(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ピラゾール-アミド化合物の非晶質固体分散体
(51)【国際特許分類】
A61K 31/415 20060101AFI20240516BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240516BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240516BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240516BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240516BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240516BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240516BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240516BHJP
C07D 231/12 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
A61K31/415
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/12
A61K9/20
A61P3/10
C07D231/12 E CSP
(21)【出願番号】P 2021504101
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2020008840
(87)【国際公開番号】W WO2020179770
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2019038327
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】中島 由博
(72)【発明者】
【氏名】中島 駿
(72)【発明者】
【氏名】森 由匡
(72)【発明者】
【氏名】野澤 智司
(72)【発明者】
【氏名】石川 嘉昭
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/021508(WO,A1)
【文献】特表2013-528218(JP,A)
【文献】特表2014-521745(JP,A)
【文献】特表2009-530415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/415
A61K 47/38
A61K 47/32
A61K 47/02
A61K 47/04
A61K 47/12
A61K 9/20
A61P 3/10
C07D 231/12
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)下記式[I]:
【化1】
で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート
及びメチルセルロー
スからなる
2種の製薬上許容されるポリマー
を含有する非晶質固体分散体。
【請求項2】
(1)下記式[I]:
【化1】
で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メチルセルロース及びポリビニルアルコールからなる3種の製薬上許容されるポリマー
を含有する非晶質固体分散体。
【請求項3】
前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物とヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートの重量比が、1:0.1から1:10の範囲内である、請求項
1又は
2に記載の非晶質固体分散体。
【請求項4】
前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物とポリビニルアルコールの重量比が、1:0.1から1:10の範囲内である、請求項
2又は3に記載の非晶質固体分散体。
【請求項5】
前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物とメチルセルロースの重量比が、1:0.05から1:1の範囲内である、請求項
1から
4のいずれか一項に記載の非晶質固体分散体。
【請求項6】
前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物が、下記式[I-h]:
【化2】
で表される化合物である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の非晶質固体分散体。
【請求項7】
前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物が、式[I]で表される化合物である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の非晶質固体分散体。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の非晶質固体分散体、及び製薬上許容される担体を含有する医薬組成物。
【請求項9】
製薬上許容される担体が、崩壊剤を含む、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
崩壊剤が、ケイ酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びシリカ化結晶セルロースからなる群より選択される1から4種である、請求項
9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
さらに吸着剤を含む、請求項
9又は1
0に記載の医薬組成物。
【請求項12】
吸着剤が、軽質無水ケイ酸である、請求項1
1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
さらに滑沢剤を含む、請求項
9から1
2のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムである、請求項1
3に記載の医薬組成物。
【請求項15】
フィルムコーティングされた、請求項
8から1
4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
ヒプロメロースを用いてフィルムコーティングされた、請求項1
5に記載の医薬組成物。
【請求項17】
錠剤の形態である、請求項
8から1
6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
(1)前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート
及びメチルセルロー
スからなる
2種の製薬上許容されるポリマー
を溶媒中で混合し、溶解又は分散させて混合物を得る工程、
前記混合物を造粒して造粒物を得る工程、及び
前記造粒物を乾燥する工程を含む、請求項1
、3、5から
7のいずれか一項に記載の非晶質固体分散体の製造方法。
【請求項19】
(1)前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メチルセルロース及びポリビニルアルコールからなる3種の製薬上許容されるポリマー
を溶媒中で混合し、溶解又は分散させて混合物を得る工程、
前記混合物を造粒して造粒物を得る工程、及び
前記造粒物を乾燥する工程を含む、請求項2から7のいずれか一項に記載の非晶質固体分散体の製造方法。
【請求項20】
溶媒がアセトンである、請求項
18又は19に記載の製造方法。
【請求項21】
(1)前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート
及びメチルセルロー
スからなる
2種の製薬上許容されるポリマー
を混合して混合物を得る工程、及び
前記混合物を加熱溶融押出しする工程を含む、請求項1
、3、5から
7のいずれか一項に記載の非晶質固体分散体の製造方法。
【請求項22】
(1)前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メチルセルロース及びポリビニルアルコールからなる3種の製薬上許容されるポリマー
を混合して混合物を得る工程、及び
前記混合物を加熱溶融押出しする工程を含む、請求項2から7のいずれか一項に記載の非晶質固体分散体の製造方法。
【請求項23】
加熱溶融押出しする工程が、二軸エクストルーダーで処理する工程を含む、請求項
21又は22に記載の製造方法。
【請求項24】
二軸エクストルーダーの処理温度が、125℃から175℃である、請求項23に記載の製造方法
。
【請求項25】
(1)前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート
の混合重量比が、1:0.1から1:10の範囲内である、請求項
18から2
4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項26】
(1)前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)ポリビニルアルコール
の混合重量比が、1:0.1から1:10の範囲内である、請求項
19、20、22から2
5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項27】
(1)前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)メチルセルロース
の混合重量比が、1:0.03から1:2の範囲内である、請求項
18から2
6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項28】
前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物が、下記式[I-h]:
