(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ファージテールレングステープメジャータンパク質由来の免疫原性配列、それを発現する細菌、および癌の治療におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/74 20150101AFI20240517BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20240517BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240517BHJP
C12N 15/33 20060101ALI20240517BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20240517BHJP
A61K 45/08 20060101ALI20240517BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240517BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240517BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20240517BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240517BHJP
C07K 14/74 20060101ALI20240517BHJP
C07K 14/005 20060101ALI20240517BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240517BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20240517BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20240517BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240517BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20240517BHJP
C12N 7/00 20060101ALN20240517BHJP
C12N 1/21 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
A61K35/74 A
A61K35/744
A61P35/00
C12N15/33 ZNA
A61K31/407
A61K45/08
A61P43/00 121
A61K31/519
A61K45/00
A61P37/04
A61K39/12
A61K48/00
C07K14/74
C07K14/005
A61K35/76
C12Q1/68
C12Q1/6844 Z
C12Q1/02
C12N1/20 A
C12N7/00
C12N1/21
(21)【出願番号】P 2020535625
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2018086812
(87)【国際公開番号】W WO2019129753
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-10-13
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【微生物の受託番号】CNCM CNCM I-4815
【微生物の受託番号】CNCM CNCM I-5224
【微生物の受託番号】CNCM CNCM I-5260
【微生物の受託番号】CNCM CNCM I-5261
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508061930
【氏名又は名称】アンスティテュ ギュスタブ ルシ
(73)【特許権者】
【識別番号】595166088
【氏名又は名称】アンスティテュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】520018392
【氏名又は名称】ユニベルシテ パリ-サクレー
(73)【特許権者】
【識別番号】523410665
【氏名又は名称】サントル オスピタリエ ユニベルシテール ドゥ レンヌ
(73)【特許権者】
【識別番号】523282534
【氏名又は名称】ユニベルシテ、ドゥ、レンヌ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE RENNES
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ロランス ジトボーゲル
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-539119(JP,A)
【文献】国際公開第2018/115519(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 38/00-38/58
A61K 39/00-39/44
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00-7/08
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗腫瘍薬と組み合わせて癌を治療する際に使用するための少なくとも1つの天然に存在する細菌株または操作された細菌株を含む細菌組成物であって、前記少なくとも1つの細菌株が、配列番号1のタンパク質、または配列番号13、14、
55、56、62、63及び66からなる群より選択される少なくとも1つのエピトープを含む少なくとも9個、好ましくは少なくとも20個のアミノ酸の、配列番号1のタンパク質の免疫原性フラグメント
を発現するものであって、ただし、前記少なくとも1つの細菌株は、(i)2013年11月7日に番号I-4815でCNCMに寄託されたEnterococcus hirae株13144、(ii)2017年8月31日に番号I-5224でCNCMに寄託されたEnterococcus hirae株IGR7、および(iii)2017年11月27日に番号I-5261でCNCMに寄託されたEnterococcus hirae株IGR11とは異なる、細菌組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの細菌株が、配列番号1のタンパク質と少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有するタンパク質をコードするプロファージゲノムを含む、請求項1に記載の使用のための、請求項1に記載の細菌組成物。
【請求項3】
前記組成物が、配列番号2のプロファージと少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の同一性を有するプロファージゲノムを保有する少なくとも1つの株を含み、その結果、このプロファージによってコードされるファージが、それを必要とする対象の腸内細菌叢の組成物の他の株および/または共生細菌にインビボで感染することができる、請求項1に記載の使用のための、請求項1または2に記載の細菌組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の使用のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の細菌組成物であって、前記組成物が、さらに以下からなる群から選択される細菌を含む、細菌組成物:
(i)2013年11月7日に番号I-4815でCNCMに寄託されたEnterococcus hirae株13144
(ii)2017年8月31日に番号I-5224でCNCMに寄託されたEnterococcus hirae株IGR7、
(iii)2017年11月27日に番号I-5261でCNCMに寄託されたEnterococcus hirae株IGR11、
(iv)配列番号1のタンパク質由来の少なくとも20、好ましくは少なくとも30およびより好ましくは少なくとも40アミノ酸の配列を含むタンパク質を発現する他の任意の細菌株、ならびに
(v)(i)から(iv)に記載された株およびEnterococcus hirae株CNCM I-4815からなる群から選択される少なくとも2つの株の混合物、好ましくは株CNCM I-4815および(ii)に記載された株の混合物。
【請求項5】
前記組成物が、2017年11月27日に番号I-5260でCNCMに寄託されたEnterococcus hirae株IGR4をさらに含む、請求項1に記載の使用のための、請求項1~4のいずれか一項に記載の細菌組成物。
【請求項6】
細菌株の免疫原性を増加させる方法であって、前記株に、配列番号1のタンパク質をコードするヌクレオチド配列または配列番号13および14のペプチドを少なくとも含むその免疫原性フラグメント、または配列番号
55、56、62、63及び66からなる群から選択される少なくとも1つのエピトープを含む少なくとも9アミノ酸、好ましくは少なくとも20アミノ酸のペプチドをコードする配列
をインビトロで導入することを含む、方法。
【請求項7】
前記株の細菌を、配列番号1のタンパク質と少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有するタンパク質をコードするバクテリオファージでインビトロ感染させることを含み、前記細菌株が、Escherichia coli、Enterococcus gallinarum、Enterococcus faecalisおよびEnterococcus hiraeからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記バクテリオファージが、配列番号2のヌクレオチド配列またはそれに対して少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する配列を含むゲノムを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
癌の治療に使用するための、
配列番号1のタンパク質または配列番号13および14のペプチドを少なくとも含むその免疫原性フラグメントをコードする外来性ヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号55、56、62、63及び66からなる群から選択される少なくとも1つのエピトープを含む少なくとも9アミノ酸、好ましくは少なくとも20アミノ酸のペプチドをコードする外来性ヌクレオチド配列を含む、操作された細菌株を含む細菌組成物であって、ただし、前記操作された細菌株は、(i)2013年11月7日に番号I-4815でCNCMに寄託されたEnterococcus hirae株13144、(ii)2017年8月31日に番号I-5224でCNCMに寄託されたEnterococcus hirae株IGR7、および(iii)2017年11月27日に番号I-5261でCNCMに寄託されたEnterococcus hirae株IGR11とは異なる、細菌組成物。
【請求項10】
HLA-A
*0201患者における癌の治療における使用のための、請求項9に記載の細菌組成物。
【請求項11】
癌の治療に使用するための、Enterococcus hirae CNCM I-4815を含む細菌組成物および請求項1~5、9および10の細菌組成物を含む細菌組成物からなる群から選択される細菌組成物であって、前記細菌組成物は、マイトマイシンCまたはCDK4/6阻害剤と組み合わせて使用される、細菌組成物。
【請求項12】
前記細菌組成物がパルボシクリブと組み合わせて使用される、請求項11に記載の使用のための、請求項11に記載の細菌組成物。
【請求項13】
前記細菌組成物が免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用される、請求項11
に記載の使用のための、請求項11に記載の細菌組成物。
【請求項14】
抗癌ワクチンとして使用するための、配列番号
55、56、62、63及び66からなる群から選択される配列番号1のタンパク質からの少なくとも9個の連続するアミノ酸の免疫原性配列
を含むポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む免疫原性組成物。
【請求項15】
HLA-A
*0201患者における抗癌ワクチンとして使用するための、配列番号63
の配列を含むペプチドまたはそれをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
請求項1~5および9~11のいずれか一項に記載の細菌組成物で、または請求項14~15のいずれか一項に記載の免疫原性組成物でエクスビボで
抗原提示細胞(APC)を
パルスする工程を含む
、癌患者の細胞療法のための抗原提示細胞(APC)を含む細胞組成物
を製造する方法。
【請求項17】
MHC分子が、配列番号
55、56、62、63及び66からなる群より選択されるエピトープに結合されることを特徴とする、配列番号1のタンパク質に対して高い親和性を有するT細胞を単離するためのMHCマルチマー。
【請求項18】
配列番号63
の配列を含む抗原ペプチドを負荷したHLA-A
*0201マルチマーである、請求項17に記載のMHCマルチマー。
【請求項19】
癌の治療に使用するためのバクテリオファージ組成物であって、前記バクテリオファージが、配列番号1のタンパク質と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有するタンパク質を発現するものであり、ここで前記タンパク質は、配列番号13、14
、55、56、62、63及び66からなる群から選択される少なくとも1つのエピトープを含む、バクテリオファージ組成物。
【請求項20】
前記バクテリオファージが、配列番号2のヌクレオチド配列またはそれに対して少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する配列を含むゲノムを有する、請求項
19に記載の使用のための、請求項19に記載のバクテリオファージ組成物。
【請求項21】
免疫チェックポイントを遮断する薬物と組み合わせて投与される、癌の治療に使用するための、請求項14~15のいずれか一項に記載の免疫原性組成物
。
【請求項22】
免疫チェックポイントを遮断する薬物と組み合わせて投与される、癌の治療に使用するための、配列番号1のタンパク質に対して高い親和性を有するT細胞を単離する方法であって、請求項17もしくは18に記載のMHCマルチマーを用いて前記T細胞を単離することを含む、方法。
【請求項23】
免疫チェックポイントを遮断する薬物と組み合わせて投与される、癌の治療に使用するための、請求項19もしくは20に記載のバクテリオファージ組成物。
【請求項24】
対になった正常組織において発現されるレベルよりも優れたGPD1LのmRNAレベルを発現する腫瘍を治療する際に使用するための、請求項1~5および9~12のいずれか一項に記載の細菌組成物
。
【請求項25】
対になった正常組織において発現されるレベルよりも優れたGPD1LのmRNAレベルを発現する腫瘍を治療する際に使用するための、請求項14~15のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
対になった正常組織において発現されるレベルよりも優れたGPD1LのmRNAレベルを発現する腫瘍を治療する際に使用するための、配列番号1のタンパク質に対して高い親和性を有するT細胞を単離する方法であって、請求項17もしくは18に記載のMHCマルチマーを用いて前記T細胞を単離することを含む、方法。
【請求項27】
対になった正常組織において発現されるレベルよりも優れたGPD1LのmRNAレベルを発現する腫瘍を治療する際に使用するための、請求項19もしくは20に記載のバクテリオファージ組成物。
【請求項28】
癌を有する患者が化学療法または免疫チェックポイント遮断による治療に対して良好な応答者である可能性があるかどうかを決定する方法であって、前記患者由来の糞便試料において、配列番号1のタンパク質と少なくとも80%の同一性を有する配列の存在を評価することを含み、そのような配列が前記試料中に存在する場合、前記患者は、前記治療に応答する可能性がある、方法。
【請求項29】
(i)腸球菌コロニーの単離を可能にするために、許容培地中で好気性条件下で前記患者からの糞便試料を培養するステップ、
(ii)配列番号1のフラグメントに特異的なプライマー対を用いていくつかの培養可能な単離コロニーにおいてPCRを実施するステップ、および
(iii)増幅されたフラグメントを検出するステップ
を含む、請求項
28に記載の方法。
【請求項30】
患者が化学療法または免疫チェックポイント遮断による治療に対する良好な応答者である可能性が高いかどうかを決定する方法であって、請求項17または18に記載の前記MHCマルチマーを使用して、診断時および/または前記治療中に配列番号1のタンパク質に特異的な循環CCR9
+ CXCR3
+ CD8
+ T細胞のレベルを測定することを含み、前記レベルが所定の閾値を超える場合、前記患者は治療に応答する可能性が高い、方法。
【請求項31】
前記患者がHLA-A
*0201であり、MHCマルチマーが請求項18に記載のものである、請求項
30に記載の方法。
【請求項32】
腫瘍中のGPD1L mRNAのレベルまたはGPD1Lタンパク質のレベルを評価することをさらに含み、前記レベルが所定の閾値を超える場合、前記患者は前記治療に応答する可能性が高い、請求項
28~
31のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、抗癌治療のプロバイオティクスアジュバント化の分野に関する。特に、本発明は、癌治療の効率的なアジュバントとして同定された細菌中に存在するプロファージ由来の免疫原性配列に関する。本発明は、このプロファージ由来の免疫原性配列を発現する細菌組成物、およびこのプロファージの配列を使用して、抗癌武器を増加させる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
癌の発生および進行は、遺伝子調節と環境との複雑な相互作用に起因する(Hanahan and Weinberg、2011)。腫瘍に浸潤する免疫細胞の密度、組成物、および機能状態が患者の予後、ならびにアジュバントまたはネオアジュバント化学療法(Ingold Heppner et al.、2016; Palucka and Coussens、2016)および免疫チェックポイント遮断薬(Hodi et al.、2010; Ribas、2015; Robert et al.、2015)に対する治療応答を決定することを明らかにする多くの研究によって示されるように、多くの上皮および造血腫瘍は、強力な免疫監視下にあると考えられている。免疫エフェクターによるがん細胞の認識は,2つのパラメータ、すなわち、抗原性(突然変異を生じたタンパク質を生じる突然変異に由来する腫瘍関連抗原の存在、または通常は胚発生または精巣にのみ存在する遺伝子/タンパク質の異所性発現)とアジュバント性(自然免疫エフェクターを活性化する補助刺激シグナルの存在)に依存している(Zitvogel et al., 2016)。腸ならびに体内の他の場所に生息する共生微生物群集は、未だ特徴付けられていない環境シグナルを提供することによって、腸および腸外発癌において評価されていない役割を果たしているようである(Zitvogel et al., 2015)。無菌、ノトバイオティクス、または抗生物質で処理したげっ歯類で行われた先駆的研究は、炎症の役割に関係なく、腫瘍形成における共生細菌の予想外の役割を明らかにしている。結腸癌または肝癌の発生において、微生物は、毒性代謝産物、発癌性産物を提供することによって、またはゲノム不安定性および/またはDNA損傷応答および/または免疫逃避に至る炎症性環境を誘導することによって(Garrett, 2015; Gur et al., 2015; Louis et al., 2014)、直接形質転換剤であり得る(Abreu and Peek, 2014; Sears and Garrett, 2014)。共生細菌はまた、交差摂食または交差代謝を促進する協調的バイオフィルムを形成し得、癌の景観を再定義する(Bongers et al., 2014; Dejea et al., 2014)。最近、腸外(乳房および卵巣)腫瘍の発生は、腸内微生物によって誘発されるTLR5媒介性IL-6またはIL-17駆動性全身性炎症と関連していた(Rutkowski et al., 2015)。
【0003】
対照的に、他の観察は、癌と戦う際の細菌の有益な役割を支持している。メトロニダゾールとシプロフロキサシンの併用による長期抗生物質治療はその後、原癌遺伝子HER2/neu駆動トランスジェニックマウスにおける乳癌(BC)発生率を3倍にした(Rossini et al., 2006)。ヒトでは、疫学研究から、抗生物質の使用とBCのリスクとの間に用量依存的な関連性が示唆されている(Blaser, 2011)。腸内細菌叢の有益な役割はまず全身照射を介して示され、養子T細胞移入の有効性を促進する抗原提示細胞のLPS/TLR4依存性活性化を促進した(Paulos et al., 2007)。白金ベースの抗癌療法および免疫調節レジメンの間、細菌関連TLR4アゴニストは腫瘍浸潤骨髄細胞のROSおよびTNFα媒介抗腫瘍効果を説明した(Iida et al.、2013)。
【0004】
アルキル化剤シクロホスファミド(CTX)のメトロノミック投薬の抗腫瘍効果はまた、広域スペクトル抗生物質(ATB)で処置された無菌動物または特定病原体除去動物において損なわれることが示された(Daillere et al., 2016; Viaud et al., 2013)。実際、CTXは腸関門の完全性を変化させ、別個のグラム陽性細菌の移行を促進した。細菌の移行は、共生腸内微生物が腸粘膜を通して下にある無菌の組織や器官に侵入したときに起こる。この現象により、グラム陽性菌は、腫瘍制御に関連するエフェクター病原性CXCR3+ CCR6+(IL-17+IFNγ+)Th17(略称、病原性pTh17)および記憶Th1免疫反応を増強することができた。E.hiraeおよびBarnesiella intestinihominisは、CTX後の腫瘍微小環境を再形成するために協調して作用する種として同定された。小腸内在性グラム+細菌E.hiraeは腫瘍抗原特異的、MHCクラスI拘束性細胞傷害性IFNγ+CD8+T細胞(CTL)、腫瘍内の制御性T細胞(Treg)の減少を誘導し、腫瘍制御に一般的に関連するCTL/Treg比の増加をもたらした。結腸常駐のGramB intestinihominisは全身性多機能性Tc1/Th1応答を増強し、腫瘍内IFNγ産生γδT細胞を回復させ、腫瘍微小環境におけるγδT17細胞、腫瘍制御に関連する形質を減少させた。これら2つの免疫原性共生細菌は、腸のNOD2受容体によってチェックされている。この受容体は細菌の蓄積(B.intestinihominisについて)または二次リンパ器官への移行(E.hiraeについて)を制限している。さらに、CTX+癌ワクチン(HPV-16 E7抗原と融合した志賀毒素のBサブユニット)は抗生物質治療と併用しても、もはやE7発現TC-1腫瘍に対して宿主を保護しなかったが、E.hirae(L.johnsoniiまたはE.coliではなく)の強制経口投与は、腫瘍拒絶に至るE7テトラマー結合CD8+CTLの蓄積を回復させた。このモデルでは、E.hiraeは抗腫瘍効果を仲介した。最後に、マウスにおけるこれら2つの共生細菌の免疫調節的役割は、担癌患者に関連している。E.hiraeまたはB.intestinihominis(他の9種の共生細菌ではない)に対する記憶MHCクラスII拘束性Th1免疫応答は化学療法歴のある末期肺がんおよび卵巣がん患者における無増悪生存期間の延長と関連していた(Daillere et al., 2016)。最近、Zitvogelおよびその他の者はこれらの知見を免疫チェックポイント遮断薬に拡張し、BacteroidalesおよびBurkholderialesまたはBifidobacteriales目に属する異なる腸内細菌種が腫瘍微小環境に影響を及ぼし、それぞれ抗CTLA4または抗PDL-1Abの効力に寄与することを実証した(Sivan et al., 2015; Vetizou et al., 2015)。したがって、腸内細菌叢生態系は腸管免疫恒常性だけでなく、二次リンパ器官の炎症/免疫緊張を制御し、それによって体中の腫瘍微小環境を形成していると仮定される。
