(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】改良された鉛蓄電池セパレータ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/449 20210101AFI20240516BHJP
H01M 50/411 20210101ALI20240516BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240516BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240516BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240516BHJP
H01M 50/429 20210101ALI20240516BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240516BHJP
H01M 50/437 20210101ALI20240516BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20240516BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240516BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240516BHJP
H01M 50/454 20210101ALI20240516BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20240516BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20240516BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/411
H01M50/414
H01M50/417
H01M50/42
H01M50/429
H01M50/434
H01M50/437
H01M50/44
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/454
H01M50/457
H01M50/463 B
(21)【出願番号】P 2021503842
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(86)【国際出願番号】 US2019042760
(87)【国際公開番号】W WO2020023346
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-08
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505458359
【氏名又は名称】ダラミック エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ペリー,ジェームス,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴロヴィン,ニール,エム.
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー,ダニエル,アール.
(72)【発明者】
【氏名】キルマイヤー,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ウィアー,ケビン,ジェイ.
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/062461(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/177158(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/210405(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/143212(WO,A1)
【文献】特開2017-068920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
H01M 10/06
H01M 4/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セパレータであって、前記電池セパレータは、
架橋ゴム及び架橋ポリフェノール樹脂の少なくとも1つを含み、かつ界面活性剤コーティングを有する多孔質膜を含み、
前記電池セパレータは、
Hg/HgSO
4
電極と比較して-1.5ボルトで測定するとき、界面活性剤コーティングを有しない同一組成の電池セパレータに比較して低いカソード
電流の絶対値を示す、電池セパレータ。
【請求項2】
前記架橋ゴム及び架橋ポリフェノール樹脂の少なくとも1つは、
前記多孔質膜の少なくとも表面上にあるか、
熱架橋、放射線架橋、化学的架橋、物理的架橋、圧力架橋、酸化架橋、及びこれらの組み合わせから成る群のうち少なくとも1つにより少なくとも部分的に架橋されているか、
電子線、γ線、紫外光、加硫、過酸化水素(H
2O
2)、及びこれらの組み合わせから成る群のうち少なくとも1つへの暴露により少なくとも部分的に架橋されているか、又は
共有結合、イオン結合、及びこれらの組み合わせから成る群のうち少なくとも1つとして少なくとも部分的に架橋されているか、
天然ゴム
、合成ゴム
、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ビスフェノールホルムアルデヒド、架橋性モノマー、及びこれらの組み合わせから成る群のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項3】
前記多孔質膜は、ポリオレフィン、木材パルプ、合成木材パルプ(「SWP」)、ガラス繊維、合成繊維、セルロース系繊維、及びこれらの組み合わせから成る群のうち少なくとも1つを含み、
前記多孔質膜は、さらに粒子状充填剤を
含み、
前記粒子状充填剤は、非晶質シリカ
、OHとSiとの比が21:100~35:100であるシリカ、及びこれらの組み合わせから成る群の1つ以上である、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項4】
前記界面活性剤は、前記多孔質膜の表面上の少なくとも一部のコーティングである、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項5】
前記界面活性剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせから成る群のうち少なくとも1つを含むか、又は
エトキシル化アルコール、プロポキシル化アルコール、エチレンオキシドのブロック共重合体、プロピレンオキシドのブロック共重合体、エポキシ、ウレタン、及びこれらの組み合わせから成る群のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項6】
前記界面活性剤は、
面重量が少なくとも2.0g/m
2か、又は
面重量が10.0g/m
2以下の前記多孔質膜の面の少なくとも一部のコーティングである、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項7】
前記多孔質膜が複数のリブを備える前記電池セパレータであって、
前記複数のリブは、前記多孔質膜の第1の側に少なくとも部分的に配置されるか
、又は
前記複数のリブの少なくとも一部は、前記多孔質膜のエッジに対して平行でも直角でもない第1の角度により規定される、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項8】
さらに繊維状マットを備える前記電池セパレータであって、
前記繊維状マットは、不織布、メッシュ、フリース、ネット及びこれらの組み合わせから成る群の1つであるか、又は
前記繊維状マットは、ガラス繊維、合成繊維、シリカ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分、界面活性剤、天然ゴム、合成ゴム、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ビスフェノールホルムアルデヒド、及びこれらの組み合わせから成る群の1つを含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項9】
多孔質膜、
繊維状マット、及び
界面活性剤コーティングを備え、
前記多孔質膜、前記繊維状マット、及び前記界面活性剤の1つ以上は、架橋性成分を含む電池セパレータであって、
前記電池セパレータは、
Hg/HgSO
4
電極と比較して-1.5ボルトで測定するとき、界面活性剤コーティングを有しない同一組成の電池セパレータに比較して低いカソード
電流の絶対値を示す、電池セパレータ。
【請求項10】
前記架橋性成分は、少なくとも部分的に架橋されているか、
前記架橋性成分は、熱架橋、放射線架橋、化学的架橋、物理的架橋、圧力架橋、酸化架橋、及びこれらの組み合わせから成る群のうち少なくとも1つにより少なくとも部分的に架橋されているか、
前記架橋性成分は、電子線、γ線、紫外光、加硫、過酸化水素(H
2O
2)、及びこれらの組み合わせから成る群のうち少なくとも1つへの暴露により少なくとも部分的に架橋されているか、
前記架橋性成分は、共有結合、イオン結合、及びこれらの組み合わせから成る群のうち少なくとも1つとして少なくとも部分的に架橋されているか、又は
前記架橋性成分は、天然ゴム
、合成ゴム
、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ビスフェノールホルムアルデヒド、架橋性モノマー、及びこれらの組み合わせから成る群のうち少なくとも1つを含む、請求項
9に記載の電池セパレータ。
【請求項11】
前記多孔質膜はポリオレフィンを含み、
前記ポリオレフィンは、以下の、ポリプロピレン、高分子量ポリプロピレン、超高分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、及びこれらの組み合わせから成る群の1つである、請求項
9に記載の電池セパレータ。
【請求項12】
前記多孔質膜は、さらに、リグニン、木材パルプ、合成木材パルプ(「SWP」)、ガラス繊維、合成繊維、セルロース系繊維、及びこれらの組み合わせから成る群のうち少なくとも1つを含む、請求項
9に記載の電池セパレータ。
【請求項13】
前記多孔質膜は、さらに粒子状充填剤を含み、前記粒子状充填剤は、非晶質シリカ、OHとSiとの比が21:100~35:100であるシリカ、及びこれらの組み合わせから成る群の1つ以上である、請求項
9に記載の電池セパレータ。
【請求項14】
前記界面活性剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせから成る群のうち少なくとも1つを含むか、
前記界面活性剤は、エトキシル化アルコール、プロポキシル化アルコール、エチレンオキシドのブロック共重合体、プロピレンオキシドのブロック共重合
体、エポキシ、ウレタン、及びこれらの組み合わせから成る群のうち少なくとも1つを含
むか、
前記界面活性剤は、面重量が少なくとも2.0g/m
2の前記多孔質膜の面の少なくとも一部のコーティングであるか、又は
前記界面活性剤は、面重量が10.0g/m
2以下の前記多孔質膜の面の少なくとも一部のコーティングである、請求項
9に記載の電池セパレータ。
【請求項15】
前記多孔質膜は、複数のリブを備える
か、又は
前記多孔質膜は、複数のリブを備え、かつ前記複数のリブの少なくとも一部は、前記多孔質膜のエッジに対して平行でも直角でもない第1の角度により規定される、請求項
9に記載の電池セパレータ。
【請求項16】
前記繊維状マットは、ガラス繊維、合成繊維、シリカ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分、界面活性剤、天然ゴム、合成ゴム、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ビスフェノールホルムアルデヒド、及びこれらの組み合わせから成る群の1つを含む、請求項
9に記載の電池セパレータ。
【請求項17】
多孔質ポリエチレン及びシリカ膜、
繊維状マット、及び
界面活性剤コーティングを備える鉛蓄電池セパレータであって、
前記多孔質ポリエチレン及びシリカ膜、前記繊維状マット、及び前記界面活性剤の1つ以上は、架橋性成分を含み、
前記鉛蓄電池セパレータは、
Hg/HgSO
4
電極と比較して-1.5ボルトで測定するとき、界面活性剤コーティングを有しない同一組成の電池セパレータに比較して低いカソード
電流の絶対値を示す、
鉛蓄電池セパレータ。
【請求項18】
界面活性剤コーティングを有するAGMを備え、そして
前記AGM及び前記界面活性剤の1つ以上は、架橋性成分を含むAGM電池セパレータであって、
前記AGM電池セパレータは、
Hg/HgSO
4
電極と比較して-1.5ボルトで測定するとき、界面活性剤コーティングを有しない同一組成の電池セパレータに比較して低いカソード
電流の絶対値を示す、
改良されたAGM電池セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年7月23日に出願された米国仮出願第62/702,018号に対する優先権及び利益を主張する。
【0002】
少なくとも選択実施形態によれば、本開示又は発明は、特に強化された液式鉛蓄電池(「EFB」)である、液式鉛蓄電池、並びにゲル電池及び吸収ガラスマット(「AGM」)電池、ディープサイクル電池、ゴルフカー用電池及び/又は同種のものの種々の他の鉛蓄電池などの、鉛蓄電池用の新規な又は改良された膜又はセパレータに関する。少なくとも選択実施形態によれば、本開示又は発明は、新規な又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、水分損失が低いセパレータ、耐酸化性セパレータ、NCRセパレータ、格子の反りに強いセパレータ、弾力性セパレータ、酸混合セパレータ、バランスが保たれたセパレータ、EFBセパレータ、電池の性能を改善したセパレータ、電池の性能を劇的に改善したセパレータ、電池、改良された電池、劇的に改良された電池、セル、システム、これらを含む方法、これらを使用した車両、これらを製造する方法、これらの使用、及び/又はこれらの組み合わせに関する。または、本明細書には、電池寿命を延ばす、電池の電極短絡を低減することにより電池故障を低減させる、水分損失を減らす、電気抵抗を低減する、サイクル寿命を改良する及び/又は同種のもののための方法、システム、及び電池セパレータが開示される。
【0003】
少なくとも選択実施形態によれば、本開示または発明は、新規の又は改良されたセパレータ、電池セル、電池、システム、車両、及び/又はこのような新規のセパレータ、電池セル、及び/又は電池の製造及び/又は使用方法に関する。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示または発明は、以下の、平板電池、管状電池、液式鉛蓄電池、強化された液式鉛蓄電池(「EFB」)、ディープサイクル電池、ゲル電池、吸収ガラスマット(「AGM」)電池、制御弁式鉛蓄(「VRLA」)電池、ディープサイクルする電池及び/又は部分充電状態(「PSoC」)で動作する電池、無停電電源(「UPS」)用電池、インバータ電池、再生可能エネルギー蓄電池、太陽光又は風力発電蓄電池、車両電池、始動‐照明‐点火(「SLI」)車両電池、アイドリング-スタート-ストップ(「ISS」)車両電池、ハイブリッド電気自動車(「HEV」)用電池、ハイブリッド車両、電気自動車、コールドクランキングアンペア(「CCA」)要求が高い電池、内燃機関用電池、舶用電池用途、自動車用電池、トラック用電池、オートバイ用電池、全地形型車両用電池、フォークリフト用電池、ゴルフカート用電池、ハイブリッド電気自動車用電池、電気自動車用電池、e‐リキシャ用電池、e‐バイク用電池及び/又は同種のものの電池及び/又は用途のための新規の又は改良された電池セパレータ、及び/又はこのような改良されたセパレータ、セル、電池、システム、及び/又は同種のものの改良された製造及び/又は使用する方法に関する。また、本明細書には、電池の性能及び寿命を延ばす、電池故障を低減させる、水分損失を減らす、アンチモン(Sb)中毒を軽減する、酸の層化を抑制する、デンドライトの形成を軽減する、酸化安定性を向上させる、フロート電流を改善、維持及び/又は低下させる、充電終了電流を改善する、ディープサイクル電池を充電及び/又は完全充電するのに必要な電流及び/又は電圧を減少させる、内部電気抵抗を減少させる、エネルギースループットを改善する、酸拡散を改善する、鉛蓄電池の均一性を向上させる、及び/又はサイクル寿命及び性能を改良するための方法、システム及び電池セパレータが開示される。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は、新規なセパレータが湿潤性を改善し、電池の水分損失を低減し、電池のアンチモン(Sb)中毒を低減し、電気抵抗を低減すること、性能強化添加剤又はコーティング、改良された充填剤、空孔率を最適化し、湿潤性を増加させ、酸拡散を増加させること、負極側クロスリブ及び/又は同種のものを含む改良されたセパレータに関する。
