(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】アーク溶接装置、溶接作業訓練方法及び溶接作業訓練補助プログラム
(51)【国際特許分類】
B23K 31/00 20060101AFI20240517BHJP
B23K 9/10 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B23K31/00 Z
B23K9/10 Z
(21)【出願番号】P 2024510416
(86)(22)【出願日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2023043423
【審査請求日】2024-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2023020753
(32)【優先日】2023-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】定塚 拓也
(72)【発明者】
【氏名】井原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】于 博
(72)【発明者】
【氏名】本田 英嗣
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-16870(JP,A)
【文献】特開2022-176445(JP,A)
【文献】特開2019-181488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/00-37/08
B23K 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接電源と溶接トーチとを少なくとも備えたアーク溶接装置であって、
入力部と表示部と制御部とをさらに備え、
ワークの溶接速度が前記入力部から入力された情報に基づいて設定されると、
前記制御部は、前記溶接速度での移動イメージを前記表示部に表示することを特徴とするアーク溶接装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアーク溶接装置において、
前記表示部は、二次元画像を表示する表示画面を有し、
前記制御部は、設定された前記溶接速度を前記表示画面に表示するとともに、前記溶接速度で移動または変形するマークを前記表示画面に表示することを特徴とするアーク溶接装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアーク溶接装置において、
前記マークは、一の方向に沿った長さが前記溶接速度で長くなるように設定されており、
前記マークの長さが、前記溶接速度での移動距離を示すことを特徴とするアーク溶接装置。
【請求項4】
請求項3に記載のアーク溶接装置において、
前記制御部は、前記マークを前記マークの長さが所定の期間毎にゼロから所定の長さまで繰り返し変化するように、前記表示画面に表示することを特徴とするアーク溶接装置。
【請求項5】
請求項2に記載のアーク溶接装置において、
前記制御部は、前記マークを前記溶接速度で一の方向に沿って前記表示画面上を移動するように、前記表示画面に表示することを特徴とするアーク溶接装置。
【請求項6】
請求項1に記載のアーク溶接装置において、
前記表示部は、一の方向に沿って互いに所定の間隔をあけて配列された複数の点光源を有し、
前記溶接速度が設定されると、前記制御部は、前記複数の点光源を前記溶接速度にしたがって順次点灯することを特徴とするアーク溶接装置。
【請求項7】
請求項1に記載のアーク溶接装置において、
前記表示部は、一の方向が長手方向である面光源を有し、
前記溶接速度が設定されると、前記制御部は、前記面光源を前記溶接速度にしたがって、前記一の方向に沿って色または輝度が段階的に変化しつつ発光するように駆動することを特徴とするアーク溶接装置。
【請求項8】
溶接作業訓練補助装置を用いた溶接作業訓練方法であって、
前記溶接作業訓練補助装置は、少なくとも入力部と制御部と二次元画像を表示する表示画面を有する表示部とを備え、
第1ステップは、前記制御部が、ワークの溶接速度を前記入力部から入力した情報に基づいて設定し、
第2ステップは、前記制御部が、設定された前記溶接速度と所定のマークとを前記表示画面に表示するとともに、前記所定のマークを前記溶接速度で一の方向に沿って前記表示画面上を移動するように前記表示画面に表示し、
第3ステップは、溶接作業者が、手に持った溶接トーチを前記表示画面に沿ってかつ前記マークの移動にあわせて移動し、
前記溶接作業者が前記溶接トーチを前記溶接速度で移動することが可能であると判断するまで、前記第2ステップと前記第3ステップとを繰り返し実行することを特徴とする溶接作業訓練方法。
【請求項9】
請求項8に記載の溶接作業訓練方法における前記第1ステップと前記第2ステップとを、1または複数のプロセッサを有するコンピュータシステムに実行させるための溶接作業訓練補助プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アーク溶接装置、溶接作業訓練方法及び溶接作業訓練補助プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶接作業者が溶接トーチ等を手に持ってワークに対して溶接を行う、いわゆる手溶接が広く行われている。
