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特許7489475フレキソ印刷版用感光性構成体、及びフレキソ印刷版の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】フレキソ印刷版用感光性構成体、及びフレキソ印刷版の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/095 20060101AFI20240516BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20240516BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240516BHJP
   B41C 1/00 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
G03F7/095
G03F7/00 502
G03F7/004 505
B41C1/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022551922
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2021033981
(87)【国際公開番号】W WO2022065166
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2020161734
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】秋山 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】宮本 慎二
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-237583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/095
G03F 7/00
G03F 7/004
B41C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a):支持体と、
(b):前記(a)支持体上にあり、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合部位を有する熱可塑性エラストマーを含む感光性樹脂組成物層と、
(c):前記(b)感光性樹脂組成物層上に積層されており、樹脂及びカーボンブラックを含み、赤外線レーザーで切除可能で、赤外線以外の光線遮蔽層である、赤外線アブレーション層と、
を、有し、
前記(c)赤外線アブレーション層中の樹脂は、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体、又は、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体の水素添加物を含有し、
前記(c)赤外線アブレーション層に含有されているカーボンブラックの一次粒子径が13nm以上20nm以下である、
フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体。
【請求項2】
前記赤外線アブレーション層中の樹脂は、90質量%以上がモノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体、又は、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体の水素添加物である、
請求項1に記載の、フレキソ印刷版用感光性樹脂構造体。
【請求項3】
前記カーボンブラックの一次粒子径が15nm以上20nm以下である、
請求項1又は2に記載の、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体。
【請求項4】
前記カーボンブラックのDBP吸収量が、40cm3/100g以上80cm3/100gである、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体。
【請求項5】
前記カーボンブラックのpHが6.0以上8.5以下である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体。
【請求項6】
前記赤外線アブレーション層中の樹脂のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)と、前記カーボンブラックのハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)とにより、下記式(1)で算出されるR-が11.0以上13.0以下である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体。
R=(4α2+β2+γ20.5 式(1)
α=樹脂のδdとカーボンブラックのδdの差の絶対値
β=樹脂のδpとカーボンブラックのδpの差の絶対値
γ=樹脂のδhとカーボンブラックのδhの差の絶対値
δd:分子間の分散力によるエネルギー
δp:分子間の双極子相互作用によるエネルギー
δh:分子間の水素結合によるエネルギー
【請求項7】
前記(c)赤外線アブレーション層中の樹脂が、
スチレン含有量が40質量%以上80質量%以下であるスチレン-共役ジエン共重合体を含有する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体。
【請求項8】
前記(c)赤外線アブレーション層中の樹脂が、
スチレン含有量が30質量%以上70質量%以下であるスチレン-共役ジエン共重合体の水素添加物を含有する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のフレキソ印刷版用感光性構成体を用い、
前記(a)支持体側から紫外線照射する第一の工程と、
前記(c)赤外線アブレーション層に赤外線を照射してパターンを描画加工する第二の工程と、
前記(b)感光性樹脂組成物層に紫外線照射してパターン露光する第三の工程と、
前記(c)赤外線アブレーション層と前記(b)感光性樹脂組成物層の未露光部を除去する第四の工程と、
を、有するフレキソ印刷版の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷版用感光性構成体、及びフレキソ印刷版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷画像のさらなる高精細化が求められている。
一方、従来から、フレキソ印刷版の製造過程において、CTP(Computer To Plate)技術によりネガフィルムを用いず、デジタルイメージを直接レーザーで描画する方法が広く用いられている。
前記CTP技術においては、フレキソ印刷版製造用の原版として、一般的に、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等の基板上に、感光性樹脂組成物層、赤外線で切除可能な赤外線アブレーション層、カバーフィルムが順に積層されたものが用いられる。
前記赤外線で切除可能な赤外線アブレーション層は、一般的に、赤外線以外の放射線に対して不透明の材料である赤外線吸収剤とバインダーとを含有する。
【0003】
印刷画像のさらなる高精細化や、印刷時のインキ転写性の向上を図るための技術として、従来、印刷版の表面にマイクロセルを配置する技術が知られている。また、フレキソ印刷版の製造過程において用いるレーザー描画装置についても高解像度化が図られており、レーザー解像度も従来の2540DPIから4000DPI、さらには5080DPIへと高解像度化が進んでいる。
上述したことから、より微小なマイクロセルを形成させるために、フレキソ印刷版においては、レーザー描画での微細加工化がより一層必要となる。そのためにはフレキソ印刷版の製造過程において、赤外線レーザー描画性に優れる赤外線アブレーション層を得るための技術が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1においては、赤外線アブレーション層のバインダーとしてポリアミドを使用する技術が提案されており、特許文献2においては、赤外線アブレーション層のバインダーとしてケン化度が60~100モル%の部分ケン化ポリ酢酸ビニルとカチオン性ポリマーを使用する技術が提案されている。
また、特許文献3においては、赤外線アブレーション層のバインダーとしてモノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体又はモノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体を水素添加処理したものを使用する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2916408号公報
【文献】特開2016-188900号公報
【文献】特許第4080068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に開示されているポリアミドバインダーや部分ケン化ポリ酢酸ビニルとカチオン性ポリマーを使用したバインダーは、感光性樹脂組成物層に一般的に用いられるスチレン誘導体と共役ジエンモノマーとの重合体を含む熱可塑性エラストマーとの密着性に乏しいため、印刷版の製造工程において、赤外線アブレーション層と感光性樹脂組成物層とが剥離しやすくなる、という問題点を有している。
また、特許文献3に開示されているモノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体又はモノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体を水素添加処理したものを赤外線アブレーション層のバインダーを用いると、赤外線レーザーでの描画性について、十分な特性が得られない、という問題点を有している。
【0007】
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、フレキソ印刷版の製造過程において弊害がなく、レーザー描画性に優れる赤外線アブレーション層を有するフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、支持体と、感光性樹脂組成物層と、特定の構成の赤外線アブレーション層とを有するフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体により、上述した課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
