IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ CKD株式会社の特許一覧

特許7489357ポケット部形成装置、ブリスタ包装機及びブリスタシートの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ポケット部形成装置、ブリスタ包装機及びブリスタシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 9/04 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
B65B9/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021119705
(22)【出願日】2021-07-20
(65)【公開番号】P2023015749
(43)【公開日】2023-02-01
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】野田 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】矢野 嗣士
【審査官】西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-085561(JP,U)
【文献】特開2021-048000(JP,A)
【文献】特開2005-028626(JP,A)
【文献】特許第3754026(JP,B2)
【文献】特開昭54-132665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 9/04
B29C 51/42
B31B 50/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される帯状の容器フィルムに対し、内容物を収容するためのポケット部を形成するためのポケット部形成装置であって、
前記容器フィルムを予熱する予熱手段と、
前記予熱手段により軟化状態となった前記容器フィルムに前記ポケット部を形成するために、該容器フィルムに対し気体の圧力を加える気体圧発生手段とを具備し、
前記予熱手段は、
平面視したときに前記容器フィルムのうち前記ポケット部の形成予定部位の少なくとも一部と重なる位置に設けられるとともに、通気性を有し、かつ、通電により発熱可能な膜状のヒータと、
前記ヒータを通過する気体を発生させることで、前記ヒータにより加熱された気体によって少なくとも前記形成予定部位を予熱可能な予熱気体発生手段とを備え
前記ヒータは、複数重ねられた状態で設けられていることを特徴とするポケット部形成装置。
【請求項2】
前記ヒータは、繊維状金属からなり、占積率が5%以上30%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポケット部形成装置。
【請求項3】
複数の前記ヒータは、平面視したときにそれぞれ異なる形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポケット部形成装置。
【請求項4】
複数の前記ヒータは、それぞれ独立して発熱可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポケット部形成装置。
【請求項5】
前記容器フィルムの予熱を行うポジションと、前記ポケット部の形成を行うポジションとが前記容器フィルムの搬送方向において同一の位置とされることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のポケット部形成装置。
【請求項6】
前記気体圧発生手段は、前記予熱気体発生手段を兼ねることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のポケット部形成装置。
【請求項7】
前記ヒータは、複数のスリットによって分離された複数の導電路を並列に備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のポケット部形成装置。
【請求項8】
前記ヒータは、隣接する前記導電路同士を繋ぐ連結部を備えることを特徴とする請求項に記載のポケット部形成装置。
【請求項9】
前記容器フィルム側に向けて開口する開口部を有するとともに前記ヒータが配置される内部空間を具備し、該内部空間に対し前記気体圧発生手段及び前記予熱気体発生手段から気体が供給可能に構成され、かつ、前記開口部の周囲部分が前記容器フィルムにおける前記形成予定部位の周囲部分に対し圧接可能なチャンバーと、
前記内部空間から該内部空間の外へと気体を排出するための排気手段と、
前記排気手段による前記内部空間から該内部空間の外への気体の排出可否を切換可能な切換手段とを備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のポケット部形成装置。
【請求項10】
容器フィルムに形成されたポケット部に内容物が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートを製造するためのブリスタ包装機であって、
請求項1乃至のいずれか1項に記載のポケット部形成装置と、
前記ポケット部形成装置により形成された前記ポケット部に内容物を充填する充填手段と、
内容物の充填された前記ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対し帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着されてなる帯状のブリスタフィルムから前記ブリスタシートを切離す切離手段とを備えることを特徴とするブリスタ包装機。
【請求項11】
容器フィルムに形成されたポケット部に内容物が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートの製造方法であって、
搬送される帯状の前記容器フィルムに対し前記ポケット部を形成するためのポケット部形成工程を有し、
前記ポケット部形成工程は、
前記容器フィルムを予熱する予熱工程と、
前記予熱工程により軟化状態となった前記容器フィルムに前記ポケット部を形成するために、該容器フィルムに対し気体の圧力を加える気体圧発生工程とを含み、
前記予熱工程では、平面視したときに前記容器フィルムのうち前記ポケット部の形成予定部位の少なくとも一部と重なる位置に設けられるとともに、通気性を有し、かつ、通電により発熱可能な膜状のヒータを用い、該ヒータを通過する気体を発生させることで、該ヒータにより加熱された気体によって少なくとも前記形成予定部位を予熱し、
前記ヒータは、複数重ねられた状態で設けられており、
前記予熱工程は、複数の前記ヒータのうち発熱対象となるものを変更して複数回行われ、
前記気体圧発生工程は、前記予熱工程と交互に複数回行われることを特徴とするブリスタシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収容するためのポケット部を形成するポケット部形成装置、ポケット部に内容物が収容されてなるブリスタシートを製造するためのブリスタ包装機及びブリスタシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に医薬品や食料品等の分野において用いられるブリスタシートとして例えばPTP(プレススルーパック)シートが知られている。PTPシートは、錠剤等の内容物が収容されるポケット部を有する容器フィルムと、その容器フィルムに対しポケット部の開口側を密封するように取着されるカバーフィルムとを備えている。
【0003】
かかるPTPシートは、ブリスタ包装機の一種であるPTP包装機を用いて製造される。PTP包装機は、帯状の容器フィルムにポケット部を形成するポケット部形成装置などを備えている。
【0004】
ポケット部形成装置としては、容器フィルムを予熱した上で、該容器フィルムを真空成形することによりポケット部を形成するもの(真空成形装置)や、容器フィルムを予熱した上で、該容器フィルムに対し所定のプラグ(成形凸部)を押し込むことによりポケット部を形成するもの(プラグ成形装置)が広く知られている。
【0005】
また、真空成形装置においては、容器フィルムとの接触により容器フィルムを予熱するヒーティングドラムの外周面であってポケット部に対応する位置に、ポケット部よりもやや小さな穴を設ける技術が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。この技術によれば、容器フィルムのうちポケット部の底部(頂点部)に当たる部分の予熱温度が比較的低くなるように容器フィルムの温度分布状態を調節することができるため、ポケット部の底部が過度に薄肉となることを防止できるとされている。
【0006】
さらに、プラグ成形装置においては、予熱された容器フィルムを最終的なポケット部の突出方向とは逆方向に一旦突出変形させ、その後、プラグ(成形凸部)によってこの突出変形部分をその突出方向とは反対側に押圧することで、ポケット部を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献2等参照)。この技術によれば、ポケット部の底部(頂点部)が過度に厚肉となることをより確実に防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭55-5369号公報
