにより表面処理加工が施されている。グリルプレート80は、平面視略矩形状を有する。グリルプレート80の上面には、凹凸を有する食材載置部85が設けられている。グリルプレート80の左右両端部には、食材載置部85の左右方向外方端部から斜め上外方に向けて上り勾配の側壁83が設けられている。左右の側壁83は、グリルプレート80の前後端部で繋がっている。グリルプレート80は、グリルプレート80がグリル庫20内に収容されたとき、左右の側壁83が導入口201,202を介して下火バーナ55の炎孔部550と対向するように支持枠220により下方から支持されている。
【0048】
図3及び
図6に示すように、グリル庫20の右側壁22の外方には、下火バーナ55全体を上方、前方、及び外側方から所定距離、離間して覆い、下方及び後方に開放する左右方向断面視略逆L字状のカバー600が配設されている。カバー600は、導入口202より上方の右側壁22の外面から外方に向かって延びる上壁部601と、上壁部601の外側端部から下方に垂下する外側壁部602と、外側壁部602の前端部から内方に屈曲して延びる前壁部603とを有する。このため、下火バーナ55を燃焼させると、ドラフト効果により、主としてカバー600の下方の開口からカバー600内にガスコンロ内の空気Hが導入され、カバー600内には、下火バーナ55の下方及び上方を通って導入口202に向かって流れる二次空気通路が形成される。
【0049】
下火バーナ55とカバー600とは、下火バーナ55がカバー600で覆われたとき、電極用固定部材320の制限部321の外面及び熱電対用固定部材360の制限部361の外面がそれぞれ、カバー600の外側壁部602の内面に略当接するように配設されている。このため、
図6に示すように、下方からカバー600内で導入される空気Hの一部は、制限部321,361間の隙間を通って下方から上方に向かって流れ、下火バーナ55の上方を通って内方側の導入口202に向かって流れる。一方、
図4に示すように、制限部321,361間の隙間が設けられている位置に対応する炎孔部550の上傾斜面部532には上向き炎孔部580が形成されていないから、下火バーナ55の上方に流れた空気は上傾斜面部532に沿って下向きに内方側へ流れる。そして、制限部321,361間の隙間の内方側には、下向き炎孔部560が形成されているから、下向き炎孔部560の複数の下向き炎孔551に上方からまとまった量の二次空気が供給される。
【0050】
上記したように、炎孔部550は前後方向に長手で内方側に突出する凸条部から構成され、凸条部を構成する下傾斜面部531及び上傾斜面部532にはそれぞれ、前後方向に複数の下向き炎孔551及び複数の上向き炎孔552が並設されているから、下向き炎孔551からは水平よりも稍下向きに混合気が噴出され、上向き炎孔552からは水平よりも稍上向きに混合気が噴出される。従って、点火電極300からの火花放電で下火バーナ55を点火させると、炎孔部550からの燃焼排気Fは、グリル庫20の右側壁22に開口された導入口202を介してグリル庫20の内方に向かって上下に拡散するように噴出される(
図2参照)。
【0051】
また、上向き炎孔部580と下向き炎孔部560とは、下向き炎孔部560が上向き炎孔部580の下方に位置するように配置されているだけでなく、上向き炎孔部580と下向き炎孔部560とが前後方向に重ならないように配置されており、さらに、下向き炎孔部560は、前後方向に所定の間隔で複数の下向き炎孔551が並設された下向き炎孔群561を3群以上、前後方向に連続して有しているから、下火バーナ55を燃焼させると、ドラフト効果により、下火バーナ55の上方から下向き炎孔部560が形成されている領域に向かう大きな二次空気の侵入経路が形成され、一定のまとまった量の二次空気を上方から下向き炎孔部560に供給することができる。従って、下向き炎孔551から噴出する燃焼排気をグリルプレート80下方の左右中央部まで飛ばすことができる。また、3群以上、前後方向に連続する下向き炎孔群561は、隣接する下向き炎孔群561間の距離が当該隣接する下向き炎孔群561それぞれの下向き炎孔551の間隔よりも長くなるように並設されているから、隣接する下向き炎孔群561間での火炎の干渉が抑えられ、安定した火炎を形成することができる。これにより、グリルプレート80を均一に加熱することができ、被調理物をバランスよく加熱することができる。
【0052】
また、上向き炎孔部580が形成されている領域の外方側には電極用固定部材320の制限部321及び熱電対用固定部材360の制限部361が位置しており、これらの制限部321,361の外面はカバー600の外側壁部602の内面に略当接しているから、下火バーナ55を燃焼させると、ドラフト効果により、これらの制限部321,361によって下方からカバー600内に導入される空気は、制限部321,361間の隙間を通って上方に流れる。そのため、制限部321,361間の隙間を通過した空気が上方から炎孔部550に供給されるから、上方から下向き炎孔部560に供給される二次空気量は上方から上向き炎孔部580に供給されるそれよりも確実に多くなる。これにより、下向き炎孔部560の下向き炎孔551に形成される火炎を水平方向に寝かせることができる。また、下向き炎孔551から噴出する燃焼排気をグリルプレート80下方の左右中央部まで効率的に飛ばすことができる。これにより、さらにグリルプレート80を均一に加熱することができ、被調理物をバランスよく加熱することができる。なお、上方から下向き炎孔部560に供給される二次空気量が上方から上向き炎孔部580に供給されるそれよりも多くなれば、必ずしも制限部321,361の外面をカバー600の外側壁部602の内面に当接させる必要はなく、制限部321,361の外面とカバー600の外側壁部602の内面との間に一定の隙間を設けてもよい。また、制限部321,361は、下火バーナ55の構成やカバー600の構成に合わせて、電極用固定部材320及び熱電対用固定部材360とは別部材から構成してもよい。
