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特許7489362薬力学的効果の低減または向上のための寛容原性合成ナノ担体および治療用高分子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】薬力学的効果の低減または向上のための寛容原性合成ナノ担体および治療用高分子
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240516BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240516BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240516BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240516BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240516BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20240516BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20240516BHJP
   A61K 38/45 20060101ALI20240516BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20240516BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240516BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20240516BHJP
   A61K 38/37 20060101ALI20240516BHJP
   A61K 38/51 20060101ALI20240516BHJP
   A61K 38/52 20060101ALI20240516BHJP
   A61K 38/53 20060101ALI20240516BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240516BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALN20240516BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALN20240516BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K39/395 H
A61K47/34
A61K9/51
A61P43/00 111
A61K31/436
A61K38/43
A61K38/45
A61K38/19
A61K38/20
A61K38/36
A61K38/37
A61K38/51
A61K38/52
A61K38/53
A61P37/06
B82Y5/00
B82Y40/00
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021162235
(22)【出願日】2021-09-30
(62)【分割の表示】P 2018231206の分割
【原出願日】2014-05-02
(65)【公開番号】P2022025069
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】61/819,517
(32)【優先日】2013-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/881,921
(32)【優先日】2013-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/948,313
(32)【優先日】2014-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/948,384
(32)【優先日】2014-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/907,177
(32)【優先日】2013-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/881,851
(32)【優先日】2013-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/881,913
(32)【優先日】2013-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511254321
【氏名又は名称】セレクタ バイオサイエンシーズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SELECTA BIOSCIENCES,INC.
【住所又は居所原語表記】65 Grove Street,Watertown,MA 02472,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルドナド,ロバート,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】キシモト,タカシ,ケイ
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/149255(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K45/00
A61K31/00-33/44
A61K38/00-38/58
A61K39/00-39/44
A61K9/00-9/72
A61K47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫抑制剤を提供すること、ここで免疫抑制剤が合成ナノ担体に付着されている;および、
治療用高分子の低減された薬力学的有効用量を、抗治療用高分子抗体応答が起こると予期される対象へ、免疫抑制剤と併用投与すること
を含む方法における使用のための、免疫抑制剤を含む組成物であって、
併用投与が、免疫抑制剤と併用投与されず、かつ抗治療用高分子抗体応答の存在下であるときの治療用高分子の投与と比較して、免疫抑制剤との併用投与の際に、治療用高分子の低減された薬力学的有効用量により薬力学的効果をもたらすことが実証されたプロトコルに従い、
合成ナノ担体が、PLA、PLGA、PLA-PEG、PLGA-PEG、およびPLA-PEG-OMeから選択されるポリマーを含み、
免疫抑制剤が、mTORインヒビターを含み、ならびに
治療用高分子が、モノクローナル抗体を含む、前記組成物。
【請求項2】
(a)方法が、プロトコルを決定することをさらに含み;
(b)方法が、低減された薬力学的有効用量を決定することをさらに含み;
(c)方法が、投与の前および/または後に、対象における薬力学的効果を査定することをさらに含み;および/または
(d)投与が、静脈内、腹腔内または皮下投与による、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
免疫抑制剤を提供すること、ここで免疫抑制剤が合成ナノ担体に付着されている;および、
治療用高分子の低減された薬力学的有効用量を、免疫抑制剤と併用投与すること
を含む方法における使用のための、免疫抑制剤を含む組成物であって、
治療用高分子の低減された薬力学的有効用量が、(A)抗治療用高分子抗体応答の存在下で投与され、かつ(B)免疫抑制剤と併用投与されない、治療用高分子の薬力学的有効用量よりも少なく、
合成ナノ担体が、PLA、PLGA、PLA-PEG、PLGA-PEG、およびPLA-PEG-OMeから選択されるポリマーを含み、
免疫抑制剤が、mTORインヒビターを含み、ならびに
治療用高分子が、モノクローナル抗体を含む、前記組成物。
【請求項4】
(a)方法が、低減された薬力学的有効用量を決定することをさらに含むか;
(b)方法が、投与の前および/または後に、対象における薬力学的効果を査定することをさらに含むか;および/または
(c)投与が、静脈内、腹腔内または皮下投与による、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
免疫抑制剤を提供すること、ここで免疫抑制剤が合成ナノ担体に付着されている;および、
治療用高分子の薬力学的有効用量を、抗治療用高分子抗体応答が起こることが予期される対象へ、免疫抑制剤と併用投与すること
を含む方法における使用のための、免疫抑制剤を含む組成物であって、
併用投与が、免疫抑制剤と併用投与されないときの治療用高分子の投与と比較して、免疫抑制剤との併用投与の際、治療用高分子の薬力学的効果を向上することが実証されたプロトコルに従い、各々が抗治療用高分子抗体応答の存在下にあり、
合成ナノ担体が、PLA、PLGA、PLA-PEG、PLGA-PEG、およびPLA-PEG-OMeから選択されるポリマーを含み、
免疫抑制剤が、mTORインヒビターを含み、ならびに
治療用高分子が、モノクローナル抗体を含む、前記組成物。
【請求項6】
(a)方法が、プロトコルを決定することをさらに含むか;
(b)方法が、薬力学的有効用量を決定することをさらに含むか;
(c)方法が、投与の前および/または後に、対象における薬力学的効果を査定することをさらに含むか;および/または
(d)投与が、静脈内、腹腔内または皮下投与による、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
免疫抑制剤を提供すること、ここで免疫抑制剤が合成ナノ担体に付着されている;
治療用高分子の薬力学的有効用量を、抗治療用高分子抗体応答が起こることが予期される対象へ、免疫抑制剤と併用投与すること;および、
併用投与に続く向上された薬力学的効果を記録すること
を含む方法における使用のための、免疫抑制剤を含む組成物であって、
合成ナノ担体が、PLA、PLGA、PLA-PEG、PLGA-PEG、およびPLA-PEG-OMeから選択されるポリマーを含み、
免疫抑制剤が、mTORインヒビターを含み、ならびに
治療用高分子が、モノクローナル抗体を含む、前記組成物。
【請求項8】
(a)方法が、薬力学的有効用量を決定することをさらに含むか;
(b)方法が、投与の前および/または後に、対象における薬力学的効果を査定することをさらに含むか;および/または
(c)投与が、静脈内、腹腔内または皮下投与による、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
1または2以上の対象における繰り返し投の際、抗治療用高分子抗体応答を引き起こすか、または引き起こすことが予期される治療用高分子を提供すること;
免疫抑制剤を提供すること、ここで免疫抑制剤が合成ナノ担体に付着されている;および、
治療用高分子を、抗治療用高分子抗体応答を引き起こすかまたは引き起こすことが予期される治療用高分子の繰り返し投と同じかまたはより少ない用量で、対象に、免疫抑制剤と繰り返し併用投すること
を含む方法における使用のための、免疫抑制剤を含む組成物であって、
合成ナノ担体が、PLA、PLGA、PLA-PEG、PLGA-PEG、およびPLA-PEG-OMeから選択されるポリマーを含み、
免疫抑制剤が、mTORインヒビターを含み、ならびに
治療用高分子が、モノクローナル抗体を含む、前記組成物。
【請求項10】
(a)併用投与が、治療用高分子の対象への2回分または3回分以上の用量にわたって、治療用高分子の薬力学的効果の維持をもたらすことが実証されたプロトコルに従うか;
(b)方法が、プロトコルを決定することをさらに含むか;
(c)方法が、2回または3回以上の用量の投与の前および/または後に、対象における薬力学的効果を査定することをさらに含むか;および/または
(d)投与が、静脈内、腹腔内または皮下投与による、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
(A)免疫抑制剤、ここで免疫抑制剤が合成ナノ担体に付着されている;および、
治療用高分子の低減された薬力学的有効用量
を含む、組成物またはキットであって
求項1~9において提供される方法のいずれか1つにおける使用のためのものである;および、任意に薬学的に許容し得る担体をさらに含む;
あるいは
(B)免疫抑制剤、ここで免疫抑制剤が合成ナノ担体に付着されている、と組み合わせて、治療用高分子の低減された薬力学的有効用量を含む、請求項1~9において提供される方法のいずれか1つにおける使用のための組成物またはキットであって、任意に
(a)薬学的に許容し得る担体をさらに含むか;および/または
(b)免疫抑制剤および治療用高分子が、別個の容器にもしくは同じ容器に含有されている;
(A)および(B)において、合成ナノ担体が、PLA、PLGA、PLA-PEG、PLGA-PEG、およびPLA-PEG-OMeから選択されるポリマーを含み、
(A)および(B)において、免疫抑制剤が、mTORインヒビターを含み、ならびに
(A)および(B)において、治療用高分子が、モノクローナル抗体を含む、前記組成物またはキット。
【請求項12】
(a)治療用高分子が、合成ナノ担体に付着されていないか;
(b)治療用高分子が、合成ナノ担体に付着されているか;および/または
(c)合成ナノ担体が、治療用高分子のAPC提示可能抗原を含まない、
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項13】
(a)治療用高分子の低減された薬力学的有効用量が、(A)抗治療用高分子抗体応答の存在下で投与され、かつ(B)免疫抑制剤と併用投与されない、治療用高分子の薬力学的有効用量より少なくとも30%少なく、任意に低減された薬力学的有効用量が、少なくとも40%または少なくとも50%少ないか;
(b)mTORインヒビターが、ラパマイシン、CCL-779、RAD001、AP23573、C20-メタリルラパマイシン(C20-Marap)、C16-(S)-ブチルスルホンアミドラパマイシン(C16-BSrap)、C16-(S)-3-メチルインドールラパマイシン(C16-iRap)、AZD8055、BEZ235(NVP-BEZ235)、クリソファン酸(クリソファノール)、デフォロリムス(MK-8669)、エベロリムス(RAD0001)、KU-0063794、PI-103、PP242、テムシロリムス、またはWYE-354を含むか;あるいは
(c)合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤の積載量が、合成ナノ担体にわたる平均で、0.1%と50%との間、任意に0.1%と20%との間である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項14】
(a)合成ナノ担体の動的光散乱を使用して得られる粒子サイズ分布の平均値が、(i)100nmよりも;(ii)150nmよりも;(iii)200nmよりも;(iv)250nmよりも;または(v)300nmよりも大きな径であるか;および/または
(b)合成ナノ担体のアスペクト比が、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7または1:10よりも大きい、
請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許法第119条の下で、2013年5月3日出願の米国仮出願第61/819517号、2013年9月24日出願の同第61/881851号、2013年9月24日出願の同第61/881913号、2013年9月24日出願の同第61/881921号、2013年11月21日出願の同第61/907177号、2014年3月5日出願の同第61/948313号、および2014年3月5日出願の同第61/948384号の利益を主張するものであり、これらの各々の内容全体を参照によって本明細書に組み込む。
【0002】
本発明の分野
本発明は、免疫抑制剤用量、いくつかの態様において合成ナノ担体に付着されており、治療用高分子と併用投与され、および関係する方法に関する。組成物および方法は、治療用高分子に特異的で効率的な薬力学的効果を可能にする。それゆえ提供される組成物および方法を使用して、治療用高分子の低減された用量であっても、対象において薬力学的反応を発生し得る。本明細書で提供される組成物および方法はまた、繰り返し併用投与もされ、所望の薬力学的および免疫学的効果を発生し得る。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
タンパク質または酵素補充治療などの治療処置は多くの場合、具体的な治療剤に対して望ましくない免疫応答をもたらす。かかる場合において、免疫系の細胞は治療剤を異物として認識し、まさしく細菌およびウイルスなどの感染生物を破壊しようとする様に、それを中和または破壊しようとする。かかる望ましくない免疫応答はその治療処置の有効性を中和するか、または、治療剤に対する過敏性反応を引き起こす場合がある。これらの望ましくない応答は免疫抑制薬の使用を通じて低減され得る。しかし従来の免疫抑制薬は広域作用性であり、広域作用性の免疫抑制剤の使用は、腫瘍、感染、腎毒性および代謝障害などの重篤な副作用のリスクと関連する。したがって新しい治療が有益となる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の概要
一側面において、免疫抑制剤用量、ここでいくつかの態様において免疫抑制剤用量が合成ナノ担体に付着されている、を提供すること、および、免疫抑制剤用量と治療用高分子の低減された薬力学的有効用量とを対象へ併用投与すること、を含む方法が提供される。一態様において、併用投与は、免疫抑制剤用量と併用投与されないときの治療用高分子の投与と比較して、免疫抑制剤用量との併用投与の際、治療用高分子の低減された薬力学的有効用量で薬力学的効果をもたらすことが実証されたプロトコルに従い、各々は抗治療用高分子抗体応答の存在下にある。提供される方法のいずれか1つの別の態様において、治療用高分子の低減された薬力学的有効用量は、(A)抗治療用高分子抗体応答の存在下で投与され、かつ(B)免疫抑制剤用量と併用投与されない、治療用高分子の薬力学的有効用量よりも少ない。
【0005】
別の側面において、免疫抑制剤用量、ここでいくつかの態様において免疫抑制剤用量が合成ナノ担体に付着されている、を提供すること、および、免疫抑制剤用量と治療用高分子の薬力学的有効用量とを併用投与すること、を含む方法が提供される。一態様において、併用投与は、免疫抑制剤用量と併用投与されないときの治療用高分子の投与と比較して、免疫抑制剤用量との併用投与の際、治療用高分子の薬力学的効果を向上させることが実証されたプロトコルに従い、各々は抗治療用高分子抗体応答の存在下にある。
【0006】
別の側面において、免疫抑制剤用量、ここでいくつかの態様において免疫抑制剤用量が合成ナノ担体に付着されている、を提供すること、免疫抑制剤用量と治療用高分子の薬力学的有効用量とを併用投与すること、および、併用投与に続いて、向上された薬力学的効果を記録すること、を含む方法が提供される。
【0007】
別の側面において、1または2以上の対象において繰り返し投薬する際、抗治療用高分子抗体を引き起こすか、または引き起こすことが予期される治療用高分子を提供すること、および、免疫抑制剤用量、ここで免疫抑制剤用量が合成ナノ担体に付着されている、を提供すること、を含む方法。いくつかの態様において、方法は、治療用高分子を、同じかまたはより少ない用量で、対象に、免疫抑制剤用量と繰り返し併用投与することを含む。いくつかの態様において、併用投与は、治療用高分子の対象への2回分または3回分以上の用量にわたって、治療用高分子の薬力学的効果の維持をもたらすことが実証されたプロトコルに従う。
【0008】
提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに、プロトコルを決定することを含む。提供される方法のいずれか1つの別の態様において、方法はさらに、低減されたかまたは向上された薬力学的有効用量などの、薬力学的有効用量を決定することを含む。提供される方法のいずれか1つの別の態様において、方法はさらに、投与の前および/または後の対象において薬力学的効果を査定することを含む。提供される方法のいずれか1つの別の態様において、併用投与は1回または2回以上繰り返される。提供される方法のいずれか1つの別の態様において、投与は、静脈内、腹腔内または皮下投与による。提供される方法のいずれか1つの別の態様において、対象は抗治療用高分子抗体応答のリスクがある。提供される方法のいずれか1つの別の態様において、対象は、抗治療用高分子応答が起こることが予期される。
【0009】
別の側面において、免疫抑制剤用量、ここでいくつかの態様において免疫抑制剤が合成ナノ担体に付着されている、および、治療用高分子の低減された薬力学的有効用量を含む組成物またはキットが提供される。
別の側面において、免疫抑制剤用量、ここでいくつかの態様において免疫抑制剤が合成ナノ担体に付着されている、と組み合わされた、本明細書において提供される方法のいずれか1つにおける使用のための、治療用高分子の低減された薬力学的有効用量を含む組成物またはキットが提供される。
【0010】
提供される組成物またはキットのいずれか1つの一態様において、組成物またはキットは、本明細書で提供される方法のいずれか1つにおける使用のためのものである。提供される組成物またはキットのいずれか1つの一態様において、組成物またはキットはさらに、薬学的に許容し得る担体を含む。
提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの一態様において、治療用高分子は、合成ナノ担体に付着されていない。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、治療用高分子は合成ナノ担体に付着されている。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体は、治療用高分子のAPC提示可能抗原を含まない。
【0011】
提供される組成物またはキットのいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤用量および治療用高分子はそれぞれ容器に含有されている。提供される組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤用量および治療用高分子は別個の容器に含有されている。提供される組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤用量および治療用高分子は同じ容器に含有されている。
【0012】
提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの一態様において、治療用高分子の低減された薬力学的有効用量は、(A)抗治療用高分子抗体応答の存在下で投与され、かつ(B)免疫抑制剤用量と併用投与されない、治療用高分子の薬力学的有効用量より少なくとも30%少ない。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、低減された薬力学的有効用量は少なくとも40%少ない。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、低減された薬力学的有効用量は少なくとも50%少ない。
【0013】
提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤用量は、スタチン、mTORインヒビター、TGF-βシグナル剤、コルチコステロイド、ミトコンドリア機能のインヒビター、P38インヒビター、NF-κβインヒビター、アデノシン受容体アゴニスト、プロスタグランジンE2アゴニスト、ホスホジエステラーゼ4インヒビター、HDACインヒビターまたはプロテアソームインヒビターを含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、mTORインヒビターはラパマイシンである。
【0014】
提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの一態様において、治療用高分子は治療用タンパク質を含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、治療用高分子は治療用ポリヌクレオチドを含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、治療用タンパク質はタンパク質補充またはタンパク質補強治療用である。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、治療用高分子は、点滴可能または注射可能な治療用のタンパク質、酵素、酵素補助因子、ホルモン、血液または血液凝固因子、サイトカイン、インターフェロン、成長因子、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または、ポンペ病に関連するタンパク質を含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、点滴可能または注射可能な治療用タンパク質は、トシリズマブ、アルファ-1アンチトリプシン、ヘマタイド、アルブインターフェロンアルファ-2b、ルシン(Rhucin)、テサモレリン、オクレリズマブ、ベリムマブ、ペグロチカーゼ、ペグシチカーゼ、タリグルセラーゼアルファ、アガルシダーゼアルファまたはベラグルセラーゼアルファを含む。
【0015】
提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、酵素は、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼまたはリガーゼを含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、酵素は、リソソーム蓄積障害のための酵素補充治療用の酵素を含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、リソソーム蓄積障害のための酵素補充治療用の酵素は、イミグルセラーゼ、a-ガラクトシダーゼA(a-galA)、アガルシダーゼベータ、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、アルグルコシダーゼアルファ、LUMIZYME、MYOZYME、アリールスルファターゼB、ラロニダーゼ、ALDURAZYME、イデュルスルファーゼ、ELAPRASE、アリールスルファターゼBまたはNAGLAZYMEを含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、酵素は、KRYSTEXXA(ペグロチカーゼ)を含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、モノクローナル抗体はHUMIRA(アダリムマブ)を含む。
【0016】
提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、サイトカインは、リンホカイン、インターロイキン、ケモカイン、タイプ1サイトカインまたはタイプ2サイトカインを含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、血液または血液凝固因子は、第I因子、第II因子、組織因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第Xa因子、第XII因子、第XIII因子、フォン・ヴィレブランド因子、プレカリクレイン、高分子量キニノゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補助因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関係プロテアーゼインヒビター(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-アンチプラスミン、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-2(PAI2)、がんプロコアグラントまたはエポエチンアルファを含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、血液または血液凝固因子は第VIII因子である。
【0017】
提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの一態様において、合成ナノ担体に付着される免疫抑制剤の積載量は、合成ナノ担体にわたる平均で、0.1%と50%との間である。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、積載量は0.1%と20%との間である。
【0018】
提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの一態様において、合成ナノ担体は、脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性物質系エマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウイルス様粒子、または、ペプチドまたはタンパク質粒子を含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体は、脂質ナノ粒子を含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体はリポソームを含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体は金属ナノ粒子を含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、金属ナノ粒子は金ナノ粒子を含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体はポリマーナノ粒子を含む。
【0019】
提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、ポリマーナノ粒子は、非メトキシ末端のプルロニックポリマーであるポリマーを含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、ポリマーナノ粒子は、ポリエステル、ポリエーテルに付着されたポリエステル、ポリアミノ酸、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリケタール、多糖、ポリエチルオキサゾリンまたはポリエチレンイミンを含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、ポリエステルは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)またはポリカプロラクトンを含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、ポリマーナノ粒子は、ポリエステル、および、ポリエーテルに付着されたポリエステルを含む。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、ポリエーテルは、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを含む。
【0020】
提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの一態様において、合成ナノ担体の動的光散乱を使用して得られる粒子サイズ分布の平均値は、100nmよりも大きな径である。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、径は150nmよりも大きい。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、径は200nmよりも大きい。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、径は250nmよりも大きい。提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、径は300nmよりも大きい。
【0021】
提供される方法または組成物またはキットのいずれか1つの一態様において、合成ナノ担体のアスペクト比は1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7、または1:10よりも大きい。
【0022】
別の側面において、本明細書で提供される組成物またはキットのいずれか1つの製造方法が提供される。一態様において、製造方法は、治療用高分子の用量または剤形を生成すること、および、免疫抑制剤の用量または剤形を生成することを含む。いくつかの態様において、治療用高分子の用量または剤形は、治療用高分子の低減された薬力学的有効用量である。提供される製造方法のいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤の用量または剤形を生成するステップは、免疫抑制剤を合成ナノ担体に付着させることを含む。提供される製造方法のいずれか1つの別の態様において、方法はさらに、免疫抑制剤の用量または剤形と治療用高分子の用量または剤形とを、キットにおいて組み合わせることを含む。
【0023】
別の側面において、対象において抗治療用高分子抗体応答を低減するための医薬の製造のための、本明細書で提供される組成物またはキットのいずれかの使用が提供される。一態様において、組成物またはキットは、免疫抑制剤および治療用高分子を含み、ここで治療用高分子は、治療用高分子の低減された薬力学的有効用量で提供されてもよい。本明細書で提供される使用のいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤は合成ナノ担体に付着されている。本明細書で提供される使用のいずれか1つの別の態様において、使用は、本明細書で提供される方法のいずれか1つを達成するためである。
【0024】
別の側面において、本明細書で提供される組成物またはキットのいずれか1つは、本明細書で提供される方法のいずれか1つにおける使用のためのものであってもよい。一態様において、組成物またはキットは、治療用高分子の1つまたは2つ以上の用量または剤形、および/または、免疫抑制剤の1つまたは2つ以上の用量または剤形を含む。一態様において、治療用高分子の用量は、低減された薬力学的有効用量である。別の態様において、免疫抑制剤は合成ナノ粒子に付着されている。
【0025】
別の側面において、抗治療用高分子抗体応答を低減することが意図される医薬の製造方法が提供される。一態様において、医薬は免疫抑制剤および/または治療用高分子を含み、ここで治療用高分子は、低減された薬力学的有効用量であってよい。本明細書に提供される製造方法のいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤は合成ナノ担体に付着されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図の簡単な説明
図1図1は、本明細書で提供される併用投与による抗原特異的な循環抗体の産生レベルを示す。
図2図2は、本明細書で提供される併用投与による抗原特異的な循環抗体の産生レベルを示す。
図3図3は、本明細書で提供される併用投与による抗OVA抗体価を提供する。
図4図4は、本明細書で提供される併用投与による抗KLH抗体価を提供する。
