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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】移動体システム、及び移動体制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/221 20240101AFI20240517BHJP
   G05D 1/243 20240101ALI20240517BHJP
【FI】
G05D1/221
G05D1/243
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019184813
(22)【出願日】2019-10-07
(65)【公開番号】P2021060825
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】高山 誠悟
(72)【発明者】
【氏名】今仲 隆晃
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-094298(JP,A)
【文献】特開2001-222320(JP,A)
【文献】特開2003-233423(JP,A)
【文献】特開2003-073093(JP,A)
【文献】特開2018-155597(JP,A)
【文献】特開2016-151897(JP,A)
【文献】特開2015-170284(JP,A)
【文献】特開平02-083713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と、
前記移動体に制御指示を出力する上位システムと、を備え、
前記移動体は、
物体の検知領域を前記移動体の周囲に設定する領域設定部と、
前記検知領域における物体の検知結果に基づいて前記移動体を制御する制御部と、を有し、
前記領域設定部は、前記制御指示に基づいて前記検知領域を設定し、
前記移動体の移動状態は、移動速度と移動方向との少なくとも一方が異なる複数種類の移動モードを含み、
前記領域設定部は、前記移動体の前記移動モードに応じて前記検知領域を変更し、
複数種類の前記移動モードは、直進走行モードと、カーブ走行モードと、旋回走行モードとを少なくとも含む、
移動体システム。
【請求項2】
互いに範囲が異なる複数の領域候補の中から前記検知領域とする前記領域候補を選択する領域選択部を更に備え、
前記領域設定部は、前記領域選択部が選択した前記領域候補に基づく前記検知領域を前記移動体の周囲に設定する、
請求項1に記載の移動体システム。
【請求項3】
前記移動体が前記領域選択部を更に有する、
請求項2に記載の移動体システム。
【請求項4】
前記上位システムが前記領域選択部を有し、
前記上位システムは、前記領域選択部が選択した前記領域候補に基づく前記検知領域を設定するよう指示する前記制御指示を前記移動体に出力する、
請求項2に記載の移動体システム。
【請求項5】
前記領域設定部は、前記制御指示に基づいて、前記検知領域の大きさ及び形状を設定する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の移動体システム。
【請求項6】
前記移動体は前記検知領域を記憶しており、
前記領域設定部は、前記制御指示に基づいて、前記移動体が記憶している前記検知領域を変更可能である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の移動体システム。
【請求項7】
前記検知領域は三次元の領域である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の移動体システム。
【請求項8】
前記移動体は、搬送対象物を搬送する搬送装置を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の移動体システム。
【請求項9】
前記領域設定部は、前記搬送対象物に応じて前記検知領域を変更する、
請求項8に記載の移動体システム。
【請求項10】
前記検知領域は複数の小領域を含み、
前記制御部は、前記複数の小領域の各々での物体の検知結果に基づいて前記移動体を制御する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の移動体システム。
【請求項11】
前記複数の小領域は、
前記移動体が入る大きさの円と、前記円の中心を通る線分と平行な2本の線分とで囲まれ、前記移動体が少なくとも入る第1領域と、
前記円の内側の領域のうち前記第1領域の外側の領域である第2領域と、を含む、
請求項10に記載の移動体システム。
【請求項12】
前記検知領域は、前記移動体が入る第1部分と、前記第1部分よりも前記移動体の進行方向前方にある第2部分とを含み、
前記移動体の進行方向と直交する方向において、前記第1部分の幅よりも前記第2部分の幅が大きい、
請求項1~10のいずれか1項に記載の移動体システム。
【請求項13】
前記上位システムは、前記移動体が移動する経路の状況を含む前記移動体の使用状況に基づいて、前記検知領域の形状を変化させる前記制御指示を出力する、
請求項1~12のいずれか1項に記載の移動体システム。
【請求項14】
物体の検知領域を移動体の周囲に設定する領域設定処理と、
前記検知領域における物体の検知結果に基づいて前記移動体を制御する制御処理と、を含み、
前記移動体の移動状態は、移動速度と移動方向との少なくとも一方が異なる複数種類の移動モードを含み、
前記領域設定処理では、前記移動体の前記移動モードに応じて前記検知領域を変更し、
複数種類の前記移動モードは、直進走行モードと、カーブ走行モードと、旋回走行モードとを少なくとも含む、
移動体制御方法。
【請求項15】
移動体と、
前記移動体に制御指示を出力する上位システムと、を備え、
前記移動体は、
物体の検知領域を前記移動体の周囲に設定する領域設定部と、
前記検知領域における物体の検知結果に基づいて前記移動体を制御する制御部と、を有し、
前記領域設定部は、前記制御指示に基づいて前記検知領域を設定し、
前記検知領域は複数の小領域を含み、
前記制御部は、前記複数の小領域の各々での物体の検知結果に基づいて前記移動体を制御し、
前記複数の小領域は、
前記移動体が入る大きさの円と、前記円の中心を通る線分と平行な2本の線分とで囲まれ、前記移動体が少なくとも入る第1領域と、
前記円の内側の領域のうち前記第1領域の外側の領域である第2領域と、を含む、
移動体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体システム、及び移動体制御方法に関する。より詳細には、本開示は、移動体を制御する移動体システム、及び移動体制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、障害物検知領域内の障害物を検知する自動車用障害物検知装置を開示する。自動車用障害物検知装置は、自車(移動体)の予測進路と自車周辺の特定の道路構成物とに応じて、自車の進行方向の前方に、障害物検知領域(検知領域)を設定する検知領域設定部を有している。障害物検知部が、障害物検知領域において障害物を検知すると、自動車が警報で報知したり、制動制御を実行したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-271766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の自動車用障害物検知装置において、自動車の外部から障害物検知領域を設定することが要望されていた。
【0005】
本開示の目的は、外部からの制御指示で検知領域を設定可能な移動体システム、及び移動体制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の移動体システムは、移動体と、前記移動体に制御指示を出力する上位システムと、を備える。前記移動体は、物体の検知領域を前記移動体の周囲に設定する領域設定部と、前記検知領域における物体の検知結果に基づいて前記移動体を制御する制御部と、を有する。前記領域設定部は、前記制御指示に基づいて前記検知領域を設定する。前記移動体の移動状態は、移動速度と移動方向との少なくとも一方が異なる複数種類の移動モードを含む。前記領域設定部は、前記移動体の前記移動モードに応じて前記検知領域を変更する。複数種類の前記移動モードは、直進走行モードと、カーブ走行モードと、旋回走行モードとを少なくとも含む。
【0007】