【0004】
少なくとも選択された実施形態によれば、本開示又は発明は、電池水分損失を低減する若しくは軽減し、アンチモン(Sb)中毒を減らし、電極板格子の反り又は湾曲又はカッピングを軽減し、酸の欠乏を低減し又は軽減し、酸の層化を低減し又は軽減し、デンドライトの成長を低減し又は軽減し、酸化効果を低減し、水分損失を低減し、湿潤性を増加させ、酸拡散を改善させ、均一性を向上させ、そして電気抵抗を低減させることができる、コールドクランキングアンペアを増加させることができる及び/又は同種のもの、並びにこれらの組み合わせである、特に液式鉛蓄電池用のセパレータである、セパレータに関する。または、本明細書には、少なくとも強化された液式鉛蓄電池において電池寿命を延ばし、電池水分損失を減らし、電池アンチモン中毒を減らし、電極板格子の反り又は湾曲又はカッピングを軽減し又は低減し、酸の欠乏を低減し又は軽減し、酸の層化を低減し又は軽減し、デンドライトの成長を低減し又は軽減し、酸化効果を低減し、内部抵抗を低減し、湿潤性を増加させ、酸拡散を改善させ、コールドクランキングアンペアを増加させ、均一性を向上させる等、並びにこれらの任意の組み合わせのための方法、システム、及び電池セパレータが開示される。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は、セパレータが電池水分損失を減らし、そしてアンチモン(Sb)中毒を減らす、セパレータ格子の反り抵抗を改善する、セパレータレジリエンスを改善する、及びこれらの組み合わせのための改良された配合組成を含む強化された液式鉛蓄電池用の改良されたセパレータに関する。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は、セパレータが架橋成分、性能強化添加剤、添加剤、界面活性剤又はコーティング、酸化抵抗を改善すること、非晶質シリカ、オイル吸収が高いシリカ、シラノール基が多いシリカ、OHとSiとの比が21:100~35:100であるシリカ、膜の40重量%以上の量の粒子状充填剤を含有するポリオレフィン微多孔質膜及び超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)等のポリマー、シートの厚さを減少させること、厚さを低減させること、オイル含有量を低減させること、湿潤性を増加させること、酸拡散を増加させること及び/又は同種のもの、並びにこれらの任意の組み合わせを含む改良された配合組成を含む強化された液式鉛蓄電池用の改良されたセパレータに関する。
【背景技術】
【0005】
少なくとも特定の用途又は電池について、電池故障を低減させ、電池サイクル寿命を改良し及び/又は部分充電状態の性能を改善させる及び/又は同種のものの改良されたセパレータの必要性が依然としてある。より具体的には、水分損失を減らす又は鉛蓄電池中の水素(H2)放出を減らす、電池中のアンチモン(Sb)中毒を減らす、電池フロート電流を低下させる、部分充電状態での電池動作を改善する、電池寿命を延ばす、電池故障を低減させるものなどの、改良されたセパレータ、改良された電池、及び改良されたシステム、改良されたセパレータを利用する改良された電池、改良されたセパレータを利用する改良された電池を利用するシステム及び/又は同種のものの必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水分損失を減らす又は鉛蓄電池中の水素(H2)放出を減らす、電池中のアンチモン(Sb)中毒を減らす、電池フロート電流を低下させる、部分充電状態での電池動作を改善する、電池寿命を延ばす、電池故障を低減させるものなどの、改良されたセパレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つ以上の実施形態の詳細は、以下に記載される明細書にある。他の特徴、目的、及び利点は本明細書、図面及び/又は特許請求の範囲から明らかになろう。少なくとも選択実施形態によれば、本開示または発明は、上記問題点または必要性に対処することができる。少なくとも特定の実施形態、態様、又は目的によれば、本開示又は発明は、前述の問題を克服する改良されたセパレータ、及び/又は改良されたセパレータを利用する改良された電池、及び/又は改良されたセパレータを利用する改良された電池を利用する改良されたシステムを提供することができる。例えば、水分損失を減らし、アンチモン中毒を減らし、フロート電流を低下させ、セパレータの湿潤性を改善させ、酸の層化を低下させ、内部抵抗を低減させ、セパレータの湿潤性を増加させ、空孔率を最適化し、セパレータを通じた酸拡散を改善させ、コールドクランキングアンペアを改善させ、均一性を向上させ、及び/又はサイクル性能を改善させる、及びこれらの任意の組み合わせの電池を提供することによってである。
【0008】
本開示又は発明の第1の選択実施形態において、電池セパレータは多孔質膜及び性能強化界面活性剤、薬剤、又は添加剤(例えば界面活性剤及び/又は水分損失界面活性剤のコーティング)を備えてよい。特定の選択実施形態において、多孔質膜又は性能強化添加剤の一方又は両方は少なくとも部分的に架橋されてよい架橋性成分を有してもよい。本発明のセパレータの別の実施形態は、ポリオレフィン、追加の架橋性成分、及び界面活性剤、薬剤又は添加剤を備えてよく、追加の架橋性成分は、少なくとも部分的に架橋されてよい。他の実施形態において、セパレータは、少なくとも部分的に架橋されてよい架橋性成分を有しても有さなくてもよい繊維状マットを備えてよい。
【0009】
特定の態様において、架橋性成分は、熱架橋、放射線架橋、化学的架橋、物理的架橋、圧力架橋及び/又は酸化架橋、並びにこれらの組み合わせにより少なくとも部分的に架橋されてもよい。さらに、架橋性成分は、電子線、γ線、紫外光、加硫及び/又は過酸化水素(H2O2)、並びにこれらの任意の組み合わせへの暴露により少なくとも部分的に架橋されてもよい。さらに、架橋性成分は、共有結合、イオン結合、及びこれらの組み合わせのうち少なくとも1つとして少なくとも部分的に架橋されてもよい。
【0010】
本発明の別の態様において、例示的な架橋性成分は、以下の、天然ゴム、ラテックス、合成ゴム、ポリマー、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)及び/又はビスフェノールホルムアルデヒド並びにこれらの任意の組み合わせのうち少なくとも1つであってもよい。さらに、セパレータはまた、構成要素として、ポリマー、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)、リグニン、木材パルプ、合成木材パルプ(「SWP」)、ガラス繊維、合成繊維及び/又はセルロース系繊維並びにこれらの任意の組み合わせを有してもよい。
【0011】
例示的な電池セパレータは、さらに粒子状充填剤を有してもよい。例示的な充填剤は、非晶質シリカ、オイル吸収が高いシリカ、シラノール基が多いシリカ、OHとSiとの比が21:100~35:100であるシリカ、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。
例示的な性能強化添加剤は、界面活性剤及び/又は水分損失(鉛蓄電池中で測定される)遅延剤を含んでもよい。例示的な添加剤は、多孔質膜内に組み込まれる及び/又はセパレータの片面及び/又は両面の少なくとも一部のコーティングであってもよい。
【0012】
例示的な界面活性剤は、少なくとも約1(1)以上、及び/又は最大で約3(3)以下の親水性親油性バランス(HLB)を有してもよい。例示的な界面活性剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせの1つであってもよい。例示的な界面活性剤は、さらにエトキシル化アルコール、プロポキシル化アルコール、エチレンオキシドのブロック共重合体、プロピレンオキシドのブロック共重合体、重合性ユニット、エポキシ、ウレタン、及びこれらの任意の組み合わせの1つ以上を含有してもよい。例示的な界面活性剤は、セパレータの面重量が少なくとも約2.0g/m2及び/又は約10.0g/m2以下であってもよい。
【0013】
本発明の例示的なセパレータは、セパレータの第1の側に配置されてよい第1の複数のリブを有してもよい。第1の複数のリブの例示的な実施形態は、中実リブ、分離した断続リブ、連続式リブ、非連続式リブ、非連続式ピーク、非連続式突起物、傾斜リブ、対角線リブ、直線的リブ、多孔質膜の縦方向に実質的に縦に延びるリブ、多孔質膜の横方向に実質的に横に延びるリブ、セパレータの横方向に実質的に横切って延びるリブ、横切って延びる負極側ミニリブ、負極側クロスリブ(NCR)、酸混合リブ、分離した歯、歯のあるリブ、鋸歯状の縁、鋸歯状リブ、狭間胸壁、狭間胸壁状リブ、湾曲状リブ、連続式折曲状リブ、非連続式折曲状リブ、S字型リブ、連続式ジグザグ鋸歯状リブ、折れた断続的ジグザグ鋸歯状リブ、溝、チャネル、テクスチャー領域、エンボス、窪み、柱状物、ミニ柱状物、多孔質、非多孔質、クロスリブ、ミニリブ、クロスミニリブ、及びこれらの組み合わせの少なくとも1つの一様な組、交互な組又は混合物もしくは組み合わせであってもよい。
【0014】
第1の複数のリブの少なくとも一部は、セパレータのエッジに対して平行でも直角でもない第1の角度により規定されてもよい。さらに、第1の複数のリブの少なくとも一部は、ゼロ度(0°)より大きく180度(180°)未満、及び180度(180°)より大きく360度(360°)未満であってもよいセパレータの縦方向に対して規定される第1の角度により規定されてもよい。
【0015】
加えて、例示的なセパレータは、セパレータの第2の側に配置されてよい第2の複数のリブを有してもよい。さらに、第2の複数のリブは、以下の、中実リブ、分離した断続リブ、連続式リブ、非連続式リブ、非連続式ピーク、非連続式突起物、傾斜リブ、対角線リブ、直線的リブ、多孔質膜の縦方向に実質的に縦に延びるリブ、多孔質膜の横方向に実質的に横に延びるリブ、セパレータの横方向に実質的に横切って延びるリブ、横切って延びる負極側ミニリブ、負極側クロスリブ(NCR)、酸混合リブ、分離した歯、歯のあるリブ、鋸歯状の縁、鋸歯状リブ、狭間胸壁、狭間胸壁状リブ、湾曲状リブ、連続式折曲状リブ、非連続式折曲状リブ、S字型リブ、連続式ジグザグ鋸歯状リブ、折れた断続的ジグザグ鋸歯状リブ、溝、チャネル、テクスチャー領域、エンボス、窪み、柱状物、ミニ柱状物、多孔質、非多孔質、クロスリブ、ミニリブ、クロスミニリブ、及びこれらの組み合わせからなる群のうち少なくとも1つの一様な組、交互な組又は混合物もしくは組み合わせであってもよい。
【0016】
第2の複数のリブの少なくとも一部は、セパレータのエッジに対して平行でも直角でもない第2の角度により規定されてもよい。さらに、第2の複数のリブの少なくとも一部は、ゼロ度(0°)より大きく180度(180°)未満、及び180度(180°)より大きく360度(360°)未満であってもよい多孔質膜の縦方向に対して規定される第2の角度により規定されてもよい。
【0017】
本発明の別の態様は、セパレータをエンベロープセパレータ、スリーブセパレータ、ハイブリッドエンベロープセパレータ、ポケットセパレータ、ラップセパレータ、切断片状セパレータ、リーフセパレータ、及び/又はs‐ラップセパレータとして提供してもよい。
【0018】
なお別の態様において、セパレータは、繊維状マットと結合してもよく、不織布、メッシュ、フリース、ネット及びこれらの任意の組み合わせであってよく、さらにそれらの要素の層であってもよい。例示的な繊維状マットは、ガラス繊維、合成繊維、シリカ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分、界面活性剤、水分損失遅延剤、ラテックス、天然ゴム、合成ゴム、ポリマー、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ビスフェノールホルムアルデヒド、及びこれらの任意の組み合わせの1つ以上を含んでもよい。
【0019】
選択実施形態において、電池セパレータは、多孔質膜、繊維状マット、少なくとも部分的に架橋される架橋性成分及び界面活性剤を備えてもよい。例示的な架橋性成分は、少なくとも部分的に繊維状マット内に備えられてもよい。さらに、例示的な界面活性剤は、少なくとも部分的に繊維状マット内に備えられてもよい。また、例示的な架橋性成分及び/又は例示的な界面活性剤は、少なくとも部分的に多孔質膜中又は上に備えられてもよい。
【0020】
特定の選択実施形態において、鉛蓄電池は、少なくとも1つの正極、少なくとも1つの負極、硫酸(H2SO4)電解液、及び本発明中に記載の本発明の電池セパレータを備える。正極は、アンチモン(Sb)を備えてよく、又はアンチモン合金として備えてよい。例示的なセパレータは、電池中のアンチモン中毒を抑制してもよい。また、例示的なセパレータは、電池中の水素(H2)放出を抑えてもよく及び/又は電解質水分損失を抑えてもよい。
【0021】
例示的な鉛蓄電池は、平板電池、液式鉛蓄電池、強化された液式鉛蓄電池(「EFB」)、制御弁式鉛蓄(「VRLA」)電池、ディープサイクル電池、ゲル電池、吸収ガラスマット(「AGM」)電池、管状電池、インバータ電池、内燃機関用電池、車両電池、補助電池、始動‐照明‐点火(「SLI」)車両電池、アイドリング-スタート-ストップ(「ISS」)車両電池、自動車用電池、トラック用電池、オートバイ用電池、全地形型車両用電池、舶用電池、航空機用電池、フォークリフト用電池、ゴルフカート用電池、ハイブリッド電気自動車用電池、電気自動車用電池、e‐リキシャ用電池、e‐トライク用電池、e‐バイク用電池、無停電電源用電池、コールドクランキングアンペア(「CCA」)が高い電池、及びこれらの組み合わせの1つであってもよい。
【0022】
例示的な鉛蓄電池は、部分充電状態(「PSoC」)で動作してもよい。
【0023】
特定の選択実施形態において、本明細書中に記載の本発明の鉛蓄電池を有するシステムが提供されてよい。例示的なシステムは、車両、無停電電源、補助電源システム、再生可能エネルギー集電装置、風力エネルギー集電装置、太陽エネルギー集電装置、非常用電源システム、インバータ、及びこれらの組み合わせの1つであってもよい。さらに、例示的な車両は、自動車、乗用車、トラック、フォークリフト、ハイブリッド車両、ハイブリッド電気自動車、マイクローハイブリッド車両、アイドリング-スタート-ストップ(「ISS」)車両、電気自動車、e‐バイク、e‐リキシャ、e‐トライク、オートバイ、船舶、航空機、全地形型車両、ゴルフカー、及びこれらの組み合わせの1つであってもよい。
【0024】
