(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20240517BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20240517BHJP
E06B 3/677 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C03C27/06 101Z
C03C27/06 101E
C03C27/12 C
E06B3/677
(21)【出願番号】P 2022519922
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2021015747
(87)【国際公開番号】W WO2021225069
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2020082838
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 賢治
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 英一
(72)【発明者】
【氏名】石橋 将
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕之
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/224363(WO,A1)
【文献】特開2001-226153(JP,A)
【文献】特開2004-323317(JP,A)
【文献】特開2003-040655(JP,A)
【文献】国際公開第2019/219593(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0232619(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00-29/00
B32B 17/10
E06B 3/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体の製造方法であって、
前記積層体は、
ガラスパネルユニットと、
中間膜と、
前記ガラスパネルユニットに前記中間膜を介して貼り合わせられた透明板とを備え、
前記ガラスパネルユニットは、
第1ガラスパネルと、
第2ガラスパネルと、
前記第1ガラスパネルと前記第2ガラスパネルとの間に位置する減圧空間とを有し、
前記積層体の製造方法は、
前記ガラスパネルユニット、前記中間膜及び前記透明板を袋体内に配置した状態で前記袋体内を排気し、これにより収縮した前記袋体により前記ガラスパネルユニットと前記透明板とを前記中間膜を介して貼り合わせる工程を含み、
前記工程において、前記中間膜の温度を前記中間膜が軟化する所定温度まで上昇させつつ、前記袋体内の圧力を加熱初期
から段階的に又は連続的に高くする、
積層体の製造方法。
【請求項2】
前記工程において、前記袋体から、前記ガラスパネルユニット、前記中間膜及び前記透明板を有する積層物に対して加えられる押し圧力を、0.02気圧以上3気圧以下の範囲内で変更する、
請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記工程において、前記中間膜の温度が前記所定温度であるときに、前記袋体内の圧力を大気圧にし、この後、前記中間膜の温度を低下させる、
請求項1又は請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記工程において、前記中間膜の温度を前記中間膜が軟化する所定温度まで上昇させつつ、前記袋体内の圧力を段階的に高くする、
請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記中間膜はPVB樹脂製であり、
前記工程において、前記中間膜の含水率を0.1重量%以上0.5重量%以下にした状態で、前記袋体により前記ガラスパネルユニットと前記透明板とを前記中間膜を介して貼り合わせる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には、積層体の製造方法に関する。本開示は、詳細には、ガラスパネルユニット、透明板及び中間膜を備える積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対向する一対のガラスパネルの間に減圧空間が設けられたガラスパネルユニットがある。例えば特許文献1には、2枚のガラス基板の間に空間が設けられた真空断熱ガラス窓ユニットが開示されている。
【0003】
ガラスパネルユニットの断熱性及び強度を向上させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、断熱性及び強度が優れた積層体を製造することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様に係る積層体の製造方法は、以下に示す構成を有する。前記積層体は、ガラスパネルユニットと、中間膜と、前記ガラスパネルユニットに前記中間膜を介して貼り合わせられた透明板とを備える。前記ガラスパネルユニットは、第1ガラスパネルと、第2ガラスパネルと、前記第1ガラスパネルと前記第2ガラスパネルとの間に位置する減圧空間とを有する。前記積層体の製造方法は、工程を含む。前記工程では、前記ガラスパネルユニット、前記中間膜及び前記透明板を袋体内に配置した状態で前記袋体内を排気し、これにより収縮した前記袋体により前記ガラスパネルユニットと前記透明板とを前記中間膜を介して貼り合わせる。前記工程において、前記中間膜の温度を前記中間膜が軟化する所定温度まで上昇させつつ、前記袋体内の圧力を加熱初期に対して高くする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1Aは、第1実施形態に係る積層体の一例を示す概略の断面図である。
図1Bは、
図1Aに示す積層体が備えるガラスパネルユニットを示す概略の斜視図である。
【
図2】
図2A及び
図2Bは、第1実施形態に係る積層体の製造方法の一例を示す概略の断面図である。
【
図3】
図3は、同上の積層体の製造方法に用いられる炉の水平断面図である。
【
図4】
図4は、同上の積層体の製造方法において、対象物を平置きした状態で乾燥する様子を示した斜視図である。
【
図5】
図5は、同上の積層体の製造方法において、対象物を
図4とは別の態様で加熱する様子を示した斜視図である。
【
図6】
図6は、同上の積層体の製造方法において、対象物を直立させた状態で乾燥する様子を示した斜視図である。
【
図7】
図7は、同上の積層体が有するガラスパネルユニットと透明板とを貼り合わせる工程において、炉内の温度、袋体内の圧力及び時間の関係を示したグラフである。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る積層体の一例を示す概略の断面図である。
【
図9】
図9A及び
図9Bは、第2実施形態に係る積層体の製造方法の一例を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.第1実施形態
1-1.第1実施形態の概要
まず、第1実施形態について説明する。本実施形態の積層体100の製造方法では、
図1Aに示す積層体100を製造する。積層体100は、ガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20を備える。透明板20は、ガラスパネルユニット10に中間膜30を介して貼り合わせられている。ガラスパネルユニット10は、第1ガラスパネル1、第2ガラスパネル2及び減圧空間3を有する。減圧空間3は、第1ガラスパネル1と第2ガラスパネル2との間に位置する。
【0009】
本実施形態の積層体100の製造方法は、工程を含む。前記工程では、ガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20を袋体40内に配置した状態で袋体40内を排気し、これにより収縮した袋体40によりガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30を介して貼り合わせる。前記工程において、中間膜30の温度を中間膜30が軟化する所定温度まで上昇させつつ、加熱初期よりも後の袋体40内の圧力を加熱初期に対して高くする。
【0010】
本実施形態の製造方法によって得られる積層体100では、ガラスパネルユニット10(
図1B参照)に、中間膜30を介して透明板20が貼り合わせられ、断熱性及び強度が優れた積層体100を製造することができる。
