(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】保持システム
(51)【国際特許分類】
B65B 35/16 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
B65B35/16
(21)【出願番号】P 2023185132
(22)【出願日】2023-10-29
【審査請求日】2023-12-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和5年3月22日に、経済産業省&日本機械工業連合会 2022年度成果報告会にて公開 (2)令和5年6月6日に、FOOMA JAPAN 2023にて公開 (3)令和5年3月23日に、日刊工業新聞にて公開 (4)令和5年3月23日に、日本食糧新聞にて公開 (5)令和5年3月24日に、Impress Watchにて公開 (6)令和5年3月28日に、日刊工業新聞にて公開 (7)令和5年3月28日に、MONOistにて公開 (8)令和5年3月30日に、食品新聞にて公開 (9)令和5年3月28日に、https://www.youtube.com/watch?v=GZjYx9GFS4cにて公開 (10)令和5年3月29日に、https://www.youtube.com/watch?v=9y9iCfa5WC0にて公開 (11)令和5年6月8日に、https://www.youtube.com/watch?v=xdnywSp4FKgにて公開 (12)令和5年6月26日に、https://www.youtube.com/watch?v=oWb5pRHxWz0にて公開 (13)令和5年6月26日に、https://www.sbbit.jp/article/st/116633にて公開 (14)令和5年7月5日に、https://www.youtube.com/watch?v=v2gASx30Fw0にて公開 (15)令和5年9月20日に、惣菜・デリカJAPAN(SDJ)2023にて公開 (16)令和5年9月25日に、https://www.youtube.com/watch?v=Fy0IMKm72v8にて公開 (17)令和5年9月25日に、https://www.youtube.com/watch?v=SARPG1vHipIにて公開 (18)令和5年9月25日に、https://www.youtube.com/watch?v=Y38tp9Z1tJMにて公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518106124
【氏名又は名称】コネクテッドロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【氏名又は名称】坊野 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100152054
【氏名又は名称】仲野 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖也
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-201672(JP,A)
【文献】特開2009-035310(JP,A)
【文献】特開2007-091247(JP,A)
【文献】登録実用新案第3112565(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B35/00-35/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持装置と、前記保持装置による保持の対象物
が収容
されている収容容器に着脱可能な拡張部材と、を備えた保持システムであって、
前記保持装置は、前記収容容器内にある前記対象物の保持、保持している前記対象物の移送、前記対象物を保持する部材の回転、及び前記保持する部材に付着した前記対象物の除去、の少なくとも何れかの動作を、保持に関する動作として実行し、
前記拡張部材は、
前記拡張部材を前記収容容器に対して取り付け及び取り外しするための着脱部と、
前記収容容器に取り付けられた場合に、少なくとも鉛直方向において前記収容容器の開口面を拡張する形状に構成された拡張部と、
を備え、
前記拡張部は、前記保持装置が前記保持に関する動作を実行したことに伴って前記拡張部に接触させた前記対象物を、前記収容容器の開口面に向かって案内する、
ことを特徴とする保持システム。
【請求項2】
前記保持装置は、保持に関する動作として少なくとも保持している前記対象物の移送を実行し、
前記移送は前記対象物を保持した状態での、前記収容容器上での水平方向への移動を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の保持システム。
【請求項3】
前記保持装置は、前記拡張部が前記収容容器の開口面を
鉛直方向において拡張
したもっとも高い位置よりも低い位置で、前記保持に関する動作を実行する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の
保持システム。
【請求項4】
前記拡張部は前記収容容器に取り付けられた場合に、鉛直上方に向かうに従って水平方向に広がることで、前記収容容器の開口面をさらに水平方向にも拡張する形状に構成されている、
ことを特徴とする請求項1
又は2の何れか1項に記載の
保持システム。
【請求項5】
