(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-15
(45)【発行日】2024-05-23
(54)【発明の名称】一液型硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/02 20060101AFI20240516BHJP
C08L 25/10 20060101ALI20240516BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240516BHJP
C08K 5/23 20060101ALI20240516BHJP
C08K 5/24 20060101ALI20240516BHJP
C08K 9/10 20060101ALI20240516BHJP
【FI】
C08L63/02
C08L25/10
C08K3/013
C08K5/23
C08K5/24
C08K9/10
(21)【出願番号】P 2023567893
(86)(22)【出願日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2023036591
【審査請求日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2022175739
(32)【優先日】2022-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305032254
【氏名又は名称】サンスター技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】村田 剛宏
(72)【発明者】
【氏名】宇野 淳之
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-024872(JP,A)
【文献】特開2011-132507(JP,A)
【文献】特開2019-038926(JP,A)
【文献】特開2002-226995(JP,A)
【文献】特開2011-148091(JP,A)
【文献】特開2005-022339(JP,A)
【文献】特開2006-176668(JP,A)
【文献】特開2009-299028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0245161(US,A1)
【文献】国際公開第2004/108807(WO,A1)
【文献】特表2023-542875(JP,A)
【文献】特開平09-316169(JP,A)
【文献】特開平09-040831(JP,A)
【文献】特開平03-068673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00
C08L 21/00
C08K 3/013
C08K 5/23
C08K 5/24
C08K 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)固形ゴム、(C)潜在性硬化剤、(D)充填材及び(E)発泡剤を含む一液型硬化性組成物であって、
(A)エポキシ樹脂は、(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含み、
一液型硬化性組成物は、(A)エポキシ樹脂100質量部当たり、(B)固形ゴムを10~100質量部含み、
(B)固形ゴムは、(B1)スチレン-ブタジエン-ジビニルベンゼン共重合体を
含み、
一液型硬化性組成物は、100質量部の硬化性組成物あたり、20~70質量部の(D)充填材を含む、一液型硬化性組成物。
【請求項2】
40℃で、せん断速度430sec
-1での粘度は、50~300Pa・sである、請求項1に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項3】
(A)エポキシ樹脂は、(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を、エポキシ樹脂を100質量%として、25~90質量%含む、請求項1に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項4】
(A)エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂を100質量%として、芳香環を15~40質量%含む、請求項1に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項5】
(E)発泡剤は、ADCA系化学発泡剤、OBSH系化学発泡剤及び未膨張バルーンからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項6】
発泡倍率は、10~200%である、請求項1に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項7】
(D)充填材は、充填材の長さが0.5mm以上の針状の充填材を含む、請求項1に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項8】
(B)固形ゴムは、(B2)スチレン-ブタジエン系共重合体を更に含む、請求項1に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項9】
(B)固形ゴムは、(B3)ニトリル-ブタジエン系共重合体を更に含む、請求項1に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項10】
(B1)固形ゴム及び/又は(B2)固形ゴムは、酸含有量が0.2~8質量%である、請求項1
又は8に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項11】
(A)エポキシ樹脂は、(A2)低粘度エポキシ樹脂を含み、(A2)低粘度エポキシ樹脂は、エポキシ当量が250~700であり、かつ、25℃で、40~5000mPa・sの粘度を有する、請求項1に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項12】
(A2)低粘度エポキシ樹脂は、(A2-1)二塩基酸エステル系エポキシ樹脂を含む、請求項11に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項13】
(D)充填材は、アスペクト比(L/D)が5以上の無機質充填材を含む、請求項1に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項14】
塗布型の、請求項1に記載の一液型硬化性組成物。
【請求項15】