【0009】
〔1〕
(a):支持体と、
(b):前記(a)支持体上にあり、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合部位を有する熱可塑性エラストマーを含む感光性樹脂組成物層と、
(c):前記(b)感光性樹脂組成物層上に積層されており、樹脂及びカーボンブラックを含み、赤外線レーザーで切除可能で、赤外線以外の光線遮蔽層である、赤外線アブレーション層と、
を、有し、
前記(c)赤外線アブレーション層中の樹脂は、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体、又は、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体の水素添加物を含有し、
前記(c)赤外線アブレーション層に含有されているカーボンブラックの一次粒子径が13nm以上25nm以下である、
フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体。
〔2〕
前記赤外線アブレーション層中の樹脂は、90質量%以上がモノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体、又は、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体の水素添加物である、前記〔1〕に記載の、フレキソ印刷版用感光性樹脂構造体。
〔3〕
前記カーボンブラックの一次粒子径が15nm以上20nm以下である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体。
〔4〕
前記カーボンブラックのDBP吸収量が、40cm/100g以上80cm/100gである、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体。
〔5〕
前記カーボンブラックのpHが6.0以上8.5以下である、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体。
〔6〕
前記赤外線アブレーション層中の樹脂のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)と、前記カーボンブラックのハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)とにより、下記式(1)で算出されるR-が11.0以上13.0以下である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体。
R=(4α+β+γ0.5 式(1)
α=樹脂のδdとカーボンブラックのδdの差の絶対値
β=樹脂のδpとカーボンブラックのδpの差の絶対値
γ=樹脂のδhとカーボンブラックのδhの差の絶対値
δd:分子間の分散力によるエネルギー
δp:分子間の双極子相互作用によるエネルギー
δh:分子間の水素結合によるエネルギー
〔7〕
前記(c)赤外線アブレーション層中の樹脂が、
スチレン含有量が40質量%以上80質量%以下であるスチレン-共役ジエン共重合体を含有する、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体。
〔8〕
前記(c)赤外線アブレーション層中の樹脂が、
スチレン含有量が30質量%以上70質量%以下であるスチレン-共役ジエン共重合体の水素添加物を含有する、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体。
〔9〕
前記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一に記載のフレキソ印刷版用感光性構成体を用い、
前記(a)支持体側から紫外線照射する第一の工程と、
前記(c)赤外線アブレーション層に赤外線を照射してパターンを描画加工する第二の工程と、
前記(b)感光性樹脂組成物層に紫外線照射してパターン露光する第三の工程と、
前記(c)赤外線アブレーション層と前記(b)感光性樹脂組成物層の未露光部を除去する第四の工程と、
を、有するフレキソ印刷版の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、印刷版の製造過程において弊害がなく、レーザー描画性に優れる赤外線アブレーション層を有するフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0012】
〔フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体〕
本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体は、
(a):支持体と、
(b):前記(a)支持体上にあり、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合部位を有する熱可塑性エラストマーを含む感光性樹脂組成物層と、
(c):前記(b)感光性樹脂組成物層上に積層されており、樹脂及びカーボンブラックを含み、赤外線レーザーで切除可能で、赤外線以外の光線遮蔽層である、赤外線アブレーション層と、
を、有し、
前記(c)赤外線アブレーション層中の樹脂は、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体、又は、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体の水素添加物を含有し、
前記(c)赤外線アブレーション層に含有されているカーボンブラックの一次粒子径が13nm以上25nm以下である。
【0013】
((a)支持体)
本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体に用いる(a)支持体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルフィルムが挙げられる。
支持体に用いるポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
支持体の厚みは、特に限定されるものではないが、強度及び取扱性の観点から、50~300μmが好ましい。
また、(a)支持体と、後述する(b)感光性樹脂組成物層との間の接着力を高める目的で、(a)支持体上に接着剤層を設けてもよい。当該接着剤層としては、例えば、国際公開第2004/104701号公報に記載の接着剤層が挙げられる。
【0014】
((b)感光性樹脂組成物層)
本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体は、前記(a)支持体上に、(b)感光性樹脂組成物層を有している。
(b)感光性樹脂組成物層は、(a)支持体上に直接積層されていてもよく、これらの間に所定の接着剤層等を形成してもよい。
(b)感光性樹脂組成物層は、後述する熱可塑性エラストマー(b-1)を含有し、好ましくはエチレン性不飽和化合物(b-2)、光重合開始剤(b-3)、液状ジエンを含有し、必要に応じて補助添加成分をさらに含有してもよい。
【0015】
<熱可塑性エラストマー(b-1)>
(b)感光性樹脂組成物層は、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合部位を有する熱可塑性エラストマー(b-1)を含む。
共重合部位を有する、とは、熱可塑性エラストマー(b-1)は、モノビニル置換芳香族炭化水素及び共役ジエン以外の、その他の単量体により形成される部位を有していてもよい、という意味である。
モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合部位を有する熱可塑性エラストマー(b-1)を含有することにより、耐久性に優れた(b)感光性樹脂組成物層を得ることができる。
前記熱可塑性エラストマー(b-1)は、モノビニル置換芳香族炭化水素からなる重合体ブロックと共役ジエンからなる重合体ブロックと、を有する、ブロック共重合体である熱可塑性エラストマーが好ましい。
前記熱可塑性エラストマー(b-1)を構成するモノビニル置換芳香族炭化水素としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、t-ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルスチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、第三級ブチルスチレン、α-メチルスチレン、1,1-ジフェニルエチレン等が挙げられる。
(b)感光性樹脂組成物層を比較的低温で平滑に成形できる観点からスチレンが好ましい。
これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性エラストマー(b-1)を構成する共役ジエンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、クロロプレン等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体の耐久性の観点から、共役ジエンとしてはブタジエンが好ましい。
【0016】
熱可塑性エラストマー(b-1)は、常温における粘凋性の観点から、数平均分子量が20,000以上300,000以下であることが好ましく、30,000以上250,000以下であることがより好ましく、50,000以上200,000以下であることがさらに好ましい。
熱可塑性エラストマー(b-1)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができ、ポリスチレン換算分子量で表される。
熱可塑性エラストマー(b-1)が、モノビニル置換芳香族炭化水素からなる重合体ブロックと、共役ジエンからなる重合体ブロックと、を有するブロック共重合体である場合、熱可塑性エラストマー(b-1)を構成するブロック共重合体は、例えば、下記の一般式群(I)で表される直鎖状ブロック共重合体、及び/又は下記の一般式群(II)で表される直鎖状ブロック共重合体若しくはラジアルブロック共重合体を包含する。
(A-B)、A-(B-A)、A-(B-A)-B、B-(A-B)・・・(I)
[(A-B)-X、[(A-B)-A]-X、[(B-A)-X、[(B-A)-B]-X・・・(II)
