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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】保冷庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 21/14 20060101AFI20240516BHJP
【FI】
F25D21/14 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023505222
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2022004482
(87)【国際公開番号】W WO2022190734
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2021038276
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】PHCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 稔
(72)【発明者】
【氏名】白田 満将
(72)【発明者】
【氏名】西村 巧
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-066296(JP,A)
【文献】特開2000-253967(JP,A)
【文献】特開平08-219621(JP,A)
【文献】実開平06-018891(JP,U)
【文献】国際公開第2021/039445(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00 ~ 31/00
A47F 3/04
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口を有する箱体と、
前記開口を縁取る枠体と、
前記枠体に取り付けられ、左側端部および右側端部の少なくとも一方に上下に延びる排水路を有する引戸と、
前記排水路に臨むように前記引戸の上面に取り付けられ、かつ、通水性を有する多孔質体と、
前記枠体に設けられ、前記多孔質体から前記排水路に流出した水を排水する排水口と、を備えている、
保冷庫。
【請求項2】
前記多孔質体は、連続気泡構造の発泡体である、
請求項1に記載の保冷庫。
【請求項3】
前記多孔質体は、前記引戸の上面から前記排水路の中に亘って取り付けられている、
請求項1または2の何れか1項に記載の保冷庫。
【請求項4】
前記引戸は、前記引戸の上端の前方側及び後方側に設けられ、樋を構成する一対の長尺部を有する、
請求項1から3の何れか1項に記載の保冷庫。
【請求項5】
前記引戸は戸車を有し、
前記枠体は、前記引戸が閉じるときに前記戸車が落ち込み、前記引戸が開くときに前記戸車が乗り上げる段差部を有し、
前記多孔質体は、前記引戸が開くときに前記枠体の上辺部に接近する、
請求項1から4の何れか1項に記載の保冷庫。
【請求項6】
閉じられた状態の前記引戸の上面に対向するように前記枠体に取り付けられ、断熱性を有する第2の多孔質体をさらに備えている、
請求項1から5の何れか1項に記載の保冷庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保冷庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、結露水が室内へ侵入することを防止するために、サッシ窓枠の上枠およびサッシ戸框に結露水の案内溝を有するサッシが開示されている。結露水は、案内溝を通って、サッシ窓枠の下枠に導出される。下枠に導出された結露水は、例えば、下枠に設けられている排出穴から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実願昭50-060830号(実開昭51-140544号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薬剤等を低温にて保管する保冷庫は、保管室内と保管室外との温度差が比較的大きいため、保管室を開閉する引戸および引戸が取り付けられている枠体に結露水が比較的多く発生し、下枠に向けて流れ落ちる。結露水が下枠に比較的多く流れ落ちると、結露水が排出穴からすべて排出されずに下枠に残ってしまう場合がある。
【0005】