前記着脱部は、前記収容容器の開口面を構成する複数の辺の、少なくとも1つの辺に対して
前記拡張部材を取り付け可能とする形状に構成される、
ことを特徴とする請求項1
又は2の何れか1項に記載の
保持システム。
【請求項6】
前記着脱部は前記収容容器に取り付けられた場合に、前記収容容器を覆うカバーが前記収容容器を覆っている状態を維持する形状に構成される、
ことを特徴とする請求項1
又は2の何れか1項に記載の
保持システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野において、ロボットの導入が進められている。従来からロボットが用いられている工業製品の製造分野はもちろんのことながら、例えば、食品の盛り付けを行う分野等でもロボットの導入が進められている。
このような盛り付けを行うロボットに関する技術の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の技術では、把持部材の駆動を制御するモードとして、把持部材に対象物を把持させる第1制御モードと、把持部材に付着した対象物を除去する第2制御モードとを使い分ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載されているような一般的な技術では、対象物が収容された収容容器の開口面において把持等の動作を行う。また、例えば、特許文献1の第2制御モードでは、未だ把持していない対象物の鉛直上方で把持部材を上下動させることで、把持部材に付着していた対象物を落下させる動作を行う。
このような動作を行う場合、その過程において、十分に把持できていなかった対象物や、把持部材に付着していた対象物が、制御不能となって収容容器の外側にまで飛び散るおそれがある。そして、このように対象物が外側まで飛び散った場合、作業員がこの対象物を回収したり、その後に清掃をしたりするという作業が発生する。また、この作業中はロボットの動作を停止しておく必要があるため、結果として、生産性が低下してしまう。
【0005】
このような問題は、ロボットが対象物を把持することで対象物の保持をする場面に限られるものではない。例えば、ロボットが対象物を吸着して対象物の保持を行う場面や、ロボットが対象物を掬うことにより対象物の保持を行う場面や、ロボットが対象物を挟むことにより対象物の保持を行う場面といった、ロボットが何らかの手段で保持を行う場面全般に共通するものである。
さらに、このような問題はロボットが保持する対象物が食品である場合に限られるものではなく、工業製品の製造等のロボットによって様々な対象物を保持する場面全般に共通するものである。
以上のように、従来の技術では、ロボットによって保持を行う場合に、保持の対象物を収容容器の外側に飛び散らせないことについて、未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明の課題は、ロボットによって保持を行う場合に、保持の対象物が収容容器の外側に飛び散ることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る着脱部材は、
保持装置による保持の対象物を収容する収容容器に着脱可能な着脱部材であって、
拡張手段を前記収容容器に対して取り付け及び取り外しするための着脱手段と、
前記着脱手段により前記収容容器に取り付けられた場合に、少なくとも鉛直方向において前記収容容器の開口面を拡張する形状に構成された前記拡張手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロボットによって保持を行う場合に、保持の対象物が収容容器の外側に飛び散ることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る把持システム1の構成を模式的に示す模式図である。
【
図2】制御装置10のハードウェア構成を示す模式図である。
【
図3】制御装置10の機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】ハンド31の先端に設置される把持部材31aの形状例を示す模式図である。
【
図5】把持動作等の動作を実行する場合の、収容容器20の収容空間、ハンド31、把持部材31a、ロボットアーム32、及び具材の位置関係について示す図である。
【
図6】一対の把持部材31aの開閉について示す図である。
【
図7】検出部40の近傍を拡大して示す斜視図である。
【
図8】移送位置P1及び解放位置P2の近傍を示す模式図である。
【
図9】移送位置P1及び解放位置P2の近傍を鉛直上方から俯瞰した図である。
【
図10】容器載置部材54の構成を示す斜視図である。
【
図13】拡張部材60を収容容器20に対して取り付ける様子を示す斜視図である。
【
図14】拡張部材60を収容容器20に対して取り付ける様子を示す斜視図である。
【
図15】拡張部材60を取り付けることによる作用効果について示す模式図である。
【
図16】把持システム1が実行する具材盛り付け処理の流れを示すフローチャートである。
【
図17】拡張部材60の変形例である、拡張部材60aの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[実施形態]
[全体構成]
図1は、本発明に係る把持システム1の構成を模式的に示す模式図である。