図5図5は、最終のナノ担体およびFVIIIの最終投薬後1か月のFVIIIに対する抗体想起応答(antibody recall response)を示す。
【0027】
図6図6Aおよび6Bは、血友病Aマウスにおけるナノ担体およびFVIII投薬の有効性を示す。
図7図7Aおよび7Bは、ラパマイシンに付着されたナノ担体の有無での、HUMIRA/アダリムマブで処置されたマウスにおける、HUMIRAに対する免疫応答を示す。
図8図8は、ラパマイシンに付着されたナノ担体の有無での、KLHで処置されたマウスにおける抗キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)抗体価を示す。
図9図9は、ラパマイシンに付着されたナノ担体の有無での、OVAで処置されたマウスにおける抗オボアルブミン(OVA)抗体価を示す。
図10図10は、ラパマイシンに付着されたナノ担体の有無での、KRYSTEXXAで処置されたマウスにおける抗KRYSTEXXA抗体価を示す。
【0028】
図11図11は、ラパマイシンに付着されたナノ担体の存否のいずれかにおける、OVAおよびKLHで処置されたマウスにおける抗体価を示す。
図12図12Aおよび12Bは、ラパマイシンに付着されたナノ担体の有無での、KLHで処置されたマウスにおけるKLHに対する免疫応答を示す。
図13図13Aおよび13Bは、ラパマイシンに付着されたナノ担体の有無での、HUMIRA/アダリムマブで処置されたマウスにおけるHUMIRA/アダリムマブに対する免疫応答を示す。
図14図14は、本明細書で提供される方法を実行するための例示的なプロトコルを提供する図である。
図15図15は、HUMIRAによる治療に関して本明細書で提供される方法を実行することの有益な効果を示す。
【0029】
図16図16は、本明細書で提供される方法を実行するための例示的なプロトコルを提供する。
図17図17は、HUMIRAによる治療に関して本明細書で提供される方法を実行することの有益な効果を示す。
図18図18は、合成ナノ担体に付着された2つの異なる免疫抑制剤の結果として、抗タンパク質抗体応答の低減を実証する。
図19図19は、HUMIRAによる治療に関して本明細書で提供される方法を実行することの別の例示的なプロトコルおよび有益な効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の詳細な説明
本発明を詳細に説明する前に、本発明が、具体的に例示された材料またはプロセスパラメータは当然変化し得るので、かかるものに限定されないということを理解すべきである。本明細書で使用する用語法は本発明の具体的な態様を記載するためのものにすぎず、本発明を記載するための代替的用語法の使用を限定することを意図しないということもまた理解されるべきである。
上記または下記のいずれにおいても本明細書で引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、全ての目的において、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
本明細書および添付のクレームで使用する場合、その内容が別途明確に指定していない限り、単数形の「a」、「an」および「the」は複数の言及物を包含する。例えば、「ポリマー(a polymer)」への言及は、2つまたは3つ以上のかかる分子の混合物または単一のポリマー種の異なる分子量の混合物を包含し、「合成ナノ担体」への言及は2つまたは3つ以上のかかる合成ナノ担体の混合物または複数のかかる合成ナノ担体を包含し、「RNA分子」への言及は、2つまたは3つ以上のかかるRNA分子の混合物または複数のかかるRNA分子を包含し、「免疫抑制剤」への言及は、2つまたは3つ以上のかかる材料または複数のかかる免疫抑制剤分子を包含する、等。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「含む(comprise)」、または「comprises」もしくは「comprising」などの変形形態は、いずれか列挙された完全体(integer)(例えば特長、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップまたは限定)または完全体の群(例えば複数の特長、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップまたは限定)の包含を表示すると読むべきであって、いずれか他の完全体または完全体の群の排除を表示すると読むべきではない。ゆえに、本明細書で使用するとき、用語「含む(comprising)」は包括的であり、追加の、列挙されない完全体または方法/プロセスステップを排除しない。
【0033】
本明細書で提供される組成物および方法のいずれか1つのある態様において、「含む(comprising)」は「本質的にからなる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」で置換されてもよい。語句「本質的にからなる」は、明記された完全体(単数または複数)またはステップを、クレームされる発明の性質または機能に重大な影響を及ぼさないものと共に要するために、本明細書で使用される。本明細書で使用するとき、用語「からなる(consisting)」は、列挙された完全体(例えば特長、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップまたは限定)または完全体の群(例えば複数の特長、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップまたは限定)のみの存在を表示するために使用される。
【0034】
A.序文
本明細書で提供される方法、組成物またはキットは、治療用高分子に対する抗体応答が始まっている対象における治療用高分子の薬力学的効果(単数または複数)を改善するために使用し得る。したがって、本明細書で提供される方法または組成物またはキットは、さもなければ抗治療用高分子抗体応答に起因して減少される治療用高分子の薬力学的効果(単数または複数)を改善するために使用され得る。特定の理論に拘泥するものにおいてないが、提供される方法または組成物またはキットを使用して、治療用高分子に対する望ましくない体液性免疫応答が低減され得ると考えられる。いくつかの態様において、方法、組成物またはキットは、対象を治療用高分子に対して寛容化して、提供される免疫抑制剤用量の併用投与なしで治療用高分子が投与されるときにもたらされるであろう望ましくない免疫応答を低減するために使用し得、このような用量は繰り返し併用投与されてもよい。
【0035】
かかる望ましくない免疫応答は、治療用高分子のクリアランスの向上、または治療用高分子の治療活性の他の干渉をもたらし得る。それゆえ、望ましくない免疫応答の低減の結果として、治療用高分子の薬力学的効果(単数または複数)を向上し得、および/または、提供される方法、組成物またはキットによって治療用高分子の低減された用量を使用して同じレベルの効果を達成し得る。それゆえ、望ましくない免疫応答の低減の別の結果として、治療用高分子の繰り返し投与を対象に投与し得る。
【0036】
予期せずに、かつ驚くべきことに、治療用高分子と併用して、かつ抗治療用高分子抗体応答の存在下で、免疫抑制剤を、好ましくはいくつかの態様において合成ナノ担体に付着されたときに、送達することは、薬力学的効果の向上をもたらし得ることを見出した。例えば、前述した組み合わせは、治療用高分子の望ましい処置効果に干渉する抗治療用高分子特異的抗体を中和するのを助け得る。本明細書で提供される方法、組成物またはキットは、いくつかの態様において、治療用高分子に対する望ましくない免疫応答を低減させるのみならず、治療用高分子を単独で投与したときに(その治療用高分子に対する望ましくない免疫応答の結果として)、そうでなければ減少されるであろう治療用高分子の望ましい治療効果の向上もまたもたらす。
【0037】
ゆえに、本明細書で提供される方法、組成物またはキットは、本明細書で提供される発明の効果なしに投与されるときには治療用高分子に対する望ましくない免疫応答を補うために一般には増加されるであろう治療用高分子の用量を増加させる必要なしに、対象が治療用高分子の処置効果を得ることを可能にし得る。驚くべきことに、本明細書で提供される方法、組成物またはキットは、対象が治療用高分子の低減された用量を投与されて同じ治療効果を達成することさえも可能にする。
【0038】
治療用高分子による治療処置の間に発生する望ましくない免疫応答は、提供される方法、組成物またはキットと対抗し得るので、本発明は、治療用高分子に対する望ましくない免疫応答が発生するか、または発生することが予期される対象において、薬力学的効果の向上を達成するために、または、低減された薬力学的有効用量を使用するために、有用である。本明細書で提供される方法のいずれか1つの一態様において、対象は、かかる望ましくない免疫応答のリスクのある対象であり得る。
ここで、以下に本発明をより詳細に説明する。
【0039】
B.定義
「投与すること」または「投与」または「投与する」は、薬理学的に有用なやり方で対象へ材料を提供することを意味する。該用語は、いくつかの態様において投与させること(Causing to be administered)を包含することが意図される。「投与させること」とは、他の当事者に材料を投与するよう直接的または間接的に、させること、促すこと、奨励すること、援助すること、誘導すること、または、指示することを意味する。
【0040】
「有効量」は、対象への投与のための組成物または用量の文脈において、対象における1つまたは2つ以上の望ましい応答、例えば寛容原性免疫応答の発生(例えば、治療用高分子に特異的なB細胞の増殖、活性化、誘導、生存、動員の減少、または、治療用高分子に特異的な抗体の産生の減少)を生じさせる組成物の量または用量をいう。いくつかの態様において、有効量は薬力学的有効量である。それゆえ、いくつかの態様において、有効量は、本明細書で提供される望ましい薬力学的効果、治療効果および/または免疫応答の1つまたは2つ以上を生じさせる、本明細書で提供されるいずれかの組成物の量または用量(または本明細書で提供される複数の組成物または用量)である。この量はin vitroまたはin vivoを目的とし得る。in vitroの目的において、量は、治療用高分子の投与および/またはそれに対する抗原特異的免疫寛容原性を必要とする患者にとって臨床効果を有し得ると臨床医が考えるであろう量であり得る。
【0041】
有効量は、望ましくない免疫応答のレベルを低減させることに関与し得るが、いくつかの態様において、それは望ましくない免疫応答を完全に防止することに関与する。有効量はまた、望ましくない免疫応答が起こることを遅延させることにも関与し得る。有効である量はまた、望ましい治療エンドポイントまたは望ましい治療結果を生じさせる量でもあり得る。他の態様において、有効量は、治療エンドポイントまたは治療結果などの望ましい応答のレベルを向上させることに関与し得る。有効量は好ましくは、対象において、治療用高分子などの抗原に対する寛容原性免疫応答をもたらす。上述のもののいずれかの達成は、ルーチンな方法によってモニタリングされ得る。
【0042】
提供される方法のいずれか1つのいくつかの態様において、有効量は、望ましい応答が少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも4か月間、少なくとも5か月間、またはそれより長く、対象において存続する量である。提供される組成物および方法のいずれかの他の態様において、有効量は、測定可能な望ましい応答を少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも4か月間、少なくとも5か月間、またはそれより長く、生じさせる量である。
【0043】
有効量は当然、医療従事者の知識と経験の範囲内で、処置されている具体的な対象;状態、疾患または障害の重篤性;年齢、体調、サイズおよび体重を包含する個々の患者パラメータ;処置の持続期間;(存在する場合)併用治療の特質;投与の具体的な経路および同種の因子に依存するであろう。これらの因子は当業者には周知であり、ルーチンな実験法程度のことで対処し得る。一般に好ましくは、最大用量、すなわち、健全な医療的判断に従う最も高い安全な用量を使用することである。しかしながら、患者はより少ない用量、または耐容用量を、医療的理由、心理学的理由、または事実上あらゆる他の理由で主張し得るということは、当業者には理解されよう。
【0044】
一般に、本発明の組成物における免疫抑制剤および/または治療用高分子の用量は、免疫抑制剤および/または治療用高分子の量をいう。代替的に、用量は、免疫抑制剤および/または治療用高分子の望ましい量を提供する合成ナノ担体の数に基づいて投与され得る。
【0045】
「抗治療用高分子抗体応答」または「抗治療用高分子特異的抗体応答」は、治療用高分子の投与の結果としての、抗治療用高分子特異的抗体の発生、またはこうした抗体を産生するためのプロセスの誘導である。ある態様において、かかる応答は治療用高分子の治療効果と対抗する。
【0046】
「抗原」は、B細胞抗原またはT細胞抗原を意味する。「抗原のタイプ(単数または複数)」は、同じかまたは実質的に同じ抗原的特徴を共有する分子を意味する。いくつかの態様において、抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、多糖であり得えるか、または、細胞中に含有されるかまたは発現される。抗原が十分に定義または特徴付けされていないときなどのいくつかの態様において、抗原は、細胞または組織調製物、細胞片、細胞エキソソーム、ならし培地等に含有され得る。
【0047】
「抗原特異的」は、抗原またはその一部分の存在によりもたらされるか、または、抗原を特異的に認識または結合する分子を発生させる、いずれかの免疫応答をいう。いくつかの態様において、抗原が治療用高分子を含むとき、抗原特異的は、治療用高分子特異的を意味し得る。例えば、免疫応答が治療用高分子特異的抗体産生などの抗原特異的抗体産生である場合、抗原(例えば治療用高分子)に特異的に結合する抗体が産生される。別の例として、免疫応答が、抗原特異的B細胞またはCD4+T細胞の増殖および/または活性である場合、増殖および/または活性は、抗原またはその一部分の、単独での、または、MHC分子、B細胞等と複合しての認識によりもたらされる。
【0048】
「薬力学的効果を査定すること」は、in vitroまたはin vivoでの薬力学的効果のレベル、存非、低減、増加等いずれかの測定または決定をいう。かかる測定または決定は、対象から得た1つまたは2つ以上のサンプルで行われ得る。かかる査定は、本明細書で提供されるか、またはそうでなければ、当該分野において知られている方法のいずれか1つにおいて行われ得る。
【0049】
「リスクのある」対象は、疾患、障害または状態を有する機会があると医療従事者が考える対象、または、本明細書で提供される望ましくない抗治療用高分子抗体応答を経験する機会があり、提供される組成物および方法から効果が得られるであろうと医療従事者が考える対象である。本明細書で提供される方法、組成物またはキットのいずれか1つのある態様において、対象は、治療用高分子に対する抗治療用高分子抗体応答を有するリスクのある対象である。本明細書で提供される方法、組成物またはキットのいずれか1つの別の態様において、対象は、治療用高分子に対する抗治療用高分子抗体応答を有することが予期される対象である。
【0050】
「付着する」または「付着されている」または「連結する」または「連結されている」(等)は、1つの実体(例えば部位)をもう1つと化学的に関連させることを意味する。いくつかの態様において、付着は共有結合性であり、それは付着が2つの実体間の共有結合の存在の文脈下で起こることを意味する。非共有結合性の態様において、非共有結合性付着は、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理吸着、ホスト-ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子-双極子相互作用および/またはそれらの組み合わせを包含するが、それらに限定されない非共有結合性相互作用により媒介される。ある態様において、カプセル化が付着の形態である。
【0051】
ある態様において、治療用高分子および免疫抑制剤は互いに付着されず、それは治療用高分子と免疫抑制剤とが一方をもう一方と化学的に関連させるように具体的に意図されたプロセスに供されないことを意味する。ある態様において、治療用高分子および/または免疫抑制剤は合成ナノ担体に付着されず、それは治療用高分子(および/または免疫抑制剤)と合成ナノ担体とが一方をもう一方と化学的に関連させるように具体的に意図されたプロセスに供されないことを意味する。
【0052】
「平均」は、本明細書で使用するとき、特に注記しない限り算術平均値をいう。
「組み合わせ」は、2つまたは3つ以上の材料および/または剤(本明細書において構成成分とも言う)に適用するとき、その2つまたは3つ以上の材料/剤が関連されている材料を定義することが意図される。構成成分は、例えば第1構成成分、第2構成成分、第3構成成分等、別個に識別され得る。本文脈における用語「組み合わされた」および「組み合わせること」はこれに従い解釈されるものとする。
【0053】
組み合わせにおける2つまたは3つ以上の材料/剤の関連は、物理的であっても、非物理的であってもよい。物理的に関連された材料/剤の例としては、以下が挙げられる:
・2つまたは3つ以上の材料/剤を混和物中に(例えば同じ単位用量内に)含む組成物(例えば単位製剤);
・2つまたは3つ以上の材料/剤が化学的/物理化学的に結び付けられた(例えば架橋、分子凝集または共通のビヒクル部位への結合)、材料を含む組成物;
・2つまたは3つ以上の材料/剤が化学的/物理化学的に共パッケージ化された(co-packaged)(例えば、脂質ベシクル、粒子(例えばマイクロまたはナノ粒子)または乳化液滴の上または内に配置された)、材料を含む組成物;
・2つまたは3つ以上の材料/剤が共パッケージ化また一括提供(co-presented)された(例えば、一連の単位用量の一部として)、医薬キット、医薬パックまたは患者用パック。
【0054】
非物理的に関連され組み合わされた材料/剤の例としては、以下が挙げられる:
・2つまたは3つ以上の材料/剤の少なくとも1つを、その2つまたは3つ以上の材料/剤の物理的関連を形成するための、その少なくとも1つの化合物/剤の即席の関連のための使用説明書と一緒に含む、材料(例えば単位製剤);
・2つまたは3つ以上の材料/剤の少なくとも1つを、その2つまたは3つ以上の材料/剤による組み合わせ治療のための使用説明書と一緒に含む、材料(例えば単位製剤);
・2つまたは3つ以上の材料/剤の少なくとも1つを、その2つまたは3つ以上の材料/剤の他のもの(単数または複数)が投与された(または投与されている)患者集団に投与するための使用説明書と一緒に含む、材料;
・2つまたは3つ以上の材料/剤の少なくとも1つを、その2つまたは3つ以上の材料/剤の他のもの(単数または複数)と組み合わせて使用するように具体的に適合された量または形態で含む、材料。
【0055】
本明細書で使用するとき、用語「組み合わせ治療」は、2つまたは3つ以上の材料/剤の組み合わせ(上記で定義)の使用を含む治療を定義することが意図される。ゆえに、本出願における「組み合わせ治療」、「組み合わせ」および材料/剤の「組み合わせた」使用への言及は、同じ全体的な処置レジメンの一部として投与される材料/剤をいう場合がある。したがって、2つまたは3つ以上の材料/剤の各々の薬量学は異なる場合があり、各々は同時に投与されてもよいし、異なる時刻に投与されてもよい。それゆえ、組み合わせの材料/剤は、逐次に(例えば、前または後に)または同時に、同じ医薬製剤において(即ち一緒に)または異なる医薬製剤において(すなわち別個に)のいずれかで、投与されてよいことが分かるであろう。同じ製剤において同時にとは、統一化製剤としてということであり、一方、異なる医薬製剤において同時には非統一化ということである。組み合わせ治療における2つまたは3つ以上の材料/剤の各々の薬量学は、投与経路に関しても異なっていてよい。
【0056】
「併用(して)」は、2つまたは3つ以上の材料/剤を、時間的に相関された、好ましくは生理学的または免疫学的応答におけるモジュレーションを提供するように時間的に充分に相関された、さらにより好ましくはその2つまたは3つ以上の材料/剤が組み合わせて投与される、やり方で、対象に投与することを意味する。ある態様において、併用投与は、明記された期間内、好ましくは1か月以内、より好ましくは1週間以内、なおより好ましくは1日以内、さらにより好ましくは1時間以内の、2つまたは3つ以上の材料/薬剤の投与を網羅し得る。ある態様において、材料/剤は繰り返し併用投与されてよく、すなわち、例において提供され得る併用投与などの、1回よりも多い機会における併用投与であってよい。
【0057】
「決定すること」または「決定する」は事実関係を確かめることを意味する。決定することは、実験を行うことまたは予測を立てることを包含するがそれらに限定されない、数々の方式で遂行され得る。例として、免疫抑制剤または治療用高分子の用量は、試験用量で開始し、投与のための用量を決定するため知られているスケーリング技術(アロメトリックまたはアイソメトリックスケーリングなど)を使用することにより決定され得る。かかるものを使用して本明細書に提供されるプロトコルを決定もまたし得る。別の態様において、用量は対象において種々の用量を試験することによって、すなわち経験およびガイドデータに基づく直接実験を通して、決定されてもよい。ある態様において、「決定すること」または「決定する」は、「決定させること」を含む。「決定させること」は、実体に事実関係を確かめるように、させること、促すこと、奨励すること、援助すること、誘導することまたは指示すること、または、その実体と協力して行動することを意味し、直接もしくは間接的に、または明示的にもしくは黙示的に、を包含する。
【0058】
「剤形」は、対象への投与に好適な媒体、担体、ビヒクルまたはデバイス中の薬理学的におよび/または免疫学的に活性な材料を意味する。本明細書で提供される組成物または用量のいずれか1つは、剤形中にあってよい。
「用量」は、所与の時間にわたり対象に投与するための薬理学的および/または免疫学的に活性な材料の具体的な分量(quantity)をいう。
【0059】
「カプセル化する」は、合成ナノ担体内の物質の少なくとも一部分を封入することを意味する。いくつかの態様において、物質は合成ナノ担体内に完全に封入される。他の態様において、カプセル化される物質の大部分または全てが、合成ナノ担体の外部の局所環境に曝露されない。他の形態において、局所環境に曝露されるのが50%、40%、30%、20%、10%または5%(重量/重量)を超えない。カプセル化は、吸収(吸収は、物質の大部分または全てを合成ナノ担体の表面上に置き、その物質を合成ナノ担体の外部の局所環境に曝した状態にする)とは区別される。
【0060】
「発生させること」は、生理学的または免疫学的応答などの作用(例えば寛容原性免疫応答)を、それ自体で直接的または間接的に起こさせることを意味する。
「対象を識別すること」は、対象を本明細書で提供される方法、組成物またはキットから効果が得られ得る対象として臨床医に認識せしめるいずれかの行動または行動のセットである。好ましくは、識別された対象は、本明細書で提供される治療用高分子からの治療効果を必要としており、抗治療用高分子特異的抗体応答が起こっているか、または起こることが疑われる対象である。行動または行動のセットは、それ自体の直接的なものであっても、または間接的なものであってもよい。本明細書で提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに、本明細書で提供される方法、組成物またはキットを必要としている対象を識別することを含む。
【0061】
「免疫抑制剤」は、APCに免疫抑制効果を持たせるか、または、T細胞またはB細胞が抑制されるようにする(例えば寛容原性効果)化合物を意味する。免疫抑制効果は一般に、望ましくない免疫応答を低減、阻害または防止するか、または、制御性免疫応答などの望ましい免疫応答を促進する、サイトカインまたは他の因子のAPCによる産生または発現をいう。APCが、このAPCによって提示される抗原を認識する免疫細胞に対して(免疫抑制効果の下)免疫抑制機能を獲得するとき、免疫抑制効果は、提示された抗原に特異的であると言われる。
【0062】
いかなる具体的な理論にも拘泥しないが、免疫抑制効果は、好ましくは抗原の存在下、免疫抑制剤がAPCに送達されることの結果であると思われる。一態様において、免疫抑制剤は、1つまたは2つ以上の免疫エフェクター細胞においてAPCに制御性表現型を促進させるものである。例えば制御性表現型は、抗原特異的CD4+T細胞またはB細胞の産生、誘導、刺激または動員の阻害、抗原特異的抗体の産生の阻害、Treg細胞(例えばCD4+CD25highFoxP3+Treg細胞)の産生、誘導、刺激または動員、等により特徴付けられ得る。
【0063】
これはCD4+T細胞またはB細胞の制御性表現型への転換の結果であり得る。これはまた、CD8+T細胞、マクロファージおよびiNKT細胞などの他の免疫細胞におけるFoxP3の誘導の結果でもあり得る。一態様において、免疫抑制剤は、抗原を処理した後のAPCの応答に影響を与えるものである。別の態様において、免疫抑制剤は、抗原の処理に干渉するものではない。さらなる態様において、免疫抑制剤はアポトーシスシグナル分子ではない。別の態様において、免疫抑制剤はリン脂質ではない。
【0064】
免疫抑制剤としては、スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシン類縁体などのmTORインヒビター;TGF-βシグナル剤;TGF-β受容体アゴニスト;トリコスタチンAなどのヒストンデアセチラーゼインヒビター;コルチコステロイド;ロテノンなどのミトコンドリア機能のインヒビター;P38インヒビター;6Bio、デキサメタゾン、TCPA-1、IKK VIIなどのNF-κβインヒビター;アデノシン受容体アゴニスト;ミソプロストールなどのプロスタグランジンE2アゴニスト(PGE2);ロリプラムなどのホスホジエステラーゼ4インヒビター(PDE4)などのホスホジエステラーゼインヒビター;プロテアソームインヒビター;キナーゼインヒビター;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカインインヒビター;サイトカイン受容体インヒビター;
【0065】
サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼインヒビター;カルシニューリンインヒビター;ホスファターゼインヒビター;TGX-221などのPI3KBインヒビター;3-メチルアデニンなどのオートファジーインヒビター;アリールハイドロカーボン受容体インヒビター;プロテアソームインヒビターI(PSI);およびP2X受容体ブロッカーなどの酸化ATPが挙げられるが、これらに限定されない。免疫抑制剤としてはまた、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンAなどのシクロスポリン、アリールハイドロカーボン受容体インヒビター、レスベラトロール、アザチオプリン(Aza)、6-メルカプトプリン(6-MP)、6-チオグアニン(6-TG)、FK506、サングリフェリンA、サルメテロール、マイコフェノレートモフェチル(MMF)、アスピリンおよび他のCOXインヒビター、ニフルミン酸、エストリオール、メトトレキサート、および、トリプトリドも挙げられる。ある態様において、免疫抑制剤は本明細書で提供される薬剤のいずれかを含んでいてもよい。
【0066】
免疫抑制剤は、APCに免疫抑制効果を直接提供する化合物であっても、免疫抑制効果を間接的に(すなわち投与後に何らかの方式で処理された後に)提供する化合物であってもよい。したがって、免疫抑制剤は、本明細書で提供される化合物のいずれかのプロドラッグ形態を包含する。
【0067】
本明細書で提供される方法、組成物またはキットのいずれか1つのある態様において、本明細書で提供される免疫抑制剤は、合成ナノ担体に付着されている。好ましい態様において、免疫抑制剤は、合成ナノ担体の構造を構成する材料に追加された要素である。例えば、合成ナノ担体が1つまたは2つ以上のポリマーで構成されている一態様において、免疫抑制剤は、1つまたは2つ以上のポリマーに追加されて付着された化合物である。別の例として、合成ナノ担体が1つまたは2つ以上の脂質で構成されている一態様において、免疫抑制剤はやはり、1つまたは2つ以上の脂質に追加されて付着された化合物である。合成ナノ担体の材料がまた、免疫抑制効果をももたらす場合などのある態様において、免疫抑制剤は、免疫抑制効果をもたらす合成ナノ担体の材料に追加されて存在する要素である。
【0068】
他の例示的な免疫抑制剤としては、低分子薬物、天然製品、抗体(例えばCD20、CD3、CD4に対する抗体)、生物製剤系薬物、炭水化物系薬物、ナノ粒子、リポソーム、RNAi、アンチセンス核酸、アプタマー、メトトレキサート、NSAID;フィンゴリモド;ナタリズマブ;アレムツズマブ;抗CD3;タクロリムス(FK506);TGF-βおよびIL-10などのサイトカインおよび成長因子;等が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる免疫抑制剤は当業者に知られており、本発明はこの点において限定されない。
【0069】
本明細書で提供される方法、組成物またはキットのいずれか1つのある態様において、免疫抑制剤はナノ結晶性形態などの形態にあり、それにより免疫抑制剤自体の形態は粒子または粒子様である。ある態様において、こうした形態はウイルスまたは他の外来病原体を模擬している。多くの薬物はナノ化されており、こうした薬物の形態を生じさせるための適切な方法は当業者に知られているであろう。ナノ結晶性ラパマイシンなどの薬物ナノ結晶は当業者に知られている(Katteboinaa, et al. 2009, International Journal of PharmTech Resesarch; Vol. 1, No. 3; pp682-694)。
【0070】
本明細書で使用するとき、「薬物ナノ結晶」は、担体またはマトリックス材料を包含しない、薬物(例えば免疫抑制剤)の形態をいう。いくつかの態様において、薬物薬物ナノ結晶は、90%、95%、98%または99%、または、それ以上の薬物を含む。薬物ナノ結晶の生成方法としては、限定されないが、摩砕(milling)、高圧均質化、沈殿、噴霧乾燥、超臨界溶体急速膨張(RESS)、Nanoedge(登録商標)技術(Baxter Healthcare)およびNanocrystal Technology(商標)(Elan Corporation)が挙げられる。
【0071】
いくつかの態様において、薬物ナノ結晶の立体または静電安定性のために、界面活性物質または安定剤を使用してもよい。いくつかの態様において、免疫抑制剤のナノ結晶またはナノ結晶性形態は、免疫抑制剤、特に不溶性のまたは不安定な(labile)免疫抑制剤、の溶解性、安定性および/または生物学的利用能を増大させるために使用され得る。いくつかの態様において、治療用高分子の低減された薬力学的有効用量の、ナノ結晶性形態の免疫抑制剤との併用投与は、抗治療用高分子抗体応答の低減をもたらす。
【0072】
合成ナノ担体に付着されるときの「積載量(load)」は、合成ナノ担体全体における材料の総乾燥処方重量に基づく、合成ナノ担体に付着される免疫抑制剤および/または治療用高分子の量(重量/重量)である。一般に、積載量は、合成ナノ担体の集団にわたる平均として算出される。一態様において、積載量は、合成ナノ担体にわたって平均して、0.1%と99%との間である。別の態様において、積載量は、0.1%と50%との間である。別の態様において、免疫抑制剤および/または治療用高分子の積載量は、0.1%と20%との間である。さらなる態様において、免疫抑制剤および/または治療用高分子の積載量は0.1%と10%との間である。
【0073】
なおさらなる態様において、免疫抑制剤および/または治療用高分子の積載量は1%と10%との間である。なおさらなる態様において、免疫抑制剤の積載量は7%と20%との間である。さらに別の態様において、免疫抑制剤および/または治療用高分子の積載量は、合成ナノ担体の集団にわたって平均して、少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.3%、少なくとも0.4%、少なくとも0.5%、少なくとも0.6%、少なくとも0.7%、少なくとも0.8%、少なくとも0.9%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。
【0074】
またさらなる態様において、免疫抑制剤および/または治療用高分子の積載量は、合成ナノ担体の集団にわたって平均して、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%である。上記の態様のいくつかの態様において、免疫抑制剤および/または治療用高分子の積載量は、合成ナノ担体の集団にわたって平均して、25%を超えない。ある態様において、積載量は例に記載され得るとおりであるか、またはそうでなければ、当該分野において知られているように、算出される。
【0075】
いくつかの態様において、免疫抑制剤の形態が、ナノ結晶性免疫抑制剤などの、それ自体粒子または粒子様であるとき、免疫抑制剤の積載量は粒子等における免疫抑制剤の量(重量/重量)である。かかる態様において、積載量は97%、98%、99%またはそれ以上に届き得る。
「合成ナノ担体の最大寸法」は、合成ナノ担体のいずれかの軸に沿って測定されたナノ担体の最も長い寸法を意味する。「合成ナノ担体の最小寸法」は、合成ナノ担体のいずれかの軸に沿って測定された合成ナノ担体の最も小さい寸法を意味する。例えば、回転楕円状合成ナノ担体において、合成ナノ担体の最大および最小寸法は、実質的に同一であって、その径のサイズとなるであろう。同様に立方体様の合成ナノ担体において、合成ナノ担体の最小寸法は、その高さ、幅または長さのうち最小のものとなり、一方合成ナノ担体の最大寸法は、その高さ、幅または長さのうち最大のものとなろう。
【0076】
一態様において、サンプル中の合成ナノ担体の総数に基づいてサンプル中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nm以上である。一態様において、サンプル中の合成ナノ担体の総数に基づいてサンプル中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、5μm以下である。好ましくは、サンプル中の合成ナノ担体の総数に基づいてサンプル中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、110nmよりも大きく、より好ましくは120nmよりも大きく、より好ましくは130nmよりも大きく、より好ましくは150nmよりもなお大きい。
【0077】
合成ナノ担体の最大寸法と最小寸法とのアスペクト比は、態様によって変化し得る。例えば、合成ナノ担体の最大寸法の最小寸法に対するアスペクト比は、1:1~1,000,000:1、好ましくは1:1~100,000:1、より好ましくは1:1~10,000:1、より好ましくは1:1~1000:1、なおより好ましくは1:1~100:1、さらにより好ましくは1:1~10:1で変化し得る。好ましくは、サンプル中の合成ナノ担体の総数に基づいてサンプル中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、3μm以下、より好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、より好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、なおより好ましくは500nm以下である。