本開示の一態様の移動体制御方法は、物体の検知領域を移動体の周囲に設定する領域設定処理と、前記検知領域における物体の検知結果に基づいて前記移動体を制御する制御処理と、を含む。前記移動体の移動状態は、移動速度と移動方向との少なくとも一方が異なる複数種類の移動モードを含む。前記領域設定処理では、前記移動体の前記移動モードに応じて前記検知領域を変更する。複数種類の前記移動モードは、直進走行モードと、カーブ走行モードと、旋回走行モードとを少なくとも含む。
【0008】
本開示の一態様の移動体システムは、移動体と、前記移動体に制御指示を出力する上位システムと、を備える。前記移動体は、物体の検知領域を前記移動体の周囲に設定する領域設定部と、前記検知領域における物体の検知結果に基づいて前記移動体を制御する制御部と、を有する。前記領域設定部は、前記制御指示に基づいて前記検知領域を設定する。前記検知領域は複数の小領域を含み、前記制御部は、前記複数の小領域の各々での物体の検知結果に基づいて前記移動体を制御する。前記複数の小領域は、前記移動体が入る大きさの円と、前記円の中心を通る線分と平行な2本の線分とで囲まれ、前記移動体が少なくとも入る第1領域と、前記円の内側の領域のうち前記第1領域の外側の領域である第2領域と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、外部からの制御指示で検知領域を設定可能な移動体システム、及び移動体制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る移動体システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、同上の移動体システムが備える移動体の直進走行モードでの検知領域を示す平面図である。
図3図3Aは、同上の移動体の直進走行モードでの検知領域を示す平面図である。図3Bは、同上の移動体のカーブ走行モードでの検知領域を示す平面図である。図3Cは、同上の移動体の旋回走行モードでの検知領域を示す平面図である。
図4図4は、同上の移動体の直進走行モード及びカーブ走行モードでの検知領域を示す平面図である。
図5図5Aは、同上の移動体の高速直進モードでの検知領域を示す平面図である。図5Bは、同上の移動体の低速直進モードでの検知領域を示す平面図である。
図6図6Aは、同上の移動体の高速直進モードでの検知領域を示す平面図である。図6Bは、同上の移動体の低速直進モードでの検知領域を示す平面図である。図6Cは、同上の移動体のカーブ走行モードでの検知領域を示す平面図である。図6Dは、同上の移動体の旋回走行モードでの検知領域を示す平面図である。
図7図7Aは、同上の移動体の高速直進モードでの検知領域を示す平面図である。図7Bは、同上の移動体の低速直進モードでの検知領域を示す平面図である。図7Cは、同上の移動体のカーブ走行モードでの検知領域を示す平面図である。図7Dは、同上の移動体の旋回走行モードでの検知領域を示す平面図である。
図8図8Aは、同上の移動体の高速直進モードでの検知領域を示す平面図である。図8Bは、同上の移動体の低速直進モードでの検知領域を示す平面図である。図8Cは、同上の移動体のカーブ走行モードでの検知領域を示す平面図である。図8Dは、同上の移動体の旋回走行モードでの検知領域を示す平面図である。
図9】同上の移動体システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態に係る移動体システムについて、図1図9を参照して説明する。
【0012】
(1)概要
本実施形態の移動体システム1は、図1に示すように、移動体10と、上位システム20とを備える。
【0013】
移動体10は、上位システム20からの指示を受けて、所定エリア100(図2参照)内を自律的に移動する。移動体10は、自機の周囲に物体が存在する場合において、物体との接触を回避するための動作(例えば徐行又は停止等の動作)を行う。所定エリア100内を移動する複数の移動体10のうちの1つの移動体10A(図2参照)に着目した場合、移動体10Aの周囲に存在する物体は、他の移動体10Bを含み得る。また、移動体10Aの周囲に存在する物体は、通路の端の壁50、柱、間仕切り等の所定エリア100内に固定された物体、通路に置かれた搬送対象物のように移動可能な状態で所定エリア100内に配置された物体、及び人等を含み得る。なお、複数の移動体10のうちの1つの移動体を移動体10Aと表記し、移動体10Aと区別するため他の移動体を移動体10Bと表記しているが、移動体10Aと10Bとは同じ構成を有している。
【0014】
以下の実施形態で説明する「移動体」は、搬送対象物40を搬送する搬送装置である。本実施形態では、搬送対象物40は、一例として、荷物が載せられた、ロールボックスパレット等のパレットである。移動体10がロールボックスパレットのような搬送対象物40を搬送する場合、移動体10は、ロールボックスパレットの下面の四隅に配置された車輪の間に入り込み、ロールボックスパレットを上面に載せた状態で搬送する。この種の搬送装置は、無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)、移動ロボット、ドローン等を含み得る。本開示でいう「移動ロボット」は、例えば、車輪型、クローラ型又は脚型(歩行型を含む)のロボットである。移動体10は、所定エリア100内で搬送対象物40の搬送作業を行うだけでなく、例えば、ピッキング、溶接、実装、陳列、接客、警備、組立及び検査等の様々な作業を実行する機能を有していてもよい。「所定エリア」は、1台以上の移動体10が移動する範囲であって、一例として、工場、倉庫、建設現場、店舗、物流センタ、事務所、公園、住宅、学校、病院、駅、空港又は駐車場等である。さらに、例えば、船舶、電車又は飛行機の内部等、乗り物の内部に移動体10が配備されている場合には、乗り物の内部が所定エリア100になる。
【0015】
本実施形態の移動体システム1では、上位システム20が移動体10に制御指示を出力する。
【0016】
移動体10(10A)は、領域設定部112と、制御部113とを備える。
【0017】
領域設定部112は、物体の検知領域A1(図2参照)を移動体10の周囲に設定する。
【0018】
制御部113は、検知領域A1における物体(他の移動体10B又は壁50等)の検知結果に基づいて移動体10を制御する。
【0019】
領域設定部112は、制御指示に基づいて検知領域A1を設定する。
【0020】
移動体10の制御部113は、検知領域A1における物体の検知結果に基づいて移動体10を制御している。移動体10の領域設定部112は、上位システム20からの制御指示に基づいて、物体の検知領域A1を設定しているので、移動体10の検知領域A1を上位システム20から設定することが可能になる。これにより、上位システム20が把握している移動体10の周囲の状況に基づいて移動体10の周囲に最適な範囲で検知領域A1を設定できる。例えば、移動体10が移動する通路が狭いものの、人等の移動物体が存在しない安全な状況であれば、上位システム20は検知領域A1を狭い領域に設定する。また、移動体10を充電器に接近させたり、移動体10Aを搬送対象物40の受け渡し等の目的で他の移動体10Bに接近させたりする場合、上位システム20は検知領域A1を狭い領域に設定する。一方、移動体10の周囲に移動物体が存在するような状況では、上位システム20は検知領域A1を広い領域に設定する。このように、本実施形態では、外部(上位システム20)からの制御指示で検知領域を設定可能な移動体システム1を提供することができる。領域設定部112が、外部からの制御指示に基づいて、検知領域A1を必要最小限の大きさに設定することで、移動体10の移動に支障がない物体まで検知してしまう可能性を低減でき、移動体10を安全かつスムーズに移動させることができる。
【0021】
(2)詳細
(2.1)構成
以下、本実施形態に係る移動体システム1の構成について、図1図8を参照して、詳細に説明する。以下に示す、数値、形状、材料、構成要素の位置、複数の構成要素間の位置関係及び接続関係等は、一例であって、本開示を限定する主旨ではない。また、以下で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。以下の説明において、図2においてX軸方向を前後方向、Y軸方向を左右方向と規定する。さらに、X軸方向の正の向きを前側、Y軸方向の正の向きを左側と規定する。ただし、これらの方向は一例であり、移動体10の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0022】
以下では、移動体システム1の制御対象である移動体10が、無人搬送車である場合を例として説明する。移動体10としての無人搬送車は、所定エリア100内を移動しつつ、搬送対象物40の搬送という作業を実行する。
【0023】
