(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/24 20180101AFI20240516BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240516BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240516BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240516BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
C09J7/24
C09J7/38
C09J201/00
B32B27/00 M
B32B27/30 101
(21)【出願番号】P 2023505559
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2022009837
(87)【国際公開番号】W WO2022191154
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2021038813
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】吉村 大輔
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-282286(JP,A)
【文献】特開2017-119806(JP,A)
【文献】特開2021-046532(JP,A)
【文献】特公昭44-018080(JP,B1)
【文献】特開平10-100341(JP,A)
【文献】特開平10-316774(JP,A)
【文献】特開2003-335911(JP,A)
【文献】特開2021-130742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08J 5/18
B32B 27/00、27/30
C08L 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備える粘着テープであって、
前記基材層が、ポリ塩化ビニル樹脂と、前記ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、
融点が-60℃以下である可塑剤40~70質量部と、アクリル系樹脂1~10質量部とを含み、180℃での溶融破断張力が0.02~0.10Nである樹脂組成物から構成されている、粘着テープ。
【請求項2】
前記ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度が700~1800である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記アクリル系樹脂の質量平均分子量が5×10
5~50×10
5である、請求項1
または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記基材層の厚みが0.03~0.10mmである、請求項1から
3のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
電線類の結束用である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の粘着テープで結束された部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の電線類を結束、保護するための粘着テープとして、ポリ塩化ビニル粘着テープが知られている。ポリ塩化ビニル粘着テープは、ポリ塩化ビニルからなる基材層を備える粘着テープであり、電気絶縁性も備えている。
近年、自動車業界においては、車両の軽量化による燃費向上の観点から、車両内に配置される部品に対して、その小型化や軽量化が求められている。粘着テープの軽量化には基材層の薄膜化が効果的であり、その方法としては、例えば、基材層の延伸比を上げて膜厚を小さくする方法等がある。しかしながら、単純に延伸比を上げて基材層を薄膜化しようとすると、製膜時に基材層が破断したり、基材層にピンホールが発生するという問題がある。また、基材層を薄膜化すると、結束後の粘着テープに割れや亀裂(以下、「クラック」ということもある)が発生しやすくなる。このようなクラックは、結束物を低温環境下で保管した際により顕著に発生しやすい。
【0003】
係る課題に対し、例えば、特許文献1には、ポリ塩化ビニルとエラストマー成分とを含む基材層を備え、-20℃における引張破断伸びが80%以上である粘着テープが記載されている。特許文献1には、基材層を薄膜化しても低温下でのクラックが生じにくい粘着テープが得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の粘着テープは基材層の薄膜化が十分ではなく、粘着テープの更なる軽量化の要望に応えることは難しい。また近年では、より過酷な低温環境下で保管しても、クラックが発生しにくい、軽量化された粘着テープも求められている。