【化3】
で表される化合物である、請求項
18から2
7のいずれか一項に記載の製造方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質の式[I]:
【0002】
【0003】
で表される化合物(以下、「式[I]の化合物」ともいう。)若しくはその製薬上許容される塩、又はその水和物、並びに特定の製薬上許容されるポリマーを含む固体分散体、及びその製造方法に関する。また、本発明は、当該固体分散体を含む医薬組成物にも関する。
【背景技術】
【0004】
経口投与される医薬品の開発においては、一般に医薬品有効成分(API)が高い経口吸収性を有することが好ましい。医薬品有効成分が難溶性である場合、経口吸収性が食事の影響を受けることがある。その結果、十分に食事をとれない患者への投与が制限されうる。また、食事をとることができる患者においても投与タイミングが限定されるためにアドヒアランスが低下しうる。難溶性化合物の溶解性を向上させる技術として、塩形成、ナノ粉末化、固体分散体化、界面活性剤やシクロデキストリンを用いた可溶化等が知られている。
【0005】
式[I]の化合物である2-{4-[(9R)-9-ヒドロキシ-2-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)-9-(トリフルオロメチル)-9H-フルオレン-4-イル]-1H-ピラゾール-1-イル}-2-メチルプロパンアミド若しくはその製薬上許容される塩、又はその一水和物は、特許文献1及び特許文献2に記載されている。特許文献1には、式[I]の化合物及びその一水和物が、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDHK)阻害活性を有し、糖尿病、インスリン抵抗性症候群、メタボリックシンドローム、高血糖症、高乳酸血症、糖尿病合併症、心不全、心筋症、心筋虚血症、心筋梗塞、狭心症、脂質異常症、アテローム性硬化症、末梢動脈疾患、間欠性跛行、慢性閉塞性肺疾患、脳虚血症、脳卒中、ミトコンドリア病、ミトコンドリア脳筋症、癌又は肺高血圧症の予防及び/又は治療に有用な薬剤となり得る旨が記載されている。特許文献2には、式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はその一水和物の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2014/142290号
【文献】国際公開第2018/021508号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、薬物動態が改善された式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はその水和物を含有する医薬組成物、並びにその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の製薬上許容されるポリマーを使用することにより、式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はその水和物の非晶質固体分散体が得られ、それにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1](1)下記式[I]:
【0010】
【0011】
で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メチルセルロース、ヒプロメロース及びポリビニルアルコールからなる群より選択される1から4種の製薬上許容されるポリマー
を含有する非晶質固体分散体(以下、「本発明の固体分散体」又は「本発明の非晶質固体分散体」ともいう。)。
[2]さらにコポリビドンを含有する、上記[1]に記載の非晶質固体分散体。
[3]ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート及びメチルセルロースからなる2種の製薬上許容されるポリマーを含有する、上記[1]又は[2]に記載の非晶質固体分散体。
[4]ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メチルセルロース及びポリビニルアルコールからなる3種の製薬上許容されるポリマーを含有する、上記[1]又は[2]に記載の非晶質固体分散体。
[5]前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物とヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートの重量比が、1:0.1から1:10の範囲内である、上記[3]又は[4]に記載の非晶質固体分散体。
[6]前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物とポリビニルアルコールの重量比が、1:0.1から1:10の範囲内である、上記[4]に記載の非晶質固体分散体。
[7]前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物とメチルセルロースの重量比が、1:0.05から1:1の範囲内である、上記[3]から[6]のいずれかに記載の非晶質固体分散体。
[8]前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物が、下記式[I-h]:
【0012】
【0013】
で表される化合物である、上記[1]から[7]のいずれかに記載の非晶質固体分散体。
[9]前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物が、式[I]で表される化合物である、上記[1]から[7]のいずれかに記載の非晶質固体分散体。
[10]上記[1]から[9]のいずれかに記載の非晶質固体分散体、及び製薬上許容される担体を含有する医薬組成物。
[11]製薬上許容される担体が、崩壊剤を含む、上記[10]に記載の医薬組成物。
[12]崩壊剤が、ケイ酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びシリカ化結晶セルロースからなる群より選択される1から4種である、上記[11]に記載の医薬組成物。
[13]さらに吸着剤を含む、上記[11]又は[12]に記載の医薬組成物。
[14]吸着剤が、軽質無水ケイ酸である、上記[13]に記載の医薬組成物。
[15]さらに滑沢剤を含む、上記[11]から[14]のいずれかに記載の医薬組成物。
[16]滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムである、上記[15]に記載の医薬組成物。
[17]フィルムコーティングされた、上記[10]から[16]のいずれかに記載の医薬組成物。
[18]ヒプロメロースを用いてフィルムコーティングされた、上記[17]に記載の医薬組成物。
[19]錠剤の形態である、上記[10]から[18]のいずれかに記載の医薬組成物。
[20](1)前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メチルセルロース、ヒプロメロース及びポリビニルアルコールからなる群より選択される1から4種の製薬上許容されるポリマー
を溶媒中で混合し、溶解又は分散させて混合物を得る工程、
前記混合物を造粒して造粒物を得る工程、及び
前記造粒物を乾燥する工程を含む、上記[1]から[9]のいずれかに記載の非晶質固体分散体の製造方法。
[21]溶媒がアセトンである、上記[20]に記載の製造方法。
[22](1)前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メチルセルロース、ヒプロメロース及びポリビニルアルコールからなる群より選択される1から4種の製薬上許容されるポリマー
を混合して混合物を得る工程、及び
前記混合物を加熱溶融押出しする工程を含む、上記[1]から[9]のいずれかに記載の非晶質固体分散体の製造方法。
[23]加熱溶融押出しする工程が、二軸エクストルーダーで処理する工程を含む、上記[22]に記載の製造方法。
[24]二軸エクストルーダーの処理温度が、125℃から175℃である、上記[23]に記載の製造方法。
[25]製薬上許容されるポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート及びメチルセルロースである、上記[20]から[24]のいずれかに記載の製造方法。
[26]製薬上許容されるポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メチルセルロース及びポリビニルアルコールである、上記[20]から[24]のいずれかに記載の製造方法。
[27](1)前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート
の混合重量比が、1:0.1から1:10の範囲内である、上記[20]から[26]のいずれかに記載の製造方法。
[28](1)前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)ポリビニルアルコール
の混合重量比が、1:0.1から1:10の範囲内である、上記[20]から[24]、[26]及び[27]のいずれかに記載の製造方法。
[29](1)前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)メチルセルロース
の混合重量比が、1:0.03から1:2の範囲内である、上記[20]から[28]のいずれかに記載の製造方法。
[30]前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物が、下記式[I-h]:
【0014】
【0015】
で表される化合物である、上記[20]から[29]のいずれかに記載の製造方法。
[31](1)非晶質の下記式[I]:
【0016】
【0017】
で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メチルセルロース、ヒプロメロース及びポリビニルアルコールからなる群より選択される1から4種の製薬上許容されるポリマー