移動体システム1は、図1に示すように、上位システム20と、所定エリア100に設置された中継装置30と、上位システム20によって制御される複数の移動体10と、を備える。
【0024】
上位システム20は、例えば所定エリア100の外部に設置されており、インターネット等の通信ネットワークNT1を介して、中継装置30に接続されている。
【0025】
上位システム20と複数の移動体10の各々とは、互いに通信可能に構成されている。本開示において「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又は通信ネットワークNT1若しくは中継装置30等を介して間接的に、情報を授受できることを意味する。すなわち、上位システム20と複数の移動体10の各々とは、互いに情報を授受することができる。本実施形態では、複数の移動体10の各々は、中継装置30と、電波を媒体とする無線通信によって通信を行う。そのため、上位システム20と複数の移動体10とは、少なくとも通信ネットワークNT1及び中継装置30を介して、間接的に通信を行うことになる。
【0026】
要するに、各中継装置30は、各移動体10と上位システム20との間の通信を中継する機器(アクセスポイント)である。中継装置30は、通信ネットワークNT1を介して、上位システム20と通信する。本実施形態では一例として、中継装置30と移動体10との間の通信には、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)又は通信免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の規格に準拠した、無線通信を採用する。また、通信ネットワークNT1は、インターネットに限らず、例えば、所定エリア100内又は所定エリア100の運営会社内のローカルな通信ネットワークが適用されてもよい。なお、中継装置30の台数は1台でも複数台でもよく、所定エリア100内の任意の場所にいる移動体10と上位システム20との間の通信を中継可能なように、所定エリア100内の適宜の位置に配置されていればよい。
【0027】
(2.1.1)移動体
次に、移動体10について図1及び図2を参照してより詳細に説明する。移動体10は、例えば、所定エリア100の床面等からなる平坦な移動面60を自律移動(自律走行)する。移動体10は、第1処理部11と、第1通信部12と、物体検知部13と、センサ部14と、走行装置15と、第1記憶部16と、を備える。なお、移動体10は、繰り返し充電が可能な二次電池を内蔵し、二次電池が蓄えた電気エネルギを利用して走行する。
【0028】
第1通信部12は、中継装置30及び通信ネットワークNT1を介して上位システム20(上位システム20の第2通信部22)と通信する。ここで、第1通信部12は中継装置30との間で無線通信方式により通信を行う。
【0029】
物体検知部13は、移動体10の周囲に設定された検知領域A1において物体の存否を検出する。物体検知部13は、例えば、イメージセンサ(カメラ)、ソナーセンサ、レーダ、及びLiDAR(Light Detection and Ranging)等のセンサを含み、これらのセンサにて検知領域A1における物体の存否を検出する。
【0030】
ところで、本実施形態では検知領域A1が複数の小領域を含んでいる。以下では、検知領域A1が2つの小領域(第1領域SA1及び第2領域SA2)を含む形態について説明する。第1領域SA1は、移動体10の周りに設定される領域である。第2領域SA2は、第1領域SA1の外側であって、移動体10の進行方向の前方に設定される領域である。なお、検知領域A1は2つの小領域を含むものに限定されず、検知領域A1は1つの領域でもよいし、3つ以上の小領域を含んでいてもよい。
【0031】
物体検知部13は、第1領域SA1と第2領域SA2との各々で物体の存否を個別に検出しており、制御部113は、複数の小領域(第1領域SA1及び第2領域SA2)の各々での物体の検知結果に基づいて、移動体10を制御する。例えば、物体検知部13が、移動体10から見て第1領域SA1よりも遠い第2領域SA2において物体を検出した場合、物体との接触までに時間的な余裕があるので、制御部113は、移動体10の速度を減速して徐行させる。一方、物体検知部13が、移動体10の近傍の第1領域SA1において物体を検出した場合、制御部113は、物体との接触を回避するために移動体10を停止させる。このように、制御部113は、検知領域A1での物体の検出結果に基づいて、検知領域A1内に存在する物体との接触を回避するように移動体10を制御する。なお、物体検知部13がイメージセンサ(カメラ)を含む場合、イメージセンサの画像の所望の範囲を検知領域A1に設定すればよい。また、物体検知部13がソナーセンサ、レーダ、LiDAR等のセンサを含む場合、センサから見た検出方向ごとに検出範囲を設定することによって、検知領域A1を任意の領域に設定することができる。
【0032】
センサ部14は、例えば、所定エリア100内で移動体10が存在する現在位置に関する現在位置情報等を検知する。センサ部14は、例えば、LiDARによる周囲の物体の検出情報と、所定エリア100の電子的な地図情報とに基づいて現在位置を推定する。なお、センサ部は、電波ビーコンを用いたLPS(Local Positioning System)を利用して、現在位置を推定してもよい。なお、センサ部14は、GPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムを用いて実現されてもよい。移動体10は、センサ部14が検知した現在位置の情報と当該移動体10の識別情報とを第1通信部12から上位システム20へ所定の送信時間間隔(例えば1秒間隔)で定期的に送信する。なお、移動体10は、上位システム20からの送信要求等に応じて、センサ部14が検知した現在位置の情報と当該移動体10の識別情報とを第1通信部12から上位システム20へ不定期に送信してもよい。
【0033】
また、センサ部14は、移動体10の動作状態等を検知してもよい。移動体10の動作状態は、移動体10が有する蓄電部24の残量、移動体10が走行中か停止中かを表す状態、移動体10の速度(及び速度変化)、移動体10に作用する加速度、及び移動体10の姿勢等を含み得る。物体検知部13は、例えば、速度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ等のセンサを含み、これらのセンサにて移動体10の動作状態を検知する。
【0034】
走行装置15は、移動体10の移動体本体17に設けられた複数の車輪を駆動することによって移動体10を走行させる。複数の車輪の少なくとも一部は駆動輪である。駆動輪は例えばオムニホイールのような全方向移動型車輪である。走行装置15は、第1処理部11から入力される制御指令に基づいて駆動輪を駆動することによって、移動体10を走行させる。
【0035】
第1記憶部16は、例えば、不揮発性メモリ等の半導体メモリを含む。第1記憶部16は、移動体10の周囲に設定する検知領域A1の設定情報等を記憶する。なお、本実施形態では、移動体10の走行モード(移動モード)に応じて検知領域A1の形状及び大きさの少なくとも一方を変化させている。第1記憶部16は、互いに範囲が異なる複数の領域候補を表す複数の領域データを記憶している。領域候補の領域データは、例えば、移動体本体17の中心位置を原点とするXY座標上で、領域候補の範囲を示す座標データ等からなる。複数の領域候補の領域データは第1記憶部16に予め記憶されていてもよいし、上位システム20から受信した複数の領域候補の領域データが第1記憶部16に記憶されてもよい。
【0036】
第1処理部11は、例えば、メモリ及びプロセッサを含むコンピュータシステムを主構成とする。すなわち、コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、プロセッサが実行することにより、第1処理部11の機能(領域選択部111、領域設定部112、及び制御部113等の機能)が実現される。プログラムはメモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0037】
本実施形態では移動体10が領域選択部111を有している。本実施形態では、移動体10の周囲に設定する検知領域A1の候補として、互いに範囲が異なる複数の領域候補の領域データが第1記憶部16に記憶されている。領域選択部111は、上位システム20からの制御指示に基づいて複数の領域候補の領域データの中から、検知領域A1とする領域候補の領域データを選択する。さらに言えば、領域選択部111は、上位システム20からの制御指示と、移動体10の走行モードとに基づいて、複数の領域候補の領域データから、検知領域A1とする領域候補の領域データを選択する。
