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特許7489372粒子均一度に優れたモルデナイトゼオライト及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】粒子均一度に優れたモルデナイトゼオライト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/26 20060101AFI20240516BHJP
   B01J 29/18 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
C01B39/26
B01J29/18 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021504211
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 KR2019009432
(87)【国際公開番号】W WO2020022868
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0088062
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0091772
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チョン ユン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン-キュ
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-504357(JP,A)
【文献】特表2008-525187(JP,A)
【文献】特開2014-106181(JP,A)
【文献】特開2005-225682(JP,A)
【文献】SMAI Heman et al.,Australian Journal of Basic and Applied Sciences,2017年,11, (1),27-34
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20-39/54
B01J 21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水にpH調節物質及びシリカ前駆体を溶解してシリカ塩基性水溶液を提供する段階と、
水に構造誘導物質及びアルミナ前駆体を溶解して水溶液を提供する段階と、
水に界面活性剤を溶解して水溶液を提供する段階と、
前記シリカ塩基性水溶液と、前記構造誘導物質及びアルミナ前駆体を溶解した水溶液とを混合及び撹拌してシリカ-アルミナ水溶液を製造する段階と、
前記シリカ-アルミナ水溶液に界面活性剤水溶液を投入し、モルデナイトゼオライト合成組成物を製造する段階と、
前記モルデナイトゼオライト合成組成物をゲル化する段階と、
結晶化する段階と、を含み、
前記シリカ塩基性水溶液は、モルデナイトゼオライト合成組成物全体に含まれる水のモル数に対するシリカのモル数が0.01~0.1になるようにする含有量を有し、
水に界面活性剤を溶解する際に、水と界面活性剤を30~500rpmの撹拌速度で撹拌し、
前記モルデナイトゼオライト合成組成物の製造段階において、前記界面活性剤水溶液は10cc/min以下の速度でシリカ-アルミナ水溶液に投入し、
前記ゲル化は、20~60℃の温度で1~120時間撹拌して行い、
前記結晶化は、140~210℃の温度で反応させることにより行う、モルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項2】
前記シリカ塩基性水溶液は、前記pH調節物質を水に投入して塩基性水溶液を製造し、前記塩基性水溶液にシリカ前駆体を投入及び溶解して得られる、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項3】
前記pH調節物質は、塩基性水溶液のpHが12~14の範囲になるようにする含有量で投入する、請求項2に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項4】
前記pH調節物質は、SiOに対するモル比が0.15~0.35になるようにする含有量で投入する、請求項2に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項5】
前記pH調節物質は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、及び水酸化アンモニウムからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項6】
前記シリカ前駆体は、撹拌下で、0.1~1g/minの速度で投入される、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項7】
前記シリカ前駆体は、ヒュームシリカ、沈殿(precipitated)シリカ、コロイダルシリカ、ナトリウムシリケート、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート、ボロシリケート、及びフルオロシリケートからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項8】
前記シリカ前駆体の投入後に、1~200時間撹拌を行ってシリカ前駆体を溶解する、請求項2に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項9】
前記構造誘導物質及びアルミナ前駆体を溶解した水溶液は、構造誘導物質及びアルミナ前駆体を水に投入及び撹拌して製造する、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項10】
前記構造誘導物質及びアルミナ前駆体は、個別又は同時に水に投入し、且つ1~10g/minの速度で投入する、請求項9に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項11】
前記アルミナ前駆体は、アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al)が5~50の範囲になるようにする含有量で投入される、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項12】