【0078】
好ましい態様において、サンプル中の合成ナノ担体の総数に基づいてサンプル中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nm以上、より好ましくは120nm以上、より好ましくは130nm以上、より好ましくは140nm以上、なおより好ましくは150nm以上である。合成ナノ担体寸法(例えば有効寸法)の測定は、いくつかの態様において、合成ナノ担体を液体(通常は水性)媒体中に懸濁し、動的光散乱(DLS)を使用する(例えばBrookhaven ZetaPALS機器を使用する)ことによって、得てもよい。例えば、合成ナノ担体の懸濁液は、水性緩衝剤から純水中に希釈されておよそ0.01~0.1mg/mLの最終合成ナノ担体懸濁濃度を達成し得る。
【0079】
希釈懸濁液は、DLS分析のために好適なキュベットの内部で直接調製されても、またはそれに移してもよい。次いでキュベットをDLS中に置き、制御された温度に平衡化し、次いで充分な時間スキャンして、媒体の粘度およびサンプルの屈折率に関する適切な入力に基づき、安定で再現可能な分布を獲得し得る。次いで有効径または分布の平均値を報告する。高アスペクト比または非回転楕円状の合成ナノ担体の有効サイズの決定は、より正確な測定を得るために電子顕微鏡などの拡大技術(augmentative techniques)を要する場合がある。合成ナノ担体の「寸法」または「サイズ」または「径」は、例えば動的光散乱を使用して得られる、粒子サイズ分布の平均値を意味する。
【0080】
「非メトキシ末端のポリマー」は、メトキシ以外の部位で終端する少なくとも1つの末端部を有するポリマーを意味する。いくつかの態様において、ポリマーはメトキシ以外の部位で終端する少なくとも2つの末端部を有する。他の態様において、ポリマーはメトキシで終端する末端部を有さない。「非メトキシ末端のプルロニックポリマー」は、両末端部にメトキシを有する直鎖プルロニックポリマー以外のポリマーを意味する。本明細書で提供されるポリマーナノ粒子は、非メトキシ末端のポリマーまたは非メトキシ末端のプルロニックポリマーを含み得る。
【0081】
「薬学的に許容し得る賦形剤」または「薬学的に許容し得る担体」は、組成物を処方するために薬理学的に活性な材料と一緒に使用される薬理学的に不活性な材料を意味する。薬学的に許容し得る賦形剤は、糖(例えばグルコース、ラクトース等)、抗菌剤などの保存剤、再構成助剤、着色剤、食塩水(リン酸緩衝化食塩水等)および緩衝剤を包含するが、これらに限定されない、当該分野において知られている種々の材料を含む。
【0082】
「薬力学的応答」の「薬力学的効果」は、治療用高分子の投与の結果としてのいずれかの生理学的または免疫学的応答を意味する。かかる応答は、治療効果に関連するものなどの望ましい応答であり得る。本明細書で提供される方法、組成物またはキットは、いくつかの態様において、抗治療用高分子抗体応答の存在下で投与されたときに、向上された治療効果などの向上された薬力学的効果をもたらすことが見出された。いくつかの例において、向上された薬力学的効果は、抗治療用高分子抗体応答の存在下で、本明細書で提供される免疫抑制剤用量の併用投与なしに投与されたときの治療用高分子の用量と同じか、またはそれよりも少ない治療用高分子の用量により得られる。
【0083】
材料/剤が薬力学的に有効であるか否かは、標準的な方法により評価し得る。いくつかの態様において、抗治療用高分子抗体応答の存在下で提供される方法、組成物またはキットを使用する薬力学的効果は、やはり抗治療用高分子抗体応答の存在下であるが治療用高分子がそのように投与されないときの薬力学的効果と比較される。ある態様において、比較は、抗治療用高分子抗体応答の存在下で治療用高分子が単独で投与されるときの薬力学的効果に対してなされる。一般に、薬力学的効果は、方法、組成物またはキットがかかる応答を克服するのに有効であることが望ましいため、抗治療用高分子抗体応答の存在下での投与により査定される。したがって、薬力学的効果はかかる応答が起こっているときに決定される。
【0084】
「プロトコル」は、対象への投与のパターンを意味し、1つまたは2つ以上の物質の対象へのいずれかの投薬レジメンを包含する。プロトコルは要素(または変数)で構成され;ゆえにプロトコルは1つまたは2つ以上の要素を含む。プロトコルのかかる要素は、投薬量、投薬頻度、投与経路、投薬期間、投薬速度、投薬の間隔、上記のいずれかの組み合わせ、等を含み得る。いくつかの態様において、かかるプロトコルは、本発明の1つまたは2つ以上の組成物を1または2以上の試験対象に投与するために使用され得る。これらの試験対象における免疫応答は次いで、望ましい、または望ましいレベルの薬力学的効果を発生させることにおいて、そのプロトコルが有効か否かを決定するために査定され得る。
【0085】
いずれかの他の治療効果および/または免疫効果はまた、上述の免疫応答に代えてまたはそれに追加されて査定されてもよい。プロトコルの要素の1つまたは2つ以上が、非ヒト対象などの試験対象において予め実証された後、ヒトプロトコルに移行されてもよい。例えば、非ヒト対象において実証された投与量を、アロメトリックスケーリングまたは他のスケーリング方法などの確立された技術を使用してヒトプロトコルの要素としてスケーリングしてもよい。プロトコルが望ましい効果を有していたか否かは、本明細書で提供されるか、または、その他の当該分野において知られている方法のうちのいずれかを使用して決定され得る。例えば、サンプルは、具体的な免疫細胞、サイトカイン、抗体、等が低減されたか、発生されたか、活性化されたか否か、等を決定するために、本明細書で提供される組成物が具体的なプロトコルに従って投与された対象から得てもよい。
【0086】
免疫細胞の存在および/または数を検出するための有用な方法としては、フローサイトメトリー法(例えばFACS)、ELISpot、増殖応答、サイトカイン産生および免疫組織化学法が挙げられるが、これらに限定されない。免疫細胞マーカーの特異的染色のための抗体および他の結合剤は市販されている。かかるキットは典型的に、細胞の不均質な集団からの望ましい細胞集団のFACSに基づく検出、分離および/または定量を可能にする、抗原のための染色試薬を包含する。ある態様において、本明細書で提供される数々の組成物が、プロトコルを含む要素の1つまたは2つ以上、または、全てまたは実質的に全てを使用して別の対象に投与される。いくつかの態様において、プロトコルは治療用高分子に対する抗体応答の低減および/または改善された薬力学的効果をもたらすことが実証されたものである。
【0087】
「提供すること」は、本発明を実行するために必要とされる物品もしくは物品のセットまたは方法を供給する、個人が行う行動または行動のセットを意味する。行動または行動のセットは、自身で直接的または間接的に取られ得る。
「対象を提供する」とは、臨床医に対象と接触させて本明細書で提供される組成物をその対象に投与させるか、または、本明細書で提供される方法をその対象において行わせる、いずれかの行動または行動のセットである。好ましくは、対象は治療用高分子の投与およびそれへの抗原特異的免疫寛容を必要としている対象である。行動または行動のセットは、自身で直接的または間接的に取られ得る。本明細書で提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに対象を提供することを含む。
【0088】
「向上された薬力学的効果を記録する」は、現実の、予期される、または疑われる抗治療用高分子抗体応答の存在下で治療用高分子用量が向上された薬力学的効果を達成したことを、いずれかの書面によるか、または電子形態で、メモするか、またはかかるメモが行われるであろうと予期される活動を直接的または間接的に引き起こすことを意味する。一般に、かかる状況において、本明細書で提供される併用投与の時点で入手可能な情報に基づいて本明細書で提供される免疫抑制剤用量なしで投与された場合(例えば単独投与)には、治療用高分子の用量が、抗治療用高分子抗体応答の存在下で、向上された薬力学的効果を達成するとは予期されなかったであろう。
【0089】
例えば、かかる状況において、免疫抑制剤用量なしで投与された場合には治療用高分子の有効性が減少されるであろうことが予期されるが、本明細書で提供される併用投与により、その代わりに薬力学的効果の向上が観察される。いくつかの態様において、記録は、治療用高分子用量と組み合わされた免疫抑制剤用量が対象に投与されたときに、またはその後のいずれかの時点で起こる。これらの態様のいくつかにおいて、治療用高分子の用量は、抗治療用高分子抗体応答の存在下で免疫抑制剤用量なしで投与される治療用高分子の用量と比較して低減される(またはそれを超えない)。「書面の形態」は、本明細書で使用するとき、紙などの媒体上のいずれかの記録をいう。「電子形態」は、本明細書で使用するとき、電子媒体上のいずれかの記録をいう。本明細書で提供される方法のいずれか1つはさらに、本明細書で提供される方法に従って処置を受ける対象における治療反応および/または免疫応答を記録するステップを含む。
【0090】
「低減された薬力学的有効用量」は、免疫抑制剤用量と共に投与されなかったとき(例えば、治療用高分子が単独で投与されたとき)の治療用高分子の量と比較して、本明細書で提供される免疫抑制剤用量と併用投与されたときに同様の薬力学的効果を達成し得る治療用高分子の低減された量をいう。本明細書で使用するとき、同様の薬力学的効果は、同じ方式で測定された別のレベルの1log内である、効果のレベルである。好ましくは、同様の薬力学的効果とは5倍差を超えない。なおより好ましくは、同様の薬力学的効果は2倍差を超えない。
【0091】
「対象」は、ヒトおよび霊長類などの温血動物;トリ;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマおよびブタなどのペットまたは家畜;マウス、ラットおよびモルモットなどの実験動物;魚;爬虫類;動物園のおよび野生の動物;等を包含する動物を意味する。
「合成ナノ担体(単数または複数)」は、自然界には見られずサイズにおいて5ミクロン以下の少なくとも1つの寸法を所有する離散性の物体を意味する。アルブミンナノ粒子は一般に、合成ナノ担体として包含されるが、特定の態様において、合成ナノ担体はアルブミンナノ粒子を含まない。ある態様において、合成ナノ担体はキトサンを含まない。他の態様において、合成ナノ担体は脂質系ナノ粒子ではない。さらなる態様において、合成ナノ担体はリン脂質を含まない。
【0092】
合成ナノ担体は、1つまたは複数の脂質系ナノ粒子(本明細書において脂質ナノ粒子ともいわれ、すなわちその構造を構成する材料の大部分が脂質であるナノ粒子)、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性物質系エマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウイルス様粒子(すなわち、主にウイルス構造タンパク質で構成されるが、感染性ではなくまたは感染性が低い粒子)、ペプチドまたはタンパク質系粒子(本明細書においてタンパク質粒子ともいわれ、すなわち、その構造を構成する材料の大部分がペプチドまたはタンパク質である粒子)(アルブミンナノ粒子など)および/または脂質ポリマーナノ粒子などのナノ材料の組み合わせを使用して開発されたナノ粒子であってよいが、これらに限定されない。
【0093】
合成ナノ担体は、回転楕円状、立方体様、ピラミッド状、楕円状、円筒状、ドーナツ状等を包含するが、これらに限定されない種々の異なる形状であり得る。本発明に従う合成ナノ担体は1つまたは2つ以上の表面を含む。本発明の実行に使用するように適合され得る例示的な合成ナノ担体は、(1)米国特許第5,543,158号(Gref et al.)に開示された生分解性ナノ粒子、(2)公開された米国特許出願第20060002852号(Saltzman et al.)のポリマーナノ粒子、(3)公開された米国特許出願第20090028910号(DeSimone et al.)のリソグラフィーにより構築したナノ粒子、(4)国際出願公開第2009/051837号(von Andrian et al.)の開示、(5)公開された米国特許出願第2008/0145441号(Penades et al.)に開示されたナノ粒子、
【0094】
(6)公開された米国特許出願第20090226525号(de los Rios et al.)に開示されたタンパク質ナノ粒子、(7)公開された米国特許出願第20060222652号(Sebbel et al.)に開示されたウイルス様粒子、(8)公開された米国特許出願第20060251677号(Bachmann et al.)に開示された核酸付着ウイルス様粒子、(9)国際公開第2010047839A1号または同第2009106999A2号に開示されたウイルス様粒子、(10)P. Paolicelli et al., "Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles", Nanomedicine. 5(6): 843-853(2010)に開示されたナノ沈殿ナノ粒子、
【0095】
(11)米国特許公開第2002/0086049号に開示されたアポトーシス細胞、アポトーシス体、または、合成または半合成模倣物、または(12)Look et al., "Nanogel-based delivery of mycophenolic acid ameliorates systemic lupus erythematosus in mice", J. Clinical Investigation 123(4): 1741-1749 (2013)に開示されたものを含む。ある態様において、合成ナノ担体は、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7よりも大きな、または1:10よりも大きなアスペクト比を所有し得る。
【0096】
約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に従う合成ナノ担体は、補体を活性化するヒドロキシル基を有する表面を含まないか、または代替的に補体を活性化するヒドロキシル基ではない部位から本質的になる表面を含む。好ましい態様において、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に従う合成ナノ担体は、補体を実質的に活性化する表面を含まないか、または代替的に補体を実質的に活性化しない部位から本質的になる表面を含む。より好ましい態様において、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に従う合成ナノ担体は、補体を活性化する表面を含まないか、または代替的に補体を活性化しない部位から本質的になる表面を含む。ある態様において、合成ナノ担体は、ウイルス様粒子を排除する。ある態様において、合成ナノ担体は1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7よりも大きな、または1:10よりも大きなアスペクト比を有し得る。
【0097】
「治療用高分子」は、対象に投与されて治療効果を有し得るいずれかのタンパク質、炭水化物、脂質または核酸をいう。いくつかの態様において、対象への治療用高分子の投与は、抗治療用高分子特異的抗体の産生を包含する望ましくない免疫応答をもたらし得る。本明細書で記載する場合、免疫抑制剤用量と併用した治療用高分子の投与は、それへの望ましくない免疫応答を低減させることなどにより、治療用高分子の治療有効性を向上させ得る。いくつかの態様において、治療用高分子は治療用ポリヌクレオチドまたは治療用タンパク質であり得る。
【0098】
「治療用ポリヌクレオチド」は、対象に投与されて治療効果を有し得るいずれかのポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに基づく治療を意味する。かかる治療は遺伝子サイレンシングを包含する。かかる治療の例は当該分野において知られており、ネイキッドRNA(メッセンジャーRNA、修飾メッセンジャーRNAおよびRNAiの形態を包含する)が挙げられるが、これらに限定されない。他の治療用ポリヌクレオチドの例は本明細書中に別記する。治療用ポリヌクレオチドは、細胞中、細胞上または細胞によって、産生されてもよいし、また細胞フリーの方法、または完全に合成によるin vitro法を使用して得てもよい。対象はそれゆえ、前述のいずれかによる処置を必要としているいずれかの対象を包含する。かかる対象には、前述のいずれかを受けるであろう対象が包含される。
【0099】
「治療用タンパク質」は、対象に投与されて治療効果を有し得るいずれかのタンパク質またはタンパク質に基づく治療を意味する。かかる治療としては、タンパク質補充治療およびタンパク質補強治療が挙げられる。かかる療法にはまた、外因性または外来性のタンパク質の投与、抗体治療および細胞または細胞に基づく治療も包含される。治療用タンパク質としては、酵素、酵素補助因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカイン、成長因子、モノクローナル抗体、抗体-薬物複合体およびポリクローナル抗体が挙げられるが、これらに限定されない。他の治療用タンパク質の例は本明細書中で別記する。治療用タンパク質は、細胞中で、細胞上で、または細胞によって、産生されてもよく、かかる細胞から得られるか、または、かかる細胞の形態で投与されてもよい。ある態様において、治療用タンパク質は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、細菌細胞、植物細胞、トランスジェニック動物細胞、トランスジェニック植物細胞、等中で、これらの細胞上で、またはこれらの細胞によって産生される。治療用タンパク質は、かかる細胞中で遺伝子組換えにより産生されてもよい。治療用タンパク質は、ウイルスで形質転換した細胞中、該細胞上、または該細胞により産生されてもよい。対象はそれゆえ、前述のいずれかによる処置を必要とするいずれかの対象を包含する。かかる対象には前述のいずれかを受けるであろう対象が包含される。
【0100】
「治療用高分子のAPC提示可能抗原」は、治療用高分子(すなわち、治療用高分子、または、治療用高分子に対する免疫応答(例えば抗治療用高分子特異的抗体の産生)を発生し得るその断片)と関連する抗原を意味する。一般に、治療用高分子の抗原提示細胞(APC)提示可能抗原は、免疫系(例えば、樹状細胞、B細胞またはマクロファージを包含するが、それらに限定されない抗原提示細胞により提示されるものなどの免疫系の細胞)による認識のために提示され得る。治療用高分子のAPC提示可能抗原は、例えば、T細胞による認識のために提示され得る。かかる抗原は、クラスIまたはクラスII主要組織適合遺伝子複合体分子(MHC)に結合された抗原のエピトープの提示を介して、T細胞により認識されてT細胞中で免疫応答をトリガーし得る。
【0101】
治療用高分子のAPC提示可能抗原は一般に、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、リポタンパク質を包含するか、またはは、細胞中に、細胞上に、または細胞により含有または発現される。治療用高分子抗原は、いくつかの態様において、合成ナノ担体に付着され、および、MHCクラスI拘束性エピトープおよび/またはMHCクラスII拘束性エピトープおよび/またはB細胞エピトープを含む。好ましくは、治療用高分子に特異的な1つまたは2つ以上の寛容原性免疫応答が、本明細書で提供される方法、組成物またはキットによりもたらされる。ある態様において、合成ナノ担体の集団は、加えられた治療用高分子のAPC提示可能抗原を含まず、このことは、合成ナノ担体の製造の間に、実質的な量の治療用高分子のAPC提示可能抗原が意図的に合成ナノ担体に加えられることはないということを意味する。
【0102】
「望ましくない免疫応答」は、抗原への曝露によりもたらされ、本明細書で提供される疾患、障害または状態(またはそれらの徴候)を促進または悪化させるか、または、本明細書で提供される疾患、障害または状態の徴候であるいずれかの望ましくない免疫応答をいう。かかる免疫応答は一般に、対象の健康に悪影響を有するか、または、対象の健康に対する悪影響の徴候となる。望ましくない免疫応答としては、抗原特異的抗体の産生、抗原特異的B細胞の増殖および/または活性、または、抗原特異的CD4+T細胞の増殖および/または活性が挙げられる。一般に、これらの望ましくない免疫応答は治療用高分子に特異的であって治療用高分子の投与の望ましい有益効果に対抗し得る。こうして、いくつかの態様において、望ましくない免疫応答は抗治療用高分子抗体応答である。
【0103】
C.組成物および関係する方法
本明細書において、免疫抑制剤および治療用高分子を含む組成物ならびに関係する方法またはキットが提供される。かかる方法、組成物またはキットは、治療用高分子の治療効果を減少させる治療用高分子に特異的な望ましくない免疫応答の低減または阻害などを通して、抗治療用高分子抗体応答の存在下で治療用高分子薬力学的効果を向上させるのに有用である。かかる方法、組成物またはキットはまた、治療用高分子の繰り返し投与を可能にするのにも有用である。ゆえに、本明細書で提供される方法、組成物またはキットは、治療用高分子の望ましい治療効果を達成するか、または向上させるのに有用である。いくつかの態様において、かかる治療効果は、低減された薬力学的有効用量で達成または向上され得る。提供される方法、組成物またはキットは、治療用高分子の治療効果を必要とするいずれかの対象のために有用であり得る。
【0104】
上述したように、抗治療用高分子抗体応答の存在下で治療用高分子と併用して免疫抑制剤を送達することは、好ましくはいくつかの態様において合成ナノ担体に付着されたとき、向上された薬力学的効果をもたらし得ることが見出され、これには、治療用高分子の低減された用量でももたらされるかかる効果の向上が包含される。例えば、方法、組成物またはキットは、治療用高分子の望ましい処置効果に干渉する抗治療用高分子特異的抗体の中和を助ける。本明細書で提供される方法、組成物またはキットはそれゆえ、治療用高分子が免疫抑制剤用量なしで投与されるとき(例えば、治療用高分子が単独で投与されるとき)には減少されるであろう治療用高分子の望ましい治療効果の向上をもたらし得る。
【0105】
ゆえに、いくつかの態様において、本明細書で提供される方法、組成物またはキットは、治療用高分子の用量を増大させる必要なく、対象が治療用高分子の処置効果を得ることを可能にするものであり、該用量は一般に、本明細書で提供される発明の効果なしで投与されるときに、治療用高分子に対する望ましくない免疫応答を補償するために増大されるであろう。驚くべきことに、本明細書で提供される方法、組成物またはキットは、対象が、抗治療用高分子抗体応答の存在下で、治療用高分子の低減された用量を投与されて、同じか、またはよりよい治療効果を達成することさえ可能にする。
【0106】
本発明の実行において、種々の免疫抑制剤が使用されてよく、これらは好ましくは合成ナノ担体に付着される。種々多様な合成ナノ担体を本発明に従い使用し得る。いくつかの態様において、合成ナノ担体は、球状または回転楕円状である。いくつかの態様において、合成ナノ担体は平坦または平板形状である。いくつかの態様において、合成ナノ担体は立方体または立方体状である。いくつかの態様において、合成ナノ担体は卵形または長円である。いくつかの態様において、合成ナノ担体は円筒、円錐またはピラミッドである。
【0107】
いくつかの態様において、各合成ナノ担体が同様の性質を有するようにサイズまたは形状の点で比較的均一である合成ナノ担体の集団を使用することが望ましい。例えば、合成ナノ担体の総数に基づいて少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%の合成ナノ担体は、合成ナノ担体の平均径または平均寸法の5%、10%または20%以内に入る最小寸法または最大寸法を有し得る。
【0108】
合成ナノ担体は、中実または中空であってよく、1つまたは2つ以上の層を含み得る。いくつかの態様において、各層が、他の層(単数または複数)に対して、独自の組成物および独自の性質を有する。例を挙げると、合成ナノ担体は、コアが1つの層(例えばポリマーコア)でありシェルが第2の層(例えば脂質二分子層または脂質単分子層)であるコア/シェル構造を有していてもよい。合成ナノ担体は複数の異なる層を含んでいてもよい。
【0109】
いくつかの態様において、合成ナノ担体は任意で、1つまたは2つ以上の脂質を含む。いくつかの態様において、合成ナノ担体はリポソームを含んでいてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体は脂質二分子層を含んでいてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体は脂質単分子層を含んでいてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体はミセルを含んでいてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体は脂質層(例えば、脂質二分子層、脂質単分子層、等)に囲まれたポリマーマトリックスを含むコアを含んでいてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体は、脂質層(例えば、脂質二分子層、脂質単分子層、等)に囲まれた非ポリマーコア(例えば、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨粒子、ウイルス粒子、タンパク質、核酸、炭水化物、等)を含んでいてもよい。
【0110】
他の態様において、合成ナノ担体は金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、等を含んでいてもよい。いくつかの態様において、非ポリマー合成ナノ担体は、金属原子(例えば金原子)の凝集体などの非ポリマー構成成分の凝集体である。
【0111】
いくつかの態様において、合成ナノ担体は任意で、1つまたは2つ以上の両親媒性の実体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、両親媒性の実体は安定性が増大されているか、均一性が改善されているか、または、粘度が増大されている合成ナノ担体の生成を促進し得る。いくつかの態様において、両親媒性の実体は、脂質膜(例えば、脂質二分子層、脂質単分子層、等)の内部表面に関連され得る。当該分野において知られている多くの両親媒性の実体は、本発明に従う合成ナノ担体を作ることにおける使用に好適である。かかる両親媒性の実体としては、ホスホグリセリド;
【0112】
ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレオイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;ジアシルグリセロールスクシネート;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪族アルコール;ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル;パルミチン酸またはオレイン酸などの表面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレエート(Span(登録商標)85)グリココレート;ソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)20);ポリソルベート20(Tween(登録商標)20);ポリソルベート60(Tween(登録商標)60);ポリソルベート65(Tween(登録商標)65);ポリソルベート80(Tween(登録商標)80);ポリソルベート85(Tween(登録商標)85);ポリオキシエチレンモノステアレート;サーファクチン;ポロキソマー(poloxomer);ソルビタントリオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;
【0113】
リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(ケファリン);カルジオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;ジセチルホスフェート;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシルアミン;アセチルパルミテート;グリセロールリシノレエート;ヘキサデシルステアレート;イソプロピルミリステート;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000-ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400-モノステアレート;リン脂質;高い界面活性物質活性を有する合成および/または天然洗剤;デオキシコレート;シクロデキストリン;カオトロピック塩;イオンペア剤;および、これらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。両親媒性実体構成成分は、異なる両親媒性実体の混合物であってもよい。これが界面活性物質活性を有する物質の包括的ではない例示的なリストであるということを当業者は認識するであろう。いずれかの両親媒性実体を、本発明に従って使用される合成ナノ担体の生成に使用してよい。
【0114】
いくつかの態様において、合成ナノ担体は任意で、1つまたは2つ以上の炭水化物を含んでいてもよい。炭水化物は天然または合成であってもよい。炭水化物は誘導天然炭水化物であってもよい。特定の態様において、炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セルビオース、マンノース、キシロース、アラビノース、グルコン酸、ガラクトン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラトサミンおよびノイラミン酸が挙げられるが、これらに限定されない単糖または二糖を含む。
【0115】
特定の態様において、炭水化物は、プルラン、セルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(MC)、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、ヒドロキシエチルスターチ、カラギーナン、グリコン、アミロース、キトサン、Ν,Ο-カルボキシメチルキトサン、アルギンおよびアルギン酸、デンプン、キチン、イヌリン、こんにゃく、グルコマンナン、プスツラン、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードランおよびキサンタンが挙げられるが、これらに限定されない多糖である。ある態様において、合成ナノ担体は多糖などの炭水化物を含まない(または具体的に排除される)。特定の態様において、炭水化物は、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトールおよびラクチトールが挙げられるが、これらに限定されない糖アルコールなどの炭水化物誘導体を含んでいてもよい。
【0116】
いくつかの態様において、合成ナノ担体は1つまたは2つ以上のポリマーを含み得る。いくつかの態様において、合成ナノ担体は、非メトキシ末端のプルロニックポリマーである1つまたは2つ以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)が非メトキシ末端のプルロニックポリマーである。
【0117】
いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの全てが非メトキシ末端のプルロニックポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノ担体は非メトキシ末端のポリマーである1つまたは2つ以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)が非メトキシ末端のポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの全てが非メトキシ末端のポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノ担体はプルロニックポリマーを含まない1つまたは2つ以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)がプルロニックポリマーを含まない。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの全てがプルロニックポリマーを含まない。いくつかの態様において、かかるポリマーは、コーティング層(例えば、リポソーム、脂質単分子層、ミセル、等)で囲まれていてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体の種々の要素はポリマーに付着されていてもよい。
【0118】
免疫抑制剤および/または治療用高分子は、多くの方法のいずれかによって合成ナノ担体に付着され得る。一般に付着は、免疫抑制剤および/または治療用高分子と合成ナノ担体との間の結合の結果であり得る。この結合は、免疫抑制剤および/または治療用高分子が合成ナノ担体の表面に付着されおよび/または合成ナノ担体内に含有され(カプセル化され)ることをもたらし得る。しかしながら、いくつかの態様において、免疫抑制剤および/または治療用高分子は、合成ナノ担体への結合ではなくむしろ合成ナノ担体の構造の結果として、合成ナノ担体によってカプセル化される。好ましい態様において、合成ナノ担体は、本明細書で提供されるポリマーを含み、免疫抑制剤および/または治療用高分子はポリマーに付着される。
【0119】
付着が免疫抑制剤および/または治療用高分子と合成ナノ担体との間の結合の結果として起こるとき、付着は連結部位を介して起こり得る。連結部位は免疫抑制剤および/または治療用高分子がその部位を通して合成ナノ担体に結合されるいずれかの部位であり得る。かかる部位には、アミド結合またはエステル結合などの共有結合ならびに免疫抑制剤および/または治療用高分子を合成ナノ担体に(共有結合的にまたは非共有結合的に)結合する別個の分子が包含される。かかる分子は、リンカー、または、ポリマーまたはそれらの単位を包含する。例えば、連結部位は、免疫抑制剤および/または治療用高分子が静電的に結合する荷電ポリマーを含み得る。別の例として、連結部位は、それが共有結合的に結合するポリマーまたはその単位を含み得る。
【0120】
好ましい態様において、合成ナノ担体は本明細書で提供されるポリマーを含む。これらの合成ナノ担体は完全にポリマー性であってもよく、ポリマーと他の材料との混合であってもよい。
【0121】
いくつかの態様において、合成ナノ担体のポリマー同士が関連してポリマーマトリックスを形成する。これらの態様のうちのいくつかにおいて、免疫抑制剤または治療用高分子などの構成成分はポリマーマトリックスの1つまたは2つ以上のポリマーと共有結合的に関連され得る。いくつかの態様において、共有結合的関連はリンカーによって媒介される。いくつかの態様において、構成成分は、ポリマーマトリックスの1つまたは2つ以上のポリマーと非共有結合的に関連され得る。例えば、いくつかの態様において、構成成分は、高分子マトリックス内にカプセル化され、それによって囲まれ、および/または、それの全体にわたって分散され得る。代替的または追加的に、構成成分は、ポリマーマトリックスの1つまたは2つ以上のポリマーと、疎水性の相互作用、電荷相互作用、ファンデルワールス力、等によって関連され得る。ポリマーマトリックスを形成するための多種多様なポリマーおよび方法は従来、知られている。