そこで本発明は、基材層を薄膜化してもピンホールの発生を抑制でき、さらに-30℃以下の低温環境下で結束作業を行ってもクラックが発生しにくい粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に対して、本発明者らは鋭意検討した結果、ポリ塩化ビニル樹脂に、可塑剤と、アクリル系樹脂とを一定量配合した樹脂組成物であって、180℃における溶融破断張力が一定の範囲内にある樹脂組成物を用いて基材層を構成することにより、基材層を薄膜化してもピンホールが発生せず、かつ-30℃以下の低温環境下でもクラックが生じにくい粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1]基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備える粘着テープであって、前記基材層が、ポリ塩化ビニル樹脂と、前記ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、可塑剤40~70質量部と、アクリル系樹脂1~10質量部とを含み、180℃での溶融破断張力が0.02~0.10Nである樹脂組成物から構成されている、粘着テープ。
[2]前記ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度が700~1800である、[1]に記載の粘着テープ。
[3]前記可塑剤の融点が-60℃以下である、[1]または[2]に記載の粘着テープ。
[4]前記アクリル系樹脂の質量平均分子量が5×105~50×105である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の粘着テープ。
[5]前記基材層の厚みが0.03~0.10mmである、[1]から[4]のいずれか一項に記載の粘着テープ。
[6]電線類の結束用である、[1]から[5]のいずれか一項に記載の粘着テープ。
[7][1]から[6]のいずれか一項に記載の粘着テープで結束された部材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基材層を薄膜化してもピンホールの発生を抑制でき、さらに-30℃以下の低温環境下で結束作業を行ってもクラックが発生しにくい粘着テープを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
[粘着テープ]
本発明に係る粘着テープは、基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備える粘着テープであって、前記基材層が、ポリ塩化ビニル樹脂と、前記ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、可塑剤40~70質量部と、アクリル系樹脂1~10質量部とを含み、180℃での溶融破断張力が0.02~0.10Nである樹脂組成物から構成されていることを特徴とする。本発明に係る粘着テープは、基材層を薄膜化しても、ピンホールの発生を抑制でき、さらに-30℃以下の低温環境下で結束作業を行ってもクラックが発生しにくい。
【0009】
<基材層>
基材層は、ポリ塩化ビニル樹脂と、前記ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、可塑剤40~70質量部と、アクリル系樹脂1~10質量部とを含み、180℃での溶融破断張力が0.02~0.10Nである樹脂組成物から構成されている。
【0010】
基材層の厚みは、粘着テープの軽量化の観点からは、0.10mm以下とすることが好ましい。また、結束作業時にテープが破断するのを防ぐ観点からは、0.03mm以上とすることが好ましい。これらの観点から、基材層の厚みは0.03~0.10mmであることが好ましく、0.03~0.06mmであることがより好ましく、0.03~0.05mmであることが特に好ましい。なお、基材層の厚みは、粘着テープの粘着剤層のみを溶剤で除去したのち、シックネスゲージ(例えば、(株)ミツトヨ製)を用いてその厚みを測定することで確認できる。
【0011】
(樹脂組成物)
本発明に係る樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂と、前記ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、可塑剤40~70質量部と、アクリル系樹脂1~10質量部とを含み、180℃での溶融破断張力が0.02~0.10Nであることを特徴とする。本明細書において、「180℃での溶融破断張力」とは、180℃で溶融させた樹脂を、一定の範囲の速度で巻取りして、樹脂が破断した際の溶融張力の値のことを意味する。なお、樹脂組成物の溶融破断張力は以下の条件で測定した値を意味する。
(溶融破断張力の測定方法)
樹脂組成物のペレットを、キャピログラフ(例えば、(株)東洋精機製作所製、装置名「キャピログラフ1D」)を用いて、以下の条件で溶融破断張力を測定する。
(測定条件)
樹脂温度:180℃
ピストンスピード:10mm/min
キャピラリー長:40mm
キャピラリー径:1.0mm
巻取り速度:1.0~6.0m/min
【0012】