板金補強用で、ポンプ吐出可能な、請求項1に記載の一液型硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液型硬化性組成物に関し、さらに詳しくは、(A)エポキシ樹脂、(B)固形ゴム、(C)潜在性硬化剤、(D)充填材及び(E)発泡剤を含む一液型硬化性組成物であって、塗布型の一液型硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体を、軽量化するために、厚さを薄くした板金が使用されている。その板金の張り剛性およびデント性を確保するために、板金補強材が使用されている。通常、板金補強材は、ガラスクロス-粘着剤-離型紙という三層構造を有し、一定の板状の形状を有する定型品として、市販されている。そのような定型品の板金補強材は、所望の形状に調整された後、使用されている。形状が調整された板金補強材は、板金に張り付けられるが、使用環境の影響による、粘着性の低下、貼り付け位置のずれの発生などから、人(作業者)による修正が必要である。従って、定型品の板金補強材を使用する板金補強の完全自動化は困難であり、このことから、生産性低下を生じざるを得なかった。更に、上述の離型紙の廃棄による、コスト増、廃棄物の発生による環境への負荷の発生などもあり得る。そこで、完全自動化可能な板金補強材が求められている。そのような板金補強材として、自動塗布可能な板金補強材が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、熱硬化型エポキシ樹脂の液状組成物に特定アスペクト比(L/D)の無機質充填剤を配合して、高粘度粘ちょう物とすることによる、塗布型板金補強材組成物を開示する。特許文献1は、その塗布型板金補強材組成物は、加温下で塗布することができ、塗布後の放冷固化によって、硬化焼き付けまでの工程中、特に耐シャワー性や化成処理液、電解液に対して、飛散、溶解及び脱落せず、また補強効果においても、板金の曲げ強度や剛性を向上せしめ、かつ硬化後も板金にひずみを生じさせないことを開示する(特許文献1[0005]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する塗布型板金補強材は、優れた性質を有するが、更に、歪を抑えつつ、補強性を向上することとポンプ吐出性を維持しながら耐シャワー性を向上することが求められている。一方、特許文献1は、高粘度粘ちょう物とすることによって、塗布型板金補強材を得ており、曲げ強度を向上し、耐シャワー性の向上、粘度も低く維持しポンプ吐出性を維持することについて、何ら教示するものではない。
【0006】
従って、本発明は、低粘度を維持して加熱塗布可能であるが、塗布後硬化焼付までの工程中、特に、シャワー、化成処理液、電着液に対して、飛散や溶解及び脱落せず、硬化後は、板金の曲げ強度や剛性を向上するが、板金に歪を生じさせない、一液型硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、スチレン-ブタジエン-ジビニルベンゼン共重合体という特定の固形ゴムを使用すること、及び発泡剤を使用することによって、歪を抑えつつ、補強性を向上すること歪を抑えつつ、補強性を向上することとポンプ吐出性を維持しながら耐シャワー性を向上することが可能である、一液型硬化性組成物を得られることを見出した。更に、そのような一液型硬化性組成物は、板金に好適に塗布することが可能であり、塗布型板金補強材として好適に使用することができることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本明細書は、下記の実施形態を含む。
1.(A)エポキシ樹脂、(B)固形ゴム、(C)潜在性硬化剤、(D)充填材及び(E)発泡剤を含む一液型硬化性組成物であって、
(A)エポキシ樹脂は、(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含み、
一液型硬化性組成物は、(A)エポキシ樹脂100質量部当たり、(B)固形ゴムを10~100質量部含み、
(B)固形ゴムは、(B1)スチレン-ブタジエン-ジビニルベンゼン共重合体を含む、一液型硬化性組成物。
2.40℃で、せん断速度430sec-1での粘度は、50~300Pa・sである、上記1に記載の一液型硬化性組成物。
3.(A)エポキシ樹脂は、(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を、エポキシ樹脂を100質量%として、25~90質量%含む、上記1又は2に記載の一液型硬化性組成物。
4.(A)エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂を100質量%として、芳香環を15~40質量%含む、上記1~3のいずれか一つに記載の一液型硬化性組成物。
5.(E)発泡剤は、ADCA系化学発泡剤、OBSH系化学発泡剤及び未膨張バルーンからなる群から選択される少なくとも一種を含む、上記1~4のいずれか一つに記載の一液型硬化性組成物。
6.発泡倍率は、10~200%である、上記1~5のいずれか一つに記載の一液型硬化性組成物。
7.(D)充填材は、充填材の長さが0.5mm以上の針状の充填材を含む、上記1~6のいずれか一つに記載の一液型硬化性組成物。
8.(B)固形ゴムは、(B2)スチレン-ブタジエン系共重合体を更に含む、上記1~7のいずれか一つに記載の一液型硬化性組成物。
9.(B)固形ゴムは、(B3)ニトリル-ブタジエン系共重合体を更に含む、上記1~8のいずれか一つに記載の一液型硬化性組成物。
10.(B1)固形ゴム及び/又は(B2)固形ゴムは、酸含有量が0.2~8質量%である、上記1~9のいずれか一つに記載の一液型硬化性組成物。
11.(A)エポキシ樹脂は、(A2)低粘度エポキシ樹脂を含み、(A2)低粘度エポキシ樹脂は、エポキシ当量が250~700であり、かつ、25℃で、40~5000mPa・sの粘度を有する、上記1~10のいずれか一つに記載の一液型硬化性組成物。
12.(A2)低粘度エポキシ樹脂は、(A2-1)二塩基酸エステル系エポキシ樹脂を含む、上記11に記載の一液型硬化性組成物。
13.(D)充填材は、アスペクト比(L/D)が5以上の無機質充填材を含む、上記1~12のいずれか一つに記載の一液型硬化性組成物。
14.塗布型の、上記1~13のいずれか一つに記載の一液型硬化性組成物。
15.板金補強用で、ポンプ吐出可能な、上記1~14のいずれか一つに記載の一液型硬化性組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態の一液型硬化性組成物は、歪を抑えつつ、補強性を向上することとポンプ吐出性を維持しながら耐シャワー性を向上することが可能である。更に、その一液型硬化性組成物は、板金に好適に塗布することが可能であり、塗布型板金補強材として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書は、一の要旨において、
