(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】開閉体の開閉機構
(51)【国際特許分類】
E05F 11/04 20060101AFI20240516BHJP
E05F 13/00 20060101ALI20240516BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20240516BHJP
E05F 11/54 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
E05F11/04
E05F13/00
B60J5/10 K
E05F11/54 A
(21)【出願番号】P 2021171839
(22)【出願日】2021-10-20
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2020178348
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 有司
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-145087(JP,A)
【文献】特開2015-059037(JP,A)
【文献】特開2022-175893(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0182207(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-13/04,17/00
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1位置と第2位置との間で開閉される開閉体に連結された開閉体用ワイヤと、
前記開閉体用ワイヤを巻き取りおよび繰り出し可能な、所定の軸周りに回転可能な第1回転体と、
前記第1回転体に直接または間接的に接続され、所定の軸周りに回転可能な第2回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体との間に設けられ、前記第1回転体が前記第2回転体に対して所定の方向に相対回転することにより、付勢力が蓄積される付勢部材と、
前記第2回転体を回転させるように操作される操作部材と
を備えた開閉体の開閉機構であって、
前記開閉体用ワイヤは、前記開閉体が前記第2位置から前記第1位置へと移動する際に、前記第1回転体が第1方向に回転することによって前記第1回転体に巻き取られ、前記開閉体が前記第1位置から前記第2位置へと移動する際に、前記第1回転体が前記第1方向と反対の方向となる第2方向に回転することによって前記第1回転体から繰り出され、
前記開閉体が前記第2位置に位置するときに、前記操作部材によって前記第2回転体が前記第1方向と同方向に回転する場合に、前記第2回転体と前記第1回転体とが連動して第1方向に回転して、前記開閉体を前記第1位置へと移動させることが可能であり、
前記開閉体が前記第2位置に位置するときに、前記操作部材が操作されることなく、前記開閉体が前記第1位置へと移動する場合に、前記付勢部材の付勢力によって、前記第1回転体が前記第1方向へと前記第2回転体に対して相対回転して、前記開閉体用ワイヤを前記第1回転体に巻き取るように構成されている、
開閉体の開閉機構。
【請求項2】
前記開閉機構が、
前記開閉体が前記第1位置から前記第2位置へと移動して、前記第1回転体が前記第2方向に回転する際に、前記第2回転体が前記第2方向に回転することを規制する回転規制部を有し、
前記開閉体が前記第1位置から前記第2位置へと移動する際に、前記第1回転体が前記第2回転体に対して相対回転して、前記付勢部材に付勢力が蓄積されるように構成されている、請求項1に記載の開閉機構。
【請求項3】
前記第1回転体および前記第2回転体は、前記第1回転体および前記第2回転体の一方が他方に対して相対回転可能となる相対回転状態と、前記第1回転体および前記第2回転体が連動して回転する連動状態を可能にする連動機構を備え、
前記連動機構は、前記第1回転体および第2回転体の一方に設けられた係合部と、前記第1回転体および前記第2回転体の他方に設けられた案内部とを備え、
前記案内部は、前記第1回転体および前記第2回転体の回転方向に沿って延びる案内経路と、前記第1回転体および第2回転体の一方の回転に伴って移動する係合部と係合する被係合部を有している、請求項1または2に記載の開閉機構。
【請求項4】
前記連動機構は、
前記開閉体が前記第1位置から前記第2位置へと移動するときに、前記第1回転体が前記第2回転体に対して相対回転を許容するように、前記係合部が前記案内経路に沿って移動し、
前記開閉体が前記第2位置に位置し、かつ、前記操作部材が操作されて前記第2回転体が前記第1方向に回転するときに、前記第2回転体の前記第1方向の回転に連動して、前記第1回転体が前記第1方向に回転するように、前記係合部と前記被係合部とが回転方向で係合するように構成されている、請求項3に記載の開閉機構。
【請求項5】
前記連動機構は、
前記開閉体が前記操作部材の操作によらずに前記第2位置から前記第1位置へと移動するときに、前記第1回転体が前記第2回転体に対して相対回転を許容するように、前記係合部が前記案内経路に沿って移動するように構成されている、請求項3または4に記載の開閉機構。
【請求項6】
前記操作部材が、前記第2回転体に巻き付けられた操作用ワイヤであり、前記操作用ワイヤの一端は、前記第2回転体に取り付けられ、前記操作用ワイヤの他端は、前記操作用ワイヤを引き操作可能な操作部を有し、前記操作用ワイヤが引き操作されたときに、前記第2回転体が前記第1方向に回転する、請求項1~5のいずれか1項に記載の開閉機構。
【請求項7】
前記操作用ワイヤが引き操作されることにより、前記開閉体が前記第2位置から前記第1位置へと移動した後、前記付勢部材の付勢力によって、前記第2回転体が前記第1回転体に対して相対回転して、前記第2回転体から繰り出された前記操作用ワイヤが前記第2回転体に巻き取られる、請求項6に記載の開閉機構。
【請求項8】
前記付勢部材は、前記第1回転体の軸周りに巻回されたトーションばねであり、
前記開閉機構が、前記第1回転体の回転に制動力を加えるダンパー部材をさらに備え、
前記ダンパー部材は、前記トーションばねの内側の空間に配置され、
前記第1回転体および/または前記第2回転体は、前記ダンパー部材および前記トーションばねを少なくとも部分的に収容する収容凹部を有している、請求項1~7のいずれか1項に記載の開閉機構。
【請求項9】
前記開閉体が、水平軸周りに旋回して開閉される、車両の後部に設けられたテールゲートであり、
前記第1位置は、前記テールゲートが鉛直方向に起立した状態となる閉鎖位置であり、
前記第2位置は、前記テールゲートが前記閉鎖位置から旋回して倒れた状態となる開放位置である、請求項1~8のいずれか1項に記載の開閉機構。
【請求項10】
前記操作部材は、前記第2回転体の外周に巻き付けられる操作用ワイヤであり、
前記開閉機構は、さらに、前記第1回転体および前記第2回転体をカバーするカバー部材を備え、
前記カバー部材は壁部を有し、
前記壁部は、
前記第1回転体の回転時に、前記第1回転体の外周に巻き付けられる前記開閉体用ワイヤが前記第1回転体から脱落するのを防止するように、前記第1回転体の外周に近接した位置で、前記第1回転体の外周に沿って設けられた第1壁部、および
前記第2回転体の回転時に、前記第2回転体の外周に巻き付けられる前記操作用ワイヤが前記第2回転体から脱落するのを防止するように、前記第2回転体の外周に近接した位置で、前記第2回転体の外周に沿って設けられた第2壁部、の少なくともいずれか一方を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の開閉機構。
【請求項11】
前記開閉機構は、さらに、前記第1回転体および前記第2回転体をカバーするカバー部材を備え、
前記カバー部材は、前記開閉体用ワイヤを前記カバー部材の内部から外部へ導出するスリット状のワイヤ導出部を有し、
前記ワイヤ導出部は、前記ワイヤ導出部の長さ方向と直交する幅方向が、前記第1回転体の回転軸方向に沿うように形成され、
前記ワイヤ導出部は、前記第1回転体の回転に伴う前記開閉体用ワイヤの巻き取り時および繰り出し時における、前記開閉体用ワイヤの前記回転軸方向への揺れを抑制可能な幅を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の開閉機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は開閉体の開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、トラックなどの貨物自動車や、乗用車の一部には、車両の後部にテールゲートなどの開閉体が設けられている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1では開閉体を手動で押し上げることで開閉体が閉鎖される。特許文献1において、開閉体が手動で閉鎖された際に開閉体に接続されたコードがスプールに巻き取られるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、開閉体の閉鎖時に開閉体を直接手動で操作する必要がある。
【0005】
