(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】酵素触媒作用によりスルホキシドを調製するための選択的プロセス
(51)【国際特許分類】
C12P 11/00 20060101AFI20240516BHJP
C12P 17/00 20060101ALI20240516BHJP
C12N 9/02 20060101ALN20240516BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20240516BHJP
【FI】
C12P11/00
C12P17/00
C12N9/02
C12N15/53
(21)【出願番号】P 2021576002
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 FR2020051013
(87)【国際公開番号】W WO2020254744
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-02-16
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】521553117
【氏名又は名称】セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ スィヤンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】517370250
【氏名又は名称】ユニヴェルスィテ デクス マルセイユ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレミー、ジョルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ブラッセレット、ユゴー
(72)【発明者】
【氏名】アルファン、ヴェロニク
(72)【発明者】
【氏名】デュケーヌ、カーティア
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】Tetrahedron Asymmetry,1992年,Vol.3, No.8, pp.1063-1068
【文献】FEMS Microbiology Letters,1997年,Vol.155, pp.99-105
【文献】Catalysis Communications,2018年,Vol.111, pp.59-63
【文献】Biochemistry,1982年,Vol.21, pp.2644-2655
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00-41/08
C12N 9/00-9/99
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、スルホキシドの調製プロセス。
a)スルフィドと、
前記スルフィドのスルホキシドへの酸化を触媒する酵素Eと、
酸化剤と、
を含む組成物Mを調製する工程。
b)前記スルフィドのスルホキシドへの酵素的酸化反応を行う工程。
c)工程b)で得られたスルホキシドを回収する工程。
ここで、前記スルフィドは、前記酵素的酸化反応を行う工程b)において、完全には消費されず、
前記酵素Eは、
バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ
(BVMO)であり、
前記スルフィドは、対称スルフィドであり、
前記酵素Eが、全細胞で(in whole cells)存在し、[スルフィド](mmol/L)/[細胞](g
cdw
・L
-1
)の比が、0.01~10mmol/g
cdw
であり、
酵素的酸化反応を行う工程b)の後に残っている前記スルフィドの量は、前記スルフィドの開始重量に対して、0.0001重量%~99.9重量%である。
【請求項2】
前記スルフィドが、以下の一般式のスルフィドである、請求項1
に記載の調製プロセス。
R
1-S-R
2(I)
ここで、
R
1およびR
2は、同一であり、(C
1-C
20)アルキル、(C
2-C
20)アルケニル、(C
2-C
20)アルキニル、(C
3-C
10)シクロアルキルおよび(C
6-C
10)アリールからなる群から選択される、
または、
R
1およびR
2は、それらが結合している硫黄原子とともに、ヘテロシクロアルカンまたはヘテロアレーンを形成しており、
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルカンおよびヘテロアレーンは、1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルおよびアリールは、1つまたは複数のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【請求項3】
前記スルフィドが、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジオクチルスルフィド、ジドデシルスルフィドおよびテトラヒドロチオフェンから選択される、
請求項1又は請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項4】
前記酸化剤が、空気、低酸素空気、高酸素空気、純酸素および過酸化水素からなる群から選択される、請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載の調製プロセス。
【請求項5】
前記組成物Mが、前記酵素Eの少なくとも1種の補因子Cを更に含む、請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載の調製プロセス。
【請求項6】
前記補因子Cが、ニコチン補因子およびフラビン補因子から選択される、請求項
5に記載の調製プロセス。
【請求項7】
前記酵素Eが、シクロヘキサノンモノオキシゲナーゼであり、前記補因子Cが、NADPであるか、または、NADPおよびFADである、請求項
5または請求項
6に記載の調製プロセス。
【請求項8】
対称スルフィドと、
前記対称スルフィドの対称スルホキシドへの酸化を触媒する
バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素
であって、前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素が、全細胞で(in whole cells)存在し、[スルフィド](mmol/L)/[細胞](g
cdw
・L
-1
)の比が、0.01~10mmol/g
cdw
である、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素と、
を含む組成物。
【請求項9】
前記対称スルフィドが、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジオクチルスルフィド、ジドデシルスルフィドおよびテトラヒドロチオフェンから選択される、請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素の、対称スルフィドを対称スルホキシドに酸化するための使用
であって、
前記バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素が、全細胞で(in whole cells)存在し、[スルフィド](mmol/L)/[細胞](g
cdw
・L
-1
)の比が、0.01~10mmol/g
cdw
である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素触媒作用によって有機スルフィドから有機スルホキシドを調製するための選択的プロセス、ならびに、特にこのプロセスの実施を可能にする組成物、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
