(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】折りたたみ式パラボラアンテナを製造するためのコンピュータ支援方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/20 20060101AFI20240516BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20240516BHJP
H01Q 1/08 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
H01Q15/20
H01P11/00
H01Q1/08
(21)【出願番号】P 2022529799
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 ES2019070810
(87)【国際公開番号】W WO2021105528
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】517174522
【氏名又は名称】エアバス ディフェンス アンド スペース,エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パラ ルビオ,アルフォンソ
(72)【発明者】
【氏名】ハラ ロデルゴ,アルバロ
(72)【発明者】
【氏名】モンテサノ ベニト,カルロス エンリケ
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-170103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 15/20
H01P 11/00
H01Q 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折りたたみ式パラボラアンテナ
(1)を製造するための、コンピュータ支援された方法であって、当該方法は次のステップを含む、即ち、
三角形セルを有する二次元放射状折り紙パターン(2)を選出すると共に、パラボラ面(3)を選出するステップと、
前記パラボラ面(3)上に前記折り紙パターン(2)を表示するために、前記パラボラ面(3)の焦点(4)から該パラボラ面(3)上に、三角形セルを有する前記二次元放射状折り紙パターン(2)を投影し、その後、曲線の辺を有する三角形を取得するために、前記パラボラ面の三角分割を行うステップと、
曲線の辺を有してなる投影された三角形の頂点(5)を接合することによって、前記パラボラ面上に直線の辺を有する三角形(6)のパターンを取得するステップと、
対応する重心(7)を基準に各三角形(6)を縮小して、各三角形間の間隔を決定するために、前記三角形(6)の重心(7)の計算、及び、前記焦点(4)からの相似演算による前記三角形(6)のスケーリングを行い、複数のセグメント(9)を有するメッシュ(8)、及び該メッシュ(8)のセグメント(9)によって区切られた複数の三角形セル(10)を取得するステップであって、前記セグメント(9)は、三角形を折りたたみ可能にするヒンジとして作用する、ステップと、
前記三角形セル(10)を反射性剛性材料の三角形(11)で充填するステップと、
各セグメント(9)の幅が、少なくとも、隣接する2つの
反射性剛性
材料の三角形(11)の厚さの合計になるように、当該
折りたたみ式パラボラアンテナ
(1)の前記メッシュ
(8)を可撓性材料で製造するステップと、
周辺部のセル(12)を、外縁辺に丸みをもたせて製造するステップと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
三角形セルを有する前記二次元放射状折り紙パターン(2)は、いくつかのの扇形部に分割されており、当該方法の前記ステップはそれぞれ、各扇形部に対して個別に繰り返される、請求項1に記載の、折りたたみ式パラボラアンテナを製造するためのコンピュータ支援された方法。
【請求項3】
組み立てられた状態で前記
折りたたみ式パラボラアンテナ(1)を支持するためのツール(13)を使用する、
請求項1に記載の、折りたたみ式パラボラアンテナを製造するためのコンピュータ支援された方法。
【請求項4】
前記メッシュ
(8)がPEEK製である、
請求項1に記載の、折りたたみ式パラボラアンテナを製造するためのコンピュータ支援された方法。
【請求項5】
前記メッシュ
(8)がカプトン製である、
請求項1に記載の、折りたたみ式パラボラアンテナを製造するためのコンピュータ支援された方法。
【請求項6】
前記メッシュ
(8)が金属化材料製である、
請求項1に記載の、折りたたみ式パラボラアンテナを製造するためのコンピュータ支援された方法。
【請求項7】
前記反射性剛性材料の三角形(11)がCFRP製である、請求項1~6のいずれか一項に記載の、折りたたみ式パラボラアンテナを製造するためのコンピュータ支援された方法。