を溶媒中で混合し、溶解又は分散させて混合物を得る工程、
前記混合物を造粒して造粒物を得る工程、及び
前記造粒物を乾燥する工程を含む製造方法により得られる医薬組成物。
[32](1)非晶質の下記式[I]:
【0018】
【0019】
で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メチルセルロース、コポリビドン及びヒプロメロースからなる群より選択される1から4種の製薬上許容されるポリマー
を混合して混合物を得る工程、及び
前記混合物を加熱溶融押出しする工程を含む製造方法により得られる医薬組成物。
[33]前記式[I]で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物が、下記式[I-h]:
【0020】
【0021】
で表される化合物である、上記[26]又は[27]に記載の医薬組成物。
[34]ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メチルセルロース、ヒプロメロース及びポリビニルアルコールからなる群より選択される1から4種の製薬上許容されるポリマー中に分散された状態で存在する、下記式[I]:
【0022】
【0023】
で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物の非晶質体。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はその水和物の結晶に比較して溶解度が向上した非晶質体が提供される。より具体的には、本発明によれば、式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はその水和物を非晶質状態で安定に維持することができる固体分散体が提供される。
本発明に係る非晶質固体分散体は、ある態様において酸性溶液中での析出が抑制されることから、経口投与された場合に胃内で析出しにくいと考えられる。
式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はその水和物の結晶を用いた普通錠を用いた場合、式[I]の化合物の経口吸収性は食事の影響を受け、空腹時投与した場合には食後投与に比較して曝露が低下しうる。これに対し、本発明に係る式[I]の化合物の非晶質固体分散体は、ある態様において投与時に胆汁酸の有無にかかわらず高い溶解度を示すことから、食事の影響を受けにくく、空腹時投与においても高い経口吸収性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、メチルセルロース、若しくはヒプロメロースを用いて溶媒法により調製した式[I]の化合物の固体分散体、又はその一水和物結晶のpH6.8試験液に対する溶解挙動を示す。
【
図2】
図2は、HPMCAS、メチルセルロース、ヒプロメロース、若しくはポリビニルアルコールを用いて加熱溶融押出し法により調製した式[I]の化合物の固体分散体、又はその一水和物結晶のpH6.8試験液に対する溶解挙動を示す。
【
図3】
図3は、HPMCAS、コポリビドン、メチルセルロース、ヒプロメロース、若しくはポリビニルアルコールを添加したpH1.2試験液、又はポリマー非添加のpH1.2試験液に対する、式[I]の化合物の析出挙動を示す。
【
図4】
図4は、実施例3又は5で得られた式[I]の化合物の固体分散体錠及び式[I]の化合物の普通錠のpH1.2、pH4.0、pH5.5、又はpH6.8の試験液に対する溶解挙動を示す。
【
図5】
図5は、実施例3で得られた式[I]の化合物の固体分散体錠、及び式[I]の化合物の一水和物結晶の粉末X線回折の結果を示す。
【
図6】
図6は、実施例3で得られた式[I]の化合物の固体分散体錠、及び式[I]の化合物の一水和物結晶の示差走査熱量測定(DSC)の結果を示す。
【
図7】
図7は、実施例7で得られた式[I]の化合物の固体分散体錠、及び式[I]の化合物の一水和物結晶のDSCの結果を示す。
【
図8】
図8は、実施例3で得られた固体分散体錠又は比較例2で得られた普通錠をイヌに経口投与したときの式[I]の化合物の血中濃度推移を示す。
【
図9】
図9は、実施例3又は実施例6で得られた固体分散体錠をイヌに経口投与したときの式[I]の化合物の血中濃度推移を示す。
【
図10】
図10は、比較例2で得られた普通錠を空腹時又は食後にヒトに経口投与したときの式[I]の化合物の血中濃度推移の線形グラフである。
【
図11】
図11は、比較例2で得られた普通錠を空腹時又は食後にヒトに経口投与したときの式[I]の化合物の血中濃度推移の片対数グラフである。
【
図12】
図12は、実施例4で得られた固体分散体錠を空腹時又は食後にヒトに経口投与したときの式[I]の化合物の血中濃度推移の線形グラフである。
【
図13】
図13は、実施例4で得られた固体分散体錠を空腹時又は食後にヒトに経口投与したときの式[I]の化合物の血中濃度推移の片対数グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書における用語の定義は以下のとおりである。
【0027】
「製薬上許容される塩」とは、当技術分野で知られている過度の毒性を伴わない塩であればいかなる塩でもよい。具体的には、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩、有機塩基との塩等が挙げられる。様々な形態の製薬上許容される塩が当分野で周知であり、例えば、以下の参考文献に記載されている:
(a) Bergeら, J. Pharm. Sci., 66, p1-19(1977)、
(b) Stahlら, 「Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use」(Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002)、
(c) Paulekuhnら, J. Med. Chem., 50, p6665-6672 (2007)。
【0028】
自体公知の方法に従って、式[I]の化合物を、無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基と反応させることにより、その製薬上許容される塩を各々得ることができる。式[I]の化合物の製薬上許容される塩は、式[I]の化合物1分子に対し、2分の1分子、1分子若しくは2分子以上の酸又は塩基と形成されていてもよい。
【0029】
無機酸との塩としては、フッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、リン酸又は硫酸との塩が例示される。
有機酸との塩としては、酢酸、アジピン酸、アルギン酸、4-アミノサリチル酸、アンヒドロメチレンクエン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、エデト酸カルシウム、ショウノウ酸、カンファ-10-スルホン酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキシルレソルシン酸、ヒドロキシ-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-1-エタンスルホン酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、マレイン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、メチル硫酸、メチル硝酸、メチレンビス(サリチル酸)、ガラクタル酸、ナフタレン-2-スルホン酸、2-ナフトエ酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、オレイン酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、ペクチン酸、ピクリン酸、プロピオン酸、ポリガラクツロン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、テオクル酸、チオシアン酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデカン酸、アスパラギン酸又はグルタミン酸との塩が例示される。
【0030】
無機塩基との塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、ビスマス又はアンモニウムとの塩が例示される。
有機塩基との塩としては、アレコリン、ベタイン、コリン、クレミゾール、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、N-ベンジルフェネチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、アルギニン又はリジンとの塩が例示される。
【0031】
式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又は式[I]の化合物の一水和物は公知の方法、例えば、前記特許文献1又は特許文献2に記載の方法で製造することができる。
【0032】
式[I]の化合物又はその製薬上許容される塩は、それらの溶媒和物として存在することもある。
【0033】
「溶媒和物」とは、式[I]の化合物又はその製薬上許容される塩に溶媒分子が配位したものであり、水和物も包含される。溶媒和物は、製薬上許容される溶媒和物が好ましく、式[I]の化合物又はその製薬上許容される塩の水和物、エタノール和物、ジメチルスルホキシド和物等が挙げられる。具体的には、式[I]の化合物の半水和物、1水和物、2水和物若しくは1エタノール和物、又は式[I]の化合物の製薬上許容される塩の1水和物若しくは2塩酸塩の2/3エタノール和物等が挙げられる。公知の方法に従って、その溶媒和物を得ることができる。
【0034】
溶媒和物としては、好ましくは式[I]の化合物の水和物であり、より好ましくは式[I]の化合物の一水和物であり、下記構造式[I-h]:
【0035】
【0036】
で表される。
【0037】