前記アルミナ前駆体は、アルミン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、及びアルミニウムからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項13】
前記構造誘導物質は、シリカ1モルに対して1/100~1/10モルの範囲になるようにする含有量で投入される、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項14】
前記構造誘導物質は、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、及びテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項15】
前記界面活性剤水溶液は、撹拌下で、界面活性剤を20℃~80℃の温度の水に投入して製造する、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項16】
前記界面活性剤は、界面活性剤水溶液中に0.01~0.1モルの濃度になるように投入する、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項17】
前記界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、及びセチルピリジニウムクロライドからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項18】
前記混合は、シリカ塩基性水溶液に構造誘導物質及びアルミナ前駆体を溶解した水溶液を1~10cc/minの速度で投入して行う、請求項1に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項19】
前記混合は、構造誘導物質及びアルミナ前駆体を溶解した水溶液の投入完了後に撹拌を1~72時間さらに行う、請求項18に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【請求項20】
前記結晶化は、シードの存在下で行われる、請求項1~請求項19のいずれか一項に記載のモルデナイトゼオライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子均一度に優れたモルデナイトゼオライト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、機能性材料の開発に対する要求が次第に高まるにつれて、優れた物性を有する物質に新しい機能を付加した新素材の開発の必要性が増大しつつある。
【0003】
有機/無機ナノ細孔体又は多孔性有機/無機混成体、有機金属骨格体、又は多孔性無機細孔体は、構造の多様性、多くの数の活性部位、広い比表面積、及び細孔体積を有する特性により、触媒、吸着剤、膜、薬物伝達物質、電子素材などとして広く用いられている。かかる細孔物質は、触媒及び吸着剤として最も活用度が高く、その細孔のサイズに応じて、微細細孔物質(<2nm)、メソ細孔物質(2-50nm)、マクロ細孔物質(>50nm)に分類される。
【0004】
微細細孔物質の代表物質のうちの一つであるゼオライトは、結晶性アルミノシリケート(Crystalline aluminosilicate)からなり、高い比表面積、細孔体積、及び均一な微細細孔を特徴とするため、Friedel-Craft Acylation、Friedel-Craft Alkylation、Claisen-Schmidt Reactionなどのような分子のサイズや形状、及び選択的触媒反応に多く活用されている。
【0005】
当該技術分野では、ゼオライトの細孔分布及び表面を制御することにより、所望の作用及び機能を達成しようとする試みが継続的になされてきた。
【0006】
例えば、KR 2011-0019804(2009.08.21.公開)は、有無機混成ナノ細孔体の製造方法、上記方法によって得られる有無機混成ナノ細孔体、及びその用途に関連するものであって、有機リガンドとして、トリ(C-C)アルキル-1,3,5-ベンゼントリカルボキシレートを用いることにより、結晶性が高く、純粋なゼオライトMTN構造のアルミニウム有無機混成ナノ細孔体を製造する方法、及びこれを利用した吸着剤、又は不均一触媒などを提供する。
【0007】
一方、JP 2005-254236(2005.09.22.公開)は、モルデナイト型ゼオライトアルキル化触媒に関するものであって、制御された大細孔構造を有するモルデナイト型ゼオライト触媒、これを含む触媒複合体、及び触媒複合体の製造方法を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、モルデナイト型ゼオライト触媒の粒子均一度と触媒活性の間の関係についての研究を重ねた結果、触媒の粒子サイズが均一であるほど触媒活性が増加することを確認した。そこで、本発明は、粒子均一度に優れたモルデナイト型ゼオライト触媒を製造する方法を提供し、これによって得られた触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、モルデナイトゼオライトの製造方法に関するものであって、水にpH調節物質及びシリカ前駆体を溶解してシリカ塩基性懸濁液を提供する段階と、水に構造誘導物質及びアルミナ前駆体を溶解して水溶液を提供する段階と、水に界面活性剤を溶解して水溶液を提供する段階と、上記シリカ塩基性懸濁液とアルミナ水溶液を混合及び撹拌してシリカ-アルミナ水溶液を製造する段階と、上記シリカ-アルミナ水溶液に界面活性剤水溶液を投入し、ゼオライト合成組成物を製造する段階と、上記ゼオライト合成組成物をゲル化する段階と、結晶化する段階と、を含む。
【0010】
上記シリカ塩基性懸濁液は、上記pH調節物質を水に投入して塩基性水溶液を製造し、上記塩基性水溶液にシリカ前駆体を投入及び溶解して得ることができる。
【0011】
上記pH調節物質は、塩基性水溶液のpHが12以上になるようにする含有量で投入することができる。
【0012】
上記pH調節物質は、SiOに対するモル比が0.15~0.35になるようにする含有量で投入することができる。
【0013】
上記pH調節物質は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、及び水酸化アンモニウムからなる群より選択される少なくとも一つであることができる。
【0014】
上記シリカ塩基性懸濁液は、ゼオライト合成組成物全体に含まれる水のモル数に対するシリカのモル数が0.01~0.1になるようにする含有量を有することができる。
【0015】
上記シリカ前駆体は、撹拌下で、0.1~1g/minの速度で投入されることができる。
【0016】
