(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】回路遮断装置
(51)【国際特許分類】
H02P 29/00 20160101AFI20240516BHJP
【FI】
H02P29/00
(21)【出願番号】P 2022528073
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(86)【国際出願番号】 EP2020081405
(87)【国際公開番号】W WO2021094226
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-07-01
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,セルヒオ
(72)【発明者】
【氏名】ツィンマーマン,エステバン
(72)【発明者】
【氏名】バーチ,フィリップ・エーリヒ
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0047181(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03460822(EP,A1)
【文献】特開2016-100009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路遮断装置(100)であって、
電力線(115)に電気的に接続可能な回路遮断器(110)と、
前記回路遮断器(110)に機械的に連結され、少なくとも閉合位置から開放位置への開放動作を含む動作を行うように回路遮断器(110)を動作させることによって、前記電力線(115)を電気的に遮断するように構成されたモータ駆動システム(120)と、
前記モータ駆動システム(120)および前記回路遮断器(110)の少なくとも一方のモデル(155)を含むコントローラ(150)とを備え、
前記コントローラ(150)は、
前記回路遮断器(110)の前記動作の基準運動曲線情報(200)を受信し、
前記モデル(155)に基づいて、前記基準運動曲線情報(200)からアクチュエータ情報(210)を生成し、
前記アクチュエータ情報(210)を前記モータ駆動システム(120)に出力して、モデルベース制御を介して
前記回路遮断器(110)の運動曲線を制御するように構成されている、回路遮断装置(100)。
【請求項2】
前記動作は、開放位置から閉合位置への閉合動作をさらに含む、請求項1に記載の回路遮断装置(100)。
【請求項3】
前記基準運動曲線情報(200)は、前記モータ駆動システムまたは前記回路遮断器の一部の基準位置の時間依存進行を含む、請求項1または2に記載の回路遮断装置(100)。
【請求項4】
前記モータ駆動システム(120)は、リンク機構(140)に連結されたモータ(130)を備え、
前記リンク機構(140)は、前記モータ(130)の回転運動を実質的に直線運動に変換し、前記直線運動を前記回路遮断器(110)に出力するように構成され、
前記モデル(155)は、前記モータ(130)と前記リンク機構(140)との間のモータトルクに関する情報と、前記リンク機構(140)と前記回路遮断器(110)との間の反力に関する情報とを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の回路遮断装置(100)。
【請求項5】
前記モデルベース制御は、最適化問題の少なくとも1つの最適化標的のために数学的に最適化された最適化制御戦略を使用することを含み、
前記最適化標的は、前記基準運動曲線情報(200)によって記述された位置および前記基準運動曲線情報(200)によって記述された速度からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか1項に記載の回路遮断装置(100)。
【請求項6】
前記コントローラ(150)は、前記最適化制御戦略を記述するための一組の予め計算された制御パラメータへのアクセス権を有し、
前記コントローラ(150)は、前記予め計算された制御パラメータを用いて前記モデルベース制御を実行するようにさらに構成されている、請求項5に記載の回路遮断装置(100)。
【請求項7】
前記コントローラは、前記最適化制御戦略を記述する制御パラメータを計算し、前記計算された制御パラメータを用いて前記モデルベース制御を実行するようにさらに構成されている、請求項5または6に記載の回路遮断装置(100)。
【請求項8】