【0038】
領域設定部112は、上位システム20からの制御指示に基づいて、検知領域A1の大きさ及び形状の少なくとも一方を設定することができる。具体的には、領域設定部112は、複数の領域候補の中から領域選択部111が選択した領域候補を検知領域A1として設定する。つまり、領域設定部112は、第1記憶部16に記憶された複数の領域候補の領域データの中から領域選択部111が選択した領域候補の領域データに基づいて、移動体10の周囲に検知領域A1を設定する。
【0039】
制御部113は、例えば上位システム20から搬送対象物40の搬送指令を受信すると、搬送指令に基づいて走行装置15を制御して移動体10を自律的に走行させ、搬送対象物40を所定の搬送先まで搬送させる。制御部113は、例えば搬送指令によって指示された移動経路と、センサ部14が検知した現在位置情報と、物体検知部13による物体の検出結果とに基づいて、移動体10を自律的に走行させる。ここで、物体検知部13が検知領域A1において物体の存在を検出すると、制御部113は、検知領域A1に存在する物体との接触を回避するように移動体10を制御する。例えば、物体検知部13が第2領域SA2において物体の存在を検出すると、制御部113は、走行装置15を制御して、移動体10を徐行させる。一方、物体検知部13が第1領域SA1において物体の存在を検出すると、制御部113は、走行装置15を制御して、移動体10を停止させる。
【0040】
ここで、第1記憶部16に記憶されている複数の領域候補について図2図8を参照して説明する。
【0041】
検知領域A1は、移動体10が移動する経路(換言すれば移動体10が使用される周囲の状況)と、移動体10の走行モード(移動モード)との少なくとも一方に基づいて変更される。したがって、第1記憶部16には、移動体10が使用される周囲の状況、及び、移動体10の走行モードに応じて範囲が決定された複数の領域候補の領域データが記憶されている。領域選択部111は、複数の領域候補の制御データから、移動体10の周囲の状況及び移動体10の走行モードに基づいて検知領域A1とする領域候補の領域データを選択する。そして、領域設定部112は、領域選択部111が選択した領域候補の領域データに基づいて、移動体10の周囲に検知領域を設定する。
【0042】
ここで、移動体10の走行モードは、直進走行モードと、カーブ走行モードと、旋回走行モードとを少なくとも含む。「直進走行モード」は、移動体10が前方又は後方に直進走行する走行モードである。「カーブ走行モード」は、移動体10が任意の曲率半径でカーブしながら走行する走行モードである。「旋回走行モード」は、移動体本体17の中心位置(例えば前後方向及び左右方向のそれぞれでの中心位置)を中心として移動体10が回転する走行モードである。これらのモードでは、モードごとに移動体10が移動する方向が異なるので、モードごとに検知領域A1を設定するのが好ましい。以下では、走行モードごとの検知領域A1を区別する場合、図3A図3Cに示すように、直進走行モードでは検知領域A11、カーブ走行モードでは検知領域A12、旋回走行モードでは検知領域A13とそれぞれ表記する。また、本実施形態では検知領域A1が2つの小領域(第1領域SA1及び第2領域SA2)を含んでおり、各走行モードでの第1領域SA1及び第2領域SA2を区別する場合、直進走行モードでは第1領域SA11及び第2領域SA12と表記する。また、カーブ走行モードでは第1領域SA21及び第2領域SA22と表記し、旋回走行モードでは第1領域SA31及び第2領域SA32とそれぞれ表記する。ここで、直進走行モードでの検知領域A11の一例を図3Aに示し、カーブ走行モードでの検知領域A12の一例を図3Bに示し、旋回走行モードでの検知領域A13の一例を図3Cに示す。なお、図3A及び図3Bにおいて、図面中の左側が、移動体本体17の進行方向における前方である。
【0043】
直進走行モードでの検知領域A11は、図3Aに示すように、移動体10の周りに設定される長方形状の第1領域SA11と、第1領域SA11に対して移動体10の進行方向の前方に設定される長方形状の第2領域SA12とを含む。移動体10の前後方向(直進進行モードでの進行方向)において、第1領域SA11の後端は、移動体本体17の後端と同じ位置に設定され、第1領域SA11の前端は、移動体本体17の前端から距離D1(例えば250mm)だけ前方の位置に設定される。なお、本実施形態において、2つの物の位置、大きさ、又は形状が同じであるとは、位置、大きさ、又は形状が完全に同じであることに限定されず、多少のずれがあってもよい。また、移動体10の左右方向において、第1領域SA11の右端は、移動体本体17の右端から距離W1(例えば290mm)だけ右側の位置に設定され、第1領域SA11の左端は、移動体本体17の左端から距離W1だけ左側の位置に設定される。また、第2領域SA12は、第1領域SA11の前方に設定されている。第2領域SA12は、移動体10の左右方向における幅W2(例えば1200mm)が第1領域SA11と同じ長方形状の領域である。そして、移動体本体17の前後方向において、第2領域SA12の前端の位置は、移動体本体17の前端から距離D2(例えば800mm)だけ前方の位置に設定されている。なお、図3Aに示す直進走行モードでの検知領域A11は一例であり、適宜変更が可能である。
【0044】
カーブ走行モードでの検知領域A12は、図3Bに示すように、直進走行モードでの検知領域A11と、全体の形状及び大きさが同じになるように設定されている。ただし、検知領域A11を構成する第1領域SA11及び第2領域SA12と、検知領域A12を構成する第1領域SA21及び第2領域SA22とは大きさがそれぞれ異なっている。図3Bの例では、第1領域SA21の前端は、移動体本体17の前端から距離D3(例えば200mm)だけ前方の位置に設定されており、検知領域A11に比べて第1領域SA21の範囲が狭くなっている。また、移動体10の左右方向において、第1領域SA21の右端は、移動体本体17の右端から距離W3だけ右側の位置に設定され、第1領域SA21の左端は、移動体本体17の左端から距離W3だけ左側の位置に設定されている。ここで、距離W3は距離W1と同じであり、検知領域A12に含まれる第1領域SA21の左右方向の幅は、検知領域A11に含まれる第1領域SA11の左右方向の幅と同じ幅に設定されている。また、第2領域SA22は、移動体10の左右方向における幅W4(例えば1200mm)が第1領域SA21と同じ長方形状の領域である。そして、第2領域SA22の後端の位置は、移動体本体17の前端から距離D3だけ前方の位置に設定され、第2領域SA22の前端の位置は、移動体本体17の前端から距離D4(例えば800mm)だけ前方の位置に設定されている。このように、カーブ走行モードでの検知領域A12では、直進走行モードでの検知領域A11に比べて、前後方向における第1領域SA11,SA21の長さが短めに設定されている。カーブ走行モードでは直進走行モードに比べて移動体10の速度が遅いと想定されるので、カーブ走行モードでの第1領域SA21の長さが、直進走行モードでの第1領域SA11の長さよりも短い寸法に設定されている。これにより、カーブ走行モードでは、直進走行モードに比べて、物体が検知された場合に移動体10が停止させられる第1領域SA21の範囲を狭めることができる。なお、図3Bに示すカーブ走行モードでの検知領域A12は一例であり、適宜変更が可能である。図3A及び図3Bの例では、カーブ走行モードでの検知領域A12と直進走行モードでの検知領域A11とは、全体の形状及び大きさが同じであるが、全体の形状及び大きさの少なくとも一方が異なっていてもよい。
【0045】
旋回走行モードでの検知領域A13は、図3Cに示すように、移動体10の周りに設定される円形の領域であり、第1領域SA31と第2領域SA32とを含む。第1領域SA31は、移動体本体17が入る大きさ(直径R1)の円C1と、円C1の中心CP1を通る線分L10に平行な2本の線分L1,L2とで囲まれる領域である。ここで、移動体本体17の前後方向において、移動体本体17の前端から第1領域SA31の前端までの距離はD5(例えば155mm)である。また、移動体本体17の左右方向において、第1領域SA31の右端は、移動体本体17の右端から距離W5(例えば290mm)だけ右側の位置に設定され、第1領域SA21の左端は、移動体本体17の左端から距離W5だけ左側の位置に設定される。また、第2領域SA22は、移動体本体17から見て第1領域SA21よりも遠い位置に設定されている。第2領域SA22は移動体本体17の右側及び左側にそれぞれ設定されており、第2領域SA22は、円C1の内側の領域のうち、第1領域SA21の外側の領域となる。つまり、第2領域SA32は、線分L1と円C1とで囲まれる領域と、線分L2と円C1とで囲まれる領域と、を含む。