【0011】
また、ガラスパネルユニット10と透明板20との貼り合わせは、内部を排気することで収縮する袋体40によって行われる。このため、中間膜30に均一に圧力を掛けることができ、中間膜30に濁りや気泡が生じることを抑制することができる。
【0012】
また、前記工程では、中間膜30の温度を中間膜30が軟化する所定温度まで上昇させつつ、袋体40内の圧力を加熱初期に対して高くする。このため、中間膜30がガラスパネルユニット10と透明板20との間からはみ出すことを抑制しつつ、ガラスパネルユニット10と透明板20とを適切な圧力で貼り合わせることができる。
【0013】
1-2.第1実施形態の詳細
以下、第1実施形態に係る積層体100と、その製造方法について詳細に説明する。
【0014】
1-2-1.積層体
積層体100は、
図1Aに示すように、ガラスパネルユニット10、透明板20及び中間膜30を備える。
【0015】
(1)ガラスパネルユニット
ガラスパネルユニット10は、
図1Bに示すように、第1ガラスパネル1及び第2ガラスパネル2を含んでいる。第1ガラスパネル1と第2ガラスパネル2とは、対向している。
【0016】
ガラスパネルユニット10は、枠状のシール材5を更に備える。シール材5は、第1ガラスパネル1と第2ガラスパネル2との間に設けられている。第1ガラスパネル1、シール材5及び第2ガラスパネル2は、順に積み重なっている。シール材5は、第1ガラスパネル1と第2ガラスパネル2とを気密に接合している。
【0017】
ガラスパネルユニット10は、減圧空間3を更に備える。減圧空間3は、第1ガラスパネル1、第2ガラスパネル2及び枠状のシール材5によって囲まれた密閉空間である。
【0018】
ガラスパネルユニット10は、複数のピラー4を更に備える。複数のピラー4は、減圧空間3において、第1ガラスパネル1と第2ガラスパネル2との間に設けられている。複数のピラー4によって、第1ガラスパネル1と第2ガラスパネル2との間隔が維持されている。
【0019】
ガラスパネルユニット10は、ガス吸着体6を更に備える。ガス吸着体6は、減圧空間3内に設けられている。ガス吸着体6は、減圧空間3内の気体を吸着する。
【0020】
以下、ガラスパネルユニット10に含まれる第1ガラスパネル1、第2ガラスパネル2、シール材5、減圧空間3、ピラー4及びガス吸着体6についてより詳しく説明する。
【0021】
(1.1)第1ガラスパネル
第1ガラスパネル1はガラス製の板材である。第1ガラスパネル1の平面視の形状は、矩形状である。第1ガラスパネル1の平面視の形状は、矩形状に限定されず、矩形状以外の多角形状であってもよく、円形状であってもよく、楕円形状であってもよい。第1ガラスパネル1は、平坦な板状であってもよく、曲がった板状であってもよい。第1ガラスパネル1の外面11は、平坦であってもよく、曲がっていてもよい。
【0022】
第1ガラスパネル1の材料の例には、ソーダライムガラス、高歪点ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ネオセラム及び物理強化ガラスが含まれる。第1ガラスパネル1の厚みは、特に限定されないが、例えば、1mm以上10mm以下である。
【0023】
第1ガラスパネル1は、ガラスパネルユニット10の外部空間に露出する面である外面11と、第2ガラスパネル2と対向する面である内面110とを含む(
図1A参照)。
【0024】
第1ガラスパネル1の内面110には、低放射膜が設けられていてもよい。この場合、低放射膜が減圧空間3内に位置する。低放射膜は、低放射性を有する金属を含む膜である。低放射膜は放射による伝熱を抑制する機能を有する。このため、第1ガラスパネル1の外面11に放射された光による熱が、減圧空間3に伝わることを抑制することができる。低放射性を有する金属の例には、銀が含まれる。
【0025】
(1.2)第2ガラスパネル
第2ガラスパネル2は、ガラス製の板材である。第2ガラスパネル2の平面視の形状は、第1ガラスパネル1の平面視の形状と同じである(
図1A参照)。第2ガラスパネル2は、平坦な板状であってもよく、曲がった板状であってもよい。第2ガラスパネル2の外面12は、平坦であってもよく、曲がっていてもよい。ガラスパネルユニット10は、平坦な板状であってもよく、曲がった板状であってもよい。
【0026】
第2ガラスパネル2の材料の例には、ソーダライムガラス、高歪点ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ネオセラム及び物理強化ガラスが含まれる。第2ガラスパネル2の材料は、第1ガラスパネル1の材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。第2ガラスパネル2の厚みは、特に限定されないが、例えば、1mm以上10mm以下である。第2ガラスパネル2の厚みは、第1ガラスパネル1の厚みと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0027】
第2ガラスパネル2は、ガラスパネルユニット10の外部空間に露出する面である外面12と、第1ガラスパネル1と対向する面である内面120とを含む(
図1A参照)。
【0028】
(1.3)シール材
本実施形態のシール材5は、矩形の枠状に形成されている。シール材5は、熱接着剤から形成される。熱接着剤としては、例えば、低融点ガラスフリット等のガラスフリットが挙げられる。低融点ガラスフリットの例には、ビスマス系ガラスフリット、鉛系ガラスフリット及びバナジウム系ガラスフリットが含まれる。シール材5は、これらの低融点ガラスフリットのうち一種以上を含有することができる。
【0029】
(1.4)減圧空間
減圧空間3は、第1ガラスパネル1と、第2ガラスパネル2と、シール材5とで囲まれた空間である。減圧空間3は、例えば、真空空間であることが好ましい。具体的に減圧空間3は、真空度が0.1Pa以下に至るまで減圧された空間であることが好ましい。この場合、ガラスパネルユニット10の断熱性を向上させることができる。なお、減圧空間3の圧力は、限定されない。
【0030】
(1.5)ピラー
ピラー4は円柱状の部材である。ピラー4の高さ(厚み方向の長さ)は、第1ガラスパネル1と第2ガラスパネル2との間隔に応じて適宜設定される。すなわち、第1ガラスパネル1と第2ガラスパネル2との間隔(減圧空間3の厚み)は、ピラー4の高さによって規定される。ピラー4の高さは、例えば、10μm以上1000μm以下である。ピラー4の直径は、例えば、0.1mm以上10mm以下である。ピラー4の一例として、直径が0.5mmであり、高さが100μmのピラー4が挙げられる。ピラー4の形状は、円柱状に限定されず、角柱状であってもよく、球状であってもよい。
【0031】
ピラー4は透明であることが好ましい。この場合、積層体100において、ピラー4が目立つことを抑制することができ、積層体100の外観を向上させることができる。
【0032】
ピラー4は、樹脂製であり、例えば、ポリイミド樹脂製であることが好ましい。この場合、ピラー4の熱伝導率を抑えることができ、ピラー4と接触している第1ガラスパネル1及び第2ガラスパネル2間で熱が伝わりにくくすることができる。
【0033】
(1.6)ガス吸着体
ガス吸着体6は、減圧空間3内に配置されている。ガス吸着体6は、減圧空間3内の気体分子を吸着する。このため、減圧空間3の真空度が向上し、ガラスパネルユニット10の断熱性が向上する。
【0034】
ガス吸着体6は、例えば、金属ゲッタ材又は非金属ゲッタ材を含むことができる。金属ゲッタ材は、気体分子を化学的に吸着できる金属表面を有する金属製のゲッタ材である。金属ゲッタ材の例には、ジルコニウム系(Zr-Al、Zr-V-Fe等)のゲッタ材及びチタン系のゲッタ材等が含まれる。これらの金属ゲッタ材は、例えば、H2O、N2、O2、H2又はCO2等の気体分子を吸着することができる。また、これらの金属ゲッタ材を加熱して活性化させることにより、金属ゲッタ材の金属表面に吸着(化学吸着)していた気体分子を、金属ゲッタ材の内部に拡散させることができる。このため、ガス吸着体6が金属ゲッタ材を含むことにより、減圧空間3内のH2O、N2、O2、H2又はCO2等の気体分子を吸着することができる。
【0035】
非金属ゲッタ材は、気体分子を吸着することのできる多孔質構造を有する非金属製のゲッタ材である。非金属ゲッタ材の例には、ゼオライト系、活性炭素及び酸化マグネシウム等が含まれる。ゼオライト系のゲッタ材は、イオン交換されたゼオライトを含み得る。この場合のイオン交換物質の例には、K、NH4、Ba、Sr、Na、Ca、Fe、Al、Mg、Li、H及びCu等が含まれる。これらの非金属ゲッタ材は、例えば、炭化水素系ガス(CH4、C2H6等)又はアンモニアガス(NH3)等の金属ゲッタ材が吸着できない気体分子を吸着することができる。また、これらの非金属ゲッタ材を加熱して活性化させることにより、非金属ゲッタ材の多孔質構造に吸着していた気体分子を、脱離させることができる。
