(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】収納家具及びその組立方法
(51)【国際特許分類】
E04F 19/08 20060101AFI20240516BHJP
A47B 55/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
E04F19/08 102J
A47B55/00
(21)【出願番号】P 2022118257
(22)【出願日】2022-07-25
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 伸英
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-321453(JP,A)
【文献】特開平11-081645(JP,A)
【文献】特開昭51-063527(JP,A)
【文献】実開昭59-122338(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/08
A47B 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内において入隅を形成するように互いに直交して連続する第1及び第2壁部を有する既存壁に施工される収納家具であって、
上記第1壁部に沿うように上下方向に延び、該第1壁部に固定された縦枠と、
上記縦枠に対向して配置され、後端部が上記第2壁部に固定された側板と、
上記縦枠の上端部と上記側板の前側上端部との間に架け渡されて固定された幕板とを備え
、
上記第1壁部により上記側板に対向する上記収納家具の他方の側板が構成されるように、上記縦枠は、前後幅が上記側板の前後幅よりも短い細長い板材で構成されていることを特徴とする収納家具。
【請求項2】
室内において入隅を形成するように互いに直交して連続する第1及び第2壁部を有する既存壁に施工される収納家具であって、
上記第1壁部に沿うように上下方向に延び、該第1壁部に固定された縦枠と、
上記縦枠に対向して配置され、後端部が上記第2壁部に固定された側板と、
上記縦枠の上端部と上記側板の前側上端部との間に架け渡されて固定された幕板とを備え、
第1壁部の下端部と室内の床面との角部に、後端部が第2壁部に当接するように配置された位置決め部材を備え、
上記縦枠は、下端部の後面を上記位置決め部材の前端部に当接させて第1壁部に固定されて
いることを特徴とする収納家具。
【請求項3】
請求項2の収納家具において、
左右方向の一端部が上記縦枠の下端部及び上記位置決め部材に、また他端部が側板の下端部にそれぞれ当接し、後端部が第2壁部に当接して、床面上に載置される地板を備え、
上記地板は、前後方向の奥行が、上記位置決め部材の前後方向の長さと上記縦枠の前後幅との合計と同じであり、左右方向の長さが幕板の左右方向の長さと同じであり、
上記地板は、縦枠の下端部及び側板の下端部に固定されていることを特徴とする収納家具。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか1つの収納家具において、
収納家具内部に配置され、該収納家具内部を上下方向に仕切る少なくとも1つの棚と、
上記第1壁部、第2壁部及び側板にそれぞれ同じ高さとなるように固定された3つの桟木とを備え、
上記棚は、上記3つの桟木により支持されていることを特徴とする収納家具。
【請求項5】
請求項1
~3のいずれか1つの収納家具において、
既存壁は、第2壁部との間に出隅を形成するように該第2壁部に連続する第3壁部を有し、
側板は上記第3壁部と面一状に配置されていることを特徴とする収納家具。
【請求項6】
請求項1の収納家具の組立方法であって、
縦枠を第1壁部に固定する縦枠取付工程と、
上記縦枠取付工程で固定された縦枠の上部に幕板の左右方向の一端部を固定する幕板取付工程と、
上記幕板取付工程で固定された幕板の左右方向の他端部に側板の前端部を、また該側板の後端部を第2壁部にそれぞれ固定する側板取付工程とを備えたことを特徴とする収納家具の組立方法。
【請求項7】
請求項
6の収納家具の組立方法において、
縦枠取付工程では、第1壁部の下端部と床面との角部に位置決め部材をその後端部が第2壁部に当接するように配置し、該位置決め部材の前端部に縦枠下端部の後面を当接させた状態で、縦枠を第1壁部に固定し、
次いで、床面上に地板を、該地板の左右方向の一端部が上記縦枠の下端部及び上記位置決め部材に、また後端部が第2壁部にそれぞれ当接するように載置して、該地板の一端部を縦枠の下端部に固定した後、幕板取付工程を行い、
その後の側板取付工程では、側板の下端部を上記地板の左右方向の他端部に固定することを特徴とする収納家具の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納家具及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の収納家具として、特許文献1に示されるように、上下に配置された天板及び底板と、左右に配置された側板とが矩形状に組み付けられ、内部に棚板が配置されたものが知られている。この家具は、裏板(背板)がなく、側板や天板の後端部を直接室内の壁面に金具で固定することにより、その室内の壁面を家具の一部(裏板)として取り入れて、室内の壁面が家具を通して臨むようにし、家具と壁面との調和を図るようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1のものでは、室内の壁面で裏板を構成しているので、構成部材としての裏板は不要であり、その省略によって家具全体の部品点数を少なくすることができる。
【0005】
