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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】シダミドの適用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4406 20060101AFI20240516BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240516BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240516BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
A61K31/4406
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021527821
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 CN2019119094
(87)【国際公開番号】W WO2020103778
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】201811385440.8
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521129554
【氏名又は名称】シェンチェン チップスクリーン バイオサイエンシズ カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルー、シエンビン
(72)【発明者】
【氏名】フアン、フイキャン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウェンユー
(72)【発明者】
【氏名】フー、シン
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/017858(WO,A1)
【文献】A Phase II Study ofChidamide Plus R-CHOP in Elderly Patients with Newly Diagnosed Diffuse LargeB-Cell Lymphoma: An Interim Analysis,blood,2017年,Volume 130, Supplement 1,Page 4126
【文献】A PRELIMINARY EFFICACYSTUDY OF CHIDAMIDE IN COMBINATION WITH DICE REGIMEN ON RELAPSED OR REFRACTORY BCELL LYMPHOMAS,Hematological Oncology,Volume35, IssueS2, Supplement,Pages 405
【文献】Chidamide, Oral Subtype-Selective Histone Deacetylase Inhibitor (HDACI) Monotherapy Was Effective on the Patients with Relapsed or Refractory Extranodal Natural Killer(NK)/T-Cell Lymphoma,blood,Volume 130, Supplement 1,Page 2797
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/327
A61K31/33-31/80
A61K33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シダミド(Chidamide)を唯一の医薬有効成分として含む、患者における再発性又は難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を治療するための医薬組成物であって、該患者が少なくとも2つの化学療法レジメンを以前に受けており、かつ第一選択の治療レジメンがアントラサイクリンの併用化学療法を含む、上記医薬組成物
【請求項2】
アントラサイクリンの化学療法がCHOPである、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
シダミド(Chidamide)を唯一の医薬有効成分として含む、CREBBP及び/又はEP300の変異を伴う再発性又は難治性濾胞性リンパ腫を治療するための医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月20日に中国特許庁に提出された、出願番号201811385440.8及び発明の名称「シダミドの使用」を有する中国特許出願の優先権を主張し、その内容全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、医薬の技術分野、特にシダミド(Chidamide)の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
