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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】高更新率を有するカメラシステム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20240516BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20240516BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G01S17/89
G01C3/06 120Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021535860
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2019085887
(87)【国際公開番号】W WO2020127444
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】102018222518.4
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン シャーレ
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ブッハー
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-002326(JP,A)
【文献】特開2009-079987(JP,A)
【文献】特表2011-520116(JP,A)
【文献】Real-Time Motion Artifact Compensation for PMD-ToF Images,Time-of-Flight and Depth Imaging. Sensors, Algorithms, and Applications,2013年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00-3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ(25)を備える装置であって、前記プロセッサ(25)は、動きベクトル(53)を生成するために、受信光と変調信号(φ、φ間の交差相関により得られた第1原画像(A、A)と、受信光と反転された変調信号(φ、φ間の交差相関により得られた第2原画像(B、B)と、を含む飛行時間カメラ(21)の原画像(A、B、A、B)の加算によって計算された強度画像(A+B、A+B)に基づいて動き推定を実行するように設計されており、
前記プロセッサ(25)は、位相画像(A -B 、A -B )および前記動きベクトル(53)に基づいて、動き補償のもとでデプス画像(63)の再構成を実行するように設計されており、
前記プロセッサ(25)は、動き補償のもとで前記デプス画像(63)の再構成をする際に、2つの対応する画素(x,y), (x´,y´)からの距離情報(d)を、前記位相画像(A -B 、A -B )の位相情報から決定するように設計されており、
2つの対応する前記画素(x,y), (x´,y´)は、前記動きベクトル(53)の対応する動きベクトルを介して相互に関連付けられる、装置。
【請求項2】
請求項に記載の装置であって、前記プロセッサ(25)は、前記距離情報(d)を以下の関係に基づいて決定するように設計され、
【数1】

ここで、((x,y), (x´,y´))は、前記位相画像(A-B、A-B)の2つの対応する画素であり、fは変調周波数、cは光の速度、tは光の飛行時間であり、
【数2】
は、画素Pにおけるそれぞれの位相情報であり、2つの対応する前記画素(x,y), (x´,y´)は、前記動きベクトル(53)の対応する動きベクトルを介して相互に関連付けられる、装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置であって、前記強度画像(A+B、A+B)は、1つまたは複数の第1強度画像(A+B)および1つまたは複数の第2強度画像(A+B)を含み、前記第1強度画像(A+B)および前記第2強度画像(A+B)は、異なる露光期間(t1、t2、t3、t4)において決定された、装置。
【請求項4】
