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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】流体容器および流体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20240516BHJP
   B05B 11/00 20230101ALI20240516BHJP
   B05B 9/03 20060101ALI20240516BHJP
   B05B 15/00 20180101ALI20240516BHJP
   B65D 47/34 20060101ALI20240516BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B65D83/00 K
B05B11/00 101D
B05B9/03
B05B15/00
B65D47/34 110
B65D1/02 212
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021566366
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 FR2020050121
(87)【国際公開番号】W WO2020157421
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】1900745
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】521330574
【氏名又は名称】シセイドウ インターナショナル フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】スーラール ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】シモン ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ペイショト フィリップ
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-226557(JP,A)
【文献】特開平10-203545(JP,A)
【文献】国際公開第2011/096257(WO,A1)
【文献】特開平08-072842(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178917(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B05B 11/00
B05B 9/03
B05B 15/00
B65D 39/00-55/16
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体(11)と、
開口部(16)を画定するネック部(12)と、を備え、
ネック部(12)は、外側リッジ(140)および内側リッジ(146)を画定する上側環状エッジ部(14)を有し、
開口部(16)が、内側リッジ(146)によって上側環状エッジ部(14)に接続される内壁(161)によって画定され、
少なくとも1つの切り欠き部(15)が、上側環状エッジ部(14)に設けられ、
この切り欠き部(15)は、内壁(161)の上方に延在して内側リッジ(146)を中断するが、外側リッジ(140)まで延在しないことによって、
上側環状エッジ部(14)は、切り欠き部(15)を含むその全周にわたって連続し、
この切部(15)は、開口部(16)の内壁(161)と共にリッジ(156)を画定する基部(151)を形成し、
さらに、ネック部(12)内に係合するインサート(D;D´;S)と、
ネック部(12)内に配設された固定スリーブ(M;M´;M´´)と、を備え、
固定スリーブ(M;M´;M´´)は、少なくとも1つのフランジ部(25)を有し、
フランジ部(25)は、半径方向外側に突出し、ネック部(12)の少なくとも1つの切り欠き部(15)に受け容れられて、前記切り欠き部(15)の前記基部(151)上に載置され、
各フランジ部(25)はそれぞれの切り欠き部(15)を完全に填塞する
ことを特徴とする流体容器(R;R´)。
【請求項2】
直径方向に対向する2つの切り欠き部(15)が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の流体容器(R;R´)。
【請求項3】
前記フランジ部(25)は、回転方向において隙間がない状態で、そのそれぞれの切り欠き部(15)に受けられる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の流体容器(R;R´)。
