(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ガソリン排気ガス用途のための新規PGMナノ粒子TWC触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/42 20060101AFI20240516BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240516BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20240516BHJP
B01J 35/45 20240101ALI20240516BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20240516BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B01J23/42 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J23/63 A
B01J35/45 ZAB
F01N3/08 A
F01N3/08 B
F01N3/28 Q
F01N3/28 301B
F01N3/28 301Q
(21)【出願番号】P 2021558996
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(86)【国際出願番号】 JP2020018433
(87)【国際公開番号】W WO2020226140
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-04-24
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】長岡 修平
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-200674(JP,A)
【文献】特開2018-187535(JP,A)
【文献】特表2019-511353(JP,A)
【文献】特表2016-503346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを処理するための
三元触媒物品であって、
基材と、
前記基材上の第1の触媒領域と、を含み、
前記第1の触媒領域が、第1の白金族金属(PGM)成分及び第1の無機酸化物を含み、前記第1のPGM成分が、PGMナノ粒子を含み、
焼成後の触媒物品において、前記PGMナノ粒子が、100個以下のPGM原子を有し、前記PGMナノ粒子が、1nm~10nmの平均粒径を有し、標準偏差(SD)が、1nm以下である、
三元触媒物品。
【請求項2】
前記PGMナノ粒子が、約1~約5nmの平均粒径を有する、請求項1に記載の
三元触媒物品。
【請求項3】
前記PGMナノ粒子が、Ptである、請求項1又は請求項2に記載の
三元触媒物品。
【請求項4】
前記Ptナノ粒子が、600℃で4時間の水熱レドックスエージング後に、15nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、TEMによって測定されている、請求項3に記載の
三元触媒物品。
【請求項5】
前記Ptナノ粒子が、700℃で4時間の水熱レドックスエージング後に、20nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、TEMによって測定されている、請求項3又は請求項4に記載の
三元触媒物品。
【請求項6】
前記Ptナノ粒子が、800℃で4時間の水熱レドックスエージング後に、25nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、TEMによって測定されている、請求項3~5のいずれか一項に記載の
三元触媒物品。
【請求項7】
前記Ptナノ粒子が、2~100個のPt原子を有する、請求項3~6のいずれか一項に記載の
三元触媒物品。
【請求項8】
前記Ptナノ粒子が、30~100個のPt原子を有する、請求項7に記載の
三元触媒物品。
【請求項9】
前記Ptナノ粒子が、1000℃で4時間のエージング後に、50nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、TEMによって測定されている、請求項3~8のいずれか一項に記載の
三元触媒物品。
【請求項10】
前記Ptナノ粒子が、800℃で4時間の水熱レドックスエージング後に、30nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、COパルス法によって測定されている、請求項3~9のいずれか一項に記載の
三元触媒物品。
【請求項11】
前記Ptナノ粒子が、900℃で4時間の水熱レドックスエージング後に、60nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、COパルス法によって測定されている、請求項3~10のいずれか一項に記載の
三元触媒物品。
【請求項12】
前記Ptナノ粒子が、1000℃で4時間のエージング後に、80nm以下の平均粒径を有し、前記平均粒径が、COパルス法によって測定されている、請求項3~11のいずれか一項に記載の
三元触媒物品。
【請求項13】
前記Ptナノ粒子が、原子的に細分化されている、請求項3~12のいずれか一項に記載の
三元触媒物品。
【請求項14】
前記Ptナノ粒子が、12~28個のPt原子を有する、請求項13に記載の
三元触媒物品。
【請求項15】
吸着されたCO分子の振動数が、IR分光法により200℃で2080cm
-1未満である、請求項3~14のいずれか一項に記載の
三元触媒物品。
【請求項16】
吸着されたCO分子の振動数が、IR分光法により200℃で2070cm
-1未満である、請求項3~15のいずれか一項に記載の
三元触媒物品。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の
三元触媒物品を含む、燃焼排気ガスの流れを処理するための排出処理システム。
【請求項18】
第2の触媒物品を更に含む、請求項17に記載の排出処理システム。
【請求項19】
前記第2の触媒物品が、三元触媒(TWC)成分を含む、請求項18に記載の排出処理システム。
【請求項20】
前記第2の触媒物品が、前記
三元触媒物品の下流にある、請求項18又は請求項19に記載の排出処理システム。
【請求項21】
前記第2の触媒物品が、床下位置にある、請求項17~20のいずれか一項に記載の排出処理システム。
【請求項22】
前記
三元触媒物品が、密結合位置にある、請求項17~21のいずれか一項に記載の排出処理システム。
【請求項23】
前記第2の触媒物品が、前記
三元触媒物品の上流にある、請求項18又は請求項19に記載の排出処理システム。
【請求項24】
前記第2の触媒物品が、密結合位置にある、請求項23に記載の排出処理システム。
【請求項25】
前記
三元触媒物品が、床下位置にある、請求項23又は請求項24に記載の排出処理システム。
【請求項26】
前記
三元触媒物品中のPGM担持量が、前記第2の触媒物品中のPGM担持量よりも低い、請求項18~25のいずれか一項に記載の排出処理システム。
【請求項27】
GPF、炭化水素トラップ、NOxトラップ、リーンNOxトラップ、SCR触媒、電気加熱触媒、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項17~26のいずれか一項に記載の排出処理システム。
【請求項28】
内燃機関からの排気ガスを処理する方法であって、前記排気ガスを、請求項1~16のいずれか一項に記載の
三元触媒物品と接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するのに有用な触媒物品に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
内燃機関では、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(「NOx」)を含む様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成される。排気ガス触媒を含む排出制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されている。ガソリンエンジン用途に通常使用される触媒は、TWCである。TWCにより、次の3つの主な役割、すなわち、(1)COの酸化、(2)未燃HCの酸化、及び(3)NOxのN2への還元を行う。