本発明は、シンプルな構成で、開閉体を手動等により直接操作することができ、かつ、開閉体を間接的に操作することも可能な開閉体の開閉機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の開閉体の開閉機構は、第1位置と第2位置との間で開閉される開閉体に連結された開閉体用ワイヤと、前記開閉体用ワイヤを巻き取りおよび繰り出し可能な、所定の軸周りに回転可能な第1回転体と、前記第1回転体に直接または間接的に接続され、所定の軸周りに回転可能な第2回転体と、前記第1回転体と前記第2回転体との間に設けられ、前記第1回転体が前記第2回転体に対して所定の方向に相対回転することにより、付勢力が蓄積される付勢部材と、前記第2回転体を回転させるように操作される操作部材とを備えた開閉体の開閉機構であって、前記開閉体用ワイヤは、前記開閉体が前記第2位置から前記第1位置へと移動する際に、前記第1回転体が第1方向に回転することによって前記第1回転体に巻き取られ、前記開閉体が前記第1位置から前記第2位置へと移動する際に、前記第1回転体が前記第1方向と反対の方向となる第2方向に回転することによって前記第1回転体から繰り出され、前記開閉体が前記第2位置に位置するときに、前記操作部材によって前記第2回転体が前記第1方向と同方向に回転する場合に、前記第2回転体と前記第1回転体とが連動して第1方向に回転して、前記開閉体を前記第1位置へと移動させることが可能であり、前記開閉体が前記第2位置に位置するときに、前記操作部材が操作されることなく、前記開閉体が前記第1位置へと移動する場合に、前記付勢部材の付勢力によって、前記第1回転体が前記第1方向へと前記第2回転体に対して相対回転して、前記開閉体用ワイヤを前記第1回転体に巻き取るように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シンプルな構成で、開閉体を手動等により直接操作することができ、かつ、開閉体を間接的に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の開閉体の開閉機構を車両に適用した場合の構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態の開閉体の開閉機構の構成の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す開閉体の開閉機構の分解斜視図であり、カバー部材を取り外した状態を示す図である。
【
図4】
図2に示す開閉体の開閉機構の分解斜視図であり、
図3に示す状態から第2回転体を取り外した状態を示す図である。
【
図5】
図2に示す開閉体の開閉機構の分解斜視図であり、
図4に示す状態から付勢部材を取り外した状態を示す図である。
【
図6】
図2に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、開閉体が、開閉体の初期状態である第1位置にある状態を示す図である。
【
図7】
図2に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、開閉体が第1位置から第2位置への移動を開始した状態を示す図である。
【
図8】
図2に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、開閉体が第1位置から第2位置への移動を終了した状態を示す図である。
【
図9】
図2に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、操作用ワイヤの引き操作により開閉体が第2位置から第1位置への移動を開始した状態を示す図である。
【
図10】
図2に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、操作用ワイヤの引き操作により開閉体が第2位置から第1位置への移動を終了した状態を示す図である。
【
図11】
図2に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、操作用ワイヤの戻し操作が開始された状態を示す図である。
【
図12】
図2に示す開閉体の開閉機構の動作の他の一例を示す図であり、操作用ワイヤを操作せずに開閉体が第2位置から第1位置への移動を開始した状態を示す図である。
【
図13】開閉体の開閉機構の変形例を示す分解斜視図である。
【
図14】
図13に示す第2回転体を第1回転体側から見た斜視図である。
【
図15】
図13に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、開閉体が第2位置にあるときの開閉機構を示す図である。
【
図16】
図13に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、開閉体が第1位置にあるときの開閉機構を示す図である。
【
図17】開閉体の開閉機構の他の変形例の構成を示す斜視図である。
【
図19】
図17に示す開閉体の開閉機構のカバー部材をA方向から見た矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の開閉体の開閉機構を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の開閉体の開閉機構は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態の開閉体の開閉機構を車両に適用した場合の構成の一例を示す図である。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態に係る開閉体7の開閉機構1(以下、開閉機構1とも称する)は、開閉体7を有する取付対象に取り付けられる。開閉体7を有する取付対象の種類は特に限定されるものではないが、たとえば、開閉体7を有する車両8である。
図1に示される車両は、たとえば、ワンボックスカーであるが、トラックなど他の種類の車両であってもよい。なお、開閉体7を有する取付対象は、車両8以外のものであってもよい。
【0012】
車両8における開閉体7の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、
図1に示されるように、車両8における出入口等の開口部81の少なくとも一部を開閉するように設けられたゲートである。当該ゲートは、たとえば、車両8の開口部81の少なくとも一部を開閉するように構成されたテールゲート(バックドア)である。なお、開閉体7は、テールゲート以外の部材であってもよい。
【0013】
本実施形態では、開口部81は、車両8の後部に設けられている。本実施形態では、開口部81は、ユーザ、車椅子等の介護用品、および荷物等が車両8に出入り可能な出入口である。また、本実施形態では、開口部81には、上側テールゲート71と、下側テールゲート72とが設けられている。上側テールゲート71は、開口部81における上側の縁部に水平方向に沿って設けられた回動軸を中心として、上下方向(矢印Da参照)に回動可能に設けられている。また、下側テールゲート72は、開口部81における下側の縁部に水平方向に沿って設けられた回動軸を中心として、上下方向(矢印Db参照)に回動可能に設けられている。開閉機構1は、下側テールゲート72を上下方向に回動させる。上側テールゲート71は、たとえば、上側テールゲート71を支持する伸縮機構15等の他の開閉機構により上下方向に回動する。
【0014】
なお、開閉機構1は、車両8以外の取付対象に設けられていてもよい。また、車両8における開閉体7は、横開きのゲートであってもよい。すなわち、車両8における開閉体7は、開口部81における右側または左側の縁部に鉛直方向に沿って設けられた回動軸を中心として、水平方向に回動可能に設けられるゲートであってもよい。
【0015】
開閉体7は、たとえば、車椅子等の介護用品を車両8等の取付対象へ積み込む作業および取付対象から積み下ろす作業を容易にするスロープ板として利用可能なものであることが好ましい。本実施形態では、開閉体7は、開状態においてスロープ板として利用することが可能である。
【0016】
車両8などの取付対象に設けられる開閉機構1の数は、特に限定されるものではないが、本実施形態では1つである。すなわち、
図1に示される例では、1つの開閉機構1により開閉体7に開閉動作を行わせている。しかしながら、これに限定されるものではなく、2つ以上の開閉機構1により開閉体7に開閉動作を行わせてもよい。また、開閉機構1を取り付ける位置は特に限定されるものではないが、
図1に示される例では、開閉機構1は、車両8の車室の内壁面、具体的には、側壁の内面に取り付けられている。
【0017】
以下、開閉機構1について、開閉体7が下側テールゲート72である場合を例にとって説明する。なお、下側テールゲート72は、あくまでも開閉体7の一例であって、開閉体7はこれに限られるものではない。開閉体7は、たとえば、トラックの荷台の後部に設けられたテールゲートであってもよい。
【0018】
図1に示される例では、開閉体7は、水平軸周りに旋回して開閉される、車両8の後部に設けられたテールゲートである。テールゲートは、第1位置P1と第2位置P2との間で揺動可能となっている。本実施形態では、第1位置P1は閉鎖位置であり、第2位置P2は開放位置である。ここで言う「閉鎖位置」は、開閉体7が開口部81の少なくとも一部を閉鎖する位置である。また、ここで言う「開放位置」は、開閉体7が開口部81の少なくとも一部を開放する位置である。なお、第1位置P1は開閉の過程の1つの位置であればよく、閉鎖位置でなくてもよい。また、第2位置P2は開閉の過程の1つの位置であればよく、開放位置でなくてもよい。たとえば、逆に、第1位置P1が開放位置で、第2位置P2が閉鎖位置であってもよい。