本開示は、保冷庫において、結露水の排水性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示における保冷庫は
方に開口を有する箱体と
口を縁取る枠体と
体に取り付けられ、左側端部および右側端部の少なくとも一方に上下に延びる排水路を有する引戸と
水路に臨むように引戸の上面に取り付けられ、かつ、通水性を有する多孔質体と、
枠体に設けられ、多孔質体から排水路に流出した水を排水する排水口と、
備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の保冷庫によれば、結露水の排水性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る保冷庫の斜視図
図2】引戸が閉じている状態における引戸の上端部および枠体の上端部を示す断面図
図3】枠体の段差部および引戸の戸車を示す図
図4】引戸が閉じている状態における引戸の水平断面図
図5図2に示すV-V線の断面図
図6】引戸が移動している状態を示す図
図7】本開示の実施形態の変形例に係る保冷庫の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の保冷庫の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下では、図1の矢印で示すように、左側引戸30および右側引戸40が配置されている側を保冷庫1の前方とし、その反対側を保冷庫1の後方とする。また、保冷庫1を前方から見たときの左側および右側を保冷庫1の左方および右方とする。また、保冷庫1が設置される面から離れる側を保冷庫1の上方とし、その反対側を保冷庫1の下方とする。
【0010】
保冷庫1は、薬剤を低温にて保管する薬品保冷庫である。なお、保冷庫1は、血液保冷庫または恒温器であってもよい。保冷庫1は、図1に示されるように、箱体10、枠体20、左側引戸30、右側引戸40、および、冷凍回路を構成する部材(不図示)が収納されている機械収納室50を備えている。左側引戸30および右側引戸40は、「引戸」の一例である。
【0011】
箱体10は、前面に、左側引戸30または右側引戸40の移動により開口する開口Hを有する。箱体10の外側面と内側面との間には、断熱材が充填されている。箱体10の内側面に囲まれた空間は、保管室であり、薬剤が収容される空間である。
【0012】
枠体20は、開口Hを縁取るように箱体10に設けられている。枠体20は、左側引戸30および右側引戸40が左右方向に移動可能に設けられている。左側引戸30は、右側引戸40より庫内側にて移動する。枠体20は、上枠21、下枠22および一対の縦枠23を備えている。
【0013】
上枠21は、枠体20の上辺部に相当する。上枠21は、図2および図5に示されるように、左側引戸30を左右方向に案内する案内溝21aを有している。案内溝21aの後側壁には、補助シール部材S1が左右方向に延びるように配置されている。また、案内溝21aの前側壁の下端部には、突出部21a1が左右方向に延びるように形成されている。補助シール部材S1および突出部21a1の詳細については後述する。
【0014】
また、案内溝21aには、開閉検出装置24、および、断熱多孔質体25が取り付けられている。開閉検出装置24および断熱多孔質体25は、左側引戸30に接触しないように取り付けられている。断熱多孔質体25は、「第2の多孔質体」の一例である。
【0015】
開閉検出装置24は、左側引戸30の開閉を検出するものである。開閉検出装置24は、例えば磁気スイッチである。
【0016】
断熱多孔質体25は、断熱性を有する多孔質体である。断熱多孔質体25は、独立発泡構造を有する発泡体である。断熱多孔質体25は、通水性を有さない。断熱多孔質体25は、例えばポリエチレンなどの高分子材料を用いて形成されている。断熱多孔質体25が上枠21に取り付けられることにより、開口Hの断熱性を向上させることができる。なお、断熱多孔質体25は、通水性を有する連続気泡構造でもよい。
【0017】
断熱多孔質体25は、直方体状に形成されている。断熱多孔質体25は、左側引戸30の上面に対向するように取り付けられている。
【0018】
下枠22は、図3および図5に示されるように、一対のレール22a、段差部22bおよび排水口22cを有している。
【0019】
一対のレール22aは、左側引戸30を案内するものである。一対のレール22aは、具体的には、後述する戸車33を案内する。
【0020】
