(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】有機-無機ハイブリッド型錯体及びそれを含むコーティング組成物、セパレータ、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置
(51)【国際特許分類】
C01C 3/12 20060101AFI20240516BHJP
C01C 3/11 20060101ALI20240516BHJP
C07F 1/08 20060101ALI20240516BHJP
C07F 3/06 20060101ALI20240516BHJP
C07F 13/00 20060101ALI20240516BHJP
C07F 15/02 20060101ALI20240516BHJP
C07F 15/06 20060101ALI20240516BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20240516BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240516BHJP
H01M 50/409 20210101ALI20240516BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240516BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20240516BHJP
【FI】
C01C3/12
C01C3/11
C07F1/08 B
C07F3/06
C07F13/00 A
C07F15/02
C07F15/06
C09D7/40
C09D201/00
H01M50/409
H01M50/434
H01M50/451
(21)【出願番号】P 2022562821
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2021103405
(87)【国際公開番号】W WO2023272551
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田佳瑞
(72)【発明者】
【氏名】郭永勝
(72)【発明者】
【氏名】程叢
(72)【発明者】
【氏名】蘭媛媛
(72)【発明者】
【氏名】蘇碩剣
(72)【発明者】
【氏名】張欣欣
(72)【発明者】
【氏名】柳娜
(72)【発明者】
【氏名】欧陽楚英
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112352334(CN,A)
【文献】特表2020-507191(JP,A)
【文献】特表2011-505696(JP,A)
【文献】特表2012-518032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01C 3/00 - 3/20
C07F 1/08
C07F 3/06
C07F 13/00
C07F 15/02
C07F 15/06
C09D 7/40
C09D 201/00
H01M 50/409
H01M 50/434
H01M 50/451
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機-無機ハイブリッド型錯体であって、前記有機-無機ハイブリッド型錯体は、式(I)で表される基本単位を少なくとも一つの空間方向に沿って周期的に組み立てて構成され、
[L
x-i□
i][M
aC
b]・A
z(I)
式(I)において、
Mは第1の遷移系金属元素を表し、
Cは任意選択的にMと金属クラスターを形成可能な原子、原子団、又はアニオンを表し、
Lは金属M又は金属クラスターM
aC
bと配位結合を形成する有機架橋配位子を表し、
□は配位子欠陥を表し、
Aは吸蔵及び放出可能な原子又はカチオンを表し、
xは1から4の数値を取り、さらに任意選択的に、1から3の数値を取り、
aは0より大きく4以下の数値を取り、さらに任意選択的に、1から4の数値を取り、
zは0から2の数値を取り、さらに任意選択的に、0から1の数値を取り、
0<i<x、且つ0≦b:a≦1であり、
前記有機-無機ハイブリッド型錯体の欠陥度合いは欠陥パーセントi/x*100%によって表されるとともに、前記欠陥パーセントは1%から30%である、有機-無機ハイブリッド型錯体。
【請求項2】
前記欠陥パーセントは2%から20%であり、任意選択的に2.5%から18%であり、さらに任意選択的に5%から10%である、請求項1に記載の有機-無機ハイブリッド型錯体。
【請求項3】
1/2≦x:a≦3である、請求項1又は2に記載の有機-無機ハイブリッド型錯体。
【請求項4】
1/4≦b:a≦1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の有機-無機ハイブリッド型錯体。
【請求項5】
前記MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuとZnのうちの一つ又は複数から選択され、さらに任意選択的に、Mn、Fe、Co、CuとZnのうちの一つ又は複数から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の有機-無機ハイブリッド型錯体。
【請求項6】
前記Cは-O-、=O、O
2-、S
2-、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、CO、-OHとOH
-のうちの一つ又は複数から選択され、さらに任意選択的に、-O-又は-OHである、請求項1~5のいずれか一項に記載の有機-無機ハイブリッド型錯体。
【請求項7】
前記Lはシアノ基、ベンズイミダゾール系配位子、ポルフィリン系配位子、ピリジン系配位子、ピラゾール系配位子、ピリミジン系配位子、ピペリジン系配位子、ピロリジン系配位子、フラン系配位子、チオフェン系配位子、ピラジン系配位子、ピペラジン系配位子、ピリダジン系配位子、トリアジン系配位子、テトラジン系配位子、インドール系配位子、キノリン系配位子、モルホリン系配位子、カルバゾール系配位子とポリカルボン酸系配位子のうちの少なくとも一つから選択され、ここでは、前記Lにおける一つ又は複数の水素原子は、任意選択的に、一つ又は複数の置換基で置換され、前記置換基は、それぞれシアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、ハロゲン、C1-C6アルキル基、C1-C6ヒドロキシアルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、C3-C8シクロアルキル基、C6-C10アリール基、C6-C10ヘテロアリール基及びその任意の組み合わせのうちの少なくとも一つから独立して選択され、任意選択的に、前記Lはシアノ基、ベンズイミダゾール系配位子とポリカルボン酸系配位子のうちの少なくとも一つから選択され、さらに任意選択的に、前記Lはシアノ基、ベンズイミダゾール系配位子、トリメシン酸系配位子とテレフタル酸系配位子のうちの少なくとも一つから選択され、さらに任意選択的に、前記Lはシアノ基、5-クロロベンズイミダゾール配位子(cbIm)、トリメシン酸配位子(BTC)、テレフタル酸配位子(BDC)とトリス(2-ベンズイミダゾールメチル)アミン配位子(NTB)のうちの少なくとも一つから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の有機-無機ハイブリッド型錯体。
【請求項8】
前記AはLi、Na、K、Rb、Cs、Sr、Zn、MgとCaのうちの一つ又は複数の金属元素の原子又はカチオンから選択され、さらに任意選択的に、Li又はNaである、請求項1~7のいずれか一項に記載の有機-無機ハイブリッド型錯体。
【請求項9】
式(I)で表される基本単位は、三つの空間方向X’、Y’とZ’のうちの少なくとも一つに沿って周期的に組み立てられ、前記三つの方向X’、Y’とZ’は、それぞれデカルト座標系のX方向、Y方向及びZ方向と0から75度のなす角を成し、任意選択的に5から60度のなす角である、請求項1~8のいずれか一項に記載の有機-無機ハイブリッド型錯体。
【請求項10】
式(I)で表される基本単位は、デカルト座標系のX方向、Y方向とZ方向のうちの少なくとも一つの空間方向に沿って周期的に組み立てられる、請求項9に記載の有機-無機ハイブリッド型錯体。
【請求項11】
式(I)で表される基本単位が少なくとも一つの空間方向に沿って周期的に組み立てられる数は、3から10,000である、請求項1~10のいずれか一項に記載の有機-無機ハイブリッド型錯体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の有機-無機ハイブリッド型錯体を含む、コーティング組成物。
【請求項13】
前記コーティング組成物の質量に対して、前記有機-無機ハイブリッド型錯体の含有量は、12wt%から90wt%であり、任意選択的に17wt%から85wt%であり、さらに任意選択的に34wt%から68wt%である、請求項12に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
無機粒子をさらに含む、請求項12又は13に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
前記コーティング組成物における有機-無機ハイブリッド型錯体と前記無機粒子との合計質量に対して、前記有機-無機ハイブリッド型錯体の質量比率は、15wt%から85wt%であり、任意選択的に20wt%から80wt%であり、さらに任意選択的に40wt%から80wt%である、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
前記無機粒子はベーマイト、ゼオライト、モレキュラシーブ、アルミナ、オキシ水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン及びそれらの混合物のうちの少なくとも一つから選択される、請求項14又は15に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
二次電池用セパレータであって、
ポリマー基材層と、
請求項1~11のいずれか一項に記載の有機-無機ハイブリッド型錯体又は請求項12~16のいずれか一項に記載のコーティング組成物を含み前記ポリマー基材層に塗布されたコーティングとを含む、二次電池用セパレータ。
【請求項18】
二次電池であって、
正極と、
負極と、
電解質と、
請求項17に記載の二次電池用セパレータとを含む、二次電池。
【請求項19】
請求項18に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項20】
請求項19に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項21】
請求項18に記載の二次電池、又は請求項19に記載の電池モジュール、又は請求項20に記載の電池パック、又はそれらの組み合わせを含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、二次電池技術分野に関し、特に二次電池セパレータのコーティングの形成に用いる可能な有機-無機ハイブリッド型錯体、この錯体を含むコーティング組成物、このコーティング組成物で形成されたコーティング、このコーティングを含む二次電池用セパレータ、及びこのセパレータを含む二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高く、サイクル寿命が長く、記憶効果がないなどの利点を有し、数多くの消費電子製品に広く適用されている。近年、電気自動車とエネルギー貯蔵システムの不断の発展に伴い、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度に対する要求も高まっている。
【0003】
二次電池は、電池が放電した後、充電することで活物質を活性化して使用し続けることが可能な電池を指す。通常、二次電池は、正極板と、負極板と、セパレータと、電解質と、溶媒とを含む。電池の充放電過程において、活性イオンは、正極板と負極板との間で往復して吸蔵及び放出される。正極板と負極板との間にはセパレータが設置されている。セパレータは、リチウムイオン電池の重要な構成要素であり、通常、ナノスケールの微細孔を有する高分子機能材料である。セパレータの主な機能は、電解質イオンを通過させるとともに、両極の接触による短絡を防止することである。具体的には、セパレータは、電子に対して絶縁し、内部での短絡を防止するとともに、活性イオンを透過させ且つ正負極の間で移動させることができる。セパレータの性能により、電池の界面構造、内部抵抗などが決まるため、電池の容量、サイクル及び安全性能に直接影響を与える。
【0004】
現在、商品化されているリチウムイオン電池セパレータ製品は、ポリオレフィン材料、特にポリオレフィン微細孔膜を多く使用し、ポリエチレン(PE)単層膜と、ポリプロピレン(PP)単層膜と、PPとPEとを複合して形成されたPP/PE/PP多層微細孔膜とを含む。これらのポリオレフィン微細孔膜は、電解液に対する浸潤性が不良であり、生産中の注液困難を引き起こし、且つ分極が増加し、電池のパワー密度及びサイクル寿命を低下させていた。
【0005】