【文献】特許第3754026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載の技術では、容器フィルムのうちポケット部の内面を構成することとなる面に対し、ヒーティングドラムやプラグを接触させる必要がある。そのため、接触に伴うポケット部の汚損が生じるおそれがある。ポケット部の汚損が生じてしまうと、内容物に対する異物の付着などの悪影響が発生し得る。
【0009】
また、上記特許文献1,2に記載の技術では、ポケット部の肉厚を十分に調節することができないおそれがある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポケット部の汚損を抑制することができるとともに、ポケット部の肉厚調節をより容易にかつより精度よく行うことができるポケット部形成装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0012】
手段1.搬送される帯状の容器フィルムに対し、内容物を収容するためのポケット部を形成するためのポケット部形成装置であって、
前記容器フィルムを予熱する予熱手段と、
前記予熱手段により軟化状態となった前記容器フィルムに前記ポケット部を形成するために、該容器フィルムに対し気体の圧力を加える気体圧発生手段とを具備し、
前記予熱手段は、
平面視したときに前記容器フィルムのうち前記ポケット部の形成予定部位の少なくとも一部と重なる位置に設けられるとともに、通気性を有し、かつ、通電により発熱可能な膜状のヒータと、
前記ヒータを通過する気体を発生させることで、前記ヒータにより加熱された気体によって少なくとも前記形成予定部位を予熱可能な予熱気体発生手段とを備え
前記ヒータは、複数重ねられた状態で設けられていることを特徴とするポケット部形成装置。
【0013】
上記手段1によれば、ヒータの通過に伴い該ヒータにより加熱された気体(気流)によって容器フィルムを予熱した上で、気体圧発生手段により容器フィルムへと気体の圧力を加えることによって、ポケット部を形成することができる。従って、容器フィルムに対しプラグやヒーティングドラムなどの物を接触させることなく、容器フィルムの予熱及びポケット部の形成を行うことができる。これにより、ポケット部の汚損を効果的に抑制することができ、ひいては内容物に対する異物の付着やポケット部への異物の混入をより確実に防止することができる。
【0014】
さらに、上記手段1によれば、ヒータの形状(パターン)や部位における通電量などを調節することで、容器フィルム(形成予定部位)における温度分布状態を容易に調節することができる。例えば、ヒータの形状を調節することで、容器フィルム(形成予定部位)のうちポケット部の底部に相当する部位を比較的低温とし、それ以外の部位を比較的高温とするといった調節が容易に可能となる。また、気体の圧力によりポケット部を形成するため、プラグを用いてポケット部を形成する場合と比べて、ポケット部の形成時に、容器フィルムが局所的に冷却されることをより確実に防止できる。これらが相俟って、形成されるポケット部における肉厚調節をより容易にかつより精度よく行うことができる。
【0015】
また、ヒータを通過する気体により容器フィルムを予熱するため、容器フィルムにおいては、ヒータの厳密な形状を転写したような温度分布状態ではなく、ヒータの大まかな形状を転写したような温度分布状態を生じさせることができる。そのため、ヒータの影響を過敏に受けて、容器フィルムにおける温度分布状態に極端なばらつきが生じることをより確実に抑えることができる。
【0016】
加えて、ポケット部における肉厚調節が可能であるため、ポケット部の一部の過度の薄肉化を防ぐことができる。従って、ポケット部の一部の薄肉化による防湿性の低下を見越して、厚肉の容器フィルムを用いるといった必要がなくなる。これにより、材料コストの低減を図ることができる。また、最終的に廃棄(排出)される容器フィルムの量を削減して、環境負荷の低減を図ることも可能となる。
【0017】
さらに、ヒータは膜状であるため、ヒータの温度を瞬時に上下させることができる。すなわち、ヒータの温度調節に係る応答速度を高めることができる。これにより、容器フィルムの予熱に要する時間などの短縮化を図ることができ、生産性を向上させることができる。また、ヒータが膜状であることは、ポケット部形成装置のコンパクト化にも寄与する。
さらに、複数のヒータを用いて容器フィルムを予熱することができる。そのため、容器フィルムの温度分布状態の調節に係る利便性を高めたり、予熱時間の短縮化を図ったりすることができる。
【0018】
手段2.前記ヒータは、繊維状金属からなり、占積率が5%以上30%以下であることを特徴とする手段1に記載のポケット部形成装置。
【0019】
尚、ヒータの占積率は、ヒータの概形を示す仮想体の体積に対する、ヒータの実体部分の体積の割合ということができる。
【0020】
上記手段2によれば、ヒータは、繊維状金属同士の間に微小な隙間が多数設けられた状態となる。そのため、容器フィルムの予熱時において、気体(気流)がヒータを通過しやすくなり、ヒータから気体(気流)へと熱を効率よく伝達することができる。また、ヒータの温度調節に係る応答速度をより高めることができる。
【0021】
尚、ヒータの占積率を5%以上とすることで、ヒータの剛性をある程度確保することができ、ヒータの形状維持に支障が生じることをより確実に防止できる。
【0024】
手段.複数の前記ヒータは、平面視したときにそれぞれ異なる形状であることを特徴とする手段1又は2に記載のポケット部形成装置。
【0025】
上記手段によれば、それぞれ異なる形状とされた複数のヒータが用いられるため、容器フィルムの温度分布状態を一層細かく調節することが可能となる。これにより、ポケット部の肉厚調節に係る自由度を高めることができる。
【0026】
手段.複数の前記ヒータは、それぞれ独立して発熱可能に構成されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のポケット部形成装置。
【0027】
上記手段によれば、複数のヒータのうちの一部のみを発熱させることができる。従って、一部のヒータを発熱させて該ヒータを通る気体により容器フィルムを予熱した上で、容器フィルムを仮変形させ、その後、全てのヒータを発熱させてこれらヒータを通る気体により容器フィルムを予熱した上で、最終的にポケット部を形成するといったことが可能となる。そのため、ポケット部の肉厚をより一層細かく調節することができる。
【0028】
手段.前記容器フィルムの予熱を行うポジションと、前記ポケット部の形成を行うポジションとが前記容器フィルムの搬送方向において同一の位置とされることを特徴とする手段1乃至のいずれかに記載のポケット部形成装置。
【0029】
上記手段によれば、容器フィルムの予熱を行うポジションと、ポケット部の形成を行うポジションとが容器フィルムの搬送方向において同一の位置とされる。これにより、各ポジションが前記搬送方向に沿って別々に位置する場合と比べて、ポケット部形成装置をよりコンパクトにまとめることができ、装置の製造やメンテナンス等に係るコストの抑制を一層図ることができる。尚、上記手段6は、例えば、ヒータを通過した気体の圧力によりポケット部の形成を行うように構成すること等により実現可能である。
【0030】
尚、上記の通り、ヒータは膜状であり、ヒータの温度を瞬時に上下させることができるため、ヒータを通過した気体の圧力によりポケット部の形成を行うように構成した場合には、ヒータへの通電を停止することで、ポケット部の形成中や形成直後に、ヒータを通過する気体を利用した容器フィルムの冷却を開始することができる。これにより、ポケット部の形成に係るスピードの向上を図ることができる。
【0031】
手段.前記気体圧発生手段は、前記予熱気体発生手段を兼ねることを特徴とする手段1乃至のいずれかに記載のポケット部形成装置。
【0032】
上記手段によれば、装置の一層のコンパクト化を図ることができる。
【0033】
手段.前記ヒータは、複数のスリットによって分離された複数の導電路を並列に備えることを特徴とする手段1乃至のいずれかに記載のポケット部形成装置。
【0034】
上記手段によれば、各導電路の抵抗値を比較的大きなものとすることができ、ヒータの昇温性能を十分に高めることができる。
【0035】
尚、ヒータがスリットを有する場合において、ヒータの輻射熱を利用して容器フィルムを予熱する構成にすると、容器フィルムのうちスリットと重なる部位が予熱されにくくなり、容器フィルムの温度分布状態において、スリットに起因する偏りが生じるおそれがある。この点、上記手段1等によれば、ヒータを通過する気体(気流)によって容器フィルムを予熱するため、容器フィルムのうちスリットと重なる部位も十分に予熱することができる。従って、スリットに起因する温度分布状態の偏りを抑えることができる。
【0036】
手段.前記ヒータは、隣接する前記導電路同士を繋ぐ連結部を備えることを特徴とする手段に記載のポケット部形成装置。
【0037】
