(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】エレベーター・ロボット連携システム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/06 20060101AFI20240516BHJP
B66B 17/20 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
B66B1/06 E
B66B17/20 Z
(21)【出願番号】P 2023555925
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2021039432
(87)【国際公開番号】W WO2023073800
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】魚谷 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】小林 直仁
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-287016(JP,A)
【文献】特開2019-99371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/06
B66B 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットをエレベーターで移動させるエレベーター・ロボット連携システムにおいて、
前記ロボットの搭乗階へのかご呼び要求を受け付けるときに、ロボット制御情報も共に受け付けるエレベーター・ロボット連携サーバと、
前記エレベーター・ロボット連携サーバから、前記かご呼び要求を受け取って前記ロボットの搭乗階へ乗りかごを移動するように制御するエレベーター制御装置と、
前記乗りかごの内部で前記乗りかごに搭乗している前記ロボットの状態を監視するかご内監視部と、
前記エレベーター・ロボット連携サーバで受け付けた前記ロボット制御情報を記憶する記憶部とを備え、
前記かご内監視部が前記乗りかごに搭乗している前記ロボットを停止させることが必要な前記ロボットの動作を検出したとき、前記エレベーター制御装置は、前記エレベーター・ロボット連携サーバに対して、前記記憶部に格納された前記ロボット制御情報を用いて前記ロボットを停止させる処理を行わせる
ことを特徴とするエレベーター・ロボット連携システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記記憶部は、前記エレベーター・ロボット連携サーバに設けられている
ことを特徴とするエレベーター・ロボット連携システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記ロボット制御情報は、前記ロボットを停止させるための制御コマンドであり、前記かご内監視部が、前記ロボットを停止させることが必要な前記ロボットの動作を検出したとき、前記エレベーター制御装置は、前記記憶部に格納された制御コマンドを発行して前記ロボットを停止させる
ことを特徴とするエレベーター・ロボット連携システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記かご内監視部が前記ロボットを停止させることが必要な前記ロボットの動作を検出したとき、前記エレベーター制御装置は、前記ロボットを停止させるための物理的操作方法を説明した手順を、前記乗りかごの内部に設けた出力部へ出力する
ことを特徴とするエレベーター・ロボット連携システム。
【請求項5】
請求項3において、
前記エレベーター制御装置は、前記制御コマンドを発行したとき、前記乗りかごの内部に設けた出力部に対して、前記ロボットへ前記制御コマンドを発行したことを示す情報を出力する
ことを特徴とするエレベーター・ロボット連携システム。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか1項において、
前記エレベーター・ロボット連携サーバは、前記ロボットが目的階へ到達したときに、前記記憶部に格納された前記ロボット制御情報を削除する
ことを特徴とするエレベーター・ロボット連携システム。
【請求項7】
ロボットと送受信可能に接続され、前記ロボットからのかご呼び要求とロボット制御情報を受信するエレベーター・ロボット連携サーバと、前記エレベーター・ロボット連携サーバと送受信可能に接続され、前記ロボットからの前記かご呼び要求に対応してエレベーターの乗りかごを移動させるエレベーター制御装置とからなるエレベーター・ロボット連携システムの制御方法において、
エレベーター・ロボット連携システムは、
前記ロボットの搭乗階への前記かご呼び要求を受け付けるときに、前記ロボット制御情報も共に受け付けるステップと、