(A)エポキシ樹脂、(B)固形ゴム、(C)潜在性硬化剤、(D)充填材及び(E)発泡剤を含む一液型硬化性組成物を提供する。
その一液型硬化剤組成物について、
(A)エポキシ樹脂は、(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含み、
その一液型硬化性組成物は、(A)エポキシ樹脂100質量部当たり、(B)固形ゴムを10~100質量部含み、
(B)固形ゴムは、(B1)スチレン-ブタジエン-ジビニルベンゼン共重合体を含む。
【0011】
本明細書において、(A)エポキシ樹脂とは、存在するエポキシ基によって、架橋ネットワーク化を生ずることで、硬化させることが可能な熱硬化性樹脂をいい、一般的に、エポキシ樹脂と呼ばれており、本発明が目的とする硬化性組成物を得られる限り、特に制限されることはない。
(A)エポキシ樹脂は、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂等であってよい。
【0012】
(A)エポキシ樹脂は、(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂とは、ビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂であり、特に、変性されておらず、本発明が目的とするエポキシ樹脂組成物を得られる限り、特に制限されることはない。
(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、臭素化ビスフェノールA、ビスフェノールADのジグリシジルエーテル、などを例示することができる。
【0013】
(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂の粘度は、25℃で、1500mPa・s以上の粘度を有することが好ましく、2000~25000mPa・sの粘度を有することがより好ましく、2500~20000mPa・sの粘度を有することが更に好ましく、3000~15000mPa・sの粘度を有することが更により好ましくい。
(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂は、エポキシ等量150~800g/eqであることが好ましく、エポキシ等量160~500g/eqであることがより好ましく、エポキシ等量165~250g/eqであることが更に好ましく、エポキシ等量170~200g/eqであることが更により好ましい。(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂は、エポキシ等量150~800g/eqである場合、作業性により優れる。
(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂として、市販品を使用することができる。それらの市販品として、例えば、三菱ケミカル(株)製の「jER(登録商標)828」、「jER(登録商標)1001」及び「jER(登録商標)807」等を例示することができる。
【0014】
(A)エポキシ樹脂は、(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を、エポキシ樹脂を100質量%として、25~90質量%含むことが好ましく、25~60質量%含んでも良く、29~80質量%含むことがより好ましく、29~56質量%含んでも良く、33~65質量%含むことが更に好ましく、33~52質量%含むことも更に好ましく、35~49質量%含むことが更により好ましい。
(A)エポキシ樹脂は、(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を、エポキシ樹脂を100質量%として、25~90質量%含む場合、本発明の実施形態の硬化性組成物は、Tg、弾性率及び曲げ強度が、よりバランスよく向上し得る。
【0015】
(A)エポキシ樹脂は、(A2)低粘度エポキシ樹脂を含むことができる。(A2)低粘度エポキシ樹脂とは、25℃で、5000mPa・s未満の粘度を有するエポキシ樹脂をいい、40~5000mPa・sの粘度を有することが好ましく、45~4000mPa・sの粘度を有することがより好ましく、50~3000mPa・sの粘度を有することが更に好ましく、60~2500mPa・sの粘度を有することが更により好ましい。
(A)エポキシ樹脂は、(A2)低粘度エポキシ樹脂を含む場合、本発明の実施形態の硬化性組成物は、比較的低温(40-50℃)でのポンプ吐出性を確保できる。
【0016】
(A2)低粘度エポキシ樹脂は、エポキシ当量が250~700であることが好ましく、280~680であることがより好ましく、300~650であることが更により好ましい。
(A)エポキシ樹脂は、(A2)低粘度エポキシ樹脂を含み、(A2)低粘度エポキシ樹脂は、エポキシ当量が250~700である場合、本発明の実施形態の硬化性組成物は、可撓性を有し、曲げ試験最大強度時の変位量が大きくなる。
【0017】
(A)エポキシ樹脂は、(A2)低粘度エポキシ樹脂を含み、(A2)低粘度エポキシ樹脂は、エポキシ当量が250~700であり、かつ、25℃で、40~5000mPa・sの粘度を有する場合、本発明の実施形態の硬化性組成物は、上記両者の効果を発揮することができる。
【0018】
(A2)低粘度エポキシ樹脂は、(A2-1)二塩基酸エステル系エポキシ樹脂を含むことができる。
(A2-1)二塩基酸エステル系エポキシ樹脂とは、二塩基酸(例えば、長鎖の二塩基酸であるダイマー酸、フタル酸、水添フタル酸など)のエステルに基づくエポキシ樹脂をを含む。
(A2-1)二塩基酸エステル系エポキシ樹脂は、上述の(A2)低粘度エポキシ樹脂に該当し、本発明が目的とするエポキシ樹脂組成物を得られる限り、特に制限されることはない。
(A2-1)二塩基酸エステル系エポキシ樹脂として、市販品を使用することができる。それらの市販品として、例えば、三菱ケミカル(株)製の「jER(登録商標)871」(ダイマー酸グリシジルエステル)等を例示することができる。
【0019】
(A2)低粘度エポキシ樹脂は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等のアルキレンオキシド付加物のジグリシジルエーテル、反応性希釈材として使用される二官能エポキシ樹脂、さらにエポキシ樹脂の一部を構成する単官能エポキシ樹脂等を含むこともできる。
【0020】
