(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】打撃式掘削のためのドリルビットおよび打撃式掘削方法
(51)【国際特許分類】
E21B 17/042 20060101AFI20240517BHJP
E21B 10/36 20060101ALI20240517BHJP
F16B 33/02 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
E21B17/042
E21B10/36
F16B33/02 B
(21)【出願番号】P 2021544813
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 IB2020000078
(87)【国際公開番号】W WO2020161542
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-02-06
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521338905
【氏名又は名称】ヤオ, ジェームズ, ジン
【氏名又は名称原語表記】YAO, James, Jing
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ, ジェームズ, ジン
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-189990(JP,A)
【文献】中国実用新案第208152957(CN,U)
【文献】米国特許第06196598(US,B1)
【文献】米国特許第04332502(US,A)
【文献】特開2000-104477(JP,A)
【文献】特開2001-003673(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0050592(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 17/042
E21B 10/36
F16B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に雌ねじを有する打撃式掘削のためのドリルビットにおいて、
前記雌ねじが、
(a)略台形の輪郭と、
(b)28~35mmの範囲内の平均ねじ直径と、
(c)前記平均ねじ直径の6.5%~14.5%の範囲内の山頂の幅a1と、
(d)前記平均ねじ直径の23%~30%の範囲内の谷の幅b1と、
(e)1.5<(b1/a1)<4の範囲内にある、前記谷の幅の前記山頂の幅に対する比と、
(f)30~40度の範囲内のフランク角αと、
(g)1mm~5mmの範囲の第1の半径を有する、前記山頂を側面に接続する第1の湾曲した輪郭部分と、
(h)0.5mm~4.5mmの範囲の第2の半径を有する、前記谷を前記側面に接続する第2の湾曲した輪郭部分であって、前記第1の半径が前記第2の半径よりも大きい、第2の湾曲した輪郭部分と、
(i)平坦な部分を有する前記谷と
を有することを特徴とする、ドリルビット。
【請求項2】
13~18mmの範囲内のピッチ、及び1.2~1.8mmの範囲内のねじの深さを有することをさらに特徴とする、請求項1に記載のドリルビット。
【請求項3】
8.5~10度の範囲内のねじれ角を有することをさらに特徴とする、請求項1に記載のドリルビット。
【請求項4】
8.5~10度の範囲のねじれ角を有することをさらに特徴とする、請求項2に記載のドリルビット。
【請求項5】
前記ねじれ角が8.5~9.5度の範囲内にある、請求項3に記載のドリルビット。
【請求項6】
前記ねじれ角が8.5~9.5度の範囲内にある、請求項4に記載のドリルビット。
【請求項7】
前記ねじれ角が9度である、請求項3に記載のドリルビット。
【請求項8】
前記ねじれ角が9度である、請求項4に記載のドリルビット。
【請求項9】
前記フランク角
αが34~36度の範囲内にある、請求項1に記載のドリルビット。
【請求項10】
前記フランク角
αが34~36度の範囲内にある、請求項2に記載のドリルビット。
【請求項11】
前記フランク角
αが34~36度の範囲内にある、請求項3に記載のドリルビット。
【請求項12】
前記フランク角
αが34~36度の範囲内にある、請求項4に記載のドリルビット。
【請求項13】