【0003】
一方で、手溶接の出来栄えは、溶接作業者の技能に大きく左右されるため、溶接作業者に対して十分に溶接作業の訓練を行う必要があり、訓練方法に関して種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、溶接作業者による溶接トーチの操作をシミュレートするシミュレーションシステムが開示されている。具体的には、このシミュレーションシステムは、3次元表示装置とコンピュータ装置とトラッキングコントローラとを備えている。3次元表示装置は、3次元形状の溶接部位に対する溶接作業をシミュレートする。コンピュータ装置は、作業内容と作業条件とを設定する。トラッキングコントローラは、溶接作業者が溶接トーチを手に持って操作する場合において、3次元表示装置に対する溶接トーチの先端の位置と姿勢と移動軌跡とをリアルタイムでかつ3次元で検出する。シミュレーションシステムは、コンピュータ装置で設定した作業内容と作業条件及びトラッキングコントローラで検出した溶接トーチの先端の位置と姿勢と移動軌跡とに基づいて、溶接作業者が溶接トーチを用いて溶接作業を行っている場合と視覚的に同一の作業状況を、溶接トーチの先端の位置を基準としてリアルタイムで疑似表示する。
【0005】
このようにすることで、溶接作業の結果の良否を溶接作業中における複数条件の見掛けを含めて判断することを要求される複雑な作業に適合したシミュレーションを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
ところで、手溶接において、溶接速度は、ワークにおける溶接予定箇所に沿って、溶接作業者が溶接トーチを移動する速度に相当する。
【0008】
しかし、当該溶接予定箇所に沿って、溶接トーチを一定の速度で移動することは、初心者には難しい作業である。溶接速度が数値で設定され、溶接装置の表示画面に表示されても、溶接作業者は当該溶接速度で溶接トーチを移動する感覚を掴めないことが多い。このため、設定された溶接速度で溶接を行えなかったり、溶接途中で溶接速度が大きく変動したりするおそれがある。
【0009】
一方、溶接速度はワークへの入熱に影響する。よって、溶接速度が設定値と異なっていたり、大きく変動したりすると、ワークへの入熱も設定された量と異なったり、変動したりするため、溶接箇所にムラを生じる。また、ワークに形成される溶接ビードの幅が変化したり、外観が悪化したりするおそれがある。
【0010】
本開示はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、手溶接における溶接トーチの操作に不慣れな溶接作業者に対して、溶接トーチを設定された溶接速度で移動する感覚を養うことができるアーク溶接装置、溶接作業訓練方法及び溶接作業訓練補助プログラムを提供することにある。
【0011】
上記目的を達成するため、本開示に係るアーク溶接装置は、溶接電源と溶接トーチとを少なくとも備えたアーク溶接装置であって、入力部と表示部と制御部とをさらに備え、ワークの溶接速度が前記入力部から入力された情報に基づいて設定されると、前記制御部は、前記溶接速度での移動イメージを前記表示部に表示することを特徴とする。
【0012】
本開示に係る溶接作業訓練方法は、溶接作業訓練補助装置を用いた溶接作業訓練方法であって、前記溶接作業訓練補助装置は、少なくとも入力部と制御部と二次元画像を表示する表示画面を有する表示部とを備え、第1ステップは、前記制御部がワークの溶接速度を前記入力部から入力した情報に基づいて設定し、第2ステップは、前記制御部が設定された前記溶接速度と所定のマークとを前記表示画面に表示するとともに、前記所定のマークを前記溶接速度で一の方向に沿って前記表示画面上を移動するように前記表示画面に表示し、第3ステップは、溶接作業者が、手に持った溶接トーチを前記表示画面に沿ってかつ前記マークの移動にあわせて移動し、前記溶接作業者が前記溶接トーチを前記溶接速度で移動することが可能であると判断するまで、前記第2ステップと前記第3ステップとを繰り返し実行することを特徴とする。
【0013】
本開示に係る溶接作業訓練補助プログラムは、前記溶接作業訓練方法における前記第1ステップと前記第2ステップとを、1または複数のプロセッサを有するコンピュータシステムに実行させる。
【0014】
本開示によれば、手溶接における溶接トーチの操作に不慣れな溶接作業者に対して、溶接トーチを設定された溶接速度で移動する感覚を養うことができる。また、溶接トーチを設定された溶接速度で移動する訓練を容易かつ効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施の形態に係るアーク溶接装置の概略構成図である。
【
図2】溶接速度が設定された後の第1表示部に表示された画面の一例を示す模式図である。
【
図3】第1表示部に表示されたマークの長さの変化を示す模式図である。
【
図4】十字マークが表示された第1表示部を示す模式図である。
【
図5】溶接作業訓練手順を示すフローチャートである。
【
図6】溶接トーチの移動訓練の様子を示す模式図である。
【
図7】変形例1に係る十字マークが表示されたタブレットを示す模式図である。
【
