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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】洗浄方法、洗浄装置及び予備洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/35 20170101AFI20240517BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20240517BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20240517BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20240517BHJP
   C11D 1/94 20060101ALI20240517BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20240517BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B29C64/35
B08B3/08 Z
B29C64/40
B33Y40/20
C11D1/94
C11D3/20
C11D3/43
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023039185
(22)【出願日】2023-03-14
(62)【分割の表示】P 2022558839の分割
【原出願日】2021-04-08
(65)【公開番号】P2023126740
(43)【公開日】2023-09-11
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2020178629
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524057094
【氏名又は名称】株式会社RAISER MOON
(72)【発明者】
【氏名】根本 達広
(72)【発明者】
【氏名】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】栗山 由佳
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-74177(JP,A)
【文献】特開2017-30211(JP,A)
【文献】特開2020-75410(JP,A)
【文献】国際公開第2020/235650(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0183226(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0375469(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0171497(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110744820(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0092975(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第102009061069(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009047237(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00-3/14
B29C 64/00-64/40
B33Y
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性の高分子化合物が付着した物体に対して洗浄剤に先立って接触される予備洗浄剤であって、
前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低い範囲において流動性を有し、
前記高分子化合物に対して相溶性を有する第1化合物を含む、または、前記第1化合物と第2化合物とを含み、
前記洗浄剤は、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低い範囲において流動性を有し、水溶性であり、溶媒と、前記高分子化合物に作用する界面活性剤と、を含み、
前記物体は三次元造形物であり、
前記高分子化合物は三次元造形用サポート材であることを特徴とする予備洗浄剤。
【請求項2】
疎水性の高分子化合物が付着した物体に対して洗浄剤に先立って接触される予備洗浄剤であって、
前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低い範囲において流動性を有し、
前記高分子化合物に対して相溶性を有する第1化合物を含む、または、前記第1化合物と第2化合物とを含み、
前記物体は三次元造形物であり、
前記高分子化合物は三次元造形用サポート材であることを特徴とする予備洗浄剤。
【請求項3】
前記第1化合物は、脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1又は2記載の予備洗浄剤。
【請求項4】
前記第2化合物は、前記高分子化合物と共通の成分を有する化合物、または固形パラフィンであることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の予備洗浄剤。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の高分子化合物が付着した請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の物体の洗浄装置であって、
請求項1ないしのうちいずれか1項記載の洗浄剤を収容する洗浄容器と、
前記洗浄容器に収容された前記洗浄剤の温度を調整する洗浄剤温度調節ユニットと、
前記洗浄剤に対して相溶性を有する濯ぎ液を収容する濯ぎ容器と、
前記濯ぎ容器に収容された前記濯ぎ液の温度を調整する濯ぎ液温度調節ユニットと、
請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の予備洗浄剤を収容する予備洗浄容器と、
前記予備洗浄容器に収容された前記予備洗浄剤の温度を調整する予備洗浄剤温度調節ユニットと、
各ユニットを制御するコントローラと、を備え、
前記洗浄容器内では前記洗浄剤に対して前記物体が接触し、
前記濯ぎ容器内では前記濯ぎ液に対して前記物体が接触し、
前記コントローラによって、前記洗浄剤の温度は、前記高分子化合物の融点以上前記物体の融点よりも低く、前記濯ぎ液の温度は、前記高分子化合物の融点以上前記物体の融点よりも低く、
前記予備洗浄容器内では、前記予備洗浄剤に対して前記物体が接触可能であり、
前記コントローラによって、前記予備洗浄剤の温度は、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低いことを特徴とする洗浄装置。
【請求項6】
前記予備洗浄容器を密閉にする予備洗浄側密閉ユニットと、
前記予備洗浄側密閉ユニットによって密閉された容器の中の圧力を減じることが可能な予備洗浄側減圧ユニットと、 を備えることを特徴とする請求項記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記予備洗浄容器に収容された前記予備洗浄は、前記コントローラによって沸騰状態に遷移可能であることを特徴とする請求項記載の洗浄装置。
【請求項8】
請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の高分子化合物が付着した請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の物体の洗浄装置であって、
請求項1ないしのうちいずれか1項記載の洗浄剤を収容する洗浄容器と、
前記洗浄容器に収容された前記洗浄剤の温度を調整する洗浄剤温度調節ユニットと、
前記洗浄剤に対して相溶性を有する濯ぎ液を収容する濯ぎ容器と、
前記濯ぎ容器に収容された前記濯ぎ液の温度を調整する濯ぎ液温度調節ユニットと、
前記洗浄容器及び前記濯ぎ容器のうち少なくとも1つを密閉にする密閉ユニットと、
前記密閉ユニットによって密閉された容器の中の圧力を減じることが可能な洗浄側減圧ユニットと、
各ユニットを制御するコントローラと、を備え、
前記洗浄容器内では前記洗浄剤に対して前記物体が接触し、
前記濯ぎ容器内では前記濯ぎ液に対して前記物体が接触し、
前記コントローラによって、前記洗浄剤の温度は、前記高分子化合物の融点以上前記物体の融点よりも低く、前記濯ぎ液の温度は、前記高分子化合物の融点以上前記物体の融点よりも低いことを特徴とする洗浄装置。
【請求項9】
前記洗浄容器に収容された前記洗浄前記濯ぎ容器に収容された前記濯ぎ液と、のうち少なくとも1つは、前記コントローラによって沸騰状態に遷移可能であることを特徴とする請求項記載の洗浄装置。
【請求項10】
請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の高分子化合物が付着した請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の物体の洗浄方法であって、
請求項1ないしのうちいずれか1項記載の洗浄剤を前記物体に対して接触させる洗浄工程と、
前記洗浄工程の後に行われ、前記洗浄剤に対して相溶性を有する濯ぎ液を用いて前記物体の濯ぎをおこなう濯ぎ工程と、
前記洗浄工程の前に行われ、前記物体に対して、請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の予備洗浄剤を接触させる予備洗浄工程と、を備え、
前記洗浄剤の温度は、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低く、
前記濯ぎ液の温度は、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低く、
前記予備洗浄剤の温度は、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低く、
前記予備洗浄剤は、前記高分子化合物に対する相溶性を有する化合物を含むことを特徴とする洗浄方法。
【請求項11】
前記予備洗浄工程は、大気圧よりも低い環境下でおこなわれることを特徴とする請求項10記載の洗浄方法。
【請求項12】
前記予備洗浄工程の前記予備洗浄剤は、沸騰状態であることを特徴とする請求項11記載の洗浄方法。
【請求項13】
請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の高分子化合物が付着した請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の物体の洗浄方法であって、
請求項1ないしのうちいずれか1項記載の洗浄剤を前記物体に対して接触させる洗浄工程と、
前記洗浄工程の後に行われ、前記洗浄剤に対して相溶性を有する濯ぎ液を用いて前記物体の濯ぎをおこなう濯ぎ工程と、を備え、
前記洗浄剤の温度は、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低く、
前記濯ぎ液の温度は、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低く、
前記洗浄工程と前記濯ぎ工程とのうち少なくとも1つは、大気圧よりも低い環境下でおこなわれることを特徴とする洗浄方法。
【請求項14】
前記洗浄工程の前記洗浄剤と前記濯ぎ工程の前記濯ぎ液とのうち少なくとも1つは、沸騰状態であることを特徴とする請求項13記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄方法、洗浄装置及び予備洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形とは三次元の形状データをもとに、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、粉末樹脂、粉末金属などを融解押出やインクジェット、レーザー光や電子ビームなどを用いて融着、硬化させることなどで、薄膜状に積み重ねて目的の立体造形物を得る技術である。形状データから直接造形物が得られ、中空やメッシュ状などの複雑な形状を一体成型できるため、小ロットもしくはオーダーメイドで製造する必要があるテストモデルの作成などをはじめ、医療用分野、航空機産業、産業用ロボットなどに利用分野が広がっている。
【0003】
立体造形物を得るには一般的に3Dプリンターと呼ばれる三次元造形装置が使用されている。具体的には、アクリル系光硬化性インクを使用したインクジェット紫外線硬化方式の3Dプリンター、例えばストラタシス社製Objet(登録商標)、キーエンス社製AGILISTA(登録商標)などや、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などを使用した熱溶解積層法方式の3Dプリンター、例えばストラタシス社製FORTUS、Dimension、uPrintなどや、粉末造形方式の3Dプリンター、例えば3Dシステムス社製SLSなどや、光造形方式の3Dプリンター、例えば3Dシステムス社製SLA、DWS社製DigitalWaxなどが知られている。
【0004】
三次元造形では複雑な形状の立体造形物を形成できるが、中空構造などを製造するためには、立体造形物の底部に一時的に造型中の樹脂を支持し、立体造形物が自重により変形することを防止するために形状支持用の構造体が必要になる。粉末原料を結着或いは融着させていく粉末造形方式の3Dプリンターの場合には、未結着、未融着の粉末が支持体として作用し構造物を支えるため、製造後には余分な粉末を払い落とすことで立体造形物を得ることが出来る。また感光性樹脂をレーザー光などで段階的に硬化していく光造形方式の3Dプリンターでも未硬化の感光性樹脂が構造体を支えるため、感光性樹脂槽から立体造形物を引き上げるだけで支持体を除去できる。一方、広く用いられている熱溶解積層法方式やインクジェット方式による三次元造形を行う場合、モデル材からなる立体造形物とサポート材からなる支持体が同時に形成されるため、形成後にサポート材を除去する工程を設けなければならない。