ほとんどの触媒コンバータでは、白金族金属(PGM)(例えば、Pt、Pd、及びRh)が、担持担体用のアルミナ及びセリア-ジルコニア混合酸化物などの他の無機化合物と共に、触媒変換の活性部位として広く使用されてきた。面心立方(fcc)結晶構造を有するナノ粒子として形成されたPGMは、触媒反応の主要部分であり、エージング条件下(特に過酷なエージング条件下)で、PGMナノ粒子のより高い分散を維持することは、TWC性能の改善のための主要課題である。PGM塩の含浸によって通常生成される、サイズが広く分布する粒子ではなく、サイズ制御されたナノ粒子を使用することは、エージング後にPGMナノ粒子のより高い分散を維持するためのアプローチの1つである(例えば、Miura et al,SAE Technical Paper 2015-01-1005を参照されたい)。
近時、一方では、100原子未満のサイズの非fcc型PGMナノ粒子クラスターが見出されており、それらは、fcc型ナノ粒子を含むバルク金属とは異なるユニークな化学的特性及び機能を示すことが知られていて、それに関する研究が様々な分野で行われている。白金クラスターにおいて、例えば、一酸化炭素に対する酸化触媒特性の学術研究が行われており(例えば、Journal of the American Chemical Society,1999,121(13),3214-3217、Journal of Materials Chemistry A,2017,5,4923-4931、及びCatalysis Science & Technology,2011,1,1490-1495)、その研究は、基礎研究にのみ焦点を当てていて、非fccのPGMクラスター材料の熱安定性は、約1000℃のTWCの動作温度下では、十分ではないことが予想されるため、TWC用途には適用されていない。
より低温の排気ガスを供給するモーターアシストハイブリッド又はターボチャージャーシステムに焦点を当てた将来予想されるガソリンエンジン戦略では、この用途の条件に適合するPGMナノ材料の有効なサイズ調整及び機能調整技術は、TWC開発の主要な課題である。本発明は、ユニークな機能を有する100原子未満のPGMクラスター材料の有効サイズが選択されたナノ粒子を使用することによって、より低温のTWC用途の条件下で汚染物質の排出を低減するために、これらのニーズを解決する。
【0003】
本開示の1つの態様は、基材と、基材上の第1の触媒領域と、を含む、排気ガスを処理するための触媒物品に関するものであり、第1の触媒領域は、第1の白金族金属(PGM)成分及び第1の無機酸化物を含み、その第1のPGM成分は、PGMナノ粒子を含み、PGMナノ粒子は100個以下のPGM原子を有し、そのPGMナノ粒子は、1nm~10nmの平均粒径を有し、標準偏差(SD)は1nm以下である。
本発明はまた、本発明の三元触媒成分を含む、内燃機関のための排気システムも包含する。
本発明はまた、内燃機関からの排気ガスの処理、特にガソリンエンジンからの排気ガスの処理も包含する。本方法は、排気ガスを本発明の三元触媒成分と接触させること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】
図1は、トリフェニルホスフィン(TPP)保護Ptクラスターを合成するためのフロー図を示す。
【
図2】
図2は、合成されたTPP保護白金クラスターのMALDI質量スペクトルの例を示す。
【
図3】
図3は、フェニルエタンチオール(PET)保護Ptクラスターを合成するためのフロー図を示す。
【
図4】
図4は、合成されたPET保護白金クラスター(実施例2A~2D)のMALDI質量スペクトルの例を示す。
【
図5】
図5は、実施例1において、アルミナ上の全Ptナノ粒子クラスターのうちの70%超の含有量を示す17原子(4.2kDa)白金クラスターを有する物質の電子顕微鏡写真を示す。
【
図6】
図6は、実施例2Cについて、半値全幅で+/-5原子の分布を示す、アルミナ上の62原子(14kDa)白金クラスターを有する物質の電子顕微鏡写真を示す。
【
図7】
図7は、比較例3に従って硝酸塩水溶液を利用する含浸法によって合成されたアルミナ上に担持された白金の電子顕微鏡写真を示す。
【
図8】
図8は、300℃において、実施例1及び2C、並びに比較例3で吸着されたCOの赤外線吸収信号を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施例1及び2C、並びに比較例3に関する、吸着されたCOの振動数と温度の間の関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施例4に従ってアルミナ上に約17原子の白金クラスターを元来有する水熱レドックスエージングされた物質の電子顕微鏡写真を示す。
【
図11】
図11は、実施例5に従ってアルミナ上に約62原子(14kDa)の白金クラスターを元来有する水熱レドックスエージングされた物質の電子顕微鏡写真を示す。
【
図12】
図12は、比較例6に従って白金塩水溶液を利用する含浸法によって元来合成された白金担持アルミナの水熱レドックスエージングされた物質に関する電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、ガソリンエンジン及び他のエンジンによって生成されるものなどの燃焼排気ガスの触媒処理、並びに関連する触媒物品及びシステムに関する。より具体的には、本発明は、車両排気システムにおけるNO
x、CO、及びHCの同時処理に関する。本発明者らは、エージング中のPGMの焼結を効果的に抑制することにより、NO
x、CO、及びHCの排出を低減するためのTWC用途におけるPGMの有効な平均サイズ及び分布を発見した。本発明のプロセスは、潜在的に、PGM量を低減し、触媒のコストを下げることができる。
本開示の1つの態様は、基材と、基材上の第1の触媒領域と、を含む、排気ガスを処理するための触媒物品に関するものであり、第1の触媒領域は、第1の白金族金属(PGM)成分及び第1の無機酸化物を含み、その第1のPGM成分は、PGMナノ粒子を含み、PGMナノ粒子は100個以下のPGM原子を有し、そのPGMナノ粒子は、1nm~10nmの平均粒径を有し、標準偏差(SD)は1nm以下である。
PGMナノ粒子は、Pd、Rh、又はPtであり得る。更なる実施形態では、PGMナノ粒子は、Ptである。
PGM(例えば、Pt)ナノ粒子は、100PGM(例えば、Pt)原子以下(PGMがPtである場合、有機保護配位子を有する24kDa以下の質量数に対応する)、好ましくは75PGM(例えば、Pt)原子以下、より好ましくは、65PGM(例えば、Pt)原子以下を有することができる。
あるいは、PGM(例えば、Pt)ナノ粒子は、2~100PGM(例えば、Pt)原子、30~100PGM(例えば、Pt)原子、40~80PGM(例えば、Pt)原子、又は55~65PGM(例えば、Pt)原子を有することができる。
Ptナノ粒子は、例えば、フェニルエタンチオールの有機保護配位子を伴った状態で8~20kDa、8~18kDa、又は8~16kDaの質量数を有することができる。
いくつかの実施形態では、PGM(例えば、Pt)ナノ粒子は、0.8nm、0.6nm、0.5nm、0.4nm、又は0.3nm以下のSDで1nm~10nmの平均粒径を有することができる。
PGM(例えば、Pt)ナノ粒子は、1.0nm、0.8nm、0.6nm、0.5nm、0.4nm、又は0.3nm以下のSDで1nm~5nmの平均粒径を有することができる。PGM(例えば、Pt)ナノ粒子は、1.0nm、0.8nm、0.6nm、0.5nm、0.4nm、又は0.3nm以下のSDで1nm~4nmの平均粒径を有することができる。PGM(例えば、Pt)ナノ粒子は、1.0nm、0.8nm、0.6nm、0.5nm、0.4nm、又は0.3nm以下のSDで1nm~3nmの平均粒径を有することができる。PGM(例えば、Pt)ナノ粒子は、1.0nm、0.8nm、0.6nm、0.5nm、0.4nm、又は0.3nm以下のSDで2nm~3nmの平均粒径を有することができる。
驚くべきことに、本発明のPGM(例えば、Pt)ナノ粒子は、従来のPGM(例えば、Pt)ナノ粒子と比較したときに、過酷な水熱エージング条件に供された後でも、改善された耐熱性及び改善されたTOFを示すことを、本発明者らは見出した。
Ptナノ粒子は、600℃で4時間の水熱レドックスエージング後に15nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。Ptナノ粒子は、600℃で4時間の水熱レドックスエージング後に13nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。Ptナノ粒子は、600℃で4時間の水熱レドックスエージング後に10nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。