【0005】
転移したグラム陽性菌とCTX誘発殺腫瘍活性との因果関係を証明するために、DaillereらはMCA205肉腫を有するマウスにおいて、109のE.hirae(クローン13144および他の分離株)、L.johnsoniiまたはコントロールの細菌をマウス腸にコロニー形成し、14日間のATBレジメンにより腸内菌バランス失調を起こした。ATBはCTX媒介性の腫瘍進行の制御を妨げた。しかし、E.hirae株13144(EH13144)を強制経口投与すると、CTXを介した抗腫瘍効果が選択的に回復したが、L.johnsonii、E.coliまたはL.plantarum分離株は腸内コロニー形成が同等であったにもかかわらず、そのようにはならなかった(Daillere et al., 2016)。彼らは次に、CTX媒介抗腫瘍効果を増強することができる最良の抗癌プロバイオティクスを選択し、それが起こったメカニズムに取り組み、様々なE.hirae株を試験して、in vivoでのそれらの特異的免疫原性およびそれらの「オンコミクロバイオティクス」(抗癌プロバイオティクス)特性を分析した。rep-PCR法によりこれらのE.hirae分離株間のクローン関係を調べたところ、ヒト、マウスまたは環境生態系に由来する株間で有意なゲノムの多様性が明らかになった(Daillere et al., 2016)。分離株の半分はpTh17およびTh1免疫応答を誘導した;ただ1つのヒト分離株(クローン708)は、いくつかのオンコミクロバイオティクス特性に関連したナイーブマウスにおいて、IFNg産生CD8+T(Tc1)細胞を誘導した。アドヒアランスアッセイにおいてex vivoバイオフィルムを形成することができるE.hirae(クローンEH17)の唯一のヒト株は、免疫原性もオンコミクロバイオティクス特性もなかった(Daillere et al., 2016)。
【0006】
Daillereら(2016)の発表以来、本発明者らは、高い免疫原性を与え、抗腫瘍効果を示したヒト便由来のE.hirae(EH)の3つの新規クローン(クローンIGR7、クローンIGR4およびクローンIGR11)を単離した。
【0007】
要約すると、EH13144、EHクローンIGR7、および程度は低いがクローンIGR4およびクローンIGR11はCTX処理動物の二次リンパ器官においてpTh17細胞を誘導する有意な能力を発揮し、これは癌抗原特異的CTL応答およびオンコミクロバイオティクス特性と関連していたが、EH17株はそうではなかった。しかしながら、これらの相違の理由は未知であり、本発明者らは癌の治療に有用な新しい分子または微生物を誘導するために、マウス株EH13144およびヒトクローンIGR4、IGR7およびIGR11の免疫原性特性に関与する因子を同定するための研究を追求した。
【0008】
本発明者らはヒト患者の糞便から培養したいくつかのヒトE.hirae分離株をスクリーニングし、それらをヒトEH708およびマウスEH13144と比較した。彼らは、抗PD1 Abに反応した非小細胞肺癌患者の糞便からE.hiraeの新規隔離する11株を培養した。CTXと共にMCA205腫瘍モデルで試験したこれらの11の新規分離株の中で、クローンIGR4、クローンIGR11はある程度有効であり、クローンIGR7は、併用した場合、CTXとの相乗作用、単独または最良に有効であった。
【0009】
発明者らは、マウスEH13144がヒトクローンIGR7と非常に高い配列相同性を共有しており(>20EH株の樹状図では同じクレードに入る)、いずれもゲノム配列に挿入されたファージの存在に関連した独特の免疫原性を有する非常に特殊な分離株であることを見出した。彼らは、免疫原性がテンペレートバクテリオファージテールテープメジャータンパク質(TMP)に依存することを同定した。さらに、EH13144+クローンIGR4+クローンIGR7の組み合わせは、CTXと組み合わせた相加的抗腫瘍効果を示した。
【発明の概要】
【0010】
本発明の要約
第1の態様によれば、本発明は、以下からなる群から選択される細菌を含む細菌組成物に関する:
(i)Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)に2013年11月7日に番号I-4815で寄託されたEnterococcus hirae株13144(別名:EHFS001)、
(ii)CNCMに2017年8月31日に番号I-5224で寄託されたEnterococcus hirae株IGR7、
(iii)CNCMに2017年11月27日に番号I-5261で寄託されたEnterococcus hirae株IGR11、
(iv)配列番号1のタンパク質(すなわち、Enterococcus hirae株13144、CNCM I-4815の顕著な免疫原性の原因であると同定されたプロファージのTMP)から少なくとも20、好ましくは少なくとも30、より好ましくは少なくとも40ヌクレオチドのフラグメントと少なくとも65、好ましくは少なくとも80、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有するタンパク質を発現する他の細菌株、および
(v)(I)~(iv)に記載の株の少なくとも2つの混合物。
【0011】
本発明はまた、癌を治療するための上記細菌組成物の使用に関する。
【0012】
一実施形態によれば、本発明による組成物は癌を治療するために、抗腫瘍薬と組み合わせて使用される。
【0013】
別の態様によれば、本発明は免疫原性であると同定されたフラグメントの配列番号1のタンパク質をコードするヌクレオチド配列(例えば、配列番号13および14のペプチドを少なくとも含むフラグメント)、またはヒトHLA分子によって提示される可能性のあるエピトープ(例えば、配列番号53~187からなる群より選択されるエピトープ)の少なくとも1つを含む少なくとも9個、好ましくは少なくとも20個のアミノ酸のペプチドをコードする配列を、抗癌細菌株にインビトロで導入することを含む、目的の抗癌細菌株の免疫原性を増加させる方法に関する。
【0014】
上記の方法によって得られた細菌株もまた、本発明の一部であり、そして癌の処置におけるその使用である。
【0015】
本発明はまた、抗癌ワクチンとして使用するための、配列番号1のTMP由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸の配列を含むポリペプチドまたはそれをコードするポリヌクレオチドを含む免疫原性組成物に関する。
【0016】
別の態様によれば、本発明は、本発明による細菌組成物または免疫原性組成物でex vivoでパルスされた抗原提示細胞(APC)を含む細胞組成物に関する。
【0017】
一実施形態によれば、本発明は配列番号1のタンパク質に対して高い親和性を有するT細胞を単離するためのMHCマルチマーに関し、ここで、MHC分子は、配列番号53~187からなる群より選択されるエピトープに結合される。
【0018】
本発明はまた、バクテリオファージ組成物ならびに癌を治療するためのその使用に関し、ここで、該バクテリオファージは、配列番号1のタンパク質と少なくとも80、好ましくは少なくとも90およびより好ましくは少なくとも95%の同一性を有するタンパク質を発現する。
【0019】
一実施形態によれば、本発明は配列番号1のタンパク質を含むファージの溶解サイクルを誘発する薬物候補の能力を評価するために、CNCM I-4815株由来の細菌を使用することを含む、抗腫瘍薬を同定するためのスクリーニング方法に関する。
【0020】
本発明はまた、患者が配列番号1のタンパク質と少なくとも80%の同一性を有する配列の、前記患者由来の生物学的試料における存在を評価することを含む、化学療法または免疫チェックポイント遮断による治療に対して良好な応答者である可能性があるかどうかを決定する方法に関し、ここで、このような配列が試料中に存在する場合、患者は、治療に応答する可能性がある。
【0021】
本発明はまた、患者が化学療法または免疫チェックポイント遮断による治療に対して良好な応答者である可能性があるかどうかを決定する方法に関し、該方法は該治療の間に循環CCR9+CXCR3+ CD8+ T細胞のレベルを測定することを含み、該レベルが所定の閾値を超える場合、該患者は、該治療に応答する可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実験設定。(A)マウスには広域抗生物質(ストレプトマイシン、コリスチン、アンピシリンおよびバンコマイシン)を3日間投与してから、Fecal Microbiota Transplantation(FMT)を実施する。FMT後14日目に、MCA-205肉腫細胞株をマウスの右側腹部に接種する(マウスあたり8.105細胞)。化学療法(シクロホスファミド、CTX-100mg/kg)または生理食塩水(NaCl)を、腫瘍接種の5日後に開始して、週1回ip注射し、合計3回注射する。E.hirae 13144株(1.109菌)による経口強制経口投与を、CTX注射の日およびその翌日に行う。(B)非FMT処置SPFマウスを対照として使用する。
【
図2】FMT BC患者1による腸内菌共生バランス失調:E.hirae 13144のCTXを介した抗腫瘍効果回復効果。3サイクルのCTX対NaClを注射したSPFマウス(A)対FMT処置マウス(B)におけるMCA-205肉腫の腫瘍増殖曲線。(C)対照としてE.hirae 13144株またはNaClを強制経口投与した後のFMT処置マウスにおけるMCA-205肉腫の腫瘍増殖曲線。2つの独立した実験を示す。(D)E.hirae 13144株を経口強制経口投与した後の、CTXまたはNaClで処置したFMT処置MCA-205肉腫担持マウスの全生存率。典型的な生存曲線を、1群あたり6匹のマウスについて示す。(E)2つの独立した実験からのCTX後21日目の腫瘍サイズの連結データを示す。Anova & Student t’検定統計解析: *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図3】FMT BC患者2による腸内細菌共生バランス失調はない: E.hirae 13144はCTXを介した抗腫瘍効果を改善する。3サイクルのCTX対NaClを注射したSPFマウス(A)対FMT処置マウス(B)におけるMCA-205肉腫の腫瘍増殖曲線。(C)対照としてE.hirae 13144株またはNaClを強制経口投与した後のFMT処置マウスにおけるMCA-205肉腫の腫瘍増殖曲線。2つの独立した実験を示す。(D)2つの独立した実験からのCTX後21日目の腫瘍サイズの連結データを示す。Anova & Student t’検定統計解析: *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図4】E.hirae IGR1、IGR10および10815は、腸内菌共生バランス失調のFMT設定においてCTX殺腫瘍活性を効率的に増強することができなかった。E.hirae 13144株(A)、IGR1株(B)または対照としてのNaClを経口強制経口投与した後のFMT処置マウスにおけるMCA-205肉腫の腫瘍増殖曲線。典型的な曲線は、1群あたり6匹のマウスについて描写される。(C)1~2回の独立した実験からのCTX後17日目の腫瘍サイズの連結データを示す。(D)種々のE.hirae株の腫瘍増殖制御能の比較。 EH 13144に匹敵する有効性を示す2つの新規株EH IGR 4および7の同定および発見。EH10815は機能せず、TMP2に存在する突然変異に関連し得る(以下の
図13Bを参照のこと)。スチューデントt検定統計解析: *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図5】EH13144 + IGR4 + IGR7の組み合わせは、EH13144誘導化合物よりも優れている。(A)E.hirae 13144株、IGR4株、IGR7株、放線菌種(Actinomycetes spp)(Ao)を強制経口投与した後、3サイクルのCTX(C)対 NaCl(N)を注射したFMT処理マウスにおけるMCA-205肉腫の腫瘍表面。各ドットは、1匹のマウス/腫瘍である。(B)最良の群のSPFマウスにおけるMCA-205肉腫の腫瘍増殖曲線、各時点における腫瘍サイズおよび屠殺時の腫瘍サイズの平均+SEM(C:CTX)。各ドットは、1匹のマウス/腫瘍である。Anova統計は、CTXと三重組み合わせとの間の有意差を示す。(C)EH13144、IGR1、IGR11、BarnesiellaまたはAkkermansia株を強制経口投与し、3サイクルのCTXを注射したFMT処置マウスにおけるMCA-205肉腫の腫瘍表面。細菌株は生菌(V)または低温殺菌(P)されたものを用いる。低温殺菌のために、細菌を70℃で30分間インキュベートし、少なくとも6時間で-80℃で凍結する。
【
図6】マウスE.hirae 13144は、生存して使用された場合にのみその有効性を媒介する。E.hirae 13144生菌株(A)、低温殺菌(B)または対照としてNaClを経口強制経口投与したFMT処置マウスにおけるMCA-205肉腫の腫瘍増殖曲線。典型的な曲線は、1群あたり6匹のマウスについて描写される。(C)3つの独立した実験からのCTX後17日目の腫瘍サイズの連結データを示す。スチューデントt検定統計解析: *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図7A-C】E.hirae 13144を強制経口投与した後のmLNおよび脾臓におけるCD8
+ T細胞の蓄積の増加。(A)実験設定。マウスを、E.hirae(708または13144)の強制経口投与およびCTX ip注射を行う前に、3日間、広域スペクトル抗生物質で処置する。CTX後1日目、E.hiraeによる2回目の強制経口投与を行う。CTXの72時間後に、CD4+およびCD8
+ T細胞を腸間膜リンパ節(mLN)から単離する。E.hirae 708または13144による強制経口投与およびCTX治療後のmLNにおけるCD8+(B)およびCD4+(C)T細胞の割合。
【
図7D-F】(D)実験設定。マウスを、E.hirae(708または13144)を用いて3日毎に合計4回の強制経口投与を行う前に、広域スペクトル抗生物質で3日間処置する。最初の強制経口投与の5日後、マウスをCTXで処置する。CTXの1週間後に、脾臓からCD8
+ T細胞を単離する。E.hirae 708または13144による強制経口投与およびCTX処理後の脾臓におけるCD8+T細胞(E)およびCCR9
+CXCR3
+ CD8 T細胞(F)の割合。スチューデントt検定統計解析: *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図8】EH13144の強制経口投与後の腫瘍床におけるCD8
+ CCD9+CXCR3
+ T細胞の持続的蓄積:OncoBaxによる持続的な抗癌反応の腫瘍関連バイオマーカーとしてCD8+CXCR3
+ CCR9
+を考慮。(A)SPFマウスにATBを3日間投与した後、CTX全身投与前後にEH13144を3週間隔週で強制経口投与した。最初のCTX処理の7、14および21日後にマウスを屠殺して脾臓、腫瘍排出リンパ節(dLN)および腫瘍(MCA205)を採取した。(B)FMT処理マウスに、CTX全身投与の前後に、隔週で3週間、EH13144を経口強制投与した。マウスをCTX処理日およびCTX 1、2、3の72時間後(day J0、J3、J7、J10、J14、J17)に屠殺し、dLNおよび腫瘍(MCA205)を採取した。CCR9
+CXCR3
+ 二重陽性細胞のパーセンテージを分析するCD8+CD3+上にゲートするCD45+細胞のフローサイトメトリー分析を提示する。5匹のマウス/群を含む3群の代表的な実験。Anova統計解析: *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図9】EHペプチドの免疫原性を解明するための実験的免疫化プロトコール。マウスを、E.hirae(708または13144)を用いて3日毎に合計4回の強制経口投与を行う前に、広域スペクトル抗生物質で3日間処置する。最初の強制経口投与の5日後、マウスをCTXで処置する。CTXの1週間後に、脾臓からCD8
+ T細胞を単離する。これらのCD8
+ T細胞を、20μg/mlのペプチドをパルスした樹状細胞(DC)(1時間の間)または熱不活性化細菌(6時間の間)と共にインキュベートする。細菌の不活性化は、65℃で2時間のインキュベーションからなる。24時間培養後、IFNγのELIspotを行う。
【
図10】CTL脾臓反応性に対する2つのE.hirae 708種と13144種との間の交差反応性。熱不活化細菌(708、13144、EH17およびL. plantarum)の存在下または非存在下でプレ培養したDCと共培養した後のIFNγ分泌CD8+T細胞を表すIFNγスポットの数。対応する実験設定を
図9に示す。スチューデントt’検定統計分析: *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図11】腸の炎症に対するEHの影響およびこの炎症におけるおよびCD8
+ T細胞の役割:mLNで増幅されたEH特異的CTLは粘膜固有層に戻る可能性がある。(A)実験設定。マウスは3日間、広域抗生物質で処理する。次いで、発明者らはE.hirae(708または13144)の強制経口投与および抗CD8注射(200μg/マウス)を3日毎に、合計4回の強制経口投与/注射を行った。最初の強制経口投与の5日後、マウスをCTXで処置する。CTXの1週間後、ヘマトキシリンエオシン染色(HES)のために結腸を除去する。(B)E.hiraeを保菌し、抗CD8アブレーションAbsおよびCTXで処理したマウスの結腸における炎症性浸潤の程度。スチューデントt検定統計解析: *p<0.05、**p<0.01.。
【
図12】EHからMHCクラスI結合ペプチドを選択するために使用されるフィルターの概略図。E.hirae(708、13144およびEH17)の全細菌配列から、細胞壁および細胞外局在を有するタンパク質をPSORTソフトウェアで選択した。次に、タンパク質を9アミノ酸のペプチドに分割した。これらのペプチドを、NetMHCソフトウェアを用いてMHCクラスI H-2K
bに結合する能力について試験し、強力なバインダーのみが保持された(IC50<50nM)。
【
図13A-B】TMP1およびTMP2エピトープを含む群7からのペプチドは、E.hirae 13144に対して免疫化されたマウスの脾臓由来のCD8
+ T細胞を活性化する。13種類の異なるペプチド群でパルスしたDCと培養した後の、IFNγ分泌CD8+T細胞を表すIFNγスポットの数(表6)。群n°1(A)および群n°7(B)のみを示す。
【
図13C】(C、E)群n°7に属する4つのペプチドでパルスしたDCと培養した後のIFNγ分泌性CD8+T細胞を表すIFNγスポットの数(表7)。対応する実験設定を、
図9に示す。
【
図13D】(D)免疫原性ペプチドのレベルでのEH13144と比較したEH10815のTMP1およびTMP2の配列アラインメント。
【
図13E】(E)他のEH株によるin vivo免疫後のTMP1およびTMP2ならびにGroup7に対する想起応答における脾臓CTLのin vitro反応性。Anova統計解析: *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図14】TMPエピトープ1プロファージ2特異的CD8
+ T細胞は、EH13144およびIGR7の強制経口投与後にdLNおよび脾臓に蓄積する。マウスを、E.hirae 13144(A,B)または10815またはEH17またはIGR7(C)による経口強制投与およびCTX ip注射を行う前に、広域スペクトル抗生物質で3日間処置する。対応する実験設定を、mLNについては
図7Aに、脾臓については
図7Dに示す。TMP1特異的CD8
+ T細胞を腸間膜リンパ節(A)および脾臓(B,C)からテトラマーで単離する。mLNおよび脾臓におけるCCR9
+またはCCR9T細胞間のTMP1プロファージ2特異的CD8+T細胞およびTMP1特異的CD8+Tのフローサイトメトリー分析。各ドットは、1つのmLNまたは脾臓を表す。5-6 マウス/群。Anova統計解析: *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図15】TMPエピトープ1プロファージ2特異的CD8
+ T細胞は腫瘍床に蓄積する。(A)SPFマウスにATBを3日間処理した後、CTX全身投与前後にEH13144を3週間、隔週で強制経口投与した。最初のCTX治療の7、14および21日後にマウスを屠殺し、腫瘍排出リンパ節(dLN)および腫瘍(MCA205)を採取した。(B)FMT投与マウスにATBで3日間処理した後、CTX全身投与前後にEH13144を3週間隔週で強制経口投与した。マウスをCTX処理日およびCTX 1、2、3の72時間後(J0、J3、J7、J10、J14、J17日目)に屠殺し、dLNおよび腫瘍(MCA205)を採取した。CCR9
+CXCR3
+ 二重陽性細胞のうちTMP1特異的CD8 T細胞とTMP1特異的CD8 T細胞のフローサイトメトリー解析を提示する。5匹のマウス/群を含む3群の代表的な実験。Anova統計解析: *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図16】TMPペプチドでパルスしたDCによる免疫化のプロトコール。DC分化(6日間のGM-CSFおよびIL-4による)後、ペプチドの添加(1時間)または熱不活性化細菌の添加(6時間)の前に、それらをポリI:C(10μg/ml)と一晩インキュベートした。これらのDCを、0日目および10日目に右側腹部に皮下注射する。2回目の注射の1ヶ月後、肉腫(MCA205)または大腸(MC38)腫瘍細胞株を、左側腹部に皮下注射する(それぞれ、マウスあたり8.105および1.106細胞)。本発明者らは、DCを用いない1群、20μg/mlの無関係なペプチド(gr1)またはTMPペプチドまたは13144熱不活化細菌をパルスしたDCを有する1群の4群を構成する。経時的な平均腫瘍サイズ(A)、各群の各マウス腫瘍動態(B)、MCA205の屠殺前の2つの最終時点における群間の詳細な比較を示し(C)、各ドットは1匹のマウスを表す。MC38関連データは示されていない。
【
図17A-B】13144およびTMPパルスDCワクチン接種は、MCA205の腫瘍増殖を低下させた。gr1ペプチド、TMPペプチドおよびE.hirae 13144でパルスしたDCをワクチン接種したマウスにおけるMCA205の腫瘍増殖。(A)異なる動態における腫瘍サイズの平均+SEM。(B)5~10匹のマウスの各個体群に対する腫瘍増殖動態。
【