従来技術においては、イオン伝導性コーティング、例えばセラミックコーティングを使用して浸潤性を向上させてきた。しかしながら、これらのコーティングの製造は、焼成が必要であり、プロセスが煩雑であり、特に浸潤性の向上における効果には限りがあることから、電池のレート性能、サイクル寿命の改善効果が不十分である。また、さらに耐高温金属-有機フレーム材料(MOF)をコーティングの主材料として使用して浸潤性を向上させてきた。しかしながら、MOF材料コーティングを使用してセパレータの浸潤性を向上させる場合、このような向上は、セパレータ空隙率の増加、即ち比表面積の増加のみに依存しており、実際には材料自体からの寄与が非常に少ないため、MOF材料コーティングセパレータの浸潤性は、依然として向上する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
背景技術に存在する上記問題に鑑み、本出願は、電解液浸潤性を改善するという効果を有するとともに、電解液保持率を向上させることによって分極を低下させ、二次電池のパワー密度を改善し、且つサイクル寿命を延長することができる、二次電池セパレータに用いられるコーティング材料を提供することを目的としている。
【0007】
上記目的を実現させるために、一側面として、本出願は、有機-無機ハイブリッド型錯体を提供し、前記有機-無機ハイブリッド型錯体は、式(I)で表される基本単位を少なくとも一つの空間方向に沿って周期的に組み立てて構成される。
[Lx-i□i][MaCb]・Az(I)
【0008】
ただし、式(I)において、Mは第1の遷移系金属元素を表し、Cは任意選択的にMと金属クラスターを形成可能な原子、原子団、又はアニオンを表し、Lは金属M又は金属クラスターMaCbと配位結合を形成可能な有機配位子、特に有機架橋配位子を表し、□は配位子欠陥を表し、Aは吸蔵及び放出可能な原子又はカチオンを表す。xは1から4の数値を取ってもよく、さらに任意選択的に、1から3の数値を取ってもよく、aは0より大きく4以下の数値を取ってもよく、さらに任意選択的に、1から4の数値を取ってもよい。zは0から2の数値を取ってもよく、さらに任意選択的に、0から1の数値を取ってもよい。式(I)において、0<i<x、且つ0≦b:a≦1という関係を満たしてもよい。
【0009】
本出願において、欠陥パーセントi/x*100%を使用して、理想的な無欠陥晶体構造に対する本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体の欠陥度合いを表す。前記欠陥パーセントは約1%から約30%であってもよい。
【0010】
一実施形態において、前記欠陥パーセントは、約2%から約20%であってもよい。一実施形態において、前記欠陥パーセントは、約2.5%から約18%であってもよい。一実施形態において、前記欠陥パーセントは、約5%から約10%であってもよい。
【0011】
一実施形態において、式(I)において、1/2≦x:a≦3という関係を満たしてもよい。
【0012】
一実施形態において、式(I)において、aとbとの間の割合は、1/4≦b:a≦1を満たしてもよい。
【0013】
一実施形態において、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuとZnのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。さらに任意選択的に、MはMn、Fe、Co、CuとZnのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0014】
一実施形態において、Cは-O-、=O、O2-、S2-、F-、Cl-、Br-、I-、CO、-OHとOH-のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。さらに任意選択的に、Cは-O-又は-OHであってもよい。
【0015】
一実施形態において、有機架橋配位子Lはシアノ基、ベンズイミダゾール系配位子、ポルフィリン系配位子、ピリジン系配位子、ピラゾール系配位子、ピリミジン系配位子、ピペリジン系配位子、ピロリジン系配位子、フラン系配位子、チオフェン系配位子、ピラジン系配位子、ピペラジン系配位子、ピリダジン系配位子、トリアジン系配位子、テトラジン系配位子、インドール系配位子、キノリン系配位子、モルホリン系配位子、カルバゾール系配位子とポリカルボン酸系配位子のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。前記有機架橋配位子Lにおける一つ又は複数水素原子は、任意選択的に、一つ又は複数の置換基で置換され、前記置換基は、それぞれシアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、ハロゲン、C1-C6アルコキシ基、C1-C6ヒドロキシアルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、C3-C8シクロアルキル基、C6-C10アリール基、C6-C10ヘテロアリール基及びその任意の組み合わせのうちの少なくとも一つから独立して選択されてもよい。一実施形態において、有機架橋配位子Lはシアノ基、ベンズイミダゾール系配位子とポリカルボン酸系配位子のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。一実施形態において、有機架橋配位子Lはシアノ基、ベンズイミダゾール系配位子、トリメシン酸系配位子とテレフタル酸系配位子のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。一実施形態において、有機架橋配位子Lはシアノ基、5-クロロベンズイミダゾール配位子(cbIm)、トリメシン酸配位子(BTC)、テレフタル酸配位子(BDC)とトリス(2-ベンズイミダゾールメチル)アミン配位子(NTB)のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0016】
一実施形態において、AはLi、Na、K、Rb、Cs、Sr、Zn、MgとCaのうちの一つ又は複数の金属元素の原子又はカチオンから選択されてもよい。さらに任意選択的に、AはLi又はNaであってもよい。
【0017】
一実施形態において、本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体では、式(I)で表される基本単位は、三つの空間方向X’、Y’とZ’のうちの少なくとも一つに沿って周期的に組み立てられてもよく、前記三つの方向X’、Y’とZ’は、それぞれデカルト座標系のX方向、Y方向及びZ方向と0から75度のなす角を成し、任意選択的に5から60度のなす角である。
【0018】
一実施形態において、式(I)で表される基本単位は、デカルト座標系のX方向、Y方向とZ方向のうちの少なくとも一つの空間方向に沿って周期的に組み立てられてもよい。
【0019】
一実施形態において、本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体では、式(I)で表される基本単位が少なくとも一つの空間方向に沿って周期的に組み立てられる数は、約3から約10,000であってもよい。
【0020】
他方、本出願は、二次電池セパレータに用いられるコーティング組成物をさらに提供し、前記コーティング組成物は、以上に記載の本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体を含んでもよい。
【0021】
一実施形態において、本出願のコーティング組成物では、コーティング組成物の総重量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の含有量は、約12wt%から約90wt%であってもよい。一実施形態において、コーティング組成物の総重量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の含有量は、約17wt%から約85wt%であってもよい。一実施形態において、コーティング組成物の総重量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の含有量は、約34wt%から約68wt%であってもよい。
【0022】
一実施形態において、任意選択的に、本出願のコーティング組成物は、無機粒子をさらに含んでもよい。
【0023】
一実施形態において、本出願のコーティング組成物には無機粒子が含まれる場合、コーティング組成物における有機-無機ハイブリッド型錯体と無機粒子との合計質量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の質量比率は、約15wt%から約85wt%であってもよい。一実施形態において、コーティング組成物における有機-無機ハイブリッド型錯体と無機粒子との合計質量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の質量比率は、約20wt%から約80wt%であってもよい。一実施形態において、コーティング組成物における有機-無機ハイブリッド型錯体と無機粒子との合計質量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の質量比率は、約40wt%から約80wt%であってもよい。
【0024】
一実施形態において、本出願のコーティング組成物には無機粒子が含まれる場合、無機粒子はベーマイト、ゼオライト、モレキュラシーブ、アルミナ、オキシ水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン及びそれらの混合物から選択されてもよい。
【0025】
他方、本出願は、二次電池用セパレータをさらに提供する。本出願の二次電池用セパレータは、ポリマー基材層と基材層上に塗布されるコーティングとを含み、ここでは、前記コーティングは、以上に記載の本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体又は以上に記載の本出願のコーティング組成物を含んでもよい。
【0026】
他方、本出願は、二次電池をさらに提供する。本出願の二次電池は、正極と、負極と、電解質と、以上に記載の本出願の二次電池用セパレータとを含んでもよい。
【0027】
他方、本出願は、電池モジュールをさらに提供する。本出願の電池モジュールは、以上に記載の本出願の二次電池を含んでもよい。
【0028】
他方、本出願は、電池パックをさらに提供する。本出願の電池パックは、以上に記載の本出願の電池モジュールを含んでもよい。
【0029】
他方、本出願は、電力消費装置をさらに提供する。本出願の電力消費装置は、以上に記載の本出願の二次電池、又は以上に記載の本出願の電池モジュール、又は以上に記載の本出願の電池パック、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0030】
本出願の二次電池において、セパレータのコーティングに本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体を適用することにより、セパレータの電解液浸潤性が著しく改善されるとともに、電解液保持率が大幅に向上することによって、分極を低減し、最終的に二次電池のパワー密度とサイクル寿命は著しく改善される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本出願の一実施例の二次電池の概略図である。
【
図2】
図1に示される本出願の一実施例の二次電池の分解図である。
【
図3】本出願の一実施例の電池モジュールの概略図である。
【
図4】本出願の一実施例の電池パックの概略図である。
【
図5】
図4に示される本出願の一実施例の電池パックの分解図である。
【
図6】本出願の一実施例の二次電池を電源として使用する装置の概略図である。
【
図7】製造例1で得られた材料のSEM写真である。
【
図8】実施例1で得られた、コーティングを有するセパレータのSEM写真である。
【
図9a-c】それぞれ試験例1で得られた対照例1、比較例1と実施例1のセパレータの浸潤性試験写真である。
【
図10】試験例5で得られた対照適用例1、比較適用例1と適用例1の電池セルのサイクル性能のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本出願の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下では、添付図面を結び付けながら出願の実施例を詳細に記述する。しかしながら、当業者であれば理解できるように、これらの実施例は、本出願の技術案を説明するためにのみ用いられ、限定するためのものではない。
【0033】
簡単にするために、本出願は、いくつかの数値範囲を具体的に開示している。しかしながら、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、明確に記載されていない範囲を形成してもよく、及び、任意の下限は、他の任意の下限と組み合わせて、明確に記載されていない範囲を形成してもよく、同様に、任意の上限は、他の任意の上限と組み合わせて、明確に記載されていない範囲を形成してもよい。なお、各独立して開示された点または個別の数値自体は、下限又は上限として、任意の他の点又は個別の数値と組み合わせて、又は他の下限又は上限と組み合わせて、明示的に記載されていない範囲を形成してもよい。
【0034】
特に説明しない場合、本出願の全ての実施形態及び選択的な実施形態は、互いに組み合わせて新な技術案を形成することができる。
【0035】
特に説明しない場合、本出願の全ての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新な技術案を形成することができる。
【0036】
