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特許7489521リジッド・フレックス多層プリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】リジッド・フレックス多層プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
H05K3/46 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023065422
(22)【出願日】2023-04-13
(62)【分割の表示】P 2019004674の分割
【原出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2023089150
(43)【公開日】2023-06-27
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000228833
【氏名又は名称】日本シイエムケイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】蓑輪 努
(72)【発明者】
【氏名】大塚 徹郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 直樹
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-31682(JP,A)
【文献】特開2012-243829(JP,A)
【文献】特開2016-54313(JP,A)
【文献】特開2002-158445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の実装が可能なリジッド領域と屈曲可能なフレキシブル領域とを備えたリジッド・フレックス多層プリント配線板であって、フレキシブル基材と、当該フレキシブル基材上に形成された配線パターンと、当該配線パターンを保護するカバーレイとからなるフレキシブル基板と;当該フレキシブル基板のリジッド領域に積層された絶縁樹脂層と配線層との任意の層数の積層体からなる多層部と;当該多層部における最外層の配線パターンを保護するソルダーレジストとを有し、且つ、当該フレキシブル基板を構成するカバーレイが、当該フレキシブル基材上に形成された配線パターンと接着する接着層と、表層を保護するカバーフィルムとの2層からなり、当該接着層が、フレキシブル領域とリジッド領域の境界部付近において接着層の厚さが厚い厚膜部を有し、フレキシブル領域内において接着層の厚さが薄い薄膜部を有すると共に、当該多層部の絶縁樹脂層のうち、フレキシブル基板と当該フレキシブル基板から最も近い配線層との間に位置する絶縁樹脂層に、厚さが100μm以上であり、リジッド領域とフレキシブル領域の境界部側の側面が絶縁樹脂で被覆されたコア基材からなる厚み調節層を有することを特徴とするリジッド・フレックス多層プリント配線板。
【請求項2】
当該厚み調節層が、リジッド領域とフレキシブル領域の境界部側の側面以外の側面も絶縁樹脂で被覆されたコア基材からなることを特徴とする請求項1に記載のリジッド・フレックス多層プリント配線板。
【請求項3】
当該フレキシブル基板上且つ多層部のリジッド領域とフレキシブル領域の境界部側の側面に、絶縁樹脂層の突出部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のリジッド・フレックス多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の実装が可能なリジッド領域と屈曲可能なフレキシブル領域とを備えたリジッド・フレックス多層プリント配線板に関するものであり、特に、カメラモジュールなどのゴミの影響を受けやすい製品に使用できるリジッド・フレックス多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の自動制御化が益々進み、部品や各種センサの搭載点数が非常に多くなってきている。その結果、部品やセンサなどに用いられるプリント配線板においては、装置内への設置自由度の高さや、装置の小型化に寄与できるリジッド・フレックス多層プリント配線板の需要が高まっている。
【0003】
従来のリジッド・フレックス多層プリント配線板として、例えば、特許文献1及び2に示すものが知られている。
特許文献1及び2のリジッド・フレックス多層プリント配線板の製造例を、図8(a)~(c)に示した概略断面工程図を用いて説明する。
まず、図8(a)に示したように、フレキシブル基材2の表裏面に配線パターン30を形成した後、当該配線パターン30を保護するカバーレイ4aを積層することによってフレキシブル基板1を得る。ここで、当該カバーレイ4aとして金属箔付きカバーレイを積層し、次いで、エッチング処理を行うことによって、フレキシブル領域Fに当該フレキシブル領域Fよりも若干大きめのダミーパターン9aを設ける。
