(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】ボトルキャップ組成物及びボトルキャップ
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20240516BHJP
B65D 65/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
C08L67/02
B65D65/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022175178
(22)【出願日】2022-11-01
【審査請求日】2022-11-01
(32)【優先日】2022-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲テ▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】劉 岳欣
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-256472(JP,A)
【文献】特表2014-525505(JP,A)
【文献】特開2005-336245(JP,A)
【文献】特表2015-511979(JP,A)
【文献】特開2004-106887(JP,A)
【文献】特開2008-230645(JP,A)
【文献】特開2008-230646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D
C08K
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート(PET)と、
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む軟質ポリエステル材料と、
潤滑剤と、
酸化防止剤と、
のみからなり、前記軟質ポリエステル材料の硬度が25D~55Dであり、
前記軟質ポリエステル材料が、ボトルキャップ組成物の総重量に基づいて、10重量%~25重量%の量で添加される、ボトルキャップ組成物。
【請求項2】
前記ポリエチレンテレフタレート(PET)の固有粘度が0.60~0.92である、請求項1に記載のボトルキャップ組成物。
【請求項3】
前記潤滑剤が、ステアリン酸塩、ポリエチレンワックス、シロキサン改質剤又はフッ素系樹脂を含む、請求項1に記載のボトルキャップ組成物。
【請求項4】
前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のボトルキャップ組成物。
【請求項5】
前記ボトルキャップ組成物の総重量に基づいて、前記潤滑剤が0.05重量%~1重量%の量で添加され、前記酸化防止剤が0.1重量%~1重量%の量で添加される、請求項1に記載のボトルキャップ組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のボトルキャップ組成物で作られるボトルキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボトルキャップ組成物及びボトルキャップに関し、特に、靭性の高いボトルキャップ組成物及びボトルキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
今後、市場は徐々に循環経済及びプラスチックリサイクルの流れに移行していくと考えられ、この市場動向下では、製品の材料を単一化して再生材料を導入することが今後の発展のための重要な目標である。製品の材料の単一化とは、製品に使用される材料を単純化することである。製品が耐用年数に達したとき、製品を直接リサイクルすることで、異種材料の混合によるリサイクル性の低下を回避し、リサイクル工程及び二酸化炭素排出量を削減することができる。
【0003】
ペットボトルは、広く使用されている包装容器である。2021年には、世界のペットボトル使用量は5800億本に達した。そのため、ペットボトルのリサイクルと再利用が市場における開発の焦点となっている。ペットボトルは、キャップと、本体と、ラベルとからなる。ボトル本体はポリエステルで作られ、キャップ材料はHDPE又はPP材料である。ボトルのキャップはポリエステル製ではないため、プラスチックボトルのリサイクル工程では、まず脱ラベル機でラベルを剥がし、次いでボトル全体を破砕し、破砕したキャップとペットボトル本体を比重浮選法で分別してリサイクルする必要がある。比重浮選法はまた、リサイクル工程を複雑にすることに加えて、水資源の浪費を招く。
【0004】
以上のことから、当業者が開発を熱望する目標である、ボトルの材料を単純化してリサイクル工程を簡素化するポリエステルボトルキャップが開発された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、PET材料の靭性を効果的に向上させ、硬度を低下させ、密封性を向上させることができる、ボトルキャップ組成物及びボトルキャップを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のボトルキャップ組成物は、ポリエチレンテレフタレート(PET)と、軟質ポリエステル材料と、潤滑剤と、酸化防止剤と、を含む。
【0007】
本開示の一実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレート(PET)の固有粘度は、0.60~0.92である。
【0008】
本開示の一実施形態によれば、軟質ポリエステル材料は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)又はポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む。
【0009】
本開示の一実施形態によれば、軟質ポリエステル材料の硬度は、25D~55Dである。
【0010】
本開示の一実施形態によれば、軟質ポリエステル材料は、ボトルキャップ組成物の総重量に基づいて10重量%~25重量%の量で添加される。
【0011】
本開示の一実施形態によれば、潤滑剤は、ステアリン酸塩、ポリエチレンワックス、シロキサン改質剤又はフッ素系樹脂を含む。
【0012】
本開示の一実施形態によれば、酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、混合酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、複合酸化防止剤、又はこれらの組み合わせを含む。
【0013】
本開示の一実施形態によれば、ボトルキャップ組成物の総重量に基づいて、潤滑剤は0.05重量%~1重量%の量で添加され、酸化防止剤は0.1重量%~1重量%の量で添加される。
【0014】
本開示のボトルキャップは、ボトルキャップ組成物から作られる。
【発明の効果】
【0015】
上記に基づいて、本開示は、軟質ポリエステル材料を介した混合及び改質を導入し、これは、PET材料の靭性を効果的に向上させ、硬度を低下させ、それによって密封性を向上させることができる。
【0016】
上記をより理解しやすくするために、図面を伴ういくつかの実施形態を以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、これらの実施形態は例示的なものであり、本開示はこれらに限定されない。
【0018】
