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特許7489632穀類加工物、穀類加工物の製造方法、炊飯米様食品の製造方法及び炊飯米様食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】穀類加工物、穀類加工物の製造方法、炊飯米様食品の製造方法及び炊飯米様食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20240517BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
A23L7/10 F
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023546347
(86)(22)【出願日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2023002685
(87)【国際公開番号】W WO2023149378
(87)【国際公開日】2023-08-10
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2022014151
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592246543
【氏名又は名称】日本食品製造合資会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】戸部 謙ルイス
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0159145(US,A1)
【文献】【レンジで簡単!】オートミールのカレーリゾットレシピ・作り方,楽天レシピ[online],2021年09月13日,[検索日:2023.03.22],インターネット<https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1790016546/>
【文献】オートミールおはぎ(餅部分),クックパッド[online],2021年09月13日,[検索日:2023.03.22],インターネット<https://cookpad.com/recipe/6941389>
【文献】簡単調理でウマイ!オートミールが美容と健康とキャンプに最高なワケ,MOTO CAMPERS[online],2018年12月22日,[検索日:2023.03.22],インターネット<https://motocampers.net/oatmeal/>
【文献】パラパラに仕上げる!オートミールで定番チャーハン,DELISH KITCHEN [online],2021年01月21日,[令和5年9月6日検索],インターネット<http://web.archive.org/web/20220121012445/https://delishkitchen.tv/recipes/353574523821360191>
【文献】【オートミール米化】塩昆布&チーズおにぎり*美味しいんです!,Nadia [online],2021年11月19日,[令和5年9月6日検索],インターネット<https://oceans-nadia.com/user/446059/recipe/426152>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱皮及び搗精された穀類を蒸煮する工程(A)と、
前記工程(A)において蒸煮された穀類を0.4~1.2mmの厚さに圧偏する工程(B)と、
前記工程(B)において圧偏された穀類を、20%以下の水分値にまで乾燥させる工程(C)と、
前記工程(C)において乾燥された穀類を2~15片に裁断することで、穀類加工物を得る工程(D)と、
前記工程(D)において得られた前記穀類加工物を加熱調理することによって、前記穀類加工物以外の穀物源を実質的に含まず、炊飯米のように喫食するごはんである炊飯米様食品を得る工程(E)と、
を含む、炊飯米と同程度の外観、食感及び粘り気を有する、炊飯米のように喫食するごはんである炊飯米様食品の製造方法。
【請求項2】
前記工程(A)~(E)のみをこの順で含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
脱皮及び搗精された穀類を2~15片に裁断した後、蒸煮する工程(A’)と、
前記工程(A’)において蒸煮された穀類を0.4~1.2mmの厚さに圧偏する工程(B’)と、
前記工程(B’)において圧偏された穀類を、20%以下の水分値にまで乾燥させることで、穀類加工物を得る工程(C’)と、
前記工程(C’)において得られた前記穀類加工物を加熱調理することによって、前記穀類加工物以外の穀物源を実質的に含まず、炊飯米のように喫食するごはんである炊飯米様食品を得る工程(D’)と、
を含む、炊飯米と同程度の外観、食感及び粘り気を有する、炊飯米のように喫食するごはんである炊飯米様食品の製造方法。
【請求項4】
前記工程(A’)~(D’)のみをこの順で含む
ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項で製造された、炊飯米のように喫食するごはんである炊飯米様食品を用いることを特徴とするおにぎりの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項で製造された、炊飯米のように喫食するごはんである炊飯米様食品を用いることを特徴とするチャーハンの製造方法。
【請求項7】
脱皮及び搗精された穀類を蒸煮する工程(A)と、
前記工程(A)において蒸煮された穀類を0.4~1.2mmの厚さに圧偏する工程(B)と、
前記工程(B)において圧偏された穀類を、20%以下の水分値にまで乾燥させる工程(C)と、
前記工程(C)において乾燥された穀類を2~15片に裁断することで、穀類加工物を得る工程(D)と、
を含む、所望の程度の外観、食感及び粘り気を有する炊飯米様食品を製造するための穀類加工物の製造方法。
【請求項8】
前記工程(A)~(D)のみをこの順で含む
ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
脱皮及び搗精された穀類を2~15片に裁断した後、蒸煮する工程(A’)と、
前記工程(A’)において蒸煮された穀類を0.4~1.2mmの厚さに圧偏する工程(B’)と、
前記工程(B’)において圧偏された穀類を、20%以下の水分値にまで乾燥させることで、穀類加工物を得る工程(C’)と、
を含む、所望の程度の外観、食感及び粘り気を有する炊飯米様食品を製造するための穀類加工物の製造方法。
【請求項10】
前記工程(A’)~(C’)のみをこの順で含む、
ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
0.4~1.2mmの圧偏厚さを有し、穀類を2~15片に裁断した裁断サイズを有し、20%以下の水分値を有する穀類加工物であって、
所望の程度の外観、食感及び粘り気を有する炊飯米様食品を製造するための穀類加工物であり、
脱皮及び搗精された穀類を蒸煮する工程(A)と、
前記工程(A)において蒸煮された穀類を0.4~1.2mmの厚さに圧偏する工程(B)と、
前記工程(B)において圧偏された穀類を、20%以下の水分値にまで乾燥させる工程(C)と、
前記工程(C)において乾燥された穀類を2~15片に裁断することで、穀類加工物を得る工程(D)と、
を経て製造される、又は
脱皮及び搗精された穀類を2~15片に裁断した後、蒸煮する工程(A’)と、
前記工程(A’)において蒸煮された穀類を0.4~1.2mmの厚さに圧偏する工程(B’)と、
前記工程(B’)において圧偏された穀類を、20%以下の水分値にまで乾燥させることで、穀類加工物を得る工程(C’)と、
を経て製造される、
ことを特徴とする、所望の程度の外観、食感及び粘り気を有する炊飯米様食品作製用穀類加工物。
【請求項12】
請求項11に記載の穀類加工物を含む、
ことを特徴とする、前記穀類加工物以外の穀物源を実質的に含まず、所望の程度の外観、食感及び粘り気を有する炊飯米様食品。
【請求項13】
請求項12に記載の所望の程度の外観、食感及び粘り気を有する炊飯米様食品を使用してなる、
ことを特徴とするおにぎり又はチャーハン。
【請求項14】
脱皮及び搗精された穀類を蒸煮する工程(A)と、
前記工程(A)において蒸煮された穀類を0.4~1.2mmの厚さに圧偏する工程(B)と、
前記工程(B)において圧偏された穀類を、20%以下の水分値にまで乾燥させる工程(C)と、
前記工程(C)において乾燥された穀類を2~15片に裁断することで、穀類加工物を得る工程(D)と、
前記工程(D)において得られた前記穀類加工物を加熱調理することによって、前記穀類加工物以外の穀物源を実質的に含まない炊飯米様食品を得る工程(E)と、
を含む、炊飯米様食品の外観、食感及び粘り気を調節する方法。
【請求項15】
前記工程(A)~(E)のみをこの順で含む、
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
脱皮及び搗精された穀類を2~15片に裁断した後、蒸煮する工程(A’)と、
前記工程(A’)において蒸煮された穀類を0.4~1.2mmの厚さに圧偏する工程(B’)と、
前記工程(B’)において圧偏された穀類を、20%以下の水分値にまで乾燥させることで、穀類加工物を得る工程(C’)と、
前記工程(C’)において得られた前記穀類加工物を加熱調理することによって、前記穀類加工物以外の穀物源を実質的に含まない炊飯米様食品を得る工程(D’)と、
を含む、炊飯米様食品の外観、食感及び粘り気を調節する方法。
【請求項17】
前記工程(A’)~(D’)のみをこの順で含む
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀類加工物、穀類加工物の製造方法、炊飯米様食品の製造方法及び炊飯米様食品に関する。
【背景技術】
【0002】
炊飯米とは、一般的に、炊飯器などで炊飯した、デンプンがアルファー化された調理済み米を意味し、一般的に「ごはん」と呼称される。炊飯米は、日本では古来より食されてきたが、現代においても重要な主食の一つとなっている。
【0003】
第2次世界大戦前の日本では、精白された米は貴重品であり高価であったため、安価な大麦に米を混ぜて炊飯した“大麦ごはん”等が主流であった。大麦には食物繊維が豊富に含まれているため、日本人は穀類から多くの食物繊維を摂取できていた。しかしながら、戦後の高度成長期を迎え、精白技術が進歩し、主食として精白米が一般的に食されるようになると、食物繊維が豊富な大麦の需要は低下し、その結果、主食から食物繊維を摂取する機会が減っていった。