上記手段によれば、連結部を設けることによって、ヒータの剛性向上を図ることができる。また、温度上昇に伴い導電路の抵抗値が増大したときに、連結部を通して、この導電路から隣接する導電路へと電流を流すことができる。従って、各導電路の温度をより均等に上昇させることができ、容器フィルムにおいて所望の温度分布状態をより確実に作り出すことができる。
【0038】
尚、各導電路の温度を均等に上昇させるという上記作用効果をより確実に発揮させるという点では、連結部の幅を、該連結部によって繋がれる各導電路の幅よりも小さなものとすることが好ましい。
【0039】
手段.前記容器フィルム側に向けて開口する開口部を有するとともに前記ヒータが配置される内部空間を具備し、該内部空間に対し前記気体圧発生手段及び前記予熱気体発生手段から気体が供給可能に構成され、かつ、前記開口部の周囲部分が前記容器フィルムにおける前記形成予定部位の周囲部分に対し圧接可能なチャンバーと、
前記内部空間から該内部空間の外へと気体を排出するための排気手段と、
前記排気手段による前記内部空間から該内部空間の外への気体の排出可否を切換可能な切換手段とを備えることを特徴とする手段1乃至のいずれかに記載のポケット部形成装置。
【0040】
上記手段によれば、切換手段により内部空間からその外への気体の排出可否を切換えることで、容器フィルムの予熱やポケット部の形成を行う際に、チャンバーの内部空間における気体の状態を制御することができる。従って、容器フィルムを予熱する際には、例えば排気手段による気体の排出可否を交互に繰り返し切換えることで、予熱気体発生手段から供給される気体によって内部空間の気圧が過度に上昇することを防止しつつ、高温の気体を内部空間にある程度滞留させることができる。高温の気体を滞留させることで、ヒータに生じる温度ばらつきを均すことができ、ひいては容器フィルムにおける温度分布状態に意図しないばらつきが生じることをより確実に抑えることができる。また、ポケット部を形成する際には、例えば排気手段による気体の排出を停止することで、容器フィルムに加わる圧力をより確実に高め、ポケット部の形成を効率よく行うことが可能となる。
【0041】
手段10.容器フィルムに形成されたポケット部に内容物が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートを製造するためのブリスタ包装機であって、
手段1乃至のいずれかに記載のポケット部形成装置と、
前記ポケット部形成装置により形成された前記ポケット部に内容物を充填する充填手段と、
内容物の充填された前記ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対し帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着されてなる帯状のブリスタフィルムから前記ブリスタシートを切離す切離手段とを備えることを特徴とするブリスタ包装機。
【0042】
上記手段10によれば、上記手段1等と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0043】
手段11.容器フィルムに形成されたポケット部に内容物が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるブリスタシートの製造方法であって、
搬送される帯状の前記容器フィルムに対し前記ポケット部を形成するためのポケット部形成工程を有し、
前記ポケット部形成工程は、
前記容器フィルムを予熱する予熱工程と、
前記予熱工程により軟化状態となった前記容器フィルムに前記ポケット部を形成するために、該容器フィルムに対し気体の圧力を加える気体圧発生工程とを含み、
前記予熱工程では、平面視したときに前記容器フィルムのうち前記ポケット部の形成予定部位の少なくとも一部と重なる位置に設けられるとともに、通気性を有し、かつ、通電により発熱可能な膜状のヒータを用い、該ヒータを通過する気体を発生させることで、該ヒータにより加熱された気体によって少なくとも前記形成予定部位を予熱し、
前記ヒータは、複数重ねられた状態で設けられており、
前記予熱工程は、複数の前記ヒータのうち発熱対象となるものを変更して複数回行われ、
前記気体圧発生工程は、前記予熱工程と交互に複数回行われることを特徴とするブリスタシートの製造方法。
【0044】
上記手段11によれば、上記手段1等と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0046】
また、容器フィルムを予熱した上で該容器フィルムを変形させることが繰り返し行われることにより、最終的にポケット部が形成される。そして、複数回行われる予熱工程では、発熱対象となるヒータが変更される。従って、容器フィルムの温度分布状態を調節しつつ、ポケット部を徐々に形成していくことができる。そのため、ポケット部の肉厚をより細かく調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】PTPシートを示す斜視図である。
図2】PTPシートの部分拡大断面図である。
図3】PTPフィルムを示す斜視図である。
図4】PTP包装機の概略構成を示す模式図である。
図5】ポケット部形成装置の概略構成を示す断面模式図である。
図6】ヒータの構造を示すための写真図である。
図7】ヒータの平面模式図である。
図8】PTPシートの製造工程を示すフローチャートである。
図9】内部空間に気体を滞留させつつ容器フィルムを予熱するときの状態を示す断面模式図である。
図10】内部空間から気体を排出させつつ容器フィルムを予熱するときの状態を示す断面模式図である。
図11】気体の圧力によってポケット部を形成するときの状態を示す断面模式図である。
図12】第1実施形態において、予熱用ブローや排気管の開閉などに関するタイミングを示すタイミングチャートである。
図13】第2実施形態におけるポケット部形成装置の概略構成を示す断面模式図である。
図14】第二ヒータの平面模式図である。
図15】肉厚の計測位置を示すためのポケット部の断面模式図である。
図16】形成手法a1,b1,b2により形成されたポケット部の肉厚を示すグラフである。
図17】第3実施形態におけるポケット部形成工程のフローチャートである。
図18】第一予熱工程において、容器フィルムを予熱するときの状態を示す断面模式図である。
図19】第一気体圧発生工程において、気体の圧力によって容器フィルムを変形させるときの状態を示す断面模式図である。
図20】第二予熱工程において、容器フィルムを再度予熱するときの状態を示す断面模式図である。
図21】第二気体圧発生工程において、気体の圧力によってポケット部を形成するときの状態を示す断面模式図である。
図22】第3実施形態において、予熱用ブローや排気管の開閉などに関するタイミングを示すタイミングチャートである。
図23】形成手法a1,a2により形成されたポケット部の肉厚を示すグラフである。
図24】別の実施形態におけるPTP包装機の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔第1実施形態〕
まず、「ブリスタシート」としてのPTPシートの構成について説明する。図1,2に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。
【0049】
容器フィルム3は、例えばPP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の透明の熱可塑性樹脂材料により形成されている。一方、カバーフィルム4は、例えばポリプロピレン樹脂等からなるシーラントが表面に設けられた不透明材料(例えばアルミニウム箔等)により構成されている。勿論、各フィルム3,4の材料は、これらに限定されるものではなく、他の材質のものを採用してもよい。
【0050】
ポケット部2は、円筒状又は円錐台筒状をなす側部2aと、平面視略円形状の底部2bと、側部2aの端部から底部2bの外周部にかけて設けられた角部2cとを備えている。底部2bは、外側に凸の湾曲形状をなしており、錠剤5の表面と相対向した状態となっている。
【0051】
PTPシート1は、帯状の容器フィルム3及び帯状のカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6(図3参照)が打抜かれることによって製造されるものであり、平面視略矩形状に形成されている。本実施形態では、PTPフィルム6が「ブリスタフィルム」に相当する。
【0052】
PTPシート1には、その長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列が、その短手方向に2列形成されている。各ポケット部2には、「内容物」としての錠剤5が1つずつ収容されている。本実施形態において、錠剤5は、円盤状の素錠である。
【0053】
次に、上記PTPシート1を製造するためのPTP包装機10の概略構成について説明する。本実施形態では、PTP包装機10が「ブリスタ包装機」に相当する。
【0054】
図4に示すように、PTP包装機10の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。ロール状に巻回された容器フィルム3の引出し端側は、ガイドロール13に案内されている。容器フィルム3は、ガイドロール13の下流側においてフィルム受けロール20に掛装されており、フィルム受けロール20によって間欠的に搬送される。
