(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】注水口装置
(51)【国際特許分類】
F16L 35/00 20060101AFI20240517BHJP
A41D 13/005 20060101ALI20240517BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F16L35/00 Z
A41D13/005 103
B01D63/02
(21)【出願番号】P 2023534874
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2022027931
(87)【国際公開番号】W WO2023286868
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2021117820
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509046505
【氏名又は名称】hap株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594180232
【氏名又は名称】株式会社三機コンシス
(74)【代理人】
【識別番号】110002114
【氏名又は名称】弁理士法人河野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100128624
【氏名又は名称】穂坂 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138483
【氏名又は名称】村上 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【氏名又は名称】篠原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 素
(72)【発明者】
【氏名】鴨川 広樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 正秀
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05263336(US,A)
【文献】特開2020-143385(JP,A)
【文献】国際公開第2013/105478(WO,A1)
【文献】中国実用新案第209498631(CN,U)
【文献】特開2019-196571(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0031428(US,A1)
【文献】国際公開第2020/263090(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 35/00
A41D 13/005
B01D 63/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を通す管であって前記管を通過する過程で滲出した液体が滲出した場所で機能を発揮する前記管に液体を注入する注入口装置であって、
注入する液体の入口である注入口と
注入された液体を前記管に向けて放出する出口と
注入された液体を前記注入口から前記出口に案内する案内通路を備えており、
前記注入口はボタン様
部材に備わり
前記機能を利用する対象である機能利用対象はボタン穴を備えており、
前記ボタン様部材が前記ボタン穴を前記機能利用対象の内側から外側に向けて通過して、
前記機能利用対象において外側に向けて露出して機能利用対象に取り付けられる注入口装置。
【請求項2】
前記管が液体が流れる中空糸膜であり、前記液体は前記中空糸膜の側面の微細孔または前記中空糸膜の端部開口から流出することを特徴とする請求項1に記載の注水口装置。
【請求項3】
水を通す中空糸膜であって、
中空糸膜を通過し中空糸膜を通過する過程で中空糸膜の側壁に備わる微細孔から放出された水が布に浸透し中空糸膜の周囲を冷却する冷却ユニットにおいて中空糸膜に水を注入する注入口装置であって、
注入する水の入口である注入口と、
注入された水を中空糸膜に向けて放出する出口と、
注入された水を注入口から出口に案内する案内通路を備えており、
前記注入口は冷却ユニットを利用する冷却ユニット利用対象に取り付けてあり、
前記注入口はボタン様
部材に備わり前記冷却ユニット利用対象はボタン穴を備えており、
前記ボタン様部材が前記ボタン穴を前記冷却ユニット利用対象の内側から外側に向けて通過して、
前記冷却ユニット利用対象において外側に向けて露出して冷却ユニット利用対象に取り付けてある注入口装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