新規の又は改良されたセパレータ、特に鉛蓄電池用のセパレータ、新規の又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、電池、セル、システム、車両並びに/又はこのようなセパレータ、電池セパレータ、セル、システム、及び/若しくは電池の製造方法並びに/若しくは使用方法、鉛蓄電池用の改良されたセパレータ及び/又はこのような改良されたセパレータを有するこのような電池の改良された使用方法、電池寿命を延ばす、電池故障を低減させる、電池水分損失を減らす、電池アンチモン中毒を抑制する、電池フロート電流を低下させる、電池内部電気抵抗が上昇するのを最小限に抑える、セパレータの湿潤性を増大させる、電池の酸の層化を抑制する、電池の酸拡散を改善する、及び/又は鉛蓄電池の均一性を向上させるための方法、システム、処理、及び電池セパレータ、セパレータが改良された機能性コーティング、改良された配合組成を含む鉛蓄電池用の改良されたセパレータ、鉛蓄電池の水分損失を減らす改良された電池セパレータ、鉛蓄電池のアンチモン中毒を抑制する改良された電池セパレータ、このような改良されたセパレータを含む改良された鉛蓄電池、寿命の長い鉛蓄電池、改良された液式鉛蓄電池、改良された強化された液式鉛蓄電池、改良されたディープサイクル電池及び/又は部分充電状態で動作する電池及び/又は同種のもの、及び/又はアンチモン中毒を抑制し、フロート電流を低下させ、及び/又は電気分解を抑制し、及び/又は水分損失速度を減らした電池、架橋性成分及び界面活性剤を含むポリマーセパレータ、架橋性成分及び界面活性剤を含むセパレータ、架橋性成分及び界面活性剤添加剤を含むポリマーセパレータ、架橋性成分及び界面活性剤添加剤を含むセパレータ、架橋性成分及び界面活性剤コーティングを含むポリマーセパレータ、架橋性成分及び界面活性剤コーティングを含むセパレータ、架橋性成分及び電池水分損失を減らす添加剤を含むポリマーセパレータ、架橋性成分及び電池水分損失を減らす添加剤を含むセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び界面活性剤を含むポリマーセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び界面活性剤を含むセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び界面活性剤添加剤を含むポリマーセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び界面活性剤添加剤を含むセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び界面活性剤コーティングを含むポリマーセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び界面活性剤コーティングを含むセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び電池水分損失を減らす添加剤を含むポリマーセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び電池水分損失を減らす添加剤を含むセパレータ、及び/又は本明細書中に示されるか又は記載される同類のもの、本明細書中に示されるか又は記載される電池セパレータ及び/又は同種のもの。
【0025】
特定の好ましい実施形態において、本開示又は発明は、その成分及び物理的属性並びに特徴は、予期せぬ方法で、鉛蓄電池産業における以前は満たされていない必要性に対処するために相乗的に結合され、最先端をさらに拡大する電池セパレータを提供する。特定の好ましい実施形態において、本開示又は発明は、架橋性成分及び、以前に知られている電池セパレータの性能を満たす又は、特定の実施形態において上回る、界面活性剤又は水分損失遅延剤などの、特定量の性能強化添加剤を備えてもよい、改良された電池セパレータを提供する。特に、本明細書中に記載の本発明のセパレータは、鉛蓄電池中のアンチモン(Sb)中毒の効果を低減し、鉛蓄電池中の水分損失又は水素(H2)放出を低減し、液式鉛蓄電池などの、鉛蓄電池中の酸の層化を低減し、さらに多くの他の利点を提供する。
【0026】
本発明の少なくとも選択された実施形態、目的又は態様によれば、本明細書中には以前の膜、セパレータ、電池、システム及び/又は同種のものの困難な問題、問題又は欠点に取り組むことができる新規な又は改良された膜、多孔質膜、特に鉛蓄電池、より具体的には強化された液式鉛蓄電池である、電池用のセパレータ、改良されたセパレータを組み込んだ改良された鉛蓄電池、改良されたセパレータ及び/又は電池を組み込んだシステム、及び/又はこれらに関連する方法が提供されるか開示される。新規な又は改良されたセパレータは、架橋性成分及び界面活性剤、薬剤、又は添加剤を含有する。さらに、架橋性成分は少なくとも部分的に架橋されてよい。また、セパレータは、さらにポリマー及び充填剤から成ってもよく、さらに少なくとも1つの繊維状マット又はスクリムと組み合わせてもよく、切断片状、スリーブ、ポケット、エンベロープ、ラップ、折り畳み及び/又は同種のもの、及び/又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0027】
少なくとも選択された実施形態によれば、本開示又は発明は、上記問題点または必要性に対処することができる。少なくとも特定の目的によれば、本開示または発明は、例えば、アンチモンの抑制を低減し、水素放出を低減し、水分損失を低減し、そして酸の欠乏を低減する強化された液式電池を提供することにより、前述の問題を克服する改良されたセパレータ及び/又は電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、典型的な鉛蓄電池の断面略図である。
【
図2】
図2は、例示的なセパレータの反対側のリブパターンを描写する。リブは、縦方向に(「MD」)セパレータに縦に配置されたリブ、横方向に(「CMD」)セパレータに横に配置されたリブとして描写される。
【
図3A】
図3Aは、架橋ポリフェノール樹脂を有するセパレータのサイクリックボルタンメトリー結果である。
【
図3B】
図3Bは、架橋ポリフェノール樹脂を有するセパレータのサイクリックボルタンメトリー結果である。
【
図4A】
図4Aは、架橋ゴムを有するセパレータのサイクリックボルタンメトリー結果である。
【
図4B】
図4Bは、架橋ゴムを有するセパレータのサイクリックボルタンメトリー結果である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
少なくとも選択実施形態によれば、本開示または発明は、上記問題点又は必要性に対処してよい。少なくとも特定の目的、態様、又は実施形態によれば、本開示又は発明は、例えば湿潤性を増大させ、水分損失を減らし、そしてアンチモン(Sb)中毒を抑制したセパレータを備えた電池を提供することにより、前述の問題を克服する改良されたセパレータ及び/又は電池を提供することができる。
【0030】
少なくとも選択実施形態によれば、本開示または発明は、新規の又は改良されたセパレータ、電池セル、電池、システム、車両、及び/又はこのような新規のセパレータ、電池セル、及び/又は電池の製造方法及び/又は使用方法に関する。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示または発明は、以下の、平板電池、管状電池、液式鉛蓄電池、強化された液式鉛蓄電池(「EFB」)、ディープサイクル電池、ゲル電池、吸収ガラスマット(「AGM」)電池、制御弁式鉛蓄(「VRLA」)電池、ディープサイクルする電池及び/又は部分充電状態(「PSoC」)で動作する電池、無停電電源(「UPS」)用電池、インバータ電池、再生可能エネルギー蓄電池、太陽光又は風力発電蓄電池、車両電池、始動‐照明‐点火(「SLI」)車両電池、アイドリング-スタート-ストップ(「ISS」)車両電池、ハイブリッド電気自動車(「HEV」)用電池、ハイブリッド車両、電気自動車、コールドクランキングアンペア(「CCA」)要求が高い電池、内燃機関用電池、舶用電池用途、航空機用電池、自動車用電池、トラック用電池、オートバイ用電池、全地形型車両用電池、フォークリフト用電池、ゴルフカート用電池、ハイブリッド電気自動車用電池、電気自動車用電池、e‐リキシャ用電池、e‐バイク用電池及び/又は同種のものの電池及び/又は用途のための新規の又は改良された電池セパレータ、及び/又はこのような改良されたセパレータ、セル、電池、システム及び/又は同種のものの改良された製造及び/又は使用方法に関する。また、本明細書には、電池の性能及び寿命を延ばす、電池故障を低減させる、水分損失を減らす、アンチモン(Sb)中毒を抑制する、酸の層化を抑制する、デンドライトの形成を軽減する、酸化安定性を向上させる、フロート電流を改善、維持及び/又は低下させる、充電終了電流を改善する、ディープサイクル電池を充電及び/又は完全充電するのに必要な電流及び/又は電圧を減少させる、内部電気抵抗を減少させる、酸拡散を改善する、鉛蓄電池の均一性を向上させる、及び/又はサイクル性能を改良するための方法、システム及び電池セパレータが開示される。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は、新規なセパレータが湿潤性を改善し、電池の水分損失を低減し、電池のアンチモン(Sb)中毒を低減し、電気抵抗を低減すること、性能強化添加剤又はコーティング、改良された充填剤、空孔率を最適化し、湿潤性を増加させ、酸拡散を増加させること、負極側クロスリブ及び/又は同種のものを含む改良されたセパレータに関する。
【0031】
少なくとも選択された実施形態によれば、本開示又は発明は、電池水分損失を低減する若しくは軽減する又は電池の水素放出を減らし、アンチモン(Sb)中毒を減らし、酸の欠乏を低減する又は軽減する、酸の層化を低減する又は軽減する、デンドライトの成長を低減する又は軽減する、酸化効果を低減する、湿潤性を増加させる、酸拡散を改善させる、均一性を向上させる、そして電気抵抗を低減させることができる、コールドクランキングアンペアを増加させることができる及び/又は同種のもの、並びにこれらの組み合わせである、特に液式鉛蓄電池用のセパレータである、セパレータに関する。または、本明細書には、少なくとも強化された液式鉛蓄電池において電池寿命を延ばす、電池水分損失を減らす又は電池の水素放出を減らす、電池アンチモン中毒を減らす又は酸の欠乏を低減する又は軽減する、酸の層化を低減する又は軽減する、湿潤性を増加させる、酸拡散を改善させる、コールドクランキングアンペアを改善させる、均一性を向上させる及び/又は同種のもの、並びにこれらの任意の組み合わせのための方法、システム、及び電池セパレータが開示されている。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は、セパレータが電池水分損失を減らし、そしてアンチモン(Sb)中毒を減らす、及びこれらの組み合わせのための改良された配合組成を含む強化された液式鉛蓄電池用の改良されたセパレータに関する。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は、セパレータが架橋性成分、性能強化添加剤又はコーティング、非晶質シリカ、オイル吸収が高いシリカ、シラノール基が多いシリカ、OH:Siの比が21:100~35:100であるシリカ、膜の40重量%以上の量の粒子状充填剤を含有するポリオレフィン微多孔質膜及び超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)等のポリマー、シートの厚さを減少させること、厚さを低減させること、オイル含有量を低減させること、湿潤性を増加させること、酸拡散を増加させること及び/又は同種のもの、並びにこれらの任意の組み合わせを含む改良された配合組成を含む強化された液式鉛蓄電池用の改良されたセパレータに関する。
【0032】
図1を参照して、例示的な鉛蓄電池100は、セパレータ300が各電極200、201の.間に挟まれた、交互に並ぶ正極板(又は正極)200と負極板(又は負極)201のアレイ102を有する。アレイ102は、電解液104中に実質的に浸漬される。電解液104は、例えば、硫酸(H
2SO
4)と水(H
2O)の溶液であってもよい。電解液溶液は、例えば、約1.215~1.300の範囲である、約1.28の比重を有してもよい。
【0033】
電池100は、正極200と電気連絡する正極側端子部104及び負極201と電気連絡する負極側端子部106をさらに備える。電極200、201は、
図2A及び
図2Bである、活物質203をドープしてもよい。正極200は、典型的には二酸化鉛(PbO
2)又はその合金であってもよい。負極201は、典型的には鉛(Pb)又はその合金であってもよい。よくある負極合金には、アンチモン(Sb)が含まれている。
【0034】
組成物
特定の実施形態において、例示的な改良されたセパレータは、架橋性である材料及び/又は少なくとも部分的に架橋されてよい材料であってもなくてもよい、天然又は合成基材、加工用可塑剤、充填剤、及び界面活性剤及び/又は水分損失遅延剤等の1つ以上の他の添加剤及び/又はコーティング及び/又は同種のもの、並びにこれらの種々の組み合わせから作られる多孔質膜を含んでよい。上記構成要素の総量を、セパレータ特性及び生産効率等の複数の要因をバランスをとる比率で混合してもよい。このような複数の要因としては、例示的に電池水分損失又は水素放出の抑制、電池アンチモン中毒の抑制、電気抵抗、基本重量、穿刺抵抗、曲げ剛性、酸化抵抗、空孔率、物理的強度等があってもよく、セパレータと電池の両方の製造のための製造実行可能性がさらにあってもよい。
【0035】
セパレータは、多孔質膜に加えて繊維状マットとさらに組み合わせてもよい。また、繊維状マットは、架橋性である材料及び/又は少なくとも部分的に架橋されてよい材料、加工用可塑剤、充填剤、及び界面活性剤及び/又は水分損失遅延剤等の1つ以上の他の添加剤及び/又はコーティング及び/又は同種のもの、並びにこれらの種々の組み合わせを含んでもよい。選択実施形態において、セパレータ及び繊維状マットを単独で又は互いに組み合わせて使用してもよい。
【0036】
特定の実施形態において、例示的な天然又は合成材料は、熱可塑性ポリマーを含んでもよい。例示的な熱可塑性ポリマーは、原則としては、鉛蓄電池での使用に適した全ての耐酸性熱可塑性材料を含んでもよい。選択実施形態において、多孔質膜は、ポリマー、架橋性成分、熱可塑性ポリマー、及びポリオレフィン及び/又は同種のものを含んでもよい。特定の好ましい実施形態において、ポリオレフィンは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐ブテン共重合体、及びこれらの任意の組み合わせを含んでもよいが、ポリエチレンを含むことが好ましい。好ましくは、ポリエチレンは高分子量ポリエチレン(「HMWPE」)(例えば、少なくとも600,000の分子量を有するポリエチレン)である。さらにいっそう好ましくは、ポリエチレンは、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)である。例示的なUHMWPEは、粘度測定法により測定され、マーゴリーズの方程式により算出された少なくとも1,000,000、特に4,000,000より多く、最も好ましくは5,000,000~8,000,000の分子量を有してもよい。さらに、例示的なUHMWPEは、2,160gの標準的負荷を使用したASTMD1238(条件E)で指定され測定された実質ゼロ(0)の標準的負荷メルトインデックスを有してもよい。さらに、例示的なUHMWPEは、130℃で100gのデカリン中0.02gのポリオレフィンの溶液で決定された、600ml/g以上、好ましくは1,000ml/g以上、より好ましくは2,000ml/g以上、及び最も好ましくは3,000ml/g以上の粘度数を有してもよい。
【0037】
特定の実施形態において、多孔質膜は、リグニン、木材パルプ、合成木材パルプ、ガラス繊維、合成繊維、セルロース系繊維、及びこれらの組み合わせを含んでよい。特定の好ましい実施形態において、例示的なセパレータは、熱可塑性ポリマーでできた多孔質膜であってよい。
【0038】
架橋性成分
特定の好ましい実施形態において、例示的な多孔質膜は、少なくとも部分的に架橋されてもよく少なくとも部分的に架橋されなくてもよい架橋性成分を含む。例示的な架橋性成分は、天然ゴム、ラテックス、合成ゴム、ポリマー、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)等のポリビニル、ビスフェノールホルムアルデヒド、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0039】