Ptナノ粒子は、700℃で4時間の水熱レドックスエージング後に20nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。Ptナノ粒子は、700℃で4時間の水熱レドックスエージング後に18nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。Ptナノ粒子は、700℃で4時間の水熱レドックスエージング後に16nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。
Ptナノ粒子は、800℃で4時間の水熱レドックスエージング後に25nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。Ptナノ粒子は、800℃で4時間の水熱レドックスエージング後に24nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。Ptナノ粒子は、800℃で4時間の水熱レドックスエージング後に23nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。
Ptナノ粒子は、1000℃で4時間のエージング後に50nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。Ptナノ粒子は、1000℃で4時間のエージング後に40nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。Ptナノ粒子は、1000℃で4時間のエージング後に30nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、TEMによって測定される。
Ptナノ粒子は、800℃で4時間の水熱レドックスエージング後に30nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、COパルス法によって測定される。Ptナノ粒子は、800℃で4時間の水熱レドックスエージング後に25nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、COパルス法によって測定される。
Ptナノ粒子は、900℃で4時間の水熱レドックスエージング後に60nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、COパルス法によって測定される。Ptナノ粒子は、900℃で4時間の水熱レドックスエージング後に55nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、COパルス法によって測定される。Ptナノ粒子は、900℃で4時間の水熱レドックスエージング後に50nm、45nm、又は40nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、COパルス法によって測定される。
Ptナノ粒子は、1000℃で4時間のエージング後に85nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、COパルス法によって測定される。Ptナノ粒子は、1000℃で4時間のエージング後に80nm以下の平均粒径を有することができ、その平均粒径は、COパルス法によって測定される。
いくつかの実施形態では、Ptナノ粒子は、原子的に細分化される。原子的に細分化されたPtナノ粒子は、12~28個のPt原子を有することができ、いくつかの実施形態では、原子的に細分化されたPtナノ粒子は、14~20個のPt原子を有することができ、更なる実施形態では、原子的に細分化されたPtナノ粒子は、15~19個のPt原子を有することができ、その含有量は、合成された全Ptナノ粒子クラスターの70%超であり得る。
組成物は、IR分光法によって測定した場合に、白金上に吸着されたCOの波数スペクトルにおいて、200℃で2080cm
-1以下のピークを有し得る。組成物は、IR分光法によって測定した場合に、白金上に吸着されたCOの波数スペクトルにおいて、200℃で2070cm
-1以下のピークを有し得る。
第1の触媒領域は、最大350g/ft
3のPGM(例えば、Pt)ナノ粒子を含むことができる。好ましくは、第1の触媒領域は、10~300g/ft
3、より好ましくは25~150g/ft
3のPGM(例えば、Pt)ナノ粒子を含むことができる。
第1の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第1の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、ランタナ、シリカ、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、チタニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第1の無機酸化物は、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第1の無機酸化物は、アルミナ、ランタン/アルミナ複合酸化物、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい第1の無機酸化物は、ランタン/アルミナ複合酸化物である。第1の無機酸化物は、PGMナノ粒子のための担体材料、及び/又は第1のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のための担体材料であってもよい。
第1の無機酸化物は、好ましくは、80m
2/g超のフレッシュ比表面積、0.1~4mL/gの範囲の細孔容積を有する。100m
2/g超の比表面積を有する高比表面積の無機酸化物、例えば高比表面積アルミナが特に好ましい。他の好ましい第1の無機酸化物としては、ランタン/アルミナ複合酸化物が挙げられ、これは、任意選択で、セリウム含有成分、例えば、セリアを更に含む。このような場合、セリアは、例えばコーティングとして、ランタン/アルミナ複合酸化物の表面上に存在してもよい。
第1の触媒領域は、第1の酸素吸蔵能(OSC)材料、及び/又は第1のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分を更に含んでもよい。
第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.1~5g/in
3であり得る。好ましくは、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.5~3.5g/in
3であり、最も好ましくは、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は1~2.5g/in
3である。
第1のOSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第1のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、La、Nd、Y、Prなどのいくつかのドーパントを更に含んでもよい。
セリア-ジルコニア混合酸化物は、ジルコニアとセリアとのモル比が、少なくとも50:50、好ましくは60:40より高く、より好ましくは75:25より高くてもよい。加えて、第1のOSC材料は、PGMナノ粒子の担体材料として機能してもよい。いくつかの実施形態では、PGMナノ粒子は、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物上に担持されている。
第1のOSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは35~65重量%であることができる。
第1の触媒領域における第1のOSC材料担持量は、1.5g/in
3未満であり得る。いくつかの実施形態では、第1の触媒領域中の第1のOSC材料担持量は、1.2g/in
3、1.0g/in
3、0.9g/in
3、0.8g/in
3、0.7g/in
3、又は0.6g/in
3以下である。
第1のOSC材料と第1の無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1又は3:1以下、最も好ましくは2:1以下の重量比を有してもよい。
あるいは、第1のOSC材料と第1の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有することができる。
