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特許7489549正極活物質、それを含むナトリウムイオン二次電池及び電力消費装置
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  • 特許-正極活物質、それを含むナトリウムイオン二次電池及び電力消費装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】正極活物質、それを含むナトリウムイオン二次電池及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20240516BHJP
   C01C 3/12 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
H01M4/58
C01C3/12
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2023532843
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2021143827
(87)【国際公開番号】W WO2023123414
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2023-05-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100212392
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 悠
(72)【発明者】
【氏名】田 佳瑞
(72)【発明者】
【氏名】張 欣欣
(72)【発明者】
【氏名】欧陽 楚英
(72)【発明者】
【氏名】郭 永勝
(72)【発明者】
【氏名】万 月娟
(72)【発明者】
【氏名】林 文光
(72)【発明者】
【氏名】蘭 加佃
(72)【発明者】
【氏名】汪 済翔
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-092086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/58
C01C 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質であって、粒子状であり、そして式1に示す化合物を含み、
(NaM1[M2(CN)δ 式1
ここで、Aは、アルカリ金属元素のうちの少なくとも一つから選択され、且つAのイオン半径は、ナトリウムのイオン半径よりも大きく、M1とM2は、それぞれ独立して遷移金属元素のうちの少なくとも一つから選択され、0<y≦0.2、0<x+y≦2、0<δ≦1、a+b=2、0.85≦a≦0.98であり、ここで、□は、空位を表し、bは、空位の数を表し、
前記正極活物質が20℃の温度で濃度が5g/100g水である水溶液に溶解される時、該水溶液のpHは、7.6から8.5の範囲内にある、正極活物質。
【請求項2】
前記正極活物質が20℃の温度で濃度が5g/100g水である水溶液に溶解される時、該水溶液のpHは、7.6から8.3の範囲内にある、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記正極活物質が20℃の温度で濃度が5g/100g水である水溶液に溶解される時、該水溶液のpHは、7.8から8.1の範囲内にある、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記正極活物質の粒子は、前記A元素の含有量が粒子の表面から粒子の内部へ逓減する傾向を示すグラジエント層を有し、前記グラジエント層の厚さは、10~100nmの範囲内にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記正極活物質の粒子において、最外層の厚さは、10から50nmの範囲内にあり、前記最外層の厚さとは、透過電子顕微鏡-エネルギースペクトルラインスキャンプロファイリング法により正極活物質の粒子の元素含有量を定量的に測定する時に測定されるNaとAの含有量の比がNa:A=10At%:90At%に達する層から粒子の表面までの距離を指す、請求項1~4のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項6】
透過電子顕微鏡-エネルギースペクトルラインスキャンプロファイリング法により正極活物質の粒子の元素含有量を定量的に測定する時、粒子の径方向において、NaとAの含有量の比がNa:A=50At%:50At%である、粒子の内部に最も近い位置から粒子の表面までの距離は、d1であり、粒子の径方向において、NaとAの総含有量が遷移金属元素M1とM2の総含有量よりも小さい、粒子の内部に最も近い位置から粒子の表面までの距離は、d2であり、そしてd2≦d1である、請求項1~5のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記Aは、独立してK、Rb、Csのうちの少なくとも一つから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記Aは、Kである、請求項1~6のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記M1、M2は、それぞれ独立してFe、Mn、Ni、Co、Cu及びZnのうちの少なくとも一つから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記正極活物質の体積メジアン粒径Dv50は、1~5μmの範囲内にある、請求項1~9のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項11】
前記正極活物質の体積メジアン粒径Dv50は、1.5~3μmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項12】
前記正極活物質の比表面積は、1~10m/gの範囲内にある、請求項1~11のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項13】
前記正極活物質の比表面積は、3~7m/gである、請求項1~11のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項14】
正極活物質を製造する方法であって、
遷移金属元素M1の可溶性塩を任意選択的にNa含有徐放剤と共に溶媒に溶解して、溶液aを作製するステップ1)と、
遷移金属元素M2の可溶性遷移金属シアノ錯体を溶媒に溶解して、溶液bを作製するステップ2)と、
撹拌状態で、溶液aを溶液bに滴下し、滴下完了後に撹拌してエージングするステップ3)と、
ステップ3)で得られた懸濁液にAの塩を添加し、そして撹拌してエージングするステップ4)であって、Aは、アルカリ金属元素のうちの少なくとも一つから選択され、且つAのイオン半径は、ナトリウムのイオン半径よりも大きいステップ4)と、
ステップ4)で得られた懸濁液をろ過し、ろ過した沈殿物を洗浄するステップ5)と、
ステップ5)で得られた洗浄された沈殿物を遷移金属元素M1の可溶性塩と共に水に溶解して混合し、且つ撹拌してエージングし、懸濁液dを形成するステップ6)と、
懸濁液dをろ過し、ろ過した沈殿物を洗浄し、前記正極活物質を得るステップ7)とを含み、
前記正極活物質は、粒子状であり、そして式1に示す化合物を含み、
(NaxAy)a□bM1[M2(CN)6]δ 式1
ここで、0<y≦0.2、0<x+y≦2、0<δ≦1、a+b=2、0.85≦a≦0.98であり、ここで、□は、空位を表し、bは、空位の数を表し、A、M1及びM2は以上のように定義されており、
前記正極活物質が20℃の温度で濃度が5g/100g水である水溶液に溶解される時、該水溶液のpHは、7.6から8.5の範囲内にある、正極活物質を製造する方法。
【請求項15】