【0004】
次に、ダミーパターン9aが形成されたカバーレイ4a上に、任意の数の絶縁接着剤層29(例えば、厚さ20~60μm)と配線パターン30を積層した後、最外層の配線パターン30を保護するソルダーレジスト22を形成することで、中間基板である多層板23bを得る。
次いで、図8(b)、(c)に示したように、フレキシブル領域F上に積層されている不要部24を、レーザー加工で刳り貫く、あるいは切削除去した後、露出したダミーパターン9aをエッチングで除去してリジッド・フレックス多層プリント配線板を得るというものである。
【0005】
上記の製造方法では、通常のビルドアップ工法と同じ手法で多層板23b(図8(a)に示したフレキシブル領域Fの不要部24を除去する前の多層積層板)を製造することができるため、リジッド・フレックス多層プリント配線板の小型化や高密度配線化を図ることができる。
【0006】
しかし、フレキシブル基板1上に積層される絶縁接着剤層29の厚さが20~60μmと非常に薄く、これに合わせて、その内部に含有されるガラスクロスなどの補強基材も薄くなるため、耐振動性や重量のある部品の実装などが求められる製品としては、剛性不足となる懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013―51325号公報
【文献】特許第5778825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の懸念を回避するには、図9に示したように、薄い絶縁接着剤層29よりもガラスクロスが太く、剛性の高い、例えば厚さが100μm以上のコア基材7aを、多層板23cの内層側に厚み調節層として配置し、これよりも外層側に、薄い絶縁接着剤層29からなる通常のビルドアップ層を積層するという構成が考えられる。こうすれば、部品が実装される外層側の高密度配線化を確保できると共に、高い剛性を付与することができるからである。
【0009】
しかし、図9に示したような厚みの異なる材料(絶縁接着剤層29、コア基材7a)に対してレーザー加工を行う場合、図8(a)に示したような厚みの揃った材料(絶縁接着剤層29)に対して行うレーザー加工よりも加工が困難であるため(例えば、厚みのあるコア基材7aに合わせて、高エネルギーのレーザー加工を行った場合には、ダミーパターン9aの下に位置するフレキシブル基板1に損傷を与える懸念があり、また、フレキシブル基板1に損傷を与えないようにするために、絶縁接着剤層29とコア基材7aのそれぞれに対応したエネルギーに調節してレーザー加工を行った場合には、非常に手間のかかる工程となってしまう)、フレキシブル領域の不要部24を除去することは難しいという問題があった。さらに、不要部24を除去した後の加工面(リジッド領域Rとフレキシブル領域Fの境界部側の側面)には多くの炭化カス(ゴミ)が発生してしまうため、図9に示した構成をゴミの発生を嫌うカメラモジュールなどに用いる製品には採用し難いという問題もあった。
【0010】
一方、不要部24を除去する手段として、レーザー加工と比べて加工面からのゴミの発生が少ないルーター加工を用いることが考えられたが、厚みのあるコア基材7aに含まれるガラスクロスは線径が太く、含浸される樹脂量も多いため、加工面が荒れやすく、また、フレキシブル領域Fを屈曲させた際に負荷が掛かり易いため、当該加工面には樹脂の粉落ち(ゴミ)が多く発生してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の如き従来の問題に鑑みてなされたものであり、部品が実装される外層側の高密度配線化を確保しつつ、高い剛性を付与するために内層側に厚さが100μm以上のコア基材からなる厚み調節層を有するリジッド・フレックス多層プリント配線板であっても、リジッド領域とフレキシブル領域の境界部側となる多層部(フレキシブル基板のリジッド領域上に形成される多層部に相当)の側面からのゴミの発生が少ないリジッド・フレックス多層プリント配線板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の課題を解決するべく種々研究を重ねた結果、当該厚さが100μm以上のコア基材のリジッド領域とフレキシブル領域の境界部側の側面を絶縁樹脂で被覆すれば極めて良い結果が得られることを見い出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、部品の実装が可能なリジッド領域と屈曲可能なフレキシブル領域とを備えたリジッド・フレックス多層プリント配線板であって、フレキシブル基材と、当該フレキシブル基材上に形成された配線パターンと、当該配線パターンを保護するカバーレイとからなるフレキシブル基板と;当該フレキシブル基板のリジッド領域に積層された絶縁樹脂層と配線層との任意の層数の積層体からなる多層部と;当該多層部における最外層の配線パターンを保護するソルダーレジストとを有し、且つ、当該フレキシブル基板を構成するカバーレイが、当該フレキシブル基材上に形成された配線パターンと接着する接着層と、表層を保護するカバーフィルムとの2層からなり、当該接着層が、フレキシブル領域とリジッド領域の境界部付近において接着層の厚さが厚い厚膜部を有し、フレキシブル領域内において接着層の厚さが薄い薄膜部を有すると共に、当該多層部の絶縁樹脂層のうち、フレキシブル基板と当該フレキシブル基板から最も近い配線層との間に位置する絶縁樹脂層に、厚さが100μm以上であり、リジッド領域とフレキシブル領域の境界部側の側面が絶縁樹脂で被覆されたコア基材からなる厚み調節層を有することを特徴とするリジッド・フレックス多層プリント配線板により、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリジッド・フレックス多層プリント配線板によれば、絶縁樹脂層と配線層との任意の層数の積層体からなる多層部において、フレキシブル基板と当該フレキシブル基板から最も近い配線層との間に位置する絶縁樹脂層に、厚みのあるコア基材からなる厚み調節層を有するので、高密度配線化を確保できると共に、高い剛性とすることができる。また、当該コア基材のリジッド領域とフレキシブル領域の境界部側の側面が絶縁樹脂で被覆されているので、当該側面からの粉落ち(ゴミ)を抑制することができ、カメラモジュールなどのゴミの発生を嫌う製品への使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明リジッド・フレックス多層プリント配線板の実施の形態を示す概略断面説明図。
図2】本発明リジッド・フレックス多層プリント配線板の製造例を示す概略断面工程図。
図3図2に引き続く概略断面工程図。
図4図3に引き続く概略断面工程図。
図5】本発明リジッド・フレックス多層プリント配線板の外形加工例を示す概略斜視説明図。
図6】コア基材のリジッド領域とフレキシブル領域の境界部側の側面以外の側面も被覆する例を説明するための概略平面図。
図7】本発明リジッド・フレックス多層プリント配線板のリジッド領域/フレキシブル領域境界部におけるカバーレイを構成する接着層の厚さの違いを説明するための要部拡大断面図。
図8】従来のリジッド・フレックス多層プリント配線板の製造例を示す概略断面工程図。
図9図8のリジッド・フレックス多層プリント配線板の内層側に、厚みのあるコア基材を配置した構成を説明するための概略断面説明図。要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明リジッド・フレックス多層プリント配線板の実施の形態を、図1を用いて説明する。
【0017】
本発明の実施の形態を示す図1において、PWはリジッド・フレックス多層プリント配線板で、部品の実装が可能なリジッド領域Rと屈曲可能なフレキシブル領域Fとから構成されている。
当該フレキシブル領域Fは、フレキシブル基材2と、当該フレキシブル基材2の表裏の両面に形成された第一配線パターン3と、当該第一配線パターン3を保護するカバーレイ4とからなるフレキシブル基板1から構成されている。カバーレイ4は、第一配線パターン3と接着する接着層5と、表層を保護するカバーフィルム6との2層からなる。
また、リジッド領域Rは、当該フレキシブル基板1の表裏の両面に積層された、絶縁樹脂層と配線層との任意の層数の積層体からなる多層部23と、当該多層部23の最外層の配線パターン20を保護するソルダーレジスト22とから構成されている。
当該多層部23は、第一絶縁樹脂層11と、当該第一絶縁樹脂層11に積層された厚さが100μm以上であり、リジッド領域Rとフレキシブル領域Fの境界部側の側面7bが絶縁樹脂25で被覆されたコア基材からなる厚み調節層7と、当該厚み調節層7に積層された第二絶縁樹脂層13とからなる絶縁樹脂層と、当該絶縁樹脂層に積層された第二配線パターン15と、当該第二配線パターン15の上に、順次2層ずつ交互に積層された、第三絶縁樹脂層19と、第三配線パターン20とからなり、フレキシブル基板1の両面に形成された第二配線パターン15間を接続する穴埋め樹脂18が充填されたベリードホール16と、当該第二配線パターン15と第三配線パターン20の間、及び上下方向に隣接する第三配線パターン20の間を接続するブラインドビアホール21とを備えている。
【0018】