図1に示される例では、第1位置P1は、開閉体7が上側へ回動して開口部81の下部領域を閉鎖する位置である。また、第2位置P2は、開閉体7が下側へ回動して開口部81の下部領域を開放する位置である。より具体的には、第1位置P1は、テールゲートが、鉛直方向に起立した状態(閉状態)となる閉鎖位置である。第2位置P2は、テールゲートが閉鎖位置から旋回して倒れた状態(開状態)となる開放位置である。なお、第1位置P1は、テールゲートが、開口部81の下部領域を閉鎖するのであれば、鉛直方向に起立した状態でなくてもよい。
【0019】
本実施形態において、開閉体7は、板状の部材である。取付対象において開閉体7が設けられる位置は限定されない。本実施形態では、開閉体7は、車両8の後部に設けられた開口部81の下部領域を開閉可能に設けられている。
図1に示される例では、開閉体7は、開口部81における下側の縁部に水平方向に沿って設けられた回動軸を中心として、上下方向に揺動可能に設けられている。開閉体7は、下側へ回動した状態では、回動軸側から先端側に向かって斜め下向きとなるように傾斜している。開閉体7は、下側へ回動した状態ではスロープ板として利用可能となる。
【0020】
車椅子等の介護用品のユーザは、当該介護用品を開閉体7上で登坂させることにより、介護用品を車両8等に容易に積載することができる。また、開閉体7は、上側へ回動した状態では、回動軸側から先端側に向かって上向きとなるように配置され、たとえば、略鉛直方向に沿って配置される。下側テールゲート72をこのように上向きに配置することにより、下側テールゲート72は、開口部81の下部領域を閉じることができる。さらに、上側テールゲート71を下側へ回動させることにより、開口部81の全体を閉じることができる。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態の開閉体の開閉機構の構成の一例を示す斜視図である。
図3は、
図2に示す開閉体の開閉機構の分解斜視図であり、カバー部材を取り外した状態を示す図である。
図4は、
図2に示す開閉体の開閉機構の分解斜視図であり、
図3に示す状態から第2回転体を取り外した状態を示す図である。
図5は、
図2に示す開閉体の開閉機構の分解斜視図であり、
図4に示す状態から付勢部材を取り外した状態を示す図である。
【0022】
開閉機構1について詳細に説明する。本実施形態では、
図2~
図5に示されるように、開閉機構1は、開閉体用ワイヤ2と、第1回転体3と、第2回転体4と、付勢部材5と、操作部材6とを備えている。また、開閉機構1は、さらに、回転規制部10と、カバー部材12と、ベース部材16とを備えている。
【0023】
図1に示されるように、開閉体用ワイヤ2は、第1位置P1と第2位置P2との間で開閉される開閉体7に連結されている。本実施形態では、第1位置P1にある開閉体7は、回動軸側から先端側に向かって上向きとなるように配置され、たとえば、鉛直方向に沿って起立するように配置される。また、第2位置P2は、開閉体7が下側へ回動して開口部81の下部領域を開く位置である。第2位置P2にある開閉体7は、回動軸側から先端側に向かって斜め下向きとなるように傾斜している。第2位置P2にある開閉体7の傾斜角度は、車椅子等の介護用品のユーザが開閉体7上で当該介護用品を容易に登坂させることが可能な角度であることが好ましい。
【0024】
開閉体用ワイヤ2は、開閉体7が開閉される際に開閉体7を支持する。また、開閉体用ワイヤ2は、開閉体7が開状態であるときに開閉体7を開状態が維持されるように支持し、開閉体7が閉状態であるときに開閉体7を閉状態が維持されるように支持する。また、開閉体用ワイヤ2は、
図3に示されるように、一端が第1回転体3のワイヤエンド固定部36に接続された状態で、第1回転体3に巻き付けられる。また、開閉体用ワイヤ2の他端は、開閉体7に接続されている。第1回転体3は、開閉体7に開閉体用ワイヤ2を介して接続されており、開閉体7が動作するときに、開閉体7の動作に応じて回転する。
【0025】
図6は、
図2に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、開閉体が、開閉体の初期状態である第1位置にある状態を示す図である。
図2に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、開閉体が第1位置から第2位置への移動を開始した状態を示す図である。
図2に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、開閉体が第1位置から第2位置への移動を終了した状態を示す図である。なお、
図6~
図8は、開閉体7が第1位置P1(図示例では閉鎖位置)から第2位置P2(図示例では開放位置)へ移動するときの開閉機構1の状態を順に示している。
【0026】
図9は、
図2に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、操作用ワイヤの引き操作により開閉体が第2位置から第1位置への移動を開始した状態を示す図である。
図10は、
図2に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、操作用ワイヤの引き操作により開閉体が第2位置から第1位置への移動を終了した状態を示す図である。
図11は、
図2に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、操作用ワイヤの戻し操作が開始された状態を示す図である。なお、
図9~
図11は、開閉体7が第2位置P2(開放位置)から第1位置P1(閉鎖位置)へ移動するときの開閉機構1の状態を順に示している。
【0027】
本実施形態では、
図8~
図10に示されるように、開閉体7が第2位置P2から第1位置P1へと移動する際に、第1回転体3が第1方向D1に回転することによって、開閉体用ワイヤ2が第1回転体3に巻き取られる。また、
図6~
図8に示されるように、開閉体7が第1位置P1から第2位置P2へと移動する際に、第1回転体3が第1方向D1と反対の方向となる第2方向D2に回転することによって開閉体用ワイヤ2が第1回転体3から繰り出される。
【0028】
第1回転体3は、開閉体用ワイヤ2を巻き取りおよび繰り出し可能な、所定の軸(
図3に示す例ではシャフト9)周りに回転可能な部材である。本実施形態では、第1回転体3は、車両8の側壁に対して垂直な軸周りに回転可能に設けられている。第1回転体3の形状および構造は、開閉体用ワイヤ2を巻き取りおよび繰り出し可能であり、所定の軸周りに回転可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、第1回転体3は円板状のプーリである。本実施形態では、第1回転体3は、車両8の側壁に対して垂直な軸周りに回転可能に構成されている。本実施形態では、第1回転体3は、
図3~
図5に示されるように、開閉体用ワイヤ2の一端が接続されるワイヤエンド固定部36と、開閉体用ワイヤ2が巻回される巻回溝31とを有している。
【0029】
第2回転体4は、後述する操作部材6によって回転する際に、第1回転体3と連動して第1回転体3を回転させて開閉体7を移動させる。本実施形態では、
図8~
図10に示されるように、開閉体7が第2位置P2に位置するときに、操作部材6によって第2回転体4が第1方向D1と同方向(以下、単に第1方向D1という)に回転する場合に、第2回転体4と第1回転体3とが連動して第1方向D1に回転して、開閉体7を第1位置P1へと移動させることが可能となっている。
【0030】
また、第2回転体4は、詳細は後述するが、操作部材6が操作されることなく、開閉体7が第1位置P1へと移動する場合に、第1回転体3が第2回転体4に対して相対回転できるように構成されている。
【0031】
第2回転体4は、第1回転体3に直接または間接的に接続され、所定の軸(
図3に示す例ではシャフト9)周りに回転可能な部材である。本実施形態では、第2回転体4は、第1回転体3と同軸周りに回転する。第2回転体4の形状および構造は、第2回転体4が第1回転体3に直接または間接的に接続され、所定の軸周りに回転可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、第2回転体4は円板状のプーリであり、後述する操作用ワイヤ61が接続される。本実施形態では、第2回転体4は、
図3~
図5に示されるように、操作用ワイヤ61の一端が接続されるワイヤエンド固定部42と、操作用ワイヤ61が巻回される巻回溝41とを有している。
【0032】
上述したように、第1回転体3および第2回転体4は、互いに相対回転可能であるとともに、連動して回転することもできる。本実施形態では、第1回転体3および第2回転体4は、
図7および
図11に示されるように、第1回転体3および第2回転体4の一方が他方に対して相対回転可能となる相対回転状態と、
図9に示されるように、第1回転体3および第2回転体4が連動して回転する連動状態を可能にする連動機構11を備える。連動機構11は、