【0122】
ポリマーは、天然または非天然(合成)ポリマーであり得る。ポリマーはホモポリマーまたは2つまたは3つ以上のモノマーを含むコポリマーであり得る。並びの点で、コポリマーはランダム、ブロックであっても、ランダムとブロックとの並びの組み合わせを含んでもよい。典型的には、本発明に従うポリマーは、有機ポリマーである。
【0123】
いくつかの態様において、ポリマーは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドまたはポリエーテル、または、これらの単位を含む。他の態様において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)またはポリカプロラクトン、または、これらの単位を含む。いくつかの態様において、ポリマーは生分解性であることが好ましい。それゆえ、これらの態様において、ポリマーがポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコールまたはこれらの単位などのポリエーテルを含む場合、ポリマーは、生分解性となるように、ポリエーテルのブロックコポリマーおよび生分解性ポリマーを含むことが好ましい。他の態様において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコールまたはこれらの単位などの、ポリエーテルまたはこれらの単位を、それだけでは含まない。
【0124】
本発明で使用するのに好適なポリマーの他の例としては、ポリエチレン、ポリカーボネート(例えばポリ(1,3-ジオキサン-2オン))、ポリ酸無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物))、ポリプロピルフマラート、ポリアミド(例えばポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド-co-グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酸(例えばポリ(β-ヒドロキシアルカノアート)))、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリラート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリ尿素、ポリスチレンおよびポリアミン、ポリリジン、ポリリジン-PEG共重合体およびポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)-PEG共重合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
いくつかの態様において、本発明に従うポリマーは、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(1,3-ジオキサン-2オン));ポリ酸無水物(例えば、ポリ(セバシン酸無水物));ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール);ポリウレタン;ポリメタクリラート;ポリアクリラート;およびポリシアノアクリラートを包含するが、これらに限定されない、米国医薬品局(FDA)により21C.F.R.§177.2600の下でヒトにおける使用が認証されたポリマーを包含する。
【0126】
いくつかの態様において、ポリマーは親水性であり得る。例えば、ポリマーは、アニオン性基(例えばホスファート基、スルファート基、カルボキシラート基);カチオン性基(例えば四級アミン基);または極性基(例えばヒドロキシル基、チオール基、アミン基)を含み得る。いくつかの態様において、親水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノ担体は、合成ナノ担体内に親水性環境を発生させる。いくつかの態様において、ポリマーは疎水性であり得る。いくつかの態様において、疎水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノ担体は、合成ナノ担体内に疎水性環境を発生させる。ポリマーの親水性または疎水性の選択は、合成ナノ担体内に組み込まれた(例えば、付着された)材料の特質に影響を有し得る。
【0127】
いくつかの態様において、ポリマーは1つまたは2つ以上の部位および/または官能基で修飾され得る。種々の部位または官能基を本発明に従い使用し得る。いくつかの態様において、ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)で、炭水化物で、および/または、多糖から誘導された非環式ポリアセタールで、修飾され得る(Papisov, 2001、ACS Symposium Series, 786:301)。特定の態様は、米国特許第5543158号(Gref et al.)または国際公開第2009/051837号(Von Andrian et al.)の一般的教示を使用してなされ得る。
【0128】
いくつかの態様において、ポリマーは脂質または脂肪酸基で修飾され得る。いくつかの態様において、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸またはリグノセリン酸の1つまたは2つ以上であり得る。いくつかの態様において、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファ-リノール酸、ガンマ-リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸またはエルシン酸の1つまたは2つ以上であり得る。
【0129】
いくつかの態様において、ポリマーは、本明細書において集合的に「PLGA」と呼ばれる、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)およびポリ(ラクチド-co-グリコリド)などの、乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー;および本明細書において「PGA」と呼ばれるグリコール酸単位を含むホモポリマー;および本明細書において集合的に「PLA」と呼ばれるポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチドおよびポリ-D,L-ラクチドなどの乳酸単位を含むホモポリマー、を包含するポリエステルであってもよい。いくつかの態様において、例示的なポリエステルとしては、例えば、ポリヒドロキシ酸;PEGコポリマーおよびラクチドとグリコリドとのコポリマー(例えば、PLA-PEGコポリマー、PGA-PEGコポリマー、PLGA-PEGコポリマーおよびこれらの誘導体)が挙げられる。いくつかの態様において、ポリエステルは、例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)-PEGコポリマー、ポリ(L-ラクチド-co-L-リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、ポリ[α-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸]およびこれらの誘導体を包含する。
【0130】
いくつかの態様において、ポリマーはPLGAである。PLGAは、乳酸とグリコール酸との生体適合性かつ生分解性のコポリマーであり、乳酸:グリコール酸の比によってPLGAの種々の形態が特徴付けられる。乳酸は、L-乳酸、D-乳酸またはD,L-乳酸であり得る。PLGAの分解速度は乳酸:グリコール酸比を変えることによって調節され得る。いくつかの態様において、本発明に従い使用されるPLGAは、およそ85:15、およそ75:25、およそ60:40、およそ50:50、およそ40:60、およそ25:75、または、およそ15:85の乳酸:グリコール酸比によって特徴付けられる。
【0131】
いくつかの態様において、ポリマーは1つまたは2つ以上のアクリルポリマーであってもよい。特定の態様において、アクリルポリマーは、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマー、メチルメタクリラートコポリマー、エトキシエチルメタクリラート、シアノエチルメタクリラート、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(無水メタクリル酸)、メチルメタクリラート、ポリメタクリラート、ポリ(メチルメタクリラート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、グリシジルメタクリラートコポリマー、ポリシアノアクリラートおよび上記のポリマーの1つまたは2つ以上を含む組み合わせを包含する。アクリルポリマーは、四級アンモニウム基の含有量の低いアクリルおよびメタクリル酸エステルの十分にポリマー化されたコポリマーを含み得る。
【0132】
いくつかの態様において、ポリマーはカチオン性ポリマーであり得る。一般にカチオン性ポリマーは、核酸の負に荷電されたストランドを濃縮および/または保護する能力がある。ポリ(リジン)(Zauner et al., 1998、Adv. Drug Del. Rev., 30:97; Kabanov et al., 1995, Bioconjugate Chem., 6:7)、ポリ(エチレンイミン)(PEI;Boussif et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 1995, 92:7297)およびポリ(アミドアミン)デンドリマー(Kukowska-Latallo et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 93:4897; Tang et al., 1996, Bioconjugate Chem., 7:703; Haensler et al., 1993, Bioconjugate Chem., 4:372)などのアミン含有ポリマーは、生理学的なpHで正に荷電されて核酸とイオン対を形成する。ある態様において、合成ナノ担体はカチオン性ポリマーを含まなくてもよい(または排除してもよい)。
【0133】
いくつかの態様において、ポリマーはカチオン性の側鎖を持つ生分解性ポリエステル(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658; Barrera et al., 1993, J, Am. Chem. Soc., 115: 11010; Kwon et al., 1989, Macromolecules, 22:3250; Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633; Zhou et al., 1990, Macromolecules, 23:3399)であり得る。これらのポリエステルの例としては、ポリ(L-ラクチド-co-L-リジン)(Barrera et al., 1993, J. Am. Chem. Soc., 115: 11010)、ポリ(セリンエステル)(Zhou et al., 1990, Macromolecules, 23:3399)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658; Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633)およびポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658; Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633)が挙げられる。
【0134】
これらのおよび他のポリマーの特性およびそれらの調製方法は当該分野において周知である(例えば、米国特許第6,123,727号;5,804,178号;5,770,417号;5,736,372号;5,716,404号;6,095,148号;5,837,752号;5,902,599号;5,696,175号;5,514,378号;5,512,600号;5,399,665号;5,019,379号;5,010,167号;4,806,621号;4,638,045号;および4,946,929号;Wang et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:9480; Lim et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:2460; Langer, 2000, Acc. Chem. Res., 33:94; Langer, 1999, J. Control. Release, 62:7; Uhrich et al., 1999, Chem. Rev., 99:3181参照)。より一般には、特定の好適なポリマーを合成するための種々の方法が、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts, Ed. by Goethals, Pergamon Press, 1980; Principles of Polymerization by Odian, John Wiley & Sons, Fourth Edition, 2004; Contemporary Polymer Chemistry by Allcock et al., Prentice-Hall, 1981; Deming et al., 1997, Nature, 390:386;および米国特許第6,506,577号、同第6,632,922号、同第6,686,446号および同第6,818,732号に記載されている。
【0135】
いくつかの態様において、ポリマーは直鎖状または分枝状ポリマーであり得る。いくつかの態様において、ポリマーはデンドリマーであり得る。いくつかの態様において、ポリマーは実質的に、互いに架橋されていてよい。いくつかの態様において、ポリマーは実質的に架橋を含まなくてよい。いくつかの態様において、ポリマーは架橋ステップを経験せずに本発明に従い使用され得る。合成ナノ担体は、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、前述のおよび他のポリマーのいずれかのブレンド、混合物および/または付加物を含み得ることをさらに理解すべきである。本明細書中に列挙されるポリマーは、本発明に従い使用され得る包括的でない例示的なポリマーのリストを表すものであることを当業者は認識するであろう。
【0136】
いくつかの態様において、合成ナノ担体はポリマー構成成分を含まない。いくつかの態様において、合成ナノ担体は金属粒子、量子ドット、セラミック粒子等を含み得る。いくつかの態様において、非ポリマー合成ナノ担体は、金属原子(例えば金原子)の凝集体などの非ポリマー構成成分の凝集体である。
【0137】
本発明に従う組成物は、要素を、保存剤、緩衝剤、食塩水またはリン酸緩衝化食塩水などの薬学的に許容し得る賦形剤と組み合わせて含み得る。組成物は、有用な剤形に到達するように従来の医薬製造および配合技術を使用して作られ得る。ある態様において、合成ナノ担体を含むものなどの組成物は、保存剤と一緒に注射用の滅菌食塩水溶液に懸濁される。
【0138】
ある態様において、担体として合成ナノ担体を調製するとき、合成ナノ担体に構成成分を付着する方法が有用であり得る。構成成分が小さな分子である場合、合成ナノ担体の組み立ての前にその構成成分をポリマーに付着することが有利である場合がある。ある態様において、構成成分をポリマーに付着し、次いでこのポリマー複合体を合成ナノ担体の構築に使用するというよりはむしろ、それらの表面基の使用を通して構成成分を合成ナノ担体に付着させるために使用される表面基を有する合成ナノ担体を調製することも有利である場合がある。
【0139】
特定の態様において、付着は共有結合性リンカーによりなされ得る。ある態様において、本発明に従う構成成分は、ナノ担体の表面のアジド基とアルキン基を含有する構成成分との1,3-双極子環状付加反応により、または、ナノ担体の表面のアルキンとアジド基を含有する構成成分との1,3-双極子環状付加反応により、形成される、1,2,3-トリアゾールリンカーを介して外部表面に共有結合的に付着され得る。かかる環状付加反応は好ましくは、好適なCu(I)リガンドと、Cu(II)化合物を触媒活性なCu(I)化合物に還元するための還元剤と共に、Cu(I)触媒の存在下で行われる。このCu(I)触媒アジド-アルキン環状付加(CuAAC)はまた、クリック反応といわれることもある。
【0140】
加えて、共有結合的付着は、アミドリンカー、ジスルフィドリンカー、チオエーテルリンカー、ヒドラゾンリンカー、ヒドラジドリンカー、イミンまたはオキシムリンカー、尿素またはチオ尿素リンカー、アミジンリンカー、アミンリンカーおよびスルホンアミドリンカーを含む共有結合性リンカーを含み得る。
アミドリンカーは、一方の構成成分上のアミンとナノ担体などの第2の構成成分のカルボン酸基との間のアミド結合を介して形成される。リンカー中のアミド結合は、好適に保護されたアミノ酸および活性化されたカルボン酸(N-ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルなど)との従来のアミド結合形成反応のいずれかを使用して作られ得る。
【0141】
ジスルフィドリンカーは、例としてR1-S-S-R2の形態の2つの硫黄原子間のジスルフィド(S-S)結合の形成を介して作られ得る。ジスルフィド結合は、チオール/メルカプタン基(-SH)を含有する構成成分とポリマーまたはナノ担体上の別の活性化チオール基との、または、チオール/メルカプタン基を含有するナノ担体と活性化チオール基を含有する構成成分との、チオール交換によって形成され得る。
【0142】
トリアゾールリンカー、具体的には、下記の形態
【化1】
(式中RおよびRが、いずれかの化学的実体であり得る)の1,2,3-トリアゾールは、ナノ担体などの第1構成成分に付着されたアジドの、免疫抑制剤または治療用高分子などの第2構成成分に付着された末端アルキンとの1,3-双極子環状付加反応により作られる。1,3-双極子環状付加反応は、触媒の有無で、好ましくはCu(I)触媒を使用して、行われ、これにより2つの構成成分が1,2,3-トリアゾール官能性を通してつながれる。この化学は、Sharpless et al., Angew. Chem. Int. Ed. 41(14), 2596, (2002) および Meldal, et al, Chem. Rev., 2008, 108(8), 2952-3015により詳細に記載され、「クリック」反応またはCuAACと呼ばれることも多い。
【0143】
ある態様において、ポリマー鎖の末端にアジドまたはアルキン基を含有するポリマーが調製される。このポリマーは次いで、複数のアルキンまたはアジド基がナノ担体の表面上に位置するような様式で合成ナノ担体を調製するのに使用される。代替的に、合成ナノ担体は、別の経路により調製され、その後にアルキンまたはアジド基で官能化されてもよい。構成成分は、アルキン(ポリマーがアジドを含有する場合)またはアジド(ポリマーがアルキンを含有する場合)基のどちらかの存在により調製される。構成成分は次に、触媒の有無で1,3-双極子環状付加反応を介してナノ担体と反応され、これにより1,4-二置換1,2,3-トリアゾールリンカーを通して構成成分が粒子に共有結合的に付着される。
【0144】
チオエーテルリンカーは、例としてR1-S-R2の形態の硫黄-炭素(チオエーテル)結合の形成によって作られる。チオエーテルは、1つの構成成分上のチオール/メルカプタン(-SH)基の、第2構成成分上のハロゲン化物またはエポキシドなどのアルキル化基によるアルキル化によって作られる。チオエーテルリンカーはまた、1つの構成成分上のチオール/メルカプタン基の、マイケル受容体としてマレイミド基またはビニルスルホン基を含有する第2の構成成分上の電子不足アルケン基へのマイケル付加によっても形成され得る。別の方式において、チオエーテルリンカーは、1つの構成成分上のチオール/メルカプタン基と、第2構成成分上のアルケン基とのラジカルチオール-エン反応により調製され得る。
【0145】
ヒドラゾンリンカーは、1つの構成成分上のヒドラジド基と、第2構成成分上のアルデヒド/ケトン基との反応によって作られる。
ヒドラジドリンカーは、1つの構成成分上のヒドラジン基と第2構成成分上のカルボン酸基との反応により形成される。かかる反応は一般に、カルボン酸が活性化試薬で活性化される場合のアミド結合の形成と同様の化学を使用して行われる。
イミンまたはオキシムリンカーは、1つの構成成分上のアミンまたはN-アルコキシアミン(またはアミノオキシ)基と、第2構成成分上のアルデヒドまたはケトン基との反応により形成される。
【0146】
尿素またはチオ尿素リンカーは、1つの構成成分上のアミン基と、第2構成成分上のイソシアネートまたはチオイソシアネート基との反応により調製される。
アミジンリンカーは、1つの構成成分上のアミン基と、第2構成成分上のイミドエステル基との反応により調製される。
アミンリンカーは、1つの構成成分上のアミン基と、第2構成成分上のハロゲン化物、エポキシドまたはスルホナートエステル基などのアルキル化基とのアルキル化反応により作られる。代替的に、アミンリンカーはまた、1つの構成成分上のアミン基と第2の構成成分上のアルデヒドまたはケトン基との、シアノ水素化ホウ素ナトリウムまたはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどの好適な還元試薬を使用した還元アミノ化により作られてもよい。
【0147】
スルホアミドリンカーは、1つの構成成分上のアミン基と、第2構成成分上のスルホニルハライド(スルホニルクロリド等)基との反応によって作られてもよい。
スルホンリンカーは、求核基のビニルスルホンへのマイケル付加により作られる。ビニルスルホンまたは求核基のいずれかは、ナノ担体の表面上にあってもよいし、構成成分に付着されていてもよい。
構成成分はまた、非共有結合性複合化法を介してナノ担体に複合化されていてもよい。例えば、負に荷電された治療用高分子または免疫抑制剤は、静電吸着を通して正に荷電されたナノ担体に複合化されてもよい。金属リガンドを含有する構成成分はまた、金属-リガンド錯体を介して金属錯体を含有するナノ担体に複合化されてもよい。
【0148】
ある態様において、構成成分は、合成ナノ担体の組み立ての前に、ポリマー、例えばポリ乳酸-ブロック-ポリエチレングリコールに付着されてもよいし、合成ナノ担体がその表面上に反応性のまたは活性化可能な基を有するように形成されてもよい。後者の場合、構成成分は、合成ナノ担体の表面によって提示される付着化学と適合可能な基を有するように調製されてもよい。他の態様において、ぺプチド構成成分は、好適なリンカーを使用してVLPまたはリポソームに付着されてもよい。リンカーは、2つの分子同士を付着し得る化合物または試薬である。一態様において、リンカーは、Hermanson 2008に記載のホモ二官能性またはヘテロ二官能性試薬であってもよい。
【0149】
例えば、表面上にカルボキシル基を含有するVLPまたはリポソーム合成ナノ担体を、EDCの存在下でホモ二官能性リンカー、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)で処置してADHリンカーを有する対応する合成ナノ担体を形成し得る。結果としてもたらされるADHにつながれた合成ナノ担体は次いで、ナノ担体上のADHリンカーの他の端部を介して酸基を含有するペプチド構成成分と複合化されて対応するVLPまたはリポソームペプチド複合体を生成する。
【0150】
利用可能な複合化方法の詳細な記載に関しては、Hermanson G T "Bioconjugate Techniques", 2nd Edition Published by Academic Press, Inc., 2008を参照のこと。共有結合性の付着に加えて、構成成分は、予め形成された合成ナノ担体への吸着によって付着されてもよいし、合成ナノ担体形成中のカプセル化によって付着されてもよい。
【0151】
本明細書で提供されるいずれかの免疫抑制剤は、提供される方法または組成物において使用され得、いくつかの態様においては、合成ナノ担体に付着されてもよい。免疫抑制剤としては、スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシン類縁体などのmTORインヒビター;TGF-βシグナル剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビター;コルチコステロイド;ロテノンなどのミトコンドリア機能のインヒビター;P38インヒビター;NF-κβインヒビター;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト;ホスホジエステラーゼ4インヒビターなどのホスホジエステラーゼインヒビター;プロテアソームインヒビター;キナーゼインヒビター;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカインインヒビター;サイトカイン受容体インヒビター;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼインヒビター;カルシニューリンインヒビター;ホスファターゼインヒビターおよび酸化ATPが挙げられるがこれらに限定されない。免疫抑制剤としてはまた、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンA、アリールハイドロカーボン受容体インヒビター、レスベラトロール、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、アスピリン、ニフルミン酸、エストリオール、トリポリド、インターロイキン(例えばIL-1、IL-10)、シクロスポリンA、サイトカインまたはサイトカイン受容体を標的とするsiRNA、等が挙げられる。
【0152】
スタチンの例としては、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標)、TORVAST(登録商標))、セリバスタチン、フルバスタチン(LESCOL(登録商標)、LESCOL(登録商標)XL)、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、ALTOCOR(登録商標)、ALTOPREV(登録商標))、メバスタチン(COMPACTIN(登録商標))、ピタバスタチン(LIVALO(登録商標)、PIAVA(登録商標))、ロスバスタチン(PRAVACHOL(登録商標)、SELEKTINE(登録商標)、LIPOSTAT(登録商標))、ロスバスタチン(CRESTOR(登録商標))およびシンバスタチン(ZOCOR(登録商標)、LIPEX(登録商標))が挙げられる。
【0153】
mTORインヒビターの例としては、ラパマイシンおよびその類縁体(例えば、CCL-779、RAD001、AP23573、C20-メタリルラパマイシン(C20-Marap)、C16-(S)-ブチルスルホンアミドラパマイシン(C16-BSrap)、C16-(S)-3-メチルインドールラパマイシン(C16-iRap)(Bayle et al., Chemistry & Biology 2006, 13:99-107))、AZD8055、BEZ235(NVP-BEZ235)、クリソファン酸(クリソファノール)、デフォロリムス(MK-8669)、エベロリムス(RAD0001)、KU-0063794、PI-103、PP242、テムシロリムスおよびWYE-354(Selleck、Houston、TX、USAから入手可能)が挙げられる。
【0154】
TGF-βシグナル剤の例としては、TGF-βリガンド(例えば、アクチビンA、GDF1、GDF11、骨形態形成タンパク質、ノーダル、TGF-β)およびそれらの受容体(例えば、ACVR1B、ACVR1C、ACVR2A、ACVR2B、BMPR2、BMPR1A、BMPR1B、TGFβRI、TGFβRII)、R-SMADS/co-SMADS(例えば、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD5、SMAD8)およびリガンドインヒビター(例えば、フォリスタチン、ノギン、コルジン、DAN、レフティ、LTBP1、THBS1、デコリン)が挙げられる。
【0155】
ミトコンドリア機能のインヒビターの例としては、アトラクチロシド(ジカリウム塩)、ボングクレキック酸(トリアンモニウム塩)、カルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン、カロボキシアトラクチロシド(例えばアトラクチリス属から)、CGP-37157、(-)-デグエリン(例えばMundulea sericeaから)、F16、ヘキソキナーゼIIVDAC結合ドメインペプチド、オリゴマイシン、ロテノン、Ru360、SFK1およびバリノマイシン(例えばStreptomuces fulvissimusから)(EMD4Biosciences, USA)が挙げられる。
【0156】
P38インヒビターの例としては、SB-203580(4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)1H-イミダゾール)、SB-239063(トランス-1-(4ヒドロキシシクロヘキシル)-4-(フルオロフェニル)-5-(2-メトキシ-ピリミジン-4-イル)イミダゾール)、SB-220025(5-(2アミノ-4-ピリミジニル)-4-(4-フルオロフェニル)-1-(4-ピペリジニル)イミダゾール))およびARRY-797が挙げられる。
【0157】
NF(例えば、ΝΚ-κβ)インヒビターの例としては、IFRD1、2-(1,8-ナフチリジン-2-イル)-フェノール、5-アミノサリチル酸、BAY11-7082、BAY11-7085、CAPE(カフェイン酸フェネチルエステル)、ジエチルマレエート、IKK-2インヒビターIV、IMD0354、ラクタシスチン、MG-132[Z-Leu-Leu-Leu-CHO]、NFκB活性化インヒビターIII、NF-κB活性化インヒビターII、JSH-23、パルテノリド、フェニルアルシンオキシド(PAO)、PPM-18、ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム塩、QNZ、RO106-9920、ロカグラミド、ロカグラミドAL、ロカグラミドC、ロカグラミドI、ロカグラミドJ、ロカグラオール、(R)-MG-132、サリチル酸ナトリウム、トリプトリド(PG490)およびウェデロラクトンが挙げられる。
【0158】
アデノシン受容体アゴニストの例としては、CGS-21680およびATL-146eが挙げられる。
プロスタグランジンE2アゴニストの例としては、E-プロスタノイド2およびE-プロスタノイド4が挙げられる。
ホスホジエステラーゼインヒビター(非選択的および選択的インヒビター)の例としては、カフェイン、アミノフィリン、IBMX(3-イソブチル-1-メチルキサンチン)、パラキサンチン、ペントキシフィリン、テオブロミン、テオフィリン、メチル化キサンチン、ビンポセチン、EHNA(エリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン)、アナグレリド、エノキシモン(PERFAN(商標))、ミルリノン、レボシメンダン(levosimendon)、メセンブリン、イブジラスト、ピクラミラスト、ルテオリン、ドロタベリン、ロフルミラスト(DAXAS(商標)、DALIRESP(商標))、シルデナフィル(REVATION(登録商標)、VIAGRA(登録商標))、タダラフィル(ADCIRCA(登録商標)、CIALIS(登録商標))、バルデナフィル(LEVITRA(登録商標)、STAXYN(登録商標))、ウデナフィル、アバナフィル、イカリイン、4-メチルピペラジンおよびピラゾロピリミジン-7-1が挙げられる。
【0159】
プロテアソームインヒビターの例としては、ボルテゾミブ、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラートおよびサリノスポラミドAが挙げられる。
キナーゼインヒビターの例としては、ベバシズマブ、BIBW2992、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、ペガプタニブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、ニロチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、バンデタニブ、E7080、パゾパニブおよびムブリチニブが挙げられる。
【0160】
グルココルチコイドの例としては、ヒドロコルチゾン(コルチゾール)、コルチゾンアセタート、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾンアセテート、デオキシコルチコステロンアセテート(DOCA)およびアルドステロンが挙げられる。
レチノイドの例としては、レチノール、レチナール、トレチノイン(レチノイン酸、RETIN-A(登録商標))、イソトレチノイン(ACCUTANE(登録商標)、AMNESTEEM(登録商標)、CLARAVIS(登録商標)、SOTRET(登録商標))、アリトレチノイン(PANRETIN(登録商標))、エトレチナート(TEGISON(商標))およびその代謝産物アシトレチン(SORIATANE(登録商標))、タザロテン(TAZORAC(登録商標)、AVAGE(登録商標)、ZORAC(登録商標))、ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))およびアダパレン(DIFFERIN(登録商標))が挙げられる。
【0161】
サイトカインインヒビターの例としては、IL1ra、IL1受容体アンタゴニスト、IGFBP、TNF-BF、ウロモジュリン、アルファ-2-マクログロブリン、シクロスポリンA、ペンタミジンおよびペントキシフィリン(PENTOPAK(登録商標)、PENTOXIL(登録商標)、TRENTAL(登録商標))が挙げられる。
ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アンタゴニストの例としては、GW9662、PPARγアンタゴニストIII、G335およびT0070907(EMD4Biosciences、USA)が挙げられる。
ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アゴニストの例としては、ピオグリタゾン、シグリタゾン、クロフィブレート、GW1929、GW7647、L-165,041、LY171883、PPARγアクチベーター、Fmoc-Leu、トログリタゾンおよびWY-14643(EMD4Biosciences、USA)が挙げられる。
【0162】
ヒストンデアセチラーゼインヒビターの例としては、トリコスタチンA、環状テトラペプチド(トラポキシンBなど)およびデプシペプチドなどのヒドロキサム酸(またはヒドロキサメート)、ベンズアミド、求電子性ケトン、酪酸フェニルおよびバルプロ酸などの脂肪族酸化合物、ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット(PXD101)、LAQ824およびパノビノスタット(LBH589)などのヒドロキサム酸、エンチノスタット(MS-275)、CI994およびモセチノスタット(MGCD0103)などのベンズアミド、ニコチンアミド、NADの誘導体、ジヒドロクマリン、ナフトピラノンおよび2-ヒドロキシナフアルデヒド(hydroxynaphaldehyde)が挙げられる。
