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特許7489373自己監視及び自己検証を行うスマートフローサイトメーター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】自己監視及び自己検証を行うスマートフローサイトメーター
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/1429 20240101AFI20240516BHJP
   G01N 15/14 20240101ALI20240516BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G01N15/1429
G01N15/14 C
G01N21/64 F
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021506671
(86)(22)【出願日】2019-08-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019046071
(87)【国際公開番号】W WO2020033934
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】16/101,385
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517203796
【氏名又は名称】サイテック バイオサイエンスィズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジァン,ジャニーン
(72)【発明者】
【氏名】ヴレイン,デイヴィッド
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-166541(JP,A)
【文献】特開2014-194401(JP,A)
【文献】特開2008-089616(JP,A)
【文献】特開2002-014108(JP,A)
【文献】特開2013-044585(JP,A)
【文献】特開平09-257689(JP,A)
【文献】特表2008-508527(JP,A)
【文献】特開2002-168806(JP,A)
【文献】国際公開第2002/066933(WO,A1)
【文献】国際公開第02/066933(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01382942(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0070818(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第11563336(EP,A1)
【文献】国際公開第2006/073492(WO,A2)
【文献】特開昭62-003642(JP,A)
【文献】特開平10-019766(JP,A)
【文献】特開昭62-049256(JP,A)
【文献】特開2007-047154(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01744145(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/1492
G01N 35/00-37/00
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スマートフローサイトメーターであって、
サンプルゾーンを有するフローチューブを備えた流体システムと、
前記流体システムの前記サンプルゾーンにおいてマーキングされた細胞を励起するように1つ以上のレーザービームを発生させる1つ以上のレーザーを含むレーザーシステムであって、前記励起されたマーキングされた細胞は、1つ以上の異なる波長で蛍光を発生させ、前記1つ以上のレーザービームの一部は散乱光として前記マーキングされた細胞から散乱する、レーザーシステムと、
前記蛍光を受光及び検出する1つ以上のアレイの複数の検出器と、前記散乱光を受光するとともに前記マーキングされた細胞に関連するデータを生成する1つ以上の検出器とを備える受光器システムと、
前記流体システム、前記レーザーシステム及び前記受光器システムと通信するように結合された監視システムであって、該スマートフローサイトメーターの様々な動作パラメーターを監視して、構成要素の事前の故障と保守に対する事前の必要性とを検出する監視システムと、
前記流体システムと通信するように結合された品質管理システムであって、品質管理ビーズのビーズ槽を備え、前記品質管理ビーズを用いて検証試験を周期的に実行する品質管理システムと、
を備える、スマートフローサイトメーター。
【請求項2】
前記品質管理システム、品質管理ビーズのビーズ槽を備え、前記フローサイトメーターの、前記複数の検出器から出力される品質データを生成する能力を判断するように、前記検証試験を実行する、請求項1に記載のスマートフローサイトメーター。
【請求項3】
前記品質管理システムは、前記ビーズ槽に結合されたサンプルコントローラーを更に備え、前記品質管理システムは、複数の品質管理ビーズを含む試験管を準備して、ビーズサンプル試験管を形成し、前記ビーズサンプル試験管をサンプル取入口の下の前記流体システム内に移動させて、前記レーザーシステムによって励起されるとともに前記受光器システムによって検出されるように、前記フローチューブ及び前記サンプルゾーンを通して前記品質管理ビーズのサンプルを流す、請求項2に記載のスマートフローサイトメーター。
【請求項4】
前記監視システムは、監視されている前記スマートフローサイトメーターの前記様々な動作パラメーターに対する値を受信するように、前記レーザーシステム、前記流体システム及び前記受光器システムと通信するように結合された、マイクロコントローラーを備え、前記監視システムは、故障を診断するために前記スマートフローサイトメーターの前記様々な動作パラメーターの状態を維持するように前記様々な動作パラメーターの前記値を周期的に記憶することができる不揮発性記憶デバイスを更に備える、請求項1に記載のスマートフローサイトメーター。
【請求項5】
前記マイクロコントローラーは、前記様々な動作パラメーターの前記値を複数の様々な警告限界値と比較して、前記スマートフローサイトメーターにおけるシステム又は構成要素のあり得る故障を先立って検出するようにいずれかの警告限界値を超えているか否かを判断する論理回路を備える、請求項4に記載のスマートフローサイトメーター。
【請求項6】
前記マイクロコントローラーは、前記様々な動作パラメーターの前記値を複数の様々な警報限界値と比較して、前記スマートフローサイトメーターにおけるシステム又は構成要素の故障を検出するようにいずれかの警報限界値を超えているか否かを判断する論理回路を備える、請求項5に記載のスマートフローサイトメーター。
【請求項7】
前記マイクロコントローラーは、各動作パラメーターに関連する複数の警告フラグビットを更に含み、
前記マイクロコントローラーは、前記警告限界値を超える値を有する動作パラメーターのタイプを示すように、前記複数の警告フラグビットのうちの1つの前記警告フラグビットを設定することができる、請求項5に記載のスマートフローサイトメーター。
【請求項8】
前記マイクロコントローラーは、各動作パラメーターに関連する複数の警報フラグビットを更に含み、
前記マイクロコントローラーは、警報限界値を超える値を有する動作パラメーターのタイプを示すように、前記複数の警報フラグビットのうちの1つの前記警報フラグビットを設定することができる、請求項7に記載のスマートフローサイトメーター。
【請求項9】
前記監視システムは、前記マイクロコントローラーと通信するように結合されたネットワークインターフェースコントローラーを更に備え、該ネットワークインターフェースコントローラーは、メッセージの送信と前記スマートフローサイトメーターへのリモートログインとを容易にし、
前記マイクロコントローラーは、前記フローサイトメーターのユーザー、サービス提供者及び/又は製造業者に、前記ネットワークインターフェースコントローラーと通信するように結合された通信ネットワークを介して、警告フラグビット又は警報フラグビットが設定されたこと、前記スマートフローサイトメーターの識別情報、その場所、及び、前記スマートフローサイトメーターに対して設定されている警告フラグ又は警報フラグを診断するために前記フローサイトメーターにリモートログインするためのネットワークアドレスを示すようにメッセージを送信することができる、請求項8に記載のスマートフローサイトメーター。
【請求項10】
前記流体システムは、1つ以上のフローチューブにおけるあり得る詰まりを、該1つ以上のフローチューブが詰まる前に先立って判断するように監視される流量センサーを備える、請求項1に記載のスマートフローサイトメーター。
【請求項11】
前記レーザーシステムの前記1つ以上のレーザーと通信するように結合された1つ以上のアナログデジタル変換器であって、前記1つ以上のレーザーのそれぞれに対して、レーザー出力パワー、レーザー入力電流、レーザーバイアス電圧及びレーザー温度のうちの1つ以上に関して1つ以上のアナログ信号を取り込むとともにデジタル化して、レーザーが故障する前に先立ってあり得るレーザー故障を判断する1つ以上のアナログデジタル変換器、
を更に備える、請求項1に記載のスマートフローサイトメーター。
【請求項12】
前記受光器システムの前記1つ以上の検出器と通信するように結合された1つ以上のアナログデジタル変換器であって、前記1つ以上の検出器のそれぞれに対して受光器暗電流及び受光器バイアス電圧のうちの1つ以上に関して1つ以上のアナログ信号を取り込むとともにデジタル化して、検出器が故障する前に先立ってあり得る検出器故障を判断する1つ以上のアナログデジタル変換器、
を更に備える、請求項1に記載のスマートフローサイトメーター。
【請求項13】
前記受光器システムの前記1つ以上の検出器と通信するように結合された1つ以上のアナログデジタル変換器であって、1つ以上の品質管理ビーズから受光される蛍光に基づいて前記1つ以上の検出器のそれぞれに対して1つ以上のアナログ出力信号を取り込むとともにデジタル化して、生蛍光出力データを生成する1つ以上のアナログデジタル変換器、を更に備える、請求項2に記載のスマートフローサイトメーター。
【請求項14】
前記1つ以上のアナログデジタル変換器と通信するように結合され、前記1つ以上のレーザー、前記1つ以上の検出器、前記レーザーシステムの1つ以上の光学素子、又は前記受光器システムの1つ以上の光学素子のあり得る光軸ずれを判断することと、前記スマートフローサイトメーターの動作機能性を検証することとのうちの1つ以上を含む、品質管理パラメーターの後続する分析のために、前記生蛍光出力データを受信するとともに記憶する記憶デバイス、
を更に備える、請求項13に記載のスマートフローサイトメーター。
【請求項15】
フローサイトメーターの複数の動作パラメーターに対して複数の所定の警報限界値及び所定の警告限界値を設定することと、
前記フローサイトメーターの前記複数の動作パラメーターを監視することと、
前記複数の動作パラメーターの値を前記所定の警告限界値と比較することと、
第1の期間において前記複数の所定の警告限界値を超えたか否かを判断して、故障が発生する可能性が高いか否かを先立って検出することと、
前記監視、前記比較及び前記判断を繰り返して、第2の期間において前記複数の所定の警告限界値のうちの1つを超えたか否かを判断して、故障が発生する可能性が高いか否かを先立って検出することと、
前記フローサイトメーターの流体システムと通信するように結合された品質管理システムであって、品質管理ビーズのビーズ槽を備え、前記品質管理ビーズを用いて検証試験を周期的に実行する品質管理システムを動作させることと、
を含む、フローサイトメーターのための方法。
【請求項16】
前記第1の期間又は前記第2の期間のいずれかにおいて前記複数の所定の警告限界値のうちの1つを超えたか否かが判断され、前記方法は、
超えた前記1つの所定の警告限界値に関連する警告フラグを設定することと、
前記フローサイトメーターの動作状態を更に診断するために、警告が発生している前記フローサイトメーターを通知するように、前記フローサイトメーターからサーバー、ユーザー、製造業者及び/又は修理技術者に警告メッセージを送信することと、
を更に含む、請求項15に記載のフローサイトメーターのための方法。
【請求項17】
前記警告メッセージは、前記フローサイトメーターのモデル、実験室名、場所、インターネットプロトコル(IP)アドレスと、前記警告を発生させたパラメーターのタイプとを含む、請求項16に記載のフローサイトメーターのための方法。