ステップ6)において、遷移金属元素M1の可溶性塩の添加量は、懸濁液dのpHが8.1から9.0の範囲内となるように選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ6)において、遷移金属元素M1の可溶性塩の添加量は、懸濁液dのpHが8.3から8.7の範囲内にある、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ステップ6)において、沈殿物の添加量は、5g/100g水から15g/100g水である、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記Aの塩の陰イオンは、ステップ6)で使用された遷移金属元素M1の可溶性塩の陰イオンと同じである、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記Aの塩の陰イオンと、ステップ6)で使用された遷移金属元素M1の可溶性塩の陰イオンとはいずれも塩素イオンである、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ6)で添加された沈殿物におけるA元素とNa元素のモル比は、1:9以下である、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ステップ6)で添加された沈殿物におけるA元素とNa元素のモル比は、1:50~1:19である、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ステップ3)で得られた懸濁液にAの塩を添加する前に、前記懸濁液を-20から25℃の温度範囲内に冷却する、請求項14~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ステップ3)で得られた懸濁液にAの塩を添加する前に、前記懸濁液を-20から10℃の温度範囲内に冷却する、請求項14~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ステップ6)で添加された沈殿物におけるM1の量は、懸濁液dの体積に対して、0.1mol/L以上である、請求項14~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ステップ6)で添加された沈殿物におけるM1の量は、懸濁液dの体積に対して、0.2~1.2mol/Lである、請求項14~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記遷移金属元素M1の可溶性塩の総量におけるM1と前記遷移金属元素M2の可溶性遷移金属シアノ錯体におけるM2とのモル比は、0.8:1から1:0.8の範囲内にある、請求項14~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記遷移金属元素M1の可溶性塩の総量におけるM1と前記遷移金属元素M2の可溶性遷移金属シアノ錯体におけるM2とのモル比は、0.9:1から1:0.9の範囲内にある、請求項14~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ステップ3)において、溶液を35℃~120℃の温度範囲内に維持する、請求項14~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ステップ3)において、溶液を90℃~120℃の温度範囲内に維持する、請求項14~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
二次電池であって
求項1~13のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、ことを特徴とする二次電池。
【請求項31】
電力消費装置であって、請求項30に記載の二次電池を含む、ことを特徴とする電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、二次電池技術分野に関し、特に正極活物質、それを含むナトリウムイオン二次電池及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、リチウムイオン電池の需要量は益々増大しているが、限られたリチウムリソースは、リチウムイオン電池の持続的な開発を制限する。リチウムイオン電池の重要な補完として、ナトリウムイオン二次電池がますます注目を集めている。
【0003】
プルシアンブルー類材料は、高容量、高電圧プラトー、高速ナトリウムイオン輸送チャネル、及び低コスト、製造の容易さなどの一連の商業化可能な利点を有するため、広く注目されている。しかしながら、従来のプルシアンブルー材料は、長期貯蔵において電気化学的性能の劣化が生じやすい。そのため、プルシアンブルー材料について、そのサイクル性能、レート性能などの方面の更なる向上を図るために、改良が依然として求められている。
【発明の概要】
【0004】
上記目的を達成するために、本出願の第1の態様は、正極活物質を提供し、前記正極活物質は、粒子状であり、そして式1に示す化合物を含み、
(NaM1[M2(CN)δ 式1
ここで、Aは、アルカリ金属元素のうちの少なくとも一つから選択され、且つAのイオン半径は、ナトリウムのイオン半径よりも大きい。M1とM2は、それぞれ独立して遷移金属元素のうちの少なくとも一つから選択され、0<y≦0.2、0<x+y≦2、0<δ≦1、a+b=2、0.85≦a≦0.98であり、ここで、□は、空位を表し、bは、空位の数を表し、
そして、前記正極活物質が20℃の温度で濃度が5g/100g水である水溶液に溶解される時、該水溶液のpHは、7.6~8.5の範囲内にある。
【0005】
それにより、本出願は、前記正極活物質の特定の組成、及び水溶液中で特定のpH値を有するという条件を満たすことにより、正極活物質の吸水量を低下させ、そして高温サイクル性能とレート性能をいずれも向上させ、かつA元素がドーピングされていないプルシアンブルー材料に比べても材料の比容量を明らかに低下させていない。
【0006】
いずれかの実施形態では、前記正極活物質が20℃の温度で濃度が5g/100g水である水溶液に溶解される時、該水溶液のpHは、7.6から8.3の範囲内にあり、任意選択的に、7.8から8.1の範囲内にある。特定の濃度の水溶液においてそれの有するpH値を上記範囲内に制御することで、材料のレート性能をさらに改善することができる。
【0007】
いずれかの実施形態では、前記正極活物質の粒子は、前記A元素の含有量が粒子の表面から粒子の内部へ逓減する傾向を示すグラジエント層を有する。任意選択的に、前記グラジエント層の厚さは、10~100nmの範囲内にある。A元素のこのような特定の分布により、材料の高温サイクル性能をさらに改善することができる。
【0008】
いずれかの実施形態では、前記正極活物質の粒子において、最外層の厚さは、10から50nmの範囲内にあり、前記最外層の厚さとは、透過電子顕微鏡-エネルギースペクトルラインスキャンプロファイリング法により正極活物質の粒子の元素含有量を定量的に測定する時に測定されるNaとAの含有量の比がNa:A=10At%:90At%に達する層から粒子の表面までの距離を指す。前記最外層の厚さを制御することで、材料の比容量が低下し過ぎることを回避することができる。
【0009】
いずれかの実施形態では、透過電子顕微鏡-エネルギースペクトルラインスキャンプロファイリング法により正極活物質の粒子の元素含有量を定量的に測定する時、粒子の径方向において、NaとAの含有量の比がNa:A=50At%:50At%である、粒子の内部に最も近い位置から粒子の表面までの距離は、d1であり、粒子の径方向において、NaとAの総含有量が遷移金属元素M1とM2の総含有量よりも小さい、粒子の内部に最も近い位置から粒子の表面までの距離は、d2であり、そしてd2≦d1である。それにより、材料のレート性能と高温サイクル性能をさらに改善することができる。
【0010】
いずれかの実施形態では、前記Aは、独立してK、Rb、Csのうちの少なくとも一つから選択され、任意選択的に、Kである。A元素を選択することで、材料の貯蔵性能、高温サイクル性能と比容量をさらに改善することができる。
【0011】
いずれかの実施形態では、前記M1、M2は、それぞれ独立してFe、Mn、Ni、Co、Cu及びZnのうちの少なくとも一つから選択される。M1とM2の種類を選択することで、構造の完全性を確保すると共に、材料が必要な電気化学的性能と電気化学的容量を有するようにすることができる。
【0012】
いずれかの実施形態では、前記正極活物質の体積メジアン粒径Dv50は、1~5μmの範囲内にあり、任意選択的に、1.5~3μmである。材料の体積メジアン粒径Dv50を制御することで、材料の比容量をさらに改善することができる。
【0013】
いずれかの実施形態では、前記正極活物質の比表面積は、1~10m/gの範囲内にあり、任意選択的に、3~7m/gである。材料の比表面積を制御することで、元素Aの使用量が小さい場合には必要なドーピング効果に達することができ、吸水の抑制と材料の比容量の低下の回避との良好なバランスがとれることができる。
【0014】
本出願の第2の態様は、正極活物質を製造する方法をさらに提供し、前記方法は、
遷移金属元素M1の可溶性塩を任意選択的にNa含有徐放剤と共に溶媒に溶解して、溶液aを作製するステップ1)と、
遷移金属元素M2の可溶性遷移金属シアノ錯体を溶媒に溶解して、溶液bを作製するステップ2)と、
撹拌状態で、溶液aを溶液bに滴下し、滴下完了後に撹拌してエージングするステップ3)と、