ところが、残りの天板、底板及び左右側板は必須としており、部品点数をさらに少なくすることはできない。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、既存壁に固定される収納家具の部品に工夫を加えることにより、収納家具の部品点数をさらに少なくして、その省施工化、コストダウンを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、既存壁に入隅を形成するように互いに直交する2つの壁部があるときにそれを旨く利用し、その構造の既存壁で、収納家具の裏板だけでなく、一方の側板も構成するようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明は、室内において入隅を形成するように互いに直交して連続する第1及び第2壁部を有する既存壁に施工される収納家具が対象である。この収納家具は、上記第1壁部に沿うように上下方向に延び、該第1壁部に固定された縦枠と、この縦枠に対向して配置され、後端部が上記第2壁部に固定された側板と、上記縦枠の上端部及び上記側板の前側上端部の間に架け渡されて固定された幕板とを備えていることを特徴とする。
【0009】
この第1の発明では、既存壁において入隅を形成する第1及び第2壁部に収納家具が施工され、この収納家具は、第1壁部に沿うように上下方向に延びる縦枠を備え、この縦枠は第1壁部に固定されている。縦枠に対向して側板が配置され、この側板は後端部が第2壁部に固定されている。そして、縦枠の上端部に幕板が一端部で固定され、この幕板の他端部に側板の前側上端部が固定されている。すなわち、側板は、上端部が幕板を介して縦枠及び第1壁部に固定され、後端部が第2壁部に固定される。尚、側板は下端部を床面に固定することもできる。
【0010】
このことで、収納家具の側板が既存壁の第1壁部と対向して、該第1壁部により他方の側板が構成される。また、既存壁の第2壁部により裏板(背板)が構成される。尚、縦枠及び側板の高さが室内の天井面の高さと同じときには、その天井面で収納家具の天板を構成したり、或いは天井面以外の別途の天板を取り付けたりして、収納家具を天井面や天板により閉じられた構造とすることができる。一方、縦枠及び側板の高さが室内の天井面よりも低いときには、収納家具は天板がなくて上方に開放された構造とすることができる。或いは、上記のように別途の天板を取り付けて、収納家具を天板により閉じられた構造とすることができる。そのとき、上記別途の天板としては、幕板の上端部後面に一体的に固定されたもの(幕板に天板が一体化された部材)を用いることができる。
【0011】
こうして、収納家具は、一方の側板が第1壁部で、また裏板が第2壁部で、さらに底板が床面で、また天板がある場合は天井面や天板でそれぞれ構成され、それら既存壁や床面等を利用する構造であるので、縦枠、幕板及び側板を最少の部品として備えていればよく、部品点数が少なくて済み、その分、収納家具を施工する際の作業の手間が少なくなり、省施工化を図ることができ、収納家具のコストダウンをも図ることができる。
【0012】
また、天井面まで近い高さの大容量な収納家具を簡単に組み立てることができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明の収納家具において、さらに、第1壁部の下端部と室内の床面との角部に、後端部が第2壁部に当接するように配置された位置決め部材を備え、上記縦枠は、下端部の後面を上記位置決め部材の前端部に当接させて第1壁部に固定されている。また、左右方向の一端部が上記縦枠の下端部及び上記位置決め部材に、また他端部が側板の下端部にそれぞれ当接し、後端部が第2壁部に当接して、床面上に載置される地板を備えている。この地板は、前後方向の奥行が、上記位置決め部材の前後方向の長さと上記縦枠の前後幅との合計と同じであり、左右方向の長さが幕板の左右方向の長さと同じである。そして、上記地板は、縦枠の下端部及び側板の下端部に固定されていることを特徴とする。
【0014】
この第2の発明では、既存壁の第1壁部の下端部と室内の床面との角部に後端部を第2壁部に当接させた位置決め部材が配置され、縦枠はその後面が位置決め部材の前端部に当接して第1壁部に沿って起立し、その状態で縦枠が第1壁部に固定されている。このように位置決め部材の前端に縦枠の後面を当接させることで、縦枠の第2壁部からの距離が一定となって、その第1壁部での前後方向の固定位置が明確になり、その固定が容易になる。
【0015】
また、第1壁部と第2壁部との間の床面上には地板が後端部を第2壁部に当接させて載置され、その地板の一端部は位置決め部材とその前側の縦枠の下端部とに当接して、その縦枠の下端部に固定されている。地板の前後方向の奥行は、位置決め部材の前後方向の長さと縦枠の前後幅との合計と同じであるので、地板の前端(第2壁部からの位置)が縦枠の前端に一致している。尚、地板の厚さが位置決め部材の上下厚さと同じである場合、縦枠後側において第1壁部と地板との間の隙間が地板と同じ厚さの位置決め部材により埋められた構造となり、地板と位置決め部材とが面一状に連続することになる。
【0016】
さらに、地板の他端部は、側板の下端部に当接して、その側板の下端部に固定されている。以上により、収納家具は地板及び位置決め部材を底部とした内部空間を有する。
【0017】
このことで、縦枠が正確に位置決めされて第1壁部に固定され、その縦枠が下端部で地板を介して側板に下端部で連結された収納家具が得られる。また、側板の下端部が地板の他端部に固定されているので、側板の下端部を床面に固定することは不要であり、側板を地板に固定するだけで、その側板の位置が決定され、その位置決めを容易に行うことができる。
【0018】
第3の発明は、第1又は第2の発明の収納家具において、収納家具内部に配置され、該収納家具内部を上下方向に仕切る少なくとも1つの棚と、上記第1壁部、第2壁部及び側板にそれぞれ同じ高さとなるように固定された3つの桟木とを備えている。そして、上記棚は、上記3つの桟木により支持されていることを特徴とする。
【0019】