【0004】
近年、主食として、オーツ麦の加工品である「オートミール」が注目されている。オートミールには食物繊維やその他の栄養素が豊富に含まれていることから、健康食やダイエット食として需要が拡大しつつある。
【0005】
オートミールは、一般的にお粥にして食されるが、より日本人に親しみのある食べ方として、オートミールを炊飯米(ごはん)のような食感にする「米化」の方法が提案されている(非特許文献1、2)。
【0006】
オートミールの米化は、オーツ麦を裁断しないで圧偏したロールドタイプのオートミールと、全粒を細かく裁断したインスタントタイプ(又はクイッククッキング)のオートミールと、を混合して水を加え、電子レンジなどで加熱する方法が一般的である。ロールドタイプのオートミールは、厚みがあり、裁断されていないため、米のような食感を有する一方、粘り気が無い。一方、インスタントタイプのオートミールは、裁断され、極めて薄く圧偏されていることから、お米の食感は有さないが、粘り気がある。したがって、お米の食感及び粘り気の両方を有する日本の炊飯米を模擬するためには、ロールドタイプ及びインスタントタイプの2種類のオートミールを混合する必要があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】オートミール米化ダイエットレシピ,これぞう著,石原新菜監修,株式会社学研プラス
【文献】オートミール米化がっつりヘルシーレシピ,これぞう著,株式会社学研プラス
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、日本人に馴染みの深い炊飯米(ごはん)を模擬するためにオートミールの米化を行う場合、ロールドタイプ及びインスタントタイプのオートミールの2種類を混合する必要があるため、手間がかかり、かつコストもかかるものであった。また、ロールドタイプ及びインスタントタイプのオートミールは、本来、炊飯米を模擬して調理する目的に特化していないため、炊飯米の外観、食感及び粘り気を模擬するのには限界があり、また、その外観、食感及び粘り気を所望の程度に調整することも困難であった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、炊飯米の外観、食感及び粘り気を模擬することに特化した、炊飯米様食品を作製するための穀類加工物及びその製造方法、並びに炊飯米と同程度の外観、食感及び粘り気を有し、前記穀類加工物以外の穀物源を実質的に含まない炊飯米様食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る穀類加工物は、
以下のa)~e)の特徴を有し、水を加えて加熱調理することにより炊飯米様食品を作製するためのものである。
a)脱皮及び搗精された穀類を蒸煮、圧偏及び裁断したものであること
b)0.4~1.2mmの厚さを有すること
c)20%以下の水分値を有すること
d)前記炊飯米様食品は、前記穀類加工物以外の穀物源を実質的に含まないこと
e)前記炊飯米様食品は、炊飯米と同程度の外観、食感及び粘り気を有すること
【0011】
本発明の第2の観点に係る穀類加工物の製造方法は、
脱皮及び搗精された穀類を蒸煮する蒸煮工程と、
前記蒸煮工程において蒸煮された穀類を0.4~1.2mmの厚さに圧偏する圧偏工程と、
前記圧偏工程において圧偏された穀類を乾燥させることで20%以下の水分値を有する穀類加工物を得る工程と、
を含み、
乾燥された穀類を裁断する、又は
前記蒸煮工程において、脱皮及び搗精された穀類を裁断した後、該穀類を蒸煮する。
【0012】
例えば、前記穀類は、2~15片に裁断される。
【0013】
本発明の第3の観点に係る炊飯米様食品の製造方法は、
本発明の第1の観点に係る穀類加工物に、水を加えて加熱調理する工程を含み、
前記炊飯米様食品は、前記穀類加工物以外の穀物源を実質的に含まず、炊飯米と同程度の外観、食感及び粘り気を有する。
【0014】
本発明の第4の観点に係る炊飯米様食品は、
本発明の第1の観点に係る穀類加工物を含み、
前記穀類加工物以外の穀物源を実質的に含まず、炊飯米と同程度の外観、食感及び粘り気を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、炊飯米の外観、食感及び粘り気を模擬することに特化した、炊飯米様食品を作製するための穀類加工物及びその製造方法、並びに炊飯米と同程度の外観、食感及び粘り気を有し、前記穀類加工物以外の穀物源を実質的に含まない炊飯米様食品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の炊飯米様食品に用いられる穀類加工物の製造工程を例示した図であり、(a)はオーツ麦を用いて得られる穀類加工物の製造工程(乾燥後に裁断)を示した図であり、(b)はオーツ麦を用いて得られる穀類加工物の製造工程(脱皮・搗精と蒸煮との間に裁断)を示した図である。
図2】本実施例の炊飯米様食品であるごはんの写真図である。
図3】本実施例の炊飯米様食品であるおにぎりの写真図である。
図4】本実施例の炊飯米様食品であるチャーハンの写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1.穀類加工物の製造方法)