【0036】
(1.7)ガラスパネルユニットの製造方法
ガラスパネルユニット10は、例えば、以下の方法で製造することができる。まず、第2ガラスパネル2の内面120に、シール材5となる熱接着剤を枠状に配置する。次に、枠状の熱接着剤を挟むように、第1ガラスパネル1と第2ガラスパネル2とを重ね、第1ガラスパネル1、第2ガラスパネル2及び熱接着剤を有する積層物を形成する。次に、積層物を加熱炉によって加熱する。これにより、枠状の熱接着剤からシール材5が形成される。更に、第1ガラスパネル1、第2ガラスパネル2及び熱接着剤で囲まれた空間から気体を排出する。これにより、減圧空間3が形成されたガラスパネルユニット10を製造することができる。
【0037】
(2)透明板
図1Aに示す透明板20は、透光性を有する透明の板材である。透明板20によって積層体100の強度、断熱性及び遮音性等を向上できる。また、透明板20の形状又は機能等に応じて、積層体100に種々の機能を付与することができる。透明板20は、第1ガラスパネル1の外面11及び第2ガラスパネル2の外面12のうち少なくとも一方に設けられている。本実施形態の積層体100では、第1ガラスパネル1の外面11に透明板20が設けられている。透明板20とガラスパネルユニット10とは対向している。透明板20と第1ガラスパネル1とは対向している。
【0038】
透明板20の平面視の形状は、例えば、ガラスパネルユニット10の平面視の形状と同じである。本実施形態の透明板20の平面視の形状は、第1ガラスパネル1と同じである。上述の通り、ガラスパネルユニット10は、平坦であってもよく、曲がっていてもよい。このため、透明板20も、平坦であってもよく、曲がっていてもよい。
【0039】
透明板20の厚みは、特に限定されないが、例えば0.5mm以上12mm以下であることが好ましく、1mm以上6mm以下であることがより好ましい。この場合、積層体100の強度を確保しながら、積層体100を軽量化することができる。
【0040】
透明板20の材質は、透光性を有する材料製であれば特に限定されない。透明板20は、例えば、ポリカーボネート製であることが好ましい。この場合、透明板20を軽量化することができ、それにより積層体100を軽量化することができる。
【0041】
透明板20は、例えば、ガラス製であることが好ましい。この場合、透明板20の強度を向上させることができ、これにより、積層体100の強度を向上させることができる。透明板20がガラス製である場合、透明板20の例には、アニールガラス、化学強化ガラス及び物理強化ガラス等が含まれる。
【0042】
(3)中間膜
中間膜30は、ガラスパネルユニット10と透明板20との間に位置している。本実施形態の中間膜30は、第1ガラスパネル1と透明板20との間に位置している。ガラスパネルユニット10及び透明板20は、中間膜30によって接着されている。本実施形態では、第1ガラスパネル1及び透明板20が、中間膜30によって接着されている。
【0043】
中間膜30は、ガラスパネルユニット10の透明板20側の外面(第1ガラスパネル1の外面11)の全体に設けられていることが好ましく、透明板20のガラスパネルユニット10側の面の全体に設けられていることが好ましい。中間膜30の平面視の形状は、ガラスパネルユニット10(第1ガラスパネル1)と同じであることが好ましく、透明板20と同じであることが好ましい。
【0044】
中間膜30の厚みは、ガラスパネルユニット10(第1ガラスパネル1)と透明板20とを接着することができれば特に限定されないが、例えば0.3mm以上4mm以下であることが好ましく、0.3mm以上2mm以下であることがより好ましい。この場合、ガラスパネルユニット10で透明板20を保持しやすく、また、積層体100の透光性を維持しやすい。
【0045】
中間膜30の材質は、ガラスパネルユニット10(第1ガラスパネル1)と透明板20とを接着することができ、透光性を有していれば、特に限定されない。中間膜30は、例えば、透光性を有するシート状の樹脂であることが好ましく、熱可塑性樹脂製のシートであることが好ましい。中間膜30は、単一のシート状の樹脂で構成されてもよく、複数のシート状の樹脂の積層体で構成されてもよい。中間膜30が複数のシート状の樹脂の積層体で構成されている場合、意匠性及びデザイン性の向上のために、複数のシート状の樹脂の間に介在物が挟まれていてもよい。この介在物の例には、PETフィルム、金属箔及び植物等が含まれる。
【0046】
中間膜30は、例えば、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂製であることが好ましい。PVB樹脂は、ガラスパネルユニット10と透明板20との接着性に優れると共に、透明性に優れるためである。また、中間膜30がPVB樹脂製であると、積層体100の強度を向上させることができ、積層体100の貫通防止性を向上させることができる。
【0047】
中間膜30は、例えば、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合)樹脂製であることが好ましい。EVA樹脂は、透明性及び柔軟性に優れるためである。中間膜30がEVA樹脂製であると、積層体100の飛散防止性を向上させることができる。また、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30によって比較的低温で、接着することができる。また、積層体100の搬送性を向上させることができる。
【0048】
中間膜30は、例えば、シクロオレフィン系樹脂製であることが好ましい。シクロオレフィン系樹脂は、透明性及び柔軟性に優れるためである。また、中間膜30がシクロオレフィン系樹脂製であると、積層体100の飛散防止性を向上させることができる。また、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30によって比較的低温で、接着することができる。また、積層体100の搬送性を向上させることができる。
【0049】
中間膜30は、例えば、アイオノマー樹脂製であることが好ましい。アイオノマー樹脂は、透明性及び柔軟性に優れ、強度も強いためである。また、中間膜30がアイオノマー樹脂製であると、積層体100の飛散防止性を向上させることができる。また、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30によって比較的低温で、接着することができる。また、積層体100の搬送性を向上させることができる。本開示における「アイオノマー樹脂」とは、エチレン-メタクリル酸共重合体やエチレン-アクリル酸共重合体の分子間を、ナトリウムや亜鉛などの金属のイオンで分子間結合した特殊な構造を有する樹脂のことをいう。
【0050】
中間膜30は、例えば、ポリオリフィン系樹脂製であることが好ましい。ポリオリフィン系樹脂は、透明性及び柔軟性に優れるためである。また、中間膜30がポリオリフィン系樹脂製であると、積層体100の飛散防止性を向上させることができる。また、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30によって、貼り合わせ温度が80℃以上110℃以下と比較的低温で接着することができる。また、積層体100の搬送性を向上させることができる。
【0051】
したがって、中間膜30は、PVB樹脂、EVA樹脂、シクロオレフィン系樹脂、アイオノマー樹脂及びポリオリフィン系樹脂のうち少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0052】
1-2-2.積層体の製造方法
本実施形態の積層体100は、例えば、以下の工程によって製造することができる。なお、積層体100を製造する方法は、以下の方法に限定されない。
【0053】
まず、上述のガラスパネルユニット10、透明板20及び中間膜30を用意する。次に、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30を介して貼り合わせる(
図2A参照)。詳細には、第1ガラスパネル1の外面11と第2ガラスパネル2の外面12とのうち少なくとも一方と、透明板20とを、中間膜30を介して貼り合わせる。本実施形態では、
図2Aに示すように、第1ガラスパネル1の外面11と、透明板20とを、シート状樹脂である中間膜30を介して貼り合わせる。これにより、