図8】第2の実施の形態に係る第1表示部のLEDインジケータが順次点灯する様子を示す模式図である。
【
図9】変形例2に係る第1表示部の面光源を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
(第1の実施の形態)
[アーク溶接装置の構成]
図1は、第1の実施の形態に係るアーク溶接装置の概略構成図を示し、アーク溶接装置70は、溶接電源10とリモートコントローラ20とワイヤ送給装置30と溶接トーチ50とを有する。
【0018】
溶接電源10は、溶接電力を発生させる主回路11と第1制御部12と第1記憶部13と第1入力部14と第1表示部15とを少なくとも有している。主回路11は、溶接トーチ50に保持された溶接ワイヤ60に溶接電力を供給する。主回路11は、図示しないトランスやパワースイッチ等を有しており、本実施形態に示す例では、プラス端子がワイヤ送給装置30を介して溶接ワイヤ60に接続され、マイナス端子がアース線41を介してワークWに接続されている。
【0019】
第1制御部12は、CPU(Central Processing Unit)またはMCU(Micro Controller Unit)あるいはこれらの組み合わせで構成される。なお、複数個のCPUまたはMCUあるいはこれらの組み合わせで第1制御部12が構成されてもよい。
【0020】
第1制御部12は、第1入力部14またはリモートコントローラ20からの入力内容に基づいて、第1記憶部13に予め保存された溶接プログラムを読み出して、主回路11の動作を制御する。さらに、第1制御部12は、第1入力部14またはリモートコントローラ20からの入力内容に基づいて、溶接条件の変更やワイヤ送給装置30に対するワイヤ送給指令等の送信を行う。
【0021】
第1記憶部13は、半導体メモリ、例えば、RAM(Random Access Memory)やSSD(Solid State Drive)等で構成される。第1記憶部13は、溶接プログラムや当該プログラムを実行するために必要な溶接条件を保存する。なお、溶接条件はテーブル方式であってもよい。この場合、第1記憶部13には、溶接対象であるワークWの種類に応じた複数の溶接パラメータの組がテーブル形式で保存され、当該溶接パラメータの組を溶接条件テーブルと呼ぶ。また、第1記憶部13には、後で述べる溶接作業訓練補助プログラムが保存される。
【0022】
ワークWの種類は、ワークWの材質や溶接方式(直流またはパルス)や溶接ワイヤ60の直径(以下、ワイヤ径と呼ぶことがある。)に応じて分類される。また、ワークWの種類は、ワークWの形状やワークWの板厚によっても分類される。また、溶接ケーブル40に設けられたガス供給管(図示せず)から溶接箇所にシールドガスが吹き付けられる場合は、シールドガスの種類に応じてもワークWの種類が分類される。
【0023】
本実施形態における主な溶接パラメータは、主回路11から溶接ワイヤ60に流す溶接電流と、溶接ワイヤ60とワークWとの間に加わる溶接電圧と、ワイヤ送給装置30による溶接ワイヤ60の送給速度と、溶接速度とである。なお、シールドガスの使用時は、シールドガスの流量も溶接パラメータに含まれる。
【0024】
ここで、溶接速度とは、溶接作業者が溶接トーチ50をワークWにおける溶接線に沿って移動させるときの移動速度を言う。なお、溶接線とは、ワークWの表面における仮想線であり、手溶接を行った後は、溶接線に沿ってワークWの表面に溶接ビード(図示せず)が形成される。
【0025】
なお、第1記憶部13は、第1入力部14やリモートコントローラ20からの入力内容を一時的に保存してもよい。
【0026】
第1入力部14は、図示しない操作ボタンやジョグダイヤル等を有している。また、第1入力部14がタッチパネルを含んでいてもよく、この場合、第1表示部15をタッチパネルとして、第1入力部14と共用してもよい。
【0027】
溶接作業者が第1入力部14を操作して、前述した溶接条件を入力する。また、前述した溶接条件テーブルが選択される。選択した溶接条件テーブルのうち、変更したい溶接パラメータがある場合も、溶接作業者が第1入力部14を操作して、当該変更を行う。
【0028】
第1表示部15は、液晶ディスプレイ15a(
図2,4参照)等の表示デバイスで構成される。液晶ディスプレイ15aは二次元画像を表示する表示画面である。第1表示部15は、第1記憶部13から呼び出した溶接条件や新たに入力した溶接条件、また、溶接中の各パラメータ等を表示する。また、後で述べるように、第1表示部15は、溶接作業者が設定した溶接速度及び溶接速度での移動イメージであるゲージマークM1,十字マークM2を表示する。
【0029】
リモートコントローラ20は、第2入力部21と第2制御部22と第2表示部23とを少なくとも有している。通常、溶接作業者がリモートコントローラ20を手に持って、手動で操作する。
【0030】
第2入力部21は、図示しない操作ボタンやジョグダイヤル等を有している。また、第2入力部21がタッチパネルを含んでいてもよく、この場合、第2表示部23をタッチパネルとして、第2入力部21と共用してもよい。
【0031】
溶接作業者が第2入力部21を操作することで、前述した溶接条件の入力や溶接条件テーブルの呼び出し、さらに溶接条件テーブルにおける溶接パラメータの変更を行う。
【0032】