前記ロボット制御情報を記憶するステップと、
前記かご呼び要求に応じて前記ロボットの搭乗階へ前記乗りかごを移動するステップと、
前記乗りかごの内部で前記乗りかごに搭乗している前記ロボットの状態を監視するステップと、
前記乗りかごに搭乗している前記ロボットを停止させることが必要な前記ロボットの動作を検出したとき、前記記憶された前記ロボット制御情報を用いて前記ロボットを停止させるステップと
を実行することを特徴とするエレベーター・ロボット連携システムの制御方法。
【請求項8】
複数のロボットと、
複数の前記ロボットと送受信可能に接続され、複数の前記ロボットからのロボット呼び指令を受信するエレベーター・ロボット連携サーバと、
前記エレベーター・ロボット連携サーバと送受信可能に接続され、複数の前記ロボットからの前記ロボット呼び指令に対応してエレベーターの乗りかごを走行させるエレベーター制御装置とからなるエレベーター・ロボット連携システムであって、
前記ロボットは、前記エレベーターの前記乗りかごを指定階床へ呼び寄せる前記ロボット呼び指令の発出時に、ロボット呼び指令登録情報とロボット制御コマンド情報を前記エレベーター・ロボット連携サーバに送信するロボット呼び作成手段と、前記エレベーター・ロボット連携サーバから前記ロボット制御コマンド情報を受信するロボット制御コマンド受信手段を備え、
前記エレベーター・ロボット連携サーバは、前記ロボット呼び指令登録情報と前記ロボット制御コマンド情報を受信し、前記ロボット呼び指令登録情報を前記エレベーター制御装置のロボット呼び受信手段に送信すると共に、前記ロボット制御コマンド情報を一時的に記憶するロボット制御コマンド記憶手段と、前記エレベーター制御装置からのロボット制御指示情報に基づいて、前記ロボット制御コマンド記憶手段から前記ロボット制御コマンド情報を読み取って前記ロボットに備えられた前記ロボット制御コマンド受信手段に送信するロボット制御コマンド送信手段を備え、
前記エレベーター制御装置は、前記エレベーター・ロボット連携サーバの前記ロボット制御コマンド記憶手段からの前記ロボット呼び指令登録情報を受信する前記ロボット呼び指令受信手段と、前記ロボット呼び指令登録情報に基づいて前記乗りかごを走行させると共に、前記乗りかごに乗車している前記ロボットの挙動に対応して前記ロボットを制御する前記ロボット制御指示情報を求めるエレベーター制御手段と、前記ロボット制御指示情報を前記エレベーター・ロボット連携サーバの前記ロボット制御コマンド送信手段に送信するロボット制御指示手段を備えていると共に、
前記エレベーター制御装置は、前記乗りかごに搭乗した前記ロボットの異常動作を監視し、前記ロボットの異常動作を検知するロボット異常検知手段を備えており、
前記ロボット制御指示手段は、前記ロボット異常検知手段よって前記ロボットの異常が検知されると、これに基づいて非常停止信号を前記エレベーター・ロボット連携サーバの前記ロボット制御コマンド送信手段に送信し、
前記ロボット制御コマンド送信手段は、前記ロボット制御コマンド記憶手段から非常停止制御コマンドを読み出して前記ロボットの前記ロボット制御コマンド受信手段に送信し、
前記前記ロボット制御コマンド受信手段に前記非常停止制御コマンドを受信すると前記ロボットは非常停止される
ことを特徴とするエレベーター・ロボット連携システム。
【請求項9】
請求項8に記載のエレベーター・ロボット連携システムにおいて、
前記エレベーター制御装置は、乗客によって登録される通常呼び指令を作成する通常呼び作成手段を備えており、
前記エレベーター制御手段は、前記ロボットの前記ロボット呼び作成手段で登録された前記ロボット呼び指令と、前記通常呼び作成手段で登録された前記通常呼び指令の両者が存在する場合は、前記通常呼び指令を優先して実行する
ことを特徴とするエレベーター・ロボット連携システム。
【請求項10】
請求項8に記載のエレベーター・ロボット連携システムにおいて、
前記ロボット制御コマンド情報は、前記ロボットによる前記ロボット呼び指令が作成される度に生成され、前記ロボット呼び指令のサービス完了後に、前記ロボット制御コマンド記憶手段の前記ロボット制御コマンド情報が消去される
ことを特徴とするエレベーター・ロボット連携システム。
【請求項11】
請求項8に記載のエレベーター・ロボット連携システムにおいて、
前記エレベーター制御装置は、前記乗りかごに設けられた液晶画面の表示画像を制御する液晶画面表示手段を備えており、
前記液晶画面表示手段は、前記ロボット異常検知手段よって前記ロボットの異常が検知されると、前記ロボットを非常停止させることを知らせるメッセージを前記液晶画面に表示する処理を実行する