【0005】
しかし、熱溶解積層法方式やインクジェット方式による三次元造形を行う場合、サポート材の除去は決して簡単な作業ではない。サポート材は、モデル材と融着、接着もしくは粘着しているため、モデル材から剥離する作業において、通常ヘラやブラシなどを用いて手作業で剥離したり、ウォータージェットで吹き飛ばしたりなどの手段が用いられるが、立体造形物の破損などの危険性があるため丁寧な作業が必要となり、大きな負担となっていた。
【0006】
そこでサポート材として水や有機溶剤に溶解可能な材料、熱可塑性樹脂、水膨潤性ゲル等を使用し、サポート材の性質に応じて加熱、溶解、化学反応、水圧洗浄などの動力洗浄や電磁波照射、熱膨張差などの分離方法が提案されている(特許文献1、2)。具体的にはモデル材との剥離が行いやすい樹脂を用いたり(特許文献3、4)、サポート材にワックスを用いることで熱による融解除去を行ったり(特許文献5)によりサポート材除去の簡略化が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-035299号公報
【文献】特開2012-096428号公報
【文献】米国特許第5,503,785号公報
【文献】WO2001-068375号公報
【文献】特開2004-255839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、モデル材から剥離されやすいサポート材を使用しても、微細構造(孔や溝等)に詰まったサポート材の除去を効率的に行うことは極めて困難である。特に、モデル材の形態が複雑になればなるほど、除去に要する時間は、膨大なものとなる。また、熱による融解除去の方法を用いる場合、モデル材への加熱の度合いが大きくなると、モデル材の変形のおそれがある。したがって、熱変形を抑えながら融解除去を行う必要もある。また、次工程での塗装がある場合(例えば、立体造形物がフィギュアである場合等)、残存する油分(サポート材等)は塗装不良の原因となってしまう。
【0009】
この様に、三次元造形においては、サポート材が付着したモデル材の洗浄が可能となるとともに、作業時間の短いサポート材の洗浄方法の確立が望まれていた。そして、かかる課題は、微細構造をもつ三次元造形物においては重大なものであった。
【0010】
さらに、三次元造形における洗浄に限らず、微細構造(孔や溝等)を持つ三次元造形物について、所定の機能を持つ液体を接触させようとしても、微細構造に液体が供給できず、問題となっている場合も多い。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、疎水性の高分子化合物が付着した物体に対して洗浄剤に先立って接触される予備洗浄剤であって、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低い範囲において流動性を有し、前記高分子化合物に対して相溶性を有する第1化合物を含む、または、前記第1化合物と第2化合物とを含み、前記洗浄剤は、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低い範囲において流動性を有し、水溶性であり、溶媒と、前記高分子化合物に作用する界面活性剤と、を含み、前記物体は三次元造形物であり、前記高分子化合物は三次元造形用サポート材であることを特徴とする。また、本発明は、疎水性の高分子化合物が付着した物体に対して洗浄剤に先立って接触される予備洗浄剤であって、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低い範囲において流動性を有し、前記高分子化合物に対して相溶性を有する第1化合物を含む、または、前記第1化合物と第2化合物とを含み、前記物体は三次元造形物であり、前記高分子化合物は三次元造形用サポート材であることを特徴とする。前記第1化合物は、脂肪酸エステルであることが好ましい。前記第2化合物は、前記高分子化合物と共通の成分を有する化合物、または固形パラフィンであることが好ましい。
【0012】
本発明は、上記の高分子化合物が付着した上記の物体の洗浄装置であって、請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の洗浄剤を収容する洗浄容器と、前記洗浄容器に収容された前記洗浄剤の温度を調整する洗浄剤温度調節ユニットと、前記洗浄剤に対して相溶性を有する濯ぎ液を収容する濯ぎ容器と、前記濯ぎ容器に収容された前記濯ぎ液の温度を調整する濯ぎ液温度調節ユニットと、上記の予備洗浄剤を収容する予備洗浄容器と、前記予備洗浄容器に収容された前記予備洗浄剤の温度を調整する予備洗浄剤温度調節ユニットと、各ユニットを制御するコントローラと、を備え、前記洗浄容器内では前記洗浄剤に対して前記物体が接触し、前記濯ぎ容器内では前記濯ぎ液に対して前記物体が接触し、前記コントローラによって、前記洗浄剤の温度は、前記高分子化合物の融点以上前記物体の融点よりも低く、前記濯ぎ液の温度は、前記高分子化合物の融点以上前記物体の融点よりも低く、前記予備洗浄容器内では、前記予備洗浄剤に対して前記物体が接触可能であり、前記コントローラによって、前記予備洗浄剤の温度は、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低いことを特徴とする。また、前記予備洗浄容器を密閉にする予備洗浄側密閉ユニットと、前記予備洗浄側密閉ユニットによって密閉された容器の中の圧力を減じることが可能な予備洗浄側減圧ユニットと、を備えることが好ましい。さらに、前記予備洗浄容器に収容された前記予備洗浄剤は、前記コントローラによって沸騰状態に遷移可能であることが好ましい。
【0013】
本発明は、上記の高分子化合物が付着した上記の物体の洗浄装置であって、上記の洗浄剤を収容する洗浄容器と、前記洗浄容器に収容された前記洗浄剤の温度を調整する洗浄剤温度調節ユニットと、前記洗浄剤に対して相溶性を有する濯ぎ液を収容する濯ぎ容器と、前記濯ぎ容器に収容された前記濯ぎ液の温度を調整する濯ぎ液温度調節ユニットと、前記洗浄容器及び前記濯ぎ容器のうち少なくとも1つを密閉にする密閉ユニットと、前記密閉ユニットによって密閉された容器の中の圧力を減じることが可能な洗浄側減圧ユニットと、各ユニットを制御するコントローラと、を備え、前記洗浄容器内では前記洗浄剤に対して前記物体が接触し、前記濯ぎ容器内では前記濯ぎ液に対して前記物体が接触し、前記コントローラによって、前記洗浄剤の温度は、前記高分子化合物の融点以上前記物体の融点よりも低く、前記濯ぎ液の温度は、前記高分子化合物の融点以上前記物体の融点よりも低いことを特徴とする。また、前記洗浄容器に収容された前記洗浄剤と、前記濯ぎ容器に収容された前記濯ぎ液と、のうち少なくとも1つは、前記コントローラによって沸騰状態に遷移可能であることが好ましい。
【0014】
本発明は、上記の高分子化合物が付着した請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の物体の洗浄方法であって、上記の洗浄剤を前記物体に対して接触させる洗浄工程と、前記洗浄工程の後に行われ、前記洗浄剤に対して相溶性を有する濯ぎ液を用いて前記物体の濯ぎをおこなう濯ぎ工程と、前記洗浄工程の前に行われ、前記物体に対して、上記の予備洗浄剤を接触させる予備洗浄工程と、を備え、前記洗浄剤の温度は、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低く、前記濯ぎ液の温度は、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低く、前記予備洗浄剤の温度は、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低く、前記予備洗浄剤は、前記高分子化合物に対する相溶性を有する化合物を含むことを特徴とする。また、前記予備洗浄工程は、大気圧よりも低い環境下でおこなわれることが好ましい。さらに、前記予備洗浄工程の前記予備洗浄剤は、沸騰状態であることが好ましい。また、本発明は、上記の高分子化合物が付着した上記の物体の洗浄方法であって、上記の洗浄剤を前記物体に対して接触させる洗浄工程と、前記洗浄工程の後に行われ、前記洗浄剤に対して相溶性を有する濯ぎ液を用いて前記物体の濯ぎをおこなう濯ぎ工程と、を備え、前記洗浄剤の温度は、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低く、前記濯ぎ液の温度は、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低く、前記洗浄工程と前記濯ぎ工程とのうち少なくとも1つは、大気圧よりも低い環境下でおこなわれることを特徴とする。また、前記洗浄工程の前記洗浄剤と前記濯ぎ工程の前記濯ぎ液とのうち少なくとも1つは、沸騰状態であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高分子化合物が付着した物体を十分に洗浄できるとともに、洗浄作業時間の短い洗浄方法や洗浄装置を提供することができる。さらに、本発明によれば、洗浄方法や洗浄装置に適用可能な洗浄剤及び予備洗浄剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】洗浄方法の概要を示すフローチャートである。
図2】洗浄装置の概要を示す斜視図である。
図3】洗浄装置の概要を示す断面図である。
図4】洗浄方法の各工程における洗浄装置の概要を示す断面図である。
図5】洗浄装置に適用可能な密閉ユニットの概要を示す部分断面図である。
図6】コントローラと各ユニットの接続を示すブロック図である。
図7】洗浄方法の概要を示すフローチャートである。
図8】スポンジ型洗浄装置の概要を示す説明図である。
図9】スポンジ、モデル材、及び試料保持構造の概要を示す分解斜視図である。
図10】スポンジ型洗浄槽におけるモデル材の進退運動の概要を示す断面図である。
図11】モデル材の概要を示す説明図である。
図12A】スポンジ型洗浄装置の概要を示す説明図である。
図12B】スポンジの概要を示す斜視図である。
図12C】スポンジの概要を示す斜視図である。
図12D】スポンジの概要を示す斜視図である。
図12E】スポンジの概要を示す平面図である。
図12F】スポンジの概要を示す側面図である。
図12G】スポンジ型洗浄装置の概要を示す説明図である。
図13A】水車型洗浄装置の概要を示す説明図である。
図13B】水車型洗浄装置の概要を示す説明図である。
図14】水車型洗浄装置におけるモデル材の動きの概要を示す説明図である。
図15】水車型洗浄装置の概要を示す説明図である。
図16】密閉型洗浄容器の概要を示す側面図である。
図17】密閉型洗浄容器の概要を示す断面図である。
図18A】密閉型洗浄容器の概要を示す断面図である。
図18B】密閉型洗浄容器の概要を示す断面図である。
図18C】密閉型洗浄容器の概要を示す断面図である。
図18D】密閉型洗浄容器の概要を示す断面図である。
図19】密閉型洗浄容器の概要を示す断面図である。
図20】密閉型洗浄容器の概要を示す断面図である。
図21】密閉型洗浄容器の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、洗浄方法100は、サポート材SP(高分子化合物)が付着したモデル材MD(物体)からサポート材SPを除去するものであって、試料、すなわち、サポート材SPが付着したモデル材MDを予備洗浄剤LQ1に浸す予備洗浄工程110と、予備洗浄工程110の後に行われ、洗浄剤LQ2に対し試料を浸す洗浄工程120と、洗浄工程120の後に行われ、水(濯ぎ液)に対し試料を浸す濯ぎ工程130と、を備える。なお、必要に応じて、濯ぎ工程130の後に行われ、塗布液LQ3に対しモデル材MDを塗布する塗布工程140を行ってもよい。
【0018】
モデル材MDは、熱溶解積層法方式やインクジェット方式等に用いられる材料であり、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などがある。より具体的には、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、アクリル樹脂,ポリプロピレン樹脂等がある。また、市販されているものとして、例えば、VisiJet(登録商標。以下同じ) MX,VisiJet EX200,VisiJet SR200,VisiJet HR200,VisiJet DP200,VisiJet CPX200,VisiJet M2R-CL(株式会社スリーディー・システムズ・ジャパン)等がある。
【0019】
また、モデル材MDとして、AR-G1L(株式会社キーエンス)を用いることもできる。
AR-G1Lの成分:
シリコーン 65重量%
アクリル系モノマー 30~35重量%
有機リン化合物 1~5重量%
フェノン化合物 1~5重量%
【0020】
サポート材SPとしては、脂肪族アルコールがある。脂肪族アルコールとしては、炭素数が1~24のものが好ましい。脂肪族アルコールとして、例えば、ステアリルアルコール(CAS番号 112-95-5)等がある。市販されているものとして、例えば、VisiJet200(株式会社スリーディー・システムズ・ジャパン)等がある。
【0021】
また、サポート材SPとして、AR-S1(株式会社キーエンス)を用いることもできる。
AR-S1の成分:
アクリル系モノマー 10~25重量%
ポリプロピレングリコール 70~90重量%
光重合開始剤 1~5重量%
サポート材SPの密度:1.03(g/cm
【0022】