第2制御部22は、第1制御部12と同様に、CPUまたはMCUあるいはこれらの組み合わせで構成される。第2制御部22は、溶接作業者が第2入力部21を操作して入力した内容、例えば、溶接パラメータの変更値等を溶接電源10の第1制御部12に送信する。また、リモートコントローラ20は、溶接電源10の第1制御部12から、使用中の溶接条件等を受信し、この内容を第2入力部21に表示させる。また、第2制御部22が、第2入力部21への入力内容を溶接電源10の第1記憶部13に送信し、第1制御部12が、入力された内容を第1記憶部13から呼び出す。
【0033】
第2表示部23は、液晶ディスプレイ23a(
図2,4参照)等の表示デバイスで構成される。液晶ディスプレイ23aは、二次元画像を表示する表示画面である。第2表示部23は、第1表示部15と同様に、第1記憶部13から呼び出した溶接条件や新たに入力した溶接条件、また、溶接中の各パラメータ等を表示する。また、後で述べるように、第2表示部23は、溶接作業者が設定した溶接速度及び溶接速度での移動イメージであるゲージマークM1,十字マークM2を表示してもよい。
【0034】
なお、
図1に示す例では、リモートコントローラ20は、第1信号線31,第2信号線32とワイヤ送給装置30とを介して溶接電源10に接続されているが、特にこの例に限定されない。例えば、溶接ケーブル40と第1信号線31とが一体化され、途中から第1信号線31が分岐してリモートコントローラ20に接続されていてもよい。または、第1信号線31が直接、溶接電源10に接続されていてもよい。あるいは、リモートコントローラ20の第2制御部22と溶接電源10の第1制御部12とが相互に無線通信可能に構成されていてもよい。その場合、第1信号線31,第2信号線32は省略される。また、相互通信用に溶接電源10とリモートコントローラ20のそれぞれに通信部(図示せず)が設けられていてもよい。
【0035】
以上説明したように、溶接電源10または溶接電源10とリモートコントローラ20との組み合わせは、CPUまたはMCU等と第1記憶部13とを含んでおり、一種のコンピュータシステムとして捉えることもできる。
【0036】
ワイヤ送給装置30は、溶接電源10またはリモートコントローラ20からのワイヤ送給指令に基づいて、溶接ワイヤ60をワークWに向けて送給する。なお、ワークWから離れるように溶接ワイヤ60を送給する、いわゆる逆送動作を行うようにしてもよい。
【0037】
溶接ケーブル40は、溶接ワイヤ60の送給管(図示せず)とシールドガスの供給管(図示せず)とが一体化された複合ケーブルである。
【0038】
溶接トーチ50は、溶接作業者が手動で操作し、溶接トーチ50に保持された溶接ワイヤ60がワークWに向けて送給される。溶接ワイヤ60には所定の溶接電力が供給されており、溶融した溶接ワイヤ60の先端がワークWに移行して、溶接が順次進行する。なお、溶接箇所には溶接ケーブル40からシールドガスが吹き付けられる。
【0039】
なお、本実施形態では、溶接ワイヤ60を溶融させてワークWに移行させる、いわゆる消耗電極式のアーク溶接装置について述べたが、アーク溶接装置70が、非消耗電極式のアーク溶接装置であってもよい。
【0040】
[溶接速度での移動イメージの表示態様について]
図2は、溶接速度が設定された後の第1表示部に表示された画面の一例を示す模式図である。
図3は、第1表示部に表示されたマークの長さの変化を示す模式図である。
図4は、十字マークが表示された第1表示部を示す模式図である。
【0041】
前述したように、溶接トーチ50とワークWとの間でアークを発生させた状態で、溶接作業者が手に持った溶接トーチ50所定の溶接線に沿って移動させることでワークWが溶接される。このため、溶接パラメータのうち溶接速度は、溶接作業者の感覚や技能に大きく影響される。
【0042】
一般に、溶接作業者が初心者であったり、溶接作業の経験が少なかったりする場合、溶接速度が数値で設定され、第1表示部15または第2表示部23に表示されても、溶接作業者は当該溶接速度で溶接トーチ50を移動させる感覚を掴めないことが多い。このため、設定された溶接速度で溶接を行えなかったり、溶接途中で溶接速度が大きく変動したりする。
【0043】
しかし、溶接速度はワークへの入熱に影響する。よって、溶接速度が設定値と異なっていたり、大きく変動したりすると、ワークへの入熱も設定された量と異なったり、変動したりするため、溶接箇所にムラを生じる。また、ワークに形成される溶接ビードの幅が変化したり、外観が悪化したりするおそれがある。
【0044】
そこで、本実施形態のアーク溶接装置70では、第1表示部15または第2表示部23に溶接速度の設定値だけでなく、設定値での移動イメージも表示させることで、溶接作業者に設定された溶接速度で溶接トーチ50を移動させる感覚を養わせる。以下、図面を用いて具体的に説明する。
【0045】
ワークWの種類に応じて、溶接条件が決まると、
図2に示すように、液晶ディスプレイ15aにワークWの種類の詳細や、ガス種/流量等が表示される。また、当該溶接条件での溶接パラメータも表示される。
図2には示していないが、溶接電流や溶接電圧、また、溶接ワイヤ60の送給速度が液晶ディスプレイ15aに表示される。
【0046】
さらに、
図2に示すように、溶接速度の設定値も表示される。また、ゲージマークM1も同時に表示される。ゲージマークM1は、所定の長さを有する一種のゲージであり、溶接速度で長さが変化するように表示される。具体的には、