【0046】
なお、図3A及び図3Bの例では、直進走行モードでの検知領域A11とカーブ走行モードでの検知領域A12とがそれぞれ全体として長方形状の領域に設定されているが、検知領域A11,S12の形状は長方形状の領域に限定されず、適宜変更が可能である。
【0047】
例えば、直進走行モードでの検知領域A11は、図4に示すように、平面視の形状がT型の領域に設定されてもよい。この検知領域A11は、上述と同様、第1領域SA11と、第1領域SA11よりも前側に設けられた第2領域SA12と、を含む。
【0048】
図4の例では、第1領域SA11は、移動体本体17が入る長方形状の第1部分P1と、第1部分P1よりも前側に設けられた第1部分P1よりも左右方向の幅が広い幅広部分P21とを含む。第1部分P1の後端は移動体本体17の後端と同じ位置であり、第1部分P1の前端は移動体本体17の前端と同じ位置である。第1部分P1の右端は、移動体本体17の右端から距離W23(例えば300mm)だけ右側の位置に設定され、第1部分P1の左端は、移動体本体17の左端から距離W23だけ左側の位置に設定される。また、幅広部分P21の左右方向の幅は、第1部分P1の左右方向の幅W21(例えば1200mm)よりも広い寸法に設定されている。幅広部分P21の前端の位置は、移動体本体17の前端の位置から距離D21(例えば350mm)だけ前方の位置に設定されている。
【0049】
また、第2領域SA12は、幅広部分P21よりも前方に設けられた長方形状の領域であり、移動体本体17の左右方向において、第2領域SA12の幅W22(例えば1400mm)は、幅広部分P21と同じ幅に設定されている。第2領域SA12の前端の位置は、幅広部分P21の前端の位置から距離D22(例えば1800mm)だけ前方の位置に設定されている。ここにおいて、第1領域SA11の幅広部分P21と、第2領域SA12とで、第1部分P1よりも移動体本体17の進行方向前方にあり、第1部分P1に比べて幅が広い第2部分P2が構成されている。すなわち、検知領域A11は、移動体本体17が入る第1部分P1と、第1部分P1よりも移動体本体17の進行方向前方にある第2部分P2とを含んでいる。移動体本体17の進行方向と直交する方向(図4の左右方向)において、第1部分P1の幅(最大幅)W21よりも第2部分P2の幅(最大幅)W22が大きくなるように、検知領域A11が設定されている。
【0050】
このように、検知領域A11において、移動体本体17の近傍に設定される第1部分P1よりも、進行方向前方にある第2部分P2の方が、左右方向における幅が広くなるように検知領域A11が構成されている。したがって、直進走行している移動体10の進行方向が右又は左に数度程度ずれた場合に移動体10及び搬送対象物40が通る可能性がある領域を第2部分P2に含めることができる。よって、物体検知部13は、直進走行している移動体10が接触する可能性がある物体の存否をより確実に検出でき、移動体10を安全かつスムーズに移動させることができる。
【0051】
なお、図4は、直進走行モードでの検知領域A11の一例を示しているが、カーブ走行モードでの検知領域A12が、図4に示すような形状に設定されていてもよく、カーブ走行している移動体10が接触する可能性がある物体の存否をより確実に検出できる。
【0052】
ところで、移動体10が前方又は後方に直進走行する直進走行モードは、所定の基準値(例えば0.5[m/S])以上の速度で直進する高速直進モードと、所定の基準値未満の速度で直進する低速直進モードとに更に分かれていてもよい。そして、高速直進モードと低速直進モードとの各々で検知領域が設定されていてもよい。
【0053】
ここで、図5Aは、高速直進モードでの検知領域A14の概略的な平面図を示し、図5Bは、低速直進モードでの検知領域A15の概略的な平面図を示している。これらの検知領域A14,A15の形状は、図4に示す直進走行モードでの検知領域A11と同様の形状に設定されているので、その説明は省略する。高速直進モードで走行中の移動体10は、低速直進モードで走行中の移動体10に比べて、単位時間当たりに移動する距離が長くなるので、前方に存在する物体との接触を回避するためには、より遠くの領域で物体の存否を検出する必要がある。したがって、高速直進モードでの検知領域A14に含まれる第2領域SA42の前端の位置は、低速直進モードでの検知領域A15に含まれる第2領域SA52の前端の位置よりも前方に設定されている。具体的には、高速直進モードでの第2領域SA42の前端と移動体本体17の前端との間の距離D22は例えば1800mmであるのに対して、低速直進モードでの第2領域SA52の前端と移動体本体17の前端との間の距離D23は例えば800mmである。なお、高速直進モードでの検知領域A14と低速直進モードでの検知領域A15とでは、第2領域SA42,SA52の前端と移動体本体17の前端との間の距離D22,D23以外は同じ形状及び大きさに設定されている。
【0054】
このように、高速直進モードでの検知領域A14の第2領域SA42は、低速直進モードでの検知領域A15の第2領域SA52に比べて、より前方に広がっているので、物体検知部13はより前方にある物体をより早いタイミングで検出することができる。したがって、制御部113は、物体検知部13の検知結果に基づいて、前方にある物体との接触を回避する行動を取りやすくなる。
【0055】
上述のように移動体10の周囲に設定される検知領域A1は移動体10の走行モードに応じて変更されているが、検知領域A1の大きさ及び形状は、移動体10が使用される状況によっても変更されるのが好ましい。例えば、移動体10が狭い通路を移動する場合、通路の端にある壁50等の物体が検知領域A1内に入って移動体10が徐行したり停止したりする可能性があるため、移動体10が広い通路を移動する場合に比べて検知領域A1を狭くするのが好ましい。また、移動体10Aが内蔵するバッテリを充電するために充電器に接続したり、他の移動体10Bとの間で搬送対象物40を受け渡したりする場合、充電器又は他の移動体10Bに接近する必要があるため、検知領域A1を狭くするのが好ましい。
【0056】
例えば、図6A図6Dは、道幅が十分に確保された通路等を移動体10が移動するような通常の使用状況において、移動体10の走行モードごとに設定される検知領域の組み合わせを示しており、この組み合わせを第1パターンと言う。図6Aは高速直進モードでの検知領域A14の概略的な平面図、図6Bは低速直進モードでの検知領域A15の概略的な平面図、図6Cはカーブ走行モードでの検知領域A12の概略的な平面図、図6Dは旋回走行モードでの検知領域A13の概略的な平面図を示している。
【0057】
第1パターンでは、旋回走行モードの検知領域A13は、円形の第1領域SA31のみを含んでいる。高速直進モードでの検知領域A14、低速直進モードでの検知領域A15、及びカーブ走行モードでの検知領域A12は、移動体本体17を含む第1部分P1の幅に比べて前方の第2部分P2の幅が大きい形状に形成されている。ここで、第1領域SA41,SA51,SA31の幅広部分P21の前端と移動体本体17の前端との間の距離D21は、カーブ走行モード、低速直進モード、高速直進モードの順番で長くなるように設定されている。また、第2領域SA42,SA52,SA32の前端と移動体本体17の前端との間の距離D22は、カーブ走行モードと低速直進モードとでは同じ長さであるが、カーブ走行モード及び低速直進モードに比べて高速直進モードの方が長くなるように設定されている。
【0058】
また、図7A図7Dは、道幅が狭い通路等を移動体10が移動するような使用状況において、移動体10の走行モードごとに設定される検知領域の組み合わせを示しており、この組み合わせを第2パターンと言う。図7Aは高速直進モードでの検知領域A14の概略的な平面図、図7Bは低速直進モードでの検知領域A15の概略的な平面図、図7Cはカーブ走行モードでの検知領域A12の概略的な平面図、図7Dは旋回走行モードでの検知領域A13の概略的な平面図を示している。
【0059】
第2パターンは狭い通路等を移動する場合に使用されるので、第2パターンでの各走行モードの検知領域は、第1パターンでの各走行モードの検知領域に比べて、左右方向における幅が狭くなるように設定されている。
【0060】
