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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/155 20060101AFI20240516BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20240516BHJP
   B23B 3/30 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B23Q3/155 E
B23Q17/09 B
B23B3/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022564898
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2020043932
(87)【国際公開番号】W WO2022113223
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】森 雅彦
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-192848(JP,A)
【文献】特開平8-215785(JP,A)
【文献】特開2001-105265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155-3/157,11/00,17/09;
B23B 3/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを回転保持する第1ワーク主軸装置における第1系統の加工と、ワークを回転保持する第2ワーク主軸装置における第2系統の加工を、交換が可能な主軸ヘッド工具によって実行する工具主軸装置を有し、制御装置によって前記各装置の駆動制御が行われる工作機械であって、
前記制御装置は、前記工具主軸装置において実行される前記第1系統の加工または前記第2系統の加工を基に、主軸ヘッド工具の総使用時間を算出して第1工具管理データまたは第2工具管理データとして記憶し、他方の前記第2工具管理データまたは前記第1工具管理データにおいても同じ総使用時間に書き換える工具管理処理部を有する工作機械。
【請求項2】
前記制御装置の工具管理処理部は、前記第1系統または前記第2系統において加工を実行させる加工プログラムの情報から、主軸ヘッド工具がワークに対して実際に当たっている加工時間を算出するものである請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記制御装置の工具管理処理部は、前記第1系統または前記第2系統の加工に応じて算出され記憶された主軸ヘッド工具の総使用時間を、記憶した前記第1工具管理データまたは前記第2工具管理データの一方から読み出し、他方の前記第2工具管理データまたは前記第1工具管理データにおいて当該主軸ヘッド工具における総使用時間として書き込むものである請求項1または請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記制御装置の工具管理処理部は、主軸ヘッド工具の総使用時間の書き換えを、前記第1系統または前記第2系統における加工プログラムの終了ごとに行うものである請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の工作機械。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる系統の加工で使用される同一の工具について正しい寿命判断を行う工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
自動工具交換装置を有する工作機械は、加工プログラムに従ってツールマガジンに収納された工具の交換が自動で行われる。使用される複数の工具は、それぞれに工具番号が付与され、工具の長さ、径などのオフセット値、そして工具の寿命時間など工具情報が管理されている。下記特許文献1では、多数の工具を収納した工具供給装置が2台の工作機械に工具を受け渡しする構成が記載されている。各工作機械の制御部では、加工終了前に次の工程で使用する工具の準備命令を読み込み、情報管理装置から送られた次工程の工具の情報を記録する。工具の交換の際には、工作機械の制御部で読みだした寿命時間から工具使用時間を差し引いた時間が新たな工具寿命情報として更新される。