図9に示されるように、第1回転体3および第2回転体4の一方に設けられた係合部111と、第1回転体3および第2回転体4の他方に設けられた案内部112とを備える。
【0033】
本実施形態では、第1回転体3に案内部112が設けられ、第2回転体4に係合部111が設けられている。しかし、第1回転体3に係合部111が設けられ、第2回転体4に案内部112が設けられていてもよい。
【0034】
案内部112は、第1回転体3および第2回転体4が相対回転する際に、係合部111を案内するとともに、回転方向で所定の位置で、係合部111と係合して、第1回転体3および第2回転体4が連動して回転することを可能にする。本実施形態では、
図11に示されるように、案内部112は、第1回転体3および第2回転体4の回転方向に沿って延びる案内経路113と、第1回転体3および第2回転体4の一方の回転に伴って移動する係合部111と係合する被係合部115を有している。
【0035】
案内部112の形状および構造は、第1回転体3および第2回転体4が相対回転する際に、係合部111を案内するとともに、回転方向で所定の位置で、係合部111と係合して、第1回転体3および第2回転体4が連動して回転することが可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、案内部112は、
図9に示されるように、第1回転体3の周方向に沿ってC字状に延びる溝部であるが、係合部111が回転方向に沿って移動できる案内経路113を有していれば、C字状である必要はない。
【0036】
案内経路113は、回転方向に沿って案内経路113を係合部111が移動している間に第1回転体3と第2回転体4との相対回転を可能にする。本実施形態では、
図8、
図12、
図6に順に示されるように、開閉体7が操作部材6の操作によらずに第2位置P2から第1位置P1へと移動するときに、第1回転体3が第2回転体4に対して相対回転を許容するように、係合部111が案内経路113に沿って移動するように構成されている。
【0037】
詳細には、係合部111が被係合部115(以下、第1被係合部115とも称する)と係合した状態においては、第1回転体3が第2回転体4に対して第1方向D1に相対回転することは可能である。したがって、第1回転体3が第2回転体4に対して第1方向D1へ相対回転し、開閉体7を操作部材6の操作によらずに第2位置P2から第1位置P1へと移動させることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態では、
図6~
図8に順に示されるように、開閉体7が第1位置P1から第2位置P2へと移動するときに、第1回転体3が第2回転体4に対して相対回転を許容するように、係合部111が案内経路113に沿って移動するように構成されている。詳細には、係合部111が後述の第2被係合部114と係合した状態においては、第1回転体3が第2回転体4に対して第2方向D2に相対回転することは可能である。したがって、第1回転体3が第2回転体4に対して相対回転を許容するように、係合部111が案内経路113に沿って移動し、第2回転体4を回転させることなく、開閉体7を第1位置P1から第2位置P2へと移動させることが可能となる。
【0039】
案内経路113は、本実施形態では、回転方向に沿って延びる一対の側壁を有するC字状の溝によって構成されている。この場合、係合部111が安定して案内され得る。
【0040】
被係合部115は、係合部111と回転方向で係合することによって、第1回転体3および第2回転体4が連動して回転することを可能にする。本実施形態では、
図8~
図10に順に示されるように、開閉体7が第2位置P2に位置し、かつ、操作部材6が操作されて第2回転体4が第1方向D1に回転するときに、第2回転体4の第1方向D1の回転に連動して、第1回転体3が第1方向D1に回転するように、係合部111と被係合部115とが回転方向で係合するように構成されている。
【0041】
詳細には、係合部111が第1被係合部115と係合した状態において、第2回転体4が第1方向D1へ回転すると、第1回転体3は第2回転体4とともに第1方向D1へ回転する。したがって、開閉体7が第2位置P2に位置し、かつ、操作部材6が操作されて第2回転体4が第1方向D1に回転するときに、第2回転体4の第1方向D1の回転に連動して、第1回転体3が第1方向D1に回転し、開閉体7を操作部材6の操作によって第2位置P2から第1位置P1へと移動させることが可能となる。
【0042】
被係合部115は、第2回転体4が第1回転体3に対して第1方向D1へ回転したときに、回転方向に係合する壁部を有している。本実施形態では、被係合部115は、C字状の案内経路113の一端であるが、回転したときに、回転方向に係合することができれば、特に限定されない。
【0043】
本実施形態では、
図6に示されるように、案内経路113の回転方向で他方の端部に第2被係合部114が設けられている。この構成によれば、第1回転体3が第2回転体4に対して第1方向D1に相対回転して、係合部111が第2被係合部114と当接することにより、第1方向D1におけるそれ以上の相対回転を規制することができる。
【0044】
第2被係合部114は、第1回転体3が第2回転体4に対して第2方向D2へ回転したときに、回転方向に係合する壁部を有している。本実施形態では、第2被係合部114は、C字状の案内経路113の他端であるが、第1回転体3が第2回転体4に対して回転したときに、回転方向に係合することができれば、特に限定されない。
【0045】
係合部111は、第1回転体3および第4回転体4の相対回転時は案内経路113を移動し、被係合部115と係合することにより第1回転体3および第2回転体4を連動させる。本実施形態では、
図6~
図8に示されるように、開閉体7が第1位置P1から第2位置P2へと移動するときに、第1回転体3が第2回転体4に対して相対回転を許容するように、係合部111が案内経路113に沿って移動する。
【0046】
係合部111の構成は、第1回転体3および第4回転体4の相対回転時は案内経路113を移動し、被係合部115と係合することにより第1回転体3および第4回転体4を連動させる得る構成であれば、特に限定されるものではない。本実施形態では、係合部111は、
図4に示されるように、第2回転体4から第1回転体3側へ突出する柱状の突起である。係合部111は、たとえば円柱状に形成されている。係合部111は、第1回転体3の案内経路113により、第1回転体3の周方向に沿って案内される。また、係合部111は、第1回転体3が第2回転体4に対して第1方向D1へ相対回転して第2被係合部114に到達したときに、第2被係合部114と係合可能であり、第1回転体3が第2回転体4に対して第2方向D2へ相対回転して第1被係合部115に到達したときに、第1被係合部115と係合可能である。
【0047】
付勢部材5は、第1回転体3と第2回転体4との間に設けられる。付勢部材5は、たとえば、ばね等の弾性体である。付勢部材5は、第1回転体3および第2回転体4に回転方向の付勢力を加えることが可能である。付勢部材5は、本実施形態では、第1回転体3が第2回転体4に対して所定の方向に相対回転することにより、付勢力が蓄積される。
【0048】
本実施形態では、
図6~
図8に示されるように、開閉機構1は、開閉体7が第1位置P1から第2位置P2へと移動する際に、第1回転体3が第2回転体4に対して相対回転して、付勢部材5に付勢力が蓄積されるように構成されている。これにより、第1回転体3に第1方向D1の付勢力、第2回転体4に第2方向D2の付勢力が加わる。本実施形態では、開閉体7が第2位置P2へ移動したときに付勢力が蓄積されるため、開閉体7が第2位置P2から第1位置P1に移動する際に、第1回転体3への第1方向D1への付勢力によって、第1回転体3によって開閉体用ワイヤ2が巻き取られる。
【0049】
本実施形態では、
図6に示される状態では、開閉体7が第1位置P1に位置している状態では、付勢部材5は自然状態または付勢力が弱い状態である。このような状態から、第1回転体3が第2回転体4に対して相対回転すると、第1回転体3が第2回転体4に対して相対回転したときの回転角度に応じて付勢部材5が変位し、その変位に応じた付勢力が付勢部材5に生じる。詳細には、第1回転体3が第2回転体4に対して相対回転したときの回転方向(
図3に示される例では第2方向D2)とは反対の方向(
図3に示される例では第1方向D1)に第1回転体3を回転させようとする付勢力が生じる。これにより、第1回転体3には、第1方向D1、第2回転体4には、第2方向D2への付勢力が生じる。
【0050】
また、本実施形態では、
図8、
図12および
図6に順に示されるように、開閉体7が第2位置P2に位置するときに、操作部材6が操作されることなく、開閉体7が第1位置P1へと移動する場合に、付勢部材5の付勢力によって、第1回転体3が第1方向D1へと第2回転体4に対して相対回転して、開閉体用ワイヤ2を第1回転体3に巻き取るように構成されている。
【0051】
本実施形態では、開閉体7が第2位置P2に位置する状態では、第2回転体4に対して第1回転体3を第1方向D1に相対回転させようとする付勢力が付勢部材5に生じている。したがって、操作部材6を操作することなく、たとえば手動操作などによって、開閉体7を第1位置P1へ移動させる際に、付勢部材5の付勢力によって、開閉体用ワイヤ2が第1回転体3に巻き取られる。
【0052】