図1Aに示す積層体100が得られる。
【0054】
ガラスパネルユニット10及び透明板20は、例えば、以下に示す真空バッグ方式により、中間膜30を介して貼り合わせられる。真空バッグ方式の貼り合わせ方法は、準備工程、貼り合わせ工程及び冷却工程を備える。すなわち、本実施形態の積層体100の製造方法は、準備工程、貼り合わせ工程及び冷却工程の三つの工程を含む。
【0055】
準備工程では、ガラスパネルユニット10と透明板20との間にシート状樹脂である中間膜30を挟むことで、ガラスパネルユニット10、透明板20及び中間膜30を有する積層物41を形成する。そして、この積層物41を、
図2Bに示すように、袋体(真空バッグ)40の中に入れる。なお、袋体40は、透明又は半透明であってもよいし、不透明であってもよい。
【0056】
準備工程に続いて貼り合わせ工程が実行される。貼り合わせ工程では、積層物41が入れられた袋体40内を排気し、これにより収縮した袋体40により、積層物41を厚み方向に加圧して、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30を介して貼り合わせる。この貼り合わせ工程では、袋体40内を減圧しつつ、積層物41を加熱する。これにより、中間膜30が加熱されて軟化し、この中間膜30が袋体40によって押されたガラスパネルユニット10と透明板20とに挟まれることで、ガラスパネルユニット10と透明板20とが中間膜30を介して貼り合わせられる。
【0057】
貼り合わせ工程における袋体40の内部は、例えば、袋体40に接続された真空ポンプによって排気されることで減圧される。また、貼り合わせ工程における積層物41は、例えば、積層物41が入れられた袋体40が炉7(
図3参照)によって加熱されることで、中間膜30が溶融して軟化する所定温度にまで加熱される。所定温度は、例えば140℃である。なお、所定温度は、使用する中間膜30の軟化温度に起因するため、使用する中間膜30の特性に合わせた温度設定が必要になるが、通常は135℃以上140℃以下であることが好ましい。なお、所定温度は限定されない。例えば、中間膜30として、低温で軟化する材料を用いる場合、所定温度は80℃以上110℃以下にすることもできる。
【0058】
貼り合わせ工程において、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際には、袋体40からガラスパネルユニット10及び透明板20に押し圧力が加えられる。すなわち、押し圧力は、ガラスパネルユニット10と透明板20とで中間膜30を挟み込む際に、積層物41に加えられる圧力である。押し圧力は、例えば、袋体40の外部の圧力が大気圧である場合、袋体40内の圧力(真空度)と大気圧との差圧である。すなわち、この押し圧力は、袋体40内の圧力が小さくなるほど大きくなる。なお、袋体40の外部の圧力は大気圧に限定されない。
【0059】
押し圧力が大きすぎると、ガラスパネルユニット10が備える複数のピラー4が押し潰されてしまい、ガラスパネルユニット10が破損したり、ガラスパネルユニット10の断熱性又は強度等が低下したりすることがある。このため、本実施形態では、押し圧力が、袋体40を真空ポンプで引く程度(例えば0.1MPa以下)であり、複数のピラー4の圧縮強度よりも小さいことが好ましい。この場合、複数のピラー4が押し潰されることを抑制することができる。
【0060】
本実施形態では、押し圧力が3気圧(約0.3Mpa)以下であることが好ましく、1気圧(約0.1Mpa)以下であることがより好ましい。よって袋体40をプレス機などでさらに加圧することはせずに袋体40を真空ポンプで引く程度の圧力で貼り合わせる。押し圧力の下限値は、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせることができる限り特に限定しないが、例えば0.02気圧(約0.002Mpa)以上であることが好ましい。更に好ましくは0.03気圧(約0.003Mpa)以上である。この場合、複数の樹脂製のピラー4が押し潰されることをより抑制することができ、特にピラー4がポリイミド樹脂製である場合に、ピラー4が押し潰されることを抑制することができる。すなわち、押し圧力は、0.02気圧以上3気圧以下が好ましく、0.03気圧以上1気圧以下が更に好ましい。
【0061】
貼り合わせ工程に続いて冷却工程が実行される。冷却工程では、袋体40内の積層物41が冷却される。これにより、貼り合わせ工程において軟化した中間膜30が冷却されて硬化し、ガラスパネルユニット10と透明板20とが中間膜30を介して一体化する。冷却工程における積層物41の冷却は、例えば、上述した炉7による袋体40の加熱を停止することで行われる。
【0062】
一般的に、PVB樹脂製の中間膜30を用いて接着するためには、オートクレーブ装置を用いた加熱及び加圧が必要となる。この場合、中間膜30に加えられる圧力は、通常13気圧(約1.3MPa)である。しかしながら、加熱及び加圧の条件によっては、ガラスパネルユニット10が備えるピラー4に変形が生じたり、第1ガラスパネル1及び第2ガラスパネル2等に破損や変形等が生じたりする可能性がある。これに対して、PVB樹脂は、含水率を低減させることにより、オートクレーブ装置を用いず、加熱のみで接着することができる。このため、PVB樹脂製の中間膜30を乾燥させてから、この中間膜30を介してガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせることにより、加熱のみでガラスパネルユニット10と透明板20とを接着させることができる。
【0063】
中間膜30を乾燥させる方法としては、例えば、内部にシリカゲルなどの乾燥材を入れた大型チャンバーの中に、中間膜30のみをロール状、またはフラットにした状態で設置し、大型チャンバー内を真空ポンプで排気して所定の真空度を保持する方法がある。この方法により、中間膜30を乾燥させることができ、中間膜30の含水率を低下させることができる。乾燥したPVB樹脂製の中間膜30が、上述したように袋体40内においてガラスパネルユニット10及び透明板20で挟まれた状態で加熱されることにより、ガラスパネルユニット10と透明板20とが、中間膜30によって貼り合わせられる。
【0064】
上記中間膜30の乾燥条件は、中間膜30の大きさや厚み等に応じて適宜設定されるが、例えば大型チャンバーの圧力が0.1気圧(約0.01MPa)以下になった状態で、12時間以上、好ましくは48時間以上乾燥させることが好ましい。
【0065】
オートクレーブ装置を用いずに、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせるには、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる前における中間膜30の含水率を、0.1重量%以上0.5重量%以下にすることが好ましい。また、この中間膜30の含水率は、0.15重量%以上0.3重量%以下にすることがより好ましい。このようにすることで、ピラー4の変形や、第1ガラスパネル1及び第2ガラスパネル2の破損、変形を抑制しながら、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30で貼り合わせることができる。また、この場合、中間膜30がPVB樹脂シートである場合には、中間膜30の貫通防止性が低下したり、中間膜30に濁りや気泡が生じたりすることを抑制することもできる。
【0066】
PVB樹脂製の中間膜30を用いてガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際、中間膜30に不均一な圧力が掛かることも中間膜30に濁りや気泡が生じる原因となりうる。しかし、本実施形態では、前述した真空バッグ方式の貼り合わせ方法を採用することで、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際には、中間膜30に均一に圧力が掛かるようにプレスすることができる。したがって、中間膜30に濁りや気泡が生じることを抑制することができる。なお、中間膜30を袋体40内に入れる前に中間膜30を乾燥させることが好ましいが、袋体40内は減圧することで湿度を低下させることができる。このため、中間膜30は、袋体40に入れてから乾燥させてもよい。
【0067】
貼り合わせ工程において積層物41が入れられた袋体40は、例えば、
図3に示す炉7によって加熱することができる。以下、内部に積層物41が入れられた袋体40を対象物400という。
【0068】