特に説明しない場合、本出願の全てのステップは、順次行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順次行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が順次行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順次行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上に言及された前記方法がステップ(c)をさらに含むことは、ステップ(c)が任意の順で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)と(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)と(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)と(b)などを含んでもよい。
【0037】
特に説明しない場合、本出願で言及された「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含み又は包含してもよく、リストアップされた成分のみを含み又は包含してもよいことを表してもよい。
【0038】
特に説明しない場合、本出願において、用語「又は」は包括的である。例えば、用語「A又はB」は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。さらに具体的には、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)という条件、Aが偽であり(又は存在せず)Bが真である(又は存在する)という条件、又はAとBがいずれも真である(又は存在する)という条件はいずれも条件「A又はB」を満たす。
【0039】
一側面として、本出願は、有機-無機ハイブリッド型錯体を提供する。本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体は、式(I)で表される基本単位を少なくとも一つの空間方向に沿って周期的に組み立てて構成されてもよい。
[Lx-i□i][MaCb]・Az(I)
【0040】
式(I)において、Mは第1の遷移系金属元素を表すことができる。第1の遷移系金属元素は、化学的性質が活発であり、安定した低酸化価数(+1~+4)を有し、電気陰性度が比較的大きく、配位結合能力が強い。これは第1の遷移系金属元素と有機配位子(有機物配位子と呼んでもよい)とが配位結合を形成するか、又は者金属クラスターを形成した後によく見られる有機配位子と配位結合を形成することに有利であり、+5~+7の高元素価数が現れ、さらに金属原子の近傍空間に必要な配位結合が多すぎることを招くことを回避する。そして、第1の遷移系金属元素は、立体障害効果が比較的小さく、安定した配位構造をより形成しやすく、第2、第3の遷移系金属元素のように、金属-金属結合を形成しやすく、それによって配位結合の安定性に影響を与えることがない。
【0041】
任意選択的に、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuとZnのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。さらに任意選択的に、MはMn、Fe、Co、CuとZnのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0042】
式(I)において、Cは任意選択的にMと金属クラスターを形成可能な原子、原子団、又はアニオンを表す。任意選択的に、Cは-O-、=O、O2-、S2-、F-、Cl-、Br-、I-、CO、-OHとOH-のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。さらに任意選択的に、Cは-O-又は-OHであってもよい。
【0043】
式(I)において、Lは金属M又は金属クラスターMaCbと配位結合を形成可能な有機配位子、特に有機架橋配位子を表す。メカニズムがまだ十分に解明されていないが、単座配位子(即ち一つの配位原子を含む配位子)に比べて、有機架橋配位子は、一定の割合の欠陥部位を受けるのに必要な金属-配位子の完全なフレームを効果的に提供することができる見込みがある。このような完全なフレーム構造は、有機-無機ハイブリッド型錯体の構造安定性を維持する前提で、コーティングセパレータ浸潤性を向上させるという効果を十分に実現させることができる。
【0044】
非限定的な実例として、有機架橋配位子Lは、シアノ基(CN)、ベンズイミダゾール系配位子、ポルフィリン系配位子、ピリジン系配位子、ピラゾール系配位子、ピリミジン系配位子、ピペリジン系配位子、ピロリジン系配位子、フラン系配位子、チオフェン系配位子、ピラジン系配位子、ピペラジン系配位子、ピリダジン系配位子、トリアジン系配位子、テトラジン系配位子、インドール系配位子、キノリン系配位子、モルホリン系配位子、カルバゾール系配位子とポリカルボン酸系配位子を含んでもよい。前記有機架橋配位子Lにおける一つ又は複数水素原子は、任意選択的に、一つ又は複数の置換基で置換され、前記置換基は、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、ハロゲン、C1-C6アルキル基、C1-C6ヒドロキシアルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、C3-C8シクロアルキル基、C6-C10アリール基、C6-C10ヘテロアリール基及びその任意の組み合わせから独立して選択されてもよい。
【0045】
非限定的な実例として、ベンズイミダゾール系配位子は、ベンズイミダゾール配位子(bIm)、5-クロロベンズイミダゾール配位子(cbIm)、5-ニトロベンズイミダゾール配位子(nbIm)、2-メチル-5-クロロベンズイミダゾール配位子、トリス(2-ベンズイミダゾールメチル)アミン配位子(NTB)などを含んでもよい。イミダゾール系配位子は、イミダゾール配位子(IM)、2-メチルイミダゾール配位子(mIM)、2-ニトロイミダゾール配位子(nIM)などを含んでもよい。ピリミジン系配位子は、2-ヒドロキシ-5-フルオロピリミジン配位子(F-pymo)を含んでもよい。トリアジン系配位子は、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン配位子(TATB)を含んでもよい。テトラジン系配位子は、3,6-ジ-4-ピリジン-1,2,4,5-テトラジン配位子(DPT)を含んでもよい。ポリカルボン酸系配位子は、ピロメリット酸配位子(BTEC)、トリメシン酸配位子(BTC)、テレフタル酸配位子(BDC)、2,6-ナフタレンジカルボン酸配位子(NDC)、1,4-ベンゾジアセテート配位子(PDA)、2,3-ピラジンジカルボン酸配位子(PZDC)、2,2-ビス(4-カルボキシルフェニル)ヘキサフルオロプロパン配位子(H2hfipbb)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸配位子(NTC)、5-tert-ブチル-1,3-ベンゾジカルボン酸配位子(TPIC)、ビフェニルテトラカルボン酸配位子(BPTC)、9,10-アントラセンジカルボン酸配位子(ADC)、4-アミノフェニルテトラゾール酸配位子(APT)、2,4,6-ピリジントリカルボン酸配位子(PYTA)、4,4’,4’’-ベンゼン-1,3,5-トリイルトリス-安息香酸配位子(BTB)、ピリジンジカルボン酸配位子(PDC)、2,3-ピラジン-テトラゾール酸配位子(DTP)、グルタル酸配位子(GLA)などを含んでもよい。
【0046】
一実施形態において、有機架橋配位子Lは、シアノ基、ベンズイミダゾール系配位子とポリカルボン酸系配位子から選択されてもよい。一実施形態において、有機架橋配位子Lは、シアノ基、ベンズイミダゾール系配位子、トリメシン酸系配位子とテレフタル酸系配位子から選択されてもよい。一実施形態において、有機架橋配位子Lは、シアノ基、5-クロロベンズイミダゾール配位子(cbIm)、トリメシン酸配位子(BTC)、テレフタル酸配位子(BDC)とトリス(2-ベンズイミダゾールメチル)アミン配位子(NTB)から選択されてもよい。
【0047】
ここでは、本出願におけるこれらのポリカルボン酸系配位子は、中心原子金属と配位結合し、少なくとも一つの水素を脱離させることができ、配位化合物においてルイス塩基として作用することが可能である。
【0048】
式(I)において、□は配位子欠陥(即ち格子空孔)を表す。本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥は、配位子のみの脱落、又は配位子及びそれに結合した1つ又は複数の金属又は金属クラスター原子の同時脱落によるものである。メカニズムがまだ十分に解明されていないが、本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体において、周期的に組み立てられる三次元構造に存在する欠陥は、電解液の溶媒分子との間で分子間水素結合を形成可能な極性基を有する有機配位子の露出部位を提供することができる見込みがある。そのため、本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体は、セパレータのコーティングに適用される場合、コーティングセパレータの電解液浸潤性を向上させることができる。そして、配位子欠陥が有機-無機ハイブリッド型錯体構造において均一に分布しているため、本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体は、セパレータの電解液浸潤性をより効果的に向上させるとともに、電解液保持率を向上させることができ、これによって電池セルの内部分極を低減し、電池のパワー密度を改善し、サイクル寿命を延長する。
【0049】
式(I)において、Aは、吸蔵及び放出可能な原子又はカチオンを表す。任意選択的に、AはLi、Na、K、Rb、Cs、Sr、Zn、MgとCaのうちの一つ又は複数の金属元素の原子又はカチオンから選択されてもよい。さらに任意選択的に、AはLi又はNaを表す。
【0050】
式(I)において、x、i、z、aとbのうちの各数値は限定されるものではない。一実施形態において、xは1から4の数値を取ってもよい。さらに任意選択的に、xは1から3的の数値を取ってもよい。一実施形態において、aは0より大きく4以下の数値を取ってもよい。さらに任意選択的に、aは1から4の数値を取ってもよい。一実施形態において、bは0以上4以下の数値を取ってもよい。さらに任意選択的に、bは1から4の数値を取ってもよい。一実施形態において、zは0から2の数値を取ってもよい。さらに任意選択的に、zは0から1の数値を取ってもよい。
【0051】
式(I)において、0<i<xという関係を満たしてもよい。対応する無欠陥の有機-無機ハイブリッド型錯体において、i=0である。対応する化学式はLx[MaCb]・Azである。
【0052】
本出願において、以下の方法で式(I)におけるiの数値を決定することができる。具体的には、既知の方法、例えば、X線回折分析(XRD)、現場冷電界放射銃双球面収差補正透射電子顕微鏡(STEM)などによって、本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体に対応する無欠陥製品の理論式Lx[MaCb]・Azを決定することができる。上記理論式は当業者に既知のものであってもよい。また、有機-無機ハイブリッド型錯体の実測した元素割合に基づいて、錯体における基本単位の実験式Lx’[MaCb]・Azを得ることができる。上記元素割合は、当分野で既知の方法、例えば、誘導結合プラズマ発光スペクトル(ICP)、炭素硫黄元素分析計、元素定量分析(EA)などによって決定することができる。最後に、実験式Lx’[MaCb]・Azと対応する無欠陥製品の理論式Lx[MaCb]・Azとの間の比較により、iの数値を得ることができ、それによって理想的な無欠陥結晶構造に対する本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体の欠陥度合いを表す欠陥パーセントi/x*100%を決定する。具体的には、欠陥パーセント=(x-x’)/x*100%である。
【0053】
説明の目的のみで、対応する無欠陥製品の理論式の決定についてより詳細に説明する。理論的には、全ての金属元素及び配位子の種類が明らかになった場合、有機-無機ハイブリッド型錯体における元素割合は、前記錯体における圧倒的な割合を占める金属元素の価数、及び対応する配位子の配位数のみに依存する。例えば、有機-無機ハイブリッド型錯体において金属元素としてのMが一種類しか存在せず、例えば、X線光電子分光法(XPS)、電子エネルギー損失スペクトル(EELS)などによって決定され、前記Mの圧倒的な割合を占める価数が+a1であり、配位子Lの配位数がa2であれば、金属クラスターを形成しない場合、有機-無機ハイブリッド型錯体の理論的化学式はLa1Ma2であってもよい。有機-無機ハイブリッド型錯体において分子フレームの構成に関与しなく、即ち吸蔵及び放出可能な原子又はカチオンAが存在し、且つ前記Aの価数が+a3であれば、金属クラスターを形成しない場合、有機-無機ハイブリッド型錯体の理論的化学式はLa1Ma2-a3/a1*z・Azであってもよい。金属クラスターを形成する場合、例えば、現場冷電界放射銃双球面収差補正透射電子顕微鏡(STEM)などの分子構造を分析可能な特徴付け手段によって、金属クラスターの存在形式を調べ、そして金属クラスターの価数を代入してトリムすることができる。最終的に、本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体に対応する無欠陥製品の理論式Lx[MaCb]・Azを決定することができ、ただし、下付き数字aとbは、必要に応じて四捨五入して整数にしてもよい。