そして、工具供給装置に返却する工具の情報が情報管理装置に送られ、その工具情報格納エリア内の当該工具情報が更新される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-285802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例では、一方の工作機械で行われる第1系統の加工と、他方の工作機械で行われる第2系統の加工とで、共通の工具供給装置における工具が使用され、それぞれにおいて工具寿命の算出が行われる。しかし、別々に寿命判断を行うわけにはいかないため、従来例では、共通の情報管理装置によって工具寿命などの情報を一括管理することにより、各工具における正しい寿命判断が行われるようになっている。このように、異なる系統で加工を行う同一の工具について正しい寿命管理を行う必要であるが、例えば前記従来例のような情報管理装置を設けることなく当該工具の正しい寿命判断が行われることも望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、異なる系統の加工で使用される工具の正しい寿命判断を行う工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様における工作機械は、ワークを回転保持する第1ワーク主軸装置における第1系統の加工と、ワークを回転保持する第2ワーク主軸装置における第2系統の加工を、交換が可能な主軸ヘッド工具によって実行する工具主軸装置を有し、制御装置によって前記各装置の駆動制御が行われるものであって、前記制御装置は、前記工具主軸装置において実行される前記第1系統の加工または前記第2系統の加工を基に、主軸ヘッド工具の総使用時間を算出して第1工具管理データまたは第2工具管理データとして記憶し、他方の前記第2工具管理データまたは前記第1工具管理データにおいても同じ総使用時間に書き換える工具管理処理部を有する。
【発明の効果】
【0007】
前記構成によれば、工具主軸装置によって第1系統の加工または第2系統の加工が実行された場合に、各系統ごとに算出された主軸ヘッド工具の総使用時間が第1工具管理データまたは第2工具管理データとして記憶されるが、一方の第1工具管理データまたは第2工具管理データの前記総使用時間が、他方の第2工具管理データまたは第1工具管理データにおいても書き換えられ、異なる系統の加工で使用される主軸ヘッド工具であっても正しい寿命判断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】工作機械の一実施形態である複合加工機の主要な構造を示した斜視図である。
図2】工具主軸装置を示した側面図である。
図3】自動工具交換装置とワーク自動搬送装置を加えた複合加工機の斜視図である。
図4】複合加工機の制御システムを概念的に示した図である。
図5】ATC工具管理プログラム処理を概念的にしめした図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る工作機械の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、工作機械の一実施形態である複合加工機の主要な構造を示した斜視図である。本実施形態の複合加工機1は、各種加工装置を有することによりNC旋盤とマシニングセンタの両方の機能を持つようにした工作機械である。具体的には、ワークWを把持する第1ワーク主軸装置3および第2ワーク主軸装置4と、複数の工具Tを有する第1タレット装置5および第2タレット装置6が、それぞれ左右対称に配置された対向2軸旋盤であり、加えて機体中央には工具主軸装置2が設けられている。
【0010】
第1および第2ワーク主軸装置3,4は同じ構造であり、主軸台12にスピンドルが回転自在に組み込まれ、そこに加工対象であるワークWを把持および解放するチャック機構11が組付けられている。チャック機構11は、スピンドルモータ13の駆動によって回転し、そこに把持されたワークWに対する加工時の位相決めや所定速度での回転が与えられる。主軸台12やスピンドルモータ13は、主軸スライド14に搭載されている。主軸スライド14は、ベッド7の前側傾斜面701に固定されたガイドレール15に沿って摺動自在であり、Z軸サーボモータにより回転するネジ軸17のボールネジ機構によって機体幅方向であるZ軸方向に移動するよう構成されている。
【0011】
