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特許7489376電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置、電源装置用締結部材、電源装置の製造方法、電源装置用締結部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置、電源装置用締結部材、電源装置の製造方法、電源装置用締結部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/264 20210101AFI20240516BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20240516BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240516BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240516BHJP
   H01M 50/251 20210101ALI20240516BHJP
   B60L 50/64 20190101ALN20240516BHJP
   B60L 58/10 20190101ALN20240516BHJP
   B60L 53/14 20190101ALN20240516BHJP
【FI】
H01M50/264
H01M50/262 E
H01M50/262 M
H01M50/262 S
H01M50/209
H01M50/249
H01M50/251
B60L50/64
B60L58/10
B60L53/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021511109
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050462
(87)【国際公開番号】W WO2020202669
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2019066828
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山城 豪
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-023302(JP,A)
【文献】特開2012-243534(JP,A)
【文献】特開2009-238606(JP,A)
【文献】特開2007-141637(JP,A)
【文献】国際公開第2012/067045(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/031169(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/130937(WO,A1)
【文献】特開2019-164968(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235556(WO,A1)
【文献】特表2018-518032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
B60L 50/64
B60L 53/14
B60L 58/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装缶を角型とした複数の二次電池セルと、
前記複数の二次電池セルを積層した電池積層体の両側端面を覆う一対のエンドプレートと、
前記複数の二次電池セルの積層方向に沿って延長された板状で、前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する金属製の複数の締結部材と、を備える電源装置であって、
前記複数の締結部材の各々は、
長手方向の両端でそれぞれ前記エンドプレートと固定される、第一金属で構成された締結部分と、
前記締結部分同士の間を連結する、前記第一金属と異なる第二金属で構成された中間部分とを有し、
前記第一金属は、前記第二金属よりも強度が高く、
前記第二金属は、前記第一金属よりも延伸性が高く構成されてなる電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記締結部材が、前記締結部分と前記中間部分との接合界面を摩擦攪拌接合により接合されてなる電源装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電源装置であって、
前記第一金属が鉄系の金属で、
前記第二金属がアルミニウム系の金属で構成されてなる電源装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記締結部分と前記中間部分とが同じ厚さに構成されてなる電源装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記締結部材は、さらに、前記締結部分に固定される係止ブロックを備えており、
前記エンドプレートは、前記締結部材で締結した状態で、前記係止ブロックを係止するための段差部を形成しており、
前記締結部分と前記係止ブロックとが溶接により固定されてなる電源装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電源装置であって、
前記係止ブロックが、前記第一金属で構成されてなる電源装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電源装置を備える電動車両であって、
前記電源装置と、
該電源装置から電力供給される走行用のモータと、
前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、
前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備えることを特徴とする電動車両。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、
該電源装置への充放電を制御する電源コントローラとを備え、
前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記二次電池セルへの充電を可能とすると共に、該二次電池セルに対し充電を行うよう制御することを特徴とする蓄電装置。
【請求項9】
外装缶を角型とした複数の二次電池セルを積層した電池積層体の両側端面を覆う一対のエンドプレート同士を締結するための電源装置用締結部材であって、
長手方向の両端でそれぞれ前記エンドプレートと固定される、第一金属で構成された締結部分と、
前記締結部分同士の間を連結する、前記第一金属と異なる第二金属で構成された中間部分とを有し、