樹脂組成物の180℃での溶融破断張力は0.02~0.10Nであり、0.02~0.09Nが好ましく、0.03~0.08Nがより好ましい。180℃での溶融破断張力が0.02~0.10Nである樹脂組成物であれば、薄膜化してもピンホールが発生しない基材層を得ることができる。また、-30℃以下の低温環境下で結束作業を行ってもクラックが発生しにくい粘着テープを得ることができる。
180℃での、樹脂の破断時の巻取り速度は、2.0m/min以上であることが好ましく、2.0~5.0m/minであることがより好ましい。なお、前記破断時の巻取り速度は、キャピラリーから押し出された180℃の溶融樹脂を、1.0~6.0m/minの範囲で速度を変えながら巻取った際に、溶融樹脂が破断した時の巻取り速度のことを意味する。
1つの態様においては、樹脂の破断時の巻取り速度が2.0m/min以上である時の溶融破断張力が0.02~0.10Nであることがさらに好ましい。このような溶融物性を有する樹脂組成物であれば、厚みの小さな基材層を調製しやすい。特に、基材層の延伸比を上げて膜厚を薄くする方法によって、厚みの小さな基材層を調製しやすい。さらに、薄膜化してもピンホールが発生しにくい基材層が得られやすくなる。また、樹脂が柔らかくなりすぎることによって、製膜性が低下することを抑制しやすい。
【0013】
(ポリ塩化ビニル樹脂)
ポリ塩化ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニルのホモポリマー(以下、「ポリ塩化ビニル」と記載する)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、強度に優れ、かつ耐摩耗性、防水性、防塵性に優れることから、ポリ塩化ビニルが好ましい。
ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は、本発明の効果を有する限り特に限定されない。基材層の溶融破断張力を調整しやすい観点から、平均重合度は700~1800が好ましく、1000~1300がより好ましい。なお、前記平均重合度は、JIS K6720-2に従い測定した値である。
【0014】
(可塑剤)
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル及びそれらのポリエステル、リン酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤等を使用することができる。
具体例としては、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、フタル酸ジ-n-オクチル(n-DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、イソフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOIP)、テレフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOTP)、ベンジルブチルフタレート(BBP)、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル(TOTM)、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOZ)、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOS)、トリクレジルホスフェート(TCP)、ベンジルオクチルアジペート(BOA)、アジピン酸-プロピレングリコール系ポリエステル、アジピン酸-ブチレングリコール系ポリエステル、フタル酸-プロピレングリコール系ポリエステル、ジフェニルクレジルホスフェート(DPCP)、アジピン酸ジイソデシル、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、塩素化パラフィン等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記可塑剤のうち、-30℃以下の低温環境下での破断伸びが向上しやすく、クラックを抑制しやすい観点から、融点が-60℃以下の可塑剤が好ましい。このような可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジイソノニル(DINA、融点:-68℃)、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA、融点:-68℃)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA、融点:-70℃)、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOZ、融点:-60℃)、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOS、融点:-62℃)等が挙げられる。これら融点が-60℃以下の可塑剤は1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このうち、DINA、DOAがより好ましい。
【0015】