本発明において注目すべき点の一つは、厚さが100μm以上であり、リジッド領域Rとフレキシブル領域Fの境界部側の側面7bが絶縁樹脂25で被覆されたコア基材からなる厚み調節層7を、多層部23の絶縁樹脂層のうち、フレキシブル基板1と当該フレキシブル基板1から最も近い配線層(第二配線パターン15が形成される配線層)との間に位置する絶縁樹脂層、ここでは第一絶縁樹脂層11と、コア基材からなる厚み調節層7と、第二絶縁樹脂層13とからなる絶縁樹脂層に有する点にある。
厚さが100μm以上のコア基材は非常に剛性が高い(即ち、ガラスクロスが太い)ため、当該コア基材からなる厚み調節層7を、多層部23のフレキシブル基板1と当該フレキシブル基板1から最も近い配線層(第二配線パターン15が形成される配線層)との間に位置する絶縁樹脂層に有することで、高密度配線化を確保しつつ、高い剛性を付与することができる。
【0019】
また、本発明においては、当該コア基材のリジッド領域Rとフレキシブル領域Fの境界部側の側面7bが絶縁樹脂25で被覆されているので、当該コア基材の側面7bからのゴミの発生が少なくなっている。
【0020】
この実施の形態では、図1に示したように、フレキシブル基板1に積層された第一絶縁樹脂層11の一部がフレキシブル領域F側に突き出て、多層部23のリジッド領域Rとフレキシブル領域Fの境界部側の側面23dに突出部26が形設されている。この突出部26の形状は特に限定されないが、本実施の形態においては板状である。斯かる突出部26の存在によって、フレキシブル基板1におけるリジッド領域Rとフレキシブル領域Fとの境界部を補強することができるため、例えば、車載品のような耐振動性が要求される製品としてより好適となる。
【0021】
なお、この実施の形態では、図1に示したように、多層部23は、絶縁樹脂層と配線層とを順次3層ずつ交互に積層した積層体からなるが、その層数は特に限定されず、任意に選択することができる。
【0022】
また、多層部23の絶縁樹脂層のうち、厚さが100μm以上であり、リジッド領域Rとフレキシブル領域Fの境界部側の側面7bが絶縁樹脂25で被覆されたコア基材からなる厚み調節層7を有する絶縁樹脂層は、第一絶縁樹脂層11と、当該厚み調節層7と、第二絶縁樹脂層13の3層からなるが、その層数は特に限定されず、任意に選択することができる。
【0023】
続いて、本発明リジッド・フレックス多層プリント配線板PWの製造方法を図2図6を用いて説明する。
尚、文中に出てくる「絶縁接着剤層」は、実際には、加熱・積層プレスで硬化された後は、半硬化状態の接着剤ではなく、硬化済みの「絶縁樹脂層」となるものであるが、説明の便宜上、硬化前後に関係なく「絶縁接着剤層」という表現で説明を進めていく。
【0024】
まず、図2(a)に示したように、厚さが25~100μm程度のフレキシブル基材2を用意し、例えば、厚さ9~18μmの金属箔(例えば「銅箔」)をエッチング処理することによって、当該フレキシブル基材2の表裏の両面に第一配線パターン3を形成する。次いで、当該第一配線パターン3形成面上に厚さが25~70μm程度のカバーレイ4(例えば、第一配線パターン3と接着する接着層5と、表層を保護するカバーフィルム6(例えば、ポリイミドフィルム)との2層からなるカバーレイ)を表裏から積層して、フレキシブル基板1を作製する。
フレキシブル基材2は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートなどからなる屈曲性を有する絶縁基材が一般的に用いられる。
【0025】
次に、図2(b)に示したように、導体層8を備えた、厚さが100μm以上のコア基材7aを用意し、エッチング処理をして、後にフレキシブル領域Fとなる箇所に接する部分にダミーパターン9を形成する。
ここで、導体層8の厚さは、例えば35~105μm程度である。また、導体層8を備えた、厚さが100μm以上のコア基材7aとしては、一般的に用いられるガラスクロスなどの補強基材にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた絶縁基板の両面に、銅箔などの金属箔を積層した両面金属箔張り積層板などが好ましく利用できる。
また、コア基材7aには、リジッド領域Rとフレキシブル領域Fの境界部に位置する外形線を跨ぐように、表裏面を貫通するスリット10を、加熱・積層プレス工程前に予め設けておく。
コア基材7aの加工は、パンチングプレス加工やルーター加工などで行うことができるが、加工位置に関しては、部品の実装性を考慮して、実装位置の透過領域にかからないようにするのが望ましい(即ち、実装エリア付近の剛性を確保し、良好な部品実装を可能にするためである)。
【0026】
次に、図2(c)に示したように、フレキシブル基板1とダミーパターン9を形成したコア基材7aを接着するための、第一絶縁接着剤層11aを用意し、ダミーパターン9に対応する箇所に、これよりも若干大きめの開口部12を、ルーター加工やパンチングプレス加工などによって形成する。