【0054】
本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体において、前記欠陥パーセントは約1%から約30%であってもよい。前記欠陥パーセントは、任意選択的に約2%以上であり、さらに任意選択的に3%以上であり、さらに任意選択的に約4%以上であり、さらに任意選択的に約5%以上であり、さらに任意選択的に約6%以上であり、さらに任意選択的に約7%以上であり、さらに任意選択的に約8%以上である。また、前記欠陥パーセントは、任意選択的に約27.5%以下であり、さらに任意選択的に約25%以下であり、さらに任意選択的に約22.5%以下であり、さらに任意選択的に20%以下であり、さらに任意選択的に約17.5%以下であり、さらに任意選択的に約15%以下であり、さらに任意選択的に約12.5%以下であり、さらに任意選択的に約10%以下である。一実施形態において、前記欠陥パーセントは、約2%から約20%であってもよい。一実施形態において、前記欠陥パーセントは、約5%から約10%であってもよい。
【0055】
式(I)において、1/2≦x:a≦3という関係を満たしてもよい。明確にするために、x:aは、配位子及び欠陥と金属原子との間の割合を表す。Mが二種類以上の金属元素のカチオンである場合、aは、単一の式Iで表される基本単位における全ての金属カチオンの数を表す。
【0056】
式(I)において、0≦b:a≦1という関係を満たしてもよい。金属クラスターMaCbを形成する場合、aとbとの間の割合は、1/4≦b:a≦1を満たしてもよい。
【0057】
本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体において、以上に記載の範囲内の欠陥パーセントを適用することによって、この有機-無機ハイブリッド型錯体に十分な配位子欠陥部位(即ち配位子露出部位)を提供することができる。メカニズムがまだ十分に解明されていないが、本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体が二次電池用セパレータのコーティングに適用される場合、有機配位子極性基と二次電池電解液の溶媒分子との間に分子間水素結合が十分に形成されることによって、セパレータの電解液浸潤性が十分に向上することを保証して、分極を低減するという要求を満たすとともに、セパレータコーティングにおける有機-無機ハイブリッド型錯体の三次元構造の安定性が維持され、二次電池の電池セルの充放電過程において崩壊することがない。なお、以上に記載の範囲内の欠陥パーセントを適用することによって、さらに、二次電池における副反応の発生を抑制し、電池セルのサイクル寿命を延長することができる。
【0058】
本出願において、任意選択的に、欠陥の形成は、有機-無機ハイブリッド型錯体の製造過程において、欠陥を導入する物質を適量に添加することによって形成されてもよい。非限定的な実例として、欠陥を導入する物質は、酸性物質、アルカリ性物質、酸化還元剤又は錯化剤などであってもよい。例えば、液相共沈法によって有機-無機ハイブリッド型錯体を合成する過程において、金属Mを含む塩の溶液を、対応する配位子を含む酸、酸無水物又は塩の溶液に滴下する過程において、他の種類の酸を適量に添加することによって、生成した有機-無機ハイブリッド型錯体に欠陥を導入する。欠陥を導入する物質又は他の原材料の添加量を変えることによって、製造された有機-無機ハイブリッド型錯体の欠陥パーセントを調整して、欠陥パーセントを本出願に規定される範囲内にすることによって、二次電池セパレータの電解質浸潤性を十分に向上させ、電解液保持率を向上させ、分極を低減するとともに、電池のパワー密度及びサイクル寿命を改善することができる。
【0059】
本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体では、式(I)で表される基本単位は、三つの空間方向X’、Y’とZ’のうちの少なくとも一つに沿って周期的に組み立てられてもよく、前記三つの方向X’、Y’とZ’は、それぞれデカルト座標系のX方向、Y方向及びZ方向と0から75度のなす角を成し、任意選択的に5から60度のなす角である。一実施形態において、式(I)で表される基本単位は、デカルト座標系のX方向、Y方向とZ方向のうちの少なくとも一つの空間方向に沿って周期的に組み立てられてもよい。
【0060】
本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体では、式(I)で表される基本単位が少なくとも一つの空間方向に沿って周期的に組み立てられる数は、約3から約10,000であってもよい。
【0061】
他方、本出願は、二次電池セパレータに用いられるコーティング組成物をさらに提供し、このコーティング組成物は、以上に記載の本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体を含んでもよい。
【0062】
本出願のコーティング組成物は、本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体を適切な方式によって接着剤と混合して製造することができる。
【0063】
本出願のコーティング組成物では、コーティング組成物の総重量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の含有量は、約12wt%から約90wt%であってもよい。コーティング組成物の総重量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の含有量は、任意選択的に約17wt%以上であり、さらに任意選択的に約24wt%以上であり、さらに任意選択的に約27wt%以上であり、さらに任意選択的に約34wt%以上である。そして、コーティング組成物の総重量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の含有量は、任意選択的に約90wt%以下であり、さらに任意選択的に約85wt%以下であり、さらに任意選択的に約80wt%以下であり、さらに任意選択的に約75wt%以下であり、さらに任意選択的に約68wt%以下である。一実施形態において、コーティング組成物の総重量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の含有量は、約17wt%から約85wt%であってもよい。一実施形態において、コーティング組成物の総重量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の含有量は、約34wt%から約68wt%であってもよい。
【0064】
任意選択的に、本出願のコーティング組成物は、無機粒子をさらに含んでもよい。例えば、無機粒子はベーマイト、ゼオライト、モレキュラシーブ、アルミナ、オキシ水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン及びそれらの混合物から選択されてもよい。このような場合、有機-無機ハイブリッド型錯体と無機粒子は、粒子形態の間の相補性により、両者がより緊密に結合することができ、有機-無機ハイブリッド型錯体は、浸潤性を向上させるという作用を果たし、電解液保持率を向上させ、且つ電池セルの注液速度を向上させるが、無機粒子は、剛性が安定したセパレータ構造を提供することができ、両者は相乗作用を果たす。
【0065】
本出願のコーティング組成物には無機粒子が含まれる場合、コーティング組成物における有機-無機ハイブリッド型錯体と無機粒子との合計質量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の質量比率は、約15wt%から約85wt%であってもよい。コーティング組成物における有機-無機ハイブリッド型錯体と無機粒子との合計質量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の質量比率は、約20wt%以上であってもよく、さらに任意選択的に約35wt%以上であり、さらに任意選択的に約40wt%以上であり、さらに任意選択的に約55wt%であってもよい。そして、コーティング組成物における有機-無機ハイブリッド型錯体と無機粒子との合計質量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の質量比率は、約80wt%以下であってもよく、任意選択的に約75wt%以下であり、さらに任意選択的に約65wt%以下であり、さらに任意選択的に約60wt%以下である。一実施形態において、コーティング組成物における有機-無機ハイブリッド型錯体と無機粒子との合計質量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の質量比率は、約20wt%から約80wt%であってもよい。一実施形態において、コーティング組成物における有機-無機ハイブリッド型錯体と無機粒子との合計質量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の質量比率は、約40wt%から約80wt%であってもよい。一実施形態において、コーティング組成物における有機-無機ハイブリッド型錯体と無機粒子との合計質量に対して、有機-無機ハイブリッド型錯体の質量比率は、約40wt%から約60wt%であってもよい。
【0066】
任意選択的に、本出願のコーティング組成物は、一つ又は複数の添加剤をさらに含んでもよく、例えば、接着剤、安定剤、湿潤剤、消泡剤、レオロジー改質剤、pH調整剤のうちの一つ又は複数の成分から選択されてもよい。
【0067】
非限定的な実例として、コーティング組成物における接着剤は、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸-アクリル酸エステル-アクリロニトリルポリマー又はそれらの混合物であってもよい。
【0068】
非限定的な実例として、コーティング組成物における安定剤は、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はそれらの混合物であってもよい。
【0069】
非限定的な実例として、コーティング組成物における湿潤剤は、ポリオキシビニルエーテル、ポリエーテルシリコーンコポリマー、ポリオキシエチレンアルカノールアミド又はそれらの混合物であってもよい。
【0070】
非限定的な実例として、コーティング組成物における消泡剤は、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリジメチルシロキサン又はそれらの混合物であってもよい。
【0071】
非限定的な実例として、コーティング組成物におけるレオロジー改質剤は、エタノール、プロピレングリコールとプロピレントリオール又はそれらの混合物であってもよい。
【0072】
非限定的な実例として、コーティング組成物におけるpH調整剤は、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸リチウム、リン酸二水素リチウム又はそれらの混合物であってもよい。
【0073】
他方、本出願は、二次電池用セパレータをさらに提供する。本出願の二次電池用セパレータは、ポリマー基材層と基材層上に塗布されるコーティングとを含み、ここでは、コーティングは、以上に記載の本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体又は以上に記載の本出願のコーティング組成物を含んでもよい。
【0074】
本出願は、二次電池をさらに提供し、この二次電池は、正極と、負極と、電解質と、以上に記載の本出願の二次電池用セパレータとを含む。
【0075】
本出願は、電池モジュールをさらに提供し、それは以上に記載の本出願の二次電池を含む。
【0076】
本出願は、電池パックをさらに提供し、それは以上に記載の本出願の電池モジュールを含む。
【0077】
本出願は、電力消費装置をさらに提供し、それは以上に記載の本出願の二次電池、又は以上に記載の本出願の電池モジュール、又は以上に記載の本出願の電池パック、又はそれらの組み合わせを含む。
【0078】
本出願の二次電池において、セパレータのコーティングに本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体を適用することにより、セパレータの電解液浸潤性が著しく改善されるとともに、電解液保持率が大幅に向上することによって、分極を低減し、最終的に二次電池のパワー密度とサイクル寿命は著しく改善される。
【0079】
以下は、本出願の二次電池、電池モジュール、電池パックと装置について、図面を適宜参照して説明する。
【0080】
本出願の一実施形態において、二次電池を提供する。
【0081】
通常、二次電池は、正極板と、負極板と、電解質とセパレータとを含む。電池の充放電過程において、活性イオンは、正極板と負極板との間で往復して吸蔵及び放出される。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導するという作用を果たす。セパレータは、正極板と負極板との間に設置され、主に正負極の短絡を防止するという作用を果たすとともに、イオンを通過させることができる。
【0082】
[正極板]
正極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設置される正極膜層とを含み、正極膜層は、正極活物質を含み、正極活物質は、コバルト酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム、ニッケルマンガンアルミン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸コバルトリチウム、リン酸マンガンリチウム、ケイ酸鉄リチウム、ケイ酸バナジウムリチウム、ケイ酸コバルトリチウム、ケイ酸マンガンリチウム、スピネル型マンガン酸リチウム、スピネル型ニッケルマンガン酸リチウム、チタン酸リチウムなどを含むが、それらに限られない。正極活物質は、これらのうちの一つ又は複数を使用してもよい。