B細胞リンパ腫には、主にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、辺縁帯B細胞リンパ腫(MZL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)などが含まれる。現在、シクロホスファミド(CTX)、アドリアマイシン(ADR)、ビンクリスチン(VCR)及びプレドニゾン(Pred)と組み合わせたリツキシマブ(R)のR-CHOPレジメンは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の標準的な第一選択治療レジメンとして使用され、良好な長期生存を達成している。現在の従来の免疫化学療法の下では、患者の1/3は依然として治療にも再発にも応答せず、従来の化学療法の組み合わせの変更又は標的薬の追加などの有効性の改善の余地がある。高リスクの高齢DLBCL患者は、R-CHOPに対する有効性が低く、CR率が約70%に過ぎず、長期生存率が低く、有効性を早急に改善する必要がある。
【0004】
同時に、再発性及び難治性患者の場合、化学療法が依然として救済療法の主要な手段である。第二選択治療に一般的に使用されるレジメンには、第一選択レジメンとの交差耐性がなく、造血への影響が少なく、Dice、ICE及びGEMOXレジメンなど、救済療法のための幹細胞のその後の採取に影響を及ぼさないレジメンが含まれるが、依然として疾患治療に改善がない患者がかなりの数存在する。文献報告によれば、再導入のためにDICEレジメンを受けた再発性又は難治性B細胞リンパ腫の患者について、全体的な効率は約50%~60%であり、疾患治療の改善を得ることができない患者がかなりの数存在したため、より効率的な救済レジメンの探求が現在、再発性又は難治性B細胞リンパ腫の患者に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これを考慮して、本発明の目的は、B細胞リンパ腫を治療するための医薬品の製造及び/又はB細胞リンパ腫の治療におけるシダミドの使用を提供することである。本発明を実施するための具体的な実施形態では、治療すべき具体的な疾患として、濾胞性リンパ腫(FL)、辺縁帯B細胞リンパ腫(MALT)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、小リンパ球性B細胞リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)などの複数の再発性又は難治性B細胞リンパ腫について臨床試験を行った。
【0006】
シダミド(Epidaza)は、中国で独自に研究開発されたサブタイプ選択的ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤であり、クラス1.1の新薬である。その第1の適応症である再発性又は難治性末梢T細胞リンパ腫(PTCL)に対する単剤療法のためのシダミドの使用は、2014年12月23日に国家食品薬品監督管理局(CFDA)によって承認され、したがって、シダミドは、市販のために承認されたこの適応症に対する世界で最初の経口サブタイプ選択的HDAC阻害剤である。シダミドは、主にHDACのクラスIのサブタイプ1、2及び3ならびにクラスIIbのサブタイプ10を標的とし、腫瘍の異常なエピジェネティック機能に対する調節効果を有する。シダミドは、関連するHDACサブタイプを阻害して、クロマチンヒストンのアセチル化レベルを増加させることによってクロマチンリモデリングを誘導し、したがって、複数のシグナル伝達経路の遺伝子発現の変化(すなわち、エピジェネティックな変化)をもたらし、それによって腫瘍細胞周期を阻害し、腫瘍細胞アポトーシスを誘導し、身体の細胞性免疫に対する全体的な調節活性を有し、ナチュラルキラー細胞(NK)及び抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)によって媒介される腫瘍死滅効果を誘導及び増強する。シダミドはまた、エピジェネティック調節機構を介して腫瘍幹細胞分化を誘導し、腫瘍細胞の上皮間葉表現型転換(EMT)を逆転させるなどの機能を有し、それにより、薬物に対する薬物耐性腫瘍細胞の感受性を回復させ、腫瘍転移及び再発を阻害することなどにおいて潜在的な役割を果たす。
【0007】
シダミドの第I相臨床試験の結果は、T細胞非ホジキンリンパ腫の単剤療法におけるシダミドの有効な寛解率が80%であったことを示したが、登録されたB細胞非ホジキンリンパ腫患者の3例について、1例はシダミドによる治療後に疾患の進行を示し、他の2例は治療効果のない安定した疾患を示したので、上記の結果は、シダミド単独がB細胞リンパ腫の治療において有効性を示さなかったことを示した。
【0008】