ステップ3)で得られた懸濁液にAの塩を添加し、そして撹拌してエージングし、Aは、アルカリ金属元素のうちの少なくとも一つから選択され、且つAのイオン半径は、ナトリウムのイオン半径よりも大きいステップ4)と、
ステップ4)で得られた懸濁液をろ過し、ろ過した沈殿物を洗浄するステップ5)と、
ステップ5)で得られた洗浄された沈殿物を遷移金属元素M1の可溶性塩と共に水に溶解して混合し、且つ撹拌してエージングし、懸濁液dを形成するステップ6)と、
懸濁液dをろ過し、ろ過した沈殿物を洗浄し、前記正極活物質を得るステップ7)とを含み、
前記正極活物質は、粒子状であり、そして式1に示す化合物を含み、
(NaM1[M2(CN)δ 式1
ここで、0<y≦0.2、0<x+y≦2、0<δ≦1、a+b=2、0.85≦a≦0.98であり、ここで、□は、空位を表し、bは、空位の数を表し、A、M1及びM2は以上のように定義されており、
そして、前記正極活物質が濃度が5g/100g水である水溶液に溶解される時、該水溶液のpHは、7.6から8.5の範囲内にある。
【0015】
上記方法により、本出願の正極活物質を製造することができる。
【0016】
いずれかの実施形態では、ステップ6)において、遷移金属元素M1の可溶性塩の添加量は、懸濁液dのpHが8.1から9.0の範囲内となるように選択され、任意選択的に、8.3から8.7の範囲内にある。懸濁液dのpHを制御することで、正極活物質が濃度が5g/100g水である水溶液に溶解される時、該水溶液のpHを本出願で規定する範囲内に制御することができる。
【0017】
いずれかの実施形態では、ステップ6)において、沈殿物の添加量は、5g/100g水から15g/100g水である。それにより、得られた正極活物質が濃度が5g/100g水である水溶液に溶解される時、該水溶液のpHが本出願の求めた範囲内にあるように制御することに有利である。
【0018】
いずれかの実施形態では、前記Aの塩の陰イオンは、ステップ6)で使用された遷移金属元素M1の可溶性塩の陰イオンと同じであり、任意選択的に、両者はいずれも塩素イオンである。それにより、材料の骨格の完全性を改善することができ、それにより材料の高温サイクル性能を改善する。
【0019】
いずれかの実施形態では、ステップ6)で添加された沈殿物におけるA元素とNa元素のモル比は、1:9以下であり、任意選択的に、1:50~1:19である。Aの量を制御することで、正極活物質の高温サイクル性能の改善を実現すると共に、材料の比容量が低下し過ぎることを回避することができる。
【0020】
いずれかの実施形態では、ステップ3)で得られた懸濁液にAの塩を添加する前に、前記懸濁液を-20から25℃の温度範囲内に冷却し、任意選択的に、前記懸濁液を-20から10℃の温度範囲内に冷却する。懸濁液の温度を制御することで、元素Aが正極活物質の粒子の表面から粒子の内部へ逓減するという分布傾向をより良好に制御することができる。
【0021】
いずれかの実施形態では、ステップ6)で添加された沈殿物におけるM1の量は、懸濁液dの体積に対して、0.1mol/L以上であり、任意選択的に、0.4~1.2mol/Lである。前記M1の量を制御することで、適切な粒径の材料を得ることができると共に、材料の凝集が回避され、形態がより独立して完全である。
【0022】
いずれかの実施形態では、前記遷移金属元素M1の可溶性塩の総量におけるM1と前記遷移金属元素M2の可溶性遷移金属シアノ錯体におけるM2とのモル比は、0.8:1から1:0.8の範囲内にあり、任意選択的に、0.9:1から1:0.9の範囲内にある。それにより、材料の比容量をさらに改善することができる。
【0023】
いずれかの実施形態では、前記ステップ3)において、溶液を35℃~120℃の温度範囲内に維持し、任意選択的に、80℃~120℃の温度範囲内に維持し、任意選択的に、90℃~120℃の温度範囲内に維持する。それにより、材料の比容量をさらに改善することができる。
【0024】
本出願の第3の態様は、本出願の第1の態様の正極活物質、又は本出願の第2の態様の方法によって製造された正極活物質を含む二次電池を提供する。
【0025】
本出願の第4の態様は、本出願の第3の態様の二次電池を含む電力消費装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本出願の一実施形態の二次電池の概略図である。
図2図1に示される本出願の一実施形態の二次電池の分解図である。
図3】本出願の一実施形態の電池モジュールの概略図である。
図4】本出願の一実施形態の電池パックの概略図である。
図5図4に示される本出願の一実施形態の電池パックの分解図である。
図6】本出願の一実施形態の二次電池が電源として用いられる電力消費装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下は、本出願の正極活物質及びその制造方法、正極板、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を具体的に開示した実施形態を、図面を適宜参照して詳細に説明する。しかし、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定するためのものではない。
【0028】
本出願に開示される「範囲」は、下限及び上限の形式で限定され、所定範囲は、特定の範囲の境界を限定する1つの下限と1つの上限を選定することによって限定される。このように限定される範囲は、端値を含んでもよく含まなくてもよく、任意に組み合わせてもよく、即ち、任意の下限と任意の上限とを組み合わせて1つの範囲を形成してもよい。例えば、特定のパラメータについて60~120と80~110の範囲が列挙されている場合、60~110と80~120の範囲も予想されると理解される。なお、最小範囲値1と2、最大範囲値3、4と5が列挙されている場合、以下の範囲の1~3、1~4、1~5、2~3、2~4と2~5は全て予想されている。本出願において、別段の記載がない限り、数値範囲「a~b」は、aないしbの間の全ての実数の組み合わせを表す短縮表現であり、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書で「0~5」の間の全ての実数がリストアップされていることを意味し、「0~5」はこれら数値の組み合わせの省略表示にすぎない。また、あるパラメータ≧2の整数であると記述している場合、該パラメータは例えば、整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0029】
特に説明されていない限り、本出願の全ての実施形態及び選択可能な実施形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成してもよい。
【0030】
特に説明されていない限り、本出願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成してもよい。
【0031】
特に説明されていない限り、本出願の全てのステップは、順次行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順次行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が順次行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順次行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上に言及された前記方法がステップ(c)をさらに含むことは、ステップ(c)がいずれかの順で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)と(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)と(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)と(b)などを含んでもよい。
【0032】
特に説明されていない限り、本出願で言及した「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含み又は包含してもよく、リストアップされた成分のみを含み又は包含してもよいことを表してもよい。
【0033】
特に説明されていない限り、本出願において、用語「又は」は包括的である。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれか一つの条件は、いずれも「A又はB」という条件を満たす。Aが真であり(又は存在し)且つBが偽であり(又は存在せず)、Aが偽であり(又は存在せず)且つBが真であり(又は存在し)、又はAとBがいずれも真である(又は存在する)。