この第3の発明では、第1壁部、第2壁部及び側板にそれぞれ桟木が同じ高さとなるように固定され、これら3つの桟木により棚が支持されている。この構造により、収納家具内に既存壁を利用して少なくとも1つの棚を取り付けることができる。
【0020】
第4の発明は、第1又は第2の発明の収納家具において、既存壁は、第2壁部との間に出隅を形成するように該第2壁部に連続する第3壁部を有し、側板は上記第3壁部と面一状に配置されていることを特徴とする。
【0021】
この第4の発明では、既存壁における第1壁部、第2壁部及び第3壁部が平面視で略Z字状に連続しており、第1壁部及び第2壁部の間の入隅に収納家具を施工したとき、第2壁部に連続して出隅を形成する第3壁部と、収納家具の側板とが面一状に配置される。このことで、収納家具の側板は恰も第3壁部が延長された形状に配置され、それらの間に段差が生じることがなく、第2壁部及び第3壁部により形成される既存壁の出っ張りを収納家具によって違和感なく隠して、外観の見映えをすっきりさせることができるとともに、既存壁の出っ張りをなくして安全性も高めることができる。
【0022】
第5の発明は、第1の発明の収納家具の組立方法であって、この組立方法は、縦枠を第1壁部に固定する縦枠取付工程と、この縦枠取付工程で固定された縦枠の上部に幕板の左右方向の一端部を固定する幕板取付工程と、この幕板取付工程で固定された幕板の左右方向の他端部に側板の前端部を、また該側板の後端部を第2壁部にそれぞれ固定する側板取付工程とを備えたことを特徴とする。
【0023】
この第5の発明では、収納家具を組み立てる場合、縦枠取付工程において、その縦枠を既存壁の第1壁部に対し該第1壁部に沿うように上下方向に配置して固定し、次の幕板取付工程では、上記縦枠の上部に対し幕板の左右方向の一端部を固定する。その後、側板取付工程では、側板の前端部を幕板の左右方向の他端部に、また該側板の後端部を第2壁部にそれぞれ固定する。このことで、収納家具を手順よくスムーズに組み立てて既存壁に施工することができる。
【0024】
また、側板を起点に組み立てていくことで、別途組み立てた収納家具を既存壁に固定する場合に比べ、既存壁に収納家具を強固に固定することができる。
【0025】
第6の発明は、第5の発明の収納家具の組立方法において、縦枠取付工程では、第1壁部の下端部と床面との角部に位置決め部材をその後端部が第2壁部に当接するように配置し、該位置決め部材の前端部に縦枠下端部の後面を当接させた状態で、縦枠を第1壁部に固定する。次いで、床面上に地板を、該地板の左右方向の一端部が上記縦枠の下端部及び上記位置決め部材に、また後端部が第2壁部にそれぞれ当接するように載置して、該地板の一端部を縦枠の下端部に固定した後、幕板取付工程を行う。そして、その後の側板取付工程では、側板の下端部を上記地板の左右方向の他端部に固定することを特徴とする。
【0026】
この第6の発明では、上記縦枠取付工程では、第1壁部の下端部と床面との角部に位置決め部材がその後端部を第2壁部に当接させるように配置され、その位置決め部材の前端部に縦枠下端部の後面が当接し、その状態で縦枠が第1壁部に固定される。このように位置決め部材を用いて縦枠の第1壁部への固定位置を決めることにより、縦枠の第2壁部からの距離が一定となって、縦枠の第1壁部での前後方向の固定位置が明確になり、その固定を容易に行うことができる。
【0027】
この後、床面上に地板が載置される。そのとき、地板の左右方向の一端部は上記縦枠の下端部及び上記位置決め部材に、また他端部は側板の下端部にそれぞれ当接し、後端部は第2壁部にそれぞれ当接するように載置される。この地板は一端部が縦枠の下端部に固定される。
【0028】
次いで、幕板取付工程が行われて、幕板の左右方向の一端部が縦枠の上部に固定される。最後の側板取付工程では、上記幕板の左右方向の他端部に側板が固定され、該側板の後端部が第2壁部に固定され、側板の下端部は上記地板の他端部に固定される。
【0029】
こうして、床面上に載置された地板を底部とした収納家具を容易に組み立てて施工することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明した如く、本発明によると、入隅を形成するように互いに直交して連続する第1及び第2壁部を有する既存壁に対し、第1壁部に縦枠を固定し、この縦枠と平行に配置される側板を後端部で第2壁部に固定し、縦枠の上端部と側板の前側上端部との間に幕板を架け渡して固定したことにより、収納家具の一方の側板を第1壁部で、また裏板を第2壁部でそれぞれ構成して、縦枠、幕板及び側板を最少の部品として備えた収納家具とでき、その部品点数を少なくし、部材の大きさも小さくして、施工する際の作業の手間を少なくし、収納家具の省施工化及びコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る収納家具の斜視図である。
【
図2】
図2は、収納家具が組立施工される前の既存壁の斜視図である。
【
図3】
図3は、既存壁の第1壁部に収納家具の縦枠が位置決め部材により位置決めされて固定された状態の斜視図である。
【
図4】
図4は、床面上に配置された地板が縦枠の下端部に固定された状態の斜視図である。
【
図5】
図5は、縦枠の下端部に地板の左端部を連結するときの状態を拡大して示す斜視図である。
【
図6】
図6は、側板が地板及び幕板に固定された状態の斜視図である。
【
図7】
図7は、縦枠の上端部に幕板の左端部を連結するときの状態を拡大して示す斜視図である。
【
図8】
図8は、幕板の右端部を側板の上端部に連結するときの状態を拡大して示す斜視図である。
【
図9】
図9は、地板の右端部を側板の下端部に連結するときの状態を拡大して示す斜視図である。
【
図10】
図10は、側板の後端部を第2壁部に連結するときの状態を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、締結装置を分解して示す拡大斜視図である。
【
図15】
図15は、直交する板材に形成された締結装置用の有底穴を示す断面図である。