しかしながら、本発明では、シダミド単剤療法が、B細胞リンパ腫、特に再発性又は難治性リンパ腫、特にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、及び特定のエピジェネティック調節遺伝子変異を伴う再発性又は難治性濾胞性リンパ腫の治療に有効であることが予想外に見出された。したがって、好ましくは、B細胞リンパ腫は、特定のエピジェネティック調節遺伝子変異を伴う再発性又は難治性濾胞性リンパ腫及び/又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0009】
同時に、本発明は、シダミドを主な有効成分として使用し、互いに影響を及ぼさない他の有効成分及び/又は調製補助材料を添加した、B細胞リンパ腫を治療するための調製物も提供する。互いに影響を及ぼさない他の有効成分は、B細胞リンパ腫を治療するための有効成分であってもよく、又は他の疾患を治療するための有効成分であってもよく、又はこれら2つの組み合わせであってもよい。
【0010】
さらに、本発明はまた、有効量のシダミドを投与することを含む、B細胞リンパ腫を治療する方法を提供する。
【0011】
上記の技術的解決策から、本発明が、B細胞リンパ腫に対して治療効果のあるシダミドを投与する治療レジメンの使用を提案し、シダミドの単剤療法が、特定のエピジェネティック調節遺伝子変異を伴うびまん性大細胞型B細胞リンパ腫及び再発性又は難治性濾胞性リンパ腫の治療においてより顕著な効果を有し、その使用がB細胞リンパ腫患者をより効率的に治療することができることを臨床試験で検証することがわかる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、シダミドの使用を開示しており、当業者は、本明細書の内容から学ぶことができ、それを達成するためにプロセスパラメータを適切に改善することができる。全ての同様の置換及び修正は当業者には明らかであり、それらは全て本発明に含まれると見なされることを特に指摘すべきである。本発明の使用は好ましい例を通して説明されており、当業者は、本発明の技術を実施及び適用するために、本発明の内容、趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の使用に対して変更又は適切な改変及び組み合わせを明らかに行うことができる。
【0013】
以下は、本発明によって提供されるシダミドの使用のさらなる説明である。
【0014】
例1:再発性又は難治性B細胞リンパ腫の治療におけるシダミド単剤療法の第II相臨床試験
試験薬物:シダミド錠剤:オフホワイト錠、5mg/錠。シェンチェンチップスクリーンバイオサイエンス社製。
【0015】
投薬レジメン:1週間に2回、毎回30mg、2回の投与の間隔は3日未満であってはならない(例えば、月曜日と木曜日、火曜日と金曜日、水曜日と土曜日などである)。投与は朝食の30分後に行い、3週間ごとの治療サイクルとした。試験全体を通して、全ての被験体は、以下の状態、すなわち疾患の進行、忍容できない有害反応、死亡、治療からの離脱、インフォームドコンセントからの離脱又は追跡不能例のいずれか1つが出現するまで、試験中の治療を間断なく受けるべきである。
【0016】
症例数:サイモンの最適な2段階デザインを採用し、72人の患者を登録し、病理学的サブタイプには、濾胞性リンパ腫(FL)グレード1、グレード2又はグレード3、辺縁帯B細胞リンパ腫(MALT)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、小リンパ球性B細胞リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)が含まれた。
【0017】
登録基準:
1.WHO 2008の診断基準によって、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)グレードI、グレードII又はグレードIII、辺縁帯B細胞リンパ腫(MALT)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、小リンパ球性B細胞リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、形質転換リンパ腫(TL)を含むB細胞リンパ腫と組織病理学的に診断された患者、
2.細胞毒性薬レジメンに以前に感受性であった患者
(注:「感受性あり」の定義:疾患寛解、PR又はCRとして評価される有効性(確認済み又は未確認);寛解後6ヶ月で再発した疾患)、
3.少なくとも2つの化学療法レジメンを以前に受けたことがあるDLBCL、FLグレード3、MALT、LPL、SLLサブタイプの患者、
少なくとも3つの化学療法レジメンを以前に受けたことがあるFLグレード1又はグレード2の患者、
注:第一選択の治療レジメンは、CHOPなどのアントラサイクリンの併用化学療法を含むべきである;自己幹細胞移植支援を伴う高用量化学療法は、1つの治療レジメンと見なされた;新規治療として定義された治療の組み合わせ又は薬物については、CVPからCHOPへの変更は新規治療と見なされたが、同じ治療又は薬物治療が再び使用された場合は新規治療と見なされなかった、