図3に示すように、ゲージマークM1の長さがゼロから所定の長さまで変化するように表示され、この表示を所定の期間、この場合は1秒毎に繰り返すように設定されている。ゲージマークM1の長さがゲージマークM1の移動距離に相当し、ゲージマークM1の長さの変化速度が溶接速度に相当する。
【0047】
また、溶接速度は2通りの単位で表示される。通常、溶接パラメータとして溶接速度を設定する場合、単位として、m/minが使用されることが多い。しかし、これでは、溶接作業者が溶接速度で溶接トーチ50を移動させるイメージが掴めないことがある。
【0048】
そこで、本実施形態では、溶接速度をm/minの単位だけでなく、mm/secの単位またはcm/secの単位でも表示されるようにしている。多くの場合、第1表示部15の液晶ディスプレイ15aのサイズは、数cm角であるか、長手方向のサイズが数cm~十数cmである。よって、表示されるゲージマークM1の長さは、長くても数cm以下である。
【0049】
したがって、溶接速度がmm/secの単位またはcm/secの単位で表示されている方が、ゲージマークM1の長さの変化を目視で確認する溶接作業者にとって、溶接速度での移動イメージを直感的に把握しやすいという利点がある。
【0050】
なお、溶接速度での移動イメージを表示するにあたって、マークの形状は、
図2,3に示したものに限定されない。例えば、
図4に示すように、十字形状のマークM2(以下、十字マークM2と呼ぶことがある。)が、溶接速度で直線的に移動する様子を第1表示部15の液晶ディスプレイ15aに表示させてもよい。
【0051】
なお、溶接速度での移動イメージを表示する表示画面は、第1表示部15の液晶ディスプレイ15aに限られず、第2表示部23の液晶ディスプレイ23aであってもよい。
【0052】
[溶接作業訓練手順]
図5は、溶接作業訓練手順を示すフローチャートである。
図6は、溶接トーチの移動訓練の様子を示す模式図である。
【0053】
既に述べたように、
図2~4に示したゲージマークM1,十字マークM2を第1表示部15または第2表示部23に表示させることで、溶接作業者が溶接速度で溶接トーチ50を移動させるイメージを視覚的に掴むことができる。
【0054】
さらに、このことを利用すると、本実施形態に示すアーク溶接装置70を用いて、溶接作業者が溶接速度で溶接トーチ50を移動させる訓練を行うことができる。以下、この手順について
図5を参照しながら説明する。また、ここでは、第1入力部14を操作して、第1表示部15に十字マークM2を表示させる場合を例に取って説明する。
【0055】
まず、溶接作業者が第1入力部14を操作して、第1記憶部13に保存された溶接作業訓練補助プログラムを起動する(ステップS1)。
【0056】
次に、溶接作業者が第1入力部14を操作して溶接条件を直接入力して設定するか、または、第1記憶部13に保存された溶接条件テーブルを呼び出す(ステップS2)。
【0057】
なお、アーク溶接装置70に溶接パラメータを簡便に設定するためのナビゲーション機能が搭載されていてもよい。通常、ナビゲーション機能を実行するプログラムが第1記憶部13に保存されており、溶接作業者が第1入力部14を操作して、当該プログラムを呼び出し、第1制御部12が実行する。また、この場合、溶接パラメータを設定するにあたって、液晶ディプレイ15aにガイダンスが表示され、そのガイダンスにしたがって、順次必要な項目を選択することで、第1記憶部13に保存されたデータベース、つまり、複数の溶接条件テーブルの中から、溶接電流や溶接電圧、また、溶接速度等の溶接パラメータが自動的に選択される。
【0058】
ステップS2で設定された溶接条件にしたがって、第1制御部12が溶接速度を設定する(ステップS3:第1ステップ)。
【0059】
次に、第1制御部12は、第1表示部15の液晶ディスプレイ15aにステップS3で設定された溶接速度と十字マークM2とを表示させる(ステップS4:第2ステップ)。さらに、第1制御部12は、液晶ディスプレイ15a上で、所定の方向に沿って溶接速度で移動する十字マークM2を液晶ディスプレイ15aに表示させる(ステップS5:第2ステップ)。本実施形態において、前述の所定の方向は、液晶ディスプレイ15aの長手方向である。なお、ステップS5は所定の周期毎に繰り返し実行される。つまり、液晶ディスプレイ15a上で十字マークM2が溶接速度で移動する過程が繰り返し表示される。
【0060】
ステップS5の実行中に、溶接作業者は、液晶ディスプレイ15aの表面に沿ってかつ十字マークM2の移動にあわせて、手に持った溶接トーチ50を移動させる(ステップS6:第3ステップ)。溶接作業者は、ステップS6を実行することで、設定された溶接速度に合わせて溶接トーチ50を移動させる訓練を行う。
【0061】
ステップS6を実行した後、設定された溶接速度で溶接トーチ50を移動させることができるか否かを溶接作業者自身が判断する(ステップS7)。判断基準は、溶接トーチ50の先端が、十字マークM2の移動とずれることなく移動させられているか否かである。さらに言うと、十字マークM2の移動時に、溶接トーチ50の先端を十字マークM2と所定の距離以内で動かせているか否かでステップS7が判断される。ただし、ステップS6の実行時に立ち会った第三者が、ステップS7での判断を行ってもよい。あるいは、溶接トーチ50の先端の動きを図示しないカメラで撮影し、溶接トーチ50の先端の移動速度が十字マークM2の移動速度にあっているか否かを、第1制御部12で判断するようにしてもよい。この場合、カメラの撮像データから、液晶ディスプレイ15a上での溶接トーチ50の先端の位置データが算出される。