上記シリカ前駆体は、ヒュームシリカ、沈殿(precipitated)シリカ、コロイダルシリカ、ナトリウムシリケート、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート、ボロシリケート、及びフルオロシリケートからなる群より選択される少なくとも一つであることができる。
【0017】
上記シリカ前駆体の投入後に、1~200時間撹拌を行ってシリカ前駆体を溶解することができる。
【0018】
上記アルミナ水溶液は、構造誘導物質及びアルミナ前駆体を水に投入及び撹拌して製造することができる。
【0019】
上記構造誘導物質及びアルミナ前駆体は、個別又は同時に水に投入し、且つ1~10g/minの速度で投入することができる。
【0020】
上記アルミナ前駆体は、アルミナに対するシリカのモル比(SiO/Al)が5~50の範囲になるようにする含有量で投入されることができる。
【0021】
上記アルミナ前駆体は、アルミン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、及びアルミニウムからなる群より選択される少なくとも一つであることができる。
【0022】
上記構造誘導物質は、シリカ1モルに対して1/100~1/10モルの範囲になるようにする含有量で投入されることができる。
【0023】
上記構造誘導物質は、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、及びテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートからなる群より選択される少なくとも一つであることができる。
【0024】
上記界面活性剤水溶液は、撹拌下で、界面活性剤を20℃~80℃の温度の水に投入して製造することができる。
【0025】
上記界面活性剤は、界面活性剤水溶液中に0.01~0.1モルの濃度になるように投入することができる。
【0026】
上記界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、及びセチルピリジニウムクロライドからなる群より選択される少なくとも一つであることができる。
【0027】
上記混合は、シリカ塩基性懸濁液にアルミナ水溶液を1~10cc/minの速度で投入して行うことができる。
【0028】
上記混合は、アルミナ水溶液の投入完了後に撹拌を1~72時間さらに行うことができる。
【0029】
上記ゼオライト合成組成物の製造段階において、上記界面活性剤水溶液は、1~10cc/minの速度でシリカ-アルミナ水溶液に投入することができる。
【0030】
上記ゲル化は、20~60℃の温度で1~120時間撹拌して行うことができる。
【0031】
上記結晶化は、140~210℃の温度で反応させることにより行うことができる。
【0032】
上記結晶化は、シードの存在下で行われることができる。
【0033】
本発明は、他の実施形態として、均一度に優れたモルデナイトゼオライトを提供し、内部にマイクロ細孔を有する一次粒子が凝集した二次粒子であって、上記二次粒子は、粒子間にメソ細孔を有し、上記二次粒子を構成する一次粒子は、5.0kVの加速電圧及び50,000倍率で撮影した10枚のSEM画像のそれぞれから任意に選んだ10個の粒子(合計100個の粒子)のサイズを測定したとき、最多分布粒子サイズ領域(10nm単位)±30nm以内の粒子サイズを有する粒子が90%以上である、均一度に優れたモルデナイトゼオライトを提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によると、粒子サイズの均一度に優れたモルデナイトゼオライトを製造することができる。さらに、かかる均一度を維持するとともに、様々な範囲の粒子サイズを有するモルデナイトゼオライトを製造することができる。
【0035】
本発明によって提供される均一な粒度を有するモルデナイトゼオライトを用いて製造された触媒を用いることにより、触媒活性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施例1で得られたモルデナイトゼオライトの試料を記載された倍率で撮影したSEM画像である。
図2】実施例1で得られたモルデナイトゼオライトの試料を50,000倍率で撮影したSEM画像であって、各画像毎に10個の粒子をランダムに選択し、粒子サイズを測定した結果を示す図である。
図3】実施例1で得られたモルデナイトゼオライトの試料を50,000倍率で撮影したSEM画像であって、各画像毎に10個の粒子をランダムに選択し、粒子サイズを測定した結果を示す図である。
図4】実施例1で得られたモルデナイトゼオライトの試料を50,000倍率で撮影したSEM画像であって、各画像毎に10個の粒子をランダムに選択し、粒子サイズを測定した結果を示す図である。
図5】比較例1で得られたモルデナイトゼオライトの試料を記載された倍率で撮影したSEM画像である。
図6】比較例1で得られたモルデナイトゼオライトの試料を50,000倍率で撮影したSEM画像であって、各画像毎に10個の粒子をランダムに選択し、粒子サイズを測定した結果を示す図である。
図7】比較例1で得られたモルデナイトゼオライトの試料を50,000倍率で撮影したSEM画像であって、各画像毎に10個の粒子をランダムに選択し、粒子サイズを測定した結果を示す図である。
図8】比較例1で得られたモルデナイトゼオライトの試料を50,000倍率で撮影したSEM画像であって、各画像毎に10個の粒子をランダムに選択し、粒子サイズを測定した結果を示す図である。
図9図2図4及び図6図8で測定した粒子サイズを用いてサイズ分布を10μm単位で表したグラフである。
図10】実施例1、比較例1、及び比較例2で得られたモルデナイトゼオライトで製造された触媒を用いて触媒活性をテストした結果を示すグラフである。
図11】比較例2で得られたモルデナイトゼオライトの試料を記載された倍率で撮影したSEM画像である。
図12】比較例2で得られたモルデナイトゼオライトの試料を50,000倍率で撮影したSEM画像である。
図13】実施例1、比較例1、及び比較例2で得られたモルデナイトゼオライトに対するIn-situ Pyridine吸着実験を介して酸点を分析したFT-IR分析結果を示すグラフである。
図14】実施例2~4で得られたモルデナイトゼオライトの試料を50,000倍率で撮影したSEM画像であって、実施例1の試料に対するSEM画像とともに示す図である。
図15】実施例5~7で得られたモルデナイトゼオライトの試料に対して50,000倍率で撮影したSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、モルデナイトゼオライト及びその製造方法に関し、より詳細には、粒子均一度に優れるモルデナイトゼオライトを製造する方法を提供しようとするものである。