前記最適化問題は、前記最適化標的を含むコスト関数と、少なくとも1つの制約方程式とを含み、
前記少なくとも1つの制約方程式は、前記動作中に変動する前記回路遮断装置の変動大きさの閾値を記述する、請求項5から7のいずれか1項に記載の回路遮断装置(100)。
【請求項9】
前記変動大きさの前記閾値は、前記動作が開放動作であるときの回路遮断器接点の分離速度、前記動作が閉合動作であるときの回路遮断器接点の接近速度、回路遮断器チャンバの内部温度、モータトルク、および連結力のうちの1つ以上を含む、請求項8に記載の回路遮断装置(100)。
【請求項10】
前記コントローラ(150)は、前記モデルのモデルパラメータに関する動作データを受信し、受信した前記動作データを用いて前記モデルの前記モデルパラメータを更新するようにさらに構成されている、請求項1から9のいずれか1項に記載の回路遮断装置(100)。
【請求項11】
前記回路遮断器(110)は、発電プラントに設けられた発電機用の発電機回路遮断器、特に63kA以上の定格公称電流を有する発電機回路遮断器である、請求項1から10のいずれか1項に記載の回路遮断装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、回路遮断装置に関する。特に、本開示は、発電プラントに設けられた発電機用の回路遮断器、例えば、典型的に発電プラント発電機に流れる定格公称電流、例えば63kA以上の定格公称電流を有する回路遮断器を制御するためのモータ駆動装置を含む回路遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
発電プラントに設けられた発電機と共に使用するように構成された回路遮断器は、電力線を流れる数十kAから数百kAの範囲の大電流を切り替える、すなわち、遮断または接続するように設計されている。一部の回路遮断装置は、上述した回路遮断器と、この回路遮断器を動作させるように構成されたモータ駆動システムとを含む。
【0003】
一部のモータ駆動システムは、回路遮断器に機械的にリンクされまたは連結され、回路遮断器を動作させるように構成されている。典型的には、動作させることは、回路遮断器の開放動作および閉合動作のうちの少なくとも1つを行うことを含む。開放動作では、例えば、回路遮断器の関連部材を閉合位置から開放位置に動かすことによって、電力線を電気的に遮断する。
【0004】
このような開放動作のときに、モータ駆動系の制御を介して回路遮断器の動作特性を制御することが望ましい。
【0005】
特定の構成において、回路遮断器の閉合動作のときの動作曲線を制御することも便利であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
一態様によれば、請求項1の特徴を有する回路遮断装置が提供される。
【0007】
一実施形態において、回路遮断装置は、回路遮断器と、モータ駆動システムと、コントローラとを備える。
【0008】
回路遮断器は、電力線に電気的に接続可能である。例えば、回路遮断器は、入力端子と出力端子を有し、回路遮断器は、電力線の間に接続可能である。電力線は、電力を輸送するための電線である。例えば、電力線は、変圧器の一次側または二次側の出力線であってもよく、または発電所発電機などの電気発電機の出力線であってもよい。
【0009】
モータ駆動システムは、回路遮断器に機械的に連結される。本明細書に使用される場合、機械的に連結することは、モータ駆動システムのモータと回路遮断器の操作素子との間に設けられた作動部材を含んでもよい。例えば、作動部材は、入力側がモータの出力側に機械的に接続され、出力側が回路遮断器の回路遮断器チャンバに機械的に接続される連結機構である。
【0010】
モータ駆動システムは、回路遮断器を動作させるように構成されている。回路遮断器を動作させることは、例えば、操作素子などの回路遮断器の素子に対して動作を行うことを含んでもよい。動作は、典型的には、モータ駆動部に接続された作動部材、例えばリンク機構を介して行われる。動作は、回路遮断器が閉合位置にあるときに、回路遮断器を開放位置に位置させるための回路遮断器の少なくとも開放動作を含む。この開放動作により、電力線は、電気的に遮断される。例えば、開放位置において、入力端子に接続された電力線の第1の端部と、出力端子に接続された電力線の第2の端部とは、互いに電気的に分離される。
【0011】
コントローラは、回路遮断器およびモータ駆動システムの少なくとも一方のモデルを含む。典型的には、コントローラは、モータ駆動システムと回路遮断器の両方のモデルを含む。例えば、モデルは、モータとリンク機構との間の連結、例えばリンク機構に作用するモータトルク、およびリンク機構と回路遮断器との間の連結、例えば回路遮断器の操作素子を動作させるときにリンク機構に与えられた反力を記述する。