前記式(I)及び式(II)中、Aは、モノビニル置換芳香族炭化水素に由来する単量体単位を示す。Bは、共役ジエンに由来する単量体単位を示す。Xは、四塩化ケイ素、四塩化スズ、エポキシ化大豆油、ポリハロゲン化炭化水素化合物、カルボン酸エステル化合物、ポリビニル化合物、ビスフェノール型エポキシ化合物、アルコキシシラン化合物、ハロゲン化シラン化合物、エステル系化合物等のカップリング剤の残基又は多官能有機リチウム化合物等の重合開始剤の残基を示す。
n、k及びmは、1以上の整数を示し、例えば1~5である。
【0017】
熱可塑性エラストマー(b-1)中の共役ジエンに由来する単量体単位及びモノビニル置換芳香族炭化水素に由来する単量体単位の含有量は、核磁気共鳴装置(H-NMR)を用いて測定することができる。
具体的には、H-NMRの測定機器として、JNM-LA400(JEOL製、商品名)を用い、溶媒に重水素化クロロホルムを用い、サンプル濃度を50mg/mLとし、観測周波数を400MHz、化学シフト基準にTMS(テトラメチルシラン)を用い、パルスディレイを2.904秒、スキャン回数を64回、パルス幅を45°、測定温度を25℃に設定し、測定することができる。
熱可塑性エラストマー(b-1)において、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合比率(質量比)は、本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体を構成する(b)感光性樹脂組成物層の硬度の観点から、モノビニル置換芳香族炭化水素/共役ジエン=10/80以上90/20以下であることが好ましく、10/90以上85/15以下であることがより好ましく、10/90以上60/40以下であることがさらに好ましい。
前記質量比において、モノビニル置換芳香族炭化水素の割合が10以上であると、(b)感光性樹脂組成物層において十分な硬度が得られ、通常の印刷の圧力により適切な印刷を行うことができる。前記質量比においてモノビニル置換芳香族炭化水素の割合が90以下であると、(b)感光性樹脂組成物層において適切な硬度が得られ、印刷工程においてインキを印刷対象に十分に転移できる。
【0018】
熱可塑性エラストマー(b-1)には、必要に応じて、他の官能基が導入されていたり、水素添加等の化学修飾がなされていたり、モノビニル置換芳香族炭化水素及び共役ジエン以外の、他の成分が共重合されていたりしてもよい。
(b)感光性樹脂組成物層中の熱可塑性エラストマー(b-1)の含有量は、本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体を用いて得られるフレキソ印刷版の耐久性の観点から、感光性樹脂組成物層の全量を100質量%としたとき、40質量%以上であることが好ましく、40質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、45質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましく、45質量%以上75質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0019】
<エチレン性不飽和化合物(b-2)>
(b)感光性樹脂組成物層は、上述したように、エチレン性不飽和化合物(b-2)を含有することが好ましい。
エチレン性不飽和化合物(b-2)とは、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する化合物である。
エチレン性不飽和化合物(b-2)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、ビニルトルエン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類;アセチレン類;(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体;ハロオレフィン類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミドやメタクリルアミドの誘導体;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその誘導体;酢酸ビニル類;N-ビニルピロリドン;N-ビニルカルバゾール;N-置換マレイミド化合物等が挙げられる。
特に、種類の豊富さの観点から、(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体が好ましい。
前記誘導体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基等を有する脂環族化合物;ベンジル基、フェニル基、フェノキシ基、あるいはナフタレン骨格、アントラセン骨格、ビフェニル骨格、フェナントレン骨格、フルオレン骨格等を有する芳香族化合物;アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、グリシジル基等を有する化合物;アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールやトリメチロールプロパン等の多価アルコールとのエステル化合物;ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン等のポリシロキサン構造を有する化合物等が挙げられる。また、窒素、硫黄等の元素を含有する複素芳香族化合物であってもよい。
前記(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサンジオール、ノナンジオール等のアルカンジオールのジアクリレート及びジメタクリレート;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコールのジアクリレート及びジメタクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート;イソボロニル(メタ)アクリレート;フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体を用いて得られるフレキソ印刷版の機械強度の観点から、エチレン性不飽和化合物(b-2)としては、少なくとも1種類以上の(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、少なくとも1種類以上の2官能(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
【0021】
エチレン性不飽和化合物(b-2)の数平均分子量(Mn)は、不揮発性を確保する観点から100以上であることが好ましく、感光性樹脂組成物層中の樹脂等の他成分との相溶性の観点から1000未満であることが好ましく、200以上800以下であることがより好ましい。
(b)感光性樹脂組成物層におけるエチレン性不飽和化合物(b-2)の含有量は、本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体を用いて得られるフレキソ印刷版の耐刷性の観点から、(b)感光性樹脂組成物層の製造工程において、感光性樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、2質量%以上30質量%以下とすることが好ましく、2質量%以上25質量%以下とすることがより好ましく、2質量%以上20質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0022】
<光重合開始剤(b-3)>
(b)感光性樹脂組成物層は、光重合開始剤(b-3)を含有することが好ましい。
光重合開始剤(b-3)とは、光のエネルギーを吸収し、ラジカルを発生する化合物である。光重合開始剤(b-3)としては、崩壊型光重合開始剤、水素引抜き型光重合開始剤、水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物等が挙げられる。
光重合開始剤(b-3)としては、各種有機カルボニル化合物を用いることができ、特に芳香族カルボニル化合物が好適である。
(b)感光性樹脂組成物層における光重合開始剤(b-3)の含有量は、本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体を用いて製造したフレキソ印刷版の耐刷性の観点から、(b)感光性樹脂組成物層の製造工程において、感光性樹脂組成物全量を100質量%としたとき、0.1質量%以上10質量%以下とすることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下とすることがより好ましく、0.5質量%以上5質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0023】
光重合開始剤(b-3)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3',4,4'-テトラメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;t-ブチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;ミヒラーケトン;ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、トリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;メチルベンゾイルホルメート;1,7-ビスアクリジニルヘプタン;9-フェニルアクリジン;アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、テトラゼン化合物等のアゾ化合物類が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
<液状ジエン>
(b)感光性樹脂組成物層は、液状ジエンを含有することが好ましい。
液状ジエンとは液状の炭素-炭素二重結合を有する化合物である。
ここで、本明細書中、「液状ジエン」の「液状」とは、容易に流動変形し、かつ冷却により変形された形状に固化できるという性質を有する性状を意味し、外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状を回復する性質のことを示す。
【0025】