予備洗浄剤LQ1は、全体として疎水性であり、サポート材SPが溶解しやすいものであることが好ましい。予備洗浄剤LQ1としては、基油として利用される脂肪酸エステルであり、中でも、植物油由来の脂肪酸エステルであることが好ましい。脂肪酸エステルの融点は、サポート材SPの融点より低いことが好ましい。
【0023】
なお、融点の測定方法は、JIS K 0064-1992による(以降も同様である)。
【0024】
また、予備洗浄剤LQ1は、比較的低温域(例えば、サポート材SPの融点未満)で固化(ゲル化)することが好ましい。このために、予備洗浄剤LQ1は、脂肪酸エステルに加え、別の化合物が混ざっていてもよい。すなわち、脂肪酸エステルと別の化合物とを含む混合物の融点または軟化温度は、脂肪酸エステルよりも高い方が好ましい。これにより、予備洗浄剤LQ1は、使用時には、加熱により液化又は軟化する一方、使用しない場合には流動性が消失するため、その取り扱いが良くなる。予備洗浄剤LQ1における脂肪酸エステルの濃度は、発明の効果が出る程度であれば特に限定されないが、例えば、その下限は、30重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることが特に好ましい。この別の化合物としては、例えば、固形パラフィン(CAS番号 8002-74-2。英名:Paraffin wax)、サポート材SPと同一の化合物や、サポート材SPと共通の成分を有する化合物等があり、これらを単一又は組み合わせて用いてもよい。固形パラフィンの濃度の上限は、発明の効果が出る程度であれば特に限定されないが、例えば、80重量%であり、好ましくは70重量%であり、より好ましくは60重量%である。したがって、発明の効果が出る範囲において、過去に予備洗浄工程110にて使用した予備洗浄剤LQ1を、再度、予備洗浄工程110に使用することができる。
【0025】
なお、軟化温度の測定方法は、JIS K 7206-1991による(以降も同様である)。
【0026】
洗浄剤LQ2としては、全体として水溶性であり、溶媒と、界面活性剤とを含むものが好ましい。洗浄剤LQ2には、必要に応じて添加剤が含まれていてもよい。
【0027】
溶媒としては、水やアルコールであることが好ましい。水は、蒸留水であることが好ましい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコールやグリセリン等が適用できる。溶媒の濃度は、発明の効果が出る程度であれば特に限定されないが、10重量%以上99重量%以下であることが好ましく、50重量%以上99重量%以下であることがより好ましく、60重量%以上99重量%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
界面活性剤としては、モデル材MDからサポート材SPの除去に作用するものが好ましい。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤や両面界面活性剤等がある。
【0029】
アニオン界面活性剤としては、脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール流酸エステル塩、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル塩、α-スルホ脂肪酸エステル、α-オレフィンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩等がある。
【0030】
カチオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩や、アミン塩系(例えば、Nメチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩)等がある。
【0031】
両面界面活性剤としては、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタインや、アルキルアミンオキシド等がある。
【0032】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルや、脂肪酸アルカノールアミド等がある。
【0033】
界面活性剤の具体的なものとして、例えば、アミノ基と、親水基(アミノ基を除く)とを含むことが好ましい。親水基(アミノ基を除く)としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボニル基やスルホ基などがある。その具体例としては、エタノールアミン類(モノエタノールアミン、ジエタノールアミンやトリエタノールアミン)等がある。また、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル(CAS番号 77029-64-2)等を用いることもできる。
【0034】
界面活性剤の濃度は、発明の効果が出る程度であれば特に限定されないが、全体に対し1重量%以上40重量%以下であることが好ましく、1重量%以上30重量%以下であることがより好ましく、全体に対し1重量%以上25重量%以下であることがさらに好ましい。
【0035】
さらに、泡立ちをよくするために、モデル材MDからサポート材SPの除去に作用するために添加したものとは別の界面活性剤を含めてもよい。界面活性剤は、上述したものから適宜選択することが好ましい。泡立ち向上のための界面活性剤の濃度は、発明の効果が出る程度であれば特に限定されないが、全体に対し1重量%以上30重量%以下であることが好ましく、1重量%以上20重量%以下であることがより好ましく、1重量%以上10重量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
添加剤としては、金属イオンビルダー、アルカリビルダー、分散・再汚染防止ビルダ―、酵素、蛍光増白剤、漂白剤、泡コントロール剤、その他の補助剤などがあり、例えば、キシレンスルホン酸ナトリウム(CAS No.1300-72-7)や、ケイ酸ナトリウム(CAS No.6834-92-0)などがある。添加剤の濃度は、発明の効果が出る程度であれば特に限定されないが、1重量%以上20重量%以下であることが好ましい。
【0037】
塗布液LQ3は、モデル材MDの表面に対し、透光性を有するコーティング層をつくることが可能なものであればよい。塗布液LQ3としては、アミノ基を有するアルコールを含むことが好ましい。アミノ基を有するアルコールとしては、例えば、エタノールアミン類(モノエタノールアミン(CAS 141-43-5)、ジエタノールアミン(CAS 111-42-2)やトリエタノールアミン(CAS 102-71-6))等がある。なお、エタノールアミン類の水溶液であることが好ましい。エタノールアミン類の濃度は、発明の効果が出る程度であれば特に限定されないが、10重量%以上40重量%以下であることが好ましい。また、塗布液LQ3として、ポリプロピレングリコールやステアリン酸を用いてもよい。
【0038】
なお、塗布液LQ3としては、洗浄剤LQ2と共通の成分を有していてもよい。
【0039】
図2~3に示すように、洗浄装置2は、洗浄方法100の予備洗浄工程110~洗浄工程120を行うためのものであり、予備洗浄剤LQ1を収容する予備洗浄槽11と、洗浄剤LQ2を収容する洗浄槽12と、予備洗浄槽11及び洗浄槽12を収容する外容器21と、外容器2に収容される水WTの温度を調節するための温度調節ユニット30と、水WT、予備洗浄槽11や洗浄槽12を介して、予備洗浄剤LQ1や洗浄剤LQ2に超音波を印加するための超音波ユニット40と、各ユニットを制御するコントローラ80と、を備える。
【0040】
予備洗浄槽11及び洗浄槽12は、いずれも熱伝導性の良い材料(例えば、金属等)からなる。外容器21は、水WTを収容する。予備洗浄槽11及び洗浄槽12の中途部から底部にかけて、水WTに浸される。洗浄槽12の開口縁には、係合部12Kが設けられる。係合部12Kを外容器21の開口縁に係合することにより、洗浄槽12は、外容器21の底から離隔した状態を維持することができる。予備洗浄槽11の開口縁には、係合部11Kが設けられる。係合部11Kを洗浄槽12の開口縁に係合することにより、予備洗浄槽11は、外容器21の底から離隔した状態を維持することができる。なお、係合部11Kを外容器21の開口縁に係合してもよい。
【0041】
予備洗浄槽11の係合部11Kや、洗浄槽12の係合部12Kは、水WTに第1~2液LQ1~2等の異物が混入することを防ぐカバーとしても機能する。
【0042】
温度調節ユニット30は、外容器21に収容された水WTの温度を検知する温度センサ31と、外容器21に収容された水WTを加熱するヒータ32と、を備える。
【0043】
超音波ユニット40は、外容器21の外に配される制御ボックス41と、外容器21の水WT内に配される発振器42と、制御ボックス41及び発振器42をつなぐケーブル43と、を備える。超音波ユニット40による超音波の周波数は特に限定されないが、例えば、30Hz以上60Hz以下であることが好ましい。超音波の印加時間も特に限定されない。
【0044】
外容器21には、ヒータを覆うカバー21Sが設けられる。カバー21Sは、外容器21のうち底部以外を仕切る。これにより、ヒータ32からの熱を予備洗浄剤や洗浄剤に伝えるとともに、ヒータ32への超音波印加による故障を抑える。
【0045】
コントローラ80は、温度センサ31、ヒータ32や制御ボックス41等と電気的に接続する。
【0046】
次に、図4を用いて、洗浄方法100の説明を行う。
【0047】
(予備洗浄工程110)
コントローラ80の制御の下、温度調節ユニット30は、予備洗浄剤LQ1や洗浄剤LQ2の温度を、モデル材の融点より低く、かつサポート材の融点以上の範囲で調節する。このとき、予備洗浄剤LQ1や洗浄剤LQ2はいずれも液体となっており流動性を有している。さらに、コントローラ80の制御の下、超音波ユニット40に電源が投入され、予備洗浄剤LQ1や洗浄剤LQ2に対し超音波が印加される。
【0048】
次に、サポート材SPが付着したモデル材MDを予備洗浄剤LQ1に入れる(図4(A))。予備洗浄剤LQ1はサポート材SPに対して相溶性を有する成分が含まれるため、予備洗浄剤LQ1には大部分のサポート材SPが溶解する(図4(B))。所定時間を経過したら、モデル材MDを予備洗浄剤LQ1から引き上げる。このように、予備洗浄剤LQ1、温度や超音波の作用により、サポート材SPの大部分はモデル材MDから除去される。
【0049】
予備洗浄剤LQ1から引き上げる際、モデル材MDにはサポート材SPの一部が残っている。
【0050】
(洗浄工程120)
次に、サポート材SPが付着したモデル材MDを液状の洗浄液LQ2に入れる(図4(C))。洗浄液LQ2の成分(特に、界面活性剤)の作用により、残存するサポート材SPのほとんどは、モデル材MDから取り除かれ、洗浄剤LQ2中に存在することとなる。
【0051】
洗浄剤LQ2から引き上げる際、モデル材MDにはサポート材SPがほとんど残っていない。このとき、モデル材MDに残っているサポート材SPは、洗浄剤LQ2に含まれる界面活性剤の作用によって、水や水溶液などで洗い流しやすくなっている。
【0052】
(濯ぎ工程130)
洗浄剤LQ2から引き揚げたモデル材MDを水の中に置く(図4(D))。水の温度は室温でもよいが、モデル材の融点より低くかつサポート材SPの融点より高いことがより好ましい。水は、蒸留水であることが好ましい。
【0053】
なお、濯ぎ工程130において、所定の温度のお湯を収容する別の槽を外容器21に入れて、お湯にモデル材MDを浸漬した状態で、超音波を印加してもよい。また、濯ぎ工程130において、蒸留水ではなく、蒸留水に別の化合物(例えばアルコール等)が溶解した水溶液や、蒸留水に別の化合物が分散したもの等を用いてもよい。すなわち、濯ぎ工程130において用いられる濯ぎ液は、洗浄剤LQ2に対して相溶性を有するものであることが好ましい。
【0054】
(塗布工程140)
必要に応じて、モデル材MDを塗布液LQ3に入れる。所定時間を経過したら、モデル材MDを塗布液LQ3から引き上げる。これにより、モデル材MDの表層には、塗布液LQ3が塗布される。その後、所定時間の経過により、モデル材MDの表層には、コーティング層が形成される。
【0055】
このように、本発明によれば、予備洗浄剤LQ1や洗浄剤LQ2のような液状物を用いるため、モデル材MDが入り組んだ形状であっても、当該形状の奥まで液が届くため、当該形状の奥にあるサポート材SPを取り除くことができる。
【0056】
ここで、サポート材SPが付着したモデル材MDに対し、予備洗浄工程110を行わずに、洗浄工程120を行う場合を考える。洗浄工程120において、洗浄剤LQ2をモデル材MDに接触させると、洗浄剤LQ2に含まれる界面活性剤の作用により、モデル材MDに付着したサポート材SPを取り除くことができる。ところが、界面活性剤によるサポート材SPの除去作用の大きさは、界面活性剤の量に大きく影響するため、大量のサポート材SPが付着したモデル材MDに対し、予備洗浄工程110を行わずに洗浄工程120を行うと、大量のサポート材SPが洗浄剤LQ2に含まれることとなってしまう。かかる状態の洗浄剤LQ2においては、サポート材SPの除去作用がほとんど期待できない。
【0057】
サポート材SPの除去作用が低下する要因は、洗浄槽12における洗浄剤LQ2の濃度低下による除去作用低下と、洗浄槽12におけるサポート材SPの濃度増大による粘度向上とにあると、推測できる。
【0058】
このため、洗浄工程120におけるサポート材SPの除去作用を維持するためには、新しい洗浄剤LQ2を追加する必要がある。
【0059】
本発明では、サポート材SPを取り除くことが可能な洗浄剤LQ2に接触させる前に、サポート材SPが溶解可能な予備洗浄剤LQ1に接触させる。このため、洗浄工程120開始時点においてモデル材MDに付着するサポート材SPの量を可能な限り減らすことができる。このため、洗浄工程120における洗浄剤LQ2のサポート材SPの除去効果を維持することができる。また、予備洗浄剤LQ1によるサポート材SPの除去作用は、洗浄剤LQ2のような界面活性剤の作用ではなく、サポート材SPと相溶性による作用である。このため、予備洗浄剤LQ1において大量のサポート材SPが残存する場合においても、サポート材SPの除去作用を維持することができる。このように、予備洗浄工程110と洗浄工程120との組み合わせにより、サポート材SPの除去作用を維持することが可能となる。