【0038】
本発明者らは、シリカ前駆体が溶解したシリカ塩基性懸濁液と、構造誘導物質及びアルミナ前駆体が溶解したアルミナ水溶液とを別に製造して混合するにあたり、混合条件を制御することによりモルデナイトゼオライトの粒度を均一に形成することができる点を確認し、本発明を完成した。
【0039】
先ず、シリカ前駆体が溶解したシリカ塩基性懸濁液を製造する。上記シリカ塩基性懸濁液とは、シリカ前駆体が塩基性水溶液に分散した状態の混合溶液を意味する。
【0040】
上記シリカ塩基性懸濁液を製造するためには、先ず、水に塩基性のpH調節物質を投入してpHを上昇させて塩基性水溶液を製造する。シリカ前駆体は、pHが低い溶液では円滑に溶解されない。そのため、シリカ前駆体の溶解を向上させるために、上記のように塩基性のpH調節物質を投入して塩基性水溶液を製造することが好ましい。上記投入されるpH調節物質は、ゼオライト合成組成物溶液内に陽イオンを提供することにより、結晶化段階においてゼオライト結晶化を誘導する役割も果たすことができる。
【0041】
したがって、溶液中に塩基性のpH調節物質を含まない場合には、pHが低いためシリカ前駆体が円滑に溶解されず、溶液中の陽イオンの含有量が低くなり、最終的なゼオライトの収率の減少及び低い結晶化度を示す可能性がある。
【0042】
上記のようなシリカ前駆体の溶解性を向上させ、且つ結晶の形成のための十分な含有量の陽イオンを提供するためには、塩基性水溶液のpHが12以上、具体的には、12~14の範囲を有するようにpH調節物質を投入することが好ましい。塩基性水溶液のpHが12よりも低い場合には、シリカ前駆体が塩基性溶液に円滑に解離されず反応に参加できなくなり、結晶化過程においてシリカ結晶に生成され、試料の不純物として作用する可能性がある。これにより、上記のようなpH範囲を有するシリカ塩基性懸濁液は、一例として、SiO1モルに対して上記pH調節物質を0.15~0.35のモル比で投入することにより得ることができる。
【0043】
上記pH調節物質は、これに限定されるものではないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、及び水酸化アンモニウムなどが挙げられる。これらは単独で投入してもよく、2以上を組み合わせて投入してもよい。
【0044】
本発明のシリカ塩基性懸濁液はシリカ前駆体を含む。上記シリカ前駆体は、水にpH調節物質を投入して得られた塩基性水溶液に投入し、分散させることにより、シリカ塩基性懸濁液を製造することができる。すなわち、上記シリカ前駆体を塩基性水溶液に投入し、シリカ前駆体が完全に溶解するまで撹拌することにより、シリカ塩基性懸濁液を得ることができる。これにより、シリカ前駆体は塩基性水溶液中において均一な分散性を確保することができ、結果として、均一度の高いゼオライトを製造することができる。
【0045】
上記シリカ前駆体を塩基性水溶液に投入するにあたっては、徐々に投入することが好ましい。上記シリカ前駆体は、塩基性水溶液に投入されると同時に溶解し始める。ここで、一度に多量に投入された場合、シリカ前駆体の凝集が起こり、不均一な速度で溶解されて溶液自体の粘度が高くなる。さらに、溶液の粘度が高くなると、物理的撹拌速度の低下をもたらし、次いで、かかる撹拌速度の低下に伴う2次的な不均一な溶解を引き起こす可能性がある。このような過程が繰り返されることにより、上記シリカ前駆体が塩基性水溶液に完全に溶解することが難しく、シリカ前駆体が均一に分散した溶液の形成に要する時間も長くなる。
【0046】
上記のような理由から、上記シリカ前駆体を塩基性水溶液に投入する場合には、塩基性水溶液に0.1~1g/minの速度、より好ましくは、0.3~0.8g/minの速度で徐々に投入することが好ましい。
【0047】
上記シリカ前駆体は、全組成物に含まれる水に対するシリカのモル比、すなわち、シリカ-水のモル比(Silica-to-Water Mole Ratio)が0.01~0.1の範囲になるようにシリカを投入することが好ましい。上記シリカ-水のモル比は、より好ましくは0.03~0.08、最も好ましくは0.05~0.07であることができる。上記シリカ-水のモル比は、シリカ塩基性水溶液の均一度及び粘度を調節する要素であって、上記のような数値範囲を満足する場合、一定の範囲内の結晶サイズを有するゼオライト結晶の生成を誘導することができるため、結晶の均一度を向上させることができる。
【0048】
上記シリカ前駆体は、ゼオライトの製造に通常用いられるものであれば、本発明でも好適に用いることができる。これに限定されるものではないが、例えば、ヒュームシリカ、沈殿(precipitated)シリカ、コロイダルシリカ、ナトリウムシリケート、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート、ボロシリケート、及びフルオロシリケートのうち選択される一つ以上を含むことができる。上記シリカ前駆体としては、ルドックスシリカ(登録商標)のような溶解した状態のシリカを用いることができるが、反応速度制御の便宜性や経済性などを有する沈殿シリカを用いることがより好ましい。
【0049】
pH調節物質が投入された塩基性水溶液に上記シリカ前駆体を投入して塩基性懸濁液を製造することを前提に説明したが、シリカ前駆体は、pH調節物質と同時に、又はpH調節物質の投入後、すなわち、pH調節物質が完全に溶解する前にpH調節物質を投入して溶液のpHを塩基性に変化させながらシリカ前駆体を溶解させることにより、上記塩基性懸濁液を製造することができる。
【0050】
このとき、上記水へのpH調節物質及びシリカ前駆体の投入は、塩基性水溶液にシリカ前駆体を投入するのと同一の方法を介して行うことができるため、具体的な説明は省略する。
【0051】
上記シリカ及びpH調節物質を投入する過程中に撹拌を行いながら投入する方法は水にシリカ及びpH調節物質を溶解させることができるため好ましい。上記撹拌は、例えば、100~800rpmの速度で行うことができる。撹拌の速度が遅すぎると、溶液の混合が円滑に行われず、溶液内の分散均一度を低下させる可能性がある。これに対し、撹拌の速度が速すぎると、溶液が飛び散る現象が発生するため、上記範囲の撹拌速度で行うことが好ましい。
【0052】
さらに、シリカ及びpH調節物質の投入を終了させた後でも、シリカ及びpH調節物質の完全な溶解のために、上記のような範囲の撹拌速度で撹拌を継続することが好ましい。
【0053】
