(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】撮像装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20240516BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20240516BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20240516BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20240516BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B30/00
G02B7/04 E
H04N23/55
(21)【出願番号】P 2023120809
(22)【出願日】2023-07-25
【審査請求日】2023-08-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519312957
【氏名又は名称】エーエーシー オプティックス ソリューションズ ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 高
(72)【発明者】
【氏名】色摩 和雄
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0212312(US,A1)
【文献】特開2006-317547(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111703(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0342127(US,A1)
【文献】特開2007-121518(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0059512(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00 - 5/08
G03B 30/00
G02B 7/04
H04N 23/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構と、光軸を有するレンズモジュールと、を含み、
前記駆動機構は、ベースと、前記ベースに回動可能に設けられた第1枠体と、を含み、前記ベースには、第1ヨークと駆動コイルが設けられており、前記第1枠体には、磁石が設けられ、且つ、光軸に対して傾斜する傾斜支持面を備え、前記第1ヨークが、光軸方向において前記磁石に対向して設置されており、前記磁石は、前記第1枠体を前記ベースに押圧保持するように光軸方向に沿って前記第1ヨークに吸引力を付勢し、
前記レンズモジュールは、前記第1枠体に押圧保持されたレンズキャリアを含み、前記第1枠体が前記傾斜支持面によって前記レンズキャリアを支持し、
前記駆動コイルに通電して磁界を生じさせた後、前記磁石によって前記第1枠体を前記光軸方向に垂直な平面内で回動させるように駆動し、前記第1枠体は、回動が発生した前記傾斜支持面によって、前記レンズキャリアを、光軸方向に沿って移動させるか、または光軸に対して傾斜させるように駆動
し、
前記第1枠体は、複数あり、複数の前記第1枠体が光軸を取り囲む方向に沿って前記ベースに略等間隔に設けられている、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第1枠体の数は4つであり、4つの前記第1枠体が2つずつ対向して設置されており、
対向して設置されている2つの第1枠体は、前記レンズキャリアを光軸に垂直な第1方向回りに回転させるように、回動が発生した前記傾斜支持面によって、それぞれ前記レンズキャリアを光軸に沿って逆方向に移動させるように駆動し、
対向して設置されている他の2つの第1枠体は、前記レンズキャリアを光軸及び第1方向に垂直な第2方向回りに回転させるように、回動が発生した前記傾斜支持面によって、それぞれ前記レンズキャリアを光軸に沿って逆方向に移動させるように駆動し、
4つの前記第1枠体を同時に回転させて前記レンズキャリアの前記第1方向
回りでの回転と前記第2方向
回りでの回転を重ね合わせることにより、前記レンズキャリアを光軸に対して傾斜させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
複数の前記第1枠体は、前記レンズキャリアを光軸方向に沿って移動させるように、いずれも回動が発生した前記傾斜支持面によって、前記レンズキャリアを光軸に沿って同じ方向へ移動させるように駆動する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記ベースには、複数の前記第1枠体に1対1で対応している複数の回転軸が突設されており、各前記第1枠体には、回転軸穴が設けられており、前記回転軸が対応する前記回転軸穴に穿設されることで、対応する前記第1枠体を前記ベースに回動可能に設置する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記傾斜支持面の高さは、対応する前記回転軸を取り囲む方向において逓増する、