ことを特徴とするエレベーター・ロボット連携システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターとロボットを連携して動作させるエレベーター・ロボット連携システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物内の清掃や荷物の運搬、建物利用者への道案内などの業務を行う自律移動体(自律移動ロボットとも称され、以下では単にロボットと表記する)の実用化が進められている。ビルのように複数の階床が存在する建物において、上述の業務を行わせるには、ロボットによるエレベーターの利用が不可欠となる。しかしながら、エレベーターは一般の乗客も利用しており、エレベーターの乗りかごという限られた空間内への出入りの際には、ロボットの乗客への安全の配慮が重要となる。
【0003】
例えば、乗りかご内でロボットが不用意に移動すると、乗客に接触して思わぬ事態を誘発する恐れがある。このような事態を回避するため、特開2010-287016号公報(特許文献1)では、以下のような制御システムが提案されている。
【0004】
特許文献1においては、エレベーターの乗りかご内でロボットが不用意に移動すると、その移動をロボット移動検出手段により検知し、エレベーターに備えられたロボット異常信号送信手段からロボットに対して異常信号を送信し、ロボットの移動を停止させることで、一般の乗客が乗りかごに同時に乗車しても乗客の安全性を確保することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載の制御システムでは、予めロボット、及びエレベーターは、ハード的に備え付けられた機器によって対応付けられている。このため、多くの異なったロボットに対応することができなく、多くのロボットに対する制御システムの拡張性に課題がある。また、ロボットが乗りかご内で異常な行動を生じると予期せぬ事態を引き起こすことになり、これの対策が課題となる。更には、副次的であるが、ロボットへのサイバー攻撃に対する耐性にも課題がある。
【0007】
本発明の主たる目的は、多くの異なったロボットに対応することができるようにロボットに対する拡張性を向上し、しかもロボットの異常な行動を抑制することができるエレベーター・ロボット連携システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ロボットをエレベーターで移動させるエレベーター・ロボット連携システムにおいて、ロボットの搭乗階へのかご呼び要求を受け付けるときに、ロボット制御情報も共に受け付けるエレベーター・ロボット連携サーバと、エレベーター・ロボット連携サーバから、かご呼び要求を受け取ってロボットの搭乗階へ乗りかごを移動するように制御するエレベーター制御装置と、乗りかごの内部で乗りかごに搭乗しているロボットの状態を監視するかご内監視部と、エレベーター・ロボット連携サーバで受け付けたロボット制御情報を記憶する記憶部とを備え、かご内監視部が乗りかごに搭乗しているロボットを停止させることが必要なロボットの動作を検出したとき、エレベーター制御装置は、エレベーター・ロボット連携サーバに対して記憶部に格納されたロボット制御情報を用いてロボットを停止させる処理を行わせることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エレベーター・ロボット連携サーバによって多くの異なったロボットに対応することができ、ロボットに対する拡張性を向上し、しかもロボットの異常な行動を抑制することができるエレベーター・ロボット連携システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態であるエレベーター・ロボット連携システムの構成を示す構成図である。
【
図2A】本発明におけるエレベーター・ロボット連携システムの動作を実行する処理フローを示すフローチャートである。
【
図2B】
図2Aにおける処理フローで、乗客とロボット同時に乗車する時に、ロボットの異常動作を検知してロボットの非常停止動作を実行する処理フロー示すフローチャートである。
【
図2C】
図2Aにおける処理フローで、ロボット呼びにロボット制御コマンドが付与されていない場合のロボット専用運転を実行する処理フロー示すフローチャートである。
【
図3】ロボットの異常動作検出時に液晶画面表示手段が乗りかご内の液晶に表示するメッセージの例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0012】
図1は本発明の実施形態におけるエレベーター・ロボット連携システムの構成を示している。本実施形態では、特にエレベーター・ロボット連携サーバを設けたことが大きな特徴となっている。
【0013】
エレベーター・ロボット連携システムは、ロボット11、エレベーター・ロボット連携サーバ12、及びエレベーター制御装置13とから構成されている。ロボット11、エレベーター・ロボット連携サーバ12、及びエレベーター制御装置13は、無線(場合によっては有線)によって、互いに各種情報が送受信されている。