液状ジエンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエンの変性物、液状ポリイソプレンの変性物、液状アクリルニトリル-ブタジエンの共重合体、液状スチレン-ブタジエン共重合体が挙げられる。液状ジエンは、ジエン成分が50質量%以上の共重合体であるものとする。
また、液状ジエンの数平均分子量については、20℃において液状である限り、特に限定されないが、本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体を用いて得られるフレキソ印刷版の機械強度、取扱性の観点から、好ましくは500以上60000以下、より好ましくは500以上50000以下、さらに好ましくは800以上50000以下である。
本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体及びこれを用いたフレキソ印刷版の機械物性の観点から、液状ジエンとしては液状ポリブタジエンが好ましい。
【0026】
また、液状ジエン、好ましくは液状ポリブタジエンの1,2-ビニル結合量は、本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体及びこれを用いたフレキソ印刷版の硬度を適切なものとする観点から、1%以上80%以下が好ましく、5%以上70%以下がより好ましく、5%以上65%以下がさらに好ましい。
前記1,2-ビニル結合量とは、1,2-結合、3,4-結合、及び1,4-結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン単量体の中で、1,2-結合で組み込まれているものの割合である。
なお、前記1,2-ビニル結合を有する液状ポリブタジエンである1,2-ポリブタジエンは、二重結合であるビニルが側鎖になっているため、ラジカル重合の反応性が高く、(b)感光性樹脂組成物層の硬度を高める観点において好ましい。
【0027】
また、前記液状ポリブタジエンは、通常、1,2-ビニル結合を有する1,2-ポリブタジエンと、1,4-ビニル結合を有する1,4-ポリブタジエンの混合物であるが、本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体及びこれを用いたフレキソ印刷版の柔軟性を向上させるためには、液状ジエン中に、1,4-ポリブタジエンを含有させることが有効である。1,4-ポリブタジエンには、シス型の1,4-ポリブタジエンと、トランス型の1,4-ポリブタジエンとがある。1,4-ポリブタジエンは、シス型及びトランス型のいずれにおいても、二重結合であるビニル基が内部に存在するため、ラジカル重合における反応性が低く、最終的に柔軟な樹脂を製造することが可能である。
複数の異なる1,2-ビニル結合量を有する液状ポリブタジエンを混合して用いる場合は、その平均値を、前記1,2-ビニル結合含有量とする。
(b)感光性樹脂組成物層の反応性を容易に調整できるという観点から、1,2-ビニル結合量が10%以下の液状ポリブタジエンと、1,2-ビニル結合量が80%以上の液状ポリブタジエンとを混合し、全体の1,2-ビニル結合量を調整することが好ましい。より好ましくは、5%以下の1,2-ビニル結合量の液状ポリブタジエンと、80%以上の1,2-ビニル結合量の液状ポリブタジエンとを混合し、全体の1,2-ビニル結合量を調整することが好ましい。
1,2-ビニル結合量は、液状ポリブタジエンのH-NMR(磁気共鳴スペクトル)のピーク比から求めることができる。
【0028】
(b)感光性樹脂組成物層における液状ジエンの含有量は、本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体及びこれを用いたフレキソ印刷版の機械強度の観点から、感光性樹脂組成物層の全量を100質量%としたとき、10質量%以上40質量%以下が好ましく、15質量%以上40質量%以下がより好ましく、20質量%40質量%以下がさらに好ましい。
【0029】
<補助添加成分>
補助添加成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、極性基含有ポリマー、液状ジエン以外の可塑剤、安定剤以外の熱重合防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料・顔料等が挙げられる。
【0030】
前記極性基含有ポリマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、燐酸基、スルホン酸基等の親水性基、及びそれらの塩等の極性基を有する水溶性又は水分散性共重合体が挙げられる。さらに具体的には、カルボキシル基含有NBR、カルボキシル基含有SBR、カルボキシル基を含有する脂肪族共役ジエンの重合体、燐酸基又はカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物の乳化重合体、スルホン酸基含有ポリウレタン、カルボキシル基含有ブタジエンラテックス等が挙げられる。
本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体を用いたフレキソ印刷版において高い解像度を得る観点から、前記極性基含有ポリマーとしては、カルボキシル基含有ブタジエンラテックスが好ましい。
これらの極性基含有ポリマーは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0031】
前記液状ジエン以外の可塑剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ナフテン油、パラフィン油等の炭化水素油;液状アクリルニトリル-ブタジエン共重合体、液状スチレン-ブタジエン共重合体等の液状のジエンを主体とする共役ジエンゴム;数平均分子量2000以下のポリスチレン、セバチン酸エステル、フタル酸エステル等が挙げられる。これらは、末端にヒドロキシル基やカルボキシル基を有していてもよい。また、これらには(メタ)アクリロイル基等の光重合性の反応基が付与されていてもよい。
これらの可塑剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記熱重合防止剤及び酸化防止剤としては、樹脂材料又はゴム材料の分野において通常使用されるものを用いることができる。
具体的には、フェノール系の材料が挙げられる。
前記フェノール系の材料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ビタミンE、テトラキス-(メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
これらの熱重合防止剤及び酸化防止剤は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、公知のベンゾフェノン系、サルチレート系、アクリロニトリル系、金属錯塩系、ヒンダートアミン系の化合物が挙げられる。また下記に示す、染料・顔料を紫外線吸収剤として使用してもよい。
紫外線吸収剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2-エトキシ-2'-エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0034】
前記染料・顔料は、視認性向上のための着色手段として有効である。
染料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水溶性である塩基性染料、酸性染料、直接染料等や、非水溶性である硫化染料、油溶染料、分散染料等が挙げられる。特にアントラキノン系、インジゴイド系、アゾ系構造の染料が好ましく、アゾ系油油溶染料等がより好ましい。
顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、天然顔料、合成無機顔料、合成有機顔料等が挙げられ、合成有機顔料としては、アゾ系、トリフェニルメタン系、キノリン系、アントラキノン系、フタロシアニン系が挙げられる。
【0035】
(b)感光性樹脂組成物層における上述した補助添加成分全成分の添加量は、(b)感光性樹脂組成物層の全量を100質量%としたとき、0質量%以上10質量%以下が好ましく、0質量%以上5質量%以下がより好ましく、0質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。
【0036】
((c)赤外線アブレーション層)
本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体は、上述した(b)感光性樹脂組成物層の上に、(c)赤外線アブレーション層が積層されている。
(c)赤外線アブレーション層は、樹脂とカーボンブラックとを含有し、赤外線レーザーで切除可能であり、かつ、赤外線以外の光線遮蔽層としての機能を有している。
【0037】
(c)赤外線アブレーション層を高精細に加工するためには、(c)赤外線アブレーション層のレーザーに対する感度を向上させる必要がある。ここで、レーザー感度とは、同じレーザーエネルギーで描画した際に、よりアブレーションされる体積、特に深さ方向へ大きくアブレーションされることを意味する。
(c)赤外線アブレーション層のレーザー感度を向上させるには、カーボンブラックの一次粒子径を小さくすることが有効である。これは、カーボンブラックの一次粒子径が小さくなることによりカーボンブラックの表面積が増大するためである。カーボンブラック表面において樹脂中を透過してきた赤外線レーザーを受け、エネルギーを熱に変換し樹脂の温度を向上させる。カーボンブラックの表面積が増えることでレーザーを受けるカーボンブラックの面積が増大し、かつ、樹脂/カーボンブラック界面の面積も増加し、レーザーのエネルギーを熱として効率よく樹脂に伝達することができ、レーザー感度が向上する。
【0038】
一方において、カーボンブラックの一次粒子径を小さくするだけではレーザー感度への効果は十分ではなく、後述するように効果を最大限発揮するには樹脂の種類も重要である。
【0039】
本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体においては、(c)赤外線アブレーション層中のカーボンブラックは、一次粒子径が13nm以上25nm以下であるものとする。
上述したように、基本的には、カーボンブラックの一次粒子径が小さいほどレーザー感度は上昇する傾向にあるが、カーボンブラックの一次粒子径が13nm以上であることにより、カーボンブラック間の自己凝集力が大きくなりすぎることを防止でき、良好な分散性が得られ、より一層高いレーザー感度が得られる。また、一次粒子径が25nm以下であることにより、所望の高いレーザー感度を得ることができ、高精細な画像を得ることができる。