第2パターンでは、高速直進モードの検知領域A14、低速直進モードの検知領域A15、及びカーブ走行モードの検知領域A13は、進行方向と直交する方向の幅が同じ大きさの長方形状の領域に設定されている。そして、第1領域SA41,SA51,SA31の前端と移動体本体17の前端との間の距離D1,D3は、カーブ走行モード、低速直進モード、高速直進モードの順番で長くなるように設定されている。また、第2領域SA42,SA52,SA32の前端と移動体本体17の前端との間の距離D2,D4は、カーブ走行モードと低速直進モードとでは同じ長さであるが、カーブ走行モード及び低速直進モードに比べて高速直進モードの方が長くなるように設定されている。なお、第2パターンでの検知領域A14,A15,A13の幅W2,W4は、第1パターンでの検知領域A14,A15,A13の幅W22よりも小さい寸法に設定されているので、壁等を検知したために移動体10が停止してしまう可能性を低減できる。
【0061】
また、第2パターンでの旋回走行モードの検知領域A13は、円C1と2本の線分L1,L2とで囲まれる第1領域SA31と、2本の線分L1,L2の各々と円C1とで囲まれる2つの第2領域SA32とを含んでいる。ここで、第2パターンでの検知領域A13の直径R1は、第1パターンでの検知領域A13の直径R1よりも小さい寸法に設定されている。そして、第1パターンでは検知領域A13の全体が第1領域SA31であるのに対して、第2パターンでは、検知領域A13が、移動体本体17が入る第1領域SA31と、第1領域SA31の左右方向の両側にある第2領域SA32とで構成されている。したがって、移動体10が狭い通路等を移動する場合でも、壁等の物体が検知領域A13に入りにくくなるので、壁等を検知したために移動体10が停止してしまう可能性を低減できる。また、検知領域A13に物体が入ったとしても、第2領域SA32内で物体が検知された場合は、移動体10が減速した状態で徐行するので、壁等を検知したために移動体10が停止してしまう可能性を低減できる。
【0062】
また、図8A図8Dは、例えば移動体10を充電器又は他の移動体10B等の対象物に接近させるような使用状況において、移動体10の走行モードごとに設定される検知領域の組み合わせを示しており、この組み合わせを第3パターンと言う。図8Aは高速直進モードでの検知領域A14の概略的な平面図、図8Bは低速直進モードでの検知領域A15の概略的な平面図、図8Cはカーブ走行モードでの検知領域A12の概略的な平面図、図8Dは旋回走行モードでの検知領域A13の概略的な平面図を示している。
【0063】
第3パターンは対象物に移動体10を接近させる場合に使用されるので、第2パターンに比べて、物体が検出された場合に移動体10を停止させる第1領域SA41,SA51,SA21,SA31を更に狭くしている。
【0064】
第3パターンでの高速直進モードの検知領域A14は、長方形状の第1領域SA41と、左右方向の幅W2が第1領域SA41よりも広い長方形状の第2領域SA42とを含む。
【0065】
ここで、左右方向において、第1領域SA41の端(右端又は左端)と移動体本体17の端(右端又は左端)との間の距離W6は、第2モードでの距離W1,W3に比べて小さい寸法に設定されている。また、検知領域A14の第2領域SA42は、移動体本体17の前端の位置から、距離D2だけ離れた位置まで、第1領域SA41を除いた領域に設定されている。ここで、第3パターンでの第2領域SA42の左右方向の幅W2は、第1パターンでの第1領域SA41の幅W22と同じ寸法に設定されている。
【0066】
これにより、移動体10を対象物に接近させる場合に、物体検知部13が第2領域SA42において物体を検知すると、制御部113が移動体10を徐行させ、物体検知部13が第1領域SA41において物体を検知すると、制御部113が移動体10を停止させる。したがって、第3パターンでの検知領域を使用することで、制御部113は、移動体10を対象物に対してより近い位置まで接近させることができる。
【0067】
第3パターンでは、低速直進モード及びカーブ走行モードでの検知領域A15,A12は形状及び大きさが同じである。そして、低速直進モード及びカーブ走行モードでの検知領域A15,A12と、高速直進モードでの検知領域A14とは、第2領域SA22,SA42,SA52の前端と移動体本体17の前端との間の距離D2,D4のみが異なっている。例えば、第2領域SA22,SA42,SA52の前端と移動体本体17の前端との間の距離D2,D4は、高速直進モードでは1800mmに設定されているのに対して、低速直進モード及びカーブ走行モードでは800mmに設定されている。すなわち、高速直進モードに比べて低速の低速直進モード及びカーブ走行モードでは、第2領域SA22,SA42,SA52の範囲を狭くすることで、移動体10が徐行する距離を短くできる。
【0068】
また、第3パターンでの旋回走行モードの検知領域A13の直径R1は、第2パターンでの検知領域A13の直径R1よりも小さい寸法に設定されている。また、左右方向において第1領域SA31の端(右端又は左端)から、移動体本体17の端(右端又は左端)までの距離W5は、第2パターンに比べて第3パターンでは小さい寸法に設定されており、第2パターンに比べて移動体10を対象物に更に近付けることができる。
【0069】
上述のように、複数の走行モードごとに、互いに範囲が異なる検知領域A1が設定されており、複数の検知領域A1にそれぞれ対応した複数の領域候補の領域データが第1記憶部16に記憶されている。さらに言えば、移動体10の使用状況に応じて、走行モードごとの検知領域A1の組み合わせが複数パターン設定されており、第1記憶部16には、複数のパターンのそれぞれで、各走行モードの検知領域A1に対応する領域候補の領域データが記憶されている。領域選択部111は、上位システム20からの制御指示に基づいて移動体10の使用状況に対応した領域候補の組み合わせのパターンを選択する。そして、領域選択部111は、選択したパターンの中から、移動体10の現在の走行モードに対応した領域候補を選択する。そして、領域設定部112が、領域選択部によって選択された領域候補の領域データに基づいて、移動体10の周囲に検知領域A1を設定しており、移動体10の使用状況及び走行モードに対応した検知領域A1を設定することができる。上述のように、移動体10の移動状態(走行状態)は、移動速度と移動方向との少なくとも一方が異なる複数種類の移動モード(走行モード)を含んでいる。そして、領域設定部112は、移動体10の移動モードに応じて検知領域A1を変更しているので、複数種類の移動モードごとに最適な検知領域A1を設定できる。
【0070】
なお、移動体10の使用状況に応じて設定される検知領域A1の組み合わせは上記の第1~第3パターンに限定されず、上記の第1~第3パターン以外の組み合わせが設定されていてもよい。また、移動体10を充電器の周囲に設定された待機位置から、充電器に接続される充電位置まで移動させるような使用状況では、移動体10をカーブ走行モードや高速直進モードで移動させることはない。したがって、移動体10を充電器に接近させる使用状況では、低速直進モードでの検知領域A15と旋回走行モードでの検知領域A13の組み合わせのみ設定されていてもよい。
【0071】
(2.1.2)上位システム
次に、上位システム20について図1を参照してより詳細に説明する。上位システム20は、第2処理部21と、第2通信部22と、第2記憶部23と、を備える。
【0072】
第2通信部22は、通信ネットワークNT1を介して中継装置30と通信する。第2通信部22は、通信ネットワークNT1及び中継装置30を介して、複数(本実施形態では2台)の移動体10の各々と通信する。第2通信部22と中継装置30との間の通信方式としては、無線通信又は有線通信の適宜の通信方式が採用される。
【0073】
第2記憶部23は、移動体10が移動する所定エリア100の電子的な地図情報等を記憶する。また、第2記憶部23は、複数の検知領域A1にそれぞれ対応する複数の領域候補の領域データ等も記憶する。
【0074】
第2処理部21は、例えば、メモリ及びプロセッサを含むコンピュータシステムを主構成とする。すなわち、コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、プロセッサが実行することにより、第2処理部21の機能が実現される。プログラムはメモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0075】
第2処理部21は、制御対象の移動体10に対して、搬送対象物40の搬送を指示する搬送指示を第2通信部22から送信させる。また、第2処理部21は、制御対象の移動体10の使用状況(例えば移動体10が移動する経路周辺の状況)等に基づいて、検知領域A1の領域候補の組み合わせであるパターンを指示する制御指示を第2通信部22から制御対象の移動体10に送信させる。