前記フランク角
αが34~36度の範囲内にある、請求項5に記載のドリルビット。
【請求項14】
前記フランク角
αが34~36度の範囲内にある、請求項6に記載のドリルビット。
【請求項15】
前記フランク角
αが34~36度の範囲内にある、請求項7に記載のドリルビット。
【請求項16】
前記フランク角
αが34~36度の範囲内にある、請求項8に記載のドリルビット。
【請求項17】
前記平均ねじ直径が30~32mmの範囲内にある、請求項1に記載のドリルビット。
【請求項18】
前記平均ねじ直径が30~32mmの範囲にある、請求項2に記載のドリルビット。
【請求項19】
異なるねじの山頂の幅を有する複数のドリルロッドを用いて、請求項1に記載のドリルビットを順次使用することを特徴とする打撃式掘削方法。
【請求項20】
打撃式掘削現場にて部品在庫を減らす方法であって、
異なるねじの山頂の幅を有する複数のドリルロッドを含む在庫で前記打撃式掘削現場を作業することを含み、前記打撃式掘削現場が請求項1に記載のドリルビットの少なくとも1つを更に含む、方法。
【請求項21】
雄ねじを有するドリルロッドと組み合わせた、請求項1に記載のドリルビットにおいて、
前記雄ねじが
(a)前記雄ねじの山頂を前記雄ねじの側面に接続する第3の湾曲した輪郭部分と、
(b)前記雄ねじの谷を前記雄ねじの側面に接続する第4の湾曲した輪郭部分と
を有し、
前記ドリルロッドが前記ドリルビットに螺合されるとき、前記ドリルロッドのねじの湾曲した部分と前記ドリルビットのねじの湾曲した部分との間には接触がなく、
(i)第1の半径が第2の半径よりも大きく、(ii)前記第1の半径がねじの山頂とその隣接する側面とを接続し、(iii)前記第2の半径が谷の底部とその隣接する側面とを接続することを特徴とする、ドリルビット。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[0001]関連出願及び優先出願はない。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は、打撃式掘削の分野に関し、特に、シングルパストンネル掘削に関する。より詳細には、本発明は、ドリルビットをドリルロッドの端部に固定するためのねじ式の接続に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]打撃式シングルパス掘削は、高速道路及び鉄道のトンネル掘削、並びに単一のロッドを使用して、シャンクアダプタが後端で受けた衝撃エネルギーを前端でドリルビットに伝達する地下開発掘削で広く見られる。このタイプの掘削は、トンネル掘削、坑道掘進、又はジャンボ掘削と呼ばれることがある。
【0004】
[0004]トンネル掘削のための主要な孔サイズは45mmである。ビット接続のためのスペースは非常に限られており、ビット端の最大ねじ直径は通常、約33mmに制限される。ロッドの後端は掘削されている孔に入らないため、より大きな直径のねじが後端で使用されることが多く、したがってビットとロッドとの間のねじ継手はドリルストリング内で最も弱いリンクである。ビット端のねじ設計は、直径32mmのロープねじ(「R32」ねじ)が数十年にわたって中心となってきており、打撃式ねじの唯一のISO規格(ISO 10208)となっている。
【0005】
[0005]切削面の明らかな摩耗に加えて、ドリルビットは、ドリルビットをドリルロッドに接続するねじ面の内部摩耗を被り、ロッドねじも同様の摩耗を受ける。一般に、ビットは、相補的な雄ねじを有するロッドが嵌合される雌ねじ付きキャビティを有し、トルク及び衝撃力は、少なくとも部分的に、雄ねじ及び雌ねじの接触面を介してビットに送達される。これらの接触面に生じる摩耗は重大である。業界の専門家は、この特に高応力の金属間界面のための、より硬くて強靭な合金、表面処理、及び特殊な潤滑剤の作製に相当な時間と労力を費やしてきた。また、切削要素への回転力及び軸力の効率的な伝達を依然として提供しながら、打撃式掘削プロセスによって生成される応力を最小化、拡散、及び向け直しをするねじ形状を設計することに多大な努力が注がれてきた。
【0006】
