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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】地形情報管理システムおよび作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
E02F9/26 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021028181
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129500
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】西澤 匡士
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 陽平
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-008776(JP,A)
【文献】特開2017-156108(JP,A)
【文献】特開2020-033704(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115879(WO,A1)
【文献】特開2010-248777(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0312446(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械が作業を行う作業現場の少なくとも一部の現況地形データを取得する複数の地形計測装置と、
前記作業現場における前記地形計測装置の位置および姿勢に関する情報である位置姿勢情報を計測する位置姿勢計測装置と、
前記地形計測装置が取得した複数の前記現況地形データと、前記位置姿勢計測装置が算出した前記位置姿勢情報とに基づいて、前記作業現場に予め定めた地形データ取得範囲の現況地形データである合成現況地形データを生成して保持する地形情報管理装置とを備えた地形情報管理システムにおいて、
前記地形情報管理装置は、
前記作業現場における前記複数の地形計測装置の周囲環境に関する情報である環境情報をそれぞれ取得し、
前記作業現場を予め定めた大きさに仮想的に分割して設定した単位区画毎に、取得した前記環境情報に基づいて、前記複数の地形計測装置のそれぞれについての優先度を設定し、
設定した前記優先度に基づいて、前記地形データ取得範囲における前記単位区画毎に前記現況地形データを合成して前記合成現況地形データを生成するものであり、
前記環境情報は、少なくとも前記作業現場における前記複数の地形計測装置の位置および姿勢に関する情報である位置姿勢情報を含み、
前記地形情報管理装置は、
前記位置姿勢情報に基づいて、前記複数の地形計測装置のそれぞれにおける前記現況地形データの取得範囲内に自他の地形計測装置の少なくとも一部が含まれるか否かを判定し、
前記現況地形データの取得範囲内に自他の地形計測装置の少なくとも一部が含まれると判定された前記地形計測装置の優先度を、含まれないと判定された場合の前記地形計測装置の優先度に対して相対的に下げることを特徴とする地形情報管理システム。
【請求項2】
作業機械が作業を行う作業現場の少なくとも一部の現況地形データを取得する複数の地形計測装置と、
前記作業現場における前記地形計測装置の位置および姿勢に関する情報である位置姿勢情報を計測する位置姿勢計測装置と、
前記地形計測装置が取得した複数の前記現況地形データと、前記位置姿勢計測装置が算出した前記位置姿勢情報とに基づいて、前記作業現場に予め定めた地形データ取得範囲の現況地形データである合成現況地形データを生成して保持する地形情報管理装置とを備えた地形情報管理システムにおいて、
前記地形情報管理装置は、
前記作業現場における前記複数の地形計測装置の周囲環境に関する情報である環境情報をそれぞれ取得し、
前記作業現場を予め定めた大きさに仮想的に分割して設定した単位区画毎に、取得した前記環境情報に基づいて、前記複数の地形計測装置のそれぞれについての優先度を設定し、
設定した前記優先度に基づいて、前記地形データ取得範囲における前記単位区画毎に前記現況地形データを合成して前記合成現況地形データを生成するものであり、
前記環境情報は、少なくとも作業現場における前記単位区画毎の土質の情報である土質情報を含み、
前記地形情報管理装置は、
前記土質情報に基づいて、前記複数の地形計測装置がそれぞれ予め軟弱であると設定した土質の地盤上にあるか否かを判定し、
予め軟弱であると設定した土質の地盤上にあると判定された前記地形計測装置の優先度を、予め硬質であると設定した土質の地盤上にあると判定された場合の前記地形計測装置の優先度に対して相対的に下げることを特徴とする地形情報管理システム。
【請求項3】
作業機械が作業を行う作業現場の少なくとも一部の現況地形データを取得する複数の地形計測装置と、
前記作業現場における前記地形計測装置の位置および姿勢に関する情報である位置姿勢情報を計測する位置姿勢計測装置と、
前記地形計測装置が取得した複数の前記現況地形データと、前記位置姿勢計測装置が算出した前記位置姿勢情報とに基づいて、前記作業現場に予め定めた地形データ取得範囲の現況地形データである合成現況地形データを生成して保持する地形情報管理装置とを備えた地形情報管理システムにおいて、
前記地形情報管理装置は、
前記作業現場における前記複数の地形計測装置の周囲環境に関する情報である環境情報をそれぞれ取得し、
前記作業現場を予め定めた大きさに仮想的に分割して設定した単位区画毎に、取得した前記環境情報に基づいて、前記複数の地形計測装置のそれぞれについての優先度を設定し、
設定した前記優先度に基づいて、前記地形データ取得範囲における前記単位区画毎に前記現況地形データを合成して前記合成現況地形データを生成するものであり、
前記環境情報は、少なくとも前記作業現場における地形の形状に関する情報である地形情報を含み、
前記地形情報管理装置は、
前記地形情報に基づいて、前記複数の地形計測装置のそれぞれにおける前記現況地形データの取得範囲内に、予め現況地形データの取得が困難な計測困難地形として設定した地形が含まれるか否かを判定し、
前記現況地形データの取得範囲内に前記計測困難地形が含まれると判定された前記地形計測装置の優先度を、含まれないと判定された場合の前記地形計測装置の優先度に対して相対的に下げることを特徴とする地形情報管理システム。
【請求項4】
作業機械が作業を行う作業現場の少なくとも一部の現況地形データを取得する複数の地形計測装置と、
前記作業現場における前記地形計測装置の位置および姿勢に関する情報である位置姿勢情報を計測する位置姿勢計測装置と、
前記地形計測装置が取得した複数の前記現況地形データと、前記位置姿勢計測装置が算出した前記位置姿勢情報とに基づいて、前記作業現場に予め定めた地形データ取得範囲の現況地形データである合成現況地形データを生成して保持する地形情報管理装置とを備えた地形情報管理システムにおいて、
前記地形情報管理装置は、
前記作業現場における前記複数の地形計測装置の周囲環境に関する情報である環境情報をそれぞれ取得し、
前記作業現場を予め定めた大きさに仮想的に分割して設定した単位区画毎に、取得した前記環境情報に基づいて、前記複数の地形計測装置のそれぞれについての優先度を設定し、
設定した前記優先度に基づいて、前記地形データ取得範囲における前記単位区画毎に前記現況地形データを合成して前記合成現況地形データを生成するものであり、
前記環境情報は、少なくとも前記作業機械の作業領域に関する情報である作業領域情報を含み、
前記地形情報管理装置は、
前記作業領域情報に基づいて、前記複数の地形計測装置のそれぞれにおける前記現況地形データの取得範囲内に前記作業領域が含まれるか否かを判定し、
前記現況地形データの取得範囲内に前記作業領域が含まれると判定された前記地形計測装置の優先度を、含まれないと判定された場合の前記地形計測装置の優先度に対して相対的に上げることを特徴とする地形情報管理システム。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の地形情報管理システムにおいて、
前記地形情報管理装置は、前記合成現況地形データを用いる外部のアプリケーションから前記合成現況地形データについて要求される解像度に基づいて、前記単位区画の大きさを設定することを特徴とする地形情報管理システム。
【請求項6】
作業現場における作業を行う作業機械であって、
前記作業現場の少なくとも一部の現況地形データを取得する地形計測装置と、
前記作業現場における前記作業機械の位置および姿勢に関する情報である位置姿勢情報を計測する位置姿勢計測装置と、
前記地形計測装置が取得した前記現況地形データと、前記作業現場における他の地形計測装置が取得した現況地形データと、前記作業機械の前記位置姿勢計測装置が算出した前記位置姿勢情報とに基づいて、前記作業現場に予め定めた地形データ取得範囲の現況地形データである合成現況地形データを生成して保持する地形情報管理装置とを備え、
前記地形情報管理装置は、
前記作業機械の前記地形計測装置及び前記作業現場における他の地形計測装置の周囲環境に関する情報である環境情報をそれぞれ取得し、