4.少なくとも1つの測定可能な病変があり、その最長直径は1.5cmより大きくなければならず、又はその短直径は1.0cmより大きくなければならない、
5.年齢:18歳~75歳、
6.ECOGスコア:0~2、
7.予想生存期間:3ヶ月以上、
8.主な臓器機能は、処置前7日以内に以下の基準に従った。
(1)定期血液検査基準(14日間無輸血状態):
ヘモグロビン(HB):80g/L以上、
絶対好中球数(ANC):1.5×10/L以上、
血小板(PLT):60×10/L以上、
(2)生化学検査は、以下の基準を満たすべきである:
総ビリルビン(TBIL):正常値の上限(upper limit of normal value:ULN)の1.5倍以下、
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼAST:2.5×ULN以下、肝転移を伴う場合、ALT及びAST:5×ULN以下、
血清クレアチニン(CR)1.5×ULN以下、又はクレアチニンクリアランス速度(CCR):60ml/分以上、
9.心臓ドップラー超音波評価:左心室駆出率(LVEF):正常値の下限(50%)以上、
10.試験中及び試験下の治療終了後4週間、信頼できる避妊手段を採用することに同意した妊娠可能年齢の男性及び女性、
11.この試験に自発的に参加し、インフォームドコンセントに署名した患者。
【0018】
治療レジメン:
患者に上記投与レジメンに従ってシダミドを経口投与し、所定の時間に必要に応じて安全性及び有効性の評価を行った。
【0019】
1.安全性評価
(1)定期血液検査を週に1回実施した。
(2)理学的検査を3週間に1回実施し、バイタルサイン及びECOGスコアを記録した。
(3)以下を含む血液生化学検査を3週間に1回実施した。
肝機能:アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、総ビリルビン(TBIL)、直接ビリルビン(DBIL)、グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、アルブミン(ALB)
腎機能:尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cr)
空腹時血中グルコース
電解質:カリウム、ナトリウム、塩素、カルシウム、マグネシウム
乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)
以下を含む他の安全性検査を6週間に1回実施した。
定期尿検査
12リード心電図(同時にQTCを計算する)
【0020】
2.有効性評価
有効性評価時間:有効性評価を6週間に1回実施した。
有効性評価手段:リンパ節及び臓器病変の評価を、ベースライン(頸胸/腹部骨盤の強調CT、PET/CT、核磁気共鳴、X線胸部フィルム、腹部超音波検査など)及び理学的検査法と同じイメージング法によって行った。
有効性評価基準:非ホジキンリンパ腫の有効性評価のための国際作業グループ基準(IWC)を参照することによって評価を実施した。
【0021】
治療後の追跡調査期間
全ての被験者を治療後に追跡調査し、追跡調査期間は治療終了時に開始し、最後の症例の被験者の試験下の治療が完了した後2年間継続した。
【0022】
治療後1年目は、3ヶ月に1回追跡調査を実施した。治療後2年目は、6ヶ月に1回追跡調査を実施した。
【0023】
臨床試験結果:10例が登録され、8例が評価され、ORRは37.5%であり、有用率は62.5%であった。
【0024】
結果は、シダミド単剤療法がB細胞リンパ腫の治療に有効であることを示した。
【0025】
例2:特定のエピジェネティック調節遺伝子変異を伴う再発性又は難治性濾胞性リンパ腫(FL)の治療におけるシダミド錠剤の多施設シングルアームオープン臨床試験
試験薬物:シダミド錠剤:オフホワイト錠、5mg/錠。シェンチェンチップスクリーンバイオサイエンス社製。
【0026】
投薬レジメン:1週間に2回、毎回30mg、2回の投与の間隔は3日未満であってはならない(例えば、月曜日と木曜日、火曜日と金曜日、水曜日と土曜日などである)。投与は朝食の30分後に行い、3週間ごとの治療サイクルとした。試験全体を通して、全ての被験体は、以下の状態、すなわち疾患の進行、忍容できない有害反応、死亡、治療からの離脱、インフォームドコンセントからの離脱又は追跡不能例のいずれか1つが出現するまで、試験中の治療を間断なく受けるべきである。
【0027】
症例数:第I相に登録された10症例を含む33人の患者がこの臨床試験に登録された。
【0028】
登録基準:
1.WHO 2008の診断基準によって、病理組織学的に濾胞性リンパ腫(FL)グレード1、グレード2又はグレード3aと診断された患者、
2.少なくとも1回の全身治療(リツキシマブ含有レジメン、造血幹細胞移植を含む)を受けたが、寛解を示さなかったか、又は寛解後に再発した患者、