本発明の穀類加工物の製造方法は、
脱皮及び搗精された穀類を蒸煮する蒸煮工程と、
蒸煮工程において蒸煮された穀類を圧偏する圧偏工程と、
圧偏工程において圧偏された穀類を乾燥することで穀類加工物を得る工程と、
を含み、
乾燥された穀類を裁断する、又は蒸煮工程において、脱皮及び搗精された穀類を裁断した後、該穀類を蒸煮する。
【0018】
前述の圧偏工程において、圧偏された穀類を裁断する場合を、本明細書において「第1の製造方法」という。第1の製造方法の工程順は、以下のとおりである。
脱皮→搗精→蒸煮→圧偏→乾燥→裁断
【0019】
前述の蒸煮工程において、脱皮及び搗精された穀類を裁断した後、該穀類を蒸煮する場合を、本明細書において「第2の製造方法」という。第2の製造方法の工程順は、以下のとおりである。
脱皮→搗精→裁断→蒸煮→圧偏→乾燥
【0020】
本発明の方法により得られる穀類加工物に、後述のとおり、水を加えて加熱調理することで「炊飯米様食品」を作製することができる。本明細書において、「炊飯米様食品」とは、本発明の穀類加工物に水を加えて加熱調理したものであって、以下の特徴を有する。
・本発明の穀類加工物以外の穀物源を実質的に含まないこと(後述)
・炊飯米と同程度の外観、食感及び粘り気を有すること(後述)
「炊飯米様食品」は、具体的には、炊飯米のように喫食するもの(いわゆる“ごはん”(パックごはんも含む))、おにぎり、チャーハン、リゾット、ドリア等であり、冷蔵品又は冷凍品も含まれる。
【0021】
本発明において用いられる穀類は、例えば、オーツ麦、大麦、小麦、玄米など、一般的に押し麦の形状に加工できる穀類である。
【0022】
上記の蒸煮工程では、脱皮及び搗精された穀類を蒸煮する。蒸煮して穀類に加水させて柔らかくして弾力性を持たせることで、後述の圧偏工程によって穀類を粉砕することなく引き延ばすことができる。なお、搗精後に、穀類の粒の表面に存在するぬかを安定化させる目的で、乾燥加熱(例えば、温風による乾燥加熱)してもよく、この乾燥加熱は、粒を一時保管する場合やバッチ作業を要する場合に採用され得る。この場合、乾燥加熱後に蒸煮を行うことができる。また、穀類を蒸煮した後、冷却させてもよく、また、水分及び温度を所定の程度に調整してもよい。
【0023】
蒸煮の具体的方法について、例えば、蒸気下(100℃)で数十分間行ってもよく、又は1atm以上の圧力下で100℃以上の温度で30分以上蒸煮する等してもよい。穀類の種類や炊飯米様食品の種類等に鑑み、適宜変更することができる。
【0024】
上記の圧偏工程では、蒸煮工程において蒸煮された穀類を圧偏することで穀類加工物を得る。圧偏の具体的方法としては、例えば、加熱されたローラー間に穀類を通過させて圧偏する方法、鉄板等の平板を穀類に押し付けて圧偏する方法等を挙げることができる。穀類は、0.4~1.2mmの厚さに圧偏され、厚さ0.4~1.2mmの範囲では、炊飯米様の好ましい外観、食感及び粘り気を有する炊飯米様食品(後述)を製造することができる。
【0025】
上記の圧偏工程で圧偏した穀類を、乾燥させることで穀類加工物を得る。乾燥の具体的方法は、例えば、熱風乾燥による方法;熱した鉄板などで煎る方法;減圧乾燥による方法;天日干しによる方法;自然乾燥による方法;凍結乾燥による方法等であり、穀類の種類や炊飯米様食品の種類等に鑑み、適宜選択することができる。なお、炊飯米と同程度の外観、食感及び粘り気を有する炊飯米様食品(後述)を得る観点から、穀類加工物における水分値が20%以下となるように乾燥させ、好ましくは15%以下の水分値、より好ましくは14%以下の水分値となるように乾燥させる。
【0026】
裁断について、第1の製造方法では、圧偏・乾燥された穀類を裁断し、第2の製造方法では、蒸煮工程において脱皮及び搗精された穀類を裁断した後、該穀類を蒸煮する。裁断の具体的方法は、例えば、裁断刃(裁断機)による方法;穀類を何らかの表面に叩きつけて粉砕し、その後篩の目に通す方法;篩の目に穀類を押し付ける方法等であり、穀類の種類や炊飯米様食品の種類等に鑑み、適宜選択することができる。また、穀類は、例えば、2~15片に裁断されてもよい。裁断サイズについては、穀類の種類、炊飯米様食品の種類等に鑑み、適宜選択することができる。なお、穀類を裁断する際に、例えば、裁断刃(裁断機)による方法において、たまたま穀類が裁断刃に接触しなかったために、穀類が裁断されずにすり抜ける場合などが想定され得るが、本発明の穀類加工物の製造方法において、このような、たまたま裁断されずにすり抜けて得られた穀類が排除されることはない。
【0027】
穀類加工物を得るまでの工程について、具体的に説明する。
【0028】
オーツ麦を用いて穀類加工物を得る工程の一例(第1の製造方法)を説明する(図1(a))。オーツ麦を脱皮機に投入して外皮を取り除き(脱皮)、その後、搗精機により搗精する。脱皮及び搗精されたオーツ麦を乾燥加熱させ、その後、飽和水蒸気下、100℃以上で数十分、蒸煮する。蒸煮したオーツ麦を厚さ0.4~1.2mmに圧偏し、その後、乾燥させる。乾燥させたオーツ麦を、2~4片に裁断して、穀類加工物を得る。
【0029】