【
図16】
図16は、直交する板材を締結装置により締結した状態を断面にて示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。尚、図面の一部は、透視図(遠近図法)で記載している。
【0033】
図1は本発明の実施形態に係る収納家具Aを示し、この収納家具Aは、室内の既存壁Wに組み付けられて施工されるようになっている。
【0034】
(既存壁)
上記既存壁Wは、
図2に示すように、室内において互いに直交するように連続する第1及び第2壁部W1,W2と、第2壁部W2に直交するように連続する第3壁部W3とを有し、平面視で略Z字状の配置となっている。そして、第1及び第2壁部W1,W2の間に入隅が形成され、第2及び第3壁部W2,W3の間に出隅が形成されている。
図2において、Fは室内の床面、Cは天井面であり、既存壁W(第1~第3壁部W1~W3)は床面Fから天井面Cまで延びている。
【0035】
既存壁Wは、例えば高齢者施設等の各居室(入居空間)において、室内の1つの壁部に仕切壁が接続されてトイレ等の空間が形成される間取りのときに、そのトイレの仕切壁が第2及び第3壁部W2,W3となって居室内に出っ張り、元の壁部が第1壁部W1となるように構成され、平面視で略Z字状に連続する壁面となっている。そして、第2壁部W2に向いたときの左側を「左」に、また右側を「右」に、さらに手前側を「前」に、また奥行側を「後」にそれぞれ設定すると、第2壁部W2の左端に前後方向に延びる第1壁部W1の後端が連続し、第2壁部W2の右端に前後方向に延びる第3壁部W3の後端が連続している。
【0036】
(収納家具)
図1に示すように、収納家具Aは、既存壁Wの第1及び第2壁部W1,W2に亘る範囲に両者間の入隅を埋めるように施工されている。収納家具Aは、1枚の縦枠1と、1本の位置決め部材2と、1枚の地板3と、1枚の側板4と、1枚の幕板5と、少なくとも1枚の棚6と、その棚6の支持のための3本の桟木7~9(
図11参照)とを備え、これらはいずれも例えば木質材料や非木質材料で構成されている。
【0037】
具体的には、縦枠1、位置決め部材2、地板3、側板4、幕板5、棚6、各桟木7~9の芯材には、パーティクルボード、合板、LVL、MDF等の木質材料、或いは鉄、非鉄金属、樹脂、無機繊維板等の非木質材料を用いることができる。
【0038】
縦枠1、位置決め部材2、地板3、側板4、幕板5、棚6、各桟木7~9の仕上げには、芯材への塗装、突板、オレフィンシート、化粧紙を用いることができる。
【0039】
縦枠1、位置決め部材2、地板3、側板4、幕板5、棚6、各桟木7~9は、ベタ芯、又はフラッシュ芯にて形成することができる。
【0040】
上記各部材(縦枠1、位置決め部材2、地板3、側板4、幕板5)の板厚さは30mm以上とするのが好ましい。また、収納家具Aは前後方向の奥行が300~600mmとなっている。
【0041】
(縦枠)
図1に示すように、縦枠1は、収納家具Aの左側に位置する細長い板材からなる。この縦枠1は、
図3にも示すように、上記第1壁部W1において第2壁部W2から前側の所定位置に起立して配置され、その左側面が第1壁部W1に当接した状態で複数の高さ位置にてビス(図示せず)等により固定されている。縦枠1の下端は床面Fに載置され、上端は天井面Cに達している。
【0042】
(位置決め部材)
位置決め部材2は、床面Fと第1壁部W1の下端との境界部に前後方向に延びるように配置される小寸法の角材からなる。その後端部は第2壁部W2に当接し、前端部は縦枠1の下端部後面に当接しており、位置決め部材2はそれを配置することにより、第1壁部W1での縦枠1の前後位置(第2壁部W2からの位置)を決めるために用いられる。位置決め部材2の左右厚さは縦枠1の厚さと同じで、上下厚さは地板3と同じであり、位置決め部材2が縦枠1後側の床面F上に載置されたときに、その右側面(縦面)が縦枠1の右側面と面一状に連続し、上面が地板3に面一状に連続するようになっている(
図3~
図5参照)。位置決め部材2は、第1壁部W1や床面Fに固定されず、床面F上に載置されるだけである。
【0043】
尚、位置決め部材2の厚さは地板3と一致させる必要はなく、両者間に段差が生じるのを容認できるのであれば両者の厚さを異ならせてもよい。しかし、位置決め部材2を地板3の延長部として利用するのであれば、それらを面一状に連続させるために両者の厚さを同じにするのが好ましい。
【0044】
(地板)
地板3は、
図4にも示すように、床面F上に載置されて収納家具Aの底部を構成する板材である。地板3の前後方向の奥行は、位置決め部材2の前後方向の長さと縦枠1の前後幅との合計寸法に一致している。左右の長さは、第2壁部W2の左右幅から、縦枠1の厚さと側板4の厚さとを加えた寸法を引いた寸法である。この地板3は、後端部が第2壁部W2に当接し、左端部が位置決め部材2及び縦枠1に当接するように、床面F上に載置され、その前端部は縦枠1の前端位置に一致している。また、上記のように、地板3の厚さは位置決め部材2と同じ厚さで、地板3の左端部後側は位置決め部材2と面一に連続しており、このことで位置決め部材2は地板3に連続してその延長部分を形成する構造となって、収納家具Aの底部が第1壁部W1の間際まで拡がっている。
【0045】
地板3は、その左側の前部において縦枠1の下端部に連結されて固定されている。この連結構造では、縦枠1の右側面に地板3の左端面(木口面)が当接して縦枠1及び地板3が直交しており、
図5に示すように、両者は2つの締結装置20,20及び1つのダボ17により締結されている。具体的には、2つの締結装置20,20は前後方向(縦枠1の幅方向)に間隔をあけて配置され、両締結装置20,20の間にダボ17が配置されている。
【0046】
(締結装置)