【0034】
従来のプルシアンブルー材料は、貯蔵性能の方面ではすべて望みどおりにならず、長期貯蔵において電気化学的性能の劣化が生じやすい。例えば、長期貯蔵すれば、材料のサイクル性能の劣化を引き起こす。
【0035】
そのため、本出願の第1の態様は、正極活物質を提供し、前記正極活物質は、粒子状であり、そして式1に示す化合物を含み、
(NaM1[M2(CN)δ 式1
ここで、Aは、アルカリ金属元素のうちの少なくとも一つから選択され、且つAのイオン半径は、ナトリウムのイオン半径よりも大きい。M1とM2は、それぞれ独立して遷移金属元素のうちの少なくとも一つから選択され、0<y≦0.2、0<x+y≦2、0<δ≦1、a+b=2、0.85≦a≦0.98であり、ここで、□は、空位を表し、bは、空位の数を表し、
そして、前記正極活物質が20℃の温度で濃度が5g/100g水である水溶液に溶解される時、該水溶液のpHは、7.6から8.5の範囲内にある。
【0036】
Aが二つ以上の元素である場合、y数値範囲に対する上記限定は、Aとしての各元素の化学量論数の和に対する限定である。
【0037】
正極活物質の化学組成は、誘導結合プラズマ発光スペクトル法(ICP)で測定されてもよい。
【0038】
発明者らは、プルシアンブルー材料の長期貯蔵後の性能の劣化が、プルシアンブルー材料のこの間の吸水と大きく相関していることを発見した。本出願は、イオン半径の大きいアルカリ金属又はアルカリ土類金属イオンを用いてプルシアンブルー材料を改質することで、半径の大きいイオンが、元々結晶水が存在する可能性のある位置を占め、格子構造における結晶水を減少させ、プルシアンブルー材料の貯蔵性能の改善を得ることができ、発明者らは、更なる研究により、上記プルシアンブルー材料のpH値を特定の範囲内に同時に制御すれば、プルシアンブルー材料の吸水量をさらに低下させることができ、そして吸水しても極めて容易に除去され、且つ高温サイクル性能とレート性能の改善を実現すると共に、イオン半径の大きいアルカリ金属又はアルカリ土類金属イオンのドーピングによる材料の比容量の低下を軽減したことを発見した。また、高い除水効率によれば、電池セルの作製周期を短縮し、電池セルの作製プロセスを簡略化し、最終的にコストを低減させることもできる。
【0039】
本出願の改質したプルシアンブルー材料は、ナトリウムイオン電池において正極活物質として用いられてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質が20℃の温度で濃度が5g/100g水である水溶液に溶解される時、該水溶液のpHは、7.6から8.3の範囲内にあり、任意選択的に、7.8から8.1の範囲内にある。特定の濃度の水溶液においてそれの有するpH値を上記範囲内に制御することで、材料のレート性能をさらに改善することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質の粒子は、前記A元素の含有量が粒子の表面から粒子の内部へ逓減する傾向を示すグラジエント層を有する。任意選択的に、前記グラジエント層の厚さは、10~100nmの範囲内にあり、例えば、10~90nm、10~80nm、20~100nm、20~90nm、20~80nm、30~100nm、30~90nm、30~80nm、30~75nmであってもよい。A元素のこのような特定の分布により、材料の高温サイクル性能をさらに改善することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質の粒子において、最外層の厚さは、10から50nmの範囲内にあり、前記最外層の厚さとは、透過電子顕微鏡-エネルギースペクトルラインスキャンプロファイリング法により正極活物質の粒子の元素含有量を定量的に測定する時に測定されるNaとAの含有量の比がNa:A=10At%:90At%に達する層から粒子の表面までの距離を指す。前記最外層の厚さを制御することで、材料の比容量が低下し過ぎることを回避することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、透過電子顕微鏡-エネルギースペクトルラインスキャンプロファイリング法により正極活物質の粒子の元素含有量を定量的に測定する時、粒子の径方向において、NaとAの含有量の比がNa:A=50At%:50At%である、粒子の内部に最も近い位置から粒子の表面までの距離は、d1であり、粒子の径方向において、NaとAの総含有量が遷移金属元素M1とM2の総含有量よりも小さい、粒子の内部に最も近い位置から粒子の表面までの距離は、d2であり、そしてd2≦d1である。
【0044】
本出願では、透過電子顕微鏡-エネルギースペクトルラインスキャンプロファイリング法により測定された、特定の元素含有量を満たす層とは、粒子の内部において該特定の元素含有量を満たす全ての点で構成される抽象的な意味での層を指し、即ち、実際の厚さを有する層を指していない。At%の意味は、透過電子顕微鏡-エネルギースペクトルラインスキャンプロファイリング法で測定された、NaとA元素の原子数の合計に対するNa又はA元素の原子数の百分率である。前記透過電子顕微鏡-エネルギースペクトルラインスキャンプロファイリング法は、透過電子顕微鏡(STEM、ThermoFisher、Talos F200i)とサイドフィッティング方式のエネルギー分散型伸縮性X線分光法(EDS、ThermoFisher)を組み合わせて用いて、表示画面における材料に対してラインスキャン(Line Scan Analysis)を行うことにより行われてもよい。
【0045】
NaとAの総含有量が遷移金属元素M1とM2の総含有量よりも小さい、粒子の内部に最も近い層と粒子の表面との間で画定された領域は、空位層である。任意選択的に、空位層の厚さd2は、9~35nmの範囲内にある。上述したように空位層の厚さを制御することで、材料のレート性能と高温サイクル性能をさらに改善することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記Aは、独立してK、Rb、Csのうちの少なくとも一つから選択され、任意選択的に、Kである。A元素を選択することで、材料の貯蔵性能、高温サイクル性能と比容量をさらに改善することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記M1、M2は、それぞれ独立してFe、Mn、Ni、Co、Cu及びZnのうちの少なくとも一つから選択される。M1とM2の種類を選択することで、構造の完全性を確保すると共に、材料が必要な電気化学的性能と電気化学的容量を有するようにすることができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質の体積メジアン粒径Dv50は、1~5μmの範囲内にあり、任意選択的に、1.5~3μmである。材料の体積メジアン粒径Dv50を制御することで、材料の比容量をさらに改善することができる。体積メジアン粒径Dv50は、当業者が熟知している従来の方法で測定することができ、例えば、規格GB/T 19077.1-2016を参照し、レーザー粒度分析器(例えばMalvern Master Size 3000)を使用して測定することができるDv50の物理的定義は、以下のとおりである。材料粒子累積体積分布パーセントが50%に達する時に対応する粒径。
【0049】
いずれかの実施形態では、前記正極活物質の比表面積は、1~10m/gの範囲内にあり、任意選択的に、3~7m/gである。材料の比表面積を制御することで、元素Aの使用量が小さい場合には必要なドーピング効果に達することができ、ドーピングが均一であり、できるだけ少ない元素Aを用いて、できるだけ広いドーピング効果を実現する。そして、均一なドーピングは、吸水の抑制と材料の比容量の低下の回避との良好なバランスがとれることに有利である。比表面積は、当業者が熟知している従来方法で測定することができ、例えば、国際規格GB/T 19587-2004に応じて、一定の低温で、異なる相対圧力下での固体表面へのガス吸着量を測定した後、ブレーノル-エメット-テーラー(BET)の多層吸着理論及びその式に基づいて、試料単分子層吸着量を求めることにより、固体の比表面積を算出する。
【0050】
本出願の第2の態様は、正極活物質を製造する方法を提供し、前記方法は、
遷移金属元素M1の可溶性塩を任意選択的にNa含有徐放剤と共に溶媒に溶解して、溶液aを作製するステップ1)と、
遷移金属元素M2の可溶性遷移金属シアノ錯体を溶媒に溶解して、溶液bを作製するステップ2)と、
撹拌状態で、溶液aを溶液bに滴下し、滴下完了後に撹拌してエージングするステップ3)と、
ステップ3)で得られた懸濁液にAの塩を添加し、そして撹拌してエージングし、Aは、アルカリ金属元素のうちの少なくとも一つから選択され、且つAのイオン半径は、ナトリウムのイオン半径よりも大きいステップ4)と、