【0012】
コントローラは、動作の基準運動曲線情報を受信するように構成されている。コントローラは、モデルに基づいて基準運動曲線情報からアクチュエータ情報を生成し、アクチュエータ情報をモータ駆動システムに出力して、モデルベース制御を介して運動曲線を制御するようにさらに構成されている。
【0013】
典型的には、基準運動曲線情報は、少なくとも開放動作の情報を含む。この例において、コントローラは、開放動作の基準運動曲線情報を受信し、開放動作のモデルに基づいて基準運動曲線情報からアクチュエータ情報を生成し、アクチュエータ情報をモータ駆動システムに出力して、モデルベース制御を介して回路遮断器の開放運動曲線を制御するように構成されている。一実施形態において、基準運動曲線情報は、軌道および速度の基準値を含む。
【0014】
一実施形態において、動作は、回路遮断器が開放位置にあるときに回路遮断器を閉合位置に位置させるための回路遮断器の閉合動作をさらに含む。この閉動作により、電力線は、電気的に接続される。例えば、閉合位置において、入力端子に接続された電力線の第1の端部と、出力端子に接続された電力線の第2の端部とは、電気的に接続される。このような実施形態において、例えば、コントローラは、閉合動作の基準運動曲線情報を受信し、閉合動作のモデルに基づいて基準運動曲線情報からアクチュエータ情報を生成し、アクチュエータ情報をモータ駆動システムに出力して、モデルベース制御を介して回路遮断器の閉合動作曲線を制御するようにさらに構成されている。
【0015】
モデルベース制御は、本明細書に使用された場合、例えば、動的マトリックス制御、モデルアルゴリズム制御、線形二次ガウス制御、および/または一般化予測制御を含むが、これらに限定されないモデル予測制御を行うことを含んでもよい。
【0016】
本願において、回路遮断装置は、単相構成に限定されない。例えば、回路遮断装置の回路遮断器は、多相電力線、例えば三相電力線に電気的に接続可能である。
【0017】
基準運動曲線は、本明細書に使用された場合、時間の経過につれて回路遮断器の位置および/または動作速度に関する情報を含んでもよい。一実施形態において、基準運動曲線は、モータ駆動システムまたは回路遮断器の一部の基準位置の時間依存進行を含む。典型的には、基準運動曲線は、回路遮断器の操作素子または回路遮断器接点の開放状態と閉合状態との間および/または閉合状態と開放状態との間の任意の時点における回路遮断器位置の基準位置、例えば所望位置の時間依存進行を含む。なお、この基準位置は、中間位置、すなわち、回路遮断器が(まだ)完全に開放または閉合されていない位置を含んでもよい。追加的にまたは代替的に、典型的には、基準運動曲線は、回路遮断器の操作素子または回路遮断器接点の開放状態と閉合状態との間および/または閉合状態と開放状態との間の任意の時点における回路遮断器位置の基準速度、例えば所望速度の時間依存進行を含む。
【0018】
一実施形態において、モータ駆動システムは、リンク機構に連結されたモータを備える。リンク機構は、モータの回転運動を実質的に直線運動に変換し、直線運動を回路遮断器に出力するように構成されている。したがって、モデルは、モータとリンク機構との間のモータトルクに関する情報と、リンク機構と回路遮断器との間の反力に関する情報とを含む。
【0019】
必要に応じて、モデルは、圧力動態および/または摩擦動態に関する情報をさらに含んでもよい。圧力動態は、システムに生じた摩擦、例えば、モータとリンク機構との間の摩擦、リンク機構と回路遮断器との間の摩擦、または両方の摩擦を模倣する。圧力動態は、システム内部の気圧、例えば回路遮断器チャンバ内部の気圧を模倣する。圧力動態は、チャンバに接続されるリンク機構に最終的に作用する力をもたらす。
【0020】
一実施形態において、モデルベース制御は、最適化問題の少なくとも1つの最適化標的のために数学的に最適化される最適化制御戦略を使用することを含む。最適化標的は、基準運動曲線情報によって記述された位置および基準運動曲線情報によって記述された速度からなる群から選択される1つ以上であってもよい。典型的には、位置は、回路遮断器の操作素子または回路遮断器接点の開放状態と閉合状態との間および/または閉合状態と開放状態との間の任意の時点における回路遮断器位置の基準位置、例えば所望位置である。典型的には、速度は、回路遮断器の操作素子または回路遮断器接点の開放状態と閉合状態との間および/または閉合状態と開放状態との間の任意の時点における回路遮断器位置の基準速度、例えば所望速度である。