【0163】
カルシニューリンインヒビターの例としては、シクロスポリン、ピメクロリムス、ボクロスポリンおよびタクロリムスが挙げられる。
ホスファターゼインヒビターの例としては、BN82002ヒドロクロリド、CP-91149、カリクリンA、カンタリジン酸、カンタリジン、サイパーメスリン、エチル-3,4-デホスタチン、フォストリエシンナトリウム塩、MAZ51、メチル-3,4-デホスタチン、NSC95397、ノルカンタリジン、prorocentrum concavumからのオカダ酸アンモニウム塩、オカダ酸、オカダ酸カリウム塩、オカダ酸ナトリウム塩、フェニルアルシンオキシド、種々のホスファートインヒビター混液、タンパク質ホスファターゼ1C、タンパク質ホスファターゼ2Aインヒビタータンパク質、タンパク質ホスファターゼ2A1、タンパク質ホスファターゼ2A2およびオルトバナジン酸ナトリウムが挙げられる。
【0164】
提供される方法、組成物またはキットのいずれか1つのいくつかの態様において、本明細書に記載される治療用高分子もまた合成ナノ担体に付着されている。他の態様において、治療用高分子はいずれの合成ナノ担体にも付着されていない。これらの場面のいずれかのいくつかの態様において、治療用高分子は、治療用高分子そのものまたはそれらの断片または誘導体の形態で送達され得る。
【0165】
治療用高分子は、治療用タンパク質または治療用ポリヌクレオチドを包含し得る。治療用タンパク質としては、点滴可能な治療用のタンパク質、酵素、酵素補助因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカインおよびインターフェロン、成長因子、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体(例えば補充治療として対象に投与されるもの)およびポンペ病に関連するタンパク質(例えば酸性グルコシダーゼアルファ、rhGAA(例えばミオザイムおよびルミザイム(Genzyme))が挙げられるが、これらに限定されない。治療用タンパク質はまた、血液凝固カスケードに関与するタンパク質も包含する。治療用タンパク質としては、第VIII因子、第VII因子、第IX因子、第V因子、フォン・ヴィレブランド因子、フォン・ヘルデブラント因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、インスリン、成長ホルモン、エリスロポエチンアルファ、VEGF、トロンボポエチン、リゾチーム、アンチトロンビン等が挙げられるが、これらに限定されない。治療用タンパク質はまた、レプチンおよびアディポネクチンなどのアディポカインも包含する。治療用タンパク質の他の例は以下に記載し、および本明細書中に別記するとおりである。
【0166】
リソソーム蓄積障害を有する対象の酵素補充治療に使用される治療用タンパク質の例としては、ゴーシェ病の処置のためのイミグルセラーゼ(例えばCEREZYME(商標))、ファブリー病の処置のためのa-ガラクトシダーゼA(a-galA)(例えば、アガルシダーゼベータ、FABRYZYME(商標))、ポンペ病の処置のための酸性αグルコシダーゼ(GAA)(例えば、酸性グルコシダーゼアルファ、LUMIZYME(商標)、MYOZYME(商標))、ムコ多糖症の処置のためのアリールスルファターゼB(例えば、ラロニダーゼ、ALDURAZYME(商標)、イデュルスルファーゼ、ELAPRASE(商標)、アリールスルファターゼB、NAGLAZYME(商標))、ペグロチカーゼ(KRYSTEXXA)およびペグシチカーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
酵素の例としては、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、アスパラギナーゼ、ウリカーゼ、グリコシダーゼ、アスパラギナーゼ、ウリカーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、ヘパリナーゼ、ヘパラナーゼ、リジンおよびリガーゼが挙げられる。
治療用タンパク質はまた、いずれかの細菌性の、真菌性の、またはウイルス性の供給源から単離されるか、または誘導された酵素、毒素、または、他のタンパク質またはペプチドを包含してもよい。
【0168】
ホルモンの例としては、メラトニン(N-アセチル-5-メトキシトリプトアミン)、セロトニン、チロキシン(またはテトラヨードチロニン)(甲状腺ホルモン)、トリヨードチロニン(甲状腺ホルモン)、エピネフリン(またはアドレナリン)、ノルエピネフリン(またはノルアドレナリン)、ドーパミン(またはプロラクチン阻害ホルモン)、抗ミュラー管ホルモン(またはミュラー管阻害因子またはホルモン)、アディポネクチン、副腎皮質刺激ホルモン(またはコルチコトロピン)、アンジオテンシノーゲンおよびアンジオテンシン、抗利尿性ホルモン(またはバソプレシン、アルギニンバソプレシン)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(またはアトリオペプチン)、カルシトニン、コレシストキニン、コルチコトロピン放出ホルモン、エリスロポエチン、卵胞刺激ホルモン、ガストリン、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GIP、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、
【0169】
ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤性ラクトゲン、成長ホルモン、インヒビン、インスリン、インスリン様成長因子(またはソマトメジン)、レプチン、黄体形成ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、オレキシン、オキシトシン、副甲状腺ホルモン、プロラクチン、レラキシン、セクレチン、ソマトスタチン、トロンボポエチン、甲状腺刺激ホルモン(またはチロトロピン)、チロトロピン放出ホルモン、コルチゾール、アルドステロン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン、エストラジオール、エストロン、エストリオール、プロゲステロン、カルシトリオール(1,25-ジヒドロキシビタミンD3)、カルシジオール(25-ヒドロキシビタミンD3)、プロスタグランジン、ロイコトリエン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、プロラクチン放出ホルモン、リポトロピン、脳性ナトリウム利尿ペプチド、神経ペプチドY、ヒスタミン、エンドセリン、膵ポリペプチド、レニンおよびエンケファリンが挙げられる。
【0170】
血液または血液凝固因子の例としては、第I因子(フィブリノゲン)、第II因子(プロトロンビン)、組織因子、第V因子(プロアクセレリン、不安定因子)、第VII因子(安定因子またはプロコンベルチン)、第VIII因子(抗血友病性グロブリン)、第IX因子(クリスマス因子または血漿トロンボプラスチン構成成分)、第X因子(スチュアート・プローワー因子)、第Xa因子、第XI因子、第XII因子(ハーゲマン因子)、第XIII因子(フィブリン安定化因子)、フォン・ヴィレブランド因子、プレカリクレイン(フレッチャー因子)、高分子量キニノゲン(HMWK)(フィッツジェラルド因子)、フィブロネクチン、フィブリン、トロンビン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補助因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関係プロテアーゼインヒビター(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-アンチプラスミン、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-2(PAI2)、がんプロコアグラントまたはエポエチンアルファ(Epogen、Procrit)が挙げられる。
サイトカインの例としては、リンホカイン、インターロイキンおよびケモカイン、IFN-γなどのタイプ1サイトカイン、TGF-βおよびIL-4、IL-10およびIL-13などのタイプ2サイトカインが挙げられる。
【0171】
成長因子の例としては、アドレノメデュリン(AM)、アンジオポエチン(Ang)、自己分泌型細胞運動刺激因子、骨形成タンパク質(BMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮増殖因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、肝がん由来増殖因子(HDGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、マイグレーション刺激因子、ミオスタチン(GDF-8)、神経成長因子(NGF)および他のニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、Wntシグナル経路、胎盤増殖因子(P1GF)、(ウシ胎児ソマトトロピン)(FBS)、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6およびIL-7が挙げられる。
【0172】
モノクローナル抗体の例としては、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブペゴル(Alacizumab pegol)、ALD、アレムツズマブ、アルツモマブペンテテート(Altumomab pentetate)、アナツモマブマフェナトックス(Anatumomab mafenatox)、アンルキンズマブ、抗胸腺細胞グロブリン、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ(Aselizumab)、アトリズマブ(トシリズマブ)、アトロリムマブ(Atorolimumab)、バピネオズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ(Bectumomab)、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ビシロマブ、ビバツズマブメルタンシン(Bivatuzumab mertansine)、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス(Citatuzumab bogatox)、シクスツムマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、デツモマブ、ドルリモマブアリトクス(Dorlimomab aritox)、ドルリキシズマブ(Dorlixizumab)、エクロメキシマブ(Ecromeximab)、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ(Efungumab)、エロツズマブ、エルシリモマブ(Elsilimomab)、エンリモマブペゴル、エピツモマブシツキセタン(Epitumomab cituxetan)、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)、エタラシズマブ、エクスビビルマブ(Exbivirumab)、
【0173】
ファノレソマブ、ファラリモマブ(Faralimomab)、ファルレツズマブ、フェルビズマブ(Felvizumab)、フェザキヌマブ、フィジツムマブ(Figitumumab)、フォントリズマブ、フォラビルマブ(Foravirumab)、フレソリムマブ(Fresolimumab)、ガリキシマブ、ガンテネルマブ、ガンビリモマブ、ゲムツマブオゾガマイシン、GC1008、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン(Glembatumumab vedotin)、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ(Gomiliximab)、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イゴボマブ(Igovomab)、イムシロマブ、インフリキシマブ、インテツムマブ(Intetumumab)、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ(Lemalesomab)、レルデリムマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ(Libivirumab)、リンツズマブ、ロボツズマブメルタンシン(Lorvotuzumab mertansine)、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マスリモマブ(Maslimomab)、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ(Minretumomab)、ミツモマブ、モロリムマブ(Morolimumab)、モタビズマブ、ムロモナブ-CD3、ナコロマブタフェナトクス(Nacolomab tafenatox)、ナプツモマブエスタフェナトクス(Naptumomab estafenatox)、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ(Nerelimomab)、ニモツズマブ、ノフェツモマブメルペンタン(Nofetumomab merpentan)、オクレリズマブ、オデュリモマブ(Odulimomab)、オファツムマブ、オララツマブ(Olaratumab)、オマリズマブ、オポルツズマブモナトクス(Oportuzumab monatox)、オレゴボマブ、オテリキシズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パノバクマブ、パスコリズマブ(Pascolizumab)、ペムツモマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、
【0174】
ペンツモマブ(Pintumomab)、プリリキシマブ、プリツムマブ(Pritumumab)、ラフィビルマブ(Rafivirumab)、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ(Robatumumab)、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サツモマブペンデチド(Satumomab pendetide)、セビルマブ(Sevirumab)、シブロツズマブ(Sibrotuzumab)、シファリムマブ、シルツキシマブ、シプリズマブ、ソラネズマブ、ソネプシズマブ(Sonepcizumab)、ソンツズマブ(Sontuzumab)、スタムルマブ、スレソマブ、タカツズマブテトラキセタン(Tacatuzumab tetraxetan)、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブペプトクス(Taplitumomab paptox)、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス(Telimomab aritox)、テナツモマブ(Tenatumomab)、テネリキシマブ、テプリズマブ、チシリムマブ(トレメリムマブ)、チガツズマブ、トシリズマブ(アトリズマブ)、トラリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ(Tuvirumab)、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バパリキシマブ(Vapaliximab)、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ビシリズマブ、ボロシキシマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ジラリムマブ(Ziralimumab)およびズリモマブアリタオクス(Zolimomab aritox)が挙げられる。モノクローナル抗体はさらに、抗TNF-α抗体を包含する。
【0175】
点滴治療または注射可能治療用タンパク質の例としては、例えば、トシリツマブ(Roche/Actemra(登録商標))、アルファ-1アンチトリプシン(Kamada/AAT)、ヘマタイド(登録商標)(AffymaxおよびTakeda、合成ペプチド)、アルブインターフェロンアルファ-2b(Novartis/Zalbin(商標))、ルシン(登録商標)(Pharming Group、C1インヒビター補充治療)、テサモレリン(Theratechnologies/Egrifta、合成成長ホルモン放出因子)、オクレリズマブ(Genentech、RocheおよびBiogen)、ベリムバブ(GlaxoSmithKline/Benlysta(登録商標))、ペグロチカーゼ(Savient Pharmaceuticals/Krystexxa(商標))、ペグシチカーゼ、タリグルセラーゼアルファ(Protalix/Uplyso)、アガルシダーゼアルファ(Shire/Replagal(登録商標))、ベラグルセラーゼアルファ(Shire)およびキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)が挙げられる。
【0176】
追加の治療用タンパク質としては、例えば、Fc融合タンパク質などの遺伝子操作タンパク質、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ナノボディ、抗原結合タンパク質、抗体フラグメントおよび抗体薬物複合体などのタンパク質複合体が挙げられる。
【0177】
治療用ポリヌクレオチドとしては、ペガプタニブ(マクゲン、ペグ化された抗VEGFアプタマー)などの核酸アプタマー、アンチセンスポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(例えば、抗ウイルス薬物フォミビルセン(Fomivirsen)またはミポメルセン、コレステロール値を低減させるためにアポリポタンパク質BのためのメッセンジャーRNAを標的にするアンチセンス治療剤)などのアンチセンス治療剤;低分子干渉RNA(siRNA)(例えば、RNAiを極めて高い効力で媒介する25~30塩基対の非対称二重鎖RNAである、ダイサー基質siRNA分子(DsiRNA));または米国特許出願第2013/0115272号(Fougerolles et al.)および公開された米国特許出願第2012/0251618号(Schrum et al.)に開示されたもののような修飾型メッセンジャーRNA(mmRNA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
本発明の側面に従って有用な追加の治療用高分子は、当業者には明らかであり、本発明はこの点において限定されない。
【0179】
いくつかの態様において、治療用高分子または免疫抑制剤などの構成成分は、単離されていてもよい。「単離されている」は、その本来の環境から分離されて、その同定または使用を許すのに充分な分量で存在する要素である。これは例えば、その要素が、(i)発現クローニングによって選択的に産生され得るか、または(ii)クロマトグラフィーまたは電気泳動によって精製され得るということを意味する。単離された要素は、実質的に純粋であってもよいが、純粋である必要はない。単離された要素は医薬調製物中で薬学的に許容し得る賦形剤と混和されてもよいので、要素は、調製物にごくわずかな重量パーセンテージで含まれてもよい。要素はそれでもなお、生体系において関連され得る物質から分離された、すなわち、他の脂質またはタンパク質から単離されたという点で単離されている。本明細書で提供される要素のいずれも、単離されて組成物に包含されても、単離された形態で方法において使用されてもよい。
【0180】
D.組成物を作りおよび使用する方法ならびに関係する方法
本発明のある側面は、本明細書で提供される併用投与の方法のためのプロトコルを決定することに関する。プロトコルは、治療用高分子および免疫抑制剤の投与の頻度、用量および他の側面を変更し、その後にかかる変更に基づいて薬力学的効果を査定することによって、決定され得る。変更された投与は抗治療用高分子抗体応答の存在下で起こる。本発明の実行のための好ましいプロトコルは、望ましい薬力学的効果を誘導するが、抗治療用高分子抗体応答は、ほとんどまたは全く、誘導しない。
【0181】
本発明のいくつかの側面において、治療用高分子の望ましい薬力学的効果は特異的な応答を刺激することまたは阻害することを包含する。いくつかの態様において、薬力学的効果は、限定されないが、サイトカイン、ケモカイン、シグナル分子または他の分子の産生または分解;具体的な細胞タイプの増殖または死を誘導すること;具体的な細胞タイプ成熟化または局在化;酵素、構造タンパク質、担体タンパク質または受容体タンパク質との相互作用;酵素、構造タンパク質または受容体タンパク質の活性のモジュレーション、等に関与する。いくつかの態様において、薬力学的効果は、サイトカイン、例えばTNF、IL-1などの炎症関連サイトカインの産生を低減させることである。いくつかの態様において、薬力学的効果はサイトカインの活性を低減させることである。いくつかの態様において、薬力学的効果は望ましくない分子の産生を低減させることである。いくつかの態様において、薬力学的効果は、望ましくない分子、例えば尿酸結晶の分解を増大させることである。いくつかの態様において、薬力学的効果は酵素の活性である。
【0182】
治療用高分子の薬力学的効果は、標準的な方法により評価し得る。本発明のいくつかの側面において、薬力学的効果は炎症の低減である。炎症のレベルは、限定されないが、以下の例示的方法:発赤や腫脹などの炎症徴候の点数化;易動性、痛みまたは関節破壊などの関節性の徴候の点数化;腫脹、血圧、息切れなどのアナフィラキシー徴候の点数化;組織学、免疫組織化学、フローサイトメトリーによって細胞浸潤を検出および/または定量すること;TNF、IL-1などのタンパク質または炎症関連サイトカインの濃度をELISAによって測定すること、遺伝子または炎症関連遺伝子の発現を転写分析によって査定すること;炎症関連サイトカインの活性を測定すること、等のいずれかによって評価し得る。
【0183】
本発明のいくつかの側面において、薬力学的効果は望ましくない分子の低減または分解である。いくつかの態様において、薬力学的効果は、限定されないが、組織または血液サンプル中の望ましくない分子をELISAなどの方法によって定量することによって査定され得る。いくつかの態様において、薬力学的効果は、望ましくない分子の分解によって産生される分子をELISAなどによって定量することによって査定され得る。本発明のいくつかの側面において、薬力学的効果は、それ以前は存在しなかったか、または適切に存在しなかった酵素の活性である。いくつかの態様において、酵素の活性は、酵素活性の産生物の存在または濃度を検出することによって査定され得る。
【0184】
本発明のいくつかの側面において、治療用高分子の低減された用量が投与されて薬力学的効果を生じる。かかる目的のための治療用高分子の低減された用量は、免疫抑制剤用量の併用投与により抗治療用高分子抗体応答の存在下で薬力学的効果を達成する、治療用高分子のいずれかの用量であって、抗治療用高分子抗体応答の存在下で免疫抑制剤用量と併用投与されないときに治療用高分子により同様の薬力学的効果を達成するのに必要とされる用量よりも少ない用量を含む。低減された用量は、抗治療用高分子抗体応答の存在下で、免疫抑制剤用量の併用投与と共に、治療用高分子を特定の用量で投与し、薬力学的効果を査定することにより決定し得る。次いで薬力学的効果を、抗治療用高分子抗体応答の存在下で免疫抑制剤用量の併用投与なしでの治療用高分子の投与を通してもたらされる薬力学的効果と比較してもよい。かかる比較により決定される、同様の薬力学的効果を達成する、より少ない用量が、低減された用量である。
【0185】
以前に言及したように、免疫抑制剤は合成ナノ担体に付着されていてよい。合成ナノ担体は当該分野において知られている種々多様な方法を使用して調製され得る。例えば、合成ナノ担体は、ナノ沈殿、流体チャンネルを使用するフローフォーカシング、噴霧乾燥、シングルおよびダブルエマルション溶媒蒸留、溶媒抽出、相分離、ミリング、マイクロエマルション手順、ミクロ加工、ナノ加工、犠牲層、単純および複合コアセルベーションなどの方法、および、当業者に周知の他の方法によって形成され得る。代替的または追加的に、単分散半伝導体または伝導性、磁性、有機および他のナノ材料のための水性および有機溶媒合成が記載されている(Pellegrino et al., 2005, Small, 1 :48; Murray et al., 2000, Ann. Rev. Mat. Sci., 30:545; Trindade et al., 2001, Chem. Mat., 13:3843)。追加の方法が文献に記載されている(例えば、Doubrow, Ed., "Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy," CRC Press, Boca Raton, 1992; Mathiowitz et al., 1987, J. Control. Release, 5: 13; Mathiowitz et al., 1987, Reactive Polymers, 6:275; Mathiowitz et al., 1988, J. Appl. Polymer Sci., 35:755;米国特許第5578325号および6007845号;P. Paolicelli et al., "Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles" Nanomedicine. 5(6): 843-853 (2010)を参照)。
【0186】
必要に応じて、C. Astete et al., "Synthesis and characterization of PLGA nanoparticles" J. Biomater. Sci. Polymer Edn, Vol. 17, No. 3, pp. 247-289 (2006); K. Avgoustakis "Pegylated Poly(Lactide) and Poly(Lactide-Co-Glycolide) Nanoparticles: Preparation, Properties and Possible Applications in Drug Delivery" Current Drug Delivery 1: 321-333 (2004); C. Reis et al., "Nanoencapsulation I. Methods for preparation of drug-loaded polymeric nanoparticles" Nanomedicine 2:8-21 (2006); P. Paolicelli et al., "Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles" Nanomedicine. 5(6):843-853 (2010)が挙げられるが、これらに限定されない種々の方法を使用して、種々の材料を合成ナノ担体中にカプセル化してもよい。材料を合成ナノ担体中にカプセル化するのに好適な、米国特許第6,632,671号(Unger、2003年10月14日発行)に開示された方法を包含するが、これらに限定されない他の方法を使用してもよい。
【0187】
特定の態様において、合成ナノ担体は、ナノ沈殿プロセスまたは噴霧乾燥によって調製される。合成ナノ担体の調製に使用される条件は、望ましいサイズまたは特性(例えば、疎水性、親水性、外部形態学、「粘着性」、形状、等)の粒子を産出するために変え得る。合成ナノ担体の調製方法および使用される条件(例えば、溶媒、温度、濃度、空気流量、等)は、合成ナノ担体に付着すべき材料および/またはポリマーマトリックスの組成に依存し得る。
【0188】
上記の方法のいずれかによって調製される合成ナノ担体が望ましい範囲を外れるサイズ範囲を有する場合、かかる合成ナノ担体は、例えば、篩いを使用して分粒されてもよい。
合成ナノ担体の要素(すなわち構成成分)(抗原、免疫抑制剤、等)は、例えば、1つまたは2つ以上の共有結合によって合成ナノ担体全面的に付着されてもよいし、1つまたは2つ以上のリンカーを使用して付着されてもよい。
【0189】
合成ナノ担体を官能化する追加の方法は、公開された米国特許出願第2006/0002852号(Saltzman et al.)、公開された米国特許出願第2009/0028910号(DeSimone et al)または公開された国際特許出願WO/2008/127532Al(Murthy et al.)から適合されてもよい。
【0190】
代替的または追加的に、合成ナノ担体は、直接的に、または非共有結合的相互作用を介して間接的に、構成成分に付着されてよい。非共有結合的な態様において、非共有結合的付着は、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理吸着、ホスト-ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子-双極子相互作用および/またはそれらの組み合わせを包含するが、それらに限定されない、非共有結合的相互作用により媒介される。かかる連結は、合成ナノ担体の外部表面または内部表面上に配列されてもよい。ある態様において、カプセル化および/または吸収が付着の形態である。ある態様において、合成ナノ担体は、同じビヒクルまたは送達系中で混和することによって治療用高分子または他の組成物と組み合わされてもよい。
【0191】
本明細書で提供される組成物は、無機または有機緩衝剤(例えば、リン酸、カルボン酸、酢酸またはクエン酸のナトリウムまたはカリウム塩)およびpH調節剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウムまたはカリウム、クエン酸または酢酸の塩、アミノ酸およびそれらの塩)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、アルファ-トコフェロール)、界面活性物質(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン9-10ノニルフェノール、デオキシコール酸ナトリウム)、溶解および/または冷凍/凍結乾燥安定剤(cryo/lyo stabilizer)(例えば、スクロース、ラクトース、マンニトール、トレハロース)、浸透圧調節剤(例えば、塩または糖)、抗菌剤(例えば、安息香酸、フェノール、ゲンタマイシン)、消泡剤(例えば、ポリジメチルシロゾン(polydimethylsilozone)、保存剤(例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、EDTA)、高分子安定剤および粘度調節剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー488、カルボキシメチルセルロース)ならびに共溶媒(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、エタノール)を含んでいてもよい。
【0192】
本発明に従う組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤を含んでもよい。組成物は、有用な剤形に到達するように従来の医薬製造および配合技術を使用して作られ得る。本発明の実行における使用に好適な技術は、Handbook of Industrial Mixing: Science and Practice, Edited by Edward L. Paul, Victor A. Atiemo-Obeng, and Suzanne M. Kresta, 2004 John Wiley & Sons, Inc.; and Pharmaceutics: The Science of Dosage Form Design, 2nd Ed. Edited by M. E. Auten, 2001, Churchill Livingstoneに見出され得る。ある態様において、組成物は保存剤と一緒に注射用滅菌食塩水溶液中に懸濁される。
【0193】
本発明の組成物はいずれかの好適な様式で作り得、本発明は本明細書に記載される方法を使用して生成され得る組成物になんら限定されないということを理解すべきである。適切な製造方法の選択は、関連している具体的な部位の性質に対する注意を要する場合がある。
【0194】
いくつかの態様において、組成物は、滅菌条件下で製造されるか、または最終的に滅菌される。このことは、結果としてもたらされる組成物が滅菌され、および非感染性であることを確実にし得、こうして非滅菌の組成物と比較したときの安全性を改善する。このことは、とりわけ組成物を受ける対象が免疫欠如を有する、感染症を患う、および/または、感染されやすいときには、価値のある安全対策を提供する。いくつかの態様において、組成物は凍結乾燥されて、製剤戦略に依存して懸濁液中で、または凍結乾燥粉末として、活性を失うことなく長期間保管されてもよい。
【0195】
本発明に従う投与は、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、経粘膜、経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)または皮内経路を包含するが、これらに限定されない種々の経路によってよい。好ましい態様において、投与は皮下経路の投与を介する。本明細書で参照される組成物は、従来の方法を使用して、投与、好ましくは併用投与のために製造され、および調製され得る。
【0196】
本発明の組成物は、本明細書中に別記した有効量などの有効量で投与され得る。剤形の用量は、本発明に従い、変化する量の免疫抑制剤および/または治療用高分子を含有してよい。本発明の剤形中に存在する免疫抑制剤および/または治療用高分子の量は、治療用高分子および/または免疫抑制剤の特質、遂行されるべき治療効果ならびに他のかかるパラメータに従い変更され得る。ある態様において、剤形中に存在すべき免疫抑制剤および/または治療用高分子の最適な治療量を確立するために、用量範囲の研究を行い得る。
【0197】
ある態様において、免疫抑制剤および/または治療用高分子は、対象への投与の際、望ましい薬力学的効果および/または治療用高分子に対する、低減された免疫応答を発生するのに有効な量で剤形中に存在する。対象における従来の用量範囲の研究および技術を使用して、望ましい結果を達成するのに有効な免疫抑制剤および/または治療用高分子の量を決定することが可能であり得る。本発明の剤形は、種々の頻度で投与され得る。好ましい態様において、薬理学的に妥当な応答を発生するのに、本明細書で提供される組成物の少なくとも1回の投与で充分である。より好ましい態様において、薬理学的に妥当な応答を確実にするように、少なくとも2回の投与または少なくとも3回の投与が利用される。いくつかの態様において、薬理学的に妥当な応答を確実にするように繰り返される投与が利用される。
【0198】