図17C】(C)屠殺時の腫瘍サイズおよび統計学的差異。スチューデントt検定またはANOVA統計解析: *p<0.05、**p<0.1、***p<0.001。
【
図18】遠隔部位に肉腫が存在すると、E.hirae 13144の強制経口投与によって誘発される腸の炎症性病変が予防される。(A)実験設定。マウスは、右側腹部にMCA205腫瘍細胞を皮下注射する前に3日間、広域抗生物質で処理される。その後、E.hirae(708または13144)を3日毎に経口強制経口投与し、合計4回強制経口投与した。最初の強制経口投与の5日後、マウスをCTXで処置した。CTXの1週間後、結腸を取り出し、ヘマトキシリン、エオシンおよびサフラン染色(HES)のためにPPFEに包埋する。(B)MCA205腫瘍を有する又は有さない、E.hiraeをコロニー化し、CTXで処理した、マウスの結腸における炎症性浸潤の程度。スチューデントt検定統計解析: **p<0.01。
【
図19】E.hirae 13144と他の4つのE.hirae株との比較ゲノム解析。(A)5つのE.hiraeゲノムのパンゲノム解析。(B)細菌ゲノムおよびプラスミド内のプロファージ配列の同定およびアノテーションに特化した、ウェブサーバー PHASTER(PHAge Search Tool Enhanced Release)からの13144ゲノム中のプロファージ領域および他のファージとの相同性のリスト。
【
図20A】Enterococcus hiraeプロファージの比較分析。(A)いくつかのEH株の配列のアラインメントとTMP配列の位置。40.6-kbプロファージ(A)および39.2-kbプロファージ(B)遺伝子配列の存在(黒)および非存在(白)のマトリックスおよびブラストアラインメントパラメータ=80%の同一性および>=70%のカバー率に基づく「ヒートマップ」クラスターによる比較分析。
【
図21】EH13144株と他のE.hirae株のエピトープTMP間の相同性。(A)プロファージ2 EH13144由来のTMPは、IGR7由来のTMPと相同である(EH13144およびEH IGR7の両方の配列が同一であるため)。(B)EH13144のエピトープTMP1は、他のE.hirae株とある程度の相同性を示す:IGR11で100%、IGR1および10815で88.89%((C)で示される1変異を伴う)。EH13144のエピトープTMP2は、IGR11および10815において77%の相同性を示す((C)で示される2つの突然変異を伴う)。
【
図22A】化学療法に先験的に診断された乳がん患者の血液中の共生細菌に対するT細胞応答。乳癌患者から採取した自己単球を異なる細菌種で刺激した後、自己CD4
+ T細胞またはCD8
+ T細胞とインキュベートしてIFN-γおよびIL-10放出をモニタリングした。(A)E.hirae 13144に対するTH1/Tc1/Tr1免疫応答。診断時の20%未満の乳癌(BC)患者は、化学療法前にE.hirae 13144に対する血中TH1/Tc1免疫応答を示す。
【
図22B】(B)大腸菌またはTCR架橋に対するTH1/Tc1/Tr1免疫応答。BC女性は大腸菌に対して記憶T細胞応答を示し、TCR架橋に応答する。
【
図23】ヒトで試験される各HLAハプロタイプに対するTMPの予測ペプチドの局在。NetMHCソフトウェアを用いて評価したMHCクラスI対立遺伝子(閾値50nM)に対する有意な結合能力を有するTmpの予測ペプチドの局在化。各ペプチドおよび対立遺伝子について、記号は、MHCクラスI対立遺伝子に結合親和性を有する9アミノ酸長ペプチドに対応する同定された配列の最初のアミノ酸を表す。予測されたペプチドの配列を表9に再開した。
【
図24A-B】健常ボランティア由来のヒトPBMCにおけるTMPペプチドの抗原性。24時間再刺激後のIFNγ放出を明らかにするために、ELISPOTを用いてPBMCからセントラルメモリーCD8
+ T細胞を教育するために、ペプチド(群または個々のペプチド)でパルスしたDCによる2ラウンドの刺激後に、間接的に、想起反応のIn vitro刺激アッセイ(A)。各ペプチドはHLA-A2拘束型(B)であり、HLA-A2.1遺伝子型で6名の健常ボランティア「HV」(6桁の数字で個別化)を選択した(C)。(B)では、以下のグラフで免疫原性を付与したペプチドに下線を引いた。各HVの閾値を決定し(D)、「陽性」ウェルの数(閾値を上回る)と、表Bに示した各ペプチドの応答者の個数を算出した(E)。これらの結果を棒グラフで表すと、5種類のペプチドが、少なくとも50%のHVにおいてTc1免疫想起反応を誘発することを見出したので、ヒトにおけるTMPの免疫原性と有意に関連している可能性があることを観察した(F)。矢印は、最も有意なエピトープを示す(G)。各群のペプチドおよび最も有意なエピトープ(2、3、9、10、13)の表をBに示す。
【
図25】マイトマイシンCによるファージ切除のプロトコール。技術的手順の各工程を示す。
【
図26A】E.hirae13144の上清中のファージ核酸のPCR検出。種々の温度(37または42℃)、種々の濃度のマイトマイシンC(0、0.2および1μM)、またはCTXの活性代謝産物(マホスファミド-25μg/ml)で培養したEH13144の上清を処理して、キャプシド破壊を伴う(B)または伴わない(A)DNAをコードするファージタンパク質を収集した。PCRを行い、プロファージ1または2の特異的配列を検出した。
【
図27A-B】E.hirae 13144におけるユニークな抗原配列としてのファージテールレングステープメジャータンパク質。AおよびC. 実験設定。マウス(ナイーブ(C)、肉腫保有(A))に広域抗生物質(ストレプトマイシン、コリスチン、アンピシリン、バンコマイシン)を3日間投与した後、シクロホスファミド(ip CTX-100mg/kg)または生理食塩水(NaCl)を5日目および6日目にそれぞれ1回(C)または週1回で3回(A)全身投与する前後にE.hirae株13144(1.109菌)を経口強制投与した。1週間後(C)、精製したCD8+T細胞脾細胞を、生理食塩水または別個の熱殺菌細菌株を負荷した骨髄由来DCを用いたリコールアッセイにおいてex vivoで再刺激した。B. 種々の系統のE.hiraeを週1回強制経口投与後、3サイクルのCTX 対 NaClを注射したSPF C57BL/6マウスにおけるMCA-205肉腫の25日目(屠殺)の腫瘍サイズ。D-E. ex vivoリコールアッセイ。 in vivo曝露(C)後、脾臓CD8+T細胞を、熱不活性化細菌(65℃で2時間)(D)またはペプチド(E)でパルスした樹状細胞(DC)で再刺激した。IFNγ ELIspotを24時間で実施して、共培養後のIFNγ分泌CD8+T細胞(スポット)を数えた。各ドットは1匹のマウスを表す。F、G、H 脾臓(F、H)または腫瘍排出リンパ節(G)におけるH-2K
b/TSLARFANIテトラマー結合CTLのフローサイトメトリー分析(治療後72時間(AおよびCのレジメン)、ナイーブ(F、H)または腫瘍保有(G))。TMP1プロファゲ2特異的CD8
+ T細胞の割合は、脾臓CD8
+ T細胞(F、左パネル、G、H、上パネル)中、またはCCR9
+CXCR3
+ T細胞(F、右パネル、G、下パネル)またはCCR9
+ CTL(H、下パネル)のゲート中に示される。各実験は、2~3回の独立した実験からの10~15匹のマウスの1群を含んだ(B、D、E、F、H)。同様の成績が得られた2件のうち、代表的な試験をGにおける動態試験において示している。AnovaまたはStudent t’検定統計解析: *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図28A-B】ファージテールレングステープメジャータンパク質を用いた肉腫に対する予防的および治療的免疫。A-B.予防接種。TLR3リガンド曝露DCを、ペプチド(無関係な群、3位で変異している、または変異していない個々のTMP1)または熱不活化細菌でナイーブマウスの右側腹部における皮下接種の前に、10日間の間隔をあけてパルスした。2回目の注射の1ヶ月後、肉腫(MCA205)を左側腹部に皮下移植した。C-D. 治療設定。 MCA205腫瘍保有者をCTXで処置し、TMP1(TSLARFANI)、TMP1 mut2(T
ALARFANI)、TMP1 mut3(TS
FARFANI)またはEGFP配列(対照として)を発現するように遺伝子改変したE.hirae 13144または大腸菌で強制経口投与したレジメンについては、
図27Aを参照のこと。MCA205の長手方向の腫瘍増殖動態(A、C上部パネル)または断面腫瘍サイズ(B、C下部パネル)は、2~3の独立した実験から集められた12~18匹の動物(A)について、異なる時点(A、C上部パネル)または犠牲時点(B、C下部パネル)での腫瘍サイズの平均+SEMとして描写される。D. 屠殺時の脾臓におけるH-2K
b/TSLARFANIテトラマー結合CTLのフローサイトメトリー分析。TMP1プロファージ2特異的CD8
+ T細胞の割合は、脾臓CD8
+ T細胞間で描出される。スチューデントt検定またはANOVA統計解析: *p<0.05、**p<0.1、***p<0.001。
【
図29A】エンテロファージのカバー範囲(BOC)および癌患者におけるその分子模倣GPD1-Lの臨床的意義。A. MGリファレンスカタログのE.hiraeおよびプロファージのゲノムのBOC。17の異なるデータセット(下段で参照、カラム内の個々のサンプル)からの3027のメタゲノムについて、E.hirae株および腸球菌ファージゲノム(列で特徴づけられる)の存在をスクリーニングした。B-C. NSCLCおよびRCCを保有する76人の患者(Routy et al. Science 2018に記載されたコホート)において、カルチュロオミクスに続いてPCRで評価した、検出可能なE.hiraeコロニーおよび/またはE.faecalisコロニー(B、上図)を有する糞便の割合、およびE.hiraeコロニーおよび/またはE.faecalisコロニー(B、下図)のTMPの割合、および進行までの期間(C、上図)または全生存期間(C、下図)を示す対応するKaplan Meier曲線。 示されるp値を有する対数順位(Mantel-Cox)解析。D. 16個のHLA-A02
*01結合TMPエピトープでパルスした(またはパルスしなかった)自己単球由来DCでの6人のHLA-A02
*01健常ボランティア由来のナイーブCD8+T細胞のプライミング(表9、
図24Bおよび
図37)。IFNγ ELIspotアッセイおよび陽性スポットの計数のための16個のTMPペプチドの各々による7日目の再刺激。ANOVA統計分析: *p<0.05。E. 公的に入手可能なNCBI BLASTPスイートおよび75%を超える相同性を探索するっfTCGAデータセットを用いてDにおいて選択された免疫原性エピトープのブラスト配列アラインメント。エピトープ10(KLAKFASVV、配列番号63)のみが有意な一致(KLQKFASTV、配列番号188)を得て、GPD1-Lタンパク質の配列において同定された。F-H. 単変量解析における生存の平均およびKaplan Meier曲線に従って分離したTCGAデータセットからの膀胱(F)、肺腺癌(G)、530腎細胞癌(H、HLA‐A02
*01タイピングによる、下図)患者の間のGPD1‐L遺伝子産物の発現レベル。I-J.ステージIIIC/IVのNSCLC患者62例の第2のコホート(CGFL検定コホート、J)で検証されたステージIIIC/IVのNSCLC患者44例(CHUM検証コホート、I)での、二次治療におけるPD-1遮断後の進行までの時間。進行までの時間のKaplan Meier曲線;患者はGPD1L発現の値に従って層別化された。カットオフは、最適なカットオフ戦略で定義した。K. TCGAアッセイ(TCGA)、肺腺癌(LUAD)、肺扁平上皮癌(LUSC)、CHUMおよびCGFLコホートの全ての肺癌タイプにおけるGPD1‐L発現と腫瘍免疫浸潤とのピアソン相関。
【
図30A-B】マウス癌における腸ファージTMPと発癌性ドライバーPSMB4との間の分子模倣。A. >70%の相同性を示す公的に入手可能なTCGAデータセットを有する27Eにおいて選択された唯一の免疫原性エピトープTSLARFANIのブラスト配列アラインメント。1つのヒット(GSLARFRNI)のみが有意な一致を得、PSMB4タンパク質の配列において同定された。B. MCA205の腫瘍クローンにおける野生型とノックを比較した治療設定。
図27AのようにId.であるが、マウスにWT MCA205細胞株を接種するか、またはTSLARFANIの3位にノックイン突然変異を有する別個のクローンを接種し、次いで、CTX +で処理/E.hirae 13144(または生理食塩水)で強制経口投与した。同様の結論を得た2つのうちの代表的な試験における6匹の動物/群の、異なる時点(上および下)または屠殺時(右)における、MCA205の縦方向の腫瘍増殖動態(B)または断面腫瘍サイズ(B、右)を腫瘍サイズの平均 +SEMとして描写した。ANOVA統計解析: *p<0.05、**p<0.1、***p<0.001.C-D. E.hirae サイフォウイルスファージのIn vivo切除-感染サイクル。 CTX前後のE.hiraeによる強制経口投与後、回腸内容物の採取、細菌コロニーの培養・分離、MALDI-TOF同定、TMP特異的プローブセットを用いたPCR(C)。PCRにおけるTMP配列を保有するコロニーを有する、未処置および強制経口投与した動物における各種のコロニーの割合を示すグラフ(D)。5匹/群及びPCRで同定・精査された70を超えるコロニーの結果。
図39も参照のこと。E.この株の配列決定後のPCRにおけるTMP配列を有するE.gallinarumとのファージゲノムのアラインメント。F-G. オルガノイドをE.hirae(108)およびE.gallinarum(108)と共に1時間培養した後、マホスファミド処理(25μg/ml)を行った。マホスファミド処理の6時間後および20時間後に、上清を、細菌コロニーの培養および単離(F)、MALDI-TOF同定、ならびにTMP特異的プローブセットを使用するPCR(G)のために回収した。(H) 限局性乳癌ショットガンデータに関するMetaPhlAn2分析後に細菌およびウイルス種についてLEfSe分析を実施したところ、含まれる83例から10例の患者でネオアジュバントパルボシクリブ治療の降順に最も判別度の高いもの(LDAスコア>2)が報告され、他の73例はネオアジュバントCDK4/6阻害薬の投与を受けなかった。スチューデントt検定またはANOVA統計解析: *p<0.05、**p<0.1、***p<0.001。
【
図31A】E.hirae株のクラーディングおよびゲノム解析。A. 16S配列の類似性に基づく種々の株の樹状図。B. SNPアラインメントに基づくE.hirae分離株20株の系統発生樹。C. 5つの完全なE.hiraeゲノムに対する13144株の比較ゲノム解析。中心から外側へ: GCスキュー、GC含有量、13144、IGR7、IGR11、ATCC 9790、708、13344株。プロファージの位置は黒色で現れる。
【
図32】唯一の免疫原性ペプチド群としての群7の事前同定。ナイーブマウスを広域抗生物質(ストレプトマイシン、コリスチン、アンピシリン、バンコマイシン)で3日間処置した後、シクロホスファミド(ip CTX 100mg/kg)または生理食塩水(NaCl)をそれぞれ5日目および6日目に全身投与する前および後に、E.hirae株13144または708(1.109細菌)を経口強制投与した。1週間後、精製したCD8+T細胞脾細胞を、生理食塩水または別個のペプチド群を負荷した骨髄由来DCを用いたリコールアッセイにおいてex vivoで再刺激した(表6のリストを参照のこと)。IFNγ ELIspotを24時間で行い、共培養後のIFNγ分泌CD8
+ T細胞(スポット)を計数した。各ドットは1匹のマウスを表す。統計解析の結果、有意な反応に達したのは7群のみであった: Anova検定: *p<0.05, **p<0.1。
【
図33A-B】TMPタンパク質の配列およびE.hirae 13144プロファージ2タンパク質配列の比較分析。A. 13144プロファージ2の全TMPタンパク質配列。B. 13144プロファージ2タンパク質配列の存在(黒色)および非存在(白色)のマトリックスに基づく「ヒートマップ」クラスター化による比較分析。
【
図34】E.hirae 13144のプロファージ2内の免疫原性エピトープ領域の配列アラインメント。E.hirae 13144由来の免疫原性ペプチドTSLARFANIは
図27に描写され、詳述される実験において同定された。y軸は本発明者らのモデルにおいて試験された同じ領域における6つの他のE.hirae株の配列を示す。
【
図35A-B】大腸菌におけるTMP遺伝子の一部のサブクローニング発現。A. 大腸菌DH5αに発現するTMP-FLAG、TMP-mut2-FLAGおよびTMP-mut3-FLAGのアミノ酸配列。示されたエピトープの変異体(下線)を含むTMPタンパク質のN末端部分のみが、C末端FLAGタグ(イタリック体)との融合タンパク質として発現されたことに留意されたい。B. pDL28-P23-EGFPまたはpDL28-P23-TMP-FLAGでそれぞれ形質転換した大腸菌株におけるEGFPおよびTMP-FLAGの発現を実証するウェスタンブロット分析。
【
図36】E.hiraeにおけるファージテールレングステープメジャータンパク質の配列。イタリック体で示したPCRプライマーの結合領域を有するTMPタンパク質全体の遺伝子配列。
【
図37】GPD1-Lタンパク質におけるHLA-A02
*01結合および免疫原性エピトープの局在化およびそれらの親和性(
図30Aを参照のこと)。表9に見出され、そして
図29Dに示される全てのHLA-A02
*01結合および/または免疫原性エピトープはMHCクラスI対立遺伝子に対するその結合親和性の関数として、色コードおよびアミノ酸配列位置によって示されるように、TMPタンパク質全体の正確な領域に位置する。
【
図38A-B】CRISPR/Cas9テクノロジーの手段によるpmsb4変異MCA205細胞株の生成。A. Psmb4 cDNAの模式図と設計された突然変異部位。sgRNAの標的部位と点突然変異を示す。B. CRISPR/Cas9によって導入されたPmsb4突然変異2および突然変異3の検証のための代表的な配列電気泳動図。変異したアミノ酸は灰色で強調されている。
【
図39A-B】109 cfu E.hirae 13144を用いたCTX+経口強制投与から構成される、治療を伴うまたは伴わない回腸細菌コロニーの同定。グラム陽性菌を分離するための、好気性条件で回腸内容物を播種した後に増殖する各コロニーにおけるTMP配列のPCR増幅(
図36参照)。各アガロース電気泳動ゲルの写真を各動物について示す。Aは5匹のナイーブマウスにおける結果を示し、Bはファージをコードする細菌を用いたCTX+経口強制投与後の所見を示す。各垂直レーンは、MALDI-TOFで同定された1つの細菌に対応する。初期値はパネルAの下部に詳述されている。陽性対照(Ctl+)はE.hirae 13144のDNAを表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
好適な実施形態の詳細な説明
【0024】
本文では、以下の一般的な定義が使用される:
【0025】
腸内細菌叢
【0026】
「腸内細菌叢」(以前は腸内フローラまたはマイクロフローラと呼ばれていた)とは、動物界に属するあらゆる生物(ヒト、動物、昆虫など)の腸内に生息する微生物の集団を指す。各個体は固有の細菌叢組成を有するが(60~80の細菌種が合計400~500の異なる細菌種/個体において、サンプル集団の50%を超えて共有される)、それは、常に、類似の主要な生理学的機能を満たし、個体の健康に直接的な影響を有する:
・胃や小腸が消化できない特定の食物(主に非消化性繊維)の消化に寄与する;
・いくつかのビタミン(BおよびK)の産生に寄与する;
・それは、腸粘膜の完全性を維持し、他の微生物からの攻撃に対して保護する;
・それは適切な免疫系の発達に重要な役割を果たす;
・健康で多様でバランスのとれた腸内細菌叢が、適切な腸機能を確実にする鍵となる。
【0027】
腸内細菌叢が身体の正常な機能とそれが果たす機能の違いを考慮に入れると、今日では「臓器」と考えられている。しかしながら、赤ちゃんは生まれつき滅菌である。つまり、腸内コロニー形成は出生直後に始まり、その後に進化する「後天性」臓器である。
【0028】
腸内細菌叢の発達は出生時から始まる。子宮内は無菌であり、新生児の消化管には母体(腟、皮膚、乳房など)、分娩が起こる環境、空気などからの微生物がすぐに定着する。3日目から、腸内細菌叢の組成は乳児がどのように栄養されるかに直接依存している。例えば、母乳栄養の乳児の腸内細菌叢は、乳児用調合乳で栄養される乳児と比較して、主にビフィズス菌によって支配されている。
【0029】
腸内細菌叢の組成は誕生から老齢まで、生涯を通じて進化し、様々な環境影響の結果である。腸内細菌叢のバランスは老化過程で影響を受けることがあり、その結果、高齢者は若年成人とは実質的に異なる微生物叢を有する。
【0030】
優勢な腸内細菌叢の一般的な組成はほとんどの健常人(Firmicutes、Bacteroidetes、ActinobacteriaおよびProteobacteriaの4つの主要門)で類似しているが、種レベルでの組成は高度に個別化されており、主に個人の遺伝的、環境および食事によって決定される。腸内細菌叢の組成は一時的または永久的に、食事成分に慣れるようになり得る。
【0031】
腸内菌共生バランス失調(Dysbiosis)
【0032】
それは変化に適応することができ、高い反発能力を有するが、腸内細菌叢組成物におけるバランスの喪失はいくつかの特定の状況において生じ得る。これは「腸内菌共生バランス失調(dysbiosis)」と呼ばれ、腸内の潜在的に「有害である」細菌と「有益である」細菌との間の不平衡、または主要な細菌群の構成と多様性の観点から「健康である」細菌叢と考えられるものへの何らかの逸脱である。腸内菌共生バランス失調は、機能性腸疾患、炎症性腸疾患、アレルギー、肥満、糖尿病および癌などの健康問題と関連している可能性がある。それはまた、細胞毒性治療または抗生物質治療のような治療の結果であり得る。
【0033】
抗腫瘍治療
【0034】
本明細書中の「抗腫瘍治療」は、外科手術を除く、癌に対する任意の治療を示す。それらには、化学療法、ホルモン療法および生物学的療法、放射線療法および標的療法(例えば、c-KIT、EGFRまたはHER2/HER3またはMETまたはALK阻害剤など)が含まれる。
【0035】
化学療法
【0036】
「化学療法」は、本明細書において、1つ以上の化学療法剤による癌の治療として定義される。化学療法剤は、ほとんどの癌細胞の主要な特性の1つである、急速に分裂する細胞を殺すことによって作用する化学分子であり、。化学物質にはいくつかのカテゴリーが存在する:
- アルキル化剤;
- 紡錘体毒、例えばメベンダゾール、コルヒチンなど;
- 有糸分裂阻害剤(タキサン系薬剤(パクリタキセル(タキソール(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))およびビンカアルカロイド系薬剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシンなど)を含む)、
- 細胞傷害性/抗腫瘍性抗生物質:例えばアントラサイクリン系(例:ドキソルビシン、ダウノルビシン、アドリアマイシン、イダルビシン、エピルビシンおよびミトキサントロン、バルビシン)、ストレプトマイセス(例:アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、プリカマイシン)
