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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】包装材及び包装材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240517BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240517BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240517BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B27/30 102
B65D65/40 D
B32B27/32 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023088032
(22)【出願日】2023-05-29
【審査請求日】2023-12-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小藤 通久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄也
(72)【発明者】
【氏名】前田 諭志
(72)【発明者】
【氏名】武本 昇
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-065851(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110780(WO,A1)
【文献】特許第7264304(JP,B1)
【文献】特開2023-071162(JP,A)
【文献】特開2015-137138(JP,A)
【文献】特許第7136396(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0174032(US,A1)
【文献】国際公開第2021/065890(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/065888(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材1、バリア層、接着剤層及び基材2を有する包装材であって、
前記バリア層が、親水性樹脂を含み、
前記接着剤層が、ポリオールとイソシアネート硬化剤(I)との硬化物を含む層であり、前記ポリオールのパーマコール値が、25~60であり、
前記接着剤層の単位面積質量が、1.0~4.5g/mであり、
前記包装材のオレフィン含有率が、包装材全質量中80質量%以上である、包装材。
【請求項2】
親水性樹脂が、ポリビニルアルコール系樹脂である、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
バリア層が、更に、無機層状フィラーを含む、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項4】
バリア層の単位面積質量が、0.7g/m以上である、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項5】
ポリオールが、ポリエステル構造を有する、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項6】
バリア層の単位面積質量と接着剤層の単位面積質量との比率が、70:30~15:85である、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項7】
更に、アンカーコート層を含み、前記アンカーコート層が、ウレタン樹脂を含む、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項8】
ウレタン樹脂のウレア結合濃度が、0.1~1.3mmol/gである、請求項7に記載の包装材。
【請求項9】
基材1及び基材2が、ポリオレフィン樹脂を含む、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項10】
基材1、バリア層、接着剤層及び基材2を有する包装材の製造方法であって、
バリアコート剤を塗布してバリア層を形成する工程と、
反応性接着剤を塗布して接着剤層を形成する工程と、を含み、
前記バリア層が、親水性樹脂を含み、
前記接着剤層が、ポリオール及びイソシアネート硬化剤(I)を含む反応性接着剤からなる層であり、前記ポリオールのパーマコール値が、25~60であり、
前記接着剤層の単位面積質量が、1.0~4.5g/mであり、
前記包装材のオレフィン含有率が、包装材全質量中80質量%以上である、包装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材及び包装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品包装材料等の酸素バリア性が要求される包装材には、アルミニウム箔又はアルミニウム蒸着を施したもの包装材が多く用いられてきた。しかしながら、近年、環境問題等への対応で包装材料には薄膜化、ラミネートの簡素化、リサイクル性等が社会的に要求されているため、脱アルミニウムの動きが強まっている。
【0003】
また、アルミニウムを用いずに包装材にバリア性を付与するため、プラスチックフィルム上にPVDC(ポリ塩化ビニリデン)層が形成されたフィルムは、低湿度下だけでなく高湿度下においても高い酸素バリア性を示す上、水蒸気に対するバリア性も比較的高い。しかしながら、このPVDCは、廃棄物処理の際の焼却時に、脱離した塩素に起因する塩素ガス及びダイオキシンが発生することにより、環境及び人体に多大な悪影響を与える恐れがあることから、他の材料への移行が望まれている。
【0004】
また、プラスチック包装材をリサイクルする場合に、当該プラスチック包装材を構成する基材を、全てポリプロピレン等の同一種の基材で構成する「モノマテリアル」という考え方も示されている。これは包装材をリサイクルしやすくする考え方ではあるが、単一の基材のみでは酸素バリア性の課題があり、従来のアルミニウムを用いればリサイクルの阻害になり、PVDC等のコーティング剤を用いれば高温で脱離した塩素ガスによりリサイクル設備の損傷につながる恐れがあった。
【0005】
塩素を有しないガスバリア性の材料として、ガスバリア性を付与した接着剤層、又はポリビニルアルコール等を熱可塑性樹脂フィルムにコーティングしたコートフィルムを用いる積層体が知られている。
ガスバリア性を付与した接着剤層を用いる積層体の例として、PET/エステル系接着剤層/CPPの構成を有し、前記エステル系接着剤層形成に使用されるガスバリア性硬化物用樹脂組成物のパーマコール値が44~60である発明が開示されている(特許文献1)。しかし、接着剤層のみで積層体に十分なバリア性を付与するためには、当該接着剤層の単位面積質量を多くする必要があるため、残留溶剤の問題があった。
【0006】
コートフィルムを用いる積層体の例として、OPP/ウレタン系アンカーコート層/ビニルアルコール系のバリア層/接着剤層/CPPの構成を有する積層フィルムが開示されている(特許文献2、3)。しかし、当該積層フィルムにおいても、接着剤層の単位面積質量が多く、残留溶剤の問題があった。
【0007】
更に、上記特許文献1~3に記載された積層体を包装材として使用した場合、折り曲げ後の酸素バリア性等において課題を有すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-129780号公報
【文献】特開2007-136984号公報
【文献】特開2001-129915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ラミネート強度及び折り曲げ後の酸素バリア性に優れ、残留溶剤の少ない包装材を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明者は上記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下の包装材を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0011】
すなわち本発明は、以下[1]~[10]に関する。
【0012】
[1]基材1、バリア層、接着剤層及び基材2を有する包装材であって、
前記バリア層が、親水性樹脂を含み、
前記接着剤層が、ポリオールとイソシアネート硬化剤(I)との硬化物を含む層であり、前記ポリオールのパーマコール値が、25~60であり、
前記接着剤層の単位面積質量が、1.0~4.5g/mであり、
前記包装材のオレフィン含有率が、包装材全質量中80質量%以上である、包装材。
【0013】
[2]親水性樹脂が、ポリビニルアルコール系樹脂である、[1]に記載の包装材。
【0014】
[3]バリア層が、更に、無機層状フィラーを含む、[1]又は[2]に記載の包装材。
【0015】
[4]バリア層の単位面積質量が、0.7g/m以上である、[1]~[3]いずれかに記載の包装材。
【0016】
[5]ポリオールが、ポリエステル構造を有する、[1]~[4]いずれかに記載の包装材。
【0017】
[6]バリア層の単位面積質量と接着剤層の単位面積質量との比率が、70:30~15:85である、[1]~[5]いずれかに記載の包装材。
【0018】
[7]更に、アンカーコート層を含み、前記アンカーコート層が、ウレタン樹脂を含む、[1]~[6]いずれかに記載の包装材。
【0019】
[8]ウレタン樹脂のウレア結合濃度が、0.1~1.3mmol/gである、[7]に記載の包装材。
【0020】
[9]基材1及び基材2が、ポリオレフィン樹脂を含む、[1]~[8]いずれかに記載の包装材。
【0021】
[10]基材1、バリア層、接着剤層及び基材2を順次有する包装材の製造方法であって、
バリアコート剤を塗布してバリア層を形成する工程と、
反応性接着剤を塗布して接着剤層を形成する工程と、を含み、
前記バリア層が、親水性樹脂を含み、
前記接着剤層が、ポリオール及びイソシアネート硬化剤(I)を含む反応性接着剤からなる層であり、前記ポリオールのパーマコール値が、25~60であり、
前記接着剤層の単位面積質量が、1.0~4.5g/mであり、
前記包装材のオレフィン含有率が、包装材全質量中80質量%以上である、包装材の製造方法。
【0022】
本発明により、ラミネート強度及び折り曲げ後の酸素バリア性に優れ、残留溶剤の少ない包装材を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、記載する実施形態又は要件の説明は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0024】
[包装材]
包装材は、基材1、バリア層、接着剤層及び基材2を有する包装材であって、前記バリア層が、親水性樹脂を含み、前記接着剤層がポリオールとイソシアネート硬化剤(I)との硬化物を含む層であり、前記ポリオール由来構造のパーマコール値が、25~60であり、前記接着剤層の単位面積質量が、1.0~4.5g/mであり、前記包装材のオレフィン含有率が、包装材全質量中80質量%以上である。
本発明の包装材は、軟包装パッケージ、包装袋等を構成するために好適に使用することができる。本発明の包装材は、単独で用いてよく、他の材料と組み合わせて用いることもできる。包装材は、包装容器を構成するものであってもよい。
包装材のオレフィン含有率は、包装材全質量中80質量%以上であることが好ましく、90~99質量%であることがより好ましい。包装材のオレフィン含有率が上記範囲である場合、残留溶剤が低減できる。
【0025】
接着剤層を形成するためのドライラミネート法等において、接着剤は有機溶剤に溶解した状態で基材等に塗工されるが、塗工条件や積層構成によっては、塗工時に有機溶剤が基材等へ浸透し、残留溶剤が多くなってしまう懸念がある。
本発明の包装材は、特定構成のバリア層を有するとともに、接着剤層が特定のパーマコール値を有するポリオール由来構造を有することにより、バリア性が向上するばかりか、前記バリア層、前記接着剤層、及び包装材のオレフィン含有率の一体的効果により、残留溶剤を顕著に低減することができる。一考察によれば、前記効果は、接着剤層由来の有機溶剤の揮発促進、及び当該有機溶剤の基材1への浸透防止によるものと考えられる。これらの効果により、本発明の包装材は、ラミネート強度、残留溶剤、及び折り曲げ後の酸素バリア性に優れる。
【0026】
包装材の構成は、具体的には、以下の構成を例示することができるが、これらに限定されない。基材1、バリア層及び接着剤層を順次有する構成であることが好ましく、中でも、基材1、アンカーコート層、バリア層、接着剤層及び基材2を順次有する構成であることがより好ましい。なお、以下の構成表示においては、「/」は各層の境界を意味する。接着剤層は例えば、従来公知の方法であるドライラミネート等で使用される接着剤で構成されるものが挙げられる。
以下において
(1)基材1/バリア層/接着剤層/基材2
(2)基材1/印刷層/バリア層/接着剤層/基材2
(3)基材1/アンカーコート層/バリア層/接着剤層/基材2
(4)基材1/印刷層/アンカーコート層/バリア層/接着剤層/基材2