前記第一金属は、前記第二金属よりも強度が高く、
前記第二金属は、前記第一金属よりも延伸性が高く構成されてなる電源装置用締結部材。
【請求項10】
外装缶を角型とした複数の二次電池セルを積層した電池積層体の両側端面を覆う一対のエンドプレート同士を締結するための電源装置用締結部材の製造方法であって、
長手方向の両端でそれぞれ前記エンドプレートと固定される、第一金属で構成された締結部分と、
前記締結部分同士の間を連結する、前記第一金属と異なる第二金属で構成された中間部分とであって、
前記第一金属が前記第二金属よりも強度が高く、前記第二金属が前記第一金属よりも延伸性が高く構成された前記締結部分と前記中間部分とを準備する工程と、
前記締結部分と前記中間部分とを摩擦攪拌接合により接合する工程と、を含む電源装置用締結部材の製造方法。
【請求項11】
外装缶を角型とした複数の二次電池セルと、
前記複数の二次電池セルを積層した電池積層体の両側端面を覆う一対のエンドプレートと、
前記複数の二次電池セルの積層方向に沿って延長された板状で、前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する金属製の複数の締結部材と、を備える電源装置の製造方法であって、
長手方向の両端でそれぞれ前記エンドプレートと固定される、第一金属で構成された締結部分と、
前記締結部分同士の間を連結する、前記第一金属と異なる第二金属で構成された中間部分とであって、
前記第一金属が前記第二金属よりも強度が高く、前記第二金属が前記第一金属よりも延伸性が高く構成された前記締結部分と前記中間部分とを摩擦攪拌接合により接合する工程と、
前記電池積層体の両側端面を一対の前記エンドプレートで覆い、該エンドプレート同士を電源装置用締結部材で締結する工程と、を含む電源装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置、電源装置用締結部材、電源装置の製造方法、電源装置用締結部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置は、電動車両の駆動用の電源装置や蓄電用の電源装置等に利用されている。このような電源装置は、充放電可能な複数の二次電池セルを複数枚積層している。一般的には、図8の斜視図に示すように、電源装置900は角型の外装缶の二次電池セル901を積層した電池積層体の両側の端面にそれぞれエンドプレート903を配置し、エンドプレート903同士を金属製のバインドバー904で締結している。
【0003】
二次電池セルは、充放電を繰り返すと外装缶が膨張、収縮する。特に近年の高容量化の要求に伴い、二次電池セル一枚あたりの高容量化が進んでおり、この結果、膨張量も大きくなる傾向にある。このような二次電池セルを多数枚、積層して締結している電池積層体においては、膨張時に強い負荷が印加される。この結果、バインドバーとエンドプレートとの接合部分に強い剪断応力が働き、破断することが考えられる。このため、バインドバーの強度を高めることが求められる。
【0004】
しかしながら、金属材料は一般に強度を高めると、延伸性が低下する。二次電池セルが膨張すると、バインドバーが伸びる方向に負荷がかかるところ、延伸性が低下すると却って膨張に対する耐性が低下するという、相反する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-120808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の一は、複数枚の二次電池セルを積層した電池積層体の締結を、強度を高めつつも延伸性も確保した電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置、電源装置用締結部材、電源装置の製造方法、電源装置用締結部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある側面に係る電源装置は、外装缶を角型とした複数の二次電池セルと、前記複数の二次電池セルを積層した電池積層体の両側端面を覆う一対のエンドプレートと、前記複数の二次電池セルの積層方向に沿って延長された板状で、前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する金属製の複数の締結部材とを備える電源装置であって、前記複数の締結部材の各々は、長手方向の両端でそれぞれ前記エンドプレートと固定される、第一金属で構成された締結部分と、前記締結部分同士の間を連結する、前記第一金属と異なる第二金属で構成された中間部分とを有し、前記第一金属は、前記第二金属よりも強度が高く、前記第二金属は、前記第一金属よりも延伸性が高く構成されている。
【0008】
本発明のある側面に係る電動車両は、上記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備える。
【0009】
本発明のある側面に係る蓄電装置は、上記電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラと備えて、前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記二次電池セルへの充電を可能とすると共に、該二次電池セルに対し充電を行うよう制御される。
【0010】
本発明のある側面に係る電源装置用締結部材は、外装缶を角型とした複数の二次電池セルを積層した電池積層体の両側端面を覆う一対のエンドプレート同士を締結するための電源装置用締結部材であって、長手方向の両端でそれぞれ前記エンドプレートと固定される、第一金属で構成された締結部分と、前記締結部分同士の間を連結する、前記第一金属と異なる第二金属で構成された中間部分とを有し、前記第一金属は、前記第二金属よりも強度が高く、前記第二金属は、前記第一金属よりも延伸性が高くなるように構成される。
【0011】
本発明のある側面に係る電源装置用締結部材の製造方法は、外装缶を角型とした複数の二次電池セルを積層した電池積層体の両側端面を覆う一対のエンドプレート同士を締結するための電源装置用締結部材の製造方法であって、長手方向の両端でそれぞれ前記エンドプレートと固定される、第一金属で構成された締結部分と、前記締結部分同士の間を連結する、前記第一金属と異なる第二金属で構成された中間部分とであって、前記第一金属が前記第二金属よりも強度が高く、前記第二金属が前記第一金属よりも延伸性が高く構成された前記締結部分と前記中間部分とを準備する工程と、前記締結部分と前記中間部分とを摩擦攪拌接合により接合する工程とを含む。
【0012】