【0055】
ガイドロール13とフィルム受けロール20との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、ポケット部形成装置7が配設されている。ポケット部形成装置7は、下型71及び上型72を備えている。ポケット部形成装置7は、容器フィルム3を予熱した上で、予熱により軟化状態となった容器フィルム3の所定位置に複数のポケット部2を形成する。ポケット部2の形成は、フィルム受けロール20による容器フィルム3の搬送動作間のインターバルの際に行われる。ポケット部形成装置7のより詳細な構成については、後に説明する。
【0056】
容器フィルム3の搬送経路に沿ってポケット部形成装置7よりも下流には、充填装置21及び検査装置22が配設されている。
【0057】
充填装置21は、所定間隔毎にシャッタを開いて錠剤5を自由落下させることにより、各ポケット部2に錠剤5を投入する。尚、充填装置21として、外周部にて錠剤5を吸着保持し、吸着解除に伴いポケット部2へと錠剤5を充填する装置(例えば吸着ドラム)などを用いてもよい。本実施形態では、充填装置21が「充填手段」を構成する。
【0058】
検査装置22は、例えば錠剤5が各ポケット部2に確実に充填されているか否か、錠剤5自体の異常(例えば破損など)の有無、ポケット部2への異物混入の有無などに関する検査を行う。
【0059】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、ガイドロール24によって加熱ロール25の方へと案内されている。
【0060】
加熱ロール25は、前記フィルム受けロール20に圧接可能となっており、両ロール20,25間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。そして、両フィルム3,4が両ロール20,25間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3にカバーフィルム4が取着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる。これにより、錠剤5が各ポケット部2に収容された帯状のPTPフィルム6が製造される。本実施形態では、フィルム受けロール20及び加熱ロール25によって「取着手段」が構成される。
【0061】
フィルム受けロール20から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール27及び間欠送りロール28の順に掛装されている。間欠送りロール28は、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール27は、フィルム受けロール20と間欠送りロール28との間でPTPフィルム6の弛みを防止してPTPフィルム6を常時緊張状態に保持する。
【0062】
間欠送りロール28から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール31及び間欠送りロール32の順に掛装されている。間欠送りロール32は、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール31は、前記間欠送りロール28,32間でのPTPフィルム6の弛みを防止する。
【0063】
間欠送りロール28とテンションロール31との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、スリット形成装置33及び刻印装置34が配設されている。スリット形成装置33は、PTPフィルム6の所定位置に切離用スリットを形成する。刻印装置34はPTPフィルム6の所定位置(例えばタグ部)に刻印を付す。尚、図1等では、切離用スリットや刻印の図示を省略している。
【0064】
間欠送りロール32から送り出されたPTPフィルム6は、その下流側においてテンションロール35及び連続送りロール36の順に掛装されている。間欠送りロール32とテンションロール35との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、シート打抜装置37が配設されている。シート打抜装置37は、PTPフィルム6をPTPシート1単位にその外縁を打抜く、つまりPTPフィルム6からPTPシート1を切離す機能を有する。本実施形態では、シート打抜装置37が「切離手段」を構成する。
【0065】
シート打抜装置37によって得られたPTPシート1は、コンベア39によって搬送され、完成品用ホッパ40に一旦貯留される。但し、前記検査装置22によって不良判定がなされた場合、この不良判定に係るPTPシート1は、完成品用ホッパ40へ送られることなく、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。排出されたPTPシート1は廃棄される。
【0066】
前記連続送りロール36の下流側には、裁断装置41が配設されている。そして、シート打抜装置37による打抜き後に帯状に残った残材部(スクラップ部)を構成する不要フィルム部42は、テンションロール35及び連続送りロール36に案内された後、裁断装置41に導かれる。裁断装置41は、不要フィルム部42を所定寸法に裁断する。裁断された不要フィルム部42(スクラップ)はスクラップ用ホッパ43に貯留された後、廃棄処理される。
【0067】
次いで、ポケット部形成装置7について説明する。ポケット部形成装置7は、図5に示すように、上述した下型71及び上型72に加えて、排気装置73、切換装置74、気体供給装置75及び制御装置76を備えている。本実施形態では、排気装置73が「排気手段」を構成し、切換装置74が「切換手段」を構成する。また、気体供給装置75が「気体圧発生手段」及び「予熱気体発生手段」を構成する。
【0068】
両型71,72は、搬送される容器フィルム3を挟む位置に設置されている。下型71は、図示しない駆動手段によって、上型72に接近する接近位置と上型72から離間する退避位置との間で上下に往復移動可能とされている。
【0069】
また、下型71は、ポケット部2の形状に対応し、上方に開口する複数の成形凹部71aを備えている。各成形凹部71aは、容器フィルム3の搬送方向及び幅方向に沿って並んで設けられている。さらに、下型71における成形凹部71aの周囲に位置する平坦部分は、上型72(後述する上側圧接部721c)との間で容器フィルム3を挟み込む下側圧接部71bを構成している。
【0070】
上型72は、図示しない駆動手段によって、下型71に接近する接近位置と下型71から離間する退避位置との間で上下に往復移動可能とされている。尚、下型71のみを上下に往復移動可能とし、上型72を固定状態で設置してもよい。
【0071】
上型72は、容器フィルム3の搬送方向及び幅方向に沿って並んで設けられた複数のシリンダユニット72aを備えている。各シリンダユニット72aは、各成形凹部71aの鉛直上方に当たる位置に設けられており、1のシリンダユニット72aは1の成形凹部71aに対応している。各シリンダユニット72aは、チャンバー721及びヒータユニット722を備えている。
【0072】
チャンバー721は、気体供給装置75から供給された気体を内部に閉じ込めて、この気体による容器フィルム3の予熱やポケット部2の形成を効率的に行うためのものである。チャンバー721は、気体供給装置75から気体が供給される内部空間721aを有している。また、内部空間721aは、搬送される容器フィルム3側に向けて開口した開口部721bを具備している。
【0073】
開口部721bは、ポケット部2の平面形状とほぼ同一の形状をなしている。チャンバー721における開口部721bの周囲部分は、両型71,72によって容器フィルム3を挟み込んだ状態において、下側圧接部71bとの間で容器フィルム3におけるポケット部2の形成予定部位の周囲部分を挟み込み、該周囲部分に圧接する上側圧接部721cを構成している。
【0074】
また、チャンバー721における上部には給気路721dが形成されており、この給気路721dを通って、気体供給装置75から内部空間721aへと気体が供給されるようになっている。本実施形態において、チャンバー721は、外部から内部空間721aへと通じる気体の流路として、開口部721b、給気路721d及び後述する排気管73a内のみを有するように構成されている。
【0075】
ヒータユニット722は、気体供給装置75から供給された気体が通過可能な通気性を有し、自身を通過する気体を加熱する機能を具備している。ヒータユニット722は、その外縁側部分がチャンバー721により保持された状態で内部空間721aに配置されている。ヒータユニット722は、両型71,72(両圧接部71b,721c)により容器フィルム3を挟んだ状態において、該容器フィルム3から僅かに離間した位置に配置されるようになっている。ヒータユニット722は、それぞれ膜状をなす第一絶縁体722a、ヒータ722b及び第二絶縁体722cがこの順序で重ねられてなる。本実施形態では、ヒータ722b及び気体供給装置75によって「予熱手段」が構成される。
【0076】