本明細書において、「ある数値~別の数値」で表される範囲は、その範囲内の全ての数値を列挙することを避けた一般的な表現である。したがって、特定の数値範囲の記載は、その数値範囲内の任意の数値だけでなく、その数値範囲内の任意の数値によって定義されるより小さい数値範囲も含み、あたかも上記の任意の数値及びより小さい数値範囲が本明細書において指定されているかのようになる。
【0019】
本開示は、ポリエチレンテレフタレート(PET)と、軟質ポリエステル材料と、潤滑剤と、酸化防止剤と、を含むボトルキャップ組成物を提供する。
【0020】
本実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレート(PET)の固有粘度は、例えば0.60~0.92である。ポリエチレンテレフタレート(PET)の材料は、未使用の樹脂又は使用済みの再生樹脂(PCR樹脂)を含んでもよい。使用済み再生樹脂の原料としては、再生材料の導入要件を満たすために、ペットボトルフレーク等からの再生樹脂を挙げることができるが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0021】
本実施形態によれば、軟質ポリエステル材料は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)又はポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含んでもよい。軟質ポリエステル材料の硬度は、例えば25D~55Dであり、好ましくは30D~40Dである。ボトルキャップ組成物の総重量に基づいて、軟質ポリエステル材料は、例えば10重量%~25重量%、好ましくは15重量%~20重量%の量で添加される。軟質ポリエステル材料を混合及び改質PETに導入することにより、PET材料の靭性を効果的に向上させ、硬度を低下させ、密封性を向上させることができる。これをボトルキャップに使用することができ、ボトル材料を単純化するという目標を達成することができる。
【0022】
本実施形態によれば、潤滑剤は、ステアリン酸塩、ポリエチレンワックス、シロキサン改質剤又はフッ素系樹脂を含んでもよい。潤滑剤は、ボトルキャップ組成物の総重量に基づいて、例えば0.05重量%~1重量%の量で添加される。潤滑剤を添加することにより、射出流動性及び金型からの離型性を向上させることができる。
【0023】
本実施形態によれば、酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、混合酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、複合酸化防止剤、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。酸化防止剤は、ボトルキャップ組成物の総重量に基づいて、例えば0.1重量%~1重量%の量で添加される。酸化防止剤を添加することにより、材料の耐熱性及び加工性を向上させることができる。
【0024】
また、本開示は、上記のボトルキャップ組成物から作られたボトルキャップを提供する。
【0025】
以下、上述したボトルキャップ組成物及び本開示のボトルキャップについて、実験例を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実験例は、本開示を限定することを意図するものではない。
【0026】
[実験例]
本開示によるボトルキャップ組成物を使用して、靭性及び硬度がより良好なポリエステルボトルキャップを形成し得ることを証明するために、以下の実験例を実施した。
【0027】
[機器分析]
比重:4℃における純水の密度に対する物質の密度。ASTM D792規格に準じて試験した。
【0028】
衝撃強度(アイゾットノッチ付き衝撃強度):ASTM D256規格に準じて試験を行った。得られた値は、試験試料が破断したときに耐えることができる総エネルギーを示す。値が大きいほど、試験試料がより大きな衝撃強度(又は試験試料の耐強度)に耐えることができることを示す。単位はkg‐cm/cmである。
【0029】
引張強度:ASTM D638規格に準じて試験を行った。得られた値は、試験試料が引張変形に対して耐えることができる総エネルギーを示す。値が大きいほど、試験試料がより大きな引張強度に耐えることができることを示す。単位はMPaである。
【0030】
曲げ弾性率:ASTM D790規格に準じて試験を行った。得られた値は、試験試料が曲げ変形に対して耐えることができる総エネルギーを示す。値が大きいほど、試験試料の剛性が高いことを示す。単位はMPaである。
【0031】
ロックウェル硬度:ASTM D785規格に準じて試験を行った。圧痕塑性変形の深さに基づいて硬度値を決定する指標である。値が大きいほど、材料の硬度が高いことを示す。
【0032】
熱変形温度(HDT):ASTM D648規格に準じて試験を行った。試験試料の熱と歪みとの関係を表すパラメータであり、ポリマーの耐熱性を測定する指標である。試験中、ポリマーに一定の負荷をかけ、一定の速度で温度を上昇させ、所定の歪みに対応する温度に到達させる。
【0033】
[ボトルキャップの特性分析]
実施例1~3及び比較例1-1、比較例1-2及び比較例2のボトルキャップの成分比及び試験結果を下記表1に示す。表1において、3802は南亞プラスチック株式会社製のプラスチックボトル用PETポリエステル樹脂の種類であり、固有粘度は0.8である。表1から分かるように、比較例1-1、比較例1-2の現行ボトルキャップ材料と比較例2の未改質PETを比較すると、比較例2の未改質PETの耐衝撃性は良好ではなく、硬度と剛性が高すぎることが分かる。
【0034】
実施例1~3では、軟質ポリエステル材料を混合及び改質PETに導入することにより、PET材料の靭性を効果的に向上させ、硬度を低下させ、それによって密封性を向上させることができる。これをボトルキャップに使用することができ、耐衝撃性に劣り、硬度と剛性が高いことで密封性に劣る未改質PET材料の欠点を改善することができる。
【0035】
【0036】
まとめると、本開示は、ボトルキャップ組成物を提供し、製造されたポリエステルボトルキャップは、ボトルキャップの材料を単純化して、リサイクル工程を簡素化することができる。すなわち、浮遊選別工程を省略することができ、水資源の浪費を回避することができ、循環経済及びプラスチックリサイクルの流れを実現することができる。さらに、本開示は、軟質ポリエステル材料を介して混合及び改質を導入し、これは、PET材料の靭性を効果的に向上させ、硬度を低下させ、それによって密封性を向上させることができる。また、これをボトルキャップに使用して、耐衝撃性に劣り、硬度と剛性が高いことで密封性に劣る未改質PET材料の欠点を改善することができる。
【0037】
本開示の範囲又は精神から逸脱することなく、開示されたものに様々な修正及び変更を加えることができることが当業者には明らかであろう。上記を考慮すると、本開示は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内にあるという条件で、修正及び変形を包含することが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本開示のボトルキャップ組成物及びボトルキャップを適用して、ボトルの材料を単純化し、リサイクルプロセスを簡素化し、それによって、循環経済及びプラスチックリサイクルの流れを実現することができる。