【0040】
より簡易に、かつ安定的に(c)赤外線アブレーション層を得るためには、カーボンブラックの一次粒子径は小さすぎないようにすることが好ましく、カーボンブラックの一次粒子径が15nm以上25nm以下であることが好ましい。
また、レーザーアブレーション後の(b)感光性樹脂組成物層との界面での赤外線アブレーション層の除去性に優れるという観点から、カーボンブラックの一次粒子径は、15nm以上23nm以下であることがより好ましく、15nm以上20nm以下であることがさらに好ましい。(b)感光性樹脂組成物層界面での赤外線アブレーション層の除去性に優れることにより、赤外線以外の光線の遮蔽性にむらがなく、より優れた形状を有するフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体、及びこれを用いたフレキソ印刷版を得ることができる。
【0041】
(c)赤外線アブレーション層に含有されているカーボンブラックの一次粒子径は電子顕微鏡により観察することにより求めることができる。実施例に記載する方法により求めることができる。
(c)赤外線アブレーション層に含有されているカーボンブラックの一次粒子径は、種々の市販品から適切な粒子径のものを選択することにより上記数値範囲に制御することができる。
【0042】
また、カーボンブラックはストラクチャーが小さいことが好ましい。ストラクチャーが小さいことによりカーボンブラックと樹脂の接触面積が増大し、分散性の向上による赤外線レーザー感度の向上が図られ、さらには(c)赤外線アブレーション層と(b)感光性樹脂組成物層との密着性の向上が図られる。
具体的にはカーボンブラックのDBP吸収量が40cm/100g以上80cm/100g以下であることが好ましく、50cm/100g以上80cm/100g以下であることがより好ましく、55cm/100g以上80cm/100g以下であることがさらに好ましい。この範囲において上述した効果がみられる。
DBP吸収量とは、カーボンブラック100gが吸収するDBP(ジブチルフタレート)量のことであり、JIS K6217-4の定める方法により測定することができる。具体的には、実施例に記載する方法により測定することができる。ストラクチャーが大きいほどDBP吸収量は値が大きく、ストラクチャーが小さいほど値が小さくなる。
(c)赤外線アブレーション層に含有されているカーボンブラックのDBP吸油量は、種々の市販品から適切な値のものを選択することにより上記数値範囲に制御することができる。
【0043】
また、(c)赤外線アブレーション層に含有されているカーボンブラックは、pHが6.0以上8.5以下であることが好ましい。この範囲において、樹脂との相溶性に優れ、カーボンブラックの分散性が向上し、赤外線レーザー感度が向上する。
カーボンブラックのpHは、6.5以上8.0以下であることがより好ましく、7.0以上8.0以下であることがさらに好ましい。
カーボンブラックのpHは、カーボンブラックと蒸留水の混合液を作製し、ガラス電極を備えるpHメーターを用いることにより測定することができる。具体的には、ASTM D1512に準拠して測定することができる。
(c)赤外線アブレーション層に含有されているカーボンブラックのpHは、種々の市販品から適切なpH値のものを選択することにより上記数値範囲に制御することができる。
【0044】
カーボンブラックは、その製造方法から、例えばファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等に分類されるが、所望の特性を得るためにファーネスブラックが好ましい。
ファーネスブラックは、高温ガス中に原料として石油系や石炭系の油を吹き込み、不完全燃焼させて得られるカーボンブラックであり、広く公知の方法を用いて製造することができる。
カーボンブラックは、上述した各種の条件を満たす範囲で、従来、ブラックマトリックスを形成するために使用されているカーボンブラックを使用することができる。具体的には、三菱ケミカル製の#44、#45L、#47、MCF88、#850、#900、#950、#960、#980、#2300、#2600等、東海カーボン製のシースト600、トーカブラック#8300、#7550等が挙げられる。
【0045】
また、カーボンブラックの分散性を高度に保ち、高いレーザー感度を得る観点から、(c)赤外線アブレーション層の樹脂は、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体、又は、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体の水素添加物を含むものとする。
上記効果を得る観点から、前記樹脂中のモノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体、又は、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体の水素添加物の含有量は、30質量%以上100質量%以下が好ましく、50質量%以上100質量%以下がより好ましく、70質量%以上100質量%以下がさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下がさらにより好ましい。
カーボンブラックの樹脂中の分散性は、これらの極性が近すぎても、遠すぎても悪化する傾向にある。本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体は、前記樹脂中における前記カーボンブラックの分散性が優れており、赤外線レーザー感度も他の樹脂を用いた場合に比べ高い。これは、前記樹脂と前記カーボンブラックの極性とが適切な距離にあるためであると考えられる。
かかる観点から、(c)赤外線アブレーション層に用いる前記樹脂と前記カーボンブラックとの組み合わせが重要である。
【0046】
(c)赤外線アブレーション層に用いる前記樹脂と前記カーボンブラックの組み合わせの指標として、ハンセン溶解度パラメータを用いることができる。
カーボンブラックの樹脂中の分散性を向上させるためには、前記樹脂及び前記カーボンブラックのHSP(ハンセン溶解度パラメータ(Hansen solubility parameter)(以下、「HSP」と記載する場合がある。)の距離が重要である。
前記ハンセン溶解度パラメータ(HSP)とは、Charles M. Hansenが1967年に発表した、物質の溶解性の予測に用いられる値であって、「分子間の相互作用が似ている2つの物質は、互いに溶解しやすい」との考えに基づくパラメータである。
HSPは以下の3つのパラメータ(単位:MPa0.5)で構成されている。
δd:分子間の分散力によるエネルギー
δp:分子間の双極子相互作用によるエネルギー
δh:分子間の水素結合によるエネルギー
これら3つのパラメータは、3次元空間(ハンセン空間)における座標とみなすことができ、2つの物質のHSPをハンセン空間内に置いたとき、2点間の距離が近ければ近いほど互いに溶解しやすいことを示している。化学工業2010年3月号(化学工業社)等に説明されている通り、パソコン用ソフト「HSPiP:Hansen Solubility Parameters in Practice」等を用いることで各種物質のハンセン溶解度パラメータを得ることができる。
本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体においては、前記パソコン用ソフト「HSPiP:Hansen Solubility Parameters in Practice」を用いて得られたハンセン溶解度パラメータを用いる。
本実施形態においては、式(1):R=(4α+β+γ0.5としたときに、Rが11.0以上13.0以下であることが好ましく、11.0以上12.5以下がより好ましく、11.0以上12.5以下がさらに好ましい。
前記式(1)中、α、β、γは、下記に示す通りである。
α=樹脂のδdとのカーボンブラックδdの差の絶対値
β=樹脂のδpとカーボンブラックのδpの差の絶対値
γ=樹脂のδhとカーボンブラックのδhの差の絶対値
前記式(1)により求められるRが前記範囲になることにより、カーボンブラックの分散性が向上し、特に粒径の小さいカーボンブラックの分散性を良好に保つことができ、レーザー感度を上昇させることができる。
【0047】
赤外線アブレーション層中の樹脂のハンセン溶解度パラメータ(HSP値)、カーボンブラックのハンセン溶解度パラメータ(HSP値)は、樹脂の組成、カーボンブラックの種類を選択することにより制御できる。カーボンブラックに関しては表面の極性を調整することによりHSP値を制御できる。具体的には、カーボンブラックを酸化処理し、高極性(低pH)にすると、カーボンブラックのHSP値は高極性側にシフトする。また、カーボンブラックの粒径が小さいほど、カーボンブラックのHSP値は、高極性のものはより一層高極性なり、低極性のものはより一層低極性になる傾向にある。
これら樹脂及びカーボンブラックのHSP値を調整することにより、上記式(1)のRの値を上記数値範囲に制御することができる。
【0048】
前記赤外線アブレーション層中の樹脂に含有されているモノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体(以下、共重合体と記載する場合がある。)に用いるビニル芳香族炭化水素化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、t-ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルスチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、p-メチルスチレン、第三級ブチルスチレン、α-メチルスチレン、1,1-ジフェニルエチレン等の単量体が挙げられる。
特に、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体を比較的低温で平滑に成形できることから(以下、高成形性と記す)、スチレンが好ましい。
これらの単量体は、1種のみを単独でも用いてもよく、2種以上の併用でもよい。
前記共重合体に用いる共役ジエンとしては、以下に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、クロロプレンの単量体が挙げられ、特に1,3-ブタジエンが、耐摩耗性の観点から好ましい。