「固体分散体」とは、医薬品有効成分(Active Pharmaceutical Ingredient;以下、「API」ともいう。)が担体中に分散された混合物を意味し、例えば、以下の参考文献に記載されている:
(d) Chiouら, Journal of Pharmaceutical Sciences., 60, p1281-1302(1971)、
(e) Huangら, Acta Pharmaceutica Sinica B., 4(1), p18-25(2014)。
【0038】
固体分散体の調製に用いられる「担体」とは、製薬上許容されるポリマーである。
「製薬上許容されるポリマー」としては、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、コポリビドン、エチルアクリレートメチルメタクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒプロメロース、マクロゴール6000、メチルセルロース、マクロゴールポリ(ビニルアルコール)グラフテッドコポリマー、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリビニルアルコール-アクリル酸-メチルメタクリレートコポリマー、ポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポビドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。好ましいポリマーは、HPMCAS、メチルセルロース、コポリビドン、ヒプロメロース、又はポリビニルアルコールである。
【0039】
「非晶質固体分散体」とは、上記固体分散体に含まれるAPIの大部分が非晶質である固体分散体を意味する。本明細書において「大部分が非晶質である」とは、式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はその水和物の90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上が非晶質であることを意味する。本明細書において特に限定のない限り、固体分散体は非晶質固体分散体を意味する。
【0040】
APIが非晶質体であることは、例えば、粉末X線回折で確認することができる。APIが結晶である場合、一般に粉末X線回折でAPI特有のピークが観測されるのに対し、非晶質体は多くの場合、粉末X線回折でAPI由来の特定のピークが観測されないハローパターンを示す。
【0041】
APIが非晶質体であることは、DSCでも確認することができる。APIが結晶である場合、一般的に結晶形の変化、溶媒和物からの溶媒の脱離、融解等で特定のピークが観測されるのに対し、非晶質体は多くの場合、そのようなピークが観測されないハローパターンを示す。
【0042】
本発明の非晶質固体分散体は、そのままで、または、製薬上許容される担体と組み合わせて、医薬組成物として用いることができる。
【0043】
「製薬上許容される担体」としては、製剤素材として慣用の各種有機又は無機担体物質が挙げられ、固形製剤における賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、吸着剤、コーティング剤等、及び半固形製剤における基剤、乳化剤、湿潤剤、安定剤、安定化剤、分散剤、可塑剤、pH調節剤、吸収促進剤、ゲル化剤、防腐剤、充填剤、溶解剤、溶解補助剤、懸濁化剤等が挙げられる。さらに必要に応じて、保存剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を用いてもよい。
【0044】
本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等の各種剤形とすることができ、常法により製造可能である。例えば、混合工程、造粒工程、打錠工程、カプセル充填工程、コーティング工程等の製剤化工程を経て、医薬製剤を調製することができる。本発明の非晶質固体分散体を含有する医薬製剤としては、好ましくは錠剤である。
【0045】
「賦形剤」としては、例えば、乳糖、乳糖水和物、白糖、D-マンニトール、D-ソルビトール、トウモロコシデンプン、デキストリン、微結晶セルロース、結晶セルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
【0046】
「崩壊剤」としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、結晶セルロース、ケイ酸カルシウム、シリカ化結晶セルロース等が挙げられる。好ましい崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ケイ酸カルシウム又はシリカ化結晶セルロースである。
【0047】
「結合剤」としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポビドン、結晶セルロース、白糖、デキストリン、デンプン、ゼラチン、カルメロースナトリウム、アラビアゴム等が挙げられる。
【0048】
「流動化剤」としては、例えば、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0049】
「滑沢剤」としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。好ましい滑沢剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0050】
「基剤」としては、例えば、水、動植物油(オリーブ油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、ゴマ油、ヒマシ油等)、低級アルコール類(エタノール、プロパノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、フェノール等)、高級脂肪酸及びそのエステル、ロウ類、高級アルコール、多価アルコール、炭化水素類(白色ワセリン、流動パラフィン、パラフィン等)、親水ワセリン、精製ラノリン、吸水軟膏、加水ラノリン、親水軟膏、デンプン、プルラン、アラビアガム、トラガカントガム、ゼラチン、デキストラン、セルロース誘導体(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、合成高分子(カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等)、プロピレングリコール、マクロゴール(マクロゴール4000等)、酸化チタン、トリアセチン、及びそれらの2種以上の組合せ等が挙げられる。
【0051】
「保存剤」としては、例えば、パラオキシ安息香酸エチル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸等が挙げられる。
【0052】
「抗酸化剤」としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0053】
「着色剤」としては、例えば、食用色素(食用赤色2号又は3号、食用黄色4号又は5号等)、β-カロテン等が挙げられる。
【0054】
「甘味剤」としては、例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム等が挙げられる。
【0055】
「吸着剤」としては、例えば、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース等が挙げられる。
【0056】
本発明の非晶質固体分散体、又は非晶質固体分散体と製薬上許容される担体との組み合わせからなる素錠は、コーティングされていてもよい。コーティングとしては、例えば、糖衣コーティング、フィルムコーティング等が挙げられる。
【0057】
糖衣コーティングに用いられる剤としては、例えば、白糖、エリスリトール、マルチトール等が挙げられる。これらの剤と前記製薬上許容される担体を組み合わせてコーティングに用いてもよい。
【0058】
フィルムコーティングに用いる剤としては、例えば、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、アクリルポリマー、ポリビニルアルコール、ヒプロメロース等が挙げられる。これらの剤と前記製薬上許容される担体を組み合わせてコーティングに用いてもよい。また、Kollicoat(登録商標、BASF)、OPADRY(登録商標、日本カラコン)等のコーティング剤混合末を用いてもよい。
【0059】
「固体分散体錠」とは、本発明の非晶質固体分散体を用いて製剤化した錠剤を意味する。「普通錠」とは、本発明の非晶質固体分散体を実質的に含まない錠剤を意味する。
【0060】
本発明の固体分散体の製造方法は、特に限定されないが、溶媒法(沈澱、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥)、加熱溶融押出し法、混合粉砕法、超臨界法等が挙げられる。中でも好ましくは、溶媒法又は加熱溶融押出し法である。
【0061】
溶媒法とは、APIと製薬上許容されるポリマーとを溶媒に溶解または分散させた後、溶媒を留去する方法である。溶媒法に用いられる溶媒は、API及び製薬上許容されるポリマーを溶解又は分散するものであれば特に制限はない。
溶媒としては、例えば、水、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、 酢酸、プロピオン酸、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。これらの溶媒は単独で、または混合溶媒として用いられる。好ましい溶媒はエタノール又はアセトンである。溶媒の留去は、例えば、加熱乾燥または減圧乾燥することにより行うことができる。
【0062】
加熱溶融押出し法とは、温度制御された押出し機を通してAPI及び製薬上許容されるポリマー等の原料の加熱、練合、及び生成した溶融物の押出しを連続的に行うプロセスである。溶融は、例えば、120℃~200℃(好ましくは、125℃~175℃)で行うことができる。一般的な押出し機は、バレル及びその内部にスクリューを備える。押出し機としては、二本のスクリューを有する二軸エクストルーダーが好ましい。
【0063】