請求項に記載の装置であって、前記デプス画像(63)は、車両(1)の室内を検出するために使用される、装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、前記プロセッサ(25)は、第1露光期間(t1)の強度画像(AQ1+BQ1)および位相画像(AQ1-BQ1)に基づいて、また第2露光期間(t2)の強度画像(AI1+BI1)および位相画像(AI1-BI1)に基づいて、第1デプス画像を生成し、ならびに第2露光期間(t2)の強度画像(AI1+BI1)および位相画像(AI1-BI1)に基づいて、また第3露光期間(t3)の強度画像(AQ2+BQ2)および位相画像(AQ2-BQ2)に基づいて、第2デプス画像を生成するように設計されている、装置。
【請求項6】
プロセッサ(25)によって、動きベクトル(53)を生成するために、受信光と変調信号(φ、φ間の交差相関により得られた第1原画像(A、A)と、受信光と反転された変調信号(φ、φ間の交差相関により得られた第2原画像(B、B)と、を含む飛行時間カメラ(21)の原画像(A、B、A、B)の加算によって計算された強度画像(A+B、A+B)に基づいて動き推定を実行することと、
前記プロセッサ(25)によって、位相画像(A -B 、A -B )および前記動きベクトル(53)に基づいて、動き補償のもとでデプス画像(63)の再構成を実行することと、
前記プロセッサ(25)によって、動き補償のもとで前記デプス画像(63)の再構成をする際に、2つの対応する画素(x,y), (x´,y´)からの距離情報(d)を、前記位相画像(A -B 、A -B )の位相情報から決定することと
を含み、
2つの対応する前記画素(x,y), (x´,y´)は、前記動きベクトル(53)の対応する動きベクトルを介して相互に関連付けられる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カメラシステム、特に飛行時間カメラシステムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行時間カメラは、飛行時間法(Time of Flight、略称ToF)で距離を測定する3Dカメラシステムである。飛行時間カメラシステムは、視野内の物体までの距離を測定するために、能動パルス式光源を使用する。パルス光は、固定周波数で放射される。
【0003】
イメージセンサは、反射された光を受光する。その感光面は、小さな受光ユニットである「画素」に基づく格子状構造で構築されている。光が感光面に入射すると、電子‐正孔対が生成される。次いで、画素内で、これらの電荷が各容量部(電荷蓄積部)に蓄積される。露光時間(「積分時間」とも称される)経過後の容量部の電荷は、読み出され、各画素に入射する光に比例する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のことから、本発明は、ToFカメラシステムを改良することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1に記載の装置および請求項10に記載の方法によって解決される。本発明の更なる有利な実施形態は、従属請求項および本発明の好適な実施形態の以下の記載から明らかになる。
【0006】
実施形態は、動きベクトルを生成するために、飛行時間カメラの強度画像に基づいて動き推定を実行するように設計されたプロセッサを備える装置を示す。
【0007】
装置は、例えばイメージセンサ、例えば間接的な飛行時間カメラ(ToF)のイメージセンサとすることができる。間接的なToFカメラ(iTOF:indirekte Time-of-Flight Kamera)は、例えば反射された赤外光(IR)の位相遅れを測定することができる。位相データは、反射された信号を基準信号(照明信号)と相関させることによって取得できる。
【0008】
好適には、プロセッサは、位相画像および動きベクトルに基づいて、動き補償のもとでデプス画像の再構成を実行するように設計されている。
【0009】
距離情報が得られる強度画像および位相画像を、例えば、物体を追跡するために使用することができる。例えば、得られた強度画像および位相画像のそれぞれを使用して、標準的な作動と比較してフレームレートを高めることができる。
【0010】
好適には、プロセッサは、動き補償のもとでデプス画像の再構成をする際に、2つの対応する画素からの距離情報を、位相画像の位相情報から決定するように設計されている。
【0011】