各絶縁体722a,722cは、ヒータ722bの形状維持や保護を行うとともに、チャンバー721及びヒータ722bを電気的に絶縁するためのものである。各絶縁体722a,722cは、例えばガラス繊維などによって形成されており、各絶縁体722a,722cの占積率はそれぞれ比較的小さなもの(例えば30%以下)とされている。占積率が比較的小さなものとされることで、これら絶縁体722a,722cは、少なくともその膜厚方向に沿って十分に良好な通気性を有するものとなっている。尚、占積率については後述する。
【0077】
ヒータ722bは、通電により発熱するものであり、所定の金属(例えばステンレスやタングステンなど)からなる導電性の繊維状金属が焼結されることで形成されている(図6参照)。また、ヒータ722b(特に後述するヒータ本体部7221)は、所定の厚さ(例えば100~200μmの厚さ)を有するとともに、その占積率は30%以下とされている。これにより、ヒータ722bは、少なくともその膜厚方向に沿って十分に良好な通気性を有するものとなっている。また、本実施形態において、ヒータ722bの占積率は5%以上とされており、繊維状金属の線径は5~10μm(例えば8μm)程度とされている。尚、図6にて示すヒータ722bの占積率は約13%である。
【0078】
ここで、ヒータ722bの占積率については例えば次のようにして求めることができる。すなわち、ヒータ722bを例えばステンレス鋼であるSUS304からなる繊維状金属により形成した場合、ヒータ722bの占積率は、「ヒータ722bの重さ(質量)/(ヒータ722bの概形を示す仮想体の体積×SUS304の密度)」という式で求めることができる。ここで、ヒータ722bの概形を示す仮想体の体積は、平面視したときにおけるヒータ722bの面積(ヒータ722bの外縁で囲まれた領域の面積)と、ヒータ722bの厚さとを乗算することで求めることができる。
【0079】
尚、占積率とは、物の概形を示す仮想体の体積に対する、その物の実体部分の体積の割合といえる。従って、ヒータ722bの占積率は、ヒータ722bの実際の体積を、ヒータ722bの前記仮想体の体積で除算することにより求めることも可能である。尚、絶縁体722a,722cの占積率は、絶縁体722a,722cの実際の体積を、絶縁体722a,722cの概形を示す仮想体の体積で除算することにより求めることができる。
【0080】
さらに、ヒータ722b(特に後述するヒータ本体部7221)は、平面視したときに容器フィルム3のうちポケット部2の形成予定部位の少なくとも一部と重なる位置に設けられている。本実施形態におけるヒータ722bは、図7に示すように、中心に孔が形成された平面視円形状のヒータ本体部7221と、ヒータ本体部7221に連結された一対の電極部7222と、ヒータ本体部7221の外周に突出形成された複数の被固定部7223とを備えている。従って、本実施形態のヒータ722bは、前記形成予定部位のうちポケット部2の底部(頂点部)の中心側部位になる部位とは重ならず、前記形成予定部位のうち前記中心側部位以外の部位になる部位と重なるようになっている。
【0081】
ヒータ本体部7221は、ヒータ722bにおける主たる発熱部分を構成する。ヒータ本体部7221は、複数のスリット7221aにより分離された複数(本実施形態では計8本)の導電路7221bを並列に備えている。図7では、1の導電路7221bに二点鎖線を付して示している。
【0082】
各導電路7221bの一端部は、一方の電極部7222に連なっており、各導電路7221bの他端部は、他方の電極部7222に連なっている。そして、所定の電源装置(不図示)によって導電路7221bに電流が流れることで、ヒータ本体部7221にて発熱が生じるようになっている。本実施形態では、ヒータ本体部7221(各導電路7221b)が例えば0.5秒間で300℃以上に昇温可能となるように、ヒータ本体部7221の材料や形状(例えば導電路7221bの厚さや幅など)などが設定されている。
【0083】
さらに、ヒータ本体部7221には、隣接する導電路7221b同士を繋ぐ連結部7221cが複数設けられている。本実施形態において、連結部7221cの幅は、該連結部7221cによって繋がれる両導電路7221bの幅よりも小さなものとされている。
【0084】
被固定部7223は、両絶縁体722a,722cに対するヒータ722bの固定に用いられる。本実施形態では、所定の接着剤(例えば水ガラス)により被固定部7223が両絶縁体722a,722cに接着されることで、ヒータ722bが両絶縁体722a,722cに固定された状態となっている。被固定部7223を利用することで、接着剤によるヒータ本体部7221への悪影響を防止可能である。
【0085】
図5に戻り、排気装置73は、チャンバー721に接続された排気管73aと、該排気管73a内の気体を内部空間721aの外へと送り出すための図示しない吸気装置(例えば真空ポンプ等)とを備えている。前記吸気装置を動作させることで、排気管73aを介して内部空間721aから該内部空間721aの外へと気体を排出可能となっている。
【0086】
切換装置74は、所定の排気バルブなどにより構成されており、排気管73aの開閉状態を切換える。切換装置74により排気管73aの開閉状態が切換えられることで、排気装置73による前記内部空間721aから該内部空間721aの外への気体の排出可否が切換えられる。
【0087】
気体供給装置75は、給気路721dを介して内部空間721aに対し所定の気体(例えばクリーンドライエア)を供給する。気体供給装置75から供給される気体は、ヒータ722b及び両絶縁体722a,722cを通過して容器フィルム3へと到達可能となっている。従って、ヒータ722bを発熱させた状態で、気体供給装置75から内部空間721aへと気体を供給し、ヒータ722bを通過する気体(気流)を発生させることによって、ヒータ722bにより加熱された気体によって容器フィルム3におけるポケット部2の形成予定部位を予熱することができるようになっている。本実施形態では、ヒータ722bの形状が上記のように設定されているため、予熱時には、前記形成予定部位のうち底部2bの中心側部位となる部位がさほど熱せられない一方、前記形成予定部位のうち前記中心側部位以外の部位となる部位が十分に熱せられることとなる。すなわち、前記形成予定部位においては、内側が比較的低温で外側が比較的高温の温度分布状態が生じることとなる。
【0088】
また、気体供給装置75から内部空間721aへと気体を供給し、ヒータ722b等を通過した気体の圧力を予熱された容器フィルム3に加えることで、容器フィルム3を成形凹部71a側に向けて膨出変形させて、ポケット部2を形成することが可能となっている。このポケット部2の形成時には、容器フィルム3(前記形成予定部位)における比較的高温の部位が特に引き延ばされる一方、容器フィルム3における比較的低温の部位はさほど引き延ばされない。そのため、本実施形態では、底部2bの中心側が比較的厚肉となり、側部2a及び角部2cなどが比較的薄肉となったポケット部2を容易に形成することができる。
【0089】
尚、上記の通り、容器フィルム3の予熱及びポケット部2の形成は、それぞれヒータ722b等を通過する気体により行われるようになっている。すなわち、本実施形態では、容器フィルム3の予熱を行うポジションと、ポケット部2の形成を行うポジションとは容器フィルム3の搬送方向において同一の位置となっている。
【0090】
制御装置76は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、各種データを一時的に記憶するRAM、情報を長期記憶するための記憶媒体(例えばハードディスク等)などを備えたコンピュータシステムにより構成されている。制御装置76は、ポケット部2の形成に係る各種装置の動作を制御する。
【0091】
例えば、制御装置76は、前記電源装置からヒータ本体部7221(導電路7221b)に対する投入電流を制御することで、ヒータ722b(ヒータ本体部7221)の発熱・冷却を切換えたり、ヒータ722bにおける温度や昇温速度を調節したりすることが可能とされている。また、制御装置76は、気体供給装置75を制御することで、気体供給装置75から内部空間721aに供給される気体の流量(L/min)を調節することが可能とされている。さらに、制御装置76は、切換装置74を制御することで、内部空間721aからの排気又は排気停止を切換可能とされている。
【0092】
次いで、ポケット部形成装置7によるポケット部2の形成工程を中心に、上記PTP包装機10によるPTPシート1の製造方法について説明する。
【0093】
まず、PTPシート1の製造工程では、図8に示すように、まず、ステップS1の搬送工程において、フィルム受けロール20等により容器フィルム3の間欠搬送が開始される。これにより、原反から容器フィルム3が徐々に下流へと搬送されていく状態となる。
【0094】
次に、ステップS2のポケット部形成工程が行われる。ポケット部形成工程は、容器フィルム3の一時停止中に行われる工程であり、ステップS21の閉鎖工程、ステップS22の予熱工程、ステップS23の気体圧発生工程及びステップS24の開放工程を含む。
【0095】
ステップS21の閉鎖工程では、各型71,72がそれぞれ退避位置から接近位置へと移動することで、両型71,72(両圧接部71b,721c)により容器フィルム3における前記形成予定部位の周囲部分を挟み込む(図9参照)。
【0096】