[0006]掘削部品のためのねじ設計の例は、米国特許第3,645,570号明細書、米国特許第4,687,368号明細書、米国特許第6,196,598号明細書、米国特許第4,332,502号明細書及び米国特許第4,861,209号明細書、並びに米国特許出願公開第2010/0001522号明細書及び米国特許出願公開第2010/0059285号明細書に見出すことができる。しかしながら、これらの設計は、マルチパス掘削用途におけるロッド間接続に焦点を合わせている。現代のマルチパスロッドは、一端に雄ねじを有し、他端に雌ねじを有し、その結果、ロッドを一緒に繋ぐことができる。いずれかの端部の摩耗したねじはロッドを稼働から取り外すことになるので、雄ねじ及び雌ねじの摩耗寿命は同等である必要があり、ねじはそれに応じて設計されている。結果として、ドリルストリング内のロッドはすべて同一であり、ビット端ねじの設計はほとんど考慮されていない。
【0007】
[0007]シングルパストンネル掘削に関連して、米国特許第8,066,307号明細書は円錐ねじを教示し、米国特許第7,185,721号明細書は短ねじを教示する。両設計は、摩耗ボリューム部(wear volume:摩耗を受ける部分)を犠牲にしてロッドの疲労強度を高め、いくつかの特定の用途では疲労破壊を低減することによってより良好なロッド寿命をもたらすが、一般に従来のR32システムを凌ぐことはできない。ロッド及びビットの両方の耐用年数を最適化し、よりユーザフレンドリである、トンネル掘削のためのより良好なシステムが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
[0008]シングルパス打撃式掘削においてドリルビットをロッドに接続するためのねじ式結合が提供され、ビットねじの谷底はねじの山頂よりも広い。本発明に従って構成された単一のドリルビットは、雄ねじに異なる山頂の幅を有する様々なロッドに接続することができる。本発明は、対応する多種多様なドリルビットを製造して在庫に保管する必要なしに、手元の掘削条件に適合するようにロッドを適合設計し、その耐用年数を最適化することを可能にする。
【0009】
[0009]本発明は、異なるねじの山頂の幅を有する様々なドリルロッドを有する単一のドリルビットを継続使用することによって、単一のドリルビットを有する複数のドリルロッドねじの輪郭を適応させる方法を提供する。
【0010】
[0010]したがって、本発明は、異なるねじ山頂の幅を有する様々なドリルロッドを含むが、本発明による単一のねじ設計のドリルビットを含む在庫で現場を運用することによって、掘削現場の部品在庫を減らす方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】典型的な従来技術のドリルビットの断面図である。
【
図3a】谷よりも広い山頂を有する雄ねじを有するロッドに嵌合された本発明のドリルビットの断面を示す。
【
図4a】従来技術の掘削ロッドに嵌合された従来技術のドリルビットねじを示す。
【
図4b】ビットの溝を充填する雄ねじを有するロッドに嵌合された、本発明によるドリルビットねじを示す。
【
図4c】ビットの溝を部分的に占める雄ねじを有するロッドに嵌合された、本発明によるドリルビットねじを示す。
【
図4d】一致する山頂の幅を有するロッドに嵌合された、本発明によるドリルビットねじを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0021]ドリルビットの耐用年数は、通常、超硬合金インサートの摩耗によって決定され、非常に研磨性の高い地面では非常に短くなり得る。その結果、ドリルロッドの平均寿命はビットの寿命よりもはるかに長く、10倍以上長くなることが多い。これは、ビット自体が超硬合金の摩耗又は破損のために廃棄されなければならないときに、ビットねじは良好な状態にあることが多いことを意味する。言い換えれば、従来技術のビットにおいてねじの摩耗ボリューム部の多くは、決して利用されない。本発明は、未使用の摩耗ボリューム部がロッド材料に効果的に伝達される修正されたねじの設計を通じてこの無駄な摩耗ボリューム部を利用する。これにより、ビットねじの動作寿命をビット自体の寿命に一致させることができ、ロッドはそれに応じてより長い動作寿命を与えられる。
【0013】