このとき、追加的な撹拌は、投入されるシリカ及びpH調節物質の使用量に応じて変化することがあるが、シリカ及びpH調節物質が完全に溶解するまで行うことが好ましい。例えば、撹拌速度100~800rpmで1時間以上行うことができる。撹拌時間が短すぎると、シリカ前駆体の解離が円滑に行われないため溶液の均一度が低下する可能性がある。一方、撹拌時間は長いほど、溶液の均一度の向上に好ましいため、特に限定しないが、撹拌時間が長すぎる場合には商業的経済性が低下するおそれがある。より好ましくは120時間以下で行うことができる。
【0054】
次に、アルミナ前駆体及び構造誘導物質が溶解した水溶液を製造する。
【0055】
上記アルミナ前駆体は、ゼオライトの製造において一般的に用いられるものであれば、本発明でも好適に用いることができ、例えば、アルミン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、及びアルミニウムからなる群より選択されることができる。これらアルミナ前駆体は、いずれか1つを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0056】
上記アルミナ前駆体の使用量は、得ようとするゼオライトのシリカ-アルミナのモル比に応じて決定することができる。例えば、これに限定されるものではないが、シリカ-アルミナのモル比(SiO/Al Mole Ratio)が5~50の範囲になるようにアルミナ前駆体を用いることができる。
【0057】
一方、上記構造誘導物質は、モルデナイトゼオライトの合成に用いることができるものであれば、本発明でも好適に用いることができる。上記構造誘導物質としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、及びテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどを挙げることができる。これら構造誘導物質は、いずれか1つを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
ここで、得ようとするゼオライト結晶を合成する溶液内での構造誘導物質の濃度に応じて結晶化度が決定され、また、構造誘導物質の量に応じて結晶サイズが変化する。したがって、得ようとするゼオライトの結晶化度及びサイズによって構造誘導物質の使用量を決定することができる。但し、過度に少ない量の構造誘導物質を用いると、結晶が生成されない可能性があることから、これに限定されるものではないが、シリカ1モルに対して1/100以上のモルで用いることがより好ましい。構造誘導物質の使用量の上限は、結晶サイズに応じて調節することができ、特に限定しないが、経済性及び高純度の結晶のために1/10のモル以下で用いることがより好ましい。
【0059】
上記アルミナ前駆体及び構造誘導物質は水に溶解してアルミナ水溶液を製造する。上記アルミナ前駆体及び構造誘導物質を水に投入し、これらが水に完全に溶解するまで撹拌することにより、アルミナ水溶液を得ることができる。アルミナ前駆体及び構造誘導物質が水に完全に溶解することにより、均一に分散したアルミナ水溶液が得られる。これにより、ゼオライトの粒度均一度を確保することができる。
【0060】
このような均一に分散したアルミナ水溶液を製造するために、上記アルミナ前駆体及び構造誘導物質を水に徐々に投入することが好ましい。このとき、上記アルミナ前駆体及び構造誘導物質は、同時に投入してもよく、いずれか1つを先に投入した後、連続的に又は時間間隔をおいて投入してもよい。より具体的には、上記アルミナ前駆体及び構造誘導物質を1~10g/minの速度で投入することができる。
【0061】
上記アルミナ前駆体及び構造誘導物質を投入する過程中に撹拌を行いながら投入する方法が、水にアルミナ前駆体及び構造誘導物質を溶解させることができるため好ましい。このとき、撹拌は、上記シリカ塩基性懸濁液を製造する過程における条件を同様に適用することができる。
【0062】
さらに、アルミナ前駆体及び構造誘導物質の投入を終了した後でも、上記撹拌を継続することがアルミナ前駆体及び構造誘導物質の完全な溶解のために好ましい。上記投入終了後の撹拌は、投入されるアルミナ前駆体及び構造誘導物質の使用量に応じて変化することがあるが、アルミナ前駆体及び構造誘導物質が完全に溶解する間に行うことが好ましく、例えば、15分~1時間行うことができる。撹拌の終了時点は、肉眼で確認したとき、溶解せずに残っている物質がない澄んだ水溶液の状態が確認された時点を挙げることができ、例えば、投入終了後1時間程度で確認することができる。
【0063】
次に、界面活性剤が溶解した水溶液を製造する。
【0064】
上記界面活性剤は、構造誘導物質によって生成された微細細孔を有するモルデナイト粒子間にミセルを形成させるか、又はイオンの形で粒子の表面にイオン結合の形でくっ付いて粒子間の間隔を増加させることによってメソ細孔を誘導する。かかる界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライドなどを挙げることができ、これらは単独で用いてもよく、2以上を混合して用いてもよい。
【0065】
上記界面活性剤も水に溶解する水溶液にして設ける。水溶液の形で存在する界面活性剤の場合には、水に希釈して均一に分散するように撹拌し、粉末の形で存在する界面活性剤の場合には、水溶液の形で均一な溶液になるように撹拌する。このとき、上記界面活性剤は、0.01~0.1モルの濃度範囲を有することが好ましい。
【0066】
上記界面活性剤を水に均一に分散させるために、一定の温度で所定の時間撹拌を行うことが好ましい。具体的には、上記界面活性剤を水に撹拌するにあたり、常温(20℃)~80℃の温度範囲内で希釈又は溶解することができる。このとき、30~500rpmの撹拌速度で10分~24時間処理することができる。
【0067】
上記撹拌温度は、界面活性剤に応じて、水に対する溶解度が異なるが、常温~80℃の温度範囲で熱を加える場合、均一な水溶液を得ることができるため好ましい。より好ましくは、20~100℃、さらに好ましくは30~80℃の温度範囲で熱を加えることができる。
【0068】
一方、撹拌速度が遅すぎると撹拌時間が長くかかる。これに対し、速すぎると、界面活性剤による泡が生成され、ゲル内に投入した際に粒子サイズの均一度を低下させる可能性があることから、上記したように、30~500rpmの撹拌速度で処理することが好ましい。上記撹拌速度は、より好ましくは50~450rpm、さらに好ましくは100~400rpm、最も好ましくは200~400rpmである。
【0069】
さらに、界面活性剤の溶解度及び処理温度に応じて撹拌時間に差があり得るが、均一な状態を形成することができるように、上記したように、10分~24時間撹拌処理することができる。例えば、1時間~24時間、3時間~20時間、5時間~20時間、7時間~15時間などであってもよい。