ステップ4)で得られた懸濁液をろ過し、ろ過した沈殿物を洗浄するステップ5)と、
ステップ5)で得られた洗浄された沈殿物を遷移金属元素M1の可溶性塩と共に水に溶解して混合し、且つ撹拌してエージングし、懸濁液dを形成するステップ6)と、
懸濁液dをろ過し、ろ過した沈殿物を洗浄し、前記正極活物質を得るステップ7)とを含み、
前記正極活物質は、粒子状であり、そして式1に示す化合物を含み、
(NaM1[M2(CN)δ 式1
ここで、0<y≦0.2、0<x+y≦2、0<δ≦1、a+b=2、0.85≦a≦0.98であり、ここで、□は、空位を表し、bは、空位の数を表し、A、M1及びM2は以上のように定義されており、
そして、前記正極活物質が濃度が5g/100g水である水溶液に溶解される時、該水溶液のpHは、7.6から8.5の範囲内にある。
【0051】
正極活物質に対する記述部分におけるM1、M2、A、x、y、δ、a、bに関する説明と限定は同様に正極活物質の製造方法にも適用される。
【0052】
上記方法により、本出願に記載の正極活物質を製造することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、ステップ6)において、遷移金属元素M1の可溶性塩の添加量は、懸濁液dのpHが8.1から9.0の範囲内となるように選択され、例えば、8.3から8.7の範囲内にあってもよく、8.4から8.6の範囲内にあってもよい。懸濁液dのpHを制御することで、正極活物質が濃度が5g/100g水である水溶液に溶解される時、該水溶液のpHを本出願で規定する範囲内にすることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、ステップ6)において、沈殿物の添加量は、5g/100g水から15g/100g水である。それにより、得られた正極活物質が濃度が5g/100g水である水溶液に溶解される時、該水溶液のpHが本出願の求めた範囲内にあるように制御することに有利である。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記Aの塩の陰イオンは、ステップ6)で使用された遷移金属元素M1の可溶性塩の陰イオンと同じであり、任意選択的に、両者はいずれも塩素イオンである。それにより、材料の骨格の完全性を改善することができ、それにより材料の高温サイクル性能を改善する。
【0056】
いくつかの実施形態では、ステップ6)で添加された沈殿物におけるA元素とNa元素のモル比は、1:9以下であり、任意選択的に、1:50~1:19である。Aの量を制御することで、必要な組成を有する正極活物質を得ることができ、正極活物質の高温サイクル性能の改善を実現すると共に、材料の比容量が低下し過ぎることを回避することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、ステップ3)で得られた懸濁液にAの塩を添加する前に、前記懸濁液を-20から25℃の温度範囲内に冷却し、任意選択的に、前記懸濁液を-20から10℃の温度範囲内に冷却する。懸濁液の温度を制御することで、元素Aが正極活物質の粒子の表面から粒子の内部へ逓減するという分布傾向をより良好に制御することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、ステップ6)で添加された沈殿物におけるM1の量は、懸濁液dの体積に対して、0.1mol/L以上であり、任意選択的に、0.4~1.2mol/Lである。前記M1の量を制御することで、適切な粒径の材料を得ることができると共に、材料の凝集が回避され、形態がより独立して完全である。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記遷移金属元素M1の可溶性塩の総量におけるM1と前記遷移金属元素M2の可溶性遷移金属シアノ錯体におけるM2とのモル比は、0.8:1から1:0.8の範囲内にあり、任意選択的に、0.9:1から1:0.9の範囲内にある。それにより、材料の比容量をさらに改善することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記ステップ3)において、溶液を35℃~120℃の温度範囲内に維持し、任意選択的に、80℃~120℃の温度範囲内に維持し、任意選択的に、90℃~120℃の温度範囲内に維持する。それにより、材料の比容量をさらに改善することができる。
【0061】
ステップ1)において、遷移金属元素M1の可溶性塩の陰イオンが特に制限されていない。いくつかの実施形態では、ステップ1)において、遷移金属元素M1の可溶性塩は、二価の硫酸塩、硝酸塩、塩化物、又は弱酸の塩、例えばシュウ酸塩である。溶液中のその濃度は、例えば、0.01mol/L~1mol/Lの範囲内にある。
【0062】
いくつかの実施形態では、ステップ1)において、Na含有徐放剤は、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸二ナトリウムから選択される少なくとも一つである。
【0063】
ステップ1)における溶媒は、遷移金属元素M1の可溶性塩と任意選択的なNa含有徐放剤を溶解できるものであればよい。いくつかの実施形態では、ステップ1)における溶媒は、例えば、水、アセトニトリル、アジポニトリル、メチルアルコール、エチルアルコール、ホルムアミド及びジメチルスルホキシドなどから選択されてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、前記ステップ2)における可溶性遷移金属シアノ錯体は、二価の遷移金属シアン化ナトリウムである。溶液中のその濃度は、例えば、0.01mol/L~1mol/Lの範囲内にある。
【0065】
いくつかの実施形態では、前記ステップ2)における溶媒は、ステップ1)における溶媒と同じである。
【0066】
いくつかの実施形態では、ステップ3)では、溶液aは、0.1ml/min~10ml/minの速度で滴下され、例えば、1ml/minの速度で滴下される。
【0067】
いくつかの実施形態では、ステップ3)において、撹拌速度は、200rpm~1200rpmの範囲内にある。
【0068】
いくつかの実施形態では、ステップ3)において、エージングは、0.01h~48h行われ、例えば、12h行われる。
【0069】
いくつかの実施形態では、ステップ4)において、前記撹拌エージングは、5から60分間行われる。いくつかの実施形態では、ステップ6)において、前記撹拌エージングは、100から2000rpmの撹拌速度で1から24時間行われ、例えば、10分間から2時間行われる。
【0070】
撹拌エージングの時間と撹拌速度を制御することで、材料の粒度と形態をより良好に制御することができる。
【0071】
ステップ5)における洗浄は、当業者により適切な溶媒を選択して行われてもよい。いくつかの実施形態では、ステップ5)では、洗浄は、脱イオン水、エチルアルコール又はアセトンなどを用いて行われてもよく、そして一回又は複数回行われてもよい。
【0072】
ステップ7)における洗浄は、当業者により適切な溶媒を選択して行われてもよい。いくつかの実施形態では、ステップ7)では、洗浄は、脱イオン水、エチルアルコール又はアセトンなどを用いて行われてもよく、そして一回又は複数回行われてもよい。
【0073】
また、以下は、本出願の二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置について、図面を適宜参照して説明する。
【0074】
本出願の一実施形態において、ナトリウムイオン二次電池を提供する。
【0075】
通常、二次電池は、正極板と、負極板と、電解質と、セパレータとを含む。電池の充放電過程において、活性イオンは正極板と負極板との間に往復してインターカレーションやデインターカレーションをする。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。セパレータは、正極板と負極板との間に設けられ、主に正負極の短絡を防止する役割を果たすとともに、イオンを通過させることができる。
【0076】
[正極板]
正極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設置される正極膜層とを含み、前記正極膜層は、本出願の第1の態様の正極活物質又は本出願の第2の態様の方法で製造される正極活物質を含む。
【0077】
例示的に、正極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のいずれか一つ又は両者上に設けられている。
【0078】