【請求項18】
前記警告メッセージが前記フローサイトメーターから送信されるようにグローバル警告フラグを設定すること、
を更に含む、請求項16に記載のフローサイトメーターのための方法。
【請求項19】
前記複数の動作パラメーターの値を前記所定の警報限界値と比較することと、
前記第1の期間において前記複数の所定の警報限界値のうちの1つを超えたか否かを判断して、前記フローサイトメーターにおけるシステム又は構成要素の差し迫った故障を検出することと、
前記監視、前記比較及び前記判断を繰り返して、前記第2の期間において前記複数の所定の警報限界値のうちの1つを超えたか否かを判断して、前記フローサイトメーターにおけるシステム又は構成要素の差し迫った故障を検出することと、
を更に含む、請求項15に記載のフローサイトメーターのための方法。
【請求項20】
前記第1の期間又は前記第2の期間のいずれかにおいて前記複数の所定の警報限界値のうちの1つを超えたか否かが判断され、前記方法は、
超えた前記1つの所定の警報限界値に関連する警報フラグを設定することと、
前記フローサイトメーターの動作状態を更に診断するために、警報が発生している前記フローサイトメーターを通知するように、前記フローサイトメーターからサーバー、ユーザー、製造業者及び/又は修理技術者に警報メッセージを送信することと、
を更に含む、請求項19に記載のフローサイトメーターのための方法。
【請求項21】
前記警報メッセージは、前記フローサイトメーターのモデル、実験室名、場所、ネットワークアドレスと、前記警報を発生させたパラメーターのタイプとを含む、請求項20に記載のフローサイトメーターのための方法。
【請求項22】
前記警報メッセージが前記フローサイトメーターから送信されるようにグローバル警告フラグを設定すること、
を更に含む、請求項21に記載のフローサイトメーターのための方法。
【請求項23】
コンピューター通信ネットワークと、
生物学的流体を分析する1つ以上の生物学実験室における複数のスマートフローサイトメーターであって、前記コンピューター通信ネットワークと通信するように結合された複数のスマートフローサイトメーターと、
前記コンピューター通信ネットワーク及び前記複数のスマートフローサイトメーターと通信するように結合された第1の中央修理サーバーシステムと、
を備え、
前記複数のスマートフローサイトメーターのそれぞれは、該スマートフローサイトメーターの様々な動作パラメーターを監視し、監視されている該動作パラメーターに基づいて構成要素の事前の故障と、監視されている該動作パラメーターに基づいて修理及び保守に対する事前の必要性とを検出する監視システムを備え、
少なくとも1つの監視システムは、スマートフローサイトメーターの流体システムと通信するように結合された品質管理システムを備え、該品質管理システムは、品質管理ビーズのビーズ槽を備え、該品質管理ビーズを用いて検証試験を周期的に実行する、フローサイトメーター通信システム。
【請求項24】
故障しているスマートフローサイトメーターにおいて構成要素の事前の故障が検出され、該故障しているスマートフローサイトメーターは、該故障しているスマートフローサイトメーターから前記第1の中央修理サーバーシステムにメッセージを送出し、
前記第1の中央修理サーバーシステムは、前記故障している構成要素に関連するパラメーター履歴をダウンロードし、前記スマートフローサイトメーターのシステム及び構成要素を診断する複数の診断ルーチンのうちの少なくとも1つを用いて前記故障を診断し、
前記第1の中央修理サーバーシステムは、前記故障しているスマートフローサイトメーターと前記故障している構成要素の初期診断とに関する情報を提供するように、ユーザー、製造業者及び/又は修理技術者に通知するとともに、前記故障しているスマートフローサイトメーターに対する修理サービスをスケジューリングする、請求項23に記載のフローサイトメーター通信システム。
【請求項25】
前記コンピューター通信ネットワーク及び前記複数のスマートフローサイトメーターのうちの少なくとも1つと通信するように結合された、サービス提供者におけるリモートホストコンピューター、
を更に備え、
前記第1の中央修理サーバーシステムは、前記少なくとも1つのスマートフローサイトメーターから警告メッセージを受信し、前記サービス提供者の前記リモートホストコンピューターに前記警告メッセージを通信し、前記少なくとも1つのスマートフローサイトメーターが故障する前に、該少なくとも1つのスマートフローサイトメーターを更に診断するとともに、該少なくとも1つのスマートフローサイトメーターに対する修理サービスをスケジューリングするように、前記サービス提供者の修理技術者に通知する、請求項23に記載のフローサイトメーター通信システム。
【請求項26】
前記コンピューター通信ネットワーク及び前記複数のスマートフローサイトメーターのうちの少なくとも1つと通信するように結合された、サービス提供者におけるリモートホストコンピューター、
を更に備え、
前記第1の中央修理サーバーシステムは、前記少なくとも1つのスマートフローサイトメーターから警報メッセージを受信し、前記サービス提供者の前記リモートホストコンピューターに前記警報メッセージを通信し、前記少なくとも1つのスマートフローサイトメーターが故障したために、該少なくとも1つのスマートフローサイトメーターを更に診断するとともに該少なくとも1つのフローサイトメーターに対して修理サービスを即時に提供するように、前記サービス提供者の修理技術者に通知する、請求項23に記載のフローサイトメーター通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、包括的には、フローサイトメーターに関する。
【背景技術】
【0002】
フローサイトメーターは、サンプル流体がフローサイトメーターのレーザーによって生成されたレーザー光を通過する際に、当該サンプル流体のフロー内の粒子の物理特性及び化学特性を分析するのに用いられる機械である。サンプル流体内の細胞成分は、蛍光標識することができ、次いで、変動する波長において発光するようにレーザーによって励起することができる。
【0003】
蛍光発光を測定して、単一の粒子の様々な性質を求めることができる。単一の粒子は、通常は生体細胞(例えば、血球)である。液体ストリーム内の粒子がレーザーの傍を通過する際に、毎秒数千個までの粒子を分析することができる。測定される性質の例には、粒子の相対的な粒度、サイズ及び蛍光発光強度、並びに粒子の内部の複雑度が含まれる。フローサイトメーターの光対電子結合システムが、粒子が蛍光発光し、レーザーからの入射ビームを散乱させる方法を記録するのに用いられる。
【0004】
フローサイトメーターの光システムは、サンプル流体のストリーム内に存在する粒子を照射するレーザーを備える。粒子がレーザーからの入射レーザー光を通過する際、レーザー光は散乱する。さらに、レーザー光によって励起されると、粒子上に存在する何らかの蛍光分子が蛍光発光する。この蛍光は、慎重に位置決めされたレンズ及び検出器によって検出することができる。フローサイトメーターが、各粒子又は各事象についてのデータを収集する。それらの事象又は粒子の特性は、それらの蛍光特性及び光散乱特性に基づいて求められる。
【0005】
フローサイトメーターの電子機器システムは、反射された光信号及び/又は散乱された光信号を1つ以上の検出器を用いて受信し、それらの光信号を、コンピューターが処理することができる経時的なデータを表す電子パルスに変換するのに用いられる。その後、このデータを、コンピューターを用いて分析し、短期間で多数の生体細胞についての情報を確認することができる。
【0006】
フローサイトメーターは、細胞のサンプルを正確に分析するために全てのシステム及び要素が適切に機能していることが必要である、複雑化したシステムを備えた複雑な実験室機器である。フローサイトメーターにおける光学素子(例えば、レンズ)が軸ずれした場合、不十分な信号対雑音比等から、収集データが正確ではない可能性がある。レーザーデバイスが故障するか又は検出器デバイスが故障した場合、収集されるデータの量が限られるか又はデータが全く収集されない可能性がある。フローサイトメーターのこうした故障をユーザーに事前に警告することはあり得ず、フローサイトメーターは、修理されるとともに1つ以上の部品が交換されるまで、適切に機能することができないことになる。
【0007】
ユーザーは、流体タンクを充填するとともに廃棄物タンクを空にすること等、フローサイトメーターの基本的な保守知識は有している可能性がある。しかしながら、フローサイトメーターを修理すること(例えば、レーザー又は検出器を交換すること)は、通常、一般のユーザーが実施することができるものではない。修理は、通常、ユーザーではなく、製造業者の従業員又はサービス提供者の十分に訓練を受けた技術者によって実施される。通常、修理をスケジューリングし、あるとすれば交換部品を注文するように、製造業者に連絡がとられる。必要な場合、交換部品は、取得するのに幾分かの時間がかかる可能性がある。フローサイトメーターは、完全機能状態に戻る前に何日間も作動しない可能性がある。いくつかの故障を回避するために定期的な保守を実施することができるが、スケジューリングされた保守期間の合間に故障が発生しない保証はない。より適切な修理及び保守サービスを促進するとともにダウンタイムを回避するようにフローサイトメーターを改善することが望ましい。
【0008】
本発明の実施の形態は、添付の特許請求の範囲によって要約される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】フローサイトメトリーシステムの背景図である。
図1B】フローサイトメーターの背景機能ブロック図である。
図2】スマート又はインテリジェントフローサイトメーターの機能ブロック図である。
図3】監視するとともにメモリに記憶すべきスマートフローサイトメーターの例示的なパラメーターを示すマイクロコントローラーのブロック図である。
図4】メモリマップを有するメモリのブロック図であり、メモリマップは、日時でマーキングされた限界値、フラグ及びパラメーターデータが記憶されているメモリへのポインターを記憶する。
図5A】スマートフローサイトメーターの周期的動作(日時)に対する例示的なパラメーター(レーザーパワー)のパラメーター履歴の図である。
図5B】スマートフローサイトメーターの動作に対する図5Aのパラメーター履歴と最大の構成要素パラメーターに基づく例示的な警報(alarm)限界値及び警告(warning)限界値とをプロットしている、例示的なパラメーター(レーザーパワー)対周期的動作(日時)のチャートである。
図5C】スマートフローサイトメーターの動作に対する図5Aのパラメーター履歴と目標動作パラメーター状態に基づく例示的な高/低警報限界値及び高/低警告限界値とをプロットしている、例示的なパラメーター(レーザーパワー)対周期的動作(日時)のチャートである。
図6】複数のスマートフローサイトメーターと通信するフローサイトメーター修理サーバーを含むフローサイトメーター通信ネットワークのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、非常に多くの具体的な詳細が説明される。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細がなくても実施することができることが当業者には明らかであろう。その他の場合には、よく知られた方法、手順、構成要素、及び回路は、本発明の実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないように詳細に説明されていない。
【0011】
本明細書に開示する実施形態は、スマート又はインテリジェントフローサイトメーターの方法、装置及びシステムを含む。
【0012】
序論
フローサイトメーターは、生きている生体細胞の分析を実施するために用いることができる。図1Aは、1つ以上のレーザービーム112A及び112Bを用いる例示的なフローサイトメトリーシステム100の一部の概略図である。フローサイトメトリーシステム100は、他のデバイスもあるがとりわけ、中空円筒状フローチューブ101と、レーザーデバイス106と、光学素子107と、1つ以上の検出器デバイス108とを備える、粒子分析器である。レーザーデバイス106は、光学素子107に結合されている光源である。レーザーデバイス106からの単一のレーザービームを用いて、光学素子107は、フローチューブ101に向けられる1つ以上のレーザービーム112A及び112Bを形成することができる。代替的に、複数のレーザーデバイス106を用いて、複数のレーザービーム112A及び112Bを形成することができる。複数のレーザーデバイスは、異なる波長の蛍光色素を励起するように異なる周波数で動作することができる。1つ以上の検出器デバイス108は、様々な角度の反射光又は散乱光113を検出する光学機器類及びセンサーを含む。