本実施形態では、上述したように、開閉体7が第2位置P2に位置するときに、操作部材6によって第2回転体4が第1方向D1と同方向に回転する場合に、第2回転体4と第1回転体3とが連動して第1方向D1に回転して、開閉体7を第1位置P1へと移動させることが可能である。したがって、操作部材6の操作によって、第1回転体3と第2回転体4とを連動させて回転させ、開閉体7を第2位置P2から第1位置P1へと移動させることができる。また、開閉体7が第2位置P2に位置するときに、操作部材6が操作されることなく、開閉体7が第1位置P1へと移動する場合に、付勢部材5の付勢力によって、第1回転体3が第1方向D1へと第2回転体4に対して相対回転して、開閉体用ワイヤ2を第1回転体3に巻き取るように構成されている。これにより、操作部材6によらずに、たとえば手動等で、直接開閉体7を第1位置P1へと移動させるときに、第1回転体3と第2回転体4とを相対回転させて、第2回転体4は回転させずに、付勢部材5の付勢力によって、開閉体用ワイヤ2を第1回転体3に巻き取ることを可能にしている。
【0053】
以上のように、付勢部材5の付勢力によって開閉体用ワイヤ2を第1回転体3に巻き取ることによって、開閉体7を手動等により直接操作することができる。さらに、操作部材6を操作したときに、第1回転体3と第2回転体4とを連動させて、開閉体7を第1位置P1へと移動させることができるので、開閉体7を手で直接操作しなくても、操作部材6の操作によって間接的に開閉体7を操作することができる。したがって、シンプルな構成で、開閉体7を手動等により直接操作することができ、かつ、開閉体7を間接的に操作することができる。
【0054】
上述のように、付勢部材5の種類は特に限定されるものではないが、本実施形態ではトーションばねである。付勢部材5であるトーションばねは、本実施形態では、
図4に示されるように、第1回転体3の軸(
図4に示す例ではシャフト9)周りに巻回された状態で配置される。トーションばねの一端は第1回転体3に固定され、トーションばねの他端は第2回転体4に固定される。なお、第1回転体3が第2回転体4に対して所定の方向に相対回転することにより、付勢部材5に付勢力が蓄積されるのであれば、付勢部材5は、たとえば、渦巻きばね(ぜんまいばね)等の他の種類のばねであってもよい。
【0055】
操作部材6は、第2回転体4を回転させるように操作される部材である。操作部材6の構成は、特に限定されるものではないが、たとえば、第2回転体4に巻き付けられた操作用ワイヤ61である。本実施形態では、
図6に示されるように、操作用ワイヤ61の一端は、第2回転体4に取り付けられ、操作用ワイヤ61の他端は、操作用ワイヤ61を引き操作可能な操作部62を有する。操作用ワイヤ61が引き操作されたときに、第2回転体4が第1方向D1に回転する。本実施形態では、操作用ワイヤ61が引き操作され、第2回転体4が第1方向D1に回転することにより、開閉体7が第2位置P2から第1位置P1へと移動する。
【0056】
操作用ワイヤ61は、第2回転体4に巻き付けられた状態で、操作部62によって引き操作されることにより、第2回転体4に回転させることが可能な部材である。
【0057】
操作部62は、ユーザが操作することが可能な部分または部材である。本実施形態では、操作部62は、ワイヤとは異なる材料で構成された、握り部を有する把手部材である。なお、操作部62は、ユーザにより操作することが可能であればよく、たとえば、操作用ワイヤ61の他端側部分をループ状に巻くことにより構成された、ループ状部分であってもよい。
【0058】
なお、操作部材6の構成は、操作用ワイヤ61を有する上記の例に限定されず、たとえば、第2回転体4を直接的に回転させ得るように第2回転体4に取り付けられたハンドルであってもよい。ユーザが当該ハンドルを把持してハンドルを回すことにより、第2回転体4を回転させることができる。
【0059】
本実施形態では、操作用ワイヤ61が引き操作されることにより、第2回転体4が第1方向D1へ回転すると、連動機構11により、第1回転体3は第4回転体4とともに第1方向D1へ回転する。したがって、操作用ワイヤ61が引き操作されることにより、開閉体7は第2位置P2から第1位置P1へと移動することが可能となる。
【0060】
本実施形態では、操作用ケーブル61が引き操作されることにより、開閉体7が第2位置P2から第1位置P1へと移動した後、付勢部材5の付勢力によって、第2回転体4が第1回転体3に対して第2方向D2へ相対回転して、第2回転体4から繰り出された操作用ワイヤ61が第2回転体4に巻き取られる。
【0061】
本実施形態では、開閉体7が第2位置P2から第1位置P1へと移動した状態では、開閉体7を第1位置P1から第2位置P2へ移動させたときに付勢部材5に生じた付勢力(第2回転体4を第2方向D2へ回転させる力)が保持されている。したがって、ユーザが操作部62を手放すこと(戻し操作)により、付勢部材5の付勢力によって第2回転体4を第2方向D2へ回転し、この回転に伴い、操作用ワイヤ61が第2回転体4に巻き取られる。この構成によれば、付勢部材5の付勢力によって操作用ワイヤ61が巻き取られるため、操作用ワイヤ61を弛ませることなく、容易かつ自動的に操作用ワイヤ61を巻き取ることができる。
【0062】
回転規制部10は、開閉体7が第1位置P1から第2位置P2へと移動して、第1回転体3が第2方向D2に回転する際に、第2回転体4が第2方向に回転することを規制する。具体的には、回転規制部10は、第1回転体3が第2回転体4に対して相対回転する際に、第2回転体4が第2方向D2に第1回転体3と共回りすることを防ぐように構成されている。また、回転規制部10は、たとえば、開閉体7が第1位置P1から第2位置P2へと移動したときに、第2回転体4に開閉体用ワイヤ2が巻き付き過ぎて、カバー部材12内に操作部材6のすべてが入り込んでしまうといった不都合が生じることを規制することができる。
【0063】
回転規制部10の構成は特に限定されるものではないが、回転規制部材10は、たとえば、操作用ワイヤ61を挿通できる一方で操作部62を挿通できない大きさの開口部を有し、開閉体7が第1位置P1から第2位置P2へと移動したときに、操作部62が当該開口部の縁部に当接して操作部62の通過を規制するような部材とされ得る。なお、回転規制部10の構成はこれに限定されるものではなく、たとえば、カバー部材12において、操作用ワイヤ61は通過できるが、操作部62は通過できない大きさの開口部121を形成して、開口部121の周縁を回転規制部10としてもよい。
【0064】
カバー部材12は、開閉機構1の他の構成要素をカバーする部材である。本実施形態では、カバー部材12は、第1回転体3、第2回転体4および付勢部材5を収容する。また、本実施形態では、カバー部材12は、車体に固定されたベース部材16に着脱可能に取り付けられている。また、カバー部材12には、開閉体用ワイヤ2および操作用ワイヤ61を挿通可能な開口部121(
図2および
図3参照)が形成されている。カバー部材12の形状は、第1回転体3、第2回転体4および付勢部材5を収容できる形状であれば特に限定されない。
【0065】
ベース部材16は、開閉機構1における他の部材の台座となる部材である。本実施形態では、ベース部材16は、ビス等の固定部材により、車体に固定されている。ベース部材16には、シャフト9が突設されている。第1回転体3および第2回転体4は、シャフト9に回転可能に支持されている。
【0066】
次に、開閉装置1の動作の流れについて、
図6~
図12を参照しつつ説明する。ここでは、開閉体7が閉鎖位置となる第1位置P1にあり、かつ、操作部材6が操作されていない状態を初期状態(
図1において、開閉体7が二点鎖線の位置にある状態)であるものとして説明を行う。なお、以下の動作説明はあくまで一例であり、以下の説明によって本発明が限定されるものではない。なお、以下では、閉鎖位置となる第1位置P1を閉鎖位置P1と呼び、開放位置となる第2位置P2を開放位置P2と呼ぶ。
【0067】
まず、
図6に示されるように、初期状態では、開閉体7が閉鎖位置P1にあり、かつ、操作部62が操作されておらず、操作部62が回転規制部10に当接している。初期状態では、
図6に示されるように、係合部111は、案内経路113の第2被係合部114側に位置しており、第2回転体4は、第1回転体3に対して第1方向D1に回転可能となっている。一方、第2回転体4は、操作部62が回転規制部10と係合していることにより第2方向D2には回転できない。また、第1回転体3は、第2回転体4に対して、第1方向D1への相対回転は規制されている一方で、第2方向D2への相対回転は可能となっている。なお、開閉体7は、閉鎖位置P1で車両に対して図示しないロック機構によってロックされている。
【0068】
次に、
図7に示されるように、ユーザが開閉体7を開放位置P2に向かって移動させると、開閉体7の動きに応じて、開閉体用ワイヤ2が第1回転体3から繰り出される。これに伴い、第1回転体3が第2回転体4に対して第2方向D2へ相対回転する(太い矢印参照)。第1回転体3の相対回転に伴い、係合部111は、案内経路113に沿って第2被係合部114から離れていく。また、第1回転体3の第2回転体4に対する相対回転に伴い、第1回転体3と第2回転体4との間に設けられた付勢部材5には付勢力が蓄積されていく。当該付勢力は、上述のように、第2回転体4に対して第1回転体3を第1方向D1に回転させようとする力であるとともに、第1回転体3に対して第2回転体4を第2方向D2に回転させようとする力である。なお、開閉体7の開放位置P2への移動は、ユーザが開閉体7を開放位置P2へ向かって押圧することにより行われてもよいし、開閉体7の自重によって自動的に行われてもよいし、または、ユーザによる押圧力および開閉体7の自重の双方によって行ってもよい。