本開示の別の側面はキットに関する。いくつかの態様において、キットは、低減された薬力学的有効用量などの、治療用高分子の薬力学的有効用量または、1つよりも多い用量を含む。かかる態様において、キットはまた、免疫抑制剤用量または免疫抑制剤の1つよりも多い用量を含んでもよい。免疫抑制剤用量および薬力学的有効用量は、キット中で、別個の容器内または同じ容器内に含有され得る。いくつかの態様において、容器はバイアルまたはアンプルである。いくつかの態様において、治療用高分子の薬力学的有効用量および/または免疫抑制剤用量は、容器とは別の溶液内に含有されて、治療用高分子の薬力学的有効用量および/または免疫抑制剤用量がその後の時点で容器に加えられるようになされていてもよい。
【0199】
いくつかの態様において、治療用高分子の薬力学的有効用量および/または免疫抑制剤用量は、それぞれ別の容器中または同じ容器中に凍結乾燥された形態であって、それらがその後の時点で再構成されるようになされていてもよい。いくつかの態様において、キットはさらに、再構成、混合、投与、等のための使用説明書を含む。いくつかの態様において、使用説明書は本明細書に記載された方法の記載を包含する。使用説明書は、例えば印刷されたインサートまたはラベルのような、いずれか好適な形態であってよい。いくつかの態様において、キットはさらに、1つまたは2つ以上のシリンジを含む。
【0200】

例1:in vivoにおける、免疫抑制剤およびAPC提示可能抗原を含む合成ナノ担体による免疫応答の評価
材料
オボアルブミンタンパク質のTおよびB細胞エピトープであることが知られている17アミノ酸ペプチド、オボアルブミンペプチド323~339(OVA323-339)、をBachem Americas Inc.(3132 Kashiwa Street, Torrance CA 90505)から購入した(パート# 4065609)。ラパマイシンはTSZ CHEM(185 Wilson Street, Framingham, MA 01702)から購入した(製品カタログ# R1017)。ラクチド:グリコリド比3:1および固有粘度0.75dL/gのPLGAをSurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive、Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード7525 DLG 7A)。ポリビニルアルコール(85~89%加水分解)をEMD Chemicalsから購入した(製品番号1.41350.1001)。
【0201】
ラパマイシンおよびオボアルブミン(323~339)を含有する合成ナノ担体の調製方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:OVA323-339、希塩酸水溶液中20mg/mL。この溶液は、オボアルブミンペプチドを室温で0.13M塩酸溶液中に溶解することによって調製した。
溶液2:PLGA、塩化メチレン中100mg/mL。この溶液は、PLGAを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。
溶液3:PLA-PEG、塩化メチレン中100mg/mL。この溶液は、PLA-PEGを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。
溶液4:ラパマイシン、塩化メチレン中50mg/mL。この溶液は、ラパマイシンを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。
溶液5:ポリビニルアルコール、100mMのpH8リン酸緩衝液中50mg/mL。
【0202】
まず、一次油中水エマルションを調製した。溶液1(0.2mL)、溶液2(0.75mL)、溶液3(0.25mL)および溶液4(0.2mL)を小圧力管中で組み合わせ、Branson Digital Sonifier 250を使用して50%振幅で40秒間超音波処理することにより、W1/O1を調製した。次いで溶液5(3.0mL)を一次W1/O1エマルションと組み合わせ、10sボルテックスし、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒超音波処理することにより、二次エマルション(W1/O1/W2)を調製した。
【0203】
W1/O1/W2エマルションを、70mMのpH8リン酸緩衝溶液(30mL)を含有するビーカーに加えて室温で2時間撹拌し、塩化メチレンを蒸発させて合成ナノ担体を形成させた。合成ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移して75,600×gおよび4℃で35min遠心分離し、上清を除去して、リン酸緩衝化食塩水中にペレットを再懸濁することによって、合成ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、約10mg/mLの最終合成ナノ担体分散液となるようにペレットをリン酸緩衝化食塩水中に再懸濁した。
合成ナノ担体中のペプチドおよびラパマイシンの量はHPLC分析によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥合成ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【0204】
ラパマイシンを含有する合成ナノ担体のための方法
まず一次油中水エマルションを調製した。0.13Mの塩酸溶液(0.2mL)、溶液2(0.75mL)、溶液3(0.25mL)および溶液4(0.2mL)を小圧力管中で組み合わせ、Branson Digital Sonifier 250を使用して50%振幅で40秒間超音波処理することによって、W1/O1を調製した。次いで、溶液5(3.0mL)を一次W1/O1エマルションと組み合わせ、10sボルテックスし、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することによって、二次エマルション(W1/O1/W2)を調製した。
【0205】
W1/O1/W2エマルションを、70mMのpH8リン酸緩衝溶液(30mL)を含有するビーカーに加えて、室温で2時間撹拌し、塩化メチレンを蒸発させて合成ナノ担体を形成させた。合成ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移して21,000×gおよび4℃で1時間遠心分離し、上清を除去して、リン酸緩衝化食塩水中にペレットを再懸濁することによって、合成ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、約10mg/mLの最終合成ナノ担体分散液となるようにペレットをリン酸緩衝化食塩水中に再懸濁した。
【0206】
合成ナノ担体中のラパマイシンの量はHPLC分析によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥合成ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【0207】
ラパマイシン積載量の測定方法
およそ3mgの合成ナノ担体を収集し遠心分離して合成ナノ担体ペレットから上清を分離した。アセトニトリルをペレットに加え、サンプルを超音波処理および遠心分離して、いずれの不溶性材料も除去した。上清およびペレットをRP-HPLCに注入し、278nmにおける吸光度を読み取った。ペレット中に見出されたμgを使用して、捕捉された%(積載量)を算出し、上清およびペレット中のμgを使用して、回収された総μgを算出した。
【0208】
オボアルブミン(323~339)積載量の測定方法
およそ3mgの合成ナノ担体を収集および遠心分離して合成ナノ担体ペレットから上清を分離した。トリフルオロエタノールをペレットに加えてサンプルを超音波処理し、ポリマーを溶解し、0.2%トリフルオロ酢酸を加えてサンプルを超音波処理し、次いで遠心分離していずれの不溶性材料も除去した。上清およびペレットをRP-HPLCに注入し、215nmにおける吸収を読み取った。ペレット中に見られたμgを使用して、捕捉された%(積載量)を算出し、上清およびペレット中のμgを使用して、回収された総μgを算出した。
【0209】
免疫化
この実験の目的は、抗原特異的免疫グロブリンを測定することによって、カプセル化された免疫抑制剤の、進行中の抗体応答に対する効果を査定することである。動物の1つの群は対照として免疫化しないままとした。動物の2つの群は、ニワトリオボアルブミン(OVA)およびCpGを使用して足蹠における3回の注射により(d0、d14およびd28)免疫化し、続いて抗体価を評価した。免疫化のために、動物は両後肢にs.c.により20μl/肢のOVA+CpG(12.5μgOVA+10μgCpG)を受けた。同じ日に投与された処置には、i.v.投与(200μl)またはs.c.投与(20μl)が包含された。同量のOVA323-339を処置群に注射するやり方で、ナノ担体を希釈した。
【0210】
IgGの測定
IgG抗体のレベルを測定した。Blocker Casein in PBS(Thermo Fisher、カタログ#37528)を希釈剤として使用した。10mLのTween-20(Sigma、カタログ#P9416-100mL)を2リットルの10×PBSストック(PBS: OmniPur(登録商標)10X PBS Liquid Concentrate、4L、EMD Chemicals、カタログ#6505)および18リットルの脱イオン水に加えることによって調製した、PBS中0.05%Tween-20を洗浄緩衝剤として使用した。
ストック濃度5mg/mLのOVAタンパク質をコーティング材料として使用した。1:1000希釈して5μg/mlとし、使用濃度として使用した。アッセイプレートの各ウェルを1ウェル当たり100μlの希釈OVAでコーティングし、プレートを封止膜(VWR、カタログ#60941-120)で封止し、4℃で終夜インキュベートした。Costar 9017の96ウェル平底プレートをアッセイプレートとして使用した(Costar 9017)。
【0211】
低結合ポリプロピレン96ウェルプレートまたはチューブをセットアッププレートとして使用し、アッセイプレートに移す前にその中でサンプルを調製した。セットアッププレートはいずれの抗原も含有せず、それゆえサンプルのセットアップ中は、血清抗体はプレートと結合しなかった。セットアッププレートをサンプル調製に使用し、抗原でコーティングされたプレートを使用してサンプルを調製した場合、サンプルの調製またはピペッティング中に起こるであろう結合を最小限に抑えた。セットアッププレート中でサンプルを調製する前に、ウェルを希釈剤で覆って、いずれの非特異的結合もブロックし、プレートを封止して4℃で終夜インキュベートした。
【0212】
アッセイプレートを洗浄緩衝剤で3回洗浄し、最終洗浄後に洗浄緩衝剤をウェルから完全に吸引した。洗浄後、300μlの希釈剤をアッセイプレート(単数または複数)の各ウェルに加えて非特異的結合をブロックし、プレートを室温で少なくとも2時間インキュベートした。血清サンプルをセットアッププレート中で適切な開始希釈で調製した。場合によっては、1.5mLチューブ中で希釈剤を使用して開始希釈を調製し、次いでセットアッププレートに移した。適切な開始希釈は、利用可能な場合、先行するデータに基づいて決定した。先行データが利用可能でない場合は、最も低い開始希釈を1:40とした。ひとたび希釈したら、200μlの開始希釈の血清サンプルをチューブからセットアッププレートの適切なウェルに移した。
【0213】
例示的なセットアッププレートレイアウトを以下に記載する。列2および3には、0.25μg/mlに希釈された(1:4000希釈)抗オボアルブミンモノクローナルIgG2bアイソタイプ(AbCam、ab17291)標準を含有させた。列4~11には、血清サンプル(適切な希釈)を含有させた。エッジ効果に起因する測定のいずれかの偏りを回避するように、列1および12はサンプルまたは標準には使用しなかった。その代わりに、列1および12には200μlの希釈剤を含有させた。1:40で希釈した正常マウス血清を陰性対照として使用した。0.5mg/mLのストック(BD Bioscience)から1:500で希釈した抗マウスIgG2aをアイソタイプ対照として使用した。
【0214】
全てのサンプルをセットアッププレート中でひとたび調製したら、プレートを封止して、アッセイプレートのブロッキングが完了するまで4℃で保管した。アッセイプレートを洗浄緩衝剤で3回洗浄し、最終洗浄後に洗浄緩衝剤を完全に吸引した。洗浄後、アッセイプレートの行B~Hの全てのウェルに100μlの希釈剤を加えた。12チャンネンピペットを使用してサンプルをセットアッププレートからアッセイプレートへと移した。移す前に、150μlの希釈された血清を上下に3回ピペッティングすることによってサンプルを混合した。混合後、150μ1の各サンプルをセットアッププレートから移し、各アッセイプレートの行Aに加えた。
【0215】
各サンプルの開始希釈をセットアッププレートからアッセイプレートの行Aに移したら、以下のように系列希釈をアッセイプレート上にピペッティングした。50μlの各血清サンプルを、12チャンネルピペットを使用して行Aから除去し行Bの各ウェルに予め加えておいた100μlの希釈剤と混合した。このステップを下に向かってプレート全体にわたり繰り返した。最終行の希釈をピペッティングした後、50μlの流体を最終行のウェルから除去して廃棄し、アッセイプレートのウェルごとに100μlの最終体積がもたらされた。アッセイプレート中でサンプル希釈を調製したら、プレートを室温で少なくとも2時間インキュベートした。
【0216】
インキュベート後、プレートを洗浄緩衝剤で3回洗浄した。検出抗体(ヤギ抗マウス抗IgG、HRP複合化、AbCam ab98717)を希釈剤で1:1500希釈し(0.33μg/ml)、100μlの希釈した抗体を各ウェルに加えた。プレートを室温で1時間インキュベートし、次いで各洗浄ステップが少なくとも30秒の浸漬時間を包含するようにして洗浄緩衝剤で3回洗浄した。
【0217】
洗浄後、検出基質をウェルに加えた。等しい部数(parts)の基質Aおよび基質B(BD Biosciences TMB Substrate Reagent Set、カタログ#555214)をアッセイプレートに加える直前に組み合わせ、100μlの混合基質溶液を各ウェルに加えて、暗所で10分間インキュベートした。10分間の後、50μl停止溶液(2NのHSO)を各ウェルに加えることによって反応を停止させた。停止溶液を加えた直後のウェルの光学濃度(OD)をプレートリーダーにて450nmで査定し570nmで減算した。Molecular DeviceのソフトウェアSoftMax Pro v5.4を使用してデータ分析を行った。希釈をx軸(log目盛)に取りOD値をy軸(均等目盛)に取って4パラメータロジスティック曲線に適合するグラフを調製し、各サンプルの最大半量値(EC50)を決定した。レイアウトの最上部のプレートテンプレートを調節して各サンプルの希釈を反映させた(1列につき1つ)。
【0218】
結果
結果は、免疫抑制剤用量を抗原と組み合わせて使用して、免疫抑制剤および抗原の両方がナノ担体に付着されている場合の、抗原特異的抗体応答を低減させる能力を実証している。図1は、静脈内投与したときの、ペプチド抗原および免疫抑制剤を含むナノ担体による、循環抗原特異的抗体産生の減少を示している。各実験において5匹の動物を使用して2回の独立した実験を行った。図2は、皮下投与したときの、ペプチド抗原および免疫抑制剤を含むナノ担体による、抗原特異的な循環抗体の産生減少を示している。各実験において5匹の動物を使用して3回の独立した実験を行った。正規の一方向ANOVA検定(*=p<0.05、**=p<0.01および***=p<0.001)のボンフェローニポスト検定を使用して、P値を算出した。
【0219】
これらの結果は、通常は有意な抗オボアルブミン抗体応答を生成するであろう条件下で投与したときに、同量のオボアルブミンタンパク質を使用して向上された効果を得られるることを実証している。さらに、本結果が示唆するように、この薬力学的効果は低減された薬力学的有効用量で得られたであろう。最後に、免疫抑制剤用量との併用投与の際、治療用高分子の低減された薬力学的有効用量で薬力学的効果をもたらすことが実証されたプロトコルが確立されたことが、結果の再現によって支持された。
【0220】
例2:免疫抑制剤および治療用タンパク質を含む合成ナノ担体の併用投与に続く免疫応答の評価
材料
ラパマイシンはTSZ CHEM(185 Wilson Street, Framingham, MA 01702)から購入した(製品カタログ# R1017)。76%ラクチドおよび24%グリコリド含有量ならびに固有粘度0.69dL/gのPLGAをSurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード7525 DLG 7A)。およそ5,000DaのPEGブロックおよびおよそ40,000DaのPLAブロックを有するPLA-PEGブロックコポリマーをSurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。ポリビニルアルコール(85~89%加水分解)はEMD Chemicalsから購入した(製品番号1.41350.1001)。
【0221】
合成ナノ担体の調製方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGAおよび25mg/mLのPLA-PEG。この溶液は、純粋な塩化メチレン中にPLGAおよびPLA-PEGを溶解することにより調製した。
溶液2:ラパマイシン、塩化メチレン中100mg/mL。この溶液は、純粋な塩化メチレン中にラパマイシンを溶解することにより調製した。
溶液3:ポリビニルアルコール、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mL。
【0222】
水中油エマルションを使用してナノ担体を調製した。溶液1(1mL)、溶液2(0.1mL)および溶液3(3mL)を小圧力管中で組み合わせて、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することによってO/Wエマルションを調製した。このO/Wエマルションを70mMのpH8リン酸緩衝溶液(30mL)を含有するビーカーに加えて室温で2時間撹拌し、塩化メチレンを蒸発させてナノ担体を形成させた。ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移して75,600×gおよび4℃で35min遠心分離し、上清を除去して、リン酸緩衝化食塩水中にペレットを再懸濁することによって、ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、約10mg/mLの最終ナノ担体分散液となるようにペレットをリン酸緩衝化食塩水中に再懸濁した。
【0223】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量はHPLC分析によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表1】
【0224】
オボアルブミンに対する応答
C57BL/6同齢(5~6週)雌性マウス(1群につき5匹、3群。無感作対照、未処置対照およびラパマイシンを有する合成ナノ担体による処置)に免疫原性(aggOVA)を増加させるため凝集体を形成するように高せん断を使用して誘導したニワトリオボアルブミン25μgを静脈内注射した。免疫応答を抗原刺激およびブーストするこれらの静脈内注射(第0、14および28日の投与)の後、腹腔内に25μgオボアルブミンのその後のブースト(i.p.、第42日および57日)と、左後肢皮下に12.5μgのpOVAチャレンジ(s.c.、d62)と、それに続く同じaggOVAをCpGと組み合わせて使用したチャレンジ(s.c.、第90、105および135日)を行った。図3は、かかる免疫化プロトコルの結果を示している。第25および40日に、ELISA(一般に例1において記載したような技術)を使用して、これらの動物中で突出した抗OVA抗体(Ab)応答を検出し得る。
【0225】
その後のaggOVA注射により、これらの抗体価が維持されるか、または応答がさらにブーストされることが観察された。それに対して、i.v.投与された合成ナノ担体(100μgのラパマイシンを提供するように算出された用量)を使用し、d0、14および28の抗原との3回の最初の遭遇中のみaggOVAを併用してマウスを処置したときには、aggOVAを包含する免疫原性混合物による4回の注射後でさえも、次の60日間、IgG応答は全く検出し得ない。図3を参照。処置動物において非常にわずかな抗aggOVAIgG応答が検出し得るのは、極めて免疫原性の組み合わせであるaggOVA/KLHおよびCpGによる3回のs.c.注射(s.c.、90、105および135日)後に限られる。
【0226】
第2の抗原、キーホールリンペットヘモシアニンへの応答
上記と同じマウスにもまた、0.05μgの第2のAg、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を注射したが、KLHはaggOVAと混合してaggOVAの上記したスケジュールに従って投与した。例1に記載した抗OVAIgG力価法と同様の方法を使用して抗KLHIgG抗体価を決定した。
【0227】
図4の結果は、aggOVAと異なり、KLHはAgとの遭遇の最初の段階(d0~40)では免疫原性ではないことを示している。しかしながら、KLHは、CpGの存在下でのKLHの3回のs.c.免疫化(s.c.、第90、105および135日)の後では、合成ナノ担体で処置しない動物において免疫原性であった。これらの対照マウスにおいては強い抗KLH応答を観察し得るが、一方で、このプロトコルの初めに、免疫抑制剤を抗原と組み合わせて有する合成ナノ担体による3回の処置を受けたマウスは、KLH/CpGチャレンジの後でも検出可能な応答を有さない。
【0228】
これらの結果は、本明細書で提供される組成物および方法によって、通常は有意な抗体応答を生成するであろう条件下で投与したときに、向上された効果が得られることを実証している。また、これらの結果は、薬力学的効果をもたらすことが実証されたプロトコルが確立されたことを支持する。
【0229】
例3:ラパマイシンに付着されたナノ担体の調製方法
材料
ラパマイシンをTSZ CHEM(185 Wilson Street、Framingham, MA 01702)から購入した(製品コードR1017)。ラクチド:グリコリド比3:1および固有粘度0.75dL/gのPLGAをSurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード7525 DLG 7A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.5DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biochemicals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)を、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。
【0230】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGA、25mg/mLのPLA-PEG-OMeおよび12.5mg/mLのラパマイシン。この溶液は、PLGA、PLA-PEG-OMeおよびラパマイシンを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。
溶液2:ポリビニルアルコール、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mL。
【0231】
水中油(O/W)エマルションを使用してナノ担体を調製した。溶液1(1.0mL)および溶液2(3.0mL)を小圧力管中で組み合わせて、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することによってO/Wエマルションを調製した。O/Wエマルションを70mMのpH8リン酸緩衝溶液を含有するビーカーに加えて室温で2時間撹拌し、塩化メチレンを蒸発させてナノ担体を形成させた。ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移して75,600×gおよび4℃で50min遠心分離し、上清を除去してリン酸緩衝化食塩水中にペレットを再懸濁することによって、ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、約10mg/mLの最終ナノ担体分散液となるようにペレットをリン酸緩衝化食塩水中に再懸濁した。
【0232】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定し表1に提示した。ナノ担体中のラパマイシンの量はHPLC分析によって決定した(表1)。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表2】
【0233】
材料
ラパマイシンは、TSZ CHEM(185 Wilson Street、Framingham, MA01702)から購入した(製品コードR1017)。ラクチド:グリコリド比1:1および固有粘度0.24dL/gのPLGAは、SurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.5DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biochemicals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)は、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。
【0234】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGA、25mg/mLのPLA-PEG-OMeおよび12.5mg/mLのラパマイシン。この溶液は、PLGA、PLA-PEG-OMeおよびラパマイシンを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。
溶液2:ポリビニルアルコール、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mL。
溶液3:70mMリン酸緩衝剤、pH8。
【0235】
溶液1(1.0mL)および溶液2(3.0mL)を小ガラス圧力管中で混合し、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することによって水中油エマルションを作製した。エマルションを、溶液3(30mL)を含有する開放50mLビーカーに加え、室温で2時間撹拌して、ジクロロメタンを蒸発させ、懸濁液中にナノ担体を形成させた。次いでナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600rcfで40分間回転させ、上清を除去し、ペレットをリン酸緩衝化食塩水中に再懸濁することによって、懸濁ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをPBS1×中に再懸濁し、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。懸濁液は、使用まで、-20℃で凍結して保管した。
【0236】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量はHPLC分析によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表3】
【0237】
材料
ラパマイシンは、TSZ CHEM(185 Wilson Street、Framingham, MA01702)から購入した(製品コードR1017)。ラクチド:グリコリド比1:1および固有粘度0.24dL/gのPLGAは、SurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.5DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biochemicals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。F8II.1723ペプチドはAnaSpec(34801 Campus Drive, Fremont, CA 94555)から購入した。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)は、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。
【0238】
方法
以下のとおりに溶液を調製した。
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGA、25mg/mLのPLA-PEG-OMe、および12.5mg/mLのラパマイシン。この溶液は、PLGA、PLA-PEG-OMe、およびラパマイシンを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。
溶液2:50mMのpH11.5リン酸緩衝剤中、10mg/mLのF8II.1723(ERLWDYGMSSSPHVL)および100mg/mLのスクロース。この溶液は、スクロースを50mMのpH11.5リン酸緩衝剤中に溶解し、次いでF8II.1723ペプチドを乾燥粉末として加えることによって調製した。
溶液3:ポリビニルアルコール、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mL。
溶液4:70mMのpH8リン酸緩衝剤。
【0239】
まず、溶液1(1.0mL)および溶液2(0.2mL)を小ガラス圧力管中で混合し、Branson Digital Sonifier 250を使用して50%振幅で40秒間超音波処理することによって一次(W1/O)エマルションを作製した。
次いで、溶液3(3.0mL)を一次エマルションに加え、ボルテックスして粗分散液を作製し、次いでBranson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することにより、二次(W1/O/W2)エマルションを形成した。
【0240】
二次エマルションを、溶液4(30mL)を含有する開放50mLビーカーに加え、室温で2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させ、懸濁液中にナノ担体を形成させた。次いで、ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600rcfで35分間回転し、上清を除去し、ペレットをリン酸緩衝化食塩水中に再懸濁することによって、懸濁ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをPBS1×中に再懸濁して、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。懸濁液は、使用まで、-20℃で凍結して保管した。
【0241】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシン量はHPLC分析によって決定した。ナノ担体中のF8II.1723の量はフルオレスカミンに基づくアッセイを使用して決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表4】
【0242】
材料
ラパマイシンは、TSZ CHEM(185 Wilson Street、Framingham, MA01702)から購入した(製品コードR1017)。ラクチド:グリコリド比1:1および固有粘度0.24dL/gのPLGAは、SurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.5DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biochemicals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。F8II.75ペプチドはAnaSpec(34801 Campus Drive, Fremont, CA 94555)から購入した。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)は、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。
【0243】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGA、25mg/mLのPLA-PEG-OMeおよび12.5mg/mLのラパマイシン。この溶液は、PLGA、PLA-PEG-OMeおよびラパマイシンを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。
溶液2:50mMのpH2リン酸緩衝剤中、10mg/mLのF8II.75(VHLFNIAKPRPPWMG)および100mg/mLのスクロース。この溶液は、スクロースを50mMのpH2リン酸緩衝剤中に溶解し、次いでF8II.1723ペプチドを乾燥粉末として加えることによって調製した。
溶液3:ポリビニルアルコール、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mL。
溶液4:70mMのpH8リン酸緩衝剤。
【0244】
まず、溶液1(1.0mL)および溶液2(0.2mL)を小ガラス圧力管中で混合し、Branson Digital Sonifier 250を使用して50%振幅で40秒間超音波処理することによって一次(W1/O)エマルションを作製した。
次いで、溶液3(3.0mL)を一次エマルションに加え、ボルテックスして粗分散液を作製し、次いでBranson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することにより、二次(W1/O/W2)エマルションを形成した。
【0245】
二次エマルションを、溶液4(30mL)を含有する開放50mLビーカーに加え、室温で2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させ、懸濁液中にナノ担体を形成させた。次いで、ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600rcfで35分間回転し、上清を除去し、ペレットをリン酸緩衝化食塩水中に再懸濁することによって、懸濁ナノ担体の一部分を洗浄した。この洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをPBS1×中に再懸濁して、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。懸濁液は、使用まで、-20℃で凍結して保管した。
【0246】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシン量はHPLC分析によって決定した。ナノ担体中のF8II.75の量はフルオレスカミンに基づくアッセイを使用して決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表5】
【0247】
材料