前記作業現場を予め定めた大きさに仮想的に分割して設定した単位区画毎に、取得した前記環境情報に基づいて、前記作業機械の前記地形計測装置及び他の地形計測装置のそれぞれについての優先度を設定し、
設定した前記優先度に基づいて、前記地形データ取得範囲における前記単位区画毎に前記現況地形データを合成して前記合成現況地形データを生成するものであり、
前記環境情報は、少なくとも前記作業現場における前記作業機械および他の地形計測装置の位置および姿勢に関する情報である位置姿勢情報を含み、
前記地形情報管理装置は、
前記位置姿勢情報に基づいて、前記作業機械および他の地形計測装置のそれぞれにおける前記現況地形データの取得範囲内に自他の地形計測装置の少なくとも一部が含まれるか否かを判定し、
前記現況地形データの取得範囲内に自他の地形計測装置の少なくとも一部が含まれると判定された前記地形計測装置の優先度を、含まれないと判定された場合の前記地形計測装置の優先度に対して相対的に下げることを特徴とする作業機械。
【請求項7】
作業現場における作業を行う作業機械であって、
前記作業現場の少なくとも一部の現況地形データを取得する地形計測装置と、
前記作業現場における前記作業機械の位置および姿勢に関する情報である位置姿勢情報を計測する位置姿勢計測装置と、
前記地形計測装置が取得した前記現況地形データと、前記作業現場における他の地形計測装置が取得した現況地形データと、前記作業機械の前記位置姿勢計測装置が算出した前記位置姿勢情報とに基づいて、前記作業現場に予め定めた地形データ取得範囲の現況地形データである合成現況地形データを生成して保持する地形情報管理装置とを備え、
前記地形情報管理装置は、
前記作業機械の前記地形計測装置及び前記作業現場における他の地形計測装置の周囲環境に関する情報である環境情報をそれぞれ取得し、
前記作業現場を予め定めた大きさに仮想的に分割して設定した単位区画毎に、取得した前記環境情報に基づいて、前記作業機械の前記地形計測装置及び他の地形計測装置のそれぞれについての優先度を設定し、
設定した前記優先度に基づいて、前記地形データ取得範囲における前記単位区画毎に前記現況地形データを合成して前記合成現況地形データを生成するものであり、
前記環境情報は、少なくとも作業現場における前記単位区画毎の土質の情報である土質情報を含み、
前記地形情報管理装置は、
前記土質情報に基づいて、前記作業機械および他の地形計測装置がそれぞれ予め軟弱であると設定した土質の地盤上にあるか否かを判定し、
予め軟弱であると設定した土質の地盤上にあると判定された前記地形計測装置の優先度を、予め硬質であると設定した土質の地盤上にあると判定された場合の前記地形計測装置の優先度に対して相対的に下げることを特徴とする作業機械。
【請求項8】
作業現場における作業を行う作業機械であって、
前記作業現場の少なくとも一部の現況地形データを取得する地形計測装置と、
前記作業現場における前記作業機械の位置および姿勢に関する情報である位置姿勢情報を計測する位置姿勢計測装置と、
前記地形計測装置が取得した前記現況地形データと、前記作業現場における他の地形計測装置が取得した現況地形データと、前記作業機械の前記位置姿勢計測装置が算出した前記位置姿勢情報とに基づいて、前記作業現場に予め定めた地形データ取得範囲の現況地形データである合成現況地形データを生成して保持する地形情報管理装置とを備え、
前記地形情報管理装置は、
前記作業機械の前記地形計測装置及び前記作業現場における他の地形計測装置の周囲環境に関する情報である環境情報をそれぞれ取得し、
前記作業現場を予め定めた大きさに仮想的に分割して設定した単位区画毎に、取得した前記環境情報に基づいて、前記作業機械の前記地形計測装置及び他の地形計測装置のそれぞれについての優先度を設定し、
設定した前記優先度に基づいて、前記地形データ取得範囲における前記単位区画毎に前記現況地形データを合成して前記合成現況地形データを生成するものであり、
前記環境情報は、少なくとも前記作業現場における地形の形状に関する情報である地形情報を含み、
前記地形情報管理装置は、
前記地形情報に基づいて、前記作業機械および他の地形計測装置のそれぞれにおける前記現況地形データの取得範囲内に、予め現況地形データの取得が困難な計測困難地形として設定した地形が含まれるか否かを判定し、
前記現況地形データの取得範囲内に前記計測困難地形が含まれると判定された前記地形計測装置の優先度を、含まれないと判定された場合の前記地形計測装置の優先度に対して相対的に下げることを特徴とする作業機械。
【請求項9】
作業現場における作業を行う作業機械であって、
前記作業現場の少なくとも一部の現況地形データを取得する地形計測装置と、
前記作業現場における前記作業機械の位置および姿勢に関する情報である位置姿勢情報を計測する位置姿勢計測装置と、
前記地形計測装置が取得した前記現況地形データと、前記作業現場における他の地形計測装置が取得した現況地形データと、前記作業機械の前記位置姿勢計測装置が算出した前記位置姿勢情報とに基づいて、前記作業現場に予め定めた地形データ取得範囲の現況地形データである合成現況地形データを生成して保持する地形情報管理装置とを備え、
前記地形情報管理装置は、
前記作業機械の前記地形計測装置及び前記作業現場における他の地形計測装置の周囲環境に関する情報である環境情報をそれぞれ取得し、
前記作業現場を予め定めた大きさに仮想的に分割して設定した単位区画毎に、取得した前記環境情報に基づいて、前記作業機械の前記地形計測装置及び他の地形計測装置のそれぞれについての優先度を設定し、
設定した前記優先度に基づいて、前記地形データ取得範囲における前記単位区画毎に前記現況地形データを合成して前記合成現況地形データを生成するものであり、
前記環境情報は、少なくとも前記作業機械の作業領域に関する情報である作業領域情報を含み、
前記地形情報管理装置は、
前記作業領域情報に基づいて、前記作業機械および他の地形計測装置のそれぞれにおける前記現況地形データの取得範囲内に前記作業領域が含まれるか否かを判定し、
前記現況地形データの取得範囲内に前記作業領域が含まれると判定された前記地形計測装置の優先度を、含まれないと判定された場合の前記地形計測装置の優先度に対して相対的に上げることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地形情報管理システムおよび作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械による情報化施工や施工自動化においては、刻一刻と変化する現場の地形情報の把握が非常に重要である。また、作業現場における施工精度に影響するため、地形情報の精度の向上は必要不可欠である。
【0003】
例えば、特許文献1には、地形情報の精度向上に係る技術として、作業機械が作業を行う作業現場の現況地形を示す複数の現況地形データを取得する取得部と、前記取得部で取得された複数の前記現況地形データに基づいて、所定の規則に基づいて前記作業現場の合成現況地形データを生成する合成部とを備える作業機械の制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/115879号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術においては、例えば、測定手法毎の測定精度に基づいて設定される現況地形データの優先順位を考慮することで、複数の現況地形データを用いて合成される合成現況地形データの精度向上を図っている。しかしながら、合成現況地形データの合成に用いる現況地形データの精度は、測定手法毎の単純な測定精度の影響だけではなく、作業現場の環境により様々な影響を受けるため、合成現況地形データの精度が十分に得られない可能性がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、より精度の高い現況地形データを得ることができる地形情報管理システムおよび作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、作業機械が作業を行う作業現場の少なくとも一部の現況地形データを取得する複数の地形計測装置と、前記作業現場における前記地形計測装置の位置および姿勢に関する情報である位置姿勢情報を計測する位置姿勢計測装置と、前記地形計測装置が取得した複数の前記現況地形データと、前記位置姿勢計測装置が算出した前記位置姿勢情報とに基づいて、前記作業現場に予め定めた地形データ取得範囲の現況地形データである合成現況地形データを生成して保持する地形情報管理装置とを備えた地形情報管理システムにおいて、前記地形情報管理装置は、前記作業現場における前記複数の地形計測装置の周囲環境に関する情報である環境情報をそれぞれ取得し、前記作業現場を予め定めた大きさに仮想的に分割して設定した単位区画毎に、取得した前記環境情報に基づいて、前記複数の地形計測装置のそれぞれについての優先度を設定し、設定した前記優先度に基づいて、前記地形データ取得範囲における前記単位区画毎に前記現況地形データを合成して前記合成現況地形データを生成するものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より精度の高い現況地形データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】作業機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す図である。