ことを特徴とする請求項
4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記傾斜支持面の高さは、対応する前記回転軸を取り囲む方向において時計回りに逓増する、
ことを特徴とする請求項
5に記載の撮像装置。
【請求項7】
各前記傾斜支持面の対応する前記回転軸を取り囲む方向における高さの変化傾向及び高さの変化幅は、いずれも同じである、
ことを特徴とする請求項
5に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記駆動コイルと前記第1枠体の光軸方向における投影が互いに交錯している、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記レンズキャリアに球状支持突起が設けられており、前記レンズキャリアにおける球状支持突起によって前記レンズキャリアを支持するように、前記傾斜支持面が前記レンズキャリアにおける球状支持突起に当接している、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記第1枠体に球状突出部が設けられており、前記第1枠体における球状突出部によって前記第1枠体を支持するように、前記ベースが前記第1枠体における球状突出部に当接している、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記第1枠体の回動量を検出するように、前記ベースに位置検出素子が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記レンズモジュールは、前記レンズキャリアに固定されたレンズ及び第2ヨークを含み、前記第2ヨークと前記磁石が光軸方向において対向して設置されており、前記磁石は、前記レンズキャリアを前記第1枠体に押圧保持するように、光軸方向に沿って前記第2ヨークに吸引力を付勢する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記レンズキャリアの物体側面と像側面には、球状突起が設けられており、前記第1枠体には、前記球状突起と接触し且つ前記球状突起を収容する溝が設けられており、
前記傾斜支持面は前記溝内に設けられ、前記第1枠体は、前記レンズキャリアを前記第1枠体に押圧保持するように、前記溝によって前記レンズキャリアの前記球状突起に付勢する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項14】
機器本体と、請求項1~
13のいずれか1項に記載の撮像装置と、を含む、
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、撮像装置のフォーカス技術分野に関し、特に撮像装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮影技術の急速な発展に伴い、レンズの移動を駆動するための駆動機構は各種撮像装置に広く応用されており、且つこのような撮像装置も各種モバイルデバイスにも応用されている。一般的な撮像装置の駆動機構は、通常、レンズを、光軸方向または光軸に垂直な平面内で移動させるように駆動する。このような駆動機構は、駆動コイルと磁石を含むことが多く、駆動コイルがレンズ枠の外周側に固定され、駆動コイルに通電して磁界を生じさせた後、電磁力の作用によってレンズ枠内のレンズを光軸方向に移動させてフォーカス機能を実現し、レンズ枠内のレンズを光軸に垂直な平面上で移動させたり、レンズ主点を中心に揺動させたりして手振れ補正機能を実現する。
【0003】
このような駆動機構は通常、板バネを備えてレンズ枠を弾性的に支持し且つ吊り下げ、レンズ枠を他の部品と非接触状態に保つことで、レンズ枠に電磁力を付勢した時にレンズのリニアな移動効果を実現できる。しかしながら、このような弾性的な支持と吊り下げ構造は振動モードで共振を発生させるため、共振によるフォーカス中における制御性能低下を抑制することは、レンズ設計での重要な課題の1つとなっている。また、レンズの傾きを制御するための上下板バネ式の設計において、板バネの幅の設計はレンズの重量配分に影響するため、レンズ全体の設計と製造の難度が高くなる。
【0004】