[0022]掘削工具の製造業者は、その多くの異なる顧客が広範囲の異なる掘削条件下で運用しているという問題に直面している。例えば、いくつかの掘削現場では、掘削面の露出した岩石表面が以前の発破によってひどく弱まり、はまり込んだビットを効果的にがたついて緩めるほど十分に硬い表面を見つけることは容易ではない。過度のがたつきは、工具に損傷を与え、はまり込んだビットは、キャビンの外側で作業するときに掘削手を危険にさらし、ビットを交換するのに苦労する。接続ねじのより大きなねじれ角は、継手を緩くし、それによってビットを交換しやすくすることが知られているが、これは摩耗率の増加を犠牲にし、ある掘削現場では価値があるが別の掘削現場では価値がない可能性があるトレードオフになる。実用的な理由から、製造業者は、ドリルビットとドリルロッドとの結合の設計に、エンドユーザがビット及びロッドの設計を最適に選択することをしばしば妨げる妥協である、1つのサイズですべてを適合させる手法を採用している。本発明は、エンドユーザに、手元の特定の掘削条件に最も適した工具、特にドリルロッドを選択する能力を提供する。
【0014】
[0023]本発明は、打撃式トンネル掘削におけるドリルビットとシングルパスロッドとの間のねじ式結合を改善することを対象とする。
図1は、超硬合金切削インサート2を有する典型的な従来技術のドリルビット1を示す。ビットは、ドリルロッドの雄ねじを受け入れるための内部雌ねじを特徴とし、ロッド及びビットねじは共通のねじれ角βを有する。図面の拡張領域は、単一のねじピッチの長さを示し、ねじは、幅aを有する頂部又は山頂と、フランク角αで側面で接続された幅bの谷又は溝とを含む。最も効果的なフランク角は、実際には、業界が標準として35度に決定した、30~40度の範囲内にあることが分かっている。本発明者の知る限りでは、例えば米国特許第8,066,307号明細書及び米国特許第7,185,721号明細書に示されているように、トンネル掘削及び採鉱産業において今日使用されているすべてのビットは、ドリルロッド上の雄ねじにも当てはまり、aとbはほぼ等しい。これにより、
図4aに示すように、総摩耗ボリューム部がビットねじと相手側ロッドねじとの間に均等に分配され、これは、ビットの摩耗ボリューム部5がロッドの摩耗ボリューム部6と同じ速度で消費されないため非効率的である。
【0015】
[0024]ビット内の摩耗ボリューム部の大部分は、上記で説明したように、従来の結合では浪費されるため、谷が山頂よりも大きい幅(すなわち、
図2に示すように、b1>a1)を有することを可能にすることは、本発明のビット3の寿命に悪影響を及ぼさない。しかしながら、ビット3上の谷(したがって溝)の拡張は、
図3aに示すように、ロッドねじの山頂の幅a2を増加させることを可能にし、従来技術の設計で可能であるよりも多くの材料をロッドねじの摩耗ボリューム部に割り当てる。結果として、ロッドは、現在市販されている製品で達成可能なものよりも著しく長い耐用年数を有することができる。
【0016】
[0025]本発明による比(b1/a1)は、1.5~5の間であり、好ましくは2~4の範囲である。フランク角αは、30~40度の範囲内にあり、好ましくは34~36度、最も好ましくは約35度である。ねじれ角βは、次式により、ねじのピッチと直径とに関係し、
ねじれ角β=arctan[ピッチ/π(ピッチ径)]
式中、ピッチ径は、外径と内径の平均である。上記のように、ねじれ角が大きいほど、がたつきによってビットを緩めることが容易になる。シングルパス掘削に適した本発明による好ましいねじれ角は、ほとんどの従来のねじにおける6~8度と比較して、8~10度、好ましくは8.5~9.5度である。(業界標準のR32ねじは、ねじれ角が7.6度である。)特定の実施形態は、ねじれ角が9~9.5度であり得る。これらの値は、米国特許第4,332,502号明細書及び米国特許第4,861,209号明細書などの従来技術の公開に開示されているピッチ角とフランク角との組み合わせから十分に外れている。
【0017】
[0026]ねじのピッチは好ましくは13~18mmであり、ねじの深さは好ましくは1.2~1.8mmである。ジャミングを回避するために、ロッドの外径とビットねじの外径(
図3a)との間、及びロッドの内径とビットねじの内径との間にクリアランスが設けられる。ねじの山頂とその隣接する側面とを接続する半径R1は、