段差部22bは、左側引戸30が閉じるときに後述する戸車33が落ち込み、左側引戸30が開くときに戸車33が乗り上げる部位である。段差部22bは、下枠22の一対のレール22aの間において、閉じている状態(以下、閉状態ともいう)の左側引戸30が位置する部位に凹状に形成されている。段差部22bは、戸車33の個数に対応する個数分、形成されている。左側引戸30は戸車33を2つ有しているため、左側引戸30に対応する段差部22bは、2つ形成されている。また、左側引戸30に対応する2つの段差部22bにおいて、左側の段差部22bは、右側の段差部22bの深さより深くなるように設けられている。
【0021】
排水口22cは、下枠22に開口する貫通穴である。排水口22cは、排水管(不図示)を介して結露水を機械収納室50内に排出する。
【0022】
また、上枠21および下枠22は、左側引戸30用の上述の各構成と同様の右側引戸40用の各構成を有している。上枠21および下枠22が有する右側引戸40用の各構成は、左側引戸30用の各構成よりも庫外側に設けられている。また、右側引戸40においても戸車33を2つ有しているため、右側引戸40に対応する段差部22bも、2つ形成されている。また、右側引戸40に対応する2つの段差部22bにおいて、右側の段差部22bは、左側の段差部22bの深さより深くなるように設けられている。
【0023】
左側引戸30は、図2から図5に示されるように、枠状の框部31、框部31に取り付けられている一対のガラス板32、および、2つの戸車33、を有している。框部31は、上框31a、左框31b、右框31cおよび下框31dを有している。なお、図2から図5には、閉状態である左側引戸30が示されている。
【0024】
上框31aは、一対の長尺部31a1を有している。一対の長尺部31a1は、上框31aの上面の前端部および後端部に設けられ、樋を構成する側壁である。一対の長尺部31a1の右側端部同士は、右框31cの上端部によって接続されている。つまり、上框31aの上面は、一対の長尺部31a1および右框31cによって、後端部から右側端部および前端部にかけて取り囲まれている。上框31aの上面は、左側引戸30の上面に相当する。
【0025】
左框31bは、上下方向に沿って延び、両端を開口する上面視矩形状の筒状に形成されている。左框31bの内側は、後述する結露水が通る排水路である。つまり、排水路は、左側引戸30の左側端部に設けられている。このように、排水路は、筒状に設けられているが、溝状に設けられてもよい。また、左框31bは、右側壁の上端部が切り欠かれている切り欠き部31b1を有している。
【0026】
戸車33は、下框31dに2つ取り付けられている。戸車33の個数が2つに限定されないことは言うまでもない。戸車33が回転することで、左側引戸30が一対のレール22aに沿って移動する。
【0027】
また、左側引戸30の上面には、マグネット34、通水多孔質体35、および、第2の通水多孔質体36が取り付けられている。通水多孔質体35、および、第2の通水多孔質体36は、「多孔質体」の一例である。
【0028】
マグネット34は、左側引戸30が閉じている状態において、開閉検出装置24に対向する部位に取り付けられている。マグネット34は、開閉検出装置24を動作させるものである。
【0029】
通水多孔質体35は、通水性を有する多孔質体である。通水多孔質体35は、連続気泡構造を有する発泡体である。通水多孔質体35は、例えばポリエチレンなどの高分子材料を用いて形成されている。通水多孔質体35は、弾性を有する。なお、通水多孔質体35は、金属、不織布、フェルト、木材およびセラミック等によって形成されていてもよい。
【0030】
通水多孔質体35は、直方体状に形成され、マグネット34の左方に取り付けられている。通水多孔質体35の上端は、一対の長尺部31a1の上端より低い。通水多孔質体35は、左框31bの内側に臨むように、左側引戸30の上面(すなわち上框31aの上面)に取り付けられている。左框31bは、上記のように両端を開口する筒状に形成されているため、左框31bの内側に位置する通水多孔質体35の部位は、下方に臨んでおり、かつ、下枠22に面している。
【0031】
通水多孔質体35は、具体的には、左側引戸30の上面から左框31bの中に亘って取り付けられている。通水多孔質体35は、正面視L字状の形状を有し、上框31aの上面における一対の長尺部31a1の間、切り欠き部31b1、および、左框31bの内周面に亘って取り付けられている。なお、通水多孔質体35が柔軟な部材で形成されている場合は、直線状の部材を折り曲げて貼り付けることで取り付けられても良い。