【0014】
ロボット11は、乗りかごを呼び寄せるロボット呼び作成手段14と、ロボット制御コマンド受信手段18を備えている。尚、ロボット11は、複数のロボットを想定しているが、ここでは一台のロボットについて説明する。
【0015】
ロボット呼び作成手段14は、エレベーターの乗りかごを、指定階床へ呼び寄せ・走行させるロボット呼び指令(かご呼び要求ともいう)をLTE等の無線通信手段によって、エレベーター・ロボット連携サーバ12を介してエレベーターの制御を行うエレベーター制御装置13へ送信する。また、ロボットコマンド受信手段18は、エレベーター制御装置13からの情報、例えば、非常停止情報を無線通信手段によってエレベーター・ロボット連携サーバ12を介して受信する。
【0016】
ロボット呼び作成手段14は、(1)乗りかごを呼び寄せる階床と行き先階床を示す情報であるロボット呼び指令登録情報15を記憶するロボット呼び指令登録情報記憶部と、(2)ロボット制御に必要な通信規格(LTE,5G,Wi-Fi,bluetooth等)を示す情報である通信規格情報16を記憶する通信規格情報記憶部と、(3)ロボット呼び指令によって呼び寄せた乗りかごが、ロボット1が待機する階床へ到着したことをロボット11に通知する乗りかご到着通知制御コマンドや、ロボット11を非常停止させる非常停止制御コマンド等を含んだ、ロボット制御コマンド情報17(請求項ではロボット制御情報とも表記している)を記憶するロボット制御コマンド情報記憶部を備えている。
【0017】
エレベーター・ロボット連携サーバ12は、ロボット11とエレベーター制御装置13とを接続するようにインターネットを介して夫々に接続されている。エレベーター・ロボット連携サーバ12は、ロボット制御コマンド情報記憶手段19と、ロボット制御コマンド送信手段20を備えている。
【0018】
ロボット制御コマンド情報記憶手段19は、ロボット呼び作成手段14から送信されるロボット呼び指令登録情報15を、エレベーター制御装置13のロボット呼び指令受信手段13に転送すると共に、ロボット制御コマンド情報17を一時記憶する。
【0019】
ここで、通信規格情報16も共に記憶することも可能である。例えば、ロボット11が乗りかごに乗車した状態で、ロボット11とエレベーター・ロボット連携サーバ12との通信が途絶えた場合に、エレベーター・ロボット連携サーバ12は、記憶された通信規格情報に基づいて、ロボット11と通信を再開することが可能となる。
【0020】
また、ロボット制御コマンド情報はロボット呼び指令が作成される度に生成し直され、ロボット呼び指令のサービス完了後に、ロボット制御コマンド記憶手段19からロボット制御コマンド情報17を消去することで、セキュリティリスクが軽減される。これによって、ロボット11へのサイバー攻撃に対する耐性を向上することができる。
【0021】
ロボット制御コマンド送信手段20は、エレベーター制御装置13内のロボット制御指示手段24の指令に応じて、ロボット制御コマンド情報記憶手段19に記憶されたロボット制御コマンド情報の読み出しを行い、ロボット11内のロボット制御コマンド受信手段18へ送信する。
【0022】
エレベーター制御装置13は、通常呼び指令作成手段21と、ロボット呼び指令受信手段22と、エレベーター制御手段23と、ロボット制御指示手段24と、ロボット異常検知手段(請求項では、かご内監視部とも表記している)25と、液晶画面表示手段26とを備えている。
【0023】
尚、液晶画面表示手段26は、乗りかご内に設置された出力部である液晶画面27に種々の表示、例えば、ロボットを非常停止させるためのスイッチ操作のような物理的な操作手順を表示したり、ロボットを停止させるための制御コマンドを発行したことを表す情報(メッセージ)を表示したりすることができる。
【0024】
通常呼び作成手段21は、乗客によって、乗り場内に設けられた乗り場呼びボタン、または乗りかご内のかご呼びボタンを押下することで、エレベーターの乗りかごを指定階床へ呼び寄せ・走行させる通常呼び指令を、エレベーター制御手段23へ送信する。ロボット呼び指令受信手段22は、ロボット呼び指令作成手段14から送信されるロボット呼び指令登録情報15を受信し、エレベーター制御手段23へ送信する。
【0025】
エレベーター制御手段23は、エレベーターの運転を制御すると共に、通常呼び作成手段21の通常呼び指令と、ロボット呼び指令作成手段14のロボット呼び指令の登録状況、即ち通常呼び指令とロボット呼び指令の同時登録の有無から乗客とロボット11が同乗しているかを否かの判別を実行し、ロボット異常検知手段25へ通知する。
【0026】
ロボット異常検知手段25は、ロボット11と乗客が同乗しているエレベーターにおいて、ロボット11が所定の範囲以上の距離を走行する等の異常動作をした場合、エレベーターの乗りかご内に設置されたカメラ等によって異常動作(例えば、ロボットを停止させることが必要なロボットの動作)を検知し、異常と判断されるとロボット制御指示手段24に通知する。