いくつかの実施形態では、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1のOSC材料上に堆積されてもよい。あるいは、又は加えて、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1の無機酸化物上に堆積されてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1のOSC材料と第1の無機酸化物との両方の上に堆積されてもよく、すなわち、その上に存在してもよい。
好ましくは、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1の無機酸化物(例えば、アルミナ)上に担持/堆積されている。第1の無機酸化物に接触していることに加えて、又はそれに代えて、第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第1のOSC材料及びPGMナノ粒子にも接触していてもよい。
第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム又はストロンチウムである。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第1の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、0.1~15重量パーセント、より好ましくは3~10重量パーセントの量で存在する。
好ましくは、バリウムはBaCO
3複合材料として存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
第1のPGM成分は、別のPGMを更に含むことができる。別のPGMは、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
他の実施形態では、第1の触媒領域は、PGM(例えば、Pt)ナノ粒子以外のPGMを実質的に含まなくてもよい。更なる実施形態では、第1の触媒領域は、PGM(例えば、Pt)ナノ粒子以外のPGMを本質的に含まなくてもよい。
触媒物品は、第2の触媒領域を更に含むことができる。
第2の触媒領域は、第2のPGM成分、第2の酸素吸蔵能(OSC)材料、第2のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分、及び/又は第2の無機酸化物を含むことができる。
第2のPGM成分は、パラジウム、白金、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、PGMナノ粒子がPtであるとき、第2のPGM成分はRhであることができる。
第2の触媒領域は、最大350g/ft
3の第2のPGM成分を含み得る。好ましくは、第2の触媒領域は、10~300g/ft
3、より好ましくは25~150g/ft
3の第2のPGM成分を含み得る。
第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.1~5g/in
3であり得る。好ましくは、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.5~3.5g/in
3であり、最も好ましくは、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量は1~2.5g/in
3である。
第2の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第2の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、ランタナ、シリカ、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、チタニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステン、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第2の無機酸化物は、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、酸化イットリウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第2の無機酸化物は、アルミナ、ランタン/アルミナ複合酸化物、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい第2の無機酸化物は、ランタン/アルミナ複合酸化物である。第2の無機酸化物は、第2のPGM成分のための担体材料、及び/又は第2のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のための担体材料であってもよい。
第2の無機酸化物は、好ましくは、80m
2/g超のフレッシュ比表面積、0.1~4mL/gの範囲の細孔容積を有する。100m
2/g超の比表面積を有する高比表面積の無機酸化物、例えば高比表面積アルミナが特に好ましい。他の好ましい第2の無機酸化物としては、ランタン/アルミナ複合酸化物が挙げられ、これは、任意選択で、セリウム含有成分、例えば、セリアを更に含む。このような場合、セリアは、例えばコーティングとして、ランタン/アルミナ複合酸化物の表面上に存在してもよい。
第2のOSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、第2のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、La、Nd、Y、Prなどのいくつかのドーパントを更に含んでもよい。
セリア-ジルコニア混合酸化物は、ジルコニアとセリアとのモル比が、少なくとも50:50、好ましくは60:40より高く、より好ましくは75:25より高くてもよい。加えて、第2のOSC材料は、第2のPGM成分の担体材料として機能してもよい。いくつかの実施形態では、第2のPGM成分は、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物上に担持されている。
第2のOSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、10~90重量%、好ましくは25~75重量%、より好ましくは35~65重量%であることができる。
第2の触媒領域における第2のOSC材料担持量は、1.5g/in
3未満であり得る。いくつかの実施形態では、第2の触媒領域中の第2のOSC材料担持量は、1.2g/in
3、1.0g/in
3、0.9g/in
3、0.8g/in
3、0.7g/in
3、又は0.6g/in
3以下である。
第2のOSC材料と第2の無機酸化物とは、10:1以下、好ましくは8:1又は5:1以下、より好ましくは4:1又は3:1以下最も好ましくは2:1以下の重量比を有してもよい。
あるいは、第2のOSC材料と第2の無機酸化物とは、10:1~1:10、好ましくは8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有することができる。
いくつかの実施形態では、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2のOSC材料上に堆積されてもよい。あるいは、又は加えて、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2の無機酸化物上に堆積されてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2のOSC材料と第2の無機酸化物との両方の上に堆積されてもよく、すなわち、その上に存在してもよい。
好ましくは、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2の無機酸化物(例えば、アルミナ)上に担持/堆積されている。第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、第2の無機酸化物に接触していることに加えて、又はそれに代えて、第2のOSC材料及び第2のPGM成分にも接触していてもよい。
第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム又はストロンチウムである。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第2の触媒領域の総ウォッシュコート担持量に基づいて、0.1~15重量パーセント、より好ましくは3~10重量パーセントの量で存在する。
好ましくは、バリウムはBaCO
3複合材料として存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