第1タレット装置5および第2タレット装置6は同じ構造であり、タレット21に複数の工具T(タレット工具)が円周方向に等間隔で取り付けられ、割出し用サーボモータ22の回転制御によって、任意の工具Tを円周上の加工位置に位置決めできるよう構成されている。第1および第2タレット装置5,6は、タレット21をZ軸に直交する2方向に移動させるようにした駆動機構が設けられている。略三角形状のベーススライド23がベッド7に対して前方斜め45度上方にスライド可能であり、タレット21を搭載したタレットスライド24がベーススライド23に対して前方斜め45度下方にスライド可能に組み付けられている。そして、ベーススライド23やタレットスライド24は、各々のサーボモータにより回転するネジ軸のボールネジ機構によって各方向に移動するよう構成されている。
【0012】
図2は、工具主軸装置2を示した側面図である。工具主軸装置2は、主軸ヘッド26内に主軸用サーボモータや工具スピンドルが内蔵されたビルトインタイプであり、下端部に設けられた工具装着部に対して様々な工具T(主軸ヘッド工具)の取り換えが行われるようになっている。主軸ヘッド26は、主軸スライド27に対して回転可能に取り付けられ、回転伝達機構を介してB軸モータ28の回転が伝達されるよう構成されている。工具主軸装置2は、機体前後方向の水平なY軸に沿ってガイドレール31が固定され、そこにベーススライド32が摺動可能に組付けられている。また、ベーススライド32は、前面側に機体上下方向の鉛直なX軸に沿ってレール部33が固定され、そこに主軸スライド34が摺動可能に組付けられている。ベーススライド32と主軸スライド34は、ともにボールネジ機構が設けられ、Y軸サーボ―モータ35またはX軸サーボモータ36の駆動によって、主軸ヘッド26が各軸方向に移動可能になっている。
【0013】
複合加工機1は、ワークWの加工が図面左側の第1系統と右側の第2系統の2つに分けられおり、中央に位置する工具主軸装置2が第1系統および第2系統の両方の加工に対応できるようになっている。第1系統の加工は、第1ワーク主軸装置3に把持されたワークWに対する第1タレット装置5における加工および、工具主軸装置2における加工であり、第2系統は、第2ワーク主軸装置4に把持されたワークWに対する第2タレット装置6における加工および、工具主軸装置2における加工である。
【0014】
次に、図3は、自動工具交換装置8とワーク自動搬送装置9を加えた複合加工機1の斜視図である。ガントリ式のワーク自動搬送装置9は、フレーム構体41の上を機体幅方向に移動可能な走行テーブルに、機体前後方向に移動可能なスライド台が搭載され、その先端部にチャック機構を備えた昇降アームが上下に移動可能に組み付けられている。複合加工機1は、このワーク自動搬送装置9によりワークWが運ばれ、入力側ストッカから第1ワーク主軸装置3へ、更には第2ワーク主軸装置4へと搬送され、加工終了によって出力側ストッカへと収められる。
【0015】
自動工具交換装置8は、工具主軸装置2における工具Tの交換を行うものであり、第1系統および第2系統の加工に対応する複数の工具Tがツールマガジン43に収納されている。自動工具交換装置8は、ツールマガジン43が交換装置本体45の上部に位置し、2本の支柱によって起立し、ベッド7に連結された不図示のフレーム構体により支えられている。交換装置本体45には主軸ヘッド26に対して工具交換を行うツールチェンジャが設けられ、更に、そのツールチェンジャとツールマガジン43との間で工具Tを移動させるシフト装置が構成されている。ツールチェンジャは、両端部にチャックを有する工具交換アームを旋回させ、シフト装置と主軸ヘッド26とに保持された工具Tを交換するものである。
【0016】
複合加工機1は、ワークWの搬送、加工および工具交換が自動で行われる。図4は、そうした複合加工機1の制御システムを概念的に示した図である。複合加工機1を駆動させる制御装置50は、マイクロプロセッサ(CPU)51、ROM52、RAM53、不揮発性メモリ54、I/Oユニット55などがバスライン58を介して接続されている。CPU51は制御部全体を統括制御するものであり、ROM52にはCPU51が実行するシステムプログラムや制御パラメータ等が格納され、RAM53には一時的に演算データ等が格納される。
【0017】
また、揮発性メモリ54は、CPU51が行う処理に必要な情報であり、複合加工機1の加工プログラムなどの情報が格納されている。そして、制御装置50にはI/Oユニット55に接続されたプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)56が設けられ、ラダー形式で作成されたシーケンスプログラムによって複合加工機1の工具主軸装置2など各種加工装置の駆動部制御が行われる。加工プログラムの各機能指令はシーケンスプログラムによって必要な信号に変換され、I/Oユニット55から工具主軸装置2などに対して出力が行われる。
【0018】