基材層中の可塑剤の含有量は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、40~70質量部であり、45~65質量部が好ましく、50~60質量部がより好ましい。基材層中の可塑剤の配合量が前記範囲内であれば、基材層を薄膜化しても、ピンホールの発生を抑制できる。
【0016】
(アクリル系樹脂)
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸エステルを主成分としたポリマーが挙げられる。これらアクリル系樹脂は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明に係る粘着テープにおいて、基材層を構成する樹脂組成物の180℃での溶融破断張力を0.02~0.10Nの範囲に調整しやすい観点から、アクリル系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、5×105~50×105であることが好ましく、15×105~40×105であることがより好ましく、25×105~35×105の範囲であることが特に好ましい。このようなMwを有するアクリル系樹脂をポリ塩化ビニル樹脂と組み合わせることで、樹脂組成物の溶融破断張力を一定の範囲に調整しやすい。また、基材層を薄膜化しても、ピンホールの発生が抑制されやすくなる。なお、アクリル系樹脂のMwはGPCを用いて、ポリスチレン換算により算出した値を意味する。また、測定条件の詳細は以下のとおりである。
(GPCの測定条件)
カラム:GPC K-806L 10μm 8.0×300mm×2本
温度:40℃
移動相:THF
流量:1.0mL/分
試料濃度:0.1質量%
注入量:100μL
【0018】
アクリル系樹脂としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、三菱ケミカル(株)製の商品名「メタブレン(登録商標)P-551A(Mw150万)」、「メタブレンP-530A(Mw:300万)」;(株)カネカ製の商品名「カネエース(登録商標)PA-20(Mw:100万)」、「カネエースPA-30(Mw:300万)」等を用いてもよい。
【0019】
樹脂組成物中のアクリル系樹脂の含有量は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、1~10質量部である。アクリル系樹脂を1~10質量部配合することにより、樹脂組成物の溶融破断張力を一定の範囲に調整しやすくなる。また、基材層の薄膜化によって生じるピンホールやテープの破断を抑制できる。
【0020】
ピンホールは、基材層を薄膜化する際、特に、基材層を引き伸ばして延伸比を上げることで基材層を薄くした場合に発生しやすい。これは、基材層を構成する樹脂を引き伸ばした際に、分子間にミクロな分離が発生して樹脂が破断することが原因であると推察される。本願の発明者らは、基材層を構成する樹脂組成物にアクリル系樹脂を一定量添加することにより、分子同士の絡み合い点が増えて、基材層を引き伸ばしても樹脂が破断しにくくなることを見出した。また、アクリル系樹脂のTg(ガラス転移温度)はポリ塩化ビニル樹脂のTgよりも低いため、アクリル系樹脂の樹脂物性によって樹脂が軟化し、樹脂自体の伸びも向上すると考えられる。さらに、アクリル系樹脂を一定量含む樹脂組成物であって、溶融樹脂(180℃)を一定の速度範囲で巻取り、樹脂が破断した時の溶融張力が0.02~0.10Nの樹脂組成物であれば、基材層を引き伸ばして膜厚を小さくした場合でも、ピンホールの発生をより効果的に抑制できることも見出した。このように、特定の溶融物性を満たすように、ポリ塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、アクリル系樹脂とを組み合わせた本発明に係る樹脂組成物は、基材層の延伸比を上げることによって基材層を薄くした場合でも、ピンホールの発生を効果的に抑制することができる。
【0021】
樹脂組成物中のアクリル系樹脂の含有量は、180℃での樹脂組成物の溶融破断張力を一定の範囲に調整しやすく、かつアクリル系樹脂の樹脂物性による影響を制御する観点から、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、1~5質量部であることが好ましく、1~3質量部であることがより好ましい。ポリ塩化ビニル樹脂、好ましくは、平均重合度が700~1800のポリ塩化ビニル100質量部に対して、高分子量のアクリル系樹脂を1~10質量部、好ましくは1~5質量部配合することにより、基材層の薄膜化によるピンホールの発生をより効果的に抑制できる。
【0022】
(その他の添加剤)
樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の添加剤を配合することが可能である。
その他の添加剤としては、例えば、無機充填材、改質剤、分散剤、着色剤、光吸収剤、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、安定剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0023】