いくつかの実施形態では、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、60:1~1:60の重量比を有する。好ましくは、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、30:1~1:30の重量比を有する。より好ましくは、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、20:1~1:20の重量比を有する。最も好ましくは、第1のPGM成分と第2のPGM成分とは、15:1~1:15の重量比を有する。
本発明の触媒物品は、当業者に知られている更なる成分を含んでもよい。例えば、本発明の組成物は、少なくとも1つのバインダー及び/又は少なくとも1つの界面活性剤を更に含んでもよい。バインダーが存在する場合、分散性アルミナバインダーが好ましい。
好ましくは、基材は、フロースルーモノリス又はウォールフローガソリン微粒子フィルタである。より好ましくは、基材は、フロースルーモノリスである。
フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面とを有し、それらの間に長手方向が画定される。フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面との間に延びている、複数のチャネルを有する。複数のチャネルは、長手方向に伸びており、複数の内側表面(例えば、各チャネルを画定するウォールの表面)を提供する。複数のチャネルの各々は、第1の面にある開口部と、第2の面にある開口部と、を有する。誤解を回避するために、フロースルーモノリス基材はウォールフローフィルタではない。
第1の面は、典型的には基材の入口端部にあり、第2の面は基材の出口端部にある。
チャネルは一定の幅のものであってもよく、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有してもよい。
好ましくは、長手方向に直交する平面内で、モノリス基材は、1平方インチ当たり100~900のチャネル、好ましくは300~750のチャネルを有する。例えば、第1の面上では、開いている第1のチャネル及び閉じた第2のチャネルの密度は、1平方インチ当たり300~750チャネルである。チャネルは、矩形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形形状である断面を有してもよい。
モノリス基材は、触媒材料を保持するための担体として作用する。モノリス基材を形成するのに好適な材料としては、コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア若しくはケイ酸ジルコニウムなどのセラミック様材料、又は多孔質の耐火金属が挙げられる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は、当該技術分野において周知である。
本明細書に記載のフロースルーモノリス基材は、単一構成要素(すなわち、単一のれんが状塊)であることに留意されたい。それにもかかわらず、排出処理システムを形成する場合、使用されるモノリスは、複数のチャネルを一緒に接着することによって形成されてもよく、又は本明細書に記載のように複数のより小さいモノリスを一緒に接着することによって形成されてもよい。このような技術は、排出処理システムの好適なケーシング及び構成と共に、当該技術分野において公知である。
本発明の触媒物品がセラミック基材を含む実施形態では、セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(コーディエライト及びスポジュメンなど)、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製されていてもよい。コーディエライト、マグネシウムアルミノケイ酸塩、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
本発明の触媒物品が金属基材を含む実施形態では、金属基材は、任意の好適な金属、特にチタン及びステンレス鋼などの耐熱性金属及び金属合金、並びに鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを他の微量金属に加えて含有するフェライト合金で作製されていてもよい。
いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積されている。更なる実施形態では、第2の触媒領域は、第1の触媒領域上に担持/堆積されている。
他の実施形態では、第2の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積されている。更なる実施形態では、第1の触媒領域は、第2の触媒領域上に担持/堆積されている。
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用する、NO
x、CO、及びHCを含有する、車両排気ガスの処理方法に関する。本発明に従って作製されたTWCを備えた触媒コンバータは、従来のTWCと比較して、改善された又は同等の触媒性能を示す(例えば、システム2、4、6、及び9、並びに表4~8を参照されたい)。
システム
本開示の別の態様は、システムを通じて排気ガスを移送するための導管と共に本明細書に記載される触媒物品を含む、車両排気ガス処理用システムに関する。
本発明による触媒物品は、明らかに、特定の要件に従って、他の排気システム後処理成分と組み合わせて使用して、完全な排気システム後処理装置を提供することができる。排気ガスは、ポジティブ点火内燃機関から排出され得る。
本発明のこの態様で使用するための、スパーク点火内燃機関などのポジティブ点火内燃機関は、ガソリン燃料、メタノール及び/又はエタノール、液体石油ガス又は圧縮天然ガスを含む含酸素物質とブレンドされたガソリン燃料によって燃料が供給され得る。ポジティブ点火エンジンは、化学量論的に運転されるエンジン又はリーンバーン運転エンジンであることができる。
排出処理システムは、第2の触媒物品を更に含むことができる。第2の触媒物品は、三元触媒(TWC)成分を含むことができる。第2の触媒物品は、触媒物品の上流又は下流に存在することができる。第2の触媒物品は、基材と、その基材上の触媒領域と、を含むことができ、その触媒領域は、白金族金属(PGM)成分を含む。PGM成分は、Rh、Pd、Pt又はこれらの組み合わせであることができる。第2の触媒物品は、無機酸化物、酸素吸蔵能(OSC)材料、及び/又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属成分を更に含むことができる。
【表1】
上記の流れ図(I)に示すように、第2の触媒物品は、本発明の触媒物品の上流にあることができる。第2の触媒物品は、密結合位置(close-coupled poition)にあることができる。本発明の第1の態様に記載の触媒物品は、密結合位置(例えば、第2の触媒物品)から下流へ40~100cm、好ましくは60~80cmの距離の床下位置(under-floor position)にあることができる。
第2の触媒物品と触媒物品とのPGM担持量比は、300:1~1:1、好ましくは250:1~5:1、又はより好ましくは250:1~10:1であることができる。
第2の触媒物品と触媒物品とのPGM量は、600:1~1:5、好ましくは500:1~1:1、又はより好ましくは500:1~2:1であることができる。
【表2】
あるいは、上記の流れ図(II)に示すように、第2の触媒物品は、本発明の触媒物品の下流に存在することができる。第2の触媒物品は、床下位置にあることができる。本発明の第1の態様に記載の触媒物品は、床下位置(例えば、第2の触媒物品)から上流に40~100cm、好ましくは60~80cmの距離の密結合位置にあることができる。
第2の触媒物品と触媒物品とのPGM担持量比は、300:1~1:1、好ましくは250:1~5:1、又はより好ましくは250:1~10:1であることができる。
第2の触媒物品と触媒物品とのPGM量は、600:1~1:5、好ましくは500:1~1:1、又はより好ましくは500:1~2:1であることができる。
本発明の上流触媒物品中のPGM担持量は、下流の第2の触媒物品のPGM担持量よりも低い場合がある。好ましくは、第2の触媒物品と触媒物品とのPGM担持量比は、少なくとも2:1、より好ましくは、少なくとも10:1、又は更により好ましくは、少なくとも100:1であることができる。