【0060】
さらに、洗浄剤LQ2から引き上げる際、モデル材MDにはサポート材SPがほとんど残っていない。このとき、モデル材MDに残っているサポート材SPは、洗浄剤LQ2に含まれる界面活性剤の作用によって、水や水溶液などで洗い流しやすくなっている。よって、洗浄工程120の後に濯ぎ工程130を行うことで、モデル材MDからサポート材SPを除去することができる。
【0061】
また、予備洗浄剤LQ1とサポート材SPの混合物は、予備洗浄工程110において流動性を有していればよく、それより低温域(例えば室温)において流動性を失うものことが好ましい。これにより、この混合物の廃棄物としての取り扱いが容易となる。さらに、この混合物は、一般廃棄物としても利用可能であるし、燃料としても利用可能である。
【0062】
なお、予備洗浄剤LQ1から引き揚げたモデル材MDの表面には、予備洗浄剤LQ1とサポート材SPの混合物からなる層が形成される。これをサポート材SPの融点よりも低い温度(例えば常温)においておくと、固化(ゲル化)する。また、これをサポート材SPの融点よりも高い温度にすることで溶解する。したがって、予備洗浄剤LQ1とサポート材SPの混合物からなる層を、モデル材の保護層として利用することもできる。
【0063】
一方、洗浄剤LQ2とサポート材SPの混合物は、洗浄工程120においては液状ではあるものの、水溶性であるため、比較的安全である。この混合物の廃棄物としての管理が容易となる。また、洗浄剤LQ2とサポート材SPの混合物は、洗浄工程120において流動性を有していればよく、それより低温域(例えば室温)において流動性を失うことが好ましい。
【0064】
また、モデル材MDの材料によっては、熱に弱いものがある。このような場合、温度上昇によってモデル材MDが変形する場合がある。かかる場合、空気中でモデル材MDを加熱すると、自重によってモデル材が変形しやすくなる。本発明によれば、モデル材MDに対する加熱は液中で行うため、空気中で行う場合に比べ、浮力が働く分、自重によるモデル材の変形が抑えられる。
【0065】
濯ぎ工程130の後、モデル材MDに光沢を付与したい場合には、塗布工程140を行い、塗布液LQ3によって透光性を有するコーティング層をつくると、光沢が増え、外観上の見栄えが向上する。
【0066】
コーティング層による光沢の増加、外観上の見栄えが良くなる理由は、次のように推測される。モデル材MDの表面には、造形時の積層跡が縞状に残っている場合がある。サポート材SPを除去してしまうと、造形時の積層跡による反射によって、光沢を失い、白濁したような外観となる。一方、造形時の積層跡の上にコーティング層が形成されると、コーティング層において反射する結果、光沢が増え、外観上の見栄えが良くなる。
【0067】
上記実施形態では、洗浄方法100において、塗布工程140を行ったが、本発明はこれに限られない。モデル材MDの表面に異物(サポート材SPや、塗布液LQ3のコーティング層等)を残したくない場合や、外観上の見栄えが不要な場合には、塗布工程140は省略してもよい。
【0068】
なお、洗浄剤LQ2の溶媒の密度が、サポート材SPの密度と異なることが好ましい。例えば、サポート材SPの密度が洗浄剤LQ2の溶媒の密度よりも大きい場合には、第2浸漬工程において、サポート材SPは密度差によって洗浄剤LQ2と分離し、洗浄槽12の底に沈む。このため、洗浄剤LQ2からモデル材MDを引き出そうとする場合、除去されたサポート材SPがモデル材MDに再付着しにくくなる。
【0069】
上記実施形態では、洗浄方法100において、予備洗浄工程110を行ったが、本発明はこれに限られない。モデル材MDに付着するサポート材の付着量が少ない場合には、予備洗浄工程110は省略してもよい。
【0070】
上記実施形態では、予備洗浄槽11や洗浄槽12の開口を大気に対し解放した状態で、洗浄工程120を行ったが、本発明はこれに限られない。例えば、各開口を大気に対し密閉した状態で、洗浄工程120を行ってもよい。
【0071】
洗浄装置2は、前述した構成に加えて、予備洗浄槽11や洗浄槽12を収容する密閉ユニット60と、密閉ユニット60の内部空間の圧力を減じるポンプ70と、温度調節ユニット75と、を備えていてもよい(図5~6)。
【0072】
密閉ユニット60は、収容具61と、収容具61の開口を閉塞可能な蓋62と、蓋62に設けられたパッキン63と、解放弁64と、を備える。収容具61は、予備洗浄槽11や洗浄槽12を収容可能な収容空間61KXを有する。収容空間61KXの開口は、上方に開口する。蓋62を用いて収容空間61KXの開口を塞ぐと、パッキン63によって、収容空間61KXは密閉される(図5(B))。解放弁64は、コントローラ80の制御の下、収容空間61KXと外部空間が連通した開状態と、収容空間61KXと外部空間が断絶した閉状態との間で切り替え自在となる。
【0073】
ポンプ70は、吸気口71Aと排気口71Bを備えたポンプ本体71と、吸気口71Aと収容空間61KXを連通する配管72と、収容空間61KXの圧力を測定する圧力計73と、を備える。コントローラ80は、圧力計73の測定値を読み取りながら、ポンプ本体71を駆動する。これにより、ポンプ70は、コントローラ80の制御の下、収容空間61KXの内部気圧を所定の範囲に調節することができる。
【0074】
温度調節ユニット75は、予備洗浄槽11や洗浄槽12にそれぞれ収容された各洗浄剤LQ1~LQ2の温度を検知する温度センサ75Sと、収容具61の内側の底面に設けられた誘導加熱式のヒータ75Hと、を備える。
【0075】
コントローラ80の制御の下、温度調節ユニット75は、予備洗浄剤LQ1や洗浄剤LQ2の温度を、モデル材の融点より低くかつサポート材の融点以上の範囲となるように調節する。このとき、予備洗浄剤LQ1や洗浄剤LQ2はいずれも液状となっている。
【0076】
なお、必要に応じて、コントローラ80の制御の下、超音波ユニット40(図3)を用いて、予備洗浄剤LQ1や洗浄剤LQ2に対し超音波を印加してもよい。
【0077】
次に、密閉ユニット60の使用方法について説明する。
【0078】
(予備洗浄工程110)
図5(A)に示すように、予備洗浄槽11を収容空間61KXに配する。サポート材SPが付着したモデル材MDを予備洗浄剤LQ1に入れる。コントローラ80の制御の下、温度調節ユニット75は、予備洗浄剤LQ1の温度を、モデル材MDの融点より低くかつサポート材SPの融点以上の範囲となるように調節する。
【0079】
次に、解放弁64を閉じる。蓋62を用いて収容空間61KXの開口を塞ぐと、パッキン63により収容空間61KXは密閉空間となる(図5(B))。ポンプ70は、コントローラ80の制御の下、収容空間61KXの内部気圧が所定の範囲となるように調節する。
【0080】
予備洗浄剤LQ1はサポート材SPに対して相溶性を有する成分が含まれるため、予備洗浄剤LQ1には大部分のサポート材SPが溶解する。さらに、大気圧よりも低圧の環境に、サポート材SPが付着したモデル材MDを置くことにより、サポート材SPの中やモデル材MDとの境界部分に存在する気体が外部へ出る。この空気交換が行われる結果、モデル材MDにおけるサポート材SPの除去が進む。所定時間が経過した後、ポンプ70を停止し、解放弁64を開き、蓋62を開けて、モデル材MDを予備洗浄剤LQ1から引き上げる。
【0081】
(洗浄工程120)
次に、予備洗浄剤LQ1から引き上げたモデル材MDを洗浄液LQ2に入れる。コントローラ80の制御の下、温度調節ユニット75は、洗浄剤LQ2の温度を、モデル材MDの融点より低くかつサポート材SPの融点以上の範囲となるように調節する。
【0082】
次に、解放弁64を閉じ、蓋62を用いて収容空間61KXの開口を塞ぐと、パッキン63により収容空間61KXは密閉空間となる(図5(B))。ポンプ70は、コントローラ80の制御の下、収容空間61KXの内部気圧が所定の範囲となるように調節する。
【0083】
洗浄液LQ2の界面活性剤の作用により、残存するサポート材SPはモデル材MDから取り除かれ、洗浄剤LQ2中に存在する。さらに、大気圧よりも低圧の環境下に、サポート材SPが付着したモデル材MDを配することにより、モデル材MDにおけるサポート材SPの除去が進む。この結果、モデル材MDに残存するサポート材SPはわずかなものとなる。所定時間を経過したら、ポンプ70を停止し、解放弁64を開き、蓋62を開けて、モデル材MDを洗浄剤LQ2から引き上げる。
【0084】
ここで、大気圧よりも低圧の環境下において、予備洗浄工程110や洗浄工程120を行った場合、モデル材MDにおけるサポート材SPの除去が促進される要因は次のように推測される。
【0085】
モデル材MDの造形完了時点において、サポート材SPの中やモデル材MDとの境界部分には一定量の気体が存在している。ところが、造形時とほぼ同等の気圧の環境下で予備洗浄工程110や洗浄工程120を行っても、当該気体は内部に存在したままである。ところが、ポンプ70を用いて、造形時よりも低圧の環境下で予備洗浄工程110や洗浄工程120を行うと、気圧差によって、当該気体は外部空間へ飛び出しやすくなる。このようなこのような空気交換が行われる結果、モデル材MDにおけるサポート材SPの除去が促進される。
【0086】
なお、ポンプ70は、洗浄液LQ2が沸騰状態となる程度まで、収容空間61KXの内部気圧を減じることが好ましい。沸騰現象により、空気交換が促進され結果、モデル材MDにおけるサポート材SPの除去が進む。
【0087】
(濯ぎ工程130)
その後、洗浄剤LQ2から引き上げられたモデル材MDを、お湯を収容するビーカの中に入れて濯ぎ工程130を行う。お湯の温度は、モデル材MDの融点より低く、かつサポート材SPの融点以上の範囲で調節されることが好ましい。超音波ユニット40を駆動し、ビーカに収容されるお湯に対し超音波を印加してもよい。
【0088】
このように、大気圧よりも低圧の環境下において、予備洗浄工程110や洗浄工程120を行うことにより、モデル材MDにおけるサポート材SPの除去が促進される。モデル材MDにおけるサポート材SPの除去作用を得るためには、より高い温度が必要になるが、更なる低圧環境下において、予備洗浄工程110や洗浄工程120を行うことにより、より高温の環境をつくらずとも、モデル材MDにおけるサポート材SPの除去作用を得ることができる。したがって、モデル材MDの材料が熱に弱い場合には、大気圧よりも低圧の環境下において、予備洗浄工程110や洗浄工程120を行うことにより、熱変形を避けつつ、サポート材SPの除去作用を得ることが可能となる。
【0089】
密閉ユニット60における予備洗浄工程110と密閉ユニット60における洗浄工程120との間において、または、密閉ユニット60における洗浄工程120の後において、図2~3に示す洗浄装置2のような外部空間に解放された環境下で、超音波ユニット40を駆動しながら予備洗浄工程110や洗浄工程120を行ってもよい。
【0090】
また、目的とする洗浄度に応じて、予備洗浄工程110を省略してよい。
【0091】
ところで、モデル材MDに微細構造が形成されている場合、微細構造に入り込んだサポート材SPを取り除くことができない場合がある。微細構造としては、貫通孔や溝等がある。貫通孔のサイズは、例えば、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましく、0.5mm以下であることがさらに好ましい。また、溝の幅は、例えば、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましく、0.5mm以下であることがさらに好ましい。
【0092】
このような微細構造を有するモデル材MDの場合の洗浄方法100では、洗浄工程120に替えて、密閉ユニット60を用いた洗浄工程(以下、減圧型洗浄工程と称する)221と、減圧型洗浄工程221の後に行われ、スポンジ型洗浄装置200を用いたスポンジ型洗浄工程222と、を行うことが好ましい(図7)。さらに、濯ぎ工程130に替えて、スポンジ型濯ぎ工程132を行うことが好ましい。
【0093】
なお、場合によって、減圧型洗浄工程121を省略してもよい。また、減圧型洗浄工程121に替えて、洗浄装置2を用いた洗浄工程120を行ってもよい。
【0094】
また、必要に応じて、濯ぎ工程130又はスポンジ型濯ぎ工程132の後に行われ、塗布液LQ3に対しモデル材MDを塗布する塗布工程140を行ってもよい。
【0095】
次に、図8~11を用いて、スポンジ型洗浄装置200について説明する。
【0096】
以下、説明の便宜上、水平面における所定の方向をX方向と、水平面においてX方向と直交する方向をY方向と、X方向及びY方向に対して直交する方向をZ方向と、とする。
【0097】
図8~9に示すように、スポンジ型洗浄装置200は、スポンジ型洗浄槽210(槽)と、洗浄剤LQ2(液状の物質)を保持可能なスポンジ220と、サポート材SPが付着したモデル材MD(試料)を保持する試料保持構造230と、試料保持構造230をスポンジ220に対して進退自在に移動可能な移動機構240(移動機構)と、スポンジ型洗浄槽210に対して洗浄剤LQ2を供給する洗浄剤供給機構250と、スポンジ型洗浄槽210に対して濯ぎ液LQ5を供給する濯ぎ液供給機構260と、スポンジ型洗浄槽210からの排水を収容する廃液収容槽270と、スポンジ型洗浄槽210に設けられた液面センサ280と、各機構240~260を制御する制御機構290と、を備える。
【0098】
スポンジ型洗浄槽210は、洗浄剤LQ2(液状の物質)や濯ぎ液LQ5を収容可能となっている。そして、スポンジ型洗浄槽210の底には、スポンジ220が載置される。
【0099】