ラパマイシンは、TSZ CHEM(185 Wilson Street、Framingham, MA01702)から購入した(製品コードR1017)。ラクチド:グリコリド比1:1および固有粘度0.24dL/gのPLGAは、SurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.5DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biochemicals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。F8II.2210ペプチドはAnaSpec(34801 Campus Drive, Fremont, CA 94555)から購入した。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)は、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。
【0248】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGA、25mg/mLのPLA-PEG-OMeおよび12.5mg/mLのラパマイシン。この溶液は、PLGA、PLA-PEG-OMeおよびラパマイシンを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。
溶液2:50mMのpH2リン酸緩衝剤中、10mg/mLのF8II.2210(TASSYFTNMFATWSPSKAR)および100mg/mLのスクロース。この溶液は、スクロースを50mMのpH2リン酸緩衝剤中に溶解した後、F8II.2210ペプチドを乾燥粉末として加えることによって調製した。
溶液3:ポリビニルアルコール、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mL。
溶液4:70mMのpH8リン酸緩衝剤。
【0249】
まず、溶液1(1.0mL)および溶液2(0.2mL)を小ガラス圧力管中で混合し、Branson Digital Sonifier 250を使用して50%振幅で40秒間超音波処理することによって一次(W1/O)エマルションを作製した。
次いで、溶液3(3.0mL)を一次エマルションに加え、ボルテックスして粗分散液を作製し、次いでBranson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することにより、二次(W1/O/W2)エマルションを形成した。
【0250】
二次エマルションを、溶液4(30mL)を含有する開放50mLビーカーに加え、室温で2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させ、懸濁液中にナノ担体を形成させた。次いで、ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600rcfで35分間回転し、上清を除去し、ペレットをリン酸緩衝化食塩水中に再懸濁することによって、懸濁ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをPBS1×中に再懸濁して、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。懸濁液は、使用まで、-20℃で凍結して保管した。
【0251】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシン量はHPLC分析によって決定した。ナノ担体中のF8II.2210の量はフルオレスカミンに基づくアッセイを使用して決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表6】
【0252】
材料
ラクチド:グリコリド比1:1および固有粘度0.24dL/gのPLGAは、SurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.5DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biochemicals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)は、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。
【0253】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGA、25mg/mLのPLA-PEG-OMe。この溶液は、PLGAおよびPLA-PEG-OMeを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。
溶液2:ポリビニルアルコール、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mL。
溶液3:70mMリン酸緩衝剤、pH8。
【0254】
溶液1(1.0mL)および溶液2(3.0mL)を小ガラス圧力管中で混合し、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することによって水中油エマルションを作製した。エマルションを、溶液3(30mL)を含有する開放50mLビーカーに加え、室温で2時間撹拌して、ジクロロメタンを蒸発させ、懸濁液中にナノ担体を形成した。次にナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600rcfで40分間回転し、上清を除去し、ペレットをリン酸緩衝化食塩水中に再懸濁することによって、懸濁ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをPBS1×中に再懸濁して、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。懸濁液は、使用まで、-20℃で凍結して保管した。
【0255】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表7】
【0256】
例4:FVIIIに対する免疫応答の評価
血友病Aマウス(El6マウス)(第0日においてn=8)に、血液凝固タンパク質第VIII因子(FVIII)およびラパマイシンに付着された合成ナノ担体(ナノ担体ID4)または空のナノ粒子(NP)(ナノ担体ID8)およびFVIIIまたはIVIG(静脈内免疫グロブリン)およびFVIIIの、併用静脈内(i.v.)注射を、連続した5週の間、毎週受けさせた。FVIIIおよびラパマイシンに付着されたナノ担体の最終用量の1か月後にFVIIIに対する抗体リコール応答を評価するために、図5に提示したように、発色性のFVIII活性アッセイキット(Coatest SP4 FVIII)を使用したベセスダアッセイによりインヒビター力価を決定した。
【0257】
FVIIIおよびラパマイシンに付着されたナノ担体の処置によって誘導される持続する寛容原性をさらに評価するために、血友病Aマウス(El6マウス)(n=8、0日)に、図6Aに概略的に提示されるように、合成ナノ担体とFVIIIペプチド(ナノ担体ID5、6および7を混合して1:1:1ペプチド質量比とし一緒に注射)またはラパマイシンに付着されたナノ担体(ナノ担体ID4)とFVIIIタンパク質または空のNP(ナノ担体ID8)とFVIIIまたはIVIG(静脈内免疫グロブリン)とFVIIIの、併用i.v.注射を、5週の間、毎週受けさせた。第57、81および125日に、マウスは、さらなる処置の非存在下で、FVIII(i.v.またはi.p.)によるチャレンジを受けた。抗FVIII抗体レベルをELISAにより決定した。選択された時点の結果を図6Bに提示する。各時点でのデータは平均値±SEMとして表現される。統計分析のために、両側分布によるスチューデントt検定を使用して、ナノ担体群(タンパク質またはペプチドを使用した)を空のナノ粒子対照群と比較した。タンパク質を有するナノ担体ID4と空のNP群との間は*p<0.05および**p<0.01、ナノ担体およびペプチド(ナノ担体ID5、6および7)と空のNP群との間は#p<0.05および##p<0.01。FVIIIの全ての注射は注射1回当たり1μgとした。ナノ担体ID4の全ての注射は注射1回当たり100μgとした。
【0258】
データは、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤とFVIIIまたはそのペプチドとの投与は抗第VIII因子抗体応答を低減し得ることを示している。このことは、免疫抑制剤合成ナノ担体を、非付着第VIII因子タンパク質だけでなく、これもまた合成ナノ担体に付着された第VIII因子ペプチドと組み合わせて使用しても当てはまっていた。データはまた、かかる投与が第VIII因子の改善された活性をもたらし得ることも示している。このことは、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤の併用投与による、タンパク質に対する望ましくない免疫応答の低減と共に有効性の改善も実証している。最後に、これらの結果は、本明細書で提供されるプロトコルが確立されたことを支持する。
【0259】
例5:HUMIRA/アダリムマブに対する応答の評価
対照C57BL/6同齢(5~6週)雌に、60μgのHUMIRAを週1回第29日まで(全ての群および条件にわたりd0、7、14、22、29)前肢において皮下(s.c.)注射した。別の群は同様の注射を受けたが、0.9mgのラパマイシンに付着されたナノ担体(ナノ担体ID1、2または3)を、抗原刺激第0日にHUMIRAの溶液に混和した。図7Aに提示された結果は、第21日の全ての動物の血液中の抗体価を示している。対照動物はHUMIRAに対する強力な抗体応答を現すが、処置された動物は20日間および2回の処置なしのHUMIRAの注射後でさえ完全に陰性のままである。動物は、局所的抗体媒介タイプI過敏性応答を試験するために、第29日に、一方の後肢に別のチャレンジを受け、もう一方の後肢に塩水を受けた。このために、注射の1時間後にキャリパーの助けを借りて後肢の太さを測定した。2本の肢の太さの違いを図7Bに提示する。抗体結果と同様に、ナノ担体による処置はHUMIRAの局所投与により誘導される炎症応答を消滅させた。
【0260】
これらの結果は、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤をHUMIRAと共に投与することで望ましくない抗HUMIRA抗体応答を低減させ得るとともに、免疫抑制剤ナノ担体組成物なしのHUMIRAの投与によりもたらされ得る望ましくない炎症反応を除外し得ることを示している。このことは、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤の併用投与によるタンパク質に対する望ましくない免疫応答の低減を実証している。最後に、これらの結果は、本明細書で提供されるプロトコルが確立されたことを支持する。
【0261】
例6:キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に対する応答の評価
対照C57BL/6同齢(5~6週)雌に、200μgのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を、第0日または第21日に開始し週1回第34(d0、7、14、21、28、34)まで、尾静脈において静脈内(i.v.)注射した。別の群は、第0日から第34日まで同様の注射を受けたが、第0、14および21日には0.47mgのラパマイシンに付着されたナノ担体(ナノ担体ID1、2または3)をKLHの溶液に混和し、その後はKLH単独の注射を第21~34日の間毎週(d21、28、34)受けた。図8に提示された結果は、表示された時点での全ての動物の血液中の抗体価を示している。第0日または第21日に免疫化を開始した対照動物は、同量のKLHを使用した3回の注射(それぞれ第26および40日)後に、非常に類似した応答(EC50=3~5×10)を現す。それに対して、ナノ担体の3回の注射を受けた動物は、KLH単独の3回の注射後に、完全に陰性のままである。
【0262】
データは、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤をKLHと共に投与することが、抗KLH抗体応答を低減し得ること、および、かかる低減がナノ担体処置の後にKLHを投与した後もそのまま続き得るということを示している。このことは、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤の併用投与によるタンパク質に対する望ましくない免疫応答の低減を実証している。最後に、これらの結果は、本明細書で提供されるプロトコルが確立されたことを支持する。
【0263】
例7:オボアルブミンに対する応答の評価
C57BL/6同齢(5~6週)雌に、-21日および-13日に、1.2mg非付着ナノ粒子(NP[空])(ナノ担体ID8)、フリーのラパマイシン(fラパ)(100μg)、22μgのフリーのニワトリオボアルブミン(fOVA)、fラパとfOVAとの組み合わせ、単独または22μgのfOVAと組み合わせた1.2mgのラパマイシンに付着されたナノ担体(NP[ラパ]、100μgのラパマイシン含有量)(ナノ担体ID1、2または3)を、尾静脈においてi.v.注射した。第0日に、全ての動物に、2μgのCpGと混和された2.5μgの粒子状OVA(pOVA)を後肢においてs.c.注射し、続いて2.5μgのpOVAを第7および14日に注射した。いずれかの処置の非存在下(NP[空])において、動物はOVAに対して、抗OVAIgG抗体価により測定し得る強力な免疫応答を現す。図9に示された第22日の抗体価は、同じ溶液中でOVAと併用投与された合成ナノ担体(fOVA+NP[ラパ])の2回の用量が、OVA+CpGの1回の注射およびOVA単独の2回の注射後であっても、OVAに対する抗体形成を防止することにおいて有効であったことを実証している。
【0264】
データは、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤をOVAと共に投与することが、抗OVA抗体応答を低減し得ること、および、かかる低減が、OVAを強いアジュバントと組み合わせて投与した後でもそのまま続き得るということを示している。このことは、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤の併用投与によるタンパク質に対する望ましくない免疫応答の低減を実証している。最後に、これらの結果は、本明細書で提供されるプロトコルが確立されたことを支持する。
【0265】
例8:KRYSTEXXAに対する応答の評価
-21日および-14日に、C57BL/6同齢(5~6週)雌の対照群に、尾静脈においてPBSをi.v.注射し、一方、処置群には、0.9mgのラパマイシンに付着されたナノ担体(ナノ担体ID1、2または3)を40μgのKRYSTEXXAと組み合わせて注射した。全ての動物は、第0日から第28まで毎週、20μgのCpGと組み合わされた100μgのKRYSTEXXAのs.c.注射を後肢に受けた(d0、7、12、28)。対照動物は、抗KRYSTEXXAIgM抗体価により測定し得るKRYSTEXXAに対する免疫応答を現す。図10における結果は、動物を、同じ溶液中でKRYSTEXXAと併用投与された合成ナノ担体で処置することが、長期にわたりKRYSTEXXAへの抗体形成を防止することにおいて有効であったことを示している。処置動物は、ナノ担体なしでKRYSTEXXA+CpGを5回注射した後でも抗KRYSTEXXA応答を現さなかった。
【0266】
データは、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤をKRYSTEXXAと共に投与することが抗KRYSTEXXA抗体応答を低減し得ること、および、かかる低減が、ナノ担体処置の後に強いアジュバントと共にKRYSTEXXAを投与した後でも、そのまま続き得るということを示している。このことは、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤の併用投与によるタンパク質に対する望ましくない免疫応答の低減を実証している。最後に、これらの結果は、本明細書で提供されるプロトコルが確立されたことを支持する。
【0267】
例9:オボアルブミンおよびKLHに対する応答の評価
C57BL/6同齢(5~6週)雌の対照群に、週1回49日間(d0、7、14、20、28、35、42、49)、2.5μgの免疫原性形態の粒子状オボアルブミン(pOVA)を尾静脈においてi.v.注射し、2μgのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を後肢においてs.c.注射した。動物の他の群は、第0、7および14日に、pOVAおよびKLHを、同じ経路および量であるが、0.2mgのラパマイシンに付着されたナノ担体(ナノ担体ID1、2または3)と混和して受け、続いてpOVAを第20~42日の間(前と同量)注射した。対照動物は、抗OVAまたは抗KLHIgG抗体価により測定し得るOVAおよびKLHに対する強力な免疫応答を現す。図11に示された第54日の抗体価は、同じ溶液中でpOVAと併用投与された合成ナノ担体の3回の用量が、OVAへの抗体形成を長期にわたり低減および防止することにおいて有効であったが、KLH(別の場所にs.c.注射された)には有効ではなかったということを実証している。処置動物は、pOVA単独の5回の注射の後でも抗OVA応答を現さなかった。
【0268】
データは、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤のタンパク質との併用投与が、抗タンパク質抗体応答を低減し得るが、かかる応答は同じ経路で投与されたタンパク質に特異的であるということを示している。このことは、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤の併用投与によるタンパク質に対する望ましくない免疫応答の低減を実証している。最後に、これらの結果は、本明細書で提供されるプロトコルが確立されたことを支持する。
【0269】
例10:KLHに対する応答の評価
対照C57BL/6同齢(5~6週)雌に、200μgのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を、週1回63日間(d0、7、14、21、28、35、42、49、56、63)、尾静脈においてi.v.注射した。他の群は同様の注射を受けたが、第0、7、14および21日においては0.9mgのラパマイシンに付着されたナノ担体(ナノ担体ID1、2または3)をKLHの溶液と混和し、続いて第28日と第63日の間KLHを6回注射した(同量)。対照動物は、抗KLHIgG抗体価によって測定し得るKLHに対する強力な応答と共に、注射により誘導されるアナフィラキシー反応を現した。図12Aにおける結果は、表示された時点における全ての動物の血液中の抗体価を示しており、抗原の注射によって誘導されたアナフィラキシースコアを図12Bに提示する。KLHと併用投与された合成ナノ担体の4回の用量が、抗体形成およびアナフィラキシーの長期にわたる低減および防止において有効であった。事実、処置動物は、対照動物では応答を作製するのに大体充分であったKLH単独の4回の注射の後(第26日)でも、抗KLH応答を現さなかった。
【0270】
これらの結果は、本明細書で提供される組成物が、ある期間にわたりタンパク質と併用投与されたとき、抗体形成およびアナフィラキシーを長期にわたり低減または防止し得るということを示している。アナフィラキシースコアは、以下のように、3名の独立した観察者により決定された:0=徴候なし、l=嗜眠、2=嗜眠および直立不能(inability to right)、3=瀕死。
【0271】
これらの結果は、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤をKLHと共に投与することが、望ましくない抗KLH抗体応答を低減し得ると共に、免疫抑制剤ナノ担体組成物なしのKLHの投与からもたらされ得る望ましくないアナフィラキシー反応を除外し得るということを示している。このことは、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤の併用投与によるタンパク質に対する望ましくない免疫応答の低減を実証している。最後に、これらの結果は、本明細書で提供されるプロトコルが確立されたことを支持する。
【0272】
例11:関節炎の動物における抗HUMIRA免疫応答の評価
ヒト腫瘍壊死因子アルファ(huTNFαTg)を過剰発現するトランスジェニック動物は、出生から20週の間に進行性の関節リウマチを発症する。このプロセスは、完全ヒト抗ヒトTNFα抗体HUMIRA/アダリムマブを使用することによって防止し得る。しかしながら、HUMIRAの初期の治療用量(60μg)の反復投与は、治療効果を中和する抗薬物抗体形成(ADA)につながる。そして非常に高い用量のみが、治療効果を維持し免疫応答の中和に打ち克ち得る。例えば、かかるマウスモデルの例において炎症の最大阻害を果たすためには約200μgが必要であると考えられている(Binder et al., Arthritis & Rheumatism, Vol. 65(No. 3), March 2013, pp. 608-617)。
【0273】
同齢huTNFαTg5週齢雌性動物に、食塩水(PBS)または60μgのHUMIRAを毎週、または、HUMIRAと0.87mgのラパマイシンに付着されたナノ担体(ナノ担体ID1、2または3)との混合物を最初の7回の注射(第0、7、14、21、28、35、42日、5~12週齢)およびそれに続くHUMIRA単独(同量)の3回の注射(第49~63日、13~15週齢)のいずれかを、肩甲下領域においてs.c.注射した。図13Aにおける結果は、第21日における全ての動物の血液中の抗体価を示している。HUMIRAを受けなかった対照動物は、予期どおり抗HUMIRA力価を有さないが、一方HUMIRAのみを受けた対照動物では強力な抗体応答が観察され得る。それに対し、ナノ担体で処置された動物は、処置なしのHUMIRAの3回の注射後も完全に陰性のままである。
【0274】
これらの動物の肢のモニタリングにより、対照動物において10週齢で既に明白であった進行性疾患が明らかになった。HUMIRA単独で処置された動物は、疾患進行の有意な遮断を有したが、このレジメンにナノ担体を加えることで関節炎の徴候の出現が劇的に遮断された。ここでのスコアは、1)滑膜炎、関節浸出液および軟組織腫脹を表すもの、2)関節腔に成長して軟骨を破壊する炎症滑膜組織の増殖を包含するもの、3)広範囲におよぶ軟骨の喪失、関節の周縁部の周りの浸食および変形を示すもの、4)その機能的寿命を終わらせる関節の繊維または骨硬直を伴う疾患のほとんど最終段階であるもの、とした場合の、独立した4名の採点者の合計を表す。
【0275】
これらの結果は、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤をHUMIRAと共に投与することが望ましくない抗HUMIRA抗体応答を低減し得るということを示している。併用投与の効果はまた、HUMIRAの改善された有効性を実証しているさらに低減された関節炎スコアによっても証明される。このことは、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤の併用投与による治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答の低減だけでなく、改善された有効性をも実証している。このことは、本明細書で提供される本発明の併用投与では、治療剤のより高い用量は必要ではないということもまた実証する。
【0276】
さらに、同じ用量のHUMIRAでの関節炎スコアの低減のレベルに基づき、本明細書で提供される免疫抑制剤用量の併用投与なしで必要とされるであろうHUMIRAの量と比較して、改善された有効性を提供するであろう低減された量のHUMIRAもまた使用し得る。この例で使用されたHUMIRAの量は60μgであり、HUMIRAによる炎症の最大阻害を果たすために当分野で使用される約200μgの量(Binder et al., Arthritis & Rheumatism, Vol. 65(No. 3), March 2013, pp. 608-617)と比較して大幅に低減された、ということに注目することも重要である。最後に、これらの結果は、本明細書で提供されるプロトコルが確立されたことを支持する。
【0277】
例12:イブプロフェンを付着されたメソポーラスシリカナノ粒子(予言的)
メソポーラスSiOナノ粒子コアをゾル-ゲルプロセスを通して作製する。ヘキサデシルトリメチル-アンモニウムブロミド(CTAB)(0.5g)を脱イオン水(500mL)に溶解し、次いで2MのNaOH水溶液(3.5mL)をCTAB溶液に加える。この溶液を30min撹拌し、次いでテトラエトキシシラン(TEOS)(2.5mL)を溶液に加える。結果としてもたらされるゲルを80℃の温度で3h撹拌する。形成する白色の沈殿をろ過により捕捉し、次いで脱イオン水で洗浄して室温で乾燥する。次いでHClのエタノール性溶液中に終夜懸濁することによって残存する界面活性物質を粒子から抽出する。粒子をエタノールで洗浄し、遠心分離し、超音波下で再分散させる。この洗浄手順を追加で2回繰り返す。
【0278】
次いでSiOナノ粒子を(3-アミノプロピル)-トリエトキシシラン(APTMS)を使用してアミノ基で官能化する。これを行うために、粒子をエタノール(30mL)中に懸濁し、APTMS(50μl)を懸濁液に加える。懸濁液を室温で2h放置した後、エタノールを定期的に加えることによって体積を一定に保ちつつ4h沸騰させる。遠心分離および純粋なエタノールへの再分散による洗浄5サイクルにより、残存する反応物を除去する。
【0279】
別個の反応として、1~4nm径の金シードを作製する。まずこの反応に使用される全ての水を脱イオン化し、次いでガラスから蒸留する。水(45.5mL)を100mL丸底フラスコに加える。撹拌しながら、0.2Mの水性NaOH(1.5mL)、続いて1%のテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリド(THPC)水溶液(1.0mL)を加える。THPC溶液を加えた2分後に、少なくとも15min熟成された10mg/mL塩化金酸水溶液(2mL)を加える。水に対する透析を通して、金シードを精製する。
【0280】
コア-シェルナノ担体を形成するために、まず上記で形成されたアミノ官能化SiOナノ粒子を金シードと室温で2h混合する。金装飾SiO粒子を、遠心分離を通して収集し、塩化金酸および重炭酸カリウムの水溶液と混合して金シェルを形成する。次いで粒子を遠心分離および水への再分散により洗浄する。粒子をイブプロフェンナトリウムの溶液(1mg/L)中に72h懸濁させることによってイブプロフェンを添加する。次いでフリーのイブプロフェンを遠心分離および水への再分散によって粒子から洗浄する。
【0281】
例13:シクロスポリンAを含有するリポソーム(予言的)
リポソームは薄膜水和を使用して形成される。1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)(32μmol)、コレステロール(32μmol)およびシクロスポリンA(6.4μmol)を純粋なクロロホルム(3mL)中に溶解する。この脂質溶液を50mLの丸底フラスコに加え、ロータリーエバポレータ上で60℃の温度で溶媒を蒸発させる。次いでフラスコを窒素ガスでフラッシュし残存する溶媒を除去する。リン酸緩衝化食塩水(2mL)および5個のガラスビーズをフラスコに加え、60℃で1h振盪して懸濁液を形成することによって脂質膜を水和させる。懸濁液を小圧力管に移し60℃で30sパルスを4サイクル、各パルス間30秒の遅れで超音波処理する。次いで懸濁液を室温で2h静置し、完全に水和させる。リポソームを遠心分離とそれの続くフレッシュなリン酸緩衝化食塩水中への再懸濁により洗浄する。
【0282】
例14:ラパマイシンを含有する金ナノ担体(AuNC)の調製(予言的)
HS-PEG-ラパマイシンの調製:
PEG酸ジスルフィド(1.0eq)、ラパマイシン(2.0~2.5eq)、DCC(2.5eq)およびDMAP(3.0eq)の乾燥DMF溶液をrtで終夜撹拌する。不溶性ジシクロヘキシル尿素をろ過により除去し、ろ液をイソプロピルアルコール(IPA)に加えてPEG-ジスルイフィド-ジ-ラパマイシンエステルを沈殿させIPAで洗浄し乾燥させる。次いでポリマーをDMF中トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロリドで処置しPEGジスルフィドをチオールPEGラパマイシンエステル(HS-PEG-ラパマイシン)へと還元する。結果としてもたらされるポリマーを先に記載したようにしてIPAから沈殿させることによって回収して乾燥させて、H-NMRおよびGPCにより分析する。
【0283】
金NC(AuNC)の形成:
1mMのHAuClの水溶液500mLをコンデンサー付きの1L丸底フラスコ中で激しく撹拌しながら10min加熱還流する。次いで40mMのクエン酸三ナトリウムの溶液50mLを撹拌溶液に急速に加える。結果としてもたらされる濃ワインレッドの溶液を25~30min還流状態に保ち加熱を取り除いて溶液を室温まで冷却する。次いで溶液を、0.8μmメンブランフィルターを通してろ過しAuNC溶液を得る。AuNCは可視分光法および透過電子顕微鏡法を使用して特徴付けされる。AuNCは、約20nm径でシトラートによりキャッピングされ520nmにピーク吸収を有する。
【0284】
HS-PEG-ラパマイシンとのAuNC複合体:
HS-PEG-ラパマイシンの溶液(10mMのpH9.0炭酸緩衝剤中10μΜ)150μlを20nm径のシトラートキャッピングされた金ナノ担体(1.16nM)1mLに加え、2500:1のチオール:金モル比を生成する。混合物をアルゴン下、室温で1時間撹拌し、チオールを金ナノ担体上のシトラートと完全に交換させる。次いで表面にPEG-ラパマイシンを有するAuNCを12,000gで30分の遠心分離により精製する。上清を傾瀉した後、AuNC-S-PEG-ラパマイシンを含有するペレットを1×PBS緩衝剤でペレット洗浄する。次いで精製された金-PEG-ラパマイシンナノ担体をさらなる分析およびバイオアッセイのために好適な緩衝剤に再懸濁する。
【0285】
例15:ラパマイシンおよびオボアルブミンを含有するリポソーム(予言的)
リポソームは薄膜水和によって形成する。l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)(32μmol)、コレステロール(32μmol)およびラパマイシン(6.4μmol)を純粋なクロロホルム(3mL)中に溶解する。この脂質溶液を10mLのガラス管に加え、窒素ガス流下で溶媒を除去し、真空下で6hr乾燥した。過剰量のオボアルブミンを含有する、2.0mLの25mMのMOPS緩衝剤pH8.5による膜の水和によって多層ベシクルを得る。脂質膜が管表面からはがれるまで管をボルテックスする。多層ベシクルを単層へと破壊するために、10サイクルの凍結(液体窒素)および解凍(30℃水浴)を適用する。次いでサンプルを25mMのMOPS緩衝剤pH8.5中1mLに希釈する。結果としてもたらされるリポソームのサイズを、200nm孔ポリカーボネートフィルターにサンプルを10回通過させることによる押出成型により、均質化する。結果としてもたらされるリポソームを次いでさらなる分析およびバイオアッセイに使用する。
【0286】
例16:HUMIRAへの寛容原性応答は関節炎動物における中和性の抗HUMIRA応答の形成を防止する
材料
ラパマイシンは、TSZ CHEM(185 Wilson Street, Framingham, MA 01702)から購入した(製品コードR1017)。ラクチド:グリコリド比3:1および固有粘度0.75dL/gのPLGAを、SurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード7525 DLG 7A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.5DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biochemicals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)はEMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown、NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。
【0287】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGA、25mg/mLのPLA-PEG-OMeおよび12.5mg/mLのラパマイシン。この溶液は、PLGA、PLA-PEG-OMeおよびラパマイシンを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。溶液2:ポリビニルアルコール、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mL。
【0288】
水中油エマルションを使用してナノ担体を調製した。溶液1(1.0mL)および溶液2(3.0mL)を小圧力管中で組み合わせて、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することによってO/Wエマルションを調製した。O/Wエマルションを70mMのpH8リン酸緩衝溶液を含有するビーカーに加えて室温で2時間撹拌し、塩化メチレンを蒸発させてナノ担体を形成させた。ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移して75,600×gおよび4℃で50min遠心分離し、上清を除去してリン酸緩衝化食塩水中にペレットを再懸濁することによって、ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、約10mg/mLの最終ナノ担体分散液となるようにペレットをリン酸緩衝化食塩水中に再懸濁した。
【0289】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量はHPLC分析によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表8】
【0290】
ヒト腫瘍壊死因子アルファ(huTNFαTg)を過剰発現するトランスジェニック動物は、出生から20週の間に進行性の関節リウマチを発症する。このプロセスは、完全ヒト抗ヒトTNFα抗体アダリムマブまたはHUMIRAを使用することによって防止し得る。しかしながら、HUMIRAの初期の治療用量(60μg)の反復投与は、治療効果を中和する抗薬物抗体形成(ADA)につながる。
【0291】
同齢HuTNFαTg5週齢雌性動物に、食塩水(PBS)または60μgのHUMIRAを毎週またはHUMIRAと0.87mgの寛容原性ナノ粒子との混合物の最初の7回の注射(第0~42日、5~11週齢)とそれに続くHUMIRA単独(同量)の10回の毎週の注射(第49~107日、12~20週齢)、のどちらかを、肩甲下領域にs.c.注射した。プロトコルを図14に示す。
【0292】
図15(左パネル)における結果は、異なる時点における全ての動物の血液中の抗体価を示している。対照の偽処置動物は予期どおり力価を有さないが、一方HUMIRAだけを受けた動物においては強力な抗HUMIRA抗体応答を観察し得る。5週齢から11週齢までの寛容原性ナノ担体による処置は、寛容原性処置なしのHUMIRAの10回の注射(第12~20週)後であっても、抗HUMIRA力価を現すことへの完全な抵抗につながった。これらの動物の肢のモニタリングにより、10週齢で既に明白であった進行性疾患が明らかになった。HUMIRA単独は疾患進行の有意な遮断を有したが、このレジメンに寛容原性ナノ担体を加えることで、関節炎の徴候の出現が劇的に遮断された。ここでのスコアは、1)滑膜炎、関節浸出液および軟組織腫脹を表すもの、2)関節腔に成長して軟骨を破壊する炎症滑膜組織の増殖を包含するもの、3)広範囲におよぶ軟骨の喪失、関節の周縁部の周りの浸食および変形を示すもの、4)その機能的寿命を終わらせる関節の繊維または骨硬直を伴う疾患のほとんど最終段階であるもの、とした場合の、独立した4名の採点者の平均合計を表す。