本発明の上流触媒物品中の総PGM量は、下流の第2の触媒物品のPGM量よりも低い場合がある。好ましくは、第2の触媒物品と触媒物品との総PGM量比は、少なくとも4:1、好ましくは20:1、又はより好ましくは200:1であることができる。
排出処理システムは、GPF、炭化水素トラップ、NO
xトラップ、リーンNO
xトラップ、SCR触媒、電気加熱触媒、又はこれらの組み合わせを更に含むことができる。
別の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様による触媒物品を使用して、又は上記のような排出処理システムを使用して、ポジティブ点火内燃機関から排出される1つ以上の触媒毒を含む排気ガス中の一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、及び粒子状物質の同時変換を維持する方法を提供する。
定義
用語「ウォッシュコート」は、当該技術分野において公知であり、通常、触媒の製造中の基材に適用される接着性コーティングを指す。
本明細書で使用されるとき、頭字語「PGM」は、「白金族金属」を指す。用語「白金族金属」は、概ね、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir及びPtからなる群から選択される金属を指す。概ね、用語「PGM」は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
本明細書で使用される用語「混合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、単相にての酸化物の混合物を指す。本明細書で使用される用語「複合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
本明細書で使用される「本質的になる」という表現は、特定の材料、及び例えば微量不純物など、その特徴の基本特性に実質的に影響を及ぼさない任意の他の材料又は工程を含む特徴の範囲を制限する。「から本質的になる」という表現は、「からなる」という表現を包含する。
材料に関して本明細書で使用される「実質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容物との関連において、材料が少量、例えば、5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることを意味する。「実質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
材料に関して本明細書で使用される「本質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容との関連において、材料が微量、例えば1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1%重量%以下であることを意味する。「本質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
本明細書で使用される重量%として表されるドーパントの量、特に総量に対する任意の言及は、担体材料又はその耐火金属酸化物の重量を指す。
本明細書で使用される用語「担持量」は、金属重量基準でのg/ft
3の単位の測定値を指す。
本明細書で使用するとき、「原子的に細分化された」という用語は、+/-10原子、好ましくは+/-5原子、より好ましくは+/-2原子の狭い分布を有する「原子的に正確に合成された」ナノ粒子クラスター材料を指す。原子的に細分化されたクラスターは、典型的には2つのプロセスで得ることができる。一方のプロセスは、実験条件(例えば、溶媒、有機配位子、温度、pH...)を調整することであり、ターゲットクラスターは、他のサイズのクラスターと比較して、化学的に極めて安定である。別のプロセスは、典型的には、クロマトグラフィー、電気泳動、又は質量分析法を使用する、ターゲットクラスターのサイズ選択である。
「TEM」は、本明細書で使用される粒径測定方法である。収差補正装置を取り付けたJEOL ARM200CFEを使用して、高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡画像を記録した。Pt/Al
2O
3の触媒粉末を、2枚のスライドガラスの間で粉砕し、穴開きカーボンコーティングCu TEMグリッド上にダスティングした。
「COパルス」は、本明細書で使用される粒径測定方法である。金属分散分析器(BEL-METAL,MicrotracBEL)を使用することによって、COパルス吸着実験を50℃で行い、続いて、Al
2O
3担体によるCO取り込みの部位をクエンチするためにCO
2の予備吸着を行った。触媒試料を、測定前に、600℃で20分間の10%O
2/Heガスと、続いて300℃で10分間の3%H
2/Heガスとによって、前処理した。
TEMによって推定される「平均粒径」とは、球体形状のPt粒子が酸化物材料上に担持されているという仮定の下での粒子の平均直径を意味する。直径(2R)は、以下のように計算することができる;
【数1】
式中、AはTEMによって測定される粒子の面積である。
COパルスによって推定される「平均粒径」とは、球体形状のPt粒子が酸化物材料上に担持されているという仮定の下での粒子の平均直径を意味する。平均粒径は、総原子数に対する表面原子数の比を表すPt金属分散度のデータ、及び対応するPtバルク材料の体積質量密度のデータを用いて計算することができる。
「MALDI」は、マトリックス支援レーザー脱離及びイオン化技術に基づいて、質量分析法のための、合成ナノ粒子クラスター材料をイオン化する方法である。MALDI質量スペクトルは、半導体レーザーを備えた螺旋軌道型飛行時間型質量分析計(JEOL,JMSS3000)によって収集した。DCTB63をMALDIマトリックスとして使用した。レーザー照射によって引き起こされるクラスターの解離を最小限に抑えるために、1:1000のクラスター対マトリックス比を使用した。
「IR分光法」は、本明細書で使用するとき、Ptナノ粒子クラスター上に吸着されたCOの振動数測定方法である。拡散反射赤外フーリエ変換分光法は、MCT検出器を備えたFT/IR-6600 FV(JASCO)のFTIR分光計を使用して、1%CO/Heの流れの下で行った。スペクトルを、100℃、200℃、300℃、及び400℃における試料で記録した。触媒試料を、測定前に、600℃で20分間の10%O
2/Heガスと、続いて300℃で10分間の3%H
2/Heガスとによって、前処理した。
「水熱エージング」は、実際の用途で使用される触媒の劣化状態を再現する方法である。蒸気と、表1に示した交互に入れ替わる還元/酸化ガスとの混合物が導入される電気炉に試料をセットした。
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲内にある多くの変形例を認識する。
【実施例】
【0006】
材料
全ての材料は市販されており、別途記載のない限り、既知の供給元から入手した。
実施例1:原子的に細分化された、アルミナ上の17原子のPtクラスター
トリフェニルホスフィン(TPP)によって保護されたPtクラスターを、
図1及びJ.Phys.Chem.C2017,11002-11009に示されたフローに従って合成した。
H
2PtCl
6・6H
2O(0.1mmol)及びNaOH(約2mmol)をエチレングリコール(25mL)に溶解した。NaOHを用いて溶液のpHを制御し、ポリオール還元により得られる粒径を抑制した。混合物を120℃で10分間加熱して、Ptイオンを還元し、Ptによって触媒されたCOを生成させた。その溶液を室温(25℃)に冷却した後、TPP(0.5245g、2mmol)を含有するアセトン(10mL)をこの溶液に一度に加えた。数分後、その反応溶液に、トルエン(約20mL)及び水(約20mL)を加えた。Ptクラスターを有機相に移した。次いで、有機相を水相から分離し、ロータリーエバポレーターで乾燥させた。乾燥した生成物を、水で、次いでメタノールで洗浄して、エチレングリコール及び過剰のTPPを除去した。白金クラスターの質量数は、
図2に示すように、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析法を使用することにより確認した。
原子的に細分化された17原子のPtクラスターの乾燥生成物(その含有量は全Ptナノ粒子クラスターの70%超である)を、トルエン溶液中に溶解し、次いで、その溶液にアルミナ粉末を混合した。次いで、トルエン溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。乾燥したPt/アルミナ粉末を真空条件下で500℃に加熱して、TPP配位子を除去し、次いで、大気下の静的オーブン中で600℃で2時間焼成した。