スポンジ220は、連続気泡構造を有し、洗浄剤LQ2を保持可能なものとなっていればよく、天然のもの、合成樹脂製や、これらに類するものでもよい。スポンジ220として、例えば、ウレタンスポンジ、セルローススポンジ、シリコーンスポンジ、ゴムスポンジ等がある。また、スポンジ220は、弾性を有していることが好ましい。スポンジ220の形状は直方体であり、稜線は、X方向、Y方向及びZ方向に延びる。
【0100】
モデル材MD(試料)は、スポンジ220の上面に載置される。モデル材MD(試料)の形状は直方体であり、稜線は、X方向、Y方向及びZ方向に延びる。モデル材MDには、上下方向に延びる貫通孔MDXが形成される。貫通孔MDXの第1開口(下側)は、スポンジ220に対して正対している。貫通孔MDXの第2開口(上側)は、外部に向かって解放される。
【0101】
液面センサ280は、スポンジ型洗浄槽210において、高さ方向に所定の間隔をあけて配される。
【0102】
試料保持構造230は、枠体231と、枠体231の中空部に設けられた網部材232と、を備える。枠体231は、水平に配される。網部材232は、金属やプラスチック等から形成される。網部材232の外形サイズは、モデル材MDの上面を覆う程度であればよい。網部材232の網目のサイズは、洗浄剤LQ2や濯ぎ液LQ5が通過可能なものであればよい。
【0103】
移動機構240は、枠体231を保持する枠体保持部材241と、上下方向(Z方向)に延びるように形成され、下方部において枠体保持部材241を保持する縦アーム242と、スポンジ型洗浄槽210に固定され、縦アーム242が上下方向に移動自在となるように縦アーム242の上方部を保持するアーム保持部材243と、アーム保持部材243に対する縦アーム242のスライド移動を駆動するモータ244と、を備える。
【0104】
枠体保持部材241は枠体231を着脱自在に保持することが好ましい。枠体保持部材241による枠体231の保持が解除された状態において、モデル材MD及びスポンジ220を所定に位置に載置する。その後、枠体保持部材241による枠体231の保持を行うことにより、所定の洗浄を行うことができる。
【0105】
モータ244は、制御機構290の制御の下、駆動される。モータ244の駆動により、縦アーム242は、スポンジ型洗浄槽210に対して上下方向に移動する。この結果、枠体保持部材241に保持された枠体231は、スポンジ型洗浄槽210に対して上下方向に移動する。このため、枠体231はスポンジ220に対して進退自在となっている。
【0106】
洗浄剤供給機構250は、スポンジ型洗浄槽210に対して洗浄剤LQ2を供給するものであり、洗浄剤LQ2を収容する洗浄剤タンク251と、洗浄剤タンク251に収容された洗浄剤LQ2の温度を測定する洗浄剤温度センサ252と、洗浄剤タンク251に収容された洗浄剤LQ2の温度を調節する洗浄剤温調器253と、洗浄剤LQ2を洗浄剤タンク251からスポンジ型洗浄槽210へ供給する洗浄剤配管254と、洗浄剤配管254に設けられた洗浄剤ポンプ255及び洗浄剤弁256と、を備える。
【0107】
制御機構290は、洗浄剤温度センサ252から、洗浄剤タンク251に収容された洗浄剤LQ2の温度を測定するとともに、測定した温度に基づいて洗浄剤温調器253を駆動する。これにより、洗浄剤温調器253は、洗浄剤LQ2の温度を、モデル材の融点より低く、かつサポート材の融点以上の範囲で調節する。
【0108】
洗浄剤配管254の入口254Aは、洗浄剤タンク251に収容された洗浄剤LQ2の液中にて開口し、洗浄剤配管254の出口254Bは、スポンジ型洗浄槽210の上方部分において、下側を向くように開口する。洗浄剤配管254の出口254Bは、スポンジ型洗浄槽210に載置されたスポンジ220の上方に位置することが好ましい。
【0109】
制御機構290は、液面センサ280の測定値を読み取りながら、スポンジ型洗浄槽210における液面高さを検知する。さらに制御機構290は、洗浄剤ポンプ255の駆動及び洗浄剤弁256を開く。これにより、洗浄剤タンク251から所定量の洗浄剤LQ2が送られるとともに、洗浄剤配管254の出口254Bからスポンジ型洗浄槽210に向けて所定量の洗浄剤LQ2が供給される。そして、制御機構290は、液面センサ280の測定値を読み取り、所定の液面高さとなったところで、洗浄剤ポンプ255の駆動を停止するとともに洗浄剤弁256を閉じる。
【0110】
濯ぎ液供給機構260は、スポンジ型洗浄槽210に対して濯ぎ液LQ5を供給するものであり、濯ぎ液LQ5を収容する濯ぎ液タンク261と、濯ぎ液タンク261に収容された濯ぎ液LQ5の温度を測定する濯ぎ液温度センサ262と、濯ぎ液タンク261に収容された濯ぎ液LQ5の温度を調節する濯ぎ液温調器263と、濯ぎ液LQ5を濯ぎ液タンク261からスポンジ型洗浄槽210へ供給する濯ぎ液配管264と、濯ぎ液配管264に設けられた濯ぎ液弁265と、を備える。なお、濯ぎ液配管264にポンプを設けてもよい。
【0111】
制御機構290は、濯ぎ液温度センサ262から、濯ぎ液タンク261に収容された濯ぎ液LQ5の温度を測定するとともに、測定した温度に基づいて濯ぎ液温調器263を駆動する。これにより、濯ぎ液温調器263は、濯ぎ液剤LQ5の温度を、モデル材の融点より低く、かつサポート材の融点以上の範囲で調節する。
【0112】
濯ぎ液配管264の入口264Aは、濯ぎ液タンク261に収容された濯ぎ液LQ5の液中にて開口し、濯ぎ液配管264の出口264Bは、スポンジ型洗浄槽210の内壁にて開口する。なお、濯ぎ液配管264の入口264Aは、濯ぎ液配管264の出口264Bよりも高い位置にあることが好ましい。また、濯ぎ液配管264の出口264Bは、洗浄剤LQ2の液面よりも高い位置で開口することが好ましい。
【0113】
制御機構290は、液面センサ280の測定値を読み取りながら、スポンジ型洗浄槽210における液面高さを検知する。さらに制御機構290は、濯ぎ液弁265を開く。これにより、濯ぎ液タンク261から所定量の濯ぎ液LQ5が送られるとともに、濯ぎ液配管264の出口264Bからスポンジ型洗浄槽210に向けて所定量の濯ぎ液LQ5が供給される。そして、制御機構290は、液面センサ280の測定値を読み取り、所定の液面高さとなったところで濯ぎ液弁265を閉じる。
【0114】
廃液収容槽270は、スポンジ型洗浄槽210からの排水を収容するものであり、スポンジ型洗浄槽210よりも低い位置に配される。スポンジ型洗浄槽210において、濯ぎ液配管264の出口264Bよりも低い位置に排出口210Eが形成される。排出口210Eからは排出用配管271が廃液収容槽270に向かってのびる。排出用配管271には、排出用弁273が設けられる。
【0115】
次に、スポンジ型洗浄装置200の使い方について述べる。
【0116】
(スポンジ型洗浄工程)
制御機構290は、排出用弁273を開くとともに、液面センサ280によるセンシング信号を読み取る。その後、制御機構290は、液面高さが所定のもの(例えば、液高さがゼロ)となったところで、排出用弁273を閉じる。こうして、スポンジ型洗浄槽210は空状態となる。
【0117】
次に、スポンジ型洗浄槽210において、枠体保持部材241による枠体231の保持を解除する。次に。モデル材MD及びスポンジ220を所定に位置に載置する。その後、枠体保持部材241による枠体231の保持を行う。このとき、枠体231及び網部材232は、モデル材MDから離隔している。
【0118】
次に、制御機構290は、洗浄剤ポンプ255の駆動及び洗浄剤弁256の開閉制御を通して、液面センサ280によるセンシング信号を読み取りながら、液面高さが所定のものとなるまで、洗浄剤タンク251からスポンジ型洗浄槽210へ洗浄剤LQ2を供給する。これにより、スポンジ型洗浄槽210へ供給された洗浄剤LQ2は、スポンジ220に吸収される。このとき、スポンジ220の上部は、液面から露出し、下部は、洗浄剤LQ2の中にあるため、スポンジ220の下部には、洗浄剤LQ2が存在する(接液退避状態)。
【0119】
その後、制御機構290は、モータ244を駆動する。これにより、試料保持構造230はスポンジ220に対して進退運動を行う。試料保持構造230がスポンジ220に対し近づくように移動すると、モデル材MDは、網部材232とスポンジ220によって挟まれた状態となる(図10(A))。さらに、試料保持構造230がスポンジ220に対し近づくと、モデル材MDがスポンジ220を押し込む押込状態となる。(図10(B))。スポンジ220がモデル材MDによって押し込まれると、スポンジ220の中にある洗浄剤LQ2がスポンジ220の上面まで供給する。こうして、洗浄剤LQ2がモデル材MDの貫通孔MDXに入る(接液状態)。
【0120】
ここで、洗浄剤LQ2の微細構造への入り込みやすさを考慮すると、モデル材MDの貫通孔MDXに入る洗浄剤LQ2は、泡状であることが好ましい。泡のサイズは、貫通孔MDXに比べて小さい方が好ましい。
【0121】
試料保持構造230を所定量だけ押し込んだ後、試料保持構造230は、スポンジ220に対し離れるように移動する。これにより、スポンジ220の弾性により、スポンジ220は元の形に戻ろうとする。そして、スポンジ220が復元する(押込退避状態)と、スポンジ220の上部が、液面から露出する。このとき、スポンジ型洗浄槽210にある洗浄剤LQ2やスポンジ220の周りにある空気は、元の形に戻ろうとするスポンジ220の内部へ吸い込まれる。
【0122】
このようにして、スポンジ220に対する試料保持構造230の進退運動を繰り返すことにより、スポンジ220は、弾性変形と、復元とを繰り返す。そして、スポンジ220は、弾性変形と復元との繰り返しにより、洗浄剤LQ2の泡を生成するとともに、モデル材MDの貫通孔MDXへ泡状の洗浄剤LQ2を供給することができる。モデル材MDの貫通孔MDXへ泡状の洗浄剤LQ2の供給を継続することにより、貫通孔MDXの第1開口(下側)から入った泡状の洗浄剤LQ2は、貫通孔MDXの第2開口(上側)から外部に流れ出る。貫通孔MDXに入る洗浄剤LQ2には、サポート材の洗浄成分が入っているため、貫通孔MDXにとどまっていた除去対象物質の除去が促される。
【0123】
なお、進退運動のストローク長は、貫通孔MDXの第1開口と第2開口までの容積や、第1開口と第2開口の高さ等によって調節することが好ましい。
【0124】
また、スポンジ220の高さ(Z方向)と、洗浄剤LQ2の液面の高さ(Z方向)との関係は、泡状の洗浄剤LQ2を生成及び供給可能な範囲であればよいが、空気の取り込みやすさを考慮すると、スポンジ220の高さ(Z方向)は、洗浄剤LQ2の液面の高さ(Z方向)よりも高い方が好ましい。
【0125】
(スポンジ型濯ぎ工程)
その後、制御機構290は、排出用弁273を開くとともに、液面センサ280によるセンシング信号を読み取る。その後、制御機構290は、液面高さが所定のもの(例えば、液高さがゼロ)となったところで、排出用弁273を閉じる。こうして、スポンジ型洗浄槽210は空状態となる。
【0126】
次に、制御機構290は、濯ぎ液弁265の開閉制御を通して、液面センサ280によるセンシング信号を読み取りながら、液面高さが所定のものとなるまで、濯ぎ液タンク261からスポンジ型洗浄槽210へ濯ぎ液LQ5を供給する。これにより、スポンジ型洗浄槽210へ供給された濯ぎ液LQ5は、スポンジ220に吸収される。その後、制御機構290は、モータ244を駆動する。これにより、モデル材MDはスポンジ220に対して進退運動を行う。この進退運動により、残留した洗浄剤LQ2と濯ぎ液LQ5との混合液が、モデル材MDの貫通孔MDXを流通する。
【0127】
その後、制御機構290は、排出用弁273を開き、スポンジ型洗浄槽210を空状態とした後、再び、濯ぎ液タンク261からスポンジ型洗浄槽210へ濯ぎ液LQ5を供給し、スポンジ220に対するモデル材MDの進退運動を行う。これを繰り返すことによって、スポンジ型濯ぎ工程132を行うことができる。スポンジ型濯ぎ工程132における濯ぎ液LQ5の挙動は、スポンジ型洗浄工程122における洗浄剤LQ2の挙動と同様であるため、貫通孔MDXにとどまっていた除去対象物質や洗浄剤LQ2の除去が促される。
【0128】
ここで、濯ぎ液LQ5の微細構造への入り込みやすさを考慮すると、モデル材MDの貫通孔MDXに入る濯ぎ液LQ5は、泡状であることが好ましい。
【0129】
上記実施形態では、スポンジ220の形状は、直方体であったが、本発明はこれに限られず、他の柱体でもよいし、球体、錐体、その他の形状であってもよい。また、スポンジ220の高さ(Z方向)は、モデル材MDに形成された貫通孔MDXの第1開口及び第2開口の高さに比べて高い方が良い。
【0130】
上記実施形態では、モデル材MDに形成された貫通孔MDXの形状は、直線状であったが(図10)、本発明はこれに限られず、クランク状(図11(A))のように、貫通孔MDXがモデル材MDの上面から下面にかけて形成され、貫通孔MDXが上面及び下面にそれぞれ開口しているものでもよい。
【0131】
また、貫通孔MDXの2つの開口は、コ字状(図11(B))のように、一つの面(図中では下面)に形成されている場合でもよい。この場合には、貫通孔MDXの2つの開口をスポンジ220に当ててもよいし、貫通孔MDXの2つの開口のうち一方をスポンジ220に当て、他方を外部へ開放してもよい。図示は省略するが、貫通孔MDXとして、L字状であってもよい。
【0132】
さらに、貫通孔MDXは、その孔サイズが一定でなくともよい。例えば、図11(C)のように、貫通孔MDXの中途部MDXcが、端部MDXeに比べて、孔のサイズが大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0133】
なお、モデル材MDの形状は、直方体であったが、本発明はこれに限られず、他の柱体でもよいし、球体、錐体、その他の形状であってもよい。
【0134】
上記実施形態では、スポンジ220の上にモデル材MDを載置したが、本発明はこれに限られず、本発明の趣旨の範囲において、モデル材MDの上にスポンジ220を載置してもよい。
【0135】
上記実施形態では、スポンジ220に対してモデル材MDを移動させたが、本発明はこれに限られず、モデル材MDに対して上下方向にスポンジ220を移動させてもよい。