【0076】
ここで、制御対象の移動体10の第1通信部12が上位システム20から搬送指示と制御指示とを受信すると、第1処理部11は、搬送指示に基づいて走行装置15を制御して、搬送対象物40を搬送する処理を行う。
【0077】
また、移動体10の領域選択部111は上位システム20からの制御指示に基づいて、検知領域A1とする領域候補のパターンを選択する。さらに、領域選択部111は、移動体10の現在の走行モードに基づいて、選択したパターンの中から走行モードに応じた領域候補を選択する。そして、領域設定部112が、領域選択部111が選択した領域候補の領域データに基づいて検知領域A1を設定する。物体検知部13は、領域設定部112が設定した検知領域A1において物体の存否を検出し、第1処理部11は、物体検知部13の検知結果に基づいて移動体10を制御する。例えば、物体検知部13が第2領域SA2において物体を検出すると、第1処理部11は、走行装置15を制御して移動体10を徐行させる。また、物体検知部13が第1領域SA1において物体を検出すると、第1処理部11は、走行装置15を制御して移動体10を停止させる。これにより、移動体システム1では、移動体10の使用状況、及び移動体10の走行モードに応じて最適な検知領域A1を設定できる。また、移動体10は、検知領域A1における物体の検出結果に基づいて、移動体10を制御することで、移動体10を安全かつスムーズに移動させることができる。
【0078】
(2.2)動作
本実施形態の移動体システム1の動作を図9に基づいて説明する。
【0079】
上位システム20の第2処理部21が、所定エリア100内で搬送対象物40を搬送させる場合、搬送指示と、使用する検知領域A1のパターンを指示する制御指示とを、第2通信部22から制御対象の移動体10に送信させる。
【0080】
制御対象の移動体10の第1通信部12が上位システム20から搬送指示と制御指示とを受信(取得)すると(ST1)、領域選択部111が、制御指示に基づいて、走行モードごとの検知領域A1に対応する領域候補の組み合わせのパターンを選択する(ST2)。
【0081】
また、制御対象の移動体10の制御部113は、上位システム20から取得した制御指示に基づいて走行装置15を制御し、上位システム20から指示された経路にしたがって移動体10を自律走行させる。
【0082】
ここで、制御部113は、移動体10を高速直進モード、低速直進モード、カーブ走行モード及び旋回走行モードのいずれかの走行モードで走行させており、領域選択部111は、現在の走行モードに応じて走行モードに応じた領域候補を選択する。領域選択部111が領域候補を選択すると、領域設定部112が、領域選択部111によって選択された領域候補の領域データに基づいて、移動体10の周囲に検知領域A1を設定する(ST13)。
【0083】
物体検知部13は、領域設定部112によって設定された検知領域A1(第1領域SA1及び第2領域SA2)において物体の存否を検出しており、制御部113は、検知領域A1における物体の検出結果に基づいて移動体10を制御する。物体検知部13が検知領域A1において物体を検出しなければ、制御部113は、移動体10を徐行させたり停止させたりする処理は行わず、移動動作を継続させる。一方、物体検知部13が第2領域SA2において物体の存在を検出すると、制御部113は走行装置15を制御して移動体10を徐行させており、物体との接触を回避するための時間を確保できる。また、物体検知部13が第1領域SA1において物体の存在を検出すると、制御部113は走行装置15を制御して移動体10を停止させており、物体との接触を回避することができる。
【0084】
なお、移動体10(具体的には領域設定部112)は現在の検知領域A1の設定を第1記憶部16に記憶しており、領域設定部112は、上位システム20からの制御指示に基づいて、移動体10(第1記憶部16)が記憶している検知領域A1を変更可能である。領域設定部112は、検知領域を変更可能であるので、例えば移動体10の移動モードの変化に応じて、検知領域を更新することができる。
【0085】
以上のように、移動体10の領域選択部111は、上位システム20からの制御指示に基づいて、各走行モードでの検知領域A1に対応する領域候補の組み合わせのパターンを選択する。そして、領域設定部112は、領域選択部111が選択した領域候補の領域データに基づいて、現在の走行モードに応じた検知領域A1を設定している。したがって、移動体システム1は、上位システム20からの制御指示に基づいて、移動体10での検知領域A1を設定でき、外部からの制御指示に基づいて検知領域A1を設定可能な移動体システム1を提供することができる。
【0086】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、移動体システム1と同様の機能は、移動体制御方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る移動体制御方法は、物体の検知領域A1を移動体10の周囲に設定する領域設定処理と、検知領域A1における物体の検知結果に基づいて移動体10を制御する制御処理と、を含む。領域設定処理では、上位システム20から入力される制御指示に基づいて検知領域A1を設定する。一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、コンピュータシステムに、上記の移動体制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0087】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0088】
本開示における移動体システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における移動体システム1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0089】
また、移動体システム1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは移動体システム1に必須の構成ではなく、移動体システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、移動体システム1の少なくとも一部の機能、例えば、領域選択部111及び領域設定部112の一部の機能、又は上位システム20の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0090】
なお、上記の実施形態では、高速直進モード及び低速直進モードの各々で範囲が互いに異なる検知領域A1を設定しているが、速度範囲が異なる3段階以上の直進走行モードの各々で、範囲が互いに異なる検知領域A1を設定してもよい。
【0091】
また、上記の実施形態において、カーブ走行モードにおいても、直進走行モードと同様、速度範囲が異なる複数段階のカーブ走行モードの各々で、範囲が互いに異なる検知領域A1を設定してもよい。また、上記の実施形態において、旋回走行モードにおいても、直進走行モードと同様に、速度範囲が異なる複数段階の旋回走行モードの各々で、範囲が互いに異なる検知領域A1を設定してもよい。
【0092】
また、上記の実施形態では、領域設定部112は、走行モードに応じて、移動面60と平行な平面内での検知領域A1の形状及び大きさを変更しているが、移動面60と直交する方向において検知領域A1の形状及び大きさを変更してもよい。すなわち、検知領域A1は三次元の領域でもよい。領域設定部112は、外部からの制御指示に基づいて三次元の検知領域A1の形状及び大きさの少なくとも一方を変更するので、例えば移動体10が搬送する搬送対象物40の高さ寸法等に応じて検知領域A1の高さを変更することができる。
【0093】
また、上記の実施形態において、領域設定部112は、移動体10が搬送する搬送対象物40に応じて検知領域A1を変更してもよい。検知領域A1は、移動体10が搬送する搬送対象物40が少なくとも入る領域であることが好ましい。領域設定部112が、搬送対象物40の形状又は大きさに基づいて、検知領域A1の形状及び大きさの少なくとも一方を設定することで、移動体10が搬送する搬送対象物40が所定エリア100内の物体と接触する可能性を低減できる。また、領域設定部112が、検知領域A1を搬送対象物40が入る最小面の大きさに設定することによって、移動体10の移動に支障がない物体まで検知してしまう可能性を低減でき、移動体10を安全かつスムーズに移動させることができる。
【0094】