粘着テープ製造時に、ラミネートロール等に樹脂組成物が付着して装置を汚染することを防ぐ観点から、樹脂組成物に無機充填材を配合してもよい。
無機充填材としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化モリブデン、リン酸グアニジン、スメクタイト、硼酸亜鉛、無水硼酸亜鉛、メタ硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、赤燐、タルク、カオリン、クレー、アルミナ、シリカ、ベーマイト、ベントナイト、珪酸ソーダ、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
改質剤としては、例えば、塩素化ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上述のその他可塑剤、無機充填材、改質剤以外の添加剤を配合する場合、その配合量は本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されない。例えば、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、0質量部を超え10質量以下配合することができる。
【0026】
<粘着剤層>
本発明に係る粘着テープは、前述の基材層の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層を備えている。粘着剤層は、基材層の一方の表面に直接設けられていることが好ましい。
【0027】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、従来粘着テープに用いられている粘着剤を適宜用いることができる。具体的には、粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等を用いることができる。
【0028】
前記アクリル系粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマーを主成分とするものを用いることができる。「主成分」とは、アクリル系粘着剤のアクリル系ポリマーの割合が50質量%以上であることを意味する。
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びカルボキシ基含有不飽和単量体の重合体等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルアクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、sec-ブチルアクリレート、sec-ブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルアクリレート、n-オクチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、n-ノニルアクリレート、n-ノニルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソノニルメタクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
カルボキシ基含有不飽和単量体としては、前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なものであれば、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
前記アクリル系ポリマーは、上記に例示したような(メタ)アクリル酸アルキルエステルやカルボキシ基含有不飽和モノマー以外のその他のモノマーを含む共重合体とすることもできる。
その他のモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル等の含窒素(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニリテン、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、前記スチレン系ブロック共重合体の水素添加物(SIPS、SEBS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリイソブチレン(PIB)、及びブチルゴム(IIR)等からなる群より選択される少なくとも1つのゴム成分に、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂等からなる群より選択される少なくとも1つの粘着付与剤を適宜配合したもの等が挙げられる。また、前述のゴム成分に、(メタ)アクリル酸エステルを重合させた、グラフト重合体の粘着剤等も挙げられる。
【0032】
シリコーン系粘着剤としては、例えば、シリコーンゴムに、シリコーンレジンやシリコーンオイル等を適宜配合したもの等が挙げられる。
【0033】
ウレタン系粘着剤としては、例えば、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール等のポリオールと、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のポリイソシアネートとを反応させてなるものが挙げられる。