【0083】
例として、正極集電体は、その自体厚さ方向で対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一つ又は両方に設置されている。
【0084】
本出願の二次電池において、正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基材と、高分子材料基材の少なくとも一つの表面に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することによって形成されることができる。
【0085】
正極膜層は、任意選択的に導電剤をさらに含む。しかし、導電剤の種類に対して具体的に限定せず、当業者は実際の需要に応じて選択することができる。例として、正極膜層に用いられる導電剤は、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一つ以上から選択されてもよい。
【0086】
本出願において、当分野で既知の方法で正極板を製造することができる。例として、本出願の正極活物質、導電剤と接着剤を溶媒(例えば、N-メチルピロリドン(NMP))に分散させて、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥、冷間プレスなどのプロセスを経て、正極板を得ることができる。
【0087】
[負極板]
負極板は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面に設置される負極膜層とを含み、負極膜層は、負極活物質を含む。
【0088】
本出願の二次電池において、前記負極活物質は、当分野でよく使われる、二次電池負極を製造するための負極活物質を、負極活物質として使用することができ、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素系材料、錫系材料とチタン酸リチウムなどが挙げられる。ケイ素系材料は、ケイ素単体、ケイ素酸化物(例えば、亜酸化ケイ素)、ケイ素炭素複合体、ケイ素窒素複合体及びケイ素合金のうちの一つ以上から選択されてもよい。スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物及びスズ合金のうちの一つ以上から選択されてもよい。
【0089】
例として、負極集電体は、その自体厚さ方向で対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一つ又は両方に設置されている。
【0090】
本出願の二次電池において、負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基材と、高分子材料基材の少なくとも一つの表面に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することによって形成されることができる。
【0091】
本出願の二次電池において、負極膜層は、通常、負極活物質と、選択的な接着剤と、選択的な導電剤と、他の選択的な助剤とを含み、通常、負極スラリーを塗布し乾燥して形成される。負極スラリーは、通常、負極活物質及び選択的な導電剤と接着剤などを溶媒に分散させ、且つ均一に撹拌して形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよい。
【0092】
例として、導電剤は、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一つ以上から選択されてもよい。
【0093】
例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの一つ以上から選択されてもよい。
【0094】
他の選択的な助剤は、例えば、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などである。
【0095】
いくつかの実施形態において、正極板、負極板とセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリを製造することができる。
【0096】
[電解質]
本出願の実施例は、電解質の種類に対して具体的に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体又は液体であってもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、電解質は、液体であり、且つ通常、電解質塩と溶媒とを含む。
【0098】
例として、電解質は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、リチウムビスフルオロスルホンイミド(LiFSI)、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOP)及びリチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート(LiTFOP)のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0099】
例として、溶媒は、炭酸フルオロエチレン(FEC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸メチルエチル(EMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジフェニル(DPC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、炭酸エチルプロピル(EPC)、炭酸フルオロエチレン(BC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、ギ酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0100】
いくつかの実施形態において、電解質は、さらに任意選択的に、添加剤を含む。例えば、電解質は、負極成膜添加剤と、正極成膜添加剤と、電池の過充電性能を改善する添加剤と、電池の高温性能を改善する添加剤と、電池の低温性能を改善する添加剤などとを含んでもよい。
【0101】
[セパレータ]
セパレータは、正極板と負極板を隔離し、電池内部での短絡を防止するとともに、活性イオンがセパレータを通して正負極の間で移動できるようにする。本出願の二次電池において、上記作用を果たすセパレータとして、ポリマー基材層と基材層上に塗布されるコーティングを含む以上に記載の本出願の二次電池用セパレータを使用する。前記セパレータにおいて、コーティングは、以上に記載の本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体又は以上に記載の本出願のコーティング組成物を含んでもよい。
【0102】
本出願は、ポリマー基材層の種類に対して特に限定せず、良好な化学的安定性と機械的安定性を有する任意の公知のポリマー基材層を使用することができる。いくつかの実施形態において、任意の公知の二次電池に用いられる多孔構造膜を本出願の二次電池用セパレータの基材層として使用することができる。例えば、基材層は、ガラス繊維薄膜、不織布薄膜、ポリエチレン(PE)薄膜、ポリプロピレン(PP)薄膜、ポリフッ化ビニリデン薄膜、及びそれらのうちの一つ又は二つ以上を含む多層複合薄膜のうちの一つ又は複数から選択されてもよい。いくつかの実施形態において、当分野で一般的なポリオレフィン微細孔膜を、本出願の二次電池用セパレータの基材層として使用することができる。非限定的な実例として、ポリオレフィン微細孔膜は、ポリエチレン(PE)単層膜、ポリプロピレン(PP)単層膜及びPPとPEを複合したPP/PE/PP多層微細孔膜であってもよい。例えば、厚度が約20μmであり、平均孔径が約80nmであるPP-PEポリマー微細孔薄膜を、本出願の二次電池用セパレータの基材層として使用することができる。
【0103】
当分野で一般的な方法により、本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体又は本出願のコーティング組成物をポリマー基材層に適用することによって、基材層上に塗布されるコーティングを形成することができる。例えば、一般的な塗布方法、例えば、スクラッチコート法によって、本出願の有機-無機ハイブリッド型錯体又は本出願のコーティング組成物を含むスラリーを、二次電池用セパレータの基材層の少なくとも一つの表面に塗布して、表面にウェットコーティングを形成することができる。前記スラリーの固体含有量は、約5%から約10%、例えば約9%であってもよい。ウェットコーティングを乾燥した後、セパレータの少なくとも一つの表面にコーティングが形成される。コーティングの厚さは、約1~8μm、例えば、約5μmであってもよい。
【0104】
いくつかの実施形態において、二次電池は、リチウムイオン二次電池であってもよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、正極板、負極板とセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリを製造することができる。
【0106】
いくつかの実施形態において、二次電池は、外装を含んでもよい。この外包装は、以上に記載の電極アセンブリ及び電解液をパッケージすることに用いられてもよい。
【0107】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質ケースであってもよく、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどである。二次電池の外装は軟質バッグであってもよく、例えば、袋式軟質バッグである。パウチの材質はプラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などを挙げることができる。
【0108】
本出願は、二次電池の形状に対して特に限定せず、それは円筒形、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図1は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0109】
いくつかの実施形態において、
図2を参照すると、外装は、ケース51と蓋板53とを含んでもよい。ここでは、ケース51は、底板と、底板上に接続される側板とを含んでもよく、底板と側板は、囲んで収容室を形成する。ケース51は、収容室と連通する開口部を有し、蓋板53は、開口部を遮蔽して収容室を塞ぐことができる。正極板、負極板とセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、収容室内にパッケージされる。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤されている。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者は具体的な実際の需求に応じて選択することができる。
【0110】
いくつかの実施形態において、二次電池は、電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者により電池モジュールの用途と容量に基づいて選択することができる。
【0111】
図3は一例としての電池モジュール4である。
図3を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順次配列して設置されてもよい。もちろん、他の任意の方式で配置してもよい。さらに、締結具によってこの複数の二次電池5を固定してもよい。
【0112】
任意選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は、この収容空間に収容される。
【0113】
いくつかの実施形態において、前記電池モジュールは、さらに電池パックに組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、当業者により電池パックの用途と容量に基づいて選択することができる。
【0114】
図4と
図5は、一例としての電池パック1である。
図4と
図5を参照すると、電池パック1は、電池箱及び電池箱内に設置される複数の電池モジュール4を含んでもよい。電池箱は、上部筺体2と下部筺体3とを含み、上部筺体2は下部筺体3を遮蔽し、且つ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池箱内に配置されてもよい。
【0115】
また、本出願は、装置をさらに提供し、装置は、本出願による二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの一つ以上を含む。二次電池、電池モジュール又は電池パックは、装置の電源として使用されてもよく、装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用されてもよい。装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電気自動車(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電気スクーター、電気ゴルフカート、電気トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、それらに限られない。