(A)エポキシ樹脂は、(A)エポキシ樹脂を100質量%として、(A2)低粘度エポキシ樹脂を、20~80質量%含むことが好ましく、30~75質量%含むことがより好ましく、40~70質量%含むことが更に好ましく、50~65質量%含むことが更により好ましい。
(A)エポキシ樹脂は、(A2)低粘度エポキシ樹脂を、(A)エポキシ樹脂を100質量%として、20~80質量%含む場合、本発明の実施形態の硬化性組成物は、比較的低温(40-50℃)でのポンプ吐出性を確保することができる。
尚、(A2)低粘度エポキシ樹脂は、(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含まない。
【0021】
(A)エポキシ樹脂は、(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂及び(A2)低粘度エポキシ樹脂に該当しない(A3)その他のエポキシ樹脂を、含むことができる。
(A3)その他のエポキシ樹脂とは、(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂及び(A2)低粘度エポキシ樹脂に該当しないエポキシ樹脂であって、本発明が目的とする硬化性組成物を得られる限り、特に制限されることはない。
(A)エポキシ樹脂は、(A3)その他のエポキシ樹脂を、エポキシ樹脂を100質量%として、40質量%以下含んでよく、30質量%含んでよく、20質量%以下含んでよい。
そのような(A3)その他のエポキシ樹脂として、例えば、ゴム変性エポキシ樹脂[ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールADのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジグリシジルエーテルなど)とブタジエン-アクリロニトリル-(メタ)アクリル酸共重合体とを、1:5~4:1、好ましくは1:3~3:2の質量比で配合し、80~180℃の温度で反応させて得られる反応生成物など]、ウレタン変性エポキシ樹脂[ポリアルキレングリコールの末端にポリイソシアネートを付加したポリウレタンプレポリマーにエポキシ樹脂の水酸基と反応して得られる反応生成物(混合比は10:90~50:50);例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量500~5000)に過剰量のジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど)を反応させて得られる末端NCO含有ウレタンプレポリマーと、OH含有エポキシ樹脂(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、脂肪族多価アルコールのジグリシジルエーテルなど)との反応生成物など]、カルボキシ末端ブタジエンアクリロニトリル共重合体(CTBN)変性エポキシ樹脂[ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールADのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジグリシジルエーテルなど)とカルボキシル末端のブタジエン‐アクリロニトリル共重合体ゴムとを、1:5~4:1、好ましくは1:3~3:2の質量比で配合し、80~180℃の温度で反応させて得られる反応生成物など]、アクリル変性エポキシ樹脂[アクリルゴム粒子の表面のカルボキシル基とエポキシ樹脂とを反応させて得られる反応生成物(混合比は10:90~50:50)など]などを例示することができる。
【0022】
(A)エポキシ樹脂の芳香環の含有量は、(A)エポキシ樹脂を100質量%として、15~40質量%であることが好ましく、18~35質量%であることがより好ましく、20~32質量%であることが更に好ましく、25~30質量%であることが更により好ましい。
(A)エポキシ樹脂の芳香環の含有量は、(A)エポキシ樹脂を100質量%として、15~40質量%である場合、本発明の実施形態の硬化性組成物は、Tg、弾性率及び曲げ強度が、よりバランスよく向上し得る。
【0023】
本発明の実施形態の硬化性組成物は、100質量部の硬化性組成物あたり、例えば、25~80質量部の(A)エポキシ樹脂を含んでよく、30~70質量部の(A)エポキシ樹脂を含むことが好ましく、35~65質量部の(A)エポキシ樹脂を含むことがより好ましく、40~60質量部の(A)エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
本発明の実施形態の硬化性組成物は、100質量部の硬化性組成物あたり、25~80質量部の(A)エポキシ樹脂を含む場合、本発明の実施形態の硬化性組成物の、硬化性と曲げ強度は、より向上し得る。
【0024】
本明細書において、(B)固形ゴムとは、固形のゴム状物質であって、本発明が目的とする硬化性組成物を得られる限り、特に制限されることはない。
本明細書において、「固形ゴム」の「固形」とは、ゴムが、室温(23℃)で固形であることを意味する。ゴムと液体成分が共存する場合、その液体成分を除くゴムの部分が、室温(23℃)で、固形であることを意味する。従って、室温で、ゴムが液体成分と共存して、たとえ溶解及び/又は膨潤することがあったとしても、その液体成分を除去すると、そのゴムが室温(23℃)で固形の場合、固形ゴムに該当する。
(B)固形ゴムは、(B1)スチレン-ブタジエン-ジビニルベンゼン共重合体を含み、本発明の実施形態の硬化性組成物は、Tgの低下を抑制しながら、発泡による強度低下(曲げ試験の最大強度時の変位)を抑制しながら、耐シャワー性をより向上しえるという有利な効果を奏し得る。
(B)固形ゴムは、(B)固形ゴムを100質量%として、(B1)スチレン-ブタジエン-ジビニルベンゼン共重合体を、20~80質量%含むことが好ましく、25~75質量%含むことがより好ましく、30~70質量%含むことが更に好ましく、35~65質量%含むことが更により好ましい。
【0025】
(B)固形ゴムは、スチレン-ブタジエン系共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン系共重合体、エチレンープロピレンージエン系共重合体、イソプレン系重合体、ブタジエン系重合体から選択される少なくとも1種を更に含むことが好ましい。
(B)固形ゴムは、(B2)スチレン-ブタジエン系共重合体を含むことができ、(B3)アクリロニトリル-ブタジエン系共重合体を含むことができる。
(B)固形ゴムは、(B2)スチレン-ブタジエン系共重合体を含む場合、本発明の実施形態の硬化性組成物の硬化物(補強材)のTg低下を抑え、補強性を確保でき、発泡による強度低下(曲げ試験の最大強度時の変位)を抑制することができる。