【0034】
粘着剤層を形成する粘着剤には、前述の粘着剤に任意の添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、例えば、軟化剤、粘着付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、滑剤、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体や脂環式系共重合体等の石油系樹脂、クマロン-インデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、キシレン系樹脂またはこれらの水添物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
粘着剤としては、-30℃以下の低温環境下でも良好な粘着特性を発現しやすいことから、ゴム系粘着剤を用いることが好ましい。また、天然ゴム、SBRのゴム系粘着剤がより好ましい。
【0037】
粘着剤層の厚みは、粘着テープの軽量化と結束作業性の観点から、例えば、5~50μmが好ましく、10~20μmがより好ましい。
また、粘着剤層は、複数の層から構成されていてもよい。粘着剤層が複数の層から構成される場合、粘着剤層の総厚みが前記範囲内となるように調整されることが好ましい。
【0038】
<中間層>
本発明の1つの態様においては、前記基材層と粘着剤層との間に、中間層を設けてもよい。中間層としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、各種フィルム、クロス等を用いることができる。
【0039】
本発明に係る粘着テープの総厚みは、粘着テープの軽量化の観点からは、0.03~0.10mmであることが好ましく、0.04~0.07mmであることがより好ましい。
【0040】
[粘着テープの製造方法]
本発明に係る粘着テープは、前述の樹脂組成物を溶融混錬したのち、所定の厚み、幅、長さに製膜して基材層を得る工程(I)と、前記基材層の少なくとも一方の面に粘着剤を塗工して粘着剤層を形成する工程(II)とを含む方法により製造することができる。
工程(I)は基材層の製膜工程である。工程(I)において樹脂組成物の溶融混錬方法は、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、二軸押出機、連続式、及びバッチ式のニーダー、ロール、バンバリーミキサー等の加熱装置を備えた各種混合器、混錬機を使用できる。前記方法によって原料を均一に分散させた樹脂組成物を慣用の方法、例えばカレンダー法、Tダイ法、インフレーション法等によりシート状に製膜して、基材層とすることができる。なお、厚み精度の観点からは、カレンダー法を用いることがより好ましい。
【0041】
樹脂組成物を溶融混錬する際のカレンダーロールの温度としては、適切な溶融破断張力での延伸、および塩化ビニル樹脂の熱分解温度以下での製膜の観点から、160~200℃であることが好ましく、170~190℃であることがより好ましい。
【0042】
基材層の製膜工程は、基材層の薄膜化工程であってもよい。基材層を薄膜化する方法としては、例えば、カレンダー法にて基材層を形成する場合、“カレンダーロールのロール間隔を狭くして、基材層の厚みを小さくする方法”(以下、「薄膜方法1」と記載する)、“基材層を引き伸ばして延伸比を上げることによって基材層の厚みを小さくする方法”(以下、「薄膜方法2」と記載する)等が挙げられる。本発明に係る粘着テープの製造方法においては、工程(I)は、薄膜方法2を含むことが好ましい。また、薄膜方法1のあと、薄膜方法2を実施することがより好ましい。
上述の通り、薄膜方法2は、ピンホールの発生や樹脂の破断が発生するため、通常は採用することが難しい。しかしながら、本発明に係る粘着テープは、アクリル系樹脂を特定量含み、かつ180℃での溶融破断張力が一定の範囲内にある樹脂組成物を用いて基材層を構成しているため、薄膜方法2を採用しても、ピンホールの発生を抑制できる。なお、カレンダーロールで圧延された溶融樹脂を、次工程のロール(例えば、テイクオフロール等)の速度を上げて回収する場合、カレンダーロールの速度と、テイクオフロールとの速度比(テイクオフロールの速度/カレンダーロールの速度)は、1.6~3.3であることが好ましく、2.0~3.3であることがより好ましい。上記速度比であれば、基材層の厚みを0.1mm以下、好ましくは0.03~0.05mmの範囲に調整しやすい。
カレンダーロールの速度としては、30~50m/minが好ましく、35~45m/minがより好ましい。また、テイクオフロールの速度としては、50~170m/minが好ましく、70~150m/minがより好ましい。
また、圧延された樹脂(基材層)を引き伸ばして延伸比を上げる場合、圧延された樹脂の厚みに対する、引き伸ばし後の樹脂の厚み(すなわち、基材層の最終厚み/圧延後の基材層の厚み)は、0.3~0.6であることが好ましく、0.3~0.5であることがより好ましい。
【0043】
[用途]