図3bに示すように、ビットねじとロッドねじの両方において、谷底とその隣接する側面とを接続する半径R2よりも大きい。この特徴は、ねじが係合されるときの接触及び干渉を最小限に抑えるのに役立つ。R1は、約1.0~約5.0mmに及ぶことができ、好ましくは約2.5~3.5mmであり、R2は、約0.5~約4.5mmに及ぶことができ、好ましくは約2.0~3.0mmである。直線部分は、好ましくは、フランク上に存在すべきであり、その長さは、フランク長さの20%~75%、好ましくは33%~50%である。「略台形の輪郭」という用語は、上記の曲率を組み込むことによって修正された台形のねじを指す。R1とR2との間のこの差は、ロッドの湾曲部分とビットねじの湾曲部分との間に接触がないことを保証する。これにより、ねじの谷付近の摩耗又は損傷のリスクが最小限に抑えられ、応力亀裂及び破断に至る可能性が高くなる。
【0018】
[0027]ロッド破損に対するさらなる保護として、ロッドのねじの谷とビットのねじの山頂との間の遊びが、ロッドのねじの山頂とビットのねじの谷との間よりも大きくなるように、ロッドのねじを、ビットのねじよりも高くすることができる。
【0019】
[0028]比a2/b1は、ロッドのねじがビットのねじの溝を充填する程度である、ねじ充満度であり、この比は、好ましくは0.2~1.0の範囲内にある。特定の掘削条件に応じて、エンドユーザは、部分的又は完全ねじを有するロッドを選択して、この範囲内の任意の程度の充満度を得ることができる。疲労が懸念されない場合、
図4bに示すように、1.0に近いa2/b1の高い値を選択することができ、ロッドの摩耗ボリューム部8が最大になり、ビットの摩耗ボリューム部7は超硬合金インサートを長持ちさせるのに十分であるだけである。疲労破壊が問題である状況では、
図4cのように、摩耗ボリューム部9が減少することによって、破壊モードを疲労亀裂から好ましいねじ摩耗モードに変更するため、より小さい比を選択することができる。極端な場合には、
図4dのように、ロッドのねじとビットのねじとが、ほぼ同じ速度で摩耗するように、摩耗ボリューム部7及び10を一致させることができる。
図4b~
図4dはまた、ロッドのねじの摩耗の進行を大まかに表しており、間隙hは時間とともに増加する。本発明のねじの設計の特徴は、ロッドのねじが摩耗して間隙hが大きくなるときでも、ビットとロッドの接続がしっかりと保たれることである。
【0020】
[0029]米国特許第6,196,598号明細書及び米国特許出願公開第2010/0001522号明細書及び米国特許出願公開第2010/0059285号明細書は、
図4bに示されているものと同様の方法で、より低コストのスリーブカップリングを犠牲部品として処理することができるように、ロッドのねじにおいて谷よりも広い山頂の使用について論じている。しかしながら、「ノッチ」又はねじの溝の幅が狭いため、これらの完全ねじのロッドのねじの谷での応力集中は、完全ねじ未満のロッドより大きい。多くの掘削現場では、そのようなロッドは、
図4dに示すものは言うまでもなく、
図4cに示す段階に達するずっと前に疲労によって破断する。したがって、本発明は、疲労破断を完全に回避することができるように、
図4cに示すように、完全ねじ未満のねじで開始するオプションをエンドユーザに与える。これは、掘削条件の変化に起因してエンドユーザがロッド破損の突然の増加を経験する場合、従来のシステムの使用を超える利点を提供する。この分野での通常の対応は、これをロッドの「悪いバッチ(bad batch)」のせいにすることである。状態が正常に戻らない場合、ユーザはサプライヤを切り替えることになり、問題を実際に解決することなく物流に問題が生じる。対照的に、本発明のユーザは、疲労関連の破断が始まる前に摩耗によって交換される可能性が高い、完全ねじ未満の等級のロッドに簡単に切り替えることができる。
【0021】
[0030]選択されたロッドのねじの充満度にかかわらず、その範囲内にあるものはすべて、
図4b~
図4dに示すように、完全ねじに使用されるビットと互換性がある。したがって、エンドユーザは、ビットと手元に保持されたロッドの選択との間の不一致の問題なしに、単一ビットねじ設計で運用することができる。
【0022】
[0031]本発明によるビットはまた、「リンギングオフ(ringing off)」する可能性が低い。リンギングオフでは、ビットが2つの部分に破断し、スカートの大部分が頭部から分離し、スカートのわずかな部分しか保持しない。この破壊モードは、ソケットの底部に最も近いねじの谷の疲労に起因する。本発明によるねじの使用は、上述のようにビットの摩耗寿命に悪影響を及ぼさないが、溝幅の増加により、ねじの谷における応力集中が減少し、耐用年数の増加及び疲労によるリンギングオフの発生が低減される。