これらの単量体は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上の併用でもよい。
【0049】
なお、共重合体におけるモノビニル置換芳香族炭化水素の含有量や比率は、核磁気共鳴装置(H-NMR)を用いて測定することができる。
ここでモノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合体において、モノビニル置換芳香族炭化水素がスチレンである場合、すなわち前記共重合体がスチレン-共役ジエン共重合体である場合におけるスチレンの含有量は、40質量%以上80質量%以下が好ましい。一般的にモノビニル置換芳香族炭化水素の比率が高いほど赤外線レーザー感度が上昇し、共役ジエンの比率が高いほど可撓性に優れる。
上記範囲においては、赤外線レーザー感度と可撓性のバランスに優れたものとなる。
【0050】
(c)赤外線アブレーション層中の樹脂として、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合体の水素添加物を用いる場合、当該水添共重合体におけるモノビニル置換芳香族炭化水素がスチレンである場合、すなわち前記水添共重合体がスチレン-共役ジエン共重合体の水素添加物である場合におけるスチレンの含有量は、30質量%以上70質量%以下が好ましい。一般的にモノビニル置換芳香族炭化水素の比率が高いほどレーザー感度が上昇する。上記範囲においてはレーザー感度と可撓性のバランスに優れる傾向にある。
なお、水添共重合体におけるモノビニル置換芳香族炭化水素の含有量や比率は、核磁気共鳴装置(H-NMR)を用いて測定することができる。
【0051】
(c)赤外線アブレーション層において、前記樹脂と前記カーボンブラックの質量比は、樹脂/カーボンブラック=90/10以上50/50以下であることが好ましく、より好ましくは85/15以上55/45以下、さらに好ましくは75/35以上60/40以下である。
上記範囲において赤外線レーザー感度と可撓性のバランスに優れたものとなる。
【0052】
本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体の(c)赤外線アブレーション層の膜厚は、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体に対して露光処理を行う工程の際の紫外線に対する遮光性を確保する観点からは厚い方がよく、アブレーション性を高くする観点からは薄い方がよい。
上述した観点から、(c)赤外線アブレーション層の膜厚は0.1μm以上20μm以下が好ましく、0.5μm以上15μm以下がより好ましく、1.0μm以上10μm以下がさらに好ましい。
(c)赤外線アブレーション層の非赤外線遮蔽効果としては、(c)赤外線アブレーション層の光学濃度が2以上となることが好ましく、光学濃度が3以上となることがより好ましい。
光学濃度は、D200-II透過濃度計(GretagMacbeth社製)を用いて測定できる。また、光学濃度はいわゆる視感(ISO visual)であり、測定対象の光は400~750nm程度の波長領域である。
【0053】
(c)赤外線アブレーション層は、カーボンブラックの分散を補助する目的で分散剤を含有してもよい。
分散剤としては、例えば、赤外線吸収剤の表面官能基と相互作用しうる吸着部と、樹脂と相溶し得る樹脂相溶部を有する化合物が好ましい。
分散剤の吸着部としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アミノ基、アミド基、ウレタン基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホン基、ニトロ基が挙げられ、アミノ基、アミド基、ウレタン基が好ましい。
樹脂相溶部としては、以下に限定されるものではないが、例えば、飽和アルキル、不飽和アルキル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリル、ポリオールが挙げられる。
【0054】
(c)赤外線アブレーション層の形成方法としては、以下に限定されないが、例えば、まず、所定の溶媒を用いて樹脂溶液を調製し、そこにカーボンブラックと分散剤を添加し、カーボンブラックを樹脂溶液中に分散させてからポリエステルフィルム等のカバーフィルム上にコーティングし、その後、このカバーフィルムを、(b)感光性樹脂組成物層にラミネート又はプレス圧着して赤外線レーザーで切除可能な非赤外線の遮蔽層を転写させる方法等がある。
樹脂溶液にカーボンブラックを分散させる方法としては、以下に限定されないが、撹拌羽根による強制撹拌、超音波や各種ミルを利用した撹拌等があり、これらを併用する方法が効果的である。あるいは樹脂とカーボンブラックと分散剤を、押し出し機やニーダーを用いて予備混練してから溶剤に溶解する方法も、カーボンブラックの良好な分散性を得るために有効である。また、溶液状態の樹脂中に、カーボンブラックを強制分散させてもよい。
【0055】
赤外線アブレーション層を製膜するための溶液や分散液等の溶媒は、使用する樹脂やカーボンブラックの溶解性を考慮して適宜選択できる。溶媒は一種のみを用いてもよく、二種以上の溶媒を混合して用いてもよい。
また、例えば、低沸点の溶媒と高沸点の溶媒を混合して、溶媒の揮発速度を制御すると、(c)赤外線アブレーション層の膜質を向上させることができるため有効である。
(c)赤外線アブレーション層を製膜するための溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、エチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、水、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-ペンタン、アセトニトリルやその類縁体等が挙げられる。
【0056】
本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体の(c)赤外線アブレーション層を製膜するためには、カバーフィルムを用いることができる。カバーフィルムとしては、寸法安定性に優れたフィルムであることが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタラートフィルム等が好ましい。
カバーフィルムとしては、必要に応じて離型処理、帯電防止処理等の機能を付与したものを使用してもよい。
カバーフィルムを用いた赤外線アブレーション層の製膜方法については、後述する実施例に記載する方法が適用できる。
【0057】
〔フレキソ印刷版の製造方法〕
本実施形態のフレキソ印刷版の製造方法は以下の方法が好適なものとして挙げられる。
上述した本実施形態のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体を用いて、まず、前記(a)支持体側から紫外線照射する第一の工程と、前記(c)赤外線アブレーション層に赤外線を照射してパターンを描画加工する第二の工程と、前記(b)感光性樹脂組成物層に紫外線を照射してパターン露光する第三の工程と、前記(b)赤外線アブレーション層及び未露光の(c)感光性樹脂組成物層を除去する第四の工程とを有する。
その後、必要に応じて後露光処理する工程を行い、感光性樹脂組成物層の硬化物によるフレキソ印刷版(凸版印刷版)が得られる。
なお、剥離性付与の観点から、フレキソ印刷版の表面をシリコーン化合物及び/又はフッ素化合物を含有する液と接触させてもよい。
本実施形態のフレキソ印刷版の製造方法は、上述した方法に限定されるものではない。特に、第一~第三の工程は、適宜順序を入れ替えたり、並行して行ったりすることもできる。
【0058】
前記(a)支持体側から紫外線照射する第一の工程は、慣用の照射ユニットを使用して行うことができる。
紫外線としては、波長150~500nmの紫外線を使用でき、特に300~400nmの紫外線を好ましく使用できる。
光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ジルコニウムランプ、カーボンアーク灯、紫外線用蛍光灯等を使用できる。
なお、この紫外線照射する第一の工程は、(c)赤外線アブレーション層へパターンを描画加工する第二の工程の前に行ってもよく、パターンを描画加工する第二の工程の後に行ってもよい。
【0059】
上記のように、(c)赤外線アブレーション層の製膜の際にカバーフィルムを用いた場合には、かかる(c)赤外線アブレーション層と感光性樹脂組成物層とを積層することによってフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体が得られるので、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体の層構成としては、カバーフィルム/赤外線アブレーション層/感光性樹脂組成物層となる。
このように赤外線アブレーション層上にカバーフィルムを有している場合には、描画加工の前に、まずカバーフィルムを剥離する。
その後、(c)赤外線アブレーション層に赤外線をパターン照射して、(b)感光性樹脂組成物層上にマスクを形成する。
好適な赤外線レーザーとしては、例えば、ND/YAGレーザー(例えば、1064nm)又はダイオードレーザー(例えば、830nm)が挙げられる。
CTP製版技術に好適なレーザーシステムは市販されており、例えば、ダイオードレーザーシステムCDI Spark(ESKO GRAPHICS社)を使用できる。
このレーザーシステムは、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体を保持する回転円筒ドラム、赤外線レーザーの照射装置、及びレイアウトコンピュータを含み、画像情報は、レイアウトコンピュータからレーザー装置に直接送信される。
【0060】
上述したように、赤外線アブレーション層にパターンを描画加工した後、(b)感光性樹脂組成物層にマスクを介して紫外線を全面照射する。
紫外線の照射は、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体をレーザーシリンダに取り付けた状態で行うことができるが、一般的には、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体をレーザー装置から取り外し、慣用の照射ユニットを用いて行う。
照射ユニットは、(a)支持体側からの紫外線照射で用いたものと同様のユニットを使用できる。
【0061】
次に、現像工程を行う。
現像工程においては、従来公知の方法を適用できる。