本明細書で開示される新規なセパレータは、ゴムを含んでよい。本明細書で使用されるように、ゴムは、少なくともゴム、ラテックス、天然ゴム、合成ゴム、架橋もしくは架橋性ゴム、硬化もしくは未硬化ゴム、クラムもしくはグランドゴム、破砕されたもしくはリサイクルされたタイヤ材料、又はこれらの混合物を指すものとする。例示的な天然ゴムは、様々な供給者から市販されている1つ以上のポリイソプレン混合物を含んでよい。例示的な合成ゴムには、メチルゴム、ポリブタジエン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ブロモブチルゴム、ポリウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、多硫化ゴム、クロロスルホニルポリエチレン、ポリノルボルネンゴム、アクリル酸ゴム、フッ素系ゴム、シリコーンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム(「EPM」及び「EPDM」)、エチレン/ビニルアセテートゴムなどの共重合体ゴム、並びにこれらの組み合わせが含まれる。ゴムは、架橋ゴム又は非架橋の架橋性ゴムであってもよく、特定の好ましい実施形態において、ゴムは非架橋の架橋性ゴムである。特定の実施形態において、ゴムは、架橋ゴムと非架橋の架橋性ゴムの混合物であってよい。
【0040】
選択実施形態において、架橋性成分は、以下の、熱架橋、放射線架橋、化学的架橋、物理的架橋、圧力架橋、酸化架橋、及びこれらの組み合わせを含む方法のうち少なくとも1つにより少なくとも部分的に架橋されてもよい。また、例示的な架橋性成分は、電子線、γ線、紫外光、加硫、過酸化水素(H2O2)、及びこれらの組み合わせであるプロセスのうち少なくとも1つへの暴露により少なくとも部分的に架橋されてもよい。さらに、例示的な架橋性成分は、共有結合、イオン結合、及びこれらの組み合わせによって少なくとも部分的に架橋されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、例示的なセパレータは、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、フッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリー3ーヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリ(酢酸ビニル)(poly(vinly acetate))(PVAc)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリスチレン(PS)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA actactic)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(カーボネート)(PC)、ポリスルホン及びこれらの種々の組み合わせを含んでもよく含まなくてもよい。
【0042】
可塑剤
特定の実施形態において、例示的な加工用可塑剤は、加工油、石油、パラフィン系鉱油、鉱油、及びこれらの任意の組み合わせを含んでよい。加工用可塑剤によりセパレータの物理的形状への押し出し加工及び成形等の、製造加工が容易になってもよく、その後最終生成物を仕上げる前に除去及び/又は抽出されてもよい。
【0043】
充填剤
セパレータは、高い構造形態を有する充填剤を含有することができる。例示的な充填剤は、シリカ、乾燥微粉シリカ、沈降シリカ、非晶質シリカ、極めてもろいシリカ、アルミナ、タルク、魚粉、魚骨粉、炭素、カーボンブラック等、及びこれらの組み合わせを含むことができる。特定の好ましい実施形態においては、充填剤は1つ以上のシリカである。高い構造形態とは、増大した表面積を指す。充填剤は、例えば100m2/g、110m2/g、120m2/g、130m2/g、140m2/g、150m2/g、160m2/g、170m2/g、180m2/g、190m2/g、200m2/g、210m2/g、220m2/g、230m2/g、240m2/g、又は250m2/gより大きい、大きい表面積を有することができる。いくつかの実施形態においては、充填剤(例えばシリカ)は、100~300m2/g、125~275m2/g、約150~250m2/g、又は好ましくは170~220m2/gの表面積を有することができる。表面積は、多点BET窒素表面積用TriStar3000(商標)を使用して査定することができる。高い構造形態のために充填剤は、製造プロセス中により多くのオイルを保持できる。例えば、高い構造形態の充填剤は、例えば約150ml/100g、175ml/100g、200ml/100g、225ml/100g、250ml/100g、275ml/100g、300ml/100g、325ml/100g、又は350ml/100gである高レベルのオイル吸収を有することができる。いくつかの実施形態では、充填剤(例えばシリカ)は、200~500ml/100g、200~400ml/100g、225~375ml/100g、225~350ml/100g、225~325ml/100g、好ましくは250~300ml/100gのオイル吸収を有することができる。いくつかの例においては、オイル吸収が約266ml/100gであるシリカ充填剤が使用される。このようなシリカ充填剤は、水分含有量が約5.1%であり、BET表面積が178m2/gであり、平均粒径が23μmであり、230メッシュふるい残分値が0.1%であり、バルク密度が135g/Lである。
【0044】
比較的高いレベルのオイル吸収と比較的高いレベルの可塑剤(鉱油等)に対する親和性を有するシリカは、本明細書に示されるタイプの例示的な鉛蓄電池セパレータを形成する場合、ポリオレフィン(ポリエチレン等)及び可塑剤の混合物中で望ましく分散性となる。過去に、いくつかのセパレータでは、このようなセパレータ又は膜を作製するため多量のシリカを使用する場合、シリカ凝集に起因して分散性が低いという欠点があった。本明細書に示され記載される本発明のセパレータの少なくともいくつかでは、溶融ポリオレフィンの冷却時にポリオレフィンの分子運動を阻害するシリカ凝集又は塊(agglomerate)がほとんど存在しないので、ポリエチレン等のポリオレフィンはシシケバブ構造を形成する。これは全て、作製されるセパレータ膜中のイオン透過性の向上に寄与し、シシケバブ構造又は形態の形成は、全体的なERの低いセパレータを生成しながら、機械的強度が維持され、ひいては改善されることを意味する。
【0045】
いくつかの選択実施形態において、充填剤(シリカ等)は、もろくてもよく、及び/又は25μm以下、いくつかの例では22μm、20μm、18μm、15μm、又は10μm以下の平均粒径を有してもよい。いくつかの例においては、充填剤粒子の平均粒径は15~25μmである。シリカ充填剤の粒径及び/又はシリカ充填剤の表面積はシリカ充填剤のオイル吸収に寄与する。最終生成物又はセパレータ中のシリカ粒子は、上述した粒径範囲内に収まってもよい。ただし、原料として使用される最初のシリカは、1つ以上の塊及び/又は凝集体として発生し、約200μm以上の大きさを有してよい。
【0046】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明のセパレータを作製するために使用されるシリカは、鉛蓄電池セパレータを作製するため以前使用されたシリカ充填剤に比べ、表面シラノール基(表面ヒドロキシル基)の量又は数が増大している。例えば、本明細書の特定の好ましい実施形態と共に使用されてもよいシリカ充填剤は、既知のポリオレフィン鉛蓄電池セパレータを作製するために使用される既知のシリカ充填剤に比べ、シラノール及び/又はヒドロキシル表面基が少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、又は少なくとも35%多いシリカ充填剤としてもよい。
【0047】
シラノール基(Si‐OH)と元素シリコン(Si)との比(Si‐OH)/Siは、例えば以下のように測定することができる。
【0048】
1.ポリオレフィン多孔質膜を凍結粉砕し(特定の発明の膜は本発明にしたがった様々なオイル吸収シリカを含む)、粉末状サンプルを固体核磁気共鳴分光分析(29Si‐NMR)のために調製する。
2.粉末状サンプルに29Si‐NMRを実行し、ヒドロキシル基に直接結合しているSiスペクトル強度(スペクトル:Q2及びQ3)と酸素原子にのみ直接結合しているSiスペクトル強度(スペクトル:Q4)とを含むスペクトルを観察する。各NMRピークスペクトルの分子構造は以下のように表すことができる。
・Q2:(SiO)2‐Si*‐(OH)2:2つのヒドロキシル基を有する
・Q3:(SiO)3‐Si*‐(OH):1つのヒドロキシル基を有する
・Q4:(SiO)4‐Si*:全てのSi結合はSiOである
ここで、Si*はNMR観察によって元素と証明される
3.観察に用いた29Si‐NMRの条件は以下の通りである。
・機器:Bruker BioSpin Abance 500
・共鳴周波数:99.36MHz
・サンプル量:250mg
・NMRチューブ:直径7m
・観察法:DD/MAS
・パルス幅:45度
・繰り返し時間:100秒
・スキャン:800
・マジック角回転:5,000Hz
・化学シフト基準:シリコーンゴム(‐22.43ppm)
4.数値的に、スペクトルのピークを分離し、Q2、Q3、及びQ4に属する各ピークの面積比を計算する。その後、これらの比に基づいて、Siに直接結合しているヒドロキシル基(‐OH)のモル比を計算する。数値ピーク分離の条件は以下のように実施される。
・適合領域:‐80~‐130ppm
・初期ピークトップ:Q2では‐93ppm、Q3では‐101ppm、Q4では‐111ppm
・初期半値幅:Q2では400Hz、Q3では350Hz、Q4では450Hz
・ガウス関数比:初期80%、適合中70~100%
5.Q2、Q3、及びQ4のピーク面積比(合計は100)は、適合により得られた各ピークに基づいて計算される。NMRピーク面積は、各シリケート結合構造の分子数に対応した(このため、Q4NMRピークでは、そのシリケート構造内に4つのSi‐O‐Si結合が存在する。Q3NMRピークでは、そのシリケート構造内に3つのSi‐O‐Si結合が存在し、1つのSi‐OH結合が存在する。Q2NMRピークでは、そのシリケート構造内に2つのSi‐O‐Si結合が存在し、2つのSi‐OH結合が存在する)。したがって、Q2、Q3、及びQ4のそれぞれのヒドロキシル基(‐OH)の数を、2、1、及び0で乗算する。これら3つの結果を合計する。合計値は、Siに直接結合しているヒドロキシル基(‐OH)のモル比を示す。
【0049】
特定の実施形態において、シリカは、29Si-NMRにより測定されるSi基に対するOH基のモル比を有してもよく、約21:100~35:100の範囲内であってもよく、いくつかの好ましい実施形態においては、約23:100~約31:100、特定の好ましい実施形態においては、約25:100~約29:100、他の好ましい実施形態においては少なくとも約27:100以上の範囲内である。
【0050】
いくつかの選択実施形態においては、上述した充填剤の使用によって、押し出しステップ中に使用する加工油の割合を高めることが可能となる。セパレータの多孔性構造は部分的に押し出し後のオイル除去によって形成されるので、初期の吸油量が多いと、最適化された空孔率又は最適化された空隙容積が生じる。加工油は押し出しステップの不可欠の要素であるが、オイルはセパレータの非伝導要素である。セパレータ内の残留油は、セパレータが正極と接触した場合にこれを酸化から保護する。従来のセパレータの製造では、処理ステップにおける正確なオイル量を制御してもよい。概して言えば、従来のセパレータは、50~70重量%の加工油、いくつかの実施形態では55~65重量%、いくつかの実施形態では60~65重量%、いくつかの実施形態では約62重量%の加工油を用いて製造される。油を約59%未満に減らすと、押出機の構成要素に対する摩擦が増大するため燃焼(burning)が生じることが知られている。しかしながら、オイルを規定量よりも著しく増やすと、乾燥段階中に収縮が生じ、寸法の不安定さを招く可能性がある。油含有量を増大させるこれまでの試みは油除去中に孔の収縮又は凝縮を生じたが、本明細書に開示されるように調製されたセパレータでは、油除去中に観察される収縮及び凝縮は、生じるとしても最小限である。したがって、孔径及び寸法安定性を損なうことなく空孔率を最適化させ、これによって電気抵抗を低減することができる。
【0051】
特定の選択実施形態において、上述した充填剤の使用によって、完成セパレータにおける最終オイル濃度の低下が可能となる。オイルは不導体であるので、オイル含有量の低減はセパレータのイオン伝導度を増大させ、セパレータのERの低下を促進することができる。このため、最終オイル含有量が低減したセパレータは高い効率を有することができる。特定の選択実施形態においては、最終加工油含有量が(重量で)20%未満、例えば約14%から20%、いくつかの特定の実施形態では19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、又は5%未満のセパレータが提供される。
【0052】
充填剤はさらに、電解質イオンの水和層(hydration sphere)と呼ばれるものを低減させて、膜を通るイオン輸送を強化し、この場合も、強化された液式電池又はシステムのような電池の全体的な電気抵抗すなわちERを低減することができる。
【0053】
1又は複数の充填剤は、セパレータを通る電解質及びイオンの流れを容易にする様々な種(金属のような極性種等)を含んでもよい。このようなものも、このようなセパレータが強化された液式電池等の液式電池で使用される際に、全体的な電気抵抗の低減を引き起こす。
【0054】
特定の選択実施形態において、充填剤は、アルミナ、タルク、シリカ、又はこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの特定の実施形態では、充填剤は沈降シリカであってもよく、いくつかの実施形態では、沈降シリカは非晶質シリカである。いくつかの実施形態では、セパレータ全体を通して充填剤を微細分散でき、それによりねじれ及び電気抵抗を低減するシリカの凝集又は塊の使用が好ましい。特定の好ましい実施形態において、充填剤(シリカ等)は、破砕度の高さにより特徴づけられる。破砕性が良好だと多孔質膜の押出中にポリマー全体を通して充填剤の分散が強化され、空孔率が増強し、したがって、セパレータ中の全体的なイオン透過性が増強する。破砕性は、シリカ粒子又は材料(凝集又は塊)がサイズが小さく分散性が高い粒子、断片又は構成要素へと分解される能力、性質、又は傾向として測定されてもよい。破砕性が高いシリカは押出加工又は押出加工前の混合加工等の既存の製造プロセス、又は超音波分解等の追加プロセス中に分解されてもよい。
【0055】
1つ以上の上記特徴を有する充填剤を使用すると最終空孔率が高いセパレータを生産することができる。本明細書に開示されるセパレータは、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%又は70%より大きい最終空孔率を有してもよい。空孔率は、気体吸着法を使用して測定してもよい。空孔率は、BSーTEー2060により測定してもよい。
【0056】
いくつかの選択実施形態において、多孔性セパレータは、平均細孔径を約1μm、0.9μm、0.8μm、0.7μm、0.6μm、0.5μm、又は0.1μm.以下に維持しながら大きい細孔の割合を高めてもよい。
【0057】
添加剤
特定の実施形態において、例示的なセパレータは、セパレータ又は多孔質膜に添加される1つ以上の性能強化界面活性剤、薬剤、又は添加剤を含有してもよい。性能強化添加剤は、1つ以上の界面活性剤、湿潤剤、水分損失(電池内で示される)遅延剤、アンチモン抑制添加剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止添加剤、UV保護添加剤及び/又は同種のもの、及びこれらの任意の組み合わせであってもよい。特定の実施形態において、添加界面活性剤は、イオン性、又は非イオン性界面活性剤であってよい。特定の実施形態において、性能強化添加剤は、架橋性成分を有してもよい。いくつかの実施形態において、架橋性成分は、少なくとも部分的に架橋されていてもよい。構成要素及び架橋方法は、概して上に記載したものと実質的に同一であってもよい。
【0058】
本明細書に記載の特定の実施形態において、少量のイオン性又は非イオン性界面活性剤が本発明の多孔質膜又はセパレータに添加される。界面活性剤の量が少ないため、望ましい特徴は、より少量の全有機体炭素(「TOC」)及び/又はより少量の揮発性有機化合物(「VOC」)を含むことができる。