管を流れる液体が管を通過し放出された場所で機能を発揮する製品における、管に流す液体を注入する注入口装置に関する。
中空糸膜を流れ側壁の微細孔等から放出される水の冷却機能を利用した冷却ユニットを、衣類等に用いる場合の、水の注入口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、衣服を構成する布に中空糸膜等を張り巡らせ、中空糸膜に水を注入して、中空糸膜の表面の微細孔から染み出る水の気化熱により中空糸膜の周囲の空気を冷やす、という技術があった。これによりこのような衣服の着衣者は暑さを和らげることができる。この技術においては中空糸膜への注水が必要である。
【0003】
特許文献1には、上記技術を用いた衣服に用いる冷却装置が記載されている。特許文献1の冷却装置では、中空糸膜に水を注入する機構は
図7のとおりである。すなわち、冷却装置の冷却水供給部100が衣服の外部に延長され、延長部分の先端がポンプに連結され、ボトル102の水をポンプで吸い上げて注水する。
【0004】
上記のように注水する場合、衣服の外部に延長された冷却水供給部100があることが煩わしく、問題であった。また、ポンプがあることも煩わしかった。延長された冷却水供給部100を折りたたんで衣服の内側に収納すれば外部から見えなくなるが、その場合、着衣者は注水の際には着ている衣類を一度脱ぐ必要があり、これも煩わしかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
管を流れる液体が、管を通過し放出された場所で機能を発揮するような製品における、管に流す液体を注入する注入口装置であって、液体の注入が容易な装置を得ることを課題とする。
【0007】
中空糸膜を流れ側壁の微細孔等から放出される水の冷却機能を利用した冷却ユニットを、衣類等に用いる場合の、水の注入口装置であって、冷却ユニットの衣類へのつけ外しが容易な注入口装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]液体を通す管であって、前記管を通過し滲出した液体が滲出した場所で機能を発揮する前記管に液体を注入する注入口装置であって、注入する液体の入口である注入口と、注入された液体を前記管に向けて放出する出口と、注入された液体を前記注入口から前記出口に案内する案内通路を備えており、前記注入口は液体の前記機能を利用する機能利用対象に取り付けてあり、前記注入口は、液体を前記機能利用対象において外側から注入することを可能とするべく、前記機能利用対象において外側に向けて露出している注入口装置によって課題を解決する。
[2]前記注入口を備えたボタン様部材を備え、前記ボタン様部材は前記機能利用対象において外側に向けて露出していることを特徴とする[1]に記載の注水口装置によって課題を解決する。
[3]前記機能利用対象がボタン穴を備えており、前記ボタン様部材は、前記ボタン穴を前記機能利用対象の内側から外側に向けて通過して、前記機能利用対象において外側に向けて露出することを特徴とする[2]に記載の注水口装置によって課題を解決する。
[4]前記管が液体が流れる中空糸膜であり、前記液体は前記中空糸膜の側面の微細孔または前記中空糸膜の端部開口から流出することを特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載の注水口装置によって課題を解決する。
[5]水を通す中空糸膜であって、中空糸膜を通過し中空糸膜を通過する過程で中空糸膜の側壁に備わる微細孔から放出された水が布に浸透し中空糸膜の周囲を冷却する冷却ユニットにおいて中空糸膜に水を注入する注入口装置であって、注入する水の入口である注入口と、注入された水を中空糸膜に向けて放出する出口と、注入された水を注入口から出口に案内する案内通路を備えており、前記注入口は冷却ユニットを利用する冷却ユニット利用対象に取り付けてあり、前記注入口は、水を冷却ユニット利用対象において外側から注入することを可能とするべく、前記冷却ユニットにおいて外側に向けて露出している注入口装置によって課題を解決する。
[6]前記注入口を備えたボタン様部材を備え、前記ボタン様部材は前記冷却ユニット利用対象において外側に向けて露出していることを特徴とする[5]に記載の注水口装置によって課題を解決する。
[7]前記冷却ユニット利用対象がボタン穴を備えており、前記ボタン様部材は、前記ボタン穴を前記冷却ユニット利用対象の内側から外側に向けて通過して、前記冷却ユニット利用対象において外側に向けて露出することを特徴とする[6]に記載の注水口装置によって課題を解決する。
【0009】