【0032】
第2の通水多孔質体36は、通水性を有する多孔質体である。第2の通水多孔質体36は、通水多孔質体35と同じ材質によって形成されている。なお、第2の通水多孔質体36の材質は、通水多孔質体35の材質と異なってもよい。
【0033】
第2の通水多孔質体36は、直方体状に形成され、上框31aの上面において、マグネット34の右方に取り付けられている。第2の通水多孔質体36の上面は、一対の長尺部31a1の上端より高い。第2の通水多孔質体36は、左側引戸30が開閉しても、開閉検出装置24および断熱多孔質体25に接触しない。
【0034】
また、左側引戸30は、パッキン37、一対の上シール部材S2および一対の下シール部材S3を有している。パッキン37、一対の上シール部材S2および一対の下シール部材S3は、左側引戸30が閉じられた状態において、左側引戸30と枠体20との間を封止するものである。なお、図2において、パッキン37は、2点鎖線にて示されている。
【0035】
パッキン37は、左側引戸30が閉じられている場合に、左側引戸30と左側の縦枠23との間を封止するものである。パッキン37は、左框31bの左側に取り付けられている。パッキン37は、左側引戸30が閉じられている場合に、左側の縦枠23と接触する。
【0036】
一対の上シール部材S2は、左側引戸30が閉じられている場合に、左側引戸30と上枠21との間を封止するものである。一対の上シール部材S2は、上框31aに左右方向に延びるように配置されている。前側の上シール部材S2は、左側引戸30が閉じられている場合に、突出部21a1と接触する。後側の上シール部材S2は、左側引戸30が閉じられている場合に、補助シール部材S1と接触する。
【0037】
一対の下シール部材S3は、左側引戸30が閉じられている場合に、左側引戸30と下枠22との間を封止するものである。一対の下シール部材S3は、左側引戸30が閉じられている場合に、下枠22の上面と接触する。
【0038】
右側引戸40は、左側引戸30に対して左右対称となるように構成されている。つまり、右側引戸40における右框は、上下方向に沿って延び、かつ、両端を開口する筒状に形成されている。右側引戸40の右框の内側は、排水路を構成する。つまり、排水路は、右側引戸40の右側端部に設けられている。
【0039】
また、右側引戸40に取り付けられている通水多孔質体35は、右側引戸40の上面から右框の内側に亘って取り付けられている。なお、右側引戸40に取り付けられている通水多孔質体35および第2の通水多孔質体36は、左側引戸30に取り付けられている通水多孔質体35および第2の通水多孔質体36と形状および大きさ等が異なっていてもよい。
【0040】
次に、左側引戸30の動作について説明する。左側引戸30は、閉状態において、戸車33が段差部22bに落ち込んでいる(図3)。上記のように左側引戸30に対応する左側の段差部22bは、右側の段差部22bの深さより深くなるように設けられているため、左側引戸30の閉状態において、左側引戸30の上面は、右方から左方に向かうにしたがって、上方から下方に向けて傾斜している。つまり、閉状態の左側引戸30は、上面において左框31b側(すなわち排水路側)が下方に位置するように傾斜している。また、左側引戸30が閉状態である場合、パッキン37、一対の上シール部材S2および一対の下シール部材S3が左側引戸30と枠体20との間を封止している。
【0041】
左側引戸30が右方に移動すると、戸車33が段差部22bを乗り上げるため、左側引戸30が段差部22bの高さ分、上方に持ち上がる。これにより、パッキン37が左側の縦枠23から離れ、一対の上シール部材S2が突出部21a1および補助シール部材S1から離れ、かつ、一対の下シール部材S3が下枠22から離れる。
【0042】
さらに、第2の通水多孔質体36は、上枠21に接近する。第2の通水多孔質体36は、具体的には、断熱多孔質体25に接近する。すなわち、左側引戸30が移動する場合において、第2の通水多孔質体36と断熱多孔質体25との隙間H1は、左側引戸30が閉じている場合の第2の通水多孔質体36と断熱多孔質体25との隙間H2に比べて狭くなる(図6)。
【0043】
左側引戸30は、狭くなった第2の通水多孔質体36と断熱多孔質体25との隙間を有したまま、一対のレール22aに沿って右方に移動する。なお、閉状態である右側引戸40が開かれる場合、右側引戸40は、左側引戸30とは逆方向(すなわち左方)に移動すること以外は、上記の左側引戸30の動作と同様に動作する。