【0023】
[0032]ビット上のねじの外径及び内径は、27~35mmの範囲に及ぶ平均値、好ましくは30~32mmの範囲内の平均値を有することができる。本発明のドリルビットの山頂の幅a1は、平均直径の6.5%~14.5%に及び、谷の幅b1は、平均直径の23%~30%に及ぶ。したがって、様々な実施形態では、平均直径が大きくなるにつれて、ピッチ、並びにa1、a2、b1及びb2の値は比例的に大きくなる。様々な平均直径に対する代表的な値の範囲を表1に示す。
【表1】
【0024】
[0033]例として、ロッドの摩耗ボリューム部の増加から計算されたロッドの摩耗寿命が増加する、本発明の3つの実施形態を以下で詳細に説明する。
図4aから、摩耗ボリューム部は、山頂の長さにほぼ比例することが分かる。領域w1の大部分は、従来技術のビットでは決して利用されない無駄な摩耗ボリューム部である。標準的なR32(ISO 10208)ねじはロープねじであり、頂部は連続的に湾曲しているため、摩耗ボリューム部は、頂部が平坦である図示の台形ねじよりもわずかに少ない。R32ねじの12.7mmピッチを有する台形ねじ山は、4.2mmの山頂の長さを有することになり、この数は、以下の実施例において摩耗寿命の増加を計算するために使用される。これらの増加は、より小さい摩耗ボリューム部から始まるR32ロープねじを有するロッドの摩耗に対してさらに大きくなる。
【0025】
[0034]実施例1
外径=32mm
内径=29mm
ねじの深さ=1.5mm
ピッチ=15mm
ねじれ角=8.9°
フランク角α=35°
a2=b1=7.7mm
b2=a1=3.0mm
ねじ満量度a2/b1=1.0
ロッドの摩耗寿命の、R32の寿命からの増加は、少なくとも83%である。
【0026】
[0035]この実施形態では、山頂の幅a1はビットにおいて4.2mmから3.0mmに低減され、ロッドねじの山頂a2はビットねじの谷を完全に占有する(
図3a及び
図4b)。摩耗寿命のさらに大きな増加が望まれる場合、a1は、さらに大きなa2に適合するために2.0mmにさらに低減することができる。但し、十分なねじ強度を得るためには、a1は2.0mm以上であることが好ましい。
【0027】
[0036]実施例2
外径=32mm
内径=29mm
ねじの深さ=1.5mm
ピッチ=14mm
ねじれ角=8.3°
フランク角α=35°
a2=5.5mm
b1=7.2mm
a1=2.5mm
b2=4.2mm
ねじ満量度a2/b1=0.76
ロッドの摩耗寿命の、R32の寿命からの増加は、少なくとも31%である。
【0028】
[0037]
図4cに示すこの実施形態では、山頂の幅a1はビット内で4.2mmから2.5mmに低減され、ロッドのねじの山頂は0.76の充満度でビットねじの谷を占有し、1.7mmの間隙hを残す。この実施形態のように、ロッド上の部分的に完全なねじは、ビットからより容易に脱し、疲労亀裂が生じることが知られているロッドのねじの谷の角における応力集中の減少ももたらす。
【0029】
[0038]実施例3
外径=33mm
内径=30mm
ねじの深さ=1.5mm
ピッチ=16mm
ねじれ角=9.2°
フランク角=35°
a2=7.0mm
b1=9.2mm
b2=4.7mm
a1=2.5mm
ねじ満量度a2/b1=0.76
ロッドの摩耗寿命の、R32の寿命からの増加は、少なくとも67%である。
【0030】
[0039]
図4cによっても表されるこの実施形態では、ねじの直径及びピッチが増加している。山頂の幅a1はこの場合も、ビットにおいて2.5mmであり、ロッドのねじの山頂はビットのねじの溝を完全には占有せず、2.2mmの間隙hを残す。この設計は、実施例2のように、ロッドの疲労破壊が懸念される状況に役立つ。この実施形態は、完全なねじがなくても、ロッド摩耗寿命の著しい増加を達成することができることを実証する。
【0031】
[0040]本発明は、ねじの頂上よりもねじの谷が広いドリルビットを広く提供する。本発明は、単一ビットを有する複数のドリルロッドねじの輪郭を適応させる方法をさらに提供する。したがって、本発明は、対応する様々なドリルビットの費用なしに、様々なドリルロッドの輪郭を有する掘削リグを運用する方法、及び掘削現場でドリルビットの在庫を低減する方法をさらに提供する。
【0032】
[0041]本発明の原理は、図面及び実施例において台形のねじで示されているが、本発明は、連続的に湾曲したねじ、及び中間形態のねじを有する実施形態で運用可能であると考えられる。