実施例2A~2D:アルミナ上の35~71原子のPtクラスター
白金クラスターを、フローが
図3に示されているポリオール還元法を使用して合成した。まず最初に、有機合成装置を使用することにより、塩化白金酸及び水酸化ナトリウムをエチレングリコールに溶解し、所定のpHに調整した。白金クラスターの質量数は、pH、温度、及び反応時間を変えることによって、変化させた。反応後、保護配位子のフェニルエタンチオール(PET)トルエン溶液を加え、次いで、その混合物を水及びメタノールで洗浄し、合成された白金クラスターをトルエンに抽出して、ターゲットの白金クラスターを得た。
図4に示すように、MALDI質量分析法を使用して、白金クラスターの質量数を確認した。
実施例2Aは、トルエン溶液に溶解し、アルミナ粉末と混合されている、半値全幅で+/-5原子の分布を有する35原子のPtクラスターの生成物である。次いで、トルエン溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。乾燥したPt/アルミナ粉末を真空条件下で500℃に加熱して、PET配位子を除去し、次いで、大気下の静的オーブン中で600℃で2時間焼成した。
実施例2Bは、トルエン溶液に溶解し、アルミナ粉末と混合されている、半値全幅で+/-5原子の分布を有する49原子のPtクラスターの生成物である。次いで、トルエン溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。乾燥したPt/アルミナ粉末を真空条件下で500℃に加熱して、PET配位子を除去し、次いで、大気下の静的オーブン中で600℃で2時間焼成した。
実施例2Cは、半値全幅で+/-5原子の分布を有する62原子のPtクラスターの生成物であり、トルエン溶液に溶解し、アルミナ粉末と混合した。次いで、トルエン溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。乾燥したPt/アルミナ粉末を真空条件下で500℃に加熱して、PET配位子を除去し、次いで、大気下の静的オーブン中で600℃で2時間焼成した。
実施例2Dは、半値全幅で+/-5原子の分布を有する71原子のPtクラスターの生成物であり、トルエン溶液に溶解させ、アルミナ粉末と混合した。次いで、トルエン溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。乾燥したPt/アルミナ粉末を真空条件下で500℃に加熱して、PET配位子を除去し、次いで、大気下の静的オーブン中で600℃で2時間焼成した。
比較例3:含浸法により合成されたPt担持アルミナ
白金水溶液をアルミナ粉末に含浸させ、次いで150℃で2時間乾燥させた。乾燥した粉末を600℃で2時間焼成した。
実施例4:水熱エージングに供した、元来、原子的に細分化されたアルミナ上の17原子白金クラスターを有する物質
実施例1のPtクラスター担持アルミナを、表1に示した水熱レドックス条件下でエージングした。エージング温度は1000℃であり、継続時間は4時間であった。
【表3】
実施例5:アルミナ上に約62原子の白金クラスターを元来有する水熱エージングされた物質
実施例2のPtクラスター担持アルミナを、表1に示した水熱レドックス条件下でエージングした。エージング温度は1000℃であり、継続時間は4時間であった。
比較例6:含浸法によって元来合成された、水熱エージングされたPt担持アルミナ
比較例3のPtクラスター担持アルミナを、表1に示した水熱レドックス条件下でエージングした。エージング温度は1000℃であり、継続時間は4時間であった。
TEMによるPtナノ粒子クラスターの幾何学的構造
実施例及び比較例を、走査型透過電子顕微鏡(JEOL Ltdによって製造されたARM 200 CFE)を使用することにより観察した。
図5及び
図6に示したように、実施例1及び2Cでは、非fcc型幾何学的構造を有する白金クラスターがアルミナ上に観察された。平均粒径及び標準偏差(SD)を表2に掲げた。平均粒径は、1.5nm未満と非常に小さく、SDで0.5nm以内の非常に狭い粒度分布が観察された。
【表4】
一方、
図7に示すように、比較例3では、約5nm~10nmのfcc系結晶形態の白金粒子が、アルミナ上で観察された。結晶形態におけるこの白金粒子は、1000~10000個の白金原子からなると考えられる。
図3及び4の比較から明らかなように、アルミナに担持されたPtナノ粒子の原子配列は、実施例による物質と、比較例による物質とでは大きく異なっている。
Ptナノ粒子クラスター上の吸着されたCOのIR分光測定
吸着されたCOのIR分光測定を、赤外線分光計(FT/IR-6600 FV:JASCO Corporation製)を使用して行ない、対応するバルク(fcc型)ナノ粒子の特性とは異なる非fcc型Ptクラスター材料のユニークな特性を確認した。吸着CO-FTIR測定では、実施例及び比較例の物質を、赤外線分光計の反応セルに入れ、COガスを反応セルに導入しながら、白金によって吸着されたCOのIRスペクトルを測定した。
図8は、300℃の温度における実施例1及び2C並びに比較例3のIR吸収スペクトルを示している。実施例及び比較例について、トップCO状態(a-top CO state)に帰すことができる強いIR吸収信号が観察されたが、実施例のピーク位置は、より低い波数(振動数)であり、その発見は、比較例のPtのものとの比較において、吸着されたCOが、実施例のPtとの強い化学的相互作用を介してより活性化されることを示唆している。
図9は、実施例1及び2C、並びに比較例3のPtナノ粒子上の吸着されたCOの振動数と、IR測定により得られた温度との関係を示す図である。吸着されたCOの振動数とは、各温度で得られたIRスペクトルにおいて最も強いピークが観測されるCOの波数を指し、
図9では、吸着されたCOの振動数が低いほどPtナノ粒子上の吸着されたCOの活性化が大きいことを意味している。
図9に示すように、実施例による材料では、吸着されたCOはより低い温度でより大きく活性化された。また、驚くべきことに、実施例1及び2Cによる物質の200℃での吸着されたCOの振動数は、比較例3による物質の400℃での吸着されたCOの振動数よりも小さい。
過酷な水熱エージング処理に対する耐久性
実施例4及び5、並びに比較例6を、TEMによって観察し、その結果を
図10~12に示す。エージング処理後、Ptナノ粒子は、凝集し、かつシンタリングを生じて、粒径がより増大した。平均粒径及びSDを表3に掲げた。実施例4の平均粒径は直径25.3nmで最小であったが、実施例5及び比較例6の平均粒径は実施例4のものの約3倍であった。その結果は明らかに、約17原子のPtの非fcc型クラスターを備えたPt触媒が、過酷なエージングの間でも、アルミナ担体表面との予期しない強い相互作用におそらく起因して、熱安定性の優れた特性を有することを示している。
【表5】
触媒1(比較)
触媒1は、フロースルーモノリス基材上に単層構造を有する三元触媒である。触媒層は、Pt塩溶液の含浸によって、CeZr混合酸化物とLa安定化アルミナとのウォッシュコート上に担持されたPtからなる。層のウォッシュコート担持量は約1.8g/in
3であり、Pt担持量は12g/ft
3であった。
触媒2
触媒2は、本発明に従って、フロースルーモノリス基材上に単層構造で調製した。触媒層は、CeZr混合酸化物と、La安定化アルミナとのウォッシュコート上に担持されたPtクラスター(約62原子)からなる。層のウォッシュコート担持量は約1.8g/in
3であり、Pt担持量は12g/ft
3であった。
触媒3(比較)
触媒3は、フロースルーモノリス基材上に単層構造を有する三元触媒である。触媒層は、Pt塩溶液の含浸によって、CeZr混合酸化物とLa安定化アルミナとのウォッシュコート上に担持されたPtからなる。層のウォッシュコート担持量は約1.0g/in
3であり、Pt担持量は0.5g/ft
3であった。
触媒4
触媒4は、本発明に従って、フロースルーモノリス基材上に単層構造で調製した。触媒層は、CeZr混合酸化物とLa安定化アルミナとのウォッシュコート上に担持されたPtクラスター(約17原子)からなる。層のウォッシュコート担持量は約1.0g/in
3であり、Pt担持量は0.5g/ft
3であった。
触媒5(比較)
触媒5は、フロースルーモノリス基材上に二層構造を有する三元触媒である。底層は、CeZr混合酸化物と、La安定化アルミナと、Baプロモーターとのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。底層のウォッシュコート担持量は約1.4g/in
3であり、Pd担持量は100g/ft