TOFカメラの画素は、典型的に、1つまたは複数の感光素子(例えばフォトダイオード)を含む。感光素子は、入射光を電流に変換する。フォトダイオードに接続されたスイッチ(例えば、トランスファゲート)は、電流を1つまたは複数の蓄積素子(例えばキャパシタ)に導くことができる。蓄積素子は、蓄電素子として作用し、電荷を収集および蓄積する。
【0012】
好適には、強度画像は、飛行時間カメラのセンサによって提供される、またはセンサが原画像を提供する場合には、原画像の加算によって計算される。
【0013】
一実施形態によれば、原画像は、変調信号で得られた第1原画像と、反転された変調信号で得られた第2原画像と、を含む。第1原画像は、例えば、飛行時間画素の第1タップ、Tap-Aを介して提供することができる。第2原画像は、例えば、飛行時間画素の第2タップ、Tap-Bを介して提供することができる。第2タップ、Tap-Bは、第1タップ、Tap-Aに対して反転された、すなわち180度位相がシフトされた基準信号を受信する。「タップ」とは、変調信号に基づいて光電荷が収集される飛行時間画素内の位置を称する。Tap-Aにおける変調信号およびTap-Bにおける反転された変調信号は、DMIX0およびDMIX1とも称される。いわゆる2タップ/4相画素において、例えば、変調器は電気光学式2タップ変調器である。2タップ/4相画素の利点は、光子によって生成されるすべての電子が利用されることである。本明細書の実施形態は、2タップ/4相画素に基づいているが、1タップシステムおよび異なる数の相を有するシステム等の他のシステムも、代替的な実施形態において使用することができる。
【0014】
好適には、強度画像は、1つまたは複数の第1強度画像、および1つまたは複数の第2強度画像を含む。第1強度画像および第2強度画像は、異なる変調期間において決定されたものである。
【0015】
一実施形態によれば、プロセッサは、第1変調期間の強度画像および位相画像に基づいて、また第2変調期間の強度画像および位相画像に基づいて、第1デプス画像を生成し、ならびに第2変調期間の強度画像および位相画像に基づいて、また第3変調期間の強度画像および位相画像に基づいて、第2デプス画像を生成するように設計されている。一実施形態によれば、第1変調期間、第2変調期間、および第3変調期間は、相互に直接して続く。
【0016】
デプス画像を、例えば、車内の人と物体の位置および動きを識別するために、車両の室内を検出するために使用することができる。
【0017】
さらに、実施形態は方法も開示する。この方法において、動きベクトルを生成するために、飛行時間カメラの強度画像に基づいて動き推定を実行する。方法は、本明細書で示される態様を有する。方法は、プロセッサ内で実行するコンピュータに実装された方法とすることができる。
【0018】
次に、例示的に添付の図面を参照して、実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による、乗員安全システム用制御ユニットおよび飛行時間カメラシステムを備える車両の構成を概略的に示すブロック図である。
図2】制御ユニット(図1のECU1、2、3、4、5および6)の構成例を示すブロック図である。
図3】飛行時間カメラシステム(ToFカメラシステム)21の概略図である。
図4図3のToFカメラシステム21の電荷積分プロセスおよび読み出しプロセスの概略図である。
図5】ToFカメラシステム21で動きベクトルを決定する例示的なフロー図である
図6】動き補償のもとで2つの位相画像からデプス画像を再構成するプロセスの図である。
図7】複数の部分露光フレームのそれぞれに基づいて車両室内のデプス画像のシーケンスを取得するプロセスを示すブロック図である。
図8】車両室内のデプス画像を取得するためのToFカメラシステム21の3つの変調期間の概略図である。
図9】車両室内を監視するためのToF監視システムを備える車両の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の一実施形態による、乗員安全システムのための制御ユニットおよび飛行時間カメラシステムを備える車両の構成を概略的に示すブロック図を示す。この実施形態による車両は、人間の運転者の影響を受けずに、道路交通において完全にまたは部分的に作動することもできる車両である。自律走行の場合、車両の制御システムは、完全にまたは可及的に運転者の役割を担う。自律(または半自律)車両は、様々なセンサを使用してその周囲を知覚し、得られた情報からその位置および他の道路ユーザを決定し、車両の制御システムおよびナビゲーションソフトウェアを使用して目的地までナビゲートし、道路交通において対応して作動することができる。