【0044】
次に、閉状態である左側引戸30の上方において、上枠21に発生した結露水の経路について説明する。保管室内の温度と外気温との温度差によって、上枠21に結露水が発生する。結露水は、上枠21の外表面や断熱多孔質体25の表面に発生する。上枠21に発生した結露水は、集まって滴となった後、第2の通水多孔質体36および上框31aの上面に落ちる。
【0045】
第2の通水多孔質体36に落下した結露水は、第2の通水多孔質体36を通過して、上框31aの上面に流出する。また、上記のように、左側引戸30の閉状態において、左側引戸30の上面は、右方から左方に向かうにしたがって、上方から下方に向けて傾斜している。よって、上框31aの上面に流出した結露水および上枠21から上框31aの上面に落下した結露水は、一対の長尺部31a1および右框31cによって、左側引戸30の前面、後面および右側面に流れ落ちずに、左方に向けて流れる。
【0046】
上框31aの上面を左方に向けて流れる結露水は、通水多孔質体35に到達する。通水多孔質体35に到達した結露水は、通水多孔質体35を通り、左框31bの内側に流出する。通水多孔質体35は、上記のように連続気泡構造であるため、結露水の流れに対して抵抗体として作用する。
【0047】
つまり、通水多孔質体35によって結露水が流れる勢いは抑制される。よって、上框31aの上面から左框31bの内側に流出する結露水の流速、つまり、単位時間あたりの流量は抑制される。
【0048】
左框31bの内側に流出した結露水は、左框31bの内側を通って下枠22に流出し、排水口22cから機械収納室50に排出される。排水口22cは、機械収納室50内の環境が庫内環境に影響を及ぼすことを最小限にすべく、必要最小限の大きさとされている。仮に、結露水の単位時間あたりの流量が抑制されず、結露水が一度に大量に排水口22cの回りに供給されると、結露水は排水口22cをスムーズに通過できず、下枠22の上面で広がってしまう。結露水が一度広がると、排水口22cから遠くに位置する結露水は、排水口22cに移動することができない。つまり、結露水の一部が排水されずに下枠22の上面に残ってしまう。一方、本実施形態に係る保冷庫1においては、結露水の単位時間あたりの流量が抑制されている。具体的には、排水口22cがスムーズに水を通すことができる流量以下に抑制されている。通水多孔質体35によって結露水の単位時間あたりの流量が抑制されているため、結露水は下枠22に残らずに排水口22cから排出される。したがって、通水多孔質体35によって結露水の排水性を向上させることができる。つまり、通水多孔質体35の材質および大きさは、通水多孔質体35を通過する結露水の単位時間あたりの流量が、排水口22cを結露水が重力のみで通過することができる単位時間あたりの流量以下となるように決定および設定されていることが好ましい。
【0049】
また、上記のように左側引戸30が移動する際に、第2の通水多孔質体36は、断熱多孔質体25に接近する。これにより、第2の通水多孔質体36は、図6に示されるように、断熱多孔質体25の表面にある結露水の滴Wを掻き取る。よって、左側引戸30が開けられて、保管室からサンプル等が取り出される際に、サンプル等の上に結露水が落下することを防ぐことができる。
【0050】
なお、上記のように、右側引戸40は、左側引戸30に対して左右対称となるように構成されている。また、右側引戸40に対応する右側の段差部22bは、左側の段差部22bの深さより深くなるように設けられているため、右側引戸40の閉状態において、右側引戸40の上面は、左方から右方に向かうにしたがって、上方から下方に向けて傾斜している。したがって、右側引戸40の上面に落ちる結露水は、上記の左側引戸30の上面に落ちる結露水と同様に、通水多孔質体35を通り、右框の内側を介して下枠22に流出する。また、右側引戸40に取り付けられている第2の通水多孔質体36は、上記の左側引戸30に取り付けられている第2の通水多孔質体36と同様に、右側引戸40の上面に対向して配置されている断熱多孔質体に生じている結露水の滴を掻き取る。
【0051】
本開示は、これまでに説明した実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、各種変形を本実施の形態に施したものを組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0052】