炉7は、熱風乾燥炉であって、加熱室70、扉71、熱風循環装置72及び台73を備える。加熱室70の前面には、開口部700が形成されている。炉7内となる、加熱室70の内側には、加熱空間701が形成されている。加熱空間701は、開口部700を介して前方に開放される。対象物400は、例えば、台73に載せられた状態で、台73と共に開口部700から加熱空間701に出し入れされる。扉71は、開口部700を開閉する。
【0069】
熱風循環装置72は、送風機720と加熱器721とを備える。送風機720は、加熱空間701の気体を循環させる。加熱器721は、送風機720によって循環する気体を加熱する。加熱器721は、例えば、熱交換器である。熱風循環装置72は、例えば、
図3に示すように、加熱空間701において、熱風が左右方向と略平行な一方向に流れるように、熱風を循環させる。
図3に示す矢印は、炉7内において熱風が流れる向きを示している。
【0070】
炉7内(加熱空間701)には、台73が設置される。台73は、対象物400が載せられる平坦な上面を有している。
【0071】
図4は、加熱空間701(炉7内)に配置された台73の上に、対象物400を平置きした状態で、ガラスパネルユニット10の加熱を行う例を示している。ガラスパネルユニット10は優れた断熱性を有する。このため、例えば、袋体40の内部において、ガラスパネルユニット10の上に中間膜30を介して透明板20(
図1参照)が配置された状態にある対象物400が、台73の上面に載せられた場合には、台73から中間膜30に熱が伝わりにくい。また、袋体40の内部において、透明板20の上に中間膜30を介してガラスパネルユニット10が配置された状態にある対象物400が、台73の上面に載せられた場合には、対象物400の上方を通過する熱風から中間膜30に熱が伝わりにくい。中間膜30に均一に熱が伝わらないと、ガラスパネルユニット10と透明板20とを均一に接着できない場合や、ガラスパネルユニット10の第1ガラスパネル1と第2ガラスパネル2との間に温度差がつき、ガラスパネルユニット10の反りが大きくなって、第1ガラスパネル1又は第2ガラスパネル2が割れる恐れがある。そのため、中間膜30に対して均一に熱を伝えることが好ましい。
【0072】
したがって、上記のように台73の上に平置きした対象物400を炉7内で加熱する場合、例えば、対象物400と、この対象物400が置かれる台73との間に、空間を設けることが好ましい。この場合、対象物400は、透明板20の上に中間膜30を介してガラスパネルユニット10が配置された状態であってもよいし、ガラスパネルユニット10の上に中間膜30を介して透明板20が配置された状態であってもよい。この空間は、例えば、対象物400を複数のスペーサを介して台73に置くことで形成される。この場合、対象物400を、袋体40の上方からだけでなく、下方からも加熱することができ、袋体40の両面を加熱しやすいため、中間膜30を均一に加熱しやすい。
【0073】
また、
図5に示すように、台73に、気体が通過可能な通気空間730を形成することが好ましい。
図5に示す例では、台73の下面に、台73の左右方向の全長にわたる溝が形成されており、この溝の内側の空間が通気空間730になっている。この場合も、対象物400は、透明板20の上に中間膜30を介してガラスパネルユニット10が配置された状態であってもよいし、ガラスパネルユニット10の上に中間膜30を介して透明板20が配置された状態であってもよい。このような通気空間730を熱風(炉7内の気体)が通過することで、台73の温度が上がり、台73に平置きされている袋体40が加熱される。このため、ガラスパネルユニット10における第1ガラスパネル1と第2ガラスパネル2の温度差をなくすか、なるべく小さくすることができ、中間膜30は均一に加熱されやすくなる。なお、
図5に示す通気空間730は、台73と台73が設置される設置面75との間に位置しているが、台73の内部に形成されてもよい。通気空間730は、例えば、台73に左右方向に貫通する孔であってもよい。
【0074】
図5に示すように、台73に通気空間730を形成する場合、台73の材料は、例えば、アルミニウムなどの袋体40よりも熱伝導性が良い材料であることが好ましい。また、この場合、台73(アルミニウム)の厚みは、5mm以上であることが好ましい。また、この台73(熱伝導が良い材料)において熱風と接触する部分にヒートシンクのような熱を集める形状の凸部を形成してもよい。なお、熱伝導性が良い材料としては、アルミニウムの他、例えば、銅、真鍮等の金属、アルミナ等の熱伝導性セラミック又はグラファイト、あるいはこれらの複合積層体であってもよい。
【0075】
また、台73の材料が熱伝導性が良くない場合は、台73の表面に熱を通すために、例えばパンチングメッシュのような貫通穴を開けても良い。さらに台73と袋体40との間に袋体40より大きなサイズのアルミニウムなど熱伝導性の良い材料からなる平板を挟んでもよい。この場合、熱伝導性の良い材料からなる平板の厚みは5mm以上であることが好ましい。なお、熱伝導性が良い材料としては、アルミニウムの他、例えば、銅、真鍮等の金属、アルミナ等の熱伝導性セラミック又はグラファイト、あるいはこれらの複合積層体であってもよい。
【0076】
また、例えば、
図6に示すように、対象物400を、直立させた状態で、加熱することが好ましい。この場合、対象物400は、例えば、ガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20が前後方向においてこの順序で並び、かつ、ガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20の各々の厚み方向が、前後方向と略平行になった状態で、台73に置かれる。この場合も、対象物400の両面(袋体40の両面)が加熱されやすいため、中間膜30が均一に加熱されやすい。
【0077】
なお、対象物400を直立させた状態で加熱する場合、対象物400は、例えば、
図6に示すような支持具74によって支持されてもよい。支持具74は、対象物400の左右方向の両端部だけを支持する複数の支持部材740を備えている。このような支持具74を用いることで、袋体40内に位置する、ガラスパネルユニット10及び透明板20に力が加わりにくくした状態で、対象物400を起立した状態に維持することができる。
【0078】
一般的に、EVA樹脂製の中間膜30を用いる場合、PVB樹脂と比べて低い加熱温度であっても接着することができる。そのため、EVA樹脂製の中間膜30によってガラスパネルユニット10と透明板20とを接着することにより、ガラスパネルユニット10が備えるピラー4の変形や、第1ガラスパネル1及び第2ガラスパネル2の変形、破損等を抑制することができる。また、EVA樹脂製の中間膜30を用いる場合にも、袋体40内に、ガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20を配置し、袋体40を排気しながら、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30を介して貼り合わせることが好ましい。すなわち、ガラスパネルユニット10と透明板20とを真空バッグ方式で接着することが好ましい。この場合、中間膜30に均一に圧力をかけやすいことから、厚みが均一な積層体100を得やすい。
【0079】
ここで、本実施形態の積層体100の製造方法では、前述した貼り合わせ工程において、中間膜30の温度を中間膜30が溶融する所定温度まで上昇させつつ、袋体40内の圧力を加熱初期に対して高くしていく。具体的に貼り合わせ工程では、袋体40内を減圧した状態で中間膜30の加熱を開始し、この後、袋体40内の圧力を中間膜30の加熱開始の時点における袋体40内の圧力よりも高くする。
【0080】
図7は、中間膜30がPVB樹脂製である場合の貼り合わせ工程における、炉7内の温度、袋体40内の圧力及び時間の関係を示したグラフである。
図7に示す例では、貼り合わせ工程において、炉7内の温度を常温から中間膜30の軟化温度(所定温度)である140℃になるまで連続的に上昇させつつ、袋体40内の圧力を段階的に高くしている(上昇させている)。このように中間膜30の温度と相関する炉7内の温度に応じて、袋体40内の圧力を高くする(押し圧力を低くする)ことにより、中間膜30がガラスパネルユニット10と透明板20との間からはみ出すことを抑制しつつ、ガラスパネルユニット10と透明板20とを適切な圧力で貼り合わせることができる。
【0081】
貼り合わせ工程では、袋体40によって積層物を押す押し圧力を、0.02気圧以上3気圧以下の範囲内で変更することが好ましい。この場合、中間膜30がガラスパネルユニット10と透明板20との間からはみ出すことを一層抑制し、かつ、ガラスパネルユニット10と透明板20とをより適切な圧力で貼り合わせることができる。