【0013】
フローチューブ101の中央にあるサンプル流体フロー102は、背景流体フロー(シース流体)103によって取り囲まれている。サンプル流体フロー102及び背景流体フロー103は、フローチューブ101を通ってフロー方向110にともに流れる。サンプル流体102は、例えば、分析されることが望まれる水溶液(例えば、血漿)に粒子104(例えば、血球、血球片等)を含むことができる。サンプル流体フロー102を取り囲む背景流体フロー103は、水及び/又は他の或る不活性流体とすることができる。場合によっては、望ましくない汚染物質粒子105が、背景流体フロー103内に見つかる場合がある。
【0014】
1つ以上のレーザービーム112A及び112Bは合焦されて、サンプル流体フロー102内の粒子104がフローチューブ101内において傍を流れる際に、それらに粒子を照射する。1つ以上のレーザービーム112A及び112Bは、インターロゲーションスポット(interrogation spot)116を含むサンプル領域114(例えば、レーザービームスポット)においてサンプル流体102を照射する。設計では、照射サンプル領域114は、インターロゲーションスポット116から1つ以上の検出器デバイス108に向けて反射光及び/又は散乱光113を放出する。反射光及び/又は散乱光113を用いて、検出器デバイス108は、粒子を有するサンプル流体102がサンプル領域114を通過する際に粒子104の物理特性及び/又は化学特性を求めるように分析することができる信号を生成する。検出器がサンプル流体102において粒子104以外のものを検出したことから信号を生成するときに、雑音が生成される。例えば、背景流体フロー103内に見られる望ましくない汚染物質粒子105が照射及び検出された場合、検出器は、信号内に雑音を生成する。
【0015】
したがって、背景流体フロー103における他の領域を照射することなく、サンプル領域114においてサンプル流体フロー102を照射することが望ましい。さらに、照射領域を通る軌道が僅かに異なることによって引き起こされる粒子間の信号変動を最小にするために、サンプルフロー方向110に垂直な方向に均一にサンプル領域114を照射することが望ましい。したがって、デュアルレーザービーム112A及び112Bとフロー方向110とは、互いに実質的に垂直(例えば、90度±5度)である。光の一部を反射させることができ、及び/又は、散乱光をデュアルレーザービーム112Aに実質的に垂直(90度±5度)に反射若しくは散乱させることができる。例えば、システム100が3次元(xyz)直交座標系に位置していると仮定する。1つ以上のレーザービーム112A及び112Bをx軸に沿って誘導することができ、反射光又は散乱光113をy軸に沿って誘導することができ、フロー方向110をz軸に沿ったものとすることができる。光を他の角度に反射又は散乱させて、反射光又は散乱光の角度の光軸に沿って位置決めされた1つ以上の検出器によって検出することもできる。
【0016】
ここで図1Bを参照すると、フローサイトメーター150の機能ブロック図が示されている。フローサイトメーター又はその一部の更なる詳細は、David Vrane他によって2017年4月26日に出願された「COMPACT MULTI-COLOR FLOW CYTOMETER」と題する米国特許出願第15/498,397号と、David Vrane他によって2017年11月19日に出願された「FLOW CYTOMETRY SYSTEM WITH FLUIDICS CONTROL SYSTEM」と題する同第15/817,237号と、Ming Yan他によって2017年7月25日に出願された「COMPACT DETECTION MODULE FOR FLOW CYTOMETERS」と題する同第15/659,610号と、Zhenyu Zhangによって2018年5月21日に出願された「FAST RECOMPENSATION OF FLOW CYTOMETERY DATA FOR SPILLOVER READJUSTMENTS」と題する同第62/674,273号とに記載されており、それらの出願の全てが、全ての意図及び目的で引用することにより本明細書の一部をなす。
【0017】
フローサイトメーター150は、励起レーザーシステム152と、流体システム158と、受光器システム164と、電子システム170とを備える。レーザーシステム152は、蛍光を発生させるように生体細胞を標識するために用いられる色素を励起するために用いることができる異なる周波数(355ナノメートル(nm)、375nm、405nm、488nm、638nm又は他の任意の波長等)の1つ以上のレーザー154を含むことができる。異なる生体細胞をマーキングする色素は、異なる波長で励起され、異なる波長で蛍光を発することができる。異なる波長の蛍光は、生体サンプルにおいて異なる生体細胞を同定するために取り込むことができる。異なるタイプの粒子を含む他のタイプのサンプルは、異なる波長の異なる色素で同様にマーキングして、例えば化学物質等、異なる粒子のそれらの構成を分析することができる。
【0018】
光学機器類156は、流体システム108上に合焦するようにレーザー154を成形及びコリメートするために用いられ、そこでは、色素標識された生体細胞は、直線状に並べられ、付着した色素が励起レーザーパワーを吸収して蛍光を放出するように1つずつレーザービームを通過する。蛍光は、受光器システム164の集光器166によって収集され、収集された蛍光を検出器168に向ける。集光器166は、レンズ、ファイバー、又はレンズ及びファイバーの組み合わせとすることができる。検出器168は、複数の光電子増倍管(PMT)若しくはPMTアレイ、又は複数のアバランシェフォトダイオード(APD)若しくはAPDアレイとすることができる。
【0019】
色素標識された生体細胞は、光学機器類156によって合焦される入射レーザービーム154を通過するとき、正しい波長で励起された場合は蛍光を発することができるが、また、入射レーザービームを、前方散乱光として前方に、側方散乱光として側方に、又は後方散乱光として後方に散乱させる。生体細胞のサイズ及び細胞の物理構造の詳細を調査するために、前方散乱光、側方散乱光及び/又は後方散乱光を収集するように、フォトダイオード又は検出器168、及び複数のフォトダイオード又は検出器168の1つ以上のアレイを異なる位置に配置することができる。複数のフォトダイオード又は検出器168のアレイは、細胞及び粒子をマーキングする様々な色素の活性化から予期される様々な異なる波長の蛍光を取り込むことが望ましい。
【0020】
フローサイトメーター150における電子工学システム170は、流体システム158、レーザー154、検出器168及びデータ電子回路172を動作させる制御電子回路174を備える。電子工学システム170の制御下で、データ電子回路は、検出器168によって受信されるルミネセンスデータと散乱光検出器168によって受信される散乱光データとを増幅する。受信されたアナログルミネセンス及び光データは、アナログデジタル変換器(ADC)(例えば、図2のADC219を参照)によってデジタル形式にデジタル化される。デジタルデータは、データ電子回路172によって、浮動小数点ゲートアレイ(FPGA)におけるアルゴリズムに従って、雑音を除去するように処理され、ホストコンピューターシステムに出力される。処理されたデータは、最終的に、外部ホストコンピューターシステムによって取得されて、更なる取得後分析がなされる。典型的なフローサイトメーター150は、フローサイトメーターの動作に関連するデータ結果を記憶しないことに留意されたい。データ結果は、フローサイトメーターに結合されているホストコンピューターによって外部に記憶される。
【0021】
細胞の試験における通常動作の前に、ユーザーは、フローサイトメーター150の電源を入れ、フローサイトメーター150のシステムがウォームアップするの待つ(それは、およそ20分間~60分間であり得る)。生体細胞の任意の実際のサンプルがフローサイトメーター150を通して流される前に、ユーザーにより、適格性確認(qualification)/検証(validation)ビーズを用いてフローサイトメーター150の適格性確認/較正(calibration)試験を手動で行うことができる。適格性確認/較正試験により、フローサイトメーター及びそのシステムを用いて通常の試験の実行を開始する前に、全体的なシステムステータスが判断される。適格性確認試験により、フローサイトメーターシステムの動作状態の指標が提供されるが、フローサイトメーター150においてシステム又はシステムの構成要素が故障する可能性がある場合に、適格性確認/較正試験によっていかなる情報も提供されない。
【0022】
生体細胞の寿命は限られているため、フローサイトメーターの故障は問題となる可能性がある。例えば、フローサイトメーター150を通して重要な血液サンプル試験が実行を開始しており、システムは、その実行の半ばで誤動作し始めると想定する。血液サンプルは寿命が限られている可能性がある。さらに、患者からの細胞のサンプルは1つしかない可能性があり、数時間以内に診断を得るために時間が最も重要である。サービスエンジニアが修理サービスのために呼ばれ、現れ、故障しているフローサイトメーターを診断及び修理するために、24時間以上かかる可能性がある。部品の交換が必要である場合、適切な部品を注文してそれを設置するために更なる時間がかかる可能性がある。
【0023】
したがって、サンプルが流されていない間であっても、現場で故障がないかフローサイトメーターを常時監視することができる場合、有用である。さらに、リモート監視及び診断を提供することが有用である。ユーザーが故障を知る前に、サービス技術者が、フローサイトメーターにリモートログインし、動作問題をリモートで診断することができる。サービス技術者に対して(通常のスケジューリングされた保守とは対照的に)修理サービスについて自動的に通知し、フローサイトメーターを修理するためにサービス技術者を現場に送ることができ、それにより、機器のダウンタイムが低減する。故障に先立って早期に修理サービスが実施されることにより、あり得る機器誤動作に起因して血液サンプルが破壊される可能性が低減する。場合によっては、血液サンプルの破壊は、即時の診断がなされないために患者に対して生命に関わる可能性がある。
【0024】
スマートフローサイトメーター
ここで図2を参照すると、スマート又はインテリジェントフローサイトメーター200の機能ブロック図が示されている。スマートフローサイトメーター200は、レーザーシステム202と、流体システム208と、受光器システム214と、電子工学システム220とを備える。電子工学システム220は、これらのシステムのそれぞれと通信するように結合されて、それらの動作を制御する。これらのシステムのそれぞれは、図1Bに示すフローサイトメーター150を参照して記載したシステムと同様に機能する。したがって、フローサイトメーター150におけるレーザーシステム152、流体システム158、受光器システム164及び電子工学システム170の同様のシステムに関する記載は、引用することによりここに組み込まれ、スマートフローサイトメーター200のレーザーシステム202、流体システム208、受光器システム214及び電子工学システム220にそれぞれ適用可能である。
【0025】
しかしながら、スマートフローサイトメーター200は、フローサイトメーター150等のフローサイトメーターにおいて見られる典型的なシステムと比較して、監視システム260及び品質管理システム270を更に備える。電子工学システム220は、監視システム260及び品質管理システム270の両方に結合されて、それらの動作を制御する。監視システム260は、スマートフローサイトメーターのシステムの全てと通信するように結合されて、それらの動作を監視し、リモート診断を実施する必要がある場合はそれらをリモートで制御する。スマートフローサイトメーターにおけるシステムの構成要素は、監視システム260をサポートする。例えば、レーザーシステム202における1つ以上のレーザー204は、例えば、COHERENT OBIS 405LX、488LX、640LX又は他の等価なレーザーモジュールとすることができる。
【0026】
スマートフローサイトメーター200の品質管理システム270は、スマートフローサイトメーターを通して細胞のサンプルを流す前に、品質管理ビーズによる起動時検証を容易にする。監視システム260により、品質管理システム270によって容易にされるデータ出力の検証を監視して、性能監視の基準も提供することができる。
【0027】