【0027】
ロボット制御指示手段24は、ロボット異常検知手段25がロボットの異常動作を検知した場合、乗客へ危険が及ぶ可能性があると判断し、ロボット制御コマンド送信手段20に非常停止指令を送信する。これによって、エレベーター・ロボット連携サーバ12のロボット制御コマンド送信手段20は、ロボット制御コマンド情報記憶手段19から非常停止制御コマンドを読み出し、ロボット11に送信(発行)する。
【0028】
そして、ロボット制御コマンド受信手段18によって非常停止制御コマンドを受けたロボットは、この制御コマンドにしたがって、自身を非常停止させる処理を実行する。
【0029】
液晶画面表示手段26は、ロボット異常検知手段25がロボット11の異常動作を検知した場合、ロボット11が異常動作したため、非常停止させる旨のメッセージ、及びロボット1の非常停止方法について表示する(
図3参照)。更には、ロボットへ非常停止制御コマンドを発行したことを示す情報、例えば、ロボット11が非常停止したことを知らせるメッセージを液晶画面に表示する。
【0030】
ここで、
図1に示す実施形態では、ロボット制御コマンド情報記憶手段19は、エレベーター・ロボット連携サーバ12に設けられているが、エレベーター制御装置13に設けるようにしても良い。したがって、この場合はロボット呼び指令とロボット制御コマンド情報はエレベーター制御装置13に送られ、エレベーター制御装置13に設けられたロボット制御コマンド情報記憶手段19に記憶される。そして、ロボット11に異常動作を生じると、ロボット制御コマンド情報記憶手段19から制御コマンドを読み出して、エレベーター・ロボット連携サーバ12のロボット制御コマンド送信手段20に送信すれば良い。
【0031】
以上は、一台のロボット11における概略の動作を示しているが、複数の他のロボットにおいても同様の動作を行うことができる。つまり、他のロボットもエレベーター・ロボット連携サーバ12を介してエレベーター制御装置13と連携することができる。このため、多くの異なったロボットに対応することができ、ロボットに対する拡張性を高めることができるようになる。
【0032】
次に、エレベーター・ロボット連携システムにおける、具体的な処理フローを
図2A~
図2Cに基づいて説明する。尚、以下に説明する処理フローは、エレベーター・ロボット連携システムを構成する、ロボット11、エレベーター・ロボット連携サーバ12、及びエレベーター制御装置13の間での処理を示している。
【0033】
[
図2Aのフローチャート ]
≪ステップS101≫
ステップS101においては、ロボット11が、エレベーターの乗りかごを、指定階床へ呼び寄せ・走行させるために、ロボット呼び作成手段14によってロボット呼び指令を登録したかどうかが判断される。
【0034】
このステップS101でロボット呼び指令を登録したと判断されるとステップS102に移行する。また、ロボット11がロボット呼び作成手段14にてロボット呼び指令を登録していない場合は、再びステップS101に戻って、ロボット呼び指令の登録を監視する。
【0035】
≪ステップS102≫
ステップS101でロボット呼び指令を登録したと判断されているので、ステップS102においては、ロボット呼び作成手段14からエレベーター・ロボット連携サーバ12に送信したロボット呼び指令に、通信規格情報16とロボット制御コマンド情報17が付与されているかどうかを判断している。
【0036】
尚、通信規格情報16は必ずしも付与される必要性はない。ただ、上記したロボット制御コマンド記憶手段19で説明したように、必要であれば付与されても差し支えない。
【0037】
ロボット呼び指令に、通信規格情報16とロボット制御コマンド情報17が付与されている場合は、ステップS103に移行し、通信規格情報16とロボット制御コマンド情報17が付与されていない場合(ロボット呼び指令だけの場合)は、ステップS301(
図2C参照)に移行する。
【0038】
≪ステップS103≫
ステップS102でロボット呼び指令に、通信規格情報16とロボット制御コマンド情報17が付与されていると判断されているので、ステップS103においては、エレベーター・ロボット連携サーバ12のロボット制御コマンド記憶手段19に、通信規格情報16とロボット制御コマンド情報17を記憶する。これらの情報の記憶が完了するとステップS104に移行する。
【0039】
≪ステップS104≫
ステップS104においては、エレベーター制御装置13のロボット呼び受信手段22は、エレベーター・ロボット連携サーバ12からロボット呼び指令を受信し、このロボット呼び指令に基づいて、エレベーター制御手段23は、ロボット11が呼び寄せた階床へ向けて乗りかごを走行させる。乗りかごの走行を実行するとステップS105に移行する。