【0082】
具体的に貼り合わせ工程では、まず、袋体40内の圧力を0.01MPaとして押し圧力を0.09MPaにし、この状態で炉7内の加熱を開始する。この後、炉7内の温度が85℃になった時に、袋体40内の圧力を0.05MPaとして、押し圧力を0.05MPaとする。この後、炉7内の温度が130℃になった時に袋体40内の圧力を0.07MPaとして、押し圧力を0.03MPaとする。この後、袋体40内の圧力を0.07MPaに維持し、炉7内の温度が140℃になった時点から所定時間が経過した時に袋体40内の圧力を大気圧である0.1MPaとして、押し圧力0Paにする。この後、袋体40内の圧力を大気圧に維持した状態で、炉7による対象物400の加熱を停止することで、冷却工程を実行する。この冷却工程により、中間膜30は常温近くまで冷却されて硬化し、ガラスパネルユニット10と透明板20とが中間膜30を介して一体化した積層体100が形成される。
【0083】
なお、
図7に示す例では、貼り合わせ工程における袋体40内の圧力を炉7内の温度上昇に伴って段階的に高くしているが、連続的に高くしてもよい。すなわち、貼り合わせ工程の加熱初期よりも後における袋体40内の圧力は、加熱初期よりも後の全ての期間において下がらないのであれば、段階的に上昇してもよいし、連続的に上昇してもよい。また、貼り合わせ工程における炉7内の温度及び袋体40内の圧力は限定されず、中間膜30の材質、形状又は大きさ等に応じて適宜変更可能である。
【0084】
1-2-3.積層体の用途
第1実施形態の積層体100の用途は、特に限定されないが、強度及び断熱性が要求される分野に適用することができる。例えば、自動車、鉄道車両、船舶、宇宙船、宇宙ステーション等の移動体に適用することができる。例えば積層体100を自動車に適用する場合には、フロントウインドウ、サイドウインドウ、リアウインドウ等に適用することができる。
【0085】
2.第2実施形態
2-1.第2実施形態の概要
次に第2実施形態の積層体100の製造方法について説明する。本実施形態では、
図8に示す積層体100を製造する。積層体100は、ガラスパネルユニット10と、第1透明板21と、第1中間膜31と、第2透明板22と、第2中間膜32とを備えている。第1透明板21は、ガラスパネルユニット10の第1ガラスパネル1の外面11に設けられている。第1中間膜31は、第1ガラスパネル1と第1透明板21との間に位置している。第2透明板22は、第2ガラスパネル2の外面12に設けられている。第2中間膜32は、第2ガラスパネル2と第2透明板22との間に位置している。
【0086】
本実施形態の積層体100では、第1ガラスパネル1の外面11と、第2ガラスパネル2の外面12との両方に、それぞれ第1透明板21及び第2透明板22が設けられている。このため、ガラスパネルユニット10単体よりも、強度、断熱性及び遮音性を向上させることができる。また、第1ガラスパネル1の外面11又は第2ガラスパネル2の外面12のどちらか一方のみに透明板20を設けている積層体100よりも、強度、断熱性及び遮音性を向上させることができる。
【0087】
本実施形態の積層体100を製造する場合には、ガラスパネルユニット10の第1ガラスパネル1の外面11と第1透明板21とを、第1中間膜31を介して貼り合わせる(
図9A参照)。また、ガラスパネルユニット10の第2ガラスパネル2の外面12と第2透明板22とを、第2中間膜32を介して貼り合わせる(
図9A参照)。これにより、強度、断熱性及び遮音性に優れた積層体100が得られる。
【0088】
2-2.第2実施形態の詳細
以下、第2実施形態に係る積層体100と、その製造方法とについて詳細に説明する。
【0089】
2-2-1.積層体
本実施形態の積層体100では、透明板20が上述の第1透明板21及び第2透明板22を含み、中間膜30が上述の第1中間膜31及び第2中間膜32を含む。これらの構成について詳しく説明する。なお、第2実施形態の積層体100における第1実施形態に係る積層体100と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0090】
(1)ガラスパネルユニット
本実施形態のガラスパネルユニット10は、第1実施形態に係るガラスパネルユニット10と同一の構成を備える。このためガラスパネルユニット10は、第1ガラスパネル1と、第2ガラスパネル2と、第1ガラスパネル1と第2ガラスパネル2との間に位置する減圧空間3とを備える。また、減圧空間3では、第1ガラスパネル1と第2ガラスパネル2との間に複数のピラー4が設けられている。
【0091】
(2)透明板
本実施形態の透明板20は、上述の通り、第1透明板21及び第2透明板22を含む。
【0092】
(2.1)第1透明板
第1透明板21は、第1実施形態に係る透明板20と同様の透光性を有する板材である。第1透明板21の材質も、第1実施形態に係る透明板20と同じであってよい。
【0093】
本実施形態の積層体100では、第1透明板21は、ガラスパネルユニット10の第1ガラスパネル1の外面11に設けられている。第1透明板21は、ガラスパネルユニット10と対向しており、また、第1ガラスパネル1と対向している。
【0094】
(2.2)第2透明板
第2透明板22は、第1実施形態に係る透明板20と同様の透光性を有する板材である。第2透明板22の材質も、第1実施形態に係る透明板20と同じであってもよい。なお、本実施形態では、第1透明板21の材質と、第2透明板22の材質とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0095】
例えば、第1透明板21及び第2透明板22の両方がポリカーボネート製であってもよい。例えば、第1透明板21及び第2透明板22の両方がガラス製であってもよい。例えば、第1透明板21及び第2透明板22のうち、一方がポリカーボネート製で、かつ、他方がガラス製であってもよい。
【0096】
第1透明板21及び第2透明板22の少なくとも一方が、ガラス板を含むことが好ましい。また、第1透明板21及び第2透明板22の少なくとも一方が、ポリカーボネート板を含むことが好ましい。
【0097】
本実施形態の積層体100では、第2透明板22は、ガラスパネルユニット10の第2ガラスパネル2の外面12に設けられている。第2透明板22は、ガラスパネルユニット10と対向しており、また、第2ガラスパネル2と対向している。
【0098】
(3)中間膜
本実施形態の中間膜30は、上述の通り、第1中間膜31及び第2中間膜32を含む。
【0099】
(3.1)第1中間膜
第1中間膜31は、第1実施形態に係る中間膜30と同様の構成を有し得る。本実施形態の積層体100では、第1中間膜31は、ガラスパネルユニット10の第1ガラスパネル1の外面11と、第1透明板21との間に位置している。このため、第1中間膜31によって、ガラスパネルユニット10と第1透明板21とを接着することができ、詳細には、第1ガラスパネル1と第1透明板21とを接着することができる。
【0100】
(3.2)第2中間膜
第2中間膜32は、第1実施形態に係る中間膜30と同様の構成を有し得る。本実施形態の積層体100では、第2中間膜32は、ガラスパネルユニット10の第2ガラスパネル2の外面12と、第2透明板22との間に位置している。このため、第2中間膜32によって、ガラスパネルユニット10と第2透明板22とを接着することができ、詳細には、第2ガラスパネル2と第2透明板22とを接着することができる。
【0101】
(3.3)第1中間膜及び第2中間膜の材質
上述の通り、第1中間膜31は、第1実施形態に係る中間膜30と同様の構成を有し得ることから、第1中間膜31の材質も第1実施形態に係る中間膜30と同じであってよい。また、第2中間膜32は、第1実施形態に係る中間膜30と同様の構成を有し得ることから、第2中間膜32の材質も第1実施形態に係る中間膜30と同じであってよい。
【0102】
本実施形態の積層体100では、第1中間膜31と第2中間膜32とが異なる材料製であることが好ましい。この場合、積層体100の性能及び製造しやすさを両立させやすい。
【0103】
例えば、第1中間膜31及び第2中間膜32のうち少なくとも一方がPVB樹脂製であることが好ましい。この場合、少なくとも積層体100の強度を確保することができる。また、PVB樹脂に遮音性や遮熱性、UVカット特性を備えたグレードを使用することで、積層体100の強度を確保するとともに機能性を向上させることができる。また、積層体100の貫通防止性を向上させることができる。
【0104】