- 代謝拮抗剤(例えば、ピリミジン類似体(例えば、フルオロピリミジン類似体、5-フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン(FUDR)、シトシンアラビノシド(Cytarabine)、ゲムシタビン(Gemzar (登録商標))、カペシタビン;プリン類似体(例えば、アザチオプリン、メルカプトプリン、チオグアニン、フルダラビン、ペントスタチン、クラドリビン、カペシタビン、クロファラビン);葉酸類似体(例えば、メトトレキサート、葉酸、ペメトレキセド、アミノプテリン、ラルチトレキセド、トリメトプリム、ピリメタミン);-トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、カンプトテシン:イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド、エトポシドリン酸、テニポシド);
- DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤:2’-デオキシ-5-アザシチジン(DAC)、5-アザシチジン、5-アザ-2’デオキシシチジン、1-[β]-D-アラビノフラノシル-5-アザシトシン、ジヒドロ-5-アザシチジン;
- 血管破壊剤、例えばフラボン酢酸誘導体、5,6-ジメチルキサンテノン-4酢酸(DMXAA)およびフラボン酢酸(FAA);
- また、他の化学療法剤、例えばアプレピタント、ボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標)、ミレニウムファーマシューティカルズ)、イマチニブメシレート(グリベック(登録商標))、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、タモキシフェン、ゲフィチニブ、エルロチニブ、カルボキシアミドトリアゾール、エファプロキシラール、チラパザミン、xcytrin、チマルファシン、ビンフルニン。
【0037】
免疫チェックポイント阻害剤
【0038】
本文では「免疫チェックポイントを遮断する薬物」、または「免疫チェックポイント阻害剤(ICB)」または「免疫チェックポイント遮断薬」はTリンパ球の免疫チェックポイントを遮断する薬物、分子または組成物のいずれかを指定する。このような薬物は宿主免疫系を再活性化し、エフェクターTリンパ球によって間接的に腫瘍細胞を殺す。特に、これらの用語は抗CTLA-4抗体、抗PD1抗体、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブまたはDurvalumab)および抗PD-L2抗体を包含する。より詳細には、ICBがニボルマブまたはペンブロリズマブなどの抗PD1モノクローナル抗体であり得る。他のICBには、抗Tim3、抗BTLA、抗VISTA、抗CD38、抗TIGIT、抗GITR、抗LAG3、抗KIR抗体、抗OX40抗体が含まれ、これらも免疫チェックポイントを阻害する。
【0039】
現在使用されているCTLA-4、PD1、PD-L1、PD-L2などを拮抗する薬剤はモノクローナル抗体であるが、これらに特異的に結合する他の分子は、例えば抗体フラグメントや特別に設計されたアプタマーなど、将来のICBの開発に使用することができる。もちろん、「免疫チェックポイントを遮断する薬物」、または「免疫チェックポイント阻害剤(ICB)」または「免疫チェックポイント遮断薬」という用語は、抗CTLA4、抗PD1またはPDL1抗体のために組み換えられた腫瘍溶解性ウイルスなどの、CTLA-4、PD1、PD-L1、PD-L2などのような免疫チェックポイントを拮抗する活性分子を用いるあらゆる治療を包含する。
【0040】
活性化受容体に対する免疫標的抗体
【0041】
本文では、「免疫刺激レセプターを活性化する薬物」とは宿主免疫系を再活性化するTまたはNK細胞レセプターを活性化し、エフェクターTリンパ球によって間接的に腫瘍細胞を殺傷する、あらゆる薬物、分子または組成物を指す。特に、それは、抗ICOS抗体、抗OX40抗体、抗CD137、抗CD28抗体を包含する。
【0042】
CDK4/6阻害剤
【0043】
本文では、「CDK4/6阻害剤」は、パルボシクリブ、リボシクリブ、およびアベマシクリブのようなサイクリン依存性キナーゼ4および6(CDK4/6)阻害剤を示す。これらの薬物は現在、ホルモン受容体(HR)陽性、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性(HR+/HER2-)進行乳癌患者の治療に使用されているが、卵巣癌や急性骨髄性白血病などの他の癌の治療にも使用されることもできた。
【0044】
プロバイオティクス
【0045】
「プロバイオティクス」は消費されたときに健康上の利益を主張してきた微生物である。プロバイオティクスがヨーグルト、大豆ヨーグルト、または栄養補助食品のような、特に活性成分のある生きた培養物を添加した発酵食品の一部として一般に消費される。一般に、プロバイオティクスは腸内細菌叢がそのバランス、完全性、および多様性を保つ(または再発見する)のを助ける。プロバイオティクスの効果は株依存性であり得る。ここでは化学療法、PD1/PD-L1遮断、または抗CTLA4+抗PD1もしくはPD-L1 抗体の組み合わせに対する応答性を回復させる任意の共生組成物を指定するために、用語「抗癌プロバイオティクス」または新造語「オンコバクス」および「オンコミクロバイオティクス」を使用する。したがって、本発明の文脈において、「プロバイオティクス組成物」は食品または栄養補助食品に限定されないが、一般に、患者に有益な微生物を含む任意の細菌組成物を指定する。従って、このようなプロバイオティック組成物は、薬剤または薬物であり得る。
【0046】
癌、治療等
【0047】
本明細書で使用される「癌」は、すべてのタイプの癌を意味する。特に、癌は、固形癌または非固形癌であり得る。癌の非限定的な例は、癌腫または腺癌、例えば乳癌、前立腺癌、卵巣癌、肺癌、膵癌または結腸癌、肉腫、リンパ腫、黒色腫、白血病、胚細胞癌および芽腫などである。
【0048】
免疫系は癌に対して2つの役割を果たしている。すなわち、腫瘍細胞の増殖を妨げ、また腫瘍細胞の免疫原性を描写する。したがって、免疫チェックポイントを遮断する薬物は、事実上あらゆる種類の癌の治療に使用できる。したがって、本発明による方法は、以下の中から選択された癌を有する患者に潜在的に有用である:副腎皮質癌、肛門癌、胆管癌(例えば、門脈周囲がん(periphilar cancer)、遠位胆管癌、肝内胆管癌)、膀胱癌、骨癌(例:骨芽細胞腫、骨軟骨腫、血管腫、軟骨粘液性線維腫、骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、骨巨細胞腫、脊索腫、リンパ腫、多発性骨髄腫)、脳および中枢神経系癌(例えば、髄膜腫、星状細胞腫、乏突起神経膠腫、上衣腫、神経膠腫、髄芽腫、神経節神経膠腫、神経鞘腫、胚細胞腫、頭蓋咽頭腫)、乳癌(例えば、非浸潤性乳管癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性小葉癌、女性化乳房)、キャッスルマン病(例:巨大リンパ節過形成、血管濾胞性リンパ節過形成)、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌(例:子宮内膜腺癌、腺癌、乳頭状漿液性腺癌、明細胞)、食道癌、胆嚢癌(粘液性腺癌、小細胞癌など)、消化管カルチノイド(絨毛癌、破壊性絨毛腺腫)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌(腎細胞癌など)、喉頭癌、下咽頭癌、肝臓癌(血管腫、肝線種、限局性結節性過形成、肝細胞癌など)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌など)、中皮腫、形質細胞腫、鼻腔癌、副鼻腔癌(鼻腔神経芽細胞腫、正中線肉芽腫など)、上咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌および中咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫(例:胎児性横紋筋肉腫、肺胞横紋筋肉腫、多形性横紋筋肉腫)、唾液腺癌、皮膚癌(例:黒色腫、非黒色腫皮膚癌)、胃癌、精巣癌(例:セミノーマ、非セミノーマ胚細胞癌)、胸腺癌、甲状腺癌(例:濾胞癌、未分化癌、低分化癌、甲状腺髄様癌、甲状腺リンパ腫)、膣癌、外陰癌、および子宮癌(例:子宮平滑筋肉腫)。より詳細には本発明による方法が免疫チェックポイントを標的とする薬剤に対する患者の反応を予測および最適化するために使用することができ、ここで患者は転移性黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、中皮腫、膀胱癌、腎細胞癌、頭頸部癌、食道癌および胃癌、直腸癌、肝癌、肉腫、ウィルムス腫瘍、ホジキンリンパ腫、ALK-神経芽細胞腫、(ホルモン不応性)前立腺癌およびGISTからなる群から選択される癌を有する。
【0049】
必要に応じて、他の定義を以下に明記する。
【0050】
第1の態様によれば、本発明は癌を治療するための組合せ治療における細菌組成物の使用に関し、ここで、細菌組成物は、配列番号1のタンパク質、またはそのフラグメントであり、配列番号13、14、53~188および209からなる群より選択される少なくとも1つのエピトープを含む少なくとも9個、好ましくは少なくとも20個のアミノ酸のフラグメント、を発現する少なくとも1つの細菌株を含む。
【0051】
本発明の枠組みにおいて、組成物中に存在する少なくとも1つの細菌株は、天然に存在する株、または遺伝子技術もしくは任意の他の技術によって得られる人工の操作された株のいずれかであり得る。2013年11月7日に番号I-4815でCNCMに寄託されたEnterococcus hirae株13144とは異なる株を、本発明に従って使用することができる。
【0052】
本文では、「細菌組成物」とは細菌、とりわけ生きた細菌を含有するあらゆる組成を指定する。組成物は、1つの単一株の純粋培養物、いくつかの培養株の混合物、および/または糞便微生物移植(FMT)を実施するための糞便材料などの複合材料を含むことができる。組成物は、液体組成物であってもよい。あるいは、組成物は、フリーズドライされた又は凍結乾燥された材料を含み得るものであり、これは食用または砕けやすい製品(例えば、ビスケット様製品)に製剤化または製造され得、これは例えば、飲料に溶解するために粉末に粉砕され得るか、または錠剤もしくはカプセルに挿入され得る。あるいは、細菌組成物が乾燥ロゼンジまたはチューインガムまたは同等物の形成であり得る。本発明による組成物はまた、粉末形態または同等物で調製および/または製剤化することができ;これらの製剤は例えば、錠剤またはカプセル中で、またはアンプル中で、例えば、結腸鏡または経鼻腸管などのチャネルへの挿入、混合または注射のために、液体中に亀裂を開けて溶解する;または、例えば、経鼻胃管(または同等物)、または結腸鏡、または胃鏡などに注入することができる溶液として、すぐに添加できるバッグ中の粉末として、保存するのに有用であり得る。本発明による細菌組成物中に(細菌とは別に)おそらく存在する成分には、塩、緩衝液、栄養素、水、薬学的に許容される賦形剤、凍結保護剤などが含まれる。
【0053】
癌を治療するための組み合わせ治療において細菌組成物を使用することは、この抗腫瘍薬の効果を増強または増大させるために、細菌組成物を抗腫瘍薬と組み合わせて使用することを意味する。本発明による細菌組成物と組み合わせて有利に投与することができる薬物の非限定的な例には、化学療法、特にアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、単独でまたは組み合わせて使用される、CTLA-4、PD1、PD-L1またはPD-L2などに拮抗する薬物)、受容体を活性化するための免疫標的化抗体(例えば、抗ICOS、抗OX40、抗CD137、抗CD28抗体)、CDK4/6阻害剤などが含まれる。医師は状況に応じて、細菌組成物と組み合わせてどの薬物を患者に投与するか、ならびに治療プロトコル(すなわち、抗腫瘍薬(単数又は複数)および細菌組成物の投与順序)を選択する。
【0054】
本発明による組成物の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの細菌株は、配列番号1のタンパク質と少なくとも80、好ましくは少なくとも90、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有するタンパク質をコードするプロファージゲノムを含む。
【0055】
本発明の特定の実施形態において、細菌組成物中の少なくとも1つの株は配列番号2のプロファージ(以下の実験部分において「プロファージ2」として同定されるE.hirae 13144のプロファージ)と少なくとも80、好ましくは少なくとも90または95%の同一性を有するプロファージゲノムを保有し、その結果、このプロファージによってコードされるファージは、組成物が投与される患者の腸内細菌叢の組成物の他の株および/または共生細菌にインビボで感染し得る。
【0056】
本発明はまた、以下からなる群より選択される細菌を含む細菌組成物に関する:
(i)2013年11月7日に、番号I-4815でCollection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)に寄託されたEnterococcus hirae株13144、
(ii)2017年8月31日にCNCMに番号I-5224で寄託されたEnterococcus hirae IGR7株、
(iii)2017年11月27日にCNCMに番号I-5261で寄託されたEnterococcus hirae株 IGR11、
(iv)配列番号1のテールテープメジャータンパク質(TMP)(以下の実験部分では「プロファージ2のTMP」と呼ばれる)からの少なくとも20、好ましくは少なくとも30、より好ましくは少なくとも40ヌクレオチドのフラグメントと少なくとも65、好ましくは少なくとも80、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有するタンパク質を発現する任意の他の細菌株、および
(v)(i)~(iv)に記載の株の少なくとも2つの混合物。
【0057】
一実施形態によれば、この細菌組成物は、癌を治療するために使用される。
【0058】
本発明による組成物中に存在する細菌株は、任意の細菌ファミリーに属することができる。もちろん、細菌は癌に罹患した患者に投与されるため、非病原性細菌が優先的に使用されることになる。従って、Enterococcus hirae株以外の細菌もまた、本発明に従って使用され得る。
【0059】
既に述べたように、細菌組成物は、典型的には抗腫瘍薬と組み合わせて、それを必要とする患者に投与される。
【0060】
一実施形態によれば、本発明の細菌組成物は、2017年11月27日に番号I-5260でCNCMに寄託されたEnterococcus hirae株IGR4をさらに含む。
【0061】
下記の実験部分に例示される一実施形態によれば、組成物は、Enterococcus hirae株13144(CNCM I-4815)、Enterococcus hirae株IGR7(CNCM I-5224)およびEnterococcus hirae株IGR4(CNCM I-5260)を含む。
【0062】
本発明の特定の実施形態によれば、細菌組成物は、プロファージによってコードされるファージの溶解サイクルを誘発することができる抗腫瘍薬と組み合わせて使用される。このような薬物の非限定的な例は、以下の実施例8に例示されるようなマイトマイシンC、ならびに実施例16に例示されるようなCDK4/6阻害剤である。
【0063】
一実施形態によれば、細菌組成物は配列番号2のプロファージと少なくとも80%、好ましくは少なくとも95%の同一性を有するプロファージゲノムを保有する少なくとも1つの株を含み、その結果、このプロファージによってコードされるファージは、組成物の他の株および/またはおそらく患者の腸内細菌叢に既に存在する他の細菌にインビボで感染することができる。
【0064】
本発明の別の態様は、配列番号1のTMPまたは配列番号13および14のペプチドを少なくとも含む配列番号1のフラグメントをコードするヌクレオチド配列、または配列番号53~187からなる群から選択される少なくとも1つのエピトープを含む少なくとも9アミノ酸、好ましくは少なくとも20アミノ酸のペプチドをコードする配列、または配列番号209の少なくとも1つのエピトープを含む少なくとも9アミノ酸、好ましくは少なくとも20アミノ酸のペプチドをコードする配列を、前記細菌株にインビトロで導入することによって、抗癌プロバイオティック対象の細菌株の免疫原性を増加させる方法である。配列番号13および14のペプチドはマウスH-2Kbに結合する免疫原性エピトープに対応するが、これらはまた、これらの配列のいくつかまたは種間で共有されるより広い配列に結合し得る適切なHLAクラスIハプロタイプを保有するヒトにおいて免疫原性であり得る。配列番号53~187の配列は、ヒトHLA分子によって結合される配列番号1のTMP由来のエピトープであるとしてインシリコで同定されている(以下の表9を参照のこと)。配列番号209(X1=AまたはQおよびX2=VまたはTを有するKLX1KFASX2V)は配列KLAKFASVV(配列番号63)のTMP1 HLA-A*0201拘束性免疫原性エピトープ、配列KLQKFASTV(配列番号188)のGPD1L由来のヒトHLA-A*0201拘束性エピトープ、ならびにこれらの2つのエピトープの2つのハイブリッド:KLAKFASTV(配列番号210)およびKLQKFASVV(配列番号211)に対応する。有利には、対象の抗癌性のプロバイオティックの細菌株は、得られる細菌株が異なるHLAハプロタイプの患者において免疫原性になるように、異なるHLAハプロタイプによって提示され得るいくつかのエピトープを含む配列で形質導入される。
【0065】
一実施形態によれば、ヌクレオチド配列は少なくともKMVEILEEI(配列番号55)、RLLKYDVGV(配列番号56)、LLGIYQSYV(配列番号62)、KLAKFASVV(配列番号63)またはILVAITTTI(配列番号66)をコードし、これらはHLA-A0201拘束性エピトープであり、その免疫原性はヒトにおいて実験的に確認されている(以下の実施例7および
図24Bを参照のこと)。特定の実施形態において、ヌクレオチド配列は少なくともKLAKFASVV(配列番号63)、KLQKFASTV(配列番号188)、またはX
1=AまたはQおよびX
2=VまたはTを有する配列KLX
1KFASX
2V(配列番号209)の任意の他のエピトープをコードする。
【0066】
一実施形態によれば、細菌株は配列番号1のTMPと80%、90%または95%、好ましくは97.5%、より好ましくは98.7%の同一性を有するタンパク質をコードするか、または上記のような少なくとも1つのエピトープを含む前記タンパク質のフラグメントをコードする核酸(例えば、プラスミド)で形質導入される。当業者は得られる細菌株がTMPまたはそのフラグメントを発現するように、適切な配列(プロモーターなど)を選択する。
【0067】
一実施形態によれば、株の細菌は、配列番号1のTMPと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有するTMPをコードするバクテリオファージに感染される。
【0068】
再び、目的の任意の細菌株は、それが高度に病原性でないという条件で、この方法において使用され得る。特に、それらのプロバイオティクスに関心があることが既に知られている細菌株は、バクテリオファージでのインビトロ感染によって、またはTMPまたはそのフラグメントをコードするプラスミドでの形質導入によって操作することができる。このような細菌の非限定的な例としては、Akkermansia muciniphila、Ruminococcacae、Faecalibacterium、Clostridium ramosum、Clostridium XVIII、Alistipes種(A.onderdonkii、A.finegoldii、A.shahii)、Eubacterium種、Bacteroidales種、Methanobrevibacter smithii、Lactobacillus johnsonii、Bacteroides fragilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides salyersiae、Burkholderia cepacia、Burkholderia cenocepacia、Barnesiella intestinihominis、ErysipeloclostridiaおよびErysipelotrichaceae、Colinsella intestinalis、Collinsella takakaei、Eggerthella lenta/Coriobacteriaceae、ビフィドバクテリア(longum、breve、termophilus、adolescentis...)およびE. coliが挙げられる。より詳細には、Escherichia coli、Enterococcus gallinarum、Enterococcus faecalisおよびEnterococcus hiraeを出発材料として有利に使用して、上記の方法によって免疫原性が増大した細菌株を得ることができる。
【0069】
上記方法の特定の実施形態によれば、バクテリオファージは、配列番号2のヌクレオチド配列またはそれに対して少なくとも90%または少なくとも95%の同一性を有する配列を含むゲノムを有する。好ましい実施形態によれば、バクテリオファージは、Enterococcus hirae 13144(CNCM I-4815)に存在する39.2kbのプロファージと同一のゲノムを有する。
【0070】
特定の実施形態によれば、本発明は、上記の方法によって得られた細菌株に関する。特に、本発明は上記で定義されたTMPタンパク質をコードするファージによるプロバイオティック株のインビトロ感染によって得られる、天然に存在しない細菌株に関し、ここで、プロバイオティック株は、天然においてこのバクテリオファージによって感染されることが知られていない。別の実施形態によれば、本発明は、上記で定義されたTMPタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸での形質導入によって、遺伝子編集によって、または任意の他の技術によって得られる、天然に存在しない細菌株に関する。
【0071】
増加した免疫原性および改善された抗癌特性を有するように操作された本発明の細菌株は、癌の処置において有利に使用される。
【0072】
これらの操作された細菌株、特に、配列番号3、188および209の中から選択されるエピトープを含むタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを発現する細菌株は、HLA-A*0201患者における癌を治療するために効率的に使用され得る。
【0073】
既に言及したように、上記のような操作された細菌株を含む本発明の細菌組成物は、細菌中に存在するプロファージによってコードされるファージの溶解サイクルを誘発し得る抗腫瘍薬および/または免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて有利に使用される。
【0074】