メルカプタンは産業的に非常に興味深いものであり、現在、特により複雑な有機分子の合成の出発物質として、化学産業で非常に広く使用されている。例えば、メチルメルカプタン(CH3SH)は、動物の栄養に使用される必須アミノ酸であるメチオニンの合成の出発物質として使用される。メチルメルカプタンは、ジアルキルジスルフィドの合成、より具体的には、石油留分の水素化処理触媒用の硫化添加剤であるジメチルジスルフィド(DMDS)の合成にも使用される。
【0003】
メルカプタン、より具体的にはメチルメルカプタンは、一般に、以下の式(1)に従って、触媒の存在下で高温でアルコールと硫化水素から開始する既知のプロセスによって工業的に合成される。
【0004】
R-OH+H2S→R-SH+H2O(1)
【0005】
しかし、この反応は、以下の式(2)により、スルフィドなどの副生成物の形成を引き起こす。
【0006】
R-OH+R-SH→R-S-R+H2O(2)
【0007】
メルカプタンは、以下の式(3)に従って、ハロゲン化誘導体と、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウム水硫化物と、から合成することもできる(塩素化誘導体と水硫化ナトリウムとを使用した例を示す)。
【0008】
R-Cl+NaSH→R-SH+NaCl(3)
【0009】
この第二の合成経路でも、不要なスルフィドの存在が引き起こされる。
【0010】
最後に、メルカプタンは、以下の式(4)に従って、ターゲットが分枝メルカプタンであるか非分枝メルカプタンであるかに応じて、酸触媒作用によって、または、光化学的に、オレフィンと硫化水素から合成することもできる。
【0011】
RARBC=CRCRD+H2S→RARB-CH-C(SH)RCRD(4)
【0012】
再び、この合成は、副生成物としてスルフィドを生成する。
【0013】
これらのスルフィドは工業的に大量に得られ、主に廃棄のために送られる。これは、意図したメルカプタンを製造するプロセスの効率の低下と、それらの廃棄に関連する追加コストを表している。このように廃棄物が生成することは、メルカプタンの生産者にとって真の産業上の問題であり、従って、これらの副生成物から価値を引き出すことを目指している。これを行うにはさまざまな方法がある。
【0014】
まず第一に、スルフィド自体の市場がある。ジメチルスルフィドは、食品フレーバーとして、または石油原料のスチームクラッキングにおけるコークス化防止剤として使用できる。しかし、これらの市場での需要は、スルフィドの生産量よりもはるかに少ない。
【0015】
スルフィドは、スルフヒドロリシス反応によって対応するメルカプタンに変換することもできる。それにもかかわらず、この反応を行うために必要な条件は比較的過酷であり、新たな寄生反応を引き起こす。従って、この産業用途は限られている。
【0016】
最後に、生成されたスルフィドから価値を引き出す別の手段には、スルフィドの酸化反応が含まれ、スルフィドをスルホキシドおよび/またはスルホンに変換する。これらの種類の化学酸化反応はよく知られている。それらは、触媒の存在下または非存在下で、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、酸素、オゾンまたはN2O4などの酸化窒素などの種々の酸化剤を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、スルフィドを酸化する化学的方法は、実際の産業上の問題を提示する。最も重大な問題の1つは、酸化反応の化学選択性が低いことである。現在のところ、酸化をスルホキシドまたはスルホンのみに向けて誘導する利用可能な工業的手段はない。スルホキシドとスルホンの混合物は、スルフィドの酸化の結果として常に得られる。これらの化学的方法の他の欠点は、例えば、安全性の問題につながる非常に強力な試薬を使用すること、または窒素酸化物の入手可能性が低いことである(産業サプライヤーがほとんどない)。更に、これらの化学プロセスのいくつかは、窒素酸化物を使用するプロセスなど、汚染物質排出の問題を引き起こす。
【0018】
化学的酸化と同様に、スルフィドの酸化は、溶液中で、または生物、一般的には微生物中で、酵素触媒作用によって生物学的プロセスにおいて触媒され得る。しかしながら、酵素触媒作用によって行われるこれらの酸化は、得られる生成物に関して選択的ではない。ここでも、対応するスルフィドからスルホキシドとスルホンの混合物が得られる。
【0019】
従って、スルホンに対するスルフィドのスルホキシドへの酸化反応の選択性が低いことは、使用される酸化プロセス(化学的または酵素的)に関係なく、産業の最前線で問題を引き起こす。実際、コストと品質の明らかな理由から、対象の生成物であるスルホキシドまたはスルホンのいずれかに対して可能な限り最大の選択性を有することが望ましい。
【0020】
Bordewickらによる著作物は、非対称芳香族スルフィドのスルホキシド化反応を触媒するためのヤロウイア属モノオキシゲナーゼA-Hの使用を提案している(S.Bordewick,EnzymeMicrob.Technol.,2018,109,31-42)。この出版物では、開始酵素の変異株を得るための遺伝子変異の技術の使用により、ジメチルスルホンの生成が95%近く減少する。
【0021】
遺伝子変異のそのような技術の使用は不確実で高価である。
【0022】
これらの方法はまた、高い失敗率を有し、これは、全体的な酵素活性、より具体的には目的の基質に対する酵素活性の低下または喪失にもつながる。従って、そのような変更は、良好な選択性を保証するものではない。
【0023】
従って、スルフィド、特にメルカプタン合成からのスルフィドを利用するための、工業的且つ経済的に実施可能なプロセスが必要である。
【0024】
より具体的には、スルフィドをスルホキシドに酸化するための、工業的に実施可能で、より経済的で、より環境に優しいプロセスが必要である。
【0025】
スルフィドをスルホキシドに酸化するための、選択的であり、工業的に操作するのが簡単で経済的であるプロセスが必要である。
【0026】
本発明の目的は、上記の必要性の全部または一部を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
従って、本発明は、スルホキシドを調製するための、好ましくは選択的な、以下の工程を含むプロセスに関する。
a)スルフィドと、
前記スルフィドのスルホキシドへの酸化を触媒する酵素Eと、
任意選択で、前記酵素Eの少なくとも1種の補因子Cと、
酸化剤と、
を含む組成物Mを調製する工程。
b)前記スルフィドのスルホキシドへの酵素的酸化反応を行う工程。
c)工程b)で得られたスルホキシドを回収する工程。
d)工程c)で回収されたスルホキシドを任意選択で単離および/または任意選択で精製する工程。
ここで、前記スルフィドは、酵素反応を行う工程b)において、完全には消費されない。
【0028】
驚くべきことに、本発明者らは、酵素触媒作用によってスルホキシドを調製するための選択的プロセスを見出した。前記プロセスを用いて、対応するスルフィドから、より具体的にはスルホンを得ることなく(または無視できる量のスルホンとともに)スルホキシドを得ることが可能である。
【0029】
その理由は、酵素触媒作用によるスルフィドの酸化が、通常、以下の反応シーケンスに従って行われるためである。
【0030】
【0031】
上記のスキームにおいて、使用される酵素、その補因子、および酸化剤は、スルホキシドが形成される第1の工程と、スルホンが形成される第2の工程とで同じである。従って、同じ反応混合物内で、スルホキシドとスルホンの両方を得ることが可能であり、これは、上記したように望ましくない。
【0032】
本発明者らは、得られる副生成物、より具体的にはスルホンを減少させるか、更には抑制することによって、スルホキシドを選択的に得ることを可能にするプロセスを見出した。従って、本発明者らは、スルホンを得ることなく(即ち、得られたスルホキシドをスルホンに酸化する酵素なしで)スルホキシドを得る手段を決定した。
【0033】