上記各締結装置20は、互いに直交する第1及び第2の2つの板材を、第1板材の側面に第2板材の端面(木口面)を当接した状態で締結する場合に用いられるものである。すなわち、上記縦枠1の右側面と地板3の左端面との締結構造の他に、後述するように、縦枠1の上端部と幕板5の左端部との締結構造、地板3の右端部と側板4の下端部との締結構造、幕板5の右端部と側板4の前側上端部との締結構造のいずれについても、第1板材(縦枠1、側板4)の側面に第2板材(地板3、幕板5)の端面が当接して連結され、同様の連結構造が採用されている。
【0047】
ここでは、縦枠1の右側面と地板3の左端面との上記各締結装置20による締結構造について詳細に説明し、他の締結構造については、同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0048】
図12は各締結装置20を示している。この実施形態で用いる締結装置20は締結金具21とインサート雌ねじ33とを組み合わせた既存の市販品が用いられている。上記締結金具21は、例えばスガツネ工業株式会社製の商品名「ITALIANA IT2180-2160」からなり、金具本体22に固定ねじ29が組み付けられるものである。金具本体22は、筒状のケース23から突出する雄ねじ部24と、この雄ねじ部24に駆動連結されたベベルギヤ等からなる従動ギヤ部25とを有する。
図13に示すように、固定ねじ29は、外周部に上記従動ギヤ部25と噛合する駆動ギヤ部30を有し、頭部に工具穴29a(
図12参照)が形成されている。そして、ケース23途中の固定ねじ挿入孔26に挿入された固定ねじ29の駆動ギヤ部30が金具本体22の従動ギヤ部25に噛合した状態で、工具穴29aに工具を係止して固定ねじ29を回すことで、駆動ギヤ部30に噛み合う従動ギヤ部25が回動し、その回動により雄ねじ部24が回動するようになっている。
【0049】
一方、インサート雌ねじ33は、
図14に示すように、軸部外周面に木ねじ状の粗い雄ねじ部34が形成されたもので、軸部内には、金具本体22の雄ねじ部24が螺合される有底のねじ穴35が同心状に設けられ、このねじ穴35は皿状の頭部に開口している。また、この頭部には、ねじ穴35の開口部に位置する工具穴33aが形成されている。
【0050】
これに対し、締結装置20の締結金具21及びインサート雌ねじ33が取り付けられる板材については、以下のような加工が施されている。
図15(a)に示すように、縦枠1(第1板材)の下端部の右側面には有底穴11が形成されており、この有底穴11に上記インサート雌ねじ33が雄ねじ部34によりねじ込まれて固定され、そのインサート雌ねじ33の頭部は縦枠1の右側面と略面一になっている。
【0051】
図15(b)に示すように、地板3(第2板材)の左側前部の端面にも有底穴14が形成されており、この有底穴14に金具本体22を嵌入したときに雄ねじ部24のみが地板3の左端面から突出するようになっている(
図5参照)。有底穴14の途中には、固定ねじ29を頭部まで嵌合可能な固定ねじ嵌合孔15が分岐して形成され、固定ねじ嵌合孔15は地板3の上面(板表面)に開口している。
【0052】
そして、
図16に示すように、地板3の有底穴14に嵌入された締結金具21の金具本体22に対し、地板3の固定ねじ嵌合孔15から固定ねじ29を嵌合してその駆動ギヤ部30を金具本体22の従動ギヤ部25に噛合させ、その状態で地板3を縦枠1に近付けて、固定ねじ29の回動により金具本体22の雄ねじ部24を回動させることにより、その雄ねじ部24を縦枠1のインサート雌ねじ33のねじ穴35に螺合させ、雄ねじ部24とねじ穴35との螺合締結により地板3を縦枠1の側面に当接させて一体的に連結固定するようになっている。
【0053】
図5に示すように、上記縦枠1の下端部右側面には、2つのインサート雌ねじ33,33間にダボ穴12が形成されている。一方、地板3の左端面(木口面)には、2つの金具本体22,22の雄ねじ部24,24間に有底穴が形成されてダボ17が嵌合固定されている。2つの締結装置20,20により地板3を縦枠1の側面に締結したときに、地板3のダボ17が縦枠1のダボ穴12に嵌合されて固定されるようになっている。尚、ダボ穴12とダボ17の配置を逆にし、縦枠1にダボ17を固定し、地板3にダボ穴12を形成してもよい。
【0054】
尚、各締結装置20は、上記した締結金具21とインサート雌ねじ33とを組み合わせたものに限定されない。互いに直交する第1及び第2の2つの板材を、第1板材の側面に第2板材の端面(木口面)を当接した状態で締結できる構造の締結装置であれば、他の締結装置を採用してもよいのは勿論である。このような締結装置としては、例えば株式会社ハーフェレ(Hafele)ジャパン製の商品名「ラフィックス20」や商品名「ミニフィックス15」、株式会社ムラコシ精工製の商品名「タイタスジョイント」や商品名「エキセンティジョイント」等を挙げることができる。
【0055】
さらに、上記のように互いに直交する第1及び第2の2つの板材を、第1板材の側面に第2板材の端面(木口面)を当接した状態で締結する場合に、ダボを用いずに締結装置のみで結合する構造、逆に締結装置を用いずにダボのみで結合する構造、ダボや締結装置を用いずにビス等の固定具のみで結合する構造を採用することもできる。
【0056】
(側板)
図6にも示すように、上記側板4は収納家具Aの右側に位置するものであり、この側板4は縦枠1(第1壁部W1)に対向した状態で起立して配置されている。側板4の高さは縦枠1と同じで、側板4の下端は床面Fに載置され、上端は天井面Cに達している。
【0057】
側板4の前後幅(奥行)は地板3の前後幅と同じであり、側板4の下端部左側面に地板3の右端面が当接し、この当接状態で側板4の下端部と地板3の右端部とが締結されている。このことで、地板3は、左右両端部がそれぞれ縦枠1の下端部及び側板4の下端部に固定されている。
【0058】