(5)基材1/印刷層/アンカーコート層/バリア層/接着剤層/中間基材/接着剤層/基材2
(6)印刷層/基材1/アンカーコート層/バリア層/接着剤層/基材2上記構成例において、基材1、中間基材、及び基材2は同一でも異なってもよく、位置関係により呼称が決定される。
【0027】
基材1、中間基材、及び基材2はそれぞれ、単層でもよく、同一の又は異なるプラスチック基材同士が積層されていてもよく、プラスチック基材とは異なる基材が積層されていてもよい。積層された基材である場合は接着層を含む形態であってもよい。上記「プラスチック基材とは異なる基材」としては、紙基材等が挙げられ、種類を問わない。基材を積層させる方法は特に限定されず、共押出製法、熱融着、接着層を介した圧着等、従来公知の方法が挙げられる。
【0028】
[基材1]
基材1は、特に限定されないが、例えば、紙基材として、中質紙、上質紙、含浸紙、ボール紙、クラフト紙が挙げられ、プラスチック基材として、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン等のポリオレフィン基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セロハンが挙げられ、上記の複合材料からなる基材も使用することができる。加えて、上記基材に、シリカ、アルミナ、アルミニウム等の無機化合物の蒸着や、ポリエチレンやポリビニルアルコール等のコート処理が施されていてもよく、また、コロナ処理が施されていてもよい。
【0029】
中でも、基材1は、ポリオレフィン基材であることが好ましい。ポリオレフィン基材は、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
基材1の厚みは特に限定されず、包装容器への加工性を考慮すると、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上70μm以下である。
【0030】
[基材2]
基材2は、特に限定されないが、一実施形態において、ポリオレフィン樹脂、中でもヒートシール性を有するものを好適に使用できる。これに該当する例として、コロナ処理二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、高密度ポリエチレンフィルム(HDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、溶融塗工で形成されたポリエチレン樹脂膜等が挙げられる。また、基材2は、ヒートシール剤を塗布したものでもよい。
基材2の厚みは、特に限定されないが、包装容器製造時の加工性の観点から、5~150μmであることが好ましく、10~70μmであることがより好ましい。
【0031】
[中間基材]
本発明の包装材は、剛直性を向上させること等を目的に、中間基材を有してもよい。中間基材の具体例としては、基材1及び基材2同様、原料としてポリオレフィン樹脂を主として含むプラスチック基材であることが好ましい。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。また、共押出製法による複合基材であってもよい。更に、中間基材は、基材、及び基材2と同種(同一)の素材であることがより好ましい。同種(同一)の素材とは、ポリプロピレン同士、ポリエチレン同士等の組み合わせが挙げられる。
【0032】
[バリア層]
バリア層は、包装材に酸素バリア性を付与すること、及び他の構成要素との一体的効果による残留溶剤低減を目的として配置され、当該バリア層は、親水性樹脂を含む。バリア層は、後述のバリアコート剤により形成されることが好ましい。
【0033】
バリア層の単位面積質量は、0.7~5g/mであることがこのましく、0.8~3g/mであることがより好ましく、0.9~1.5g/mであることが更に好ましい。バリア層の単位面積質量が0.7g/m以上である場合、残留溶剤が低減でき、更に折り曲げ後の酸素バリア性が良好となる。なお通常、バリア層の単位面積質量を多くする場合、バリア層を形成するための組成物に含まれることのある有機溶剤が増加するため、包装材の残留溶剤量も増加すると予想されるが、本発明の包装材の場合、バリア層が接着剤層からの基材1への有機溶剤の移行を妨げるはたらきをするため、他の構成要素との一体的効果によってより残留溶剤を低減させていると推察される。一方、バリア層の単位面積質量が5g/m以下である場合、ラミネート強度が向上する。
【0034】
<親水性樹脂>
親水性樹脂とは、水と混和する樹脂を指す。親水性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(エチレンビニルアルコール共重合樹脂である場合を含む)、水性アクリル樹脂、水性スチレン-アクリル樹脂、水性スチレン-マレイン酸樹脂、水性ウレタン樹脂、水性ポリ乳酸樹脂、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びこれらの変性樹脂が挙げられる。これらの親水性樹脂は、単独又は二種以上で用いることができる。上記の中でも、親水性樹脂はポリビニルアルコール系樹脂を含むことが好ましい。
【0035】
親水性樹脂の含有率は、バリア層全質量中、30~95質量%であることが好ましく、55~90質量%であることがなお好ましく、70~80質量%であることが更に好ましい。折り曲げ後の酸素バリア性が向上するためである。
【0036】
<ポリビニルアルコール系樹脂>
ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルアルコール由来の構造単位を有する樹脂であればよく、さらにエチレン由来の構造単位を含んでいる場合もまた好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂が挙げられ、ポリビニルアルコール樹脂及び/又はエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂が好ましく、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂がより好ましい。
【0037】
エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂におけるエチレン由来の構造単位の含有率は、1~40モル%であることが好ましく、3~20モル%であることがより好ましく、5~15モル%であることが更に好ましい。エチレン由来の構造単位の含有率が上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性が良好となる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、100~3,000であることが好ましく、500~2,400であることがより好ましい。上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性が良好となる。
【0038】
ポリビニルアルコール系樹脂は、変性された官能基を有することができ、官能基としてはカルボニル基、ケイ素基等が挙げられ、これらに限定されない。また、ポリビニルアルコール系樹脂としては架橋剤で架橋されたものを使用することができ、使用される架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、シランカップリング系架橋剤等の公知の架橋剤が挙げられ、オキサゾリン系架橋剤、シランカップリング系架橋剤が好ましい。
【0039】
ポリビニルアルコール系樹脂のけん化度は、以下(式1)で表され、80モル%以上であることが好ましく、90モル%であることがより好ましく、95モル%であることが好ましい。上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性が良好となる。
(式1)
けん化度:(水酸基数)/{(水酸基数)+(酢酸基数)}×100 [モル%]
【0040】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、クラレポバールRシリーズ(クラレ社製、ポリビニルアルコール樹脂)、クラレエバールL104B、F104B(クラレ社製、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂)等を使用することができる。
【0041】
<無機層状フィラー>
バリア層は、さらに無機層状フィラーを含むことが好ましい。ここでいう無機層状フィラーとは、層状構造を形成する無機フィラーであり、特に溶媒中で膨潤、及び/又は劈開するものが好ましい。上記親水性樹脂と無機層状フィラーとの質量比率は9:1~4:6であることが好ましく、8:2~5:5であることがより好ましく、8:2~6:4であることが更に好ましい。質量比率が上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性が良好となる。
【0042】
無機層状フィラーのレーザー光散乱法で測定した平均粒子径は、0.1~30μmであることが好ましく、0.5~15μmであることがなお好ましく、1~10μmであることが更に好ましく、1.5~5μmであることが特に好ましい。上記平均粒子径は、本発明ではMicrotracMRB社製 MT3300EX IIを用いて測定した。
【0043】
無機層状フィラーのアスペクト比は、10~2000であることが好ましく、50~1000であることがなお好ましく、200~700であることが更に好ましい。アスペクト比は走査型電子顕微鏡(SEM)による測定値をいい、本発明では日本電子社製 JSM-7800Fを用いて測定した。
【0044】
無機層状フィラーの比表面積は、0.5~250m/gであることが好ましく、1~100m/gであることがより好ましく、3~50m/gであることが更に好ましく、5~30m/gであることが特に好ましい。比表面積は、BET法による窒素ガスの吸着量から算出した値をいい、本発明では島津製作所製 TriStarIIを用いて測定した。
【0045】
無機層状フィラーの好ましい例としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、バーミキュライト、マイカ、パラゴナイト、レピドライト、マーガライト、クリントナイト、アナンダイト、緑泥石、ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、テトラシリリックマイカ、タルク、パイロフィライト、ナクライト、カオリナイト、ハロイサイト、クリソタイル、ナトリウムテニオライト、ザンソフィライト、アンチゴライト、ディッカイト、ハイドロタルサイト等があり、カオリン、モンモリロナイト、及びマイカからなる群より選ばれる一種以上であることが好ましく、モンモリロナイトであることがより好ましい。モンモリロナイトは、その層状構造に起因した高い吸水性、膨潤後の高い粘性を持つため、層状フィラーの層間に樹脂が入り込みやすく、包装材の折り曲げ後の酸素バリア性向上に寄与する。
【0046】
これらの無機層状フィラーは、天然に産するものであっても、人工的に合成又は変性されたものであってもよく、またそれらをオニウム塩等の有機物で処理したものであってもよい。
【0047】
無機層状フィラーの含有率は、バリア層100質量%中、1~40質量%であることが好ましく、10~35質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることが更に好ましい。
【0048】
<モンモリロナイト>
上記モンモリロナイトは、下記(式2)で示される。また、モンモリロナイトを主成分とし、更に石英や長石等の鉱物を含むベントナイトも好ましく使用することができる。
(式2)
Si(Al2-aMg)O10(OH)・nH
(式2中、Mはナトリウムのカチオンを表し、aは0.25~0.60である。また、層間のイオン交換性カチオンと結合している水分子の数は、カチオン種や湿度等の条件に応じて変わりうるので、式中ではnHOで表す。)
【0049】
またモンモリロナイトには下記(式3)~(式5)で表される、マグネシアンモンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、鉄マグネシアンモンモリロナイトの同型イオン置換体も存在し、これらを用いてもよい。
(式3)
Si(Al1.67-aMg0.5+a)O10(OH)・nH
(式4)
Si(Fe2-a3+Mg)O10(OH)・nH
(式5)
Si(Fe1.67-a3+Mg0.5+a)O10(OH)・nH
(式3~5中、Mはナトリウムのカチオンを表し、aは0.25~0.60である。)
【0050】
通常、モンモリロナイトはその層間にカチオンを有するが、その含有比率は産地によって異なる。上記イオンとして、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン等の無機カチオンや、第4級アンモニウムイオン等の有機カチオンが挙げられ、水への親和性の観点から、無機カチオンであることが好ましく、ナトリウムイオン及び/又はカルシウムイオンであることがより好ましい。また、水処理により精製したモンモリロナイトを用いることが好ましい。
【0051】
モンモリロナイトの平均粒子径は、0.1~10μmであることが好ましく、1~5μmであることがより好ましく、1.5~3μmであることが更に好ましい。