したがって、上記の問題を解決するための撮像装置及び電子機器を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、上記の板バネを備えた駆動機構において、共振による制御性能低下問題及び板バネの幅による重量配分問題を解決するための撮像装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明には、撮像装置が提供され、この撮像装置は、駆動機構と、光軸を有するレンズモジュールと、を含み、前記駆動機構は、ベースと、前記ベースに回動可能に設けられた第1枠体と、を含み、前記ベースには、第1ヨークと駆動コイルが設けられており、前記第1枠体には、磁石が設けられ、且つ、光軸に対して傾斜する傾斜支持面を備え、前記第1ヨークが、光軸方向において前記磁石に対向して設置されており、前記磁石は、前記第1枠体を前記ベースに押圧保持するように光軸方向に沿って前記第1ヨークに吸引力を付勢し、前記レンズモジュールは、前記第1枠体に押圧保持されたレンズキャリアを含み、前記第1枠体が前記傾斜支持面によって前記レンズキャリアを支持し、前記駆動コイルに通電して磁界を生じさせた後、前記磁石によって前記第1枠体を前記光軸方向に垂直な平面内で回動させるように駆動し、前記第1枠体は、回動が発生した前記傾斜支持面によって、前記レンズキャリアを、光軸方向に沿って移動させるか、または光軸に対して傾斜させるように駆動する。
【0007】
いくつかの実施例では、前記第1枠体は、複数あり、複数の前記第1枠体が光軸を取り囲む方向に沿って前記ベースに等間隔に設けられている。
【0008】
いくつかの実施例では、前記第1枠体の数は4つであり、4つの前記第1枠体が2つずつ対向して設置されており、対向して設置されている2つの第1枠体は、前記レンズキャリアを光軸に垂直な第1方向回りに回転させるように、回動が発生した前記傾斜支持面によって、それぞれ前記レンズキャリアを光軸に沿って逆方向に移動させるように駆動し、対向して設置されている他の2つの第1枠体は、前記レンズキャリアを光軸及び第1方向に垂直な第2方向回りに回転させるように、回動が発生した前記傾斜支持面によって、それぞれ前記レンズキャリアを光軸に沿って逆方向に移動させるように駆動し、4つの前記第1枠体を同時に回転させて前記レンズキャリアの第1方向での回転と第2方向での回転を重ね合わせることにより、前記レンズキャリアを光軸に対して傾斜させる。
【0009】
いくつかの実施例では、複数の前記第1枠体は、前記レンズキャリアを光軸方向に沿って移動させるように、いずれも回動が発生した前記傾斜支持面によって、前記レンズキャリアを光軸に沿って同じ方向へ移動させるように駆動する。
【0010】
いくつかの実施例では、前記ベースには、複数の前記第1枠体に1対1で対応している複数の回転軸が突設されており、各前記第1枠体には、回転軸穴が設けられており、前記回転軸が対応する前記回転軸穴に穿設されることで、対応する前記第1枠体を前記ベースに回動可能に設置する。
【0011】
いくつかの実施例では、前記傾斜支持面の高さは、対応する前記回転軸を取り囲む方向において逓増する。
【0012】
いくつかの実施例では、前記傾斜支持面の高さは、対応する前記回転軸を取り囲む方向において時計回りに逓増する。
【0013】
いくつかの実施例では、各前記傾斜支持面の対応する前記回転軸を取り囲む方向における高さの変化傾向及び高さの変化幅は、いずれも同じである。
【0014】
いくつかの実施例では、前記駆動コイルと前記第1枠体の光軸方向における投影が互いに交錯している。
【0015】
いくつかの実施例では、前記レンズキャリアに球状支持突起が設けられており、前記レンズキャリアにおける球状支持突起によって前記レンズキャリアを支持するように、前記傾斜支持面が前記レンズキャリアにおける球状支持突起に当接している。
【0016】
いくつかの実施例では、前記第1枠体に球状突出部が設けられており、前記第1枠体における球状突出部によって前記第1枠体を支持するように、前記ベースが前記第1枠体における球状突出部に当接している。
【0017】
いくつかの実施例では、前記第1枠体の回動量を検出するように、前記ベースに位置検出素子が設けられている。
【0018】
いくつかの実施例では、前記レンズモジュールは、前記レンズキャリアに固定されたレンズ及び第2ヨークを含み、前記第2ヨークと前記磁石が光軸方向において対向して設置されており、前記磁石は、前記レンズキャリアを前記第1枠体に押圧保持するように、光軸方向に沿って前記第2ヨークに吸引力を付勢する。
【0019】
いくつかの実施例では、前記レンズキャリアの物体側面と像側面には、球状突起が設けられており、前記第1枠体には、前記球状突起と接触し且つ前記球状突起を収容する溝が設けられており、前記第1枠体は、前記レンズキャリアを前記第1枠体に押圧保持するように、前記溝によって前記レンズキャリアの前記球状突起に付勢する。
【0020】