【0059】
特定の適切な界面活性剤は非イオン性である一方、他の適切な界面活性剤はアニオン性である。添加剤は、単一の界面活性剤であっても、例えば2つ以上のアニオン性界面活性剤、2つ以上の非イオン性界面活性剤、又は少なくとも1つのイオン性界面活性剤及び少なくとも1つの非イオン性界面活性剤などの2つ以上の界面活性剤の混合物であってもよい。特定の適切な界面活性剤は、約1から約6のHLBを有してもよく、特定の好ましい値は、約1から約3であってもよい。これらの特定の適切な界面活性剤を、本明細書に記載の本発明のセパレータと関連して使用することによって、鉛蓄電池に使用される場合に、その鉛蓄電池の水分損失の低減、アンチモン中毒の抑制、サイクリングの改善、フロート電流の減少、フロート電位の減少及び/又は同種のもの、又はこれらの任意の組み合わせをもたらす、より一層改良されたセパレータをもたらすことができる。適切な界面活性剤は、アルキル硫酸塩、アルキルアリールスルホネート塩、アルキルフェノールーアルキレンオキシド付加生成物、せっけん、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アニオン性スルホコハク酸塩などの1つ以上のスルホコハク酸塩、スルホコハク酸塩のジアルキルエステル、アミノ化合物(第一級、第二級、第三級アミン、又は第四級アミン)、エチレンオキシド及び酸化プロピレンのブロック共重合体、重合性ユニット、エポキシ、ウレタン、種々のポリエチレンオキシド、並びにモノ及びジアルキルホスフェートエステルの塩等の界面活性剤を含む。添加剤は、ポリオール脂肪酸エステル、ポリエトキシル化エステル、ポリエトキシル化アルコール、アルキルポリグリコシド及びその混合物などのアルキル多糖類、アミンエトキシレート、ソルビタン脂肪酸エステルエトキシレート、オルガノシリコン系界面活性剤、エチレンビニルアセテートターポリマー、エトキシル化アルキルアリールリン酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤を含んでよい。
【0060】
特定の実施形態において、添加剤は、式(I)の化合物により表すことができる。
【0061】
R(OR1)n(COOMx+
1/x)m(I)
【0062】
ここで、
・Rは、酸素原子により遮られてよい、10~4200個の炭素原子、好ましくは13~4200個の炭素原子を有する直鎖状又は非芳香族炭化水素ラジカルであり、
・R1=H,‐(CH2)kCOOMx+
1/x又は‐(CH2)k‐SO3Mx+
1/x、好ましくはH、ここでk=1又は2であり、
・Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属イオン、H+又はNH4
+であり、ここで、全ての変数Mが同時にH+の意味を有しているわけではなく、
・n=0又は1であり、
・m=0又は10~1400の整数であり、
・x=1又は2である。
【0063】
式(I)にしたがった化合物における酸素原子対炭素原子の比率は1:1.5~1:30の範囲であり、m及びnは同時に0となることはできない。ただし、好ましくは、変数n及びmの1つのみが0でない。
【0064】
非芳香族炭化水素ラジカルにより、芳香族基を含まない、又はそれ自体を表す基が意図される。炭化水素ラジカルは、酸素原子により遮られてよい(すなわち1つ以上のエーテル基を含む)。
【0065】
Rは、好ましくは、酸素原子により遮られてよい直鎖又は分岐脂肪族炭化水素ラジカルである。飽和、非架橋炭化水素ラジカルが、非常に特に好ましい。ただし、上記のとおり、Rは、特定の実施形態において芳香環を含むものであってよい。
【0066】
電池セパレータの製造に式(I)の化合物を使用することによって、セパレータは、酸化破壊から効果的に保護されることができる。
【0067】
式(I)にしたがった化合物を含む電池セパレータが好ましく、ここで、
・Rは、1~60個、好ましくは1~20個及び非常に特に好ましくは1~8個の酸素原子により遮られてもよい10~180個、好ましくは12~75個及び非常に特に好ましくは14~40個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルであり、特に好ましくは式R2-[(OC2H4)p(OC3H6)q]-の炭化水素ラジカルであり、ここで、
〇R2ハ、10~30個の炭素原子、好ましくは12~25個、特に好ましくは14~20個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、R2は、直鎖状又は芳香環を含むなど非直鎖状であってよく、
〇Pは、0~30、好ましくは0~10、特に好ましくは0~4の整数であり、
〇qは、0~30、好ましくは0~10、特に好ましくは0~4の整数であり、
〇化合物は、p及びqの合計が0~10、特に0~4であると特に好ましく、
・n=1であり、
・m=0である。
【0068】
式R2-[(OC2H4)p(OC3H6)q]-は、角括弧内の基の配列が示されているものとは異なる化合物も含まれていると理解すべきである。例えば、本発明によれば、括弧内のラジカルが(OC2H4)基と(OC3H6)基を置換することにより形成される化合物も適切である。
【0069】
R2が10~20個、好ましくは14~18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキルラジカルである添加剤は、特に有利であることが証明されている。OC2H4は、好ましくはOCH2CH2を表し、OC3H6は、OCH(CH3)2及び/又はOCH2CH2CH3を表す。
【0070】
好ましい添加剤として、特にアルコール(p=q=0、m=0)が言及されてもよい。第一級アルコールが特に好ましく、脂肪アルコールエトキシレート(p=1~4、q=0)、脂肪族アルコールプロポキシレート(p=0、q=1~4)及び脂肪族アルコールアルコキシレート(p=1~2、q=1~4)第一級アルコールのエトキシレートが好ましい。脂肪族アルコールアルコキシレートは、例えば、対応するアルコールのエチレンオキシド又は酸化プロピレンとの反応を通じて入手可能である。
【0071】
水及び硫酸に溶けない、又は単に溶けにくいm=0型の添加剤は、特に有利であることが証明されている。
【0072】
式(I)にしたがった化合物を含む添加剤も好ましく、ここで、
・Rは、20~4200個、好ましくは50~750個及び非常に特に好ましくは80~225個の炭素原子を有するアルカンラジカルであり、
・Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属イオン、H+又はNH4
+、特に、Li+、Na+及びK+などのアルカリ金属イオン又はH+であり、全ての変数Mが同時にH+の意味を有するわけではなく、
・n=0であり、
・mは、10~1400の整数であり、
・x=1又は2である。
【0073】
特定の実施形態において、適切な添加剤には、特に、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びアクリル酸‐メタクリル酸共重合体が含まれてよく、その酸基は、好ましくは40%、特に好ましくは80%など、少なくとも部分的に中和されている。割合は、酸基の数を指す。非常に特に好ましいのは、全体的に塩の形態で存在するポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)である。適切な塩には、Li、Na、K、Rb、Be、Mg、Ca、Sr、Zn、及びアンモニウム(NR4、Rは水素又は炭素官能基である)が含まれる。ポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及びアクリル酸―メタクリル酸共重合体が含まれてよい。ポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)、特に平均モル質量Mwが1,000~100,000g/mol、特に好ましくは1,000~15,000g/mol及び非常に特に好ましくは1,000~4,000g/molであるポリアクリル酸が好ましい。ポリアクリル酸(ポリメタクリル酸)ポリマー及び共重合体の分子量は、ポリマーの水酸化ナトリウム溶液で中和された1%水溶液の粘度を計測することにより確認される(フィケンチャーの定数)。
【0074】
アクリル酸(メタクリル酸)の共重合体、特に、アクリル酸(メタクリル酸)に加えて、エチレン、マレイン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及び/又はアクリル酸エチルヘキシルをコモノマーとして含む共重合体も適切である。少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも80重量%のアクリル酸(メタクリル酸)モノマーを含む共重合体が好ましく、割合は、モノマー又はポリマーの酸性型に基づく。
【0075】
ポリアクリル酸ポリマー及び共重合体を中和するために、水酸化カリウム及び特に水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属水酸化物が特に適切である。また、セパレータを強化するためのコーティング及び/又は添加剤には、例えば金属アルコキシドが含まれてよく、ほんの一例として(限定する意図はなく)、金属は、Zn、Na、又はAl、ほんの一例としてナトリウムエトキシドであってよい。
【0076】
いくつかの実施形態において、多孔質ポリオレフィン多孔質膜は、そのような層の片側又は両側にコーティングを含んでよい。このようなコーティングは、界面活性剤又は他の材料を含んでよい。いくつかのの実施形態において、コーティングは、参照によって本明細書に組み込まれる、例えば米国特許第9,876,209号に記載の1つ以上の材料を含んでよい。このようなコーティングは、例えば電池システムの水分損失又は水素放出を低減させることにより、電池寿命を延長してもよい。
【0077】
特定の実施形態において、セパレータは、性能強化添加剤を核生成添加剤及び/又はコーティングの形状で含んでもよい。核生成添加剤は、好ましくは電池の電解液中で安定であってもよく、さらに電解液内に分散されてもよい。
【0078】
核生成添加剤及び/又はコーティングの例示的な形状は、炭素、導電性炭素、黒鉛、人造黒鉛、活性炭、カーボン紙、アセチレンブラック、カーボンブラック、高表面積カーボンブラック、グラフェン、高表面積グラフェン、ケッチェンブラック、炭素繊維、炭素フィラメント、カーボンナノチューブ、連続気泡炭素フォーム、炭素マット、炭素フェルト、炭素バックミンスターフラーレン(バッキーボール)、水性炭素懸濁液、及びこれらの組み合わせなどの、炭素であってもよく、含んでもよい。炭素のこれらの多くの形状に加えて、核生成添加剤及び/又はコーティングは硫酸バリウム(BaSO4)を単独で又は炭素と組み合わせてのいずれかで全体として又は一部として含んでもよい。
【0079】
核生成コーティングは、完成セパレータにスラリーコーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、又は真空蒸着、化学蒸着(「CVD」)などの方法により適用されてもよい。さらに、添加剤及び/又はコーティングは、織物又は不織布のいずれかのカーボン紙として提供されてもよく、セパレータと電極の間に分散されても密着してもよい。
【0080】
核生成添加剤及び/又はコーティングは、セパレータの内部にあってもよく、又はセパレータの電極に面する片面又は両面にあってもよい。一般的には、核生成添加剤のコーティング又は層は、負極に面する表面にのみあってよい。しかしながら、正極に面する表面、又は両面にあってもよい。
【0081】
特定の実施形態において、核生成添加剤は、基材の押し出し混合物に加えられ、セパレータで押し出されるか、又はセパレータの層として共押出しされてもよい。押し出し混合物に含まれるとき、核生成添加剤はシリカ充填剤の一部を5~75重量%だけ置き換わってもよい。例えば、核生成添加剤は、約5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%又は約75重量%であってもよい。他の例示的な実施形態において、核生成添加剤は、約75重量%,70重量%、65重量%、60重量%、55重量%、50重量%、45重量%、40重量%、35重量%、30重量%、25重量%、20重量%、15重量%、10重量%、又は約5重量%以下であってもよい。
【0082】
物理的性質
例示的なセパレータは、約5μm未満、好ましくは約1μm未満の細孔を有する微多孔質膜、メソ多孔質膜、又は約1μmより大きい細孔を有するマクロ多孔質膜などの多孔質膜のウェブを備えてもよい。多孔質膜は、好ましくはサブミクロンから最大100μmまでである細孔径を有してもよく、特定の実施形態においては、約0.1~約10μmであってもよい。本明細書に記載のセパレータ膜の空孔率は、特定の実施形態において50~60%より大きくてよい。特定の選択実施形態においては、多孔質膜は、平坦又はその表面から延びるリブを有してもよい。
【0083】
リブ
図2を参照すると、例示的なセパレータ300は、反対の膜面302a、302b及びそこから延びるリブ304、306のアレイとともに示される。典型的な鉛蓄電池において、例示的なセパレータ300は、正極面302aが正極(
図1参照)と隣接して面し、負極面302bが負極(
図1参照)と隣接して面するように、電極間に配置される。正極側リブ304のアレイは正極面302aから延び、負極側リブ306のアレイは負極面302bから延びる。示されるように、正極側リブ304は、セパレータ300の縦方向mdに縦に配置され、負極側リブ306は、セパレータ300の横方向cmdに横に配置され、このように、クロス負極側リブと呼ばれてもよい。示されるように、リブ304、306は、連続した直線的リブであるように示されるが、好ましい実施形態では、さまざまな構成及び/又は形状を有してもよい。
【0084】
例えば、いずれのリブ304、306のアレイも、中実リブ、分離した断続リブ、連続式リブ、非連続式リブ、非連続式ピーク、非連続式突起物、傾斜リブ、対角線リブ、直線的リブ、セパレータの縦方向md(すなわち、電池100中のセパレータ300の上部から下部へ向かう(
図1参照))に実質的に縦に延びるリブ、セパレータの横方向cmd(すなわち、電池100中のセパレータ300の横方向、縦方向mdに対して直角(
図1参照))に実質的に横に延びるリブ、セパレータの横方向に実質的に横切って延びるリブ、横切って延びる負極側ミニリブ、負極側クロスリブ(NCR)、酸混合リブ、分離した歯、歯のあるリブ、鋸歯状の縁、鋸歯状リブ、狭間胸壁、狭間胸壁状リブ、湾曲状リブ、連続式折曲状リブ、非連続式折曲状リブ、S字型リブ、連続式ジグザグ鋸歯状リブ、折れた断続的ジグザグ鋸歯状リブ、溝、チャネル、テクスチャー領域、エンボス、窪み、柱状物、ミニ柱状物、多孔質、非多孔質、クロスリブ、ミニリブ、クロスミニリブ、及びこれらの任意の組み合わせの一様な組、交互な組又は混合物もしくは組み合わせであってもよい。
【0085】
さらに、リブ304、306は、セパレータのエッジに対して平行でも直角でもない角度により規定される、複数のリブ、好ましくは断続リブであってもよい。言い換えれば、この角度はセパレータの縦方向に対して定義されてもよく、ゼロ度(0°)より大きく180度(180°)未満、又は180度(180°)より大きく360度(360°)未満であってもよい。また、この角度はセパレータの横方向に対して定義されてもよく、ゼロ度(0°)より大きく180度(180°)未満、又は180度(180°)より大きく360度(360°)未満であってもよい。傾斜リブパターンは、特定の電池中の酸の層化を低減または排除を可能にする、より好ましいDaramic(登録商標)RipTide(商標)酸混合リブ形状であってよい。
【0086】
なお、正極側リブを、代わりに、これらが負極と接触するように例示的な電池中に配置してよいことに留意すべきである。同様に、負極側リブを、代わりに、これらが正極と接触するように例示的な電池中に配置してよい。
【0087】