【0040】
≪ステップS105≫
ステップS105においては、エレベーター制御手段22によってエレベーターの乗りかごが、ロボット11が呼び寄せた階床へ着床したかどうかを判断する。乗りかごが、ロボット11が呼び寄せた階床へ着床したと判断するとステップS106に移行し、ロボット11が呼び寄せた階床へ着床していないと判断すると、再びステップS104に戻って、同様の処理を実行する。
【0041】
≪ステップS106≫
乗りかごが、ロボット11が呼び寄せた階床へ着床したと判断されているので、ステップS106においては、エレベーター制御装置13のロボット制御指示手段14は、エレベーター・ロボット連携サーバ12のロボット制御コマンド送信手段20に着床情報を通知する。
【0042】
エレベーター・ロボット連携サーバ12のロボット制御コマンド送信手段20は、ロボット制御コマンド記憶手段19に記憶したロボット制御コマンド情報17内の到着通知コマンドを用いて、ロボット11のロボット制御コマンド受信手段18に向けて、乗りかごが到着したことを通知する。これによって、ロボット11は、到着した乗りかごに乗車する行動を開始し、ステップS107に移行する。
【0043】
≪ステップS107≫
ステップS107においては、ロボット11はエレベーターの乗りかごに乗り込み、エレベーター制御手段22は、ロボット呼び指令で作成された行先階へ乗りかごを走行させる。この走行状態でステップS108に移行する。
【0044】
≪ステップS108≫
ステップS108においては、エレベーター制御手段22によって乗りかごが、ロボット呼び指令で作成された行先階へ走行中に、通常呼び作成手段21によって乗客による通常呼び指令が作成されたかどうかを判断する。
【0045】
通常呼び作成手段11によって通常呼び指令が作成されたと判断されると、ステップS201(
図2B参照)に移行する。ここで、通常呼び指令が作成された場合は、ロボット11と乗客が同乗する状態と判断している。
【0046】
一方、通常呼び作成手段11によって通常呼び指令が作成されていないと判断された場合は、ロボット11のみが乗りかごに乗車していると判断してステップS109に移行する。
【0047】
≪ステップS109≫
ステップS109においては、エレベーター制御手段22によって、ロボット呼び指令で作成された行先階へ乗りかごが到着したと判断されると、ステップS110に移行する。ここで、ロボット11は乗りかごから降車して、行先階のホールに向かうことになる。一方、ロボット呼び指令で作成された行先階へ乗りかごが到着していないと判断されると、再びステップS107に戻って、同じ処理を実行する。
【0048】
≪ステップS110≫
ステップS110においては、ロボット11が目的階である行先階へ到達したときに、エレベーター・ロボット連携サーバ12のロボット制御コマンド記憶手段19から、先に記憶されていたロボット制御コマンド情報17を消去する。このように、ロボット呼び指令のサービス完了後に、ロボット制御コマンド記憶手段19からロボット制御コマンド情報17を消去する。これによって、エレベーター・ロボット連携サーバ12のセキュリティリスクを軽減することはできる。ロボット制御コマンド情報17を消去すると、エンドに抜けて処理を終了する。
【0049】
次に、ステップS108で通常呼び指令が作成されたと判断された場合における、乗客とロボット11が同じ乗りかごに乗車した時に、ロボット11が異常な動作を行った時の処理について説明する。
【0050】
[
図2Bのフローチャート ]
≪ステップS201≫
ステップS201においては、乗客とロボット11が同乗中に、ロボット異常検知手段25が、ロボットの異常行動の動作を検知したかどうかを判断している。ロボット異常検知手段25は、ロボット11と乗客が同乗している乗りかごにおいて、ロボット11が所定の範囲以上の距離を走行する等の異常動作を行った場合に、乗りかご内に設置されたカメラ等によって異常動作を検知することができる。
【0051】
乗客とロボットの同乗中に、ロボット異常検知手段25がロボットの異常動作を検知していない場合は、再びS107の前に戻って、同様の処理を実行する。一方、ロボット異常検知手段25がロボットの異常動作を検知した場合は、ステップS202に移行する。
【0052】
≪ステップS202≫
ステップS202においては、ロボット異常検知手段25はロボット制御指示手段24に対して異常動作の検知を通知する。そして、ロボット制御指示手段24は、エレベーター・ロボット連携サーバ12のロボット制御コマンド送信手段20に対して、非常停止指令を送信する。非常停止指令を送信するとステップS203に移行する。
【0053】
≪ステップS203≫
ステップS203においては、ロボット11を非常停止させるメッセージを液晶画面に表示する。例えば、液晶画面表示手段26は、乗りかご内の液晶画面に「ロボットの異常動作を検出したため、ロボットを非常停止させます」といったメッセージを表示する。