【0062】
ステップS7の判断結果が肯定的、つまり、設定された溶接速度で溶接トーチ50を移動させることができると溶接作業者が判断した場合、溶接作業の訓練を終了する。
【0063】
一方、ステップS7の判断結果が否定的、つまり、設定された溶接速度で溶接トーチ50を移動させることがまだできないと溶接作業者が判断した場合、ステップS4~ステップS6までの一連の処理をステップS7の判断結果が肯定的になるまで繰り返し実行する。
【0064】
なお、ステップS3~S5の処理が、溶接作業訓練補助プログラムでの実行内容に相当する。
【0065】
また、
図5に示す溶接作業訓練を行うにあたって、第2入力部21を操作して、第2表示部23に十字マークM2を表示させるようにしてもよい。
【0066】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係るアーク溶接装置70は、溶接電源10と溶接トーチ50とを少なくとも備えている。また、溶接電源10は、第1制御部12と第1入力部14と第1表示部15とを少なくとも備えている。
【0067】
第1入力部14から入力された情報に基づいて、ワークWの溶接速度が設定されると、第1制御部12は、第1表示部15に溶接速度での移動イメージを表示させる。
【0068】
本実施形態によれば、第1表示部15に設定された溶接速度での移動イメージを表示させることで、数値だけではイメージを掴みにくい溶接速度での「モノ」の移動を、溶接作業者が視覚的に把握できる。このことにより、手溶接に不慣れな溶接作業者が、ワークWを溶接するにあたって、溶接速度で溶接トーチ50を移動させる感覚を養わせることができる。
【0069】
第1表示部15は、二次元画像を表示する表示画面として液晶ディスプレイ15aを有している。
【0070】
第1制御部12は、設定された溶接速度を液晶ディスプレイ15aに表示させるとともに、溶接速度で移動または変形するゲージマークM1,十字マークM2を液晶ディスプレイ15aに表示させる。
【0071】
このようにすることで、溶接速度でのゲージマークM1,十字マークM2の移動または変形を、溶接作業者が視覚的に把握でき、溶接速度で溶接トーチ50を移動させる感覚を容易かつ確実に掴むことができる。
【0072】
ゲージマークM1は、一の方向、例えば、液晶ディスプレイ15aの長手方向に沿った長さが溶接速度で長くなるように設定されており、当該長さが、溶接速度での移動距離を示している。
【0073】
また、第1制御部12は、所定の期間毎にゲージマークM1の長さがゼロから所定の長さまで繰り返し変化するように、ゲージマークM1を液晶ディスプレイ15aに表示させる。
【0074】
ゲージマークM1の長さが溶接速度に応じて変化することで、溶接作業者が溶接速度でのモノの移動イメージを視覚的に掴みやすくなる。また、ゲージマークM1が周期的に長さの変化を繰り返しつつ、第1表示部15に表示されることで、溶接作業者は、溶接速度で溶接トーチ50を移動させる感覚を確実に養うことができる。
【0075】
第1制御部12は、一の方向に沿って溶接速度で液晶ディスプレイ15a上を移動するように、十字マークM2を液晶ディスプレイ15aに表示させることもできる。
【0076】
このようにすることで、溶接作業者が溶接速度でのモノの移動イメージを視覚的に掴みやすくなる。また、十字マークM2が設定された溶接速度で液晶ディスプレイ15a上を移動するため、十字マークM2を見ながら溶接トーチ50を当該溶接速度で動かすことができる。このことにより、溶接作業者が手に持った溶接トーチ50を溶接速度で動かす訓練を容易に行える。
【0077】
なお、本実施形態では、M2を十字マークとしたが、その形状は特にこれに限定されない。ただし、M2の形状は、表示中に変化しないことが好ましい。その方が、マークM2を見ながら溶接トーチ50を動かす訓練がしやすくなる。また、同じ理由から、マークM2の中心が確実に視認できる形状であることが好ましい。
【0078】
本実施形態に係る溶接作業訓練方法は、アーク溶接装置70,具体的には、溶接電源10かリモートコントローラ20のいずれかを用いて行う。
【0079】
溶接電源10は、少なくとも第1制御部12と第1入力部14と第1表示部15とを備えている。また、第1表示部15は、二次元画像を表示する表示画面として液晶ディスプレイ15aを有している。
【0080】
リモートコントローラ20は、少なくとも第2入力部21と第2制御部22と第2表示部23とを備えている。また、第2表示部23は、二次元画像を表示する表示画面として液晶ディスプレイ23aを有している。
【0081】
この溶接作業訓練方法は、以下に示す第1~第3ステップを少なくとも備えている。
【0082】
第1ステップ(
図5のステップS3)では、第1入力部14または第2入力部21から入力した情報に基づいて、第1制御部12または第2制御部22がワークWの溶接速度を設定する。
【0083】
第2ステップ(