【請求項4】
前記固定スリーブ(M)は、少なくとも1つの通気孔(22)に穿孔されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の流体容器(R;R´)。
【請求項5】
前記固定スリーブ(M´)が、前記フランジ部(25)の間に2つの対向した平坦部(241´)を有する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の流体容器(R;R´)。
【請求項6】
前記固定スリーブ(M)が、前記ネック部(12)において垂直補強用かつ通気用のリブ(23)を有する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の流体容器(R;R´)。
【請求項7】
前記固定スリーブ(M;M´)は、ネック部(12)の内壁(161)の直径よりも大きなスパンを有する装飾部(27)を備える
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の流体容器(R;R´)。
【請求項8】
可撓性パウチ(27´)が固定スリーブ(M´´)と一体である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の流体容器(R;R´)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の流体容器(R;R´)と、
ネック部(12)の上側環状エッジ部(14)に液密に取り付けられたポンプまたはプラグの吐出部材(P;B´)と、を備える
ことを特徴とする流体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体と、開口部を画定するネック部とを備え、ネック部は、外側リッジおよび内側リッジを画定する上側環状エッジ部を備え、開口部は、内側リッジによって上側環状エッジ部に接続される内壁によって画定される流体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
このような流体容器は、香料および化粧品の分野で一般に使用されている。
それは、一般に、そこに貯蔵されている流体を取り出すためのポンプまたはバルブと関連する。ロッドの単一のプラグまたは延長されたプラグをネック部に取り付けて、ネック部を閉じることもできる。
【0003】
従来技術では、このような流体容器に、インテリア装飾部または可撓性パウチを設けることが知られている。
【0004】
例えば、文献FR2776627には、流体容器のネック部の上側環状エッジ部に載置され、流体容器のネック部に取り付けられたポンプの浸漬管の周囲に延びる装飾部を支持する固定スリーブを備える吐出装置が記載されている。固定スリーブは、流体容器のネック部のように、完全に対称な構成を有する。したがって、装飾部は流体容器内部で精密な角度配向をせずに配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】仏国特許出願公開第FR2776627号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この装置は、特定の内部形状の流体容器内に正確に配置するために、挿入前に正確な初期角度配向を必要とする展開装飾を挿入するのに適していない。実際に、このような方向付けられていない装飾は、内壁に沿ったブロッキングまたは摩擦をもたらし、装飾の完全な展開を妨げる可能性がある。同じことが、内部の可撓性パウチにも当て嵌まる。
【0007】
可撓性パウチには、一般に、流体容器のネック部内およびネック部上に配置された支持スリーブが設けられる。流体容器内の可撓性パウチの角度配向は、しばしば、その幾何学的形状および流体容器の幾何学的形状から必要になる。より具体的には、流体容器が長方形または長円形の断面を有する場合、可撓性パウチは、流体容器内で展開したときに、可能な限り多くの空間を占めることができるように、流体容器を回転させるように、対応する様式でサイズ決定される。そうでなければ、可撓性パウチは、流体容器内に特定の角度配向を有さない。
【0008】
本発明は、装飾部または可撓性パウチの角度方向を固定することを可能にし、より一般的には、装飾部または可撓性パウチを流体容器に対して空間x、y、およびzの3次元に配置することを可能にする流体容器を画定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本発明は、ネック部の上側環状エッジ部に、内壁上に延在する少なくとも1つの切り欠き部が設けるか、または形成して、内側リッジを中断することを提案する。前記少なくとも1つの切り欠き部は、外側リッジまで延在せず、従って、上側環状エッジ部を中断しないようにする。更に、それは、開口部の内壁と共にリッジを画定する基部を形成する。好ましくは、直径方向に対向する2つの切り欠き部が設けられる。
