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特許7489611自転車、サドル取付部材セット及びシートポスト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】自転車、サドル取付部材セット及びシートポスト
(51)【国際特許分類】
   B62J 1/08 20060101AFI20240517BHJP
   B62J 1/00 20060101ALI20240517BHJP
   B62H 5/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B62J1/08 B
B62J1/00 C
B62H5/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020034319
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021133917
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森岡 孝浩
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-142515(JP,A)
【文献】特開2002-347678(JP,A)
【文献】特開平8-239071(JP,A)
【文献】特表2018-520937(JP,A)
【文献】実開昭57-55104(JP,U)
【文献】実開平3-32575(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/08
B62J 1/00
B62H 5/00
B62J 1/04
B62H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートポストと、
船線が取り付けられるベースを有するサドルと、
前記シートポストの長手方向の一端側に取り付けられたシートポスト取付部材と、
前記サドルに取り付けられて、前記シートポスト取付部材に対して中心軸線を中心にサドル使用位置とサドル跳上位置との間を回転可能に連結されたサドル取付部材と、を備え、
前記サドル取付部材は、前記サドル使用位置において、前側に前記中心軸線が位置し、かつ、後側に回転端部が位置し、
前記サドル使用位置は、前記回転端部が回転範囲の一端に位置するものであり、
前記サドル跳上位置は、前記回転端部が前記回転範囲の他端に位置するものであり、
前記サドル取付部材は、前記船線を挟持する挟持片を有し、
前記中心軸線の位置は、前記長手方向において、前記シートポストの一端よりも他端側であり、
前記挟持片は、前記回転端部が前記サドル使用位置に位置するとき、水平な走行面の鉛直方向において、前記中心軸線よりも前記シートポストの他端側に位置する
自転車。
【請求項2】
シートポストと、
船線が取り付けられるベースを有するサドルと、
前記シートポストの長手方向の一端側に取り付けられたシートポスト取付部材と、
前記サドルに取り付けられて、前記シートポスト取付部材に対して中心軸線を中心にサドル使用位置とサドル跳上位置との間を回転可能に連結されたサドル取付部材と、を備え、
前記サドル取付部材は、前記サドル使用位置において、前側に前記中心軸線が位置し、かつ、後側に回転端部が位置し、
前記サドル使用位置は、前記回転端部が回転範囲の一端に位置するものであり、
前記サドル跳上位置は、前記回転端部が前記回転範囲の他端に位置するものであり、
前記サドル取付部材は、前記船線を挟持する挟持片を有し、
前記サドルの少なくとも一部は、前記長手方向において、前記シートポストの一端よりも他端側に位置し、
前記挟持片は、前記回転端部が前記サドル使用位置に位置するとき、水平な走行面の鉛直方向において、前記中心軸線よりも前記シートポストの他端側に位置する
自転車。
【請求項3】
前記シートポスト取付部材は、前記シートポストに対して分離可能に取り付けられている
請求項1又は2に記載の自転車。
【請求項4】
前記シートポスト取付部材と前記サドル取付部材とは、前記中心軸線の位置に位置する軸部材を介して前記中心軸線を中心に回転可能に連結されており、
前記サドル取付部材は、前記サドル跳上位置にある状態で、前記軸部材を介して前記シートポスト取付部材に接触すると共に、前記軸部材を介して前記シートポスト取付部材に接触する箇所とは別の箇所で前記シートポスト取付部材に接触する
請求項1~3のいずれか一項に記載の自転車。
【請求項5】
前記サドル取付部材は、前記サドル使用位置にある状態で、前記シートポスト取付部材の前記シートポストの長手方向における一端側の面に接触する
請求項1~3のいずれか一項に記載の自転車。
【請求項6】
前記サドル取付部材が前記サドル使用位置に位置する状態を保持する使用位置保持部を有する
請求項1~5のいずれか一項に記載の自転車。
【請求項7】
前記使用位置保持部による前記サドル使用位置の保持を解除する解除レバーを備え、
前記解除レバーは、
一端側が前記サドル取付部材に回転可能に連結され、他端側が前記長手方向の一端側に移動するように回転することで前記サドル使用位置の保持を解除するものであり、
前記一端と前記他端との間に、前記長手方向の他端側に凹んで前記サドルを逃がす逃げ部を有する
請求項6に記載の自転車。
【請求項8】
前記使用位置保持部は、フックにより構成され、
前記フックは、前記フックの一端側が前記サドル取付部材に対して第二の中心軸線を中心に回転可能に連結され、前記フックの他端側に前記シートポスト取付部材に引掛かる引掛部を有し、前記フックの一端と前記フックの他端との間に凹所を有し、
前記凹所に前記サドル取付部材の一部が挿入されて前記フックに接触することにより、 前記サドル取付部材が前記サドル跳上位置にある状態で前記引掛部が前記シートポスト取付部材の前記長手方向の一端側に位置しないように構成されている
請求項6又は7に記載の自転車。
【請求項9】
前記シートポスト内に、リードスイッチを構成する二本のリードがそれぞれ前記長手方向に延びるように配置されている
請求項1~8のいずれか一項に記載の自転車。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の自転車に設けられる前記シートポスト取付部材及び前記サドル取付部材を備える
サドル取付部材セット。
【請求項11】
請求項9に記載の自転車に設けられ、内部に前記二本のリードがそれぞれ前記長手方向に延びるように配置されている
シートポスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートポストに取り付けられたシートポスト取付部材とサドルに取り付けられたサドル取付部材とを備える自転車、シートポスト取付部材とサドル取付部材とを備えるサドル取付部材セット及び自転車に備えられるシートポストに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、盗難防止装置付き電動自転車が開示されている。特許文献1に記載の電動自転車は、シートポストに対して供用状態とサドル座面が傾斜した駐車姿勢とに回動自在に支持されたサドルと、サドルを駐車姿勢に保持する施錠装置と、を備える。シートポストの上端部には、サドル支持基板が固定されている。サドルには、サドル取付部材が固定されている。サドル取付部材の一端はサドル支持基板の一端に回動自在に枢支されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-157474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の電動自転車では、サドル支持基板がシートポストの上側に位置するように、サドル支持基板がシートポストに固定されている。このため、サドル支持基板においてサドル取付部材を枢支する枢支軸の軸線は、必然的にシートポストの上端よりも上側に位置し、シートポストに対するサドルの位置が高くなってしまうものであった。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シートポストに対するサドルの位置を低く抑えやすい自転車、サドル取付部材セット及びシートポストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る自転車は、シートポストと、サドルと、前記シートポストの長手方向の一端側に取り付けられたシートポスト取付部材と、前記サドルに取り付けられたサドル取付部材と、を備える。前記サドル取付部材は、前記シートポスト取付部材に対して中心軸線を中心に回転可能に連結される。前記中心軸線の位置は、前記長手方向において、前記シートポストの一端よりも他端側である。
【0007】
本開示の一態様に係るサドル取付部材セットは、前記自転車に設けられる前記シートポスト取付部材及び前記サドル取付部材を備える。
【0008】
本開示の一態様に係るシートポストは、前記自転車に設けられ、内部に前記二本のリードがそれぞれ前記長手方向に延びるように配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の上記態様の自転車、サドル取付部材セット及びシートポストにあっては、シートポストに対するサドルの位置を低く抑えやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態の自転車の側面図である。
図2図2は、同上の制御系のブロック図である。
図3図3は、同上の自転車のサドルの斜視図である。
図4図4は、同上の自転車のシートポスト上端部及びシートポスト取付部材の分解斜視図である。
図5図5は、同上の自転車のサドル取付部材の分解斜視図である。
図6図6Aは、同上の自転車のサドル使用位置におけるシートポスト上端部、シートポスト取付部材及びサドル取付部材の正面図である。図6Bは、同上の自転車のサドル使用位置におけるシートポスト上端部、シートポスト取付部材及びサドル取付部材の断面図である。
図7図7Aは、同上の自転車のサドル跳上位置におけるシートポスト取付部材及びサドル取付部材の正面図である。図7Bは、同上の自転車のサドル跳上位置におけるシートポスト取付部材及びサドル取付部材の断面図である。
図8図8は、同上の自転車のリードスイッチの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)実施形態
(1.1)概要
本実施形態に係る自転車は、シートポスト3と、サドル4と、シートポスト3の長手方向の一端側に取り付けられたシートポスト取付部材5と、サドル4に取り付けられたサドル取付部材6と、を備える。サドル取付部材6は、シートポスト取付部材5に対して中心軸線50を中心に回転可能に連結される。中心軸線50の位置は、シートポスト3の長手方向において、シートポスト3の一端よりも他端側である。
【0012】
本実施形態に係るサドル取付部材セットは、自転車に設けられるシートポスト取付部材5及びサドル取付部材6を備える。
【0013】
本実施形態に係るシートポスト3は、自転車に設けられ、内部に二本のリード33、33がそれぞれシートポスト3の長手方向に延びるように配置されている。
【0014】
本実施形態に係る自転車、サドル取付部材セット及びシートポスト3にあっては、シートポスト3に対するサドル4の位置を低く抑えやすい。
【0015】
(1.2)詳細
(1.2.1)全体構成
以下、本実施形態に係る自転車について、詳細に説明する。
【0016】
本実施形態に係る自転車は、三輪自転車1である。三輪自転車1は、図1に示すように、電動アシスト自転車であり、車輪11を構成する前輪111及び後輪112の少なくとも一つに対し、回転動力を出力するモータユニット12を備える。本開示でいう「電動アシスト自転車」は、ユーザの踏む力(以下、「踏力」という)を、駆動補助出力によって補うモータユニット12を持つ自転車を意味する。したがって、本開示でいう「電動アシスト自転車」は、法規上の電動アシスト自転車だけでなく、法規上は電動アシスト自転車に属しないモータユニット12を持つ自転車も含まれる。本開示でいう「駆動補助出力」は、モータ121(図2参照)が車輪11に与える回転出力を意味する。
【0017】
本実施形態に係る三輪自転車1は、電動アシスト自転車であるが、本開示では、踏力により車輪11に動力を与える駆動系(人力駆動系)と、モータ121により車輪11に動力を与える駆動系(モータ駆動系)とが独立している自転車(モータ121のみでも走行可能な自転車)であってもよい。ここでは、人力駆動系とモータ駆動系とが独立した自転車と、電動アシスト自転車と、を含む自転車を「電動自転車」という。なお、本開示でいう「三輪自転車」は、電動自転車でなくてもよく、モータユニット12を持たない人力駆動系のみの自転車であってもよい。
【0018】
本実施形態に係る三輪自転車1のユーザは、主に、高齢者、足腰が弱い者、バランスをとるのが苦手な者、障がい者等である。ただし、本開示では、ユーザは、特に限らず、若年者、中年者、健常者等であってもよい。
【0019】