図5のステップS4,S5)では、第1制御部12または第2制御部22が、設定された溶接速度と十字マークM2とを液晶ディスプレイ15aまたは液晶ディスプレイ23aに表示させる。さらに、第1制御部12または第2制御部22は、一の方向に沿って溶接速度で液晶ディスプレイ15aまたは液晶ディスプレイ23a上を移動するように、十字マークM2を液晶ディスプレイ15aまたは液晶ディスプレイ23aに表示させる。
【0084】
第3ステップ(
図5のステップS6)では、溶接作業者が、液晶ディスプレイ15aまたは液晶ディスプレイ23aの表面に沿ってかつ十字マークM2の移動にあわせて、手に持った溶接トーチ50を移動させる。
【0085】
溶接作業者が設定された溶接速度で溶接トーチ50を移動させることが可能であると判断するまで、前述の第2ステップと第3ステップとを繰り返し実行する。
【0086】
本実施形態の溶接作業訓練方法によれば、十字マークM2が設定された溶接速度で液晶ディスプレイ15a上を移動するため、溶接作業者が、十字マークM2を見ながら溶接トーチ50を当該溶接速度で動かすことができる。このことにより、溶接作業者が手に持った溶接トーチ50を溶接速度で動かす訓練、つまり、溶接作業の訓練を容易に行うことができる。
【0087】
また、溶接作業者は、当該作業に習熟したと判断できるまで、十字マークM2を見ながら溶接トーチ50を当該溶接速度で動かす作業を繰り返し行う。このことにより、効率的な訓練が行えるとともに、溶接作業者の技能を一定以上に向上することができる。
【0088】
また、複数の溶接作業者が、本実施形態に示す溶接作業訓練方法を実行することで、各々の技能を向上させることができる。このことにより、溶接作業者毎に溶接ビードの形状や外観がばらつくのを抑制でき、また、良好な形状や外観の溶接ビードを形成できる。
【0089】
本実施形態に係る溶接作業訓練プログラムは、1または複数のプロセッサを有するコンピュータシステムに、前述の溶接作業訓練方法における第1ステップ(
図5のステップS3)と第2ステップ(
図5のステップS4,S5)とを実行させる。なお、本実施形態におけるコンピュータシステムは、溶接電源10における第1制御部12またはリモートコントローラ20における第2制御部22を含む。当該コンピュータシステムには記憶部、本実施形態では第1記憶部13を含むのが好ましい。なお、第2制御部22で溶接作業訓練プログラムを実行する場合は、第1記憶部13から溶接作業訓練プログラムを呼び出し、第2入力部21を操作して溶接作業訓練プログラムを実行する。なお、リモートコントローラ20に図示しない記憶部を設け、当該記憶部に溶接作業訓練プログラムを保存するようにしてもよい。
【0090】
このように溶接作業訓練を補助する方法の実行手順をプログラムにしておくことで、溶接作業者が簡便かつ効率良く溶接作業の訓練を行うことができる。
【0091】
<変形例1>
図7は、変形例1に係る十字マークが表示されたタブレットを示す模式図である。なお、
図7及び以降に示す各図面において、第1の実施の形態と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0092】
第1の実施の形態では、溶接電源10が第1制御部12と第1入力部14と第1表示部15とを備え、第1入力部14から入力された情報に基づいて、第1制御部12が第1表示部15の液晶ディスプレイ15aにゲージマークM1または十字マークM2を表示させる例を示した。
【0093】
また、リモートコントローラ20が第2入力部21と第2制御部22と第2表示部23とを備え、第2入力部21から入力された情報に基づいて、第2制御部22が第2表示部23の液晶ディスプレイ23aにゲージマークM1または十字マークM2を表示させてもよいことも示した。
【0094】
一方で、溶接速度の感覚を養わせる訓練や溶接作業の訓練自体は、アーク溶接装置70を一式準備しなくても行うことができる。
【0095】
例えば、溶接速度の感覚を養わせる訓練は、溶接電源10のみ、またはリモートコントローラ20のみでも可能である。また、溶接トーチ50に模した治具(図示せず)と、溶接電源10またはリモートコントローラ20いずれかを準備すれば、溶接作業の訓練を行うことができる。
【0096】
言い換えると、入力部と表示部と制御部とを有する機器であれば、前述の2つの訓練を行うことができる。なお、制御部に含まれるCPUまたはMCUは、通常、一時記憶用のメモリを備えているため、溶接作業訓練補助プログラムは、当該機器の外部に設けられた記憶部(図示せず)から当該機器に読み込むようにすればよい。
【0097】
よって、一般的に用いられるタブレット80を用いても、溶接速度の感覚を養わせる訓練や溶接作業の訓練を行うことができる。なお、図示しないが、タブレット80は制御部と入力部とを有している。
【0098】
具体的には、
図7に示すように、タブレット80の表示部81に含まれる液晶ディスプレイ81aに十字マークM2が設定された溶接速度で移動する様子を表示させる。また、十字マークM2の移動にあわせて、溶接作業者が手に持った治具を移動させることで、溶接作業の訓練を行う。
【0099】
つまり、本変形例に示す構成においても、第1の実施の形態に示す構成が奏するのと同様の効果を奏することができる。すなわち、手溶接に不慣れな溶接作業者が、ワークWを溶接するにあたって、溶接速度で溶接トーチ50を移動させる感覚を養わせることができる。また、溶接作業者が手に持った治具を十字マークM2の移動にあわせて動かすことで、溶接作業の訓練を容易に行うことができる。