ここで、把持システム1は、食材を盛り付けるシステムに本発明を適用することを想定したものである。そのため、以下の説明においては、把持システム1が、惣菜等の具材を把持し、この把持した具材を、惣菜の容器に盛り付ける場合を例に挙げて説明する。
【0011】
ただし、これは説明のための一例に過ぎず、本発明の適用範囲を限定する趣旨ではない。本発明は、ロボットによって保持を行う様々なシステム全般に対して適用可能である。好適な一例として示す本実施形態は、一対の把持部材を閉状態とすることで、容器形状を形成し、この容器形状を用いて把持を行うことで保持を実現するシステムである。ただし、これ以外にも、例えば、密着した対象物との間の空間を真空に近づけることで、対象物を吸着する吸着パッドにより保持を実現するシステムに、本発明を適用してもよい。あるいは、例えば、スプーン形状やレードル形状の把持部材にて対象物を掬うことにより保持を実現するシステムに、本発明を適用してもよい。他にも、例えば、トング形状や爪形状の把持部材にて対象物を挟むことにより保持を実現するシステムに、本発明を適用してもよい。
また、保持の対象物も食材や容器には限定されず、例えば、電子機器等の工業製品の部品等を対象物として保持をするシステムに適用することも可能である。
すなわち、本発明は、保持を実現するシステム全般に適用することが可能な発明である。
【0012】
また、以下の説明において、盛り付けられる具材の量として、重量を例に挙げて説明するが、本発明は、重量以外であっても、体積、かさ、質量等、各種呼称の物理量を対象に適用することが可能である。
【0013】
図1に示すように、把持システム1は、制御装置10と、収容容器20と、多関節ロボット30と、検出部40と、移送機構50と、を備えている。この内、制御装置10、多関節ロボット30、検出部40、及び移送機構50は、有線又は無線によって通信接続されており、相互に通信可能となっている。
【0014】
また、把持システム1に隣接して、総菜の容器を上流から下流に向かって自動的に運搬するベルトコンベア2が設置されている。ベルトコンベア2は、容器を運搬するための搬送面を有しており、容器はこの搬送面に載置された状態で搬送される。
図1では、破線の矢印で図示するように、紙面の左側がベルトコンベア2における搬送の上流であり、紙面の右側がベルトコンベア2における搬送の下流となる。
なお、把持システム1のさらなる上流にて容器をベルトコンベア2の搬送面に供給する作業は、人手によって行われてもよいし、容器の供給装置によって行われてもよい。
【0015】
また、
図1では、収容容器20、多関節ロボット30、検出部40、及び移送機構50、からなる組を一組のみ示しているが、これに限られない。本実施形態では、一台のベルトコンベア2の搬送方向に沿って、これらの組が複数組設置されており、複数の多関節ロボット30が協働して作業することを想定する。
【0016】
制御装置10は、PC(Personal Computer)又はプログラマブルコントローラ等の情報処理装置によって構成され、各種プログラムを実行することにより、把持システム1全体を制御する。例えば、制御装置10は、多関節ロボット30が収容容器20から具材を把持して、惣菜の容器に解放することで具材を盛り付ける動作等を制御する。より詳細には、制御装置10は、多関節ロボット30の駆動を制御することで、多関節ロボット30のハンド31を予め設定された所定位置に所定ルート及び所定速度で移動させる動作や、ハンド31のアクチェータの駆動を制御することで、ハンド31による具材の把持や解放をする動作を実現する。他にも、例えば、制御装置10は、検出部40の検出結果に基づいて、移送機構50の動作を制御する。
【0017】
収容容器20は、把持システム1において盛り付けられる惣菜等の具材を収容する収容空間を備えている。収容容器20は、例えば、大型のバットやトレイ等の汎用の収容容器により実現される。そして、収容容器20の収容空間には、例えば、例えば、ポテトサラダ等の練りサラダ(粘性や粘着性を有する具材を含むサラダ)、卯の花(おから)、切り干し大根、なます、ひじき、煮豆、バターコーン等の惣菜が収容される。本実施形態において、この収容空間には、1種類の具材が複数食分(例えば、数十食分~数百食分)収容されているものとする。そして、複数の把持システム1が何れかの惣菜等の具材を、対応する惣菜の容器に盛り付けることで、惣菜の盛り付け作業を完了させることができる。収容容器20は、作業者が手作業によって、又は、多関節ロボット30が自動的に交換することが可能である。
【0018】
多関節ロボット30は、例えば、水平多関節ロボットあるいは垂直多関節ロボット等によって構成され、盛り付けられる具材を把持可能なハンド31と、可動範囲において任意の位置にハンド31を移動させるロボットアーム32と、を備えている。
また、多関節ロボット30のハンド31を保持する関節には、ハンド31が把持した具材の物理量を取得する手段の一例として、把持した具材の重量を計測する重量センサ30Aが設置されている。また、多関節ロボット30のハンド31を保持する関節には、ハンド31が具材に接触したことを検出する手段の一例として、接触した具材からの反力(表面に接触されることで得られる力覚を含む)を計測する力センサ30Bが設置されている。重量センサ30Aによって計測された具材の重量(すなわち、把持された具材の重量)のデータや、力センサ30Bによって計測された具材からの反力(すなわち、具材への接触の検出結果)のデータは、制御装置10に出力される。
【0019】