【0010】
その結果、切り欠き部は、上側環状エッジ部の内周の一部分にわたってのみ延在し、したがって、2つの無傷の上側環状エッジ部の一部によって分離された2つの中空切り欠き部を形成する。これらの切り欠き部は、キャビティ、アルコーブ、ハウジング、切り欠き、凹部、くぼみ、溝等として説明することもできる。
【0011】
各切り欠き部の端部は、回転に対する停止形状をなし、基部は軸方向における当接面を形成する。従って、このような切り欠き部に嵌合する部材は、切り欠き部の端部によってxy面内の回転が防止され、切り欠き部の底部によって高さzが規制される。ネック部でのxy面内の回転および高さzに関する当該ロック特性は、インサートを回転させたり流体容器内に沈め込んだりすることなくインサートを通して充填しようとする場合に必須である。また、ネック部および流体容器の内部形状に対してx、yおよびzで配向され、指標付けされた展開を必要とする部材を流体容器内に挿入しようとする場合も必須である。
【0012】
本発明によれば、流体容器は、ネック部に係合され、ネック部内に配置された固定スリーブを備えるインサートをさらに備え、この固定スリーブは少なくとも1つのフランジ部を備え、このフランジ部は半径方向外向きに突出し、ネック部の前記少なくとも1つの切り欠き部内に受け入れられて、その基部(151)上に載置される。インサートは、装飾部または可撓性パウチを含んでもよい。有利には、フランジ部は、そのそれぞれの切り欠き部に回転の隙間が実質的にない状態で受けられる。換言すれば、フランジ部は、各切り欠き部の一方の端部から他方の端部に延びるか、又は切り欠き部の2つの対向する端部に接触する。各フランジ部では、環状エッジ領域が残り、その結果、環状エッジは完全なループを形成し、その幅は切り欠き部でテーパが付けられる。
【0013】
本発明の別の態様によれば、固定スリーブは、少なくとも1つの通気孔で穿孔されてもよく、これにより、固定スリーブの周りの流体容器内に含まれる空気を外側に排出することが可能になる。実際、インサートが既に流体容器内にある状態で、流体容器が流体で満たされる。流体が固定スリーブを通して注入され、流体容器内で流体の液面が固定スリーブの底部に到達しても、流体容器内に残された空気が流体容器から出ることができるようにする必要がある。しかしながら、スリーブは、流体容器のネック部内の適所にあるので、排気を妨げる。したがって、通気孔が1つか2つあれば、流体容器が固定スリーブを経由して流体容器がネック部と連通することになる。変形例または相補的に、固定スリーブに、フランジ部どうしで対向する2つのフラットスポットを設けてもよい。これらのフラットスポットによって、ネック部と固定スリーブの間に通路を作ることが可能になり、これにより、流体容器内に閉じ込められた空気を外側に逃がすことができる。従って、通気孔および/またはフラットスポットを有する固定スリーブを製造することが可能である。
【0014】
インサートがネック部を介して圧入される場合、ネック部に垂直補強リブを設けることが有利である。これらのリブは、スリーブと一体的に形成されてもよく、オーバーモールドまたは二重射出によって形成されてもよい。これらのリブは、流体容器を充填する際の空気の排出にも寄与し得る。例えば、充填中に固定スリーブをネック部内に完全に押し下げないようにすることが可能である。
【0015】
特定の実施形態によれば、固定スリーブは、ネック部の内壁の直径よりも大きいスパンを有する装飾部を備えることができる。したがって、装飾部は、ネック部を通過する間に変形し、次いで、流体容器の本体内で展開する。回転しない流体容器では、装飾部が流体容器内で正しく配向されるのが好ましく、必要でさえある。 別の実施形態によれば、可撓性パウチは、固定スリーブと一体であってもよく、したがって、固定スリーブは、可撓性パウチの支持部としての役割を果たす。
【0016】
また、本発明は、上記で定義した流体容器と、ネック部の上側環状エッジ部上に液密に取り付けられたポンプなどの吐出部材とを備える流体吐出装置を定義する。
【0017】
本発明の範囲は、流体容器のネック部の上側環状エッジ部の内側部分を局所的に成形して、回転停止形状にすることにある。ネック部の切り欠き部と係合するインサートは、回転方向において配向させることができるだけでなく、流体容器内部での高さも正確に位置決めされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、装飾部または可撓性パウチの角度方向を固定することを可能にし、より一般的には、装飾部または可撓性パウチを流体容器に対して空間x、y、およびzの3次元に配置することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態による流体容器の概略斜視図である。