図2】油圧ショベルの制御システムを関連構成とともに抜き出して示す図である。
図3】車体座標系を示す図である。
図4】車体座標系、センサ座標系、及び、サイト座標系の関係を示す図である。
図5】油圧ショベルが作業を行う作業現場の様子を例示する図である。
図6】油圧ショベルが作業を行う作業現場の様子を例示する図である。
図7】地形情報管理システムの機能ブロック図である。
図8】地形情報管理システムの構成要素例を示す図である。
図9】地形情報管理システムの構成要素例を示す図である。
図10】地形情報管理システムの構成要素例を示す図である。
図11】作業現場における地形情報管理システムの構成例を示す図である。
図12】作業現場における地形情報管理システムの構成例を示す図である。
図13】点群データの一例を示した説明図である。
図14】点群データの一例を示した説明図である。
図15】グリッドデータ一例を示した説明図である。
図16】グリッドデータ一例を示した説明図である。
図17】地形データベース内におけるグリッドデータのテーブルデータの一例を示す図である。
図18】優先度DBの一例を説明する図である。
図19】優先度算出部の処理の内容を示すフローチャートである。
図20】優先度設定領域の設定例を示す図である。
図21】優先度設定領域の設定例を示す図である。
図22】優先度設定領域の設定例を示す図である。
図23】優先度設定領域の設定例を示す図である。
図24】優先度設定領域の設定例を示す図である。
図25】地形データ合成部の処理の内容を示すフローチャートである。
図26】第2の実施の形態における作業現場の様子を示す図である。
図27】第2の実施の形態における作業現場の様子を示す図である。
図28】第2の実施の形態における地形情報管理システムの機能ブロックを示す図である。
図29】優先度設定領域の設定例を示す図である。
図30】優先度設定領域の設定例を示す図である。
図31】優先度設定領域の設定例を示す図である。
図32】優先度設定領域の設定例を示す図である。
図33】優先度設定領域の設定例を示す図である。
図34】優先度設定領域の設定例を示す図である。
図35】第3の実施の形態における作業現場の様子を示す図である。
図36】第3の実施の形態における作業現場の様子を示す図である。
図37】第3の実施の形態における地形情報管理システムの機能ブロックを示す図である。
図38】第4の実施の形態における作業現場の様子を示す図である。
図39】第4の実施の形態における作業現場の様子を示す図である。
図40】第4の実施の形態における地形情報管理システムの機能ブロックを示す図である。
図41】作業領域情報の一例を示す図である。
図42】作業領域情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、作業機械の一例として、フロント作業機を備える油圧ショベルを例示して説明するが、これに限られず、作業現場(施工現場)で稼動する他の作業機械においても本発明を適用することも可能である。
【0011】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を図1図25を参照しつつ説明する。
【0012】
<油圧ショベル101>
図1は、本実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す図である。また、図2は、油圧ショベルの制御システムを関連構成とともに抜き出して示す図である。
【0013】
図1及び図2において、油圧ショベル101は、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム111、アーム112、バケット113)を連結して構成された多関節型のフロント作業機110と、車体130を構成する上部旋回体131及び下部走行体132とを備え、上部旋回体131は下部走行体132に対して旋回可能に設けられている。また、フロント作業機110のブーム111の基端は上部旋回体131の前部に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム112の一端はブーム111の基端とは異なる端部(先端)に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム112の他端にはバケット113が垂直方向に回動可能に支持されている。ブーム111、アーム112、バケット113、上部旋回体131、及び下部走行体132は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ121、アームシリンダ122、バケットシリンダ123、旋回モータ124、及び左右の走行モータ125,126(図1では右側の一方のみを図示し、他方については符号のみを括弧書きで示す)によりそれぞれ駆動される。
【0014】
上部旋回体131の上部前方には、オペレータが搭乗する運転室151が配置されている。運転室151には、油圧アクチュエータ121~126を操作するための操作信号を出力する複数の操作レバー152が設けられている。なお、図2においては、複数の操作レバー152のうちの1つのみを代表して図示している。複数の操作レバー152には、油圧アクチュエータ121~126の操作がそれぞれ割り当てられている。例えば、油圧アクチュエータ121~124の操作には左右一対の操作レバーが割り当てられ、それぞれ前後左右に傾倒可能であり、操作信号であるレバーの傾倒量、すなわちレバー操作量を電気的に検知する図示しない検出装置を含み、検出装置が検出したレバー操作量を油圧ショベル101の制御システムを構成するメインコントローラ162に電気配線を介して出力する。また、同様に、油圧アクチュエータ125,126の操作にも他の左右一対の操作レバーが割り当てられている。
【0015】
なお、操作レバー152は油圧パイロット方式であってもよく、オペレータにより操作される操作レバー152の操作方向及び操作量に応じたパイロット圧をコントロールバルブ141に駆動信号として供給し、油圧アクチュエータ121~126を駆動するように構成しても良い。
【0016】
また、運転室151には、オペレータに情報を通知するための表示装置としての機能と、オペレータによる情報の入力を可能とする入力装置としての機能を有するモニタ153や、警告音や音声などによってオペレータに種々の状態を報知するブザー(図示せず)などが配置されている。モニタ153の画面には、例えば、タッチパネルが表層に形成されており、このタッチパネルの機能によりオペレータからの入力を受け付けることができる。
【0017】
ブームシリンダ121、アームシリンダ122、バケットシリンダ123、旋回モータ124及び左右の走行モータ125,126の動作制御は、エンジン143などの原動機によって駆動される油圧ポンプ142から各油圧アクチュエータ121~126に供給される作動油の方向及び流量をコントロールバルブ145で制御することにより行う。コントロールバルブ145は、図示しないパイロットポンプからパイロットバルブ144を介して出力される駆動信号(パイロット圧)により行われる。操作レバー152からの操作信号に基づいてメインコントローラ162でパイロットバルブ144を制御することにより、各油圧アクチュエータ121~126の動作が制御される。
【0018】
上部旋回体131の上部の後方には、2つのGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機171,172が左右に並べて配置されている。以降、これらのGNSS受信機171,172を区別する場合は、左側に配置されているものを左GNSS受信機171、右側に配置されているものを右GNSS受信機172と称する。GNSS受信機171,172は、はるか上空を飛行しているGNSS衛星から出力される測位信号を受信し、受信した測位信号に基づいて油圧ショベル101の地球座標系における位置を演算して位置情報として出力する機能を有している。また、GNSS受信機171,172の上部旋回体131に対する相対位置は固定であるので、2つのGNSS受信機171,172で計測される位置情報の偏差から、上部旋回体131の向きを算出することができる。
【0019】
ここで、GNSS受信機171,172は、作業機械である油圧ショベル101の作業現場における位置を計測し、計測結果を位置情報として出力する位置計測装置を構成している。
【0020】
ブーム111、アーム112、バケット113、及び上部旋回体131には、それぞれ慣性計測装置(IMU: Inertial Measurement Unit)181~184が配置されている。以降、これらの慣性計測装置181~184を区別する必要が有る場合は、それぞれ、ブーム慣性計測装置181、アーム慣性計測装置182、バケット慣性計測装置183、及び、上部旋回体慣性計測装置184と称する。
【0021】