ここで、本開示では、三輪自転車1が走行面100に沿って進む方向を「前方向」とし、その反対方向を「後方向」として定義する。また、前方向及び後方向の二方向を「前後方向」として定義し、前後方向に直交しかつ水平面に沿う二方向を「左右方向」として定義する。本実施形態では、走行面100は、水平面であるとして説明する。ただし、実際には、走行面100は、必ずしも水平な平面とは限らず、例えば、凹凸面、水平面に対して勾配を有する傾斜面、湾曲した面、球面等であってもよい。これらの方向の定義は、三輪自転車1の使用態様を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0020】
三輪自転車1は、本実施形態では、図1に示すように、フレーム2、一つの前輪111、二つの後輪112、ハンドル13、サドル4、一対のクランクアーム142、一対のペダル141、バッテリ装置15、モータユニット12及びモータブラケット120を備える。また、三輪自転車1は、前輪111と後輪112の少なくともいずれかを制動するブレーキ装置、速度センサ19及び制御部16(図2参照)を更に備える。
【0021】
(1.2.2)車輪
車輪11を構成する前輪111及び後輪112は、フレーム2を走行面100の上に支える。前輪111及び後輪112の各々は、タイヤ113、ホイール114及びハブ115を備える。
【0022】
前輪111のハブ115には前輪軸116が通されており、前輪111は、前輪軸116によって、前部フレーム21のフロントフォーク26に回転可能に取り付けられている。前輪111の回転軸は、前輪軸116の中心軸と同じであり、左右方向に略平行である。
【0023】
二つの後輪112は、フレーム2に含まれる後部フレーム28に対し、回転可能に取り付けられている。二つの後輪112は、左右方向に離れている。後輪112のハブ115には後輪軸117が通されており、後輪112は、後輪軸117によって、後部フレーム28に回転可能に取り付けられている。後輪112の回転軸は、後輪軸117の中心軸と同じであり、左右方向に略平行である。本実施形態に係る三輪自転車1では、二つの後輪112のうちの一方が駆動輪であり、他方が従動輪である。
【0024】
(1.2.3)フレーム
フレーム2は、少なくとも、一つの前輪111及び二つの後輪112が取り付けられた骨組みである。フレーム2は、本実施形態では、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金で構成される。ただし、本開示では、フレーム2は、アルミニウム合金に限らず、鉄、クロムモリブデン鋼、ハイテンスチール、チタン、マグネシウム等で構成されてもよい。また、本開示に係るフレーム2は、金属に限らず、カーボン、木材、竹、繊維強化合成樹脂(例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics))等で構成されてもよい。フレーム2は、本実施形態では、図1に示すように、前部フレーム21と、後部フレーム28と、を備える。
【0025】
前部フレーム21は、フレーム2において前側部分を構成する。前部フレーム21には、本実施形態では、前輪111、バッテリ装置15、ハンドル13、サドル4、モータブラケット120、モータユニット12、クランクアーム142及びペダル141が取り付けられている。
【0026】
前部フレーム21は、複数のパイプで構成されている。前部フレーム21は、本実施形態では、フロントフォーク26、ヘッドパイプ24、ダウンチューブ22及びシートチューブ23を備える。また、前部フレーム21は、シートステイ25及びバッテリブラケット27を備える。
【0027】
本開示でいう「パイプ」とは、細長くて中空な部材を意味する。本開示に係るパイプの断面形状は、例えば、円形状(正円、長円及び楕円を含む)、長方形状(正方形を含む)、六角形状、八角形状等であってもよい。
【0028】
フロントフォーク26は、前輪111を支える。フロントフォーク26は、一対のレッグ261と、一対のレッグ261の上端をつなぐクラウン262と、クラウン262から突出するステアリングコラム263と、を備える。一対のレッグ261には、ハブ115に通された前輪軸116を介して、前輪111が回転可能に取り付けられている。前輪111の回転軸は、走行面100に対して略平行であり、前輪111を支える前輪軸116の中心軸と同じである。ステアリングコラム263の突出方向(長手方向)は、クラウン262から、上方向に行くに従って後方向に行くように、走行面100に対して傾いている。
【0029】
ヘッドパイプ24は、フロントフォーク26を支える。ヘッドパイプ24の中心軸は、上方向に行くに従って後方向に行くように、走行面100に対して傾いている。ヘッドパイプ24には、ヘッドパイプ24の中心軸とステアリングコラム263の中心軸とが一致するように、ステアリングコラム263が通される。これによって、ヘッドパイプ24は、ステアリングコラム263を回転可能に支える。ステアリングコラム263の回転軸は、本実施形態では、ヘッドパイプ24の中心軸と同じである。
【0030】
ダウンチューブ22は、ヘッドパイプ24とシートチューブ23とをつなぐ。
【0031】
シートチューブ23は、サドル4を保持する。シートチューブ23の下端は、ダウンチューブ22の後端部に接続されている。シートチューブ23は、直線状に形成されており、シートチューブ23の中心軸は、上方向に行くに従って後方向に行くように、走行面100に対して傾斜している。シートチューブ23は、前後方向において、前輪111と後輪112との間に位置している。シートチューブ23には、シートチューブ23の中心軸に沿った方向(長手方向)に沿って移動可能に、サドル4が取り付けられている。
【0032】
サドル4は、シートポスト3の長手方向の一端側に取り付けられる。シートポスト3の長手方向は、上下方向を向いている。ここで、シートポスト3の長手方向が上下方向を向くとは、シートポスト3の長手方向が少なくとも鉛直方向成分を含むことを意味する。すなわち、シートポスト3の長手方向は、鉛直方向であってもよいし、鉛直方向に対して傾いてもよいが、水平方向ではない。本実施形態では、シートポスト3の長手方向の一端部とは、シートポスト3の上端部である。シートポスト3は、サドル4においてユーザが座る部分から下側に突出している。シートポスト3は、本実施形態では、下方向に行くに従って前方向に行くように、走行面100に対して傾斜している。シートポスト3は、シートチューブ23の中心軸に沿うようにして、シートチューブ23に通されている。シートポスト3及びサドル4については後述する。
【0033】
バッテリブラケット27には、バッテリ装置15が取り付けられる。バッテリブラケット27は、ダウンチューブ22の長手方向の後側の端部に取り付けられている。