管を通る液体としては、例えば水、薬剤、が対象である。水は常温水の他、冷水や温水も対象である。冷水の場合、周囲を冷やす等の機能を利用できる。温水の場合周囲を温める等の機能を利用できる。薬剤としては、例えば抗菌剤、消臭剤、温冷感剤、分解剤、吸水拡散剤、撥水等が対象であり、各薬剤の機能を利用できる。
【0010】
本願においては、「液体」には液体窒素を含む。液体窒素の急速冷却機能を用いることができる。例えば着圧ウェアのような脱ぎ難い衣類を着ている運動中に、筋肉を急速に冷却する必要がある場合、衣類を脱ぐことなく、衣類の外側から筋肉を冷やすことができる。
【0011】
管を通る液体が、諸機能を備えた微粒子状の固体が混合されていても対象となる。
【0012】
注入口装置は、入口と案内通路と出口を備えている。入口から液体を注入し、出口は液体を通す管と通じている。
【0013】
管を通過し滲出した液体が滲出した場所で発揮する機能とは、人体にもたらす機能や、飲食料品等にもたらす機能、及びその他の製品にもたらす機能である。
【0014】
機能利用対象とは、人体にもたらす機能にあっては、例えば、衣類、帽子、カバン、タオル、スカーフ、マスク、サポーター、靴、椅子カバー、自動車の座席シート等である。人間の身体に接触して機能を利用するものと、人間の近辺に置いて機能を利用するもののいずれもある。
【0015】
機能利用対象とは、飲食料品等にもたらす機能にあっては、野菜、魚や肉、飲料、等である。飲食料品等を、冷やしたり、温めたり、薬剤の効果を与えたりする際に、用いることができる。
【0016】
機能利用対象において外側から注入するとは、例えば対象が「衣類」である場合、衣類には着衣時に内側になる箇所と外側になる箇所が生じるところ、その場合の外側をいう。衣類の着衣時、液体を外側から注入することができると便利である。このために外側から注入することができるようにするべく、注入口を外側に向けて露出させる。かばん、靴、等でも同様に外側とは製品が外界と接している箇所である。タオル、スカーフ、等、着衣しない製品にあっては、外側とは製品が外界と接している箇所である。
【0017】
ボタン様部材とは、外観がボタンのような部材を言う。例えば、人が指で挟むことができる程度の大きさ・厚みであり、円形や方形の部材が対象である。デザインされた平面的な形体やある程度立体的な形体の部材も対象である。
【0018】
ボタン様部材を、ボタン穴を機能利用対象の内側から外側に向けて通過させる、とは、ボタン様部材が、あたかもボタン穴をくぐらせて留めるボタンのように用いられる状態をいう。すなわち、ボタン様部材は、機能利用対象にボタン穴がある場合には、ボタンのように用いられ、これにより注入口装置が機能利用対象に取り付けられる。
【0019】
管として水が流れる中空糸膜を用いることにより、中空糸膜内を流れる水は中空糸膜の側面の微細孔又は中空糸膜の端部開口から滲み出る。滲み出る水の気化熱を利用して中空糸膜の周囲の温度を冷やすことができる。そのような冷却機能を備えた製品を、冷却機能を利用する対象と別個の独立した製品とすることができる。汎用性を備えた製品とし、冷却機能を利用する対象に、取り付けたり、外したりすることのできる製品とすることができる。冷却ユニットとはそのような汎用性を備えた製品である。
【0020】
冷却ユニットの水注入口を、冷却ユニットにおいて外側に向けて露出させることにより、水を、冷却ユニットを利用する対象の外側から注入できる。冷却利用の対象が例えば衣類の場合には、衣類を脱ぐことなく、水の注入ができる。
【0021】
冷却ユニットを取り付ける対象にボタン穴を設けることによって、ボタン穴にボタンを通すような動作により、冷却ユニットを容易に取付けることができる。取り付ける対象が衣類の場合には、衣類がもとから備えるボタン穴を利用できる。
【0022】
上記のように取り付けた場合、注水口は外観上ボタンのごときであるため、注水口が衣類のデザインの邪魔をすることがない。また、洗濯の際等、冷却ユニットを取り外したい場合には、容易に取り外すことができる。
【0023】
冷却ユニットを衣服に取り付けて用いる場合、注入する水として、飲料水の入った市場で入手容易なペットボトルの水を利用することができる。注水口に抜き差しできる径の管を、ペットボトルの飲み口に嵌め込むことのできる蓋部材に取り付けて注入用蓋とする。注入用蓋をペットボトルの蓋と付け替えて、ペットボトルの水を注入する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照し説明する。
【実施例1】
【0026】
図1に、注水口装置10を説明的に示す。(a)は上面から見た状態を示し、(b)は右側面から見た状態を示し、(c)は正面から見た状態を示し、(d)は注水口装置10が備える案内管30とチューブ31の関係を示す。
【0027】