本発明のある側面に係る電源装置の製造方法は、外装缶を角型とした複数の二次電池セルと、前記複数の二次電池セルを積層した電池積層体の両側端面を覆う一対のエンドプレートと、前記複数の二次電池セルの積層方向に沿って延長された板状で、前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する金属製の複数の締結部材とを備える電源装置の製造方法であって、長手方向の両端でそれぞれ前記エンドプレートと固定される、第一金属で構成された締結部分と、前記締結部分同士の間を連結する、前記第一金属と異なる第二金属で構成された中間部分とであって、前記第一金属が前記第二金属よりも強度が高く、前記第二金属が前記第一金属よりも延伸性が高く構成された前記締結部分と前記中間部分とを摩擦攪拌接合により接合する工程と、前記電池積層体の両側端面を一対の前記エンドプレートで覆い、該エンドプレート同士を電源装置用締結部材で締結する工程とを含む。
【発明の効果】
【0013】
上記構成により、電池積層体を締結する締結部材の締結部分の強度を高めることで二次電池セルの膨張に対する耐性を高めつつ、中間部分の延伸性を高めて、強度と延伸性という相反する特性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係る電源装置を示す斜視図である。
図2図1の電源装置の分解斜視図である。
図3図1の電源装置のIII-III線における水平断面図である。
図4図2の締結部材を示す斜視図である。
図5図4の締結部材を背面から見た斜視図である。
図6図5の締結部材の分解斜視図である。
図7】締結部材を製造する工程を示す模式図である。
図8】従来の電源装置を示す分解斜視図である。
図9】本出願人が先に開発した電源装置を示す分解斜視図である。
図10】従来の電源装置の締結部材の曲げ加工部を示す拡大断面図である。
図11図4のXI-XI線における水平拡大端面図である。
図12】実施形態2に係る締結部材の水平拡大端面図である。
図13】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図14】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図15】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のある態様の電源装置は、上述の構成に加えて、以下のように構成してもよい。
本発明の一実施形態に係る電源装置は、外装缶を角型とした複数の二次電池セルと、前記複数の二次電池セルを積層した電池積層体の両側端面を覆う一対のエンドプレートと、前記複数の二次電池セルの積層方向に沿って延長された板状で、前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する金属製の複数の締結部材とを備える電源装置であって、前記複数の締結部材の各々は、長手方向の両端でそれぞれ前記エンドプレートと固定される、第一金属で構成された締結部分と、前記締結部分同士の間を連結する、前記第一金属と異なる第二金属で構成された中間部分とを有し、前記第一金属は、前記第二金属よりも強度が高く、前記第二金属は、前記第一金属よりも延伸性が高く構成されている。
【0016】
また、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記締結部材が、前記締結部分と前記中間部分との接合界面を摩擦攪拌接合により接合している。上記構成により、異種金属接合可能な摩擦攪拌接合を用いて、部材の融解を伴わずに接合でき、接合部の熱影響を抑制できる。また金属間化合物が生成され難く、高い強度を発揮させることが可能となる。
【0017】
さらに、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記第一金属を鉄系の金属で構成し、前記第二金属をアルミニウム系の金属で構成している。上記構成により、第一金属を鉄系の金属とすることで締結部分の強度を高めつつ、第二金属をアルミニウム系の金属とすることで中間部分の延伸性を高めることができる。また、第二金属で構成される中間部分をアルミニウム系の金属とすることで、締結部材全体の軽量化を図ることができる。
【0018】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記締結部分と前記中間部分とを同じ厚さとしている。上記構成により、金属製の締結部材全体の厚さを均一にして、締結部材の内側面と外側面の両方を同一平面状に形成できる。これにより、電池積層体の側面を平面で覆いつつ、締結部材を段差のない外観にできる。
【0019】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記締結部材が、さらに、前記締結部分に固定される係止ブロックを備えており、前記エンドプレートが、前記締結部材で締結した状態で、前記係止ブロックを係止するための段差部を形成しており、前記締結部分と前記係止ブロックとを溶接により固定している。上記構成により、第二金属よりも強度の高い第一金属からなる締結部分に係止ブロックを溶接することにより十分な溶接強度を発揮させつつ、第一金属よりも延伸性の高い第二金属からなる中間部分で延伸性を確保して二次電池セルの膨張に対する変形に対応でき、強度と延伸性を両立させることが可能となる。
【0020】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記係止ブロックを、前記第一金属で構成している。上記構成により、係止ブロックの強度を高めて、エンドプレートとの連結部分の強度を高めることができる。また、締結部分と係止ブロックとを同一金属とすることで優れた溶接強度を実現できる。
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0022】
実施形態に係る電源装置は、ハイブリッド車や電気自動車などの電動車両に搭載されて走行用モータに電力を供給する電源、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの発電電力を蓄電する電源、あるいは深夜電力を蓄電する電源など、種々の用途に使用され、とくに大電力、大電流の用途に好適な電源として使用される。以下の例では、電動車両の駆動用の電源装置に適用した実施形態について、説明する。
【0023】
[実施形態1]
本発明の実施形態1に係る電源装置100の斜視図を図1に、その分解斜視図を図2に、図1の電源装置100のIII-III線における水平断面図を図3に、図2の締結部材15を示す斜視図を図4に、図4の締結部材15を背面から見た斜視図を図5に、図5の締結部材15の分解斜視図を図6に、それぞれ示す。これらの図に示す電源装置100は、複数の二次電池セル1を積層した電池積層体10と、この電池積層体10の両側端面を覆う一対のエンドプレート20と、エンドプレート20同士を締結する複数の締結部材15とを備える。
【0024】