驚くべきことに、スルフィドのスルホキシドへの酸化が、優先的に、スルホキシドのスルホンへの酸化に対して排他的に起こることが見出された。従って、反応混合物中にスルフィドが存在するとき(例えば、上記で定義された組成物Mにおいて)、スルホンが形成されることなく、スルホキシドが選択的に形成される。反応混合物(例えば、上記で定義された組成物M)がもはやスルフィドを含まず、代わりにスルホキシドのみを含むとき、スルホキシドはスルホンに変換される。
【0034】
従って、本発明のおかげで、スルホキシドまたはスルホンの選択的生成を容易に制御することが可能であり、プロセスの操作条件を変更する必要性を伴わずにそのようなことを行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、反応が酵素CHMOによって触媒される場合の、反応混合物中に存在するジエチルスルフィド(DES)、ジエチルスルホキシド(DESO)およびジエチルスルホン(DESO
2)の濃度(mM)を、時間(時間)の関数として示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
【0037】
「(C1-C20)アルキル」という用語は、線状または分枝状であり得、1~20個の炭素原子を含む飽和脂肪族炭化水素を意味する。好ましくは、アルキルは、1~12個の炭素原子、または1~4個の炭素原子を含む。例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルなどがある。「分枝」という用語は、アルキル基が主アルキル鎖に沿って置換されていることを意味すると理解される。
【0038】
「(C2-C20)アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む上記で定義されたアルキルを意味する。
【0039】
「(C2-C20)アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む上記で定義されたアルキルを意味する。
【0040】
「(C6-C10)アリール」という用語は、単環式、二環式または三環式芳香族炭化水素化合物、より具体的にはフェニルおよびナフチルを意味する。
【0041】
「(C3-C10)シクロアルキル」という用語は、3~10個の炭素原子を含む単環式または二環式飽和脂肪族炭化水素、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルを意味する。
【0042】
(C3-C10)ヘテロシクロアルカンは、3~10個の炭素原子を含み且つ少なくとも1つの硫黄原子を含むシクロアルカン、好ましくはテトラヒドロチオフェン、を指し、任意選択で、少なくとも1つの他のヘテロ原子を含む。
【0043】
(C4-C10)ヘテロアレーンは、4~10個の炭素原子を含み且つ少なくとも1つの硫黄原子を含むアレーン、例えばチオフェン、を指し、任意選択で、少なくとも1つの他のヘテロ原子を含む。
【0044】
ヘテロ原子は、具体的には、O、N、S、Si、Pおよびハロゲンから選択される原子であると理解される。
【0045】
「触媒」は、一般に、反応を加速し、この反応の終了時に変化していない物質であると理解される。一実施形態によれば、酵素Eは、スルフィドのスルホキシドへの酸化反応を触媒する。
【0046】
「触媒量」は、具体的には、反応を触媒するのに十分な量、より具体的には、スルフィドのスルホキシドへの酸化を触媒するのに十分な量を指す。より具体的には、触媒量で使用される試薬は、化学量論的比率で使用される試薬の重量に対して、より少ない量で、例えば、約0.01重量%~20重量%で使用される。
【0047】
反応の選択性は、一般に、反応後に消費された反応物のモル数、例えば、消費されたスルフィドのモル数に対する、形成された生成物のモル数、例えば、形成されたスルホキシドのモル数を表す。
【0048】
変換、選択性、および収率の通常の定義は以下のとおりである。
【0049】
変換=(初期状態の反応物のモル数-反応後に残っている反応物のモル数)/(初期状態の反応物のモル数)
【0050】
選択性=目的の生成物に変換された反応物のモル数/(初期状態の反応物のモル数-反応後に残っている反応物のモル数)
【0051】
収率=変換×選択性
【0052】
従って、「スルホキシドを調製するための選択的プロセス」は、特に、スルホンを形成せずに(または無視できる量のスルホンを形成して)、スルフィドを消費してスルホキシドを生成するプロセスを指す。一実施形態によれば、スルフィドのスルホキシドへの酸化反応は化学選択的である。
【0053】
例えば、本発明のプロセス、より具体的には工程b)は、スルホキシドに関して95%~100%、好ましくは99%~100%の選択性を提供する。
【0054】
プロセス
【0055】
本発明のプロセスは、スルホキシドを調製するための選択的であり更に化学選択的であるプロセスであり得る。プロセスは、好ましくは、対応するスルホンの形成をもたらさない。
【0056】
一実施形態によれば、それは工程b)であり、より具体的には、工程b)で行われるスルフィドのスルホキシドへの酵素的酸化反応であり、それは選択的であり、好ましくは化学選択的である。
【0057】
一実施形態によれば、組成物Mは、酵素Eがスルフィドをスルホキシドに変換するのに十分な量のスルフィドを常に含み、好ましくはスルホンが形成されない。一実施形態によれば、スルフィドは、組成物M中に過剰に提供される。
【0058】
酵素反応を行う工程b)の後に残っているスルフィドの量は、スルフィドの開始重量、即ち工程a)からのスルフィドに対して、0.0001重量%~99.9重量%、好ましくは0.1重量%~99重量%、好ましくは1重量%~50重量%、例えば1重量%~10重量%であり得る。
【0059】
より具体的には、組成物Mは、
化学量論量のスルフィドと、
触媒量の酵素Eと、
任意選択で、触媒量の少なくとも1種の補因子Cと、
準化学量論量の酸化剤と、
を含む。
【0060】
スルフィド
【0061】
スルフィドは、具体的には、有機スルフィドであり、これは少なくとも1つの-CSC-官能基を含む任意の有機化合物である。
【0062】
一実施形態によれば、組成物Mは、少なくとも1種のスルフィドを含む。それは、例えば、1種、2種、またはそれ以上の異なるスルフィドを含み得る。前記スルフィドは対称的であり得る。これは、硫黄原子が化合物に対して対称の中心を表すことを意味する。
【0063】
一実施形態によれば、前記スルフィドは、以下の一般式を有する。
【0064】
R1-S-R2(I)
【0065】
ここで、R1およびR2は、同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、(C1-C20)アルキル、(C2-C20)アルケニル、(C2-C20)アルキニル、(C3-C10)シクロアルキルおよび(C6-C10)アリールからなる群から選択される、または、
R1およびR2は、それらが結合している硫黄原子を有する環、好ましくは(C3-C10)ヘテロシクロアルカンまたは(C6-C10)ヘテロアレーン基を形成している。
【0066】
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルカンおよびヘテロアレーン基は、任意選択で、1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルおよびアリール基は、1つまたは複数のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0067】
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルカンおよびヘテロアレーン基は、(C1-C20)アルキル、(C3-C10)シクロアルキルおよび(C6-C10)アリールからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、非限定的な例として、アルコール、アルデヒド、ケトン、酸、アミド、ニトリルおよびエステル官能基、または硫黄、リンおよびケイ素を有する官能基から選択される1つまたは複数の官能基で官能化されていてもよい。