オーツ麦を用いて穀類加工物を得る別の工程の一例(第2の製造方法)を説明する(図1(b))。オーツ麦を脱皮機に投入して外皮を取り除き(脱皮)、その後、搗精機により搗精する。脱皮及び搗精されたオーツ麦を2~4片に裁断し、その後、飽和水蒸気下、100℃以上で数十分、蒸煮する。蒸煮したオーツ麦を厚さ0.4~1.2mmに圧偏し、その後、乾燥させて、穀類加工物を得る。
【0030】
第1の製造方法では、蒸煮及び圧偏の後に穀類を裁断する。この場合、穀類の表面はぬかの存在により吸水性に乏しく、裁断面のみから吸水されるため、吸水性が低い傾向の穀類加工物を得ることができる。一方、第2の製造方法では、裁断の後に、蒸煮及び圧偏を行う。この場合、裁断面が圧偏されて引き延ばされるため、第1の製造方法で得られる穀類加工物よりも吸水性が高い傾向の穀類加工物を得ることができる。炊飯米様食品において所望の外観、食感及び粘り気を得るために、適宜、吸水性の低い第1の製造方法で得られる穀類加工物と、吸水性の高い第2の製造方法で得られる穀類加工物と、を選択することが可能であり、炊飯米様食品の外観、食感及び粘り気を所望の程度に調節することができる。
【0031】
(2.穀類加工物)
本発明の穀類加工物は、水を加えて加熱調理することで炊飯米様食品を作製するためのものであり、以下の特徴を有する。
・脱皮及び搗精された穀類を蒸煮、圧偏及び裁断したものであること
・0.4~1.2mmの厚さを有すること
・20%以下の水分値を有すること
なお、穀類、炊飯米様食品、蒸煮、圧偏及び裁断等の詳細については、前述同様である。
【0032】
本発明の穀類加工物は、炊飯米様の好ましい外観、食感及び粘り気を有する炊飯米様食品(後述)を得る観点から、0.4~1.2mmの厚さを有し、かつ、水分値が20%以下となるように調整されている。水分値について、好ましくは15%以下の水分値、より好ましくは14%以下の水分値に調整されている。
【0033】
(3.炊飯米様食品)
本発明の炊飯米様食品は、本発明の穀類加工物に水を加えて加熱調理(後述)したものであって、以下の特徴を有する。
・本発明の穀類加工物以外の穀物源を実質的に含まないこと
・炊飯米と同程度の外観、食感及び粘り気を有すること
なお、本発明の炊飯米様食品は、具体的には、炊飯米のように喫食するもの(いわゆる“ごはん”(パックごはんも含む))、おにぎり、チャーハン、リゾット、ドリア等であり、冷蔵品又は冷凍品も含まれる。
【0034】
本発明の炊飯米様食品は、本発明の穀類加工物以外の穀物源を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、炊飯米様食品の穀物源(オーツ麦、大麦、小麦、玄米など)として機能する量で、本発明の穀類加工物以外の他の穀類(オーツ麦、大麦、小麦、玄米など)を添加しないことを意味するが、このことは、風味付けや色の調整などの目的での、本発明の穀類加工物以外の他の穀類の存在を排除するものではない。
【0035】
本発明の炊飯米様食品は、炊飯米と同程度の外観、食感及び粘り気を有する。「炊飯米と同程度の外観、食感及び粘り気」とは、本発明の炊飯米様食品を喫食した際に、炊飯米と同程度又は炊飯米と遜色のない程度の外観、食感及び粘り気を感じることができ、かつ、炊飯米と同程度又は炊飯米と遜色のない程度の食品として楽しめる外観、食感及び粘り気の度合いを有することを意味する。より具体的には、「外観」とは「炊飯米特有の粒立ち・粒感が視認され得ること」、「食感」とは「喫食した場合に、炊飯米特有の適度なもっちり感を含む食感が得られること」、「粘り気」とは「喫食した場合に、炊飯米特有の粘り気が感じられること、またチャーハンの場合はパラパラ感が感じられること」を意味する。なお、本明細書において「炊飯米」とは、白米を炊飯器などで炊飯した、デンプンがアルファー化された一般的な調理済み米であって、日本人が通常食する、いわゆる「ごはん」を意味する。
【0036】
(4.炊飯米様食品の製造方法)
本発明の炊飯米様食品の製造方法は、本発明の穀類加工物に水を加えて加熱調理する工程を含む。
【0037】
本発明の穀類加工物に加える水の量は、例えば、穀類加工物100質量部に対して150~300質量部であってもよい。穀類の種類、炊飯米様食品の種類等に鑑み、適宜選択することができる。
【0038】
加熱調理の具体的方法として、例えば、穀類加工物に所定量の水を加えて電子レンジで加熱する方法が挙げられるが、加熱方法についてはこれに限定されることなく、炒める、焼く、煮る、揚げる、蒸す等も含まれる。加熱時間について、電子レンジで加熱する場合、例えば、出力500~600Wで1~3分間加熱してもよい。穀類の種類、炊飯米様食品の種類等に鑑み、適宜選択することができる。
【0039】
本発明の炊飯米様食品の製造方法の具体例について以下説明する。
【0040】
[炊飯米(ごはん)のように喫食する場合]
本発明の穀類加工物30g及び水70mLを深めの容器に入れ、水分を浸透させるために軽く撹拌する。ラップをかけずに電子レンジ(500~600W)で2分30秒加熱する。加熱後、軽く撹拌し、そのまま「ごはん」として喫食する。この場合、炊飯米の外観、食感、粘り気を模擬させるために、例えば、穀類の圧偏の厚さを所望程度とし、適度な粘り気を出すために裁断数を増やしたり、裁断の幅を狭くしてもよい。
【0041】
[おにぎり状にして喫食する場合]