続くステップS22の予熱工程では、通電によりヒータ722bを発熱状態にする。また、容器フィルム3を予熱するために、気体供給装置75から内部空間721aへの気体の供給を開始する。すなわち、予熱用ブローを開始する(図9,12参照)。これにより、ヒータ722bを通過する気体(気流)が発生し、ヒータ722bにより加熱された該気体によって容器フィルム3における前記形成予定部位が予熱される。尚、図12は、1サイクルタイムにおける、予熱用ブロー、排気管73aの開閉及び後述する形成用ブローに関するタイミングを示すタイミングチャートである。
【0097】
また、予熱用ブロー時においては、内部空間721aに供給される気体の流量が比較的少ないものとなるように気体供給装置75の制御がなされる。さらに、予熱用ブロー時においては、排気管73aの開閉状態が交互に切換わり、内部空間721aからの排気又は排気停止が交互に切換わるように切換装置74が制御される(図12参照)。
【0098】
尚、内部空間721aからの排気が停止された状態においては、ヒータ722bの通過により加熱された気体が滞留する(図9参照)。これにより、ヒータ722bに生じる温度ばらつきを均すことができ、ひいては容器フィルム3における温度分布状態に意図しないばらつきが生じることがより確実に抑えることができる。
【0099】
一方、内部空間721aからの排気が行われる状態においては、内部空間721aの気体が外部に排出される(図10参照)。これにより、内部空間721aの気圧が所定値(例えば0.02Mpa)以下に抑えられ、容器フィルム3に過度の圧力が加えられることを防止できる。尚、図9等では、ヒータ722bにより加熱された比較的高温の気体を黒塗り矢印で示し、ヒータ722bにより加熱されていない比較的低温の気体を白塗り矢印で示す。
【0100】
予熱工程に続くステップS23の気体圧発生工程では、内部空間721aからの排気が停止されるように切換装置74を制御した上で、ポケット部2を形成するために、気体供給装置75から内部空間721aへの気体の供給を開始する。すなわち、形成用ブローを開始する(図12参照)。これにより、ヒータユニット722を通過する気体による圧力が容器フィルム3(形成予定部位)に加わることで、ポケット部2が形成される(図11参照)。
【0101】
尚、ポケット部2の形成時における内部空間721aの気圧は、予熱時における内部空間721aの気圧よりも大きなもの(例えば0.3MPa)とされる。また、本実施形態では、形成用ブローの開始時に、ヒータ722bへの通電が停止される。従って、膜状のヒータ722bは瞬時に冷却され、この冷却されたヒータ722bを通る気体によって、ポケット部2の形成とともに、形成されたポケット部2の冷却が行われる。
【0102】
ポケット部2の形成後、ステップS24の開放工程にて、各型71,72が退避位置へと移動する。これにより、各型71、72は、容器フィルム3の移動を妨げない状態に戻る。
【0103】
続くステップS3の充填工程では、充填装置21によって、ポケット部2に対し錠剤5が充填される。
【0104】
次いで、ステップS4の取着工程において、フィルム受けロール20及び加熱ロール25間を容器フィルム3及びカバーフィルム4が通過することで、容器フィルム3にカバーフィルム4が溶着される。これにより、PTPフィルム6が得られる。
【0105】
そして、PTPフィルム6に対するスリットや刻印の形成後、ステップS5の切離工程が行われる。切離工程では、シート打抜装置37によりPTPフィルム6における所定位置が打抜かれることで、PTPシート1が得られる。
【0106】
以上詳述したように、本実施形態によれば、容器フィルム3に対しプラグやヒーティングドラムなどの物を接触させることなく、容器フィルム3の予熱及びポケット部2の形成を行うことができる。従って、ポケット部2の汚損を効果的に抑制することができ、ひいては錠剤5に対する異物の付着やポケット部2への異物の混入をより確実に防止することができる。
【0107】
さらに、ヒータ722bの形状(パターン)などを調節することで、容器フィルム3(形成予定部位)における温度分布状態を容易に調節することができる。例えば、本実施形態では、ヒータ722bの形状が上記のように設定されているため、容器フィルム3(形成予定部位)のうち底部2bの中心側部位となる部位を比較的低温とし、それ以外の部位を比較的高温とするといった調節が容易に可能である。また、気体の圧力によりポケット部2を形成するため、プラグを用いてポケット部2を形成する場合と比べて、ポケット部2の形成時に、容器フィルム3が局所的に冷却されることをより確実に防止できる。これらが相俟って、形成されるポケット部2における肉厚調節をより容易にかつより精度よく行うことができる。
【0108】
また、ヒータ722bを通過する気体により容器フィルム3を予熱するため、容器フィルム3においては、ヒータ722bの厳密な形状を転写したような温度分布状態ではなく、ヒータ722bの大まかな形状を転写したような温度分布状態を生じさせることができる。そのため、ヒータ722bの影響を過敏に受けて、容器フィルム3における温度分布状態に極端なばらつきが生じることをより確実に抑えることができる。
【0109】
加えて、ポケット部2における肉厚調節が可能であるため、ポケット部2の一部の過度の薄肉化を防ぐことができる。従って、ポケット部2の一部の薄肉化による防湿性の低下を見越して、厚肉の容器フィルム3を用いるといった必要がなくなる。これにより、材料コストの低減を図ることができる。また、最終的に廃棄(排出)される容器フィルム3の量を削減して、環境負荷の低減を図ることも可能となる。
【0110】
さらに、ヒータ722bは膜状であるため、ヒータ722bの温度を瞬時に上下させることができる。すなわち、ヒータ722bの温度調節に係る応答速度を高めることができる。これにより、容器フィルム3の予熱に要する時間の短縮化を図ることができる。また、ヒータ722bへの通電を停止することで、ヒータ722bを通過する気体を利用して、ポケット部2を形成しながら容器フィルム3を冷却することができる。これらの結果、ポケット部2の形成に係るスピードの向上を図ることができ、生産性を向上させることができる。さらに、ヒータ722bが膜状であることは、ポケット部形成装置のコンパクト化にも寄与する。
【0111】
また、ヒータ722bは、繊維状金属からなり、占積率が30%以下とされている。従って、ヒータ722bは、繊維状金属同士の間に微小な隙間が多数設けられた状態となる。そのため、容器フィルム3の予熱時において、気体(気流)がヒータ722bを通過しやすくなり、ヒータ722bから気体(気流)へと熱を効率よく伝達することができる。また、ヒータの温度調節に係る応答速度をより高めることができる。
【0112】
さらに、容器フィルム3の予熱を行うポジションと、ポケット部2の形成を行うポジションとが容器フィルム3の搬送方向において同一の位置とされている。これにより、各ポジションが前記搬送方向に沿って別々に位置する場合と比べて、ポケット部形成装置7をよりコンパクトにまとめることができ、ポケット部形成装置7やPTP包装機10の製造やメンテナンス等に係るコストの抑制を一層図ることができる。
【0113】
また、本実施形態では、容器フィルム3を予熱するための気体と、ポケット部2を形成するための気体とが、それぞれ気体供給装置75から供給される。すなわち、「気体圧発生手段」は、「予熱気体発生手段」を兼ねている。そのため、ポケット部形成装置7の一層のコンパクト化を図ることができる。
【0114】
さらに、ヒータ722bは、複数のスリット7221aによって分離された複数の導電路7221bを並列に備えている。従って、各導電路7221bの抵抗値を比較的大きなものとすることができ、ヒータ722bの昇温性能を十分に高めることができる。
【0115】
加えて、ヒータ722bを通過する気体(気流)によって容器フィルム3を予熱するため、ヒータ722bがスリット7221aを有するものであっても、容器フィルム3のうちスリット7221aと重なる部位も十分に予熱することができる。従って、スリット7221aに起因する温度分布状態の偏りを抑えることができる。
【0116】
また、連結部7221cを設けることによって、ヒータ722bの剛性向上を図ることができる。さらに、温度上昇に伴い導電路7221bの抵抗値が増大したときには、連結部7221cを通して、この導電路7221bから隣接する導電路7221bへと電流を流すことができる。従って、各導電路7221bの温度をより均等に上昇させることができ、容器フィルム3において所望の温度分布状態をより確実に作り出すことができる。
【0117】
加えて、容器フィルム3を予熱する際には、切換装置74によって、内部空間721aからの気体の排出可否が交互に繰り返し切換えられることで、内部空間721aの気圧が過度に上昇することを防止しつつ、高温の気体を内部空間721aにある程度滞留させることができる。このように高温の気体を滞留させることで、ヒータ722bに生じる温度ばらつきを均すことができ、ひいては容器フィルム3における温度分布状態に意図しないばらつきが生じることをより確実に抑えることができる。一方、ポケット部2を形成する際には、内部空間721aからの気体の排出が停止されるため、容器フィルム3に加わる圧力をより確実に高め、ポケット部2の形成を効率よく行うことが可能である。