本発明はまた、配列番号1のTMP由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸の配列または配列番号209の配列を含むポリペプチド、またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む免疫原性組成物に関する。このような組成物は有利にはヌクレオチド配列(mRNAまたはcDNA)として、または少なくとも9アミノ酸、例えば、9aa(適切なMHCクラスI溝に直接結合する短いペプチド)と20~30アミノ酸(それらのMHCクラスIおよびII分子においてDCによって交差提示される長いペプチド)との間のペプチドストレッチとして、抗癌ワクチンとして使用され得る。このポリペプチドまたはこのcDNAに対する組換え体を提示する樹状細胞または人工抗原提示細胞は、患者または健常ボランティア由来の腫瘍または血液由来のナイーブまたはエフェクター記憶Tリンパ球をプライミングおよび増幅するためのプレートフォームとして役立ち得る。
【0075】
本発明による免疫原性組成物の特定の実施形態によれば、TMP由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸の配列は、MHC Iヒト分子によって提示される可能性が高いと同定されたペプチド、例えば配列番号53~187のペプチドである。本発明による特異的免疫原性組成物は、HLA-A2個体において免疫原性であることが実証されている配列番号55、56、62、63または66のペプチド配列を含む(実施例7)。別の具体的な実施形態によれば、免疫原性組成物は、配列番号63、配列番号188または配列番号209の配列を含むペプチド、またはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む。このような免疫原性組成物は特に、この患者が高いGPD1L発現レベル(mRNAまたはタンパク質レベルで測定される)を示す腫瘍を有する場合、HLA-A*0201患者における抗癌ワクチンとして特に有用である。
【0076】
本発明による特定の免疫原性組成物によれば、ポリペプチドは短いポリペプチド(9、10または11mer)である。このような短いペプチドを皮下注射すると、注射部位に存在するすべての細胞のMHC分子に直接結合する。本発明のこの実施形態によれば、いくつかのTMPエピトープを含むペプチドのカクテルを有利に使用することができる。同じHLA分子に特異的ないくつかのエピトープが一緒に使用される場合、エピトープは、対応するHLA分子への結合について競合状態にあることに留意されたい。反対に、異なるHLA制限エピトープ(例えば、HLA-A*0201、HLA-A*2402、HLA-B*0702または他のもの)の混合物を使用することによって、HLA結合についての競合は存在しない。このようなペプチドのカクテルの別の利点はより広範囲の患者において、すなわち、カクテル中に存在するエピトープに対応するHLA分子のいずれかを発現する個体において有効であることである。
【0077】
本発明による別の特定の免疫原性組成物によれば、ポリペプチドは、インビボで内在化され、抗原提示細胞によってプロセシングされるのであろう10~20アミノ酸に隣接する、配列番号53~187の中で選択される少なくとも1つの9~10TMP免疫原性ストレッチを包含する、20~50アミノ酸、好ましくは25~40アミノ酸の長いポリペプチドである。次いで、これらの細胞はそのフラグメントを提示し、それによって、TMPエピトープに対する免疫原性応答を誘発する。このような長いポリペプチドは、有利には宿主のMHCクラスIだけでなくMHCクラスII分子にも局所DCによって交差提示できる。例えば、キメラポリエピトープポリペプチド、すなわち、おそらくペプチドリンカーによって分離された、TMPのエピトープの連結を含むポリペプチドを使用することができる。もちろん、上記の段落で言及したのと同じ理由のために、長いポリペプチドは、有利には異なるHLA制限エピトープを含む。このようなキメラポリエピトープポリペプチドはまた、TMPとは異なる抗原由来のエピトープ(例えば、腫瘍抗原由来のエピトープ)を含み得る。
【0078】
本発明による免疫原性組成物はまた、有利には、適切なアジュバントを含む。当業者は、ペプチドの型およびアプリケーションの型に依存して、最も適切なアジュバントを選択する。本発明に従って使用することができる非限定的なアジュバントには、モンタニド、Flt3L、シクロホスファミド、DCおよびTLRまたはSTINGアゴニストが含まれる。
【0079】
一実施形態によると、免疫原性組成物は、配列番号1のTMPからの少なくとも9個の連続するアミノ酸の配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。このような組成物は、抗癌ワクチンとして有利に使用され得る。本発明によるポリヌクレオチド組成物の例には、裸のDNA、TMPをコードするmRNA、RNA負荷ナノ粒子および組換えウイルス(レンチウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルスなど)が含まれる。もちろん、ポリペプチド組成物中の異なるHLA分子に特異的なエピトープを混合する利点に関する上記の考察は、本発明による組成物中に含まれるべきポリヌクレオチドを設計する場合に適用される。あるいは、エピトープが患者のHLAハプロタイプに従って選択され、個人化され得る(表9)。
【0080】
別の態様によれば、本発明は、上記のような細菌組成物または本発明による免疫原性組成物でex vivoでパルスされた抗原提示細胞(APC)を含む細胞組成物に関する。このような細胞組成物は、癌患者の細胞治療に有利に使用することができる。
【0081】
別の態様によれば、本発明は、配列番号1のTMPに対して高い親和性を有するT細胞を単離するためのMHCマルチマーに関する。このようなMHCマルチマーにおいて、MHC分子は好ましくは配列番号53~187からなる群より選択されるペプチド、例えば、配列番号55、56、62、63および66のペプチドの中から選択される少なくとも1つのペプチド、または配列番号188もしくは209の少なくとも1つのペプチドに結合される。本発明によるMHCマルチマーはダイマーからオクタマー(例えば、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー)までのサイズの範囲であり、またはマルチマー当たりより多量のMHC(例えば、デキストラマー)を使用する。本発明による特定のMHC多量体はHLA-A*0201/KLAKFASVVマルチマー、HLA-A*0201/KLQKFASTVマルチマー、HLA-A*0201/KLQKFASVVマルチマーおよびHLA-A*0201/KLAKFASTVマルチマー(例えば、タートラマーまたはデキストラマー)である。
【0082】
本発明による別の細胞組成物は、配列番号1のTMPに特異的なCD4+またはCD8+T細胞を含む。このような組成物に含まれる細胞は細胞選別(例えば、上記のようなMHCマルチマーを使用する)、続いてエクスビボ増殖、またはTMPに対する高い結合活性を有するTCRをコードするcDNAでのTリンパ球の形質導入のいずれかによって得られ得る。このような組成物を得るために使用され得るプロトコルの例は、以下の実施例10および11に開示される。
【0083】
既に言及したように、上記の免疫原性組成物および細胞組成物は、癌を処置するために使用され得る。そのような治療において、それらは、単独で、または上記のようなペプチドもしくはヌクレオチドワクチンと組み合わせて、および/または化学療法などの抗腫瘍治療、例えば、シクロホスファミドなどのアルキル化剤、または免疫チェックポイント阻害剤、特に抗PD1/PD-L1/PD-L2抗体と組み合わせて使用することができる。
【0084】
本発明はまた、癌を治療するための、配列番号1のTMPと少なくとも90%、好ましくは少なくとも95~98.7%の同一性を有するタンパク質を発現するバクテリオファージの使用に関する。このようなバクテリオファージは好ましくは薬学的に受容可能な組成物で処方され、これは経口または腫瘍内で投与され得る。
【0085】
本発明のバクテリオファージ組成物の特定の実施形態によれば、バクテリオファージは、配列番号2のヌクレオチド配列またはそれに対して少なくとも90%または95%の同一性を有する配列を含むゲノムを有する。
【0086】
癌患者を治療する場合、本発明によるバクテリオファージ組成物は有利には免疫チェックポイントを遮断する薬物と組み合わせて、例えば、抗PD1/PD-L1/PD-L2抗体と組み合わせて投与することができる。
【0087】
以下の実験の部分で説明されるように、本発明者らは、HLA-0201拘束性エピトープKLAKFASVV(配列番号63)がグリセロール-3リン酸デヒドロゲナーゼ1様タンパク質(GPD1L、3p22.3上にコードされる遺伝子)のエピトープ(KLQKFASTV、配列番号188)と78%の配列相同性を共有することを見出し、TMPファージ特異的TCRと、GPD1Lを過剰発現する自己組織または腫瘍組織との間の交差反応性が本発明の文脈において送達されるファージの抗癌有効性を説明すると考えられる。したがって、本発明の細菌組成物、免疫原性組成物、細胞組成物およびバクテリオファージ組成物はGPD1Lを過剰発現する腫瘍、すなわち、対になった正常組織において発現されるレベルよりも優れたGPD1LのmRNAレベルを有する腫瘍(例えば、肺癌対周囲の「健康な」肺実質)を治療するのに特に有用である。GPD1Lを過剰発現する腫瘍は実際に、E.hirae 13144もしくはEH IGR7もしくはEH IGR11、または3つの株すべての組み合わせ、または配列番号1のTMPのための任意の他の細菌組換え体、または配列番号63を含むそのフラグメントを用いた経口療法に、TMPファージ関連HLA拘束性ペプチドもしくは核酸もしくは他のワクチン様式による皮内追加免疫の有もしくは無にかかわらず、選択的に適格であると考えられる。これは、肺癌、黒色腫、消化管の腫瘍、膀胱癌、RCCおよび乳癌、または胎児抗原を発現するあらゆる腫瘍に適用される。
【0088】
本発明の別の態様は抗腫瘍薬を同定するためのスクリーニング方法であり、これは、CNCM I-4815株(または配列番号2のプロファージと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%または95%の同一性を有するプロファージゲノムを保有する任意の他の細菌株)由来の細菌とインキュベートされる場合に、配列番号1のTMPを含むファージの溶解サイクルを誘発する薬物候補の能力を評価することを含む。この方法を実施する場合、当業者は、異なる濃度の薬物候補を使用し得、そして培養のいくつかの時点でファージ切除を測定し得る。
【0089】
本発明はまた、患者が化学療法または免疫チェックポイント遮断による処置に対して良好な応答者である可能性があるかどうかを決定するための治療学的方法に関し、全て、処置に対する患者の応答におけるCNCM I-4815株によって発現されるファージTMPタンパク質の重要性を示す以下に開示される結果に基づいている。これらの方法は、NSCLC、RCC、膀胱癌、膵臓癌、大腸癌および乳癌のような癌を有する患者が化学療法または免疫チェックポイント遮断による治療に対する良好な応答者である可能性が高いかどうかを決定するために特に有用である。より詳細には、このような方法がICBによる免疫療法の前に、NSCLCまたはRCCの診断時の患者に有利に使用され得る。
【0090】
本発明のこの態様の一実施形態によれば、本発明のセラノスティック方法は、前記患者からの生物学的試料において、配列番号1のTMPと少なくとも80%、90%または95%の同一性を有する配列の存在を評価することを含む。この方法によれば、患者は、そのような配列が試料中に存在する場合、治療に応答する可能性が高いと考えられる。この方法を実施するために使用できる生体試料の非限定的な例は、腫瘍ゲノム、腫瘍内細菌負荷、糞便ファージ、ファージを含む糞便細菌、糞便試料、気管支肺胞試料、頬試料および痰である。
【0091】
より具体的には、この方法が特定の配列のPCR増幅によって実施することができ、以下の工程を含む:
(i)患者の便検体を好気性条件下で許容培地で培養し、腸球菌のコロニーを分離できるようにすること、
(ii)配列番号1のフラグメントに特異的なプライマーの対を用いて、いくつかの培養可能な単離コロニーに対してPCRを実施すること、および
(iii)増幅フラグメントを検出すること。
【0092】
より正確には、工程(ii)では各E.gallinarum、E.hiraeおよびE.faecalis分離便コロニー内、またはそのうちの少なくとも3~5個でPCRが行われ得る。例えば、PCRは、配列番号191および192のプライマーを用いて実施され得、1026bpのアンプリコンを生成する。
【0093】
本発明はまた、例えばフローサイトメトリーまたはTMPテトラマー結合Tリンパ球によって、前記処置の間の循環CCR9+CXCR3+ CD8+T細胞のレベルを測定することを含む、患者が化学療法または免疫チェックポイント遮断による処置に対して良好な応答者である可能性があるかどうかを決定する方法に関するものであり、前記レベルが所定の閾値を超える場合、患者は、処置に応答する可能性がある。
【0094】
特定の実施形態によれば、上記のMHCマルチマーは、癌患者由来の生物学的サンプル中の、配列番号1のタンパク質に特異的なT細胞の存在を評価するために使用される。試料中のこのようなT細胞の存在は、患者が治療に応答しそうであることを示す。より詳細には、この方法がHLA-A*0201患者が化学療法または免疫チェックポイント遮断による処置に対して良好な応答者である可能性があるかどうかを評価するために実施される場合、HLA-A*0201/配列番号209マルチマーが使用され得る。
【0095】
別の実施形態によれば、本発明のセラノスティック方法は腫瘍中のGPD1L mRNAのレベルまたはGPD1Lタンパク質のレベルを評価することを含み、前記レベルが所定の閾値を超える場合、患者は治療に応答する可能性が高い。
【0096】
もちろん、医師または熟練した技術者は例えば、腫瘍におけるGPD1L発現レベルおよびKLAKFASVV(配列番号63)に特異的なT細胞の存在、またはGPD1L発現レベルおよび配列番号1のTMPと高いパーセンテージの同一性を有する配列の存在の両方を評価することによって、患者が治療に応答する予後を精緻化するために、上記の方法を組み合わせ得る。
【0097】
上記のような治療法を実施する場合、患者が化学療法または免疫チェックポイント遮断による治療に応答する可能性が高いと同定されない場合、本発明による細菌組成物によるプロバイオティック治療を患者に有利に投与して、治療に応答する機会を増加させることができる。患者の応答を増加させるための別のプレコンディショニング治療は、上記のような免疫原性組成物でのワクチン接種である。
【0098】
本発明の他の特徴はまた、本発明の枠組みで実施され、その範囲を限定することなく、必要とされる実験的支援を提供する生物学的アッセイの以下の説明の過程で明らかになるのであろう。
【実施例】
【0099】
本発明を説明する実験のいくつかは以下の実施例において2回記載され、過去数年間に本発明者らによってなされた継続的な研究努力を示し、これはE.hirae株13144、IGR7およびIGR11の効果を説明するメカニズムのより正確な知識、ならびに抗腫瘍特性を有する新たに操作された株の設計を導いた。
【0100】
材料及び方法
【0101】
図1~26に示す各実験について、実験を実施するために使用した材料および方法を図の凡例に詳述する。
【0102】
以下の表は、以下の実施例1~11で言及されるE.hirae株を要約する。
【表1】
表1:本研究で使用した株。「IGR」と呼ばれる菌株は、2017年にGustave Roussy、VillejuifでU1015 INSERMによって、ニボルマブを二次治療として治療されることになると診断された非小細胞肺癌患者から匿名で分離された。708はINRAからのものであるが、元々は10年以上前にスペイン人の協力者から送られたものである。他のすべての株は、共生および病原性腸球菌の参考センターであるCHU de Rennes - Hopital Ponchaillou-Service de Bacteriologie-Hygiene hospitaliere-2 rue Henri Le Guilloux - 35033 RENNES CedexのVincent Cattoir博士からのものである。
【0103】
以下の材料および方法もまた、以下の実施例12~16に報告される実験を実施するために使用した。
【0104】
細胞培養、試薬および腫瘍細胞株
【0105】
MCA-205 WTを、10% FCS、2mM L-グルタミン、100 UI/mlペニシリン/ストレプトマイシン、1mMピルビン酸ナトリウムおよびMEM非必須アミノ酸を含むRPMI 1640(以下、完全RPMI 1640と呼ぶ)中、5% CO2と共に37℃で培養した。全ての試薬は、Gibco-Invitrogen(Carlsbad、CA、USA)から購入した。
【0106】
マウス
【0107】
すべての動物実験は、フランスおよびヨーロッパの法律および規則に従って実施した。地域の施設委員会は、すべてのマウス実験を承認した(許可番号:2016-109-7450)。実験は、政府および機関のガイドラインおよび規則に従って行った。雌C57BL/6は、Harlan(フランス)から購入した。マウスは7~12週齢で使用した。すべてのマウス実験は、動物が特定の病原体のない状態で飼育されているGustave Roussy Cancer Campusの動物施設で行われた。
【0108】
抗生物質治療
【0109】
マウスを、マウスの無菌飲料水に添加したアンピシリン(1mg/ml)、ストレプトマイシン(5mg/ml)、コリスチン(1mg/ml)(Sigma-Aldrich)およびバンコマイシン(0.25mg/ml)を含有する抗生物質溶液(ATB)で3日間処理した。抗生物質活性は、COS(5%ヒツジ血液を含むBD Columbia寒天)プレート上で、0.1g/mlのBHI+15%グリセロールに再懸濁した糞便ペレットを、好気性および嫌気性条件下で、37℃で48時間培養することによって確認した。細菌移植実験の文脈において、マウスには、翌日に細菌移植を受ける前に3日間のATBを、動物栄養針を用いて強制経口投与した。
【0110】
腫瘍負荷および治療
【0111】
同系のC57BL/6マウスに0.8×106 MCA‐205 WT肉腫細胞を皮下移植し、腫瘍が20~35mmに達した時点でCTX(100mg/kg)で腹腔内(i.p.)処理した。実験設定に応じて、マウスに1週間隔で1回または3回注射した。腫瘍の大きさは3日間毎にノギスの手段により日常的にモニターした。
【0112】
専用の共生種による腸内コロニー形成
【0113】
Enterococcus hirae 13144は、当研究室でCTXで処理したSPFマウスの脾臓から元々単離された。E.hirae 708はINRA(P. Langella)によって提供されたが、E.hirae 13344、ATCC9790はCHU de Caen、フランスのCattoir教授によって提供された。L. plantarumは、フランスのパスツール研究所リポジトリのIvo Gomperts Boneca教授から提供されました。E.hirae IGR株はすべて、患者のインフォームドコンセントおよび地域のIRBの承認(Oncobiotics試験)に従い、当研究室のNSCLC患者の便から分離された。すべての細菌を、好気性条件下、37℃で24時間~48時間、COSプレート上で増殖させた。ATB前処理マウスのコロニー形成は、1×109細菌を含む懸濁液100μLを経口強制経口投与することによって行った。細菌強制経口投与のために、108 CFU/mLの懸濁液を、蛍光分光光度計(エッペンドルフ)を用いて、PBS中600nmの光学濃度で得た。実験設定に応じて、各マウスについて2または6回の細菌強制経口投与を行った:最初はCTX注射と同日、次いでCTX注射の24時間後。コロニー形成の有効性は、強制経口投与の48時間後に糞を培養することによって確認した。糞ペレットを採取し、0.1g/mlでBHI+15%グリセロールに再懸濁した。糞便の連続希釈物をCOSプレート上にプレーティングし、好気性および嫌気性条件下で37℃で48時間インキュベートした。48時間後、特定の細菌の同定を、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)質量分析計(Andromas、Beckman Coulter、France)を使用して達成した。
【0114】
骨髄由来樹状細胞の培養・増殖
【0115】
8~12週齢の雌C57Bl/6 WTマウスの大腿骨および脛骨から骨髄前駆体をフラッシングすることにより骨髄由来樹状細胞(BM‐DC)を作製した。骨を無菌PBS中に収集し、アルコールおよびIscove培地(IMDM、Sigma-Aldrich)浴中で洗浄し、骨の四肢を切断し、26G針を使用して洗い流した。赤血球溶解後、細胞を、10%のFCS + 2mM L-グルタミン+100UI/mlペニシリン/ストレプトマイシン+50μM 2-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich)を補充したIMDM(本明細書では完全IMDM培地と呼ぶ)中で0.5×106/mlで培養し、40ng/mlのGM-CSF(GM-CSFトランスフェクト細胞J558の上清)および10ng/mlのBM-DC用組換えインターロイキン-4(IL-4)(Peprotech製)で処理した。細胞を3日目に分割し、7日目または8日目の実験に使用した。
【0116】
ELISpot IFNγによる脾臓CD8+T細胞上のメモリーTC1免疫応答およびH2-Kb拘束性ペプチドの試験
【0117】
IFN-γ ELISPOTアッセイを、96ウェルPVDF底部滅菌プレート(Millipore MSIP S4510)中で、IFN-γ ELISPOTキット(Cell sciences、Newburyport,Etats-Unis)を製造者の指示に従って使用することによって行った。エタノール35%によるPVDF膜活性化後、プレートをIFN-γに対する捕捉抗体で一晩コーティングし、洗浄した後、ブロッキング緩衝液を2時間インキュベートした。BM-DC細胞(1×105/ウェル)を熱不活性化(65℃で2時間)細菌株(E.hirae 13144、E.hirae 708、E.hirae 13344およびL.plantarum)に感染多重度1:10(MOI)で感染、またはペプチド(20μg/ml)でパルスし、CD8+T細胞(2×105/ウェル)と一緒に添加し、37℃で20時間インキュベートした。
【0118】
次いで、細胞を除去し、プレートを、1時間30分の間にIFN-γに対する検出抗体(ビオチン化)で、そして1時間の間にストレプトアビジン-アルカリホスファターゼで展開した。最後に、ストレプトアビジンの基質(BCIP/NBT緩衝液)を5~20分間インキュベートした。CTL Immunospot Analyzer(ドイツ)を用いてスポットを計数した。
【0119】
マウスワクチン接種
【0120】
DC分化後、これらのDCをポリI:C(10μg/ml、Invivogen)で一晩活性化した後、熱不活性化(65℃で2時間)細菌株(MOI 10)で感染させるか、またはペプチド(20μg/ml、ペプチド2.0)でパルスした。細菌との6時間の培養またはペプチドとの1時間の培養の後、BM-DCをPBSで3回洗浄した後、マウスの右側腹部に皮下注射した(マウスあたり1.5×105細胞)。マウスに10日間隔で2回ワクチン接種し、2回目のワクチン接種から4週間後に左側腹部にMCA-205腫瘍細胞を最小限の腫瘍形成用量で負荷した。
【0121】
フローサイトメトリー分析
【0122】