慣性計測装置181~184は、角速度及び加速度を計測するものである。慣性計測装置181~184が配置された被駆動部材111~113及び上部旋回体131が静止している場合を考えると、慣性計測装置181~184に設定されたIMU座標系における重力加速度の方向(つまり、鉛直下向き方向)と、慣性計測装置181~184の取り付け状態(つまり、慣性計測装置181~184と被駆動部材111~113や上部旋回体131との相対的な位置関係)とに基づいて、被駆動部材111~113及び上部旋回体131の向き(対地角度)を姿勢情報として検出することができる。そして、慣性計測装置181~184の検出結果から被駆動部材111~113及び上部旋回体131のそれぞれの相対角度を算出することができる。また、慣性計測装置184で検出される角速度に基づいて上部旋回体131の旋回角度を検出することができる。すなわち、慣性計測装置181~184は、被駆動部材111~113及び上部旋回体131の相対角度を検出する角度検出器といえる。なお、慣性計測装置181~184に代えて、被駆動部材111~113の結合部や上部旋回体131の旋回部に設けた角度検出装置を用いても良い。
【0022】
また、上部旋回体131には、重力方向に対する油圧ショベル101の傾斜角度を姿勢情報として検出する慣性計測装置173が配置されている。
【0023】
ここで、慣性計測装置181~184,173は、作業機械である油圧ショベル101の姿勢に関する情報を検出し、検出結果を姿勢情報として出力する姿勢情報検出装置を構成している。
【0024】
上部旋回体131の、例えば、運転室151の上部には、油圧ショベル101の周囲の地形を計測し、計測結果を地形データとして出力する地形計測装置100が配置されている。地形計測装置100は、例えば、ステレオカメラ、レーザスキャナ、ミリ波レーダ等の外界センサである。地形計測装置100から出力される地形データは、例えば、車体130(上部旋回体131)に対して固定で設定される車体座標系(後述)における地形を示す点群データである。地形計測装置100は、例えば、周期的に油圧ショベル101の周囲の地形を自動で計測し、地形データとして出力する。なお、地形計測装置100の搭載位置は上記に限定されるものではなく、油圧ショベル101の周囲の地形の計測が十分に行える位置および姿勢で配置すれば良い。また、地形計測装置100による計測タイミング等についても上記に限定されるものではなく、例えば、油圧ショベル101が決められた姿勢をとったタイミングや、オペレータが指示したタイミングで地形計測を行ってもよい。
【0025】
油圧ショベル101の制御システムは、油圧ショベル101の全体の動作を制御するメインコントローラ162のほかに、油圧ショベル101に関する情報を制御する情報コントローラ161を備えている。図示しないが、メインコントローラ162は、処理装置(例えばCPU)と、処理装置が実行するプログラム、及びそのプログラムの実行に必要なデータ等が格納される記憶装置(例えばROM、RAM等の半導体メモリ)を有するコンピュータ相当のハードウェアである。同様に、情報コントローラ161は、処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)1611と、CPU1611が実行するプログラム、及びそのプログラムの実行に必要なデータ等が格納される記憶装置(例えばROM1613やRAM1612の半導体メモリ)と、外部インタフェース1614とがバス1615により接続されたコンピュータ相当のハードウェアである。尚、情報コントローラ161がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(field-programmable gate array)などの集積回路を用いて構成されている場合、情報コントローラ161の機能の一部または全部は、これら集積回路によって実現されてもよい。
【0026】
また、油圧ショベル101の制御システムは、種々の情報を記憶する記憶装置155や、外部との通信を行う無線通信装置157などを有している。記憶装置155は、例えば、ハードディスクドライブや大容量フラッシュメモリなどで構成されており、地形データベース155a、土質データベース155b、作業領域データベース155c、優先度データベース155dなどが構築されている。また、記憶装置155には、油圧ショベル101のブーム長さ、アーム長さ、バケット大きさや、計測領域などの寸法値(後述)などの車体パラメータ155eのほか、作業現場の完成形状を表す設計データなどが記憶されている。無線通信装置157は、例えば、無線LAN(Local Area Network)やWi-Fi、Bluetooth(登録商標)、携帯回線などと接続するための通信機器である。
【0027】
情報コントローラ170は、外部インタフェース1614を介して、メインコントローラ162、GNSS受信機171,172、慣性計測装置173,181~184、モニタ153、記憶装置155、及び、無線通信装置157と接続されている。
【0028】
<座標系>
本実施の形態で用いる車体座標系、センサ座標系、サイト座標系、及び、これらの座標系の関係について説明する。
【0029】
図3は、車体座標系を示す図である。また、図4は、車体座標系、センサ座標系、及び、サイト座標系の関係を示す図である。
【0030】
図3において、車体座標系900は、車体130に対して固定で設定される座標系であり、油圧ショベル101の旋回中心軸と下部走行体132の下部の地面とが交わる点を原点とし、旋回中心軸に垂直となる左右方向に右方向を正とするX軸を、旋回中心軸に垂直となる前後方向に前方を正とするY軸を取り、旋回中心軸に沿う方向に上方を正とするZ軸を取る直交座標系である。
【0031】
図4において、センサ座標系910は、地形計測装置100に相対的に固定されて設定される座標系であり、例えば、前方を正とするY軸と、右方向を正とするX軸と、上方を正とするZ軸とからなる直行座標系である。同様に、サイト座標系930は、作業現場内に設けられた基準点を原点として設定される座標系であり、水平面上に原点を通るようにY軸をとり、原点からX軸の正方向を見て水平面上の左右方向に右方向を正とするX軸を、鉛直方向に上方向を正とするZ軸をとる直行座標系である。
【0032】
図4において、ある計測点920を考えると、計測点920はセンサ座標系910上でPs(xs,ys,zs)と表される。また、計測点920は、車体座標系900上ではPv(xv,yv,zy)と表される。つまり、車体座標系900とセンサ座標系910の関係は、下記の(式1)~(式3)で表される。
【0033】
【数1】
【0034】
【数2】
【0035】
【数3】
【0036】
上記の(式2)で示すRsvは、センサ座標系910から車体座標系900への回転行列であり、変数αs,βs,γsは、それぞれセンサ座標系910と車体座標系900のX軸同士、Y軸同士、Z軸同士がなす角である。地形計測装置100が油圧ショベル101に固定されている場合、これらのなす角は一定となるので、例えば、予め車体座標系900における地形計測装置100の姿勢を測定しておき、記憶装置155に事前に保存しておくことで計算量を削減することができる。なお、地形計測装置100が油圧ショベル101に対して姿勢を変化させながら地形計測を行う場合には、地形計測装置100に姿勢計測センサを備え付けるなどして、姿勢計測センサが検出した角度を用いて座標変換行列を算出してもよい。
【0037】
上記の(式3)で示すTsvは、車体座標系900の原点からセンサ座標系910の原点への並進ベクトルである。すなわち、(xt,yt,zt)は、車体座標系900におけるセンサ座標系910の原点位置の座標に等しい。地形計測装置100の取り付け位置は、油圧ショベル101に対して固定されている場合が多い。このことから、本実施形態では、予め地形計測装置100の油圧ショベル101への取り付け位置を計測しておき、この計測値を記憶装置155に事前に保存しておく。
【0038】
また、図4において、計測点920は、車体座標系900上でPv(xv,yv,zv)と表され、サイト座標系930上ではPg(xg,yg,zg)と表される。つまり、車体座標系900とサイト座標系930の関係は、下記の(式4)~(式6)で表される。
【0039】
【数4】
【0040】
【数5】
【0041】
【数6】
【0042】
上記の(式5)で示すRvgは、車体座標系900からサイト座標系930への回転行列であり、変数θr,θp,θyは、それぞれ車体座標系900とサイト座標系930のX軸同士、Y軸同士、Z軸同士がなす角である。角度θr,θpは、例えば、油圧ショベル101に備え付けられた慣性計測装置173(姿勢情報検出装置)が出力した、油圧ショベル101の姿勢情報を用いることで得られる。また、角度θyは、例えば、油圧ショベル101に備え付けられた右GNSS受信機171および左GNSS受信機172が受信した測位データから算出した油圧ショベル101の向きを用いることで得られる。
【0043】
上記の(式6)で示すTvgは、サイト座標系930の原点から車体座標系900の原点へのベクトルである。すなわち、(x0,y0,z0)は、サイト座標系930における車体座標系900の原点位置の座標に等しい。これらの値には、例えば、右GNSS受信機171および左GNSS受信機172が受信した測位データから算出した油圧ショベル101の位置を用いる。
【0044】
<基本原理>
まず、本実施の形態の基本原理について説明する。
【0045】