図2図2は、図1の流体容器のネック部の上面図である。
図3】(a)および(b)は、それぞれ図2の断面線AAおよびBBに沿った、図2のネック部の垂直断面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態によるインサートの概略斜視図である。
図5図5は、図4のインサートの固定スリーブの上面図である。
図6図6は、変形例に関する図5と同様の図である。
図7図7は、本発明によるポンプ、流体容器およびインサートを一体化した流体吐出装置の垂直断面図である。
図8図8は、ポンプの代わりに停止部を有する図7と同様の図である。
図9図9は、本発明の第2の実施の形態に係る流体容器に関する図1と同様の図である。
図10図10は、本発明の第2の実施の形態に係るインサートの垂直断面図である。
図11図11は、図9のインサートの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、非限定的な例として、本発明の2つの実施形態を示す添付の図面を参照して、以下でより完全に説明される。
【0021】
図1は、流体容器を形成する本体11と、本体11から上方に延在し、本体11の内部を外部と連通させる開口部16を画定するネック部12とを備える流体容器Rを示す。本体11及びネック部12は、一体であってもよいし、又は2つの別個から組み立ててもよい。ネック部12は、固定リングによってポンプなどの吐出部材を固定するのに役立つ突出環状補強部材13を備えることができる。図2図3(a)および図3(b)を参照すると、ネック部12は、上側環状エッジ部14を画定することが分かる。上側環状エッジ部14は完全に平坦であってもよい。
好ましくは、この上側環状エッジ部14は、突出した環状封止リング142を備える。一方、外側リッジ140は、この上側環状エッジ部14と環状補強部材13との接合部に形成される。内部では、開口部16は内壁161を形成する。内壁161は、内側縁部146を形成することによって上側環状エッジ部14に連結される。本発明によれば、上側環状エッジ部14および内壁161は、2つの切り欠き部15によって中断され、これによって内側リッジ146が中断される。
これらの2つの切り欠き部15は、2つの環状エッジ領域145が切り欠き部15に残るように、外側リッジ140までは延びていない。より具体的には、各切り欠き部15は、例えば60°を超えて上側環状エッジ部14の周縁の一部に延在する。各切り欠き部は、2つの対向する端部152、並びに基部151及び垂直側壁153を画定する。基部151は、開口部16の内壁161と共にリッジ156を画定する。垂直側壁153は、環状エッジ領域145と共にリッジ154を画定する。各切り欠き部15は、概ねダブテイル形状である構成を有してもよい。基部151は平坦であり、一方、垂直壁153は湾曲している。2つの端部152は、平坦であってもよく、半径方向に延びていてもよい。2つの環状エッジ領域145は、より大きな幅を有する2つのエッジ部分141を介して互いに接続されている。換言すれば、切り欠き部15は、環状補強部材13をそのまま残し、開口部16に向かって上側環状エッジ部14をくり抜いたものと言うことができる。上側環状エッジ部14は、切り欠き部15を含む全周にわたって延在することによって、閉じた平坦なループを形成することに留意されたい。封止リング142も全周にわたって連続している。
【0022】
本実施の形態においては、2つの切り欠き部15がネック部に形成されている。しかしながら、本発明の範囲から離れることなく、1つの切り欠き部のみか、または反対に、3つ以上の切り欠き部をネック部に設けてもよい。切り欠き部は、内側にのみ延びるのが好ましい。しかしながら、場合によっては、切り欠き部15を外側リッジ140まで延ばすことも考えられる。切り欠き部は基部151が平坦になっているが、別の構成で作ることも可能である。垂直側壁154は湾曲しているが、別の構成、特に直線で囲まれた平面にすることも考えられる。切り欠き部の本質的な特徴は、切り欠き部が上側環状エッジ部14にくり抜かれ、開口16に向かって開口していることにある。
【0023】
流体容器Rは、例えば、ガラス、木材、セラミック、プラスチック材料、又は金属のような任意の適切な材料で作ることができる。本体11およびネック部12の形状は、上側環状エッジ部14が上述のような1つ以上の切り欠き部を有して形成される限り、本発明にとって重要ではない。