前述の通り、本発明に係る粘着テープは、自動車の電線類を結束、保護するためのテープとして好適に利用できる。本発明に係る粘着テープは、基材層の薄膜化によるテープの軽量化が可能である。そのため、自動車分野における軽量化の要望、それによる燃費向上の要求に対する貢献が可能である。なお、当然のことながら、本発明に係る粘着テープはその用途が自動車の電線類の結束、保護に限定されるわけではない。
【0044】
本発明のより好ましい態様は以下のとおりである。
<1>基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備える粘着テープであって、前記基材層が、平均重合度が700~1800のポリ塩化ビニルと、前記ポリ塩化ビニル100質量部に対して、融点が-60℃以下の可塑剤40~70質量部と、アクリル系樹脂1~5質量部とを含み、180℃での溶融破断張力が0.02~0.10Nであり、かつ破断時の樹脂の巻取り速度が2.0m/min以上である樹脂組成物から構成されている、粘着テープ。
<2>前記基材層の厚みが0.03~0.06mmである、<1>に記載の粘着テープ。
<3>前記アクリル系樹脂のMwが、5×105~50×105である、<1>または<2>に記載の粘着テープ。
<4><1>から<3>のいずれかに記載の粘着テープの製造方法であって、基材層の延伸比を上げることにより基材層を薄膜化する工程を含む、粘着テープの製造方法。
<5>前記基材層を薄膜化する工程が、溶融樹脂を圧延ロール間に挟み込んで圧延したのち、テイクオフロールの速度を上げて圧延された樹脂を引き伸ばすことを含む、<4>に記載の粘着テープの製造方法。
<6>圧延ロールの速度に対する、テイクオフロールの速度が、1.6~3.3倍である、<5>に記載の粘着テープの製造方法。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]
(粘着テープの作成)
ポリ塩化ビニル(大洋塩ビ(株)製、製品名「TH-700」、平均重合度700)100質量部に対し、可塑剤として、アジピン酸ジイソノニル(DINA)55質量部、アクリル系樹脂(三菱ケミカル(株)製、製品名「メタブレン P-530A」、Mw:300万)3質量部を配合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をバンバリーミキサーで各成分が均一に分散するように溶融混錬したのち、カレンダー成形機に投入して樹脂温度が180℃となるようにロール温度を調整して圧延した。圧延された樹脂をカレンダーロールと次ロール(テイクオフロール)間の速度比2.0で延伸して、厚み0.05mmの基材層を得た。
【0047】
粘着剤として、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス((株)イーテック製、製品名「KT4615B」)30質量部(固形分)と、天然ゴムにメチルメタクリレートをグラフト重合させたグラフト重合体ラテックス((株)レヂテックス製、製品名「MG-40S」)50質量部(固形分)と、石油樹脂系エマルション粘着付与剤(荒川化学工業(株)製、製品名「AP-1199-NT」)20質量部(固形分)とを含むゴム系粘着剤を、グラビア方式により基材層の片面に塗工して粘着剤層を形成した。粘着剤層の厚みは0.01mmであった。その後、テープログ形状に巻き取った後19mm幅に切断して、粘着テープを得た。
なお、樹脂組成物の溶融破断張力、基材層の製膜性(ピンホール評価)、基材層の低温環境下での引張破断伸び、及び粘着テープの低温環境下でのクラック評価は、以下の条件で評価した。結果を表1に示す。
【0048】
<樹脂組成物の溶融破断張力の測定>
樹脂組成物を40mmΦペレット押出機((株)田辺プラスチック製、製品名「PASC21-A-S」)を用いて溶融混錬し、樹脂ペレットを得た。次に、得られた樹脂ペレットをキャピログラフ((株)東洋精機製作所製、装置名「キャピログラフ1D」)を用いて、以下の条件で、樹脂が最初に破断した際の巻取り速度、及びその時の溶融破断張力を測定した。
樹脂温度:180℃
ピストンスピード:10mm/分
キャピラリー長:40mm
キャピラリー径:1.0mm
巻取り速度:1.0~6.0m/min
【0049】
<基材層の評価>
樹脂組成物を、0.05mmの厚みで製膜して基材層を作成した。具体的には、カレンダー成形機に樹脂組成物を投入して樹脂温度が180℃となるようにロール温度を調整して圧延した。その後、カレンダーロールと次ロール(テイクオフロール)間の速度比を2.0で延伸して厚みが0.05mmの基材層を得た。
【0050】
(基材層の製膜性評価(ピンホール評価))
得られた基材層を100mm四方に切断してサンプルを作成した。この基材層のサンプル5枚を、無地表面検査装置((株)ニレコ製、製品名「Mujiken+」)で透過法により穴あき欠点を検出し、以下の評価基準に沿って評価した。
(評価基準)
良:5枚のサンプル全てにピンホールが存在しなかった。
不可:面積が0.04mm2以上のピンホールが1カ所以上存在するサンプルが1枚以上あった。
製膜不可:製膜時に基材層が破断した。
【0051】
(基材層の引張破断伸び)