いくつかの実施例では、本発明には、電子機器がさらに提供され、この電子機器は、機器本体と、上記の撮像装置と、を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有益な効果は、ベースに傾斜支持面を備えた第1枠体を設け、第1枠体の傾斜支持面を利用してレンズキャリアを支持し、ベースにおける駆動コイルが第1枠体を回動させるように駆動するときに、傾斜支持面がレンズキャリアに対して移動するようになり、傾斜支持面に位置するレンズキャリアが光軸に対して変位することを招く。これにより、レンズキャリアはレンズを、光軸方向に沿って移動させるか、または光軸に対して傾斜させるように駆動することができ、ひいてはレンズの光軸方向での移動によってフォーカス機能を実現し、レンズの光軸に対する傾斜によって手振れ補正機能を実現することができる。このような構造設計は、傾斜支持面を利用してフォーカスと手振れ補正機能を実現し、板バネを別途設ける必要がなく、板バネ共振による制御性能低下問題と板バネ幅による重量配分問題を避けることができることにある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
一つ又は複数の実施例は、対応する添付の図面における図で例示的に説明されるが、これらの例示的な説明は、実施例を限定するものではなく、添付の図面において同じ符号で示す部品は類似する部品であり、特に断りのない限り、添付の図面における図は縮尺に制限されない。
【
図1】
図1は、本発明の一実施例の撮像モジュールの斜視構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す撮像モジュールの分解構成を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施例の別の撮像モジュールのレンズキャリアと第1枠体との合わせ構造の斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すレンズキャリアと第1枠体との合わせ構造の側面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施例に係る撮像システムの構成を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施例に係る別の撮像システムの構成を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施例に係るカメラの構成を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施例に係る電子機器の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
100 撮像装置
10 駆動機構
11 第1枠体
110 回転軸穴
112 支持面
114 球状突出部
116 溝
12 ベース
13 第1ヨーク
14 駆動コイル
15 磁石
16 回転軸
17 位置検出素子
18 フレキシブル基板
19 制震ゲル
20 レンズモジュール
200 ケース
21 レンズキャリア
210 球状突起
212 球状支持突起
22 レンズ
220 レンズ主点
222 直交面
23 第2ヨーク
300 画像センシングユニット
400 屈曲式の光学機構
500 絞り機構
600 機器本体
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明実施形態の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、図面を参照しながら本発明の各実施形態を詳しく説明する。ただ、本発明の各実施形態において、本発明に対する理解を便宜にするために、多くの技術的細部まで記載されているが、これらの技術的細部及び以下の各実施形態に基づく各種の変化及び修正がなくても、本発明が保護しようとする技術方案を実現可能であることは、当業者にとっては自明なことである。
【0025】
本発明の実施形態において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「中」、「垂直」、「水平」、「横方向」、「縦方向」などの用語に示される方位または位置関係は、図面に基づいて示される方位または位置関係である。これらの用語は、主として、本発明及びその実施形態をよりよく説明するためのものであり、指示された装置、ユニットまたは構成要素が特定の方位を有するか、または特定の方位で構成され、操作されなければならないことを限定するためには使用されるものではない。
【0026】
また、上記の一部の用語は、方位または位置関係を表す以外に、他の意味を表すためにも使用することができる。例えば、用語「上」は、場合によっては依存関係または接続関係を表すためにも使用することができる。当業者にとって、これらの用語の本発明における具体的な意味は、具体的な状況に応じて理解することができる。
【0027】
さらに、用語「取り付ける」、「設置する」、「設けられている」、「開設」、「接続」、「繋がる」は広義として理解されなければならない。例えば、固定接続、取り外し可能な接続、または一体的な構造であってもよいし、機械的接続、または電気的接続であってもよく、直接繋がっていてもよく、中間媒体を介して間接的に接続されていてもよく、2つの装置、ユニットまたは構成要素間の内部の連通であってもよい。当業者にとって、上記の用語の本発明における具体的な意味は、具体的な状況に応じて理解することができる。