本発明の穀類加工物30g及び水70mLを深めの容器に入れ、水分を浸透させるために軽く撹拌する。ラップをかけずに電子レンジ(500~600W)で2分30秒加熱する。加熱後、適量の塩又はアミノ酸調味料と数滴のごま油を加え、軽く撹拌した後、おにぎりの形に成型する(中心部におにぎりの具材を入れてもよい)。この場合、調理後、冷めてからも、食感を維持させ、適度な粘り気を出すために、前述の“炊飯米のように喫食する場合”よりも、穀類の圧偏の厚さを薄く設定し、裁断数を増やしたり、裁断の幅をさらに狭くしてもよい。
【0042】
[チャーハンとして喫食する場合]
本発明の穀類加工物30g及び水50~60mLを深めの容器に入れ、水分を浸透させるために軽く撹拌する。ラップをかけずに電子レンジ(500~600W)で2分加熱する。加熱後、粗熱をとり、フライパンなどで、チャーハンの具材や調味料を加えて調理する。この場合、チャーハン特有のパラパラ感を出すために、前述の“炊飯米のように喫食する場合”よりも、穀類の圧偏の厚さをさらに厚めに設定し、裁断数を減らしたり、裁断の幅をさらに広くしてもよい。
【0043】
(5.小括)
以上説明したように、本発明によれば、炊飯米の外観、食感及び粘り気を模擬することに特化した、炊飯米様食品を作製するための穀類加工物及びその製造方法、並びに炊飯米と同程度の外観、食感及び粘り気を有し、前記穀類加工物以外の穀物源を実質的に含まない炊飯米様食品及びその製造方法を提供することができる。
【0044】
従来、炊飯米を模擬するためにオートミールの米化を行う場合、ロールドタイプ及びインスタントタイプのオートミールの2種類を混合していたが、ロールドタイプ及びインスタントタイプのオートミールは、本来、炊飯米を模擬して調理する目的に特化していないため、炊飯米の外観、食感、粘り気を模擬するのには限界があり、また、その外観、食感、粘り気を所望の程度に調整することも困難であった。本発明によれば、白米による炊飯米と同程度又は遜色のない程度に炊飯米の外観、食感及び粘り気を模擬することができ、また、穀類の圧偏の厚さ、裁断サイズ、蒸煮の条件等を変えることで、炊飯米様食品の外観、食感、粘り気を所望の程度に調節することができる。このため、本発明によれば、食物繊維やその他の栄養素が豊富な穀類を用いた、主食となる炊飯米様食品という、新たな食品分野が開拓されることになる。
【0045】
従来、炊飯米を模擬するためにオートミールの米化を行う場合、ロールドタイプ及びインスタントタイプのオートミールの2種類を混合する必要があったが、本発明によれば、炊飯せずに簡便かつ短時間で炊飯米のように喫食できる炊飯米様食品を提供することができる。茶碗一杯分の単位でも、穀類加工物に少量の水を加えて、電子レンジなどで短時間加熱することによって、簡便に、白米による炊飯米のような外観、食感及び粘り気を有する炊飯米様食品を調理することができる。
【0046】
本発明によれば、炊飯米のように喫食するもの(いわゆる“ごはん”(パックごはんも含む))、おにぎり、チャーハン、リゾット、ドリア等、所望の炊飯米様食品の種類にあわせて、穀類の圧偏の厚さ、裁断サイズ、蒸煮の条件等を変えることで、それぞれの種類に適した穀類加工物を得ることができる。このように、穀類の圧偏の厚さ、裁断サイズ、蒸煮の条件等を、製造する炊飯米様食品の種類にあわせて調節することができる。
【0047】
本発明により、簡便な加熱調理によって穀類を用いた炊飯米様食品を得ることができる。日本の食生活の変化により、主食から食物繊維を摂取する機会が減っていたが、本発明によれば、主食から簡便に穀類の食物繊維を摂取することができる。また、茶碗一杯分の単位でも、炊飯する手間もなく即席で簡便に炊飯米様食品を得ることができるため、一人世帯や職場など、幅広い年代で大きな需要が見込まれる。また、コンビニエンスストアやスーパーなどで購入される“中食”についても、近年の食意識の高まりにより、美味しさだけでなく、栄養や腹持ちも着目されて選択される傾向にあるが、本発明による炊飯米様食品は、オーツ麦、大麦、小麦、玄米などの穀類を用いているため食物繊維や他の栄養素が豊富であり、腹持ちも良いため、中食分野においてもおにぎり等の需要が期待される。このように、本発明は、既存のさまざまな炊飯米製品の代替品として普及し、幅広い世代の健康寿命の改善に寄与することが期待される。
【実施例
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
オーツ麦を、脱皮機に投入して外皮を取り除き(脱皮)、その後、搗精機により搗精した。搗精したオーツ麦を蒸気(100℃)にて数十分煮沸(蒸煮)した後、加熱された圧偏ローラーで厚さ0.9mmに圧偏した。その後、熱風乾燥により水分値14%以下まで乾燥させ、裁断機を用いて4片に裁断することで、オーツ麦加工物(穀類加工物)を得た。
【0050】
上記のとおり得られたオーツ麦加工物(穀類加工物)を、以下のとおり加熱調理した。
【0051】
[炊飯米のように喫食するもの(ごはん)]
穀類加工物30g及び水70mLを深めの容器に入れ、水分を浸透させるために軽く撹拌した。ラップをかけずに電子レンジ(500~600W)で2分30秒加熱した。加熱後、軽く撹拌し、ごはんの炊飯米様食品を得た。
【0052】
上記のとおり得られたごはんの炊飯米様食品の外観は、若干薄茶色であるものの、炊飯米(ごはん)特有の粒立ちが見られた。そのままごはんとして喫食したところ、外観、食感及び粘り気について、白米による炊飯米と同程度又は遜色のない結果となった。