【請求項8】
前記反射性剛性材料の三角形(11)がCFRP製であると共に、当該反射性剛性材料の三角形(11)の厚さは1mmである、
請求項7に記載の、折りたたみ式パラボラアンテナを製造するためのコンピュータ支援された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ機能又は反射器機能を実行(達成)するために空間に展開することができる種類の、折りたたみ式パラボラアンテナを製造するための、コンピュータ支援(された)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙用途で使用されるアンテナなど、折りたたみ式構造物には幾つかの例がある。
【0003】
日本の技術者であるKoryo Miura(三浦公亮)は、1995年に人口衛星に適用する折りたたみ式ソーラーパネルを考案した。
【0004】
他のプロジェクトでは、打ち上げ、及び軌道への送達完了後に展開する構造物の形状として(幾つかの)パターンが使用されている。Lawrence Livermore National Laboratory(LLNL)とRobert J.Langが共同で行った、「Eyeglass Telescope Project」が一例であり、折り紙パターンを使用している。
【0005】
折りたたみ技術を使用する他のプロジェクトには、James Webb Space Telescopeがある。
【0006】
これらの提案はすべて、宇宙空間で使用されるべく固体状態に折りたたみ可能であり、且つ展開時には平坦な表面を生成するシステムを指す。
【0007】
一方、アンテナとして振る舞う構成要素と、アンテナを保持してその形状を実現するテンセグリティ構造(tensegritic structure)によって構成されるシステムがある。折りたたみ及び展開を可能にするために提案された解決策は、テンセグリティ構造の制御点に取り付けた金属布を使用することであった。しかしながら、この提案では、布の交差部(縦糸及び横糸)によって生じた孔のサイズにより、反射可能な周波数の範囲が減少する。高域周波数帯(60GHz超)は、それらの孔よりも小さいため、アンテナを通過し、反射されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の目的は、パラボラ面に展開可能な、孔のない表面を有するアンテナを製造するための、コンピュータ支援(された)方法を提供することである。
【0010】
本発明は、折りたたみ可能なパラボラアンテナを製造するための、コンピュータ支援(された)方法を提供するものであり、当該方法は以下のステップを含む。即ち、
・三角形セルを有する二次元放射状折り紙パターン、及びパラボラ面を選出すること、
・パラボラ面上に折り紙パターンを表示して、曲線の辺を有する三角形を得るために、三角形セルを有する二次元放射状折り紙パターンを、パラボラ面の焦点からパラボラ面上に投影すること、
・投影された、曲線の辺を有する三角形の頂点を接合することによって、パラボラ面上に直線の辺を有する三角形のパターンを取得すること、
・対応する重心を基準に各三角形を縮小して、各三角形間の間隔を決定するために、三角形の重心の計算、及び焦点からの相似演算による三角形のスケーリングを行い、複数のセグメントを有するメッシュ、及びメッシュのセグメントによって区切られた複数の三角形セルを取得すること、
・三角形セルを、反射性剛性材料の三角形で充填すること、
・各セグメントの幅が、少なくとも、隣接する2つの剛性三角形の厚さの合計になるように、アンテナのメッシュを可撓性材料で製造すること、
・周辺部のセルを、外縁辺に丸みをもたせて製造すること、
を含む。
【0011】
本発明により、展開位置において、概略パラボラ形状を有する非平面アンテナが得られ、可撓性メッシュのセグメントは、隣接する2つの三角形間のヒンジとして作用する。
【0012】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の例示的な実施形態の詳細説明から明らかになり、添付の図面に関連して、その目的を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】三角形セルを有する、折り紙パターンの図である。
【
図3】本発明の方法の一実施形態で使用される、三角形セルを有する二次元放射状折り紙パターン、及びパラボラ面の図である。
【
図4】
図3のパラボラ面上に、
図2の折り紙パターンの扇形部を投影した図である。
【
図7】折りたたみ式パラボラアンテナの、パターンの平面図である。
【
図8】折りたたみ式パラボラアンテナ組立体の支持ツールの、1つの扇形部(セクター)の図である。
【
図9】組み立てられた、折りたたみ式パラボラアンテナの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この説明では、折り紙折りたたみパターンで作成できる最も単純な区画を、「単一セル」と呼ぶ。