概して、監視システム260は、故障しているレーザー及び/又は故障している検出器等、故障している構成要素に対して修理サービスが必要であるときを先立って判断するように、周期的な常時監視プロセスを提供する、内部メモリ、外部メモリ又は他の記憶デバイスを有するマイクロコントローラー240を備える。マイクロコントローラー240は、1つ以上のレーザー204、1つ以上の光検出器216、及び流体システム208における1つ以上のセンサー210~213(例えば、流量センサー210)と通信するように結合されて、スマートフローサイトメーターの故障している構成要素を決定する。他のセンサーを用いて、監視プロセスから先立って保守問題を判断することができ、それにより、保守を実施し、スマートフローサイトメーターを動作状態に戻すことができる。
【0028】
スマートフローサイトメーター200の品質管理(QC)システム270は、品質管理ビーズ槽230及び品質コントローラーサンプラーコントローラー235を備える。品質管理ビーズ槽230は、複数の較正又は品質管理ビーズを含む。これらは、スマートフローサイトメーター200からの出力データの品質を較正するために用いられる。Zhenyu Zhangによる2018年5月21日に出願された「FAST RECOMPENSATION OF FLOW CYTOMETERY DATA FOR SPILLOVER READJUSTMENTS」と題する米国特許第62/674,273号が、包括的に、フローサイトメーターの較正プロセスについて記載しており、引用することにより本明細書の一部をなす。品質管理サンプラーコントローラー235は、ビーズ槽230に結合されて、複数のビーズを受け取り、スマートフローサイトメーター200の動作状態を試験するためのサンプルを自動的に形成する。サンプル試験管内のサンプルは、ビーズ槽230から、流体システム208のフローセルに結合されたフローチューブのサンプル取入口まで移動する。このように、ビーズ槽230からのQCビーズを、通常の細胞のサンプルのようにフローサイトメーターを通って流すことができる。ビーズ槽230から流体システムのフローセルまでの移動は、ロボットアーム(図示せず)によって実施することができる。QCシステム270は、監視システム260によって、警告又は警報状態のときにスマートフローサイトメーター200を診断するようにリモート制御することができる。
【0029】
スマートフローサイトメーター200の監視システム260は、マイクロコントローラー(MC)240と、任意選択的に、パラレルデジタルインターフェース247又はI2Cシリアルインターフェース250を介してマイクロコントローラー240と通信するように結合されたネットワークインターフェース/ウェブブラウザー241とを備える。ネットワークインターフェース/ウェブブラウザー241は、ファイアウォールと、サービス提供者へのアクセスを許可するためにログインID及びパスワードを用いる暗号化されたウェブページとを有することができる。ローカルエリアネットワーク又は広域ネットワークに接続する有線ケーブルを収容するために、ケーブルコネクタ(例えば、RJ45 Ethernetコネクタ)がネットワークインターフェース/ウェブブラウザー241と通信するように結合することができる。代替的に、NICは、ネットワークと無線接続する無線送受信機を備えることができる。
【0030】
マイクロコントローラー240は、例えば、SILICON LABS C8051F311マイクロコントローラー又はATMEL MEGA8Lマイクロコントローラーとすることができる。マイクロコントローラー240は、1つ以上のセンサー、又はレーザー若しくは検出器等の1つ以上の構成要素から、スマートフローサイトメーター200の動作状態を周期的に取り込むモニターデータを記憶する内部EEPROM240(又は代替的に、メモリ222等、外部不揮発性メモリ又は記憶デバイス)を備えることができる。
【0031】
QCビーズによる起動時検証又は適格性確認プロセス中、1つ以上の検出器218からの信号は、1つ以上のA/D変換器219によってデジタルデータに変換され、データの実質的に全てが記憶メモリ又は記憶デバイス222内にモニターデータとして記憶される。サンプル細胞を流すフローサイトメーターの動作中、受光器システムにおける1つ以上のA/D変換器219からのデジタルデータは、周期的にサンプリングされ、記憶メモリ又は記憶デバイス222内にモニターデータとして記憶される。このように、検出器は、実質的な量のデータを記憶する必要なしに周期的な様式で常時監視することができる。サンプル細胞を流すフローサイトメーターの動作中、受光器システムにおける1つ以上のA/D変換器219によって出力されるデジタルデータ結果の全てが、通常の方法で分析されるためにローカルホストコンピューターに結合される。記憶デバイス222に記憶されたモニターデータは、デジタルインターフェース247並びにマイクロコントローラー240と記憶デバイスとの間のアドレス、データ及び制御信号ラインとを通じて、マイクロコントローラー240内に読み込むことができる。スマートフローサイトメーターの様々な動作パラメーターに対するパラメーター履歴を表すモニターデータは、不揮発的に内部メモリ242に記憶し、その後、本明細書で説明するように中央修理サーバーのデータベース内にアップロードすることができる。
【0032】
プロセッサ及びメモリに加えて、マイクロコントローラー240は、複数のインターフェースを備える。マイクロコントローラー240は、レーザー204及び/又は検出器218及び/又はセンサー(例えば、流量センサー210又は圧力センサー211)と通信する外部アナログデジタル変換器245、及び/又はブラウザー241等、電子工学システム220におけるデータメモリ222等、フローサイトメーターの要素に結合する、アイ・スクエアド・シー(IC)シリアルデジタル信号インターフェース250及び/又はパラレルデジタル信号インターフェース247等、デジタル信号インターフェースを備えることができる。マイクロコントローラー240は、任意選択的に、入力アナログ信号を内部デジタル信号に変換する、アナログ入力信号インターフェースを有する1つ以上の内部アナログデジタル変換器245’を備えることができる。この場合、レーザー204、検出器218又はセンサーからのアナログ信号ラインは、マイクロコントローラー240に直接結合することができる。
【0033】
ネットワークインターフェースコントローラー/ウェブブラウザー241は、リモート操作、診断及び保守のためにスマートフローサイトメーター200へのリモートインターネット又はクラウドベースアクセスを可能にする。スマートフローサイトメーターをインターネットに接続するために、ネットワークインターフェースコントローラー/ウェブブラウザー241の有線コネクタにEthernetケーブルを結合することができる。別の場合では、ネットワークインターフェースコントローラー/ウェブブラウザー241は、スマートフローサイトメーター200をインターネットに無線接続するために無線送信機-受信機(送受信機)を備えることができる。
【0034】
監視システム260の一部として、マイクロコントローラー(MC)240は、フローサイトメーターが細胞のサンプルを分析するために使用されていないときであっても、常時周期的にスマートフローサイトメーター200の動作における様々なパラメーターを監視する。レーザー故障がフローサイトメーターにおけるもっとも一般的な故障のうちの1つであると考える。通常、レーザーは、急に故障するのではなく、何日間及び時間の期間にわたって徐々に故障する。マイクロコントローラー(MC)240は、周期的に、レーザーパワー、レーザードライバー電流及びレーザーバイアス電圧等、1つ以上のレーザー204の様々なパラメーターを常時監視する。レーザー故障は、修理/交換にかなりの時間がかかるとともに費用がかかる可能性があり、費用のかかる部分であり得る。
【0035】
フローサイトメーターは、様々な波長の光を取り込むために複数の検出器を用いることができる。検出器の量は、フローサイトメーター故障の確率を上昇させる可能性がある。システムは、フローサイトメーターにおける故障している構成要素にアクセスするために分解が必要であることが多い。故障が発生すると、複数の検出器の全てを交換すべきであるか否かを知ることが望ましい。したがって、周期的に、マイクロコントローラー240は、常時、漏れ電流等、1つ以上の検出器218の様々なパラメーターを監視し、それを所定の限界値と比較して1つ以上の検出器218の全ての状態を判断する。
【0036】
フローサイトメーターは、レーザーシステム及び受光器システムの一部である複数の光学部品を有する。これらの素子では、フローサイトメーターの振動又は物理的衝撃に起因して軸ずれが生じる可能性がある。そうした場合、レーザーシステム及び/又は受光器システムによって取り込まれるデータの有効性及び品質が低下する可能性がある。多くの場合、素子の軸合わせは、定期的な保守において補正することができる。しかしながら、素子が、取り込まれたデータが役に立たないほど大きくずれているか否かを判断することが、有用である可能性がある。したがって、周期的に、マイクロコントローラー240は、フローサイトメーターの検証/較正を周期的にもたらすとともに、常時、1つ以上の検出器218の取り込まれたデータが劣化していないか監視し、データを所定限界値と比較して、レーザーシステム及び受光器システムのレーザー、光学素子及び検出器の状態を判断することができる。
【0037】
スマートフローサイトメーター200の流体システム208は、通常、いくつかの要素に対してユーザーが実施する何らかの基本的な日常の保守を受ける。スマートフローサイトメーターは、ユーザーに対して、日常の保守の必要性、又は、例えば流体レベル等、早期の保守要件を通知することができる。周期的に、マイクロコントローラー240は、レベルセンサーにより、流体システムのタンク内の流体レベルを常時監視して、タンクが完全に空になる前に流体を補充すべきときを検出するか、又は、廃棄流体で完全に充填される前にタンクを空にするときを検出することができる。また、弁等、流体システムにおけるいくつかの構成要素は、故障し始めて、ユーザーには知られない可能性がある。他の場合では、ユーザーの知らない間に、詰まりが徐々に発生する可能性がある。チューブは徐々に詰まる可能性があり、それにより、完全に閉塞する前に、流体の流量は低速になり、詰まりよりも前の圧力が上昇する可能性があるとともに詰まりよりも後の圧力が低下する可能性がある。周期的に、マイクロコントローラー240は、常時、1つ以上の流量センサーによって測定される流量等、流体システムの様々なパラメーターを監視して、あり得る弁の故障を早期に検出するか、又は、完全な閉塞が発生する前に、開始している詰まりを検出する。
【0038】
レーザー、検出器又は他のセンサーからの複数の値は、データ記憶に向いていないアナログ値であり得る。例えば、レーザーパワー、レーザードライバー電流、レーザーバイアス電圧及び漏れ電流は、通常、1つ以上のレーザーからのアナログ値である。フローサイトメーターの動作中にこれらのパラメーターの値を周期的に記憶するために、フローサイトメーターの動作パラメーターのアナログ値は、アナログデジタル変換器(ADC)、例えば外部アナログデジタル変換器245、219又は内部アナログデジタル変換器245’によってデジタル化される。1つ以上のレーザーのパラメーターの値をデジタル化した後、マイクロコントローラー(MC)240は、デジタル値を不揮発的に、その内部メモリ242及び/又は外部メモリ222又は電子システム220の他の記憶デバイスに記憶することができる。マイクロコントローラー(MC)240はまた、その内部メモリ242及び/又は電子システム220の外部メモリ222を用いて、設定/クリアすることができるフラグビットを表すデータ、又はパラメーターの値を記憶することができる限界値を表すデータを記憶することもできる。内部メモリ242の既知の場所に記憶されたメモリマップを用いて、データ、ビットフラグ及び限界値が記憶される場所を論理的にマッピングすることができる。代替的に、マイクロコントローラー(MC)240はまた、設定及びクリアされるフラグを表すビットを記憶することができるフリップフロップ記憶場所のレジスターも含むことができる。代替的に、マイクロコントローラー(MC)240はまた、限界値を表すデータを記憶するために用いることができる複数の記憶場所のレジスターも含むことができる。
【0039】