【0054】
図3に液晶画面の一例を示している。液晶画面27には、ロボット11を非常停止させるメッセージ欄28と、ロボットの画像29と、ロボットの非常停止ボタンの位置30と、手動で停止させる場合の停止方法のメッセージ欄31とが表示されている。また、ロボットを遠隔制御で非常停止させることができない場合には、手動でのロボットの非常停止方法を液晶画面に表示して、エレベーターの乗客が非常停止させることができるよう案内しても良い。
【0055】
したがって、乗客は、ロボットが非常停止すること、また手動で停止させる場合の手順を把握でき、これによって、乗客が違和感を持つことを避けることができる。非常停止のメッセージを表示するとステップS204に移行する。
【0056】
≪ステップS204≫
ステップS204においては、エレベーター・ロボット連携サーバ12のロボット制御コマンド送信手段20が、非常停止指令を受信したかどうかを判断している。ロボット制御コマンド送信手段20が、非常停止指令を受信している場合はステップS205に移行する。一方、ロボット制御コマンド送信手段20が、非常停止指令を受信していない場合は、ステップS202に戻り、ロボット制御指示手段24は、ロボット制御コマンド送信手段20に対して非常停止指令を再送信する。
【0057】
≪ステップS205≫
ステップS205においては、ロボット制御コマンド送信手段20は、ロボット制御コマンド記憶手段19に記憶されているロボット制御コマンド情報17内の非常停止コマンドを読み取り、ロボット11のロボット制御コマンド受信手段18へ非常停止コマンドを送信する。非常停止コマンドを送信するとステップS206に移行する。
【0058】
≪ステップS206≫
ステップS206においては、ロボット11のロボット制御コマンド受信手段18が非常停止コマンドを受信したかどうかを判断している。非常停止コマンドを受信した場合はステップS207に移行する。一方、ロボット制御コマンド受信手段18が非常停止コマンドを受信していない場合は、ステップS205に戻り、ロボット制御コマンド送信手段20は、ロボット11のロボット制御コマンド受信手段18へ非常停止コマンドを再送信する。
【0059】
≪ステップS207≫
ステップS207においては、ロボット11は受信した非常停止コマンドから、非常停止処理を実行して自身を非常停止する。これによって、乗りかご内でロボットが不用意に移動して思わぬ事態を誘発する恐れを抑制することができる。非常停止処理を実行するとステップS208に移行する。
【0060】
≪ステップS208≫
ステップS208においては、ロボット11が非常停止したことを知らせるメッセージを液晶画面に表示する。例えば、液晶画面表示手段26は、乗りかご内の液晶画面に「ロボットの非常停止が完了しました」といったメッセージを表示する。完了メッセージの表示を行うと、ステップS209に移行する。
【0061】
≪ステップS209≫
ステップS209においては、エレベーター・ロボット連携サーバ12のロボット制御コマンド記憶手段19から、先に記憶されていたロボット制御コマンド情報17を消去する。これによって、エレベーター・ロボット連携サーバ12のセキュリティリスクを軽減することはできる。ロボット制御コマンド情報17を消去すると、エンドに抜けて処理を終了する。
【0062】
次に、ステップS102で、ロボット呼びにロボット制御コマンド情報が付与されていないと判断された場合における、ロボット専用運転を実行する処理について説明する。
【0063】
[
図2Cのフローチャート ]
≪ステップS301≫
ステップS301においては、ロボット呼び指令登録後で、しかもロボット呼び指令で作成された階床へ乗りかごが走行する前に、通常呼び作成手段21で乗客によって通常呼び指令の登録が行われたかどうかを判断している。通常呼び作成手段21で乗客によって通常呼び指令の登録が行われた場合はステップS302に移行し、通常呼び指令の登録が行われていない場合はステップS304に移行する。
【0064】
≪ステップS302≫
ステップS302においては、エレベーター制御手段22は、通常呼び指令の応答を優先して、通常呼び指令が登録された階床へ乗りかごを走行させる。これによって、ロボット11より乗客が優先的に取り扱われ、ロボット11の同乗による乗りかごの遅延に対する乗客の不満を抑制することができる。通常呼び指令が登録された階床へ乗りかごを走行させると、ステップS303に移行する。
【0065】
≪ステップS303≫
ステップS303においては、通常呼び指令にて登録された階床へ乗りかごが到着したかどうかが判断される。通常呼び指令にて登録された階床へ乗りかごが到着するとステップS301に戻る。これによって、全ての通常呼び指令が実行されるまでこの処理を繰り返すことになる。一方、通常呼び指令が登録された階床へ乗りかごが到着していない場合はステップS302に戻り、同様の処理を繰り返すことになる。