また、例えば、第1中間膜31及び第2中間膜32のうち少なくとも一方がEVA樹脂製であることが好ましい。この場合、積層体100の飛散防止性を向上させることができる。また、EVA樹脂製は、比較的低温で接着が可能であるため、積層体100の製造を容易とすることができる。また、積層体100のハンドリング性を向上させることができる。
【0105】
また、例えば、第1中間膜31及び第2中間膜32のうち少なくとも一方がアイオノマー樹脂製であることが好ましい。この場合、積層体100の飛散防止性と貫通防止性と強度を向上させることができる。また、アイオノマー樹脂は、PVB樹脂と同じ温度で接着が可能であるため、積層体100の製造を容易とすることができる。また、積層体100全体の強度を向上させることができる。
【0106】
また、例えば、第1中間膜31及び第2中間膜32のうち少なくとも一方がシクロオレフィン系樹脂製であることが好ましい。この場合、積層体100の透明性、防水性及び接着性を向上させることができる。また、シクロオレフィン系樹脂は、PVBと同じ温度で接着が可能であるため、積層体100の製造を容易とすることができる。
【0107】
また、本実施形態では、第1中間膜31と第2中間膜32とが異なる材料製であることが好ましい。この場合、第1中間膜31及び第2中間膜32の各々は、例えば、PVB樹脂、EVA樹脂、アイオノマー樹脂、シクロオレフィン系樹脂及びポリオリフィン系樹脂のうちから選択された樹脂から形成される。このように、第1中間膜31と第2中間膜32とが異なる材料製であることで、第1中間膜31の材質による効果と、第2中間膜32の材質による効果との両方を積層体100に付与することができる。
【0108】
例えば、第1中間膜31がPVB樹脂製であると共に、第2中間膜32がEVA樹脂製であることが好ましい。また第1中間膜31がEVA製であると共に、第2中間膜32がPVB樹脂製であることも好ましい。これらの場合、積層体100の強度を確保しながら積層体100の製造を容易にすることができる。すなわち、積層体100の強度と製造しやすさとを両立させることができる。また、これらの積層体100によれば、貫通防止性と飛散防止性とを両立させることができる。例えば、第1中間膜31と第2中間膜32のうち、貫通防止性が要求される側をPVB樹脂製とし、飛散防止性を要求される側をEVA樹脂製とすることが好ましい。また、PVB樹脂に遮音性を備えた遮音PVB樹脂を使うことにより、積層体100の貫通防止性、飛散防止性に合わせて、遮音性を向上させることができる。遮音PVB樹脂は、騒音が気になるビルの窓や鉄道車両、自動車等モビリティの窓用として適している。
【0109】
また、本実施形態では、第1中間膜31と第2中間膜32とが同じ材料製であってもよい。この場合、第1中間膜31及び第2中間膜32の材質による効果を特に発揮させることができる。
【0110】
例えば、第1中間膜31及び第2中間膜32の両方がPVB樹脂製であることが好ましい。この場合、積層体100の強度を特に向上させることができる。また、積層体100の貫通防止性を特に向上させることができる。また、例えば、第1中間膜31及び第2中間膜32の両方がEVA樹脂製であることが好ましい。この場合、積層体100の製造が特に容易とすることができる。また、積層体100の飛散防止性を特に向上させることができる。
【0111】
2-2-2.積層体の製造方法
本実施形態の積層体100は、例えば、以下の工程によって製造することができる。なお、積層体100を製造する方法は、以下の方法に限定されない。
【0112】
まず、
図9Aに示すように、ガラスパネルユニット10、透明板20及び中間膜30を用意する。本実施形態の積層体100では、透明板20が第1透明板21及び第2透明板22を含み、中間膜30が第1中間膜31及び第2中間膜32を含む。このため、透明板20として、第1透明板21及び第2透明板22を用意し、中間膜30として、第1中間膜31及び第2中間膜32を用意する。
【0113】
次に、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30を介して貼り合わせる(
図9A参照)。本実施形態では、ガラスパネルユニット10の第1ガラスパネル1の外面11と、第1透明板21とを、第1中間膜31を介して貼り合わせる。また、ガラスパネルユニット10の第2ガラスパネル2の外面12と、第2透明板22とを、第2中間膜32を介して貼り合わせる。
【0114】
ガラスパネルユニット10と第1透明板21とを貼り合わせる工程、及びガラスパネルユニット10と第2透明板22とを貼り合わせる工程の両方において、貼り合わせる際の圧力はガラスパネルユニット10が備える複数の樹脂製のピラー4の圧縮強度よりも小さい。この場合、ガラスパネルユニット10に含まれる複数の樹脂製のピラー4が押し潰されることを抑制することができる。
【0115】
ガラスパネルユニット10と第1透明板21との貼り合わせと、ガラスパネルユニット10と第2透明板22との貼り合わせとは、一方ずつ行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0116】
例えば、第1中間膜31と第2中間膜32とが同じ材料製である場合には、ガラスパネルユニット10と第1透明板21との貼り合わせと、ガラスパネルユニット10と第2透明板22との貼り合わせとを、同時に行うことが好ましい。この場合、積層体100を効率良く製造することができる。例えば、第1中間膜31及び第2中間膜32が、いずれもPVB樹脂製であることが好ましい。この場合、相対湿度10%以下の状態で、ガラスパネルユニット10と第1透明板21と第2透明板22とを貼り合わせることが好ましい。この場合、加熱のみでガラスパネルユニット10と第1透明板21とを接着することができ、かつ、ガラスパネルユニット10と第2透明板22とを接着することができる。さらに、PVB樹脂製の第1中間膜31及び第2中間膜32に濁りや気泡が生じることを抑制することができる。また、例えば、第1中間膜31及び第2中間膜32が、いずれもEVA樹脂製であることが好ましい。
【0117】
本実施形態では、ガラスパネルユニット10と、第1透明板21と、第2透明板22とを、真空バッグ方式で貼り合わせる。例えば、
図9Bに示すように、袋体40内に、積層物41を配置する。この積層物41は、ガラスパネルユニット10、第1中間膜31、第1透明板21、第2中間膜32及び第2透明板22を備える。積層物41は、ガラスパネルユニット10と第1透明板21との間に第1中間膜31を挟み、かつ、ガラスパネルユニット10と第2透明板22との間に第2中間膜32を挟むことで、形成される。そして、この袋体40を排気しながら、ガラスパネルユニット10と第1透明板21とを第1中間膜31を介して貼り合わせると同時に、ガラスパネルユニット10と第2透明板22とを第2中間膜32を介して貼り合わせる。この場合も、第1実施形態と同様に、中間膜30の温度を中間膜30が溶融する所定温度まで上昇させつつ、袋体40内の圧力を加熱初期に対して高くする。
【0118】
このようにガラスパネルユニット10と、第1透明板21と、第2透明板22とを、真空バッグ方式で貼り合わせることで、第1中間膜31及び第2中間膜32に均一に圧力をかけやすく、かつ、袋体40内の湿度を低下させることができる。これにより、第1中間膜31及び第2中間膜32に濁りや気泡が生じることを抑制することができる。なお、第1中間膜31及び第2中間膜32を袋体40内に入れる前にこれを乾燥させてもよく、第1中間膜31及び第2中間膜32を袋体40内に入れてからこれらを乾燥させてもよい。
【0119】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、袋体40を炉7で加熱することができる。特に本実施形態では、袋体40を炉7内で平置きすると、台73とガラスパネルユニット10との間に第1中間膜31又は第2中間膜32が介在される。ガラスパネルユニット10は優れた断熱性を有することから、第1中間膜31及び第2中間膜32のうち台側に位置する方には熱が伝わりにくい。このため本実施形態では、第1中間膜31及び第2中間膜32の両方に均一に熱を伝えることが好ましい。
【0120】
例えば、積層物41が入れられた袋体40と、この袋体40を置く台との間に、空間を設けることが好ましい。この場合、袋体40の上方からだけでなく、下方からも加熱することができ、袋体40の両面を加熱しやすいため、第1中間膜31及び第2中間膜32を均一に加熱しやすい。例えば、