【0028】
さらに、「第1」、「第2」などの用語は、主に、指示された装置、ユニットまたは構成要素の相対的な重要性と量を明示または暗示するためのものではなく、異なる装置、ユニットまたは構成要素を区別するために使用される(具体的な種類と構成は同じでも異なる場合もある)。特に説明がない限り、「複数」は2つ以上を意味する。
【0029】
以下、本発明が提供する撮像装置及び電子機器の実現詳細について具体的に説明する。以下の内容は提供する実現詳細を理解しやすくするためだけであり、本発明を実施するための必須なものではない。
【0030】
本発明の第1実施例は、撮像装置100に関し、
図1~
図6に示すように、この撮像装置は、駆動機構10と、光軸OO’を有するレンズモジュール20と、を含み、駆動機構10は、ベース12と、ベース12に回動可能に設けられた第1枠体11と、を含み、ベース12には、第1ヨーク13と駆動コイル14が設けられており、第1枠体11には、磁石15が設けられ、且つ、光軸OO’の直交面222に対して傾斜する傾斜支持面112を備え、第1ヨーク13が、外力作用を受けていない時の第1枠体11における磁石15の位置(光軸OO’方向において)と正対し、磁石15は、第1枠体11をベース12に押圧保持するように光軸OO’方向に沿って第1ヨーク13に吸引力を付勢し、レンズモジュール20は、レンズキャリア21と、レンズキャリア21に固定されたレンズ22及び第2ヨーク23と、を含み、第2ヨーク23と磁石15が光軸OO’方向において対向して設置されており、磁石15は、レンズキャリア21を第1枠体11に押圧保持するように、光軸OO’方向に沿って第2ヨーク23に吸引力を付勢し、第1枠体11が傾斜支持面112によってレンズキャリア21を支持し、駆動コイル14に通電して磁界を生じさせた後、磁石15によって第1枠体11を光軸OO’方向に垂直な平面内で回動させるように駆動し、第1枠体11は、回動が発生した傾斜支持面112によって、レンズキャリア21を、光軸OO’方向に沿って移動させるか、または光軸OO’に対して傾斜させるように駆動する。
【0031】
従来技術と比べて、本発明の実施例では、ベース12に傾斜支持面112を備えた第1枠体11を設け、第1枠体11の傾斜支持面112を利用してレンズキャリア21を支持し、ベース12における駆動コイル14が第1枠体11を回動させるように駆動するときに、傾斜支持面112がレンズキャリア21に対して移動するようになり、傾斜支持面112に位置するレンズキャリア21が光軸OO’に対して変位することを招く。これにより、レンズキャリア21はレンズ22を、光軸OO’方向に沿って移動させるか、または光軸OO’に対して傾斜させるように駆動することができ、ひいてはレンズ22の光軸OO’方向での移動によってフォーカス機能を実現し、レンズ22の光軸OO’に対する傾斜によって手振れ補正機能を実現することができる。このような構造設計は、傾斜支持面112を利用してフォーカスと手振れ補正機能を実現し、板バネを別途設ける必要がなく、板バネ共振による制御性能低下問題と板バネ幅による重量配分問題を避けることができる。
【0032】
具体的には、駆動機構10は、第1枠体11と、第1枠体11を支持するためのベース12と、ベース12に設けられた第1ヨーク13及び駆動コイル14と、第1枠体11に設けられた磁石15と、ベース12に突設された回転軸16と、を含む。
【0033】
第1ヨーク13はベース12に設けられ、且つ、磁石15によって光軸OO’方向に沿って吸引されるように、光軸OO’方向において磁石15と対向して設置され、これによって、第1枠体11がベース12に押圧保持されて、第1枠体11を固定する役割を果たす。駆動コイル14と第1枠体11の光軸OO’方向における投影が互いに交錯している。
【0034】
第1枠体11の数は4つであり、4つの第1枠体11が光軸OO’を取り囲む方向に沿ってベース12に等間隔に設けられており、且つ2つずつ対向している。各第1枠体11には、回転軸穴110及び光軸OO’の直交面222に対して傾斜している傾斜支持面112が設けられている。これに対応して、ベース12における回転軸16も4つあり、各第1枠体11における回転軸穴110は4つの回転軸16と1対1で対応し、各回転軸16が対応する回転軸穴110に穿設されることで、対応する第1枠体11をベース12に回動可能に固定保持する。これにより、各第1枠体11は対応する回転軸16を周回して時計回り及び反時計回りに回転することができる。さらに、1つの実行可能な実施例では、各第1枠体11の傾斜支持面112の高さ(即ち、傾斜支持面112の光軸OO’方向における高さ、言い換えれば、傾斜支持面112とベース12が位置する平面との間のピッチ)は、対応する回転軸16を取り囲む方向において時計回りに逓増する。なお、前記設計方式は、第1枠体11をベース12に回動可能に固定するための1つの実行可能な方式であり、他の実施形態では、異なる構造設計プランによって第1枠体11の回動可能な設置を実現してもよく、例えば、第1枠体11に凸軸を設け、ベース12に凸軸と1対1で対応する回転溝/穴を設け、ベース12の回転溝/穴にに伸び込む凸軸によって第1枠体11を回動可能にベース12に固定保持してもよい。理解できるように、当業者にとって、第1枠体11をベース12に回動可能に固定保持する方法がまだたくさんあり、ここでは繰り返して説明する必要がない。