【0068】
一実施形態によれば、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルカンおよびヘテロアレーン基は、(C1-C20)アルキル、(C3-C10)シクロアルキル、(C6-C10)アリール、-OH、-C(O)OH、-C(O)H、-C(O)-NH2、-NH2、-NHR、-NRR’、-C(O)-、-C(O)-NHR’、-C(O)-NRR’、-COORおよび-CNからなる群から選択される1つまたは複数の置換基によって置換されていてもよい。ここで、RおよびR’は、互いに独立して、(C1-C20)アルキル基を表す。
【0069】
1つの好ましい実施形態によれば、R1およびR2は、同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、(C1-C20)アルキル、(C2-C20)アルケニル、(C2-C20)アルキニルおよび(C3-C10)シクロアルキルからなる群から選択される、または、R1およびR2は、それらが結合している硫黄原子とともに、(C3-C10)ヘテロシクロアルカン基を形成している。
【0070】
R1およびR2は、好ましくは、(C1-C20)アルキルから選択される、または、R1およびR2は、それらを有する硫黄原子とともに、(C3-C10)ヘテロシクロアルカンを形成している。スルフィドのR1およびR2は、好ましくは同一である(即ち、対称的なスルフィドを形成している)。
【0071】
より好ましくは、スルフィドは、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジオクチルスルフィド、ジドデシルスルフィドおよびテトラヒドロチオフェンから選択される。本発明によれば、ジメチルスルフィドが、特に好ましい。一実施形態によれば、スルフィドは対称的であり、従ってプロキラルではない。一実施形態によれば、スルフィドは、tert-ブチルメチルスルフィド(CAS番号6163-64-0)ではない。
【0072】
酸化剤
【0073】
酸化剤は、スルフィドをスルホキシドに酸化することができる任意の化合物である。
【0074】
酸化剤は、空気、低酸素空気、高酸素空気、純酸素および過酸化水素からなる群から選択することができる。1つの特定の実施形態によれば、酸化剤は、酵素Eがモノオキシゲナーゼまたはジオキシゲナーゼである場合は、空気、低酸素空気、高酸素空気および純酸素からなる群から選択され、酵素Eがペルオキシダーゼである場合は、過酸化水素から選択される。酸化剤がガス状である場合、それは溶解ガスとして組成物M中に存在する。高酸素または低酸素空気中の酸素のパーセンテージは、当業者に知られている方法で、反応速度および酵素系との適合性に従って選択される。
【0075】
酸化剤は、組成物Mにおいて準化学量論量であり得る。従って、存在するスルフィドは、工程b)で行われる酵素反応において酸化剤によって部分的に消費されるが、完全には消費されない。
【0076】
空気(低酸素または高酸素であり得る空気)を使用する場合、酸化剤として工程b)で行われる酵素反応中に消費されるのは明らかに空気内の酸素である。
【0077】
反応の終わりに、酸素は、使用される酵素Eがモノオキシゲナーゼである場合、通常水に変換され、酵素Eがジオキシゲナーゼである場合、完全に消費される。一方、過酸化水素は、ペルオキシダーゼの作用に続いて水に変換される。従って、本発明のプロセスは、排出物および環境への優しさの点で特に有利である。
【0078】
酵素E
【0079】
酵素Eは、オキシドレダクターゼであり得、好ましくは、モノオキシゲナーゼ、ジオキシゲナーゼおよびペルオキシダーゼからなる群から選択されるオキシドレダクターゼであり得、より好ましくは、モノオキシゲナーゼから選択されるオキシドレダクターゼであり得る。
【0080】
酵素Eは、好ましくは、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)である。
【0081】
更により好ましくは、BVMOの中で、酵素Eは、シクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ(CHMO)であり得、より具体的には、シクロヘキサノン1,2-モノオキシゲナーゼまたはシクロペンタノンモノオキシゲナーゼ(CPMO)であり得、より具体的には、シクロペンタノン1,2-モノオキシゲナーゼであり得る。
【0082】
シクロヘキサノン1,2-モノオキシゲナーゼは、具体的には、クラスEC1.14.13.22に由来する。
【0083】
1つの特定の実施形態によれば、CHMOは、アシネトバクター属菌種(例えば、菌株NCIMB9871)由来のCHMO、および/または、クラスターAB006902に属する遺伝子chnBによってコードされたCHMOである。
【0084】
シクロペンタノン1,2-モノオキシゲナーゼは、具体的には、クラスEC1.14.13.16に由来する。
【0085】
1つの特定の実施形態によれば、CPMOは、コマモナス属菌種(例えば、菌株NCIMB9872)由来のCHMO、および/または、遺伝子cpnBによってコードされたCHMOである。
【0086】
モノオキシゲナーゼはまた、ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼ(HAPMO)、より具体的には4-ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼであり得る。
【0087】
ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼは、具体的には、クラスEC1.14.13.84に由来する。
【0088】
1つの特定の実施形態によれば、HAPMOは、遺伝子hapEによってコードされたシュードモナスフルオレッセンス由来のHAPMOである。
【0089】
補因子C
【0090】
「補因子C」は、特に、上記で定義された酵素Eの触媒活性に必要な、および/または、その触媒活性を増強することを可能にする補因子を指す。
【0091】
一実施形態によれば、1種または2種以上の補因子Cが組成物Mに存在する。例えば、別の補因子Cに加えて、酵素E中にすでに自然に存在する補因子Cを、組成物Mに混合することが可能である。
【0092】
オキシドレダクターゼがペルオキシダーゼである場合、補因子Cを組成物Mに添加しないことが可能である。酵素Eがモノオキシゲナーゼまたはジオキシゲナーゼのクラスに属する場合、ニコチンおよび/またはフラビン補因子を使用することができる。
【0093】
少なくとも1種の補因子Cは、ニコチン補因子およびフラビン補因子から選択され得る。より具体的には、少なくとも1種の補因子Cは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)および/または対応するそれらの還元型(即ち、NADH、H+NADPH、H+、FMNH2、FADH2)からなる群から選択され得る。
【0094】
上記の補因子Cは、それらの還元型(例えば、NADPH、H+)および/またはそれらの酸化型(例えば、NADP+)で有利に使用され、これらの還元型および/または酸化型の状態で組成物Mに添加できる。
【0095】
使用される酵素Eは、好ましくは、シクロヘキサノンモノオキシゲナーゼであり、例えば、アシネトバクター属菌種由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼであり、使用される補因子Cは、NADPであり、任意選択で、FADが補充される。
【0096】
補因子Cを再生するためのシステム
【0097】
上記で定義された組成物Mはまた、補因子Cを再生するための少なくとも1つのシステムを含み得る。「補因子Cを再生するためのシステム」は、還元された補因子Cを酸化された補因子Cにまたはその逆に再変換することができる任意の化学反応および/または酵素反応または一連の反応を意味する。
【0098】