さらに、ハンド31を保持する関節は、ロボットアーム32に対してハンド31を捻り方向に回転させる軸を備えている。そのため、ハンド31が具材を把持する際に、ハンド31の向きを変化させることで、ハンド31が開閉する方向を調整することができる。これにより、ハンド31が容器の内壁面近傍に達した際に、収容容器20の収容空間の内壁面と平行な方向にハンド31が開閉するようにハンド31の向きを変更することが可能となり、容器内壁面近傍の具材を把持し易くなる。
【0020】
検出部40は、ベルトコンベア2にて搬送中の容器に関する検出を行う複数の光センサを備える。例えば、検出部40は、ベルトコンベア2にて運搬中の容器の位置を検出するセンサと、容器に盛り付けられている具材を検出するセンサを備える。これらのセンサによって検出された容器の位置のデータや、具材が盛り付けられているか否かのデータは、制御装置10に出力される。
制御装置10は、検出部40に含まれるこれらのセンサの検出結果に基づいて、移送機構50の動作を制御する。検出部40に含まれるこれらのセンサの位置関係や、検出結果に基づいた制御装置10による移送機構50の動作制御の詳細については、後述する。
【0021】
移送機構50は、対象物(ここでは、容器)を移送する機構である。移送機構50は、ベルトコンベア2により移送位置P1まで搬送された容器を、具材が解放される位置である解放位置P2に移送する。その後、解放位置P2で具材の容器への盛り付けが完了すると、移送機構50は、容器を解放位置P2から再度移送位置P1に移送する。
その後、この具材が盛り付けられた容器はベルトコンベア2により更に下流に搬送され、後処理(例えば、容器への蓋閉め)が行われることとなる。
このように、移送機構50が移送を行うことにより、ベルトコンベア2の搬送面にある移送位置P1等ではなく、多関節ロボット30の近傍に設けられた解放位置P2にて具材を解放して盛り付けを行うことができる。これにより、解放した具材がベルトコンベア2の搬送面に落下してしまうことを防止できる。
【0022】
以上、把持システム1の全体構成について説明した。なお、図示を省略しているが、把持システム1の各構成要素を外部から遮蔽するために、各構成要素が設置された領域の周囲を囲う板状部材からなる遮蔽部を設置するようにしてもよい。また、把持システム1の各構成要素に加えて、さらにベルトコンベア2についても、遮蔽部により遮蔽されるようにしてもよい。このように遮蔽部により遮蔽することで、把持システム1の動作に伴い飛散した具材が外部を汚してしまうことや、外部からの異物が具材に混入してしまうことを防止できる。
この場合、遮蔽部を構成する板状部材は、例えば、ガラス又は樹脂等の透明な材料によって構成され、外部から把持システム1の稼動状況を視認することが可能とするとよい。また、遮蔽部が構成する側壁の一部には、開閉可能な扉を設置するとよい。そうすることで、収容容器20の収容空間の交換、あるいは把持システム1のメンテナンス等が行われる場合、作業者は遮蔽部の扉を開けることで各構成要素に対して接近し、これらの各種作業を行うことができる。
【0023】
[制御装置10のハードウェア構成]
図2は、制御装置10のハードウェア構成を示す模式図である。
図2に示すように、制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)711と、ROM(Read Only Memory)712と、RAM(Random Access Memory)713と、バス714と、入力部715と、出力部716と、記憶部717と、通信部718と、ドライブ719と、を備えている。
【0024】
CPU711は、ROM712に記録されているプログラム、又は、記憶部717からRAM713にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM713には、CPU711が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0025】
CPU711、ROM712及びRAM713は、バス714を介して相互に接続されている。バス714には、入力部715、出力部716、記憶部717、通信部718及びドライブ719が接続されている。
【0026】
入力部715は、マウスやキーボード等の入力装置を備え、制御装置10に対する各種情報の入力を受け付ける。なお、入力部715としてマイクを備え、作業者の音声入力によって各種情報の入力を受け付けることとしてもよい。
出力部716は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部717は、ハードディスクあるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各サーバで管理される各種データを記憶する。
通信部718は、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する。
【0027】
ドライブ719には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア731が適宜装着される。ドライブ719によってリムーバブルメディア731から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部717にインストールされる。
なお、上記ハードウェア構成は、制御装置10の基本的構成であり、一部のハードウェアを備えない構成としたり、付加的なハードウェアを備えたり、ハードウェアの実装形態を変更したりすることができる。