マイクロコントローラー240は、2つの数字を比較していずれが大きいかを判断することを含む、様々な数学関数を実施することができる論理回路(例えば、算術論理演算ユニット)を備える。したがって、マイクロコントローラー240の論理回路は、フローサイトメーターの動作パラメーターのデジタル化された値をその値の事前決定された限界値と比較することができる。事前決定された限界値は、マイクロコントローラーの内部メモリ242及び/又は電子システム220のメモリ222に不揮発的に記憶することができる。事前決定された限界値は、動作最大値又は最小値を超えたために故障が発生したか又は故障が発生しそうであることを示す警報フラグを生成する、警報限界値であり得る。事前決定された限界値は、動作最大値又は最小値に達する前の警告限界値セットであり、警報フラグが生成される前に警告フラグを生成し得る。警告フラグは、監視システムが、故障に先立って保守をスケジューリングするために用いることができる。実際の故障又は差し迫った故障を示す警報警告フラグは、監視システムが、スマートフローサイトメーター200の即時の修理を要求するために用いることができる。例えば、レーザー204に対する警告フラグは、故障する前にレーザーを交換するように近い将来の保守をスケジューリングすることができる。レーザー204に対する警報フラグは、スマートフローサイトメーターが再度機能することができるためにレーザー204を即時に交換しなければならないような故障を示すことができる。
【0040】
検出器218及びレーザー204の監視を容易にするために、スマートフローサイトメーター200は、2つの動作モード、すなわち、通常動作モード及びパワーダウンモードを有する。パワーダウンモードでは、レーザー及びフォトダイオードは、フローサイトメーターの状態を検査するために一定のスケジュールで周期的に電力が供給される。レーザー及び検出器が、流体システムを通して細胞又はQCビーズのサンプルを流すように電力が供給される、通常動作では、レーザー及びフォトダイオードの動作状態は、連続的に提供され、パラメーターとして周期的にサンプリングすることができる。サンプリングされたパラメーターは、レーザー204の場合はマイクロコントローラー240のEEPROMメモリ242に直接記録し、又は検出器及び他のセンサーの場合は最初に記憶デバイス222に記憶し、その後、EEPROMメモリ242に読み込むことができる。パラメーターデータは、取り込まれたとき、時刻及び日付がスタンプされて、スマートフローサイトメーターの様々な動作パラメーターの履歴を提供する。
【0041】
フローサイトメーターの動作の品質保証を容易にするために、スマートフローサイトメーターは、較正/適格性確認/検証モードを同様に有する。ユーザーによるスケジューリングされた動作時刻の前に、スマートフローサイトメーター200を予めウォームアップしその動作を事前設定するために、スマートフローサイトメーター200は、品質管理システム270を利用する。ユーザーのスケジューリングされた動作時刻を知ることにより、マイクロコントローラー240は、ユーザーのスケジューリングされた時刻の前に較正/適格性確認動作を自動的に開始することができる。
【0042】
スマートフローサイトメーター200の品質管理システム270は、サンプル試験管を形成するために複数の試験管内に配置することができる適格性確認、検証又は較正ビーズ(QCビーズ)を保管するQCビーズ槽230を有する。較正ビーズは、CYTEKのQBSURE品質管理ソフトウェアと適切に機能するCYTEK QBSUREビーズであり得る。QCサンプラー235は、ロボットアームが、QCビーズを含むサンプル試験管(QC試験サンプル)を槽230から流体システム208の所望の場所まで移送して、適格性確認/較正/検証/品質管理試験を実行することができることを含む。QCサンプルを流している間に検出器によって取り込まれる適格性確認データは、マイクロコントローラー240の内部メモリ242及び/又は電子システム220のメモリ222に不揮発的に記憶される。適格性確認データを用いて、フローサイトメーターの動作及び精度を診断し、より正確な結果を得るために結果として生じるデータに対して調整を行うことができる。適格性確認データに対する所定の限界値を設定し、マイクロコントローラー240の内部メモリ242及び/又は電子システム220のメモリ222に記憶することができる。記憶された測定適格性確認データは、マイクロコントローラーによって所定の警報QC限界値及び警告QC限界値と比較されて、測定QCデータが最大限界値を超えるか又は最小限界値未満である場合に、それぞれQC警報フラグ及びQC警告フラグを生成することができる。
【0043】
マイクロコントローラー240は、シリアルデータ/アドレスラインSDA252及びシリアル制御ラインSCL254を通じてIEEE I2Cインターフェース250等、シリアル2線式インターフェースを通じて外部ホストと通信するように、スレーブモードに設定される。これにより、フローサイトメーター製造業者は、インターネットを通じて中央監視サービスを提供するとともに、リアルタイム及び事前保守サービスプログラムを提供して、機器ダウンタイムを低減するのに役立ち、フローサイトメーターの有用性を完全に認識することができる。
【0044】
ここで図2及び図3を参照すると、マイクロコントローラー240は電子システム220とともに、フローサイトメーターにおけるその様々なシステムからの様々なパラメーターを監視する。レーザーシステム202に対して、レーザー関連パラメーター301が監視される。受光器システム214に対して、検出器関連パラメーター302が監視される。流体システム208に対して、流体関連パラメーター303が監視される。品質管理/適格性確認システム270に対して、品質管理関連パラメーター304が監視される。これらの監視されたパラメーターには、日付及び時刻がスタンプされる。次いで、スタンプされた監視されたパラメーターは、マイクロコントローラー240によって内部記憶デバイス242に、及び/又は書き込み可能な不揮発性メモリ等、外部記憶デバイス222に記憶することができる。内部記憶デバイス242及び/又は外部記憶デバイス222における記憶空間を節約するために、パラメーターデータを圧縮することができる(例えば、可逆圧縮)。さらに、パラメーターの履歴的傾向を見るために、記憶空間に応じて日及び時間の窓(例えば、3か月間の使用、1年間の使用)を維持することができる。空間を節約するとともに、動作の履歴を維持して傾向線を見るために、各日、週、月及び/又は年に対する代表的な値を記憶することができる一方、重複した値は廃棄される(例えば、非可逆圧縮)。
【0045】
フローサイトメーター200のレーザーシステム202における1つ以上のレーザー204に対して、マイクロコントローラー240は、各レーザーに対して、日及び時間(日時)にわたり、入力レーザー電流、出力レーザーパワー、入力レーザーバイアス電圧及びレーザー温度を監視する。レーザー204のこれらの動作状態のうちの1つ以上は、マイクロコントローラー240のメモリ242によって記憶されるために、ADC245、245’によるデジタルパラメーターへの変換を必要とするアナログパラメーターである。日時にわたる記憶されたパラメーター履歴を用いて、レーザー204の故障を予測し、警告/警報フラグを設定し、警告/警報メッセージを送出することができる。
【0046】
レーザーへの入力レーザー電流が日時にわたって増大している場合、それは、あり得る故障の指標を提供することができる。レーザーへのゼロ入力レーザー電流がある場合、それは、開回路及びレーザーの故障の指標を提供することができる。レーザーの出力レーザーパワーが日時にわたって増大している場合、それは、レーザー入力電流の増大と同様のあり得る故障の指標を幾分か提供することができる。レーザーからのゼロレーザーパワー出力がある場合、それは、開回路及びレーザーの故障の指標を提供することができる。レーザー端子の両端のレーザーバイアス電圧が略ゼロまで低下する場合、それは、レーザーがショートしており、完全にショートすると故障するという指標を提供することができる。代替的に、それは、バイアス電圧を提供するためのレーザーへの電源が故障しているという指標であり得る。レーザーのレーザー温度は、動作範囲内で維持することが望ましい。レーザー温度が日時にわたって上昇している場合、それは、レーザー入力電流の増大と同様のあり得る故障の指標を提供することができる。レーザー温度が下限値未満になる場合、それは、或る動作状態にバイアスするレーザーにおける故障、又はレーザーをバイアスした状態で維持するシステムにおける故障を示すことができる。
【0047】
受光器システム214における1つ以上の検出器218(例えば、フォトダイオード又は光電子増倍管)に対して、マイクロコントローラー240は、日時にわたって、受光器の暗電流(光が受光されいないときの雑音出力電流)と、フォトダイオード端子の両端の受光器バイアス電圧とを監視する。光検出器218からのデータ出力のように、監視されるこのパラメーター情報は、周期的にADC219のうちの1つによってサンプリングし、外部記憶デバイス222によって記憶し、又は、マイクロコントローラー240のメモリ242に直接記憶することができる。日時にわたる記憶されたパラメーター履歴を用いて、検出器218の故障を予測し、警告/警報フラグを設定し、警告/警報メッセージを送出することができる。
【0048】
フォトダイオードの暗電流が日時にわたって増大すると、それは、検出器のあり得る故障の指標を提供することができる。フォトダイオード端子の両端の受光器バイアス電圧が略ゼロまで低下する場合、それは、フォトダイオードがショートして故障している指標を提供することができる。代替的に、それは、バイアス電圧を提供するフォトダイオードに対する電源が故障しているという指標であり得る。
【0049】
フローサイトメーター200の流体システム208は、1つ以上の流量センサー210と、弁位置センサー212を含む1つ以上の流量弁と、1つ以上のレベルセンサー213と、1つ以上の圧力/真空センサー211とを備えることができる。1つ以上の流量センサー210に対して、マイクロコントローラー240は、日時にわたって流量データを取り込むように流量データを監視する。1つ以上の流れ圧力/真空センサー211に対して、マイクロコントローラー240は、日時にわたって圧力データを監視する。1つ以上の流量弁212に対して、マイクロコントローラー240は、日時にわたって弁位置データを監視する。1つ以上のレベルセンサー213に対して、マイクロコントローラー240は、日時にわたってレベルデータを監視する。フローサイトメーター200の品質管理システムに対して、品質管理サンプル235の各適格性確認試験からの、変動係数(CV)データを含む品質管理/適格性確認/較正データ/情報は、マイクロコントローラー240によって日時にわたって監視される。監視することが望ましいこれらの値の全ては、電子システム220におけるメモリ222によってモニターデータとして最初に取り込み、又はマイクロコントローラー240におけるメモリ242によって直接取り込むことができる。メモリ222に記憶されたモニターデータのうちの幾分か又は全てを、マイクロコントローラー240のメモリ242におけるメモリ場所に周期的に転送することができる。
【0050】
1つ以上の流量センサーによって測定される流量が低減すると、それは、システムの詰まり、流体流を維持するために開放する弁の故障、又は流体が流れることができるように流体圧を維持するポンプの故障を示すことができる。圧力センサーによって測定される日時にわたって測定される陽圧の低下は、流体流を維持するように開放する弁の故障、又は流体が流れることができるように流体圧を維持するポンプの故障を示すことができる。真空度を測定する圧力センサーによって日時にわたって測定される圧力(真空度)の上昇は、開放して真空を維持する弁の故障、又は略ゼロ圧を維持する真空ポンプの故障を示すことができる。
【0051】
フローサイトメーターの検証又は適格性確認に対して、QCサンプルにおけるQCビーズは、フローサイトメーターを通って流され、データ結果は、品質管理のためにフローサイトメーターによって監視される。検証又は適格性確認実行中に検出器によって検出されるデータの全てが、フローサイトメーターのメモリ又はマイクロコントローラーのメモリに実質的に記憶され、それにより分析することができる。サンプルの流れが完了した後、検出器からのデータ出力結果は、概して、強度(ピークチャネルの分散平均の中心、中央値)及び点の分布の広がり(チャネルの標準偏差又は変動係数)に対して統計的に分析される。QBSUREビーズと称するCYTEK BIOSCIENCEのQCビーズは、所与のフローサイトメーター構成(例えば、検出器の数、レーザーの数及びそれらの波長)に対してQCサンプルにおけるQCビーズにマーキングされた各色素パラメーターに対して弱陽性集団を検出するために、検出器又は集光効率Q、光又は背景雑音b及び分解能限界Rの値を生成するそれら自体のプログラムを有する。
【0052】
集光効率Qは、検出器によって取り込まれた光電子の数を計数してQCサンプルにおける蛍光分子(ビーズ)の数によって割ることによって、測定することができる。それは、光電子/蛍光分子(MEFL)の単位を有する。変動係数(CV)が測定される場合、集光効率Qは、以下の式によって計算することができる。