【0293】
これらの結果は、本明細書で提供される組成物が、ある期間にわたりタンパク質と併用投与されたとき、生物学的治療剤への抗体形成を低減または防止し得、それゆえ長期にわたりその有効性および治療ウィンドウを改善するということを示している。これらの結果はまた、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤をHUMIRAと共に投与することが、望ましくない抗HUMIRA抗体応答を低減し得るということも示している。併用投与の効果はまた、HUMIRAの改善された有効性を実証するさらに低減された関節炎スコアによっても証明される。このことはまた、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤の併用投与による治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答の低減だけでなく、改善された有効性も実証している。
【0294】
このことはまた、本明細書で提供される本発明の併用投与では治療剤のより高い用量は必要ではないということも実証する。さらに、同じ用量のHUMIRAでの関節炎スコアの低減のレベルに基づいて、本明細書で提供される免疫抑制剤用量の併用投与なしで必要とされるであろうHUMIRAの量と比較して、改善された有効性を提供するであろう低減された量のHUMIRAもまた使用し得る。この例で使用されたHUMIRAの量は60μgであり、HUMIRAによる炎症の最大阻害を果たすために当分野で使用される約200μgの量(Binder et al., Arthritis & Rheumatism, Vol. 65(No. 3), March 2013, pp. 608-617)と比較して大幅に低減された、ということに注目することも重要である。最後に、これらの結果は、本明細書で提供されるプロトコルが確立されたことを支持する。
【0295】
例17:抗HUMIRA免疫応答の評価
材料
ラパマイシンは、TSZ CHEM(185 Wilson Street, Framingham, MA 01702)から購入した(製品コード# R1017)。ラクチド:グリコリド比3:1および固有粘度0.75dL/gのPLGAを、SurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード7525 DLG 7A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.5DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biochemicals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)はEMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown、NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。
【0296】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGA、25mg/mLのPLA-PEG-OMeおよび12.5mg/mLのラパマイシン。この溶液は、PLGA、PLA-PEG-OMeおよびラパマイシンを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。溶液2:ポリビニルアルコール、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mL。
【0297】
水中油エマルションを使用してナノ担体を調製した。溶液1(1.0mL)および溶液2(3.0mL)を小圧力管中で組み合わせて、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することによってO/Wエマルションを調製した。O/Wエマルションを70mMのpH8リン酸緩衝溶液を含有するビーカーに加えて室温で2時間撹拌し、塩化メチレンを蒸発させてナノ担体を形成させた。ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移して75,600×gおよび4℃で50min遠心分離し、上清を除去してリン酸緩衝化食塩水中にペレットを再懸濁することによって、ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、約10mg/mLの最終ナノ担体分散液となるようにペレットをリン酸緩衝化食塩水中に再懸濁した。
【0298】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量はHPLC分析によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表9】
【0299】
ラパマイシン含有ナノ担体を上記に記載した材料および方法を使用して発生させた。ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量はHPLC分析によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表10】
【0300】
関節炎動物における抗HUMIRA免疫および中和応答を評価した。ヒト腫瘍壊死因子アルファ(huTNFαTg)を過剰発現するトランスジェニック動物は、出生から20週の間に進行性の関節リウマチを発症する。このプロセスは、完全ヒト抗ヒトTNFα抗体アダリムマブまたはHUMIRAを使用することによって防止し得る。しかしながら、HUMIRAの初期の治療用量(60μg)の反復投与は、治療効果を中和する抗薬物抗体形成(ADA)につながる。より多い分量のHumira(200μg)を注射して、この拮抗性免疫応答を克服しHumiraの治療効果を可能にし得る。
【0301】
同齢HuTNFαTg5週齢雌性動物に、塩水(PBS)、または、60μgまたは200μgのHUMIRAを毎週(第5~10週)、あるいは、60μgのHumiraと0.87mgの寛容原性ナノ粒子との混合物の最初の3回の注射(5~7週齢)とそれに続くHUMIRA単独の3回の毎週の注射(同量)(8~10週齢)、のいずれかを、肩甲下領域にs.c.注射した。図17(左パネル)における結果は、異なる時点における全ての動物の血液中の抗体価を示している。対照の偽処置動物は、予期どおり力価を有さないが、一方、HUMIRAだけを受けた動物においては強力な抗HUMIRA抗体応答を観察し得る。5~7週齢のナノ担体による処置は、処置なしのHUMIRAの3回の注射(第8~10週)後であっても、抗HUMIRA力価を現すことへの完全な抵抗につながった。注目すべきことに、HUMIRAの3回の注射は、対照動物においては非常に高い力価につながった(第7週力価)が、ナノ担体で処置された動物における3回の同様の注射(合計で6回)は、力価を現すことに全く抵抗性であった(第10週)。図16は投与レジメンを例示している。
【0302】
これらの動物の肢のモニタリングにより、6週齢で既に明白であった進行性疾患が明らかになった。HUMIRA単独は、疾患進行の有意な遮断を有したが、このレジメンにナノ担体を加えることで関節炎の徴候の出現が劇的に遮断された。スコア(図17(右パネル))は、1)滑膜炎、関節浸出液および軟組織腫脹を表すもの、2)関節腔に成長し軟骨を破壊する炎症滑膜組織の増殖を包含するもの、3)広範囲におよぶ軟骨の喪失、関節の周縁部の周りの浸食および変形を示すもの、4)その機能的寿命を終わらせる関節の繊維または骨硬直を伴う疾患のほとんど最終段階であるもの、とした場合の独立した4名の採点者の平均合計を表す。
【0303】
これらの結果は、本明細書で提供される方法および組成物が、治療用タンパク質への抗体形成を低減または防止し得、その有効性を改善し得ることを示している。具体的には、上記のように、これらの結果は、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤をHUMIRAと共に投与することで、望ましくない抗HUMIRA抗体応答を低減し得ることを示している。併用投与の効果はまた、HUMIRAの改善された有効性を実証するさらに低減された関節炎スコアによっても証明される。このことはまた、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤の併用投与による治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答の低減だけでなく、改善された有効性も実証する。このことはまた、本明細書で提供される本発明の併用投与では、治療剤のより高い用量は必要ではないということも実証する。
【0304】
さらに、同じ用量のHUMIRAでの関節炎スコアの低減のレベルに基づいて、本明細書で提供される免疫抑制剤用量の併用投与なしで必要とされるであろうHUMIRAの量と比較して、改善された有効性を提供するであろう低減された量のHUMIRAもまた使用し得よう。この例で使用されたHUMIRAの量は60μgであり、HUMIRAによる炎症の最大阻害を果たすために当該分野において使用される約200μgの量(Binder et al., Arthritis & Rheumatism, Vol. 65(No. 3), March 2013, pp. 608-617)と比較して大幅に低減された、ということに注目することも重要である。最後に、これらの結果は、本明細書で提供されるプロトコルが確立されたことを支持する。
【0305】
例18:カプセル化ラパマイシンによるニワトリオボアルブミンに対する抗原特異的寛容原性応答
NP[ラパ]材料および方法
材料
ラパマイシンは、TSZ CHEM(185 Wilson Street, Framingham, MA 01702)から購入した(製品コード# R1017)。ラクチド:グリコリド比1:1および固有粘度0.24dL/gのPLGAを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.50DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100DL mPEG 5000 5CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)はEMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown、NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。Cellgro Phosphate-buffered saline 1X(PBS1×)は、Corning(9345 Discovery Blvd. Manassas, VA 20109)から購入した(製品コード21-040-CV)。
【0306】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:1mL当たり75mgのPLGA、1mL当たり25mgのPLA-PEG-Omeおよび1mL当たり12.5mgのラパマイシンをジクロロメタンに溶解することにより、ポリマーおよびラパマイシン混合物を調製した。溶液2:ポリビニルアルコールは、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mLに調製した。
【0307】
溶液1(1.0mL)および溶液2(3.0mL)を小ガラス圧力管中で組み合わせ、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することにより、O/Wエマルションを調製した。このO/Wエマルションを70mMのpH8リン酸緩衝溶液(60mL)を含有する開放ビーカーに加えた。3つの追加の同一のO/Wエマルションを調製し最初のものと同じビーカーに加えた。次いでこれらを室温で2時間撹拌し、ジクロロメタンを蒸発させ、ナノ担体を形成させた。次にナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600×gおよび4℃で35分間遠心分離し、上清を除去し、ペレットをPBS1×中に再懸濁することによって、ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをPBS1×中に再懸濁し、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。同一の製剤を別個のビーカー中で上記のとおり調製し、洗浄ステップ後に最初のものと組み合わせた。次いで混合されたナノ担体溶液をPallの1.2μmPESメンブランシリンジフィルター(部品番号4656))を使用してろ過し、-20℃で保管した。
【0308】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量はHPLC分析によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表11】
【0309】
NP[OVA]材料および方法
材料
オボアルブミンタンパク質は、Worthington Biochemical Corporation(730 Vassar Avenue、Lakewood、NJ 08701)から購入した(製品コードLS003054)。54%ラクチドおよび46%グリコリド含有量ならびに固有粘度0.24dL/gのPLGAを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび28,000DaのMw、0.38dL/gの固有粘度を有するPLA-PEGブロックコポリマーをLakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 4CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP、85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa.s、は、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350.1001)。Cellgro Phosphate-buffered saline 1X(PBS1×)は、Corning(9345 Discovery Blvd. Manassas, VA 20109)から購入した(製品コード21-040-CV)。
【0310】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:50mg/mLのオボアルブミンタンパク質は、10重量%のスクロースを有する10mMリン酸緩衝剤pH8中で調製した。溶液2:PLGAはジクロロメタン1mL当たり100mgのPLGAをドラフトチャンバー中で溶解することにより調製した。溶液3:PLA-PEG-OMeは、ジクロロメタン1mL当たり100mgのPLA-PEG-OMeをドラフトチャンバー中で溶解することにより調製した。溶液4:ポリビニルアルコール、100mMリン酸緩衝剤pH8中65mg/mL。
【0311】
まず溶液1~3を混合することにより一次(W1/O)エマルションを作製した。溶液1(0.2mL)、溶液2(0.75mL)および溶液3(0.25mL)を氷水浴中で>4分予冷した小ガラス圧力管中で組み合わせ、Branson Digital Sonifier 250を使用して、氷浴上で、50%振幅で40秒間超音波処理した。次いで溶液4(3mL)を一次エマルションに加え、ボルテックス混合して乳状分散液を作製し、次いでBranson Digital Sonifier 250を使用して、氷浴上で、30%振幅で60秒間超音波処理することによって二次(W1/O/W2)エマルションを形成した。この二次エマルションを、PBS1×(30mL)を含有する開放50mLビーカーに加えた。第2の同一のダブルエマルション製剤を上記のとおり調製し、最初のものと同じ50mLビーカーに加えた。2つの調製剤を室温で2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させ、懸濁液中のナノ担体を形成させた。ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600rcfで50分間回転し、上清を除去し、ペレットをPBS1×に再懸濁することによって、懸濁ナノ担体の一部分を洗浄した。この洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをPBS1×に再懸濁して、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。懸濁液は、使用まで、-20℃で凍結して保管した。
【0312】
【表12】
【0313】
NP[GSK1059615]材料および方法
材料
GSK1059615は、MedChem Express(11 Deer Park Drive, Suite 102D Monmouth Junction, NJ 08852)から購入した(製品コードHY- 12036)。ラクチド:グリコリド比1:1および固有粘度0.24dL/gのPLGAを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.26DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5K-E)。Cellgro Phosphate-buffered saline 1X pH 7.4(PBS1×)は、Corning(9345 Discovery Blvd. Manassas, VA 20109)から購入した(製品コード21-040-CV)。
【0314】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:PLGA(125mg)およびPLA-PEG-OMe(125mg)を10mLのアセトンに溶解した。溶液2:GSK1059615を、1mLのN-メチル-2-ピロリジノン(NMP)中10mgで調製した。
【0315】
溶液1(4mL)および溶液2(0.25mL)を小ガラス圧力管中で組み合わせ、この混合物を、20mLの超純水を含有する250mLの丸底フラスコに撹拌下、滴下して加えることにより、ナノ担体を調製した。このフラスコをロータリーエバポリーション装置に取り付け、減圧下でアセトンを除去した。ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600rcfおよび4℃で50分間遠心分離し、上清を除去し、ペレットをPBS1×中に再懸濁することによって、ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、ペレットをPBS1×に再懸濁して、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。洗浄したナノ担体溶液を、次いでPallの1.2μmPESメンブランシリンジフィルター(部品番号4656)を使用してろ過した。同一のナノ担体溶液を上記のとおりに調製し、ろ過ステップ後に最初のものと共に貯蔵した。この均質な懸濁液は、-20℃で凍結して保管した。
【0316】
ナノ担体のサイズは動的光散乱により決定した。ナノ担体中のGSK1059615の量は351nmにおけるUV吸収により決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表13】
【0317】
C57BL/6同齢(5~6週)雌性マウスに、-21日および-14日に、塩水(非処置)、1.2mgのラパマイシン含有ナノ担体(NP[ラパ])または8mgのGSK1059615添加ナノ担体(NP[GSK1059615])のいずれかと組み合わせた1.1mgの全オボアルブミン添加ナノ担体(NP[OVA])を、尾静脈においてi.v.注射した。
【0318】
第0日に、全ての動物に、2μgのCpGと混和された25μgの粒子状OVA(pOVA)を後肢においてs.c.注射し、続いて第7および14日に、25μgのpOVAだけを注射した。第21日に抗体価を測定した。いずれかの処置の非存在下では、動物は、抗OVAIgG抗体価によって測定され得るOVAに対する強力な免疫応答を現した。図18に示された第21日の抗体価は、同じ溶液中でカプセル化OVAと併用投与された合成寛容原性ナノ担体の2回の用量(NP[OVA]+NP[ラパ]またはNP[GSK1059615])が、OVA+CpGの1回の注射およびOVA単独の2回の注射後であっても、OVAへの抗体形成を低減するのに有効であったことを実証している。
【0319】
これらの結果は、カプセル化免疫抑制剤(ラパマイシンおよびGSK1059615など)が、タンパク質と併用送達されたときに、多重のチャレンジに対しかつ長期にわたり、そのタンパク質への抗体形成を防止し得るということを示している。このことは、2つの異なる種類の免疫抑制剤の併用投与による、タンパク質に対する望ましくない免疫応答の低減だけを実証するものではない。最後に、これらの結果は、本明細書で提供されるプロトコルが確立されたことを支持する。
【0320】
例19:低減された薬力学的有効用量を使用する本発明の方法(予言的)
一連の治験のために関節リウマチを患う三千二百名のヒト対象を採用する。パイロット用量範囲探索試験において、1,200名の対象を4つのアーム(プラセボおよび例3の合成ナノ担体の3つの異なる用量レベル)に分ける。4つのアームの各々の各対象は、プラセボまたは合成ナノ担体のいずれかと併用してHUMIRA40mgs.c.2ラウンドを受ける。あるアームにおいて抗HUMIRA抗体の平均レベルを最も低減する合成ナノ担体用量を、その試験の「免疫抑制剤用量」として宣言する。
【0321】
別のパイロット試験では、採用されたヒト対象を対象500名ずつの4つの試験アームに分ける。以下の表に従いプラセボ、HUMIRAおよび例3の合成ナノ担体を併用投与(試験アーム1を除く)するが、合成ナノ担体は免疫抑制剤用量で投与する。
【表14】
【0322】
目標の薬力学的効果(「PD効果」)を評価するが、この場合には、各試験アームの対象についての、ACR20、50および70応答の平均値とする。試験アーム1における対象のPD効果に注目し、試験アーム1におけるHUMIRA用量を任意にHUMIRAの薬力学的有効用量(「PD有効用量」)と定義する。
次いで試験アーム2~4のPD効果を評価し、PD効果が試験アーム1のPD効果から有意に異ならない最も低い用量を、HUMIRAの低減された薬力学的有効用量として宣言する。
【0323】
パイロット試験中に確立される情報の適用において、関節リウマチと診断されHUMIRAへの抗体を現すリスクのある対象に、HUMIRAの低減された薬力学的有効用量を、免疫抑制剤用量(例3の合成ナノ担体を含有する)と併用投与する。さらなる態様において、関節リウマチと診断されHUMIRAへの抗体を有するかまたは有することが予期されるヒト対象への、HUMIRA(商標)および例3の合成ナノ担体の併用投与をガイドするために、パイロット試験中に確立される情報を使用するプロトコルを調製する。次いでこのプロトコルを使用して、HUMIRAの低減された薬力学的有効用量と例3の合成ナノ担体とのヒト対象への併用投与をガイドする。
【0324】
例20:向上された薬力学的効果を実証する本発明の方法(予言的)
関節リウマチを患う三千七百名のヒト対象を一連の治験のために採用する。パイロット用量範囲探索試験では、1,200名の対象を4つのアーム(プラセボおよび例3の合成ナノ担体の3つの異なる用量レベル)に分ける。4つのアームの各々における各対象は、プラセボまたは合成ナノ担体のいずれかと併用して、HUMIRA40mgs.c.2ラウンドを受ける。あるアームにおいて抗HUMIRA抗体の平均レベルを最も低減する合成ナノ担体用量を、その試験のための「免疫抑制剤用量」として宣言する。
【0325】
別のパイロット試験では、採用されたヒト対象を、それぞれ1000名の対象を有する2つの実薬試験アームと500名の対象からなる1つのプラセボアームの3つの試験アームに分ける。以下の表に従いプラセボ、HUMIRAおよび例3の合成ナノ担体を併用投与(試験アーム1を除く)するが、合成ナノ担体は免疫抑制剤用量で投与する。
【表15】
【0326】
目標の薬力学的効果(「PD効果」)を評価するが、この場合には、各試験アームの対象についての、ACR20、50および70応答の平均値とする。試験アーム1における対象のPD効果に注目し、試験アーム2におけるPD効果と比較する。試験アーム2における免疫抑制剤用量との併用投与の際のHUMIRAの薬力学的効果の、試験アーム1において観察されたPD効果と比較した場合の、いずれかの向上に注目する。
【0327】
パイロット試験中に確立される情報の適用において、関節リウマチと診断されHUMIRAへの抗体を現すリスクのある対象に、HUMIRAの標準的40mg用量を、免疫抑制剤用量(例3の合成ナノ担体を含有する)と併用投与する。さらなる態様において、関節リウマチと診断されHUMIRAに対する抗体を有することが知られているかまたは有すると考えられているヒト対象への、HUMIRAおよび例3の合成ナノ担体の併用投与をガイドするために、パイロット試験中に確立される情報を使用するプロトコルを調製する。次いでこのプロトコルを使用して、HUMIRAと例3の合成ナノ担体とのヒト対象への併用投与をガイドする。併用投与に続くいずれかの向上された薬力学的効果を本明細書に開示したアプローチを使用して記録する。
【0328】
例21:向上された薬力学的効果を実証する本発明の方法(予言的)
化学治療に関係する貧血を患う三千二百名のヒト対象を一連の治験のために採用する。パイロット用量範囲探索試験では、米国特許出願2013/0115272(de Fougerolles et al.)に従いエリスロポエチンをコードする修飾mRNA(「mmRNA」)を調製する。一千二百名の対象を4つのアーム(プラセボおよび例3の合成ナノ担体の3つの異なる用量レベル)に分ける。4つのアームの各々の各対象は、プラセボまたは合成ナノ担体のいずれかと併用してmmRNAの治療用量を受ける。あるアームにおいて抗mmRNA抗体の平均レベルを最も低減する合成ナノ担体用量を、その試験の「免疫抑制剤用量」として宣言する。
【0329】
別のパイロット試験では、採用されたヒト対象を500人対象ずつの4つの試験アームに分ける。以下の表に従いプラセボ、mmRNAおよび例3の合成ナノ担体を併用投与する(試験アーム1を除く)が、合成ナノ担体は免疫抑制剤用量で投与する。
【表16】
【0330】
目標の薬力学的効果(「PD効果」)を評価するが、この場合には、各試験アームの対象についての、化学治療によって誘導される貧血応答の平均値である。試験アーム1における対象のPD効果に注目し、試験アーム1におけるmmRNA用量を任意にmmRNAの薬力学的有効用量(「PD有効用量」)と定義する。
【0331】
次いで試験アーム2~4のPD効果を評価し、PD効果が試験アーム1のPD効果から有意に異ならない最も低い用量を、mmRNAの低減された薬力学的有効用量として宣言する。パイロット試験中に確立される情報の適用において、化学治療関係貧血と診断されmmRNAへの抗体を現すリスクのある対象に、mmRNAの低減された薬力学的有効用量を、免疫抑制剤用量(例3の合成ナノ担体を含有する)と併用投与する。
【0332】
さらなる態様において、化学治療関係貧血と診断されmmRNAへの抗体を有することが知られているかまたは有すると考えられているヒト対象への、mmRNAおよび例3の合成ナノ担体の併用投与をガイドするために、パイロット試験中に確立される情報を使用するプロトコルを調製する。次いでこのプロトコルを使用して、mmRNAの低減された薬力学的有効用量と例3の合成ナノ担体との、ヒト対象への併用投与をガイドする。
【0333】
例22:多重投薬の期間中、生物学的薬物の有効性を維持するための方法
生物学的薬物は多くの場合、多重の用量の後、経時的に活性を喪失する。有効性の喪失の共通の原因は、ADAの形成である。ADAは、例えば、1)薬物のクリアランスを向上し、その結果多重の用量後の薬物のPKが単一の用量後の薬物のPKよりも実質的に低くなることにより、または2)薬物の活性を中和し、その結果多重の用量後の薬物の生物学的活性が単一の用量後の生物学的活性よりも実質的に低くなることにより、薬物有効性の喪失を引き起こし得る。多重投与の間、生物学的薬物の活性を維持することは望ましい。
【0334】
ヒトTNF-αを発現するトランスジェニックマウスは、5~20週齢の期間にわたり関節炎を自然発症する。マウスを、5~11週間、例16からの合成ナノ担体ありまたはなしで、HUMIRA(60μg/注射)で毎週処置した。パネルB(図19)は、最初の用量(第1日)後のHUMIRAの血清レベルを示している。HUMIRA単独で処置されたマウスでは、HUMIRAの6回の用量の後、HUMIRAの血液レベルはベースラインに近づき、第20週まで低いままである(パネルC、図19、黒四角)。それに対し、HUMIRAおよび合成ナノ担体で処置されたマウスは、最初の用量後と同様のHUMIRAの血清レベルを示し(パネルC、図19、青三角)、合成ナノ担体処置が、多重投与後にHUMIRAの有効血液レベルが維持されるのを可能にしたことを表示している。
【0335】
HUMIRA単独で処置されたマウスにおける血清HUMIRA血液レベルの低減は、ADAを現すことに起因され得る。第11週までに、HUMIRA単独で処置されたマウスは高い力価の抗薬物抗体を現した(パネルA、図19、黒四角記号)。それに対して合成ナノ担体で処置されたマウスは、抗HUMIRA抗体応答をほとんどまたは全く示さない(パネルA、図19、青三角)。多重投与によるHUMIRA血清レベルの低減の影響は、例16の上記のような関節炎疾患スコアにおいて明らかである(パネルD、図19)。HUMIRA単独で処置されたマウスは、第10から第20週までの関節炎スコアの最適未満の減衰を示す(パネルD、図19、黒四角を黒丸と比較のこと)。これに対して、合成ナノ担体で処置したマウスは、関節炎の強い阻害を示す(パネルC、図19、青三角)。
【0336】
これらの結果は、多重投与による薬物レベルの維持が薬物有効性のために重要であること、および、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤は、ADA応答を阻害することによって多重投与による薬物レベルを維持することを表示している。したがって、これらの結果は、本明細書で提供されるように治療用高分子を繰り返し免疫抑制剤と併用投与することの効果を実証している。結果はさらに、対象において望ましい治療効果および/または低減されたADA応答を遂行し得るプロトコルを決定する能力を実証している。
【0337】
例23:向上された薬力学的効果を実証する本発明の方法(予言的)
関節リウマチを患う三千七百名のヒト対象を一連の治験のために採用する。パイロット用量範囲探索試験において、1,200名の対象を4つのアーム(プラセボおよびナノ結晶性ラパマイシンの3つの異なる用量レベル)に分ける。4つのアームの各々の各対象は、プラセボまたはナノ結晶性ラパマイシンのいずれかを併用してHUMIRA40mgs.c.2ラウンドを受ける。あるアームにおいて抗HUMIRA抗体の平均レベルを最も低減するナノ結晶性ラパマイシン用量を、その試験の「免疫抑制剤用量」として宣言する。
【0338】
別のパイロット試験では、採用されたヒト対象を、それぞれ1000名の対象を有する2つの実薬試験アームと500名の対象からなる1つのプラセボアームとの3つの試験アームに分ける。以下の表に従ってプラセボ、HUMIRAおよびナノ結晶性ラパマイシンを併用投与(試験アーム1を除く)するが、合成ナノ担体は免疫抑制剤用量で投与する。
【表17】
【0339】
目標の薬力学的効果(「PD効果」)を評価するが、この場合には、各試験アームの対象についての、ACR20、50および70応答の平均値である。試験アーム1における対象のPD効果に注目し、試験アーム2におけるPD効果と比較する。試験アーム2における免疫抑制剤用量との併用投与の際のHUMIRAの薬力学的効果の、試験アーム1において観察されたPD効果と比較した場合の、いずれかの向上に注目する。
【0340】
パイロット試験中に確立される情報の適用において、関節リウマチと診断されHUMIRAへの抗体を現すリスクのある対象に、HUMIRAの標準的40mg用量を、免疫抑制剤用量(ナノ結晶性ラパマイシンを含有する)と併用投与する。さらなる態様において、関節リウマチと診断されHUMIRAへの抗体を有することが知られているかまたは有すると考えられているヒト対象への、HUMIRAおよびナノ結晶性ラパマイシンの併用投与をガイドするために、パイロット試験中に確立される情報を使用するプロトコルを調製する。次いでこのプロトコルを使用して、HUMIRAとナノ結晶性ラパマイシンとのヒト対象への併用投与をガイドする。併用投与に続くいずれかの向上された薬力学的効果を本明細書に開示したアプローチを使用して記録する。
【0341】
例24:向上された薬力学的効果を実証する本発明の方法(予言的)
化学治療に関係する貧血を患う三千二百名のヒト対象を一連の治験のために採用する。パイロット用量範囲探索試験では、米国特許出願2013/0115272(de Fougerolles et al.)に従いエリスロポエチンをコードする修飾mRNA(「mmRNA」)を調製する。一千二百名の対象を4つのアーム(プラセボおよびナノ結晶性ラパマイシンの3つの異なる用量レベル)に分ける。4つのアームの各々の各対象は、プラセボまたはナノ結晶性ラパマイシンのいずれかと併用してmmRNAの治療用量を受ける。あるアームにおいて抗mmRNA抗体の平均レベルを最も低減するナノ結晶性ラパマイシン用量を、その試験の「免疫抑制剤用量」として宣言する。
【0342】
別のパイロット試験では、採用されたヒト対象を500名対象ずつの4つの試験アームに分ける。以下の表に従いプラセボ、mmRNAおよび例3の合成ナノ担体を併用投与(試験アーム1を除く)するが、ナノ結晶性ラパマイシンは免疫抑制剤用量で投与する。
【表18】
【0343】
目標の薬力学的効果(「PD効果」)を評価するが、この場合には、各試験アームの対象についての、化学治療によって誘導される貧血応答の平均値である。試験アーム1における対象のPD効果に注目し、試験アーム1におけるmmRNA用量を任意にmmRNAの薬力学的有効用量(「PD有効用量」)と定義する。
【0344】
次いで試験アーム2~4のPD効果を評価し、PD効果が試験アーム1のPD効果から有意に異ならない最も低い用量を、mmRNAの低減された薬力学的有効用量として宣言する。パイロット試験中に確立される情報の適用において、化学治療関係貧血と診断されmmRNAへの抗体を現すリスクのある対象に、mmRNAの低減された薬力学的有効用量を、免疫抑制剤用量(ナノ結晶性ラパマイシンを含有する)と併用投与する。
【0345】
さらなる態様において、化学治療関係貧血と診断されmmRNAへの抗体を有することが知られているかまたは有すると考えられているヒト対象への、mmRNAおよびナノ結晶性ラパマイシンの併用投与をガイドするために、パイロット試験中に確立される情報を使用するプロトコルを調製する。次いでこのプロトコルを使用して、mmRNAの低減された薬力学的有効用量とナノ結晶性ラパマイシンとの、ヒト対象への併用投与をガイドする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19