【0066】
≪ステップS304≫
ステップS301で、通常呼び指令の登録が無いと判断されているので、ステップS304においては、エレベーター制御手段22は、ロボット11が呼び寄せた階床へ乗りかごを直行運転させる。そして、この状態でステップS305に移行する。
【0067】
この際に、乗りかごがロボット呼び指令で作成された階床へ到着するまでの間に、通常呼び指令が作成された場合は、ロボット呼び指令で作成された階床へ到着後にサービスを行うように構成されている。
【0068】
≪ステップS305≫
ステップS305においては、ロボット呼び指令で呼び寄せた階床に、乗りかごが到着したかどうかを判断している。そして、ロボット呼び指令で呼び寄せた階床に乗りかごが到着した場合は、ステップS306に移行する。一方、ロボット呼び指令で呼び寄せた階床に乗りかごが到着していない場合は、ステップS304に戻り、同じ処理を繰り返すことになる。
【0069】
≪ステップS306≫
ステップS306においては、エレベーター制御装置13のロボット制御指示手段24は、エレベーター・ロボット連携サーバ12のロボット制御コマンド送信手段20に乗りかごが到着したことを通知する。更にこの通知を受けたロボット制御コマンド送信手段20は、ロボット制御コマンド記憶手段19に記憶していたロボット制御コマンド情報17内の到着通知コマンドを読み出し、ロボット11のロボット制御コマンド受信手段18へ乗りかごが到着したことを通知する。ロボット制御コマンド受信手段18へ乗りかごが到着したことを通知すると、ステップS307に進む。
【0070】
≪ステップS307≫
ステップS307においては、ロボット11が乗りかごに乗り込むと、エレベーター制御手段22は、ロボット呼び指令で作成した行先階へ向けて乗りかごを直行運転させる。この状態でステップS308に移行する。
【0071】
≪ステップS308≫
ステップS308においては、ロボット呼び指令にて登録された行先階へ乗りかごが到着したかどうかを判断している。この判断で、ロボット呼び指令で登録された行先階へ乗りかごが到着していない場合は、ステップS307に戻り同様の処理を繰り返すことになる。一方、ロボット呼び指令で登録された行先階へ乗りかごが到着している場合は、ロボット11は乗りかごから降車して、行先階のホールに向かうことになる。ロボット呼び指令で登録された行先階へ乗りかごが到着すると、ステップS309に移行する。
【0072】
≪ステップS309≫
ステップS309においては、エレベーター・ロボット連携サーバ12のロボット制御コマンド記憶手段19から、先に記憶されていたロボット制御コマンド情報17を消去する。これによって、エレベーター・ロボット連携サーバ12のセキュリティリスクを軽減することはできる。ロボット制御コマンド情報17を消去すると、エンドに抜けて処理を終了する。
【0073】
以上述べた通り、本発明は、ロボットをエレベーターで移動させるエレベーター・ロボット連携システムにおいて、ロボットの搭乗階へのかご呼び要求を受け付けるときに、ロボット制御情報も共に受け付けるエレベーター・ロボット連携サーバと、エレベーター・ロボット連携サーバから、かご呼び要求を受け取ってロボットの搭乗階へ乗りかごを移動するように制御するエレベーター制御装置と、乗りかごの内部で乗りかごに搭乗しているロボットの状態を監視するかご内監視部と、エレベーター・ロボット連携サーバで受け付けたロボット制御情報を記憶する記憶部とを備え、かご内監視部が乗りかごに搭乗しているロボットを停止させることが必要なロボットの動作を検出したとき、エレベーター制御装置は、エレベーター・ロボット連携サーバに対して記憶部に格納されたロボット制御情報を用いてロボットを停止させる処理を行わせることを特徴としている。
【0074】
これによれば、エレベーター・ロボット連携サーバによって多くの異なったロボットに対応することができ、ロボットに対する拡張性を向上し、しかもロボットの異常な行動を抑制することができるエレベーター・ロボット連携システムを提供することができる。
【0075】
尚、本発明は上記したいくつかの実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0076】
11…ロボット、12…エレベーター・ロボット連携サーバ、13…エレベーター制御装置、14…ロボット呼び作成手段、15…ロボット呼び登録情報、16…通信規格情報、17…ロボット制御コマンド情報、18…ロボット制御コマンド受信手段、19…ロボット制御コマンド記憶手段、20…ロボット制御コマンド送信手段、21…通常呼び作成手段、22…ロボット呼び受信手段、23…エレベーター制御手段、24…ロボット制御指示手段、25…ロボット異常検知手段、26…液晶画面表示手段、27…液晶画面。