Q=1/MEFL×CV
【0053】
背景雑音bパラメーターは、レーザー光なしにQCビーズを流しているときに蛍光分子(MEFL)の数を計数することによって測定することができる。それは、以下の式によって、変調レーザー光ありの標準偏差(SDModbright)に対するレーザー光なしの標準偏差(SDblank)の比率の二乗に、レーザー光ありでQCビーズを流しているときの蛍光分子(MEFL)を掛けた式によって計算することができる。
b=(SDblank/SDModbright×MEFL
【0054】
分解能限界Rは、サイトメーターが背景雑音bから対象とする粒子を分解することができる最低値である。それは、蛍光分子(MEFL)の単位を有する。それは、Q及びb両方が既知であるときに変数fに対する等式を解くことによって計算することができる。等式は以下の通りである。
2×√Qb=Qf-2√(Q×f)+b
【0055】
QCサンプルに対する検出器からのデータ出力結果もまた、各検出チャネルに対して変動係数(CV)又は分布の広がりに対して分析される。変動係数(CV)は、レーザー軸合わせの基準を提供する。QCサンプルにおける既知のQCビーズを用いて、警告限界及び警報限界に対して、目標動作状態の周囲のQ、b、R及びCVに対する値の予測される範囲を設定することができる。所望の範囲外である所与の色素/検出器のQ、b、R及び/又はCVの値のうちの任意のものに対する不合格である結果は、スマートフローサイトメーターのレーザーの故障、検出器の故障、又は1つ以上の光学素子、レーザー若しくは検出器の光軸ずれを示すことができる。レーザーは、フローチューブのサンプル領域と軸ずれする可能性がある。検出器は、光学素子(例えば、レンズ、フィルター又はミラー)と軸ずれする可能性がある。レーザー、検出器又は光学素子の軸ずれにより、目標値の周囲の限界値の範囲を超えるほど大きく、光の取込み並びにQ、b、R及びCV値の生成の質が低下する可能性がある。値が、設定されている高/低警告限界値及び/又は高/低警報限界値外になると、フラグを設定することができ、メッセージを送信することができ、故障しているフローサイトメーターに対して、再軸合わせを実施する保守又は修理をスケジューリングすることができる。
【0056】
分解能限界Rパラメーターは、背景雑音bから弱陽性集団を分解するために必要な色素分子の数を定量化する。R値が低いほど、スマートフローサイトメーターによる良好な性能を示す。したがって、検出チャネルにおける検出器に対する記憶されたQC履歴におけるR値の傾向が上昇している場合、それは、フローサイトメーターに対して修理又は保守が必要であるという指標を提供することができる。光学的背景雑音bが低いほど、通常、良好である。検出チャネルにおける検出器に対する記憶されたQC履歴における光学的背景雑音bパラメーターの傾向が上昇している場合、それは、フローサイトメーターに対して修理又は保守が必要であるという指標を提供することができる。概して、所与の検出器に対する検出器又は集光効率Qパラメーターの値が高いほど、スマートフローサイトメーターによるより良好な性能を示す。検出チャネルにおける検出器に対する記憶されたQC履歴における集光効率Qパラメーターの傾向が低下している場合、それは、フローサイトメーターに対して修理又は保守が必要であるという指標を提供することができる。概して、変動係数(CV)の値が低いほど、良好なレーザー軸合わせを示す。検出チャネルにおける検出器に対する記憶されたQC履歴における変動係数(CV)パラメーターの傾向が上昇しており、軸ずれ状態を示す場合、それは、フローサイトメーターに対して修理又は保守が必要であるという指標を提供することができる。集光効率Q、背景雑音b、分解能限界R及び変動係数CVは、全て、監視システムによって監視され、これらの品質管理QCパラメーターの履歴を維持することができるように、日時でスタンプすることができる。
【0057】
一方、履歴がない場合、検証プロセスは、マイクロコントローラーによって、QC槽からのビーズを用いて、スケジューリングされた時点で(例えば、ユーザーが実験室に到着する前の毎朝6時に)1日1回又は2回自動的に実行することができる。品質管理QCパラメーター(集光効率Q、背景雑音b、分解能限界R及び変動係数CV)に対する毎朝の値を、範囲を確立するそれぞれの高/低警告限界値及びそれぞれの高/低警報限界値と比較して、警告範囲及び/又は警報範囲外にあるときに所与のスマートフローサイトメーターの保守又は修理を準備することができる。フラグビットを設定し、故障しているスマートフローサイトメーターの保守/修理を要求するメッセージをサーバーに送信することができる。サンプル細胞を各流れの前に同様に検証プロセスを実行することができる。
【0058】
1つ以上のレーザー204は、監視パラメーターの値をアナログ形式で提供することができ、それは、デジタル化され、その後、メモリ又は他の記憶デバイスに記憶され、それにより、マイクロコントローラー240によって、パラメーターを所定の限界値と比較することができる。同様に、1つ以上の検出器及び1つ以上のセンサーは、監視パラメーターの値をアナログ形式で提供することができ、それは、デジタル化され、その後、メモリ又は他の記憶デバイスに記憶され、それにより、マイクロコントローラー240によって、パラメーターを所定の限界値と比較することができる。場合によっては、レーザー、検出器又は他のセンサーは、アナログデジタル変換器によるデジタル化が不要であるように、1つ以上のパラメーターを直接デジタル形式で提供する能力を有することができる。
【0059】
ここで図4を参照すると、マイクロコントローラーの電気的に消去可能なプログラム可能なリードオンリーメモリ(EEPROM)242のブロック図が示されている。EEPROM242は、フローサイトメーターの動作の動作限界値及びリアルタイム測定値に関して、不揮発性メモリ(例えば、内部レジスター、内部メモリ(例えば、EEPROM242)、外部メモリ又は他の記憶デバイス)のメモリ場所に対する事前定義されたメモリマップである、1つ以上のテーブル460L、460D、460QC、460F(まとめて、テーブル460と称する)を記憶する。記憶されたデータがメモリマップによってメモリ/記憶場所に指示されることにより、フローサイトメーターのリモートリアルタイム診断が可能になる。記憶されたデータは、サービス提供者とスマートフローサイトメーターのユーザーとの間の有効なインタラクションを可能にすることができる。テーブル460は、ローカルホストコンピューターによってローカルに、又は、ウェブインターフェースを介してリモートクライアントコンピューターによってリモートにアクセスして、スマートフローサイトメーターの動作状態を監視するとともに、動作状態に基づいて保守サービスを提供するために、メモリマップによって指示される値を読み出すことができる。
【0060】
フローサイトメーター200における1つ以上のレーザー204に対して、レーザーテーブル460Lは、1つ以上のメモリ又は他の記憶デバイスに記憶された警告限界値462Lに対するポインター(例えば、メモリへのアドレス)と、警報限界値464Lに対するポインターと、リアルタイム監視値466Lに対するポインターと、警告フラグ468Lに対するポインターと、警報フラグ470Lに対するポインターとを記憶する。リアルタイム監視値466Lは、日付及び時刻でスタンプされているフローサイトメーターの動作に関連する動作パラメーターの常時周期的サンプルである。リアルタイム監視値466Lは、スマートフローサイトメーターに対するパラメーター履歴を形成し、このパラメーター履歴を分析して、故障モードの傾向を見て、製造業者又はユーザーが設定することができるそれぞれの所定の警告限界値及び警報限界値と比較したときに警告及び/又は警報を発生させることができる。監視及び警報/警告限界値の目標は、次のユーザーがスマートフローサイトメーターを使用するようにスケジューリングされる日付及び時刻の前に、スマートフローサイトメーターにおける故障しているか又は脆弱な構成要素を修理することである。警告限界値の目標は、スマートフローサイトメーターの動作/使用を依然として可能にしながら、あり得る構成要素故障の前に先立って何日か(事前警告日)を提供することである。典型的には警告限界値を超えた(exceeded or surpassed)後に超える警報限界値の目標は、スマートフローサイトメーターの使用が継続された場合、構成要素がいつ何時でも故障する可能性が高いこと、及び、構成要素を即時に交換する必要があるか、又はシステムが適切に機能するために即時の保守が必要であるという通知を提供することである。
【0061】
フローサイトメーター動作パラメーターは、目標動作状態の周囲の動作範囲を設定する、低警報/警告限界値及び高警報/警告限界値を有することができる。したがって、目標動作状態から外れる高/低警告限界値及び高/低警報限界値セットがあり得る。例えば、目標動作状態がXである場合、警告限界値は、目標動作状態Xの±5%外れて設定することができ、警報限界値は、目標動作状態Xの±10%外れて設定することができる。警報限界値は警告限界値を超えて設定されるため、パラメーターは、目標動作状態Xから更に離れる。例えば、摂氏30度(℃)で動作電流により300ミリアンペア(mA)で、100ミリワット(mW)で動作するように工場で設定されたレーザーパワーを有するレーザーに対する目標状態を考える。動作パワー高/低警告パワーは、105/95mWに設定することができる。高/低警報パワーは、105/95mWの範囲から更に外れる110mW/90mWに設定することができる。高/低警告電流は、315/285mAに設定することができる。高/低警報電流は、315/285mAの範囲から更に外れる330/270mAに設定することができる。高/低警告温度は、31.5/28.5℃に設定することができる。高/低警報温度は、31.5/28.5℃の範囲から更に外れる33/27℃に設定することができる。
【0062】
図5Cは、レーザーパワーのプロット曲線例500Cを示し、レーザーパワーに対する目標動作状態520が約125mWである、ユーザーインターフェース510Cを示す。高警告限界値522Hと低警告限界値522Lとが、目標動作状態520の周囲の範囲の境界を定める。高警報限界値521Hと低警報限界値521Lとが、警告限界値によって設定された範囲の外側である、目標動作状態520の周囲のより広い範囲の境界を定める。パラメーター値が、警告限界値によって設定される範囲を超えたばかりであるが、依然として、警報限界値によって設定される警報範囲内にある場合、警告フラグが設定され、警告限界値を超えていることに関して、製造業者、サービス提供者及びユーザーに通知するように、フローサイトメーターから警告メッセージが送出される。曲線500Cの点501A~501Bは、低警告限界値522Lを超えるが低警報限界値521Lは超えないことに対する警告を送信することができる、パラメーター値に対する状態を示す。曲線500Cの点501Eは、高警告限界値522Hを超えるが高警報限界値521Hは超えないことに対する警告メッセージを送信することができる、パラメーター値に対する状態を示す。パラメーター値が、警告限界値によって設定される範囲と警報限界値によって設定される範囲との両方を超える場合、警報フラグが設定され、警報限界値を超えていることに関して、製造業者、サービス提供者及びユーザーに通知するように、フローサイトメーターから警報メッセージを送出することができる。曲線500Cの点501Fは、高警報限界値521Hを超えていることに対して警報メッセージを送信することができる、パラメーター値の状態を示す。
【0063】
フローサイトメーター、システム及び/又は構成要素の動作要件に応じて、警告/警報のフラグに対して他の限界値を設定することができる。例えば、高警告限界値及び高警報限界値を設定するために、構成要素の指定された最大限界値を用いることができる。高警告限界値は、10%等、最大限界値のX%以内に設定することができる。高警報限界値は、最大限界値の5%以内等、X%未満である、最大限界値のY%以内に設定することができる。同様に、あるとすれば、低警告限界値及び低警報限界値を設定するために、構成要素の指定された最小限界値を用いることができる。低警告限界値は、10%等、最小限界値のX%以内に設定することができる。低警報限界値は、最小限界値の5%以内等、X%未満である、最小限界値のY%以内に設定することができる。図5A及び図5B及びそれらの説明は、構成要素の最大限界値に基づいて高警報限界値及び高警告限界値を設定する一例を提供する。
【0064】