第一絶縁接着剤層11aは、ガラスクロスなどの補強基材にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させて半硬化させたプリプレグなどが一般的に用いられる。
ここで、第一絶縁接着剤層11aの厚みは、ダミーパターン9と同等、若しくは、ダミーパターン9より5~10μm程度薄い厚さ、すなわち25~100μm程度とすることが望ましい。その理由は、第一絶縁接着剤層11aの厚さがダミーパターン9と同等か、ダミーパターン9よりも薄いと、第一絶縁接着層11aの樹脂が、加熱・積層プレス時にダミーパターン9側へと流れていくことを抑制でき、ダミーパターン9とカバーレイ4が樹脂によって強固に接着されることなく(フレキシブル基板1とダミーパターン9の間に樹脂が浸み込むことなく)積層できるからである。ダミーパターン9とカバーレイ4との接着が弱いと、後に、フレキシブル領域Fにある不要部24を容易に除去することが可能となる。
【0027】
さらに、第一絶縁接着剤層11aの厚さがダミーパターン9より5~10μm程度薄い、換言すると、ダミーパターン9の厚さが第一絶縁接着剤層11aの厚さより5~10μm程度厚いと、フレキシブル領域Fの屈曲性の向上、及び、フレキシブル領域Fとリジッド領域Rの境界部を補強することができる。これは、図7に示したように、上記構成とすることで、加熱・積層プレス時にカバーレイ4を構成する接着層5の一部が、フレキシブル領域Fからリジッド領域R側へと流動し、リジッド領域Rとフレキシブル領域Fの境界部付近において当該接着層5の厚さが厚い厚膜部32が形成され、同時に、フレキシブル領域F内において当該接着層5の厚さが当該リジッド領域Rとフレキシブル領域Fの境界部付近の当該接着層5の厚さよりも薄い薄膜部31が形成されるためである。
【0028】
また、本発明では、ダミーパターン9の側面をテーパ形状(側面が垂直ではなく、上部から下部へと広がる、即ち、コア基材7aとの接着面側が広くなるように、側面に傾斜が付いている形状)とすることが望ましい。その理由は、ダミーパターン9がテーパ形状であると、ダミーパターン9の側面と第一絶縁接着剤層11aとの間に隙間が生じるため、ダミーパターン9の側面と第一絶縁接着剤層11aとが樹脂によって強固に接着されることなく積層できるからである。ダミーパターン9の側面と第一絶縁接着剤層11aとの接着が弱いと、フレキシブル領域Fにある不要部24の除去がより一層容易になる。なお、ダミーパターン9の側面は、エッチング処理により容易にテーパ形状とすることができる。
【0029】
次に、図2(d)に示したように、フレキシブル基板1の表裏面に、開口部12を形成した第一絶縁接着剤層11a、ダミーパターン9とスリット10を形成したコア基材7a、第二絶縁接着剤層13a、金属箔14(好ましくは銅箔)をこの順に配置した後、加熱・積層プレスを行うことによって、上記構成部材を一体化形成するとともに、スリット10内を第一絶縁接着剤層11a及び第二絶縁接着剤層13aから流れ出た樹脂で充填する。
加熱・積層プレス後の状態を示した図3(e)には、便宜上、スリット10内に充填される樹脂として、第二絶縁接着剤層13aから流れ出た樹脂のみを示しているが、実際には、第一絶縁接着剤層11aから流れ出た樹脂もスリット10内に充填される。
【0030】
なお、本実施の形態では、コア基材7aにダミーパターン9のみを形成する例を示したが、ダミーパターン9の形成面とは反対側の面にも、勿論、配線パターンを形成することは可能である。この場合、コア基材7aに積層される導体層8の厚さが35μm程度であれば、そのままエッチング処理して配線パターンを形成すればよく、導体層8の厚さが70~105μmと厚い場合には、一度、ダウンエッチングで導体層8を薄くしてから、エッチング処理で配線パターンを形成すればよい。
【0031】
次に、図3(e)に示したように、常法により、ドリル加工による貫通穴の形成、金属めっき処理による表層及び貫通穴内への金属めっき層(例えば、厚さ25μm設定の銅めっき層)形成、金属めっき層が形成された貫通穴内への穴埋め樹脂18の充填、エッチングによる第二配線パターン15とベリードホール16のランド17の形成を順次行う。
【0032】
続いて、常法により、厚さが20~60μm程度の第三絶縁接着剤層19aと金属箔(例えば、厚さ9~18μmの銅箔)を積層し、レーザー穴あけによる非貫通穴の形成、金属めっき処理(例えば、銅めっき処理)、エッチング処理による第三配線パターン20とブラインドビアホール21の形成をそれぞれ2回ずつ繰り返し行い、第三絶縁接着剤層19aと第三配線パターン20を2層ずつ交互に積層して、絶縁樹脂層と配線層とを順次3層ずつ交互に積層した積層体からなる多層部23を形成する。最後に、外層回路となる第三配線パターン20を保護するソルダーレジスト22を形成して、多層板23aを得る(図3(f)参照)。