【0021】
車両1は、車両通信ネットワーク28を介して相互に接続された複数の電子部品を備える。車両通信ネットワーク28は、例えば、CANバス(controller area network:コントローラエリアネットワーク)、LINバス(local interconnect network:ローカルインターコネクトネットワーク)、イーサネット(登録商標)ベースのLANバス(local area network:ローカルエリアネットワーク)、MOSTバス、LVDSバス等の、車両に搭載される標準的な車両通信ネットワークとすることができる。
【0022】
図1に示す例では、車両1は、ステアリングシステムを制御する制御ユニット12(ECU1)を備える。この場合、ステアリングシステムは、車両の方向制御を可能にする構成要素を指す。車両1は、ブレーキシステムを制御する制御ユニット14(ECU2)をさらに備える。この場合、ブレーキシステムは、車両がブレーキをかけることを可能にする構成要素を指す。車両1は、ドライブトレインを制御する制御ユニット16(ECU3)をさらに備える。この場合、ドライブトレインは、車両の駆動構成要素を指す。ドライブトレインは、原動機、変速機、ドライブシャフト/プロペラシャフト、差動装置、および車軸駆動装置を含むことができる。
【0023】
車両1は、乗員安全システムを制御する制御ユニット17(ECU6)をさらに備える。この場合、乗員安全システム17は、事故の場合に運転者を保護するように意図された、例えばエアバック等の構成要素を指す。
【0024】
車両1は、自律走行(または部分的自律走行)のための制御ユニット18(ECU4)をさらに備える。自律走行のための制御ユニット18は、車両1が、人間の運転者の影響を受けずに、道路交通において完全にまたは部分的に作動することができるよう車両1を制御するように設計されている。自律走行のための制御ユニット18は、車両1が自律モードで運転されている間に、1つまたは複数の車両サブシステム、すなわちブレーキシステム14、ステアリングシステム12、乗員安全システム17、および駆動システム14を制御する。この目的のために、自律走行のための制御ユニット18は、例えば車両通信ネットワーク28を介して、対応する制御ユニット12、14、17および16と通信することができる。
【0025】
制御ユニット12、14、17および16は、上述の車両サブシステムから車両作動パラメータを受信することができる。車両サブシステムは、これらの車両作動パラメータを1つまたは複数の車両センサによって検出する。車両センサは、好適には、車両の状態または車両部品の状態、特にそれらの移動状態を検出するセンサである。センサは、車速センサ、ヨーレートセンサ、加速度センサ、ハンドル角センサ、車両荷重センサ、温度センサ、圧力センサ等を含むことができる。例えば、ブレーキラインに沿ってセンサを配置し、油圧ブレーキラインに沿った様々な位置でのブレーキ液圧を示す信号を出力することもできる。車輪の近傍に、車輪速度および車輪に加えられるブレーキ圧力を検出する他のセンサを設けることもできる。
【0026】
さらに、車両1は、GPS/位置センサユニット22を備える。GPS/位置センサユニット22は、測地基準系(地球座標)に対する自律車両1の絶対位置決定を可能にする。位置センサは、例えば、加速度、回転運動、または位置の変化に反応するジャイロセンサ等とすることができる。
【0027】
さらに、車両1は、環境監視のために設計された1つまたは複数のセンサユニット23を備える。さらなるセンサユニット23は、例えば、レーダシステム、ライダシステム、超音波センサ、ToFカメラ、または他のユニットとすることができる。距離測定および速度測定からのデータは、これらのさらなるセンサユニット23によって検出され、例えば、中央制御ユニット25(または、代替的に自律走行のための制御ユニット18、ECU4)に送信される。これらのセンサユニット23のデータに基づいて、車両1と、1つまたは複数の物体との間の距離が決定される。中央制御ユニット25は、受信された情報を自ら評価することができる、または、例えば自律走行のための制御ユニット18に送信することができる。
【0028】