【0034】
シートステイ25は、シートチューブ23を補強する。シートステイ25は、本実施形態では、シートチューブ23とバッテリブラケット27とをつないでいる。
【0035】
後部フレーム28は、フレーム2において後側部分を構成する。後部フレーム28には、後輪112が取り付けられている。後部フレーム28は、前部フレーム21に対して、平面視において後側に配置されている。後部フレーム28と前部フレーム21とは、連結部材29を介してつながっている。
【0036】
特に図示しないが、ブレーキ装置は、ブレーキ本体と、ブレーキレバー132と、ブレーキ連動部材と、を有する。ブレーキ本体は、いわゆるブレーキキャリパーであり、ワイヤ調整ねじとブレーキブロックとを有している。ブレーキレバー132は、ハンドル13のグリップ131と並ぶように配置される。ブレーキ連動部材は、ブレーキ本体とブレーキレバー132との間に連動連結されるもので、いわゆるブレーキワイヤにより構成される。
【0037】
一方の後輪軸117には、リアスプロケット(不図示)が固定されている。したがって、リアスプロケットの回転軸は、後輪軸117の回転軸と同じである。リアスプロケットは、駆動スプロケット17に対し、動力伝達体18を介して連結されている。これにより、駆動スプロケット17から出力された回転動力は、動力伝達体18を介してリアスプロケットに伝達され、後輪112のうちの一方を回転させる。
【0038】
(1.2.4)ハンドル
ハンドル13は、前輪111の向きを操作する。ハンドル13は、本実施形態では、正面視略U字状に形成されている。ハンドル13は、先端にグリップ131を有する。ハンドル13はステアリングコラム263の上端に固定されている。
【0039】
(1.2.5)バッテリ装置
バッテリ装置15は、少なくともモータ121に対して、電力を供給する装置である。バッテリ装置15は、装着部151と、バッテリ150と、を備える。
【0040】
装着部151は、バッテリ150が装着される部分である。装着部151には、バッテリ150が取外し可能に取り付けられている。装着部151は、バッテリブラケット27に対し、載った状態で固定されている。
【0041】
バッテリ150は、モータ121に対して供給する電気的エネルギーを蓄える二次電池である。バッテリ150は、単数又は複数のセルが内蔵されている。バッテリ150は、装着部151に対して電気的に接続される。これにより、バッテリ150はモータ121に対して電力を供給し得る。
【0042】
本開示では、バッテリ装置15は、モータユニット12に対してのみ電力を供給するように構成されてもよいし、モータユニット12に加えて、例えば、ヘッドライト、モータ121のON/OFFの操作部等に電力を供給するように構成されてもよい。
【0043】
(1.2.6)モータユニット・モータブラケット
モータユニット12は、ペダル141から入力された踏力を補助する力を出力する。モータユニット12は、ユーザがペダル141を漕ぎ、クランクアーム142を介して、踏力(外力)がクランク軸に入力されると、クランク軸が回転する。本実施形態に係るモータユニット12は、クランク軸が踏力を受けて回転すると、クランク軸の回転速度及びクランク軸に生じるトルクを検出し、その検出結果に応じた力を出力する。要するに、本実施形態に係るモータユニット12は、踏力に対して駆動補助出力を加えた力を、出力することができる。
【0044】
本実施形態に係るモータユニット12は、動力伝達体18が掛けられる駆動スプロケット17と、モータ121(図2参照)と、減速機構(不図示)と、踏力検出センサ122と、を備える。
【0045】
駆動スプロケット17として、踏力によって回転する第一駆動スプロケット170と、モータ121によって回転する第二駆動スプロケット(不図示)とを備える。要するに、本実施形態に係るモータユニット12は、踏力と、駆動補助出力とを別々に動力伝達体18に対して伝える二軸式のモータユニットである。
【0046】
ただし、本開示では、モータユニット12は、ペダル141及びクランクアーム142を介して伝達された踏力と、モータ121の出力と、を駆動スプロケット17に伝達した上で、動力伝達体18に動力を伝達する一軸式のモータユニット12であってもよい。
【0047】
モータ121は、回転動力を出力する。モータ121は、ロータと、ステータとを備える。ロータには、出力軸が取り付けられており、ロータと出力軸とは互いに固定されている。出力軸の外周には、歯部が形成されている。
【0048】
減速機構は、出力軸の周囲に配置され、かつ歯部にかみ合った複数の歯車を備えている。モータ121のロータが回転すると、その動力は、減速機構に伝達し、駆動スプロケット17を回転させて、後輪112に対してアシスト力を伝達する。
【0049】
踏力検出センサ122は、クランク軸に連結されたペダル141から入力された踏力を検出する。本変形例では、踏力検出センサ122は、踏力の検出として、トルクを検出する。このトルクの検出は、例えば、磁歪式トルクセンサによって、クランク軸に生じたひずみを検出することで行われる。なお、踏力の検出として、クランク軸の軸回りの回転を、回転センサで検出してもよい。踏力検出センサ122で検出された検出結果は、制御部16に出力される。制御部16は、踏力検出センサ122の検出結果に基づいて、モータ121を回転させるように制御する。
【0050】
モータユニット12のクランク軸の両端の各々には、クランクアーム142と、ペダル141とが取り付けられる。要するに、一対のクランクアーム142と一対のペダル141は、フレーム2の右側と左側とに配置される。ペダル141は、本実施形態では、二つの後輪112の少なくとも一つを駆動する。
【0051】
実施形態では、動力伝達体18はチェーンであるが、本開示ではこれに限らない。例えば、動力伝達体18は、ベルト又はワイヤ等であってもよい。
【0052】
モータユニット12は、モータブラケット120を介して、フレーム2に取り付けられている。モータブラケット120は、ダウンチューブ22に取り付けられている。
【0053】
(1.2.7)制御部
制御部16(図2参照)は、制御基板160により構成される。制御基板160は、本実施形態では、プリント基板である。制御部16は、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを主構成とする。すなわち、マイクロコントローラのメモリに記録されたプログラムを、マイクロコントローラのプロセッサが実行することにより、制御部16の機能が実現される。プログラムはメモリに予め記録されていてもよいし、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。制御部16には、モータユニット12が有するモータ121、踏力検出センサ122、速度センサ19及びリードスイッチ32が接続されている。