【0116】
電力消費装置として、その使用上の需要に応じて、二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0117】
図6は、一例としての電力消費装置である。該装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置が二次電池に対する高パワーと高エネルギー密度の需求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用してもよい。
【0118】
別の例としての電力消費装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、通常、軽量化や薄型化を要求し、二次電池を電源として採用することができる。
【0119】
本出願の上記発明の内容は、本出願における各開示された実施形態又は各実現方式を記述することを意図していない。以下の記述は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願全体の複数の箇所で、様々な組み合わせの形式で使用できる一連の実施形態によって指導を提供した。各具体例において、代表的なグループのみを挙げており、網羅的なものとして解釈されるべきではない。
【0120】
以下の製造例、実施例と適用例において、具体的な条件が明記されていない場合、説明されたステップが一般的な条件又はメーカーが提案した条件に従って行われることを意味する。使用する試薬又は計器は、メーカーが明記されていない場合、いずれも市販として入手可能で一般的な製品である。
【0121】
有機-無機ハイブリッド型錯体の製造
要約すると、本出願の有機-無機ハイブリッド型複合化合物は、液相共沈法によって製造することができる。対応する配位子Lを含む酸、酸無水物又は塩、及び対応する金属M又は金属クラスターMaCbを含む塩を、水又はアンモニア水、エタノール、メタノール、DMFなどの極性を有する溶媒の中で撹拌混合し、室温から150℃の温度で反応させ、且つ欠陥を導入する物質を添加し、例えば、酸性物質、アルカリ性物質、酸化還元剤などである。反応が完了した後、反応混合物を約1~48時間エージングさせる。その後、吸引濾過によって固体生成物を回収する。回収された固体生成物を約140℃~約160℃の温度で約8~12時間活性化して、最終的な有機-無機ハイブリッド型錯体生成物を得る。
【0122】
製造例1
等モルのFeCl2(127g)とNa4Fe(CN)6(304g)を原料として秤量する。前記二つの原料をそれぞれ10Lの脱イオン水に添加して、0.1M FeCl2溶液と0.1M Na4Fe(CN)6溶液を調製する。二つの溶液をそれぞれ約80℃に加熱し、且つこの温度を維持する。FeCl2溶液を約1mL/minの速度でNa4Fe(CN)6溶液に滴下して、共沈反応を発生させて沈澱物を得る。滴下の過程において酸性物質の希塩酸(純HCl換算質量で3.5g)を一度に注入することによって、配位子欠陥を導入する。反応が完了した後、反応混合物を約80℃で約24時間エージングさせる。その後、吸引濾過によって固体生成物を回収する。次いで、回收した固体生成物を約150℃の温度で約10時間活性化する。最終的に、固体生成物133gを得る。
【0123】
得られた固体生成物を特徴付けて、最終的な有機-無機ハイブリッド型複合化合物の基本単位の化学式を決定する。具体的には、得られた固体生成物を検体として150℃で真空乾燥して、吸着している水分不純物を除去する。そして、サンプルに対してICP試験(SPECTRO BLUE、SPECTRO Analytical Instruments GmbHより)を行い、FeとNaの含有率がそれぞれ37.76%と11.97%であると決定する。また、炭素硫黄試験(炭素硫黄分析計、CS844、LECO Corporationより)及び元素分析試験(Elemental analysis)(Vario EL III、Elementar Analysensysteme GmbHより)によって、CとNの含有率がそれぞれ22.93%と26.75%であると決定する。以上の試験によって、生成物の実験式が(CN)2.79Fe・Na0.76であると決定する。対応する無欠陥製品の理論式は、元素価数決定及びin situ冷電界放出銃双球面収差補正透過型電子顕微鏡(Talos F200i、Thermo Fisher Scientific Inc.より)の観測によって、(CN)3Fe・Naであると決定する。以上の結果より、本製造例において実際に得られた有機-無機ハイブリッド型錯体は、[(CN)2.79□0.21]Fe・Na0.76で表される基本単位を有することが分かった。本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは7.0%である。
【0124】
得られた有機-無機ハイブリッド型錯体材料に対して走査電子顕微鏡(SEM)特徴付け(Sigma300、Carl-Zeiss Jena GmbHより)を行う。得られたSEM写真を
図7に示している。
【0125】
製造例2
製造例1と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、製造過程に添加された希塩酸の質量が純HCl換算で0.6gであることのみである。最終的に、固体生成物141gを得る。
【0126】
製造例1と同じ特徴付け方法によって、本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体が[(CN)2.97□0.03]Fe・Na0.95で表される基本単位を有すると決定する。本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは1.0%である。
【0127】
製造例3
製造例1と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、製造過程に添加された希塩酸の質量が純HCl換算で2.8gであることのみである。最終的に、固体生成物139gを得る。
【0128】
製造例1と同じ特徴付け方法によって、本実施例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体が[(CN)2.925□0.075]Fe・Na0.90で表される基本単位を有すると決定する。本実施例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは2.5%である。
【0129】
製造例4
製造例1と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、製造過程に添加された希塩酸の質量が純HCl換算で9.7gであることのみである。最終的に、固体生成物118gを得る。
【0130】
製造例1と同じ特徴付け方法によって、本実施例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体が[(CN)2.46□0.54]Fe・Na0.42で表される基本単位を有すると決定する。本実施例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは18.0%である。
【0131】
製造例5
製造例1と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、製造過程に添加された希塩酸の質量が純HCl換算で13.2gであることのみである。最終的に、固体生成物108gを得る。
【0132】
製造例1と同じ特徴付け方法によって、本実施例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体が[(CN)2.25□0.75]Fe・Na0.2で表される基本単位を有すると決定する。本実施例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは25.0%である。
【0133】
製造例6
製造例1と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、製造例1における0.1M FeCl2溶液と0.1M Na4Fe(CN)6溶液の代わりに、10のL脱イオン水において0.1M MnCl2溶液と0.1M Na4Mn(CN)6溶液をそれぞれ調製して、共沈反応を行うとともに、製造過程に希塩酸を添加せず、O2を継続的に流すことによって配位子欠陥を導入することのみである。O2流束は1.7*溶液総体積/時間である。最終的に、固体生成物132gを得る。
【0134】
製造例1に類似した試験方法によって、生成物の実験式が(CN)2.79Mn・Na0.76であると決定する。また、製造例1に類似した方法によって、対応する無欠陥製品の理論式は(CN)3Mn・Naとして決定された。以上の結果より、本製造例において実際に得られた有機-無機ハイブリッド型錯体は、[(CN)2.79□0.21]Mn・Na0.76で表される基本単位を有することが分かった。本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは7.0%である。
【0135】
製造例7
製造例6と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、製造例6における0.1M MnCl2溶液と0.1M Na4Mn(CN)6溶液の代わりに、10Lの脱イオン水において0.1M CoCl2溶液と0.1M Na4Co(CN)6溶液をそれぞれ調製して、共沈反応を行うことのみである。最終的に、固体生成物136gを得る。
【0136】
製造例1に類似した試験方法によって、生成物の実験式が(CN)2.79Co・Na0.76であると決定する。また、製造例1に類似した方法によって、対応する無欠陥製品の理論式は(CN)3Co・Naとして決定された。以上の結果より、本製造例において実際に得られた有機-無機ハイブリッド型錯体は、[(CN)2.79□0.21]Co・Na0.76で表される基本単位を有することが分かった。本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは7.0%である。
【0137】
製造例8
製造例6と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、実施例6における0.1M MnCl2溶液と0.1M Na4Mn(CN)6溶液の代わりに、10Lの脱イオン水において0.1M MnCl2溶液と0.1M Na4Fe(CN)6溶液をそれぞれ調製して、共沈反応を行うことのみである。最終的に、固体生成物136gを得る。
【0138】
製造例1に類似した試験方法によって、生成物の実験式が(CN)2.79[Fe0.5Mn0.5]・Na0.76であると決定する。また、製造例1に類似した方法によって、対応する無欠陥製品の理論式は(CN)3[Fe0.5Mn0.5]・Naとして決定された。以上の結果より、本製造例において実際に得られた有機-無機ハイブリッド型錯体は、[(CN)2.79□0.21][Fe0.5Mn0.5]・Na0.76で表される基本単位を有することが分かった。本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは7.0%である。
【0139】
製造例9
製造例1と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、Co(NO3)2と5-クロロベンズイミダゾールを原料として使用し、且つ製造例1で使用した脱イオン水の代わりに、H2OとDMFとの混合溶媒(1:1)10Lを使用し、製造例1における0.1M FeCl2溶液と0.1M Na4Fe(CN)6溶液の代わりに、0.1M Co(NO3)2溶液と0.2M 5-クロロベンズイミダゾール溶液をそれぞれ調製して、共沈反応を行うとともに、製造過程に希塩酸を添加せず、質量が3.3gであるNaOHを添加することによって配位子欠陥を導入することのみである。最終的に、固体生成物293gを得る。
【0140】
製造例1に類似した試験方法によって、生成物の実験式が(cbIm)1.86Coであると決定する。また、製造例1に類似した方法によって、対応する無欠陥製品の理論式は(cbIm)2Coとして決定された。以上の結果より、本製造例において実際に得られた有機-無機ハイブリッド型錯体は、[(cbIm)1.86□0.14]Coで表される基本単位を有することが分かった。本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは7.0%である。
【0141】
製造例10
製造例9と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、製造過程に添加されたNaOHの質量が0.6gであることのみである。最終的に、固体生成物309gを得る。
【0142】
製造例9に類似した特徴付け方法によって、本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体が[(cbIm)1.98□0.02]Coで表される基本単位を有すると決定する。本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは1.0%である。
【0143】
製造例11
製造例9と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、製造過程に添加されたNaOHの質量が1.2gであることのみである。最終的に、固体生成物305gを得る。