3であった。上層は、第2のCeZr混合酸化物とLa安定化アルミナとのウォッシュコート上に担持されたRhからなる。上層のウォッシュコート担持量は約1.4g/in
3であり、Rh担持量は20g/ft
3であった。触媒5の総ウォッシュコート担持量は約2.8g/in
3であった。
第2の触媒物品1
第2の触媒物品1は、フロースルーモノリス基材上に二層構造を有する三元(Pd-Rh)触媒である。底層は、第1のCeZr混合酸化物と、La安定化アルミナと、並びに8重量%のBaプロモーターとのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。底層のウォッシュコート担持量は約1.7g/in
3であり、Pd担持量は120g/ft
3であった。上層は、第2のCeZr混合酸化物、及びLa安定化アルミナの、ウォッシュコート上に担持されたRhからなる。上層のウォッシュコート担持量は約1.5g/in
3であり、Rh担持量は20g/ft
3であった。第2の触媒物品1の総ウォッシュコート担持量は約3.2g/in
3であった。
第2の触媒物品2
第2の触媒物品2は、フロースルーモノリス基材上に二層構造を有する三元触媒である。底層は、CeZr混合酸化物と、La安定化アルミナと、Baプロモーターとのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。底層のウォッシュコート担持量は約1.4g/in
3であり、Pd担持量は100g/ft
3であった。上層は、第2のCeZr混合酸化物とLa安定化アルミナとのウォッシュコート上に担持されたRhからなる。上層のウォッシュコート担持量は約1.4g/in
3であり、Rh担持量は20g/ft
3であった。第2の触媒物品2の総ウォッシュコート担持量は約2.8g/in
3であった。
実験結果
システム1(比較)
第2の触媒物品1及び比較触媒1を、自然吸気1.8Lの4気筒直列ガソリンエンジンを使用して燃料カットエージングサイクルで、第2の触媒物品1に関しては950℃のピーク温度で200時間及び比較触媒1に関しては850℃で50時間、ベンチエージングした。車両排出は、2.5リッターエンジンを有する商用車で実施し、第2の触媒物品1は、上流において、密結合位置に取り付け、比較触媒1は床下に配置した。第2の触媒物品1及び比較触媒1のための基材は、同じ体積を有する。排出は、LA-4モーダル試験(シティサイクル、米連邦及びカリフォルニア州)で触媒の前後で測定した。
システム2
第2の触媒物品1及び触媒2を、自然吸気1.8Lの4気筒直列ガソリンエンジンを使用して燃料カットエージングサイクルで、第2の触媒物品1に関しては950℃のピーク温度で200時間及び触媒2に関しては850℃で50時間、ベンチエージングした。車両排出は、2.5リッターエンジンを有する商用車で実施し、第2の触媒物品1は、密結合位置に取り付け、触媒2は床下に配置した。第2の触媒物品1及び触媒2のための基材は、同じ体積を有する。排出は、LA-4モーダル試験(シティサイクル、米国連邦及びカリフォルニア州)で触媒の前後で測定した。
【表6】
表4に示したように、触媒2は、床下位置で、システム1の比較触媒1と比較したとき、システム2におけるHC、NMHC、CO及びNO
xの排出削減について改善された性能を示した。
システム3(比較)
第2の触媒物品2及び比較触媒3を、自然吸気4.6Lのガソリンエンジンを使用して燃料カットエージングサイクルで、第2の触媒物品2に関しては940℃のピーク温度で50時間及び比較触媒3に関しては820℃で50時間、ベンチエージングした。車両排出は、2.5リッターのエンジンを有する商用車で実施し、第2の触媒物品2は、上流において、密結合位置に取り付け、比較触媒3は床下に配置した。第2の触媒物品2及び比較触媒3のための基材は、同じ体積を有する。排出は、WLTC(乗用車等用の国際調和試験サイクル;Worldwide Light duty Test Cycle)及びUS06ハイウェイサイクル、米連邦及びカリフォルニア州)で、触媒の前後で測定した。
システム4
第2の触媒物品2及び触媒4を、自然吸気4.6Lのガソリンエンジンを使用して燃料カットエージングサイクルで、第2の触媒物品2に関しては940℃のピーク温度で50時間及び触媒4に関しては820℃で50時間、ベンチエージングした。車両排出は、2.5リッターのエンジンを有する商用車で実施し、第2の触媒物品2は、上流において、密結合位置に取り付け、触媒4は床下に配置した。第2の触媒物品2及び触媒4のための基材は、同じ体積を有する。排出は、WLTC(乗用車等用の国際調和試験サイクル)及びUS06ハイウェイサイクル、米連邦及びカリフォルニア州)で、触媒の前後で測定した。
【表7】
【表8】
表5及び6に示したように、触媒4は、床下位置で、システム3の比較触媒3と比較したとき、システム4における特にHC及びCOの排出削減について改善された性能を示した。
システム5(比較)
比較触媒3を、4.6Lのガソリンエンジンを使用して、燃料カットエージングサイクルで、820℃のピーク温度で50時間、ベンチエージングした。車両排出は、2.5リッターエンジンを有する商用車で実施し、比較触媒3は、密結合位置に取り付けた。排出は、WLTC(乗用車等用の国際調和試験サイクル)で、触媒の前後で測定した。
システム6
触媒4を、4.6Lのガソリンエンジンを使用して、燃料カットエージングサイクルで、820℃のピーク温度で50時間、ベンチエージングした。車両排出は、2.5リッターエンジンを有する商用車で実施し、触媒4は、密結合位置に取り付けた。排出は、WLTC(乗用車等用の国際調和試験サイクル)で、触媒の前後で測定した。
システム7(比較)
比較触媒5を、4.6Lのガソリンエンジンを使用して、燃料カットエージングサイクルで、930℃のピーク温度で50時間、ベンチエージングした。車両排出は、2.5リッターエンジンを有する商用車で実施し、比較触媒5は、密結合位置に取り付けた。排出は、WLTC(乗用車等用の国際調和試験サイクル)で、触媒の前後で測定した。
【表9】
表7に示したように、触媒4は、システム5の比較触媒3と比較したとき、システム6におけるHC、CO及びNO
xの排出削減について改善された性能を示した。特にTHCの場合、密結合位置で、比較触媒3と比較すると、Ptクラスター(約17原子)を使用した触媒3では、ほぼ1/10の排出が達成された。
更に、触媒4は、システム7の比較触媒5と比較すると、より良好な排出制御性能を示し、システム7の比較触媒5の総PGM担持量(100g/ft
3のPd及び20g/ft
3のRh)は、システム6の触媒4の総PGM担持量(0.5g/ft
3のPt)に比べて、200倍超高い。
したがって、本発明は、TWCにおけるPGM担持量を劇的に低減して、貴金属資源を節約するとともに、TWC市場における製品のコストを劇的に削減する大きな可能性を有している。
システム8(比較)
比較触媒3及び第2の触媒物品2を、4.6Lのガソリンエンジンを使用して、燃料カットエージングサイクルで、比較触媒3に関しては820℃のピーク温度で50時間及び第2の触媒物品2に関しては940℃で50時間、ベンチエージングした。車両排出は、2.5リッターのエンジンを有する商用車について実施し、比較触媒3は、上流において、密結合位置に取り付け、第2の触媒物品2は床下に配置した。第2の触媒物品2及び比較触媒3のための基材は、同じ体積を有する。排出は、WLTC(乗用車等用の国際調和試験サイクル)及びUS06ハイウェイサイクル、米連邦及びカリフォルニア州)で、触媒の前後で測定した。
システム9
触媒4及び第2の触媒物品2を、4.6Lのガソリンエンジンを使用して、燃料カットエージングサイクルで、触媒4に関しては820℃のピーク温度で50時間及び第2の触媒物品2に関しては940℃で50時間、ベンチエージングした。車両排出は、2.5リッターのエンジンを有する商用車について実施し、触媒4は、上流において、密結合位置に取り付け、第2の触媒物品2は床下に配置した。第2の触媒物品2及び触媒4のための基材は、同じ体積を有する。排出は、WLTC(乗用車等用の国際調和試験サイクル)及びUS06ハイウェイサイクル、米連邦及びカリフォルニア州)で、触媒の前後で測定した。
【表10】
表8に示したように、システム9は、HC、CO及びNOxの排出削減に関して最高の性能を示した。システム9では、上流の触媒には、より低いPGM(0.5g/ft
3合計)をPtクラスター(約17原子)を用いて充填し、下流の触媒には、より高いPGM(120g/ft
3合計)を充填した。
TWCの触媒システムは、上流(例えば、密結合)ではより高いPGM担持量及び下流(例えば、床下)ではより低いPGM担持量を使用してきたが、本発明は、上流ではクラスター材料を有するより低いPGM担持量及び下流ではより高いPGM担持量を有するTWCの新規システムを作り出した。