モンモリロナイトの粒子アスペクト比は、10~2,000であることが好ましく、100~1,000であることがより好ましく、300~700であることが更に好ましい。
モンモリロナイトの比表面積は、1~250m/gであることが好ましく、1~100m/gであることがより好ましく、3~50m/gであることが更に好ましく、5~30m/gであることが特に好ましい。
【0052】
モンモリロナイトの粒子の平均厚さは、0.05~30nmであることが好ましく、0.1~10nmであることがより好ましく、0.5~3nmであることが更に好ましい。
モンモリロナイトの粒子の平均長径は、0.01~5μmであることが好ましく、0.05~3μmであることがより好ましく、0.1~1μmであることが更に好ましい。
ここで、粒子の平均厚さ及び粒子の平均長径は、原子間力顕微鏡(AFM)による測定値をいい、本発明では日立ハイテク社製 AFM100Plusを用いて測定した。
【0053】
モンモリロナイトとしては、クニピア-F、クニピア-G(クニミネ工業社製)等の市販品を使用することができる。
【0054】
<カオリン>
カオリンは、カオリナイト(Al・2SiO・HO)又はハロイサイトAl・2SiO・2HOが主成分であり、天然品であっても、合成品であってもよい。また、製造方法の違いにより、乾式カオリン、湿式カオリン、焼成カオリン等があるが、いずれかに限定されない。
【0055】
カオリンの平均粒子径は、折り曲げ後の酸素バリア性の観点から、0.1~30μmであることが好ましく、0.2~20μmであることがより好ましく、0.3~10μmであることが更に好ましい。
カオリンのアスペクト比は、10~1,000であることが好ましく、30~500であることがより好ましく、50~200であることが更に好ましい。
カオリンの比表面積は、1~250m/gであることが好ましく、1~100m/gであることがより好ましく、3~50m/gであることが更に好ましく、5~30m/gであることが特に好ましい。
【0056】
カオリンとしては、バリサーフHX(イメリス社製)、NNカオリンクレー、STカオリンクレー(竹原化学工業社製)等の市販品を使用することができる。
【0057】
<マイカ>
マイカは、天然マイカ、合成マイカいずれも使用できる。天然マイカとは、鉱石のマイカ(雲母)を粉砕した鱗片状基材であり、機械粉砕や、か焼による劈開等により粒径やアスペクト比をコントロールできる。合成マイカとは、SiO、MgO、Al、KSiF、NaSiF等の工業原料を加熱し、約1500℃の高温で熔融し、冷却して結晶化させて合成したもの等があり、天然のマイカと比較した場合において、不純物が少なく、大きさ及び厚さが均一なものである。具体的には、フッ素金雲母(KMgAlSiO10F)、カリウム四ケイ素雲母(KMg25AlSiO10F)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg25AlSi10)、Naテニオライト(NaMgLiSiO10F)、LiNaテニオライト(LiMgLiSi10)等が知られている。分散性の観点から、インターカレーションで劈開しやすい合成マイカであることが好ましい。
【0058】
マイカの平均粒子径は、折り曲げ後の酸素バリア性の観点から、30μm以下であることが好ましく、1~25μmであることがより好ましく、5~15μmであることが更に好ましい
マイカのアスペクト比は、30~200であることが好ましく、70~170であることがより好ましく、100~150であることが更に好ましい。
マイカの比表面積は、1~250m/gであることが好ましく、1~100m/gであることがより好ましく、3~50m/gであることが更に好ましく、5~30m/gであることが特に好ましい。
【0059】
マイカとしては、マイカパウダーTMシリーズ、マイカパウダーNCFシリーズ(ヤマグチマイカ社製)、L60M、L100M(セイシン企業社製)等の市販品を使用することができる。
【0060】
<バリア層に含むことが可能な添加剤>
バリア層は、本発明の効果を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤等、公知の添加剤を含むことができる。
【0061】
<バリアコート剤>
バリアコート層を形成するためのバリアコート剤は、親水性樹脂及び水性溶媒を含むことが好ましい。更に、無機層状フィラーの各成分を、単独又は複数の組み合わせでコート剤に加えることができ、更に、必要に応じて添加剤を加えることができる。
バリアコート剤は例えば、攪拌羽根、回転翼等を供えた攪拌機に、親水性樹脂を水性溶媒に溶解又は分散させた樹脂溶液、水性溶媒、及び必要に応じて上記の任意成分を仕込み、混合、攪拌して得ることができる。撹拌速度としては特に制限されることはなく、50~2000rpmで行うことが可能である。
【0062】
<水性溶媒>
バリアコート剤は、水性溶媒を含むことが好ましい。水性溶媒の主成分は水であることが好ましいが、水に加えて、親水性有機溶剤を使用できる。具体的には、印刷条件(スピード、版深、デザイン、乾燥温度等)に応じて、アルコール系有機溶剤、グリコール系有機溶剤等を含有させることができる。
ここで、主成分が水であるとは、水性溶媒中、水の含有量が最も多いことをいう。また、親水性有機溶剤とは、25℃で液体であり、かつ、25℃の水に対する溶解度が1質量%以上であるものを指す。
【0063】
上記アルコール系有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、ノルマルブタノール、ターシャリブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール等が挙げられる。
【0064】
上記グリコール系有機溶剤としては、アセチレンジオール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジブチルグリコール等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
<バリア層の形成>
バリア層は、例えば、アンカーコート層上に、バリアコート剤を用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。印刷方法として、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法等従来公知の方法が挙げられるが、グラビア印刷方式が好適であり、例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることでバリアコート層を得ることができる。
【0066】
[接着剤層]
接着剤層は、ポリオールとイソシアネート硬化剤(I)との硬化物を含む層である。
接着剤層は例えば、パーマコール値が25~60であるポリオール及びイソシアネート硬化剤(I)を混合した二液反応型接着剤をバリア層上に塗工し、乾燥、硬化させることで、形成することができる。接着剤の形態としては、ドライラミネート型接着剤であることが好ましい。
【0067】
接着剤層の単位面積質量は、1.0~4.5g/mであり、1.5~4.3g/mであることが好ましく、2.0~4.0g/mであることがより好ましい。上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性が向上し、残留溶剤が低減する。
【0068】
また、バリア層の単位面積質量と接着剤層の単位面積質量との比率が、70:30~15:85であることが好ましく、55:45~22.5:77.5であることがより好ましく、40:60~20:80であることが更に好ましい。バリア層の単位面積質量と接着剤層の単位面積質量との比率が上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性が向上し、残留溶剤が低減する。
【0069】
<ポリオールのパーマコール値>
【0070】
ポリオールのパーマコール値は、25~60であり、27~50であることが好ましく、30~40であることがより好ましい。当該パーマコール値が25以上であると、折り曲げ後の酸素バリア性が向上する。当該パーマコール値が60以下であると、ラミネート強度が向上し、残留溶剤が低減する。
【0071】
本発明において、ポリオールのパーマコール値とは、ポリオールの末端OH基を除く残基のパーマコール値をいう。パーマコール値は、(式6)に示す通り、ガス透過度と相関があり、パーマコール値が大きいほど、ガス透過度は小さくなる。
(式6)
P=A×exp(-S×Π)
P:ガス透過度
A:気体毎の固有の定数(酸素:5.0×10-9
S:気体毎の固有の定数(酸素:0.112)
Π:パーマコール値
【0072】
ポリオールのパーマコール値は、下記(式7)を用いて算出することができ、(式7)中のポリマーセグメントn固有のパーマコール値Pnは、特開2013-129780号公報の表1に記載の値を使用することができる。
(式7)
【数1】

Pn:ポリマーセグメントn固有のパーマコール値
Mn:ポリマーセグメントnのモル数
【0073】
<ポリオールとイソシアネート硬化剤(I)との硬化物のパーマコール値>
【0074】
ポリオールとイソシアネート硬化剤との硬化物のパーマコール値は、30~70であり、35~60であることが好ましく、40~50であることがより好ましい。当該パーマコール値が30以上であると、折り曲げ後の酸素バリア性が向上する。当該パーマコール値が70以下であると、ラミネート強度が向上し、残留溶剤が低減する。
【0075】
本発明において、ポリオールとイソシアネート硬化剤(I)との硬化物のパーマコール値とは、ポリオールの末端OH基を除く残基、及びイソシアネート硬化剤(I)のパーマコール値をいう。ポリオールとイソシアネート硬化剤(I)との硬化物のパーマコール値は、下記(式8)を用いて算出することができ、(式8)中のイソシアネートセグメントm固有のパーマコール値Pmは、特開2013-129780号公報の表3~7に記載の値を使用することができる。なお、イソシアネートセグメントのイソシアネート基は、カルバメート基に変換して計算する。
(式8)
【数2】

Pn:ポリマーセグメントn固有のパーマコール値
Pm:イソシアネートセグメントm固有のパーマコール値
Mn:ポリマーセグメントnのモル数
Mm:イソシアネートセグメントnのモル数
【0076】
<ポリオール>
ポリオールは、パーマコール値25~60を満たしていればよく、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油又はそれらの混合物のほか、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール等のグリコール;数平均分子量200~3,000のポリアルキレングリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能又は4官能の脂肪族アルコール;上記3官能又は4官能の脂肪族アルコールに、上記グリコール若しくはポリオールが付加したポリオールを用いることができる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。中でも、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールであることが好ましく、ポリエステルポリオールであることがより好ましい。
ポリオール中のポリエステルポリオールの質量比率は、ポリオール100質量%中、50~100質量%であることが好ましく、70~100質量%であることがより好ましく、90~100質量%であることが更に好ましい。上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性が向上し、残留溶剤が低減する。
【0077】
上記ポリエステルポリオールとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系二塩基酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水マレイン酸等の脂肪族系二塩基酸、無水イタコン酸等の脂環族系二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物(以下、カルボキシル基成分ともいう)と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等のジオール類又は若しくはそれらの混合物(以下、水酸基成分ともいう)を、エステル化反応させて得られるポリエステルポリオール;或いは、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。上記カルボキシル基成分及び水酸基成分は、2種以上を併用してもよい。中でも、芳香族系二塩基酸、脂肪族系二塩基酸を含むことが好ましく、芳香族系二塩基酸を含むことがより好ましい。上記を含む場合、折り曲げ後の酸素バリア性及び低残留溶剤が向上する。芳香族系二塩基酸の中でも、イソフタル酸、テレフタル酸を含むことが好ましく、イソフタル酸を含むことが更に好ましく、脂肪族系二塩基酸の中でも、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸を含むことが好ましく、セバシン酸を含むことがより好ましい。上記二塩基酸の組み合わせとして、芳香族系二塩基酸と脂肪族系二塩基酸との組み合わせが好ましく、イソフタル酸とセバシン酸、及びテレフタル酸とセバシン酸の組み合わせがより好ましく、イソフタル酸とセバシン酸の組み合わせが更に好ましい。