例えば、上框31aは、上面に、通水多孔質体35および第2の通水多孔質体36が取り付けられているが、第2の通水多孔質体36が取り付けられていなくてもよい。また、通水多孔質体35と第2の通水多孔質体36とを合わせて一体化した多孔質体が取り付けられていてもよい。また、通水多孔質体35および第2の通水多孔質体36に加えて、通水性を有する別の多孔質体がさらに取り付けられていてもよい。
【0053】
また、左側引戸30が移動する際における第2の通水多孔質体36と断熱多孔質体25との隙間の大きさと、右側引戸40が移動する際における第2の通水多孔質体36と断熱多孔質体25との隙間の大きさとが異なってもよい。例えば、左側引戸30および右側引戸40のうち結露水が発生しやすい方について、第2の通水多孔質体36と断熱多孔質体25との隙間を狭くする。これにより、左側引戸30および右側引戸40のうち結露水が発生しやすい方について、第2の通水多孔質体36が結露水をさらに掻き取りやすくすることができる。
【0054】
また、上枠21に断熱多孔質体25が取り付けられていなくてもよい。上枠21に断熱多孔質体25が取り付けられていない場合、第2の通水多孔質体36は、左側引戸30および右側引戸40が移動する際に、上枠21において、第2の通水多孔質体36が対向する部位に接近し、結露水の滴を掻き取るように形成される。
【0055】
また、通水多孔質体35は、L字状の形状を有しているが(図2)、図7に示されるように、直線状の形状を有していてもよい。これにより、通水多孔質体35の製造を容易にすることができる。また、通水多孔質体35が柔軟な形状で形成されている場合、折り曲げることなく容易に取り付けることができる。また、図7に示されるように左框31bの上端が上框31aの上面と同じ高さである場合、直線状に形成されている通水多孔質体35は、左框31bの内側に配置されずに、左框31bの内側に臨むように、かつ、下枠22に面する。
【0056】
また、左框31bの内側は、結露水が通る排水路であるが、排水路は右框31cの内側にも設けられてもよい。この場合、右框31cは左框31bと同様に筒状に設けられ、通水性を有する多孔質体が右框31cの内側を臨むように上框31aの上面に取り付けられる。排水路が左框31bの内側および右框31cの内側の両方に設けられる場合、閉状態において左側引戸30の上面が傾斜しないように(すなわち、およそ水平となるように)、左側引戸30に対応する2つの段差部22bの深さを等しくしてもよい。なお、排水路は、右框31cの内側のみに設け、左框31bの内側に設けなくてもよい。排水路が右框31cの内側のみに設けられる場合、左側引戸30の閉状態において、左側引戸30の上面が左方から右方に向かうにしたがって上方から下方に向けて傾斜してもよい。この場合、左側引戸30に対応する2つの段差部22bにおいて、右側の段差部22bは、左側の段差部22bの深さより深くなるように設けられる。
【0057】
また、左側引戸30および右側引戸40は、一対の長尺部31a1を有さなくてもよい。
【0058】
また、戸車33は、下框31dに取り付けられているが、上框31aに取り付けられてもよい。戸車33が上框31aに取り付けられている場合、左側引戸30および右側引戸40は、吊り下げ型の引戸として構成される。なお、左側引戸30および右側引戸40は、戸車33を備えなくてもよい。また、戸車33の取り付け位置が調整されることで、左側引戸30および右側引戸40は、移動中においても、上面において排水路側が下方に位置するように傾斜してもよい。
【0059】
2021年3月10日出願の特願2021-038276の日本出願に含まれる明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示は、薬用保冷庫、血液保冷庫、および、恒温器などの保冷庫に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 保冷庫
10 箱体
20 枠体
21 上枠(上辺部)
22b 段差部
25 断熱多孔質体(第2の多孔質体)
30 左側引戸(引戸)
31 框部
31a 上框
31a1 長尺部
33 戸車
35 通水多孔質体(多孔質体)
36 第2の通水多孔質体(多孔質体)
40 右側引戸(引戸)
H 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7