【0015】
図1は、半径方向に折りたたみ及び展開することができ、且つ4つの辺を有する単一セルを含む、既知の折り紙パターンを示す。
図2は、三角形の単一セルで半径方向に折りたたみ及び展開することができる、折り紙パターンを示す(この図では、展開状態で示されている)。両パターンとも、平面円形状に展開することができる。
【0016】
折りたたみ式パラボラアンテナが得られるようにするために、コンピュータ支援(された)方法が実行され、これには、例えばCATIAなどのソフトウェアを使用することができる。
【0017】
三角形セルを有する二次元放射状折り紙パターン(
図2及び
図3に示すものなど)が選択され、また、所望の形状(この場合、
図3に示すように、アンテナの非平面面としてのパラボラ面)が選択される。
【0018】
図4は、三角形セルを有する二次元放射状折り紙パターンを、パラボラ面の焦点からパラボラ面上に投影したものを示している。この投影は、パラボラ面上に折り紙パターンを表示(プリント)するために生成される。このステップの後、パラボラ面の三角分割が行われ、曲線の辺を有する三角形が取得される。
【0019】
次のステップは、曲線の辺を有する三角形を、直線の辺を有する三角形に変換することからなる。この目的のために、曲線の辺を有する投影された三角形の各頂点が選択され、次いで、
図5に示すように、それらが接合されて直線の辺を有する三角形セルのパターンが形成される。
【0020】
パターンが規定されると、各三角形を折りたたみ可能にする、ヒンジの設計が必要となる。これを行うために、三角形の重心が計算され、焦点からの相似演算によって各三角形の累進的なスケーリングが行われる(
図6を参照)。
【0021】
重心を基準に各三角形が局部的に縮小されると(対応する三角形の変位が回避され)、各三角形間にパラメータ化された間隔を有する表面を取得することができる。
図7に示すように、複数のセグメント、及びこれらセグメントによって区切られた複数の三角形セルを有するメッシュ(網目、網目構造)が、コンピュータによって取得される。
【0022】
上記のプロセスは、扇形部で行えることを考慮することが重要である。すなわち、(複数の)三角形セルを有する二次元放射状折り紙パターンをいくつかの扇形部(例えば、12個の扇形部)に分割することができ、この方法のステップは、各扇形部に対して個別に繰り返される(例えば、
図4は、二次元放射状折り紙パターンの扇形部の投影を示している)。
【0023】
その後、アンテナが組み立てられる(
図9参照)。三角形セルは、反射性剛性材料の三角形で充填され、セグメントを有するメッシュは、可撓性材料で製造される。パラボラ面の周辺部は丸みを帯びているため、周辺部のセルは丸みをもたせた外縁辺とともに(伴って)製造される。
【0024】
アンテナ折りたたみ時に、隣接する2つの三角形間の接触を回避するために、メッシュの各セグメントの幅は、少なくとも、隣接する2つの剛性三角形の厚さの合計である。
【0025】
組み立てられた状態でパラボラアンテナを支持するためのツールを使用することができる。このツールは、
図8に示すように、扇形部に分割することができる。
【0026】
パラボラアンテナのメッシュ(
図9に示す)は、可撓性材料で作製しなければならない。例えば、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)又はカプトン(Kapton)、若しくは金属化材料で作製することができる。
【0027】
三角形は、反射性剛性材料(例えば、CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)で作製しなければならない。一実施形態では、使用されるCFRPの厚さは1mmであり、その場合、アンテナ折りたたみ時に隣接する三角形間の接触又は重複を回避するために、隣接する三角形間の距離は少なくとも2mmである。
【0028】
折りたたみ式パラボラアンテナが製造されると、テンセグリティ構造(tensegrity structure)上に配置され、ピンによってそれに接合される。これにより、折りたたみ式パラボラアンテナは、放射状に折りたたみ可能なテンセグリティ構造により保持される。展開時には、非平坦構造(放物面)の三角分割が得られる。
【0029】
本発明を、好ましい実施形態に関連して十分に説明してきたが、本発明は、これらの実施形態によって限定されるものと考えるのではなく、下許請求の範囲の内容によって、その範囲内で修正を加えることができることは明らかである。
【符号の説明】
【0030】
1 折りたたみ式パラボラアンテナ
2 二次元放射状折り紙パターン
3 パラボラ面
4 焦点
5 頂点
6 三角形
7 重心
8 メッシュ(網目、網目構造)
9 セグメント
10 三角形セル
11 反射性剛性材料の三角形
12 周辺部のセル
13 ツール