(B)固形ゴムは、(B3)アクリロニトリル-ブタジエン系共重合体を含む場合、本発明の実施形態の硬化性組成物の、曲げ試験最大強度時の変位量はより増加し得る。
【0026】
(B1)固形ゴム及び/又は(B2)固形ゴムは、酸含有量が0.2~8質量%であることが好ましく、0.3~6質量%であることがより好ましく、0.5~4質量%であることが更に好ましい。
(B1)固形ゴム及び/又は(B2)固形ゴムは、酸含有量が0.2~8質量%である場合、本発明の実施形態の硬化性組成物の、貯蔵安定性はより向上し得る。
【0027】
本発明の実施形態の硬化性組成物は、100質量部の(A)エポキシ樹脂あたり、例えば、10~100質量部の(B)固形ゴムを含んでよく、20~90質量部の(B)固形ゴムを含むことが好ましく、30~80質量部の(B)固形ゴムを含むことがより好ましく、40~70質量部の(B)固形ゴムを含むことがより好ましい。
本発明の実施形態の硬化性組成物は、100質量部の(A)エポキシ樹脂あたり、10~100質量部の(B)固形ゴムを含む場合、本発明の実施形態の硬化性組成物の、耐歪性はより向上しながら、曲げ試験最大強度時の変位量はより増加し得る。
【0028】
本明細書において、(C)潜在性硬化剤とは、(A)エポキシ樹脂の硬化剤であるが、室温では実質的に硬化剤として機能しないが、(例えば、165℃に、好ましくは150℃に)加熱することで硬化剤として機能する化合物をいい、本発明が目的とする硬化性組成物を得られる限り、特に制限されることはない。
【0029】
潜在性硬化剤として、具体的には、例えば、ジシアンジアミド;アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、1,3-ビス(ヒドラジノカルボエチル)-5-イソプロピルヒダントイン、エイコサン二酸ジヒドラジド、ハイドロキノンジグリコール酸ジヒドラジド、レゾルシノールジグリコール酸ジヒドラジド、4,4’-エチリデンビスフェノールジグリコール酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物;4,4’-ジアミノジフェニルスルホン;イミダゾール、2-n-ヘプタデシルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物;メラミン;2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリツ(1’))-エチル-o-トリアジン等のトリアジン化合物;ベンゾグアナミン;N,N-ジメチル-N’-(3,4-ジクロロフェニル)尿素等のN,N-ジアルキル尿素、N,N’-ジアルキル尿素化合物等のジアルキル尿素化合物;N,N’-ジアルキルチオ尿素化合物;ジアミノジフェニルメタン、ジアミノビフェニル、ジアミノフェニール、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ドデカンジアミン、デカンジアミン、オクタンジアミン、テトラデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ヒドラジド系ポリアミン等のポリアミン;シアノグアニジン等のグアニジン誘導体が挙げられる。
【0030】
潜在性硬化剤として市販品を使用することができる。例えば、エアプロダクツ社製のCG-NA(商品名)、ADEKA社製のEH-4030s(商品名)、大塚化学社製のADH(商品名)、ADEKA社製のEH3731s(商品名)、AlzChem社製のDyhard UR200(商品名)、大塚化学社製のDDH(商品名)等を例示することができる。
【0031】
本発明の実施形態の硬化性組成物は、100質量部のエポキシ樹脂あたり、例えば、1~30質量部の(C)潜在性硬化剤を含んでよく、2~25質量部の(C)潜在性硬化剤を含むことが好ましく、3~20質量部の(C)潜在性硬化剤を含むことがより好ましく、4~15質量部の(C)潜在性硬化剤を含むことがより好ましい。
本発明の実施形態の硬化性組成物は、100質量部のエポキシ樹脂あたり、1~30質量部の(C)潜在性硬化剤を含む場合、硬化性と貯蔵安定性にバランスより優れる。
【0032】
本明細書において、(D)充填材とは、本発明の実施形態の硬化性組成物を増量するとともに、硬化性組成物から形成される硬化物にある程度の強さを与えることができる化合物であり、場合により粘度調整又は軽量化に寄与することができ、本発明が目的とする硬化性組成物を得られる限り、特に制限されることはない。
【0033】
充填材として、例えば、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム等)、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩及び硫酸塩、マイカ(雲母)、グラファイト、タルク(滑石)、クレー、硝子フレーク(硝子ビーズ)、ヒル石、カオリナイト、ワラストナイト(針状カルシウムメタシリケート)、シリカ、珪藻土、石膏、セメント、転炉スラグ、シラス、ゼオライト、セルロース粉、粉末ゴム、ゾノライト、チタン酸カリウム、ベントナイト、窒化アルミ、窒化珪素、亜鉛華、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、その他にも炭酸カルシウムウィスカ(針状炭酸カルシウム)、セラミック短繊維またはそのウィスカ、ロックウール短繊維、ガラスファイバー短繊維、チタン酸カリウム短繊維、ケイ酸カルシウム短繊維、アルミニウムシリケート、カーボンファイバー短繊維、アラミドファイバー短繊維、セピオライト等の鉱物繊維、各種ホイスカー等の繊維状充填材、ガラスバルーン、シリカバルーン、樹脂バルーン、炭素無機中空球等の中空状充填材、塩化ビニリデン、アクリルニトリル等の有機合成樹脂からなるプラスチックバルーン等の有機中空状充填材や、アルミニウムフィラー等のメタリックフィラー等を例示できる。
【0034】
(D)充填材は、充填材の長さが0.4mm以上の針状の充填材を含むことが好ましく、0.4mm以上40mm以下の針状の充填材を含むことがより好ましく、5mm以上30mm以下の針状の充填材を含むことが更に好ましく、6mm以上20mm以下の針状の充填材を含むことが更により好ましい。
(D)充填材は、充填材の長さが0.4mm以上の針状の充填材を含む場合、本発明の実施形態の硬化性組成物の耐歪性がより向上し得る。
【0035】
(D)充填材は、アスペクト比(L/D)が4以上の無機質充填材を含むことが好ましく、アスペクト比(L/D)が4.5以上20以下の無機質充填材を含むことがより好ましく、アスペクト比(L/D)が5以上15以下の無機質充填材を含むことが更に好ましい。
(D)充填材は、アスペクト比(L/D)が4以上の無機質充填材を含む場合、本発明の実施形態の硬化性組成物の耐歪性がより向上し得る。