【0070】
上記のように設けられたシリカ塩基性懸濁液、アルミナ水溶液、及び界面活性剤水溶液を混合する。このとき、粒子サイズの均一度の高いゼオライトの製造のためには、ゼオライト合成組成物中にシリカ、アルミナ、pH調節物質、構造誘導物質、及び界面活性剤が均一に分散するようにする必要がある。
【0071】
このために、本発明では、上記シリカ塩基性懸濁液及びアルミナ水溶液のうちいずれか1つの水溶液に対して、もう一つの水溶液を撹拌した状態で徐々に投入することが好ましい。
【0072】
投入順序は、特に限定しないが、粘度が高い溶液に粘度が低い溶液を段階的に投入することにより、全溶液の粘度を徐々に減少させることで、粒子サイズの均一度をより高めることができる。したがって、粘度が高いシリカ水溶液に粘度が低い他の溶液を滴下することがより好ましい。さらに、シリカ、アルミナの混合水溶液を先に均一に設けた状態で、界面活性剤水溶液を投入する場合、全体的に一定のシリカ/アルミナ比を有する試料を均一に得ることができる。
【0073】
上記シリカ塩基性懸濁液にアルミナ水溶液を投入するにあたっては、徐々に、例えば、滴下する方法を介して投入することができる。より具体的には、上記アルミナ水溶液を10cc/min以下の速度で投入することができる。投入速度は徐々に投入すればするほど、均一な分散性を確保することができるため好ましい。そのため、その下限は特に限定しないが、生産性の側面から、1.0cc/min以上の速度で投入することがより好ましい。より好ましくは、1.0~7cc/minの速度、さらに好ましくは2.0~4.5cc/minの速度で投入することができる。
【0074】
上記のような方法を介して混合を完了することにより、シリカ-アルミナ水溶液を得ることができる。必要に応じて、上記シリカ-アルミナ水溶液を追加的に撹拌する段階をさらに含むことができる。追加的な撹拌は、ゼオライト合成組成物のより均一な分散のためのものであり、1時間以上、具体的には、1時間~72時間行うことができる。例えば、2時間~60時間、2時間~48時間、3時間~48時間、3時間~36時間などであってもよい。
【0075】
上記によって製造されたシリカ-アルミナ水溶液に界面活性剤水溶液を投入する。上記界面活性剤水溶液も、均一な分散のために、徐々に投入することが好ましく、特に限定しないが、10cc/min以下の速度、例えば、1~8cc/min、2~7cc/min、3~5cc/minなどの速度範囲内で投入することができる。
【0076】
これにより、均一に分散したゼオライト合成組成物を得ることができ、得られたゼオライト合成組成物をゲル化及び結晶化することにより、粒子サイズが均一なモルデナイトゼオライトを得ることができる。
【0077】
先ず、上記組成物をゲル化する。上記ゲル化は、2時間以上行うことができる。ゲル化は、常温(約20℃)~60℃の範囲において1時間~120時間の範囲内で行うことができる。ゲル化は、上記のような温度及び時間の条件の範囲内で撹拌しながら進行する。このとき、撹拌速度は、界面活性剤の種類に応じて泡が生成されない条件で決定されることができ、通常、50~1000rpmの範囲内で撹拌を行うことができる。上記範囲を超えるより速い撹拌速度は、泡を形成させ、ゲル内の不均一度を上昇させる要因となる。
【0078】
上記ゲル化されたゼオライト合成組成物を140~210℃の温度、好ましくは150~190℃の温度で反応させることによりゼオライト結晶を製造することができる。上記結晶化温度は、結晶化速度及び結晶サイズに関与するものであり、結晶化温度が高ければ、結晶化速度の低下及び結晶サイズの増大を誘導することから、これを考慮して上記結晶化反応の温度を決定することができる。
【0079】
一方、上記結晶化は、必ずしもこれに限定するものではないが、24時間以上、例えば、24時間~100時間、48時間以上96時間、又は48時間から84時間行うことができる。
【0080】
上記のような本発明の方法によると、原料物質が溶解した水溶液の状態で予め製造し、これらを徐々に混合することにより、各原料物質が均一に分散したゼオライト合成組成物を得ることができる。また、かかる組成物を用いてモルデナイトゼオライト結晶を製造することにより、結晶サイズが均一なゼオライトを得ることができる。すなわち、本発明によると、モルデナイトゼオライトの一次粒子の結晶サイズが均一であることは言うまでもなく、上記界面活性剤の使用によって形成された二次粒子もサイズが均一であることができる。
【0081】
一方、本発明では、構造誘導物質に加えて、界面活性剤をさらに含ませることができる。上記構造誘導物質によって形成された微細細孔を有するモルデナイト構造体が上記界面活性剤の周りでより大きなミセルを形成することにより、モルデナイト結晶の間にメゾポアを形成することができる。これにより、一次粒子が凝集して形成された二次粒子は、一次粒子に形成されたマイクロポアと粒子間のメゾポアを同時に有する階層構造のモルデナイトゼオライトを得ることができる。
【0082】
また、本発明は、モルデナイトシード(seed)を追加的に投入することができる。かかるモルデナイトシードは、特に限定するものではないが、界面活性剤水溶液を製造する段階においてともに投入してもよく、界面活性剤水溶液をシリカ-アルミナ水溶液に投入する段階においてともに投入してもよい。さらに、ゲル化段階において上記シードを投入することもできる。
【0083】
さらに、上記モルデナイト型ゼオライト物質に、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、及び/又は上記それぞれの前駆体から選択される1つ以上の結合剤を添加して触媒を形成することができる。本発明による上記触媒は、芳香族炭化水素の転換に適することができる。
【0084】
上記触媒は、BEA、EUO、FAU、FER、MEL、MFI、MFS、MOR、MTT、MTW、及びTONから選択される1つ以上のゼオライトをさらに含むことができる。特に、BEA、FAU、MFIなどを追加した場合、上記ゼオライトがクラッキング(cracking)などを誘発するため、触媒反応において生成されるオレフィンのクラッキングを誘導し、触媒への炭素物質の堆積を防止することで、触媒の寿命を延ばすという効果を期待することができる。
【0085】
また、上記触媒は、遷移金属及び貴金属から選択される1つ以上の元素を含む金属成分をさらに含むことができる。上記遷移金属は、6-14族からなる群より選択される1つ以上であってもよく、上記貴金属は、周期律表上の8-11族からなる群より選択される1つ以上であってもよい。好ましくは、上記金属成分は、レニウム、ニッケル、モリブデン、白金、及びスズからなる群より選択される1つ以上であることができる。