電池積層体10は、正負の電極端子2を備える複数の二次電池セル1と、これら複数の二次電池セル1の電極端子2に接続されて、複数の二次電池セル1を並列かつ直列に接続するバスバー(図示せず)を備える。これらのバスバーを介して複数の二次電池セル1を並列や直列に接続している。二次電池セル1は、充放電可能な二次電池である。電源装置100は、複数の二次電池セル1が並列に接続されて並列電池グループを構成すると共に、複数の並列電池グループが直列に接続されて、多数の二次電池セル1が並列かつ直列に接続される。図1図3に示す電源装置100は、複数の二次電池セル1を積層して電池積層体10を形成している。また電池積層体10の両端面には一対のエンドプレート20が配置される。このエンドプレート20同士に、締結部材15の端部を固定して、積層状態の二次電池セル1を加圧状態に固定する。
【0025】
(二次電池セル1)
二次電池セル1は、幅広面である主面の外形を四角形とする角形電池であって、幅よりも厚さを薄くしている。さらに、二次電池セル1は、充放電できる二次電池であって、リチウムイオン二次電池としている。ただ、本発明は、二次電池セルを角形電池には特定せず、またリチウムイオン二次電池にも特定しない。二次電池セルには、充電できる全ての電池、たとえばリチウムイオン二次電池以外の非水系電解液二次電池やニッケル水素二次電池セルなども使用できる。
【0026】
二次電池セル1は、図2に示すように、正負の電極板を積層した電極体を外装缶1aに収納して、電解液を充填して気密に密閉している。外装缶1aは、底を閉塞する四角い筒状に成形しており、この上方の開口部を金属板の封口板1bで気密に閉塞している。外装缶1aは、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板を深絞り加工して製作される。封口板1bは、外装缶1aと同じように、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板で製作される。封口板1bは、外装缶1aの開口部に挿入され、封口板1bの外周と外装缶1aの内周との境界にレーザ光を照射して、封口板1bを外装缶1aにレーザ溶接して気密に固定している。
【0027】
(電極端子2)
二次電池セル1は、天面である封口板1bを端子面1Xとして、この端子面1Xの両端部に正負の電極端子2を固定している。電極端子2は、突出部を円柱状としている。ただ、突出部は、必ずしも円柱状とする必要はなく、多角柱状又は楕円柱状とすることもできる。
【0028】
二次電池セル1の封口板1bに固定される正負の電極端子2の位置は、正極と負極が左右対称となる位置としている。これにより、二次電池セル1を左右反転させて積層し、隣接して接近する正極と負極の電極端子2をバスバーで接続することで、隣接する二次電池セル1同士を直列に接続できるようにしている。
【0029】
(電池積層体10)
複数の二次電池セル1は、各二次電池セル1の厚さ方向が積層方向となるように積層されて電池積層体10を構成している。電池積層体10は、正負の電極端子2を設けている端子面1X、図2においては封口板1bが同一平面となるように、複数の二次電池セル1を積層している。
【0030】
電池積層体10は、隣接して積層される二次電池セル1同士の間に、絶縁スペーサ16を介在させてもよい。絶縁スペーサ16は、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状又はシート状に製作されている。絶縁スペーサ16は、二次電池セル1の対向面とほぼ等しい大きさのプレート状とする。この絶縁スペーサ16を互いに隣接する二次電池セル1の間に積層して、隣接する二次電池セル1同士を絶縁できる。なお、隣接する二次電池セル1間に配置されるスペーサとしては、二次電池セル1とスペーサの間に冷却気体の流路が形成される形状のスペーサを用いることもできる。また、二次電池セル1の表面を絶縁材で被覆することもできる。例えばPET樹脂等のシュリンクチューブで二次電池セルの電極部分を除く外装缶の表面を熱溶着させてもよい。この場合は、絶縁スペーサを省略してもよい。また、複数の二次電池セルを多並列、多直列に接続する電源装置においては、互いに直列に接続される二次電池セル同士の間に絶縁スペーサを介在させて絶縁する一方、互いに並列に接続される二次電池セル同士においては、隣接する外装缶同士に電圧差が生じないので、これらの二次電池セルの間の絶縁スペーサを省略することもできる。
【0031】
さらに、図2に示す電源装置100は、電池積層体10の両端面にエンドプレート20を配置している。なおエンドプレート20と電池積層体10の間に端面スペーサ17を介在させて、これらを絶縁してもよい。端面スペーサ17も、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状又はシート状に製作できる。
【0032】
電池積層体10は、隣接する二次電池セル1の正負の電極端子2に金属製のバスバーが接続されて、このバスバーを介して複数の二次電池セル1が並列かつ直列に接続される。電池積層体10は、互いに並列に接続されて並列電池グループを構成する複数の二次電池セル1においては、端子面1Xの両端部に設けた正負の電極端子2が左右同じ向きとなるように積層され、互いに直列に接続される並列電池グループを構成する二次電池セル1同士においては、端子面1Xの両端部に設けた正負の電極端子2が左右逆向きとなるように複数の二次電池セル1が積層されている。ただ、本発明は、電池積層体を構成する二次電池セルの個数とその接続状態を特定しない。後述する他の実施形態も含めて、電池積層体を構成する二次電池セルの個数、及びその接続状態を種々に変更することもできる。
【0033】
実施形態に係る電源装置100は、複数の二次電池セル1が互いに積層される電池積層体10において、互いに隣接する複数の二次電池セル1の電極端子2同士をバスバーで接続して、複数の二次電池セル1を並列かつ直列に接続する。また、電池積層体10とバスバーとの間にバスバーホルダを配置してもよい。バスバーホルダを用いることで、複数のバスバーを互いに絶縁し、かつ二次電池セルの端子面とバスバーとを絶縁しながら、複数のバスバーを電池積層体の上面の定位置に配置できる。
【0034】
(バスバー)
バスバーは、金属板を裁断、加工して所定の形状に製造される。バスバーを構成する金属板には、電気抵抗が小さく、軽量である金属、例えばアルミニウム板や銅板、あるいはこれらの合金が使用できる。ただ、バスバーの金属板は、電気抵抗が小さくて軽量である他の金属やこれらの合金も使用できる。
【0035】
(エンドプレート20)
エンドプレート20は、図1図3に示すように、電池積層体10の両端に配置されると共に、電池積層体10の両側面に沿って配置される左右一対の締結部材15を介して締結される。エンドプレート20は、電池積層体10の二次電池セル1の積層方向における両端であって、端面スペーサ17の外側に配置されて電池積層体10を両端から挟着している。