図5及び図6は、油圧ショベルが作業を行う作業現場の様子を例示する図である。
【0046】
図5に示すように、作業現場の進捗管理を行う際、作業現場400で作業を行っている油圧ショベル101や、作業現場に設置されたセンサが計測した地形の情報を無線通信によって、管理サーバ310に集約し、作業現場の現況地形データとして管理するアプリケーションが考えられる。この時、管理サーバ310では、現場全体の作業進捗を管理するために、各センサから送られてきた地形情報(現況地形データ)に統合処理を施して地形データ(合成現況地形データ)を生成する。この時、複数の計測手段において、計測した領域にセンサ間で重複領域460が存在することが考えられる。このような場合、二つのセンサ情報を組み合わせることでより精度のより地形情報を得られるが、作業現場の状況においては、単純に個々のセンサの精度情報だけでなく、建設機械の作業している場所の斜度や、土質等が、センシング結果に影響し、統合された地形データの精度が低下することが懸念される。また、このようにセンサの計測結果が外部の環境に影響をうける環境において、センサの精度のみで地形情報の比較を行うためには、得られた地形データに対して、地形以外のデータを取り除くようなフィルタリング処理や、建設機械に備え付けられた姿勢計測センサの履歴を監視してその都度のセンサ精度を評価するなどの処理が必要となり、処理負荷が増大し、地形統合のための処理効率の低下が懸念される。
【0047】
例えば、図5に示すように、油圧ショベル101の施工している領域は、現場設置センサ120および油圧ショベル101搭載された地形計測センサ双方によって計測されているため、計測において重複領域460が生じている。このとき、測定精度のみを考慮する場合、現場に固定されている現場設置センサ120の計測結果の精度が高いと考えられるため、地形データ統合において現場設置センサの計測結果が優先度高く統合されると考えられる。しかし、重複領域460においては油圧ショベル101が施工を行っており、この場合に現場設置センサ120の計測結果を採用した場合、油圧ショベル101のフロントの映り込み等が生じる可能性が高い。そこで、図6に示すように、重複領域460を含むブロック領域420(後述)では、油圧ショベル101に搭載された地形計測センサの優先度を高くすることで、現場設置センサの計測データから油圧ショベル101のフロント部の映り込みを除くような処理をすることなく、効率的な地形統合が可能となる。
【0048】
本願発明は、地形の統合処理に機械の位置関係や、周囲の土質や斜度といった作業現場の環境情報を考慮することで、計測データからノイズを取り除くような処理を減らし、効率的な地形情報統合を可能とする地形情報管理システムを提供する
【0049】
<地形情報管理システム>
本実施の形態における地形情報管理システムは、作業機械が作業を行う作業現場の少なくとも一部の現況地形データを取得する複数の地形計測装置100と、作業現場における地形演算装置の位置および姿勢に関する情報である位置姿勢情報を計測する位置姿勢計測装置200と、地形計測装置が取得した複数の現況地形データと、位置姿勢計測装置が算出した位置姿勢情報とに基づいて、作業現場に予め定めた地形データ取得範囲の現況地形データである合成現況地形データを生成して保持する地形情報管理装置300とを備え、地形情報管理装置300は、作業現場における複数の地形計測装置の周囲環境に関する情報である環境情報をそれぞれ取得し、作業現場を予め定めた大きさに仮想的に分割して設定した単位区画毎に、取得した環境情報に基づいて、複数の地形計測装置のそれぞれについての優先度を設定し、設定した優先度に基づいて、地形データ取得範囲における単位区画毎に現況地形データを合成して合成現況地形データを生成する。すなわち、地形情報管理システムは、地形計測装置100、位置姿勢計測装置200、及び地形情報管理装置300を備えた油圧ショベル101により構成されるものに限られず、後述する現場設置センサ140やトータルステーション213、サーバ310などを含めて構成することができる。以下、本実施の形態に係る地形情報管理システムの機能および構成例について詳細に説明する。
図7は、本実施の形態に係る地形情報管理システムの機能ブロック図である。図7においては、地形情報管理システムによって実行される各種演算処理を機能ブロックで示している。
【0050】
図7において、地形情報管理システムは、作業現場400の地形を計測する地形計測装置100と、地形計測装置100のサイト座標系930における位置および姿勢を計測する位置姿勢計測装置200と、地形計測装置100が取得した地形データを管理する地形情報管理装置300とから構成されている。
【0051】
<地形計測装置100>
地形計測装置100は、作業現場400において、作業機械101が作業の対象としている作業現場400の地形を計測するものである。地形計測装置100には、例えば、ステレオカメラや、レーザスキャナなどの地形計測センサ130を用いる。なお、距離センサだけではなく、例えば、作業機械101の走行軌跡を地形データとする計測方法や、フロント作業機の先端部の位置情報と、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダのそれぞれのシリンダ圧力情報を組み合わせることで、フロント作業機に荷重が加わっている際のバケット先端位置の情報を地形データとする計測方法を用いてもよい。
【0052】
地形計測装置100は、センサ座標系910における点群データ500(後述)に表される形式の現況地形データを出力する。また、地形情報管理装置100は、座標変換部710を有し、地形計測センサ130かが出力したセンサ座標系910における点群データ500を、後述する位置計測装置200が出力する位置姿勢情報を用いて、サイト座標系930の点群データ500(後述)を出力する。
【0053】
<位置姿勢計測装置200>
位置姿勢計測装置200は、作業現場400の地形を計測する地形計測装置100のサイト座標系930(後述)における位置および姿勢を計測する装置である。位置計測装置210には、例えば、GNSS受信機や、トータルステーション(以降、TSと称する)を用いる。また、姿勢計測装置223には、例えばIMUなどを用いる。また、位置姿勢計測装置200は、位置姿勢演算部720を有し、位置計測装置210と、姿勢計測装置220から得られる情報を用いて、地形計測装置100のサイト座標系930にける位置姿勢情報を出力する。
【0054】
<地形情報管理装置300>
地形情報管理装置300は、作業現場400内で地形計測装置100が計測した地形データを集約し、後述する処理を行うことで作業現場400の地形データを管理する。また、地形情報管理装置300は、領域分割部730、優先度算出部740、地形データ合成部750および地形データ出力部760を有する。また、地形計測装置100から得られるサイト座標系930における点群データ500、位置姿勢計測装置200から得られる位置情報を用いて、各地形データの優先度を算出し、算出された優先度をもとに地形データを統合し、地形DB155aに格納する。さらに、地形DB155aに格納されたデータを、通信装置150を通じて管理サーバ310のモニタや、作業現場400で作業を行う作業機械101等に出力する。
【0055】
地形情報管理装置100、位置姿勢計測装置200、地形情報管理装置300の処理は同一の情報コントローラ170で行われてもよいし、それぞれ固有の情報コントローラ170を有してもよい。また、これらの当該プログラムは、例えば各処理が行われる情報コントローラ170の記憶装置163などに事前に記憶されている。なお、各部の処理に用いる各種のデータ、および処理中に生成される各種のデータは、処理が行われる情報コントローラ170のRAM1612または記憶装置155に格納される。
【0056】
<地形情報管理システムの構成例>
図8図10図、地形情報管理システムの構成要素例を示す図である。また、図11及び図12は、作業現場における地形情報管理システムの構成例を示す図である。
【0057】
図8では、作業機械101に地形計測装置100および位置姿勢計測装置200を設置した場合を例示している。作業機械101において、地形計測装置100には地形計測センサ130および作業機械101に設置された情報コントローラ170が、位置計測装置210には右GNSS受信機171および左GNSS受信機172が、姿勢計測装置220には角度検出器181,182,183,184がそれぞれ該当する。
【0058】
図9では、三脚等に情報コントローラ170、地形計測装置130、及び位置計測装置210を備え付けた場合を例示している。以降、これらを合わせて現場設置センサ140と記載する。
【0059】
図10では、位置計測装置および姿勢計測装置を備えていない作業機械101A対し、位置計測装置としてトータルステーション213(以下、TS213と記載する)、および角度検出器221~224を設置した場合を例示している。
【0060】
なお、地形情報システムの構成要素は図8図10に例示したものに限られず、他の様々な構成が考えられる。
【0061】
図11では、地形計測センサとして、作業機械101および、現場設置センサ120を用いて地形計測を行い、収取したデータを管理サーバ310によって統合する場合を例示している。
【0062】