【0033】
[0042]本発明のドリルビットは、それぞれ
図5a及び
図5bに示すように、ロッド端部がビットソケットの底部に衝突するいわゆる底部駆動モード、又はロッド端部とソケット底部との間に間隙がある肩部駆動モードのいずれかで使用することができる。肩部駆動モードは、より剛性の高いアセンブリを提供し、特にカラーリング(ドリル孔の初期形成)中に掘削手が非常に望む品質を提供する。
【0034】
[0043]上記の詳細な説明及び添付の図面は、本発明の特定の非限定的な実施形態及び実施例を提示する。当業者に明らかな修正、均等物、及び変形は、本発明の一部であると本発明者によって企図され、以下の特許請求の範囲はそれに応じて解釈されることが意図される。
[発明の項目]
[項目1]
内部に雌ねじを有する打撃式掘削のためのドリルビットにおいて、前記ねじが、
(a)略台形の輪郭と、
(b)28~35mmの範囲内の平均ねじ直径と、
(c)前記平均ねじ直径の6.5%~14.5%の範囲内の山頂の幅a1と、
(c)前記平均ねじ直径の23%~30%の範囲内の谷の幅b1と、
(d)1.5<(b1/a1)<4の範囲内にある、谷の幅の山頂の幅に対する比と、
(e)30~40度の範囲内のフランク角αと
を有することを特徴とする、ドリルビット。
[項目2]
13~18mmの範囲内のピッチ、及び1.2~1.8mmの範囲内のねじの深さを有することをさらに特徴とする、項目1に記載のドリルビット。
[項目3]
8.0~10度の範囲内のねじれ角を有することをさらに特徴とする、項目1に記載のドリルビット。
[項目4]
8.0~10度の範囲のねじれ角を有することをさらに特徴とする、項目2に記載のドリルビット。
[項目5]
前記ねじれ角が8.5~9.5度の範囲内にある、項目3に記載のドリルビット。
[項目6]
前記ねじれ角が8.5~9.5度の範囲内にある、項目4に記載のドリルビット。
[項目7]
前記ねじれ角が9~10度の範囲内にある、項目3に記載のドリルビット。
[項目8]
前記ねじれ角が9~10度の範囲内にある、項目4に記載のドリルビット。
[項目9]
前記フランク角が34~36度の範囲内にある、項目1に記載のドリルビット。
[項目10]
前記フランク角が34~36度の範囲内にある、項目2に記載のドリルビット。
[項目11]
前記フランク角が34~36度の範囲内にある、項目3に記載のドリルビット。
[項目12]
前記フランク角が34~36度の範囲内にある、項目4に記載のドリルビット。
[項目13]
前記フランク角が34~36度の範囲内にある、項目5に記載のドリルビット。
[項目14]
前記フランク角が34~36度の範囲内にある、項目6に記載のドリルビット。
[項目15]
前記フランク角が34~36度の範囲内にある、項目7に記載のドリルビット。
[項目16]
前記フランク角が34~36度の範囲内にある、項目8に記載のドリルビット。
[項目17]
前記平均ねじ直径が30~32mmの範囲内にある、項目1に記載のドリルビット。
[項目18]
前記平均ねじ直径が30~32mmの範囲にある、項目2に記載のドリルビット。
[項目19]
前記平均ねじ直径が30~32mmの範囲にある、項目3に記載のドリルビット。
[項目20]
前記平均ねじ直径が30~32mmの範囲にある、項目4に記載のドリルビット。
[項目21]
前記平均ねじ直径が30~32mmの範囲にある、項目5に記載のドリルビット。
[項目22]
前記平均ねじ直径が30~32mmの範囲にある、項目6に記載のドリルビット。
[項目23]
前記平均ねじ直径が30~32mmの範囲にある、項目7に記載のドリルビット。
[項目24]
前記平均ねじ直径が30~32mmの範囲にある、項目8に記載のドリルビット。
[項目25]
前記平均ねじ直径が30~32mmの範囲にある、項目7に記載のドリルビット。
[項目26]
異なるねじの山頂の幅を有するドリルロッドを有する項目1に記載の単一のドリルビットを打撃式掘削で継続使用することを含む、単一のドリルビットを有する複数のドリルロッドねじの輪郭を適応させる方法。
[項目27]
異なるねじの山頂の幅を有する複数のドリルロッドを含む在庫で打撃式掘削現場を運用することを含む、前記現場で部品在庫を減らす方法であって、前記部品在庫が、項目1に記載の少なくとも1つのドリルビットをさらに含む、方法。