【0036】
(段差部20b)
エンドプレート20は、締結部材15で締結した状態で、締結部材15に設けた係止ブロック15bを係止するための段差部20bを形成している。段差部20bは、後述する締結部材15の係止ブロック15bを係止できる大きさと形状に形成される。図2の例では、エンドプレート20を水平断面視T字状となるように、鍔状の段差部20bが形成されている。また段差部20bの近傍に、エンドプレートねじ穴20cを開口している。
【0037】
(締結部材15)
締結部材15は、両端を電池積層体10の両端面に配置されたエンドプレート20に固定される。複数の締結部材15でもってエンドプレート20を固定し、もって電池積層体10を積層方向に締結している。各締結部材15は、図4図5図6等に示すように、電池積層体10の側面に沿う所定の幅と所定の厚さを有する金属板で、電池積層体10の両側面に対向して配置されている。
【0038】
締結部材15は、長手方向の両端でそれぞれエンドプレート20と固定される締結部分15cと、締結部分15c同士の間を連結する中間部分15aとを備えている。締結部分15cは第一金属で構成されており、中間部分15aは、第一金属と異なる第二金属で構成されている。異種金属である第一金属と第二金属には、それぞれ締結部分15cと中間部分15に要求される特性を有する金属が選定され、これにより締結部材15に求められる強度と延伸性を実現している。
【0039】
本実施形態においては、締結部分15cを構成する第一金属は、中間部分15aを構成する第二金属よりも強度を高くし、中間部分15aを構成する第二金属は、締結部分15cを構成する第一金属よりも延伸性を高くしている。このような異種金属を選定することによって、締結部分15cに強度を、中間部分15aに延伸性をそれぞれ持たせている。これにより、締結部材15は、締結部分15の強度を高めて電池積層体10の締結力を発揮させつつ、中間部分15aでは延伸性を高めて、二次電池セル1の膨張時に変形し易くすることで、強度と延伸性という相反する特性を両立させている。
【0040】
締結部材15は、締結部分15cを構成する第一金属として鉄系の金属を使用し、中間部分15aを構成する第二金属としてアルミニウム系の金属を使用することができる。第一金属には例えば鉄や鉄合金、SUS等を、第二金属には例えばアルミニウムやアルミニウム合金等をそれぞれ利用できる。鉄系金属で構成される締結部分15cは、アルミニウム系金属で構成される中間部分15bよりも優れた強度を実現して、エンドプレート20との連結部分における強度を高めることができる。また、アルミニウム系金属で構成される中間部分15bは、鉄系金属で構成される締結部分15cよりも優れた延伸性を実現して、二次電池セル1の膨張時に変形し易くして、電池積層体10の大きな反力に対する耐性を高めることができる。とくに、中間部分15bをアルミニウム系金属とすることで、締結部材全体の重量を軽くして軽量化を計ることもできる。
【0041】
(異種接合素材)
締結部材15は、異種金属からなる締結部分15cと中間部分15aとを異種接合素材で構成することが好ましい。異種接合素材とは、部分的に材質の異なる素材である。具体的には、材質の異なる複数の金属板(ブランク)を接合したものである。接合方法としては、摩擦攪拌接合、レーザ溶接やMIG溶接等の溶接、摩擦圧接や電磁圧接、超音波接合の圧接、レーザろう付やMIGろう付等のろう接などの種々の方法が採用できる。これにより、締結部分15cと中間部分15aとを異なる金属で構成することが可能となり、第一金属で構成された締結部分15cには強度の高い金属を、第二金属で構成された中間部分15aには延伸性の高い金属をそれぞれ使用して、従来困難であった強度と延伸性を両立させた締結部材15が得られる。以下、材質の異なる複数の金属板(ブランク)を摩擦攪拌接合して締結部材15を形成する構成を例に説明する。
【0042】
(摩擦攪拌接合)
異種接合素材からなる締結部分15cと中間部分15aの接合界面は、好ましくは、摩擦攪拌接合で接合される。図7Aに示すように、締結部材は、材厚が一定の金属板(ブランク)、すなわち展開図の状態の締結部分15cと中間部分15aとを、図7Bに示すように付き合わせた状態で摩擦攪拌接合し、図7Cに示すように締結部材15を得ている。これらの摩擦攪拌接合においては、とくに、図7Bに示すように、連続する線状に接合することが好ましい。連続する線状に接合する構成は、複数の金属板の連結強度を高くできる特徴がある。接合は、具体的には、締結部分15cと中間部分15aとの接合界面に沿って行われる。この結果、図4の斜視図に示すように、締結部分15cと中間部分15aとの間には接合部15gが形成される。このような接合により、スポット溶接等に比べて高い信頼性でもって異種金属同士を接合できる。
【0043】
摩擦攪拌接合は、第一金属と第二金属の接合界面において、高速回転する工具を挿入するとともに、回転する工具を第一金属と第二金属の境界線に沿って移動させることにより、このときに発生する摩擦熱と回転による攪拌を利用して接合界面を消失させて接合する。この接合方法によると、接合中の最高温度を金属の溶融温度よりも低い温度にできるため、金属を溶融させることなく接合できる。このため、接合部分の熱影響を抑制できるとともに、金属間化合物が生成されるのを防止しながら、高い連結強度を実現できる。さらに、摩擦攪拌接合は、締結部分15cと中間部分15aとの接合界面に沿って行われるが、このように接合部15gを連続する線状とすることで、連結強度を高くできる。また、摩擦攪拌接合によると、接合部15gを目立たなくして綺麗な外観にできる特徴もある。
【0044】
ただ、異種接合素材からなる締結部分15cと中間部分15aは、摩擦攪拌接合以外の接合方法で接合することもできる。たとえば、締結部分15cと中間部分15aはレーザ溶接等の溶接により接合することもできる。
【0045】
異種接合素材からなる締結部分15cと中間部分15aは、好ましくは、同じ厚さとする。締結部分15cと中間部分15aの厚さを等しくする締結部材15は、たとえば、締結部材全体の厚さを均一にして、締結部材15の内側面と外側面の両方を同一平面状に形成として段差のない表面形状にできる。これにより、締結部材15を複数の部材で構成しつつも、電池積層体の側面を平面で覆うことが可能となり、かつ締結部材15の外観を綺麗にできる。
【0046】
ただ、締結部材は、異種接合素材からなる締結部分と中間部分とを異なる厚さとすることもできる。この締結部材は、締結部分に要求される強度と中間部分に要求される延伸性によって締結部分と中間部分の厚さを調整する。たとえば、強度に優れた第一金属で構成される締結部分を厚く形成することでさらに強度を高くしつつ、延伸性に優れた第二金属からなる中間部分を薄く形成することでさらに延伸性を高めることもできる。