いくつかの実施形態において、前記正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基層と高分子材料基層の少なくとも一つの表面上に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することによって形成されてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、正極膜層は、任意選択的に、接着剤をさらに含む。一例として、前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及び含フッ素アクリル酸エステル樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、正極膜層は、任意選択的に、導電剤をさらに含む。一例として、前記導電剤は、超伝導性カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、およびカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0081】
いくつかの実施形態において、以下の方式で正極板を製造することができ、正極板を製造するための上記成分、例えば、正極活物質、導電剤、接着剤といずれかの他の成分を溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)に分散させて、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経た後、正極板が得られる。
【0082】
[負極板]
負極板は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面に設けられた負極膜層とを含み、前記負極膜層は、負極活物質を含む。
【0083】
例として、負極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のいずれか一方又は両方に設置される。
【0084】
いくつかの実施形態において、前記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基層と高分子材料基材の少なくとも一つの表面上に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することによって形成されてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態において、負極活物質は、当分野でよく知られている電池用の負極活物質を採用してもよい。一例として、負極活物質は、ハードカーボン、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、シリコン系材料、スズ系材料及びチタン酸リチウムなどのうちの少なくとも一つを含んでもよい。前記シリコン系材料は、シリコン単体、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体及びシリコン合金のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。前記スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物及びスズ合金のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。しかし、本出願では、これらの材料に限定されず、さらに電池の負極活物質として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、一つのみを単独に使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、負極膜層は、任意選択的に、接着剤をさらに含む。前記接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0087】
いくつかの実施形態において、負極膜層は、任意選択的に、導電剤をさらに含む。導電剤は、超伝導性カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、負極膜層は、任意選択的に、他の助剤、例えば、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などをさらに含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、以下の方式で負極板を製造することができ、負極板を製造するための上記成分、例えば、負極活物質、導電剤、接着剤といずれかの他の成分を溶媒(例えば、脱イオン水)に分散させて、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経た後、負極板が得られる。
【0090】
[電解質]
電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。本出願は、電解質の種類を具体的に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全固体であってもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、前記電解質は、液体であり、即ち、それは、電解液である。前記電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、電解質塩は、NaClO、NaPF、NaBF、NaTFSI(ビストリフルオロメタンスルホニルイミドナトリウム)、NaFSI(ビスフルオロスルホニルイミドナトリウム)、NaDFOB(ジフルオロオキサラトホウ酸ナトリウム)などから選択されてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸ブチレン、炭酸フルオロエチレン、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトンン、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン及びジエチルスルホンのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態において、前記電解液は、任意選択的に、添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は、負極被膜形成添加剤と、正極被膜形成添加剤とを含んでいてもよいし、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温又は低温性能を改善する添加剤などをさらに含んでいてもよい。
【0095】
[セパレータ]
いくつかの実施形態において、二次電池は、セパレータをさらに含む。本出願では、セパレータの種類に対して特に制限することはなく、よく知られている、良好な化学的安定性と機械的安定性を有するいずれかの多孔質構造のセパレータを選択してもよい。
【0096】
いくつかの実施の形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。セパレータは、単層薄膜であってもよく、多層複合薄膜であってもよく、特に制限はない。セパレータが多層複合薄膜である場合、各層の材料は同じであってもよく、異なってもよく、特に制限はない。
【0097】
いくつかの実施形態において、正極板と負極板とセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリを製造してもよい。
【0098】
いくつかの実施形態において、二次電池は、外装を含むことができる。該外装は、上記電極アセンブリと電解質のパッケージングに用いられてもよい。
【0099】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質プラスチックシェル、アルミニウムシェル、スチールシェルなどの硬質シェルであってもよい。二次電池の外装は、軟包装でもよく、例えば、袋型軟包装である。軟質バッグの材質はプラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0100】
本出願では、二次電池の形状に対して特に制限することはなく、それは、円柱状、四角形又は他のいずれかの形状であってもよい。例えば、図1は、一例としての角形構造の二次電池5である。
【0101】