【0021】
一実施形態において、コントローラは、最適化制御戦略を記述するための一組の予め計算された制御パラメータへのアクセス権を有する。コントローラは、予め計算された制御パラメータを用いて、モデルベース制御を実行するようにさらに構成されている。典型的には、コントローラは、予め計算された制御パラメータを用いて、高速フィードフォワード制御およびロバストフィードバック制御を介してモデルベース制御を実行するように構成されている。
【0022】
代替的または追加的に、一実施形態において、コントローラは、最適化制御戦略を記述する制御パラメータを計算し、計算された制御パラメータを用いてモデルベース制御を実行するようにさらに構成されている。典型的には、コントローラは、計算された制御パラメータを用いて制御パラメータを更新するようにさらに構成されている。典型的には、コントローラは、モデルベース制御をモデル予測制御として実行するようにさらに構成されている。
【0023】
一実施形態において、最適化問題は、コスト関数と、少なくとも1つの制約方程式とを含む。コスト関数は、最適化標的を含む。少なくとも1つの制約方程式は、回路遮断装置の変動大きさの閾値を記述する。変動大きさは、動作中に変動する。したがって、変動大きさの閾値は、動作が開放動作であるときの回路遮断器接点の分離速度、動作が閉合動作であるときの回路遮断器接点の接近速度、回路遮断器チャンバの内部温度、モータトルク、および連結力のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0024】
一実施形態において、コントローラは、モデルのモデルパラメータに関連する動作データを受信し、受信した動作データを用いてモデルのモデルパラメータを更新するようにさらに構成されている。動作データは、回路遮断装置の挙動、例えば、装置構成要素の老化による劣化挙動を含んでもよい。回路遮断装置および/またはその部品がライフサイクル中に老化する場合、動作データを用いて、モデルを装置の現在の状態に更新するまたは適合させることができる。
【0025】
一実施形態において、回路遮断器は、発電所に設けられた発電機用の発電機回路遮断器である。典型的には、発電機回路遮断器は、63kA以上の定格公称電流を有する。
【0026】
図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】一実施形態に係る回路遮断装置の構成の概要を示すブロック図である。
【
図2】
図1の回路遮断装置のコントローラによって実行される制御の詳細を示すブロックベースのフローチャートである。
【
図3】コントローラによって実行されるモデルベース制御に使用される運動曲線の例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
以下、図面を参照して、本技術の概要および本開示の実施形態を説明する。
【0029】
図1は、回路遮断装置100の構成を示すブロック図である。
図1において、モータ駆動システム120は、回路遮断器110に機械的に連結される。回路遮断器110は、電力線(高電圧線)115の間に接続された端子(図示せず)を有し、電力線115の電気接続を選択的に遮断および/または閉合するように構成されている。このような動作を行うために、モータ駆動システム120は、回路遮断器110を、開放位置と閉合位置との間および/または閉合位置と開放位置との間に動作させる。
【0030】
モータ駆動システム120は、モータ130と、リンク機構140とを含む。モータ130は、モータトルクTモータをリンク機構140に印加するように構成されている。リンク機構140は、入力側でモータ130から受けた回転運動を実質的に直線運動に変換し、出力側で出力するように構成されている。リンク機構140は、回路遮断器110に連結され、モータからの力またはトルクを回路遮断器110に伝達する。回路遮断器110は、典型的には、電気接続の実際の遮断および/または閉合を行うための電気回路遮断器接点を配置するための回路遮断器チャンバを含む。典型的には、操作素子(図示せず)が、回路遮断器接点とリンク機構140との間の機械的相互接続を確立するために、回路遮断器110上に設けられる。以下、モータ130とリンク機構140と遮断器チャンバ110とのエンティティは、機械的エンティティ160として呼ばれることがある。
【0031】