【0047】
さらに、締結部材15は、図7Bに示すように、締結部分15cと中間部分15aとを摩擦攪拌接合等により接合した後、プレス工程において、所定の形状にプレス成型している。図7Cに示す締結部材15は、上下の端縁部を折曲加工して、折曲片15dを形成している。上下の折曲片15dは、電池積層体10の左右の両側面において、電池積層体10の上下面を隅部から覆う形状としている。
【0048】
(係止ブロック15b)
締結部材15の分解斜視図を図6に示す。この図に示す締結部材15は、中間部分15aと、締結部分15cと、ブロック状の係止ブロック15bを備える。中間部分15aは板状の部材で、その長手方向の両端に締結部分15cを接合している。係止ブロック15bは、締結部分15cの端縁部の内面に固定されている。係止ブロック15bは所定の厚さを有する板状で、締結部分15cの内側に突出する姿勢で固定されており、締結部材15をエンドプレート20に連結する状態では、エンドプレート20に設けた段差部20bに係止されて、締結部材15を電池積層体10の両側の定位置に配置する。係止ブロック15bは、スポット溶接やレーザ溶接等の溶接により締結部分15cに固定される。
【0049】
図に示す係止ブロック15bは、エンドプレート20を締結した状態で、エンドプレートねじ穴20cと一致するように、締結側貫通孔15bcを開口している。また締結部分15cは、締結側貫通孔15bcと対応する位置に、締結主面側貫通孔15acを開口している。締結側貫通孔15bcと締結主面側貫通孔15acは、係止ブロック15bを締結部分15cに固定した状態で合致するように設計される。
【0050】
係止ブロック15bの開口された締結側貫通孔15bcは、複数個を、係止ブロック15bの延長方向に沿うように開口させている。同様に締結主面側貫通孔15acも、複数個を締結部分15cの端縁、あるいは係止ブロック15bの延長方向に沿うように開口させている。これに応じてエンドプレートねじ穴20cも、エンドプレート20の側面に沿って複数個が形成されている。
【0051】
係止ブロック15bは、複数のボルト15fを介してエンドプレート20の外周面に固定している。なお、これら締結部材15と係止ブロック15b、エンドプレート20との固定は、必ずしもボルトを用いた螺合に限られず、ピンやリベット等としてもよい。
【0052】
係止ブロック15bは、鉄、鉄合金、SUS、アルミニウム、アルミニウム合金等が利用できる。係止ブロック15bは、好ましくは、第一金属を使用し、締結部分15cと同じ金属製とする。これによって、係止ブロック15bと締結部分15cとの溶接を容易に行いつつ、連結強度を高めることができる。また、係止ブロック15bは、電池積層方向の横幅を10mm以上とすることができる。
【0053】
このように、締結部材15を、長手方向の左右端部、すなわち電池積層体10の積層層方向の両端部において折曲して、エンドプレート20の主面側から螺合するのでなく、図1図3に示すように締結部材15を、電池積層体10の積層方向においては平板状として折曲部を設けることなく、エンドプレート20の段差部20bと係止ブロック15bとによる係止構造と螺合とによって、電池積層体10を締結することで、強度を高め、二次電池セル1の膨張による破断等のおそれを緩和できる。
【0054】
多数の二次電池セル1を積層している電源装置は、複数の二次電池セル1からなる電池積層体10の両端に配置されるエンドプレート20を締結部材15で連結することで、複数の二次電池セル1を拘束するように構成されている。複数の二次電池セル1を、高い強度をもつエンドプレート20や締結部材15を介して拘束することで、充放電や劣化に伴う二次電池セル1の膨張、変形、相対移動、振動による誤動作などを抑制できる。
【0055】
一方、電池積層体の両端をエンドプレートで固定する従来の電源装置では、締結部材を構成するバインドバーの端部を内側に折曲したL字状部分を、エンドプレートの外側面に固定している。例えば図8の分解斜視図に示す電源装置900は、角形の二次電池セル901をスペーサ902を介して多数積層して、端面にエンドプレート903を配置し、バインドバー904で締結している。スペーサ902は、硬質の樹脂等で構成されている。この図に示すようにバインドバー904の両端縁を折り曲げてL字状とし、このL字状部分904bをボルト906でエンドプレート903の主面側に固定する構成となっていた。
【0056】
このような構造では、金属板のバインドバー904の端部をL字状に折曲加工してL字状部分として、このL字状部分をエンドプレート903の外側表面に固定するので、L字状部分はバインドバー904と同じ厚さの金属板となる。バインドバー904は、二次電池セル901の膨張力によって発生する引張力に耐える引張強度の金属板が使用される。金属板の引張強度は曲げ強度に比較して相当に強く、バインドバー904には例えば1mm~2mm程度の金属板が使用される。エンドプレート903の外側表面に固定されるL字状部分は、バインドバー904の引張力によって曲げ応力が作用するが、エンドプレート903に使用される金属板の曲げ応力は引張応力に比較して相当に弱く、L字状部分に作用する曲げ応力によってL字状部分の曲げ加工部が耐力、破断強度を超えて変形、破壊する。L字状部分の曲げ加工部とエンドプレート903との間に隙間がないと、曲げ加工部の内側面がエンドプレート903の隅部に接触し、組み立てができない。
【0057】
このように、バインドバーに印加される引張力の増加は、バインドバーの曲げ加工部内側とエンドプレート隅部には、さらに局部的に強大な応力が集中して、バインドバーやエンドプレートを変形し、また損傷する原因となる。そこで本出願人は、図9に示す電源装置800を開発した。この電源装置800は、複数の二次電池セル801を積層してなる電池積層体810と、電池積層体810の積層方向の両端部に配置してなる一対のエンドプレート820と、両端部を一対のエンドプレート820に連結する締結部材815とを備えている。締結部材815は、電池積層体810の積層方向に延長された締結主面815aと、この締結主面815aに設けられて、エンドプレート820の外周面との対向面に向かって突出する係止ブロック815bを有する。係止ブロック815bは、締結主面815aに設けてなる固定穴815gに挿入される状態で、固定穴815gの内周面に固定されている。エンドプレート820は、係止ブロック815bが案内される嵌合部820cを外周面に有し、嵌合部820cの電池積層体810側には、係止ブロック815bと係合されるストッパ部820cとして突起状の段差部を設けている。電源装置800は、係止ブロック815bが嵌合部820cに案内され、かつ係止ブロック815bがエンドプレート820の外周面に固定されている。
【0058】