【0086】
本発明によって得られたゼオライトは、一次粒子及び二次粒子の均一度に優れるため、触媒として用いられるとき、平均粒度がより小さいゼオライトを用いる場合と比較しても、同等以上の優れた触媒活性を得ることができる。これにより、触媒活性をさらに向上させることができる。
【0087】
従来、ゼオライトの平均粒度が小さい場合には拡散速度を増加させることができるため、触媒活性に優れるものとして認識されていた。そのため、拡散速度を制御するためには粒度の制御が重要な要因になると認識されていた。しかし、本発明により、かかる平均粒度よりもゼオライトの結晶サイズの均一度の高さにより、触媒活性を向上させることができる点が確認できる。
【実施例
【0088】
以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明する。下記実施例は、本発明の一例を示すものであって、これにより本発明が限定されるものではない。
【0089】
実施例1
水60mlにNaOH2.67gを完全に溶解させた後(pH約13)、沈殿シリカ17.96gを30分かけて徐々に投入した。投入中に500rpmで撹拌を行い、すべて投入した後は、同一の速度で1時間さらに撹拌して沈殿シリカ及びNaOHを完全に溶解させた。これにより、シリカ塩基性懸濁液を得た。
【0090】
アルミン酸ナトリウム2.12g及び構造誘導物質としてテトラエチルアンモニウムブロミド(TEABr)1.85gを水20mlに2分かけて徐々に投入した。投入中に200rpmで撹拌を行い、すべて投入した後は、同一の速度で30分間さらに撹拌してアルミン酸ナトリウム及び構造誘導物質を完全に溶解させた。これにより、アルミナ水溶液を得た。
【0091】
セチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)4.2gを常温(25℃)の水14mlに投入した。投入中に300rpmで撹拌を行い、すべて投入した後は、3時間さらに撹拌してCTACを完全に希釈した。これにより、界面活性剤水溶液を得た。
【0092】
上記シリカ塩基性懸濁液を撹拌しながら、上記アルミナ水溶液をシリカ塩基性懸濁液に10分間滴下して投入した。上記投入完了後に3時間さらに撹拌を行い、シリカ-アルミナ水溶液を製造した。
【0093】
次に、上記界面活性剤水溶液を上記シリカ-アルミナ水溶液に5分間滴下してモルデナイトゼオライト合成組成物を製造した。
【0094】
上記得られたモルデナイトゼオライト合成組成物に対して30℃の温度で2時間ゲル化してゲル化物を製造した。
【0095】
続いて、上記ゲル化物を合成容器に入れ、オーブンで180℃の温度で72時間反応させて結晶化してモルデナイト結晶を形成した。
【0096】
結晶化過程が終了すると、合成容器をオーブンから取り出し、流れる水道水を強制的に冷却してから濾過し、2Lの水で洗浄した後、濾過物を得た。
【0097】
洗浄後に、上記濾過物をオーブンに入れ、60℃で12時間以上乾燥して試料を得た。
【0098】
得られた試料を1分当たり1℃ずつ昇温して110℃で2時間乾燥させた後、550℃で5時間焼成してNaの形のモルデナイト試料を得た。
【0099】
上記試料を採取し、所定の倍率(1k、5k、10k、及び20k)でSEM撮影した。その結果を図1に示した。
【0100】
さらに、上記製造されたモルデナイト結晶に対して10個の試料を採取し、各試料に対して50kの倍率でSEM撮影し、これを図2図4に示した。上記図2図4の各SEM写真から10個の粒子を任意に選択し、各粒子のサイズを測定し、その結果を併せて示した。
【0101】
さらに、測定された各粒子のサイズを10nm単位で数を把握し、その結果を図9に示した。
【0102】
比較例1
Zeolyst社から市販される製品名CBV21Aであるゼオライト(シリカ/アルミナの比が20であり、アンモニウムの形で提供され、比表面積が500m/gである)試料を所定の倍率(1k、5k、10k、及び20k)でSEM撮影した。その結果を図5に示した。
【0103】
さらに、上記製造されたモルデナイト結晶に対して10個の試料を採取し、各試料に対して50kの倍率でSEM撮影し、これを図6図8に示した。上記図6図8の各SEM写真から10個の粒子を任意に選択し、各粒子のサイズを測定し、その結果を併せて示した。
【0104】
さらに、測定された各粒子のサイズを10nm単位で数を把握し、その結果を図9に示した。
【0105】
粒子均一度評価
図9から分かるように、実施例1によって製造されたモルデナイトゼオライトは90-100nmの粒子サイズを有する結晶が最も多い割合で分布し、その他にそれから±30nmの範囲内の粒子サイズを有する結晶からなることが分かる。これに対し、比較例のモルデナイトゼオライトは60~200nmの範囲の粒子サイズを有する結晶が優劣なく分布しており、粒子均一度が低いことが分かる。
【0106】
このことから、本発明の方法によると、粒子均一度がさらに高いモルデナイトゼオライトを製造することができる点が分かる。
【0107】
触媒活性評価
実施例1、比較例1、及び比較例2のモルデナイトゼオライトを用いたMOR触媒を用いて触媒活性を評価した。
【0108】
上記比較例2のモルデナイトゼオライトは、Zeolyst社から市販される製品名CP7176であるゼオライト(シリカ/アルミニウムの比が20であり、アンモニウムの形で提供され、BET比表面積が540m/gである)試料である。
【0109】
触媒活性評価は、1分当たり3.33℃の速度で400℃まで上昇させ、1%O/Nガス条件下で90分間乾燥した後、同一の温度でHガスに転換して120分間還元した。
【0110】
還元が終了した試料の触媒を1分当たり10℃の速度で冷却し、350℃から評価を行った。
【0111】
フィード(Feed)は、トルエンとC9Aromaticを質量比50:50で混合し用いた。
【0112】
このとき、各温度毎に反応物を採取した後、GC分析を介して成分分析を行った。
【0113】
各触媒の活性特性を下記表1に示した。
【0114】
【表1】
【0115】
さらに、各触媒に対する触媒活性評価の結果を図10に示した。図10から分かるように、実施例1の触媒は、反応温度のすべての区間において、同一の反応温度であるにもかかわらず、より高い転換率を示すことが分かる。上記表1から分かるように、結晶サイズ及び微細気孔表面積を除いては、すべての物性評価の結果に大差ないことが分かる。特に、比較例1及び2は、結晶サイズが実施例に比べて小さいにもかかわらず、触媒活性が比較的悪い。この結果は、触媒の粒子サイズが小さいと、触媒活性に優れるという従来の技術常識とは異なる。これは、本発明の方法を介して製造することにより、触媒に用いられたゼオライトの粒度分布が均一であることに起因したものであり、モルデナイトゼオライトの粒度分布が均一であると、粒子サイズが大きくても、より優れた触媒活性を得ることができる。