【0035】
レンズモジュール20は、収容空間を有するケース200と、前記収容空間内に設けられたレンズキャリア21と、レンズキャリア21に固定されたレンズ22及び第2ヨーク23と、を含む。第2ヨーク23と磁石15は光軸OO’方向に対向して設置され、磁石15は、レンズキャリア21を第1枠体11に押圧保持するように、光軸OO’方向に沿って第2ヨーク23に吸引力を付勢し、第1枠体11は傾斜支持面112によってレンズキャリア21を支持する。理解できるように、1つの変更された実施形態では、レンズキャリア21の固定は非ヨーク方式で実現されることができ、例えば、
図7及び
図8に示すように、レンズキャリア21の両面(物体側面と像側面)に球状突起210が設けられ、球状突起210と接触し且つ球状突起210を収容する溝116が第1枠体11に設けられることで、第2ヨーク23を使わずに第1枠体11の位置に応じてレンズキャリア21に付勢することができ、前記傾斜支持面は前記溝116内に設けられる。同様に、前記レンズキャリア21の固定も板バネなどの弾性部材を使って実現でき、具体的には、レンズキャリア21とベース12の間に設けられた弾性部材を利用して、光軸OO’方向においてレンズキャリア21を第1枠体11とベース12へ押圧保持する。
【0036】
さらに、1つの実行可能な実施例では、レンズキャリア21に支持突起212が設けられ、傾斜支持面112がレンズキャリア21における支持突起212に当接し、このように、レンズキャリア21における支持突起212によって前記レンズキャリア21を支持する。
【0037】
駆動コイル14に通電して磁界を生じさせた後、駆動コイル14は磁石15に付勢された磁界力によって第1枠体11を光軸OO’方向に垂直な平面内で回動させるように駆動し、第1枠体11は、回動が発生した傾斜支持面112によって支持突起212に付勢し、さらにレンズキャリア21を光軸OO’方向に沿って移動させるか、または光軸OO’に対して傾斜させるように駆動する。
【0038】
具体的には、傾斜支持面112の高さが対応する回転軸16を取り囲む方向において時計回りに逓増するため、各第1枠体11が同時に対応する回転軸16を取り囲んで時計回りまたは反時計回りに回転した時、回動が発生した傾斜支持面112によってレンズキャリア21を光軸OO’方向に沿って像側または物体側へ押し、レンズキャリア21によってレンズ22を光軸OO’方向に移動させるように駆動することができる。
【0039】
また、回転した第1枠体11の数とその回転方向を制御することで、第1枠体11が一部の位置で光軸OO’方向に沿ってレンズキャリア21を像側へ押し、一部の位置で光軸OO’方向に沿ってレンズキャリア21を物体側へ押すことができ、レンズキャリア21によってレンズ22を光軸OO’に対して傾斜させるように駆動する。
【0040】
図6に示すように、対向する第1枠体11を互いに逆の方向へ回転させるように駆動する時、レンズキャリア21を光軸OO’に垂直な平面内の異なる軸回りに回動させることができる。例えば、図の左上にある第1枠体11を時計回りに回転させ、図の右下にある第1枠体11を反時計回りに回転させるように駆動すると、右下の第1枠体11は、傾斜支持面112の高さが高くなるため、レンズキャリア21をこの箇所で紙面外側(即ち、物体側)へ押し、左上の第1枠体11は、傾斜支持面112の高さが低くなるため、レンズキャリア21をこの箇所で紙面内側(即ち、像側)へ移動させる。このように、レンズキャリア21を
図6に示すX軸(X軸が光軸OO’に垂直である)回りに回動させる。同じように、
図6の左下にある第1枠体11を時計回りに回転させ、図の右上にある第1枠体11を反時計回りに回転させるように駆動すると、右上にある第1枠体11は、傾斜支持面112の高さが高くなるため、レンズキャリア21をこの箇所で紙面外側(即ち、物体側)へ押し、左下の第1枠体11は、傾斜支持面112の高さが低くなるため、レンズキャリア21をこの箇所で紙面内側(即ち、像側)へ移動させる。このように、レンズキャリア21を
図6に示すY軸(Y軸がX軸に垂直で、且つ光軸OO’に垂直である)回りに回動させる。つまり、対向して設置された2つの第1枠体11を異なる方向へ回転させるように駆動する場合、レンズキャリア21によってレンズ22をX軸またはY軸回りに回動させることができる。4つの第1枠体11を回転させるように同時に駆動する場合、レンズキャリア21の第1方向での回転と第2方向での回転を重ね合わせ、これによって、レンズキャリア21の光軸OO’に対する任意の角度と方位の傾斜を実現することができる。