本発明の固体分散体は、適当な粉砕機を用いて粉砕すれば任意の粒子径を有する固体分散体粒子を簡単に得ることができる。
【0064】
本発明の製造方法により得られる固体分散体からなる医薬製剤、又は固体分散体を含有する医薬製剤は、哺乳動物 (例、ラット、マウス、モルモット、サル、ウシ、イヌ、ブタ、ヒト等)に、経口的または非経口的(例、静脈内、筋肉内、皮下、臓器内、鼻腔内、皮内、点眼、脳内、直腸内、膣内、腹腔内、直接的な病巣への投与)に、安全に投与することができる。本発明の製造方法で得られた固体分散体からなる医薬製剤、又は固体分散体を含有する医薬製剤に含有される式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物の投与量は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状等によっても異なるが、例えば、成人の患者(体重約60kg)に経口投与する場合、通常1回量として約0.02~約30mg/kg体重、好ましくは約0.2~約20mg/kg体重、さらに好ましくは約0.5~約10mg/kg体重であり、この量を1日1回~数回(例、3回)投与するのが望ましい。
【0065】
本発明の好ましい態様について、以下に説明する。
【0066】
本発明の固体分散体におけるAPIは、非晶質の式[I]の化合物である2-{4-[(9R)-9-ヒドロキシ-2-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチルオキシ)-9-(トリフルオロメチル)-9H-フルオレン-4-イル]-1H-ピラゾール-1-イル}-2-メチルプロパンアミド若しくはその製薬上許容される塩又はその一水和物である。
【0067】
本発明の医薬組成物(医薬製剤)における式[I]の化合物の含有量は、剤形及び投与経路により異なるが、例えば、経口投与用医薬製剤の場合、0.5~50質量%である。
【0068】
本発明の固体分散体を構成する担体としては、前記した製薬上許容されるポリマーが挙げられるが、中でも好ましくは、HPMCAS、メチルセルロース、ヒプロメロース及びポリビニルアルコールからなる群より選択される1から4種であり、より好ましくは、HPMCAS、HPMCAS及びメチルセルロースの混合物、又はHPMCAS、メチルセルロース及びポリビニルアルコールの混合物である。
【0069】
本明細書中、「xとyの重量比」又は「x並びにyの混合重量比」は、「xの重量:yの重量」により表される。
【0070】
本発明の固体分散体がHPMCASを含む場合、固体分散体中の式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物とHPMCASの重量比は、1:0.01から1:20の範囲内であり、好ましくは、1:0.05から1:20の範囲内であり、より好ましくは1:0.1から1:10であり、さらに好ましくは1:0.15から1:2であり、特に好ましくは1:0.4から1:0.6である。
【0071】
本発明の固体分散体がメチルセルロースを含む場合、固体分散体中の式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物とメチルセルロースの重量比は、好ましくは1:0.01から1:5の範囲内であり、より好ましくは1:0.03から1:2であり、さらに好ましくは1:0.05から1:1であり、特に好ましくは1:0.08から1:0.12である。
【0072】
本発明の固体分散体がポリビニルアルコールを含む場合、固体分散体中の式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物とポリビニルアルコールの重量比は、好ましくは1:0.05から1:20の範囲内であり、より好ましくは1:0.1から1:10であり、さらに好ましくは1:0.2から1:2であり、特に好ましくは1:0.4から1:0.6である。
【0073】
本発明の固体分散体の具体的な好ましい態様は、
(1)式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、及び
(2)HPMCAS
を含んでなる、式[I]の化合物の非晶質固体分散体である。
この態様において、式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物とHPMCASの重量比が、1:0.05から1:20の範囲内であることが好ましい。この範囲は、より好ましくは1:0.1から1:10であり、さらに好ましくは1:0.15から1:2であり、特に好ましくは1:0.4から1:0.6である。
【0074】
本発明の固体分散体の具体的なより好ましい態様は、
(1)式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)HPMCAS及びメチルセルロース
を含んでなる、式[I]の化合物の非晶質固体分散体である。
この態様において、式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物とHPMCASの好ましい重量比は上述のとおりである。
この態様において、式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物とメチルセルロースの重量比が1:0.01から1:5の範囲内であることが好ましい。この範囲は、より好ましくは1:0.03から1:2であり、さらに好ましくは1:0.05から1:1であり、特に好ましくは1:0.08から1:0.12である。
【0075】
本発明の固体分散体の別の具体的なより好ましい態様は、
(1)式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物、並びに
(2)HPMCAS、メチルセルロース及びポリビニルアルコール
を含んでなる、式[I]の化合物の非晶質固体分散体である。
この態様において、式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物とHPMCASの重量比は、1:0.01から1:5の範囲内であることが好ましい。この範囲は、より好ましくは1:0.03から1:1であり、さらに好ましくは1:0.05から1:0.5であり、特に好ましくは1:0.07から1:0.13である。
この態様において、式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物とメチルセルロースの好ましい重量比は上述のとおりである。
この態様において、式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物とポリビニルアルコールの重量比が、1:0.05から1:20の範囲内であることが好ましい。この範囲は、より好ましくは1:0.1から1:10であり、さらに好ましくは1:0.2から1:2であり、特に好ましくは1:0.4から1:0.6である。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例の各成分の混合比は20%程度、好ましくは10%程度増減されてもよい。なお、以下の実施例及び比較例において用いた式[I]の化合物の一水和物は、前記特許文献2に記載の方法に従って合成したものを用い、製薬上許容されるポリマー及び製薬上許容される担体としては、日本薬局方第17改正又は医薬品添加物規格2018適合品を用いた。
【0077】
実施例1
(1)HPMCASを担体として用いる固体分散体顆粒の調製(溶媒法による調製)
式[I]の化合物の一水和物0.52 gとHPMCAS(商品名:AQOAT AS-LF,信越化学工業製)0.25 gをアセトン1.5 gに溶解させた。得られた溶解液を60℃に設定した真空乾燥機(商品名:DRV320DA,ADVANTEC製)にて終夜乾燥後、目開き180μmの篩で篩過することにより標題の固体分散体顆粒を得た。
【0078】
(2)メチルセルロースを担体として用いる固体分散体顆粒の調製(溶媒法による調製)
式[I]の化合物の一水和物0.52 gとメチルセルロース(商品名:METOLOSE SM-4,信越化学工業製)0.25 gをエタノール:水=8:2の混合液1.9 gに溶解させた。得られた溶解液を60℃に設定した真空乾燥機(商品名:DRV320DA,ADVANTEC製)にて終夜乾燥後、目開き180μmの篩で篩過することにより標題の固体分散体顆粒を得た。
【0079】
(3)ヒプロメロースを担体として用いる固体分散体顆粒の調製(溶媒法による調製)
式[I]の化合物の一水和物0.52 gとヒプロメロース(商品名:TC-5E,信越化学工業製)0.25 gとをエタノール:水=8:2の混合液1.9 gに溶解させた。得られた溶解液を60℃に設定した真空乾燥機(商品名:DRV320DA,ADVANTEC製)にて終夜乾燥後、目開き180μmの篩で篩過することにより標題の固体分散体顆粒を得た。
【0080】
実施例2
(1)HPMCASを担体として用いる固体分散体顆粒の調製(加熱溶融押出し法による調製)
式[I]の化合物の一水和物4.1 gとHPMCAS(商品名:AQOAT AS-LMP,信越化学工業製)2.0 gをガラス容器に入れて混合した。この混合粉体5 gを二軸エクストルーダー(商品名:HAKKE MiniCTW,Thermo Fisher Scientific製)を用い、混錬部バレル温度150℃、スクリュー速度100 rpmで5分間処理し、棒状の成形体を得た。得られた成形体をパワーミル(商品名:ニューパワーミル,大阪ケミカル製)にて回転速度22,000 rpmで整粒することにより標題の固体分散体顆粒を得た。
【0081】
(2)メチルセルロースを担体として用いる固体分散体顆粒の調製(加熱溶融押出し法による調製)
式[I]の化合物の一水和物4.1 gとメチルセルロース(商品名:METOLOSE SM-4,信越化学工業製)2.0 gをガラス容器に入れて混合した。この混合粉体5 gを二軸エクストルーダー(商品名:HAKKE MiniCTW,Thermo Fisher Scientific製)を用い、混錬部バレル温度150℃、スクリュー速度100 rpmで5分間処理し、棒状の成形体を得た。得られた成形体をパワーミル(商品名:ニューパワーミル,大阪ケミカル製)にて回転速度22,000 rpmで整粒することにより標題の固体分散体顆粒を得た。