コントローラ150は、モータ130の動作または運動を制御するために設けられる。
図1に示す例において、コントローラは、要求トルクT
要求をモータ130に出力する。
図1において、コントローラ150は、閉回路コントローラである。モータ130のモータ速度およびモータ130のモータ位置を表す信号は、コントローラ150にフィードバックされる。
【0032】
モータ駆動システム120は、基準運動曲線に従うように、回路遮断器110の動作、または間接的に回路遮断器の接点の動作を制御することが望ましい。モータ駆動部を備えない従来のシステムは、回路遮断器接点の開放動作または閉合動作中に回路遮断器の動作を制御することができなかった。
【0033】
モータ駆動システム120を導入すると、例えば、回路遮断装置のロバスト性、寿命、健康状態などを増加させるために、さらなる自由度を制御することが可能になった。従来、モータ駆動システム120の運動曲線構成は、制御システムに基づく手法を含む。すなわち、従来の構成において、モータ駆動システム120の運動曲線構成は、複数の連続的な段階に分割される。追跡されている基準曲線は、連続的な段階の各々に対して個別に構成されている。さらに、複数の連続的な段階のうち、1つの段階から次の段階に移行するための移行基準は、制御システムの視点から定義される。コントローラ自体は、カスケード接続された3つの個別のPIコントローラを含む。第1のPIコントローラは、回路遮断器接点の位置を制御する。第2のPIコントローラは、回路遮断器接点の動作速度を制御する。第3のPIコントローラは、モータによってリンク機構システムに印加されたトルクを制御する。移行は、典型的には、目標閾値、例えば、速度閾値、位置閾値、または時間閾値によって定義される。
【0034】
従来の手法において、PIコントローラおよび移行の目標閾値は、回路遮断器エンジニアにとって直感的ではない方法で、回路遮断装置に対して定義されなければならない。したがって、システム設計者は、制御システムの完全な知識を有する必要がある。さらに、運動曲線構成は、所定の数の段階、典型的には6段階に制限され、各段階には固定の制御パラメータが割り当てられる。運動曲線の直接な最適化は、従来技術では不可能である。
【0035】
図2は、
図1の回路遮断装置のコントローラによって実行される制御の詳細を示すブロックベースのフローチャートである。
図3は、コントローラによって実行されるモデルベース制御に使用される運動曲線の例である。以下の説明は、
図1~3を共通に参照する。
【0036】
本開示に係る技術において、制御部150は、モデル155を含む。モデル155またはその数学的記述は、回路遮断器に関連する運動の制御に影響を及ぼす関連する物理現象を示す。制御部150は、動作の基準運動曲線情報200を受信する。適切な基準運動曲線情報200を導出可能な運動曲線の例は、後述する
図3に示される。制御部150は、基準運動曲線情報200からアクチュエータ情報210を生成する。コントローラは、モデル155を用いて、アクチュエータ情報210を生成する。すなわち、アクチュエータ情報210は、モデル155に依存する。コントローラ150は、回路遮断器110またはその部品の動作の運動曲線を制御するために、アクチュエータ情報210をモータ駆動システム120に出力する。制御は、モデルベース制御を介して行われる。
【0037】
モデルベース制御は、当業者に一般に知られている制御手法である。例えば、Barrera-Cardenas R, Molinas Mによる論文「Optimal LQG Controller For Variable Speed Wind Turbine Based on Genetic Algorithms」(Energy Procedia 20 (2012), 207-216)は、風力タービンのモデルベース制御手法を記載している。別の例として、Ding Y, Xu Z, Zhao J,Shao Zによる論文「Fast Model Predictive Control Combining Offline Method and Online Optimization with K-D Tree」(DOIを介してhttp://dx.doi.org/10.1155/2015/982041からアクセス可能である)は、特定の計算能力下でモデルベース制御手法であるモデル予測制御を使用する事例を記載している。
【0038】