【0054】
速度センサ19は、三輪自転車1の走行速度を検出する。本開示でいう「走行速度」とは、三輪自転車1が走行面100を走行している速度である。
【0055】
(2)サドル及びシートポスト
サドル4は、シートポスト取付部材5及びサドル取付部材6を介してシートポスト3の長手方向の一端側に取り付けられる。三輪自転車1は、シートポスト取付部材5及びサドル取付部材6を備える。シートポスト取付部材5及びサドル取付部材6により、サドル取付部材セットが構成される。
【0056】
(2.1)サドル
図3に示すように、サドル4は、湾曲した板状をしたベース41と、ベース41の上側に取り付けられるクッション42と、ベース41の下側に取り付けられる船線43と、ベース41の下面と船線43との間に配置されるバネ44と、を有する。なお、本実施形態の三輪自転車1に用いられるサドル4は、公知の様々なサドルが適宜利用可能であり、特に限定されない。特に、サドル4として、船線43を有する一般的なサドルが好適に用いられる。
【0057】
(2.2)シートポスト
図4に示すように、シートポスト3は、円筒状をしたものである。シートポスト3の上端部は、上端部より下側の部分よりも小径の小径部31となっている。なお、本実施形態の三輪自転車1に用いられるシートポスト3は、公知の様々なシートポストが適宜利用可能であり、特に限定されない。シートポスト3の上端部(本実施形態では小径部31)には、シートポスト取付部材5が取り付けられる。
【0058】
(2.3)シートポスト取付部材
シートポスト取付部材5は、シートポスト3とは別体として形成される。シートポスト取付部材5は、シートポスト3の長手方向の一端側(上端側)に、シートポスト3に対して着脱可能(分離可能)に取り付けられている。シートポスト取付部材5は、主に金属により形成される。シートポスト取付部材5を構成する金属としては、鉄(鋼鉄を含む)又はSUSが好適に用いられるが、アルミニウム等の他の金属により形成されてもよく、特に限定されない。また、シートポスト取付部材5は金属と非金属の両方を含んでもよい。シートポスト取付部材5は、筒状部51と、締付部52と、を有する。
【0059】
筒状部51は、円筒状をしたものであるが、筒壁は全周には形成されない。すなわち、筒状部51は、環状となっておらず、周方向の一部が分断されており、周方向における端部の間には隙間が形成される。筒状部51の内径は、シートポスト3の小径部31の外径と略同じとなっている。筒状部51は、筒状部51の周方向に分断されている端部の間の距離が若干変化するように変形し得る。これにより、筒状部51の内径は、シートポスト3の小径部31の外径に応じてある程度変化し得る。
【0060】
締付部52は、筒状部51の周方向に分断されている端部からそれぞれ、筒状部51の径外方向に向かって突出する締付片521、521を有する。両方の締付片521、521は、互いに対向している。両方の締付片521、521には、筒状部51に近い端部近傍に、締付部材を構成するボルト54が通る貫通孔53、53が形成される。
【0061】
シートポスト取付部材5をシートポスト3の小径部31に取り付けるには、まず、筒状部51を上方より小径部31に被せて、筒状部51内に小径部31を嵌め込ませる。次に、ボルト54を両方の締付片521、521の貫通孔53、53に通して、ボルト54とともに締付部材を構成するナット55をボルト54に嵌めて締め付ける。
【0062】
締付片521、521には、シートポスト取付部材5とサドル取付部材6とを連結する軸部材56が通る貫通孔57、57が形成される。符号59は軸部材56に締結されるナットである。
【0063】
シートポスト取付部材5には、後述する使用位置保持部7の引掛部75が引掛かる掛止部58が形成される。掛止部58は、筒状部51の後端部の下部に、筒状部51の側壁の一部が切り起こされて形成されている。
【0064】
(2.4)サドル取付部材
図5に示すように、サドル取付部材6(いわゆるヤグラ)は、サドル4とは別体として形成される。サドル取付部材6は、サドル4に対して着脱可能(分離可能)に取り付けられている。サドル取付部材6は、主に金属により形成される。サドル取付部材6を構成する金属としては、鉄(鋼鉄を含む)又はSUSが好適に用いられるが、アルミニウム等の他の金属によりされてもよく、特に限定されない。また、サドル取付部材6は金属と非金属の両方を含んでもよい。サドル取付部材6は、本体部61と、サドル取付部62と、を有する。
【0065】
本体部61は、横片63及び左右の縦片64、64を有する、下方に開口するU字状(又はコ字状)に形成されている。上端に位置する横片63の左右方向の両端部から、縦片64、64がそれぞれ下方に向けて延出している。本体部61の形状が、サドル取付部材6全体の形状をほぼ決める。
【0066】
横片63には、リードスイッチ32を構成するマグネット34を取り付けるための取付部631としての貫通孔が形成されている。
【0067】
縦片64、64には、サドル取付部62、62が取り付けられるための貫通孔641、641及び菊座部642、642が形成される。菊座部642、642は、貫通孔623、623を中心として放射状に延びる、断面が三角波形状をした凹凸である。貫通孔641,641は、後述するサドル取付軸66のねじ部662が通り、かつ、角形部661と嵌まり合う四角形状をしている。
【0068】
縦片64、64の前端部から、サドル取付部62を構成する連結片65、65がそれぞれ前方に向けて延出している。連結片65、65に対応する部分には、横片63は位置しない。連結片65、65には、軸部材56が通る貫通孔651、651が形成される。
【0069】
縦片64、64には、使用位置保持部7を回転可能にサドル取付部材6に連結するための軸部材74が通る貫通孔643、643が形成される。
【0070】
サドル取付部62、62は、サドル4の船線43を挟持する第一挟持片621、621(いわゆる菊座部材)及び第二挟持片622、622(いわゆるワンリンフ)を有している。第一挟持片621、621には、サドル取付軸66のねじ部662が通る貫通孔623、623が形成される。第二挟持片622、622には、サドル取付軸66のねじ部662が通るが通る貫通孔624、624が形成される。
【0071】
第一挟持片621、621には、縦片64、64の菊座部642、642の凹凸と嵌まり合う凹凸を有する菊座部625、625が形成される。