【0082】
(3)ヒプロメロースを担体として用いる固体分散体顆粒の調製(加熱溶融押出し法による調製)
式[I]の化合物の一水和物4.1 gとヒプロメロース(商品名:TC-5E,信越化学工業製)2.0 gをガラス容器に入れて混合した。この混合粉体5 gを二軸エクストルーダー(商品名:HAKKE MiniCTW,Thermo Fisher Scientific製)を用い、混錬部バレル温度180℃、スクリュー速度100 rpmで5分間処理し、棒状の成形体を得た。得られた成形体をパワーミル(商品名:ニューパワーミル,大阪ケミカル製)にて回転速度22,000 rpmで整粒することにより標題の固体分散体顆粒を得た。
【0083】
(4)ポリビニルアルコールを担体として用いる固体分散体顆粒の調製(加熱溶融押出し法による調製)
式[I]の化合物の一水和物4.1 g とポリビニルアルコール(商品名:JL-05E,日本酢ビ・ポバール株式会社製)2.0 gをガラス容器に入れて混合した。この混合粉体5 gを二軸エクストルーダー(商品名:HAKKE MiniCTW,Thermo Fisher Scientific製)を用い、混錬部バレル温度180℃、スクリュー速度100 rpmで5分間処理し、棒状の成形体を得た。得られた成形体をパワーミル(商品名:ニューパワーミル,大阪ケミカル製)にて回転速度22,000 rpmで整粒することにより標題の固体分散体顆粒を得た。
【0084】
実施例3
HPMCAS及びメチルセルロースを担体として用いる固体分散体錠の調製(溶媒法による調製(中スケール))
式[I]の化合物の一水和物259 gとHPMCAS(商品名:AQOAT AS-LG,信越化学工業製)125 gとをアセトン625 gに溶解後、メチルセルロース(商品名:METOLOSE SM-4,信越化学工業製)25 gを加え、30分以上攪拌した。この液をケイ酸カルシウム(商品名:Florire RE,富田製薬製)100 g、軽質無水ケイ酸(商品名:Aerosil 200,日本アエロジル製)150 g及びクロスカルメロースナトリウム(商品名:Ac-Di-Sol,FMC Health and Nutrition製)75 gの混合物に添加し、高速攪拌造粒機(商品名:FM-VG-10,パウレック製)中で造粒した。得られた造粒物を80℃に設定した真空乾燥機(商品名:VOD-4,池田理化製)で残留アセトン濃度が2.0%以下となるまで乾燥後、目開き610μmのスクリーンミル(商品名:QC-U5,Quadro Engineering製)で整粒した。この操作を2回繰り返して、合わせた顆粒1174 gとステアリン酸マグネシウム(商品名:Parteck LUB MST,Merck製)5 gとを混合後、打錠することにより、質量295.0 mg,硬度約100N、カプレット型(13.7×6.3 mm)の素錠を得た。得られた素錠885 gをコーティング機(商品名:HCT-LABO,フロイント製)中でポリビニルアルコール、酸化チタン、マクロゴール、及びタルクからなる混合物(商品名:OPADRY,日本カラコン製)36 gを含む水分散液でコーティングすることにより、1錠あたり式[I]の化合物として100 mg相当を含有する標題の錠剤を得た。
【0085】
実施例4
HPMCAS及びメチルセルロースを担体として用いる固体分散体錠の調製(溶媒法による調製(大スケール))
式[I]の化合物の一水和物259 gとHPMCAS(商品名:AQOAT AS-LG,信越化学工業製)125 gとをアセトン625 gに溶解後、メチルセルロース(商品名:METOLOSE SM-4,信越化学工業製)25 gを加え、30分以上攪拌した。この液をケイ酸カルシウム(商品名:Florite RE,富田製薬製)100 g、軽質無水ケイ酸(商品名:Aerosil 200,日本アエロジル製)150 g及びクロスカルメロースナトリウム(商品名:Ac-Di-Sol,FMC Health and Nutrition製)75 gの混合物に添加し、高速攪拌造粒機(商品名:FM-VG-10,パウレック製)中で造粒した。80℃に設定した真空乾燥機(商品名:VOD-4,池田理化製)で残留アセトン濃度が2.0%以下となるまで乾燥後、目開き610μmのスクリーンミル(商品名:QC-U10,Quadro Engineering製)で整粒することにより、固体分散体顆粒を得た。この操作を8回繰り返し、合わせた顆粒10498 gとステアリン酸マグネシウム(商品名:Parteck LUB MST,Merck製)50 gとを混合、圧縮することにより、質量295.0 mg、直径9.0 mmの素錠を得た。得られた素錠1121 gをコーティング機(商品名:HCT-LABO,フロイント製)中でポリビニルアルコール、酸化チタン、マクロゴール、及びタルクからなる混合物(商品名:OPADRY,日本カラコン製)45 gを含む水分散液でコーティングすることにより、1錠あたり式[I]の化合物として100 mg相当を含有する標題の錠剤を得た。
【0086】
実施例5
HPMCAS、メチルセルロース及びポリビニルアルコールを担体として用いる固体分散体錠の調製(加熱溶融押出し法による調製)
式[I]の化合物の一水和物20.7 g、HPMCAS(商品名:AQOAT AS-LF,信越化学工業製)2.4 g、メチルセルロース2.0 g(商品名:METOLOSE SM-4,信越化学工業製)、ポリビニルアルコール(商品名:JL-05E,日本酢ビ・ポバール株式会社製)9.6 g及びケイ酸カルシウム(商品名:Florire RE,富田製薬製)4.0 gを高速攪拌造粒機(商品名:メカノミル,岡田精工製)で混合した。この混合粉体5 gを二軸エクストルーダー(商品名:HAKKE MiniCTW,Thermo Fisher Scientific製)を用い、混錬部バレル温度160℃、スクリュー速度100 rpmで処理することにより、棒状の成形体を得た。この操作を7回実施後、合わせた成形体をパワーミル(商品名:ニューパワーミル,大阪ケミカル製)にて回転速度22,000 rpmで整粒した。得られた整粒顆粒34 gを低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:L-HPC LH-B1,信越化学工業製)8.7 g、シリカ化結晶セルロース(商品名:PROSOLV SMCC 50,JRS Pharma製)5.2 g及びステアリン酸マグネシウム(商品名:Parteck LUB MST,Merck製)0.2 gと混合後、打錠することにより、質量274.6 mg、直径9.0 mmの素錠を得た。得られた素錠15 gをコーティング機(商品名:HCT-LABO,フロイント製)中でヒプロメロース、酸化チタン、乳糖水和物、マクロゴール4000、及びトリアセチンからなる混合物(商品名:OPADRY,日本カラコン製)0.6 gを含む水分散液でコーティングすることにより、1錠あたり式[I]の化合物として100 mg相当を含有する標題の錠剤を得た。
【0087】
実施例6
HPMCAS及びメチルセルロースを担体として用いる固体分散体錠の調製(加熱溶融押出し法による調製(小スケール))
式[I]の化合物の一水和物25.9 g、HPMCAS(商品名:AQOAT AS-LF,信越化学工業製)12.5 g及びメチルセルロース(商品名:METOLOSE SM-4,信越化学工業製)2.5 gを袋混合後、目開き710μmの篩で篩過した。この混合粉体5 gを二軸エクストルーダー(商品名:HAKKE MiniCTW,Thermo Fisher Scientific製)を用い、混錬部バレル温度150℃,スクリュー速度100 rpmで5分間処理し,棒状の成形体を得た。この操作を2回実施後、得られた成形体をパワーミル(商品名:ニューパワーミル,大阪ケミカル製)にて回転速度22,000 rpmで整粒した。得られた整粒顆粒3.8 gを低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:L-HPC LH-B1,信越化学工業製)1.4 g及びステアリン酸マグネシウム(商品名:Parteck LUB MST,Merck製)0.02 gと混合後、打錠することにより、質量224.6 mg,直径8.0 mmの素錠を得た。得られた素錠2.2 gをダミー錠300 gと共にコーティング機(商品名:HCT-LABO,フロイント製)中でヒプロメロース、酸化チタン、乳糖水和物、マクロゴール4000、及びトリアセチンからなる混合物(商品名:OPADRY,日本カラコン製)12 gを含む水分散液でコーティングすることにより、1錠あたり式[I]の化合物として100 mg相当を含有する標題の錠剤を得た。
【0088】
実施例7
HPMCAS及びメチルセルロースを担体として用いる固体分散体錠の調製(加熱溶融押出し法による調製(大スケール))
式[I]の化合物の一水和物396 g、HPMCAS(商品名:AQOAT AS-LF,信越化学工業製)191 g、メチルセルロース(商品名:METOLOSE SM-4,信越化学工業製)38 g及びステアリン酸マグネシウム(商品名:Parteck LUB MST,Merck製)2 gをV型混合機(商品名:V-20,徳寿工作所製)で混合した。この混合粉体を乾式造粒機(商品名:TF-MINI,フロイント製)及びスクリーンミル(商品名:QC-U5,Quadro Engineering製)で処理することにより、比容積2.2 mL/gの顆粒を得た。得られた顆粒579 gを二軸エクストルーダー(商品名:Nano-16,Leistriz製)を用い、最高温度155℃、スクリュー速度200 rpmで処理することにより、棒状の成形体を得た。得られた成形体はインパクトミル(商品名:SAMF,奈良機械製作所製)にて回転速度14000 rpmで整粒した。得られた整粒顆粒197 gを低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:L-HPC LH-B1,信越化学工業製)72 g及びステアリン酸マグネシウム(商品名:Parteck LUB MST,Merck製)1 gと混合後、打錠することにより、質量225.0 mg、直径8.0 mmの素錠を得た。得られた素錠225 gをコーティング機(商品名:HCT-LABO,フロイント製)中でヒプロメロース、酸化チタン、乳糖水和物、マクロゴール4000、及びトリアセチンからなる混合物(商品名:OPADRY,日本カラコン製)7 gを含む水分散液でコーティングすることにより、1錠あたり式[I]の化合物として100 mg相当を含有する標題の錠剤を得た。