【0024】
本発明によれば、流体容器Rは、図4のように、インサートDを備えており、このインサートDは、本体11の内側にも延びるように流体容器Rのネック部12に係合されるように意図されている。図4のインサートDは、ほぼ管状の形状を有する固定スリーブMを備える。また、インサートDは、スリーブMと一体的に作ることができる装飾部27を含む。変形例では、装飾部27をスリーブMに取り付けて固定することも可能である。1つの製造技術によれば、装飾部27は、オーバーモールド成形またはバイインジェクション成形によって、特にスリーブMよりも柔軟なプラスチック材料で作ることができる。図4を参照すると、装飾部27は、本実施の形態では、スリーブMの両側に延在する2つの翼状部の形態であることが分かる。これら2つの翼状部のスパンは、ネック部12の開口部16の直径よりもはるかに大きい。しかしながら、装飾部27は可撓性を有しており、装飾部27を撓曲させることによって、ネック部12を経由してスリーブM内部に係合させることができる。一旦、ネック部12を通過すると、装飾部27は、流体容器Rの内側に配置され、自由に展開することができる。当然のことながら、この場合には、流体容器Rは、ガラス等の透明材料からなることが好ましい。
【0025】
図4の上部または図5を参照すると、スリーブMの上部には、スリーブMを貫通する1つ以上の通気孔22が設けられていることが分かる。図4に見られる通気孔22は、スリーブMの内側まで延びている。このように、1つ以上の通気孔22を設けることが可能であり、例えば、スリーブMの周囲の全周に等間隔に分配される。スリーブMの外壁には、図5に見られるように、外側に突出する幾つかの垂直補強リブ23が設けられていることにも留意されたい。これらの垂直補強リブ23は、スリーブMと一体形成してもよいし、逆に、例えば、特に剛性のあるプラスチック材料でオーバーモールド成形又はバイインジェクション成形してもよい。垂直補強リブ23の目的は、特に垂直方向の推力に対して、スリーブMの強度を向上させることにある。垂直補強リブ23は、通気孔22を内壁161に接触させないようにすることもできる。垂直補強リブ23は、場合によっては、スリーブMをネック部内の所定位置に摩擦によって保持する役割も果たすことができる。したがって、垂直補強リブ23は、補強、通気、および保持の3つの機能を果たすことができる。
【0026】
スリーブMは、その上端において、環状エッジ部24を規定する。環状エッジ部24は開口部26を区切る。開口部26は、スリーブMを通って延び、通気孔22と連通する。環状エッジ部24はまた、半径方向外側に突出する2つのフランジ部25を形成する。フランジ部25は、流体容器Rのネック部12の切り欠き部15と同様に、ダブテイル形状を有している。フランジ部25は、切り欠き部15に受け入れられるようなサイズにすることができることに留意されたい。好ましくは、2つのフランジ部25はそれぞれ切り欠き部15を完全に填塞する。これは、フランジ部25の2つの対向するエッジ部が、切り欠き部15の2つの対向するエッジ部152に同時に接触することを意味する。したがって、フランジ部25は、切り欠き部15の内側で回転する間隙なしに受けられる。フランジ部25の下面は、切り欠き部15の基部151に押し当てられる。フランジ部25の上面は、ネック部12の上側環状エッジ部14と面一になることが有利である。垂直補強リブ23は、ネック部12の開口部16の内壁161と接触してもよい。通気孔22は、塞がれないように内壁161から離れていることが好ましい。図5の実施の形態では、スリーブMが円筒形状を有するので、2つのフランジ部25は2つの湾曲壁部241によって互いに接続される。
【0027】
図6の変形例では、スリーブM´は、シリンダー形状であるものの、その断面は円形でない。実際、2つのフランジ部25は、2つの平坦部241´によって互いに接続されていることが分かる。したがって、環状エッジ部24´の形状は、もはや円形ではなく、むしろ長方形である。この変形例に係る平坦部241´は、通気孔22も、垂直補強リブ23も形成する必要がない。実際、開口16の内壁161が実質的に又は完全な円筒形であり、かつ平坦部241´が定義上平坦であることを考えると、内壁161と平坦部241´との間に通路ができる。図5の実施形態のように、湾曲壁部241が内壁161と同様に湾曲している場合には、この通路ははるかに小さい。湾曲壁部241と内壁161との間の間隔は、垂直補強リブ23によって確保される。
【0028】