【0069】
次に、
図8に示されるように、ユーザが開閉体7を開放位置P2まで移動させると、係合部111が第1回転体3の第1被係合部115と係合する。第1被係合部115と係合部111とが係合した状態では、第1回転体3は、第2回転体4に対して、第2方向D2への相対回転は規制されている一方で、第1方向D1への相対回転は可能となっている。また、第2回転体4は、回転規制部10により第2方向D2への回転は規制されている一方で、第1方向D1へは、第1回転体3とともに連動して回転可能となっている。開閉体7が開放位置P2に位置している状態において、たとえば、車椅子等の介護用品を開閉体7上で登坂または降坂させることにより、当該介護用品を車両8などの取付対象に容易に積み込んだり、または当該取付対象から容易に積み下ろしたりすることができる。
【0070】
図8に示される状態の後、
図9に示されるように、ユーザが操作部62を把持して操作用ワイヤ61を引っ張ると、第2回転体4が第1方向D1へ回転し、これに伴い、第1回転体3も第1方向D1へ回転する。すなわち、
図8および
図9に示されるように、係合部111と第1被係合部115とが係合している状態で、第2回転体4を第1方向D1へ回転させることにより、第2回転体4と第1回転体3とが連動して第1方向D1へ共回りする(
図9における2つの太い矢印を参照)。第1回転体3の第1方向D1への回転に伴い、開閉体用ワイヤ2が第1回転体3に巻き取られていくため、開閉体7は閉鎖位置P1へ近づくように回動する。
【0071】
次に、
図10に示されるように、開閉体7を閉鎖位置P1まで移動させると、係合部111が第1回転体3の第1被係合部115と係合した状態で、第1回転体3および第2回転体4の回転が停止する。
図10に示される状態では、ユーザは操作部62を引っ張った状態で保持している。このため、付勢部材5に生じた付勢力も保持されている。
【0072】
次に、
図11に示されるように、ユーザが操作部62を手放すと、付勢部材5の付勢力により、第2回転体4は、第1回転体3に対して第2方向D2へ相対回転する(太い矢印を参照)。このとき、第2回転体4の第2方向D2への回転に伴って、係合部111は、案内経路113に沿って移動し、第1回転体3には、第2方向D2への力が加わっていないため、第1回転体3は回転しない。これにより、操作用ワイヤ61は、付勢部材5の付勢力によって第2回転体4に巻き取られていく。そして、操作部6が回転規制部10に当接する位置まで操作用ワイヤ61が巻き取られることにより、第2回転体4の回転が停止する。これにより、開閉機構1は、
図6に示される初期状態に戻る。
【0073】
以上、
図6~
図11を参照しながら、操作用ワイヤ61を引き操作することにより開閉体7を開放位置P2から閉鎖位置P1に移動させる例について説明したが、操作用ワイヤ61を引き操作することなく、開閉体7を開放位置P2から閉鎖位置P1に移動させることも可能である。次に、操作用ワイヤ61を引き操作することなく、開閉体7を第2位置P2から第1位置P1に移動させる例について、
図12を参照しつつ説明する。
【0074】
図12は、
図2に示す開閉体の開閉機構の動作の他の一例を示す図であり、操作用ワイヤを操作せずに開閉体が第2位置から第1位置への移動を開始した状態を示す図である。なお、
図12は、
図8に示される状態より後の状態を示している。
【0075】
ユーザは、開閉体7が開放位置P2に位置している状態(
図8参照)において、操作用ワイヤ61を引き操作せずに、手動等によって、開閉体7を閉鎖位置P1に向かって押圧する。開閉体7が開放位置P2に位置する状態では、上述したように、第2回転体4に対して第1回転体3を第1方向D1に相対回転させようとする付勢力が付勢部材5に生じている。したがって、
図12に示されるように、操作部材6を操作することなく、開閉体7を閉鎖位置P1へと移動させると、付勢部材5の付勢力によって、第1回転体3を第1方向D1へと第2回転体4に対して相対回転させて(太い矢印を参照)、開閉体用ワイヤ2が第1回転体3に巻き取られる。また、付勢部材5の付勢力によって、第1回転体3が第1方向D1へと回転されることにより、開閉体用ワイヤ2が弛むことなく、第1回転体3に容易かつ自動的に巻き取られる。
【0076】
このように、本実施形態に係る開閉機構1は、開閉体7が第2位置P2に位置するときに、操作部材6が操作されることによって開閉体7を第1位置P1へと移動させることが可能であり、また、開閉体7が第2位置P2に位置するときに、操作部材6が操作されることなく、開閉体用ワイヤ2を付勢部材5の付勢力を用いて第1回転体3に巻き取るように構成されている。したがって、シンプルな構成で、開閉体7を手動等により直接操作することができ、かつ、開閉体7を間接的に操作することが可能となる。また、開閉体7を開状態から閉状態に移行させる(開放位置P2から閉鎖位置P1へ移動させる)際に、開閉体用ワイヤ2に弛みが生じるのを抑制しながら、第1回転体3で開閉体用ワイヤ2を巻き取ることができる。
【0077】
なお、上記実施形態の変形例として、
図13および
図14に示されるように、上記実施形態から形状が変更された第1回転体3A、第2回転体4A、付勢部材5Aおよびシャフト9Aを備える構成であってもよい。また、ダンパー部材13が追加されてもよい。
【0078】
図13は、開閉体の開閉機構の変形例を示す分解斜視図である。
図14は、
図13に示す第2回転体を第1回転体側から見た斜視図である。以下、変形例に係る開閉体の開閉機構1Aについて、
図13および
図14を参照しつつ説明する。なお、以下では、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、上述した実施形態と共通する構成についての説明は省略する。なお、本変形例には、上述した実施形態の構成を適用することができ、本変形例の構成を、上述した実施形態に適用することもできる。
【0079】
図13に示されるように、開閉体の開閉機構1A(以下、開閉機構1Aとも称する)は、シャフト9Aと、第1回転体3Aと、ダンパー部材13と、付勢部材5Aと、第2回転体4Aとを備えている。開閉機構1Aは、第1回転体3Aと、ダンパー部材13と、付勢部材5Aと、第2回転体4Aとが、この順序で並んだ状態でシャフト9Aが挿通されて組み合わされることにより構成される。
【0080】
第1回転体3Aは、開閉体用ワイヤ2を巻き取りおよび繰り出し可能な、所定の軸(
図13に示す例ではシャフト9A)周りに回転可能な部材である。本変形例では、第1回転体3Aは勾玉状の外周(周囲)32を有する板状のプーリである。第1回転体3Aの外周32は、開閉体用ワイヤ2が巻き付けられ得る巻き付け部321と、開閉体用ワイヤ2が巻き付けられ得ない非巻き付け部322とを有する。巻き付け部321には、開閉体用ワイヤ2が巻き付けられる、つまり開閉体用ワイヤ2を案内する巻回溝31Aが形成されている。巻回溝31Aの深さは、巻き付け部321の全体において一定である。
【0081】
本変形例では、巻き付け部321の一方の端部33と非巻き付け部322の一方の端部とはつながっており、巻き付け部321の他方の端部34と非巻き付け部322の他方の端部とはつながっている。また、本変形例では、巻き付け部321は外側に凸の曲線的な形状を有し、非巻き付け部は直線的な形状を有している。より詳しくは、巻き付け部321は、一方の端部33から他方の端部34にかけて曲率が次第に大きくなっている。すなわち、巻き付け部321は、一方の端部33において曲率が最小であり、他方の端部34において曲率が最大となっている。
【0082】
また、第1回転体3Aは、シャフト9Aが位置する回転の中心軸C(一点鎖線で示す仮想の軸)から巻き付け部321までの距離Dが、巻き付け部321の周方向に沿って次第に変化するように構成されている。詳細には、距離Dは、巻き付け部321の一方の端部33において最大であり、他方の端部34において最小となっている。そして、距離Dは、巻き付け部321の一方の端部33から他方の端部34にかけて次第に小さくなっている。また、開閉体用ワイヤ2の一端が取り付けられる取付部35は、巻き付け部321の他方の端部34またはその近傍に設けられている。
【0083】
図13に示されるように、第2回転体4Aは、第1回転体3Aに直接または間接的に接続され、所定の軸(
図3に示す例ではシャフト9)周りに回転可能な部材である。本変形例では、
図13および
図14に示されるように、第2回転体4Aは円板状のプーリである。第2回転体4Aの外周には、操作部材6の操作用ワイヤ61を案内する巻回溝41Aが形成されている。第2回転体4Aの半径dは一定であり、巻回溝41Aの深さも一定である。
【0084】
第1回転体3Aおよび第2回転体4Aは、第1回転体3Aおよび第2回転体4Aの一方が他方に対して相対回転可能となる相対回転状態と、第1回転体3Aおよび第2回転体4Aが連動して回転する連動状態を可能にする連動機構11Aを備える。
【0085】
連動機構11Aは、第1回転体3Aおよび第2回転体4Aの一方に設けられた係合部111Aと、第1回転体3Aおよび第2回転体4Aの他方に設けられた案内部112Aとを備える。