また、上記の実施形態では、移動体10が領域選択部111を備えているが、領域選択部111の機能を上位システム20が備えていてもよい。つまり、上位システム20が領域選択部を有し、上位システム20は、領域選択部が選択した領域候補を検知領域A1とする制御指示を移動体10に出力すればよい。例えば、上位システム20は、移動体10に対して、当該移動体10の移動モードを指定するモード指令と、領域選択部が選択した領域候補を検知領域A1とする制御指示と、を移動体10に送信させる。移動体10の第1通信部12が上位システム20からの制御指示を受信すると、移動体10の領域設定部112が、制御指示に基づいて、上位システム20の領域選択部が選択した領域候補の領域データに基づいて検知領域A1を設定する。これにより、外部(上位システム29)からの制御指示により、移動体10の検知領域を設定可能な移動体システム1を提供できる。
【0095】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の移動体システム(1)は、移動体(10)と、移動体(10)に制御指示を出力する上位システム(20)と、を備える。移動体(10)は、物体の検知領域(A1)を移動体(10)の周囲に設定する領域設定部(112)と、検知領域(A1)における物体の検知結果に基づいて移動体(10)を制御する制御部(113)と、を有する。領域設定部(112)は、制御指示に基づいて検知領域(A1)を設定する。
【0096】
この態様によれば、外部(20)からの制御指示に基づいて検知領域(A1)を設定可能な移動体システム(1)を提供することができる。
【0097】
第2の態様の移動体システム(1)は、第1の態様において、互いに範囲が異なる複数の領域候補の中から検知領域(A1)とする領域候補を選択する領域選択部(111)を更に備える。領域設定部(112)は、領域選択部(111)が選択した領域候補に基づく検知領域(A1)を移動体(10)の周囲に設定する。
【0098】
この態様によれば、領域設定部(112)は、互いに範囲が異なる複数の領域候補のいずれかを検知領域(A1)に設定することができる。
【0099】
第3の態様の移動体システム(1)では、第2の態様において、移動体(10)が領域選択部(111)を更に有する。
【0100】
この態様によれば、移動体(10)において、複数の領域候補の中から検知領域(A1)とする領域候補を選択することができる。
【0101】
第4の態様の移動体システム(1)では、第2の態様において、上位システム(20)が領域選択部(111)を有する。上位システム(20)は、領域選択部(111)が選択した領域候補に基づく検知領域(A1)を設定するよう指示する制御指示を移動体(10)に出力する。
【0102】
この態様によれば、移動体(10)の領域設定部(112)は、上位システム(20)からの制御指示に基づいて、制御指示で指示された領域候補に基づく検知領域(A1)を設定することができる。
【0103】
第5の態様の移動体システム(1)では、第1~第4のいずれかの態様において、領域設定部(112)は、制御指示に基づいて、検知領域(A1)の大きさ及び形状の少なくとも一方を設定する。
【0104】
この態様によれば、領域設定部(112)は、外部(20)からの制御指示に基づいて検知領域(A1)の大きさ及び形状の少なくとも一方を設定することができる。
【0105】
第6の態様の移動体システム(1)では、第1~第5のいずれかの態様において、移動体(10)は検知領域(A1)を記憶している。領域設定部(112)は、制御指示に基づいて、移動体(10)が記憶している検知領域(A1)を変更可能である。
【0106】
この態様によれば、領域設定部(112)は、移動体(10)の周囲に設定する検知領域(A1)を更新することができる。
【0107】
第7の態様の移動体システム(1)では、第1~第6のいずれかの態様において、検知領域(A1)は三次元の領域である。
【0108】
この態様によれば、領域設定部(112)は、外部(20)からの制御指示に基づいて、移動体10の周囲に、三次元の領域である検知領域(A1)を設定することができる。
【0109】
第8の態様の移動体システム(1)では、第1~第7のいずれかの態様において、移動体(10)の移動状態は、移動速度と移動方向との少なくとも一方が異なる複数種類の移動モードを含む。領域設定部(112)は、移動体(10)の移動モードに応じて検知領域(A1)を変更する。
【0110】
この態様によれば、領域設定部(112)は、移動体(10)の移動モードに応じた検知領域(A1)を設定することができる。
【0111】
第9の態様の移動体システム(1)では、第1~第8のいずれかの態様において、移動体(10)は、搬送対象物(40)を搬送する搬送装置を含む。
【0112】
この態様によれば、領域設定部(112)は、外部(20)からの制御指示に基づいて、搬送装置の周囲に検知領域(A1)を設定することができる。
【0113】
第10の態様の移動体システム(1)では、第9の態様において、領域設定部(112)は、搬送対象物(40)に応じて検知領域(A1)を変更する。
【0114】
この態様によれば、領域設定部(112)は、搬送対象物(40)に応じて検知領域(A1)を設定することができる。
【0115】
第11の態様の移動体システム(1)では、第1~第10のいずれかの態様において、検知領域(A1)は複数の小領域(SA1,SA2)を含む。制御部(113)は、複数の小領域(SA1,SA2)の各々での物体の検知結果に基づいて移動体(10)を制御する。
【0116】
この態様によれば、外部(20)からの制御指示に基づいて、複数の小領域(SA1,SA2)を含む検知領域(A1)を設定することができる。
【0117】
第12の態様の移動体システム(1)では、第11の態様において、複数の小領域は、第1領域(SA1)と、第2領域(SA2)と、を含む。第1領域(SA1)は、移動体(10)が入る大きさの円(C1)と、円(C1)の中心(CP1)を通る線分(L10)と平行な2本の線分(L1,L2)とで囲まれ、移動体(10)が少なくとも入る領域である。第2領域(SA2)は、円(C1)の内側の領域のうち第1領域(SA1)の外側の領域である。
【0118】
この態様によれば、外部(20)からの制御指示に基づいて検知領域(A1)を設定可能な移動体システム(1)を提供することができる。
【0119】
第13の態様の移動体システム(1)では、第1~第11のいずれかの態様において、検知領域(A1)は、移動体(10)が入る第1部分(P1)と、第1部分(P1)よりも移動体(10)の進行方向前方にある第2部分(P2)とを含む。移動体(10)の進行方向と直交する方向において、第1部分(P1)の幅(W21)よりも第2部分(P2)の幅(W22)が大きい。
【0120】
この態様によれば、外部(20)からの制御指示に基づいて検知領域(A1)を設定可能な移動体システム(1)を提供することができる。
【0121】
第14の態様の移動体制御方法は、物体の検知領域(A1)を移動体(10)の周囲に設定する領域設定処理と、検知領域(A1)における物体の検知結果に基づいて移動体(10)を制御する制御処理と、を含む。領域設定処理では、上位システム(20)から入力される制御指示に基づいて検知領域(A1)を設定する。
【0122】
この態様によれば、外部(20)からの制御指示に基づいて検知領域(A1)を設定可能な移動体制御方法を実現することができる。
【0123】
第15の態様のプログラムは、コンピュータシステムに、第14の態様の移動体制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0124】
この態様によれば、外部(20)からの制御指示に基づいて検知領域(A1)を設定可能な移動体制御方法をコンピュータシステムに実行させるためのプログラムを提供することができる。
【0125】
上記態様に限らず、上記の実施形態に係る移動体システム(1)の種々の構成(変形例を含む)は、移動体制御方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0126】
第2~第13の態様に係る構成については、移動体システム(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0127】
1 移動体システム
10 移動体
20 上位システム
40 搬送対象物
111 領域選択部
112 領域設定部
113 制御部
A1 検知領域
C1 円
CP1 円の中心
L1,L2,L10 線分
P1 第1部分
P2 第2部分
SA1 第1領域(小領域)
SA2 第2領域(小領域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9