【0033】
次に、フレキシブル領域Fの不要部24を取り除く方法と、外形加工方法を図3(f)~図6を用いて説明する。なお、図5では、基板表面のソルダーレジスト9、配線層などを省略した。
【0034】
まず、図3(f)、図5(a)、(b)に示したように、多層板23aにルーター加工を行なうことによって、ダミーパターン9に達するスリット10aを形成する。
スリット10aの加工位置としては、コア基材7aのリジッド領域Rとフレキシブル領域Fの境界部側の側面7bに、第一絶縁接着剤層11a及び第二絶縁接着剤層13aから流れ出た絶縁樹脂25が残存する位置、即ち、当該コア基材7aの側面7bを絶縁樹脂25で被覆できる位置であればよい。
【0035】
この実施の形態では、コア基材7aに形成したスリット10に蓋をするような形で、第一絶縁接着剤層11aが積層される関係上、図3(g)に示したように、スリット10aを形成するルーター加工の際に、当該第一絶縁接着剤層11aの一部がフレキシブル領域F側に突き出る形となって、突出部26が形設される。斯かる突出部26の存在と、図7に示したリジッド領域Rとフレキシブル領域Fの境界部付近における厚膜部32とを併せて、より強く、フレキシブル基板1におけるリジッド領域Rとフレキシブル領域Fとの境界部を補強することができる。
【0036】
ルーター加工によってスリット部10aを形成する場合、高板厚の基板では板厚バラつきが大きいため、通常のルーター加工機では、基板内の特定の層(ダミーパターン9上)でルーター加工を行なうことは困難である。よって、ルーター加工を行う場合、Z軸方向の高さのみを指定する通常のルーター加工機を用いるのではなく、導通検知機能付きルーター加工機を用いることが好ましい。
【0037】
次に、外形加工を行う。外形加工は、ルーター加工又はパンチングプレス加工によって行い、リジッド・フレックス多層プリント配線板PWを外形枠33から切り離す。図4(h)、図5(c)に示したように、この加工によって、リジッド・フレックス多層プリント配線板PWから、外形枠33と不要部24が同時に外れ、本発明のリジッド・フレックス多層プリント配線板PWが完成する。
【0038】
不要部24の除去方法に関しては、上記の方法以外に、ダミーパターン9の形状に沿ってルーター加工を行い、外形加工前に不要部24を予め取り除く方法も可能である。その場合は、その後にリジッド・フレックス多層プリント配線板PWと、外形枠33を切り離す外形加工を行えばよい。
【0039】
本発明を説明するに当たっては、コア基材7aのリジッド領域Rとフレキシブル領域Fの境界部側の側面7bのみを絶縁樹脂25で被覆する例を示したが、図6に示したように、コア基材7aに設けるスリット10をリジッド領域Rとフレキシブル領域Fの境界部に位置する外形線27に設けるだけでなく、リジッド領域Rにおけるその他の外形線27にも、当該外形線27を跨ぐようにしてスリット10を設けるようにすれば、一部に連結部28として露出はするものの、コア基材7aの側面のほぼ全面を絶縁樹脂25で被覆することができるため、多層部23の側面からの粉落ち(ゴミ)をより抑えることが可能となる。
【0040】
また、本発明を説明する際に用いたリジッド・フレックス多層プリント配線板の例として、フレキシブル基板の表裏の両面に、絶縁樹脂層と配線層との任意の層数の積層体からなる多層部を積層した両面構造のものを用いて説明したが、本発明の構成はこの限りではなく、本発明を逸脱しない範囲であれば、他の構成に利用することももちろん可能である。また、板厚、層数、材料なども本発明の範囲内で変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1:フレキシブル基板
2:フレキシブル基材
3:第一配線パターン
4、4a:カバーレイ
5:接着層
6:カバーフィルム
7:厚み調節層
7a:コア基材
7b:コア基材のリジッド領域とフレキシブル領域の境界部側の側面
8:導体層
9、9a:ダミーパターン
10、10a:スリット
11:第一絶縁樹脂層
11a:第一絶縁接着剤層
12:開口部
13:第二絶縁樹脂層
13a:第二絶縁接着剤層
14:金属箔
15:第二配線パターン
16:ベリードホール
17:ランド
18:穴埋め樹脂
19:第三絶縁樹脂層
19a:第三絶縁接着剤層
20:第三配線パターン
21:ブラインドビアホール
22:ソルダーレジスト
23:多層部
23a、23b、23c:多層板
23d:多層部の側面
24:不要部
25:絶縁樹脂
26:突出部
27:外形線
28:連結部
29:絶縁接着剤層
30:配線パターン
31:薄膜部
32:厚膜部
33:外形枠
F:フレキシブル領域
R:リジッド領域
PW:リジッド・フレックス多層プリント配線板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9