〔第2実施形態〕
次いで、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1実施形態において、ヒータユニット722は1枚のヒータ722bを備えており、該ヒータ722bを用いて容器フィルム3の予熱を行うように構成されている。これに対し、本第2実施形態においては、図13に示すように、ヒータユニット723は2枚のヒータ723b,723dを備えており、これらヒータ723b,723dを用いて容器フィルム3の予熱を行うように構成されている。本第2実施形態では、ヒータ723b,723dがそれぞれ「ヒータ」に相当し、ヒータ723b,723d及び気体供給装置75により「予熱手段」が構成される。
【0118】
ヒータユニット723について詳述すると、ヒータユニット723は、それぞれ膜状をなす第一絶縁体723a、第一ヒータ723b、第二絶縁体723c、第二ヒータ723d及び第三絶縁体723eがこの順序で重ねられてなる。各絶縁体723a,723c,723eは、上記第1実施形態における絶縁体722a,722cと同様の構成を有している。
【0119】
また、各ヒータ723b,723dは、上記第1実施形態におけるヒータ722bと同様に、導電性の繊維状金属が焼結されてなり、占積率が5%以上30%以下とされている。一方、各ヒータ723b,723dは、平面視したときにそれぞれ異なる形状を有している。
【0120】
すなわち、本第2実施形態において、第一ヒータ723bは、上記第1実施形態におけるヒータ722bと同様の形状を有している。一方、第二ヒータ723dは、図14に示すように、特にヒータ本体部7231が上記第1実施形態におけるヒータ本体部7221とは異なる形状とされている。より詳しくは、ヒータ本体部7231は、中心側に位置する内側円形部7231aと、該内側円形部7231a及び電極部7232を接続する接続部7231bと、内側円形部7231aよりも外側において該内側円形部7231aと同心円状に形成された外側円弧部7231cとを備えている。
【0121】
そして、ヒータ本体部7231は、複数のスリット7231dにより分離された複数の導電路7231eを並列に備えている。本第2実施形態では、内側円形部7231a及び接続部7231bによって2本の導電路7231eが形成され、外側円弧部7231cにより4本の導電路7231eが形成されている。図14では、内側円形部7231a及び接続部7231bにより形成される2本の導電路7231eに二点鎖線を付して示している。
【0122】
また、上記第1実施形態と同様に、ヒータ本体部7231には、隣接する導電路7231e同士を繋ぐ連結部7231fが複数設けられている。
【0123】
加えて、本第2実施形態において、各ヒータ723b,723dは、例えばそれぞれ別々の電源装置と接続されることで、それぞれ独立して発熱可能に構成されている。従って、制御装置76が各電源装置を制御することで、両ヒータ723b,723dを一度に発熱させたり、両ヒータ723b,723dのうちの一方のみを発熱させたりするといったことが可能である。
【0124】
尚、各ヒータ723b,723dの配置位置については適宜変更してもよい。すなわち、容器フィルム3に近い側に第二ヒータ723dを配置し、容器フィルム3から遠い側に第一ヒータ723bを配置した構成(図13にて示す構成であり、「ヒータ構成A」という)としてもよい。また、容器フィルム3に近い側に第一ヒータ723bを配置し、容器フィルム3から遠い側に第二ヒータ723dを配置した構成(「ヒータ構成B」という)としてもよい。
【0125】
以上、本第2実施形態によれば、基本的には上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0126】
加えて、複数のヒータ723b,723dを用いて容器フィルム3を予熱することができる。そのため、容器フィルム3の温度分布状態の調節に係る利便性を高めたり、予熱時間の短縮化を図ったりすることができる。
【0127】
さらに、それぞれ異なる形状とされた複数のヒータ723b,723dが用いられるため、容器フィルム3の温度分布状態を一層細かく調節することが可能となる。これにより、ポケット部2の肉厚調節に係る自由度を高めることができる。
【0128】
次いで、図16において、厚さ200μmの容器フィルム3に対し、次述する各形成手法a1,b1,b2によりポケット部2を形成したときにおける、形成されたポケット部2の肉厚を参考として示す。ここで、形成手法a1は、上記ヒータ構成Aにおいて、両ヒータ723b,723dを発熱させるとともに、これらヒータ723b,723d等を通過する気体により容器フィルム3を予熱した上で、ヒータユニット723を通過する気体によってポケット部2を形成する手法である。形成手法b1は、上記ヒータ構成Bにおいて、両ヒータ723b,723dを発熱させるとともに、これらヒータ723b,723d等を通過する気体により容器フィルム3を予熱した上で、ヒータユニット723を通過する気体によってポケット部2を形成する手法である。形成手法b2は、上記ヒータ構成Bにおいて、第一ヒータ723b(つまり、容器フィルム3に近い方のヒータ)のみを発熱させて、この第一ヒータ723b等を通過する気体により容器フィルム3を予熱した上で、ヒータユニット723を通過する気体によってポケット部2を形成する手法である。
【0129】
図16では、ポケット部2の肉厚として、ポケット部2の中心軸を通る断面における位置x1~x7(図15参照)の肉厚をそれぞれ示す。位置x1,x7は側部2aに当たり、位置x2,x6は角部2cに当たり、位置x3,x4,x5は底部2bに当たる。また、図16では、形成手法a1に係る肉厚を黒塗り丸印で示し、形成手法b1に係る肉厚を黒塗り矩形印で示し、形成手法b2に係る肉厚を黒塗り三角印で示す。
【0130】
図16に示すように、2枚のヒータ723b,723dの配置位置を変更してヒータ723b,723d等を通過した気体による容器フィルム3の加熱態様を調節したり、発熱対象のヒータ723b,723dを変更したりことで、ポケット部2の肉厚分布をより細かく調節可能であることが確認された。従って、本第2実施形態に係る構成は、ポケット部2の肉厚調節に係る自由度を高めるという点で有効であるといえる。
〔第3実施形態〕
次いで、第3実施形態について、上記第2実施形態との相違点を中心に説明する。上記第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、ポケット部2を形成する際に、容器フィルム3の予熱及び変形がそれぞれ1回ずつ行われるように構成されている。これに対し、本第3実施形態では、ポケット部2の形成する際に、容器フィルム3の予熱及び変形がそれぞれ2回ずつ行われるように構成されている。すなわち、本第3実施形態では、容器フィルム3の予熱及び変形を一段階ではなく、二段階で行うように構成されている。また、本第3実施形態では、1回目の予熱時には第二ヒータ723dのみを発熱させ、2回目の予熱時には両ヒータ723b,723dを発熱させるように構成されている。
【0131】
次に、本第3実施形態におけるポケット部形成工程について、図17を参照してより詳しく説明する。尚、ヒータユニット723は、容器フィルム3に近い側に第二ヒータ723dが配置され、容器フィルム3から遠い側に第一ヒータ723bが配置された構成(すなわち「ヒータ構成A」)となっている。
【0132】
まず、上記第1実施形態と同様、ステップS21の閉鎖工程において、両型71,72(両圧接部71b,721c)により容器フィルム3を挟み込んだ状態とする(図18参照)。
【0133】
次いで、ステップS25の第一予熱工程において、容器フィルム3に対し一段階目の予熱を行う。ここでは、第二ヒータ723dのみを発熱させた状態で、気体供給装置75から内部空間721aへの気体の供給を開始する。すなわち、1回目の予熱用ブローを開始する(図18,22参照)。尚、図22は、1サイクルタイムにおける、予熱用ブロー、排気管73aの開閉及び形成用ブローに関するタイミングを示すタイミングチャートである。
【0134】
予熱用ブロー時においては、上記第1実施形態と同様、排気管73aの開閉状態が交互に切換わり、内部空間721aからの排気又は排気停止が交互に切換わるように切換装置74が制御される(図22参照)。
【0135】
また、第一予熱工程では、第二ヒータ723dを発熱させるため、ポケット部2の形成予定部位のうち底部2bの中心側部分や側部2aとなる部分が特に熱せられ、角部2cとなる部分はさほど熱せられない。
【0136】
第一予熱工程に続くステップS26の第一気体圧発生工程では、内部空間721aからの排気が停止されるように切換装置74を制御し、かつ、両ヒータ723b,723dへの通電を停止した上で、容器フィルム3を仮変形させるために、気体供給装置75から内部空間721aへの気体の供給を開始する。すなわち、1回目の形成用ブローを開始する(図19,22参照)。このとき、内部空間721aの気圧は、最終的にポケット部2を形成するときにおける内部空間721aの気圧よりも十分に小さなもの(例えば0.05~0.1MPa)となるように調節される。
【0137】