3.以下の状態の少なくとも1つを有する:浸潤リンパ節領域:3以上、各3cm以上の直径、任意のリンパ節又は節外腫瘍:7cm以上、B症状の出現、脾機能亢進症、胸水又は腹水、血球減少症(白血球1.0×10/L未満、血小板100×10/L未満)、白血病、
4.第2世代シーケンシングによって確認されたCREBBP及び/又はEP300特異的遺伝子変異を有すること、
5.少なくとも1つの評価可能な病変を有すること、
6.年齢:18歳~75歳、男性又は女性、
7.ECOG物理スコア:0~1、
8.絶対好中球数:1.5×10/L以上、血小板:80×10/L以上、ヘモグロビン:90g/L以上、
9.予想生存期間:3ヶ月以上;
10.登録前の最初の4週間以内に放射線療法、化学療法、標的療法又は造血幹細胞移植などの治療を受けていない、
11.書面形式によるインフォームドコンセントへの自発的署名。
【0029】
研究ステップ:
この臨床試験は、スクリーニング期間、治療期間及び追跡調査期間を含んでいた。
【0030】
1.スクリーニング期間
インフォームドコンセントを得た後、患者を病歴収集、理学的検査、検査室検査、腫瘍評価によってスクリーニングし、スクリーニング期間中に最初の遺伝子検査試料を収集し、検出した(ベースライン試料)。
CREBBP及び/又はEP 300変異を有する適格患者が、スクリーニング後に試験に参加した。
【0031】
2.治療期間
患者にレジメンに従ってシダミドを経口投与し、所定の時間に以下の安全性及び有効性の追跡調査を実施した。
【0032】
(1)安全性の追跡調査
A.血液定期検査を週に1回実施した。
B.理学的検査を6週間に1回実施し、バイタルサイン及びECOGスコアを記録した。
C.以下を含む血液生化学検査を6週間に1回実施した。
肝機能:アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、総ビリルビン(TBIL)、直接ビリルビン(DBIL)、グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、アルブミン(ALB)
腎機能:尿素窒素(BUN)、クレアチニン(CR)
空腹時血中グルコース
電解質:カリウム、ナトリウム、塩素、カルシウム、マグネシウム
乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)
D.以下を含む他の安全性試験を6週間に1回実施した。
定期尿検査
12リード心電図(同時にQTCを計算する)
【0033】
(2)有効性の追跡
追跡間隔:有効性評価を6週間に1回実施し、治療終了時に有効性の追跡を実施した。
【0034】
有効性評価手段:イメージング法(CT又はPET/CT)、臨床検査、骨髄穿刺及び生検によりリンパ節及び臓器病変、皮膚病変の評価を実施した。患者に使用されるイメージング法は、全ての追跡ポイントで同じでなければならない。
【0035】
有効性評価基準:CTスキャンの場合は、非ホジキンリンパ腫の有効性評価のための1999年国際作業グループ基準(IWC)に従って評価を実施し、PET/CTスキャンの場合は、2007年国際共同プログラムの改訂ガイドライン基準(付録1)に従い評価した。
【0036】
遺伝子検出試料の収集:治療中の有効性評価が疾患進行(PD)を示した場合、第2の遺伝子検査試料の収集及び検出を実施した(PD試料)。PD期に患者から収集された高FDG取り込みを有する残存腫脹病変又は代謝部位をサンプリングし、再度生検に供した。
【0037】
3.追跡調査期間
全ての被験者を治療後に追跡調査し、追跡調査期間は処置終了時に開始し、被験者が腫瘍進行又は死亡を示すまで2年間継続した。電話による追跡調査が可能であった。
【0038】
治療後1年目は、3ヶ月に1回追跡調査を実施した。治療後2年目は、6ヶ月に1回追跡調査を実施した。
【0039】
有効性指標:
(1)主な有効性指標
完全寛解(CR)、完全寛解未確認(CRu)、及び部分寛解(PR)の症例及び割合を含む客観的寛解率(ORR)
(2)副次有効性指標
完全寛解(CR)、完全寛解未確認(CRu)、部分寛解(PR)、及び疾患安定(SD)の症例及び割合を含む疾患制御率(DCR)、
無増悪生存期間(PFS)、
全生存期間(OS)、
有効性と特異的変異との相関分析、
臨床試験結果:予備試験において、エピジェネティック変異B-NHLを伴う合計11名の患者が観察され、ORRは72.7%であり、CRは36.3%であった。
【0040】
結果は、シダミドが、特定のエピジェネティック調節遺伝子変異を伴う再発性又は難治性濾胞性リンパ腫(FL)の治療においてより良好な有効性を有することを示す。
【0041】
上記は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者にとっては、本発明の原理から逸脱することなく、いくつかの改良及び修正を行うことができ、これらの改良及び修正もまた、本発明によって保護されることを求められている範囲に入ると見なされるべきであることが指摘されるべきである。