【0136】
上記実施形態では、スポンジ220とモデル材MDとの相対的な移動方向として、上下方向(垂直方向)を採用したが、本発明はこれに限られず、本発明の趣旨の範囲において、水平方向や斜め方向としてもよい。
【0137】
上記実施形態では、スポンジ220とモデル材MDとの相対的な移動に、試料保持構造230と移動機構240等のスポンジ型洗浄装置200を用いたが、本発明はこれに限られず、洗浄液LQ2を含んだスポンジ220とモデル材MDとの相対的な移動は人手を使ってもよい。
【0138】
上記実施形態では、移動機構240がスポンジ変形構造として機能したが、本発明はこれに限られない。
【0139】
次に、スポンジ型洗浄装置200の変形例を説明する。スポンジ型洗浄装置600は、図12Aに示すように、袋610(槽)と、袋610に収容された洗浄剤LQ2と、袋610に収容されたスポンジ220と、を備える。
【0140】
洗浄剤LQ2の温度は、所定の温度範囲に調節される。洗浄剤LQ2の温度調節は、密閉型洗浄容器800への供給前に行われてもよいし、密閉型洗浄容器800への供給後に行われてもよい。
【0141】
袋610は、軟性の材料からできており、外力の付与によって変形が可能である。すなわち、袋610全体が変形可能となっている。袋610の変形によって、袋610に収容されたスポンジ220の変形が可能なものであることが好ましい。袋610としては、プラスチック製のものであることが好ましく、透光性を有するものであることが好ましい。また、変形操作のしやすさから、厚さは薄いものであることが好ましい。
【0142】
袋610に収容された洗浄剤LQ2は、すべて、スポンジ220に保持されている。
【0143】
図12Bに示すように、スポンジ220は、直方体状に形成され、上面に切り込み220Kが形成される。切り込み220Kには、サポート材SPが付着したモデル材MD(試料)が挿入される。
【0144】
手を用いて、袋610に対し外力を付与することにより、袋610が変形する。これにより、袋610に収容されたスポンジ220が弾性変形する。一方、外力の付与を解くとスポンジ220は復元する。こうして、外力の付与及び外力の解除を繰り返すことにより、スポンジ220は、弾性変形と、復元とを繰り返す。スポンジ220は、弾性変形と復元との繰り返しにより、洗浄剤LQ2の泡を生成するとともに、モデル材MDの貫通孔へ泡状の洗浄剤LQ2を供給することができる。モデル材MDの貫通孔へ泡状の洗浄剤LQ2の供給を継続することにより、貫通孔にとどまっていた除去対象物質の除去が促される。
【0145】
上記実施形態では、直方体状のスポンジ220を用いたが本発明はこれに限られない。例えば、筒状のスポンジ220(図12C)を用いてもよい。そして、筒状のスポンジ220の中空部220Xに試料を収容した状態で、洗浄剤LQ2を含むスポンジ220の弾性変形及び復元を繰り返し行えばよい。
【0146】
なお、スポンジとしては、シート状のスポンジ220(図12D)を用いてもよい。シート状のスポンジ220を、試料の周りを囲む状態にした状態で、スポンジ220の弾性変形及び復元を繰り返し行えばよい。
【0147】
さらに、シート状のスポンジ220としては、シート状のスポンジ本体220Bと、突起220T(第1係合部)が形成されたスポンジ本体221の一方の端部220BAと、切り込み220K(第2係合部)が形成されたスポンジ本体221の他方の端部220BBと、を備えていてもよい(図12E)。突起220Tは、切り込み220Kに対して係脱可能となっている。突起220Tを切り込み220Kに対して係合させると、スポンジ本体220Bは筒状となる(図12F)。そして、中空部220Xに対し試料を配置させてもよい。
【0148】
なお、袋610に収容された洗浄剤LQ2の一部がスポンジ220に保持され、残りは、袋610に貯留していてもよい(図12G)。
【0149】
上記実施形態では、スポンジ型洗浄工程122の例を説明したが、スポンジ型濯ぎ工程132においても利用可能である。すなわち、スポンジ型濯ぎ工程132における濯ぎ液LQ5の挙動は、スポンジ型洗浄工程122における洗浄剤LQ2の挙動と同様であるため、貫通孔にとどまっていた除去対象物質や洗浄剤LQ2の除去が促される。
【0150】
上記実施形態では、袋610全体が変形可能となっていたが、本発明はこれに限られず、変形可能部は、袋610の一部でもよいし、前述のスポンジ型洗浄槽210において一部に変形可能部を設け、変形可能部の変更により、スポンジ型洗浄槽210に収容されたスポンジ200を変形させてもよい。
【0151】
なお、微細構造を有する試料の洗浄方法100(図7)において、スポンジ型洗浄工程222に替えて、水車型洗浄装置300を用いた水車型洗浄工程を行ってもよい。また、スポンジ型濯ぎ工程223に替えて、水車型洗浄装置300を用いた水車型濯ぎ工程を行ってもよい。
【0152】
次に、水車型洗浄装置300について説明する。
【0153】
図13A~13Bに示すように、水車型洗浄槽ユニット310と、水車型濯ぎ槽ユニット320と、蓋ユニット330と、を備える。
【0154】
水車型洗浄槽ユニット310は、洗浄剤LQ2を収容する水車型洗浄槽312と、水車型洗浄槽312に収容された洗浄剤LQ2の温度を調節する洗浄剤温調器314と、を備える。
【0155】
水車型濯ぎ槽ユニット320は、濯ぎ液LQ5を収容する水車型濯ぎ槽322と、水車型洗浄槽312に収容された洗浄剤LQ2の温度を調節する洗浄剤温調器324と、を備える。
【0156】
蓋ユニット330は、蓋332と、蓋332の下面から下方に向かってのびる水車アーム333と、水車アーム333の先端において回動自在に設けられた水平軸334と、水平軸334に軸着された水車336と、水車336の周面において、所定の間隔で設けられたチャック部材337と、水平軸334の軸線周りにおいて水平軸334の回転または回動を行うモータ338と、各部を制御する制御機構339と、を備える。
【0157】
蓋332は、水車型洗浄槽312や水車型濯ぎ槽322の開口を塞ぐものであり、水車型洗浄槽312や水車型濯ぎ槽322の開口部に対して着脱自在となっている。
【0158】
水車型濯ぎ槽322は、水車型洗浄槽312と同様の構造を有するため、以降の蓋ユニット330の詳細の説明では、水車型洗浄槽312を用いて説明する。
【0159】
水車アーム333は、水車型洗浄槽312の開口部に対して蓋332を装着した際、水車型洗浄槽312に向かってのび、水平軸334は水平方向に向く。
【0160】
チャック部材337は、モデル材MDの保持及び保持の解除が可能となっている。
【0161】
制御機構339がモータ338を駆動すると、水車336は水平軸334周りに正逆方向に対して回転または回動する。チャック部材337に保持されたモデル材MDの移動軌跡は、水平軸334周りにおいて円状または円弧状となる。水車型洗浄装置300に収容された洗浄剤LQ2の液面は、モデル材MDの移動軌跡と交差する。すなわち、モータ338の駆動により、モデル材MDは、洗浄剤LQ2の液中にある浸漬状態と、浸漬状態から退避した退避状態との間で切り替え自在となる。なお、モデル材MDが液面に接近する際、貫通孔MDXが開口する開口部が液面に接近することが好ましい。
【0162】
(水車型洗浄濯ぎ工程)
洗浄剤LQ2が収容されている水車型洗浄槽312に対し蓋332を装着すると、水車336のうち下方部分は洗浄剤LQ2に浸かり、上方部分は洗浄剤LQ2の液面から出ている。制御機構339の制御の下、モータ338が駆動すると、水車336は、正逆方向への回転または回動する(図14)。この結果、チャック部材337に保持されたモデル材MDは、洗浄剤LQ2の液中にある浸漬状態と、浸漬状態から退避した退避状態との間で切り替え自在となる。このとき、モデル材MDが洗浄剤LQ2の液面へ進入する際、洗浄剤LQ2の液面近傍にあった空気が液中に混ざる結果、洗浄剤LQ2の液面近傍には泡が発生する。泡状となった洗浄剤LQ2が、モデル材MDに設けられた貫通孔MDXの下方の孔に入り込む(図14(A)~14(B))。その後、モデル材MDは、洗浄剤LQ2の中を進んだ後(図14(C))、洗浄剤LQ2から液の外に出る(図14(D))。このとき、貫通孔MDXに入った洗浄剤LQ2は、下方の孔から流れ出る。こうして、貫通孔MDXにおける洗浄が行われる。
【0163】
(水車型濯ぎ工程)
濯ぎ液LQ5が収容されている水車型濯ぎ槽322に対し蓋332を装着すると、水車336のうち下方部分は濯ぎ液LQ5に浸かり、上方部分は濯ぎ液LQ5の液面から出ている。制御機構339の制御の下、モータ338が駆動すると、水車336は、正逆方向への回転または回動する。この結果、チャック部材337に保持されたモデル材MDは、濯ぎ液LQ5の液中にある浸漬状態と、浸漬状態から退避した退避状態との間で切り替え自在となる。このとき、モデル材MDが濯ぎ液LQ5の液面へ進入する際、濯ぎ液LQ5の液面近傍にあった空気が液中に混ざる結果、濯ぎ液LQ5の液面近傍には泡が発生する。泡状となった濯ぎ液LQ5が、モデル材MDに設けられた貫通孔MDXの下方の孔に入り込む。その後、モデル材MDは、濯ぎ液LQ5の中を進んだ後(図14(C))、濯ぎ液LQ5から液の外に出る。このとき、貫通孔MDXに入った濯ぎ液LQ5は、下方の孔から流れ出る。こうして、貫通孔MDXにおける濯ぎが行われる。
【0164】
上記実施形態の水車型洗浄濯ぎ工程及び水車型洗浄濯ぎ工程において、水車型濯ぎ槽322や水車型洗浄槽312に蓋332を設けたが、本発明はこれに限られず、図15に示すような、ヒータ内蔵型の超音波洗浄機410に対して用いることができる。この場合には、水車型濯ぎ槽322や水車型洗浄槽312に替えて、超音波洗浄機410を囲むように配された外筒420に対し、蓋332を装着してもよい。蓋332を装着すると、水車336のうち下方部分は、超音波洗浄機410の中の洗浄剤LQ2や濯ぎ液LQ5に浸かり、上方部分は液面から出ることとなる。この状態で、制御機構339の制御の下、モータ338が駆動することにより、水車型洗浄濯ぎ工程及び水車型洗浄濯ぎ工程を行うことができる。
【0165】
上記実施形態では、試料の移動軌跡が、水平軸334周りにおいて円状または円弧状であったが、液中にある状態と液の外にある状態とを切り替えることができるものであれば、すなわち、移動軌跡の一部が液状の物質の中であり、残りが前記液状の物質の外であれば、直線状でもよい。例えば、本発明の趣旨において、試料は上下方向(Z方向)や斜め方向に往復運動してもよい。
【0166】
なお、微細構造を有するモデル材MDの場合の洗浄方法100(図7)において、水車型洗浄装置300を用いた水車型洗浄工程に替えて、密閉型洗浄容器800を用いた密閉型洗浄工程を行ってもよい。また、水車型洗浄装置300を用いた水車型濯ぎ工程に替えて、密閉型洗浄容器800を用いた密閉型濯ぎ工程を行ってもよい。
【0167】
図16~17に示すように、密閉型洗浄容器800は、洗浄剤LQ2を収容する下槽811と、下槽811の上に配される上槽812と、サポート材が付着したモデル材MD(試料)を保持するためのフィルター815及びフィルター816と、を備える。
【0168】
下槽811及び上槽812は有底の筒状体である。上槽812は下槽811の上方に位置する。下槽811の開口は上方を向き、上槽812の開口は下方を向く。下槽811の開口と上槽812の開口とは、同じ形状で同じ寸法となっているため、下槽811の開口と上槽812の開口とを正対させることで密閉容器が形成される。
【0169】
フィルター815は、下槽811の収容空間に設けられる。フィルター815は、下槽811及び上槽812の収容空間を2つの収容空間に仕切る。フィルター815よりも下方の収容空間を第1収容空間K1と、フィルター815よりも上方の収容空間を第2収容空間K2と定義する。フィルター816は、第2収容空間K2に設けられる。フィルター815、816は、それぞれシート状に形成され、その目は、モデル材MDよりも小さい。このため、フィルター815、816は、洗浄剤LQ2の通過を許容するとともに、モデル材MDの通過を規制することができる。下槽811の開口と上槽812の開口とを正対させると、フィルター815、816は、所定の間隔だけ離れた位置で向き合う。
【0170】
フィルター815は、下槽811に設けられた下槽保持部材817によって保持される。下槽保持部材817には、Z方向に延びるレール溝が設けられる。レール溝により、フィルター815はZ方向に移動自在となる。さらに、レール溝には、コイルバネ(フィルター付勢部材)が設けられている。この場合には、フィルター815は、Z方向上側に向けて付勢されている。同様に、フィルター816は、上槽812に設けられた上槽保持部材818によって保持される。上槽保持部材818には、Z方向に延びるレール溝が設けられる。レール溝により、フィルター816はZ方向に移動自在となる。さらに、レール溝には、コイルバネ(フィルター付勢部材)が設けられる。このため、フィルター816は、Z方向下側に向けて付勢されている。なお、レール溝にコイルバネを設けない場合には、フィルターの位置決めを行うためのる固定具を設ければよい。
【0171】
洗浄剤LQ2の温度は、所定の温度範囲に調節される。洗浄剤LQ2の温度調節は、密閉型洗浄容器800への供給前に行われてもよいし、密閉型洗浄容器800への供給後に行われてもよい。
【0172】
密閉型洗浄容器800を手で持って上下方向に振ると、洗浄剤LQ2は、フィルター815,816を介して、下槽811と上槽812との間を往復運動する。モデル材MDは、往復運動する洗浄剤LQ2に衝突する。このとき、モデル材MDが洗浄剤LQ2の液面へ進入する際、洗浄剤LQ2の近傍にあった空気が液中に混ざる結果、泡を含む液状の洗浄剤LQ2となる。また、フィルターの目が細かい場合には、フィルターの通過によっても泡が生成する。そして、泡状となった洗浄剤LQ2が、モデル材MDに設けられた貫通孔に供給されるため、貫通孔における洗浄が行われる。
【0173】
なお、フィルター815、816のいずれか一方は、フィルターではなく、板状部材でもよい。
【0174】