車両1は、特に、車両室内の3次元画像を検出するように設計されたToFカメラシステム21を備える。ToFカメラシステム21は、例えば、図6により詳細に示されるように、車両の室内に配置されている。ToFカメラシステム21は、画像データを検出し、これらを中央制御ユニット25(または、代替的に自律走行のための制御ユニット18、ECU4)に送信する。画像データに加えて、ToFカメラシステム21は、例えば、画像領域内の1つまたは複数の物体に関する位置情報、移動情報、および/または距離情報等のメタ情報を決定し、中央制御ユニット25(または、代替的に自律走行のための制御ユニット18、ECU4)に送信することができる。中央制御ユニット25は、受信された情報を自ら評価することができる、または、例えば自律走行のための制御ユニット18にさらに送信することができる。
【0029】
ToFカメラシステム21からの情報に基づいて、車両の室内は、異なる事象に反応することができるように検出される。そのため、例えば事故の場合、乗員の着座位置に応じて、対応する1つまたは複数のエアバッグを、正しくトリガすること、またはトリガしないことができる。
【0030】
自律走行のための運転状態が制御側または運転者側で作動されると、制御ユニット18は、自律走行のために、所定の走行距離にわたって利用可能なデータに基づいて、センサユニット23から受信されるデータに基づいて、ToFカメラシステムを用いて記録されるデータに基づいて、ならびに制御ユニット12、14、17および16から制御ユニット18に供給される、車両センサを用いて検出される車両運転パラメータに基づいて、車両の自律運転のためのパラメータ(例えば、目標速度、目標トルク、先行車までの距離、道路縁までの距離、ステアリング操作等)を決定する。
【0031】
図2は、制御ユニット(図1のECU1、2、3、4、5および6)の構成例を示すブロック図である。制御ユニットは、例えば、制御装置(電子制御ユニットElectronic Control Unit:ECUまたは電子制御モジュールElectrnic Control Module:ECM)とすることができる。制御ユニットは、プロセッサ210を備える。プロセッサ210は、例えば、プログラム命令を実行する中央処理ユニット(CPU=Central Processing Unit)のような計算ユニットとすることができる。制御ユニットは、プログラムメモリ領域およびデータメモリ領域として機能する、リードオンリーメモリ、ROM230(ROM=Read-only Memory)、およびランダムアクセスメモリ、RAM220(RAM=Rndom Access Memory)(例えば、ダイナミックRAM(「DRAM」)、同期DRAM(「SDRAM」)等)をさらに備える。制御ユニットは、データおよびプログラムを保存するために、例えば、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、フラッシュメモリドライブ、または不揮発性ソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージドライブ260をさらに備える。制御ユニットは、車両通信ネットワークインターフェイス240をさらに備える。これを介して、制御ユニットが、車両通信ネットワーク(図1の28)と通信することができる。制御ユニットの各ユニットは、通信ネットワーク250を介して接続されている。特に、図2の制御ユニットは、図1の中央制御ユニット25、ECU5の実装として機能することができる。
【0032】
図3は、飛行時間カメラシステム21(ToFカメラシステム)を概略的に示す。ToFカメラシステム21は、4相信号発生器Gと、照明Bと、1画素あたりのフォトセンサPと、ミキサMと、1画素あたりの電荷蓄積部Cとを備える。4相信号発生器Gは、ミキサMに送信される4つの変調信号φ、φ1、φ、φを生成する。変調信号φは、照明Bに送信される。この実施形態によれば、変調信号φは10~100MHzの周波数を有する矩形波関数である。変調信号φは、変調信号φに対して位相が90度ずれている信号である。変調信号φは、変調信号φに対して位相が180度ずれている信号である。変調信号φは、変調信号φに対して位相が270度ずれている信号である。4相信号発生器Gで生成された変調信号φに基づいて、照明Bは光信号S1を生成する。光信号S1は物体Oに入射する。光信号S1の部分S2はカメラシステムに後方散乱される。後方散乱光信号S2は、ToFカメラシステム21の画素のフォトセンサPによって受信される。ミキサMでは、受信された光信号S2がそれぞれの変調信号φ、φ、φ、φで復調される。復調は、例えば、受信された光信号S2とそれぞれの変調信号φ、φ、φ、φとの間の交差相関(積分)に基づく。復調された信号は、画素の電荷蓄積部Cに蓄積される。物体OとToFカメラシステム21との間の距離dを取得するために、4つの変調信号φ、φ、φ、φに対応する4つの画像が1つの変調期間内に検出される。