得られた基材層を幅10mm、長さ100mmのサイズにカットし、JIS K 7161に記載の「プラスチック 引張特性」の試験方法に従って、-30℃の恒温槽((株)島津製作所製、製品名「TCR2W-200P+125-X」)で1時間保管したのち、-30℃における引張破断伸びを引張試験機((株)島津製作所製、製品名「オートグラフAGC-X」)を用いて、以下の条件で測定した。
(測定条件)
チャック間距離:50mm
引張速度:300mm/min
【0052】
<粘着テープのクラック評価>
得られた粘着テープを幅19mm、長さ300mmに加工した。次に、直径1.0mmの電線を20本束ねた直径10mmの電線束に、前記粘着テープをハーフラップ巻きで10回巻きつけて試験片を作成した。前記試験片を-30℃で1時間保管したのち、-30℃の雰囲気下で電線束の中心を手で折り曲げた。その後、粘着テープの使用上支障のある割れ、亀裂の有無を目視で確認した。粘着テープに割れや亀裂のなかったものを「良」、粘着テープに大きな割れや亀裂が生じていたものを「不可」として結束作業性を評価した。
【0053】
[実施例2~8、比較例1~6]
樹脂組成物を表1~2に示す配合とした以外は、実施例1と同様の方法で、表1~2に記載の厚みを有する基材層を作成した。その後、実施例1と同様の粘着剤を用いて基材層の片面に、厚み0.01mmで粘着剤層を形成して粘着テープを得た。樹脂組成物の溶融破断張力、基材層の製膜性(ピンホール評価)、基材層の低温環境下での引張破断伸び、及び粘着テープの低温環境下でのクラック評価を実施例1と同様の方法で評価した。結果を表1~2に示す。
【0054】
[実施例9]
表1に示す配合で樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物をバンバリーミキサーで各成分が均一に分散するように溶融混錬した。その後、カレンダー成形機に投入して樹脂温度180℃となるようにロール温度を調整して圧延した。カレンダーロールと次ロール(テイクオフロール)間の速度比を3.3で延伸して厚みが0.03mmの基材層を得た。この基材層の片面に、実施例1と同様の粘着剤を用いて、厚み0.01mmの粘着剤層を形成して粘着テープを得た。樹脂組成物の溶融破断張力、基材層の製膜性(ピンホール評価)、基材層の低温環境下での引張破断伸び、及び粘着テープの低温環境下でのクラック評価を実施例1と同様の方法で評価した。なお、実施例9は、厚み0.03mmの基材層サンプルを作成して上記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
表1~2に記載の原材料の詳細は以下のとおりである。
(ポリ塩化ビニル樹脂)
ポリ塩化ビニル樹脂1:ポリ塩化ビニル(平均重合度500)(大洋塩ビ(株)製、商品名「TH-500」)。
ポリ塩化ビニル樹脂2:ポリ塩化ビニル(平均重合度700)(大洋塩ビ(株)製、商品名「TH-700」)。
ポリ塩化ビニル樹脂3:ポリ塩化ビニル(平均重合度1000)(大洋塩ビ(株)製、商品名「TH-1000(軟質用)」)。
ポリ塩化ビニル樹脂4:ポリ塩化ビニル(平均重合度1300)(大洋塩ビ(株)製、商品名「TH-1300」)。
ポリ塩化ビニル樹脂5:ポリ塩化ビニル(平均重合度1700)(大洋塩ビ(株)製、商品名「TH-1700」)。
ポリ塩化ビニル樹脂6:ポリ塩化ビニル(平均重合度2000)(大洋塩ビ(株)製、商品名「TH-2000」)。
(可塑剤)
DINA:アジピン酸ジイソノニル((株)ジェイ・プラス社製、商品名「DINA」、融点:-68℃)。
DINP:フタル酸ジイソノニル((株)ジェイ・プラス社製、商品名「DINP」、融点:-45℃)。
(アクリル系樹脂)
アクリル系樹脂:三菱ケミカル(株)製、商品名「メタブレン P-530A」(Mw:30×105)。
【0056】
【0057】
【0058】
表1~2に示す通り、本発明に係る粘着テープは、基材層の厚みを0.05mmと薄くした場合でも、ピンホールの発生を効果的に抑制できていた。また、基材層を薄膜化しても、-30℃という低温環境下で粘着テープにクラックが発生しにくいことも分かった。
一方、180℃での溶融破断張力が0.02未満の比較例1、及び溶融破断張力が0.10N超の比較例2では、基材層にピンホールが発生した。また、可塑剤が40質量部未満の比較例3では、樹脂が破断してしまい基材層を製膜することができなかった。比較例3の樹脂組成物は、180℃での溶融破断張力が0.10N超となっていたことから、溶融樹脂の張力が高すぎて、製膜に必要な伸びが得られなかったためであると考えられる。一方で、可塑剤が70質量部超の比較例4では、溶融樹脂の張力が低すぎて、基材層にピンホールが発生した。アクリル系樹脂を含まない比較例5では、基材層を引き伸ばす工程で樹脂が破断した。また、アクリル系樹脂を10質量部超含む比較例6では溶融破断張力が低すぎてピンホールが発生した。なお、基材層にピンホールが発生していた比較例1、2、4、及び6の粘着テープのクラック評価は、-30℃の低温環境下ではピンホールの影響で評価結果にばらつきが発生し、適切な評価ができなかった。
以上の結果より、本発明に係る粘着テープは、基材層を薄膜化してもピンホールの発生を抑制でき、かつ-30℃の低温環境下でもクラックが生じにくいことが確認された。