図12では、油圧ショベル101に備え付けられた地形計測センサ130が集めた地形データを、現場設置センサ120が地形情報管理装置300となって、現場設置センサ120が備える情報コントローラ170によって後述の処理を行い、地形情報を統合する場合を例示している。
【0063】
なお、地形情報システムの構成は図11及び図12に例示したものに限られず、他の様々な構成が考えられる。
【0064】
<データ形式>
本実施の形態における地形計測装置100および地形情報管理装置300で扱われる地形データの種別、形式について説明する。本実施の形態では、点群形式の地形データ(以降、点群データ500と称する)とグリッド形式の地形データ(以降、グリッドデータ600と称する)を扱うものとする。
【0065】
図13及び図14は、点群データの一例を示した説明図である。本実施の形態においては、点群形式の地形データである点群データ500は、図13に示すような、点の集合データを示しており、図14に示すように、各点のX、Y、Z座標値および点番号からなる点情報で構成される形式で表される。
【0066】
図15及び図16は、グリッドデータ一例を示した説明図である。本実施の形態においては、グリッドデータ600は、図15に示すようにサイト座標系を離散的なグリッドに分割し、その地点の高さの代表値を保持する形式である。グリッドデータ600は、図16に示すように、予めグリッドの大きさが決められており、それらを画像のような形式でデータ保持する。
【0067】
なお、地形データの形式はこれらに限られず、後述される地形情報管理システムの処理は、様々なデータ形式の地形データに対して適応される。
【0068】
<地形DB155a>
図17は、地形データベース内におけるグリッドデータのテーブルデータの一例を示す図である。
【0069】
本実施の形態において、地形DB155aとは、地形計測装置100によって計測された地形データを統合し管理するためのデータベースである。本実施の形態における地形DB155aでは、グリッドデータ600を図17に示すようなグリッド形式のテーブルデータに変換し地形データ管理を行うものとする。グリッドデータ600のテーブルデータは、例えば、グリッドデータを一辺の長さがL、グリッド数がn×nの格子(以下、ブロック(単位区画)と称する)に分割し、それぞれのブロックの領域の識別子を付与し、一行のデータとして管理する。本実施の形態では、ブロックの識別子として、サイト座標系930におけるX方向、Y方向に対応した識別子IDxおよびIDyを付与し、2つの識別子を用いてブロックを特定することとする。IDxおよびIDyの算出方法は特に指定しないが、本実施の形態では、識別子をブロックの左上の座標値(Xleft,Yup)の値で定義することとする。つまり、識別子は、下記の(式7)及び(式8)で表される。
【0070】
【数7】
【0071】
【数8】
【0072】
なお、一辺の長さLおよび各格子の一辺に含まれるデータの数nは、地形データを活用するアプリケーションから要求される地形データの解像度に応じて設定する。
【0073】
<座標変換部710>
まず、地形計測装置100における座標変換部710の処理について説明する。座標変換部710は、点群データ500を、位置姿勢計測装置200が出力した、地形計測装置100の位置姿勢情報をもとに、センサ座標系910からサイト座標系930に変換し、通信装置150を介して地形情報管理装置300に出力する。
【0074】
<位置姿勢演算部720>
次に、位置姿勢計測装置200における位置姿勢演算部720の処理について説明する。位置姿勢演算部720は、位置計測装置210および、姿勢計測装置220の出力から、地形計測装置100のサイト座標系930における位置姿勢情報を算出する。
【0075】
<領域分割部730>
次に、地形情報管理装置300における領域分割部730の処理について説明する。領域分割部730は、グリッドデータ600をテーブル形式のデータに変換し、地形DB155a内に保存する。なお、データ抽出範囲算出部220の処理は、例えば、作業機械101の電源が起動された際や、地形データを用いる特定のアプリケーションを使用し始める際に開始する。地形DB155aに入力する初期データがある場合、領域分割部730は、グリッドデータ600を長さLのブロックに分割する。地形DB155aに入力する初期データが存在しない場合、領域分割部730は、ブロックの一辺の長さLおよびブロックの一辺に含まれるデータ数nを設定する。これらL、n等の設定値は、地形情報管理装置300の処理が行われる情報コントローラ170のROM1613などに格納される。
【0076】
<優先度算出部740>
次に、地形情報管理装置300における優先度算出部740の処理について説明する。
【0077】
図18は、優先度DBの一例を説明する図である。
【0078】
優先度算出部740は、地形計測装置100から出力される地形計測装置100の位置姿勢情報を用いて、地形計測装置100の出力する地形データの優先度を算出し、算出結果を優先度DB155dに出力する。優先度DB155dには、テーブル形式のデータが保存される。各行には、例えば、ブロックの識別子であるIDx、およびIDyと、日付と、優先度PR(n)を格納する。本実施の形態では、地形計測センサ100毎に個別の識別子ID(n)を設定する。これらの個別の識別子ID(n)は、地形情報管理装置300の処理が行われる情報コントローラ170のROM1613などに格納される。また、地形情報管理装置300は、優先度PR(n)の情報を用いて地形データ合成処理を行う。
【0079】
図19は、優先度算出部の処理の内容を示すフローチャートである。また、図20図24は、優先度設定領域の設定例を示す図である。
【0080】
図19において、優先度算出部740は、周期的または、地形計測装置100がブロックを跨いで移動するたびに、各地形計測装置100について処理を行う。
【0081】
まず、優先度算出部740は、地形計測装置100の優先度設定領域480を算出する(ステップS100)。
【0082】
本実施の形態において優先度設定領域480とは、地形計測装置100の計測データの優先度の算出対象となるブロックの集合を示す。地形計測装置100の優先度設定領域480は、地形計測装置100の車体位置1100を基準として、車体が存在する領域をもとに、例えば、図20のように優先度設定領域480の設定対象とする地形計測装置100の周囲のブロックの位置および数を設定する。なお、油圧ショベル101のような旋回を伴う機械では、図21図24のように車体位置1100に加えて、作業機械先端位置1200の位置関係より設定してもよい。この作業機械先端位置1200は、フロント作業腕に取り付けられた姿勢計測装置220および、車体に取り付けられた位置計測装置210によって算出する。これらの優先度設定領域480の設定値は、地形情報管理装置300の処理が行われる情報コントローラ170のROM1613などに格納される。
優先度算出部740は、ステップS7400において、車体位置1100および作業機械先端位置1200をもとに、あらかじめ設定された優先度設定領域の情報をもとに優先度領域480に指定されたブロックについてブロック識別子IDxおよびIDyを算出する。
【0083】
続いて、優先度算出部740は、算出された優先度設定領域480のブロック(単位区画)ごとに、作業現場における複数の地形計測装置の周囲環境に関する情報である環境情報を取得し(ステップS110)、取得した環境情報が予め定めた条件を満たすかどうかを判定し(ステップS120)、判定結果がYESの場合には、地形計測装置の優先度を下げ(ステップS121)、判定結果がNOの場合には、地形計測装置の優先度を変更しない(ステップS122)。優先度算出部740は、全ての優先度設定領域480のブロック(単位区画)についてステップS120~S122の処理を行うことにより、優先度を算出する。
【0084】
優先度算出部740における優先度の算出方法(ステップS110,S120,S121,S122)には種々のものが考えられるが、例えば、環境情報に少なくとも作業現場における複数の地形計測装置の位置および姿勢に関する情報である位置姿勢情報を含むように設定し、この環境情報が予め定めた条件を満たすか否か、すなわち、複数の地形計測装置のそれぞれにおける現況地形データの取得範囲内に自他の地形計測装置の少なくとも一部が含まれるか否かを判定する。そして、現況地形データの取得範囲内に自他の地形計測装置の少なくとも一部が含まれると判定された地形計測装置(すなわち、取得する現況地形データに不要な情報が含まれる可能性のある地形計測装置)の優先度を、含まれないと判定された場合の地形計測装置(すなわち、取得する現況地形データの精度が相対的に高いと見込まれる地形計測装置)の優先度に対して相対的に下げることにより、優先度を決定する。
【0085】
なお、各地形計測装置に設定される優先度の初期値は、例えば、施工を行っている作業機械101に設置された地形計測装置130の優先度が高くなるように、さらには、各地形計測装置が存在するブロックの優先度を高くするように設定することが考えられる。
【0086】
また、優先度情報を更新するために、新しい優先度情報を優先度DB155dに登録した際に、同じ地形計測装置の古い優先度情報を削除する処理を含んでもよい。また、一定時間以上たった優先度情報を、優先度DB155dに登録された時刻情報をもとに古いデータを削除してもよい。