【0116】
酸点分析
In-situ Pyridine吸着実験を介したFT-IR分析を用いて酸点を分析した。
【0117】
実施例1、比較例1、及び比較例2の各試料H形25mgをペレットにした。
【0118】
上記ペレットをIn-situ Cellに装着し、前処理過程として500℃で真空下で3時間乾燥した。続いて、ピリジン0.5μlを注入した。
【0119】
上記注入されたピリジンが気化し、上記ペレット試料を通過するようにした。このとき、上記試料に吸着したピリジンの量をFT-IRにより分析して定量した。
【0120】
全酸量は、吸着剤としてピリジン(Pyridine)を用いており、外表面酸量は2,6-DTBPy(2,6-Di-tert Butyl Pyridine)を吸着剤として用いた。内部酸量は、全酸量と外表面酸量の差で計算した。外表面酸量は、全酸量を測定したのと同一の方法を介して吸着剤物質のみを変更して行った。
【0121】
【表2】
【0122】
上記表2のような酸点分析の結果から、比較例1と実施例1を比較すると、実施例1は、酸量が少ないにもかかわらず、上記図10の触媒活性評価の結果から、さらに良い性能を示すことができる。かかる結果は、酸量の影響よりは、粒子均一度の側面が触媒活性に大きく関連していることが分かる。一方、比較例2は、実施例1と比較して酸量が類似するにもかかわらず、図10の結果から、触媒活性がさらに低下することが分かる。これは、図11及び図12に示すように、比較例2の触媒粒子は、結晶型自体が均一ではないことは言うまでもなく、触媒粒子サイズが不均一であるため示されるものと判断される。かかる結果から、ゼオライトの均一度を向上させることにより、各粒子の拡散速度の向上を図ることができる。これにより、触媒活性を増加させることができるが、ゼオライトの物性変化が触媒活性を増加させるのに寄与しないことが分かる。
【0123】
四面体骨格に対する八面体骨格の比
固体アルミニウム核磁気共鳴分析を介して、実施例1、比較例1、及び比較例2の試料内に含まれる四面体構造と八面体構造の比を測定した。
【0124】
四面体構造(Td)は、Alがゼオライト骨格内に存在することを示し、八面体構造(Od)は、Alが骨格内に存在せず、気孔中に存在することを示す。
【0125】
骨格内に存在するAl量が多いとは、試料内に含まれるAl中から酸点を作用することができる有効Alが多く、試料の純度が高いことを意味する。
【0126】
固体アルミニウム核磁気共鳴分析は次の方法を介して行った。
【0127】
各実施例1、比較例1、及び比較例2の試料を乳鉢ですり潰しながら均一に混合することによって測定試料を設けた。
【0128】
各測定試料に対して、600MHzで4mmの回転子(rotor)を用いて12kHzスピニング(spinning)の条件で実験した。パルス(Pulse)は0.5μsを与え、遅延時間(delay time)は5秒に設定した。
【0129】
これによる固体アルミニウム核磁気共鳴分析の結果を図13に示した。
【0130】
上記条件から検出されたピーク(peak)のうち53ppmに検出されるのはアルミニウム四面体(Td)、0ppmに検出されるのはアルミニウム八面体(Oh)とみなし、積分してからその値を示した。
【0131】
続いて、四面体構造と八面体構造の比を測定し、その結果を下記表3に示した。
【0132】
【表3】
【0133】
上記表3から、比較的骨格体内部に含有されるAl(Td)に対する骨格体外部に酸化物の形で細孔内部又は粒子表面に存在するAl(Oh)の比が低いほど、試料の純度が高く、酸点が十分に制御されたゼオライトとみなすことができる。したがって、Oh/Tdの比が低いほど、純度が高く、酸点が十分に制御されたゼオライトと判断することができる。
【0134】
実施例2~4
実施例1と同様の方法及び条件でモルデナイトゼオライト合成組成物を製造し、ゲル化物を製造した。
【0135】
上記ゲル化物を合成容器に入れ、オーブンでそれぞれ160℃(実施例2)、170℃(実施例3)、及び175℃(実施例4)の温度で72時間反応させて結晶化することでモルデナイト結晶を形成した。
【0136】
各実施例で得られたモルデナイト結晶サイズを実施例1と同一の方法を介して測定し、その結果を下記表4に示した。
【0137】
また、各実施例で得られたモルデナイト結晶に対して10個の試料を採取し、各試料に対して50kの倍率でSEM撮影し、これを図14に示した。図14には、実施例1で得られたモルデナイト結晶も併せて示した。
【0138】
【表4】
【0139】
実施例2~4の結果から、工程条件及び合成変数が同一であると、結晶化温度が変化しても、粒子均一度が維持されることを確認した。一方、上記表4及び図14から分かるように、結晶化温度が増加するにつれて、モルデナイト型ゼオライトの結晶サイズが大きくなる傾向を示す。また、結晶化温度175℃(実施例4)及び180℃(実施例1)で結晶サイズが急激に増加した。これは、結晶化温度が増加するほど、結晶化が速く行われて結晶が迅速に成長し、大きな結晶を形成するためである。かかる結果から、本発明による方法を介して均一な結晶サイズのモルデナイト型ゼオライトを得ることができる。このとき、結晶化温度を調節することにより、結晶サイズを制御することができる点が分かる。
【0140】
実施例5~7
構造誘導物質(TEABr)の使用量を下記表5の実施例5~7のようにそれぞれ調節したことを除いては、実施例1と同様の方法を介してモルデナイト結晶を形成した。さらに、各実施例5~7で得られたモルデナイト結晶に対して50kの倍率でSEM撮影し、これを図15に示した。
【0141】
【表5】
【0142】
実施例1、及び5~7の結果から、工程条件及び合成変数が同一であると、構造誘導物質の使用量が変化しても、粒子均一度が維持されることを確認した。一方、上記表5から分かるように、構造誘導物質の使用量に応じて、結晶サイズだけが変化することが確認でき、構造誘導物質の使用量が多くなるほど、シード(seed)が速く形成されて、小さいサイズの粒子使用量が増加することから、同一の温度で結晶化が進行しても、小さい粒子の個別結晶化が同時に行われることにより、小さい結晶が成長方向に複数個形成される。したがって、このような結果から、本発明による方法を介して均一な結晶サイズのモルデナイト型ゼオライトを得ることができる。このとき、構造誘導物質の使用量を調節することにより、結晶サイズを制御することができる点が分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15