リブは、横エッジから横エッジまでセパレータの幅を横切って一様に延びてよい。これは、ユニバーサルプロファイルとして公知である。あるいは、セパレータは、側面パネルに配置されたマイナーリブを有する横エッジと隣接する側面パネルを備えてもよい。これらのマイナーリブは、一次リブより密接に配置され、より小さくてもよい。例えば、マイナーリブは、一次リブの高さの25%~50%であってもよい。側面パネルは代わりに平坦であってもよい。側面パネルは、セパレータをエンベロープする場合に行うように、セパレータのエッジをセパレータの別のエッジにシーリングする補助を行うことができるが、本明細書において下記に議論される。
【0088】
選択例示的な実施形態においては、負極側リブの少なくとも一部は、好ましくは、正極側リブの高さの約5%~約100%の高さを有してもよい。いくつかの例示的な実施形態では、負極側リブの高さは、正極側リブの高さと比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、95%、または100%であってよい。他の例示的な実施形態では、負極側リブの高さは、正極側リブの高さと比較して、約100%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%以下であってよい。
【0089】
バックウェブ厚さ
いくつかの実施形態において、多孔性セパレータ膜は、約50μm~約1.0mmのバックウェブ厚さを有することができる。例えば、バックウェブ厚さは、約50μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、又は1.0mmであってもよい。他の例示的な実施形態において、バックウェブ厚さTBACKは、約1.0mm、900μm、800μm、700μm、600μm、500μm、400μm、300μm、200μm、100μm、又は50μm以下であってもよい。特定の実施形態により、例えば、約10μm~約50μm厚さである、50μm以下の薄い厚さの非常に薄く平らなバックウェブ厚さが与えられる。
【0090】
例示的なセパレータの全体の厚さ(バックウェブ厚さ足す正極側及び負極側リブ高さ)は、典型的には約250μm~約4.0mmに及ぶ。自動車用スタート/ストップ電池に使用されるセパレータの全体の厚さは、典型的には約250μm~約1.0mmである。工業用の牽引型スタート/ストップ電池に使用されるセパレータの全体の厚さは、典型的には約1.0mm~約4.0mmである。
【0091】
形状/エンベロープ
セパレータ300は、平板、1つ以上のリーフ、ラップ、s‐ラップ、スリーブとして、又はエンベロープもしくはポケットセパレータとして設けてもよい。セパレータが、正極に面する2つの内側面と、隣接する負極に面する2つの外側面とを有するように、例示的なエンベロープセパレータは、正極を包んでもよい(「正極包囲セパレータ」)。あるいは、セパレータが、負極に面する2つの内側面と、隣接する正極に面する2つの外側面とを有するように、別の例示的なエンベロープセパレータは、負極を包んでもよい(「負極包囲セパレータ」)。このようなエンベロープセパレータでは、下部エッジは、折り畳まれた又は封止された折り目エッジであってよい。さらに、横エッジは、連続的又は断続的に封止された継ぎ目エッジであってよい。エッジは接着剤、熱、超音波溶接及び/又は同種のもの、又はこれらの任意の組み合わせによって結合又は封止されてよい。
【0092】
特定の例示的なセパレータは、ハイブリッドエンベロープを形成するために処理されてもよい。ハイブリッドエンベロープは、エンベロープを形成するためにセパレータシートを半分に折り、セパレータシートのエッジを互いに結合する前、結合中又は結合した後に1つ以上の切れ目又は開口を形成することにより設けることができる。開口の長さは、エッジ全体の長さの少なくとも1/50、1/25、1/20、1/15、1/10、1/8、1/5、1/4、又は1/3であってよい。開口の長さは、エッジ全体の長さの1/50~1/3、1/25~1/3、1/20~1/3、1/20~1/4、1/15~1/4、1/15~1/5又は1/10~1/5であってよい。ハイブリッドエンベロープは、1~5個、1~4個、2~4個、2~3個又は2個の開口を有することができ、これらは、下部エッジの長さに沿って均等に配置されてもよいし、均等に配置されなくてもよい。エンベロープの隅には開口がないことが好ましい。切れ目は、セパレータがエンベロープを作るために折り曲げられ、封止された後に切断されてよく、又は切れ目は、多孔質膜をエンベロープの形にするのに先立って形成されてよい。
【0093】
セパレータ300構成のいくつかの他の例示的な実施形態は、負極又は正極エンベロープ、負極又は正極スリーブ、負極又は正極ハイブリッドエンベロープを含み、両電極は包まれ又はスリーブ付けされてよく、そしてこれらの任意の組み合わせを含む。
【0094】
電気抵抗
特定の選択された実施形態において、開示されたセパレータは、低下した電気抵抗(「ER」)、例えば、約200mΩ・cm2、180mΩ・cm2、160mΩ・cm2、140mΩ・cm2、120mΩ・cm2、100mΩ・cm2、80mΩ・cm2、60mΩ・cm2、50mΩ・cm2、40mΩ・cm2、30mΩ・cm2、又は20mΩ・cm2以下の電気抵抗を示す。種々の実施形態において、本明細書中に記載のセパレータは、厚さが同じ既知のセパレータと比較してERが約20%以上低下することを示す。例えば、既知のセパレータは、60mΩ・cm2のER値を有し、したがって、同じ厚さの本発明によるセパレータは、約48mΩ・cm2未満のER値を有することになるだろう。
【0095】
本発明にしたがってERテスト評価するためにサンプルセパレータを検査するためには、最初に準備しなければならない。そうするために、サンプルセパレータを、好ましくは脱塩水槽に沈め、次いでこの水を沸騰させ、沸騰した脱塩水槽中で10分後セパレータを取り出す。取り出した後、余分な水分をセパレータから振り落とし、次いで27℃±1℃で比重が1.280の硫酸槽に配置する。セパレータを硫酸槽に20分間浸漬する。その後セパレータは電気抵抗を試験する準備ができている。
【0096】
製造
選択実施形態において、例示的なセパレータは、押出機において構成要素(基材及び/又は架橋材料、充填剤、加工油、及び/又は界面活性剤)を混合することにより作られてよい。少なくとも1つの好ましい実施形態において、セパレータの構成要素は、例えば約1ー50重量%の架橋性成分(例えばゴム及び/又はラテックス)及び/又は約5~15重量%のポリマー(例えばポリエチレン)、約10~75重量%の充填剤(例えばシリカ)、及び約10~85%の加工用可塑剤(例えば鉱油)を含有してもよい。セパレータは、構成要素を加熱された押出機に通し、押出機により生成された押し出し物を型に通して2つの加熱されたプレス又はカレンダースタックもしくはロールにより形成されたニップに入れて連続ウェブを形成することにより作成してよい。溶媒を用いて相当量の加工用可塑剤をウェブから抽出し、次に乾燥により溶媒を除去してもよい(例えば強制対流を伴う又は伴わない加熱)。次にウェブを1つ以上の性能強化添加剤(例えば界面活性剤及び/又は電池水分損失遅延剤)により被覆してもよい。
添加剤は、本明細書中の他の所に記載の方法により適用されてよい。次にウェブを所定の幅のレーンに細長く切って、ロールに巻き付けてもよい。さらに、プレス又はカレンダーロールには、様々な溝パターンが彫り込まれ、リブ、溝、テクスチャー領域、エンボス、及び/又は本明細書において実質的に記載されるようなものを付与してもよい。構成要素の量は全て、実行可能性及び望ましいセパレータ特性、例えば電気抵抗、基本重量、穿刺抵抗、曲げ剛性、酸化抵抗、空孔率、物理的強度、ねじれなどのためにバランスが保たれる。
【0097】
押出機に構成要素を添加するのに加えて及び/又は代わりに、特定の実施形態では押し出した後に架橋性成分を多孔質膜に結合する。例えば架橋性成分を、セパレータの片側又は両側、好ましくは負極に面する側に、架橋性成分(例えば、ゴム及び/又はラテックス、任意選択的にシリカ及び/又は水)を含む液体スラリーによってコーティングし、次に、この材料の膜が例示的な多孔質膜の面に形成されるように乾燥及び/又は少なくとも部分的に架橋させてよい。特定の実施形態において、スラリーは1つ以上の性能強化添加剤(例えば界面活性剤及び/又は電池水分損失遅延剤)を含有することができ、鉛蓄電池に使用するためのスラリーに添加してもよい。乾燥後、多孔質層及び/又は膜がセパレータの表面に形成され、この多孔質層及び/又は膜は多孔質膜に非常にしっかりと付着し、仮にあったとしても電気抵抗をわずかしか増加させない。架橋性成分を添加した後、セパレータをさらに機械プレス又はカレンダースタックもしくはロールを使用して圧縮してよい。ゴム及び/又はラテックスを塗布する考えられる他の方法は、ゴム及び/又はラテックススラリーをセパレータの1つ以上の面に、浸漬被覆、ローラー塗装、スプレー塗装、カーテン式塗布、又はこれらの任意の組み合わせにより塗布することである。これらのプロセスは、加工油が抽出される前もしくは抽出された後、又は細長く切ってレーンにされる前もしくはされた後に行われてよい。本発明のさらなる実施形態は、含浸及び乾燥によりゴムを膜に付着させることを含む。
【0098】
さらに、架橋性成分は、少なくとも部分的に架橋されてもよく少なくとも部分的に架橋されていなくてもよく、実質的な意味をなすプロセスの任意の時点で少なくとも部分的に架橋されてもよい。例えば、いくつかのゴムは押し出し前又は後、ニップローラー及び/又はカレンダーローラー処理での形成後、加工用可塑剤の抽出前又は抽出後、架橋性成分スラリーの適用後、及び/又はレーンへの切断前又は切断後、並びにこれらの任意の組み合わせで少なくとも部分的に架橋されてもよい。さらに、架橋性成分は、電池の組み立て前又は組み立て後、及びもしかすると電池の形成中でさえも含む、電池の製造中に少なくとも部分的に架橋されてもよい。
【0099】
性能強化添加剤は、構成要素の混合中に添加されてもよい。選択実施形態において、性能強化添加剤は、またセパレータにコーテイングとして塗布されてもよく、この塗布を、添加剤又は添加剤の溶液(例えば溶媒槽添加)にセパレータを浸し、必要に応じて(例えば熱及び/又は強制対流により又は熱及び/又は強制対流によらずに乾燥することにより)溶媒を除去することにより塗布されてよい。このように、添加剤の塗布は、例えば膜生成中に適用されることが多い抽出と組み合わせてもよい。他の好ましい方法は、表面に添加剤又は添加剤の溶液をスプレーすること、浸漬被覆、ローラー塗装、又はカーテン式塗布によりセパレータの表面に1つ以上の添加剤を塗布することである。他の実施形態において、セパレータはセパレータ内部に含浸してもよい。
【0100】
特定の実施形態において、性能強化添加剤は、表面コーテイングとして少なくとも約0.5g/m2~約25.0g/m2の密度すなわちアドオンレベルで存在してよい。特定の好ましい実施形態において、添加剤は、セパレータに2.0g/m2~約10.0g/m2の密度で存在してよい。
【0101】
本明細書中に記載される特定の実施形態においては、少量の界面活性剤を本発明のセパレータに添加する。このような例では、望ましい特徴は、より少量の全有機体炭素及び/又はより少量の揮発性有機化合物を含むことができ(界面活性剤の量が少ないため)、このような実施形態にしたがった本発明の望ましいセパレータを製造することができる。
【0102】
特定の実施形態において、1つ以上の添加剤は、押出機内に添加するのに加えて又は押出機内に添加する代わりに、例えば完成したときに(例えば大量の加工油を抽出した後に、及びゴムを導入する前又は導入した後に)セパレータ多孔質膜に塗布してもよい。特定の好ましい実施形態によれば、添加剤又は添加剤の溶液(例えば水溶液)は、セパレータの1つ以上の面に塗布される。この変形は、熱不安定添加剤、及び加工油の抽出に使用される溶媒に可溶な添加剤の塗布に特に適している。本発明にしたがった添加剤の溶媒には、メタノールやエタノールなどの低分子量アルコール、及びこれらのアルコールと水の混合物が特に適している。塗布は、負極に面する側、正極に面する側、又はセパレータの両側で行うことができる。塗布はまた、溶媒槽における細孔形成剤(例えば加工油)の抽出中に行われてよい。特定の選択実施形態において、セパレータが製造される前に押出機に添加される界面活性剤コーティング又は性能強化添加剤(又は両方)などの性能強化添加剤の一部分は、電池システム内のアンチモンと結合してもよく、アンチモンを不活性化する、及び/又はアンチモンを含む化合物を形成する、及び/又はアンチモンが電池の泥受けに落ち込むようにする、及び/又はアンチモンが負極に析出しないようにしてもよい。界面活性剤又は添加剤は、電解質、繊維状マット、電池ケース、ペースト紙、ペーストマット及び/又は同種のもの及び/又はこれらの組み合わせに添加してもよい。
【0103】
繊維状マットとの結合
特定の実施形態において、そして本発明中に記載されるように、本開示にしたがった例示的なセパレータは、向上したウィッキング特性及び/又は向上した電解質の濡れ性もしくは保持性を有してもよい繊維層又は繊維状マットなどの繊維状マット又は層(積層又はそれ以外)と結合してもよい。繊維状マットは、ガラス繊維又は合成繊維からなる不織布、フリース、メッシュ、ネット、単層、多層(各層が他の層と同一、類似又は異なる特性を有してよい)、合成繊維又はガラス繊維及び合成繊維又は紙の混合物からできたフリースや織物、又はこれらの任意の組み合わせであってよい。
【0104】
特定の実施形態において、繊維状マット(積層又はそれ以外)は、追加材料のキャリアとして使用されてよい。追加材料には、例えば少なくとも部分的に架橋されてもよく少なくとも部分的に架橋されなくてもよい架橋性成分、シリカ、水、本明細書に記載の種々の添加剤などの1つ以上の性能強化添加剤(例えば界面活性剤及び/又は水分損失遅延剤)、又はこれらの組み合わせが含まれてよい。例としてのみだが、追加材料は、その後繊維状マットの1つ以上の面にコーティングされて膜を形成することができ、又は繊維状マットに浸透及び含浸させることができるスラリーの形で供給することができる。
【0105】
繊維層が存在する場合、セパレータは繊維層より大きい表面積を有することが好ましい。したがって、多孔質膜と繊維層を結合するとき、繊維層は多孔質層を完全に覆うわけではない。膜層の少なくとも2つの対向するエッジ領域が覆われることなく、ポケット、エンベロープ、スリーブ、ラップ及び/又は同種のものの任意選択的な形成を促進するシールのためのエッジを設けることが好ましい。このような繊維状マットの厚さは、一部の実施形態では、少なくとも100μm、少なくとも約200μm、少なくとも約250μm、少なくとも約300μm、少なくとも約400μm、少なくとも約500μm、少なくとも約600μm、少なくとも約700μm、少なくとも約800μm、少なくとも約900μm、少なくとも約1mm、少なくとも約2mmなどであってよい。その後の積層されたセパレータは細かく切断することができる。特定の実施形態において、繊維状マットはセパレータのリブ付きの表面に積層される。特定の実施形態において、取り扱い及び/又は組み立て上の利点が、ロール状及び/又は切断片状に供給される場合の本明細書に記載の改良されたセパレータによって電池メーカーにもたらされる。また、前述のように、改良されたセパレータは、1つ以上の繊維状マット及び/又は同種のものが付加されない独立したセパレータシート又は層であってよい。
【0106】
繊維状マットは、多孔質膜に積層される場合、接着剤、熱、超音波溶接、圧縮及び/又は同種のもの、又はこれらの任意の組み合わせにより接着されてよい。そして、繊維状マットは、PAM又はNAM保持マット、ペースト紙及び/又は同種のものであってもよい。
【0107】
実施例
図3A及び
図3Bを参照すると、界面活性剤コーティングがある場合とない場合、そして浸出液にアンチモン(Sb)を添加した場合と添加しなかった場合の架橋ポリフェノール性樹脂セパレータを有するテストセルのサイクリックボルタンメトリーが示される。両図に示されるように、界面活性剤コーティングがあるセパレータは、一貫してカソード電流の絶対値が低い。参照電極と比較して-1.5ボルトで分析すると、被覆セパレータのカソード電流の絶対値は、大幅に、驚くほどに未被覆セパレータのものより低い。さらに、このことは浸出液にアンチモンを添加しても添加していなくても一貫して見られる。このことから水素の放出量が低いことが示され、被覆セパレータを使用する電池の寿命を通して水分損失が低減したことが示される。
【0108】
図4A及び