【0087】
<地形データ合成部750>
図25は、地形データ合成部の処理の内容を示すフローチャートである。
【0088】
地形データ合成部750では、地形計測装置100が出力した点群データをグリッドデータとして地形DB155a内の地形データと統合する。
【0089】
図25において、地形データ合成部750は、まず、地形計測領域410を算出する(ステップS200)。
【0090】
地形計測領域410とは、地形計測装置100が計測した地形データが占めるブロック領域のことを指す。地形計測領域410の求め方は、例えば、地形計測装置100から得られた点群データの(X,Y)の座標値の最大値、最小値を算出し、これらの最大、最小値を頂点とする矩形に含まれるブロック領域を算出することによって求めることが出来る。
【0091】
続いて、地形データ合成部750は、優先度DB155dから処理対象のブロック領域における優先度情報を取得する(ステップS210)。
【0092】
優先度情報の取得は、例えば、処理対象のブロックの識別子IDx(n),IDy(n)を用いて優先度DB155d内で識別子が一致する情報を検索する。
【0093】
続いて、地形データ合成部750は、取得した優先度情報と、地形DB155a内の優先度情報とを比較し、地形DB155a内の地形情報と地形計測装置100が出力した地形情報の合成処理を行う(ステップS220)。
【0094】
地形情報の合成方法は、例えば、優先度の大きさに応じて、重みづけされた値を用いて合成を行ってもよいし、優先度が高い地形データを採用し、低いほうを棄却してもよい。また、地形合成処理に用いた地形データの優先度を考慮して、合成後の地形データの優先度を算出し、地形DB155aに格納する。
【0095】
地形データ合成部750は、地形計測装置100が出力した全ての地形データに対してステップS210,S220の処理を実施した後、処理を終了する。
【0096】
<地形データ出力部760>
地形データ出力部760は、油圧ショベル101の情報コントローラ170上で動作するアプリケーションや、の要求に応じて地形DB155a内の地形データを出力する。地形DB155aへのデータ出力要求は、例えば、出力したいブロックの識別子、IDx、IDy指定することで、必要な地形データの範囲を要求する。
【0097】
以上のように構成した本実施の形態においては、地形計測装置100が出力した地形情報について、車体の位置に応じた優先度を考慮して地形統合を行うことで、施工現場400の状況に応じた地形統合が可能となり、質の良い地形情報を効率よく取得することができる。
【0098】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図26図34を参照しつつ説明する。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0099】
本実施の形態は、施工現場における土質情報を考慮し、複数の地形計測装置で得られた地形データの情報を統合するものである。
【0100】
図26及び図27は、本実施の形態における作業現場の様子を示す図である。
【0101】
図26では、施工現場400において、油圧ショベル101が2機作業を行っている。図27は、この時の優先度DB155d内の優先度情報を示した図である。このとき、各々の油圧ショベルに搭載された地形計測センサ130には、各々の計測領域410が重なった重複領域460が存在している。また、油圧ショベル2機のうち1機は、地盤の軟弱な領域470で施工を行っているとする。この場合、重複領域460における地形データの精度は、地盤の安定している場所で作業を行っている油圧ショベルに設置された地形計測装置130のほうが高いと考えられる。したがって、本実施形態では、後述の処理によって、図27に示すように地盤の軟弱な領域470の上に存在する油圧ショベル101に設けられた地形計測装置100の計測範囲の優先度を低く設定することで、施工現場400の状況に応じた地形統合が可能となり、質の良い地形情報を効率よく取得することができる。
【0102】
<地形情報管理システム>
本実施の形態において、環境情報は、少なくとも作業現場における単位区画毎の土質の情報である土質情報を含み、地形情報管理システムの地形情報管理装置は、土質情報に基づいて、複数の地形計測装置がそれぞれ予め軟弱であると設定した土質の地盤上にあるか否かを判定し、予め軟弱であると設定した土質の地盤上にあると判定された地形計測装置の優先度を、予め硬質である(すなわち、軟弱ではない)と設定した土質の地盤上にあると判定された場合の地形計測装置の優先度に対して相対的に下げる処理を行う。
【0103】
図28は、本実施の形態における地形情報管理システムの機能ブロックを示す図である。
【0104】
図28において、地形情報管理システムは、地形計測装置100、位置姿勢計測装置200、及び地形情報管理装置300を備えている。
【0105】
地形情報管理装置100は、座標変換部710を有し、位置姿勢計測装置200は、位置姿勢演算部720を有する。地形情報管理装置300は、領域分割部730、優先度算出部740、地形データ合成部750および地形データ出力部760を有する。
【0106】
<土質DB155b>
土質DB155bは、施工現場400の土質情報を保持する。ここで、土質とは、地盤の軟弱さを示す値を含むものとする。土質データの取得方法としては、例えば、施工前に計測した地盤の軟弱さをブロック領域ごとに保持する。また、施工中の作業機械の姿勢変化を計測し、土質の判定を行ってもよい。なお、土質情報は、少なくともブロック領域ごとに保持しているものとする。
【0107】
<優先度算出部740>
図29~34は、優先度設定領域の設定例を示す図である。
【0108】
優先度算出部740は、地形計測装置100から出力される地形計測装置100の位置姿勢情報に加え、土質DB155b内の施工現場における土質情報を用いて地形計測装置100の出力する地形データの優先度を算出し、算出結果を優先度DB155dに出力する。
【0109】
優先度算出部740は、車体位置1100および作業機械先端位置1200をもとに、あらかじめ設定された優先度設定領域の設定対象なるブロックについてブロック識別子IDxおよびIDyを算出する。地形計測装置100の優先度設定領域480は、地形計測装置100の車体位置1100を基準として、地形計測センサ130の計測領域をもとに、例えば、図29のように優先度設定領域480の設定対象とする地形計測装置100の周囲のブロックの位置および数を設定する。なお、油圧ショベル101のような旋回を伴う機械では、図30図34のように、車体位置1100に加えて、作業機械先端位置1200の位置関係に基づいて設定してもよい。また、地形計測装置100の存在するブロック420について、後述の処理において、地形計測装置100の計測範囲をもとに算出した優先度設定領域480とは異なる優先度算出を行ってもよい。
【0110】
また、優先度算出部740は、土質DB155bより優先度設定領域480に指定されたブロックの地盤の軟弱さを取得する。そして、優先度設定領域480に指定されたブロックの優先度を設定する。優先度の設定方法は、本実施形態の場合、施工を行っている油圧ショベル101の下の地盤の軟弱さを考慮し、軟弱な地盤で施工を行っている機械の優先度を小さくなるように設定する。軟弱な地盤で施工している作業機械に設置されている地形計測センサ130の取得した地形データの優先度を小さくすることで、より地盤の安定した場所で施工を行っている作業機械に設置された地形計測センサの計測結果の優先度を高くすることが出来る。
【0111】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0112】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0113】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を図35図37を参照しつつ説明する。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0114】
本実施の形態は、施工現場における作業領域の斜度を考慮し、複数の地形計測装置で得られた地形データの情報を統合するものである。
【0115】
図35及び図36は、本実施の形態における作業現場の様子を示す図である。
【0116】
図35では、施工現場400において、油圧ショベル101が2機作業を行っている。図36は、この時の優先度DB155d内の優先度情報を示している。このとき、各々の油圧ショベルに搭載された地形計測センサ130には、各々の計測領域410が重なった重複領域460が存在している。また、油圧ショベル2機のうち1機は、斜面での施工を行っているとする。この場合、重複領域460における地形データの精度は、平地で施工を行っている油圧ショベルに設置された地形計測装置130のほうが高いと考えられる。したがって、第3の実施形態では、後述の処理によって、図36のように斜面上に存在する油圧ショベル101に設けられた地形計測装置100(ただし、図36においては図示しない)の計測領域の優先度を低く設定することで、施工現場400の状況に応じた地形統合が可能となり、質の良い地形情報を効率よく取得することができる。