【0089】
比較例1
普通錠の調製(小スケール)
インパクトミル(商品名:SAMF,奈良機械製作所製)にて粉砕した式[I]の化合物の一水和物(粒子径D90 13μm)518 g、乳糖水和物(商品名:Pharmatose 200M,DFE Pharma製)103 g及びカルメロースカルシウム(商品名:ECG-505,五徳薬品製)75 gを混合後、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-L,日本曹達製)25 g及び精製水425 gからなる溶液を添加し、高速攪拌造粒機(商品名:FM-VG-10,パウレック製)中で造粒した。得られた造粒物を給気温度65℃に設定した流動層造粒乾燥機(商品名:FD-MP-01,パウレック製)中で乾燥減量3.5%まで乾燥後、目開き610μmのスクリーンミル(商品名:QC-U10,Quadro Engineering製)で整粒することにより顆粒を得た。この操作を2回繰り返し、合わせた顆粒1347 gとステアリン酸マグネシウム(商品名:Parteck LUB MST,Merck製)8 gとを混合後、打錠することにより、質量145.0 mg、硬度約70N、直径7.5 mmの素錠を得た。得られた素錠1088 gをコーティング機(商品名:HCT-LABO,フロイント製)中で、ヒプロメロース、酸化チタン、乳糖水和物、マクロゴール4000、及びトリアセチンからなる混合物(商品名:OPADRY,日本カラコン製)32 gを含む水分散液でコーティングすることにより、1錠あたり式[I]の化合物として100 mg相当を含有する標題の錠剤を得た。
【0090】
比較例2
普通錠の調製(大スケール)
(1)インパクトミル(商品名:SAMF,奈良機械製作所製)にて粉砕した式[I]の化合物の一水和物(粒子径D90 12μm)518 g、乳糖水和物(商品名:Pharmatose 200M,DFE Pharma製)103 g及びカルメロースカルシウム(商品名:ECG-505,五徳薬品製)75 gを混合後、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-L,日本曹達製)25 g及び精製水425gからなる溶液を添加し、高速攪拌造粒機(商品名:FM-VG-10,パウレック製)中で造粒した。得られた造粒物を給気温度65℃に設定した流動層造粒乾燥機(商品名:FD-MP-01,パウレック製)中で乾燥減量3.5%まで乾燥後、目開き610μmのスクリーンミル(商品名:QC-U10,Quadro Engineering製)で整粒することにより顆粒を得た。この操作を5回繰り返し、合わせた顆粒2884 gとステアリン酸マグネシウム(商品名:Parteck LUB MST,Merck製)16 gとを混合後、圧縮することにより質量145.0 mg、直径7.5 mmの素錠を得た。得られた素錠1088 gをコーティング機(商品名:HCT-LABO,フロイント製)中で、ヒプロメロース、酸化チタン、乳糖水和物、マクロゴール4000、及びトリアセチンからなる混合物(商品名:OPADRY,日本カラコン製)32 gを含む水分散液でコーティングすることにより、1錠あたり式[I]の化合物として100 mg相当を含有する標題の錠剤を得た。
(2)インパクトミル(商品名:SAMF,奈良機械製作所製)にて粉砕した式[I]の化合物の一水和物(粒子径D90 12μm)518 g、乳糖水和物(商品名:Pharmatose 200M,DFE Pharma製)103 g及びカルメロースカルシウム(商品名:ECG-505,五徳薬品製)75 gを混合後、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-L,日本曹達製)25 g及び精製水425gからなる溶液を添加し、高速攪拌造粒機(商品名:FM-VG-10,パウレック製)中で造粒した。得られた造粒物を給気温度65℃に設定した流動層造粒乾燥機(商品名:FD-MP-01,パウレック製)中で乾燥減量3.3%まで乾燥後、目開き250μmの篩で整粒することにより顆粒を得た。得られた顆粒433 g、乳糖水和物(商品名:ダイラクトーズS,フロイント産業製)398 g、結晶セルロース(商品名:セオラスUF-711,旭化成製)720 g、カルメロースカルシウム(商品名:ECG-505,五徳薬品製)135 g、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-L,日本曹達製)45 g及びステアリン酸マグネシウム(商品名:Parteck LUB MST,Merck製)10 gとを混合後、圧縮することにより質量145.0 mg、直径7.5 mmの素錠を得た。得られた素錠1088 gをコーティング機(商品名:HCT-LABO,フロイント製)中で、ヒプロメロース、酸化チタン、乳糖水和物、マクロゴール4000、及びトリアセチンからなる混合物(商品名:OPADRY,日本カラコン製)32 gを含む水分散液でコーティングすることにより、1錠あたり式[I]の化合物として25 mg相当を含有する標題の錠剤を得た。
【0091】
試験例1
中性溶液(pH6.8)中での溶出試験
実施例1で得られた固体分散体顆粒について、pH6.8試験液(商品名:薄めたMcIlvaine緩衝液,関東化学製)に対する溶解挙動を評価した。
溶出試験は、日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)に準じた装置(商品名:NTR-VS6P,富山産業製)を使用し、パドル回転数75 rpm、試験液量450 mLにて実施した。式[I]の化合物として100 mg相当量を試験液に投入後、サンプリングポイント毎に分光光度計(UV-1600,島津製作所製)により式[I]の化合物の溶解量を測定した。
比較対照として、インパクトミル(商品名:SAMF,奈良機械製作所製)で粉砕した式[I]の化合物の一水和物(粒子径D90:13μm)結晶の溶解挙動も同じ方法で評価した。結果を
図1に示す。
図1に示されるように、実施例1の固体分散体はいずれも、式[I]の化合物の一水和物結晶より良好な溶解性を示した。
【0092】
試験例2
中性溶液(pH6.8)中での溶出試験
実施例2で得られた固体分散体顆粒について、pH6.8試験液(商品名:薄めたMcIlvaine緩衝液,関東化学製)に対する溶解挙動を試験例1と同様の方法で評価した。
比較対照として、インパクトミル(商品名:SAMF,奈良機械製作所製)で粉砕した式[I]の化合物の一水和物(粒子径D90:13μm)結晶の溶解挙動も同じ方法で評価した。結果を
図2に示す。
図2に示されるように、実施例2の固体分散体はいずれも、式[I]の化合物の一水和物結晶より良好な溶解性を示した。
【0093】
試験例3
酸性溶液(pH1.2)中での析出試験
エタノールに溶解させた式[I]の化合物(濃度:100mg/mL)について、以下の6種類の試験液に対する析出挙動を試験例1と同様の試験方法で評価した。結果を
図3に示す。
1)コポリビドン(商品名:Kollidon VA 64,BASF製)0.01 gを添加した日本薬局方溶出試験液第1液(pH1.2)450 mL
2)メチルセルロース(商品名:METOLOSE SM-4,信越化学工業製)0.01 gを添加した日本薬局方溶出試験液第1液(pH1.2)450 mL
3)ヒプロメロース(商品名:TC-5E,信越化学工業製)0.01 gを添加した日本薬局方溶出試験液第1液(pH1.2)450 mL
4)HPMCAS(商品名:AQOAT AS-MF,信越化学工業製)0.01 gを添加した日本薬局方溶出試験液第1液(pH1.2)450 mL
5)ポリビニルアルコール(商品名:JL-05E,日本酢ビ・ポバール株式会社製)0.01 gを添加した日本薬局方溶出試験液第1液(pH1.2)450 mL
6)試験液:日本薬局方溶出試験液第1液(pH1.2)450 mL
【0094】
図3に示されるように、コポリビドン、メチルセルロース、又はヒプロメロースを添加すると、HPMCAS添加時、ポリビニルアルコール添加時又は製薬上許容されるポリマー非添加時に比べて、式[I]の化合物の析出が有意に抑制された。
【0095】
試験例4
中性溶液及び酸性溶液中での溶出試験
実施例3、実施例5又は比較例1で得られた錠剤について、下記の4試験液に対する溶解挙動を試験例1と同様の方法で評価した。結果を
図4に示す。
1)pH1.2試験液(日本薬局方溶出試験液第1液,関東化学製)450 mL
2)pH4.0試験液(商品名:薄めたMcIlvaine緩衝液,関東化学製)450 mL
3)pH5.5試験液(商品名:薄めたMcIlvaine緩衝液,関東化学製)450 mL
4)pH6.8試験液(商品名:薄めたMcIlvaine緩衝液,関東化学製)450 mL
【0096】
図4に示されるように,実施例3及び実施例5の固体分散体錠は、いずれの試験液においても比較例1の普通錠より良好な溶解性を示した。
【0097】
試験例5
固体分散体錠の安定性試験
試験例5-1:実施例3の固体分散体錠を用いた安定性試験
実施例3で得られた錠剤を、5℃、25℃/60%RH及び40℃75%RHの条件下で、乾燥剤と共にガラス瓶に入れて閉栓し、6ヵ月間保管した際の結晶状態について、粉末X線回折装置(商品名:X’Pert PRO, Malvern Panalytical製)及び示差走査熱量測定装置(商品名:DSC Q2000,TA instruments製)を用いて評価した。比較対照として、式[I]の化合物の一水和物結晶を同様に評価した。
【0098】
(粉末X線回折による評価)
下記条件で評価した結果を
図5に示す。
放射光:Cu-Kα1 / 45 kV / 40 mA
カウンターモノクロメータ:グラファイト
スキャン範囲:3から25°
温湿度:25℃/60%RH
【0099】
図5に示されるように、実施例3の固体分散体錠は、添加剤成分であるケイ酸カルシウムに由来するピーク以外は認められなかったことから、式[I]の化合物は非晶質状態であることが確認された。また、いずれの保存条件においても保存前からの変化は無いことから、非晶質状態は保管後も維持されることが分かった。