再生システムは、例えば、犠牲基質を使用する既知の酵素的レドックスシステムであり得る。この種のシステムは、犠牲基質を使用することによって、使用される補因子Cのリサイクルを可能にする第2の酵素(リサイクル酵素と呼ばれる)の使用を伴う。
【0099】
リサイクル酵素には、グルコースデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、ホスファイトデヒドロゲナーゼ(Vrtis,Angew.Chem.Int.Ed.,2002,41(17),3257-3259)または他のデヒドロゲナーゼアルコール(Leuchs,Chem.Biochem.Eng.Q.,2011,25(2),267-281;Goldber,App.Microbiol.Biotechnol.,2007,76(2),237)が含まれる。
【0100】
本発明の文脈内で使用することができる犠牲基質の中で、水素供与性化合物が、最も特に好ましく、これらの中で、完全に適切な化合物は、アルコール、ポリオール、糖、例えばグルコースやグリセロール、などのヒドロキシル官能基を有する水素供与性有機還元化合物である。
【0101】
例えば、CHMOの場合、リサイクルシステムの酵素が補因子NADP+をNADPH、H+の形に還元し、犠牲基質が酸化される。
【0102】
本発明による組成物Mはまた、以下を含み得る。
-任意選択で、水、リン酸緩衝液、トリスHCl、トリス塩基、重炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、CHES(N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸)、もしくは、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの塩、またはそれらの混合物などの緩衝剤、から選択される1種または複数種の溶媒。
-特に酵素反応の1つまたは複数の反応物または基質の溶解性を促進するための、界面活性剤などの任意選択の添加剤。
【0103】
好ましくは、組成物Mは水溶液である。例えば、組成物Mは、組成物Mの総重量に対して、50重量%~99重量%、好ましくは80重量%~97重量%の水を含む。
【0104】
一実施形態によれば、組成物Mは、反応混合物を含むと見なされる。
【0105】
上記の工程a)で調製された組成物Mの種々の成分は、商業的に容易に入手可能であるか、または当業者に周知の技術によって調製することができる。これらの種々の要素は、固体、液体、または気体の形態であり得、非常に有利に、溶液にされ得るか、または本発明のプロセスで使用される水または任意の他の溶媒に溶解され得る。使用される酵素はまた、支持体にグラフトされ得る(支持された酵素の場合)。
【0106】
一実施形態によれば、酵素E、任意選択で少なくとも1種の補因子C、任意選択で少なくとも1つの再生システムは、
-単離された、および/または、精製された形態で、例えば、水溶液で、
-または、粗抽出物、即ち、粉砕された細胞の抽出物で、または
-全細胞で(in whole cells)、
存在する。
【0107】
全細胞が優先的に使用される。[スルフィド](mmol/L)/[細胞](gcdw・L-1)の比は、好ましくは、酵素反応を行う工程b)において、0.01~10mmol/gcdw、好ましくは0.01~3mmol/gcdwである。乾燥細胞のグラム質量濃度(細胞乾燥重量(Cells Dry Weight)に関するgCDW)は、従来の手法で測定される。
【0108】
酵素Eは、以下で宿主細胞と呼ばれる前記細胞において、過剰発現されてもされなくてもよい。
【0109】
宿主細胞は、対応するコード遺伝子の発現から酵素Eを生成するのに適切な任意の宿主であり得る。この遺伝子は、宿主のゲノムに位置するか、以下に定義するような発現ベクターによって運ばれる。
【0110】
本発明の目的のために、「宿主細胞」は、具体的には、原核生物または真核生物の細胞であると理解される。組換えまたは非組換えタンパク質の発現に一般的に使用される宿主細胞には、具体的には、大腸菌(Escherichia coli)またはバシラス属菌種(Bacillus sp.)またはシュードモナス(Pseudomonas)などの細菌の細胞、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母菌の細胞、Aspergillus niger、Penicillium funiculosumまたはTrichoderma reeseiなどの真菌の細胞、Sf9細胞などの昆虫細胞、またはHEK293、PER-C6またはCHO細胞株などの哺乳類(具体的には、ヒト)細胞が含まれる。
【0111】
宿主細胞は、例えば、培養培地から除去された後の定常期にあるものであり得る。
【0112】
好ましくは、酵素Eおよびその少なくとも1種の補因子Cは、大腸菌において発現される。CHMOは、好ましくは、大腸菌、例えば、大腸菌BL21(DE3)において発現される。
【0113】
HAPMOは、好ましくは、大腸菌、例えば、大腸菌BL21(DE3)において発現される。
【0114】
例えば、全細胞および/または溶解細胞の場合、使用される補因子Cを再生するのは細胞機構である。例えば、大腸菌株がシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ(CHMO)を発現する場合、補因子Cは、NADPである。
【0115】
一実施形態によれば、CHMOがスルフィドをスルホキシドに変換する場合、補因子C1はNADPであり、任意選択で補因子C2であるFADを伴う。CHMOがスルフィドをスルホキシドに変換すると、補因子NADPH、H+がNADP+に酸化され、これは、所定の細胞および/または再生システムによって再生される。還元された補因子の再生は、大腸菌内に自然に存在する酵素、具体的には、例えば培地にグリセロールが補充された場合に、酵素グリセロールデヒドロゲナーゼによって可能になる。グルコースが補充された培地の場合、ペントースリン酸経路の酵素、特に、大腸菌内に自然に存在する、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼおよび/または6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼが、還元された補因子C1の再生に関与する。
【0116】
本発明によれば、酵素E、任意選択で少なくとも1種の補因子C、および任意選択で補因子Cを再生するためのシステムを含む宿主細胞は、「生体触媒」と呼ばれる。
【0117】
上記において定義された酵素Eおよび/または生体触媒は、当業者に知られている種々の技術によって得ることができる。
【0118】
細胞宿主における酵素Eのコード配列を含む発現ベクターの組み込み
【0119】
プラスミドなどの発現ベクターを使用する場合、原核細胞および真核細胞の形質転換は、例えばリポフェクション、エレクトロポレーション、熱ショック、または化学的方法によって当業者によく知られている技術である。発現ベクターおよび発現ベクターを宿主細胞内に導入する方法は、選択された宿主細胞に従って選択される。この形質転換工程により、組換え酵素Eをコードする遺伝子を発現する形質転換細胞が得られる。この細胞は、培養/培養工程で培養されて、酵素Eを生成することができる。
【0120】
原核細胞および真核細胞の培養/培養は、当業者に良く知られている技術である。当業者は、例えば、培養培地または温度および時間条件を決定することができる。使用するベクターによっては、酵素Eの生成の増加に対応する誘導期間が観察され得る。弱い(例えば、ベクターpBadのアラビノースなど)または強い(例えば、ベクターpET22b、pRSFなどのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトシド(IPTG))インダクターの使用を検討することができる。宿主細胞による酵素Eの生成は、SDS-PAGE電気泳動の技術またはウエスタンブロット技術を使用して検証することができる。
【0121】