腫瘍のない実験では、CTXの注射の7日後に脾臓を採取した。腫瘍増殖実験では、脾臓、腫瘍および腫瘍排出リンパ節を、MCA-205腫瘍を有するマウスへのCTXの最初の注射の7、14および21日後の異なる時点で採取した。切除した腫瘍を小片に切断し、25μg/mLのリベラーゼ(商標)および150 UI/mLのDNase1(Roche)を含有するRPMI培地(37℃で30分間)中で消化し、次いで、100および40μm細胞ストレーナー(BD)を使用して2回粉砕し、濾過した。リンパ節および脾臓をRPMI培地中で粉砕し、続いて70μm細胞ストレーナーを通して濾過した。200万個の脾細胞、腫瘍細胞またはリンパ節細胞を、精製した抗マウスCD16/CD32(クローン93;eBioscience)と共に4℃で15分間プレインキュベートした後、膜染色した。死細胞は、Live/Dead Fixable Yellow dead cell stain kit(Life Technologies)を用いて除外した。CD3(145-2C11)、CD4(GK1.5)、CD8(eBioH35-17.2)、CXCR3(CXCR3-173)、CCR9(CW-1.2)、TMP特異的テトラマー(BD、BioLegend、eBioscience and Cliniscience)に対する抗マウス抗体を用いた。染色した試料をCanto II 7色サイトメーター(BD)で取得し、FlowJoソフトウェア(Tree Star、Ashland、OR、USA)を用いて分析を行った。
【0123】
HLA-A02
*
01拘束性TMPエピトープに対するヒトT細胞応答
【0124】
健康なボランティア(EFS、Etablissement francais du sang)から細胞除去コーンを回収し、Ficoll Hypaque勾配を用いて末梢血単核細胞(PBMC)を分離した。抗HLA‐A2抗体を用いたフローサイトメトリーにより決定したHLA-A02*01ハプロタイプを有するドナーのみを選択した。PBMCを洗浄し、磁気ビーズ分離のために分離培地(PBS、1mM EDTA、2%ヒトAB+血清)に再懸濁した。CD14+単球細胞(ヒトCD14 MicroBeads、Miltenyi)を75×106 PBMCから濃縮し、10%ヒトAB+血清、1%2mmol/Lグルタミン(GIBCOインビトロゲン)、1000IU/ml GM-CSFおよび1000IU/ml IL-4(Miltenyi)を補充したIMDM中で0.5×106/mlで培養した。細胞を3日目に分割し、6日目または7日目の実験に使用した。単球を96ウェルプレートに1 ×105細胞/ウェル で単独またはペプチド(20μg/ml)の存在下のいずれかで播種し、37℃、5% CO2で2時間インキュベートした。残りの自己PBMC画分を、CD8+ T細胞(CD8+ T細胞単離キット、ヒト、Miltenyi)について濃縮した。濃縮CD8+ T細胞を洗浄し、計数し、10%ヒトAB+血清、1% 2 mMol/Lグルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(GIBCO Invitrogen)および50 U/mL IL-2(プロロイキン)を補充したRPMI-1640中に1×10 5細胞/ウェルで再懸濁した。単球-ペプチド/T細胞共培養物を、37℃、5% CO2で1週間インキュベートした(培地を2日ごとに交換した)。次に、細胞のプールを96ウェルELIspotプレートに2×105細胞/ウェルで播種し、ペプチド(20μg/ml)有りまたは無しで、または陽性対照として抗CD3/抗CD28被覆ビーズ(1μL/ml、Dynabeads T-Activator、Invitrogen)を用いて、37℃で20時間再刺激した。IFN-γ ELISPOTアッセイは、製造者の指示に従って、IFN-γ ELISPOTキット(Cell sciences、Newburyport,Etats-Unis)を使用することによって、96ウェルPVDF底部滅菌プレート(Millipore MSIP S4510)中で行った。
【0125】
PCR法によるファージTMP配列の便検出
【0126】
我々は、腸球菌コロニーの分離を可能にするために、好気性条件と許容培地で数回希釈した後、(患者の)便または回腸材料(マウス)を培養した((Samb-Ba et al., 2014)に記載されている手順に従って)。我々は、各単一の培養可能なEnterococcusコロニーにおけるTMP配列のPCRを実施した。1つのコロニーを100μlのヌクレアーゼを含まない水に入れて細菌DNAを放出させ、5μlのDNA、12.5μlのPCRマスターミックス(Thermoscientific)、5μlのヌクレアーゼを含まない水、および1.25μlの各TMPプライマー(20μM)を用いてPCRを行った。PCR産物を、臭化エチジウムを含有する1.5%アガロースゲル上で分離し、UV暴露によって明らかにした。プライマーの配列は、順方向5’-ACTGCAGCCGTAAAATGGGA-3’(配列番号191)および逆方向5’-TCCGTATCGTTTGCCAGCTT-3’(配列番号192)(アンプリコン1026bp)である。
【0127】
TMPを発現するE. coliの生成
【0128】
P23プロモーター配列を含有するDNAフラグメントを、2つの相補的プライマー(5’-CAATAAAAAATCAGACCTAAGACTGATGACAAAAAGAGCAAATTTTGATAAAATAGTATTAGAATTAAATTAAAAAGGGAGGCCAAATATAG-3’(配列番号193)および5’-GATCATATTTTGCCCTTTGCCCTTTTTTTAATTAATACTATTTAATTCAATTTCAATTTCTAAATTTGCTTTCTTGTCATGTCTTCATGTCTTAGTCTTCATGTCTTAGTCTTCATGTTTTTTTTGCATTTTGCATG-3’(配列番号194))をアニーリングすることによって生成した。次いで、この配列をSphI/BamHI消化ベクターpDL278(Addgene 46882、Gary Dunny(LeBlanc et al.、1992)からのギフト)に挿入して、ベクターpDL278-P23を生成した。TMP遺伝子の一部(TMPのN末端1185ヌクレオチドであって、エピトープTSLARFANI(配列番号13)を含み、C末端のFLAGタグに融合されている)を、E.hirae 13144ゲノムDNA(5’-TCCGGATCCATGGCACAAAGTAAAACAGTCAAAGCG-3’(配列番号195)5’-CAGGAATTCTTACTTGTCGTCATCGTCTTTGTAGTCACGTAGTAAACTATCACGTAATCGAACTTC-3’(配列番号196))から増幅させ、BamHI/EcoRI消化ベクターpDL278-P23に挿入して、ベクターpDL278-P23-TMP-FLAGを生成した。QuikChange Lightning Kit(Agilent)を用いてエピトープにおける突然変異を導入した。プライマー5’-AACGAGCTAAGGCAGTAGCAGCTGTATCTGCAGAC-3’(配列番号197)および5’-GTCTGCTGCCTCGTT-3’(配列番号198)を用いて、2位(SからA、pDL278-P23-mut2-FLAG)を変異させ、プライマー5’-ATTAGCAAAACGAGCGAAGGAAGTAGCAGCTGTATCTG-3’(配列番号199)および5’-CAGATACAGCTGCTACTTCCTTCGCTCGTTTTGCTAAT-3’(配列番号200)を用いて、3位(LからF、pDL278-P23-TMP-mut3-FLAG)を変異させた。対照プラスミドpDL278-P23-EGFPを生成するために、EGFPを、pCIB1(deltaNLS)-pmGFP(Addgene 28240、Chandra Tucker(Kennedy et al.、2010)からのギフト)から、プライマー5’-CTTGGATGGCAAGGCGAG-3’(配列番号201)および5’-CAGGAATTCCTACATAATTACACACTTTGTC-3’(配列番号202)を使用して増幅し、そしてBamHI/EcoRI消化ベクターpDL278-P23に挿入した。プラスミドを化学的にコンピテントな大腸菌DH5α (NEB)に形質転換し、正しい挿入物を有するプラスミドの存在を、配列分析(5’-CCCAGTCACGACGTTGTAAAACG-3’(配列番号203)および5’-GAGCGGATAACAATTTCACACAGG-3’(配列番号204))によって確認した。E.coliにおけるEGFPおよびTMP-FLAGの発現を、それぞれ、GFP(Cell Signaling,2956)またはFLAG(Sigma-Aldrich、F7425)を標的とする抗体を使用するウェスタンブロット分析によって確認した。
【0129】
MCA205細胞におけるマウスPsmb4のCRISPR/Cas9媒介突然変異
【0130】
野生型MCA205細胞株を、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA、USA)から購入し、そして10% FBS(hermo Fisher Scientifc、Inc.)、100 U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientifc、Inc.)を補充したRPMI-1640培地(Thermo Fisher Scientifc、Inc.、Waltham、MA、USA)中に37℃で維持した。CRISPRノックイン変異のために、Zhang labによって開発されたCRISPRデザインツール(http://CRISPR.mit.edu/)を使用することによってgRNA(配列AGATATTGCGGAAACGAGCC(配列番号205))を設計した。設計された配列を含むオリゴヌクレオチドを合成し(Sigma)、CBhプロモーター下にあるCas9遺伝子(ヒトコドン最適化し、選択を可能にする2A-GFPと融合)と、U6プロモーター下でクローニングされたsgRNAとを含むpX458バックボーン(Addgene #48138(Ran et al.、2013))にライゲーションした。変異部位を含む相同テンプレート(添付された配列)を、Invitrogen GeneArt Gene Synthesis(Thermo Fisher Scientifc、Inc.)によって合成した。クローニングされたpX458プラスミドおよび合成されたホモロジーアームを、メーカーのプロトコールに従ってリポフェクタミン3000(Thermo Fisher Scientifc、Inc.)の手段によってMCA205細胞に同時トランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、GFP陽性細胞を96ウェルプレートに、単一細胞として選別した後、生存クローンを、一方は-80での凍結保存のため、他方はゲノムDNA抽出のために、二重条件で増殖させた。クローン由来のゲノムDNA中の標的化領域を、Phusion(登録商標)High-Fidelity PCR Master Mix(New England BioLabs;pswich、MA、USA)およびプライマー5’CTCAGGGGACCTTTTCACGA3’(配列番号206)および5’CCCACTCCCTGTTCTACACA 3’(配列番号207)を使用するPCRによってさらに増幅し、そしてMonarch(登録商標)DNAゲル抽出キット(New England BioLabs)で精製した後、Eurofins Genomics GmbH(BERSBERG GERMANY)に送って、プライマー5’GGACCTTTTCACTGATTCAGG3’(配列番号208)で配列決定した。配列結果に従い、陽性クローンを増殖させ、配列を確認するためにDNA抽出に供した。デザインされた突然変異を保有していないトランスフェクションされた単一細胞クローンを「WT」クローンとして用いた。
【0131】
ゲノム配列決定と解析
【0132】
5つのE.hirae(13144、708、13152、13344およびEH-17)株の全ゲノム配列を、PacBio technology(GATC Biotech、Konstanz、Germany)を用いて決定した。他の15のE.hirae単離株から、メーカーの推奨に従い、Quick-DNA fungal/bacterial miniprep kit(Zymo Research、Irvine、CA)を用いてゲノムDNAを分離した。DNA剪断後、Illumina用NEBNext Ultra DNAライブラリー調製キット(New England Biolabs、Ipswich、MA)を用いてDNAライブラリーを調製し、Illumina MiSeqプラットフォームおよびMiSeq試薬キットバージョン3を用いてペアエンド読み取り(2×300bp)として配列決定した。Trimmomatic(Bolger et al.、2014)を用いてイルミナの読み取りをトリミングし、Fastx-toolkit(http://hannonlab.cshl.edu/Fastx_toolkit/)を用いて質フィルタリングし、SPAdes(Bankevich et al.、2012)を用いてアセンブルした。タンパク質配列は、prokka v1.11ソフトウェア(Seemann、2014)を用いて予測した。PHASTソフトウェアを用いてプロファージ領域を検出した。予測されたタンパク質は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)非重複(NR)データベースに対してBLASTpを用いて注釈を付けた。
【0133】
系統ゲノム学と比較ゲノム学
【0134】
20のE.hiraeゲノム間の一塩基多型を、parsnpプログラム(Treangen et al.、2014)および13144ゲノム配列を参考として用いて調査した。系統解析は、20ゲノムのコアゲノムに保持されている47,303の多型部位を考慮して行った。最尤系統発生を、Fastreeを用いて構築した(Guindon et al.、2010)。系統樹を、figtree(http://tree.bio.ed.ac.uk/ software/figtree/)を用いて可視化した。E.hirae20株の完全プロテオーム配列をBlastPおよびClustalWを用いたペアワイズアラインメントを用いて比較した。発明者らは70%のアミノ酸配列同一性および50%の配列カバー率の保存的パラメータ値を有するすべての予測遺伝子の翻訳タンパク質配列について、orthoMCL(Li et al.、2003)を用いてE.hirae相同遺伝子をクラスター化した。異なるユニークなコアゲノムの決定は、orthoMCLによって見出された相同性クラスターに基づいていた。
【0135】
統計解析
【0136】
データ分析および表現は、Prism 6(GraphPad、San Diego、CA、USA)のいずれかを用いて行った。腫瘍の大きさの差を、Anovaまたは専用ソフトウエア(https://kroemerlab.shinyapps.io/TumGrowth/)のいずれかを用いて計算した。簡潔には、腫瘍増殖を、対数前処理腫瘍表面に適用される線形混合効果モデリングに供した。P値は、腫瘍増殖の傾きと切片(対数スケールで)の両方が対象の治療群間で異なっているかどうかを共同で検定することによって算出した。Kaplan-Meier法を用いて生存確率を推定し、中央値または最適カットオフアプローチを用いて連続変数の最良カットオフを選択した。生存曲線を、log-rank検定を用いて評価した。報告された検定はすべて両側検定であり、P値<0.05で有意とみなされた。正規化遺伝子発現値(FPKM-UQ)および対応する臨床データをTCGAデータポータルからダウンロードした。生存分析のために、患者は癌型データセット当たりのGPD1Lの発現中央値および予測HLA対立遺伝子によりグループ分けされた(Charoentong et al.、2017)。全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)をCox回帰分析で計算した。腫瘍浸潤免疫細胞組成物を、CIBERTSORT(絶対モード)(Newman et al.、2015)を用いて決定し、Pearson相関を用いて遺伝子発現と比較した。
【0137】
実施例1:E.hiraeの異なる株は、異なる免疫原性潜在能および抗腫瘍効果を示す
【0138】
発明者らはまず、広域スペクトル抗生物質の14日間投与によって引き起こされたものよりも、より良い腸内菌共生バランス失調の生理学的条件で、発明者らのE.hirae分離株を試験した。本発明者らは実際に、腸マイクロバイオームのレパートリーの逸脱を示すか否かにかかわらず、2人の乳癌患者(および明確な予後)からの糞便(FMT)をATB処置レシピエントに移し、(腸内菌共生バランス良好(eubiotic)マウスに示されるように)CTXの完全な効力の回復を試みる異なる系統の補助的E.hiraeを用いて、それらの腸内菌共生バランス失調を補償した(
図1)。腸内菌共生バランス失調BC患者由来のFMTは腸内菌共生バランス良好(eubiotic)同腹児と比較してCTXに対する耐性を付与したが(
図2A-B)、EH13144生菌は有効性の回復に非常に有効であった(
図2C-E)。別のBC患者(明白な腸内菌共生バランス失調を示さない)からのFMTの第2の例(
図3A-B)では、生きているEH13144によって媒介される効果も有意であった(
図3C-D)。しかし、同様の状況で、肺癌患者の便から培養したE.hiraeの他の株(IGR1およびIGR11)は免疫原性を示さなかったが(
図4A-C)、EH13144と同程度にBM-DCによるIL-1βおよびIL-12産生を誘導するのに有効であった(図には示していない)。
【0139】
さらに、肺癌患者の便から培養したE.hirae(IGR4およびIGR7)も13144で観察されたように免疫原性を示したが、EH10815は抗腫瘍効果を媒介しなかった(
図4D)。さらに、EH13144、IGR4およびIGR7の組み合わせは、EH13144誘導化合物よりも優れている(
図5)。
【0140】
興味深いことに、低温殺菌されたEH13144は、その生きた対応物よりもはるかに効果が低く、腸内菌共生バランス失調のFMTにおいてCTX殺腫瘍活性を回復することができなかった(
図6)。
【0141】
発明者らは、EH13144がATBだけでなくFMT誘発患者の腸内菌共生バランス失調においてMCA205肉腫に対するCTX免疫および殺腫瘍活性を増強するユニークな特性を有すると結論する。
【0142】
実施例2:E.hirae 13144は、EH708と交差反応性の腸間膜リンパ節および脾臓におけるCD8+Tc1細胞を増幅する
【0143】
EH13144はシクロホスファミドとのアジュバント役割を果たし、T細胞およびIFNγ依存的様式で抗腫瘍免疫応答および抗癌効果をブーストする(Daillere et al.、2016)。腸間膜リンパ節(mLN)および脾臓からの二次リンパ器官におけるT細胞免疫応答の動態を解析することにより、EH13144の免疫原性のメカニズムを解明した(
図7Aおよび7D)。EH13144ならびにE.hirae 708は、両方とも、1週間後のmLNおよび2週間後の脾臓の両方においてCD8+T細胞の蓄積を誘導することができた(
図7Bおよび7E)。しかし、EH13144は効率的な抗腫瘍免疫応答を誘導するが、E.hirae 708はそうすることができない(Daillereら(2016)の
図1D)。EH13144はまた、mLNのCD4+T細胞プールを増幅した(
図7C)。さらに、EH13144は脾臓(
図7F)および腫瘍床(
図8)においてCD8
+ CCR9
+ CXCR3
+ の蓄積を誘導する。
【0144】
このCD8+T細胞増殖の特殊性を分析するために、種々のEH単離株(13144、EH708およびEH17またはL.plantarum)に感染した骨髄由来樹状細胞(BM-DC)を脾臓のCD8+T細胞に曝露した。共生特異的記憶CD8
+ T細胞応答を、Tc1免疫応答の特徴であるIFNγ陽性スポットの計数(
図9)により24時間後にELISPOTアッセイによりモニターした。興味深いことに、EH708およびEH13144のみが、それら自身の間の交差防御を伴う記憶Tc1免疫応答を誘導し得(
図10)、一方、EH17はそうすることに失敗し、Daillereら(Daillere et al.、2016)によって報告されたEH17の貧弱な防御抗腫瘍効果を裏付ける。
【0145】
免疫組織化学的に中和抗CD8抗体の有無で腸管炎症性病変をモニタリングし、結腸粘膜のCD8
+ T細胞浸潤を精査した(
図11A)。ヘマトキシリンエオシン染色結腸粘膜は、EH13144またはEH708を経口強制投与した後、CTX後に共生細菌を投与しない場合よりも多く浸潤したが、これらの浸潤は動物を中和抗CD8抗体のip投与によって前処置した場合に劇的に減少した(
図11B)。注目すべきことに、mLNまたは脾臓でプライムされたこれらのCD8
+ T細胞は遠隔腫瘍がなくても粘膜固有層に帰宅する傾向があるが、肉腫堆積が皮下に導入された場合はそうではない(
図18)。
【0146】
まとめると、これらの所見はシクロホスファミドとの関連でEH13144またはEH708を強制経口投与すると、脾臓のTh1だけでなく(Daillere et al.、2016)、腫瘍堆積が存在しない場合に結腸に戻るか、腫瘍床が発生した場合に腫瘍床に戻る可能性があるEH708およびEH13144(ただしEH17ではない)配列の両方を認識する全身性Tc1免疫応答も引き起こすことを示唆している。
【0147】
実施例3:EH特異的H-2K
b
拘束性ペプチドのスクリーニング:E.hirae 13144ゲノムは、TMPファージタンパク質中に免疫原性ペプチド配列を含む
【0148】
潜在的な9-mer MHCクラスI結合エピトープを同定するために、3つのE.hirae株(13144、708およびEH17)について全ゲノム差別分析を実施した。検索は、細胞内局在化(PSORTソフトウェアによる細胞壁および細胞外タンパク質の濃縮)、およびH2-K
bへの結合親和性(<50nM結合親和性、NetMHCソフトウェア)に焦点を当てた(
図12、表2~5)。
【表2】
表2:他の株には存在しないH-2b拘束性EH13144ペプチド
【0149】
【表3】
表3:他の株には存在しないH-2b拘束性EH708ペプチド
【0150】
【表4】
表4:他の株には存在しないH-2b拘束性EH17ペプチド
【0151】
【表5】
表5:H-2b拘束性EH13144/EH708共通ペプチド
【0152】
CTX処理マウスから単離したCD8+T細胞脾細胞を、プールした9merペプチドで再刺激して(群1~13、表6)、潜在的に免疫原性のエピトープをインビボで同定した。
図9に概説したものと同じプロトコールを用いて、本発明者らは、13144の免疫原性が群1(
図13A)のような他の群のペプチド(データは示さず)とは対照的に、群7の関連ペプチド(
図13B)に依存することを見出した。次に、群7を4つのH-2K
bペプチドに分割した(表7)。E.hirae 13144の免疫原性は、ファージテールレングステープメジャータンパク質(Tmp)内に存在し得る(表7)。実際、本発明者らは、TMP1およびTMP2ペプチドのみが記憶EH13144(708およびEH17ではない)誘導Tc1細胞によって高度に認識されることを発見した(
図13C)。注目すべきことに、EH10815株(EH13144と同じ2つのプロファージを保有していたが、TMP1の3位およびTMP2の2位と7位に変異を保有している(
図13D))は、想起応答を誘導せず(
図13E)、なぜこの細菌が有意な抗腫瘍効果を仲介できなかったのかを説明しうる。対照的に、EH13144と非常に高い配列相同性を共有するEHクローンIGR7で得られた結果は、想起応答を誘導する(
図13E)。
【0153】
【表6-1】
【表6-2】
表6:in vivo実験で用いたH-2b拘束性E.hiraeペプチド群
【0154】
【表7】
表7:免疫原性EHペプチド配列に対応するタンパク質