【0053】
[おにぎり]
穀類加工物30g及び水70mLを深めの容器に入れ、水分を浸透させるために軽く撹拌した。ラップをかけずに電子レンジ(500~600W)で2分30秒加熱した。加熱後、適量の塩又はアミノ酸調味料と数滴のごま油を加え、軽く撹拌した後、おにぎりの形に成型し、おにぎりの炊飯米様食品を得た。
【0054】
上記のとおり得られたおにぎりを冷めてから喫食したところ、外観、食感及び粘り気について、白米によるおにぎりと同程度又は遜色のない結果となった。
【0055】
[チャーハン]
穀類加工物30g及び水50~60mLを深めの容器に入れ、水分を浸透させるために軽く撹拌した。ラップをかけずに電子レンジ(500~600W)で2分加熱した。加熱後、粗熱をとり、フライパンなどで、チャーハンの具材や調味料を加えて調理して、チャーハンの炊飯米様食品を得た。
【0056】
上記のとおり得られたチャーハンの炊飯米様食品を喫食したところ、白米によるチャーハンと外観及び食感において同程度又は遜色のない結果となり、また、白米によるチャーハンと同様のパラパラ感が出ていることが確認された。
【0057】
以上より、本実施例によるごはん、おにぎり及びチャーハンの炊飯米様食品においては、白米によるものと同程度又は遜色のない外観、食感及び粘り気が実現されていることが示された。
【0058】
(実施例2)
(ごはんの官能試験)
オーツ麦を、脱皮機に投入して外皮を取り除き(脱皮)、その後搗精機により搗精した。搗精したオーツ麦を蒸気(100℃)にて数十分煮沸(蒸煮)した後、加熱された圧偏ローラーで厚さ0.9mmに圧偏した。その後、熱風乾燥により水分値14%以下まで乾燥させ、裁断機を用いて2~3片に裁断することで、オーツ麦加工物(穀類加工物)を得た。
【0059】
上記のとおり得られたオーツ麦加工物30g及び水70mLを深めの容器に入れ、水分を浸透させるために軽く撹拌した。ラップをかけずに電子レンジ(500~600W)で2分30秒加熱した。加熱後、軽く撹拌し、ごはんの炊飯米様食品を得た。
【0060】
上記のとおり得られたごはんの炊飯米様食品を以下の官能試験に用いた。なお、調理後の実施例のごはんの写真を図2に示す。
【0061】
以下の採点基準に従い、4名のパネリストがごはんの炊飯米様食品を喫食することで官能試験を行った。対照品として、一般的な白米によるごはんを用いた。評価項目は、「外観(炊飯米特有の粒立ち・粒感が視認されるか)」「香り(食欲をそそるかどうか)」「味(主食としておいしく食べられるかどうか)」「食感」「粘り気」の5項目とした。4名の点数を合計し、各評価項目において平均点を算出した。
5点:対照品と同等である。
4点:対照品との差がわずかにある。
3点:対照品との差が少しある。
2点:対照品との差がある。
1点:対照品と著しく異なる。
【0062】
官能試験の結果を表1に示す。「外観」「香り」「味」「食感」「粘り気」の全項目において、4点(対照品との差がわずかにある)以上の平均点となり、対照品の白米ごはんと同程度又は遜色ない結果となった。
【0063】
【表1】
【0064】
また、対照品として、インスタントタイプとロールドタイプの2種類のオートミールを混ぜて作製した一般的なオートミールごはんを用いて、上記同様に官能試験を行った。対照品の作製方法について、より具体的には、インスタントタイプのオートミール(商品名:プレミアムピュアオートミール、日本食品製造合資会社製)23g、ロールドタイプのオートミール(商品名:トラディショナルオートミール、日本食品製造合資会社製)7g及び水50mLを深めの容器に入れ、水分を浸透させるために軽く撹拌した。ラップをかけずに電子レンジ(500W)で1分30秒加熱した。加熱後、軽く撹拌し、対照品のオートミールごはんを得た。
【0065】
官能試験の結果、「外観」の評価項目ついては、平均点「3.3」となり、本実施例のごはんは、対照品のオートミールごはんと外観の差があることがわかった。パネリストは具体的には、本実施例のごはんが「粒感があって、より米と近い」「より米と近い」と評価した。
【0066】
また、「香り」の評価項目ついては、パネリスト全員が「5点:対照品と同等である」と評価し、本実施例のごはんは、対照品のオートミールごはんと同等の香りを有することがわかった。
【0067】
また、「味」の評価項目ついては、平均点「4.3」となり、本実施例のごはんは、対照品のオートミールごはんと味の差がわずかにあることがわかった。パネリストは具体的には、本実施例のごはんが「香ばしさがあっておいしい」「オートミールごはんよりも味が濃い」と評価した。
【0068】
また、「食感」の評価項目ついては、平均点「1.8」となり、本実施例のごはんは、対照品のオートミールごはんと食感においてかなりの差があることがわかった。パネリストは具体的には、本実施例のごはんが「対照品のオートミールごはんのような、べちゃっとした感じがなく、米に近い」「冷えても(時間をおいても)白米に近い食感が残る」「対照品のオートミールごはんよりも噛み応えがある」「粒感があり、お米を食べている感じが強い」と評価した。
【0069】