複合加工機1は、制御装置50に格納された加工プログラムに従いワーク加工が実行される。先ず、入力側ストッカのワークWがワーク自動搬送装置により第1ワーク主軸装置3へと運ばれ、チャック機構11によって把持される。第1タレット装置5では、タレット21の駆動により旋回割出しされた工具TがワークWに対する加工位置へと移動して位置決めされる。第1ワーク主軸装置3は、スピンドルモータ13の駆動によりワークWが回転し、Z軸サーボモータの駆動によりZ軸方向に移動して、工具Tが当てられたワークWに所定の加工が行われる。
【0019】
第1ワーク主軸装置3のワークWに対する第1系統の加工は、第1タレット装置5による加工のほか、工具主軸装置2を加えた加工、或いは工具主軸装置2のみによる加工が行われる。工具主軸装置2によるワークWの加工は、ベーススライド32がY軸方向に移動し、主軸スライド27がX軸方向に移動することにより、主軸ヘッド26の工具Tが第1ワーク主軸装置3のワークWに対する加工位置へと運ばれる。そして、主軸ヘッド26は、B軸モータ28の回転により鉛直下向きの工具Tが傾けられ、ワークWに対する穴あけなど所定の加工が行われる。
【0020】
第1系統の加工終了後は、第1ワーク主軸装置3から第2ワーク主軸装置4へとワークWを移すため、例えば両装置が機体中央に近づき、チャック機構11同士によるワークWの掴みかえが行われる。第2ワーク主軸装置4の第2系統では、第1系統の加工と同様に、ワークWに対して第2タレット装置6による加工が行われ、その加工内容によっては工具主軸装置2による加工も行われる。その際、工具主軸装置2は、B軸モータ28の駆動により主軸ヘッド26の工具Tが旋回し、第2ワーク主軸装置4のワークWに対する加工が行われる。
【0021】
ところで、制御装置50には工具管理プログラムが格納されている。第1および第2タレット装置5,6に取り付けられた工具T(タレット工具)は、ワークWを実際に加工している時間から総使用時間が算出され、予め設定された寿命時間との比較によって工具Tの取り換え指示がモニタ表示されるなど作業者に対する報知処理が行われる。第1および第2タレット装置5,6は、第1系統の加工と第2系統の加工とが明確に区別され、タレット21に装着された工具T(タレット工具)の寿命が各々判断される。しかし、工具主軸装置2に取り付けられた工具T(主軸ヘッド工具)は、第1系統と第2系統の加工の両方に使用されるため、各系統での加工ごとに使用時間を算出したのでは正しい寿命判断を行うことができない。
【0022】
そこで、本実施形態では、工具主軸装置2に対して工具交換を行う自動工具交換装置(ATC)8の工具Tについて、その寿命を管理するためのATC工具管理プログラムが制御装置50に格納されている。具体的には、図5に示すPLC56に格納された書き換えプログラムの読み込みと書き込みとによって、第1系統と第2系統の異なる記憶領域に記録される工具管理データが統一できるように構成されている。なお、図5は、制御装置50におけるATC工具管理プログラム処理を概念的に示した図である。
【0023】
先ず、制御装置50は、工具主軸装置2によって実行されるワークWの加工内容に応じた様々な加工プログラムが格納されている。特に、工具主軸装置2に関しては、第1系統の加工における様々な第1加工プログラムと、第2系統の加工における様々な第2加工プログラムとが区別して設けられている。また、そうした加工プログラムの情報に基づき、工具Tが実際にワークWの加工を行った時間を算出する加工時間算出プログラムが格納されている。加工時間算出プログラムは、実行中の加工プログラムの情報(例えば座標情報)から、工具TがワークWに対して実際に当たっている加工時間を算出するものである。
【0024】
ATC工具管理プログラムでは、加工終了のタイミングで工具管理データから前回の加工までの総使用時間が読み出され、その値に今回の加工における使用時間が加算される。そして、新たな工具管理データとして更新記憶された総使用時間が、予め該当する工具Tについて設定された寿命時間との比較によって寿命判断が行われる。このような工具Tに関する寿命判断は、第1系統と第2系統の異なる記憶領域に記録された工具管理データごとに行われる。しかし、工具主軸装置2は、一つの工具Tが第1系統と第2系統の両方の加工に使用可能であるため、一方だけの使用時間だけでは正確な寿命判断はできない。
【0025】
そこで、ATC工具管理プログラムでは、第1系統と第2系統の一方の加工によって算出された工具Tの総使用時間が、他方の系統における工具管理データに関しても更新記憶が行われる。すなわち、第1系統の第1工具管理データと第2系統の第2工具管理データとが統一されるようになっている。なお、工具主軸装置2に装着される工具Tは、ツールマガジン43に収められた工具番号によって管理され、第1系統と第2系統の各記憶領域には同じ工具番号の第1工具管理データと第2工具管理データとが存在する。