【0053】
また、下向き炎孔部560における下向き炎孔群561はそれぞれ、複数の下向き炎孔551を有し、一定の幅を有するから、下火バーナ55の上方から内方側に供給される二次空気の侵入経路を確実に確保することができる。また、下向き炎孔551は下方から内方側に向かって傾斜する下傾斜面部531にスリット状に形成されているから、下向き炎孔551に形成される火炎をより水平方向に寝かせることができ、下向き炎孔551から噴出する燃焼排気をさらにグリルプレート80下方の左右中央部まで飛ばすことができる。また、上向き炎孔552の火炎と下向き炎孔551の火炎との干渉も抑えられるから、炎孔部550に均一な燃焼分布を形成することができる。また、スリット状の炎孔551,552,553は、上下方向に長い開口を有しており、上方からまとまった量の二次空気が炎孔551,552,553に供給されて火炎の根本が二次空気によって掬われても、炎孔551,552,553から火炎が飛び難いから、高い保炎性を確保することができる。
【0054】
以上のように、本実施の形態によれば、グリルプレート80を均一に加熱することができるから、被調理物の加熱むらを抑えることができる。
【0055】
図7及び
図8は、本実施の形態に係る下火バーナの他の一例を示す概略平面図である。これらの下火バーナ55A,55Bは、上向き炎孔552と下向き炎孔551の炎孔パターンが異なる以外は、上記した下火バーナ55と同様の構成を有する。具体的には、
図7に示す下火バーナ55Aは、下向き炎孔部560において、異なる数の下向き炎孔551を有する下向き炎孔群561が前後方向に並設された炎孔パターンを備える。また、
図8に示す下火バーナ55Bは、下向き炎孔部560の隣接する下向き炎孔群561の間の上方に少数の上向き炎孔552が形成されている炎孔パターンを備える。これらのような炎孔パターンを有する下火バーナ55A,55Bによっても、下火バーナ55A,55Bから一定のまとまった下向きの燃焼排気を噴出させることができるから、グリルプレート80を均一に加熱することができる。なお、下火バーナ55,55Aのように、上向き炎孔552は、下向き炎孔部560における3群以上、前後方向に連続して複数の下向き炎孔551を有する下向き炎孔群561の間の上方に形成されない方が好ましい。しかしながら、下火バーナ55Bの炎孔パターンのように、隣接する下向き炎孔群561の間の上方の上向き炎孔552の数を、それに隣接する下向き炎孔群561に含まれる下向き炎孔551の数よりも少なく形成すれば、上方からの下向き炎孔部560への二次空気の供給が妨げられ難いから、下向き炎孔部560からの燃焼排気をグリルプレート80下方の左右中央部まで飛ばすことができる。また、図示しないが、下向き炎孔部560が3群以上、前後方向に連続して下向き炎孔群561を有する場合、隣接する下向き炎孔群561の間の上方に中炎孔553を設けてもよい。
【0056】
図9は、本実施の形態に係る下火バーナの他の一例を示す炎孔部周辺の要部概略斜視図である。
図9に示すように、この下火バーナ55Cは、炎孔部550aが、下傾斜面部531aと上傾斜面部532aとの間に、下傾斜面部531a及び上傾斜面部532aの傾斜角度と異なる傾斜角度を有する前後方向に延びる略平面部の繋ぎ部535aを有すること以外は、上記した下火バーナ55と同様の構成を有する。このような平面部の繋ぎ部535aを形成すれば、凸条部の内方側への突出量を大きくすることなく、下傾斜面部531a及び上傾斜面部532aの面積を確保することができる。従って、下傾斜面部531a及び上傾斜面部532aの傾斜角度を小さくすることができ、下向き炎孔551及び上向き炎孔552から噴出する燃焼排気を効率的に上下に分流させることができる。なお、繋ぎ部535aは、平面だけでなく、曲面を有してもよい。
【0057】
図10は、本実施の形態に係る下火バーナのさらに他の一例を示す炎孔部周辺の要部概略斜視図である。
図10に示すように、この下火バーナ55Dは、中炎孔553bの上端が上傾斜面部532aの上下中央部まで延び、中炎孔553bの下端が下傾斜面部531aの上下中央部まで延びている以外は、上記した下火バーナ55Cと同様の構成を有する。
【0058】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、上下方向に長いスリット状の炎孔が形成されている。しかしながら、本発明は、円形状のポート炎孔にも適用することができる。
【0059】
(2)上記実施の形態では、扁平状の下火バーナが縦置き状態で配置されている。しかしながら、本発明は、扁平状の下火バーナを横置き状態で配置させてもよい。
【0060】
(3)上記実施の形態では、被調理物載置手段としてグリルプレートが用いられている。しかしながら、本発明は、グリルバーナによって間接加熱(熱伝導)される他の調理容器を被調理物載置手段として用いてもよい。
【符号の説明】
【0061】
20 グリル庫
55 下火バーナ
531 下傾斜面部
532 上傾斜面部
535 繋ぎ部
550 炎孔部
551 下向き炎孔
552 上向き炎孔
553 中炎孔
560 下向き炎孔部
561 下向き炎孔群
580 上向き炎孔部