1つ以上のレーザーに対するレーザーパワー、レーザー電流及びレーザー温度のリアルタイム監視値は、フローサイトメーターの動作状態のうちのいくつかを表す。リアルタイム監視値は、所定のレーザー警告限界値462L及び所定のレーザー警報限界値464Lと比較される。警報限界値の何らかの侵害が発生した場合、メモリマップにレーザー警告フラグ468Lが設定される。警報限界値の何らかの侵害が発生した場合、メモリマップにレーザー警報フラグ470Lが設定される。
【0065】
システムの検出器218に対して、限界値及びフラグの同様のセットを同様に監視することができる。1つ以上の検出器に対する暗電流及び受光器バイアス電圧のリアルタイム監視値は、フローサイトメーターの更なる動作状態を表す。フローサイトメーター200における1つ以上の検出器218に対して、検出器テーブル460Dは、警告限界値462Dに対するポインター(例えば、メモリへのアドレス)と、警報限界値464Dに対するポインターと、リアルタイム監視値466Dに対するポインターと、警告フラグ468Dに対するポインターと、警報フラグ470Dに対するポインターとを記憶する。警告限界値は、検出器の目標動作状態の±5%に設定することができ、警報限界値は、検出器の目標動作状態の±10%に設定することができる。代替的に、検出器に対する最大値を用いて限界値を設定することができる。例えば、0.5ナノアンペア~5ナノアンペアの暗電流の動作範囲を有する検出器としてアバランシェフォトダイオードを考える。高警告限界値は4ナノアンペアに設定することができる。高警報限界値は、その範囲の最大値、すなわち5ナノアンペアに設定することができる。
【0066】
リアルタイム監視値は、所定の検出器警告限界値462D及び所定の検出器警報限界値464Dと比較される。警告限界値の何らかの侵害が発生した場合、メモリマップに検出器警告フラグ468Dが設定される。警報限界値の何らかの侵害が発生した場合、メモリマップに検出器警報フラグ470Dが設定される。機器動作要件に応じて、フラグ及び警報に対して他の限界値を設定することができる。
【0067】
動作時、スマートフローサイトメーター200は、検出器によって取り込まれる光(例えば、蛍光及び/又は散乱光)に基づいて、サンプルにおけるビーズ、粒子又は細胞に関連する生出力データを生成することができる。通常は蛍光が取り込まれ、ビーズ、粒子又は細胞を分析するために使用されるため、生出力データは、生蛍光出力データとも称することができる。
【0068】
例えば、QBSURE品質管理ビーズ等、較正又は品質管理ビーズを用いるフローサイトメーターの較正/適格性確認動作中、品質管理(QC)挙動に対して限界値及びフラグの同様のセットを同様に監視することができる。受光器システムによって生成されるフローサイトメーター200からの生出力データの全体的な品質管理に対して、流体システム、レーザーシステム及び電子制御システムを用いて、品質管理(QC)テーブル460QCは、警告限界値462QCに対するポインター(例えば、メモリへのアドレス)と、警報限界値464QCに対するポインターと、リアルタイム監視値466QCに対するポインターと、警告フラグ468QCに対するポインターと、警報フラグ470QCに対するポインターとを記憶する。異なるQCビーズへのいくつかの色素に対する品質管理パラメーターの目標値(目標動作品質管理状態)のテーブル例は以下の通りである。
【0069】
【表1】
【0070】
QCパラメーターに対する警告限界値は、フローサイトメーターのこれらの目標動作品質管理状態の±5%に設定することができ、警報限界値は、フローサイトメーターの目標動作品質管理状態の±10%に設定することができる。リアルタイム監視品質管理値466QCは、所定の品質管理警告限界値462QC及び所定の品質管理警報限界値464QCと比較される。警告限界値の何らかの侵害が発生した場合、メモリマップに品質管理警告フラグ468QCが設定される。警報限界値の何らかの侵害が発生した場合、メモリマップに品質管理警報フラグ470QCが設定される。
【0071】
EEPROMは、スマートフローサイトメーターの機器動作要件に応じて、フラグ及び警報に対して(例えば、流量センサー)他の限界値を事前決定及び設定することができるように、柔軟である。フローサイトメーターの動作中、流体システムの流量挙動に対して、限界値及びフラグの同様のセットを同様に監視することができる。スマートフローサイトメーター200の流体システムにおける1つ以上の流量センサー210、1つ以上の圧力センサー211及び/又は1つ以上の流量弁212に対して、流体センサーテーブル460Fは、警告限界値462Fに対するポインター(例えば、メモリへのアドレス)と、警報限界値464Fに対するポインターと、リアルタイム監視値466Fに対するポインターと、警告フラグ468Fに対するポインターと、警報フラグ470Fに対するポインターとを記憶する。
【0072】
1つ以上の流量センサー210の流量を、記憶し、例えば、それを、EEPROM242に記憶されている所定の警告限界値462F及び警報限界値464Fと比較することにより、監視することができる。流量の所定の警告限界値又は警報限界値を超えた場合、警告フラグ468F又は警報フラグ470Fを設定することができる。流量に対する目標値又は目標値の範囲に基づいて、所定の高/低警告限界値及び所定の高/低警報限界値を設定することができる。例えば、細胞/ビーズを含むサンプル流体に対する流量の典型的な目標範囲は、10マイクロリットル(μl)/分~66μl/分である。警告及び警報に対する高限界値は、その範囲の上限値に基づくことができる。警告及び警報に対する低限界値は、その範囲の下限値に基づくことができる。サンプル流体の周りのシース流体に対する流量の目標値が11ミリリットル(ml)/分である別の例を考える。この場合、所定の高/低警告限界値及び所定の高/低警報限界値は、上記目標値に基づいて設定することができる。
【0073】
流体システムにおける1つ以上の圧力センサー211における圧力/真空度を記憶し、監視して、その或る特定の点にある圧力又は真空度を判断することができる。測定圧力データが、圧力の所定の警告限界値462F又は警報限界値464Fを望ましくない変化の方向において超えた(例えば、最小限界値未満であるか又は最大限界値を超えた)場合、警告フラグ468F又は警報フラグ470Fを設定することができる。
【0074】
流体システムにおける1つ以上の流量弁の弁位置をコード化し、1つ以上の流量弁センサー212によって取り込んで、流量弁の開放位置又は閉鎖位置の測定基準を得ることができる。スマートフローサイトメーターの流体システムにおける1つ以上の流量弁センサー212の日及び時間(日時)にわたるコード化された弁位置を、監視及び記憶することができる。流量弁の流量弁センサーによって判断されるコード化された弁位置の所定の開放限界値又は閉鎖限界値を、警告、次いで警報を発生させるように設定することができる。マイクロコントローラーは、実際の弁位置を所定の限界値と周期的に比較して、所定の限界値を超えているか否かを判断することができる。弁位置の所定の警告限界値462F又は警報限界値464Fを超えた場合、警告フラグ468F又は警報フラグ470Fを設定することができる。
【0075】
流体システムにおける1つ以上のタンクの流体レベルを、日及び時間(日時)にわたって、レベルセンサー213によって検知して、監視し、記憶することができる。レベルセンサーによって判断されるレベル位置の所定の上限値及び下限値を、警告、次いで警報を発生させるように設定することができる。例えば、廃棄物タンクは、警告上限値及び警報上限値を有することができ、それらは、検知されると、空にする必要があることを警告し、その後、それ以上流体を収容することができない場合に警報を発する。別の例として、シース流体のシースタンクは、警告レベル限界値及び警報レベル限界値を有することができ、それらは、検知されたレベルと比較され、シースタンクが更なるシース流体を必要とする場合は警告し、そうでない場合、シース流体レベルがスマートフローサイトメーター200を使用するには低すぎる場合は警報を発する。マイクロコントローラーは、レベルセンサーによって測定される実際のレベルを周期的に所定の限界値と比較して、所定の限界値を超えているか否かを判断することができる。流体レベルの所定の警告限界値462F又は警報限界値464Fを超えた(例えば、所定の最小限界値未満であるか又は所定の最大限界値を超えた)場合、警告フラグ468F又は警報フラグ470Fを設定することができる。
【0076】
機器動作要件に応じて、フラグ及び警報に対して他の限界値を設定することができる。マイクロコントローラーは、フローサイトメーターからの実際の弁を所定の限界値と周期的に比較して、所定の限界値を超えているか否かを判断することができる。スマートフローサイトメーターにおける任意のパラメーターが任意の所定の限界値を超えた場合、マイクロコントローラーは、警告/警報フラグを設定し、警告メッセージ又は警報メッセージ等のメッセージ(例えば、SMSテキスト、インスタントメッセージ、電子メール、電話)がユーザー、製造業者及び/又は保守員に送出されるようにすることができる。
【0077】
任意の警報フラグ462、464又は警告フラグ468、470が設定された場合、グローバル警告フラグ461又はグローバル警報フラグ471をトリガーすることができる。グローバル警告フラグ461及びグローバル警報フラグ471は、リモートホストに対して診断を実施するように通知する。警報フラグ及び/又は警告フラグが設定されたというメッセージを、製造業者、保守員及び/又はユーザーに送信することができる。メッセージに、フローサイトメーター識別情報(例えば、モデル番号、通し番号、ファームウェアバージョン、ハードウェア/ソフトウェアバージョン及びインターネットプロトコルアドレス)、場所、及び警告/警報のタイプを含めることができる。ローカル及び/又はリモートホストコンピューターを、リモートログイン又は物理的接続等により、警告/警報を発しているフローサイトメーターと通信するように接続することができる。ホストが診断ルーチンを開始して、フローサイトメーターシステムの動作状態を検査し、あり得る又は実際の切迫した故障を検証し、故障に先立って又は故障時にサービス/保守のために製造業者に自動的に連絡することができる。警報フラグ及び警告フラグの使用に加えて、日時にわたるパラメーターの記憶された履歴データを用いて、スマートフローサイトメーターの動作状態を判断することができる。
【0078】
メモリ242の代わりに、各パラメーターに対する警告フラグ及び警報フラグを、フリップフロップ記憶デバイス又は複数のフリップフロップ記憶デバイスのレジスターに関連付けることができる。グローバル警告フラグ461及びグローバル警報フラグ471が設定され、メッセージが送信されると、リモートホストは、マイクロコントローラーをポーリングして、リモート診断を開始するように設定された警告フラグ及び/又は警報フラグの詳細を判断することができる。いかなる警報又は警告もなしに、パラメーターのリアルタイム値466を、経時的に更新又はリフレッシュすることができる。警告限界値又は警報限界値を超える値の警告又は警報時、フローサイトメーターにおいて、複数の日時にわたるパラメーターの値を固定/保存して、診断中に読み出して分析することができるように、故障しているシステム及び故障の保存された状態を提供することができる。リモートホストコンピューター又はサーバーにおいて日付がポーリングされ保存されると、診断中、パラメーターのリアルタイム値をリフレッシュすることができる。マイクロコントローラー及びフローサイトメーターのメモリは、限られた日時にわたってパラメーターに対するリアルタイム値の窓を記録するように制限することができる。より多くのパラメーター履歴を記憶するために、早期の履歴等、所与のスマートフローサイトメーターのパラメーターの履歴をサーバーにプッシュアウトすることができる。
【0079】
ここで図6を参照すると、フローサイトメーター通信ネットワーク600が示されている。フローサイトメーター通信ネットワーク600は、中央修理-保守サーバー612と、インターネット等、広域ネットワーク(WAN)606によって互いに通信するように結合された、複数の実験室LAB1 604A~LABN 604Nにおける複数のスマートフローサイトメーターFC1 614A~FCN 614Nとを含む。図2では、スマートフローサイトメーター200の1つのインスタンスによって、複数のスマートフローサイトメーターFC1 614A~FCN 614Nの機能ブロック図が示されている。中央修理-保守サーバー612は、スマートフローサイトメーターの製造業者602によって配置及び保守することができる。代替的に、中央修理-保守サーバー612は、世界中の1つ以上のデータセンサーに配置することができる。代替的に、中央修理-保守サーバー612は、大量のスマートフローサイトメーターの所有者の現場において所有者によって配置及び保守することができる。