【0072】
サドル取付軸66は、軸方向における中間部に、断面が四角形状をした角形部661を有している。また、サドル取付軸66は、軸方向における両端部に、ねじ部662、662を有している。ねじ部662、662には、ナット663、663が嵌められる。
【0073】
サドル取付部材6は、サドル取付部材6がサドル使用位置に位置する状態を保持する使用位置保持部7、及び、使用位置保持部7によるサドル使用位置の保持を解除する解除部8(解除レバー80)を有する。使用位置保持部7及び解除部8については後述する。
【0074】
(2.5)シートポスト取付部材及びサドル取付部材の動作
図6A及び図6Bに示すように、サドル取付部材6は、シートポスト取付部材5に対して中心軸線50を中心に回転可能に連結される。本実施形態では、シートポスト取付部材5とサドル取付部材6とは、中心軸線50の位置に位置する軸部材56を介して中心軸線50を中心に回転可能に連結されている。
【0075】
これにより、サドル取付部材6は、サドル使用位置と、サドル跳上位置と、の間を回転可能である。サドル使用位置は、図6A及び図6Bに示すように、サドル取付部材6における中心軸線50の位置する側と反対側の回転端部60が回転範囲の一端に位置する状態における、サドル取付部材6の位置である。本実施形態では、サドル取付部材6がサドル使用位置にある状態で、サドル取付部材6の回転端部60は、回転範囲の下限に位置している。
【0076】
図7A及び図7Bに示すように、サドル跳上位置は、サドル取付部材6の回転端部60が回転範囲の他端に位置する状態における、サドル取付部材6の位置である。
【0077】
図6A及び図6Bに示すように、サドル取付部材6がシートポスト取付部材5に対して回転可能に連結されるための中心軸線50の位置は、シートポスト3の上端30よりも低い。また、サドル4の少なくとも一部(下端部)も、シートポスト3の上端30よりも低い。これにより、背景技術欄で説明した従来例の電動自転車のように、サドル支持基板の枢支軸の軸線がシートポストの上端よりも上側に位置して、シートポストに対するサドルの位置が高くなってしまうことが抑制される。
【0078】
サドル取付部材6は、サドル使用位置にある状態で、シートポスト取付部材5の上面に接触する。具体的には、サドル取付部材6がサドル使用位置にある状態で、サドル取付部材6の横片63の下面が、シートポスト取付部材5の筒状部51の上面に載置されて支持される。シートポスト取付部材5の筒状部51の上面が、回転範囲の一端(下限)となるように回転端部60の移動を規制する一端側の規制部となる。これにより、サドル4を介してサドル取付部材6に掛かる使用者の体重が、シートポスト取付部材5の筒状部51の上面で受けられるため、使用者の体重がシートポスト取付部材5とサドル取付部材6とを連結する軸部材56に集中してかかってしまうのが抑制される。
【0079】
図7Bに示すように、サドル取付部材6は、サドル跳上位置にある状態で、軸部材56を介してシートポスト取付部材5に接触すると共に、軸部材56を介してシートポスト取付部材5に接触する箇所とは別の箇所でシートポスト取付部材5に接触する。詳しく説明すると、サドル取付部材6は、常に、軸部材56を介してシートポスト取付部材5に接触している。これに加えて、サドル取付部材6は、サドル跳上位置にある状態では、別の箇所でもシートポスト取付部材5に接触する。本実施形態では、サドル取付部材6がサドル跳上位置にある状態で、サドル取付軸66が、シートポスト取付部材5の筒状部51の後端部の上部に接触する。シートポスト取付部材5の筒状部51の後端部の上部は、回転範囲の他端(上限)となるように回転端部60の移動を規制する他端側の規制部となる。
【0080】
これにより、使用者が、サドル跳上位置に位置するサドル4を持ち上げようとする場合、サドル4に連結される軸部材56に三輪自転車1の荷重が集中してしまうのが抑制される。詳しく説明すると、使用者は、サドル4をサドル跳上位置に位置させて三輪自転車1を押し歩きする場合、通常はハンドル13のグリップ131を掴んで三輪自転車1を押すが、段差に乗り上げたりする場合、適宜、三輪自転車1を持ち上げる。この時、サドル跳上位置に位置するサドル4を持ち上げることにより三輪自転車1を持ち上げようとすると、サドル4に連結される軸部材56に三輪自転車1の荷重が集中してしまうおそれがある。
【0081】
軸部材56は、単に、サドル取付部材6のシートポスト取付部材5に対する移動(回転)を規制するための部材である。使用者がサドル4に座って三輪自転車1を運転する場合(サドル取付部材6がサドル使用位置にある場合)には、サドル取付部材6の横片63の下面が、シートポスト取付部材5の筒状部51の上面に載置されて支持される。この時、使用者の体重は、軸部材56を介さずにシートポスト取付部材5に支持される。このため、軸部材56の強度を、使用者の体重を支持するのに十分な強度とすることは経済上好ましくなく、軸部材56の強度は高くならないように設計されている。この軸部材56に三輪自転車1の荷重が集中してしまうのは好ましくないところ、サドル取付軸66がシートポスト取付部材5の筒状部51の後端部の上部にも接触することにより、サドル取付部材6に掛かる三輪自転車1の荷重を分散させやすくなる。
【0082】
(2.6)使用位置保持部
使用位置保持部7は、サドル取付部材6がサドル使用位置に位置する状態を保持する。使用位置保持部7は、主に金属により形成される。使用位置保持部7を構成する金属としては、鉄(鋼鉄を含む)又はSUSが好適に用いられるが、アルミニウム等の他の金属によりされてもよく、特に限定されない。また、使用位置保持部7は金属と非金属の両方を含んでもよい。
【0083】
図5に示すように、本実施形態では、使用位置保持部7は、一端と他端との間に凹所72を有するフック71により構成される。フック71の一端側は、サドル取付部材6に対して第二の中心軸線70を中心に回転可能に連結される。具体的には、一端側である上端部に貫通孔73が形成されており、貫通孔73に軸部材74が通されている。
【0084】
フック71の他端側に、シートポスト取付部材5の掛止部58に引掛かる引掛部75が形成されている。引掛部75は、フック71の他端側の尖先部である。
【0085】
軸部材74には、引掛部75が掛止部58に引っ掛かる方向と反対の方向(すなわちサドル取付部材6がサドル使用位置からサドル跳上位置に向けて回転する方向)に向けてフック71に力を付与するバネ76が配置されている。
【0086】
サドル取付部材6がサドル使用位置に位置する状態において、フック71の引掛部75がシートポスト取付部材5の掛止部58に引っ掛かることにより、サドル使用位置が保持される。