いくつかの実施形態において、図2を参照すると、外装は、筐体51およびカバープレート53を含むことができる。ここでは、筐体51は、底板と底板上に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板とで取り囲んで収容キャビティを形成する。筐体51は収容キャビティに連通する開口を有し、カバープレート53は、前記開口をカバーして設けられることによって前記収容キャビティを閉鎖することができる。正極板と負極板とセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は一つ又は複数であってもよく、当業者は実際の具体的な需要に応じて選択してもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、二次電池を電池モジュールに組み立てもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者は電池モジュールの応用と容量に基づいて選択してもよい。
【0103】
図3は、一例としての電池モジュール4である。図3を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の縦方向に沿って順に並べて設けられてもよい。無論、任意の他の方式に従って配置してもよい。さらに、該複数の二次電池5を締め具で固定してもよい。
【0104】
選択可能には、電池モジュール4は、複数の二次電池5を収容する収容空間を有する筐体をさらに備えていてもよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールは、さらに電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数について、当業者は電池パックの応用と容量に基づいて選択してもよい。
【0106】
図4および図5は、一例としての電池パック1である。図4及び図5を参照すると、電池パック1には、電池ケースと、電池ケースに設けられた複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ケースは上ケース2と下ケース3とを含み、上ケース2は、下ケース3をカバーして設けられ、且つ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式に従って電池ケースの中に配置されてもよい。
【0107】
また、本出願は、本出願による二次電池、電池モジュール、または電池パックのうちの少なくとも一つを含む電力消費装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として用いられてもよいし、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力消費装置は、移動体設備(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶と衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、それらに限らない。
【0108】
前記電力消費装置として、その使用上の需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択してもよい。
【0109】
図6は、一例としての電力消費装置である。該電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。該電力消費装置は二次電池に対する高出力及び高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いることができる。
【0110】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコンなどであってもよい。該装置は、一般に軽量化が求められており、二次電池を電源として採用することができる。
【0111】
実施例
以下では、本出願の実施例を説明する。以下に記述されている実施例は、例示的なもので、本出願を解釈することのみに用いられ、本出願を制限するものとして理解すべきではない。実施例において具体的な技術又は条件が明記されていないものは、当技術分野の文献に記述されている技術若しくは条件、又は製品説明書に従って実行する。使用する試薬又は機器について、製造メーカーが明記されていないものは、いずれも市販で購入できる一般的な製品である。
【0112】
実施例1
正極活物質の製造:
(1)7.9164gの塩化マンガン四水和物及び35.292gのクエン酸ナトリウム一水和物を100mlの脱イオン水に添加し、30min撹拌した後に、溶液aを形成した。
【0113】
(2)19.3624gのフェロシアン化ナトリウム十水和物を100mlの脱イオン水に添加し、30min撹拌した後に、溶液bを形成した。
【0114】
(3)撹拌状態で、溶液aを溶液bに滴下し、滴下速度を1ml/minとし、滴下完了後に24h撹拌し、撹拌速度を400rpmとし、温度を80℃とし、懸濁液を形成した。
【0115】
(4)ステップ(3)で得られた懸濁液を5℃に冷却し、0.7gの塩化カリウムを添加し、60min撹拌して懸濁液cを形成した。
【0116】
(5)ステップ(4)で得られた懸濁液cをろ過し、脱イオン水を用いて固体を2回洗浄し、150℃で6h真空乾燥した。12.6gの固体生成物Na1.90.1Mn[Fe(CN)]を得た。
【0117】
(6)6.8gの塩化マンガン四水和物固体、100mlの脱イオン水をステップ(5)で得られた固体生成物と混合し、30min撹拌して懸濁液dを形成し、撹拌速度を500rpmとし、最終的に懸濁液dのpHは、8.3であった。
【0118】
(7)懸濁液dをろ過し、脱イオン水を用いて固体を3回洗浄し、正極活物質を得た。ICPテストにより、その化学式が(Na1.90.10.880.12Mn[Fe(CN)0.94であると確定した。該正極活物質が20℃の温度で濃度が5g/100g水である水溶液に溶解される時、該水溶液のpHは、7.6であった。そして該正極活物質は、グラジエント層の厚さが75μmであり、且つグラジエント層の厚さ範囲内においてK元素の含有量が逓減する傾向を示し、最外層の厚さが15μmであり、空位層の厚さが34μmであり、Dv50が2μmであり、比表面積が4m/gであることを満たした。
【0119】
実施例2
ステップ(6)において塩化マンガン四水和物の使用量を表1に示すように変更したこと以外、実施例1と類似したステップで正極活物質を製造した。
【0120】
実施例3
ステップ(6)において塩化マンガン四水和物の使用量を表1に示すように変更したこと以外、実施例1と類似したステップで正極活物質を製造した。
【0121】
実施例4
ステップ(6)において塩化マンガン四水和物の使用量を表1に示すように変更したこと以外、実施例1と類似したステップで正極活物質を製造した。
【0122】
実施例5
ステップ(6)において塩化マンガン四水和物の使用量を表1に示すように変更したこと以外、実施例1と類似したステップで正極活物質を製造した。
【0123】
実施例6
ステップ(4)において塩化カリウムの使用量を表1に示すように変更したこと以外、実施例1と類似したステップで正極活物質を製造した。ステップ(5)で得られた固体生成物の化学式は、Na1.960.04Mn[Fe(CN)]であった。
【0124】
実施例7
ステップ(4)において塩化カリウムの使用量を表1に示すように変更したこと以外、実施例1と類似したステップで正極活物質を製造した。ステップ(5)で得られた固体生成物の化学式は、Na1.80.2Mn[Fe(CN)]であった。
【0125】
比較例1
実施例1の記載に応じて、懸濁液cをろ過して洗浄した後に得られた固体生成物を最終的な正極活物質とした。
【0126】
比較例2
ステップ(6)において塩化マンガン四水和物の使用量を表1に示すように変更したこと以外、実施例1と類似したステップで正極活物質を製造した。
【0127】
比較例3
表1に示すようにステップ(4)において塩化カリウムの使用量を変更しており、そしてステップ(6)において塩化マンガン四水和物の使用量を変更したこと以外、実施例1と類似したステップで正極活物質を製造した。
【0128】
電池の製造
(1)正極板の製造:上記実施例と比較例で製造した正極活物質、導電剤であるカーボンブラック(Super-P)、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比7:2:1に応じてN-メチルピロリドン(NMP)に添加し、ロータにより1~3h撹拌し、スラリーを製造した。スラリーを集電体であるアルミニウム箔に塗布し、塗布厚さを150μmとした。90~110℃で真空乾燥オーブンにおいて10~15h乾燥し、続いて室温まで自然に降温し、正極板を得た。カッターを用いて、製造した正極板を直径が14mmである小さな円板に裁断した。
【0129】