モデルベース制御手法は、例えば、開放動作時に、回路遮断器接点を流れる電流の変動により、接点を分離するのに必要とされる力の変動に起因して、モータ130からリンク機構140に印加されたトルクが常にリンク機構の出力側上のトルクまたは力と同じものに変換されるとは限らないという事実に対処する。さらに、摩擦および圧力は、複数の動作の間に常に同じであるとは限らず、すなわち、圧力の蓄積は異なり、システムの慣性は線形ではない。モデルベース制御は、システムの動態に関する「知識」を有するため、基準運動曲線を適切な程度に維持することができる。
【0039】
モデルベース制御、例えば、モデル予測制御(MPC)は、動的マトリックス制御(DMC)、モデルアルゴリズム制御(MAC)、一般化予測制御(GPC)として知られる手法を用いた制御を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0040】
本開示の回路遮断装置のモデルベース制御において、例えば、モータ駆動装置と回路遮断器とからなるシステムのモデルが作成される。1つ以上の最適化標的、例えば運動曲線は、数学的条件として記述される。1つ以上の最適化標的の解決策は、モデル155を含むコントローラ150によって制御されるモータ駆動システム120の制御戦略である。
【0041】
一態様によれば、モデルは、線形化されたシステムモデルであり、状態空間モデルは、(x(k+1)=A・x(k)+B・u(k))の形式を有する等式制約に組み込まれる。式中、xは、状態ベクトルであり、uは、入力ベクトルであり、Aは、状態行列であり、Bは、入力行列であり、kは、指標変数である。モデルとして線形化システムモデルを使用することによって、線形モデルベース制御が実行される。典型的には、線形モデルベース制御は、線形モデル予測制御(MPC)を含む。線形システムモデルは、定数線形モデルまたは時変線形システムモデルであってもよい。時変線形システムモデルは、典型的には、装置の動作中に経時的に変化し得るシステム特性、例えば、システム構成要素の機械的摩耗に適合される。
【0042】
別の態様によれば、モデルは、非線形システムモデルである。例えば、回路遮断器システムの動態および予期される追加の慣性、必要に応じて、モータ駆動装置またはその部品の動態および予期される追加の慣性、例えば摩擦および圧力の発生が、(x(k+1)=f(x(k),u(k)))の形式を有する等式制約に考慮される。式中、xは、状態ベクトルであり、uは、入力ベクトルであり、fは、回路遮断器の非線形表現、必要に応じてモータ駆動装置またはその部品を含む回路遮断器の非線形表現を非線形回路遮断器モデルとして含む関数である。関数fは、積分法を用いて、予測範囲にわたって将来のシステム状態を予測する。典型的には、予測範囲は、後退予測範囲または後退有限予測範囲である。一例として、積分法は、1次オイラー法(1st order Euler method)またはルンゲ・クッタ法(Runge-Kutta method)のいずれか一方を含む。
【0043】
別の態様によれば、モデル155は、古典的な制御システムモデル、例えば状態空間モデル、伝達関数モデルのいずれでもない。むしろ、モデル155は、状態空間モデルまたは伝達関数モデルよりも数学的精度に対する要求が少ないモデルであってもよい。この場合、モデル155は、例えば、モデルパラメータフィードバックによって更新可能または適応可能であってもよい。
【0044】
モデルベース制御は、典型的には、モデル155に基づく一組のアルゴリズムに基づく。典型的には、MPCなどのモデルベース制御において、コントローラ150によってモータ駆動システム120に発行される制御動作は、後退する有限時間方式で実施される。コスト関数は、将来の制御動作を決定するように最適化される。コスト関数は、システムの将来の挙動を含む。例えば、コスト関数は、基準運動曲線が位置追跡および/または速度追跡であるときに、コントローラ150からモータ駆動システム120への将来の出力によって変動を最小化することができる。
【0045】
典型的には、コスト関数は、所望の動作の位置誤差および速度誤差のうちの1つ以上に罰則を科すことによって、追従基準を提供し、モータ作動に罰則を科すことによって、モータを静止/停止させ、モータトルク偏差に罰則を科すことによって、モータの損傷を回避するおよび/またはモータの摩耗を最小限に抑える。典型的には、コスト関数は、モータトルク制限および/またはモータ速度制限などの制約を考慮に入れた凸コスト関数である。
【0046】