図9に示すように、側板4の下端部と地板3の右端部とは3つの締結装置20,20,…と2つのダボ17,17とにより締結されている。側板4は前後幅が上記縦枠1の前後幅よりも大きいので、縦枠1との連結構造に比べ締結装置20及びダボ17がいずれも1つずつ多くなっている。3つの締結装置20,20,…は、地板3(側板4)の前後幅方向の両端位置及び中央位置に配置され、隣り合う2つの締結装置20,20間に1つのダボ17が配置されている。各締結装置20は、上記と同様に、地板3に埋め込まれて雄ねじ部24が地板3右端面から突出する締結金具21と、側板4の下端部左側面に埋め込まれたインサート雌ねじ33とを有し、締結金具21の固定ねじ29を回して雄ねじ部24をインサート雌ねじ33のねじ穴35に螺合させることで、締結金具21とインサート雌ねじ33とを締結して、側板4の下端部と地板3の右端部とを締結するようにしている。
【0059】
側板4はその後端部が上記第2壁部W2の右端部前面に当接している。
図10に示すように、この側板4の後端部は第2壁部W2の右端部に上下に並んだ複数のL字金具38,38,…によって固定されている。この固定状態では、
図1に示すように、側板4の右側面、つまり収納家具Aの右側面の位置は既存壁Wの第3壁部W3に一致して、この側板4の右側面は第3壁部W3と面一状に連続するように配置されている。
【0060】
(幕板)
図6に示すように、上記幕板5は、収納家具Aの前側上端部に配置される左右方向に細長い板材からなり、上記第2壁部W2と平行に水平方向に延びている。幕板5の左右方向の長さと上記地板3の左右方向の長さとは同じである。この幕板5は幅方向が上下方向になるように配置され、その左端部は縦枠1の上端部の前端に、また右端部は側板4の上端部前端にそれぞれ連結されて固定されている。このことにより、幕板5は縦枠1の上端部と側板4の前側上端部との間に架け渡されて固定されている。この幕板5の上側面は天井面Cに接している。
【0061】
図7に示すように、幕板5の左端部と縦枠1の上端部の前端との連結構造では、2つの締結装置20,20と1つのダボ17とが用いられている。2つの締結装置20,20は、幕板5の上下幅方向の両端位置及び中央位置に配置され、隣り合う2つの締結装置20,20間にダボ17が配置されている。各締結装置20は、幕板5に埋め込まれて雄ねじ部24が幕板5左端面から突出する締結金具21と、縦枠1の上端部の右側面に埋め込まれたインサート雌ねじ33とを有し、締結金具21の固定ねじ29を回して雄ねじ部24をインサート雌ねじ33のねじ穴35に螺合させることで、締結金具21とインサート雌ねじ33とを締結して、幕板5の左端部と縦枠1の上端部とを締結するようにしている。上記各締結金具21の固定ねじ29は幕板5の後側面に露出しているので、
図7には現れていない。
【0062】
一方、
図8に示すように、幕板5の右端部と側板4の上端部前端との連結構造でも、2つの締結装置20,20と1つのダボ17とが用いられている。2つの締結装置20,20は、幕板5の上下幅方向の両端位置及び中央位置に配置され、隣り合う2つの締結装置20,20間にダボ17が配置されている。各締結装置20は、幕板5に埋め込まれて雄ねじ部24が幕板5右端面から突出する締結金具21と、側板4の上端部の左側面に埋め込まれたインサート雌ねじ33とを有し、締結金具21の固定ねじ29を回して雄ねじ部24をインサート雌ねじ33のねじ穴35に螺合させることで、締結金具21とインサート雌ねじ33とを締結して、幕板5の右端部と側板4の上端部とを締結するようにしている。各締結金具21の固定ねじ29は幕板5の後側面に露出しているので、
図8には現れていない。
【0063】
(棚及び桟木)
上記棚6は、収納家具A内部に、該収納家具A内部を上下方向に仕切るように固定支持されている。本実施形態では、棚6は1枚であり、この棚6により収納家具A内が上下2つの空間に仕切られる。この棚6の固定構造について説明すると、
図11(a)に示すように、収納家具Aの左側にある上記第1壁部W1に左側の桟木7が、また後面にある第2壁部W2に後側の桟木8が、さらに右側にある側板4に右側の桟木9がそれぞれビス(図示せず)により固定されている。各桟木7~9は根太とも呼ばれる角材からなり、左側及び右側の桟木7,9の長さは、例えば位置決め部材2の長さ(縦枠1の後端と第2壁部W2との距離)と同じであり、後側の桟木8の長さは、例えば地板3(幕板5)の左右長さと同じである。そして、これらの桟木7~9は互いに同じ高さとなるように配置されて固定されている。
【0064】
図11(b)及び
図11(c)に示すように、棚6は、前端下部に補強材(図示せず)で補強された框6aを有する板状のもので、その左端部が左側の桟木7上に、また後端部が後側の桟木8上に、さらに右端部が右側の桟木9上にそれぞれ載置され、その状態で3つの桟木7~9にビスにより固定支持されている。
【0065】
図1に示すように、棚6の下部にはパイプ受け材としての複数のブラケット40,40,…(一部のみ図示する)が垂下するように左右方向に並んで取り付けられ、ブラケット40,40,…間に亘り水平左右方向に延びるハンガーパイプ41が支持されており、このハンガーパイプ41に衣類用のハンガー等が掛けられるようにしている。尚、ハンガーパイプ41は棚6ではなく、或いは棚6に加え、縦枠1又は第1壁部W1と側板4との間に架け渡すこともできる。また、ハンガーパイプ41は必須ではなく、棚6のみが設けられていてもよい。
【0066】
棚6は2枚以上であってもよく、家具の内部を3つ以上の空間に仕切ることができる。その場合、各棚6は上記と同様にして桟木7~9により家具の内部に固定支持される。
【0067】
以上により実施形態の収納家具Aが構成されている。収納家具Aは、居室用トイレ壁(第2及び第3壁部W2,W3)及び天井面Cを活用し、天板及び裏板(背板)がなくて箱組不要のボックス型収納家具となる。
【0068】
尚、収納家具Aには、その前側開口を開閉する扉が取り付けられていてもよい。扉としては、収納家具Aの幅に応じて引戸、折れ戸、開き戸を用いることができる。折れ戸や開き戸の場合、縦枠1の右面前端部に左扉用の蝶番を、また側板4の左側面に前端部に右扉用の蝶番をそれぞれ上下に複数並ぶように取り付け、それらに扉を支持すればよい。