具体的には、未露光部分を溶剤現像用の溶剤又は水現像用の洗浄液を用いて洗い流すことにより現像する方法や、40℃以上200℃以下に未露光部分を加熱し、加熱された未露光部分を吸収可能な吸収層に接触させ、吸収層によって未露光部分を吸収させて除去することによって未露光部分を取り除くことにより現像する方法(以下、熱現像と記載する)等が挙げられる。
その後に、必要に応じて後露光処理することによって、フレキソ印刷版が製造される。
なお、赤外線アブレーション層と感光性樹脂組成物層との間に接着層、酸素阻害層等の中間層を有する場合には、現像工程で同時に取り除く。
未露光部を洗い流すことにより現像するための現像用の溶剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘプチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;石油留分、トルエン、デカリン等の炭化水素類;やテトラクロルエチレン等の塩素系有機溶剤にプロパノール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール類を混合したもの;が挙げられる。未露光部を洗い流す際には、例えば、ノズルから溶剤を噴射することによって洗い流してもよく、ブラッシングを行ってもよい。
【0062】
水現像用の洗浄液としては、例えば、アルカリ性水溶液又は中性水溶液が使用できる。
前記水現像用の洗浄液には、界面活性剤を好適に用いることができる。
界面活性剤とは、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
アニオン系界面活性剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、硫酸エステル塩、高級アルコール硫酸エステル、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化オレフィン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル塩、ジチオリン酸エステル塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型界面活性剤やグリセロール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエステル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等の多価アルコール型界面活性剤等が挙げられる。
【0063】
また、pH調整剤を用いてアルカリ性水溶液を調製してもよい。
pH調整剤としては、有機材料、無機材料のいずれでもよいが、pHを9以上に調整できるものが好ましい。pH調整剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、琥珀酸ナトリウム等が挙げられる。
【0064】
前記熱現像を行う場合に用いる、未露光部分を吸収する吸収層としては、以下に限定されるものではないが、例えば、不織布材料、紙素材、繊維織物、繊維編物、連続気泡発泡体、及び多孔質材料が挙げられる。
好ましい吸収層としては、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン又はポリエチレンを含む不織布材料、及びこれらの不織布材料を組み合わせたものである。
特に好ましい吸収層としては、ナイロン又はポリエステルの不織布連続ウェブである。
【実施例
【0065】
以下に、具体的な実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0066】
〔ハンセン溶解度パラメータ(HSP)の測定方法〕
パソコン用ソフトHSPiPを用いて、ハンセン溶解度パラメータの測定を行った。
赤外線アブレーション層中の樹脂のHSP測定には、溶媒としてアセトン、2-ブタノール、シクロヘキサノン、エタノール、酢酸エチル、ヘキサン、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、MEK(メチルエチルケトン)、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PMA)、THF(テトラヒドロフラン)、トルエン、キシレンを用い、それぞれの溶媒を20mLバイアル瓶に10g投入し、その中に0.1gの樹脂を混合した。そして、24時間経過後に溶け残り有無を確認し、溶け残りがないものを溶解状態とした。続いて、Sphereプラグラムを用いて上記結果を入力し、ソフト上で計算することによりHSPを求めた。
カーボンブラックのHSP測定においても、前記赤外線アブレーション層中の樹脂の測定と同様の溶媒を用い、それぞれの溶媒を20mLバイアル瓶に10g投入し、その中にカーボンブラックを0.1g混合し、手で軽く振った。そして、30分静置した後に黒濁有無を確認し、濁りが見られるものを分散状態とした。続いて樹脂の場合と同様にHSPを求めた。
下記式(1)により、Rの値を算出した。
R=(4α+β+γ0.5 式(1)
α=樹脂のδdとのカーボンブラックδdの差の絶対値
β=樹脂のδpとカーボンブラックのδpの差の絶対値
γ=樹脂のδhとカーボンブラックのδhの差の絶対値
δd:分子間の分散力によるエネルギー
δp:分子間の双極子相互作用によるエネルギー
δh:分子間の水素結合によるエネルギー
【0067】
〔カーボンブラックのpHの測定方法〕
カーボンブラックのpHを、ASTM D1512に準拠して測定した。
【0068】
〔樹脂のスチレン含有量〕
赤外線アブレーション層を構成する樹脂のスチレン含有量を下記のようにして測定した。
核磁気共鳴装置(H-NMR)「JNM-LA400」(JEOL製)を用いて、下記の条件により測定した。溶媒には重水素化クロロホルムを用い、樹脂の濃度を50mg/mLに調製した。
観測周波数:400MHz、
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数:64回
パルス幅45°
測定温度:26℃
【0069】
〔カーボンブラックの一次粒子径評価〕
フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体を適切な大きさに切断した後、紫外線硬化樹脂を用いて樹脂包埋した。樹脂包埋後、クライオミクロトーム法により作製した断面をSEM観察試料とした。
<断面加工条件>
使用装置:ウルトラミクロトーム UC6(LEICA製)
設定温度:-80℃
設定切削厚み:100nm
<SEM観察条件>
測定装置:走査型電子顕微鏡 S4800(日立製)
加速電圧:1.0kV
観察倍率:5000倍
得られた断面SEM観察像からカーボンブラックのうち任意の10個の粒径の短軸径の長さを測定しその平均値(数平均)をカーボンブラックの一次粒子径とした。
【0070】
〔カーボンブラックのDBP吸油量〕
カーボンブラックのDBP吸油量をJIS K6217-4の定める方法により測定した。
【0071】
〔フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体の製造〕
以下の実施例及び比較例において、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体を製造した。
((1)支持体と感光性樹脂組成物層の積層体の製造)
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(旭化成製 商品名:タフプレンA)60質量部と、液状ポリブタジエン(日本石油化学製 商品名:B-2000)30質量部、1,9-ノナンジオールジアクリレート7質量部、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン2質量部、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.3質量部とを加圧ニーダーで混練し、感光性樹脂組成物を調製した。
次に、押し出し成型機に前記感光性樹脂組成物を投入し、T型ダイスから押し出し成型された感光性樹脂組成物の片方の面にベースフィルム(支持体)を貼り合わせ、感光性樹脂組成物層の支持体積層側とは反対の面に離型フィルム(三菱化学社製、商品名:ダイアホイルMRV100)を貼り合わせて、支持体と感光性樹脂組成物層の積層体を得た。
【0072】
((2)赤外線アブレーション層積層体の製造)
<赤外線アブレーション層積層体1の製造例>
・スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体エラストマーの水素添加物(旭化成製、商品名:タフテックH1051):7.8質量部
・トルエン:70.4質量部
・プロピレングリコール1-モノメチルエーテル-2-アセタート(PMA):17.6質量部
上記材料を混合し、樹脂を溶解させ、その後、カーボンブラック(三菱ケミカル製、商品名:#850)を投入した。その後、ビーズミルで4時間混合しカーボンブラック分散液を得た。
前記カーボンブラック分散液をカバーフィルムとなる厚さ100μmのPETフィルム上に、乾燥後の膜厚が10μmとなるようにコーティングし、90℃で2分間の乾燥処理を施して、赤外線アブレーション層とカバーフィルムとの積層体である赤外線アブレーション層積層体1を得た。
下記表1に、赤外線アブレーション層積層体1の構成材料及び物性を示す。
【0073】
<赤外線アブレーション層積層体2~21、25、26の製造例>
使用する樹脂、カーボンブラックの種類、及びそれぞれの配合比を、下記表1のように変更した以外は、前記赤外線アブレーション層積層体1と同様にして赤外線アブレーション層積層体2~21、25、26を得た。
下記表1に、構成材料及び物性を示す。
【0074】
<赤外線アブレーション層積層体22の製造例>
・ポリアミド(ヘンケル社製、商品名:マクロメルト6900):7.8質量部
・トルエン:44.0質量部
・2-プロパノール:44.0質量部
上記材料を混合し、樹脂を溶解させ、その後、カーボンブラック(三菱ケミカル製、商品名:#40)を投入した。その後、ビーズミルで4時間混合しカーボンブラック分散液を得た。
前記カーボンブラック分散液をカバーフィルムとなる厚さ100μmのPETフィルム上に、乾燥後の膜厚が10μmとなるようにコーティングし、90℃で2分間の乾燥処理を施して、赤外線アブレーション層とカバーフィルムとの積層体である赤外線アブレーション層積層体22を得た。
下記表1に、構成材料及び物性を示す。
【0075】
<赤外線アブレーション層積層体23の製造例>