図4Bを参照すると、界面活性剤コーティングがある場合とない場合、そして浸出液にアンチモン(Sb)を添加した場合と添加しなかった場合の少なくとも部分的に架橋されたゴムの少なくとも一部を有するセパレータを有するテストセルのサイクリックボルタンメトリーが示される。両図に示されるように、界面活性剤コーティングがあるセパレータは、一貫してカソード電流の絶対値が低い。参照電極と比較して-1.5ボルトで分析すると、被覆セパレータのカソード電流の絶対値は、大幅に、驚くほどに未被覆セパレータのものより低い。さらに、このことは浸出液にアンチモンを添加しても添加していなくても一貫して見られる。このことから水素の放出量が低いことが示され、被覆セパレータを使用する電池の寿命を通して水分損失が低減したことが示される。
【0109】
結論
少なくとも選択実施形態によれば、本開示又は発明は、新規の又は改良されたセパレータ、電池セル、電池、システム、車両、及び/又はこのような新規のセパレータ、電池セル、及び/又は電池の製造方法及び/又は使用方法に関する。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示または発明は、以下の平板電池、管状電池、液式鉛蓄電池、強化された液式鉛蓄電池(「EFB」)、ディープサイクル電池、ゲル電池、吸収ガラスマット(「AGM」)電池、制御弁式鉛蓄(「VRLA」)電池、ディープサイクルする電池及び/又は部分充電状態(「PSoC」)で動作する電池、無停電電源(「UPS」)用電池、インバータ電池、再生可能エネルギー蓄電池、太陽光又は風力発電蓄電池、車両電池、始動‐照明‐点火(「SLI」)車両電池、アイドリング-スタート-ストップ(「ISS」)車両電池、ハイブリッド電気自動車(「HEV」)用電池、ハイブリッド車両、電気自動車、コールドクランキングアンペア(「CCA」)要求が高い電池、内燃機関用電池、舶用電池用途、自動車用電池、トラック用電池、オートバイ用電池、全地形型車両用電池、フォークリフト用電池、ゴルフカート用電池、ハイブリッド電気自動車用電池、電気自動車用電池、e‐リキシャ用電池、e‐バイク用電池及び/又は同種のものの電池及び/又は用途のための新規の又は改良された電池セパレータ、及び/又はこのような改良されたセパレータ、セル、電池、システム、及び/又は同種のものの改良された製造及び/又は使用する方法に関する。また、本明細書には、電池の性能及び寿命を延ばす、電池故障を低減させる、水分損失を減らす、アンチモン(Sb)中毒を抑制する、酸の層化を抑制する、デンドライトの形成を軽減する、酸化安定性を向上させる、フロート電流を改善、維持及び/又は低下させる、充電終了電流を改善する、ディープサイクル電池を充電及び/又は完全充電するのに必要な電流及び/又は電圧を減少させる、内部電気抵抗を減少させる、酸拡散を改善する、鉛蓄電池の均一性を向上させる、及び/又はサイクル性能を改良するための方法、システム及び電池セパレータが開示されている。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は、新規なセパレータが湿潤性を改善し、電池の水分損失を低減し、電池のアンチモン(Sb)中毒を軽減し、電気抵抗を低減すること、性能強化添加剤又はコーティング、改良された充填剤、空孔率を最適化し、湿潤性を増加させ、酸拡散を増加させること、負極側クロスリブ、及び/又は同種のものを含む改良されたセパレータに関する。
【0110】
少なくとも選択された実施形態によれば、本開示又は発明は、電池水分損失を低減する若しくは軽減し、アンチモン(Sb)中毒を減らし、電極板格子の反り又は湾曲又はカッピングを軽減し、酸の欠乏を低減し又は軽減し、酸の層化を低減し又は軽減し、デンドライトの成長を低減し又は軽減し、酸化効果を低減し、水分損失を低減し、湿潤性を増加させ、酸拡散を改善させ、均一性を向上させ、そして電気抵抗を低減させることができる、コールドクランキングアンペアを増加させることができる及び/又は同種のもの、並びにこれらの組み合わせである、特に液式鉛蓄電池用のセパレータである、セパレータに関する。または、本明細書には、少なくとも強化された液式鉛蓄電池において電池寿命を延ばす、電池水分損失を減らし、電池アンチモン中毒を減らし、電極板格子の反り又は湾曲又はカッピングを軽減し、酸の欠乏を低減し又は軽減し、酸の層化を低減し又は軽減し、デンドライトの成長を低減し又は軽減し、酸化効果を低減し、内部抵抗を低減し、湿潤性を増加させ、酸拡散を改善させ、コールドクランキングアンペアを増加させ、均一性を向上させる及び/又は同種のもの、並びにこれらの任意の組み合わせのための方法、システム、及び電池セパレータが開示されている。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は、セパレータが電池水分損失を減らし、そしてアンチモン(Sb)中毒を減らす、セパレータ格子の反り抵抗を改善する、セパレータレジリエンスを改善する、及びこれらの組み合わせのための改良された配合組成を含む強化された液式鉛蓄電池用の改良されたセパレータに関する。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は、セパレータが架橋成分、性能強化添加剤又はコーティング、酸化抵抗を改善し、非晶質シリカ、オイル吸収が高いシリカ、シラノール基が多いシリカ、OHとSiとの比が21:100~35:100であるシリカ、膜の40重量%以上の量の粒子状充填剤を含有するポリオレフィン微多孔質膜及び超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)等のポリマー、シートの厚さを減少させること、厚さを低減させること、オイル含有量を低減させること、湿潤性を増加させること、酸拡散を増加させること及び/又は同種のもの、並びにこれらの組み合わせを含む改良された配合組成を含む強化された液式鉛蓄電池用の改良されたセパレータに関する。
【0111】
本開示又は発明の第1の選択実施形態において、電池セパレータは多孔質膜及び性能強化界面活性剤、薬剤、又は添加剤(例えば界面活性剤及び/又は水分損失界面活性剤のコーティング)を備えてよい。特定の選択実施形態において、多孔質膜又は性能強化添加剤の一方又は両方は少なくとも部分的に架橋されてよい架橋性成分を有してもよい。本発明のセパレータの別の実施形態は、ポリオレフィン、追加の架橋性成分、及び界面活性剤、薬剤又は添加剤を備えてよく、追加の架橋性成分は、少なくとも部分的に架橋されてよい。他の実施形態において、セパレータは、少なくとも部分的に架橋されてよい架橋性成分を有しても有さなくてもよい繊維状マットを備えてよい。
【0112】
特定の態様において、架橋性成分は、熱架橋、放射線架橋、化学的架橋、物理的架橋、圧力架橋及び/又は酸化架橋、並びにこれらの組み合わせにより少なくとも部分的に架橋されてもよい。さらに、架橋性成分は、電子線、γ線、紫外光、加硫及び/又は過酸化水素(H2O2)、並びにこれらの任意の組み合わせへの暴露により少なくとも部分的に架橋されてもよい。さらに、架橋性成分は、共有結合、イオン結合、及びこれらの組み合わせのうち少なくとも1つとして少なくとも部分的に架橋されてもよい。
【0113】
本発明の別の態様において、例示的な架橋性成分は、以下の、天然ゴム、ラテックス、合成ゴム、ポリマー、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)及び/又はビスフェノールホルムアルデヒド並びにこれらの任意の組み合わせのうち少なくとも1つであってもよい。さらに、セパレータはまた、構成要素として、ポリマー、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)、リグニン、木材パルプ、合成木材パルプ(「SWP」)、ガラス繊維、合成繊維及び/又はセルロース系繊維並びにこれらの任意の組み合わせを有してもよい。
【0114】
例示的な電池セパレータは、さらに粒子状充填剤を含んでもよい。例示的な充填剤は、非晶質シリカ、オイル吸収が高いシリカ、シラノール基が多いシリカ、OHとSiとの比が21:100~35:100であるシリカ、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0115】
例示的な性能強化添加剤は、界面活性剤及び/又は水分損失(鉛蓄電池中で測定される)遅延剤を含んでもよい。例示的な添加剤は、多孔質膜内に組み込まれる及び/又はセパレータの片面及び/又は両面の少なくとも一部のコーティングであってもよい。
【0116】
例示的な界面活性剤、薬剤、又は添加剤は、少なくとも約1(1)以上、及び/又は最大で約3以下の親水性親油性バランス(HLB)を有してもよい。例示的な界面活性剤、薬剤、又は添加剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせの1つであってもよい。例示的な界面活性剤は、さらにエトキシル化アルコール、プロポキシル化アルコール、エチレンオキシドのブロック共重合体、プロピレンオキシドのブロック共重合体、重合性ユニット、エポキシ、ウレタン、及びこれらの任意の組み合わせの1つ以上を含有してもよい。例示的な界面活性剤、薬剤、又は添加剤は、セパレータの面重量が少なくとも約2.0g/m2及び/又は約10.0g/m2以下であってもよい。
【0117】
本発明の例示的なセパレータは、セパレータの第1の側に配置されてよい第1の複数のリブを有してもよい。第1の複数のリブの例示的な実施形態は、中実リブ、分離した断続リブ、連続式リブ、非連続式リブ、非連続式ピーク、非連続式突起物、傾斜リブ、対角線リブ、直線的リブ、多孔質膜の縦方向に実質的に縦に延びるリブ、多孔質膜の横方向に実質的に横に延びるリブ、セパレータの横方向に実質的に横切って延びるリブ、横切って延びる負極側ミニリブ、負極側クロスリブ(NCR)、酸混合リブ、分離した歯、歯のあるリブ、鋸歯状の縁、鋸歯状リブ、狭間胸壁、狭間胸壁状リブ、湾曲状リブ、連続式折曲状リブ、非連続式折曲状リブ、S字型リブ、連続式ジグザグ鋸歯状リブ、折れた断続的ジグザグ鋸歯状リブ、溝、チャネル、テクスチャー領域、エンボス、窪み、柱状物、ミニ柱状物、多孔質、非多孔質、クロスリブ、ミニリブ、クロスミニリブ、及びこれらの組み合わせの少なくとも1つの一様な組、交互な組又は混合物もしくは組み合わせであってもよい。
【0118】
第1の複数のリブの少なくとも一部は、セパレータのエッジに対して平行でも直角でもない第1の角度により規定されてもよい。さらに、第1の複数のリブの少なくとも一部は、ゼロ度(0°)より大きく180度(180°)未満、及び180度(180°)より大きく360度(360°)未満であってもよいセパレータの縦方向に対して規定される第1の角度により規定されてもよい。
【0119】
加えて、例示的なセパレータは、セパレータの第2の側に配置されてよい第2の複数のリブを有してもよい。さらに、第2の複数のリブは、以下の、中実リブ、分離した断続リブ、連続式リブ、非連続式リブ、非連続式ピーク、非連続式突起物、傾斜リブ、対角線リブ、直線的リブ、多孔質膜の縦方向に実質的に縦に延びるリブ、多孔質膜の横方向に実質的に横に延びるリブ、セパレータの横方向に実質的に横切って延びるリブ、横切って延びる負極側ミニリブ、負極側クロスリブ(NCR)、酸混合リブ、分離した歯、歯のあるリブ、鋸歯状の縁、鋸歯状リブ、狭間胸壁、狭間胸壁状リブ、湾曲状リブ、連続式折曲状リブ、非連続式折曲状リブ、S字型リブ、連続式ジグザグ鋸歯状リブ、折れた断続的ジグザグ鋸歯状リブ、溝、チャネル、テクスチャー領域、エンボス、窪み、柱状物、ミニ柱状物、多孔質、非多孔質、クロスリブ、ミニリブ、クロスミニリブ、及びこれらの組み合わせからなる群のうち少なくとも1つの一様な組、交互な組又は混合物もしくは組み合わせであってもよい。
【0120】
第2の複数のリブの少なくとも一部は、セパレータのエッジに対して平行でも直角でもない第2の角度により規定されてもよい。さらに、第2の複数のリブの少なくとも一部は、ゼロ度(0°)より大きく180度(180°)未満、及び180度(180°)より大きく360度(360°)未満であってもよい多孔質膜の縦方向に対して規定される第2の角度により規定されてもよい。
【0121】
本発明の別の態様は、セパレータをエンベロープセパレータ、スリーブセパレータ、ハイブリッドエンベロープセパレータ、ポケットセパレータ、ラップセパレータ、切断片状セパレータ、リーフセパレータ、及び/又はs‐ラップセパレータとして提供してもよい。
【0122】
なお別の態様において、セパレータは、繊維状マットと結合してもよく、不織布、メッシュ、フリース、ネット及びこれらの任意の組み合わせであってよく、さらにそれらの要素の層であってもよい。例示的な繊維状マットは、ガラス繊維、合成繊維、シリカ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分、界面活性剤、薬剤、又は添加剤、水分損失遅延剤、ラテックス、天然ゴム、合成ゴム、ポリマー、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ビスフェノールホルムアルデヒド、及びこれらの任意の組み合わせの1つ以上を含んでもよい。
【0123】
選択実施形態において、電池セパレータは、多孔質膜、繊維状マット、少なくとも部分的に架橋される架橋性成分及び界面活性剤、薬剤、又は添加剤を備えてもよい。例示的な架橋性成分は、少なくとも部分的に繊維状マット内に備えられてもよい。さらに、例示的な界面活性剤、薬剤、又は添加剤は、少なくとも部分的に繊維状マット内に備えられてもよい。また、例示的な架橋性成分及び/又は例示的な界面活性剤、薬剤、又は添加剤は、少なくとも部分的に多孔質膜中又は上に備えられてもよい。
【0124】
特定の選択実施形態において、鉛蓄電池は、少なくとも1つの正極、少なくとも1つの負極、硫酸(H2SO4)電解液、及び本発明中に記載の本発明の電池セパレータを備える。正極は、アンチモン(Sb)を備えてよく、又はアンチモン合金として備えてよい。例示的なセパレータは、電池中のアンチモン中毒を抑制してもよい。また、例示的なセパレータは、電池中の水素(H2)放出を抑えてもよく及び/又は電解質水分損失を抑えてもよい。
【0125】
例示的な鉛蓄電池は、平板電池、液式鉛蓄電池、強化された液式鉛蓄電池(「EFB」)、制御弁式鉛蓄(「VRLA」)電池、ディープサイクル電池、ゲル電池、吸収ガラスマット(「AGM」)電池、管状電池、インバータ電池、内燃機関用電池、車両電池、補助電池、始動‐照明‐点火(「SLI」)車両電池、アイドリング-スタート-ストップ(「ISS」)車両電池、自動車用電池、トラック用電池、オートバイ用電池、全地形型車両用電池、舶用電池、航空機用電池、フォークリフト用電池、ゴルフカート用電池、ハイブリッド電気自動車用電池、電気自動車用電池、e‐リキシャ用電池、e‐トライク用電池、e‐バイク用電池、無停電電源用電池、コールドクランキングアンペア(「CCA」)が高い電池、及びこれらの組み合わせの1つであってもよい。
【0126】
例示的な鉛蓄電池は、部分充電状態(「PSoC」)で動作してもよい。
【0127】
特定の選択実施形態において、本明細書中に記載の本発明の鉛蓄電池を有するシステムが提供されてよい。例示的なシステムは、車両、無停電電源、補助電源システム、再生可能エネルギー集電装置、風力エネルギー集電装置、太陽エネルギー集電装置、非常用電源システム、インバータ、及びこれらの組み合わせの1つであってもよい。さらに、例示的な車両は、自動車、乗用車、トラック、フォークリフト、ハイブリッド車両、ハイブリッド電気自動車、マイクローハイブリッド車両、アイドリング-スタート-ストップ(「ISS」)車両、電気自動車、e‐バイク、e‐リキシャ、e‐トライク、オートバイ、船舶、航空機、全地形型車両、ゴルフカー、及びこれらの組み合わせの1つであってもよい。
【0128】