【0080】
スマートフローサイトメーター614A~614Nの製造業者602は、製造業者602自体の従業員によりフローサイトメーターを保守及び修理することができる。他の場合では、スマートフローサイトメーター614A~614Nの製造業者602は、1つ以上のサービス提供者603における1人以上の修理技術者に修理及び保守サービスを外注するように選択ができる。他の場合では、実験室は、スマートフローサイトメーター614A~614Nをまとめて所有することができ、中央サーバーをホストすることができ、サービス提供者603であるようにそれら自体の修理技術者を雇うことができる。
【0081】
1つ以上のサービス提供者603のホストコンピューター623は、例えば、スマートフローサイトメーターFC1 614、FC2 614Bのうちの1つ以上及び中央修理-保守サーバー612と通信するように選択的に配置することができる。サービス技術者のリモートホストコンピューター623が、サーバーにリモートログインして、故障しているフローサイトメーターに関する履歴パラメーターデータを見ることができる。サービス提供者におけるサービス技術者のリモートホストコンピューター623もまた、故障しているフローサイトメーターにリモートログインして、修理/保守問題を診断することができる。サービス技術者は、故障しているスマートフローサイトメーターをリモート制御して、診断を実施するとともに、場合によっては、可能な場合、フローサイトメーターの修理/保守を準備しながら修理/保守問題を緩和するように、ソフトウェアのリモート修復を提供することができる。
【0082】
中央修理-保守サーバー612は、実験室604A~604Nからリモートの製造業者現場602において物理的に集中的に配置することができる。代替的に、中央修理-保守サーバー602は、冗長性及び負荷分散のために世界中の異なるデータセンターに物理的に配置された異なるサーバー612A’及び612B’に分散させて配置することができる。典型的には、初期通信接続のために、実験室604A~604Nの物理的に最も近くに配置されたサーバー612A’及び612B’を選択することができる。サーバー612A’がダウンした場合、実験室のフローサイトメーターと通信接続するために、別のサーバー612B’を選択することができる。
【0083】
各フローサイトメーターのマイクロコントローラーは、中央修理-保守サーバー612、612A’及び612B’(まとめてサーバー612と称する)と通信して、そのフローサイトメーターのパラメーター履歴をデータベースにアップロードし、1つ以上の警告限界値又は警報限界値を超えていることにより、フラグが設定されたときに警告メッセージ及び警報メッセージを送信することができる。中央修理-保守612は、複数の実験室LAB1 604A~LABN~604Nにおける複数のフローサイトメーターFC1 614A~FCN 614Nのそれぞれを、それぞれに対するパラメーター履歴を分析して故障が発生する可能性があるときを先立って予測することにより監視し、前もって修理及び/又は保守をスケジューリングすることができる。パラメーター履歴は、フローサイトメーターによって中央サーバー612にプッシュアウトすることができる。代替的に、中央サーバー612は、パラメーター履歴及びパラメーターに対する任意の更新のために複数のフローサイトメーターFC1 614A~FCN 614Nのそれぞれをポーリングすることができる。
【0084】
中央修理-保守サーバー612によって、故障しているフローサイトメーターから警報メッセージが受信されると、中央修理-保守サーバー612は、故障しているサーバーをポーリングして、何の警報/警告フラグが設定されているかを判断する。設定されている特定の警報/警告フラグに基づいて、サーバーは、故障しているフローサイトメーターに対する複数の診断ルーチンのうちの1つ以上の診断ルーチンを自動的に実行して、何が故障しようとしているか又は何がすでに故障しているかをより適切に判断することができる。サーバーによって判断される診断は、自動的に修理サービス/技術者をスケジューリングし、修理サービス/技術者に部品注文及び/又は保守サービスを通知するための基礎である。時には、警報フラグが設定される前に措置を講じるための時間が提供されるように、警告のみが与えられる場合がある。技術者は、ログインし、ソフトウェア/ファームウェアに対する調整により警告状態を一時的にリモートで緩和することができる場合がある。他の場合では、修理及び保守を行うように、実験室に修理技術者を送ることができる。
【0085】
スマートフローサイトメーター200は、小型でモジュール式であり、容易に移動させることができる。したがって、スマートフローサイトメーターが実験室において非常に重要である場合、修理技術者は、実験室のフローサイトメーターが修理されている間のダウンタイムを更に最小限にするために、一時的に交換するために故障しているか又は故障したスマートフローサイトメーターを有する実験室に貸与スマートフローサイトメーターを持って行くことができる。したがって、中央修理-保守サーバー612とのフローサイトメーター通信ネットワーク600により、それと通信しているスマートフローサイトメーターは、それらを動作状態に維持するために必要な修理及び保守の間に実質的な稼働時間を享受するとともに著しいダウンタイムを回避することができる。
【0086】
修理又は保守が行われた後、1つ以上のパラメーターに対して新たな履歴を開始することが望ましい可能性がある。したがって、そのように望まれる場合、修理又は保守の後、1つ以上のパラメーターに対するパラメーター履歴をリセットすることができる。
【0087】
ここで図5Aを参照すると、スマートフローサイトメーターの周期的動作(日時)に対する例示的なパラメーター(レーザーパワー)に対するパラメーター履歴が示されている。例えば、図5Aでは、2018年1月1日の50ミリワット(mw)、2018年1月5日の55mw、2018年1月10日の60mw、2018年1月20日の100mw、2018年1月22日の200mw及び2018年1月28日の330mw等、1か月間のレーザーパワー履歴を示すことができる。
【0088】
図5Aにレーザーパワー履歴を示すが、フローサイトメーターの動作を診断するために、本明細書において考察する他のパラメーターに対する履歴を、スマートフローサイトメーターからローカル又はリモートホストコンピューターにダウンロードすることができる。
【0089】
ここで図5Bを参照すると、チャートが、スマートフローサイトメーター200の動作におけるパラメーター履歴を示すように、X軸における周期的動作(日時)にわたって、Y軸に例示的なパラメーター(レーザーパワー)の値をプロットしている。チャートは、スマートフローサイトメーター200と通信するホストコンピューター/クライアントによって、ディスプレイモニターデバイス上のユーザーインターフェースウィンドウ510に表示することができる。例えば、0.52マイクロメートル(μm)~0.55μmの波長範囲で動作する532ナノメートル(nm)クラスレーザーのレーザーパワーは、350ミリワット(mw)の最大レーザーパワーを有することができる。したがって、レーザーパワーに対する警報限界値506は、最大値の5%下である332.5mwに設定することができ、レーザーパワーに対する警告限界値508は、最大値の10%下である315mw又はそれよりも低いレベルに設定することができる。パラメーターのいくつかの場合では、警報限界値は完全に最大値に設定することができる。
【0090】
スマートフローサイトメーターにおけるレーザー動作が、フローサイトメーター診断ユーザーインターフェースウィンドウ510において曲線500に沿って点501A~501Fとしてプロットされている、2018年の1月の月に対して図5Aに示すパラメーター履歴を有すると想定する。曲線500に沿って、レーザーは、点501A~501Dの間では、通常の方法で動作するように見える。しかしながら、点501D~501Fの間では、レーザーは、動作するために徐々により大きいパワーを必要とするように見える。曲線500の点501Fにおいて、警告限界値508を超えるように大きいパワーが必要とされ、それにより、フローサイトメーターにおけるマイクロコントローラーは警告フラグを設定し、警告メッセージがユーザー、製造業者、保守者に送出される。警告フラグ/メッセージは、レーザーが、最大限界値を超えて故障が発生する前に交換を必要とするほど並外れて動作していることを、保守、ユーザー及び製造業者に通知することができる。ユーザーインターフェースウィンドウ510に示すこの曲線500及び他のパラメーターに対する他の曲線は、技術者又は保守員がスマートフローサイトメーターの問題を診断するのに役立つことができる。
【0091】
図5B及び図5Cでは、フローサイトメーター診断ユーザーインターフェースウィンドウ510B及び510Cにおいてレーザーパワーがプロットされているが、フローサイトメーターの動作を診断するために、本明細書で考察した他のパラメーターの履歴に対するプロットを、ユーザーインターフェースウィンドウ510B及び510Cにおいてスマートフローサイトメーターに対してプロットし、ローカル又はリモートホストコンピューターに結合されたローカル又はリモートディスプレイデバイスに表示することができる。
【0092】
結論
本発明の実施形態を上記のように説明している。本発明の実施形態について特に説明したが、それらは、こうした実施形態によって限定されるものとして解釈されるべきではなく、添付の特許請求の範囲に従って解釈されるべきである。いくつかの特定の例示的な実施形態が説明され、添付図面に示されているが、そのような実施形態は、広い本発明の例示にすぎず、広い本発明を限定するものでないこと、並びに、本発明の実施形態が、図示及び説明された特定の構造及び構成に限定されるものでないことが理解されよう。なぜならば、当業者は、他の様々な変更を想起することができるからである。
【0093】
本発明の実施形態の要素は、ソフトウェアで実装される場合、本質的に、必要なタスクを実行するコードセグメントである。プログラム又はコードセグメントは、プロセッサ可読記憶デバイスに記憶するか、又は、1つの記憶デバイスからプロセッサ可読記憶デバイスにダウンロードすることができる。プロセッサ可読記憶デバイスの例としては、電子回路、半導体メモリデバイス、リードオンリーメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、消去可能なプログラム可能なリードオンリーメモリ(EPROM)、フロッピーディスケット、CD-ROM、光ディスク、ハードディスク、光ファイバー媒体、無線周波数(RF)リンク等が挙げられる。コードセグメントは、インターネット、イントラネット等のコンピューターネットワークを介してダウンロードすることができる。例えば、スマートフローサイトメーターの警告及び警報を診断することができるスマートフローサイトメーター診断ソフトウェアを、スマートフローサイトメーターのメモリ又は別の記憶デバイスにダウンロードして、マイクロコントローラーによって実行して構成要素若しくはシステムの故障又は先立ってそれらのあり得る故障を判断することができる。検証プロセスの動作を制御するためにマイクロコントローラーによって実行されるように、スマートフローサイトメーター動作ソフトウェアをスマートフローサイトメーターのメモリ又は別の記憶デバイスにダウンロードすることができる。
【0094】
本明細書は、多くの具体的内容を含むが、これらは、本開示の範囲に対する限定としても、請求項に記載され得るものの範囲に対する限定としても解釈されるべきではなく、逆に、本開示の特定の実施態様に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。個別の実施態様として本明細書に説明されたいくつかの特定の特徴は、単一の実施態様において組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施態様として説明された様々な特徴は、複数の実施態様において別々に又は一部を組み合わせて実施することもできる。さらに、特徴は、上記において、いくつかの特定の組み合わせで動作するものとして説明することができ、さらには、そのようなものとして最初に特許請求することもできるが、特許請求される組み合わせからの1つ以上の特徴は、いくつかの場合には、その組み合わせから削除される場合があり、特許請求される組み合わせは、部分的な組み合わせ又は部分的な組み合わせの変形形態を対象とする場合がある。したがって、特許請求される発明は、添付の特許請求の範囲のみによって限定される。

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6