【0078】
ポリエステルポリオール中の、芳香族二塩基酸由来構造の含有率は、5~75質量%であることが好ましく、15~55質量%であることがより好ましく、25~35であることが更に好ましい。上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性及び低残留溶剤が向上する。また、ポリエステルポリオール中の、直鎖状二塩基酸由来構造の含有率は、1~60であることが好ましく、5~40であることがより好ましく、10~20であることが更に好ましい上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性が向上し、残留溶剤が低減する。
【0079】
上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルトリオール等が挙げられ、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、水、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2官能低分量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルジオール;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分量トリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルトリオール;が挙げられる。
【0080】
上記、ポリエステルポリオール由来の構成単位又はポリエーテルポリオール由来の構成単位を含むポリオールは、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールは、上記ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールに、さらにジイソシアネートを反応させたポリエステルウレタンポリオール又はポリエーテルウレタンポリオールであってもよいし、さらに酸無水物を反応させたものであってもよい。
上記ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
上記酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物としては、例えば、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテートが挙げられる。
【0081】
ポリオールの質量平均分子量(Mw)としては、2、000~80、000であることが好ましく、5、000~60、000であることがなお好ましく、10、000~60、000であることが更に好ましい。
また、ポリオールの分子量分布(Mw/Mn)が1.5~10であるポリオールを使用することで、接着剤塗工時のレベリング性と各層間のラミネート強度を良化することができる。特に、ポリオールが、ポリエーテルポリオール由来の構成単位を含む場合は、その分子量分布(Mw/Mn)が3.0~10.0であることが好ましく、3.0~8.0であることがより好ましい。ポリエステルポリオール由来の構成単位を含むからなる場合は、その分子量分布(Mw/Mn)が1.5~5.0であることが好ましく、2.0~4.0であることがより好ましい。
【0082】
ポリオールの酸価は、特に制限されないが、好ましくは0~50mgKOH/g、より好ましくは0~40mgKOH/gである。ポリオールの水酸基価は、特に制限されないが、好ましくは1~200mgKOH/g、より好ましくは3~150mgKOH/gである。
【0083】
(イソシアネート硬化剤(I))
イソシアネート硬化剤(I)は反応性接着剤における硬化剤として機能し、通常の2液反応性接着剤用であって、水酸基との反応性を有する官能基を含んでいれば限定されず使用可能である。イソシアネート基を有することにより、接着剤の接着強度及び凝集力が高くなり、また、室温付近の低温で硬化が可能である。
【0084】
イソシアネート硬化剤(I)としては、ジイソシアネートあるいはジイソシアネートとポリオールとの反応物であるウレタンプレポリマー等が好ましく、かかるジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族又は脂環族の各種公知のジイソシアネートを使用することができる。例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネートが挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0085】
イソシアネート硬化剤(I)としては、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを好適に使用できる。中でも、黄変、及びラミネート強度向上のための柔軟性付与の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類の使用が好ましく、レトルト耐性との両立からはトリメチロールプロパン等のアダクト体やイソシアヌレート体、ビュレット体等の3官能以上のポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0086】
接着剤層において、イソシアネート硬化剤(I)ポリオール由来の水酸基とイソシアネート樹脂由来のイソシアネート基との官能基当量比率NCO/OHは、1.5~8.0であることが好ましく、2.0~5.0であることがなお好ましい。
接着剤には、その他に接着剤用として公知の成分を主剤中又は硬化剤中に配合することができる。
【0087】
(反応促進剤)
接着剤は、例えば、反応促進剤を含有することができる。反応促進剤としては、例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等の金属系触媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の3級アミン;トリエタノールアミン等の反応性3級アミン;チタン系、亜鉛系、ビスマス系が挙げられる。これらは、各々単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて使用できる。その中でもチタン系、亜鉛系、又はビスマス系の反応促進剤を使うことで、接着剤のエージング効果及び包装材の内容物耐性に優れるため好ましい。
【0088】
(シランカップリング剤)
接着剤は、特に金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させる観点から、シランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;が挙げられる。これらは、各々単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて使用できる。
シランカップリング剤の含有量は、全ポリオール成分に対して、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.2~3質量%である。上記範囲とすることで、特に金属系素材に対する接着強度を向上させることができる。
【0089】
(リン酸又はリン酸誘導体)
接着剤は、特に金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させる観点から、リン酸又はリン酸誘導体を含有することができる。リン酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸のようなリン酸類;メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸のような縮合リン酸類;が挙げられる。また、リン酸の誘導体としては、例えば、上述のリン酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化したものが挙げられる。該アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリンのような脂肪族アルコール;フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノールのような芳香族アルコール;が挙げられる。これらは、各々単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて使用できる。
リン酸又はその誘導体の含有量は、二液反応性接着剤の固形分に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%、さらに好ましくは0.05~1質量%である。
【0090】
(レベリング剤、消泡剤)
接着剤は、公知のレベリング剤又は消泡剤を含有することができる。レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンが挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物が挙げられる。これらは、各々単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて使用できる。
レベリング剤及び消泡剤のそれぞれの含有量は、反応性接着剤二液反応性接着剤の固形分に対して、好ましくは0.001~1質量%、より好ましくは0.005~0.5質量%である。
【0091】
(その他の添加剤)
接着剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等の無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、硬化反応を調整するための触媒が挙げられる。
【0092】
(接着剤に用いられる有機溶剤)
接着剤は、適度な粘度に調整するために溶剤で希釈してもよい。反応性接着剤に用いられる有機溶剤としては、酢酸エチル等のエステル系、メチルエチルケトン等のケトン系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系等のポリイソシアネート成分に対して不活性なものが好適に用いられ、適宜選択して使用できる。
【0093】
[アンカーコート層]
本発明の包装材は、更にアンカーコート層を含むことが好ましい。アンカーコート層は、ウレタン樹脂を含むことが好ましい。アンカーコート層は基材1とバリア層との間に位置することが好ましく、後述のアンカーコート剤により形成することができる。
【0094】
アンカーコート層の単位面積質量は、0.1~5g/mであることが好ましく、0.15~3g/mであることがより好ましく、0.2~1g/mであることが更に好ましい。アンカーコート層の単位面積質量が上記範囲である場合、折り曲げ時の酸素バリア性及びラミネート強度が良好となる。折り曲げ後の酸素バリア性、及びラミネート強度向上の観点から、上記アンカーコート層とバリア層との質量比は、0.1:1~2:1であることが好ましく、0.15:1~1:1であることがなお好ましく、0.2:1~0.6:1であることが更に好ましい。
【0095】
<ウレタン樹脂>
ウレタン樹脂は、ウレア結合を有することが好ましい。ウレア結合を有するウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとからなる末端イソシアネートのウレタンプレポリマーと、ポリアミン鎖伸長剤とを反応させることにより得られるウレタンウレア樹脂が挙げられ、好適に用いられる。
【0096】
ウレタン樹脂の含有率は、アンカーコート層全質量中、20~90質量%であることが好ましく、40~85質量%であることがより好ましく、60~80質量%であることが更に好ましい。折り曲げ後の酸素バリア性が向上するためである。
【0097】
(ウレア結合濃度)
ウレタン樹脂がウレア結合を有する場合、そのウレア結合濃度は、0.1~1.3mmol/gであることが好ましく、0.3~1.15mmol/gであることがより好ましく、0.6~0.9mmol/gであることが更に好ましい。
ウレタン樹脂のウレア結合濃度が0.1mmol/g以上であると、ラミネート強度及び折り曲げ後の酸素バリア性が更に向上する。ウレタン樹脂のウレア結合濃度が1.3mmol/g以下であると、
【0098】
ここで、ウレア結合濃度とは次のように表される値である。
(NCOモル数/OHモル数)>1となるような条件で末端イソシアネート基を有するプレポリマーを合成した後に、ポリアミンで鎖延長し、ウレタン樹脂の末端にアミノ基を有する場合、ウレア結合濃度は下記(式9)で表される。
(式9)
ウレア結合濃度(mmol/g)=[総イソシアネート基モル数(mmol)-総水酸基モル数(mmol)]/固形分総質量(g)
【0099】
(NCOモル数/OHモル数)>1となるような条件で末端イソシアネート基を有するプレポリマーを合成した後に、ポリアミンで鎖延長し、ウレタン樹脂の末端にイソシアネート基を有する場合、ウレア結合濃度は下記(式10)で表される。