【0033】
図4は、図3のToFカメラシステム21が、車両室内の強度画像および位相画像を取得するための電荷積分プロセスおよび読み出しプロセスの概略図を示す。時間は右軸にプロットされている。部分露光フレームQ、Iは、それぞれ、積分フェーズおよび読み出しフェーズを含む。部分露光フレームQおよび部分露光フレームIフェーズは、繰り返される。部分露光フレームQおよび部分露光フレームIは、90度の位相差を有する。積分フェーズにおいて、受光された光信号(図3のS2)は、それぞれの変調信号φ、φ、φ、φと積分される。読み出しフェーズにおいて、積分フェーズの結果が画素に読み出される。
【0034】
積分プロセスは、一度に2つの原画像を供給する。部分露光フレームQの積分フェーズにおいて、受信光と変調信号φとの積分の結果である原画像A=c(φ)が取得され、また受信光と反転された変調信号φとの積分の結果である原画像B=c(φ)が取得される。原画像Aおよび原画像Bは、強度画像A+Bを取得するために加算される。これは動き推定の基礎として機能する(図5および対応する説明を参照されたい)。原画像Aおよび原画像Bは、位相画像A-Bを取得するためにさらに減算される。この位相画像A-Bは、デプス画像を生成するために使用される(図6および対応する説明を参照されたい)。部分露光フレームIの積分フェーズにおいて、受信光と変調信号φとの積分の結果である原画像A=c(φ)が得られ、また受信光と変調信号φとの積分の結果である原画像B=c(φ)が取得される。原画像Aおよび原画像Bは、強度画像A+Bを取得するために加算される。これは動き推定の基礎として機能する。原画像Aおよび原画像Bは、位相画像A-Bを取得するためにさらに減算される。この位相画像A-Bは、デプス画像を生成すために使用される。
【0035】
図5は、連続する強度画像A+BおよびA+Bから動きベクトルを決定する動き推定のプロセスを示す。動き推定のプロセスは、例えば、中央制御ユニット(図1の25)において、またはToFカメラシステム(図1の21)のプロセッサにおいて実行することができる。ステップS52において、動きベクトル53を生成するために、2つの強度画像A+BおよびA+Bに基づいて動き推定が実行される。動き推定(モーションエスティメーション)は、ある2D画像から別の2D画像への変換を記述する動きベクトルを決定するプロセスである。動きベクトル53は、画像A+BまたはA+Bの画素に関連し、2つの画像A+BおよびA+Bの間の動きを表す。動きベクトルは、当業者に既知の方法のうちの1つの方法で、例えば並進モデル、例えば画素再帰的アルゴリズム、オプティカルフロー決定法等によって、取得され、表示される。
【0036】
図6は、動き補償のもとで2つの位相画像A-BおよびA-Bからデプス画像を再構成するプロセスを示す。ステップS62において、デプス画像63が再構成される。動き推定のプロセスは、例えば、中央制御ユニット(図1の25)またはToFカメラシステム(図1の21)のプロセッサで実行することができる。デプス画像63は、位相画像A-B、位相画像A-Bおよび動き補償に基づいて取得される。動き補償は、対応する強度画像A+BおよびA+Bから図5のプロセスを用いて決定された動きベクトル53に基づく。
【0037】
式1は、2つの対応する画素(x,y), (x´,y´)からの距離情報(移動反射物体とToFカメラシステム21との間の距離)が、位相情報からどのようにして取得されるかを示す。
【数1】
ここで、fは変調周波数、cは光の速度、tは光の飛行時間である。
【数2】
数2は、画素Pにおけるそれぞれの位相情報である。2つの対応する画素(x,y), (x´,y´)は、動きベクトル(53)の対応する動きベクトルを介して相互に関連付けられる。
【0038】
動き補償のもとでデプス画像を再構成する上述のプロセス(ステップS62)によって、モーションアーチファクト(「動きぼけ」)が低減または補償される。モーションアーチファクトは、典型的には、物体が動いているとき、またはToFカメラシステム21自体が動いているときに生じる。
【0039】
図7は、複数の部分露光フレームのそれぞれに基づいて車両室内のデプス画像のシーケンスを取得するプロセスを示すブロック図である。第1デプス画像63-1は、第1部分露光フレームQ1および第1部分露光フレームI1に基づいて取得される。第2デプス画像63-2は、第1部分露光フレームI1および第2部分露光フレームQ2に基づいて取得される。第3デプス画像63-3は、第2部分露光フレームQ2および第2部分露光フレームI2に基づいて取得される。