【0069】
(収納家具の組立方法)
上記実施形態の収納家具Aの組立方法の望ましい一例について説明する。まず、
図3に示すように、既存壁Wの第1壁部W1に縦枠1を固定する縦枠取付工程を行う。この縦枠取付工程では、第1壁部W1の下端部と床面Fとの角部に位置決め部材2をその後端部が第2壁部W2に当接するように配置し、この位置決め部材2の前端部に縦枠1の下端部の後面を当接させた状態で、縦枠1を第1壁部W1に当接させて起立させ、その起立位置で縦枠1を第1壁部W1にビス等により固定する。
【0070】
そのとき、第1壁部W1の下端部と床面Fとの角部に配置された位置決め部材2の後端部を第2壁部W2に、また位置決め部材2の前端部に縦枠1の下端部の後面をそれぞれ当接させて、縦枠1を第1壁部W1に固定するため、位置決め部材2を用いて縦枠1の第1壁部W1への固定位置を決めることができる。このことで、縦枠1の第2壁部W2からの距離が一定となって、縦枠1の第1壁部W1での前後方向の固定位置が明確になり、その固定作業を容易に行うことができる。
【0071】
次いで、
図4に示すように、床面F上に地板3を載置し、その地板3の左端部を上記縦枠1の下端部及び上記位置決め部材2に当接させ、後端部を第2壁部W2の前面に当接させ、
図5に示すように、地板3の左端部前端を縦枠1の下端部に2つの締結装置20,20と1つのダボ17とにより固定する。
【0072】
その後、上記縦枠取付工程で固定された縦枠1の上部に幕板5の左端部を固定する幕板取付工程を行う。この幕板取付工程では、
図7に示すように、幕板5を幅方向が上下方向になるように水平に配置し、その左端部を縦枠1の上端部に2つの締結装置20,20と1つのダボ17とにより固定する。
【0073】
しかる後、側板取付工程を行う。この工程では、側板4を起立させて縦枠1及びその後側の第1壁部W1に左右方向に対向するように配置し、
図8に示すように、その側板4の前側上端部を、上記幕板取付工程で固定された幕板5の右端部に2つの締結装置20,20と1つのダボ17とにより固定する。また、
図9に示すように、側板4の下端部を上記地板3の右端部に3つの締結装置20,20,…と2つのダボ17,17とにより固定する。また、これらの固定と並行して、
図10に示すように、側板4の後端部を第2壁部W2にL字金具38,38,…により固定する。
【0074】
これらの工程が済むと、
図6に示すように、棚6の取り付けられていない収納家具Aが組み立てられて既存壁Wの第1及び第2壁部W1,W2に固定される。
【0075】
最後に、収納家具Aの内部において、
図11(a)に示すように、第1壁部W1に左側の桟木7を、側板4に右側の桟木9を、さらに第2壁部W2に後側の桟木8をそれぞれ同じ高さ位置に固定し、
図11(b)に示すように、3つの桟木7~9の上に棚6を載置した後に、
図11(c)に示すように、その棚6を桟木7~9に固定する。
【0076】
以上により、
図1に示す収納家具Aが完成する。このように、縦枠1を既存壁Wの第1壁部W1に固定し、その縦枠1の上部に第2壁部W2と平行に水平方向に延びる幕板5の左端部を固定した後、側板4の前端部を幕板5の右端部に、また側板4の後端部を第2壁部W2にそれぞれ固定するという組立方法により、収納家具Aを手順よくスムーズに組み立てて施工することができる。
【0077】
また、床面F上に載置された地板3の左端部を縦枠1の下端部及び位置決め部材2に当接させて縦枠1の下端部に固定し、地板3の後端部を第2壁部W2に当接させ、地板3の右端部を側板4の下端部に当接させて、その側板4の下端部に固定するので、床面F上に載置された地板3を底部とした収納家具Aを容易に組み立てて施工できる。
【0078】
したがって、この実施形態においては、既存壁Wにおいて入隅を形成する第1及び第2壁部W1,W2に施工されている収納家具Aは、その左側に、第1壁部W1に沿うように上下方向に延びる縦枠1を備え、この縦枠1は第1壁部W1に側面で固定されている。また、収納家具Aの右側には、第1壁部W1と平行な側板4が対向して起立しており、側板4の後端部は第2壁部W2に固定されている。縦枠1の上端部に、第2壁部W2と平行につまり第1壁部W1と直交して水平方向に延びる幕板5が左端部で固定され、この幕板5の右端部に側板4の前側上端部が固定されている。すなわち、側板4は、上端部が幕板5を介して縦枠1及び第1壁部W1に固定され、後端部が第2壁部W2に固定される。
【0079】
このことで、収納家具Aの右側の側板4が対向している既存壁Wの第1壁部W1により左側の側板が構成される。また、既存壁Wの第2壁部W2により背板(裏板)が構成される。さらに、縦枠1及び側板4の高さが室内の天井面Cの高さと同じであり、その天井面Cにより収納家具Aの天板が構成され、収納家具Aは天井面C(天板)により閉じられた構造となる。
【0080】
こうして、収納家具Aは、左側の側板が第1壁部W1で、また背板が第2壁部W2でそれぞれ構成され、天板が天井面Cで構成されており、それら既存壁Wや天井面Cを利用する構造となっている。そのため、縦枠1、幕板5及び側板4を最少の部品として備えていればよく、部品点数が少なくて済み、その分、収納家具Aを施工する際の作業の手間が少なくなり、省施工化を図ることができるとともに、収納家具Aのコストダウンを図ることができる。
【0081】
特に、縦枠1及び側板4の高さが互いに同じで、地板3及び幕板5の左右長さも同じであり、地板3及び側板4の前後幅も互いに同じで、縦枠1の前後幅と位置決め部材2の長さとの合計が地板3及び側板4の前後幅と一致するので、これら板材の寸法の設定や管理も容易となる。
【0082】
また、上記のように、既存壁Wの第1壁部W1の下端部と室内の床面Fとの角部に位置決め部材2が配置され、縦枠1はその後面が位置決め部材2の前端部に当接して第1壁部W1に沿って起立し、その状態で上記縦枠1が第1壁部W1に固定されている。このように位置決め部材2の前端に縦枠1の後面を当接させることで、縦枠1の第2壁部W2からの距離が一定となって、その第1壁部W1での前後方向の固定位置が明確になり、その固定も容易になる。