この構造の電源装置は、係止ブロックを嵌合部に案内してストッパ部で位置ずれを阻止し、さらに係止ブロックをエンドプレートに固定するので、従来の締結部材のL字状部分のように曲げ応力で変形することなく、係止ブロックとストッパ部とで締結部材を変形させることなくエンドプレートに固定できる。とくに、係止ブロックをエンドプレートの嵌合部に案内してストッパ部で位置ずれを阻止するので、締結部材に作用する強い引張力による締結部材とエンドプレートの変形を防止して、エンドプレートの移動を抑制できる。
【0059】
締結部材は、二次電池セルの膨化力の反作用として強い引張力が作用するが、従来の電源装置900においては、締結部材を構成するバインドバー904の引張力が曲げ加工部において曲げ応力として作用して変形した。曲げ応力でバインドバー904が変形すると、曲げ加工部であるL字状部分904bは、図10において、その内側面をエンドプレート903のコーナー部903aに密着させてバインドバー904は実質的に伸びた状態となる。この状態になると、材料の耐力、強度を超えて、破断する可能性がある。
【0060】
これに対して、図9の構造の電源装置では、締結部材815に設けた係止ブロック815bをエンドプレート820の嵌合部820cに案内し、さらに、ここに案内された係止ブロック815bの位置ずれをストッパ部820bで阻止する。この構造でエンドプレート820に固定される締結部材815は、係止ブロック815bとエンドプレート820との間に隙間があっても、従来のようにL字状部分の曲げ応力として支持することなく、係止ブロック815bを嵌合部820cに案内してストッパ部820bで定位置に配置する構造によって締結部材815の剪断応力として支持する。締結部材815は、剪断応力に対する強度が引張力より相当に強く、締結部材815に働く強い引張力で変形することなく、エンドプレート820の移動を抑制する。
【0061】
一方において、締結主面と係止ブロックで構成される締結部材では、締結主面と係止ブロックとを固定する必要がある。一般に、金属部材で構成される締結主面と係止ブロックとは、レーザ光のスポット溶接により溶接して固定されることが多い。この場合において、金属部材にスポット溶接を行うにはある程度の厚さが必要となる。ここで、締結主面の金属板を厚くすると、強度が高くなる結果、延伸性が低下する。締結部材には、二次電池セルの膨張時の変形に追随できることが求められるところ、金属板は一般に弾性が低く、しかも厚くするほど強度が高まり変形し難くなる。かといって、締結主面を薄く形成すると、今度は係止ブロックとのスポット溶接の強度が低下してしまい、締結強度の信頼性が低下する。このように、締結部材に求められる強度と延伸性の要求が相反しているため、その両立が困難となっていた。
【0062】
そこで、本実施形態においては、締結部材15を部分的に異なる金属で構成することで、強度と延伸性を両立させることに成功したものである。具体的には、上述の通り締結部材15を締結部分15cと中間部分15aとに分割し、締結部分15cを強度に優れた金属として係止ブロック15bとの連結強度を高めている。また、係止ブロックを溶着するために締結部分15cを十分な厚さの金属板としつつ、中間部分15aの延伸性を高くするために、中間部分15aには、延伸性の高い金属板を使用している。具体的には、締結部分15cを第一金属で、中間部分15aを、第一金属と異なる第二金属で、それぞれ構成するとともに、第一金属は第二金属よりも強度を高く、第二金属は第一金属よりも延伸性を高くすることによって、締結部分15cを十分な厚さの金属板として係止ブロックを確実に溶着できる構造としながら、中間部分の延伸性を高くしている。とくに、締結部分15cと中間部分15aの厚さをほぼ等しくしながら、以上の特性を実現している。この結果、締結部分15cにおいてはスポット溶接に十分な厚さと強度を確保でき、係止ブロック15bとの接合強度を発揮させることができる。一方で中間部分15aには、延伸性に優れた金属を使用することで、二次電池セル1の膨張時に中間部分15aを変形させて追従性を確保している。
【0063】
締結部材15の厚さは、図11の水平端面図に示すように、中間部分15aの厚さt1と締結部分15cの厚さt2とをほぼ等しくしている。また、締結部材15の両側面において、締結部分15cと中間部分15aの界面を同一平面状としている。一方で係止ブロック15bを固定した締結部材15の厚さt3の部分では、締結部材15の外側は同一平面としつつ、内側に係止ブロック15bを突出させている。これによってエンドプレート20の段差部20bに係止ブロック15bを係止させて剪断応力に対する耐性を高めつつ、締結部分15cが肉厚になっても電池積層体10側への影響が生じないようにしている。
【0064】
係止ブロック15bを締結部材15にスポット溶接する位置、すなわち係止ブロック15bを締結部材15に固定する固定領域15hは、締結側貫通孔15bc同士の間とする。また、固定領域15hを、二次電池セル1の積層方向における内側、すなわち中間部分15aに近付く方向にオフセットさせてもよい。このように固定領域15hを、締結側貫通孔15bcよりも、エンドプレート20から離れる方向に配置することで、係止ブロック15bに開口された締結側貫通孔15bcと固定領域15hとの距離を大きくして、応力の集中を緩和できる。また、ねじ穴である締結主面側貫通孔15ac同士の中心を結ぶ第一直線L1上でなく、これとずらした第二直線L2上に固定領域15hを位置させることで、スポット溶接のための面積を広く確保することが可能となる。締結主面側貫通孔15acは円形のため、オフセットさせることで広い面積を確保しやすくなり、スポット溶接の面積を大きくできる結果、溶接の接合強度も高められる。
【0065】
固定領域15hを第一直線L1からオフセットさせる方向は、締結部材15の両端縁から離れる方向であって、エンドプレート20に設けた段差部20bに接近する方向とすることが好ましい。図6に示す分解斜視図の例では、複数の固定領域15hを、電池積層体10の中央方向へオフセットさせている。このようにすることで、二次電池セル1の膨張時の応力を各固定領域15hで受けることが可能となり、もって印加される応力の分散に寄与して締結部材15の強度を向上させる一助とできる。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る電源装置100によれば、二次電池セル1の膨張によって生じる電池積層方向に拡がろうとする応力が、締結部分15cそのものに加えて、段差部20bと係止ブロック15bによる係合、締結部分15cと係止ブロック15bの溶接、ボルト15fによる螺合の各部材に印加されることになる。よってこれら各部材の強度を高めて応力を適度に分散させることで、全体としての強度を高めて二次電池セル1の膨張、収縮に対応可能な電源装置100を実現できる。
【0067】
[実施形態2]