【0041】
このように、各第1枠体11の回転はレンズキャリア21を異なる高さや角度に押すことができ、複数の駆動コイル14または対向する駆動コイル14を同時に駆動することで、レンズキャリア21はレンズ22を駆動して光軸OO’方向に沿ってフォーカス機能を実現し、光軸OO’に対して傾斜して手振れ補正機能を実現することができる。
【0042】
このような撮像装置100では、レンズキャリア21の支持固定には、板バネではなく第1枠体11を使用しているため、部品点数を増加しないまま、レンズキャリア21の物理的支持構造を補強し、撮像装置100の落下の影響を低減している。また、撮像装置100では、フォーカス及び手振れ補正を実現する際に板バネの共振を考慮する必要がなく、傾斜支持面の高さ設計パラメータに基づいて第1枠体11の回転角度を制御するだけで、レンズキャリア21はレンズ22を、ピントを調整し、かつレンズ主点220を中心に揺動するように駆動し、その制御方法がより簡単になる。また、レンズキャリア21にその運動を駆動するためコイルを設ける必要がなくなるため、電磁駆動時にコイルに発生する熱がレンズキャリア21とレンズ22に伝達されて熱膨張を生じさせることを回避し、それによる光学特性の劣化及び画像センサーへのノイズの影響を避け、ひいては撮像品質を高め、大型画像センサーや大型レンズへの適応性が高くなる。
【0043】
もちろん、理解できるように、傾斜支持面112の高さの変化は、対応する回転軸16を取り囲む方向において時計回りに逓減するように設定されてもよい。これにより、各第1枠体11が対応する回転軸16を同時に周回して時計回りまたは反時計回りに回転した場合、レンズキャリア21を光軸OO’方向に沿って物体側または像側(レンズキャリア21の移動方向が前述した方式と逆である)へ押し、同様に光軸OO’方向に沿ったフォーカス機能と光軸OO’方向に対して傾斜する手振れ補正機能を実現することができる。
【0044】
理解できるように、各第1枠体11の回転が独立しているため、各第1枠体11の対応する回転軸16を取り囲む方向における高さの変化傾向及び/または高さの変化幅は、同じであってもよいし、異なってもよく、各第1枠体11に対して単独に制御して、各第1枠体11が回転した後の傾斜支持面112の高さの変化は、制御できるようにするだけで、異なるフォーカス及び/又は手振れ補正機能を実現できる。さらに、各第1枠体11が同じ角度回転した後の傾斜支持面112の高さの変化を同じようにし、レンズ22の移動距離の制御をより容易にするために、1つの実行可能な実施例では、各傾斜支持面112の対応する回転軸16を取り囲む方向における高さの変化傾向と高さの変化幅はいずれも同じである。理解できるように、前記傾斜支持面112は、一定の勾配を持つ傾斜平面であってもよいし、高さが徐々に増加する曲面であってもよく、第1枠体11が回転軸16を周回して回動する時、レンズキャリア21を支持する支持箇所の高さが変化することを確保すれば、レンズキャリア21のフォーカスと手振れ補正移動を実現することができる。1つの実行可能な実施例では、傾斜支持面112は製造が容易な傾斜平面である。
【0045】
なお、1つの好ましい実施形態では、レンズキャリア21の支持突起212は球状支持突起である。これにより、傾斜支持面112が支持突起212に付勢することで両者が相対的に移動する際に、両者間の抵抗を低減し、両者間の相対的な移動がよりスムーズになり、第1枠体11の回転角度の正確な制御が容易になり、フォーカスと手振れ補正の操作を正確に制御できる。好ましくは、支持突起212には、潤滑油、グリースなどの潤滑剤を塗布して、摺動抵抗をさらに下げることができる。
【0046】
より好ましくは、1つの実行可能な実施形態では、第1枠体11に同様に球状突出部114が設けられており、第1枠体11における球状突出部114によって第1枠体11を支持するように、ベース12が第1枠体11における球状突出部114に当接する。これにより、第1枠体11とベース12の間の抵抗が低減され、両者間の相対的な回動がより滑らかになり、第1枠体11の回転角度の正確な制御が容易になり、フォーカスと手振れ補正の操作をより正確に制御することができる。もちろん、第1枠体11上の球状突出部114に潤滑油、グリースなどの潤滑剤を塗布して、摺動抵抗をさらに下げることもできる。
【0047】
さらに、第1枠体11に正確な回転角度制御を提供するために、1つの好ましい実施形態では、ベース12に位置検出素子17が設けられてもよい。位置検出素子17は磁石15の移動による磁束の変化によって第1枠体11の回動量を検出し、第1枠体11の回転角度制御に基礎を提供し、防振制御が容易になる。位置検出素子17の数は少なくとも3つまたはそれ以上であってもよい。好ましくは、1つの実行可能な実施形態では、フレキシブル基板18をさらに含み、駆動コイル14と位置検出素子17がいずれもフレキシブル基板18に設けられ、これによって、フレキシブル基板18を介して電気制御信号を取得し、電磁駆動と位置検出を行うことができる。