また、「粘り気」の評価項目ついては、平均点「2.0」となり、本実施例のごはんは、対照品のオートミールごはんと粘り気においてかなりの差があることがわかった。パネリストは具体的には、本実施例のごはんが「対照品のオートミールごはんよりも粘り気が少なく、より白米ごはんに近い」「冷えても(時間をおいても)白米ごはんに近い粘り気が残る」「対照品のオートミールごはんよりも粘り気が少なく、粒と粒が独立している」「対照品のオートミールごはんは団子状である一方で、本実施例のごはんは粘り気と粒のバランスが白米ごはんに近い」と評価した。
【0070】
以上より、本実施例のごはんの炊飯米様食品は、一般的な白米ごはんと「外観」「香り」「味」「食感」「粘り気」において同程度又は遜色がなく、炊飯米と同じように喫食できることが示された。また、本実施例のごはんの炊飯米様食品においては、従来のオートミールごはんよりも「外観」「食感」「粘り気」が白米ごはんに近く、「味」も良好であることが示された。
【0071】
(実施例3)
(おにぎりの官能試験)
オーツ麦を、脱皮機に投入して外皮を取り除き(脱皮)、その後搗精機により搗精した。搗精したオーツ麦を蒸気(100℃)にて数十分煮沸(蒸煮)した後、加熱された圧偏ローラーで厚さ0.9mmに圧偏した。その後、熱風乾燥により水分値14%以下まで乾燥させ、裁断機を用いて2~3片に裁断することで、オーツ麦加工物(穀類加工物)を得た。
【0072】
上記のとおり得られたオーツ麦加工物30g及び水70mLを深めの容器に入れ、水分を浸透させるために軽く撹拌した。ラップをかけずに電子レンジ(500~600W)で2分30秒加熱した。加熱後、適量の塩又はアミノ酸調味料と数滴のごま油を加え、軽く撹拌した後、おにぎりの形に成型し、おにぎりの炊飯米様食品を得た。
【0073】
上記のとおり得られたおにぎりの炊飯米様食品を以下の官能試験に用いた。なお、調理後の実施例のおにぎりの写真を図3に示す。
【0074】
以下の採点基準に従い、4名のパネリストがおにぎりの炊飯米様食品を冷ましてから喫食することで官能試験を行った。対照品として、一般的な白米ごはんのおにぎりを冷ましたものを用いた。評価項目及び算出方法については、実施例2と同様である。
【0075】
官能試験の結果を表2に示す。「味」において、パネリスト全員が「5点:対照品と同等である」と評価した。また、「外観」「香り」「食感」「粘り気」については、4点(対照品との差がわずかにある)以上の平均点となり、対照品のおにぎりと同程度又は遜色ない結果となった。
【0076】
【表2】
【0077】
以上より、本実施例のおにぎりの炊飯米様食品は、一般的な白米ごはんと同等の「味」が得られ、「外観」「香り」「食感」「粘り気」も同程度又は遜色がないため、一般的な白米ごはんのおにぎりと同じように喫食できることが示された。
【0078】
(実施例4)
(チャーハンの官能試験)
オーツ麦を、脱皮機に投入して外皮を取り除き(脱皮)、その後搗精機により搗精した。搗精したオーツ麦を蒸気(100℃)にて数十分煮沸(蒸煮)した後、加熱された圧偏ローラーで厚さ0.9mmに圧偏した。その後、熱風乾燥により水分値14%以下まで乾燥させ、裁断機を用いて2~3片に裁断することで、オーツ麦加工物(穀類加工物)を得た
【0079】
上記のとおり得られたオーツ麦加工物30g及び水50~60mLを深めの容器に入れ、水分を浸透させるために軽く撹拌した。ラップをかけずに電子レンジ(500~600W)で2分加熱した。加熱後、粗熱をとり、フライパンで、チャーハンの具材や調味料を加えて調理して、チャーハンの炊飯米様食品を得た。
【0080】
上記のとおり得られたチャーハンの炊飯米様食品を以下の官能試験に用いた。なお、調理後の実施例のチャーハンの写真を図4に示す。
【0081】
以下の採点基準に従い、4名のパネリストがチャーハンの炊飯米様食品を喫食することで官能試験を行った。対照品として、一般的な白米ごはんで調理したチャーハンを用いた。評価項目は、「外観(炊飯米によるチャーハン特有の粒立ち・粒感が視認されるか)」「香り(オートミールの香りが気になるかどうか)」「味(チャーハンとしておいしく食べられるかどうか)」「食感」「パラパラ感」の5項目とした。4名の点数を合計し、各評価項目において平均点を算出した。
5点:対照品と同等である。
4点:対照品との差がわずかにある。
3点:対照品との差が少しある。
2点:対照品との差がある。
1点:対照品と著しく異なる。
【0082】
官能試験の結果を表3に示す。「外観」「香り」「味」「パラパラ感」において、パネリスト全員が「5点:対照品と同等である」と評価した。また、「食感」については、4.8点であり、「5点:対照品と同等である」と近い値となった。
【0083】
【表3】
【0084】
以上より、本実施例のチャーハンの炊飯米様食品は、一般的な白米ごはんによるチャーハンと同等の「外観」「香り」「味」「パラパラ感」が得られ、「食感」も同程度であるため、一般的な白米ごはんによるチャーハンと同じように喫食できることが示された。
【0085】
なお、本発明は、本発明の広義の精神及び範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【0086】
本発明は、2022年2月1日に出願された日本国特許出願2022-14151号に基づく。本明細書中に日本国特許出願2022-14151号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
図1
図2
図3
図4