【0083】
また、第1壁部W1と第2壁部W2との間の床面F上には地板3が後端部を第2壁部W2に当接させて載置され、その地板3の左端部は位置決め部材2とその前側の縦枠1の下端部とに当接して、その縦枠1の下端部に固定されている。地板3の前後方向の奥行は、位置決め部材2の前後方向の長さと縦枠1の前後幅との合計と同じであるので、地板3の前端(第2壁部W2からの位置)が縦枠1の前端に一致している。そして、地板3の厚さは位置決め部材2の上下厚さと同じであるので、縦枠1後側において第1壁部W1と地板3との間の隙間が位置決め部材2により埋められた構造となり、地板3と位置決め部材2とが面一状に連続する。
【0084】
さらに、地板3の右端部は、側板4の下端部に当接して、その側板4の下端部に固定されている。以上により、収納家具Aは地板3及び位置決め部材2を底部とした内部空間を有する。
【0085】
このことで、第1壁部W1に固定された縦枠1の縦枠1の下端部に地板3を介して側板4が下端部で連結された収納家具Aが得られる。また、側板4の下端部が地板3の右端部に固定されているので、側板4の固定のためにその下端部を床面Fに固定するという構造は不要となり、側板4を地板3に固定するだけで、その側板4の位置を決定され、その位置決めを容易に行うことができる。
【0086】
そして、既存壁Wにおける第1壁部W1、第2壁部W2及び第3壁部W3が平面視で略Z字状に連続しており、第1壁部W1及び第2壁部W2の間の入隅に収納家具Aを施工したとき、第2壁部W2に連続して出隅を形成する第3壁部W3と、収納家具Aの側板4とが面一状に配置される。このことで、収納家具Aの側板4は恰も第3壁部W3が延長された形状に配置され、それらの間に段差が生じることがなく、第1壁部W1、第2壁部W2及び第3壁部W3により形成される既存壁Wの出っ張りを収納家具Aによって違和感なく隠して、外観の見映えをすっきりさせかつ安全性も高めることができる。特に、収納家具Aの各部材の質感や色調等を他の建具に合わせることで、室内の一体感を高めることができる利点がある。尚、収納家具Aの各部材の質感や色調等を既存壁Wの第1~第3壁部W1~W3と一致させれば、両者が一体的に繋がり、収納家具Aが既存壁Wの一部に組み込まれた外観を呈し、その見映えをさらに高めることができる。
【0087】
また、第1壁部W1、第2壁部W2及び側板4にそれぞれ桟木が同じ高さとなるように固定され、これら3つの桟木により棚6が支持されている。この構造により、収納家具A内に既存壁Wを利用して少なくとも1つの棚6を容易に取り付けることができる。
【0088】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、第1壁部W1の後端部に第2壁部W2の左端が連続し、第2壁部W2の右端に第3壁部W3の前端が連続する既存壁Wであるが、既存壁Wは、第1壁部W1の後端部に第2壁部W2の右端が連続し、第2壁部W2の左端に第3壁部W3の前端が連続する平面視Z字状のものであってもよく、収納家具Aの左右が逆になるだけで、その他は上記実施形態と同様となる。
【0089】
また、上記実施形態では、既存壁Wは平面視Z字状の壁であるが、第1及び第2壁部W1,W2のみが入隅を形成している平面視でL字状の壁でもよく、その入隅に収納家具Aを組み立てて施工することができる。この場合も第1壁部W1が第2壁部W2の左端又は右端に連続している。
【0090】
上記実施形態では、縦枠1及び側板4の高さ位置が室内の天井面Cと同じ位置にあり、天井面Cで収納家具Aの天板を構成しているが、天井面Cとは異なる別途の天板(図示せず)を収納家具Aの上端部に取り付けて、その天板により収納家具Aの上端部を閉じた構造としてもよい。その場合、当該天板は幕板5の上端部後面に一体的に固定されたものを用いることが好ましい。
【0091】
また、縦枠1及び側板4の高さ位置は天井面Cよりも低くてもよい。そのときには、収納家具Aは天板がなくて上方に開放された構造としてもよく、或いは上記のように幕板5の上端部後面に一体的に固定された天板を固定して、収納家具Aの上端部を天板により閉じた構造としてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、収納家具Aの組立時、縦枠1を第1壁部W1へ固定した後に、その縦枠1に幕板5及び地板3を固定し、最後に側板4を幕板5及び地板3に連結しているが、縦枠1の固定後の順序は適宜変更してもよい。
【0093】
さらに、上記実施形態では、位置決め部材2及び地板3を設けているが、これらは必須の部材ではない。位置決め部材2を省略して第1壁部W1での縦枠1の固定位置を決定することもできる。また、地板3を省略して床面Fを収納家具Aの底部として利用することもできる。その場合は、側板4の下端部は床面Fに固定することが必要となる。位置決め部材2及び地板3を省略すれば、部品点数がさらに少なくて済み、収納家具Aのコストダウンを図ることができる。
【0094】
また、上記実施形態では、直交する2枚の板材を連結固定するときに締結装置20を用いているが、2枚の板材をビス等の他の締結金具により連結固定することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、収納家具の部品点数を少なくして施工する際の作業の手間を少なくし、収納家具の省施工化及びコストダウンを図ることができるので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0096】
A 収納家具
W 既存壁
W1 第1壁部
W2 第2壁部
W3 第3壁部
F 床面
C 天井面
1 縦枠
2 位置決め部材
3 地板
4 側板
5 幕板
6 棚
7~9 桟木
17 ダボ
20 締結装置
21 締結金具
33 インサート雌ねじ
38 L字金具