図7は、本発明の流体容器R及び本発明のインサートDを組み込んだ吐出装置を非常に概略的に示す。この吐出装置もまた、ポンプ等の吐出部材Pを含む。この吐出部材Pは、ポンプを作動させ、例えば、噴霧の形態で流体を分配することを可能にする押しボタンBを備えている。ポンプPを流体容器Rのネック部12に固定するために固定リングFが設けられている。固定リングFは圧着、ねじ込み又はスナップ嵌め可能なリングであってもよい。固定リングFは、吐出部材Pをネック部12上に液密に固定し続けるためのものである。図7において、フランジ部25は切り欠き部15の内側に係合されており、吐出部材PはフランジP1を備える。フランジP1はネック部の上側環状エッジ部14と液密になっており、これらの間にネックガスケットを介在さてもよいことに留意されたい。この液密な封止は、好ましくは、封止リング142で行われる。吐出部材Pの本体は、インサートDの固定スリーブMの内側に延在する。
【0029】
この吐出装置を組み立てる手順は以下の通りである。インサートDは、最初に、ネック部12を通して流体容器Rに係合される。これを行うために、インサートDの下端が開口16に向かって差し出される。インサートDを流体容器Rに押し当てることにより、装飾部27は、例えばスリーブMに巻回されるように変形する。これによって、装飾部27とスリーブMとをネック部12の開口部16に係合させることができる。この目的のため、スリーブMの上側環状エッジ部24が強く押圧されることになるので、垂直補強リブ23が役に立つ。インサートDをネック部12に強制的に挿入することは、装飾部27がネック部12の下方で本体11の内側に到達し、そこで自由に展開することができるまで続く。インサートDを流体容器R内に位置決めする最終段階では、フランジ部25を切り欠き部15と整列させて位置決めすることによって、切り欠き部16がフランジ部25を受け入れることができるようにする。最終的に、フランジ部25を環状エッジ部24上へ軸方向に押し当てることによって、フランジ部25を切り欠き部15の内側に係合させることを可能にする。インサートDが流体容器Rの内側で目的位置に到達しただけでなく、何よりも、切り欠き部15にフランジ部25を係合させたことによって、装飾部27を本体11の内側で正確に配向させることができる。このようにすれば、特に流体容器Rが回転に関して対称でない場合に、装飾部27を流体容器Rに対して精密な角度に配向させることが可能になる。
【0030】
本実施の形態では、装飾部27のスパンが、開口部16の内径よりもはるかに大きいが、全体のサイズがネック部12の開口部16のサイズ内に留まる別の装飾部を考慮することも可能である。
【0031】
インサートDは、流体容器Rが空である間に流体容器Rに導入されることに留意しなければならない。流体容器Rは、インサートD、より具体的には、その固定スリーブMを介して充填される。実際には、注入カニューレが開口部26の内側に係合される。この注入カニューレは、スリーブMを通して流体容器内に流体を注入する。流体容器R内の流体がスリーブMの下端に到達するとすぐに、流体容器R内に捕捉された空気が、ネック部に係合したスリーブMの周りから逃げる必要がある。捕捉された空気の排出を容易にするために、上述のように、1つ以上の通気孔22が設けられる。これにより、スリーブMの周りだけでなくスリーブMを通じて排気することができる。補完的に、または変形例では、平坦部241´を有する固定スリーブM´が、断面積が増大した2つの通路を作り出すことにより、正しい排気が可能になる。このように、平坦部や通気孔、あるいはその両方を兼ね備えた固定スリーブ用いることができる。
【0032】
こうして流体容器が充填されると、吐出部材Pが、流体容器R上に取り付けられ、固定リングFを用いて所定の位置に固定される。最後に、押しボタンBが、吐出部材Pのアクチュエータロッドに取り付けられる。図示しない保護キャップを取り付けて、押しボタンBを保護してもよい。
【0033】
変形例では、インサートDは、単純なプラグを取り付けることができるリングによってネック部上の適所に保持することができる。図8は、より進んだ実施の形態を示しており、インサートD´の固定リングF´、ネックガスケットGおよびスリーブMと係合するプラグB´を実装している。詳述すると、インサートD´は、インサートDと同様であってもよく、場合によっては、インサートDより短くてもよいが、そのスリーブMは、全体として変化しないままである。そのフランジ部25は、切り欠き部に係合される。ネックガスケットGは、ネック部の封止リング142、フランジ部25、および環状エッジ部24上に配置される。ネックガスケットGの内周は、スリーブMの内壁と揃えることができる。固定リングF´はネック部に係合し、内側フランジ部F1を備える。内側フランジ部F1は、ネックガスケットGの上方に延びることによって、ネックガスケットGをネック部の封止リング142、フランジ部25および環状エッジ部24に対して押圧し、封止する。