【0100】
また、第1の実施の形態及び本変形例に照らしてみれば、溶接電源10やリモートコントローラ20、また、
図7に示すタブレット80は、手溶接における溶接トーチ50の操作技能を高揚させるための溶接作業訓練補助装置であると言える。
【0101】
(第2の実施の形態)
図8は、第2の実施の形態に係る第1表示部のLEDインジケータが順次点灯する様子を示す模式図である。
【0102】
図8に示す第1表示部15は、LEDインジケータ15bを有している点で、
図1に示す第1の実施の形態の第1表示部15と異なる。なお、図示しないが、
図8に示す第1表示部15は、
図2に示す液晶ディプレイ15aを有していてもよい。
【0103】
LEDインジケータ15bは、互いに間隔をあけて一列に配置された複数のLEDで構築される。本実施形態では、溶接速度を設定し第1入力部14を操作すると、
図8に示すように、第1制御部12が、溶接速度にしたがって、LEDインジケータ15bのLEDを順次点灯させるように構成されている。
【0104】
このようにすることで、溶接作業者が溶接速度でのモノの移動イメージを視覚的に掴みやすくなる。このことにより、手溶接に不慣れな溶接作業者が、ワークWを溶接するにあたって、溶接速度で溶接トーチ50を移動させる感覚を養わせることができる。
【0105】
なお、本実施形態では、溶接速度での移動イメージを表示するのにLEDインジケータ15bを用いたが、特にこれに限定されない。一の方向に沿って互いに間隔をあけて配列された複数の点光源であればよい。
【0106】
<変形例2>
図9は、変形例2に係る第1表示部の面光源を示す模式図である。
【0107】
図9に示す本変形例の第1表示部15は、面光源15cを有している点で、
図1に示す第1の実施の形態の第1表示部15と異なる。なお、図示しないが、
図9に示す第1表示部15は、
図2に示す液晶ディプレイ15aを有していてもよい。
【0108】
面光源15cは、長方形で長手方向に沿って色が段階的に変化して発光するように構成されている。本変形例の第1表示部15では、溶接速度を設定し第1入力部14を操作すると、
図8に示すように、第1制御部12が、溶接速度にしたがって、長手方向に沿って色が段階的に変化しつつ発光するように面光源15cを駆動する。
【0109】
このようにすることで、溶接作業者が溶接速度でのモノの移動イメージを視覚的に掴みやすくなる。このことにより、手溶接に不慣れな溶接作業者が、ワークWを溶接するにあたって、溶接速度で溶接トーチ50を移動させる感覚を養わせることができる。
【0110】
なお、本変形例では、面光源15cが、長手方向に沿って色が段階的に変化して発光するように構成されているが、特にこれに限定されない。例えば、面光源15cが、長手方向に沿って輝度が段階的に変化して発光するように構成されていてもよい。
【0111】
(その他の実施形態)
なお、本願明細書では、溶接電源10に第1記憶部13を設ける例を示したが、溶接プログラムや溶接条件テーブル、また、溶接作業訓練補助プログラムの保存先は、特にこれに限定されない。例えば、溶接電源10に第1記憶部13を設ける代わりに、外部メモリを溶接電源10に接続し、当該外部メモリを溶接プログラムや溶接条件テーブル、また、溶接作業訓練補助プログラム等の保存先としてもよい。外部メモリは、例えば、SD(登録商標)カードやUSB(商標)メモリでもよいし、溶接電源10と相互通信可能に構成されたサーバーであってもよい。
【0112】
また、本願明細書では、二次元画像を表示する表示画面として、液晶ディスプレイ15a、23a、81aを示したが、特にこれに限定されない。例えば、液晶ディスプレイに代えて、有機ELディスプレイを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本開示のアーク溶接装置は、手溶接に不慣れな溶接作業者に対して、溶接トーチを溶接速度で移動する感覚を養わせることができ、有用である。
【符号の説明】
【0114】
10 溶接電源(溶接作業訓練補助装置)
11 主回路
12 第1制御部(制御部)
13 第1記憶部
14 第1入力部(入力部)
15 第1表示部(表示部)
15a 液晶ディスプレイ
15b LEDインジケータ
15c 面光源
20 リモートコントローラ(溶接作業訓練補助装置)
21 第2入力部(入力部)
22 第2制御部(制御部)
23 第2表示部(表示部)
23a 液晶ディスプレイ
30 ワイヤ送給装置
31 第1信号線
32 第2信号線
40 溶接ケーブル
41 アース線
50 溶接トーチ
60 溶接ワイヤ
70 アーク溶接装置
80 タブレット(溶接作業訓練補助装置)
81 表示部
81a 液晶ディスプレイ
M1 ゲージマーク
M2 十字マーク
W ワーク
【要約】
アーク溶接装置(70)は、溶接電源(10)と溶接トーチ(50)とを少なくとも備えている。また、溶接電源(10)は、第1制御部(12)と第1入力部(14)と第1表示部(15)とを少なくとも備えている。ワークWの溶接速度が第1入力部(14)から入力された情報に基づいて設定されると、第1制御部(12)は、溶接速度での移動イメージを第1表示部(15)に表示する。