次に、密閉型洗浄容器の変形例を示す。図18A~18Bに示すように、密閉型洗浄容器820は、有底の筒状容器821と、筒状容器821に形成された開口821Xを開閉自在にする蓋822と、筒状容器821に設けられたフィルター815と、フィルター815を固定する下槽保持部材817と、モデル材MD(試料)を固定するためのフィルター816と、フィルター816を固定するフィルター固定具825と、を備える。
【0175】
フィルター815は、筒状容器821の収容空間Kの中途部に設けられる。フィルター815は、筒状容器821の収容空間を、フィルター815よりも下方の収容空間K1と、フィルター815よりも上方の収容空間K2と、に仕切る。収容空間K2にはモデル材MD(試料)が収容される。筒状容器821には洗浄剤LQ2が貯留する。
【0176】
フィルター固定具825は、蓋822の内面から起立する突起筒825Aと、突起筒825Aに収容されたコイルバネ825Bと、突起筒825Aの開口に基端部が挿入された棒825Cと、を備える。棒825Cは、基端部が突起筒825Aに挿入された状態で、Z方向に移動自在となっている。コイルバネ825Bは、棒825Cを下方向(棒825Cの先端部が蓋822から遠ざかる方向)に向けて付勢する。
【0177】
蓋822を開口821Xに装着すると、フィルター816は、モデル材MDに当接する。コイルバネ825Bにより、フィルター816は下方向に向けて付勢されているため、蓋822を開口821Xに装着すると、フィルター816はモデル材MDをフィルター815側に押し当てる。これにより、モデル材MDは、フィルター815及びフィルター816によって保持される。
【0178】
密閉型洗浄容器820を手で持って上下方向に振ると、洗浄剤LQ2は、収容空間K1,K2との間を往復運動する。モデル材MDは、往復運動する洗浄剤LQ2に衝突する。このとき、モデル材MDが洗浄剤LQ2の液面へ進入する際、洗浄剤LQ2の近傍にあった空気が液中に混ざる結果、泡を含む液状の洗浄剤LQ2となる。また、フィルターの目が細かい場合には、フィルターの通過によっても泡が生成する。そして、泡状となった洗浄剤LQ2が、モデル材MDに設けられた貫通孔に供給されるため、貫通孔における洗浄が行われる。
【0179】
また、図18Cに示すようにしてもよい。モデル材MDは、密閉型洗浄容器820内において、フィルター815,186によって固定される。モデル材MDが固定される位置は、やや低めの位置に設定され、洗浄剤LQ2の中に浸っている状態となる。この状態で洗浄剤LQ2による洗浄が行われる。さらに、水Wが貯留する大槽Sに密閉型洗浄容器820を配し、超音波洗浄機USを用いることにより洗浄が促進される。この場合には密閉型洗浄容器820はガラスなど超音波を透過するものであることが好ましい。次に、図18Dに示すように、密閉型洗浄容器820を上下反転させ大槽Sに配すると、モデル材MDは、洗浄剤LQ2の液面から出る。このように、密閉型洗浄容器820を正の向き(図18C)と逆の向き(18D)とを切り替えることにより、洗浄剤LQ2の動き、それに伴う泡の発生により、洗浄が促進する。
【0180】
なお、密閉型洗浄容器820において直線移動機構850を設けることにより、密閉型洗浄工程の自動化が可能となる。図19に示すように、直線移動機構850は、モータ851と、モータ851の駆動により回転する回転軸852と、密閉型洗浄容器820を保持する保持機構853と、カム機構855と、を備える。カム機構855は、回転軸852の回転運動をZ方向における保持機構853の往復運動に変換する。モータ831の駆動により、密閉型洗浄容器820は、Z方向において往復運動する。このため、洗浄剤LQ2は、フィルター815,816を介して、収容空間K1,K2との間を往復運動する。そして、泡状となった洗浄剤LQ2が、モデル材MDに設けられた貫通孔に供給されるため、貫通孔における洗浄が行われる。
【0181】
なお、密閉型洗浄容器820において回転移動機構830を設けることにより、密閉型洗浄工程の自動化が可能となる。図20に示すように、回転移動機構830は、モータ831と、モータ831の駆動により回転する回転軸832と、を備える。回転軸832は、Y方向に延びる。モータ831の駆動により、回転軸832はY軸周りに回転する。結果、モータ831の駆動により、洗浄剤LQ2の収容空間K1,K2の往復運動が発生する程度に、密閉型洗浄容器820はY軸周りに自転する。結果、泡状となった洗浄剤LQ2は、モデル材MDに設けられた貫通孔は洗浄される。なお、密閉型洗浄容器の公転運動が必要な場合には、回転軸832から径方向に延びるアームを設け、アームの先端に密閉型洗浄容器を取り付ければよい。
【0182】
上記実施形態では、密閉型洗浄容器を用いて、手動で、密閉型洗浄工程や密閉型濯ぎ工程を行ったが、自動化してもよい。この場合には、所定の移動機構を用いることが好ましい。例えば、図21に示すように、外槽881と、外槽881の内部空間の温度を調節する温度調節ユニット882とを備える恒温槽880において密閉型洗浄容器820を用いる場合には、外槽881の壁881Wに孔を形成し、その孔から回転軸832を通す。密閉型洗浄容器820を外槽の内部空間に収容する。そして、回転軸832と密閉型洗浄容器820を連結することにより、所定の温度環境において、密閉型洗浄容器820の自転運動が可能となる。
【0183】
上述した回転移動機構830や直線移動機構850は、密閉型洗浄容器800や密閉型洗浄容器820のみならず、スポンジ型洗浄装置200、水車型洗浄装置300や袋610にも適用可能である。また、恒温槽880において所定の工程を行う場合にも、図21に示した場合と同様に、外槽881の壁881Wに孔を形成し、その孔から回転軸を通すことにより、外槽881の外に配されたモータの動力が回転軸を経由してスポンジ型洗浄装置200、水車型洗浄装置300や袋610に伝動することができる。
【0184】
なお、洗浄剤LQ2において、炭酸を含む液体(例えば、炭酸水)を用いることにより、洗浄の効果が向上する。同様に、濯ぎ液LQ5として、炭酸を含む液体(例えば、炭酸水)や、炭酸を含む液体(例えば、炭酸水)とその他の液体の混合液を用いることにより、濯ぎの効果が向上する。
【0185】
なお、洗浄対象となる物体は、モデル材MDに限られない。また、除去対象物質は、サポート材SPや予備洗浄剤等、洗浄剤に含まれる洗浄成分が作用するものであればよい。例えば、また、除去対象物質が、一般的な油汚れである場合には、中性洗剤を用いてもよい。
【0186】
なお、上述したスポンジ型洗浄装置200や水車型洗浄装置300において液状のものに所定の処理を行って泡を発生させたが、本発明はこれに限られず、洗浄対象物(モデル材MD等)に直接泡を供給してもよい。
【0187】
なお、塗布液LQ3の挙動もまた、スポンジ型洗浄工程122における洗浄剤LQ2の挙動と同様であるため、前述の手段を用いることにより、貫通孔の内壁において塗布液LQ3の塗布が可能となる。
【0188】
上記実施形態では、サポート材SPの除去に用いたが、本発明はこれに限られない。例えば、油脂材(パラフィン系のワックス)に酸化クロムを練り込んだバフ研磨材(金属、非鉄金属の鏡面出し剤)の除去について本発明を適用してもよい。
【0189】
上記実施形態では、モデル材MDとして、熱溶解積層法方式やインクジェット方式等に用いられる材料を用いたが、本発明はこれに限られない。モデル材MDとして、金属製(例えば、鉄や非鉄金属類)のワークを用いてもよい。本発明は、金属製のワークに付着したサポート材を除去するために用いても良いし、後述の目的のために用いてもよい。
【0190】
ところで、切削加工後の金属製のワークには切削油が付着しているため、そのまま使用する場合には、切削油の除去が必要となる。除去可能な切削油としては、油性切削油や水溶性切削油がある。また、鉄などの金属製のワークは、錆に弱いため、輸送時や保管時には、金属製のワークを防錆油でコーティングする必要がある。
【0191】
かかる場合において、金属製のワークに対し、洗浄方法100の一部分を行ってもよい。予備洗浄工程110では、金属製のワークを予備洗浄剤LQ1に浸漬する。これにより、金属製のワークに付着していた大部分の油性切削油が、予備洗浄剤LQ1に溶けだす。結果、金属製のワークから大部分の油性切削油を取り除くことができる。
【0192】
次に、洗浄工程120では、金属製のワークを洗浄剤LQ2に浸漬する。これにより、金属製のワークの表面に洗浄剤LQ2のコーティング層が形成する。このコーティング層が、防錆層として機能する。なお、洗浄工程120の後、濯ぎ工程130や塗布工程140は行わなくてよい。
【0193】
油性切削油を除去するための予備洗浄剤LQ1としては、サポート材SPの溶解するために用いたものと同様のものを適用することができる。
【0194】
防錆層を形成する洗浄剤LQ2としては、全体として水溶性であり、溶媒と、防錆成分とを含む。
【0195】
溶媒としては、水やアルコールであることが好ましい。溶媒の濃度は、発明の効果が出る程度であれば特に限定されないが、5重量%以上100重量%以下であることが好ましく、50重量%以上100重量%以下であることがより好ましく、80重量%以上100重量%以下であることが特に好ましい。
【0196】
防錆成分としては、アミノ基と、親水基(アミノ基を除く)とを含むことが好ましい。親水基(アミノ基を除く)としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボニル基やスルホ基などがある。その具体例としては、エタノールアミン類(モノエタノールアミン、ジエタノールアミンやトリエタノールアミン)等がある。洗浄成分の濃度は、発明の効果が出る程度であれば特に限定されないが10重量%以上40重量%以下であることが好ましい。
【0197】
上記実施形態では、金属製のワークに対する切削油の除去について述べたが、本発明はこれに限られない。本発明は、切削油以外にもグリースにも適用可能である。
【0198】
<実施例>
実験A1~A15を行った。
【0199】
(実験A1)
3Dプリンタ(3Dシステムス社製 VisiJetシリーズ)を用いて、モデル材MD及びサポート材SPから三次元造形物Xをつくった。三次元造形物Xのうちモデル材MDは、直方体形状(縦:50mm、横:30mm、高さ:30mm)である。直方体形状のモデル材MDは、天面から底面に向けて貫通する直線貫通孔(直径φ:1.0mm、長さ:30mm)とが、それぞれ5個形成されている。サポート材SPは、モデル材MDの各面に対し一様の厚さ(約10~15mm)で付着するとともに、及び全ての貫通孔にかけて充填されていた。
【0200】
モデル材MDとして、VisiJet Crystal EX200 Plastic Material(株式会社スリーディー・システムズ・ジャパン)を利用した。
モデル材MDの成分:
ウレタンアクリラートオリゴマー 20~40重量%
エトキシル化ビスフェノールAジアクリラート(CAS番号 64401-02-01) 15
~35重量%
トリプロプレングリコールアクリラート(CAS番号 42978-66-5) 1.5~3重量%
【0201】
サポート材SPとして、VisiJet200(株式会社スリーディー・システムズ・ジャパン)を用いた。
サポート材SPの成分:ヒドロキシ化ワックス(CAS番号 112-95-5)
サポート材SPの融点:55~65℃
サポート材SPの密度:0.85~0.91(g/cm
【0202】
三次元造形物Xに対して、洗浄方法100を行った。
【0203】
用いた予備洗浄剤の成分は以下の通りである。
脂肪酸エステル 70重量%
固形パラフィン(CAS番号 8002-74-2) 30重量%
【0204】
用いた洗浄剤の成分は以下の通りである。
水 70重量%
トリエタノールアミン(CAS番号 102-71-6) 20重量%
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル 10重量%
【0205】
(予備洗浄工程)
図5に示す密閉ユニット60において、予備洗浄工程を行った。予備洗浄剤の温度T1は70℃を維持した。三次元造形物Xを予備洗浄剤LQ1(250cc)に沈め、解放弁64を閉じ、蓋62を用いて収容空間61KXの開口を塞いだ。ポンプ70によって、収容空間61KXの減圧を行った。大気圧からの減圧量ΔP1は、0.08MPaであった。以上の条件で、予備洗浄工程を行った。予備洗浄工程を行った時間S1は9分であった。
【0206】
(洗浄工程)
次に、密閉ユニット60において、洗浄工程を行った。洗浄剤の温度T2Aは65℃を維持した。三次元造形物Xを洗浄剤LQ2(250cc)に沈め、解放弁64を閉じ、蓋62を用いて収容空間61KXの開口を塞いだ。ポンプ70によって、収容空間61KXの減圧を行った。減圧操作は、洗浄剤LQ2の沸騰が開始した時点で停止した。沸騰が開始した時点の大気圧からの減圧量ΔP2は、0.07MPaであった。以上のように、沸騰した洗浄剤LQ2を用いて洗浄工程を行った。この洗浄工程を行った時間S2Aは2分であった。
【0207】
次に、図2に示す洗浄装置2において洗浄工程を行った。洗浄剤の温度T2Bは65℃を維持した。三次元造形物Xを洗浄剤LQ2(250cc)に沈め、超音波ユニット40により、洗浄剤LQ2に対し超音波を印加した。印加した超音波の周波数f2は40KHzであった。この洗浄工程を行った時間S2Bは2分であった。
【0208】
(濯ぎ工程)
次に、洗浄装置2の外容器21にビーカを配置した。ビーカの中に水を250cc注いだ。水の温度T3は65℃を維持した。三次元造形物Xをお湯に沈め、超音波ユニット40により、水に対し超音波を印加した。印加した超音波の周波数f3は40KHzであった。この濯ぎ工程を行った時間S3は3分であった。
【0209】
(実験A2~15)
実験A2、A6~7、A11~12では、表1に記載した条件以外は、実験A1と同様にして、三次元造形物Xに対してサポート材の洗浄方法を行った。なお、表中、孔形状における「ストレート」とは、図10のものを指し、「クランク」とは、図11(A)のものを指し、「コ字状」とは、図11(B)のものを指す。