また、固定リングF´は、内側をねじ切りしたブッシュF2を備える。プラグB´は、1個又は幾つかの部品からなり、ねじ切したブッシュF2と螺合するように、ねじ切したリングB2を備えている。プラグB´はまた肩部B1を備え、肩部B1は、ネックシールGの内側エッジ部に押し当てることによって、ネックシールGの内側エッジ部をスリーブMの環状エッジ部24に押し当てる。プラグB´は、スリーブMに係合するニップルB3を形成することによって、スリーブの内壁および/またはネックシールGと液密に接触する。最終的に、ニップルB3からは、流体アプリケーターとして機能するロッドB4が延出する。ロッドB4は、スリーブM内へ延出し、スリーブMを越えて、流体容器R内まで延出してもよい。
【0034】
プラグB´を固定リングF´にねじ止めによって固定するかどうかは任意であり、ニップルB3とスリーブMとの液密な摩擦による係合によってプラグB´を完全に保持してもよい。
【0035】
以下、図9図11を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図9の流体容器R´は、正方形または実質的に正方形の水平断面を有することを除いて、図1の流体容器R´と実質的に同一である。切り欠き部15を有するネック部12は、第1の実施の形態のものと同一であってもよく、したがって詳細には説明しない。しかしながら、インサートSは、第1の実施の形態のものとは非常に異なる。このインサートSはまた固定スリーブM´´を備えており、スリーブM´´は全体としてスリーブMまたはM´´の上部と実質的に同様の構成であってもよい。この固定スリーブM´´は、貫通開口部26を画定する環状エッジ部24を備える。環状エッジ部24は2つのフランジ部25が設けられており、第1の実施の形態の環状エッジ部と同一であってもよい。装飾部27の代わりに、インサートSは可撓性パウチ27´を含む。可撓性パウチ27´は、積層複合シートを溶接することによって作ることができ、積層複合シートには、例えば、アルミニウム及びプラスチック材料を用いることができる。可撓性パウチ27´は、固定スリーブM´´の周りに溶接され、固定スリーブM´´はパウチ支持体として機能する。その初期状態では、図11に見られるように、可撓性パウチ27´は実質的に平坦である。正方形状の流体容器R´を考えると、長方形または長方形の水平断面の流体容器の場合のような配向または好ましい方向はもはや存在しない。したがって、可撓性パウチ27を本体11´の内側で配向させることが有利であり、必要でさえある。この配向は自動的には行われず、したがって、可撓性パウチ27´を本体11´内で回転させて、その平面が本体11´の対角線(図8に点線で示す)に向くようにする必要がある。この回転による配向は、固定スリーブM´´を握り、それ自体で回転させることによって、目視でまたは大まかに行うことができる。しかしながら、本発明のおかげで、最適な向きを試行錯誤によって探索する必要はもはやない。実際、可撓性パウチ27´を所定の角度方向でスリーブM´´に固定すれば十分であり、これにより、フランジ部25を切り欠き部15に係合させりと、可撓性パウチ27の平面を本体11´の対角線と位置合わせすることが可能になる。すると、可撓性パウチ27´は本体11´内に配置され、最大の空間を占めることができる。
【0036】
可撓性パウチ27´の平面を本体11´の対角線に揃える配置は、固定スリーブM´´にフランジ部25が設けられているという事実とは別に、この配置自体に自らを保護することができる特性があることに留意されたい。この特性(平面と対角線との整列)は、正方形の水平断面の流体容器またはボトルの場合に特に有利である。
【0037】
装飾部であろうと可撓性パウチであろうと、そのスリーブを備えた成形容器は、流体容器内における配置、より具体的には角度方向を正確に決定することを可能にする。有利には、この角度配向は、切り欠き部15およびフランジ部25のおかげで、その後、ポンプなどの吐出部材を装着する妨げにならない。上側環状エッジ部14がその全周にわたってその完全性を維持するからである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、装飾部または可撓性パウチの角度方向を固定することを可能にし、より一般的には、装飾部または可撓性パウチを流体容器に対して空間x、y、およびzの3次元に配置することを可能にする流体容器として有用である。
【符号の説明】
【0039】
D…インサート
M…固定スリーブ
P…吐出部材
R…容器
11…本体
12…ネック部
15…切り欠き部
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図11