【0040】
図8は、車両室内のデプス画像を取得するためのToFカメラシステム21の3つの変調期間の概略図を示す。図4と同様に、時間は右軸にプロットされている。第1変調期間T1において、部分露光期間t1およびt2で得られた強度画像AQ1+BQ1およびAI1+BI1と、位相画像AQ1-BQ1およびAI1-BI1と、に基づいて、デプス画像が決定される。第1部分露光期間t1は部分露光フレームQに関し、第2部分露光期間t2は部分露光フレームIに関する。第2変調期間T2において、部分露光期間t2およびt3で得られた強度画像AQ2+BQ2およびAI1+BI1と、位相画像AQ2-BQ2およびAI1-BI1と、に基づいて、デプス画像が決定される。第1部分露光期間t3は部分露光フレームQ1に関し、第2部分露光期間t2は部分露光フレームIに関する。第3変調期間T3において、部分露光期間t3およびt4で得られた強度画像AQ2+BQ2およびAI2+BI2と、位相画像AQ2-BQ2およびAI2-BI2と、に基づいて、デプス画像が決定される。第1部分露光期間t3は部分露光フレームQ2に関し、第2部分露光期間t4は部分露光フレームI2に関する。部分露光期間t1、t2、t3およびt4のそれぞれにおいてデプス画像が生成されることによって、ToFカメラシステム21は高い画像更新率を達成する。
【0041】
図9は、車両室内を監視するためのToF監視システムを備える車両を概略的に示す。車両1には、4つの座席S1~S4と、10台のToFカメラシステムTF1~TF10とが装備されている。前部座席S1、S2は運転者Fまたは前部乗客のために設けられている。後部座席S3、S4は車両1の乗客のために設けられている。運転者Fは、座席S1に座る。
【0042】
ToFカメラシステムTF1、TF2はダッシュボードにある。ToFカメラシステムTF3、TF5、TF8およびTF10はドアにある。ToFカメラシステムTF6、TF7は後部荷物棚にある。ToFカメラシステムTF4、TF10は前部座席S1、S2の背もたれにある。
【0043】
さらに、図9においては、車両1の後方に衝撃が発生し、運転者の頭部が位置P1から位置P2に移動された例を示している。ToFカメラシステムTF1、TF2およびTF10は、車両室内のデプス画像を検出し、これらデプス画像を車両1の中央制御ユニット(図1の25)に送信する。検出されたデプス画像に基づいて、中央制御ユニットは、当業者に既知の画像認識アルゴリズムを使用して、運転者の頭部運動を決定する。中央制御ユニットは、受信された運転者の頭部運動情報に基づいて、例えばシートベルトテンショナー、エアバッグ等である対応する乗員安全システム(図1の17)のトリガを制御することができる。
【0044】
これらの実施形態は、方法のステップの例示的な順序を有する方法を示すことに留意されたい。方法のステップの特定の順序が例示の目的のためにのみ提供されているが、拘束力があると解釈されるべきではない。
【0045】
本明細書に記載の機能は、集積回路ロジックとして、例えばチップ上に実装することができる。特に明記しない限り、記載した機能は、ソフトウェアによって実装することもできる。上述の実施形態が、ソフトウェア制御プロセッサを使用して少なくとも部分的に実装される限り、そのようなソフトウェア制御を提供するコンピュータプログラムおよび対応する記憶媒体もまた、本開示の態様とみなされる。
【符号の説明】
【0046】
1 車両
12 ステアリングシステム(ECU1)
14 ブレーキシステム(ECU2)
16 駆動システム(ECU3)
17 乗員安全システム(ECU6)
18 自律走行のための制御ユニット(ECU4)
21 飛行時間カメラシステム
22 GPS/位置センサ
23 センサユニット
25 中央制御ユニット(ECU5)
28 車両通信ネットワーク
210 CPU
220 RAM
230 ROM
240 車両通信ネットワークインターフェイス
250 通信ネットワーク
260 メモリ(SSD/HDD)
G 4相信号発生器
B 照明
E レシーバ
M ミキサ
P 画素のフォトセンサP
C 画素の電荷蓄積部C
φ、φ、φ、φ 変調信号
+B、A+B 強度画像
-B、A-B 位相画像
、B、A、B 原画像
O 物体
d 距離
S1 光信号
S2 後方散乱光信号
T 変調期間
t1、t2 部分露光期間
f 変調周波数
c 光の速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9