【0086】
本変形例では、第1回転体3Aにおける第2回転体4A側の面に係合部111が設けられ、第2回転体4Aにおける第1回転体3側の面に案内部112Aが形成されている。案内部112Aの構成は、特に限定されるものではないが、本変形例では、第2回転体4Aの周方向に沿ってC字状に延びる溝部である。なお、逆に、第2回転体4Aに係合部111Aが設けられ、第1回転体3Aに案内部112Aが設けられていてもよい。
【0087】
本変形例では、
図14に示されるように、案内部112Aは、第1回転体3Aおよび第2回転体4Aの回転方向に沿って延びる案内経路113Aと、第1回転体3Aおよび第2回転体4Aの一方の回転に伴って移動する係合部111Aと係合する被係合部114A、115Aを有している。係合部111Aおよび案内部112Aの構成は、係合部111Aが第1回転体3Aに設けられ、案内部112Aが第2回転体4Aに設けられている以外は、上述した実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0088】
第1回転体3Aおよび/または第2回転体4Aは、ダンパー部材13および付勢部材5A(本変形例ではトーションばね)を少なくとも部分的に収容する収容凹部14を有している。本変形例では、収容凹部14は、たとえば、第2回転体4における第1回転体3側の面に形成されている。このような収容凹部14にダンパー部材13および付勢部材5Aを収容することにより、収容凹部14を設けない場合と比べて、開閉機構1Aを中心軸Cに沿った方向にコンパクトに構成することができる。
【0089】
ダンパー部材13は、第1回転体3Aの回転に制動力を加える部材である。このようなダンパー部材13を設けることにより、第1回転体3Aの回転速度を適度に調節して、係合部111Aが第1被係合部115Aおよび第2被係合部114Aと接触するときの衝撃を緩和することができるため、開閉機構1Aの耐久性を向上させることができる。また、第1回転体3Aの回転速度を適度に調節することにより、開閉体7の急な開閉を抑制することができ、開閉体7の急な開閉によるユーザ等の怪我などを防止することができる。
【0090】
また、ダンパー部材13は、付勢部材5Aの内側の空間、本変形例では、トーションばねの内側の空間に配置される。これにより、付勢部材5Aの外部にダンパー部材13が配置される場合と比べて、開閉機構1Aをコンパクトに構成することができる。したがって、ダンパー部材13を設けても、開閉機構1Aを省スペースで設けることができる。
【0091】
次に、
図15および
図16を参照しつつ、開閉機構1Aの動作について説明する。
図15は、
図13に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、開閉体が第2位置にあるときの開閉機構を示す図である。
図16は、
図13に示す開閉体の開閉機構の動作の一例を示す図であり、開閉体が第1位置にあるときの開閉機構を示す図である。
【0092】
ここでは、開閉体7が開放位置P2にあるときから開閉体7が閉鎖位置P1に移行するまでの、開閉機構1Aの動作について説明する。なお、本変形例の開閉機構1Aは、説明は省略するが、基本的には上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、
図15および
図16に示される例では、開閉体7は、車体82に上下方向に揺動可能に取り付けられた支持部材83に固定されている。なお、開閉体7は、支持部材83を介さずに、車体82に直接取り付けられていてもよい。
【0093】
図15に示されるように、ユーザが開閉体7を開放位置P2まで移動させると、係合部111Aが第2回転体4Aの第1被係合部115Aと係合する。これにより、第2回転体4Aが第1回転体3Aと連動して第1方向D1へ回転可能な状態となる。この状態から、ユーザが操作部62を操作して操作用ワイヤ61を引っ張ると、第2回転体4Aと第1回転体3Aとが第1方向D1へ共回りする(太い2つの矢印を参照)。第1回転体3Aの第1方向D1への回転に伴い、第1回転体3Aが開閉体用ワイヤ2を巻き取っていくため、開閉体7は閉鎖位置P1へ近づくように回動する。
【0094】
巻き付け部321が開閉体用ワイヤ2を巻き取る量は、第1回転体3Aの回転角度に応じて変化する。たとえば、
図15に示されるように開閉体7が開放位置P2にある状態では、開閉体用ワイヤ2は、中心軸C付近において巻き付け部321にわずかに巻き付けられて、巻き付け部321のうち中心軸Cからの距離Dが略最小となる位置(中心軸Cからおよそ最も近い位置)から開閉体7に向かって延出している。したがって、
図15に示される状態では、距離Dと半径dの比(D/d)は、巻き付け部321の全区間において略最小である。
【0095】
そして、
図15に示される状態の後、第1回転体3Aの第1方向D1への回転に伴い、巻き付け部321が開閉体用ワイヤ2を巻き取っていくと、開閉体7はやがて閉鎖位置P1まで回動する(
図16参照)。
図16に示されるように開閉体7が閉鎖位置P1にある状態では、開閉体用ワイヤ2は、巻き付け部321の略全体に長く巻き付けられて、巻き付け部321の一方の端部33付近、すなわち巻き付け部321のうち中心軸Cからの距離Dが略最大となる位置(中心軸Cからおよそ最も遠い位置)から開閉体7に向かって延出している。したがって、
図16に示される状態では、距離Dと半径dの比(D/d)は、巻き付け部321の全区間において略最大である。比(D/d)の値が小さい程、開閉体7の閉動作を行う際に操作部材6を操作する力は小さくて済むため、
図15に示されるような開閉体7の開状態において、操作部材6を操作する力を低減することができる。開閉体7を閉じる場合、開閉体7を閉じ始めるときにユーザへの負担が大きくなりやすいので、開閉体7の開状態において操作部6の操作力を低減することにより、ユーザへの負担を効果的に低減することができる。
【0096】
なお、上記実施形態の他の変形例として、
図17~
図19に示されるように、上記実施形態から形状が変更されたカバー部材12Bを備える構成であってもよい。
【0097】
図17は、開閉体の開閉機構の他の変形例の構成を示す斜視図である。
図18は、
図17に示す開閉体の開閉機構の分解斜視図である。
図19は、
図17に示す開閉体の開閉機構のカバー部材をA方向から見た矢視図である。
【0098】
図17および
図18に示されるように、他の変形例に係る開閉体の開閉機構1B(以下、開閉機構1Bとも称する)は、開閉体用ワイヤ2Bと、第1回転体3Bと、図示しない付勢部材と、第2回転体4Bと、操作部材6Bと、シャフト9Bとを備えている。開閉機構1Bは、第1回転体3Bと、付勢部材と、第2回転体4Bとが、この順序で並んだ状態でシャフト9Bが挿通されて組み合わされることにより構成される。また、開閉機構1Bは、さらに、カバー部材12Bと、ベース部材16Bとを備えている。
【0099】
開閉機構1Bは、カバー部材12Bの構成が、
図1~
図3に示すカバー部材12とは異なっている。また、開閉機構1Bは、カバー部材12B以外の構成については、
図2~
図12に示す開閉構造1または
図13~
図16に示す開閉構造1Aと略同様である。したがって、以下では、カバー部材12Bがカバー部材12(
図1~
図3参照)と異なる点を中心に説明し、上述した実施形態または変形例と共通する構成についての説明は省略する。なお、本変形例には、上述した実施形態および変形例の構成を適用することができ、本変形例の構成を、上述した実施形態および変形例に適用することもできる。
【0100】
本変形例に係る開閉機構1Bのカバー部材12Bは、第1回転体3Bおよび第2回転体4Bをカバーする。
図18に示される例では、カバー部材12Bは、第1回転体3Bおよび第2回転体4Bの外周をカバーする側面部12B1と、第1回転体3Bおよび第2回転体4Bにおいて、開閉機構1Bが取り付けられる壁面等の取付面とは反対側をカバーする正面部12B2とを有する。なお、
図17および
図18に示される例では、カバー部材12Bは、正面部12B2とは反対側が開放されているが、これに限定されるものではなく、たとえば、反対側が蓋部によって塞がれていてもよい。また、本変形例における操作部材6Bは、具体的には、たとえば、第2回転体4Bの外周に巻き付けられる操作用ワイヤ61Bである。本変形例では、操作用ワイヤ61Bの一端は、第2回転体4Bに取り付けられ、操作用ワイヤ61Bの他端は、操作用ワイヤ61Bを引き操作可能な操作部62Bを有する。
【0101】
カバー部材12Bは壁部122Bを有する。壁部122Bは、第1壁部122B1および第2壁部122B2の少なくともいずれか一方を有する。
図18に示される例では、壁部122Bは、正面部12B2の裏面(カバー部材12Bの内面)から第1回転体3Bの回転軸方向ADに突出して設けられている。また、壁部122Bは、側面部12B1の内側に設けられている。なお、
図18に示される例では、第1壁部122B1および第2壁部122B2は一体に形成されているが、これに限定されるものではなく、別体に形成されていてもよい。
【0102】