(式10)
ウレア結合濃度(mmol/g)=(総アミノ基モル数(mmol))/固形分総質量(g)
ここで総アミノ基モル数とは、末端イソシアネート基を有するプレポリマーと反応させてウレア結合を生成するために用いられるポリアミンが有する、1級又は2級アミノ基の総モル数をいう。
【0100】
(ウレタン結合濃度)
ウレタン樹脂のウレタン結合濃度は、0.1~1.3mmol/gであることが好ましく、0.3~1.15mmol/gであることがより好ましく、0.6~0.9mmol/gであることが更に好ましい。
ウレタン樹脂のウレタン結合濃度が上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性及びラミネート強度が良好となる。
【0101】
ここで、ウレタン結合濃度とは次のように表される値である。
ウレタン樹脂を構成する原料において(NCOモル数/OHモル数)>1の場合、ウレタン結合濃度は下記(式11)で表される。
(式11)
ウレタン結合濃度(mmol/g)=総水酸基モル数(mmol)/固形分総質量(g)
ここで、総水酸基モル数とはウレタンを形成する反応において用いられるポリオール等の有する水酸基の総モル数をいう。また、総固形分とはウレタン樹脂となる不揮発成分の総質量をいう。
ウレタン樹脂を構成する原料において(NCOモル数/OHモル数)<1の場合、ウレタン結合濃度は下記(式12)で表される。
【0102】
(式12)
ウレタン結合濃度(mmol/g)=総イソシアネート基モル数(mmol)/固形分総質量(g)
ここで、総イソシアネート基モル数とはウレタンを形成する反応において用いられるポリイソシアネートの有するイソシアネート基の総モル数をいう。
【0103】
ウレタン樹脂の質量平均分子量は、10,000~100,000であることが好ましく、20,000~85,000であることがより好ましく、30,000~70,000であることが更に好ましい。ウレタン樹脂の質量平均分子量が上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性が良好となる。
【0104】
ウレタン樹脂のガラス転移温度は、-80~20℃であることが好ましく、-60~0℃であることがより好ましく、-40~-5℃であることが更に好ましい。ウレタン樹脂のガラス転移温度が上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性が良好となる。
【0105】
ウレタン樹脂のアミン価は、0.5~20mgKOH/gであることが好ましく、1~15mgKOH/gであることがより好ましい。ウレタン樹脂のアミン価が上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性が良好となる。
【0106】
ウレタン樹脂の水酸基価は、0.5~30mgKOH/gであることが好ましく、1~20mgKOH/gであることがより好ましい。ウレタン樹脂の水酸基価が上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性が良好となる。
【0107】
ウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール由来の構造単位を含むものが好ましく、その含有率はウレタン樹脂固形分100質量%中、5~80質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましい。ポリエステルポリオール由来の構造単位の含有量が上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性が良好となる。
【0108】
ウレタン樹脂の製造方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリオール及びポリイソシアネートからなる末端イソシアネートのウレタンプレポリマーと、ポリアミンと、必要に応じて重合停止剤とを反応させることにより得られるウレタン樹脂が好ましい。
【0109】
より詳細には例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを、必要に応じてイソシアネート基に対し不活性な溶媒を用い、更に必要であればウレタン化触媒を用いて、50℃~150℃の温度で反応させ(ウレタン化反応)、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、次いで、このプレポリマーにポリアミンを10~60℃で反応させてウレタン樹脂を得るプレポリマー法、又は、高分子ポリオールとポリイソシアネートとポリアミン(及び必要に応じて重合停止剤)とを一段で反応させてウレタン樹脂を得るワンショット法等、公知の方法を用いることができる。また、ポリアミンは、ポリオールとポリイソシアネートとのウレタン化反応で使用することもできる。
【0110】
前記ポリオールとしては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、水素添加ひまし油ポリオール、ダイマージオール、水添ダイマージオールが挙げられる。中でもポリエステルポリオールが好ましい。
【0111】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、二塩基酸とジオールとのエステル化反応により得られる縮合物が挙げられる。
二塩基酸としては、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、グルタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等が挙げられる。中でも、セバシン酸、アジピン酸が特に好ましい。
ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3,5-トリメチルペンタンジオール、2、4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,2-アルカンジオール、1,3-アルカンジオール、1-モノグリセライド、2-モノグリセライド、1-モノグリセリンエーテル、2-モノグリセリンエーテル、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が挙げられる。中でも、分岐構造を有するジオールと二塩基酸からなるポリエステルポリオールが好ましい。分岐構造とは、ジオールに含まれるアルキレン基の水素原子の少なくとも1つがアルキル基によって置換された、アルキル側鎖を有するジオールを意味し、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。これらは、印刷適性、印刷効果、及びラミネート強度を向上させるため特に好ましい。
これらのポリエステルポリオールは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、前記ポリエステルポリオールと、ヒドロキシル基を3個以上有するポリオール、及び/又はカルボキシル基を3個以上有する多価カルボン酸とを併用することもできる。
【0112】
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量は、好ましくは500~10,000である。ポリオールの数平均分子量は、(式13)により求められる。ポリエステルポリオールの酸価は1.0mgKOH/g以下であることが好ましく、0.5mgKOH/g以下であることがより好ましい。
(式13)
ポリオールの数平均分子量=1000×56.1×水酸基の価数/水酸基価
【0113】
ウレタン樹脂の製造において、ポリオールは低分子ジオールを含んでいてもよい。かかる低分子ジオールとしては、分子量50~800のものが好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3,5-トリメチルペンタンジオール、2、4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,2-アルカンジオール、1,3-アルカンジオール、1-モノグリセライド、2-モノグリセライド、1-モノグリセリンエーテル、2-モノグリセリンエーテル、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が挙げられる。
【0114】
前記ポリイソシアネートとしては、ウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。具体的には例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ビス-クロロメチル-ジフェニルメタン-ジイソシアネート、2,6-ジイソシアネート-ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネートが挙げられる。これらは3量体となってイソシアヌレート環構造となっていてもよい。これらのポリイソシアネートは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。中でも好ましくはトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体である。
【0115】
前記ポリアミンとしては、以下に限定されるものではないが、分子量500以下が好ましく、ジアミン系、多官能アミン系等のものが挙げられ、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、p-フェニレンジアミン等のジアミンの他、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等水酸基を有するジアミンも用いることができる。これらのポリアミンは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。特にウレタン樹脂は、3官能以上の多官能ポリアミン由来の構成単位を含むことが好ましく、多官能ポリアミンは具体的には、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン:(IBPA、3,3’-ジアミノジプロピルアミン)、トリエチレンテトラミン、N-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン:(スペルミジン)、6,6-イミノジヘキシルアミン、3,7-ジアザノナン-1,9-ジアミン、N,N’-ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミンが挙げられる。多官能ポリアミンはアミノ基を3つ有することが好ましい。更にジアミンと併用するこが好ましい。中でも好ましくはイソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミンである。
【0116】
プレポリマー中のイソシアネート基のモル数に対するポリアミンのアミノ基の合計モル数の比は、1.01~2.00であることが好ましく、1.03~1.06であることがより好ましい。
【0117】
また、過剰反応停止を目的とした重合停止剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としては例えば、1級、2級のアミノ基を有するモノアミン化合物であれば特に限定されないが、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類や2-エタノールアミン等のアミノアルコール類等が挙げられる。更に、特にウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L-アラニン等のアミノ酸を重合停止剤として用いることができる。重合停止剤を用いるときには、重合停止剤と鎖延長剤(ポリアミン)とを一緒に使用して鎖延長反応を行ってもよく、また鎖延長剤によりある程度鎖延長反応を行った後に重合停止剤を単独で添加して重合停止を行ってもよい。一方、重合停止剤を用いなくても分子量のコントロールは可能であるが、この場合には鎖延長剤を含む溶液中にプレポリマーを添加する方法が反応制御という点で好ましい。重合停止剤としてはアミノアルコールが好ましく、その含有率はウレタン樹脂100質量%に対して0.01~2.0質量%の比率であることが好ましい。
【0118】
前記プレポリマーを製造するにあたり、ポリオール及びポリイソシアネートの量は、ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数と高分子ポリオールの合計の水酸基のモル数との比であるNCO/OH比が、NCO/OH=1.1~3.0の範囲となるようにすることが好ましい。更に好ましくはNCO/OH=1.3~2.5の範囲である。
【0119】
また、前記プレポリマーの合成には有機溶剤を用いることが反応制御の面で好ましい。有機溶剤としてはイソシアネート基に対し不活性な有機溶剤が好ましく、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等のエステル類が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0120】