【0036】
尚、無機充填材は、上述の充填材の例示から有機系充填材(例えば、ロックウール短繊維、アラミドファイバー短繊維、樹脂バルーン等の中空状充填材、塩化ビニリデン、アクリルニトリル等の有機合成樹脂からなるプラスチックバルーン等の有機中空状充填材)を除いた充填材を例示することができる、
【0037】
本発明の実施形態の硬化性組成物は、100質量部の硬化性組成物あたり、例えば、20~70質量部の(D)充填材を含んでよく、35~65質量部の(D)充填材を含むことが好ましく、30~60質量部の(D)充填材を含むことがより好ましく、35~55質量部の充填材(D)を含むことがより好ましい。
本発明の実施形態の硬化性組成物は、100質量部の硬化性組成物あたり、20~70質量部の(D)充填材を含む場合、耐歪性がより向上し得る。
【0038】
本明細書において、(E)発泡剤とは、その材料中で体積を増加させるために添加される物質、例えば泡を生じさせるために添加される物質をいい、例えば、分解によりガスを生じる物質、またはそれ自体ガスとなる物質であり、本発明が目的とする硬化性組成物を得られる限り特に制限されることはない。
本発明の実施形態の硬化性組成物は、発泡剤を含むので、硬化後の厚さをより効率的に増加させることができ、補強性を向上することができる。更に、発泡することによって、硬化性組成物が硬化して得られる硬化物(即ち、補強材)の弾性率を下げることができ、ひずみを低減することもできる。
【0039】
(E)発泡剤として、例えば、加熱によって発泡する発泡剤が好ましく、無機系発泡剤及び有機系発泡剤を例示することができる。
無機系発泡剤として、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類を例示できる。
有機系発泡剤として、n-ニトロソ化合物、アゾ系化合物(例えば、アゾジカルボンアミド;ADCAなど)、フッ化アルカン、ヒドラジン系化合物(例えば、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド):OBSHなど)、セミカルバジド系化合物、トリアゾール系化合物などを例示することができる。
更に、加熱膨張性の物質(例えば、イソブタン、ブタンなど)が、熱可塑性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸エステルなど)でできているマイクロカプセルに入れられた、熱膨張性粒子(未膨張バルーン)を例示することもできる。
【0040】
(E)発泡剤は、アゾ系化合物(例えば、ADCA系化学発泡剤)、ヒドラジン系化合物(例えば、OBSH系化学発泡剤)及び未膨張バルーンからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
(E)発泡剤は、アゾ系化合物(例えば、ADCA系化学発泡剤)、ヒドラジン系化合物(例えば、OBSH系化学発泡剤)及び未膨張バルーンからなる群から選択される少なくとも一種を含む場合、本発明の実施形態の硬化性組成物は、所望の発泡倍率を得ながら曲げ強度をより向上し、ひずみをより低減し得る。
【0041】
本発明の実施形態の硬化性組成物は、100質量部の硬化性組成物あたり、例えば、0.1~10質量部の(E)発泡材を含んでよく、0.2~5質量部の(E)発泡材を含むことが好ましく、0.3~3質量部の(E)発泡材を含むことがより好ましく、0.4~2質量部の(E)発泡材を含むことがより好ましい。
本発明の実施形態の硬化性組成物は、100質量部の硬化性組成物あたり、0.1~10質量部の(E)発泡材を含む場合、より適切な発泡を行うことができ、より歪を抑制しながら、より補強性を確保し得る。
【0042】
本発明の実施形態の硬化性組成物は、その他の成分を適宜含むことができる。その他の成分として、例えば、通常の硬化剤(上述の潜在性硬化剤を除く)、希釈剤、界面活性剤、その他の添加剤等を例示することができる。
【0043】
本発明の実施形態において、硬化剤とは、常温では硬化作用を有さないが、ある温度になると、硬化作用を発現する化合物であって、上述の潜在性硬化剤を除いて、本発明が目的とする硬化性組成物を得られる限り、特に制限されることはない。
【0044】
本発明の実施形態において、希釈剤とは、本発明の実施形態の硬化性組成物に流動性を与えることができ、本発明が目的とする硬化性組成物を得られる限り、特に制限されることはない。
希釈剤として、例えば、パラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、ナフテン系溶剤、アロマ系溶剤等の炭化水素系溶剤等を例示することができる。
【0045】
本発明の実施形態において、その他の添加剤として、例えば、吸湿剤(酸化カルシウム、モレキュラーシーブス等)、揺変性賦与剤(有機ベントナイト、フュームドシリカ、ステアリン酸アルミニウム、金属石けん類、ヒマシ油誘導体等)、安定剤[2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等]、硬化促進剤(ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸鉛、オクチル酸ビスナス等)、シラン又はチタン等のカップリング剤、可塑剤等を例示することができる。その他の添加剤は、本発明が目的とする硬化性組成物を得られる限り、特に制限されることなく、適宜使用することができる。
【0046】
本発明の実施形態の硬化性組成物は、上述の成分を混合することによって製造することができる。
混合する装置及び方法は、本発明が目的とする硬化性組成物を製造することができる限り特に制限されることはない。
そのような混合装置として、具体的には、例えば、二軸ミキサー、プラネタリミキサー、シグマミキサー、ニーダー、アトライター、グレンミル、ロール、ディゾルバー等を使用することができる。
更に、混合は、混合することが可能な入れ物を使用して行うことができ、例えば、タンク、容器等の中で行うことができる。
【0047】
本発明の実施形態の硬化性組成物は、一液型であっても、二液型であってもよく、一般的に一液型硬化性組成物として使用することができる。
【0048】
本発明の実施形態の硬化性組成物は、公知の塗布方法、例えば、ビード塗布、スリット塗布、スプレー塗布、スワール塗布、ショット塗布等の塗布方法を用いて、必要な場所に任意の厚さ及び塗布形態において塗布することができ、例えば、熱風循環乾燥炉等を使用して所定温度に加熱することで硬化することができる。
本発明の実施形態の硬化性組成物は、塗布型の、一液型硬化性組成物として、使用することができる。
上記塗布手段において、コンピュータ制御による自動塗布機や、ロボット塗布機による塗布も可能である。
【0049】