【0117】
<地形情報管理システム>
本実施の形態において、環境情報は、少なくとも作業現場における地形の形状に関する情報である地形情報を含み、地形情報管理システムの地形情報管理装置は、地形情報に基づいて、複数の地形計測装置のそれぞれにおける現況地形データの取得範囲内に、予め現況地形データの取得が困難な計測困難地形として設定した地形が含まれるか否かを判定し、現況地形データの取得範囲内に計測困難地形が含まれると判定された地形計測装置の優先度を、含まれないと判定された場合の地形計測装置の優先度に対して相対的に下げる処理を行う。
【0118】
図37は、本実施の形態における地形情報管理システムの機能ブロックを示す図である。
【0119】
図37に示すように、地形情報管理システムは、地形計測装置100、位置姿勢計測装置200、地形情報管理装置300からなる。
【0120】
地形情報管理装置100は、座標変換部710を有し、位置姿勢計測装置200は、位置姿勢演算部720を有する。地形情報管理装置300は、領域分割部730、優先度算出部740、地形データ合成部750および地形データ出力部760を有する。
【0121】
<優先度算出部740>
優先度算出部740は、地形計測装置100から出力される地形計測装置100の位置姿勢情報に加え、地形DB155a内の施工現場400における地形データを用いて地形計測装置100の出力する地形データの優先度を算出し、算出結果を優先度DB155dに出力する。
【0122】
優先度算出部740は、地形DB155aより優先度設定領域480に指定されたブロックの地形データを取得する。そして、優先度設定領域480に指定されたブロックの優先度を設定する。優先度の設定方法は、本実施形態の場合、施工を行っている油圧ショベル101の作業場の斜度を考慮し、より平坦な地形で施工を行っている機械の優先度を高くなるように設定する。なお、斜面の算出方法は、ブロック領域の地形の平均勾配などを用いる。傾斜の大きい場所で施工している作業機械に設置されている地形計測センサ130の取得した地形データの優先度を低くすることで、より安定した場所で施工を行っている作業機械に設置された地形計測センサの計測結果の優先度を高くすることが出来る。
【0123】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0124】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0125】
<第4の実施の形態>
本発明の第4の実施の形態を図38図42を参照しつつ説明する。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0126】
本実施の形態は、施工現場における油圧ショベル101の作業領域430作業領域を考慮し、複数の地形計測装置で得られた地形データの情報を統合するものである。ここで、作業領域とは、個々の作業機械が作業する領域を、施工管理者がサーバ上で管理している情報のことである。
【0127】
図38及び図39は、本実施の形態における作業現場の様子を示す図である。
【0128】
図38では、施工現場400において、油圧ショベル101が2機作業を行っている。図39は、この時の優先度DB155d内の優先度情報を示している。このとき、各々の油圧ショベルに搭載された地形計測センサ130には、各々の計測領域410が重なった重複領域460が存在している。このとき、施工現場に設置されたサーバなどを用いて、各作業機械の作業領域をデータによって管理しているとすると、重複領域460における地形データは、重複領域460を作業領域とする作業機械に設置された地形計測センサ130の計測結果を採用するほうが、機械の映り込みも少なく、作業機械が掘削、放土等を行った直後の最新の情報を取得できると考えられる。したがって、第4の実施形態では、後述の処理によって、図39のように斜面上に存在する油圧ショベル101に設けられた地形計測装置100(ただし、図39においては図示しない)の出力する地形データの優先度を低く設定することで、施工現場400の状況に応じた地形統合が可能となり、質の良い地形情報を効率よく取得することができる。
【0129】
<地形情報管理システム>
本実施の形態において、環境情報は、少なくとも作業機械の作業領域に関する情報である作業領域情報を含み、地形情報管理システムの地形情報管理装置は、作業領域情報に基づいて、複数の地形計測装置のそれぞれにおける現況地形データの取得範囲内に作業領域が含まれるか否かを判定し、現況地形データの取得範囲内に作業領域が含まれると判定された地形計測装置の優先度を、含まれないと判定された場合の地形計測装置の優先度に対して相対的に上げる処理を行う。
【0130】
図40は、本実施の形態における地形情報管理システムの機能ブロックを示す図である。
【0131】
図40に示すように、地形情報管理システムは、地形計測装置100、位置姿勢計測装置200、及び地形情報管理装置300を備えている。
【0132】
地形情報管理装置100は、座標変換部710を有し、位置姿勢計測装置200は、位置姿勢演算部720を有する。地形情報管理装置300は、領域分割部730、優先度算出部740、地形データ合成部750および地形データ出力部760を有する。
【0133】
<作業領域DB155c>
図41及び図42は、作業領域情報の一例を示す図である。
【0134】
作業領域DB155cは施工現場400の作業領域情報を保持する。作業領域情報430とは、施工現場400において、複数の作業機械101が施工を行う際に、それぞれの作業機械が施工を行う範囲をサーバ等によって管理するための情報である。作業領域情報430を表すデータは、例えば図41に示すようなポリゴン形式のデータを用いる。このポリゴン形式のデータは、点列の順番によって内外を判定するものとし、図42の示すように、各点のサイト座標系930での座標値(Xw,Yw,Zw)および点番号No.で構成される。作業領域DB155c内では、作業領域430の情報を例えば、設定された時刻、および対象となる作業機の識別子ID(n)とともに保持する。
【0135】
<優先度算出部740>
優先度算出部740は、地形計測装置100から出力される地形計測装置100の位置姿勢情報に加え、作業領域DB155c内の施工現場における作業機械の作業領域情報430を用いて地形計測装置100の出力する地形データの優先度を算出し、算出結果を優先度DB155dに出力する。
【0136】
また、優先度算出部740は、作業領域DB155cより作業領域情報を取得し、優先度設定領域480に指定されたブロックが、自機の作業領域であるか判定する。作業領域の判定は、自機の作業領域情報を作業領域DB155cより取得し、優先度設定領域480に指定されたブロックが、作業領域に含まれるか調べればよい。
【0137】
また、優先度算出部740は、優先度設定領域480に指定されたブロックの優先度を設定する。優先度の設定方法は、優先度設定領域480に指定されたブロックが、作業領域に含まれていた場合、そのブロックの優先度を高く設定する。作業領域内で施工している作業機械に設置されている地形計測センサ130の取得した地形データの優先度を大きくすることで、機械の映り込みが少ない、最新の地形情報の優先度を高くすることが出来る。
【0138】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0139】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0140】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。また、各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くように構成してもよい。
【符号の説明】
【0141】
100…地形計測装置、101…油圧ショベル、110…フロント作業機、111…ブーム、112…アーム、113…バケット、121…ブームシリンダ、122…アームシリンダ、123…バケットシリンダ、124…旋回モータ、125…走行モータ、126…走行モータ、130…車体、131…上部旋回体、132…下部走行体、141…コントロールバルブ、142…油圧ポンプ、143…エンジン、144…パイロットバルブ、145…コントロールバルブ、151…運転室、152…操作レバー、153…モニタ、155…記憶装置、155a…地形DB、155b…土質DB、155c…作業領域DB、155d…優先度DB、155e…車体パラメータ、157…無線通信装置、161…情報コントローラ、162…メインコントローラ、170…情報コントローラ、171…右GNSS受信機、172…左GNSS受信機、173…慣性計測装置、181~184…慣性計測装置、200…位置姿勢計測装置、300…地形情報管理装置、900…車体座標系、910…センサ座標系、920…計測点、930…サイト座標系、1611…CPU、1612…RAM、1613…ROM、1614…外部I/F、1615…バス
図1
図2
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