少なくとも選択実施形態、態様又は目的によれば、本開示又は発明は、新規の又は改良されたセパレータ、特に鉛蓄電池用のセパレータ、新規の又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、電池、セル、システム、車両並びに/又はこのようなセパレータ、電池セパレータ、セル、システム、及び/若しくは電池の製造方法並びに/若しくは使用方法、鉛蓄電池用の改良されたセパレータ及び/又はこのような改良されたセパレータを有するこのような電池の改良された使用方法、電池寿命を延ばす、電池故障を低減させる、電池水分損失を減らす、電池アンチモン中毒を抑制する、電池フロート電流を低下させる、電池内部電気抵抗が上昇するのを最小限に抑える、セパレータの湿潤性を増大させる、電池の酸の層化を抑制する、電池の酸拡散を改善する、及び/又は鉛蓄電池の均一性を向上させるための方法、システム、処理、及び電池セパレータ、セパレータが改良された機能性コーティング、改良された配合組成を含む鉛蓄電池用の改良されたセパレータ、鉛蓄電池の水分損失を減らす改良された電池セパレータ、鉛蓄電池のアンチモン中毒を抑制する改良された電池セパレータ、このような改良されたセパレータを含む改良された鉛蓄電池、寿命の長い鉛蓄電池、改良された液式鉛蓄電池、改良された強化された液式鉛蓄電池、改良されたディープサイクル電池及び/又は部分充電状態で動作する電池及び/又は同種のもの、及び/又はアンチモン中毒を抑制し、フロート電流を低下させ、及び/又は電気分解を抑制し、及び/又は水分損失速度を減らした電池、架橋性成分及び界面活性剤を含むポリマーセパレータ、架橋性成分及び界面活性剤を含むセパレータ、架橋性成分及び界面活性剤添加剤を含むポリマーセパレータ、架橋性成分及び界面活性剤添加剤を含むセパレータ、架橋性成分及び界面活性剤コーティングを含むポリマーセパレータ、架橋性成分及び界面活性剤コーティングを含むセパレータ、架橋性成分及び電池水分損失を減らす添加剤を含むポリマーセパレータ、架橋性成分及び電池水分損失を減らす添加剤を含むセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び界面活性剤を含むポリマーセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び界面活性剤を含むセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び界面活性剤添加剤を含むポリマーセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び界面活性剤添加剤を含むセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び界面活性剤コーティングを含むポリマーセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び界面活性剤コーティングを含むセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び電池水分損失を減らす添加剤を含むポリマーセパレータ、少なくとも部分的に架橋された架橋性成分及び電池水分損失を減らす添加剤を含むセパレータ、及び/又は本明細書中に示されるか又は記載される同類のもの、本明細書中に示されるか又は記載される電池セパレータ及び/又は同種のものに関する又は提供してもよい。
【0129】
少なくとも選択実施形態によれば、本開示又は発明は、液式鉛蓄電池、特に強化された液式鉛蓄電池(「EFB」)などの鉛蓄電池、及びゲル電池や吸収ガラスマット(「AGM」)電池、ディープサイクル電池、ゴルフカー用電池及び/又は同種のものの他の様々な鉛蓄電池用の新規の又は改良されたセパレータに関する。少なくとも選択実施形態によれば、本開示又は発明は、新規な又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、水分損失が低いセパレータ、耐酸化性セパレータ、負極側クロスリブ(NCR)セパレータ、格子の反りに強いセパレータ、弾力性セパレータ、酸混合セパレータ、バランスが保たれたセパレータ、EFBセパレータ、電池の性能を改善したセパレータ、電池の性能を劇的に改善したセパレータ、電池、改良された電池、劇的に改良された電池、セル、システム、これらを含む方法、これらを使用した車両、これらを製造する方法、これらの使用、及び/又はこれらの組み合わせに関する。また、本明細書には、電池寿命を延ばす、電池の電極短絡を低減することにより電池故障を低減させる、水分損失を減らす、電気抵抗を低減する、サイクル寿命を改良する及び/又は同種のもののための方法、システム、及び電池セパレータが開示される。
【0130】
少なくとも選択実施形態によれば、本開示又は発明は、新規の又は改良されたセパレータ、電池セル、電池、システム、車両、及び/又はこのような新規のセパレータ、電池セル、及び/又は電池の製造方法及び/又は使用方法に関する。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は、以下の平板電池、管状電池、液式鉛蓄電池、強化された液式鉛蓄電池(「EFB」)、ディープサイクル電池、ゲル電池、吸収ガラスマット(「AGM」)電池、制御弁式鉛蓄(「VRLA」)電池、ディープサイクルする電池及び/又は部分充電状態(「PSoC」)で動作する電池、無停電電源(「UPS」)用電池、インバータ電池、再生可能エネルギー蓄電池、太陽光又は風力発電蓄電池、車両電池、始動‐照明‐点火(「SLI」)車両電池、アイドリング-スタート-ストップ(「ISS」)車両電池、ハイブリッド電気自動車(「HEV」)用電池、ハイブリッド車両、電気自動車、コールドクランキングアンペア(「CCA」)要求が高い電池、内燃機関用電池、舶用電池用途、自動車用電池、トラック用電池、オートバイ用電池、全地形型車両用電池、フォークリフト用電池、ゴルフカート用電池、ハイブリッド電気自動車用電池、電気自動車用電池、e‐リキシャ用電池、e‐バイク用電池及び/又は同種のものの電池及び/又は用途のための新規の又は改良された電池セパレータ、及び/又はこのような改良されたセパレータ、セル、電池、システム及び/又は同種のものの改良された製造及び/又は使用する方法に関する。また、本明細書には、電池の性能及び寿命を延ばす、電池故障を低減させる、水分損失を減らす、アンチモン(Sb)中毒を軽減する、酸の層化を低減する、デンドライトの形成を軽減する、酸化安定性を向上させる、フロート電流を改善、維持及び/又は低下させる、充電終了電流を改善する、ディープサイクル電池を充電及び/又は完全充電するのに必要な電流及び/又は電圧を減少させる、内部電気抵抗を減少させる、エネルギーのスループットを改善する、酸拡散を改善する、鉛蓄電池の均一性を向上させる、及び/又はサイクル寿命又は性能を改良するための方法、システム及び電池セパレータが開示されている。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は、新規なセパレータが湿潤性を改善し、電池の水分損失を低減し、電池のアンチモン(Sb)中毒を低減し、電気抵抗を低減すること、性能強化添加剤又はコーティング、改良された充填剤、空孔率を最適化し、湿潤性を増加させ、酸拡散を増加させること、負極側クロスリブ及び/又は同種のものを含む改良されたセパレータに関する。
【0131】
少なくとも選択された実施形態によれば、本開示又は発明は、電池水分損失を低減する若しくは軽減し、アンチモン(Sb)中毒を減らし、電極板格子の反り又は湾曲又はカッピングを軽減し、酸の欠乏を低減する又は軽減する、酸の層化を低減する又は軽減する、デンドライトの成長を低減する又は軽減する、酸化効果を低減する、水分損失を低減する、湿潤性を増加させる、酸拡散を改善させる、均一性を向上させる、そして電気抵抗を低減させることができる、コールドクランキングアンペアを増加させることができる及び/又は同種のもの、並びにこれらの組み合わせである、特に液式鉛蓄電池用のセパレータである、セパレータに関する。または、本明細書には、少なくとも強化された液式鉛蓄電池において電池寿命を延ばす、電池水分損失を減らす、電池アンチモン中毒を減らす、電極板格子の反り又は湾曲又はカッピングを軽減する、酸の欠乏を低減する又は軽減する、酸の層化を低減する又は軽減する、デンドライトの成長を低減する又は軽減する、酸化効果を低減する、内部抵抗を低減する、湿潤性を増加させる、酸拡散を改善させる、コールドクランキングアンペアを増加させる、均一性を向上させる及び/又は同種のもの、並びにこれらの任意の組み合わせのための方法、システム、及び電池セパレータが開示されている。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は、セパレータが電池水分損失を減らし、そしてアンチモン(Sb)中毒を減らす、セパレータ格子の反り抵抗を改善する、セパレータレジリエンスを改善する、及びこれらの組み合わせのための改良された配合組成を含む強化された液式鉛蓄電池用の改良されたセパレータに関する。少なくとも特定の実施形態によれば、本開示又は発明は、セパレータが架橋成分、性能強化添加剤又はコーティング、酸化抵抗を改善すること、非晶質シリカ、オイル吸収が高いシリカ、シラノール基が多いシリカ、OHとSiとの比が21:100~35:100であるシリカ、膜の40重量%以上の量の粒子状充填剤を含有するポリオレフィン微多孔質膜及び超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)等のポリマー、シートの厚さを減少させること、厚さを低減させること、オイル含有量を低減させること、湿潤性を増加させること、酸拡散を増加させること及び/又は同種のもの、並びにこれらの任意の組み合わせを含む改良された配合組成を含む強化された液式鉛蓄電池用の改良されたセパレータに関する。
【0132】
本発明の少なくとも選択された実施形態、目的又は態様によれば、本明細書中には以前の膜、セパレータ、電池、システム及び/又は同種のものの困難な問題、問題又は欠点に取り組むことができる新規な又は改良された膜、多孔質膜、特に鉛蓄電池、より具体的には強化された液式鉛蓄電池用のセパレータ、改良されたセパレータを組み込んだ改良された鉛蓄電池、改良されたセパレータ及び/又は電池を組み込んだシステム、及び/又はこれらに関連する方法が提供されるか開示される。新規な又は改良されたセパレータは、架橋性成分及び界面活性剤、薬剤、又は添加剤を含有する。さらに、架橋性成分は少なくとも部分的に架橋されてよい。また、セパレータは、さらにポリマー及び充填剤から成ってもよく、さらに少なくとも1つの繊維状マット又はスクリムと組み合わせてもよく、切断片状、スリーブ、ポケット、エンベロープ、ラップ、折り畳み及び/又は同種のもの、及び/又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0133】
構造及び方法の先の記述は、例示のためだけに提示されている。実施例は、最良の態様を含む例示的な実施形態を開示し、また、任意の当業者が任意の装置又はシステムを作り使用する、及び任意の組み込まれた方法を実行することを含む、本発明を実行できるようにするために用いられる。これらの実施例は、網羅的であること又は本発明を開示された詳細なステップ及び/又は形式に限定することを意図していない。上記の教示の観点から、多数の変更及び変形が可能である。本明細書に記載の特徴は、任意の組み合わせで結合されてよい。本明細書に記載の方法のステップは、物理的に可能な任意のシーケンスで実行されてよい。本発明の特許性のある範囲は、添付の請求項により定められ、当業者が想到可能な他の実施例を含んでよい。このような他の実施例は、請求項の文言と変わらない構造要素を有する場合、又は請求項の文言とごくわずかな違いを有する同等の構造要素を含む場合、請求項の範囲内にあると意図される。
【0134】
本発明は、本発明の精神及び不可欠な属性から逸脱することなく他の形態で具現化することもでき、したがって、本発明の範囲を示すものとして、上記の明細書ではなく添付の請求項が参照されるべきである。開示される方法及びシステムを実行するために使用可能なコンポーネントが開示される。これらの及び他のコンポーネントは、本明細書で開示され、また、これらのコンポーネントの組み合わせ、サブセット、相互作用、グループ等が開示されるとき、これらのそれぞれの種々の個々のまた集合的な組み合わせ及び置換についての特定の参照は明示的に開示されないが、それぞれが、全ての方法及びシステムについて本明細書で特に企図され説明されることが理解される。これは、限定はしないが、開示される方法におけるステップを含む本出願の全ての態様に当てはまる。そのため、実行され得る様々な追加のステップが存在する場合、これらの追加のステップのそれぞれが、開示される方法の任意の特定の実施形態又は実施形態の組み合わせと共に実行され得ることが理解される。
【0135】
添付の請求項の組成及び方法は、本明細書に記載の特定の組成及び方法による範囲に限定されず、本明細書に記載の特定の組成及び方法は、請求項の数少ない態様の例示を意図している。機能的に同等な任意の組成及び方法は、請求項の範囲内にあることを意図している。本明細書に示されている及び記載されているものに加えて、様々な組成及び方法の変形例が、添付の請求項の範囲内にあることを意図している。さらに、本明細書に開示されている特定の代表的な組成及び方法ステップのみが具体的に説明されているが、組成及び方法ステップの他の組み合わせも、たとえ具体的に列挙されていなくても、添付の請求項の範囲内にあることが意図されている。このように、ステップ、要素、成分、又は構成の組み合わせは、本明細書に明示的に又はそれ以下で言及されているが、ステップ、要素、成分、及び構成の他の組み合わせも明示的に述べられていないが含まれる。実施例の他に、又は別に注意書きがある場合、明細書及び請求項で使用される成分、反応条件などの数量を表す全ての数字は、少なくとも、均等論の適用を請求項の範囲に限定する試みとして理解されるのではなく、有効桁数及び通常の丸め手法に照らして解釈されるものとする。別途定義されない限り、本明細書で使用されている全ての技術用語及び科学用語は、開示されている発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されているものと同一の意味を有する。本明細書で引用された出版物及びそれらが引用されている資料は、参照により具体的に組み込まれている。
【0136】
明細書及び添付の請求項で使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈で明確に異なった指示をしていない限り、複数の指示対象を含む。範囲は、本明細書において「約(about)」又は「約(approximately)」1つの特定の値から、及び/又は「約(about)」又は「約(approximately)」別の特定の値までとして表現され得る。このような範囲が表される場合、他の実施形態は1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、既述の「約(about)」を用いて、値が近似値として表される場合、特定の値は、他の実施形態を形成することが理解される。さらに、範囲の各々の端点は、他の端点に関係して、また他の端点から独立して共に重要であることが理解される。「任意選択的な(optional)」又は「任意選択的に(optionally)」は、続いて説明されるイベント又は状況が起きても起きなくてもよいこと、及び記述が前記イベント又は状況が起きる場合及びそれが起きない場合を含むことを意味している。
【0137】
本明細書の説明及び請求項を通して、単語「を備える(comprise)」、並びに「を備えた(comprising)」及び「を備える(comprises)」などのこの単語の変化形は、「を含むが限定されない(including but not limited to)」を意味し、例えば、他の添加剤、成分、整数、又はステップを除外することを意図していない。「本質的に~から成る(consisting essentially of)」及び「~から成る(consisting of)」という用語は、「~を備えた(comprising)」及び「~を含む(including)」の代わりに使用して、本発明のより具体的な実施形態を提供することができ、これもまた開示される。「例示的な(exemplary)」又は「例えば(for example)」は、「~の例(an example of)」を意味し、好適な又は理想的な実施形態が指示することを伝えることを意図していない。同様に、「などの(such as)」は、限定的意味で使用されず、説明的又は例示目的で使用される。
【0138】
また、本明細書に例示的に適切に開示されている発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素がない限り実施可能である。