図1(a)から(d)に示す通り、注水口装置10は上方の第一部材12と、下方の第二部材13と、第一部材12と第二部材13を連結する柱部材11により、二階建てのような構造になっている。注水口20は第一部材12に備わり、注水口に連結したL字型の案内管30が柱部材11と第二部材13の内部を貫通している。チューブ31のさらに先は、図示しないが、後述の中空糸膜と通じている。第二部材13は
図1の(b)と(c)において符号13で示す通り、上方と下方の二つに分かれていても良い。図示しないが第二部材13のうち下方の部材を取り外すことでき、案内管30とチューブ31の取り付けがし易いようにされている。
【実施例2】
【0028】
実施例2を
図2に示す。実施例2は、注水口装置10を、ボタンホールのある衣類に取り付ける例である。衣類40では、前立て41にボタンホール42がある。注水口装置10の第一部材12を、ボタンホール42にくぐらせることができる大きさ・形体にし、第一部材12をボタンホール42にくぐらせて取り付ける。
【実施例3】
【0029】
実施例3は、実施例1と同様の注水口装置を、ボタンホールのない衣類に取り付ける例である(
図3)。実施例3で用いる注水口装置では、柱部材11は第二部材13から取り外すことができ、また、案内管30が、柱部材内と第二部材内とで分離可能になっている。ボタンホールのない衣類では、衣類に、注水口装置の柱部材11が通貫する大きさの穴を空ける。空けた穴に、衣類の外側から、第一部材と柱部材で構成された部材(図示せず)の柱部材の部位を挿入し、挿入された柱部材の部位に、衣類の内側から第二部材を嵌め込む。この結果、
図3に示す通り、衣類(Tシャツ)の外側からは注水口装置の第一部材44のみが見える状態になる。
図3に点線で表す通り、衣類の裏側には、注水口装置の冷却ユニット45が存する。
【実施例4】
【0030】
実施例4は、注水口装置を衣服の下方に取り付ける例である(
図4、
図5)。
図4及び
図5を参照して、Tシャツ50は、前身頃と後ろ身頃の間に脇布51を備える。冷却ユニット60は脇布51に縫い付け等の手段により取り付ける。冷却ユニット60のさらに下方に注水口装置70を備える。
【0031】
図5を参照して、冷却ユニット60には、注水口装置70を介して水が注入される。注入された水は、チューブ63を介して、冷却ユニット60に張り巡らせた中空糸膜(61a、61b、61c、61d)内に入る。各中空糸膜は表面に微細孔を備える。中空糸膜内の水は、表面の微細孔を介して吸水拡散布62に滲み出る。冷却ユニットでは、概略そのような機構により着衣者の身体を冷却する。
【0032】
図6(a)は注水口装置70を脇布51のボタンホール55に取り付ける前の状態を示す。注水口装置70は上部部材71及び下部部材73を備える。脇布51はボタンホール55を備える。注水口装置70の上部部材71を、脇布51の裏側からボタンホール55に差し入れ、ボタンホールによってボタンを嵌めるような要領でに注水口装置70を脇布51のボタンホール55に嵌める。
【0033】
図6(b)は注水口装置70を脇布51のボタンホール55に取り付けた後の状態を示す。注水口装置70をボタンホール嵌めて取り付けた後は、Tシャツ50の外部からは、注水口装置70は上部部材71のみが露出する。上部部材71が外部に露出することにより、外部から注水口75を介して冷却ユニットに注水ができる。注水口75は、案内管77に通じており、案内管77は、冷却ユニット60のチューブ63とつなげてある。チューブ63は分岐して中空糸膜(61a、61b、61c、61d)に通じている。
【0034】
水は、注入の際のポンプの働きにより、冷却ユニット60に張り巡らせた中空糸膜(61a、61b、61c、61d)の中を下から上に向けて流れる。このため、注水口装置70が衣類の下方に存在しても問題がない。
【0035】
図4で明らかなように、注水口装置70を衣類の下方に配置することにより、注水作業の際、Tシャツを着たままの姿勢で、注水口を目で見ることが容易である。また、着衣者の両手が注水口装置70に届くため、作業を両手で行うことができる。
【0036】
注水口装置11の第一部材12には、注水口20がある。このため、衣類の外側から注水ができる。
【符号の説明】
【0037】
10 注水口装置
11 柱部材
12 第一部材
13 第二部材
14 第二部材(案内管挿管用)
20 注水口
30 案内管
31 チューブ
40 衣類
41 前立て
42 ボタンホール
43 Tシャツ
44 注水口
45 冷却ユニット
50 Tシャツ
51 脇布
55 ボタンホール
60 冷却ユニット
61a,61b,61c,61d 中空糸膜
62 吸水拡散布
63 チューブ
70 注水口装置
71 上部部材
73 下部部材
75 注水口
77 案内管
100 冷却水供給部
102 ボトル