【0155】
TMP1特異的テトラマーの製造により、腫瘍のないマウスおよびEH13144、EH17、10815またはIGR7およびCTX処置を伴う経口強制投与後のマウスにおいて、mLN(
図14A)および脾臓(
図14B-C)中のTMP1特異的T細胞をモニターすることが可能になった。発明者らは、腸由来のT細胞(CCR9
+ T細胞)のみがEH13144およびIGR7に対するTMP1特異的T細胞であることを観察した(
図14)。さらに、担癌マウスでは、腫瘍流入リンパ節および腫瘍におけるTMP特異的テトラマー染色が、TMPエピトープ1プロファージ2特異的CD8+T細胞が腫瘍床に蓄積し、CCR9
+CXCR3
+ CTLに含まれることを示している(
図15)。
【0156】
テンペレートバクテリオファージは、形質導入を介して毒性、抗菌薬耐性遺伝子、免疫原性配列を新たな細菌宿主に伝達する細菌性ウイルスである(Weinbauer、2004)。ファージテールレングステープメジャータンパク質(Tmp)は多数のファージおよびプロファージに高度に保存されており、最も重要なのはサイフォウイルス科のファージであり、高度に保存されたトリプトファンおよびフェニルアラニンアミノ酸を固定された位置に有する様々な数のタンデムリピートを含む。サイフォウイルス科に属するファージはそのTmpにいくつかのモチーフを含んでおり(Belcaid et al.、2011;Piuri and Hatfull、2006)、その中でペプチドグリカン加水分解酵素は周囲の細菌の感染能を促進し、蘇生促進因子(rescuscitation-promoting factor)(Rpfs)を含む。Rpfsは、休眠菌の再活性化だけでなく、結核菌に対する先天性応答(Russell-Goldman et al.、2008)、ならびに同族の長期免疫応答(Commandeur et al.、2011)も調節していることに関連している。実際、結核菌 Rpfs T細胞エピトープは結核菌に対するヒト免疫応答において重要な免疫原であることが報告された(Commandeur et al.、2011)。
【0157】
実施例4:E.hirae 13144 Tmpペプチドまたは生菌による免疫化は、腫瘍負荷に対する防御を付与する
【0158】
1.5.105を用いた皮下ワクチン接種を行った BM-DCは、ポリI:Cで活性化され、続いて、TMPペプチドまたは生きたE.hirae 13144に曝露されて、MCA205肉腫または同系MCA38結腸癌に対して、10日間隔で、ナイーブC57BL/6動物を2回免疫する(
図16)。非パルスBM-DCまたはグループ1のペプチドに暴露されたBM-DCはMCA205による致死的負荷に対する防御を媒介するのに効率的ではなかったが、TMP1-TMP2に暴露されたBM-DCはMCA205に対する防御効果を生きた細菌と同様に効率的に顕著に伝えた(
図17)。
【0159】
発明者らは、E.hirae 13144の強制経口投与が、腸粘膜または腫瘍微小環境に戻ることができるmLNおよび脾臓において免疫応答を引き起こすという仮説を立てた。腸および腫瘍の免疫監視を結びつけるために、発明者らは、未処置マウスと担癌マウスにおいて、E.hirae 13144による連続経口強制投与によって誘発された相対的免疫浸潤を比較した。実際、発明者らはE.hirae 13144誘導CD8+T細胞依存性結腸炎症性病変(
図11)が腫瘍保有者において顕著に減少し、細菌の経口投与中の腸と腫瘍微小環境との間の競合を支持することを見出した(
図18)。
【0160】
実施例5: E.hirae 13144ゲノムは、サイフォウイルス科の2つの40.6-kbおよび39.2-kbプロファージ配列をコードする
【0161】
EH13144株および4つの他のE.hiraeゲノム(708、10815、13152およびEH17)を、Prokkaプログラムを使用して注釈付けした。各々の異なる株の遺伝子間の相同性関係を、>80%のアミノ酸同一性カットオフを有するBLASTPプログラムおよびRoaryソフトウェアを用いて評価した。5つのE.hiraeゲノムのコアゲノムアラインメントをPRANKプログラムを用いて実施した。PHASTERオンラインプログラムを用いてプロファージ領域を予測した。
【0162】
E.hirae株の比較分析では、12,748遺伝子のパンゲノムが得られた。コアゲノム(すべての株が共有する遺伝子のセット)は2,036のオーソロガス遺伝子(59%)から構成され、アクセサリーゲノム(すべてではないが一部の種に存在する遺伝子のセット)は570のオーソロガス遺伝子と923のユニーク遺伝子(個々の種に固有の遺伝子)から構成されていた。EH13144株は196のユニークな遺伝子をコードしていたが、13144株と708株は27のオーソロガスなタンパク質を共有していた(
図19A)。
【0163】
E.hirae 13144のゲノムにおける特殊性は、EnterococcusファージphiEf11およびStaphylococcusファージCNPxとそれぞれ配列相同性を示す2つのインタクトなプロファージ領域(40.6-kbおよびa 39.2-kb)をコードしていることである(
図19B)。40.6-kbプロファージは、5つのゲノム間で共有されている12遺伝子、株13144と708との間で共有されている16遺伝子、およびE.hirae 13144に特有のおよび8遺伝子を含む、57の遺伝子をコードしていた(
図20A)。39.2-kbプロファージは、5つのゲノムの間で共有されている7遺伝子、株13144と708との間で共有されている3遺伝子、およびE.hirae 13144に特有の22遺伝子を含む、65の遺伝子をコードしていた(
図20B)。両プロファージのゲノム構造はサイフォウイルス科に属することを示唆した。実際、2つのプロファージは、サイフォウイルスファージの特徴であるキャプシド、ポータルおよびテール構造をコードする遺伝子を保有している。2つのプロファージは38%のアミノ酸相同性を有するテールテープメジャータンパク質(TMP)をコードした。40.6-kbプロファージのTMPはE.hirae、Enterococcus villorumおよびEnterococcus faeciumプロファージ TMPと配列相同性を示し、それぞれ98.8%、96.7%および97.7%のアミノ酸同一性を示した。39.2-kbプロファージのTMPは、100%の相同性を有するEHクローンIGR7(CNCM I-5224)のみと配列相同性を示し(
図21、表8)、89.2%のアミノ酸同一性を有するE.faecalisプロファージTMPとは程度は低かった。他のファージ遺伝子との配列相同性にもかかわらず、2つのプロファージ全体は株13144で独自にコードされていた。最後に、TMP1およびTMP2ペプチドの両方は、第2のプロファージ(配列番号2)の同じファージテールテープメジャータンパク質(TMP)遺伝子の一部である。13144のTMP1はIGR7およびIGR11と100%の相同性を示したが、10815およびIGR1と88.89%の相同性を示した(3位における1つの突然変異)。13144のTMP2はIGR7とのみ100%の相同性を示し、10815およびIGR11とは77.78%の相同性を示した(それぞれ2位および7位または2位および4位における2つの突然変異)(
図21、表8)。
【0164】
【0165】
実施例6:E.hirae 13144細菌およびファージ配列は、ヒトにおいて3,000を超えるメタゲノムを含むMG参照カタログにおいて時折見出されている
【0166】
17の異なるデータセットからの合計3027のメタゲノムをスクリーニングした(
図29A)。大多数は腸マイクロバイオーム(便)であったが、口腔、皮膚、腟、痰も含まれていた。データセットのほとんどは、いくつかの非西洋人集団を含むすべての大陸をカバーする公的に入手可能である。また、発明者らはNicola Segataの未発表データの一部も含めた(最も顕著なのは、対になった母親/乳児被験体25例のうち、縦断的に追跡したもの)。E.hiraeゲノムとそのファージのカバー範囲(BOC)を試料の各々で評価した。BOCは、メタゲノム中の読み取りでカバーされるゲノムの割合を測定する。BOC 1.0は、参照株の全ゲノムがメタゲノムにあることを意味する。このスコアに基づいて、発明者らは、E.hiraeが2つの試料中に確実に存在すると確信して結論づけることができた。1つはモンゴル人の被験体からのものであり、もう1つはスウェーデン人の被験体からのものである(それぞれ0.9および0.75のBOC)。おそらくE.hiraeの存在を示す0.1~0.37のBOCを有する他の5つのサンプルが存在する。BOCが0.1未満では、E.hirae株の存在を特徴付けることができない。ファージ配列に関しては、E.hiraeについて陽性のモンゴル人被験体も配列番号2の13144からのプロファージ2を有するが、スウェーデン人は708からのプロファージ2を有するようである。ファージは細菌ゲノムよりも多くの試料に存在するようである。1つの興味深い症例は、生後1、3、および7日目の乳児からの3つのサンプル(サンプルCA_C10006IS2084FE_t1M15、CA_C10006IS2087FE_t2M15、CA_C10006IS2091FE_t3M15)におけるファージ13144の0.66 BOCでの存在である。これら3つのサンプルはE.hiraeを有していないが、別のEnterococcus種由来の別の株を有しているようである。このことは、このファージがE.hiraeのみに特異的ではないことを示唆しているかもしれない。
【0167】
実施例7:E.hirae 13144は、マウスだけでなくヒト(正常ボランティアおよび乳癌患者)においても免疫原性である:ヒトにおいて高い免疫原性のTMP特異的ペプチドを定義する
【0168】
E.hirae 13144はマウス株であるが、ヒト糞便メタゲノミクスとの研究アラインメントでその配列が回収されていることから、ヒト(正常ボランティアまたは乳癌患者)は(Daillere et al.、2016)で報告されているように、この株が提示したエピトープの一部に対して免疫応答を発現する可能性があると仮定した。
図22Aは、CD4およびCD8
+ T細胞の12~19%がE.hirae 13144に対する記憶IFNγギアT細胞応答を示すことができることを示しており、実際、このEH株はヒト細胞によって認識され得ることを示唆している。
図22Aはまた、BC患者の32人%がEH13144でパルスした単球に対して反応性を示さないCD4
+ T細胞を有し、一方52%がIL-10産生記憶CD4
+ T細胞応答を発達させたことを強調している。これは、記憶CD4
+ TH1細胞の大腸菌およびTCR架橋に対する反応性とは明らかに対照的である(
図22B)。ヒトPBMCまたはTILにおいて試験されるTmpの予測ペプチドを以下の表9に列挙し、それらの局在化を
図23に記載した。NetMHCソフトウェアを用いて評価したMHCクラスI対立遺伝子(<50nMに設定した閾値、Y軸)に対するそれらの結合能力を示す。各ペプチドおよび対立遺伝子について、記号は、9アミノ酸長(mer)ペプチドに対応する同定された配列の最初のアミノ酸を表す。次に、6人のHLA-A2+健康ボランティア(HV)からの想起反応のインビトロ刺激アッセイ(
図24A)により、PBMC上のすべてのHLA-A2拘束性Tmpエピトープを検証した(
図24C)。その結果、5つのペプチド(
図24Bに示されている)は、少なくともHVの50%において有意な反応性を示した(
図24D-E)。矢印は、最も有意なエピトープを示す(
図24F-G)。
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
表9:各HLAハプロタイプについて予測されるTmpのペプチド
【0169】
実施例8:in vitroでのEH13144におけるファージ切除
【0170】
ファージを切除し、それをE.hiraeの上清中に回収するための古典的な手順を使用して(
図25)(Duerkop et al.、2014)、本発明者らは細菌の増殖期にかかわらず、異なる温度(37℃および42℃)で、マイトマイシンC(1μg/ml)とのEH13144のインキュベーション後にプロファージ1および2の切除を観察したが、CTXは観察しなかった(
図26A)。上清のカプシド溶解(ファージDNA検出の感度を増大させる)後、自然状態でプロファージDNAが可視化されたことから、ファージも切除ストレスなしに放出できることが示唆された(
図26B)。
【0171】
実施例9:配列番号1のTMPをコードする遺伝子を有する新規株の同定
【0172】
20の異なるE.hirae株(下表10)のゲノムの配列を決定し、アラインメントした。注目すべきことに、2つの領域がインタクトである3つのプロファージ領域が免疫原性であることが証明されたIGR7株のゲノムにおいて同定され(上記の実施例1を参照のこと)、そしてこのゲノムがE.hirae 13144によってコードされる配列番号1のTMPと同じTMPをコードすることが見出された(表9)。この株は、2017年10月12日に番号I-5224でCNCMに寄託された。さらに、CTXでいくつかの殺腫瘍活性を媒介するのに有効であることが証明されたIGR11はまた、13144によってコードされる同じTMP1エピトープを有する(表9)。この株は2017年11月27日にCNCMに、番号I-5261でCNCMに寄託された。
【0173】
【0174】
実施例10:TMPに特異的なTILまたは血液T細胞の細胞選別および増殖
【0175】
いくつかのプロトコルを使用して、配列番号1のTMPに特異的なTILまたはT細胞を得ることができる。
【0176】
プロトコール1:免疫磁気細胞選別およびT細胞選別集団の増殖
【0177】
HLA-A*0201/TMPモノマー(20μg/ml)を、6.7・106ストレプトアビジン被覆ビーズ(Dynabeads M-280ストレプトアビジン、DYNAL、Compiegne、フランス)と共に室温で1時間インキュベートし、PBS/0.1% BSA中で洗浄する。5・106 PBMCを、モノマー被覆ビーズを用いて4℃で4時間回転させる(Bodinier et al.、2000)。10回洗浄した後、ポリクローナルT細胞刺激プロトコール(Jotereau et al.、1991)を用いてビーズ被覆細胞を増殖させる。続いて、細胞を、ヒツジ抗マウスIgG被覆Dynabeads(Dynal Biotec、Compiegne、France)と共に、4℃で4時間、穏やかに回転させながら1:1の比でインキュベートする。細胞/ビーズ懸濁液を6ウェルプレート中の培養培地中で37℃で一晩インキュベートし、ビーズを剥離させる。一晩インキュベートした後、ビーズを磁石によって抽出し、選別したリンパ球を、以前に記載されているように(Jotereau et al.、1991)、フィーダー細胞上に移す。簡単に述べると、2000ビーズ被覆T細胞/ウェルを、照射フィーダー細胞[LAZ EBV-B細胞(2・104/ウェル)および同種PBMC(105/ウェル)]と混合した96ウェルプレート中、IL-2(150 U/ml)およびPHA(15μg/ml)を補充した150μlの培養培地中に分配する。
【0178】
プロトコール2
【0179】
癌検体から採取した腫瘍検体をサイトカイン(IL-2、IL-15、IL-21)とともに培養し、TILを増殖させる。培養10日後、TILを抗CD3抗体(OKT3)および照射した同種末梢血単核細胞で刺激する(Meng et al.、2016に記載されている)。
【0180】
実施例11:Tリンパ球の形質導入によるTMPに特異的なT細胞の取得
【0181】
高結合活性TCRをコードするcDNAのβ鎖(HLA-A2または他のハプロタイプに対応するTMPプロファージ2エピトープについて)および/または高結合活性TCRをコードするcDNAのα鎖(HLA-A2または他のハプロタイプに対応するTMPプロファージ2エピトープについて)および当該TCRをコードするcDNAのCDR3領域(HLA-A2または他のハプロタイプに対応するTMPプロファージ2エピトープについて)を発現するように操作されたレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターに曝露される前に、抗CD3/CD28被覆ビーズまたは低用量IL-2(およびIL-7、IL-15、IL-21)を用いて、自己または同種T細胞が増殖期に置かれる。次に、ポリクローナルT細胞をクローニングし、96ウェルプレート中でそれらの特異性(TMPエピトープに暴露したときのIFNgまたはTNFa放出)について試験する。次にサイトカイン産生T細胞を選択し、GMP細胞工場で1010から1012個の細胞に増殖するまで、T細胞成長因子(IL-2;IL-7、IL-15、IL-21)を用いて週単位で、2~3週間再増殖させる。
【0182】
考察
発明者らの知見は、マウスEH 13144および新たにクローン化されたヒトEH IGR7(CNCM I-5224)またはEH IGR11(両者の配列において100%相同)の抗原性が主に、5つのゲノム間で共有されている7遺伝子、株13144および708の間で共有されている3遺伝子およびE.hirae 13144に特有の22遺伝子を含む65遺伝子をコードする39.2kbのプロファージにおいて、シホウイルス科ファージのファージテールレングステープメジャータンパク質(Tmp)(ラクトコッカスバクテリオファージテールテープメジャータンパク質TP901ファミリー)に依存することを明らかにした。腸球菌種間の遺伝物質の移入が報告されている(Mazaheri Nezhad Fard et al.、2010、2011)。注目すべきことに、グラム陽性細菌に感染するファージは、サイフォウイルス科ファージのテープメジャータンパク質内に局在するペプチダーゼおよびトランスグリコシラーゼ活性に対応するペプチドグリカン加水分解モチーフを含むことが多い(Piuri and Hatfull、2006)。今回は、非免疫原性E.hirae株(EH17、10815)にサイフォウイルス科に属するバクテリオファージを導入するか、全ファージテールレングステープメジャータンパク質(Tmp)またはTMPプロファージ2から選択したエピトープをコードする遺伝子改変プラスミドを導入し、そして陰性対照(MHC結合溝で変異したタンパク質またはエピトープ)を導入することで、非免疫原性E.hirae株(EH17、10815)の免疫原性の回復を試みる。注目すべきこととして、結核菌 Rpfs T細胞抗原は結核菌に対するヒトの免疫応答において重要な標的であることが報告された(Commandeur et al.、2011)。
【0183】
これらのマウスデータは臨床的意義がある。インシリコ予測(E.hiraeのいくつかの株の配列アラインメント、タンパク質細胞内局在化、およびMHC結合親和性の予測アルゴリズム)に基づいて、推定免疫原性を有する候補エピトープのリストが、選択の第1の工程において確立された(
図23)。第2の工程において、HLA-A0201+正常ボランティア由来の末梢血単核細胞を使用したインビトロ刺激アッセイで、4群の9mer-TMP特異的エピトープに続いて6人の健康なボランティアにおいて実施された単一の9merエピトープを使用する想起応答により、5つのエピトープが免疫原性であると考えられ得ることを明らかにした(
図24)。第3の工程、これらの5つのヒト免疫原性TMPエピトープとこのようなプロテオームとの間の配列相同性を調査する、350を超える腫瘍細胞株における正常ヒトプロテオームおよび遺伝子発現のバイオインフォマティックスクリーニングは、このHLA-0201エピトープKLAKFASVV(配列番号63)の1つが、グリセロール-3リン酸デヒドロゲナーゼ1様タンパク質(GPD1L、3p22.3上にコードされる遺伝子)と78%の配列相同性を共有すると結論づけた。GPD1Lは細胞質タンパク質であり、ナトリウムチャンネル、電位依存性、V型αサブユニット(SCN5A)と細胞膜で会合している。GPD1LはmiR-210によって負に調節される低酸素関連タンパク質であり、多くの組織(脳、胚および胎児発生中)で過剰発現され、低酸素誘導因子1-α(HIF-1α)のプロテオソーム分解に寄与する。実際、MiR-210はグリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ1様(GPD1L)酵素のレベルを抑制し、プロリルヒドロキシラーゼ(PHD)活性の抑制に寄与する。正常な生理的条件下では、PHDは低酸素誘導因子1‐α(HIF‐1α)中のプロリンを水酸化し、プロテアソームによるその分解を導く。miR-210によるGPD1LのダウンレギュレーションによりPHD活性が抑制されると、HIF-1αはプロテアソームによって分解されず、核に移行し、そこで低酸素誘導因子1-β(HIF-1β)とヘテロダイマーを形成する;HIF-1αとHIF-1βのダイマー化は癌転移に寄与する転写反応を活性化する(Costales et al.、2017)。したがって、多変量Cox回帰分析では、健常周囲組織と比較して頭頸部扁平上皮癌におけるGPD1LのmRNAレベルおよび/またはタンパク質発現が高いことは独立した予後パラメーターであり、局所再発および遠隔転移までの時間が長いという良好な予測因子であった(Feng et al.、2014)。
【0184】
このファージペプチドのHLA-A0201に対する結合親和性は正常組織ペプチドの結合親和性に類似しているので、ファージペプチドは正常ペプチドの免疫原性分子模倣物と見なすことができる。したがって、TMPファージ特異的TCRと自己組織または腫瘍組織(GPD1Lを過剰発現する)、主に胎児組織または幹細胞との間の交差反応性が、このEH細菌との関連で送達されるファージの抗癌効果を説明できると考えられる。注目すべきことに、腫瘍細胞株はウェブ上で利用可能な遺伝子発現アトラスから明らかなように、様々なレベルのGPD1Lタンパク質を発現することができる。
【0185】
HLA-A0201拘束性エピトープTMP 2(KMVEILEEI、配列番号55)、エピトープ3(RLLKYDVGV、配列番号56)、エピトープ9(LLGIYQSYV、配列番号62)、エピトープ10(KLAKFASVV、配列番号63、GPD1Lからの配列に相同)、およびエピトープTMP 13(ILVAITTTI、配列番号66)がこれまでに見出されており(
図24)、テトラマー製造、腫瘍ベアラー(ヒト患者またはマウス)におけるT細胞捕捉、ならびに構造的および機能的特徴付けを可能にしている。腫瘍浸潤リンパ球由来のE.hirae特異的CTLクローンの反応性は微生物抗原と腫瘍抗原との間の分子擬態の原理の証明をもたらすために、様々な同系腫瘍細胞株に対して試験することができる。
【0186】
このアセットは癌ワクチンおよびT細胞移入に利用可能なE.hirae 13144の準ユニークな抗原性を説明し、このファージを他の細菌株に感染させ、抗癌プロバイオティクスとして使用するか、または専用種のニッチングを可能にし、かつ/またはこのファージの切除にストレスを与えることができるシクロホスファミドと同一または異なるいずれかの薬物と組み合わせてOncoBaxとして使用することを促す。たとえば、シクロホスファミドは競合するE.gallinarumを上回るE.hiraeの過剰提示を可能し得た一方で、これら2つの株間の競合は、ファージの除去自体を促進した。
【0187】
実施例12:E.hirae 13144におけるユニークな抗原配列としてのファージテールレングステープメジャータンパク質。
【0188】