【0144】
製造例9に類似した特徴付け方法によって、本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体が[(cbIm)1.95□0.05]Coで表される基本単位を有すると決定する。本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは2.5%である。
【0145】
製造例12
製造例9と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、製造過程に添加されたNaOHの質量が4.5gであることのみである。最終的に、固体生成物265gを得る。
【0146】
製造例9に類似した特徴付け方法によって、本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体が[(cbIm)1.64□0.36]Coで表される基本単位を有すると決定する。本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは18%である。
【0147】
製造例13
製造例9と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、製造過程に添加されたNaOHの質量が8.4gであることのみである。最終的に、固体生成物246gを得る。
【0148】
製造例9に類似した特徴付け方法によって、本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体が[(cbIm)1.50□0.50]Coで表される基本単位を有すると決定する。本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは25%である。
【0149】
製造例14
製造例1と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、使用する原料がトリメシン酸三カリウム塩、トリメシン酸とCu(NO3)2であり、且つ製造例1で使用した脱イオン水の代わりに、H2OとEtOHとの混合溶媒(1:1)10Lを使用し、0.05Mトリメシン酸三カリウム塩溶液、0.25Mトリメシン酸溶液、0.45M Cu(NO3)2溶液をそれぞれ順次調製して一つずつ混合するとともに、製造過程に添加された希塩酸の質量が純HCl換算で3.7gであることのみである。最終的に、固体生成物758gを得る。
【0150】
製造例1に類似した試験方法によって、生成物の実験式が(BTC)1.86Cu3・Kであると決定する。また、製造例1に類似した方法によって、対応する無欠陥製品の理論式は(BTC)2Cu3・Kとして決定された。以上の結果より、本製造例において実際に得られた有機-無機ハイブリッド型錯体は、[(BTC)1.86□0.14]Cu3・Kで表される基本単位を有することが分かった。本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは7.0%である。
【0151】
製造例15
製造例1と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、使用する原料がテレフタル酸一リチウム塩、テレフタル酸、Fe(ClO4)3とHFであり、且つ製造例1で使用した脱イオン水の代わりに、H2OとEtOHとの混合溶媒(1:1)10Lを使用し、0.05Mテレフタル酸一リチウム塩溶液、0.05Mテレフタル酸溶液、0.1M Fe(ClO4)3溶液と0.02M HF溶液をそれぞれ順次調製し且つ溶液に一つずつ混合するとともに、製造過程に添加された希塩酸の質量が純HCl換算で3.7gであることのみである。最終的に、固体生成物188gを得る。
【0152】
製造例1に類似した試験方法によって、生成物の実験式が(BDC)0.93[Fe(OH)0.8F0.2]・Li0.5であると決定する。また、製造例1に類似した方法によって、対応する無欠陥製品の理論式は(BDC)[Fe(OH)0.8F0.2]・Li0.5として決定された。以上の結果より、本製造例において実際に得られた有機-無機ハイブリッド型錯体は[(BDC)0.93□0.07][Fe(OH)0.8F0.2]・Li0.5で表される基本単位を有することが分かった。本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは7.0%である。
【0153】
製造例16
製造例1と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、使用する原料がマグネシウムトリス(2-ベンズイミダゾールメチル)アミン(Mg3(NTB)2)、トリス(2-ベンズイミダゾールメチル)アミンとZn(NO3)2であり、製造例1で使用した脱イオン水の代わりに、H2OとEtOHとの混合溶媒(1:1)10Lを使用し、0.002Mマグネシウムトリス(2-ベンズイミダゾールメチル)アミン(Mg3(NTB)2)溶液、0.112Mトリス(2-ベンズイミダゾールメチル)アミン溶液、0.24M Zn(NO3)2溶液をそれぞれ順次調製し、一つずつ混合するとともに、製造過程に添加された希塩酸の質量が純HCl換算で3.7gであることのみである。最終的に、固体生成物519gを得る。
【0154】
製造例1に類似した試験方法によって、生成物の実験式が(NTB)1.86[Zn4O]・Mg0.1であると決定する。また、製造例1に類似した方法によって、対応する無欠陥製品の理論式は(NTB)2[Zn4O]・Mg0.1として決定された。以上の結果より、本製造例において実際に得られた有機-無機ハイブリッド型錯体は[(NTB)1.86□0.14][Zn4O]・Mg0.1で表される基本単位を有することが分かった。本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは7.0%である。
【0155】
比較製造例1
一般的な方法に従って、無欠陥の有機-無機ハイブリッド型錯体(CN)3Fe・Naを製造する。具体的には、等モルのFeCl2(127g)とNa4Fe(CN)6(304g)を原料として秤量する。前記二つの原料をそれぞれ10Lの脱イオン水に添加して、0.1M FeCl2溶液と0.1M Na4Fe(CN)6溶液を調製する。二つの溶液をそれぞれ約80℃に加熱し、且つこの温度を維持する。FeCl2溶液を約1mL/minの速度でNa4Fe(CN)6溶液に滴下して、共沈反応を発生させて沈澱物を得る。反応が完了した後、反応混合物を約80℃で約24時間エージングさせる。その後、吸引濾過によって固体生成物を回収する。次いで、回收した固体生成物を約150℃の温度で約10時間活性化する。最終的に、固体生成物146gを得る。
【0156】
本比較製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体には欠陥が存在せず、即ち、欠陥パーセントは0である。
【0157】
比較製造例2
製造例1と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、製造過程に添加された希塩酸の質量が純HCl換算で0.3gであることのみである。最終的に、固体生成物145gを得る。
【0158】
製造例1と同じ特徴付け方法によって、本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体が[(CN)2.985□0.015]Fe・Na0.99で表される基本単位を有すると決定する。本比較製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは0.5%である。
【0159】
比較製造例3
製造例1と基本的に同じ製造方法で有機-無機ハイブリッド型錯体を製造し、異なる点は、製造過程に添加された希塩酸の質量が純HCl換算で23.1gであることのみである。最終的に、固体生成物97gを得る。
【0160】
製造例1と同じ特徴付け方法によって、本製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体が[(CN)1.8□1.2]Fe・Na0.1で表される基本単位を有すると決定する。本比較製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体において、欠陥パーセントは40.0%である。
【0161】
比較製造例4
比較製造例1と基本的に同じ方法で、一般的な製造方法に従って無欠陥の有機-無機ハイブリッド型錯体(cbIm)2Coを製造し、異なる点は、使用する原料がCo(NO3)2と5-クロロベンズイミダゾールであり、且つ比較製造例1で使用した脱イオン水の代わりに、H2OとDMFとの混合溶媒(1:1)10Lを使用し、比較製造例1における0.1M FeCl2溶液と0.1M Na4Fe(CN)6溶液の代わりに、0.1M Co(NO3)2溶液と0.2M 5-クロロベンズイミダゾール溶液をそれぞれ調製して、共沈反応に使用することである。最終的に、固体生成物326gを得る。
【0162】
本比較製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体には欠陥が存在せず、即ち、欠陥パーセントは0である。
【0163】
比較製造例5
比較製造例1と基本的に同じ方法で、一般的な製造方法に従って無欠陥の有機-無機ハイブリッド型錯体(BTC)2Cu3・Kを製造し、異なる点は、使用する原料がトリメシン酸三カリウム塩、トリメシン酸とCu(NO3)2であり、且つ製造例1で使用した脱イオン水の代わりに、H2OとEtOHとの混合溶媒(1:1)10Lを使用し、0.05Mトリメシン酸三カリウム塩溶液、0.25Mトリメシン酸溶液、0.45M Cu(NO3)2溶液をそれぞれ順次調製し、一つずつ混合することのみである。最終的に、固体生成物832gを得る。
【0164】
本比較製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体には欠陥が存在せず、即ち、欠陥パーセントは0である。
【0165】
比較製造例6
比較製造例1と基本的に同じ方法で、一般的な製造方法に従って無欠陥の有機-無機ハイブリッド型錯体(BDC)[Fe(OH)0.8F0.2]・Li0.5を製造し、異なる点は、使用する原料がテレフタル酸一リチウム塩、テレフタル酸、Fe(ClO4)3とHFであり、且つ製造例1で使用した脱イオン水の代わりに、H2OとEtOHとの混合溶媒(1:1)10Lを使用し、0.05Mテレフタル酸一リチウム塩溶液、0.05Mテレフタル酸溶液、0.1M Fe(ClO4)3溶液と0.02M HF溶液をそれぞれ順次調製し且つ溶液に一つずつ混合することのみである。最終的に、固体生成物205gを得る。
【0166】
本比較製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体には欠陥が存在せず、即ち、欠陥パーセントは0である。
【0167】
比較製造例7
比較製造例1と基本的に同じ方法で、一般的な製造方法に従って無欠陥の有機-無機ハイブリッド型錯体(NTB)2[Zn4O]・Mg0.1を製造し、異なる点は、使用する原料がマグネシウムトリス(2-ベンズイミダゾールメチル)アミン(Mg3(NTB)2)、トリス(2-ベンズイミダゾールメチル)アミンとZn(NO3)2であり、製造例1で使用した脱イオン水の代わりに、H2OとEtOHとの混合溶媒(1:1)10Lを使用し、0.002Mマグネシウムトリス(2-ベンズイミダゾールメチル)アミン(Mg3(NTB)2)溶液、0.112Mトリス(2-ベンズイミダゾールメチル)アミン溶液、0.24M Zn(NO3)2溶液をそれぞれ順次調製し、一つずつ混合することのみである。最終的に、固体生成物567gを得る。
【0168】
本比較製造例で製造された有機-無機ハイブリッド型錯体には欠陥が存在せず、即ち、欠陥パーセントは0である。
【0169】
セパレータの製造
実施例1
厚さが20μmであり、平均孔径が80nmである市販のPP-PEポリマー微細孔薄膜(卓高電子科技会社より、型番20)を基材層として使用する。以上の製造例1で製造された有機-無機ハイブリッド型複合化合物を原料として使用し、市販の接着剤であるポリアクリル酸メチル(湖北諾納有限会社より、CAS:9003-21-8)、市販の接着剤であるアクリル酸-アクリル酸エステル-アクリロニトリルポリマー(湖北諾納有限会社より、CAS:25686-45-7)、市販の安定剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(化学的に純粋、上海長光企業発展有限会社より、CAS:9004-32-4)、市販の湿潤剤であるポリオキシビニルエーテル(湖北諾納有限会社より、CAS:27252-80-8)と85:6:3:3:3の質量比で均一に混合する。混合するとともに水を加え、固体含有量が約9%であるスラリーを形成する。スクラッチコート法でスラリーを基材層の二つの表面に塗布し、二つの表面においてそれぞれ厚さが約30μmであるウェットコーティングを形成する。前記ウェットコーティングを有する基材層をオープンに移し、約80℃の温度で約60分間乾燥し、コーティング厚さが約5μmであるセパレータを得る。
【0170】
得られたコーティングを有するセパレータに対して走査電子顕微鏡(SEM)特徴付け(Sigma300、Carl-Zeiss Jena GmbHより)を行う。得られたSEM写真は
図8に示されている。
【0171】
実施例2~16と比較例1~7
実施例1と基本的に同じ方法によって、実施例2~16と比較例1~7においてセパレータを製造し、異なる点は、実施例1で使用した有機-無機ハイブリッド型複合化合物の代わりに、製造例2~16と比較製造例1~7で製造された有機-無機ハイブリッド型複合化合物をそれぞれ使用することのみである。