ケン化度78~82モル%のポリ酢酸ビニル(日本合成化学工業(株)製 商品名:ゴーセノールKL-05)10質量部と、ε-カプロラクタム10質量部、N-(2-アミノエチル)ピペラジンとアジピン酸のナイロン塩90質量部、及び水100質量部を、ステンレス製オートクレーブに入れ、内部の空気を窒素ガスで置換した後に180℃で1時間加熱し、水溶性ポリアミドを調製した。
次いで水分を除去して得られた水溶性ポリアミド10質量部を、水40質量部、メタノール20質量部、n-プロパノール20質量部、及びn-ブタノール10質量部に溶解させ、溶液を得た。
前記溶液に、カーボンブラック(三菱ケミカル製、商品名:#40)を混合し、3本ロールミルを用いて混練分散させ、カーボンブラック分散液を得た。
前記カーボンブラック分散液をカバーフィルムとなる厚さ100μmのPETフィルム上に、乾燥後の膜厚が10μmとなるようにコーティングし、90℃で2分間の乾燥処理を施して、赤外線アブレーション層とカバーフィルムとの積層体である赤外線アブレーション層積層体23を得た。
下記1に、構成材料及び物性を示す。
【0076】
<赤外線アブレーション層積層体24の製造例>
カーボンブラックについて、カーボンブラック(三菱ケミカル製、商品名:MA100)に変更した以外は、前記赤外線アブレーション層積層体23の製造例と同様にして赤外線アブレーション層とカバーフィルムとの積層体である赤外線アブレーション層積層体24を得た。
下記表1に、構成材料及び物性を示す。
【0077】
【表1】
【0078】
((3)フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体の製造)
<フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体1の作製>
前記支持体と感光性樹脂組成物層の積層体から離型フィルムをはがし、前記赤外線アブレーション層積層体1を、赤外線アブレーション層が感光性樹脂組成物層に接するように、温度25℃、湿度40%の環境でラミネートしてフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体1を得た。
【0079】
<フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体2~6、9~20、25、26の作製>
それぞれ赤外線アブレーション層積層体の種類を赤外線アブレーション層積層体2~6、9~20、25、26に変更した以外は、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体1と同様にして、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体2~6、9~20、25、26を得た。
【0080】
<フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体7、8、21~24の作製>
まず、それぞれ赤外線アブレーション層積層体の種類を、赤外線アブレーション層積層体7、8、21~24に変更し、赤外線アブレーション層積層体1と同様にしてラミネートを行った。赤外線アブレーション層と感光性樹脂組成物層の密着性が不十分であるため、さらに、120℃に設定したホットプレート上でカバーフィルム面をホットプレートの加熱部に接触するように配置し、1分間加熱してフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体7、8、21~24を得た。
【0081】
〔実施例1〕
上述のようにして作製したフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体1を、以下のように評価した。評価結果を下記表2に示す。
なお、評価はフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体を10cm×15cmに切り出し、カバーフィルムをはがして行った。
【0082】
(評価方法)
<レーザー感度の評価>
フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体1を、Esko CDI SPARK2530に設置し、解像度4000dpi、レーザー強度3.0Jにおいて、2×2ピクセルの計4ピクセルを形成する画像パターンを持つテスト画像でレーザー描画を行った。
その後、アブレーション部をレーザー顕微鏡(キーエンス(株)製 商品名:VK-X100、対物レンズ100倍)を用いて観察し、レーザーで削れた最大深さをレーザー感度の指標値とし、下記の基準により評価した。
A:最大深さが4.9μm以上
B:最大深さが4.6μm以上4.9μm未満
C:最大深さが4.3μm以上4.6μm未満
D:最大深さが4.0μm以上4.3μm未満
E:最大深さが4.0μm未満
【0083】
<感光性樹脂組成物層界面の、赤外線アブレーション層除去性の評価>
フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体1を、デジタルフレキソイメージャー(Esko社製 商品名:CDI SPARK2530)に設置し、解像度4000dpi、レーザー強度5.0Jにおいて、2×2ピクセルの計4ピクセルを形成する画像パターンを持つテスト画像でレーザー描画を行った。
その後、アブレーション部をレーザー顕微鏡(VK-X100、キーエンス(株)製;対物レンズ100倍)を用いて観察した。赤外線アブレーション層表面におけるレーザーで削った部分の長さと、感光性樹脂組成物層との界面におけるレーザーで削った部分の長さを測定し、感光性樹脂組成物層との界面/赤外線アブレーション層表面の、レーザーで削った部分長さの比を、感光性樹脂組成物層界面の赤外線アブレーション層除去性の指標として、下記のように評価した。
A:感光性樹脂組成物との界面/赤外線アブレーション層表面の、レーザーで削った部分の長さの比が0.55以上
B:感光性樹脂組成物との界面/赤外線アブレーション層表面の、レーザーで削った部分の長さの比が0.50以上0.55未満
C:感光性樹脂組成物との界面/赤外線アブレーション層表面の、レーザーで削った部分の長さの比が0.45以上0.50未満
D:感光性樹脂組成物との界面/赤外線アブレーション層表面の、レーザーで削った部分の長さの比が0.40以上0.45未満
E:感光性樹脂組成物との界面/赤外線アブレーション層表面の、レーザーで削った部分の長さの比が0.40未満
【0084】
<ピンホール(PH)評価>
前記赤外線アブレーション層積層体1を、赤外線アブレーション層が感光性樹脂組成物層に接するよう温度120℃でラミネートしサンプルを得た。
このサンプルにおいて、赤外線アブレーション層のカバーフィルムを除去した後、ライトテーブル上に置き、サンプルの下からライトテーブルで照らし、光って見える箇所をピンホールである、と判断した。
赤外線アブレーション層において、長径20μm以上のサイズのピンホールの個数を数え、平均値を算出し、(個/m2)の値を算出し、下記のように評価した。
A:ピンホールの数が、平均2(個/m2)より少ない。
B:ピンホールの数が、平均2(個/m2)以上で5個(個/m2)より少ない。
C:ピンホールの数が、平均5(個/m2)以上で10(個/m2)より少ない。
D:ピンホールの数が、平均10(個/m2)以上で20(個/m2)より少ない。
E:ピンホールの数が、平均20(個/m2)以上である。
【0085】
<赤外線アブレーション層と感光性樹脂組成物層の密着性の評価>
上述のように、前記赤外線アブレーション層積層体1を、赤外線アブレーション層が感光性樹脂組成物層に接するようにして、温度25℃、湿度40%の環境でのラミネートを行い、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体1を得た。
前記ラミネートのみで、赤外線アブレーション層と感光性樹脂組成物層とが十分密着しているか、前記ラミネート後にさらに加熱することにより十分に密着したか、を評価した。
また、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体1を、中央付近を起点として、赤外線アブレーション層が内側になるように90°折り曲げた。さらにその後、支持体が内側になるように90°折り曲げた。この操作を三回繰り返し、赤外線アブレーション層が感光性樹脂組成物層と剥離するか否かを観察し、下記のように評価した。
A:温度25℃、湿度40%の環境でのラミネートで十分密着しており、折り曲げ試験を行っても剥離しなかった。
C:ラミネート後にさらに加熱することで十分な密着性が得られ、折り曲げ試験を行っても剥離しなかった。
E:折り曲げ試験により剥離した。
【0086】
<可撓性の評価>
フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体1を、中央付近を起点として、支持体が内側になるように180°、すなわち支持体同士が接触する状態に折り曲げた。その後、赤外線アブレーション層表面に、しわが発生したかを観察し、下記のように評価した。
A:しわが発生しなかった。
B:しわが発生したが、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体の端部のみにごくわずかに発生した。
C:しわがフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体の端部に複数発生した。
D:しわがフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体の端部、及び中央部付近に発生した。
E:フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体の全面にしわが発生した。
【0087】
〔実施例2~21〕
フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体2~21を、前記実施例1と同様に評価した。評価結果を下記表2に示す。
【0088】
〔比較例1~5〕
フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体22~26を、前記実施例1と同様に評価した。評価結果を下記表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
本出願は、2020年9月28日に日本国特許庁に出願された日本特許出願(特願2020-161734)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体は、広く一般商業印刷分野において、産業上の利用可能性を有する。