さらに、前記プレポリマーの合成には触媒を用いることもできる。触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアニリン等の3級アミン系の触媒;スズ、亜鉛等の金属系の触媒が挙げられる。これらの触媒は、通常ポリオール化合物に対して0.001~1モル%の範囲で使用される。
【0121】
<ウレタン樹脂と併用する樹脂>
アンカーコート層は、ウレタン樹脂に加えて、塩化ビニル系樹脂、及びポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂等の併用樹脂を含むことが好ましい。併用樹脂は、中でも塩化ビニル系樹脂、及び/又はポリビニルアセタール系樹脂であることが好ましく、塩化ビニル系樹脂であることがなお好ましい。
ウレタン樹脂と上記併用樹脂の質量比は3:7~9.9:0.1であることが好ましく、5:5~9.5:0.5であることがなお好ましく、7:3~9:1であることが更に好ましい。
【0122】
<塩化ビニル系樹脂>
塩化ビニル系樹脂は、不飽和二重結合を有するモノマー(塩化ビニルを除く)及び塩化ビニルモノマーを重合してなる構造を含む。塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂が好適に挙げられる。
【0123】
<塩化ビニル-アクリル共重合樹脂>
塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は、塩化ビニルとアクリルモノマーとの共重合体を主成分とするものであり、アクリルモノマーは、アクリル基又はメタクリル基を有するモノマーであり、水酸基を有するアクリルモノマーを含むことが好ましい。(以下、「アクリル又はメタクリル」を「(メタ)アクリル」ということがある。)塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は、塩化ビニルとアクリルモノマーとのブロック共重合やランダム共重合体でもよいし、ポリ塩化ビニルの側鎖にアクリルモノマーがグラフト化されたグラフト共重合体でもよい。
【0124】
塩化ビニル-アクリル共重合樹脂の質量平均分子量は、10,000~100,000であることが好ましく、30,000~70,000であることがより好ましい。塩化ビニル-アクリル共重合樹脂のガラス転移温度は、50~90℃であることが好ましく、55~85℃であることがより好ましく、65~80℃であることが更に好ましい。塩化ビニル-アクリル共重合樹脂の水酸酸価は、10~120mgKOH/gであることが好ましく、20~110mgKOH/gであることがより好ましく、30~100mgKOH/gであることが更に好ましく、40~80mgKOH/gであることが特に好ましい。塩化ビニル-アクリル共重合樹脂中の塩化ビニル由来の構造の含有率は、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂固形分100質量%中、70~95質量%であることが好ましい。
【0125】
水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルが挙げられ、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルが好ましい。これらは単独又は2種以上を併用できる。
【0126】
(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含んでもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基の炭素数は1~20が好ましい。当該アクリル酸アルキルエステルとしては例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルが挙げられる。また、上記アルキル基は、アリール基等で置換された芳香環構造を有してもよい。これらは、単独又は2種以上を併用できる。
【0127】
塩化ビニル-アクリル共重合樹脂としては、例えば、ソルバインAタイプシリーズ(信越化学工業株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0128】
<塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂とは、少なくとも塩化ビニルと酢酸ビニルとが共重合した樹脂であり、その質量平均分子量は、5,000~100,000であることが好ましく、20,000~70,000であることがより好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中、酢酸ビニルモノマー由来の構造の含有率は、1~30質量%であることが好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造の含有率は、70~95質量%であることが好ましい。また、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂は、有機溶剤への溶解性が向上するため、ケン化反応あるいは共重合に由来するビニルアルコール由来の水酸基を含むものが更に好ましく、その水酸基価は20~200mgKOH/gであることが好ましい。また、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂のガラス転移温度は、50℃~90℃であることが好ましい。
【0129】
塩化ビニル-アクリル共重合樹脂としては、ソルバインCタイプシリーズ(信越化学工業株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0130】
<ポリビニルアセタール系樹脂>
ポリビニルアセタール系樹脂は、ポリビニルアルコールをブチルアルデヒド等のアルデヒドと反応させてアセタール化したものであり、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びアセタール環単位を含むことが好ましい。アセタール化反応には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等の公知のアルデヒドを用いることができ、2種以上のアルデヒドを用いることもできる。
ポリビニルアセタール系樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールが挙げられ、ポリビニルブチラールであることが好ましい。
【0131】
ポリビニルアセタール系樹脂のアセタール環の含有率は、ポリビニルアセタール系樹脂100質量%中、60~90質量%であることが好ましい。アセタール環の含有率が上記範囲である場合、ラミネート強度が向上する。ポリビニルアセタール系樹脂のビニルアルコール単位の含有率は、ポリビニルアセタール系樹脂100質量%中、5~30質量%であることが好ましく、15~25質量%であることがより好ましい。ビニルアルコール単位の含有率が上記範囲である場合、ラミネート強度が向上する。ポリビニルアセタール系樹脂の酢酸ビニル単位の含有率は、ポリビニルアセタール系樹脂100質量%中、0.5~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。酢酸ビニル単位の含有率が上記範囲である場合、ラミネート強度が向上する。
【0132】
ポリビニルアセタール系樹脂の質量平均分子量は、25,000~200,000であることが好ましく、40,000~150,000であることがより好ましく、7,0000~120,000であることがより好ましい。ポリビニルアセタール系樹脂の質量平均分子量が上記範囲である場合、ラミネート強度が良好となる。ポリビニルアセタール系樹脂のガラス転移温度は、50~80℃であることが好ましく、60~75℃であることがより好ましい。ポリビニルアセタール系樹脂のガラス転移温度が上記範囲である場合、ラミネート強度が良好となる。
【0133】
ポリビニルアセタール系樹脂としては、モビタールシリーズ(クラレ社製、ポリビニルブチラール樹脂)、エスレックKXシリーズ(積水化学工業社製、ポリビニルアセタール樹脂)、ビニレックシリーズ(JNC社製、ポリビニルホルマール)等の市販製品を使用することができる。
【0134】
<無機顔料>
折り曲げ後の酸素バリア性が向上するため、アンカーコート層は無機顔料を含むことが好ましい。無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛酸化クロム、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、シリカ、硫酸バリウム、カオリンクレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられ、シリカ、硫酸バリウム、カオリンクレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが好ましく、中でもシリカであることが好ましい。
【0135】
無機顔料の含有率は、アンカーコート層100質量%中、0.5~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、3~7質量%であることが更に好ましい。
【0136】
<イソシアネート硬化剤(I’)>
ラミネート強度、及び折り曲げ後の酸素バリア性が向上するため、アンカーコート層は、イソシアネート硬化剤(I’)由来の硬化物を含むことが好ましい。すなわち、アンカーコート層を形成するためのアンカーコート剤は、イソシアネート硬化剤(I’)を含むことが好ましい。アンカーコート剤がイソシアネート硬化剤(I’)を含む場合、ウレタン樹脂等と反応する、又はイソシアネート硬化剤(I’)自身で反応することにより、硬化物を形成する。前記硬化物は、ウレタン樹脂とイソシアネート硬化剤(I’)との反応によるものである、すなわち、ウレタン樹脂由来の構造及びイソシアネート硬化剤(I’)由来の構造を有することが好ましい。なお、イソシアネート硬化剤(I’)は、[接着剤層]で説明した<イソシアネート硬化剤(I)>と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0137】
イソシアネート硬化剤(I’)としては、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート硬化剤;
テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート硬化剤;
シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート硬化剤;
上記イソシアネート硬化剤と多価アルコールとの付加体である、アダクト型イソシアネート硬化剤;が挙げられる。
中でも、脂肪族イソシアネート硬化剤が好ましく、アダクト型脂肪族イソシアネート硬化剤がより好ましく、3官能のアダクト型脂肪族イソシアネート硬化剤が更に好ましい。
【0138】
上記多価アルコールとして、1,2-プロピレングリコール(2価)、ジエチレングリコール(2価)、ジプロピレングリコール(2価)、1,3-ブタンジオール(2価)、ネオペンチルグリコール(2価)、トリメチロールプロパン(3価)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(3価)、ポリエチレングリコール(多価)、ポリプロピレングリコール(多価)が挙げられ、中でもトリメチロールプロパンが好ましい。3価のアルコールと脂肪族イソシアネート硬化剤とが反応することで、3官能のアダクト型脂肪族イソシアネートが得られる。アダクト型脂肪族イソシアネート硬化剤としては例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応物が好適に挙げられる。
【0139】
イソシアネート硬化剤(I’)としては市販品を使用することができ、例えば、24A-100、22A-75、TPA-100、TSA-100、TSS-100、TAE-100、TKA-100、P301-75E、E402-808、E405-70B、AE700-100、D101、D201、A201H(旭化成社製)、マイテックY260A(三菱化学社製)、コロネート CORONATE HX、コロネート CORONATE HL、コロネート CORONATE L(日本ポリウレタン社製)、デスモジュール N75MPA/X(バイエル社製)が挙げられる。
【0140】
上記アンカーコート層における、ウレタン樹脂とイソシアネート硬化剤(I’)とからなる硬化物において、ウレタン樹脂由来の構成単位とイソシアネート硬化剤(I’)由来の構成単位との質量比は、99:1~70:30であることが好ましく、98:2~80:20であることがより好ましく、95:5~85:15であることが更に好ましい。
ウレタン樹脂の他に併用樹脂を含有する場合は、ウレタン樹脂及び併用樹脂の合計量と、イソシアネート硬化剤(I’)と、の質量比は、99:1~70:30であることが好ましく、98:2~80:20であることがより好ましく、95:5~85:15であることが更に好ましい。樹脂とイソシアネート硬化剤(I’)との質量比が上記範囲である場合、折り曲げ後の酸素バリア性及びラミネート強度が良好となる。
【0141】
<添加剤>