【表1】
【0210】
実験A3では、図2に示す洗浄装置2を用いた洗浄工程の代わりに、図8に示すスポンジ型洗浄装置200を用いたスポンジ型洗浄工程を行った。洗浄剤の温度T2Cは65℃を維持した。この洗浄工程を行った時間S2Cは1分であった。そして、実験A1の濯ぎ工程に替えて、図8に示すスポンジ型洗浄装置200を用いたスポンジ型濯ぎ工程を行った。濯ぎ液の温度T3Bは65℃を維持した。この洗浄工程を行った時間S3Bは3分であった。
【0211】
実験A4、A8~A9、A13~14において、図2に示す洗浄装置2を用いた洗浄工程の代わりに、図8に示すスポンジ型洗浄装置200を用いたスポンジ型洗浄工程を行った。そして、実験A1の濯ぎ工程に替えて、図8に示すスポンジ型洗浄装置200を用いたスポンジ型濯ぎ工程を行った。表1に記載した条件以外は、実験A3と同様の条件でスポンジ型洗浄工程及びスポンジ型洗浄工程を行った。
【0212】
実験A5では、図2に示す洗浄装置2を用いた洗浄工程の代わりに、図13Aに示す水車型洗浄装置300を用いた水車型洗浄工程を行った。洗浄剤の温度T2Dは65℃を維持した。この洗浄工程を行った時間S2Dは1分であった。そして、実験A1の濯ぎ工程に替えて、図13Aに示す水車型洗浄装置300を用いた水車型濯ぎ工程を行った。濯ぎ液の温度T3Cは65℃を維持した。この洗浄工程を行った時間S3Cは3分であった。
【0213】
実験A10、A15においても、図2に示す洗浄装置2を用いた洗浄工程の代わりに、図13Aに示す水車型洗浄装置300を用いた水車型洗浄工程を行った。そして、実験A1の濯ぎ工程に替えて、図13Aに示す水車型洗浄装置300を用いた水車型濯ぎ工程を行った。表1に記載した条件以外は、実験A5と同様の条件で水車型洗浄工程及び水車型濯ぎ工程を行った。
【0214】
実験A1~A15後の三次元造形物X(モデル材)に対し、後述の基準で評価を行った。それぞれの評価結果は、表1に示す。
【0215】
1.洗浄度合い評価(面)
実験A1~A15後の三次元造形物X(モデル材)の表面(貫通孔を除く)に対し評価を行った。
評価基準は以下の通りである。
1:目視観察したところサポート材がほとんど残っていた。
2:目視観察したところサポート材がわずかに残っていた。
3:目視観察したところサポート材が全く残っていなかった。
【0216】
2.洗浄度合い評価(孔)
実験A1~A15後の三次元造形物X(モデル材)の貫通孔に対し評価を行った。
評価基準は以下の通りである。
1:目視観察したところサポート材がほとんど残っていた。
2:目視観察したところサポート材がわずかに残っていた。
3:目視観察したところサポート材が全く残っていなかった。
【0217】
(実験B1)
水を用いて、実験A3を行った後のモデル材MDを、図8に示すスポンジ型洗浄装置200にセットした。スポンジ220の半分の高さまで水を張って、モデル材MDを用いてスポンジ220の弾性変形及び復元を1分間繰り返し行ったが、モデル材MDの貫通孔に水は入らなかった。
【0218】
(実験B2)
中性洗剤を含む水(濃度2重量%)を用いて、実験B2と同様にして、モデル材MDを用いてスポンジ220の弾性変形及び復元を1分間繰り返し行った。泡状の液体が、モデル材MDの貫通孔(上側)からあふれ出てきた。
【0219】
なお、本発明は、以下のようなものであってもよい。
【0220】
試料に形成された開口に対し液状の物質を供給する供給装置であって、泡を含む液状の物質を前記開口に供給する気液供給機構を備え、前記気液供給機構は、前記試料が前記液状の物質に接する接液状態と、前記接液状態から退避する接液退避状態と、の間で、繰り返し切り替え自在であることを特徴とする。
【0221】
前記試料は、3Dプリンターによって形成されたモデル材と、前記モデル材に付着したサポート材と、を備え、前記液状の物質は、前記モデル材から前記サポート材を取り除く洗浄剤であり、前記開口の寸法は、2mm以下0.5mm以上であることが好ましい。
また、前記気液供給機構は、弾性を有するスポンジと、前記スポンジを収容する槽と、前記スポンジを変形させるスポンジ変形機構と、を備え、前記スポンジは連続気泡構造を備え、前記接液退避状態のとき、前記槽内の前記スポンジは、一部が液面から露出しているともに、前記液状の物質を含み、前記スポンジ変形構造は、前記試料の開口部が前記スポンジに当接した状態のまま前記当接部分が凹むように前記スポンジを変形させるとともに、前記変形が解除されるように前記スポンジから前記試料の開口部を退避することが可能であり、前記スポンジの変形によって前記接液状態となり、前記スポンジの変形の解除によって前記接液退避状態となることが好ましい。さらに、前記スポンジには、切り込みが形成され、前記切り込みには、前記試料が収容可能となっていることが好ましい。
【0222】
前記スポンジは、筒状体に形成され、前記試料の周りを囲むように配されていることが好ましい。また、前記スポンジは、シート状であり、前記試料の周りを囲むように配されていることが好ましい。
【0223】
前記スポンジは、シート状のスポンジ本体を備え、前記スポンジ本体は、第1係合部と、前記第1係合部から離れた位置に形成された第2係合部と、を備え、前記第1係合部は、前記第2係合部に対して係脱可能であり、前記第1係合部が前記第2係合部に係合した際、前記スポンジ本体は、前記試料の周りを囲むように配されていることが好ましい。また、前記スポンジ変形機構は、前記槽全体が変形可能である、または、前記槽の一部が変形可能となっており、前記スポンジは、前記変形可能部の変形とともに変形可能となるように前記槽内に配されていることが好ましい。
【0224】
前記スポンジ変形構造は、前記試料を前記スポンジに対して進退自在に移動可能にする移動機構を備え、前記移動機構により、前記スポンジは、前記試料によって押し込まれた押込状態と、前記押込状態から退避した押込退避状態との間で、切り替え自在となっており、前記押込状態のときに前記接液状態となり、前記押込退避状態のときに前記接液退避状態となることが好ましい。
【0225】
前記洗浄剤は、前記サポート材の融点以上、前記モデル材の融点よりも低い範囲において流動性を有し、前記洗浄剤が流動性を示すように温度を調節する温度調節機構を備え、前記温度調節機構は、前記槽、前記液状物質及び前記試料を収容する外槽と、前記外槽の内部空間の温度を調節する温度調節ユニットと、を備え、前記移動機構は、軸と、前記軸を回転させる駆動装置と、前記軸の回転運動を前記試料の直線運動に変換するカム機構と、を備え、前記駆動装置は、前記外槽の外部に配され、前記軸は、前記外槽に形成された孔に相通されたことが好ましい。
【0226】
前記気液供給機構は、槽と、前記槽に形成された開口を開閉自在にする蓋と、前記槽の収容空間を第1~2収容空間に仕切るフィルターと、を備え、前記フィルターは、前記液状の物質の通過を許容するとともに、前記試料の通過を規制することが可能であり、前記試料は、前記フィルターによって仕切られた収容空間の一方側に配され、外力の付与によって、前記液状の物質が前記フィルターを介して前記第1収容空間と前記第2収容空間との間の往復移動が可能となっており、前記液状の物質の往復移動によって、前記接液状態と前記接液退避状態との間で切り替えが可能となっていることが好ましい。
【0227】
前記気液供給機構は、前記液状の物質の往復移動が行われるように前記槽を移動させる移動機構を備えることが好ましい。また、前記移動機構により、前記槽は、往復運動、自転運動及び公転運動のうち少なくとも1つをすることが好ましい。
【0228】
前記洗浄剤は、前記サポート材の融点以上、前記モデル材の融点よりも低い範囲において流動性を有し、前記洗浄剤が流動性を示すように温度を調節する温度調節機構を備え、前記温度調節機構は、前記槽、前記液状物質及び前記試料を収容する外槽と、前記外槽の内部空間の温度を調節する温度調節ユニットと、を備え、前記移動機構は、軸と、前記軸を回転させる駆動装置と、前記軸の回転運動を、前記槽の往復運動、自転運動及び公転運動のうち少なくとも1つに変換する伝動機構と、を備え、
前記駆動装置は、前記外槽の外部に配され、前記軸は、前記外槽に形成された孔に相通されたことが好ましい。
【0229】
前記気液供給機構は、液状の物質を収容する槽と、前記接液状態と前記接液退避状態との間で切り替え自在となるように、前記試料を移動させる切替機構と、を備え、前記切替機構による前記試料の移動軌跡が環状または直線状となっており、前記移動軌跡の一部が前記液状の物質の中にあり、残りが前記液状の物質の外にあることが好ましい。また、前記試料の移動軌跡が環状となっており、前記切替機構は、軸と、前記軸を回転させる駆動装置と、を備え、前記試料は、前記軸の周りを回転自在となっていることが好ましい。さらに、前記洗浄剤は、前記サポート材の融点以上、前記モデル材の融点よりも低い範囲において流動性を有し、前記洗浄剤が流動性を示すように温度を調節する温度調節機構を備え、前記温度調節機構は、前記槽、前記液状物質及び前記試料を収容する外槽と、前記外槽の内部空間の温度を調節する温度調節ユニットと、を備え、前記駆動装置は、前記外槽の外部に配され、前記軸は、前記外槽に形成された孔に相通されたことが好ましい。
【0230】
前記液状の物質は、炭酸水が含まれることが好ましい。
【0231】
試料に形成された開口に対し液状の物質を供給する供給方法であって、前記液状の物質の泡を生成する泡生成ステップと、前記試料が前記液状の物質に接する接液状態と、前記接液状態から退避する接液退避状態と、の間で、交互に繰り返し切り替える接液切替ステップと、を備えることを特徴とする。
【0232】
前記試料は、3Dプリンターによって形成されたモデル材と、前記モデル材に付着したサポート材と、を備え、前記液状の物質は、前記モデル材から前記サポート材を取り除く洗浄剤であり、前記開口の寸法は、2mm以下0.5mm以上であることが好ましい。
【0233】
弾性を有するスポンジと、前記スポンジを収容する槽と、を用い、前記スポンジは連続気泡構造を備え、前記接液退避状態のとき、前記槽内の前記スポンジは、一部が液面から露出しているともに、前記液状の物質を含み、前記接液切替ステップでは、前記接液退避状態から前記接液状態へ遷移するように、前記試料の開口部が前記スポンジに当接した状態のまま前記当接部分が凹むように前記スポンジを変形させる変形ステップと、前記接液状態から前記接液退避状態へ遷移するように、前記変形を解除すること変形解除ステップと、が交互に繰り返して行われるとともに、前記変形解除ステップと前記泡形成ステップとが同時に行われることが好ましい。
【0234】
前記接液切替ステップでは、前記槽の変形により、前記試料は前記接液退避状態から前記接液状態へ切り替えられ、前記槽の変形の解除により、前記試料は前記接液状態から前記接液退避状態へ切り替えられることが好ましい。
【0235】
前記試料を前記スポンジに対して進退自在に移動可能な移動機構を用い、前記接液切替ステップでは、前記移動機構によって、前記スポンジは、前記試料に形成された開口部によって押し込まれた押込状態と、前記押込状態から退避した押込退避状態と、の間で交互に切り替えられ、前記押込状態のときに前記接液状態となり、前記押込退避状態のときに前記接液退避状態となることが好ましい。
【0236】
槽と、前記槽に形成された開口を開閉自在にする蓋と、前記槽の収容空間を第1~2収容空間に仕切るフィルターと、を用い、前記フィルターは、前記液状の物質の通過を許容するとともに、前記試料の通過を規制することが可能であり、前記試料は、前記フィルターによって仕切られた収容空間の一方側に配され、外力の付与によって、前記液状の物質が前記フィルターを介して前記第1収容空間と前記第2収容空間との間の往復移動が可能となっており、前記接液切替ステップでは、前記液状の物質の往復移動によって、前記接液状態と前記接液退避状態との間で切り替えが可能となっていることが好ましい。
【0237】
液状の物質を収容する槽と、前記接液状態と前記接液退避状態との間で切り替え自在となる切替機構と、を備え、前記切替機構は、軸と、前記軸に対し回動自在となっているホルダと、を備え、前記ホルダは、前記試料を着脱自在となっており、前記接液切替ステップでは、前記接液状態と前記接液退避状態との間で切り替えが繰り返し行われるように、前記軸の回転が行われることが好ましい。
【0238】
疎水性の高分子化合物が付着した物体から前記高分子化合物を洗浄する洗浄剤であって、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低い範囲において流動性を有し、溶媒と、水溶性であり、前記高分子化合物に作用する洗浄成分と、界面活性剤と、を含み、前記界面活性剤の作用によって、洗浄成分の泡形成が促進されることを特徴とする。
【0239】
疎水性の高分子化合物が付着した物体から前記高分子化合物を洗浄する洗浄剤であって、前記高分子化合物の融点以上、前記物体の融点よりも低い範囲において流動性を有し、溶媒と、水溶性であり、前記高分子化合物に作用する洗浄成分と、
炭酸を含む液体と、を含むことを特徴とする。
【0240】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0241】
2 洗浄装置
100 高分子化合物の洗浄方法
110 予備洗浄工程
120 洗浄工程
130 濯ぎ工程
200 スポンジ型洗浄装置
210 スポンジ型洗浄槽
210E 排出口
220 スポンジ
221 減圧型洗浄工程
222 スポンジ型洗浄工程
223 スポンジ型濯ぎ工程
230 試料保持構造
240 移動機構
250 洗浄剤供給機構
260 液供給機構
270 廃液収容槽
280 液面センサ
290 制御機構
300 水車型洗浄装置
310 水車型洗浄槽ユニット
320 水車型濯ぎ槽ユニット
330 蓋ユニット
410 超音波洗浄機
420 外筒

図1
図2
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図13B
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