図5に示す例と同様に、台73を袋体40よりも熱伝導性の良い材料から形成し、この台73に通気空間730を形成する、又は台73(熱伝導が良い材料)において熱風と接触する部分にヒートシンクのような熱を集める形状の凸部を形成することが好ましい。この場合も、袋体40の両面を加熱しやすいため、第1中間膜31及び第2中間膜32を均一に加熱しやすい。また、例えば、積層物41が入れられた袋体40を、直立させた状態で、加熱することが好ましい。この場合も、袋体40の両面を加熱しやすいため、第1中間膜31及び第2中間膜32を均一に加熱しやすい。
【0121】
もちろん、第1中間膜31及び第2中間膜32が、いずれもEVA樹脂製、アイオノマー樹脂製、シクロオレフィン系樹脂製又はポリオリフィン系樹脂である場合にも、ガラスパネルユニット10と、第1透明板21と、第2透明板22とを、第1実施形態と同様の真空バッグ方式で接着してもよい。
【0122】
例えば、第1中間膜31と第2中間膜32とが異なる材料製である場合には、ガラスパネルユニット10と第1透明板21との貼り合わせと、ガラスパネルユニット10と第2透明板22との貼り合わせとを、片方ずつ行うことが好ましい。第1中間膜31と第2中間膜32とが異なる材料製であると、第1中間膜31を用いた接着に必要な加熱温度と、第2中間膜32を用いた接着に必要な加熱温度とに差が生じることがある。このため、第1中間膜31と第2中間膜32とが異なる材料製である場合に、第1中間膜31と第2中間膜32とを同時に加熱すると、接着が不十分となったり、中間膜30に変形等が生じたりすることがある。その点、ガラスパネルユニット10と第1透明板21との貼り合わせと、ガラスパネルユニット10と第2透明板22との貼り合わせとを、片方ずつ行うことにより、接着が不十分となったり、中間膜30に変形等が生じたりすることを抑制することができる。
【0123】
具体的には、第1中間膜31及び第2中間膜32のうち、接着に必要な加熱温度が高い方から接着することが好ましい。例えば、第1中間膜31の加熱温度の方が、第2中間膜32の加熱温度よりも高い場合、真空バッグ方式によりガラスパネルユニット10と第1透明板21とを第1中間膜31を介して貼り合わせた後に、真空バッグ方式によりガラスパネルユニット10と第2透明板22とを第2中間膜32を介して貼り合わせることが好ましい。また、例えば、第2中間膜32の加熱温度の方が、第1中間膜31の加熱温度よりも高い場合、真空バッグ方式によりガラスパネルユニット10と第2透明板22とを第2中間膜32を介して貼り合わせた後に、真空バッグ方式によりガラスパネルユニット10と第1透明板21とを第1中間膜31を介して貼り合わせることが好ましい。
【0124】
例えば第1中間膜31がPVB樹脂製であり、第2中間膜32がEVA樹脂製である場合、PVB樹脂製の第1中間膜31を用いた接着に必要な加熱温度の方が、EVA樹脂製の第2中間膜32を用いた接着に必要な加熱温度よりも高い場合がある。その時は、真空バッグ方式によりガラスパネルユニット10と第1透明板21とをPVB樹脂製の第1中間膜31を介して貼り合わせた後に、真空バッグ方式によりガラスパネルユニット10と第2透明板22とをEVA樹脂製の第2中間膜32を介して貼り合わせることが好ましい。
【0125】
3.態様
以上説明した、第1実施形態及び第2実施形態から明らかなように、第1の態様の積層体(100)の製造方法は、以下に示す構成を有する。積層体(100)は、ガラスパネルユニット(10)と、中間膜(30)と、透明板(20)とを備える。透明板(20)は、ガラスパネルユニット(10)に中間膜(30)を介して貼り合わせられる。ガラスパネルユニット(10)は、第1ガラスパネル(1)と、第2ガラスパネル(2)と、減圧空間(3)とを有する。減圧空間(3)は、第1ガラスパネル(1)と第2ガラスパネル(2)との間に位置する。積層体(100)の製造方法は、工程(貼り合わせ工程)を含む。前記工程では、ガラスパネルユニット(10)、中間膜(30)及び透明板(20)を袋体(40)内に配置した状態で袋体(40)内を排気し、これにより収縮した袋体(40)によりガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを中間膜(30)を介して貼り合わせる。前記工程において、中間膜(30)の温度を中間膜(30)が軟化する所定温度まで上昇させつつ、袋体(40)内の圧力を加熱初期に対して高くする。
【0126】
この態様によれば、ガラスパネルユニット(10)に、中間膜(30)を介して透明板(20)が貼り合わせられた、断熱性及び強度の優れた積層体(100)を製造することができる。また、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)との貼り合わせは、内部を排気することで収縮する袋体(40)によって行われる。このため、中間膜(30)に均一に圧力を掛けることができ、中間膜(30)に濁りや気泡が生じることを抑制することができる。また、中間膜(30)の温度を中間膜(30)が軟化する所定温度まで上昇させつつ、袋体(40)内の圧力を高くすることで、中間膜(30)がガラスパネルユニット(10)と透明板(20)との間からはみ出すことを抑制しつつ、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを適切な圧力で貼り合わせることができる。
【0127】
第2の態様の積層体(100)の製造方法は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様では、前記工程において、袋体(40)から、ガラスパネルユニット(10)、中間膜(30)及び透明板(20)を有する積層物(41)に対して加えられる押し圧力を、0.02気圧以上3気圧以下の範囲内で変更する。
【0128】
この態様によれば、中間膜(30)がガラスパネルユニット(10)と透明板(20)との間からはみ出すことを一層抑制し、かつ、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とをより適切な圧力で貼り合わせることができる。
【0129】
第3の態様の積層体(100)の製造方法は、第1又は第2の態様との組み合わせにより実現され得る。第3の態様では、前記工程において、中間膜(30)の温度が前記所定温度であるときに、袋体(40)内の圧力を大気圧にし、この後、中間膜(30)の温度を低下させる。
【0130】
この態様によれば、中間膜(30)の温度が前記所定温度であるときに、袋体(40)内の圧力を大気圧にすることで、中間膜(30)がガラスパネルユニット(10)と透明板(20)との間からはみ出すことを一層抑制することができる。
【0131】
第4の態様の積層体(100)の製造方法は、第1~第3のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現され得る。第4の態様では、前記工程において、中間膜(30)の温度を中間膜(30)が軟化する所定温度まで上昇させつつ、袋体(40)内の圧力を段階的に高くする。
【0132】
この態様によれば、貼り合わせ工程において、袋体(40)内の圧力を段階的に高くすることで、間膜(30)がガラスパネルユニット(10)と透明板(20)との間からはみ出すことを抑制しつつ、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを適切な圧力で貼り合わせることができる。
【0133】
第5の態様の積層体(100)の製造方法は、第1~第4のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現され得る。第5の態様は、以下に示す構成を有する。中間膜(30)はPVB樹脂製である。前記工程において、中間膜(30)の含水率を0.1重量%以上0.5重量%以下にした状態で、袋体(40)によりガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを中間膜(30)を介して貼り合わせる。
【0134】
この態様によれば、中間膜(30)がPVB樹脂製であることで、中間膜(30)の貫通防止性が低下したり、中間膜(30)に濁りや気泡が生じたりすることを抑制することができる。また、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを中間膜(30)を介して貼り合わせる際の中間膜(30)の含水率を、0.1重量%以上0.5重量%以下にすることで、第1ガラスパネル(1)及び第2ガラスパネル(2)の破損及び変形等を抑制しながら、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを中間膜(30)で貼り合わせることができる。
【符号の説明】
【0135】
1 第1ガラスパネル
2 第2ガラスパネル
3 減圧空間
10 ガラスパネルユニット
20 透明板
30 中間膜
40 袋体
100 積層体