(2)負極板の製造:日本のクラレトレーディング社から購入したType II商用ハードカーボン負極活物質、導電剤であるカーボンブラック(Super-P)、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)及び分散剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を質量比90:2:4:4に応じて脱イオン水に添加し、ロータにより1~3h撹拌し、スラリーを製造した。スラリーを集電体銅箔上に塗布し、塗布量が正極絶対容量に応じて確定され、負極絶対容量:正極絶対容量=1.16であり、ここで、絶対容量(mAh)=初回放電可逆比容量(mAh/g)*活物質の総重量(g)であり、可逆比容量の測定方法は、以下に記載されるとおりである。90~110℃で真空乾燥オーブンにおいて10~15h乾燥し、続いて室温まで自然に降温し、負極板を得た。カッターを用いて、製造した負極板を直径が16mmである小さな円板に裁断した。
【0130】
(3)電解液の製造
含水量<10ppmであるアルゴンガス雰囲気グローブボックスにおいて、等体積の炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)を均一に混合し、有機溶媒を得て、有機溶媒に添加剤である炭酸フルオロエチレン(FEC)を添加し、続いてナトリウム塩NaPFを上記有機溶媒に均一に溶解し、電解液を得て、ここで、電解液におけるFECの質量パーセントは、2%であり、ナトリウム塩の濃度は、1mol/Lであった。
【0131】
(4)セパレータ
PEをセパレータとして用いた。
【0132】
(5)ボタン型フル電池の製造
アルゴンガス雰囲気に満たされたグローブボックスにおいて、上記各部分をCR 2032ボタン型フル電池に組み立てて下記二次電池とした。
【0133】
性能テスト方法
1.正極活物質テスト
(1)ICPテスト
被測定物質を500℃に加熱し、2h焼成した後に、室温に降温した。王水を添加して、焼成後の生成物を溶解し、続いて、誘導結合プラズマ発光スペクトル(ICP、Ametek社、型番:SPECTRO ARCOS ICP-OES)により元素分析を行った。該テストにより、各元素の割合を得ることができ、各元素の割合により、化学式(NaM1[M2(CN)δにおけるx、y、δ、a及びbを確定した。具体的には、化学式中のM1元素の添字を1とし、M2、Na、A元素とM1元素との含有量割合により、x、y、δを換算した。a、bは、電荷バランスから導かれ、具体的には、a*(x+y)+b*0+1*2+δ*(2-6)=0であった。aを得た後に、a+b=1によりbを得た。
【0134】
(2)透過電子顕微鏡-エネルギースペクトルラインスキャン(EDSラインスキャン)検出
透過電子顕微鏡(STEM、ThermoFisher、Talos F200i)とサイドフィッティング方式のエネルギー分散型伸縮性X線分光法(EDS、ThermoFisher)を組み合わせて用いて、表示画面における材料に対してラインスキャン(Line Scan Analysis)を行った。ここで、加速電圧を50kVとし、増幅倍率を100kxとし、ビーム電流を500~1000pAの間にした。Na、A元素数(Counts)のラインスキャンペクトルを得た。Na、A元素数の割合に応じて、Na:A=50 At%:50 At%の層及び正極活物質の表面を確定することにより、グラジエント層の厚さを得ることができる。Na、A元素数の割合に応じて、Na:A=10At%:90At%の層及び正極活物質の表面を確定することにより、最外層の厚さを得ることができる。
【0135】
同様な方式で、Na、A、Mn、Fe元素数(Counts)のラインスキャンペクトルを得た。Na、A、Mn、Fe元素数の割合に応じて空位層の境界を確定することにより、空位層の厚さを得た。
【0136】
上記各厚さの測定において、いずれも、正極活物質の粒子上から5個の位置をランダムに選択することでそれぞれ測定を行い、そして測定された値の平均値を求めて測定結果として記した。
【0137】
(3)pHテスト
5gの被測定材料を100gの水に入れて5分間撹拌し、均一な溶液を形成するまで継続し、20℃の温度でpH値テストを行った。
【0138】
(4)30min除水効率テスト
30min除水効率=30min除水量/材料の総含水量であった。ここで、30min除水量と材料の総含水量は、カールフィッシャー法(Metrohm831水分測定装置)により測定した。テスト温度を170℃とし、テスト時、窒素ガスを吹き付け、吹き付け速度を50mL/minとした。抽出時間を30minに設定し、得られた絶対含水量を30min除水量として記した。抽出時間を、機器が水を検出する信号が環境バックグラウンド値に達するまで上限なしに設定し、材料の総含水量として記した。
【0139】
(5)Dv50テスト
規格GB/T 19077.1-2016を参照し、レーザー粒度分析器(例えばMalvern Master Size 3000)を使用して測定した。
【0140】
ここで、Dv50の物理的定義は、以下のとおりである。材料粒子累積体積分布パーセントが50%に達する時に対応する粒径。
【0141】
(6)比表面積テスト
比表面積のテストは、規格GB/T 19587-2017を参照し、窒素ガス吸着比表面積分析テスト方法を採用してテストし、かつBET(Brunauer Emmett Teller)法を用いて算出し、ここで、窒素ガス吸着比表面積分析テストは、米国Micromeritics社のTri-Star 3020型比表面積孔径分析測定器によって行った。
【0142】
2.電池性能テスト
[可逆比容量]
ボタン型ハーフ電池の製造:正極板、電解液とセパレータは、いずれも上記ボタン型フル電池と同じである。負極は、金属ナトリウムシート(直径が13mmである小さな円板)を使用し、負極集電体としてニッケルメッシュを用いたアルゴンガスで保護されたグローブボックス内において、上記各部分をCR 2032ボタン型ハーフ電池に組み立てた。
【0143】
2.5~4.0Vの区間内に、25℃で、20mA/gの電流密度で上記ボタン型ハーフ電池を充放電し、電池の初回充放電過程における容量を記録し、正極活物質の質量を容量で割ることで、可逆比容量を得た。各実施例と比較例の正極活物質で製造された電池の初回放電可逆比容量のテスト結果は、下記表1に示される。
【0144】
[レート性能]
25℃で、各実施例と比較例の二次電池を0.1C倍率で4Vまで定電流充電し、さらに定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min静置し、さらに0.1C倍率で2Vまで定電流放電し、その時の充電容量を記録し、即ち、0.1C放電容量とした。30min静置し、続いて、二次電池を1C倍率で4Vまで定電流充電し、さらに定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min静置し、さらに1C倍率で2Vまで定電流放電し、その時の放電容量を記録し、即ち、1C放電容量とした。
【0145】
電池のレート性能1C/0.1C(%)=1C放電容量/0.1C放電容量×100%であった。
【0146】
[高温サイクル性能]
45℃で、実施例と比較例で製造した二次電池を1C倍率で充電カットオフ電圧4Vまで定電流充電した後、定電圧で電流≦0.05Cまで充電し、5min静置し、さらに1C倍率で放電カットオフ電圧2Vまで定電流放電し、電池の1サイクル目の放電容量を測定し、5min静置し、これは、一つの充放電サイクルである。該方法に応じて電池に対してサイクル充放電テストを行い、計200サイクル繰り返し、最終サイクルの放電容量を得た。高温サイクル容量保持率(%)=最終サイクルの放電容量/1サイクル目の放電容量であった。
【表1】
【0147】
表1におけるデータから分かるように、実施例1~7の正極活物質は、特定の組成構造を有し、且つ該特定の組成構造の正極活物質の、濃度が5g/100g水である水溶液におけるpHは、本出願で規定する範囲内に制御され、その除水効率、比容量、高温サイクル性能及びレート性能はいずれも明らかに改善した。
【0148】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例に過ぎず、本出願の技術案の範囲内で、技術思想と実質的に同一の構成を有し、同様な作用と効果を奏する実施形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれるものとする。なお、本出願の主旨から逸脱しない範囲内で、実施形態に対して当業者が想到し得る様々な変形を実施し、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も、本出願の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0149】
1電池パック、2上ケース、3下ケース、4電池モジュール、5二次電池、51筐体、52電極アセンブリ、53トップカバーアセンブリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6