化学療法、放射線療法、標的療法、または免疫チェックポイント阻害剤による腫瘍関連抗原に対する免疫応答の開放が、癌治療の成功の主力となっている(Galluzzi et al.、2015; Sharma and Allison、2015)。腸内細菌叢が癌-免疫セットポイントを決定し、それによって抗癌治療の臨床転帰に影響を及ぼすという最近の発見は微生物またはその産物が腸管免疫だけでなく全身免疫も調節するという概念を改めて提唱した(Zitvogel et al.、2018)。実際、Enterococcus hirae、Bacteroides fragilis、およびAkkermansia muciniphilaに対するCD4+(TH1)およびCD8+(TC1)T細胞応答を産生する記憶IFNγは癌患者における良好な転帰と関連しており(Daillere et al.、2016;Rong et al.、2017;Routy et al.、2018;Vetizou et al.、2015)、これは、既存の微生物特異的T細胞が抗癌免疫応答に寄与し得ることを示唆する。しかし、微生物が全身性自己免疫疾患や局所的な腸の慢性炎症の発症にどのような影響を及ぼすかという疑問は解消されていない(Rose、2017)。分子擬態の理論は、細菌やウイルスによって誘発されたT細胞が自己寛容誘導機構(クローン欠失や不活性化など)から「逃れた」ときに、自己抗原を誤って認識してしまう可能性があると仮定している。細菌ゲノム由来のMHCクラスIおよびクラスII結合エピトープはin vitroまたはin vivoで免疫原性を媒介することが同定されているが(Chai et al.、2017;Perez-Munoz et al.、2015;Rubio-Godoy et al.、2002; Vujanovic et al.、2007;Yang et al.、2014)、正常組織または腫瘍組織に対する免疫応答について微生物特異的CD4+またはCD8+ Tリンパ球の機能的関連性を明らかにした報告はほとんどない(Balachandran et al.、2017;Bradley et al.、2017;Ji et al.、2010)。
【0189】
シクロホスファミド(CTX)はE.hiraeの腸管腔から腸間膜および脾臓の免疫組織への移行を誘導し、それによりIL-17およびIFNγを産生する特異的CD4+およびCD8
+ Tリンパ球を誘発し、治療上有効な抗癌免疫応答と相関する(Daillere et al.、2016; Viaud et al.、2013)。広域スペクトル抗生物質はE.hiraeが経口胃管栄養法によって供給されない限り、CTXの治療効果を無効にした(Daillere et al.、2016)。CTXの抗生物質摂動抗癌効果を回復する能力についてE.hirae株のパネル(表11、
図31A)を比較すると、発明者らは、いくつかのE.hirae分離株(13144、IGR7、およびIGR11など)のみが効果的であることを見出した(
図27A-B、(Daillere et al.、2016))。CTXとE.hirae 13144の併用の治療効果はCD8
+ T細胞の枯渇またはIFNγの中和によって打ち消されることを考慮して(Daillere et al.、2016)、宿主のプライムブースト曝露(
図27C)および樹状細胞(DC)に負荷した種々のE.hirae株による脾臓CD8+T細胞のex vivo再刺激後に、記憶TC1免疫応答を誘発するE.hirae株の鑑別能力をスクリーニングした。E.hirae 13144は特異的なTC1免疫応答(関連性のないEnterococciに対して交差反応性を示さない)を引き起こしたが、E.hirae 708(原型的な非効率的株)はそのような反応を起こさなかった(
図27D)。20のE.hirae株のPanゲノム解析では1,677のオーソロガス遺伝子(59%)のコアゲノムが得られ、アクセサリーゲノムはそれぞれ946および477のオーソロガス遺伝子とユニーク遺伝子から構成されていた(
図31B)。この系統発生学的解析により、13144株は86のオーソロガスなユニークな遺伝子を有するIGR7株と100%相同であることが示された(
図31B)。
【0190】
【0191】
次に、免疫原性(13144)細菌株対非免疫原性(708および13344)細菌株について、細胞壁および分泌タンパク質をコードする細菌遺伝子の配列アラインメントを行い(PSORTソフトウェア)、続いてMHCクラスI H-2K
bタンパク質(<50 nM結合親和性、NetMHCソフトウェア)について強い結合親和性を有するノナペプチドの同定を行った(実施例3の表6)。続いて、E.hirae 13144およびCTXに繰り返し曝露されたマウスから脾臓CD8+T細胞を回収した(
図27C)。これらのT細胞を、E.hirae 13144(表6)由来の潜在的に免疫原性のノナペプチドのプールでインビトロで再刺激して、IFNγ産生を測定し(
図32)、次いで、最も効率的な群7を個々のペプチドに分割した(
図27E)。このアプローチは、E.hirae 13144の39.2kb(1506aa)のプロファージ由来のファージテールレングステープメジャータンパク質(TMP)のアミノ酸配列の197~187位における1つの優性エピトープ(1文字アミノ酸コード: TSLARFANI(配列番号25)、略称TMP1)の同定を導いた(
図33A)。実際、E.hirae 13144の特定のゲノム特性は、最も一般的なEnterococcusファージphiEf11 vB_EfaS_IME197(共有遺伝子のそれぞれ14%および11%)と弱い配列相同性を示す2つの無傷のプロファージ領域(40.6-kbおよびa 39.2-kb)をコードしていることである(
図31C、表12)。E.hirae 13144の39.2-kbプロファージを19の他の配列決定されたE.hiraeゲノムと比較解析したところ、IGR7プロファージタンパク質と100%のタンパク質同一性が示された。39.2-kbプロファージは65の遺伝子をコードしており、その中にはすべてのゲノム間で共有されている1遺伝子と、シホウイルス科ファージの特徴であるカプシド、ポータルおよびテール構造をコードするE.hirae 13144およびIGR7に特有の38遺伝子が含まれる(
図33B)。重要なことに、E.hirae 13144、E.hirae IGR7およびE.hirae IGR11由来の39.2-kbプロファージのTMP1エピトープは100%の配列相同性を示した(
図34)。実際、E.hirae IGR7およびE.hirae IGR11はCTXで処置されたMCA205線維肉腫の増殖を減少させる際に、E.hirae 13144と同様に効率的であった(
図27B)。対照的に、相同性は認められず(E.hirae 708および13344で観察)、TSLARFANIペプチドの3位の突然変異(E.hirae ATCC9790で観察されるLF、
図34)はこれらのE.hirae株の抗癌効果の低下と相関していた(
図27Bおよび(Daillere et al.、2016)。ペプチド特異的IFNγ産生T細胞を検出するようにデザインされたElispotアッセイにより、E.hirae 13144(またはE.hirae IGR7およびIGR11株)を強制経口投与したマウスはTMP1に対してTC1応答をマウントしたが(対照ペプチドであるTMP2およびTMP3ではマウントしなかった)、抗癌活性を欠き、TMP1を欠くE.hirae株(株708、13344、ATCC9790)はそのようにはできなかったことが明らかになった(
図27E)。ナイーブおよびMCA205線維肉腫を有するC57BL/6マウスにおけるTMP1特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の頻度および分布を検出するために、蛍光H‐2Kb/TSLARFANIテトラマー複合体を用いた。脾臓CD8+Tの1%までが、CTX/E.hirae 13144レジメン(
図27F、左パネル)後12日目にTMP1ペプチドを認識し、ナイーブからの脾臓(
図27F、右パネル)および腫瘍保有者、ならびに腫瘍排出リンパ節(
図27G)において、回腸ケモカイン受容体CCR9を保有するTC1サブセットにおけるTMP1特異的CTLの3~5倍の富化を伴った。注目すべきことに、H-2K
b/TSLARFANIテトラマーはまた、E.hirae株IGR7またはIGR11での免疫化後に脾臓TMP1特異的CTLの高比率を明らかにしたが、ATCC9790またはE.hirae 13344では示さなかった(
図27H)。
【0192】
【表12】
表12:E.hirae 13144ゲノムにおけるプロファージ配列の探索
【0193】
実施例13:マウスモデルにおけるファージテールレングステープメジャータンパク質を用いた予防的および治療的免疫化
【0194】
MCA205癌の増殖を制御するTMP1特異的H-2K
b拘束性TC1細胞の能力を調べるために、本発明者らは、熱不活性化E.hirae(陽性対照)、13144、IGR7またはIGR11由来の天然に存在するTSLARFANIペプチド、E.hirae ATCC9790由来のそのLF突然変異体(「mut3」、
図34)、または他の非免疫原性細菌ペプチド(群1、
図32)を負荷した樹状細胞(DC)を用いて、ナイーブC57BL/6マウスを皮下(s.c.)免疫した。この予防的設定では、TSLARFANIでパルスしたDC(mut3 TSFARFANIではない)が腫瘍増殖の予防または抑制において、E.hirae抽出物全体と同じくらい効率的であった(
図28A-B)。次に、本発明者らはTMP1ペプチドが通常非効率的な細菌Escherichia coli株DH5αに免疫原性を付与することができるかどうかを、抗生物質処置の後に、異なる細菌株を用いた強制経口投与およびCTXベースの化学療法が続く治療設定において調査した(
図27A、(Daillere et al.、2016))。TSLARFANI(配列番号13)ペプチド(
図35)を発現するように操作された大腸菌は、MCA205腫瘍増殖を抑制し(
図28C)、脾臓におけるテトラマー結合CTLの生成を誘発する(
図28D)際に、E.hirae 13144と同じくらい効率的であった。対照的に、無関係な配列(マウスEGFPタンパク質をコードする)またはアンカー2位にSA交換を有する突然変異ペプチド(「mut2」、TALARFANI)または「mut3」TMP1ペプチドを発現する大腸菌は、このような癌防御免疫応答を誘導することができなかった(
図28C-D)。
【0195】
実施例14:癌患者における腸ファージの効果の臨床的関連性
【0196】
次に、これらの所見の病態生理学的関連性の可能性を検討した。E.hiraeゲノムおよびそのファージのカバー範囲(BOC)の広さを評価するために、公的に利用可能な17のデータセットから合計3027の成人および母親-乳児メタゲノム(大部分はヒトの糞便からであるが、様々な粘膜からも)をスクリーニングした(
図29A)。異なる地理、年齢、およびデータセットからの13試料において、E.hiraeは100%の信頼度で存在した。他の約40例では、E.hiraeと近縁の株が検出可能であった。E.hiraeが見つかった試料の90%では、3つのファージ(E.hirae 13144、708または13344由来)配列のうち1つが相互排他的にゲノムに挿入されていた(
図29A)。しかし、E.hiraeコアゲノムの存在を欠く多くのサンプルでE.hirae 13144ファージが検出可能であったことから、E.hirae以外の細菌も同様にこのファージを宿主とすることができることが示唆された。生後1日、3日、7日の3つの母子ペア便検体と乳児において、0.66 BOCでファージ13144の存在を検出できた。豊富でない種を検出することができないメタゲノミクス分析とは対照的に、マトリックスアシストレーザー脱イオン飛行時間質量分析(MALDI-TOF)に続くカルチュロミクスは、健康な個人(Samb-Ba et al.、2014)またはがん患者(Routy et al.、2018)の便中の希少なE. .hiraeコロニーを検出する技術を提供する。76人がん患者由来の各単一培養可能な腸球菌コロニー(種および個体当たり最大5個、E.hirae、E.gallinarum、E.durans、E.faecium、E.faecalis、E.casseliflavusまたはE.avium由来のコロニーを表す)のPCR分析により、患者の34人%においてTMP1ペプチドを包含するTMP配列(
図36)が検出され、ほとんどがE.faecalis内部であった(
図29B)。診断時に便中TMPが検出可能であった腎癌および肺癌患者では、免疫チェックポイント阻害薬による治療後に全生存期間の延長が認められた(
図29C)。したがって、本発明者らは、ヒトMHCクラスI HLA-A02
*01に高い親和性で結合すると予測される16種のTMP由来ノナペプチド(配列番号54~69)を、インビトロで6人の健康なボランティア由来のナイーブCD8+T細胞をプライミングする能力についてスクリーニングした。本発明者らは、TMPタンパク質の2つの異なる領域に位置する、有意なペプチド特異的IFNγ放出を誘発することができる16のエピトープのうち6つを見出した(504-708および1397-1462、
図29D、
図37、
図24B、表9)。NCBI BLASTPスイートを用いて、ヒト癌生検組織における有意な発現レベルに関連するヒトペプチドソームを、これら6種類のHLA-A02
*01拘束性免疫原性ノナペプチドと高度の相同性について検索した(TCGAデータベース)。本発明者らはペプチドKLAKFASVV(631~639、配列番号63)のみが、タンパク質グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ1様GPD1-Lに含まれるペプチドと78%の相同性(9つの9位のうち7つ、MHCアンカー2位および9位で同一のアミノ酸を有する)を共有することを見出した(
図29E)。GPD1-L 報告によれば、頭頸部扁平上皮癌において、発癌性HIF1α依存性の低酸素への適応に対抗し、良好な予後と関連している(Feng et al.、2014; Kelly et al.、2011; Liu et al.、2014)。我々の知る限りでは、GPD-1L遺伝子の変異は癌では報告されていない。TCGAトランスクリプトミクスデータベースは、GPD1-Lの高発現が膀胱癌、肺腺癌および500を超える腎癌の大規模コホートで全生存期間の改善と関連していることを明らかにした(HLA-02*01を発現しない低GPD-1Lの腫瘍では予後不良の傾向がある)(
図29F-H)。
【0197】
さらに、診断時の腫瘍によるGPD1-L mRNAの高発現は抗PD1/PDL-1抗体で治療された非小細胞肺癌(NSCLC)患者の2人つの独立したコホートにおける無増悪生存の改善と関連していた(
図29I、J)。興味深いことに、GPD-1Lの発現レベルは、肺癌のTCGAデータセット(LUAD、LUSCおよびTCGA)およびNSCLC患者の2人つのコホート(CHUMおよびCGFL)における細胞傷害性リンパ球、骨髄樹状細胞、好中球および内皮細胞遺伝子シグネチャーと相関していた(
図29K)。
【0198】
実施例15:マウス癌におけるエンテロファージTMPと発癌性ドライバーPSMB4の間の分子擬態
【0199】
マウスモデル(C57/B6マウスにおけるMCA205腫瘍、
図27-28)においてTMP1がその抗癌活性を発揮する機構を同定するために、本発明者らは、TMP1ペプチド(TSLARFANI、配列番号13)に対して高い相同性を有するH-2K
b拘束性マウス腫瘍抗原が存在するかどうかを調べた。NCBI BLASTPスイートを使用して、我々は、アミノ酸76~84位の間のプロテアソームサブユニットβ型-4(PSMB4)に属するペプチド(GSLARFRNI、配列番号189)が78%の相同性を共有することを見出した(9アミノ酸のうち7アミノ酸、MHCアンカー位2位および9位の同一アミノ酸)(
図30A)。MCA205の潜在的なネオエピトープを調べたが、本発明者らの結果を説明する有意な相同性は見出されず、したがって、本発明者らは非変異PSMB4ペプチドに焦点を当てた。PSMB4は神経膠芽腫(Cheng et al.、2018)、黒色腫(Zhang et al.、2017)および乳癌(Wang et al.、2018)のような種々の悪性腫瘍における増殖および浸潤に関与する発癌性ドライバーであり(Lee et al.、2014)、不良な予後に関連する(Cheng et al.、2018; Lee et al.、2014; Wang et al.、2018)。MCA205細胞において、GSFARFRNI (配列番号190)によってGSLARFRNI(配列番号189)を置換したPSMB4配列のCRISPR/Cas9媒介ゲノミックノックイン(TSLARFANIのmut 3と同等の3位でLF交換を有する)(
図38)は自発的な腫瘍成長動態を減少させたが、E.hirae 13144の抗癌効果を劇的に鈍化させたが、CTX治療単独では妨害しなかった(
図30B)。これらの結果は、E.hirae 13144によってコードされるTSLARFANI TMP1ペプチドが実際にPSMB4由来GSLARFRNIペプチドに対する治療関連反応を誘導するという考えを支持する。
【0200】
実施例16:E.hirae 13144のファージTMP配列を伝染的に播種する能力
【0201】
テンペレートバクテリオファージは、毒性、抗菌薬耐性遺伝子、免疫原性配列を新たな細菌宿主に伝達する細菌性ウイルスである(Weinbauer、2004)。固定位置に高度に保存されたトリプトファンおよびフェニルアラニン残基を有する可変数のタンデム反復を含むTMPタンパク質は、サイフォウイルスファージのゲノムによってコードされる(Belcaid et al.、2011; Piuri and Hatfull、2006)。ファージTMP配列を伝染性に播種するE.hirae 13144の能力を分析するために、E.hirae 13144を経口強制投与し、全身CTX治療を行ったC57BL/6マウスの回腸内容物の培養分析を行った(
図30C)。本発明者らは76のコロニーのうち、ファージゲノムの配列決定によって確認されたように、E.gallinarumがインビボでE.hiraeが産むファージによって形質導入された唯一のby-stander Enterococciであることを発見するために、各動物から7~18の細菌コロニーを検査した(
図30D、Eおよび
図39)。注目すべきは、未処置マウスから分離された90コロニー(大部分はE.gallinarum)のいずれもTMP配列を保有していなかったことである(
図39)。さらに、CTXはE.gallinarumを排除する役割を果たしており、インビトロのエンテロイド系(enteroid system)または回腸内容物のPCRで示されているように、小腸におけるE.hiraeのニッチングおよび/またはコロニー形成を可能にしている(
図30Gおよび図には示していない)。重要なことは、小腸エンテロイドを、ファージを保有しているか保有していないE.hiraeまたはE.gallinarumのバランスのとれた1:1の比率でインキュベートすると、E.hiraeによる感染性/溶菌性ファージのE.gallinarumへの伝播が6時間で9%、20時間で26%のコロニーで起こることである(
図30G)。
【0202】
シクロホスファミドとは対照的に、乳癌患者ではCDK4/6阻害薬(パルボシクリブなど)がファージ切除の引き金となるようである。実際、3週間パルボシクリブによる治療を受けた患者10例と非治療患者73例を対象に、手術前に採取した患者の便のショットガンメタゲノミクス解析を行ったところ、LefSeダイアグラム(
図30H)に示すように、ファージ配列(Lactococcus、Salmonella、Sodalis、Escherichia、腸内細菌由来)の劇的な濃縮と過剰表現が明らかになった。
【0203】
この観察は、癌抗原とこの分子擬態を示すファージをコードするペプチドがヒトにおけるE.faecalisでの検出と一致して、感染性であることを示唆している。
【0204】
我々の知る限りでは、これらの結果が腸球菌ファージが記憶TC1免疫応答を誘導するMHCクラスI拘束性抗原、TMP1をコードし、その後、3つの主要な証拠に続いて、癌抗原と交差反応することを示す最初の証拠である。まず、MHCクラスI結合TMP1エピトープに導入された自然発生(「mut3」)または人工突然変異(「mut2」または「mut3」)は、ファージ保有E.hirae株の腫瘍予防および治療の可能性を抑制した。第二に、TMP1をコードする遺伝子をE.coliに導入すると、このプロテオバクテリアに免疫原性の能力が付与され、TMP1を発現するE.hiraeと同じ抗腫瘍特性を獲得した。第三に、癌細胞を遺伝子改変してPSMB4タンパク質内のTMP1交差反応性ペプチドを除去すると、TMP1発現E.hiraeの経口強制投与でもはや制御できない腫瘍を形成した。
【0205】
考察2
ファージは、地球上で最も豊富な生物学的実体の中にある。それらの数は、毎秒起こる1025ファージ感染の可能性を有する1031個もの粒子に達すると推定されている(Pedulla et al.、2003; Wommack and Colwell、2000)。ここで研究した「エンテロファージ」の抗原性は、TMPタンパク質のホットスポットに存在する。ファージテールの長さを決定する上での構造的役割以外に、サイフォウイルス科のファージにコードされるTMPにはいくつかの機能的ドメインがあり、その1つはペプチドグリカン加水分解酵素活性を有し、細菌の効率的な感染を促進し、もう1つはリゾチーム活性を有し、蘇生促進因子であるRpfとして作用する(Duerkop et al.、 2014)。Rpfsは休眠細菌の再活性化に関与しているだけでなく、結核菌に対する自然応答(Russell-Goldman et al.、2008)や同族の長期免疫応答(Commandeur et al.、2011)を調節している。実際、結核菌 Rpfsに含まれるT細胞エピトープはこの病原体に対するヒト免疫応答の鍵である(Commandeur et al.、2011)。ファージはそれらの特異的抗原特性を超えて、糸状バクテリオファージコートタンパク質IIIドメインIを介してDNAワクチンに広範なアジュバント性を伝達する(Cuesta et al.、2006; Larsen et al.、2008)。このように、バクテリオファージは抗癌免疫応答を刺激するための治療手段を充実させる可能性があるという展望が開けている。
【0206】
本文中で使用した略語:
ATB:抗生物質
BHI:ブレインハートインフュージョン
BM-DC:骨髄樹状細胞
cDNA:相補的デオキシリボ核酸
CGFL:ジョルジュ・フランソワ・ルクールセンター
CHUM:Centre Hospitalier Universitaire de Montreal
CTL:細胞傷害性T細胞
Ctrl: 対照
CTX:シクロホスホミド
DC:樹状細胞
DNA:デオキシリボ核酸
GM-CSF:顆粒球マクロファージコロニー刺激因子
GPD1-L:グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ1様
IFNγ:インターフェロンγ
IMDM:Iscove’s Modified Dulbecco’s培地
Ip:腹腔内
MALDI-TOF:マトリックスアシストレーザー脱イオン飛行時間
MHC:主要組織適合性複合体
NaCl:塩化ナトリウム
NSCLC:非小細胞肺癌
PBMC:末梢血単核球
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
PSMB4:プロテアソームサブユニットβ4型
PVDF:ポリビニリデンジフルオリド
RCC:腎細胞癌
Rpf:蘇生促進因子
RPMI:Roswell Park Memorial Institute
Sc:皮下
SEM:平均値の標準誤差
Tc1:T細胞傷害性細胞1型
Th1:ヘルパーT細胞1型
TLR3:Toll様受容体3
TMP:テープメジャータンパク質
【0207】
参考文献
【0208】
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