【0087】
サドル取付部材6がサドル跳上位置に位置する状態では、フック71の引掛部75がシートポスト取付部材5の掛止部58に引っ掛かっていないため、フック71は第二の中心軸線70を中心に回転し得る。フック71が大きく回転して、引掛部75がシートポスト取付部材5の直上に位置すると、サドル取付部材6をサドル使用位置に位置させる回転端部60を下方に回転させようとしても、引掛部75がシートポスト取付部材5に当たって回転し得ない。このため、本実施形態では、凹所72にサドル取付部材6の一部が挿入されてフック71に接触することにより、引掛部75がシートポスト取付部材5の直上に位置しないように構成されている。更に説明すると、フック71の凹所72に、サドル取付部材6のサドル取付軸66が挿入されて、サドル取付軸66が凹所72の内面に接触することにより、フック71の移動が規制されている。サドル取付軸66によるフック71の移動の規制により、引掛部75がシートポスト取付部材5の直上に位置しないように構成されている。これにより、使用者は、サドル跳上位置に位置するサドル取付部材6を、サドル使用位置に位置させやすくなる。
【0088】
(2.7)解除部
解除部8は、使用位置保持部7によるサドル使用位置の保持を解除する。解除部8は、主に樹脂により形成されるが、金属等によりされてもよく、材質は特に限定されない。本実施形態では、解除部8は、解除レバー80により構成される。
【0089】
解除レバー80は、長手方向の一端側がサドル取付部材6に回転可能に連結される。具体的には、一端部に貫通孔81が形成されており、貫通孔81に軸部材74が通されている。解除レバー80の一端側の第二の中心軸線70(軸部材74の中心)を中心にして、解除レバー80の他端側が、上方(シートポスト3の長手方向の一端の方)に移動するように回転する。
【0090】
解除レバー80には、長孔83が形成されており、フック71に突設されるピン77が長孔83に挿入される。解除レバー80が回転して長孔83の端部によりピン77を移動させることで、解除レバー80の回転に連動してフック71が回転する。
【0091】
解除レバー80は、一端と他端との間に、下方に凹んで上方に向けて開口し、サドル4を逃がす逃げ部82が形成されている。逃げ部82が形成されることにより、サドル4を逃がしつつ解除レバー80の他端側を上方に大きなストロークで回転させやすくなる。
【0092】
(2.8)リードスイッチ
三輪自転車1は、リードスイッチ32を備えている。リードスイッチ32は、サドル4がサドル使用位置にある状態かサドル跳上位置にある状態かを検知する。リードスイッチ32により検知された情報はケーブル線35を介して、制御部16に送られる。リードスイッチ32は、一対のリード33、33と、マグネット34と、を有する。
【0093】
図8に示すように、シートポスト3内において、各リード33、33が有する接点331、331がそれぞれシートポスト3の長手方向と交差(本実施形態では直交)する方向に並ぶように配置されている。言い換えると、一対のリード33、33は、それぞれシートポスト3の長手方向に延びるように配置されている。
【0094】
マグネット34は、サドル取付部材6の横片63に形成された取付部631に、ビス等の固着具341により取り付けられる。
【0095】
シートポスト3内において、一対のリード33、33がそれぞれシートポスト3の長手方向に延びるように配置されることにより、リードスイッチ32による検知が安定する。すなわち、シートポスト3がシートポスト取付部材5に対して相対回転したとしても、一対のリード33、33のマグネット34に対する相対位置はほぼ変わらずマグネット34の磁力の検知はほぼ一定となり、リードスイッチ32による検知が安定する。
【0096】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0097】
以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。本開示に係る自転車は、上記実施形態におけるような三輪自転車1に限定されない。自転車は、二輪自転車であってももちろんよいし、四輪以上の自転車であってもよい。
【0098】
シートポスト3の上端部に小径部31が形成されなくてもよい。
【0099】
使用位置保持部7は、サドル取付部材6に備えられなくてもよく、自転車のいずれかの箇所に備えられていればよい。
【0100】
解除部8は、サドル取付部材6に備えられなくてもよく、自転車のいずれかの箇所に備えられていればよい。また、解除部8は、解除レバー80により構成されるものではなく、押しボタン等により構成されるものであってもよく、特に限定されない。
【0101】
サドル取付部材6がサドル使用位置に位置している状態におけるサドル取付部材6の回転端部60の位置は、回転範囲の下限でなくてもよい。また、サドル取付部材6がサドル跳上位置に位置している状態におけるサドル取付部材6の回転端部60の位置は、回転範囲の上限でなくてもよい。
【0102】
自転車は、リードスイッチ32の代わりに、タクトスイッチ、リミットスイッチ又はリレーを用いたスイッチ等を備えてもよい。また、自転車は、リードスイッチ32、タクトスイッチ、リミットスイッチ及びリレーを用いたスイッチを備えなくてもよい。
【0103】
サドル取付部材6は、サドル跳上位置にある状態で、軸部材56を介してシートポスト取付部材5に接触すると共に、シートポスト3に接触してもよい。
【0104】
(4)態様
以上説明したように、第1の態様に係る自転車は、シートポスト3と、サドル4と、シートポスト3の長手方向の一端側に取り付けられたシートポスト取付部材5と、サドル4に取り付けられたサドル取付部材6と、を備える。サドル取付部材6は、シートポスト取付部材5に対して中心軸線50を中心に回転可能に連結される。中心軸線50の位置は、シートポスト3の長手方向において、シートポスト3の一端よりも他端側である。
【0105】
第1の態様によれば、シートポスト3に対するサドル4の位置が高くなってしまうことが抑制される。
【0106】
第2の態様に係る自転車は、シートポスト3と、サドル4と、シートポスト3の長手方向の一端側に取り付けられたシートポスト取付部材5と、サドル4に取り付けられたサドル取付部材6と、を備える。サドル取付部材6は、シートポスト取付部材5に対して中心軸線50を中心に回転可能に連結される。サドル4の少なくとも一部は、シートポスト3の長手方向において、シートポスト3の一端よりも他端側に位置する。
【0107】