アンカーコート層は、公知の添加剤、又は添加剤由来の構造を含むことも好ましい。添加剤としては、例えば、顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、ワックス、シランカップリング剤、水等が挙げられる。
【0142】
<アンカーコート剤>
上記アンカーコート層をアンカーコート剤により形成する場合、当該アンカーコート剤は、ウレタン樹脂を含むことが好ましい。更に、アンカーコート剤の取り扱い、及び折り曲げ後の酸素バリア性等の向上のために、有機溶剤、併用樹脂、無機顔料、添加剤等の任意成分を、単独又は複数を組み合わせてアンカーコート剤に加えることができる。
【0143】
アンカーコート剤は、例えば、攪拌羽根、回転翼等を供えた攪拌機に、樹脂を有機溶剤に溶解させた樹脂溶液、有機溶剤を仕込み、混合、攪拌して得ることができる。撹拌速度としては特に制限されることはなく、50~2000rpmで行うことが可能である。
【0144】
<有機溶剤>
アンカーコート剤に用いることができる有機溶剤としては、例えば、メチルシクロへキサン、エチルシクロへキサン等の炭化水素系;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン等のケトン系;酢酸エチル、酢酸nプロピル、酢酸ブチル等のエステル系;メタノ-ル、エタノ-ル、プロパノ-ル、イソプロパノ-ル(IPA)、ブタノ-ル等のアルコ-ル系;の非芳香族系有機溶剤が挙げられる。有機溶剤は、印刷後の皮膜に残留する溶剤量低減等を考慮して適宜選択すればよく、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。有機溶剤の含有量は、アンカーコート剤100質量%中、30~95質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましく、70~85質量%であることが特に好ましい。
【0145】
アンカーコート剤は、一実施形態として、ラミネート強度を向上させるために、グリコールエーテル系の溶剤を含むことが好ましい。グリコールエーテル系の溶剤としては、特に制限されないが、例えば、エチレングリコール系エーテル、プロピレングリコール系エーテルが挙げられる。
中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、より好ましくはジエチレングリコールモノエチルエーテルである。グリコールエーテル系の溶剤は、アンカーコート剤中の有機溶剤100質量%中、5~25質量%であることが好ましく、5~15質量%であることが特に好ましい。
【0146】
<アンカーコート層の形成>
アンカーコート層は、例えば、基材1上に、アンカーコート剤を印刷した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。印刷方法として、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法等従来公知の方法が挙げられるが、グラビア印刷方式が好適であり、例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、印刷される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることでアンカーコート層を得ることができる。
【0147】
[印刷層]
本発明の包装材は、印刷層を有してもよい。印刷層は、樹脂及び着色剤を含むことが好ましい。印刷層は、装飾又は美感の付与;内容物、賞味期限、及び、製造者又は販売者の表示等を目的とした、任意の絵柄、パターン、文字、及び記号等を表示する層であることができる。
印刷層は、絵柄、パターン、文字、及び記号等を有しないベタ印刷層であってもよい。印刷層の形成方法は特に制限されず、例えば印刷インキを用いて形成することができる。また、印刷層は、単層構成でも複層構成でもよく、表層に設けてもよい。
【0148】
[包装材の製造方法]
本発明の包装材の製造方法は、基材1、バリア層、接着剤層及び基材2を有する包装材の製造方法であって、バリアコート剤を塗布してバリア層を形成する工程と、反応性接着剤を塗布して接着剤層を形成する工程と、を含み、前記バリア層が、親水性樹脂を含み、前記接着剤層が、ポリオール及びイソシアネート硬化剤(I)を含む反応性接着剤からなる層であり、前記ポリオールのパーマコール値が、25~60であり、前記接着剤層の単位面積質量が、1.0~4.5g/mであり、前記包装材のオレフィン含有率が、包装材全質量中80質量%以上である、包装材の製造方法である。
【実施例
【0149】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本明細書における部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。
【0150】
<水酸基価>
水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に記載された方法で測定した。
<酸価>
酸価は、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸等を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に記載された方法で測定した。
【0151】
<アミン価>
アミン価は、試料1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に準拠して測定した。試料を0.5~2g精秤し(試料固形分:Sg)、精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記(式13)によりアミン価を求めた。
(式13)
アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S[mgKOH/g]
【0152】
<質量平均分子量>
質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。以下に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW2500
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW3000
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW4000
東ソー株式会社製TSKgelguardcolumnSuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0153】
<ガラス転移温度(Tg)>
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定測定(DSC)により求めた。測定は、株式会社リガク製DSC8231を使用し、測定温度範囲-70~250℃、昇温速度10℃/分の条件で行った。DSC曲線におけるガラス転移に基づくベースラインシフトの中点(変曲点)をガラス転移温度とした。
【0154】
<各層における単位面積質量の測定>
<アンカーコート層>
後述の実施例において、積層体作製の途中で得られる中間積層体について、基材1/アンカーコート層の構成部分から、10cm角に5枚切り出し、基材1から、10cm角に5枚切り出した。それぞれのサンプルの質量を測定し、以下(式14)でアンカーコート層の単位面積質量を算出した。なお、基材1としては、厚み20μmの一軸延伸ポリエチレンフィルム(MDOPE)を使用した。
(式14)
アンカーコート層の単位面積質量(g/m)=(基材1/アンカーコート層の5サンプルの平均質量)-(基材1の5サンプルの平均質量)
【0155】
<アンカーコート層以外の層>
アンカーコート層以外の層について、計算式及びサンプルの切り出し箇所が異なる以外は、アンカーコート層と同様の方法で単位面積質量を算出した。なお、基材2としては、厚み40μmの低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)を使用した。
(式15)
バリア層の単位面積質量(g/m)=(基材1/アンカーコート層/バリア層の5サンプルの平均質量)-(基材1/アンカーコート層の5サンプルの平均質量)
(式16)
接着剤層の単位面積質量(g/m)=(基材1/アンカーコート層/バリア層/接着剤層/基材2の5サンプルの平均質量)-{(基材1/アンカーコート層/バリア層の5サンプルの平均質量)+(基材2の5サンプルの平均質量)}
【0156】
(ポリオールの合成)
<合成例1>ポリオールPO1
撹拌機、温度計、還流冷却装置、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール 150部、ジエチレングリコール 350部、イソフタル酸350部、セバシン酸 150部を仕込み、240℃でエステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し1mmHg以下で250℃で5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。このポリエステルポリオールを酢酸エチルで不揮発分60%に希釈し、ポリオールPO1溶液を得た。ポリオールPO1の質量平均分子量は23,000、数平均分子量は13,500であり、パーマコール値は36.0である。
【0157】
<合成例2>ポリオールPO2
撹拌機、温度計、還流冷却装置、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ネオペンチルグリコール 420部、セバシン酸 373部、アジピン酸 187部を仕込み、240℃でエステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し1mmHg以下で250℃で5時間脱グリコール反応を行い、次いでイソホロンジイソシアネート 10部を添加し150℃で2時間反応、さらに無水トリメリット酸 10部を添加し180℃で2時間反応させ、ポリエステルウレタンポリオールを得た。このポリエステルウレタンポリオールを酢酸エチルで不揮発分60%に希釈し、ポリオールPO2溶液を得た。ポリオールPO2の質量平均分子量は25,000、数平均分子量は11,400であり、パーマコール値は25.9である。
【0158】
<合成例3>ポリオールPO3
表1に記載した原料及び配合比を使用した以外は、合成例2と同様の方法で、ポリオールPO3を得た。
【0159】
<合成例4~6、比較合成例1>ポリオールPO4~6、8
表1に記載した原料及び配合比を使用した以外は、合成例1と同様の方法で、ポリオールPO4~6、8を得た。
【0160】
<合成例7>ポリオールPO7
撹拌機、温度計、還流冷却装置、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に数平均分子量約2,000の2官能ポリプロピレングリコール 150部、数平均分子量約400の2官能ポリプロピレングリコール 700部、数平均分子量約400の3官能ポリプロピレングリコール 150部、トリレンジイソシアネート 350部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80~90℃で5時間加熱してウレタン化反応を行い、ポリエーテルウレタンポリオールを得た。得られたポリエーテルウレタンポリオールにリン酸0.1部、DYNASYLAN GLYMO(EVONIK社製、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)0.2部を加え、酢酸エチルで固形分濃度60%に調整し、ポリオールPO7溶液を得た。ポリオールPO7の質量平均分子量は36000、数平均分子量は10,000であり、パーマコール値は38.8である。
【0161】
<比較合成例2>ポリオールPO9
攪拌機、窒素ガス導入管、冷却コンデンサー、滴下漏斗を備えた反応容器にエチレングリコール398部を加え、70℃に加熱しながら攪拌した。そこにキシリレンジイソシアネート602部をゆっくりと1時間かけて滴下した。滴下後3時間70℃で攪拌を続け、エチレンオキシドが2モル付加した分子量312のポリオールを得た。ポリオールPO9の質量平均分子量は500、数平均分子量は312、パーマコール値は79.6である。
【0162】
【表1】
【0163】
(イソシアネート硬化剤)
イソシアネート硬化剤I1:タケネートD-103H(三井化学社製、固形分:75%、トルエンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体、溶剤:酢酸エチル)
イソシアネート硬化剤I2:デュラネート22A-75PX(旭化成社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、固形分75%、溶剤:酢酸エチル)
【0164】
<調製例1>イソシアネート硬化剤I3
タケネートD-103H 38部、デュラネート22A-75PX 62部を攪拌混合し、イソシアネート硬化剤I3を得た。
【0165】
<調製例2>イソシアネート硬化剤I4
タケネートD-103H 38部、デュラネート22A-75PX 29部、タケネートD-110NB(三井化学社製、固形分75%、キシレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体、溶剤:酢酸エチル)33部を攪拌混合し、イソシアネート硬化剤I4を得た。