本発明の実施形態において、本発明の実施形態の硬化性組成物を使用することを含む、自動車の製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態の硬化性組成物は、自動車を製造するための製造ラインで使用して、自動車車体板金に補強層を設けることができる。即ち、自動車車体板金に本発明の実施形態の硬化性組成物を塗布して、加熱硬化させることで設けることができる、補強層を提供することができる。更に、自動車車体板金に、本発明の実施形態の硬化性組成物が塗布されて、加熱硬化されて形成される補強層が設けられた補強板金構造体及びその製造方法を提供することができる。
そして、板金補強用で、ポンプ吐出可能な、硬化性組成物を提供することができる。
【0050】
本発明の実施形態の硬化性組成物の、40℃で、せん断速度430sec-1での粘度は、50~300Pa・sであることが好ましく、65~250Pa・sであることがより好ましく、80~200Pa・sであることが更に好ましく、90~180Pa・sであることが更により好ましい。
本発明の実施形態の硬化性組成物の、40℃で、せん断速度430sec-1での粘度は、50~300Pa・sである場合、本発明の実施形態の硬化性組成物は、ポンプ吐出性をより向上できる。
【0051】
本発明の実施形態の硬化性組成物の発泡倍率は、10~200%であることが好ましく、30~150%であることがより好ましい。
本発明の実施形態の硬化性組成物の発泡倍率は、10~200%である場合、本発明の実施形態の硬化性組成物は、補強性と耐歪性をより向上できる。
【0052】
本発明の実施形態の硬化性組成物の硬化物の曲げ強度は、18N以上であることが好ましく、20~60Nであることがより好ましく、22~50Nであることが更に好ましく、24~40Nであることが更により好ましい。
本発明の実施形態の硬化性組成物の硬化物の曲げ強度は、18N以上である場合、本発明の実施形態の硬化性組成物は、補強性をより向上できる。
【0053】
本発明の実施形態の硬化性組成物の硬化物の変位量(曲げ)は、4.5mm以上であることが好ましく、4.8~20mmであることがより好ましく、5~17mmであることが更に好ましく、5.5~15mmであることが更により好ましい。
本発明の実施形態の硬化性組成物の硬化物の曲げは、4.5mm以上である場合、本発明の実施形態の硬化性組成物は、衝撃時にも割れることなく補強性をより確保できる。
【0054】
本発明の実施形態の硬化性組成物の硬化物のそり量は、5mm以下であることが好ましく、-1~4mmであることがより好ましく、-0.5~3.5mmであることが更に好ましく、0~3mmであることが更により好ましい。
本発明の実施形態の硬化性組成物の硬化物のそり量は、5mm以下である場合、本発明の実施形態の硬化性組成物は、補強パネルの歪みをより抑制することができる。
【0055】
本発明の実施形態の硬化性組成物の硬化物の弾性率は、1000~3000MPaであることが好ましく、1100~2500MPaであることがより好ましく、1200~2000MPaであることが更に好ましく、1300~1800MPaであることが更により好ましい。
本発明の実施形態の硬化性組成物の硬化物の弾性率は、1000~3000MPaである場合、本発明の実施形態の硬化性組成物の補強性がより向上し得る。
【0056】
本発明の実施形態の硬化性組成物の硬化物のTgは、40~140℃であることが好ましく、50~120℃であることがより好ましく、60~100℃であることが更に好ましく、70~95℃であることが更により好ましい。
本発明の実施形態の硬化性組成物の硬化物のTgは、40~140℃である場合、本発明の実施形態の硬化性組成物の補強性がより向上し得る。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例の記載において、特に記載がない限り、溶媒を考慮しない部分を、重量部及び重量%の基準としている。
【0058】
本実施例で使用した成分を以下に示す。
(A)エポキシ樹脂
(a1-1)未変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製のJER828(商品名))
(a1-2)未変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製のJER1001(商品名))
(a1-3)未変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製のJER807(商品名))
(a2-1)低粘度エポキシ樹脂、エポキシ当量は、430、25℃で、600mPa・sの粘度を有し、ダイマー酸型ジグリシジルエステル(三菱ケミカル社製のJER871(商品名))
(a2-2)ポリオキシアルキレンビスフェノールAグリシジルエーテル、エポキシ当量は、340、25℃で、2600mPa・sの粘度を有する(三洋化成工業社製のグリシエールBPP-350(商品名))
(a2-3)反応性希釈材として使用される二官能エポキシ樹脂、エポキシ当量は、296、25℃で、43mPa・sの粘度を有する、(三洋化成工業社製のPP-300P(商品名))
(a3-1)エラストマー変性エポキシ樹脂、(エラストマー含有量40%で変性したビスフェノールA型エポキシ樹脂)、エポキシ当量340、25℃で、190,000mPa・sの粘度を有する、(CVC Thermoset Specialies社製のHypro RA840(商品名))
【0059】
(B)固体ゴム
(b1-1)スチレン-ブタジエン-ジビニルベンゼン共重合体(INDUSTRIAS NEGROMEX S.A.DE C.V.社製のEMULPRENE 1009(商品名))
(b2-1)スチレン-ブタジエン共重合体(日本ゼオン社製のNipol1502(商品名))
(b3-1)アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(日本ゼオン社製のDN214(商品名))
(b3-2)アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(日本ゼオン社製のDN219(商品名))
【0060】
(C)潜在性硬化剤
(c1)ジシアンジアミド(CVC Thermoset Specialities社製のOMICURE DDA 10(商品名))
(c2)3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(Alzchem社製のDyhard UR-200(商品名))
【0061】
(D)充填材
(d1)カーボンブラック(旭カーボン社製のハイブラック#20(商品名))
(d2)ガラスバルーン(スリーエム社製のグラスバブルS-38(商品名))