最適化問題または最適化標的は、基準運動曲線情報200によって記述された位置および基準運動曲線情報200によって記述された速度のうちの1つ以上であってもよい。最適化問題は、オンラインまたはオフラインで解かれることができる。オンラインで解かれる場合、コントローラ150は、最適化制御戦略を記述する制御パラメータを計算し、計算された制御パラメータを用いてモデルベース制御を実行するように構成されている。オフラインで解かれる場合、コントローラは、最適化制御戦略を記述するための一組の予め計算された制御パラメータへのアクセス権を有し、コントローラは、予め計算された制御パラメータを用いてモデルベース制御を実行するように構成されている。また、ハイブリッド手法も考えられる。この場合、コントローラは、選択された特定の量に対して制御パラメータの限定セットを計算すると共に、他の量に対して予め計算された制御パラメータを使用する。
【0047】
図2のブロック図において、発電機回路遮断器(GCB)モデルとして例示されるモデル155は、GCBモデルリフレッシュブロック170からモデル更新パラメータを受信する。GCBモデルは、コントローラ150が制御動作に計算的に対処できるように単純化することができる。モデル155は、基準運動曲線最適化ブロックに入力されてもよく、またはコントローラ150に直接に入力されてもよい。
【0048】
図2に示すように、コントローラ150は、適切な制御方法を選択するように構成することができる。代替的には、コントローラ150は、1つの制御戦略に固定されてもよい。制御戦略は、例えば高速フィードフォワード制御およびロバストフィードバック制御を介して、予め計算された制御パラメータを使用すること、制御パラメータを計算すること、および計算された制御パラメータを用いてモデルベース制御を実行することのうちの少なくとも1つ、すなわち、オンライン制御戦略最適化を含む。
図2において、予め計算された制御パラメータを使用することは、モデルベースフィードフォワード戦略151によって例示される。さらに
図2において、制御パラメータを計算することおよび計算された制御パラメータを用いてモデルベース制御を実行することは、モデル予測制御(MPC)152によって例示されている。選択された制御戦略を実行する間に、コントローラ150は、アクチュエータ情報210を生成する。
【0049】
図2にさらに示すように、コントローラ150は、生成されたアクチュエータ情報210をモータ駆動システム120に出力し、リンク機構140を介して回路遮断器に間接的に出力する。モータ駆動システム120と回路遮断器とは、機械的エンティティ160を形成する。
図2において、機械的エンティティ160は、「GCB/MD」、すなわち、発電機回路遮断器およびモータ駆動システムとして名付けられる。測定値は、制御測定フィードバックとしてコントローラ150にフィードバックされる。さらに、動作データは、モデルリフレッシュブロック170に出力される。モデルリフレッシュブロック170は、モデル155を適応させるためのモデル更新データを出力することができる。モデル更新データは、システムの変化、例えば、回路遮断装置のライフサイクルまたは寿命中に回路遮断装置の老化を反映することができる。
【0050】
図2にさらに示すように、モデル155から出力されたモデルデータは、基準運動曲線最適化ブロック180に入力されてもよい。基準運動曲線最適化ブロック180において、基準運動曲線情報200は、モータ制約、例えばトルクおよび速度などの動作要件に応じて、最適化される。
【0051】
図3に示された所望の運動曲線は、基準運動曲線情報200を導出するための例示的な基礎として機能することができる。例えば、所望の運動曲線をサンプリングし、コントローラまたはコンピュータに入力することによって、コントローラ150によって使用可能な実際の基準運動曲線情報200を導出することができる。
【0052】
図3に示すように、運動曲線は、開始位置と終了位置との間の動作を表す。開始位置は、回路遮断器接点の閉合位置であってもよく、終了位置は、回路遮断器接点の開放位置であってもよい。しかしながら、開始位置は、回路遮断器接点の開放位置であってもよく、終了位置は、閉合位置であってもよい。
【0053】
図3において、運動曲線は、コントローラおよびモータ駆動システム120を介して制御される回路遮断器接点の加速段階および減速段階を示す。したがって、加速および減速を平滑化することができ、回路遮断器110のライフサイクルを効果的に向上させることができる。
【0054】
上記は、例示的な実施形態で本発明を説明したが、任意の態様、特徴、要素およびそれらの様々な組み合わせは、例示である。当業者は、特許請求の範囲に定義された本発明の趣旨から逸脱することなく、上述の技術の多数の変形を考案できるであろう。