【0166】
<合成例8>イソシアネート硬化剤I5
数平均分子量約2,000の2官能ポリプロピレングリコール 23部、数平均分子量約400の2官能ポリプロピレングリコール 18部、数平均分子量約400の3官能ポリプロピレングリコール 2部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート 30部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら70~80℃で7時間加熱してウレタン化反応を行った。反応完了後、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体 7部を混合した。酢酸エチルで固形分濃度75%に希釈して、ポリエーテルウレタンポリイソシアネートを含むポリイソシアネートの溶液を得た。上記ポリイソシアネートの溶液 80部とデスモジュールL75(住化コベストロウレタン株式会社製、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、NCO基含有率13%、固形分濃度75%)20部を混合し、イソシアネート硬化剤I5溶液とした。
【0167】
<調製例3>イソシアネート硬化剤I6
タケネートD-103H 38部、タケネートD-110NB 62部を攪拌混合し、イソシアネート硬化剤I6を得た。
【0168】
(ウレタン樹脂の合成)
<合成例9>ウレタン樹脂PU1
酢酸エチル 120.6部、3-メチル1,5ペンタンジオール(MPD)とアジピン酸(AdA)の縮合物である、数平均分子量2,000のポリエステルポリオール(以下「MPD/AdA 2000」) 153.7部、3-メチル1,5ペンタンジオール(MPD)とアジピン酸(AdA)の縮合物である、数平均分子量5,000のポリエステルポリオール(以下「MPD/AdA 5000」) 27.9部、数平均分子量700のポリプロピレングリコール(以下「PPG 700」) 12.4部、数平均分子量2000のポリプロピレングリコール(以下「PPG 2000」) 35.0部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」) 52.3部を混合して、窒素雰囲気下で90℃、5時間反応させて、末端イソシアネートのウレタンプレポリマーを得た。
次いで、イソプロパノール 279.6部、酢酸エチル 299.7部、イミノビスプロピルアミン(以下「IBPA」) 2.1部、イソホロンジアミン(以下「IPDA」)16.6部を攪拌混合し、得られた末端イソシアネートのウレタンプレポリマーを40℃で徐々に添加した。80℃で1時間反応させ、固形分30質量%、ウレア結合濃度0.78mmol/g、アミン価1.3mgKOH/g、質量平均分子量36100のウレタン樹脂PU1の溶液を得た。
【0169】
<合成例10及び11>ウレタン樹脂PU2及び3
表2に記載した原料及び配合比を使用した以外は、合成例1と同様の方法で、ウレタン樹脂PU2及び3を得た。
【0170】
【表2】
【0171】
(アンカーコート剤の製造)
<製造例1>アンカーコート剤AC1
ウレタン樹脂PU1溶液47部、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂PVC1溶液(水酸基価:154mgKOH/g、質量平均分子量:28,000、ガラス転移温度:78℃、固形分質量%=25%) 15部、シリカ粒子S1(水澤化学工業社製、ミズカシルP-707、平均粒子径(レーザー散乱法):4μm、吸油量:250ml/100g、固形分質量%=100%) 1部、塩素化ポリプロピレン(日本製紙社製、スーパークロン390S、固形分質量%=50%) 1部、脂肪酸アミド溶液(ラウリン酸アミド、固形分質量%=50%) 0.5部、混合溶剤(酢酸ノルマルプロピル(NPAC)/イソプロピルアルコール(IPA)=7/3) 30.5部、プロピレングリコールモノメチルエーテル 3部、水2部、を混合し、ビーズミルで20分間分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に、水20部を攪拌混合し、アンカーコート剤AC1を得た。
【0172】
<製造例2~4>アンカーコート剤AC2~4
表3に記載した原料及び配合比に変更した以外は、製造例1と同様の方法で、アンカーコート剤AC2~4を得た。
【0173】
【表3】
【0174】
(バリアコート剤の製造)
<製造例5>バリアコート剤V1
ポリビニルアルコール系樹脂PVA1(クラレ社製、エクセバールAQ-4104、エチレンビニルアルコール樹脂、エチレン含有率:6モル%、固形分質量%=100%) 6部、混合溶剤(水/IPA=8/2) 92部を攪拌しながら加熱し、95℃で1時間、加熱攪拌を継続し、その後、加熱を停止して、常温に戻るまで攪拌を継続し、ポリビニルアルコール系樹脂PVA1水溶液を得た。前記ポリビニルアルコール樹脂PVA1水溶液にモンモリロナイト(膨潤性、平均粒子径:2μm、アスペクト比:500、比表面積:13.1m/g、粒子厚み:1nm、平均長径:500nm、固形分質量%=100%) 2部を加え、混合攪拌することで、バリアコート剤V1を得た。
【0175】
<製造例6~13、比較製造例1>バリアコート剤V2~V10
表4に記載した原料及び配合比に変更した以外は、製造例5と同様の方法で、バリアコート剤V2~10を得た。なお、使用した原料の性状は以下の通りである。
・ポリビニルアルコール系樹脂PVA2:クラレ社製、クラレポバール28-98、ポリビニルアルコール、固形分質量%=100%
・ポリビニルアルコール系樹脂PVA3:積水化学社製、ULTILOC5003、アミン変性ポリビニルアルコール、固形分質量%=100%
・アクリル樹脂A1:日本触媒社製、アクアリックHL415、質量平均分子量10000、固形分質量%=45%
・ベントナイト:BYK社製、CLOISITE-Na+
・マイカ:平均粒子径:6μm、アスペクト比100、比表面積9m/g、固形分質量%=100%
・カオリン:平均粒子径1.2μm、アスペクト比100、比表面積10m/g、固形分質量%=100%
【0176】
【表4】
【0177】
(包装材の製造)
<実施例1>包装材P1
アンカーコート剤AC1 100部を、混合溶剤(イソプロピルアルコール/酢酸エチル)でザーンカップ#3(離合社製)15秒(25℃)になるように希釈したのち、イソシアネート硬化剤H1(旭化成社製、デュラネートP-301-75E、ヘキサメチレンジイソシアネート系(脂肪族)、アダクト型、固形分50%) 3部を加え混合攪拌した。また、バリアコート剤V1 100部を、混合溶剤(イソプロピルアルコール/水)でザーンカップ#3(離合社製)16秒(25℃)になるように希釈した。その後、厚み20μmの一軸延伸ポリエチレンフィルム(MDOPE)面上に対し、版深15μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン60℃の条件下で、希釈して硬化剤H1を加えたアンカーコート剤AC1を印刷してアンカーコート層を形成し、アンカーコート層上に、版の片側半分に非画像部を有する版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン60℃の条件下で、希釈したバリアコート剤V1を二度印刷してバリア層を形成し、OPP(基材1)/アンカーコート層/バリア層の構成である中間積層体p1を得た。次いで、ポリオールPO1を酢酸エチルと混合した後、イソシアネート硬化剤I1を加えて再度混合し、接着剤溶液とした。この時のポリオールPO1とイソシアネート硬化剤I1との固形分比率は、95/5であり、接着剤溶液の固形分は23%であった。その後、版深60μmのグラビア版を備えたドライラミネート機を用いて、中間積層体p1のバリア層上に、接着剤溶液を塗工し、オーブンにて溶剤を乾燥し接着剤層を形成した後、接着剤層上に、ライン速度40m/分にて、厚み40μmの低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)を貼り合わせ、40℃で1日間保温し、MDOPE(基材1)/アンカーコート層/バリア層/接着剤層/LLDPE(基材2)構成である包装材P1を得た。包装材P1のアンカーコート層の単位面積質量は0.4g/m、バリア層の単位面積質量は1.0g/m、接着剤層の単位面積質量は3.0g/mであった。
【0178】
<実施例2~22、比較例1~7>包装材P2~29
表5及び6に記載した原料及び塗工条件に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、包装材P2~29を得た。
【0179】
(評価)
上記実施例及び比較例で得られた包装材を用いて、以下の評価を行った。結果を表5及び6に示す。
【0180】
<ラミネート強度>
上記実施例及び比較例において得られた積層体をそれぞれ長さ150mm、幅15mmの長方形に切り出し、一方の端で基材1と基材2とを剥離させた。次いで、基材1と基材2それぞれを引っ張り試験機のチャックにセットし、90°方向のラミネート強度を測定し、以下基準にて評価した。なお、3~5が実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
5:1.5N/15mm以上
4:1.2N/15mm以上1.5N/15mm未満
3:1.0N/15mm以上1.2N/15mm未満
2:0.8N/15mm以上1.0N/15mm未満
1:0.8N/15mm未満
【0181】
<残留溶剤>
得られた包装材を、50mm×10mmの長方形に10枚切り出し、ヘッドスペースバイアル瓶(Agilent社製、75.5mm×23mm)に入れ、密栓した状態で80℃、30分加熱した後、マイクロシリンジで一定量の溶剤蒸気を取り出し、ガスクロマトグラフィー(GLサイエンス社製、GC-4000)にて、揮発溶剤量を確認し、以下基準にて判定した。なお、3~5が実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
5:2.0mg/m未満
4:2.0m/m以上、3.0mg/m未満
3:3.0mg/m以上、4.0mg/m未満
2:4.0mg/m以上、5.0mg/m未満
1:5.0mg/m以上
【0182】
<折り曲げ後の酸素バリア性>
得られた包装材を100mm角に切り出し、基材2の面同士が重なるように折り曲げ、折り曲げ部に対して、1kg/m2、5秒の条件で荷重した。折り曲げを戻し広げたサンプルの酸素透過度(OTR)を、MOCON社製の酸素透過率測定装置OC-TRANを用いて、JIS K 7162 B法(等圧法)に準拠し、温度30℃、相対湿度70%の条件下で測定を行い、以下基準にて評価した。
なお、3~5が実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
5:酸素透過度が100cc/m/day/atm未満である。
4:酸素透過度が100cc/m/day/atm以上、1000cc/m/day/atm未満である。
3:酸素透過度が1000cc/m/day/atm以上、1500cc/m/day/atm未満である。
2:酸素透過度が1500cc/m/day/atm以上、2000cc/m/day/atm未満である。
1:酸素透過度が2000cc/m/day/atm以上である。
【0183】
【表5】
【0184】
【表5】
【0185】
【表6】
【0186】
上記結果から、比較例1は、バリア層を有しないため、残留溶剤評価及び折り曲げ後の酸素バリア性が不良であった。比較例2は、バリア層が親水性樹脂を含まないため、残留溶剤評価及び折り曲げ後の酸素バリア性が不良であった。比較例3は、ポリオールのパーマコール値が、25未満であったため、折り曲げ後の酸素バリア性が不良であった。比較例4は、ポリオールのパーマコール値が60超であったため、ラミネート強度及び残留溶剤評価が不良であった。比較例5は、接着剤の単位面積質量が1.0g/m未満であったため、ラミネート強度及び折り曲げ後の酸素バリア性が不良であった。比較例6は、4.5g/m超であったため、残留溶剤評価が不良であった。比較例7は、包装材中のオレフィン含有率が、包装材全質量中80質量%未満であっため、残留溶剤評価が不良であった。
一方で、実施例の包装材は、親水性樹脂を含むバリア層を有し、接着剤層が、パーマコール値25~60のポリオール由来の構造を有し、接着剤層の単位面積質量が、1.0~4.5g/mであり、包装材のオレフィン含有率が、包装材全質量中80質量%以上であったため、本発明は、ラミネート強度及び折り曲げ後の酸素バリア性に優れ、残留溶剤の少ない包装材を提供できることが示された。
【要約】
【課題】
本発明は、ラミネート強度及び折り曲げ後の酸素バリア性に優れ、残留溶剤の少ない包装材を提供することを目的とする。
【解決手段】
基材1、バリア層、接着剤層及び基材2を有する包装材であって、
前記バリア層が、親水性樹脂を含み、
前記接着剤層が、ポリオールとイソシアネート硬化剤(I)との硬化物を含む層であり、前記ポリオールのパーマコール値が、25~60であり、
前記接着剤層の単位面積質量が、1.0~4.5g/mであり、
前記包装材のオレフィン含有率が、包装材全質量中80質量%以上である、包装材。
【選択図】なし