「発現ベクター」は、目的のヌクレオチド配列を挿入することができる小サイズのDNA分子である。プラスミド、コスミド、ファージなどの多くの既知の発現ベクターから選択を行うことができる。
【0122】
ベクターは、具体的には、使用される細胞宿主に従って選択される。当該発現ベクターは、例えば、文書WO83/004261に記載されているものであり得る。
【0123】
発現ベクターの非存在下での宿主細胞のゲノムにおける酵素Eのコード配列の組み込み
【0124】
酵素Eをコードするヌクレオチド配列は、相同組換えまたはシステムCRISPR-Cas9などによる方法などの、任意の既知の方法によって、宿主細胞のゲノムに組み込まれ得る。宿主細胞による酵素Eの生成は、SDS-PAGE電気泳動の技術またはウエスタンブロット技術を使用して検証され得る。
【0125】
単離および/または精製された形態で使用するための酵素Eの単離および/または精製
【0126】
形質転換宿主細胞の形質転換および培養/培養に続いて、酵素Eの単離および任意選択の精製の工程を行うことができる。このようにして、本発明のプロセスは、宿主細胞の存在下ではなく、組成物M中の溶液中、好ましくは水溶液中の酵素Eによって実施される。
【0127】
生成された酵素Eの単離および/または精製は、当業者に知られている任意の手段によって行うことができる。これは、例えば、電気泳動、モレキュラーシーブ、超遠心分離、例えば硫酸アンモニウムによる示差沈殿、限外濾過、膜またはゲル濾過、イオン交換、疎水性相互作用による分離、または例えばIMACなどのアフィニティークロマトグラフィーから選択される技術を含み得る。
【0128】
宿主細胞の溶解様式、粉砕細胞の粗抽出物の調製
【0129】
細胞溶解物は、超音波処理、圧力(フレンチプレス)、化学薬品(例えば、トリトン)などの使用などの種々の既知の技術によって得ることができる。得られた溶解物は、粉砕された細胞の粗抽出物に相当する。
【0130】
工程a)において、組成物Mの種々の成分を任意の所望の順序で加えることができる。組成物Mは、種々の成分を単に混合することによって調製することができる。
【0131】
一実施形態によれば、本発明のプロセスは、工程b)と工程c)との間に工程b’)を含み、ここで、酵素反応は、生体触媒および/または酵素Eの不活性化によって停止される。この工程b’)は、熱ショック(例えば、約100℃の温度で)または浸透圧ショック、高圧の適用、細胞および/または酵素Eの破壊および/または析出を可能にする溶媒の添加、pH変更(約2の低pHまたは約10の高pHのいずれか)などの既知手段によって実施できる。
【0132】
スルフィドは、工程b)による酵素反応における反応速度よりも速い速度で組成物Mに導入することができる。
【0133】
一実施形態によれば、酵素反応を行う工程である工程b)は、4~10、好ましくは6~8、より好ましくは7~8、例えば7のpHで実施される。
【0134】
一実施形態によれば、酵素反応を行う工程である工程b)は、5℃~100℃、好ましくは20℃~80℃、より好ましくは25℃~40℃の温度で実施される。
【0135】
前記酵素反応に使用される圧力は、使用される反応物および装置に応じて、大気圧と比較して低圧から数バール(数百kPa)までの範囲であり得る。
【0136】
本発明のプロセスによって得られる利点は多くある。これらの利点には、水溶液中で、非常に穏やかな温度と圧力の条件下で、中性に近いpH条件下で作業できる可能性が含まれる。これらの条件はすべて、「グリーン」または「持続可能な」と呼ばれる生体触媒プロセスに典型的なものである。
【0137】
工程c)において、スルホキシドは、液体または固体の形態で回収され得る。スルホキシドは、その溶解度に応じて、水溶液で、またはデカンテーションによって液体の形態で、または析出によって固体の形態で回収することができる。
【0138】
工程d)の場合、精製方法は当該スルホキシドの特性に依存する。従って、限外濾過または遠心分離による細胞(酵素Eを含む)の分離後、蒸留はスルホキシドの分離を可能にし得る。
【0139】
この蒸留は、大気圧、減圧(真空)、または当業者によって何らかの利点があるとみなされる場合はより高い圧力下で行われ得る。
【0140】
膜分離はまた、蒸留のために混合物の含水量を減らす目的で、または結晶化プロセスを加速する目的で企図され得る。水性反応混合物からデカンテーションすることによってスルホキシドが回収された場合、モレキュラーシーブでの乾燥(または他の任意の乾燥方法)が考えられ得る。
【0141】
前記プロセスは、バッチ式または連続的に行うことができる。
【0142】
本発明のプロセスは、以下の工程を含み得る。
a1)前記酵素Eと、
任意選択で、前記少なくとも1種の補因子Cと、
前記酸化剤と、
を含む組成物を調製する工程。
a2)工程a1)で得られた組成物に、好ましくは注入により、前記スルフィドを添加することにより、上記で定義された組成物Mを調製する工程。
b)スルフィドのスルホキシドへの酵素的酸化反応を行う工程。
c)工程b)で得られたスルホキシドを回収する工程。
d)工程c)で回収されたスルホキシドを任意選択で単離および/または任意選択で精製する工程。
【0143】
別の実施によれば、プロセスは、以下の工程を含み得る。
a1)前記スルフィドと、
前記酵素Eと、
任意選択で、前記少なくとも1種の補因子Cと、
を含む組成物を調製する工程。
a2)工程a1)で得られた組成物に前記酸化剤を添加することにより、上記で定義された組成物Mを調製する工程。
b)スルフィドのスルホキシドへの酵素的酸化反応を行う工程。
c)工程b)で得られたスルホキシドを回収する工程。
d)工程c)で回収されたスルホキシドを任意選択で単離および/または任意選択で精製する工程。
【0144】
組成物M
【0145】
本発明はまた、上記で定義された組成物Mに関する。
【0146】
組成物Mの種々の要素それ自体およびその使用は、上記のプロセスについて定義された通りである。
【0147】
より具体的には、本発明はまた、
上記で定義された対称スルフィドと、
前記対称スルフィドの対称スルホキシドへの酸化を触媒する、上記で定義されたオキシドレダクターゼ酵素、好ましくはバイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)、より好ましくはシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ(CHMO)と、
任意選択で、上記で定義された酵素Eの少なくとも1種の補因子Cと、
任意選択で、上記で定義された酸化剤と、
を含む組成物Mに関する。
【0148】
更により具体的には、本発明は、
以下の一般式(I)のスルフィドと、
R1-S-R2(I)(R1およびR2は、同一であり、上記で定義されたとおり)
前記スルフィド(I)の以下の一般式(II)のスルホキシドへの酸化を触媒する、上記で定義されたオキシドレダクターゼ酵素、好ましくはバイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)、より好ましくはシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ(CHMO)と、
R1-S(O)-R2(II)(R1およびR2は、同一であり、上記で定義されたとおり)
任意選択で、上記で定義された酵素Eの少なくとも1種の補因子Cと、
任意選択で、上記で定義された酸化剤と、
を含む組成物Mに関する。
【0149】
スルフィドは、好ましくは、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジオクチルスルフィド、ジドデシルスルフィドおよびテトラヒドロチオフェンから選択される。ジメチルスルフィドは特に好ましいスルフィドである。
【0150】
一実施形態によれば、前記組成物は、上記で定義されたプロセスを行うための、上記で定義された組成物Mに相当する。
【0151】
使用
【0152】