第2の態様によれば、シートポスト3に対するサドル4の位置が高くなってしまうことが抑制される。
【0108】
第3の態様では、第1又は第2の態様との組み合わせにより実現される。第3の態様では、シートポスト取付部材5は、シートポスト3に対して分離可能に取り付けられている。
【0109】
第3の態様によれば、既存のシートポスト3に対してシートポスト取付部材5を取り付け可能とすることで、汎用性が高くなる。
【0110】
第4の態様では、第1~第3のいずれかの態様との組み合わせにより実現される。第4の態様では、サドル取付部材6は、中心軸線50の位置する側と反対側の回転端部60が回転範囲の一端に位置するサドル使用位置と、回転端部60が回転範囲の他端に位置するサドル跳上位置と、の間を回転可能である。
【0111】
第4の態様によれば、回転端部60が回転範囲の一端に位置する時のサドル取付部材6の位置をサドル使用位置とし、回転端部60が回転範囲の他端に位置する時のサドル取付部材6の位置をサドル跳上位置とすることができる。
【0112】
第5の態様では、第4の態様との組み合わせにより実現される。第5の態様では、シートポスト取付部材5とサドル取付部材6とは、中心軸線50の位置に位置する軸部材56を介して中心軸線50を中心に回転可能に連結されている。サドル取付部材6は、サドル跳上位置にある状態で、軸部材56を介してシートポスト取付部材5に接触すると共に、軸部材56を介してシートポスト取付部材5に接触する箇所とは別の箇所でシートポスト取付部材5に接触する。
【0113】
第5の態様によれば、使用者が、サドル跳上位置に位置するサドル4を持ち上げようとする場合、サドル4に連結される軸部材56に自転車の荷重が集中してしまうのが抑制される。
【0114】
第6の態様では、第4又は第5の態様との組み合わせにより実現される。第6の態様では、サドル取付部材6は、サドル使用位置にある状態で、シートポスト取付部材5のシートポスト3長手方向の一端側の面に接触する。
【0115】
第6の態様によれば、サドル4を介してサドル取付部材6に掛かる使用者の体重を分散させやすくなる。
【0116】
第7の態様では、第4~第6のいずれかの態様との組み合わせにより実現される。第7の態様では、自転車は、サドル取付部材6がサドル使用位置に位置する状態を保持する使用位置保持部7を有する。
【0117】
第7の態様によれば、サドル取付部材6がサドル使用位置に位置する状態を保持することができる。
【0118】
第8の態様では、第7の態様との組み合わせにより実現される。第8の態様では、自転車は、使用位置保持部7によるサドル使用位置の保持を解除する解除レバー80を備える。解除レバー80は、一端側がサドル取付部材6に回転可能に連結され、他端側がシートポスト3の長手方向の一端側に移動するように回転することでサドル使用位置の保持を解除するものである。解除レバー80は、一端と他端との間に、シートポスト3の長手方向の他端側に凹んでサドル4を逃がす逃げ部82を有する。
【0119】
第8の態様によれば、解除レバー80の他端側を上方に大きなストロークで回転させやすくなる。
【0120】
第9の態様では、第7又は第8の態様との組み合わせにより実現される。第9の態様では、使用位置保持部7は、一端側がサドル取付部材6に対して第二の中心軸線70を中心に回転可能に連結され、他端側にシートポスト取付部材5に引掛かる引掛部75を有し、一端と他端との間に凹所72を有するフック71により構成される。凹所72にサドル取付部材6の一部が挿入されてフック71に接触することにより、引掛部75がシートポスト取付部材5のシートポスト3長手方向の一端側に位置しないように構成されている。
【0121】
第9の態様によれば、使用者は、サドル跳上位置に位置するサドル取付部材6を、サドル使用位置に位置させやすくなる。
【0122】
第10の態様では、第1~第9のいずれかの態様との組み合わせにより実現される。第10の態様では、シートポスト3内に、リードスイッチ32を構成する二本のリード33、33がそれぞれシートポスト3の長手方向に延びるように配置されている。
【0123】
第10の態様によれば、リードスイッチ32による検知が安定する。
【0124】
第11の態様は、第1~第10のいずれかの態様との組み合わせにより実現される。第11の態様では、サドル取付部材セットは、第1~第10のいずれかの態様に記載の自転車に設けられるシートポスト取付部材5及びサドル取付部材6を備える。
【0125】
第11の態様によれば、シートポスト3に対するサドル4の位置が高くなってしまうのを抑制するサドル取付部材セットを構成することができる。
【0126】
第12の態様では、第10の態様との組み合わせにより実現される。第12の態様では、シートポスト3は、第10の態様の自転車に設けられ、内部に二本のリード33、33がそれぞれシートポスト3の長手方向に延びるように配置されている。
【0127】
第12の態様によれば、リードスイッチ32による検知が安定する。
【0128】
第13の態様に係る自転車は、シートポスト3と、サドル4と、シートポスト3の長手方向の一端側に取り付けられたシートポスト取付部材5と、サドル4に取り付けられたサドル取付部材6と、を備える。サドル取付部材6は、シートポスト取付部材5に対して中心軸線50を中心に回転可能に連結される。サドル取付部材6は、中心軸線50の位置する側と反対側の回転端部60が回転範囲の一端に位置するサドル使用位置と、回転端部60が回転範囲の他端に位置するサドル跳上位置と、の間を回転可能である。シートポスト取付部材5とサドル取付部材6とは、中心軸線50の位置に位置する軸部材56を介して中心軸線50を中心に回転可能に連結されている。サドル取付部材6は、サドル跳上位置にある状態で、軸部材56を介してシートポスト取付部材5に接触すると共に、軸部材56を介してシートポスト取付部材5に接触する箇所とは別の箇所でシートポスト取付部材5又はシートポスト3に接触する。
【0129】
第13の態様によれば、使用者が、サドル跳上位置に位置するサドル4を持ち上げようとする場合、サドル4に連結される軸部材56に自転車の荷重が集中してしまうのが抑制される。
【符号の説明】
【0130】
1 三輪自転車(自転車)
3 シートポスト
30 上端(長手方向の一端)
32 リードスイッチ
33 リード
331 接点
4 サドル
5 シートポスト取付部材
50 中心軸線
56 軸部材
6 サドル取付部材
7 使用位置保持部
70 第二の中心軸線
71 フック
72 凹所
75 引掛部
80 解除レバー
82 逃げ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8