以上の例では、係止ブロックをスポット溶接で接合する例を説明したが、本発明はこの構成に限らず、係止ブロックを有する締結部材を差厚素材で成形してもよい。このような例を実施形態2として、図12の水平端面図に示す。この図に示す締結部材15’は、たとえば、中間部分15aと締結部分15c’とを異種接合素材として、中間部分15aの端面と締結部分15c’一方の端面とを摩擦攪拌接合により接合しつつ、締結部分15c’と係止ブロック15b’とを同一金属からなる差厚素材として、締結部分15c’の他方の端面に、さらに係止ブロック15b’をレーザ溶接等により接合している。この係止ブロック15b’は、予め締結部分15c’よりも厚く形成され、言い換えると、締結部分15c’の内面からの突出量がエンドプレート20の段差部20bに係止される突出量となるように形成される。また、締結部分15c’は、係止ブロック15b’の幅の分だけ図11の例と比べて幅狭に形成される。この方法であれば、溶接で中間部分15aと締結部分15c’と係止ブロック15b’とを同時に接合できるので、製造工程を簡略化できる利点が得られる。
【0068】
以上の電源装置は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源として利用できる。電源装置を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、車両を駆動する電力を得るために、上述した電源装置を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置100を構築した例として説明する。
【0069】
(ハイブリッド車用電源装置)
図13は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。なお、車両HVは、図13に示すように、電源装置100を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電源装置100を充電できる。
【0070】
(電気自動車用電源装置)
また、図14は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電源装置100を充電できる。
【0071】
(蓄電装置用の電源装置)
さらに、本発明は、電源装置の用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電源装置は、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。図15は、電源装置100の電池を太陽電池82で充電して蓄電する蓄電装置を示す。
【0072】
図15に示す蓄電装置は、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で電源装置100の電池を充電する。この蓄電装置は、太陽電池82を充電用電源として充電回路83で電源装置100の電池を充電した後、DC/ACインバータ85を介して負荷86に電力を供給する。このため、この蓄電装置は、充電モードと放電モードを備えている。図に示す蓄電装置は、DC/ACインバータ85と充電回路83を、それぞれ放電スイッチ87と充電スイッチ84を介して電源装置100と接続している。放電スイッチ87と充電スイッチ84のON/OFFは、蓄電装置の電源コントローラ88によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ88は充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をOFFに切り替えて、充電回路83から電源装置100への充電を許可する。また、充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で、電源コントローラ88は充電スイッチ84をOFFに、放電スイッチ87をONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷86への放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をONにして、負荷86への電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0073】
さらに、電源装置は、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電源装置は、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電源装置は、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電源装置は、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0074】
以上のような蓄電装置は、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置、電源装置用締結部材、電源装置の製造方法、電源装置用締結部材の製造方法は、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の電源として好適に利用できる。例えばEV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置が挙げられる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0076】
100…電源装置、1…電池セル、1X…端子面、1a…外装缶、1b…封口板、2…電極端子、10…電池積層体、15、15’…締結部材、15a…中間部分、15b、15b’…係止ブロック、15c、15c’…締結部分、15ac…締結主面側貫通孔、15bc…締結側貫通孔、15d…折曲片、15f…ボルト、15g…接合部、15h…固定領域、16…絶縁スペーサ、17…端面スペーサ、20…エンドプレート、20b…段差部、20c…エンドプレートねじ穴、81…建物、82…太陽電池、83…充電回路、84…充電スイッチ、85…DC/ACインバータ、86…負荷、87…放電スイッチ、88…電源コントローラ、91…車両本体、93…モータ、94…発電機、95…DC/ACインバータ、96…エンジン、97…車輪、98…充電プラグ、800…電源装置、801…二次電池セル、810…電池積層体、815…締結部材、815a…締結主面、815b…係止ブロック、815g…固定穴、820…エンドプレート、820b…ストッパ部、820c…嵌合部、900…電源装置、901…二次電池セル、902…スペーサ、903…エンドプレート、903a…コーナー部、904…バインドバー、904b…L字状部分、906…ボルト、L1…第一直線、L2…第二直線、HV、EV…車両。
図1
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図15