【0172】
実施例17
実施例1と基本的に同じ方法によって、コーティングセパレータを製造し、異なる点は、一定の重量割合の有機-無機ハイブリッド型複合化合物の代わりに、市販のアルミナ(山東碩創化工科技有限会社より)を使用し、有機-無機ハイブリッド型複合化合物とアルミナとの重量比を4:1にすることのみである。
【0173】
実施例18~20
実施例17と基本的に同じ方法によって、実施例18~20においてセパレータを製造し、異なる点は、実施例18~20において有機-無機ハイブリッド型複合化合物とアルミナとの重量比がそれぞれ3:2、2:3と1:4であることのみである。
【0174】
対照例1
厚さが20μmであり、平均孔径が80nmである市販のPP-PEポリマー微細孔薄膜(卓高電子科技会社より)をセパレータ(PP-PEベアフィルム)として直接使用する。
【0175】
対照例2
実施例1と基本的に同じ方法によって、セパレータを製造し、異なる点は、実施例1で使用した有機-無機ハイブリッド型複合化合物を全て同じ重量のアルミナで代替することのみである。
【0176】
電池セルの製造
適用例1
活物質であるNa0.9Fe0.5Mn0.5O2、導電剤であるアセチレンブラック(Denka Black、日本電化株式会社より)、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(HSV 900、Arkema Groupより)を、94:3:3の重量比でN-メチルピロリドン溶媒系において十分に撹拌して、均一に混合し、固体含有量が30%であるスラリーを得る。このスラリーを使用して、転写塗工法によって、厚さが12μmであるAl箔の一方側に、厚さが250μmであるウェットコーティングを形成する。そして前記ウェットコーティングを有するAl箔をオープンに移し、150℃の温度で60分間乾燥し、そしてロールプレス機を使用して60トンの圧力で冷間プレスを行い、正極板を得て、ここでは、Al箔の一方側における乾燥コーティングの厚さは130μmである。
【0177】
活物質であるハードカーボン、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるスチレンブタジエンゴム、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウムを、95:2:2:1の割合の重量比で脱イオン水溶媒において十分に撹拌して、均一に混合し、固体含有量が15%であるスラリーを得る。ドクターブレード法によって、このスラリーを厚さが12μmであるAl箔の一方側に塗布し、厚さが120μmであるウェットコーティングを形成する。そして、前記ウェットコーティングを有するAl箔をオープンに移し、150℃の温度で60分間乾燥し、そして冷間プレス机を使用して50トンの圧力で冷間プレスを行い、負極板を得て、ここでは、Al箔における乾燥コーティングの厚さは60μmである。
【0178】
前記正極板、実施例1で得られたセパレータと前記負極板を順次巻回し、寸法が16cm×10cm×2.8cmである巻回積層構造のベア電池セルを形成する。このペア電池セルをスチールケースに入れ、150gの電解液を注入し且つパッケージし、電池セルを得る。前記電解液は、組成が1M NaPF6である炭酸プロピレン溶液である。
【0179】
適用例2~20、比較適用例1~7及び対照適用例1と2
適用例1と基本的に同じ方法によって、適用例2~20、比較適用例1~7及び対照適用例1と2において電池セルを製造し、異なる点は、適用例1で使用したセパレータの代わりに、実施例2~20、比較例1~7及び対照例1と2におけるセパレータをそれぞれ使用することのみである。
【0180】
性能試験
以下の性能試験によって、実施例1~20、比較例1~7及び対照例1と2で製造されたセパレータ及び適用例1~20、比較適用例1~7及び対照適用例1と2で製造された電池セルを評価する。
【0181】
試験例1
本試験例において、各セパレータの電解液浸潤性を評価する。具体的には、電解質付きのプロトン型親水性電解液(1M NaPF6の炭酸エチレン(EC):炭酸メチルエチル(EMC)=1/1 W/W溶液)1滴(約0.05mL)を水平に置かれたセパレータに滴下する。5分間後に、格子法で電解液浸潤の近似面積を統計する。具体的には、格子法の測定方法は以下のとおりである。5分間後にセパレータの上面を真上から撮影し、そしてその写真において電解液浸潤跡が現れる面積の全てを面積が0.01cm2である格子で覆い、画像において電解液浸潤跡に完全に占められる格子を「完全浸潤」と記し、電解液浸潤面積が半分以上である格子も「完全浸潤」と記すが、電解液浸潤が半分未満である格子を「未浸潤」と記す。最終的に、セパレータの電解液浸潤性は、完全浸潤格子の数×0.01に等しく、cm2を単位として表す。
【0182】
例として、対照例1、比較例1と実施例1のセパレータに対して電解液浸潤性試験を行う時、得られた写真はそれぞれ
図9a、9bと9cに示されている。
図9a、9bと9cにおいて、「完全浸潤」格子の数がそれぞれ43、272と400であることから、対照例1、比較例1と実施例1のセパレータの電解液浸潤性はそれぞれ0.43cm
2、2.72cm
2と4.00cm
2であることが分かる。
【0183】
試験例2
本試験例において、各セパレータの電解液保持率を評価する。具体的には、寸法が10cm×10cm×25μmであるセパレータ(対照例1のセパレータ表面にコーティングが形成されていないため、その厚さは20μmである)を取り、このセパレータの乾燥重量W0を秤量する。そして、このセパレータを電解液に10時間浸漬した後、密閉容器内に1時間静置し、セパレータ内の電解液を飽和させ、そしてこのセパレータの湿重量Wを秤量する。以下の式に基づいてその電解液保持率を計算する。
【0184】
電解液保持率=[(W-W0)/W0]×100%
これによって得られた電解液保持率は、セパレータにおける電解液収容の容量を特徴付けただけでなく、電解液に対するセパレータの保持能力を具現化したことがわかる。
【0185】
試験例1と2の評価結果は表1にまとめられている。表1には、各セパレータに使用されたコーティングの基本単位の化学式及び欠陥パーセントが示されている。
【0186】
【0187】
試験例3
本試験例において、各電池セルの注液時間を評価する。具体的には、電解液を真空注液によって電池セルに注入し、電解液が離散状態からセパレータ内部に十分に物質移動し、また正負極板内部に物質移動し、電池セルを完全に浸潤するまでに要する時間を記録するとともに、前提として得られた電池セルが正常な性能を有する(100サイクル以内で電解液不足による性能急落現象が発生しない)ことが求められている。
【0188】
試験例4
本試験例において、各電池セルのレート性能を評価する。具体的には、電池セルをArbin電気化学ワークステーション試験チャンネルに入れ、0.1Cのレートで充電終止電圧が4Vになるまで定電流充電し、その後に30分間定電圧充電し、その後にそれぞれ0.1C及び1Cのレートで放電終止電圧が2.5Vになるまで定電流放電し、放電容量をそれぞれ0.1C容量と1C容量として記録する。以下の式に基づいてレート性能を計算する。
レート性能=1C容量/0.1C容量×100%。
【0189】
試験例5
本試験例において、各電池セルのサイクル性能を評価する。具体的には、電池セルをArbin電気化学ワークステーション試験チャンネルに入れ、1Cのレートで充電終止電圧が4Vになるまで定電流充電し、5分間静置した後、1Cのレートで放電終止電圧が2.5Vになるまで定電流放電し、放電容量を記録し、さらに5分間静置し、このようなサイクルを100回繰り返す。以下の式に基づいてサイクル性能を計算する。
サイクル性能=100回目のサイクル容量/1回目のサイクル容量×100%。
【0190】
例として、対照適用例1、比較適用例1と適用例1の電池セルのサイクル性能グラフは
図10に示されている。
【0191】
試験例3~5の評価結果は表2にまとめられている。表2には、各セパレータに使用されたコーティングの基本単位の化学式及び欠陥パーセントも示されている。
【0192】
【0193】
以上の各試験の結果から分かるように、表1に示した結果から、対照例1におけるコーティングを適用していないベアフィルム及び対照例2におけるアルミナコーティングを適用したセパレータに比べて、比較例1~7と実施例1~20におけるセパレータは、電解液浸潤性と電解液保持率の面での性能がいずれも向上したことが分かった。しかし、比較例1~7において、セパレータの性能向上には限界がある。それに応じて、表2に示した結果から、これらのセパレータをそれぞれ含む比較適用例1~7の電池セルは、電池セル注液時間、レート性能とサイクル性能の向上に限界があることが分かった。
【0194】
これに比べて、実施例1~20においてコーティングに本出願の欠陥がある有機-無機ハイブリッド型錯体を適用し、このコーティングを有するセパレータは、電解液浸潤性と電解液保持率の面での性能がさらに著しく向上した。それに応じて、これらのセパレータをそれぞれ含む適用例1~20の電池セルは、電池セル注液時間、レート性能とサイクル性能がいずれもさらに著しく向上した。
【0195】
実施例1~16において、セパレータコーティングに含まれる複数の例示的な有機-無機ハイブリッド型錯体には、本出願に規定された欠陥パーセント範囲内の配位子欠陥が導入された。
【0196】
表1に示した結果から、無欠陥の有機-無機ハイブリッド型錯体(CN)3Fe・Naを使用する比較例1に比べて、実施例1~5のセパレータは、電解液浸潤性と電解液保持率の面での性能が著しく優れていることが分かった。それに応じて、表2に示した結果から、これらのセパレータをそれぞれ含む適用例1~5の電池セルは、比較適用例1の電池セルより、電池セル注液時間、レート性能とサイクル性能のいずれにおいても著しく優れていることが分かった。
【0197】
同様に、表1に示した結果から、無欠陥の有機-無機ハイブリッド型錯体(cbIm)2Coを使用する比較例4に比べ、実施例9~13のセパレータは、電解液浸潤性と電解液保持率の面での性能が著しく優れていることが分かったそれに応じて、表2に示した結果から、これらのセパレータをそれぞれ含む適用例9~13の電池セルは、比較適用例4の電池セルより、電池セル注液時間、レート性能とサイクル性能のいずれにおいても著しく優れていることが分かった。
【0198】
また、表1に示した結果から、それぞれ比較例5~7における対応する無欠陥の有機-無機ハイブリッド型錯体(BTC)2Cu3・K、(BDC)[Fe(OH)0.8F0.2]・Li0.5と(NTB)2[Zn4O]・Mg0.1に比べて、実施例14~16のセパレータは、電解液浸潤性と電解液保持率の面での性能が著しく優れていることが分かった。それに応じて、表2に示した結果から、これらのセパレータをそれぞれ含む適用例14~16の電池セルは、比較適用例5~7の電池セルより、電池セル注液時間、レート性能とサイクル性能のいずれにおいても著しく優れていることが分かった。
【0199】
このことから分かったように、有機-無機ハイブリッド型錯体に、本出願に規定された欠陥パーセント範囲内の配位子欠陥を導入して、セパレータコーティング材料としての有機-無機ハイブリッド型錯体による電解液浸潤性改善効果を大幅に促進し、電解液保持率を向上させることによって、電池セル注液速度、及び電池セルのレート性能とサイクル性能を向上させることができる。有機-無機ハイブリッド型錯体への欠陥導入による上記性能の改善は、複数の異なる金属及び/又は配位子に広く適用することができる。
【0200】
特に注意すべきこととして、同じ配位子(CN)と同じ金属(Fe)を使用し、導入された欠陥の欠陥パーセントのみが異なる場合、表1に示した結果から、欠陥パーセントが比較的低い比較例2と欠陥パーセントが比較的高い比較例3に比べて、実施例1~5において、セパレータのコーティングに含まれる有機-無機ハイブリッド型錯体における欠陥パーセントが本出願で限定される1~30%の範囲内にあり、セパレータは、電解液浸潤性と電解液保持率の面での性能が著しく優れていることが分かった。それに応じて、表2に示した結果から、これらのセパレータをそれぞれ含む適用例1~5の電池セルは、比較適用例2と3の電池セルより、電池セル注液時間、レート性能とサイクル性能のいずれにおいても著しく優れていることが分かった。
【0201】
実施例17~20において、アルミナ(Al2O3)を追加して添加したコーティングをセパレータに適用することにより、セパレータの浸潤特性が合理的な範囲内にあるように保証する前提で、電池セルのレート性能及びサイクル性はさらに良くなった。原因として、有機-無機ハイブリッド型錯体がAl2O3と混合した後、粒子形態の間の相補性により、両者がより緊密に結合することができ、有機-無機ハイブリッド型錯体は、浸潤性を向上させるという作用を果たし、電解液保持率を向上させ、且つ電池セルの注液速度を向上させるが、Al2O3は、剛性が安定したセパレータ構造を提供することができ、両者は相乗作用を果たし、実施例18で採用した混合比で最適な相乗効果を実現させることが考えられる。
【0202】
産業上の利用可能性
本出願の欠陥がある有機-無機ハイブリッド型錯体は、二次電池用セパレータのコーティングに適用する時、セパレータの電解液浸潤性を改善するという効果を有するとともに、セパレータの電解液保持率を向上させることによって、分極を低減し、二次電池のレート性能及びサイクル寿命を改善することができる。したがって、本出願は、産業上の利用に適する。
【符号の説明】
【0203】
1電池パック
2上部筺体
3下部筺体
4電池モジュール
5二次電池
51ケース
52電極アセンブリ
53トップカバーアセンブリ