本発明はまた、オキシドレダクターゼ酵素、好ましくはバイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)、より好ましくは上記で定義されたシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ(CHMO)の、対称スルフィドを対応する対称スルホキシドに酸化するための使用に関する。前記酵素的酸化反応は、特に、本発明の意味で選択的である。一実施形態によれば、前記スルフィドは、一般式R1-S-R2(I)のスルフィドであり、一般式R1-S(O)-R2(II)のスルホキシドに変換される(R1およびR2は、同一であり、上記で定義されたとおり)。
【0153】
「X~X」という表現には、指定された端点が含まれる。以下の実施例は、例示の目的で与えられており、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0154】
実施例1:本発明によるジエチルスルフィドからのジエチルスルホキシドの選択的合成
【0155】
I.生体触媒の調製
【0156】
プラスミドpET22b(Promega,Qiagenにより販売)に挿入されたchnB遺伝子を発現する大腸菌BL21(DE3)(Merck Milliporeにより販売)の菌株を構築した。それにより、アシネトバクター属菌種由来のシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ(CHMO)の異種発現が可能になる。前記菌株は、CHMO、CHMOの補因子、即ち、NADPおよびFAD、ならびにその再生システムを含むことが理解されよう。
【0157】
この菌株は、当業者に知られている技術によって前培養および培養された。イソプロピルβ-D-1-チオガラクトシド(IPTG)を最終濃度0.85mmol/Lで添加することにより誘導段階が開始された後、一定量の培養液を遠心分離(10分、5000g、4℃)して、所望量の細胞を得た。この例では、300ODUの新鮮な細胞のペレットを、5g/Lのグリセロールを添加したpH7の0.1mol/Lリン酸緩衝液32mLに再懸濁する。得られた細胞濃度は、9.4ODU/mLまたは3gCDW/L(CDWは細胞の乾燥重量を表す)である。
【0158】
II.生物変換
【0159】
上記の混合物32mLを含む250mLフラスコにおいて、ジエチルスルフィド(DES)の初期濃度は時間=0で4.5mmol/Lと測定される。
【0160】
一定の間隔で、50μLの反応混合物を取り出し、25mg/Lのウンデカン(内部標準)を含む1450μLのアセトニトリル溶液で希釈する。遠心分離(5分、12500g)後、上澄みを、GC(ガスクロマトグラフィー)に注入して、反応中に形成されたジエチルスルホキシド(DESO)およびジエチルスルホン(DESO2)の定量測定を行う。実施した分析の条件では、測定可能な最小濃度は30μMである。
【0161】
分析は、2.5時間の反応の時点での化学選択性の変化を示す。この時点より前では、DESOの量の直線的な増加が測定され、スルホンは検出されない。この部分でのスルフィドの酸化速度としては、1時間あたり混合物1リットルあたり4mmolのDESが酸化される。
【0162】
3時間後、DESO2の量の直線的な増加が、DESOの消費と同時に観察され、DESO2は2.8mmol/L/時の速度で形成されている。6時間の反応の時点では、DESO2のみが存在している。従って、DESO2は、DESが混合物中で検出されなくなったときに形成されている。
【0163】
この例は、スルフィドが反応混合物中に存在している間はスルフィドのスルホキシドへの酸化反応が化学選択的であることを示している(
図1を参照)。
【0164】
得られた選択性は約100%である。
【0165】
第一に、DESが反応混合物にまだ存在しているとき、使用した分析ツールではスルホンは検出されない。
【0166】
第二に、DESが反応混合物中で検出されなくなると、DESOの酸化が完了する。反応の終わり(時間=5時間)の時点で、約100%のDESO2が得られ、使用した分析ツールではDESOは検出されない。
【0167】
外挿により、計算された[スルフィド](mmol/L)/[細胞](gcdw・L-1)の比は、時間=2.5の時点で、0.06mmol/gcdwである。
【0168】
実施例2
【0169】
I.生体触媒の調製
【0170】
この実施例では、実施例1に記載されたものと同じ菌株が使用された。
【0171】
今回はより多くの量の細胞が使用された。
【0172】
誘導工程の最後の時点で、OD600が、8.4ODU/mLで測定され、102mLの体積が取り出され、遠心分離(10分、5000g、4℃)後、860ODUの新鮮な細胞を含むペレットが得られる。次に、このペレットを、0.5g/Lのグリセロールを添加したpH7の0.1mol/Lリン酸緩衝液32mLに再懸濁する。得られる細胞濃度は、27ODU/mL(または約9gCDW/L)である。
【0173】
II.生物変換
【0174】
上記の混合物32mLを含む250mLフラスコにおいて、反応混合物中で測定されるジエチルスルホキシド(DESO)の濃度は、11.3mmol/Lである。時間=2時間の時点で、エタノール溶液中のDESが添加される。次に、10.4mmol/LのDESの濃度が測定される。
【0175】
反応は、実施例1で説明した2つのサンプリング操作を行うことによって監視される。分析は、0~2時間の反応で、最初に添加されたDESOからDESO2のみが生成されることを示している(その後、7.7mmol/Lの濃度が得られる)。時間=2時間の時点でDESを添加した後、DESO2の濃度は少なくとも4.5時間まで変化しないが、同時にDESOが生成される(10.4mmol/Lが生成される)。16.5時間の反応の時点では、DESO2のみが存在する(DESOは完全に酸化されている)。
【0176】
従って、DESを追加すると、スルホン(この場合はDESO2)の形成が阻止される。
【0177】
この例は、スルフィドのスルホキシドへの酸化が、優先反応であるだけでなく、スルホキシドのスルホンへの酸化反応に対しても排他的であることを示している。
【0178】
実施例3:ジメチルスルフィド(DMS)の酵素的酸化
【0179】
I.生体触媒の調製
【0180】
生体触媒(CHMO)は、実施例1のものと同一であり、実施例1に記載の条件下で生成される。
【0181】
II.生物変換
【0182】
実施例1に示されている生物変換条件は、使用されるスルフィドを除いて、この実施例で使用されている条件と同じである。この実施例では、DMSのエタノール溶液を使用して、4.5mMの初期スルフィド濃度を得る。
【0183】
反応は、実施例1に提示された方法によって監視される。
【0184】
驚くべきことに、使用された生体触媒は、同様の酸化特性をもたらす。具体的には、DMSが混合物中に存在するときにDMSが化学選択的に酸化され(ジメチルスルホンは検出されない)、次いで、DMSが混合物中に検出されなくなった時点からスルホキシドが酸化される。
【0185】
この化学選択性に加えて、(DESと比較して)同じオーダーのスルフィド酸化速度が反応の初期段階で得られた。1時間あたり混合物1リットルあたり3.9mmolのDMSが酸化される。更に、スルホンの生成速度は1mmol/L/時間である。
【0186】
実施例4:メチルエチルスルフィド(MES)の酵素的酸化
【0187】
I.生体触媒の調製
【0188】
生体触媒(CHMO)は、実施例1のものと同一であり、実施例1に記載の条件下で生成される。
【0189】
II.生物変換
【0190】
実施例1に示されている生物変換条件は、使用されるスルフィドを除いて、この実施例で使用されている条件と同じである。この実施例では、MESのエタノール溶液を使用して、4.5mMの初期スルフィド濃度を得る。
【0191】
反応は、実施例1に提示された方法によって監視される。
【0192】
驚くべきことに、使用された生体触媒は、同様の酸化特性をもたらす。具体的には、MESが混合物中に存在するときにMESが化学選択的に酸化され(メチルエチルスルホンは検出されない)、次いで、MESが混合物中に検出されなくなった時点からメチルエチルスルホキシドが酸化される。