第1壁部122B1は、第1回転体3Bの回転時に、第1回転体3Bの外周に巻き付けられる開閉体用ワイヤ2Bが第1回転体3Bから脱落するのを防止するように、第1回転体3Bの外周に近接した位置で、第1回転体3Bの外周に沿って設けられている。本明細書において、「開閉体用ワイヤ2Bが第1回転体3Bから脱落するのを防止するように、第1回転体3Bの外周に近接した位置」とは、開閉体用ワイヤ2Bが第1回転体3Bから繰り出された状態から、付勢部材の付勢力によって開閉体用ワイヤ2Bが第1回転体3Bに巻き取られる際、付勢部材の付勢力によって、開閉体用ワイヤ2Bが第1回転体3Bの巻回溝31Bから脱落するのを防止可能な程度に第1回転体3Bの外周に近接した位置である。具体的には、たとえば、第1壁部122B1は、第1回転体3Bの外周との間隔が、開閉体用ワイヤ2Bの直径以下とされる。また、本変形例において、「第1回転体3Bの外周に沿って」とは、開閉体用ワイヤ2Bが第1回転体3Bの巻回溝31Bから脱落するのを防止可能なように沿った状態である。たとえば、第1壁部122B1は、第1回転体3Bの外周に沿って、円弧状に形成されている。
【0103】
第2壁部122B2は、第2回転体4Bの回転時に、第2回転体4Bの外周に巻き付けられる操作用ワイヤ61Bが第2回転体4Bから脱落するのを防止するように、第2回転体4Bの外周に近接した位置で、第2回転体4Bの外周に沿って設けられている。本明細書において、「操作用ワイヤ61Bが第2回転体4Bから脱落するのを防止するように、第2回転体4Bの外周に近接した位置」とは、操作用ワイヤ61Bが第2回転体4Bに巻き取られる際、付勢部材の付勢力や、巻き取り完了時の操作部62Bの後述する回転規制部10Bへの衝突の衝撃によって、操作用ワイヤ61Bが第2回転体4Bの巻回溝41Bから脱落するのを防止可能な程度に第2回転体4Bの外周に近接した位置である。具体的には、たとえば、第2壁部122B2は、第2回転体4Bの外周との間隔が、操作用ワイヤ61Bの直径以下とされる。また、本変形例において、「第2回転体4Bの外周に沿って」とは、操作用ワイヤ61Bが第2回転体4Bの巻回溝41Bから脱落するのを防止可能なように沿った状態である。たとえば、第2壁部122B2は、第2回転体4Bの外周に沿って、円弧状に形成されている。なお、
図18に示される例では、勾玉状の輪郭(外周形状)を有する第1回転体3Bの最大半径(回転中心から外周までの距離が最大となる部分の距離)と、第2回転体4Bの半径とが略同じであるため、第1壁部122B1と第2壁部122B2とは、シャフト9Bの延伸方向(第1回転体3Bおよび第2回転体4Bの回転軸方向AD)に連続し、曲率半径が略同じに形成されている。なお、第1壁部122B1と第2壁部122B2とは、第1回転体3Bおよび第2回転体4Bの直径や形状に応じて、形状や大きさを変更することが可能である。
【0104】
また、本変形例では、カバー部材12Bが回転規制部10Bを備えている。回転規制部10Bは、たとえば、開閉体7が第1位置P1から第2位置P2へと移動したときに、第2回転体4Bに開閉体用ワイヤ2Bが巻き付き過ぎて、カバー部材12B内に操作部材6Bのすべてが入り込むことを規制することができる。本変形例では、回転規制部10Bは、操作用ワイヤ61Bは挿通可能であるが、操作部62Bは通過できない程度の大きさの開口部である。また、本変形例では、開閉機構1Bの製造時に、操作用ワイヤ61Bを回転規制部10B内に導入するためのワイヤ導入部10B1が形成されている。
【0105】
本変形例では、カバー部材12に壁部122B1を設けることにより、開閉体用ワイヤ2Bが第1回転体3Bの巻回溝31Bから脱落しようとする際の防壁となるため、第1回端体3Bの回転時において、開閉体用ワイヤ2Bが第1回転体3Bの巻回溝31Bから脱落するのを防止することができる。また、カバー部材12に壁部122B2を設けることにより、操作用ワイヤ61Bが第2回転体4Bの巻回溝41Bから脱落しようとする際の防壁となるため、第2回端体4Bの回転時において、操作用ワイヤ61Bが第2回転体4Bの巻回溝41Bから脱落するのを防止することができる。
【0106】
また、本変形例におけるカバー部材12Bは、開閉体用ワイヤ2Bをカバー部材12Bの内部から外部へ導出するスリット状のワイヤ導出部123Bを有する。本明細書において、「スリット状」とは、線状の切れ目を意味する。すなわち、スリット状のワイヤ導出部123Bは、線状の切れ目であればよく、たとえば、直線状であってもよいし、曲線状であってもよいし、または折れ線状であってもよい。本変形例では、ワイヤ導出部123Bは、カバー部材12Bの側面部12B1に形成されている。
【0107】
ワイヤ導出部123Bは、ワイヤ導出部123Bの長さ方向LDと直交する幅方向WDが、第1回転体3Bの回転軸方向ADに沿うように形成されている。すなわち、開閉体用ワイヤ2Bの巻き取り時および繰り出し時における、開閉体用ワイヤ2Bの回転軸方向ADへの揺れを抑制できるのであれば、ワイヤ導出部123Bの幅方向WDは、第1回転体3Bの回転軸方向ADと同じであってもよいし、第1回転体3Bの回転軸方向ADに対して多少ずれていてもよい。
【0108】
また、ワイヤ導出部123Bは、第1回転体3Bの回転に伴う開閉体用ワイヤ2Bの巻き取り時および繰り出し時における、開閉体用ワイヤ2Bの回転軸方向ADへの揺れを抑制可能な幅W1(
図19参照)を有する。本明細書において、「開閉体用ワイヤ2Bの回転軸方向ADへの揺れを抑制可能な幅」とは、開閉体用ワイヤ2Bの第1回転体3Bへの巻き取り時および第1回転体3Bからの繰り出し時に、開閉体7の開閉動作を安定して行うことができるように、開閉体用ワイヤ2Bの回転軸方向ADでの移動を所定範囲に制限することが可能な幅である。幅W1は、開閉体7の開閉動作を安定して行うことができるような幅であれば特に限定されないが、好ましくは、開閉体用ワイヤ2Bの直径の1.1~5倍、より好ましくは、1.5~3倍程度である。
【0109】
開閉体用ワイヤ2Bにおいて、第1回転体3Bから繰り出されている部分の上下方向の傾斜角度は、開閉体7の開閉の度合いに応じて変化する。そこで、ワイヤ導出部123Bの長さL1は、開閉体7が閉じている(位置P1に位置している)状態と、開閉体7が開いている(位置P2に位置している)状態との間で、開閉体用ワイヤ2Bがワイヤ導出部123B内に位置するような長さとされている。好ましくは、ワイヤ導出部123Bの長さL1は、開閉体用ワイヤ2Bの傾斜角度が変化しても、ワイヤ導出部123Bの上端および下端に干渉しないような長さとされている。また、本変形例では、カバー部材12Bには、開閉機構1Bの製造時に、開閉体用ワイヤ2Bをワイヤ導出部123Bに導入するためのワイヤ導入部124Bが形成されている。ワイヤ導入部124Bは、ワイヤ導出部123Bと連通している。詳細には、ワイヤ導入部124Bは、開閉機構1Bの使用時において開閉体用ワイヤ2Bの傾斜角度が変化しても、ワイヤ導出部123B内で開閉体用ワイヤ2Bが到達しないよう位置で、ワイヤ導出部123Bと連通している。たとえば、ワイヤ導入部124Bは、ワイヤ導出部123Bの上端部において、ワイヤ導出部123Bと連通している。したがって、開閉機構1Bの使用時において開閉体用ワイヤ2Bの傾斜角度が変化しても、ワイヤ導入部124Bを通じて、開閉体用ワイヤ2Bがワイヤ導出部123Bから抜け出てしまうことが防止される。なお、開閉機構1Bの使用時には、ワイヤ導出部123Bの抜けをより確実に防止するために、ワイヤ導入部124Bを塞いでもよい。
【0110】
本変形例では、カバー部材12Bにワイヤ導出部123Bを設けることにより、ワイヤ導出部123Bにおける幅方向WDの両側縁が、開閉体用ワイヤ2Bの揺れのストッパーとして機能する。したがって、第1回転体3Bに対して開閉体用ワイヤ2Bの巻き取りおよび繰り出しが行われる際、開閉体用ワイヤ2Bが、カバー部材12Bの内部から外部へ導出される部位において、第1回転体3Bの回転軸方向ADに揺れることが抑制されるため、開閉体7の開閉動作を安定して行うことができる。また、第1回転体3Bに対して開閉体用ワイヤ2Bの巻き取りおよび繰り出しが行われる際、ワイヤ導出部123Bによって開閉体用ワイヤ2Bをガイドすることができる。
【符号の説明】
【0111】
1、1A、1B 開閉体の開閉機構
2、2B 開閉体用ワイヤ
3、3A、3B 第1回転体
31、31A、31B 第1回転体の巻回溝
32 第1回転体の外周
321 巻き付け部
322 非巻き付け部
33 巻き付け部の一方の端部
34 巻き付け部の他方の端部
35 取付部
36 ワイヤエンド固定部
4、4A、4B 第2回転体
41、41A、41B 第2回転体の巻回溝
42 ワイヤエンド固定部
5、5A 付勢部材
6、6B 操作部材
61、61B 操作用ワイヤ
62、62B 操作部
7 開閉体
71 上側テールゲート
72 下側テールゲート
8 車両
81 車両の開口部
82 車体
83 支持部材
9、9A、9B シャフト
10、10B 回転規制部
10B1 ワイヤ導入部
11、11A 連動機構
111、111A 係合部
112、112A 案内部
113、113A 案内経路
114、114A 第2被係合部
115、115A 第1被係合部
12、12B カバー部材
12B1 側面部
12B2 正面部
121 カバー部材の開口部
122B 壁部
122B1 第1壁部
122B2 第2壁部
123B ワイヤ導出部
124B ワイヤ導入部
13 ダンパー部材
14 収容凹部
15 伸縮機構
16、16B ベース部材
C 中心軸
d 第2回転体の半径
D 回転の中心軸から巻き付け部までの距離
D1 第1方向
D2 第2方向
P1 第1位置
P2 第2位置