【0048】
また、第1枠体11とベース12との間に生じた相対的な移動による振動と衝撃を低減するために、1つの実行可能な実施形態では、ベース12と第1枠体11との間に制震ゲル19が挟設されることもでき、撮像装置100の突発的な通電時のリップル動作に制震効果を発揮し、撮像装置100をより正確に制御して手振れ補正機能を実現することが便利である。
【0049】
理解できるように、上記の実施形態では、第1枠体11の数は4つであるが、他の実施形態では、第1枠体11の回動によって、レンズ22の光軸OO’方向における移動と光軸OO’に対する傾斜を実現できれば、第1枠体11の数は3つであってもよいし、5つ、6つ、7つまたはそれ以上であってもよい。それに対応して、各第1枠体11が相対的に独立して回動できるように、ベース12上の回転軸16は3つ、5つ、6つ、7つ、またはそれ以上であってもよく、第1枠体11と1対1で対応して、各第1枠体11上の回転軸穴110を通じて、対応する第1枠体11を回動可能にベース12に固定保持する。
【0050】
図9に示すように、本発明の実施例は、画像センシングユニット300と、上記の実施例における撮像装置100と、を含む撮像システムに関するものである。
【0051】
従来技術と比べて、画像センシングユニット300の物体側に上記の実施例における撮像装置100を設けることで、結像できる撮像システムを形成し、板バネを別途設ける必要がなく、このような撮像システムは傾斜支持面を利用してフォーカスと手振れ補正機能を実現し、板バネ共振による制御性能の低下問題と板バネ幅による重量配分問題を避けている。
【0052】
図10に示すように、本発明の実施例は、さらに、屈曲式の光学機構400と、上記の実施例における撮像装置100と、を含む撮像システムに関するものである。
【0053】
従来技術と比べて、屈曲式の光学機構400に上記の実施例における撮像装置100を設けることで、同様に、板バネを別途設ける必要がなく、傾斜支持面を利用してフォーカスと手振れ補正機能を実現し、板バネ共振による制御性能低下問題と板バネ幅による重量配分問題を避けることができる。
【0054】
図11に示すように、本発明の実施例は、さらに、絞り機構500と、上記の実施例における撮像装置100と、を含むカメラに関するものである。。
【0055】
従来技術と比べて、絞り機構500と協働する上記の実施例における撮像装置100をカメラに設けることで、同様に、板バネを別途設ける必要がなく、傾斜支持面によってフォーカスと手振れ補正機能を実現し、板バネ共振による制御性能低下問題と板バネ幅による重量配分問題を避けることができる。
【0056】
理解できるように、上記の撮像装置、撮像モジュール及びカメラは、撮影機能を有する各種電子機器に適用されることができ、このような電子機器は、携帯電話、タブレット、スマートウォッチなどの携帯端末であってもよいし、ノートパソコンまたはその他の端末であってもよい。
【0057】
図12に示すように、本発明の実施例は、さらに、機器本体600と、機器本体に設けられた上記の実施例における撮像装置100と、を含む撮影機能付き電子機器に関するものである。
【0058】
従来技術と比べて、電子機器に上記の実施例における撮像装置100を設けることで、同様に、板バネを別途設ける必要がなく、傾斜支持面を利用してフォーカスや手振れ補正機能を実現し、板バネ共振による制御性能低下問題と板バネ幅による重量配分問題を避けることができる。
【0059】
上記の各実施例は本発明を実現するための具体的な実施例であるが、実際の応用において、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、形式及び細部に対する種々の変更を行うことができることは、当業者であれば理解できるはずである。
【要約】 (修正有)
【課題】板バネ共振による制御性能低下問題と板バネ幅による重量配分問題を解決するための撮像装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】この撮像装置は、駆動機構と、レンズモジュールと、を含み、前記駆動機構は、ベースと、前記ベースに回動可能に設けられた第1枠体と、を含み、前記ベースには、第1ヨークと駆動コイルが設けられ、前記第1枠体には、磁石が設けられ、且つ、光軸に対して傾斜する傾斜支持面を備え、前記レンズモジュールは、レンズキャリアを含み、前記第1枠体が前記傾斜支持面によって前記レンズキャリアを支持し、前記駆動コイルに通電して磁界を生じさせた後、前記磁石によって前記第1枠体を前記光軸方向に垂直な平面内で回動させるように駆動し、前記第1枠体は、回動が発生した前記傾斜支持面によって、前記レンズキャリアを、光軸方向に沿って移動させるか、または光軸に対して傾斜させるように駆動する。
【選択図】
図2