【0193】
この化学選択性に加えて、(他のスルフィドと比較して)同じオーダーの酸化速度が反応の初期段階で得られた。1時間あたり混合物1リットルあたり3.6mmolのMESが酸化される。更に、スルホンの生成速度は3.5mmol/L/時間である。
【0194】
実施例5:テトラヒドロチオフェン(THT)の酵素的酸化
【0195】
I.生体触媒の調製
【0196】
生体触媒(CHMO)は、実施例1のものと同一であり、実施例1に記載の条件下で生成される。
【0197】
II.生物変換
【0198】
実施例1に示されている生物変換条件は、使用されるスルフィドを除いて、この実施例で使用されている条件と同じである。この実施例では、THTのエタノール溶液を使用して、4.5mMの初期スルフィド濃度を得る。
【0199】
反応は、実施例1に提示された方法によって監視される。
【0200】
驚くべきことに、使用された生体触媒は、同様の酸化特性をもたらす。具体的には、THTが混合物中に存在するときにTHTが化学選択的に酸化され(対応するスルホンであるスルホランは検出されない)、次いで、THTが混合物中に検出されなくなった時点からテトラヒドロチオフェン1-オキシドが酸化される。
【0201】
この化学選択性に加えて、(他のスルフィドと比較して)同じオーダーの酸化速度が反応の初期段階で得られた。1時間あたり混合物1リットルあたり3.4mmolのTHTが酸化される。更に、スルホンの生成速度は1.5mmol/L/時間である。
【0202】
実施例6:本発明によるスルフィドの混合物の酵素的酸化
【0203】
I.生体触媒の調製
【0204】
実施例1に記載されたものと同じ菌株がこの実施例で使用された。
【0205】
誘導工程の最後の時点で、OD600が、8.4ODU/mLで測定され、31mLの体積が取り出され、遠心分離(10分、5000g、4℃)後、300ODUの新鮮な細胞を含むペレットが得られる。次に、このペレットを、0.5g/Lのグリセロールを添加したpH7の0.1mol/Lリン酸緩衝液32mLに再懸濁する。得られる細胞濃度は、9.4ODU/mL(または約3gCDW/L)である。
【0206】
II.生物変換
【0207】
上記の混合物32mLを含む250mLフラスコにおいて、それぞれ3.64Mのジエチルスルフィド(DES)、ジメチルスルフィド(DMS)およびテトラヒドロチオフェン(THT)のエタノール溶液75μLを同時に導入する。これが反応の始まりである。
【0208】
実施例1に記載されたのと同じサンプリング操作を行うことによって反応を監視する。
【0209】
分析は、最初の期間中に、混合物中のスルフィドがスルホキシドに酸化され、スルホンが検出されないことを示す。驚くべきことに、DESの酸化速度は、存在する他の2つのスルフィド(DMSおよびTHT)の酸化速度よりも大きく、これら2つは同様の酸化速度を有している(以下の表1参照)。
【0210】
【0211】
反応混合物中にスルフィドが検出されなくなった第2段階でのみ、対応するスルホンが得られる。ただし、DMSO2は、異なるスルフィドを混合したこれらの条件下では、検出されなかった。
本開示は、以下の実施形態を含む。
<1> 以下の工程を含む、スルホキシドの調製プロセス。
a)スルフィドと、
前記スルフィドのスルホキシドへの酸化を触媒する酵素Eと、
任意選択で、前記酵素Eの少なくとも1種の補因子Cと、
酸化剤と、
を含む組成物Mを調製する工程。
b)前記スルフィドのスルホキシドへの酵素的酸化反応を行う工程。
c)工程b)で得られたスルホキシドを回収する工程。
d)工程c)で回収されたスルホキシドを任意選択で単離および/または任意選択で精製する工程。
ここで、前記スルフィドは、前記酵素的反応を行う工程b)において、完全には消費されない。
<2> 前記酵素Eが、オキシドレダクターゼであり、好ましくは、モノオキシゲナーゼ、ジオキシゲナーゼおよびペルオキシダーゼからなる群から選択されるオキシドレダクターゼであり、より好ましくは、モノオキシゲナーゼから選択されるオキシドレダクターゼである、前記<1>に記載の調製プロセス。
<3> 前記酵素Eが、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)であり、好ましくは、シクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ(CHMO)またはシクロペンタノンモノオキシゲナーゼ(CPMO)である、前記<1>または<2>に記載の調製プロセス。
<4> 前記スルフィドが、以下の一般式のスルフィドである、前記<1>~<3>のいずれか一項に記載の調製プロセス。
R
1
-S-R
2
(I)
ここで、
R
1
およびR
2
は、同一であっても異なっていてよく、(C
1
-C
20
)アルキル、(C
2
-C
20
)アルケニル、(C
2
-C
20
)アルキニル、(C
3
-C
10
)シクロアルキルおよび(C
6
-C
10
)アリールからなる群から、互いに独立に選択される、
または、
R
1
およびR
2
は、それらが結合している硫黄原子とともに、ヘテロシクロアルカンまたはヘテロアレーンを形成しており、
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルカンおよびヘテロアレーン基は、任意選択で、1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルおよびアリール基は、1つまたは複数のヘテロ原子を含んでいてもよい。
<5> 前記スルフィドのR
1
およびR
2
が、同一である、前記<4>に記載の調製プロセス。
<6> 前記スルフィドが、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジオクチルスルフィド、ジドデシルスルフィドおよびテトラヒドロチオフェンから選択され、好ましくはジメチルスルフィドである、前記<1>~<5>のいずれか一項に記載の調製プロセス。
<7> [スルフィド](mmol/L)/[細胞](g
cdw
・L
-1
)の比が、0.01~10mmol/g
cdw
であり、好ましくは0.01~3mmol/g
cdw
である、前記<1>~<6>のいずれか一項に記載の調製プロセス。
<8> 前記酸化剤が、空気、低酸素空気、高酸素空気、純酸素および過酸化水素からなる群から選択される、前記<1>~<7>のいずれか一項に記載の調製プロセス。
<9> 前記補因子Cが、ニコチン補因子およびフラビン補因子から選択される、前記<1>~<8>のいずれか一項に記載の調製プロセス。
<10> 前記酵素Eが、シクロヘキサノンモノオキシゲナーゼであり、前記補因子Cが、NADPおよび任意選択でFADである、前記<1>~<9>のいずれか一項に記載の調製プロセス。
<11> 対称スルフィドと、
前記対称スルフィドの対称スルホキシドへの酸化を触媒するオキシドレダクターゼ酵素、好ましくはバイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)、より好ましくはシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ(CHMO)と、
任意選択で、前記酵素Eの少なくとも1種の補因子Cと、
任意選択で、酸化剤と、
を含む組成物。
<12> 前記スルフィド(I)が、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジオクチルスルフィド、ジドデシルスルフィドおよびテトラヒドロチオフェンから選択され、好ましくはジメチルスルフィドである、前記<11>に記載の組成物。
<13> オキシドレダクターゼ酵素、好ましくはバイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)、より好ましくはシクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ(CHMO)の、対称スルフィドを対称スルホキシドに酸化するための使用。