また、第一気体圧発生工程を行うことにより、容器フィルム3のうち比較的高温に予熱された部位が特に引き延ばされる。従って、前記形成予定部位のうち底部2bの中心側部分や側部2aとなる部分が特に引き延ばされる一方、前記形成予定部位のうち角部2cとなる部分はさほど引き延ばされないこととなる。
【0138】
続くステップS27の第二予熱工程では、容器フィルム3に対し二段階目の予熱を行う。ここでは、両ヒータ723b,723dを発熱させた状態で、気体供給装置75から内部空間721aへの気体の供給を開始する。すなわち、2回目の予熱用ブローを開始する(図20,22参照)。尚、2回目の予熱用ブロー時においても、排気管73aの開閉状態が交互に切換わり、内部空間721aからの排気又は排気停止が交互に切換わるように切換装置74が制御される(図22参照)。
【0139】
そして、ステップS28の第二気体圧発生工程において、内部空間721aからの排気が停止されるように切換装置74を制御し、かつ、両ヒータ723b,723dへの通電を停止した上で、容器フィルム3を最終的に形成するために、気体供給装置75から内部空間721aへの気体の供給を開始する。すなわち、2回目の形成用ブローを開始する(図21,22参照)。2回目の形成用ブロー時における内部空間721aの気圧は、1回目の形成用ブロー時における内部空間721aの気圧よりも十分に大きなもの(例えば0.3MPa)とされるため、ポケット部2が確実に形成される。また、通電停止に伴いヒータ723b,723dは瞬時に冷却されるため、ヒータユニット723を通る気体によって、ポケット部2の形成とともに、形成されたポケット部2の冷却が行われる。
【0140】
その後、ステップS29の開放工程により、両型71,72が前記退避位置に移動し、容器フィルム3が開放されることで、ポケット部形成工程が終了する。
【0141】
以上、本第3実施形態によれば、基本的には、上記第2実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0142】
加えて、本第3実施形態によれば、容器フィルム3を予熱した上で該容器フィルム3を変形させることが繰り返し行われることにより、最終的にポケット部2が形成される。そして、複数回行われる予熱工程では、発熱対象となるヒータ723b,723dが変更される。従って、容器フィルム3の温度分布状態を調節しつつ、ポケット部2を徐々に形成していくことができる。そのため、ポケット部2の肉厚をより細かく調節することができる。
【0143】
次いで、図23において、厚さ200μmの容器フィルム3に対し、形成手法a1又は次述する形成手法a2によりポケット部2を形成したときにおける、形成されたポケット部2の肉厚を参考として示す。形成手法a1は、上記第2実施形態における形成手法a1と同様である。一方、形成手法a2は、本第3実施形態における上記ポケット部形成工程に相当するものである。つまり、形成手法a2では、上記ヒータ構成Aにおいて、第二ヒータ723dを発熱させて、この第二ヒータ723dを通過する気体により容器フィルム3に1回目の予熱を行った上で、ヒータユニット723を通過する気体によって容器フィルム3に1回目の変形を生じさせた。次いで、両ヒータ723b,723dを発熱させて、これら両ヒータ723b,723dを通過する気体により容器フィルム3に2回目の予熱を行った上で、ヒータユニット723を通過する気体によって容器フィルム3に2回目の変形を生じさせ、最終的にポケット部2を形成した。
【0144】
図23では、ポケット部2の肉厚として、上記第2実施形態と同様、位置x1~x7における肉厚をそれぞれ示す。また、図23では、形成手法a1に係る肉厚を黒塗り丸印で示し、形成手法a2に係る肉厚を白抜き丸印で示す。
【0145】
図23に示すように、形成手法a2(すなわち容器フィルム3の予熱及び変形を二段階で行うこと)により、ポケット部2を形成することで、角部2cなどの肉厚をより大きく確保すること等が可能となり、ポケット部2の各部の肉厚をより均等に調節可能であることが確認された。従って、本第3実施形態のように、発熱させるヒータ723b,723dを変更させつつ、予熱フィルム3の予熱及び変形を複数段階で行うことは、ポケット部2の肉厚をより細かく調節可能とするという点で有効であるといえる。
【0146】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0147】
(a)上記実施形態において、錠剤5の充填やカバーフィルム4の取着は、間欠搬送される容器フィルム3を対象に行われている。これに対し、例えば、図24に示すように、間欠搬送ロール14によって該ロール14よりも下流に位置する容器フィルム3を間欠搬送する一方、フィルム受けロール20によって該ロール20よりも下流に位置する容器フィルム3を連続搬送するように構成することで、ポケット部2の形成が間欠搬送される容器フィルム3を対象に行われる一方、錠剤5の充填やカバーフィルム4の取着が連続搬送される容器フィルム3を対象に行われるように構成してもよい。尚、この例においては、間欠搬送ロール14及び充填装置21間に設けられたテンションロール(ダンサロール)18によって、搬送態様の違いによる容器フィルム3の弛み防止が図られる。
【0148】
(b)上記実施形態では、容器フィルム3の予熱後にヒータ722b(723b,723d)の発熱を停止させ、この発熱を停止したヒータ722b(723b,723d)を通る気体によりポケット部2の形成を行うように構成されている。これに対し、容器フィルム3の予熱後にヒータの発熱を継続させた状態で、この発熱するヒータを通る気体によりポケット部2の形成を行うように構成してもよい。
【0149】
(c)上記第1実施形態では、ヒータ722bを1枚備える装置において、容器フィルム3の予熱及び変形を一段階で行うことにより、ポケット部2を形成するように構成されている。これに対し、ヒータ722bを1枚備える装置において、上記第3実施形態のように、容器フィルム3の予熱及び変形を多段階で行うことにより、ポケット部2を形成するように構成してもよい。例えば、各段階でヒータ722bの発熱温度や気体供給装置75から内部空間721aに供給される気体の流量を変化させつつ、最終的にポケット部2を形成するように構成してもよい。このように構成した場合においても、ポケット部2の肉厚調節をより細かく行うことが可能となる。
【0150】
(d)上記第2,3実施形態では、2枚のヒータ723b,723dを設ける例を挙げているが、3枚以上のヒータを設けてもよい。
【0151】
(e)上記第3実施形態では、容器フィルム3の予熱及び変形を二段階で行うように構成されているが、三段階以上の多段階で行うように構成してもよい。また、各段階において発熱させるヒータ723b,723dを適宜変更してもよい。
【0152】
(f)上記実施形態では、チャンバー721の内部空間721aに気体を供給し、圧空成形によりポケット部2を形成するように構成されている。これに対し、成形凹部71aが真空状態となるように気体を制御し、真空成形によりポケット部2を形成するように構成してもよい。
【0153】
(g)上記実施形態では、容器フィルム3の予熱時に、内部空間721aからの排気又は排気停止が交互に切換わるように構成されているが、排気や排気停止に係るタイミングや回数については適宜変更してもよい。また、排気又は排気停止が交互に切換わる構成を採用しなくてもよい。例えば、容器フィルム3の予熱時に、常に内部空間721aからの排気が行われるように構成してもよい。
【0154】
(h)上記実施形態では、気体供給装置75が「気体圧発生手段」及び「予熱気体発生手段」を構成しており、「気体圧発生手段」は「予熱気体発生手段」を兼ねるものとされている。これに対し、「気体圧発生手段」及び「予熱気体発生手段」を別々に設けてもよい。
【0155】
(i)上記実施形態では、内容物として錠剤5を挙げているが、内容物は錠剤に限定されるものではない。例えば、内容物は、食品や電子部品などであってもよい。また、内容物の形状に関しても適宜変更可能である。
【0156】
(j)製造されるPTPシートの構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、PTPシート1におけるポケット部2の形状や配列、個数を適宜変更してもよい。また、ポケット部2の形状などに合わせて、ヒータの形状や配置などを適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0157】
1…PTPシート(ブリスタシート)、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…カバーフィルム、5…錠剤(内容物)、7…ポケット部形成装置、10…PTP包装機(ブリスタ包装機)、20…フィルム受けロール(取着手段)、21…充填装置(充填手段)、25…加熱ロール(取着手段)、37…シート打抜装置(切離手段)、73…排気装置(排気手段)、74…切換装置(切換手段)、75…気体供給装置(気体圧発生手段、予熱気体発生手段、予熱手段)、721…チャンバー、721a…内部空間、721b…開口部、722b…ヒータ(予熱手段)、723b…第一ヒータ(ヒータ、予熱手段)、723d…第二ヒータ(ヒータ、予熱手段)、7221b,7231e…導電路、7221c,7231f…連結部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24