【0100】
(示差走査熱量測定(DSC)による評価)
下記条件で評価した結果を
図6に示す。
サンプル量:5 mg
容器:開放アルミ容器(商品名:T zero,TA instruments製)
昇温速度:5℃/分
温度範囲:25から180℃
大気ガス:窒素,50 mL/分
リファレンス:空アルミ容器
【0101】
図6に示されるように、式[I]の化合物の一水和物では、水分子の脱離に起因する100℃付近のピークや融解に起因する145℃付近のピークが認められるのに対し、実施例3の固体分散体錠は、ハローパターンであったことから、式[I]の化合物は非晶質状態であることが確認された。また、いずれの保存条件においても保存前からの変化は無いことから、非晶質状態は保管後も維持されることが分かった。
【0102】
試験例5-2
実施例7の固体分散体錠を用いた安定性試験
実施例7で得られた錠剤を、25℃/60%RH及び40℃75%RHの条件下で、開放下、6ヵ月間保管した際の結晶状態について、示差走査熱量測定装置(商品名:DSC Q2000,TA instruments製)を用いて評価した。比較対照として、式[I]の化合物の一水和物結晶を同様に評価した。
【0103】
(示差走査熱量測定(DSC)による評価)
下記条件で評価した結果を
図7に示す。
サンプル量:5 mg
容器:開放アルミ容器(商品名:T zero,TA instruments製)
昇温速度:5℃/分
温度範囲:25から180℃
大気ガス:窒素,50 mL/分
リファレンス:空容器
【0104】
図7に示されるように、式[I]の化合物の一水和物では、水分子の脱離に起因する100℃付近のピークや融解に起因する145℃付近のピークが認められるのに対し、実施例7の固体分散体錠は、ハローパターンであったことから、式[I]の化合物は非晶質状態であることが確認された。また、いずれの保存条件においても保存前からの変化は無いことから、非晶質状態は保管後も維持されることが分かった。
【0105】
試験例6
イヌでの薬物動態試験
試験例6-1:普通錠との比較
実施例3又は比較例2で得られた錠剤1錠(式[I]の化合物として100 mg相当量を含有)を下記条件の雄性ビーグル犬に経口投与し、得られた血漿中濃度推移から最高血漿中濃度到達時間(T
max)、最大血漿中濃度(C
max)及び投与後24時間までの血漿中濃度曲線下面積(AUC
0-24hr)を算出した。
図8に血漿中濃度推移を、表1に薬物動態パラメータを示す。
【0106】
イヌ月齢:79から81ヵ月
イヌ体重:11.4から16 kg
食餌条件:投与前約17時間から投与4時間目の採血終了後まで絶食
胃内pH調整:無し
投与方法:錠剤1錠を咽頭部に押し込み投与後、水道水約30 mLを口腔内に付加
採血方法:ヘパリン処理シリンジを用いて橈側皮静脈より経時的に血液約1 mLを採取した後、遠心分離
血漿中濃度測定時間:投与0、0.25、0.5、1、2、4、6、8及び24時間後
血漿中の化合物濃度測定方法:アセトニトリルを用いて除タンパク後,高速液体クロマトグラフィーを用いて測定
【0107】
図8及び表1に示されるように、実施例3の固体分散体錠投与時は、比較例2の普通錠投与時に比べて6.7倍のC
max値、及び4.3倍のAUC
0-24hr値を示した。一方、T
max値は実施例3の固体分散体錠と比較例2の普通錠との間で顕著な差は認められなかった。
【0108】
【0109】
試験例6-2:溶媒法と加熱溶融押出し法との比較
実施例3又は実施例6で得られた錠剤1錠を下記条件の雄性ビーグル犬に経口投与し、得られた血漿中濃度推移から最高血漿中濃度到達時間(T
max)、最大血漿中濃度(C
max)及び投与後24時間までの血漿中濃度曲線下面積(AUC
0-24hr)を算出した。
図9には血漿中濃度推移を、表2には薬物動態パラメータを、それぞれ示す。
【0110】
イヌ月齢:90から92ヵ月
イヌ体重:11.9から16.8 kg
食餌条件:投与前約17時間~投与4時間目の採血終了後まで絶食
胃内pH調整:有り(ペンタガストリンを投与30分前及び投与15分後に静注投与)
投与方法:錠剤1錠を咽頭部に押し込み投与後、水道水約30 mLを口腔内に付加
採血方法:ヘパリン処理シリンジを用いて橈側皮静脈より経時的に血液約1 mLを採取した後、遠心分離
血漿中濃度測定時間:投与0、0.25、0.5、1、2、3、4、6、8及び24時間後(3時間後については、実施例3の錠剤投与時のみ測定した。)
血漿中の化合物濃度測定方法:アセトニトリルを用いて除タンパク後、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定
【0111】
図9及び表2に示されるように、実施例6の錠剤投与時は、実施例3の錠剤投与時に比べて0.9倍のC
max値、及び1.0倍のAUC
0-24hr値であり、同等の経口吸収性を示した。また、T
max値も実施例6と実施例3の間で顕著な差は認められなかった。
【0112】
【0113】
試験例7
ヒト臨床試験における式[I]の化合物の薬物動態
試験例7-1:普通錠を用いた臨床試験
比較例2で得られた錠剤を用いて、式[I]の化合物の薬物動態への食事の影響を評価するためのランダム化、非盲検、及びクロスオーバーの第一相臨床試験を行った。
【0114】
14人の健常人は第1期(一度目の投与)の初日に、以下のいずれの条件下で投与を受けるか、1:1の割合で無作為に割り付けられ、割り付けられた条件下で式[I]の化合物250mgの経口単回投与を受けた。式[I]の化合物250mgの投与は、式[I]の化合物100mg相当を含有する錠剤2錠、及び25mg相当を含有する錠剤2錠により行った。
(1)空腹時投与(Fasted):一晩(少なくとも10時間)の絶食後、朝食なしで式[I]の化合物の投与を受ける。
(2)食後投与(Fed):一晩(少なくとも10時間)の絶食後、高脂肪朝食の摂食開始30分後に式[I]の化合物の投与を受ける。
一度目の投与の7日後に第2期(二度目の投与)の試験を行った。第2期は各被験者の投与条件を入れ替えて行われた。すなわち、第1期に空腹時投与された被験者は一晩(少なくとも10時間)の絶食後、高脂肪朝食の摂食開始30分後に式[I]の化合物250mgの経口単回投与を受けた。第1期に食後投与された被験者は一晩(少なくとも10時間)の絶食後、朝食なしで式[I]の化合物250mgの経口単回投与を受けた。
【0115】
すべての被験者から、投与0.5時間前並びに投与0.25、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、6、8、10、12、24、36、48、72、96及び144時間後に採血を行った。血液サンプルから式[I]の化合物の血漿中濃度を測定した。得られた血漿中濃度推移から、最高血漿中濃度到達時間(T
max)、最大血漿中濃度(C
max)及び血漿中濃度曲線下面積(AUC
inf)を算出した。血漿中濃度推移を
図10及び
図11に、薬物動態パラメータを表3に示す。
【0116】
【0117】
図10、
図11及び表3に示されるように、式[I]の化合物の普通錠を用いた臨床試験において、空腹時投与の式[I]の化合物の経口吸収性は食後投与に比べて低下した。
【0118】
試験例7-2:固体分散体錠を用いた臨床試験
実施例4で得られた錠剤を用いて、式[I]の化合物の薬物動態への食事の影響を評価するためのランダム化、非盲検、及びクロスオーバーの第一相臨床試験を行った。
【0119】
14人の健常人は第1期(一度目の投与)の初日に、以下のいずれの条件下で投与を受けるか、1:1の割合で無作為に割り付けられ、割り付けられた条件下で式[I]の化合物300mgの経口単回投与を受けた。式[I]の化合物300mgの投与は、式[I]の化合物100mg相当を含有する錠剤3錠により行った。
(1)空腹時投与(Fasted):一晩(少なくとも10時間)の絶食後、朝食なしで式[I]の化合物の投与を受ける。
(2)食後投与(Fed):一晩(少なくとも10時間)の絶食後、高脂肪朝食の摂食開始30分後に式[I]の化合物の投与を受ける。
一度目の投与の7日後に第2期(二度目の投与)の試験を行った。第2期は各被験者の投与条件を入れ替えて行われた。すなわち、第1期に空腹時投与された被験者は一晩(少なくとも10時間)の絶食後、高脂肪朝食の摂食開始30分後に式[I]の化合物300mgの経口単回投与を受けた。第1期に食後投与された被験者は一晩(少なくとも10時間)の絶食後、朝食なしで式[I]の化合物300mgの経口単回投与を受けた。
すべての被験者から投与0.5時間前並びに投与後0.5、1、2、3、4、6、8、12、24、48、72、96及び144時間後に採血を行った。血液サンプルから式[I]の化合物の血漿中濃度を測定した。得られた血漿中濃度推移から、最高血漿中濃度到達時間(T
max)、最大血漿中濃度(C
max)及び血漿中濃度曲線下面積(AUC
inf)を算出した。血漿中濃度推移を
図12及び
図13に、薬物動態パラメータを表4に示す。
【0120】
【0121】
図12、
図13及び表4に示されるように、式[I]の化合物の固体分散体錠を用いた臨床試験において、空腹時投与と食後投与の間で式[I]の化合物の経口吸収性に顕著な差は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明によれば、式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はその水和物を非晶質状態で安定に維持することができる固体分散体が提供される。これにより、薬物動態が改善された式[I]の化合物若しくはその製薬上許容される塩又はその水和物を含有する医薬製剤が提供される。
また、本発明に係る式[I]の化合物の非晶質固体分散体は、ある態様において投与時に胆汁酸の有無にかかわらず高い溶解度を示すことから、食事の影響を受けにくく、空腹時投与においても高い経口吸収性を示すという利点も有する。
【0123】
本出願は、日本国で2019年3月4日に出願された特願2019-038327を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。