【0026】
第1工具管理データと第2工具管理データの統一は、例えば先ず工具主軸装置2により工具Tnを使用した第1加工が行われた場合、加工時間算出プログラムによって、第1加工プログラムから工具TnがワークWに当たっている加工時間が算出される。第1加工の終了が加工プログラムに従って確認されると、そのタイミングで工具Tnの総使用時間が第1工具管理データとして更新される。すなわち、工具番号に従って記憶領域から工具Tnの総使用時間Nが読み出され、今回の使用時間nを加算した値すなわち新たな総使用時間N+nが更新記憶される。
【0027】
このとき更新された工具Tnの総使用時間は、第1工具管理データとして記憶されるだけではなく、第2加工プログラムを対象とする第2工具管理データ側でも更新される。そのため、例えばPLC56には読み込みと書き込みを行う書き換えプログラムが格納され、第1工具管理データと第2工具管理データの統一が行われる。書き換えプログラムは、第1系統の加工が終了したタイミングで、更新記憶された工具Tnの総使用時間N+nがPLC56に読み込まれる。更に、その値が工具番号ごとに用意された第2系統側の記憶領域に工具Tnの総使用時間N+nが第2工具管理データとして書き換えられる。
【0028】
その後、同じ工具Tnにより工具主軸装置2における第2系統の加工が行われた場合には、加工時間算出プログラムによって、同じように第2加工プログラムから工具TnがワークWに当たっている加工時間が算出される。第2系統の加工の終了が加工プログラムに従って確認されると、そのタイミングで工具番号に従って記憶領域から工具Tnの総使用時間N+n(=N1)が読み出される。そして、総使用時間N1に今回の使用時間n1を加算した値が新たな総使用時間N1+n1として更新記憶される。更に、第2加工終了後でも更新された総使用時間N1+n1は、書き換えプログラムの読み込みによってPLC56に読み込まれ、更にその値が工具番号に対応した第1系統側の記憶領域に第1工具管理データとして書き換えられる。
【0029】
一方、工具主軸装置2における第2系統の加工が、交換された異なる工具Tmにより行われた場合であっても同じく書き換え処理が行われる。すなわち、加工時間算出プログラムによって第2加工プログラムから工具TmがワークWに当たっている加工時間が算出される。そして、第2系統の加工の終了が加工プログラムに従って確認されると、そのタイミングで対応する工具番号の記憶領域に工具Tmの総使用時間が第2工具管理データとして更新される。すなわち、総使用時間N2に今回の使用時間n2を加算した値が新たな総使用時間N2+n2として更新記憶され、その値は書き換えプログラムの読み込みによってPLC56に読み込まれ、工具番号に対応した第1系統側の記憶領域に第1工具管理データとして書き換えられる。
【0030】
よって、制御装置50は、工具主軸装置2の第1系統および第2系統の加工に対して、工具寿命を正確に判断するためのATC工具管理プログラムが格納されているため、第1系統と第2系統で分かれている第1工具管理データと第2工具管理データが統一できる。例えば、前述したように第2系統の加工が終了した場合には、今回の使用時間n1を第1系統で行われた加工時間を含む総使用時間N1に加えることにより、工具Tnに関して正確な総使用時間を算出することができる。そのため、複合加工機1のように工具主軸装置2が第1系統と第2系統の加工で同じ工具Tを使用し、その使用時間が算出されたとしても、互いに使用された時間を更新し合うことによって工具Tの正しい寿命判断が可能になる。
【0031】
本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、工具Tの総使用時間を算出して一方の系統の工具管理データの更新記憶と、他の系統の工具管理データの書き換えを、一つの加工プログラムが終了した加工終了後に行っていたが、主軸ヘッド26の方向を変えたタイミングすなわち第1系統と第2系統の切り換えのタイミングや、自動工具交換装置8における工具交換のタイミングで行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…複合加工機 2…工具主軸装置 3…第1ワーク主軸装置 4…第2ワーク主軸装置 5…第1タレット装置 6…第2タレット装置 8…自動工具交換装置 9…ワーク自動搬送装置 50…制御装置

図1
図2
図3
図4
図5