(d3)充填剤(備北粉北工業社製のホワイトンB(商品名))
(d4)充填剤(白石工業社製のハクエンカCCR(商品名))
(d5)メタケイ酸カルシウム、L/D比>又は=5(NYCO MINERALS社製のNyad G(商品名))
【0062】
(E)発泡剤
(e1)発泡剤、(永和化成社製のビニホールAC#R(商品名))
(e2)発泡剤、(永和化成社製のネオセルボン#1000M(商品名))
(e3)発泡剤、(日本フェライト社製のエクスパンセル920-80(商品名)
【0063】
(F)添加剤
(f1)添加剤、酸化カルシウム、井上石灰工業社製のQC-X(商品名)
【0064】
これらの成分を表1に示す質量部で配合し、実施例1~4及び比較例1の一液型硬化性組成物を製造した。
上述の硬化性組成物(又はその硬化物)の各々について、粘度、耐シャワー性、発泡倍率、曲げ強度、変位量(曲げ)、そり量、弾性率、Tgを、下記の方法で測定し、評価した。結果を表1に示す。
【0065】
粘度測定
硬化性組成物の粘度は、圧力式見かけ粘度計を用いてJASO323-77に準じて測定した。粘度計のシリンダーに硬化性組成物を充填し、40℃になるようにジャケットなどで温度を調節した。40℃であることを確認した。No.3(長さ:74.1mm、キャピラリー径:1.85mm)のキャピラリーを使用した。せん断速度は、430s-1で測定した。硬化性組成物を塗布可能な粘度範囲は、300Pa・s以下と考えられ、硬化性組成物の粘度は、50Pa・s以上300Pa・s以下であることが好ましい。
【0066】
耐シャワー性
200×300×0.8mmのSPCC-SD鋼板に、硬化性組成物を、150×200×1.8mmとなるように塗布して、試験片を準備した。試験片の硬化性組成物を塗布した面に、水温:50℃、角度:45度、水圧:490kPaのシャワーを当てた。シャワーノズルから、試験片までの距離は700mmであり、シャワーを当てた時間は、1分であった。シャワーを当てた後、塗布面を目視で観察して、硬化性組成物の剥がれやズレの有無を確認した。耐シャワー性の評価基準は、下記の通りである。
◎:硬化性組成物に、完全に剥がれやズレがない。
○:硬化性組成物に、剥がれやズレがない。
○△:硬化性組成物に、極めて軽微な剥がれやズレがあるが、問題はない。
△:硬化性組成物に、わずかに剥がれやズレがあるが、実用上問題はない。
△×:硬化性組成物に、わずかに剥がれやズレがあり、実用上問題となる。
×:硬化性組成物に、明確な剥がれやズレがある。
【0067】
発泡倍率
硬化性組成物を、アルミ板3x7cmに、ビード状に塗布して試験体を準備した。試験体について、水中置換法(JASO323-77比重試験A法参照)に基づいて測定して、硬化性組成物の硬化前と後の密度(比重)から、発泡倍率を算出した。
発泡倍率(%)=(硬化後密度の逆数-硬化前密度の逆数)÷硬化前密度の逆数×100
硬化性組成物は、試験体を強制循環式オーブンに入れて、180℃で25分間硬化させた。硬化性組成物の硬化物の補強性及び硬化ひずみの観点から、発泡倍率は、10~200%であることが好ましく、30~150%であることがより好ましい。
【0068】
曲げ強度及び変位量(曲げ)
25×200×0.8mmのSPCC-SD鋼板に、硬化性組成物を、厚さ1.8mmとなるように塗布した後、塗布された鋼板を、強制循環式オーブンに入れて、硬化性組成物を180℃で25分間硬化させて、試験体を得た。この試験体の3点曲げ試験を、JIS K6911で規定する曲げ強さ試験装置を用いて、支点間距離100mm、荷重速度1mm/分の条件で行って、1mm変位した際の荷重(N/25mm)および最大荷重時の変位量を求めて、曲げ強度及び曲げを測定した。実車での耐デント性を考慮すると、1mm変位時の荷重(曲げ強度)は、18N以上であることが好ましく、最大荷重時の変位量(曲げ)は、4.5mm以上であることが好ましい。
【0069】
そり量
25×200×0.8mmのSPCC-SD鋼板に、硬化性組成物を、厚さ1.8mmとなるように塗布した後、塗布された鋼板を、強制循環式オーブンに入れて、硬化性組成物を180℃で25分間硬化させて、試験体を得た。この試験体の片側に1kg・fの重りを乗せ、反対側のそり高さ(mm)を求めた。実車での外観不良を生じないそり量を考慮すると、5mm以下であることが好ましい。
【0070】
弾性率及びTg
テフロン(登録商標)加工などの離型処理をした0.8mmのアルミ板に、硬化性組成物を、硬化後の厚さが1~2mmとなるように塗布した後、塗布された試験片を、強制循環式オーブンに入れて、硬化性組成物を180℃で25分間硬化させて、硬化物を得た。硬化物の大きさを、幅:5mm、長さ:50mmに加工し、動的粘弾性測定(DMA)装置を用い、2℃/minの昇温速度で、-50から150℃の範囲で、弾性率とtanδを測定した。23℃における弾性率と、tanδのピーク位置を示す温度をTgとして記録した。実車での耐デント性と、使用温度環境から、弾性率:1000~3000MPa、Tg:40℃から140℃の両方共満たすことが好ましい。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
実施例1~12の硬化性組成物及びその硬化物は、歪を抑えつつ、補強性を向上することとポンプ吐出性を維持しながら耐シャワー性を向上することが可能である、板金補強用のポンプ吐出可能な一液型硬化性組成物として使用することができる。
【0075】
比較例1~5の硬化性組成物及びその硬化物は、歪を抑えつつ、補強性を向上することとポンプ吐出性を維持しながら耐シャワー性を向上することが可能でなく、塗布用一液型硬化性組成物として十分といえない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の実施形態の一液型硬化性組成物は、歪を抑えつつ、補強性を向上することとポンプ吐出性を維持しながら耐シャワー性を向上することが可能である。更に、その一液型硬化性組成物は、板金に好適に塗布することが可能であり、塗布型板金補強材として好適に使用することができる。
【0077】
尚、本出願は、2022年11月1日に日本国でされた出願番号2022-175739を基礎出願とするパリ条約第4条に基づく優先権を主張する。この基礎出願の内容は、参照することによって、本願明細書に組み込まれる。
【要約】
(A)エポキシ樹脂、(B)固形ゴム、(C)潜在性硬化剤、(D)充填材及び(E)発泡剤を含む一液型硬化性組成物であって、(A)は、(A1)未変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含み、一液型硬化性組成物は、(A)100質量部当たり、(B)を10~100質量部含み、(B)は、(B1)スチレン-ブタジエン-ジビニルベンゼン共重合体を含む、一液型硬化性組成物である。