【0028】
[機能的構成]
次に、制御装置10の機能的構成について説明する。
図3は、制御装置10の機能的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、把持システム1の動作を制御するためのプログラムを実行することにより、制御装置10のCPU711においては、センサ情報取得部151と、具材状態判定部152と、具材量判定部153と、多関節ロボット制御部154と、移送機構制御部155と、記録制御部156と、が機能する。また、記憶部717には、パラメータ記憶部171と、履歴データベース(履歴DB)172と、が形成される。
【0029】
パラメータ記憶部171には、把持システム1が動作する際に用いられる各種パラメータが記憶されている。例えば、パラメータ記憶部171には、収容容器20の収容空間の位置、惣菜の容器内における具材を盛り付ける領域の位置、具材を把持する際のハンド31の具材への差し込み量と把持される具材の重量との関係(関数あるいはテーブル形式のデータ等)、多関節ロボット30の動作パターンを定義するパラメータ等が記憶される。本実施形態において、ハンド31の具材への差し込み量は、具材の重量(物理量)を推定する指標となっている。すなわち、ハンド31の具材への差し込み量と把持される具材の重量との関係から、把持された具材の実際の重量(目標とする把持重量)は、ハンド31の具材への差し込み量に基づいて推定される。
【0030】
履歴DB172には、把持システム1が動作した際に取得される制御に関するパラメータ、あるいは把持システム1で盛り付けられた具材の重量の計測データが履歴として記憶される。また、履歴DB172には、収容容器20の収容空間における具材の状態を示す具材状態マップも記憶される。この具材状態マップの詳細については、具材状態マップを作成及び更新する記録制御部156の説明と共に後述する。
【0031】
センサ情報取得部151は、把持システム1や検出部40に設置された各種センサによって検出された情報であるセンサ情報を取得する。例えば、センサ情報取得部151は、多関節ロボット30の関節に設置された重量センサ30Aによって計測された具材の重量のデータや、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータや、検出部40に含まれるセンサによって検出された容器の位置のデータや、具材が盛り付けられているか否かのデータをセンサ情報として取得する。これらセンサ情報は、制御装置10の各機能ブロックにより適宜利用される。
【0032】
具材状態判定部152は、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータに基づいて、具材の状態を認識する。例えば、具材状態判定部152は、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータから、収容容器20の収容空間内の具材の深さ(収容容器20の収容空間内の具材表面から収容容器20の収容空間底面までの深さ)、表面の平坦度合(表面がどの程度荒れているか)を認識する。本実施形態では、カメラを用いた画像解析で具材の状態を判定するといった手法ではなく、力センサ30Bを用いた反力に基づいて具材の状態を測定するといった手法を用いる。そのため、例えば、カメラの導入コストや管理コストを削減できると共に、カメラの死角等を考慮する必要がないので、多関節ロボット30と収容容器20の収容空間の位置等の配置をより柔軟に選択することができる。また、カメラを用いないことから、具材から生じる湯気や照明による撮影への影響を考慮する必要もない。
【0033】
また、具材状態判定部152は、具材の深さ及び表面の平坦度合を認識すると、これらが具材を把持するための条件に適合しているか否か(例えば、具材の深さ及び平坦度合が設定された閾値以上であるか否か)を判定する。なお、具材の表面の平坦度合は、例えば、表面が有する凹凸の大きさの絶対値等に基づいて定義することができ、具材の表面が平坦であるほど大きい値となるように定義することができる。また、具材の表面の部分毎に平坦度合を判定することとしてもよい。また、具材状態判定部152は、収容容器20の収容空間内の具材の状態が、一度の把持動作で規定量の具材を把持可能であるか否かを判定する。
【0034】
具材量判定部153は、多関節ロボット30の重量センサ30Aによって計測された具材の重量のデータに基づいて、規定量の具材が把持されたか否かを判定する。
【0035】
多関節ロボット制御部154は、多関節ロボット30の動作を制御し、把持システム1において定義されている動作パターンに従って、具材を盛り付けるための一連の動作を多関節ロボット30に実行させる。例えば、多関節ロボット制御部154は、検出部40によってベルトコンベア2にて搬送される容器に関する検出をする動作(検出動作)、多関節ロボット30のハンド31によって具材を把持する動作(把持動作)、具材を把持したハンド31を惣菜の容器上に移送する動作(具材移送動作)、把持している具材を容器上で解放する動作(解放動作)、盛り付け後の解放具材の表面を整形する動作(整形動作)等を多関節ロボット30に実行させる。
【0036】
移送機構制御部155は、検出部40に含まれるセンサによって検出された容器の位置のデータや、具材が盛り付けられているか否かのデータに基づいて、移送機構50による容器を移送する動作(容器移送動作)を制御する。
【0037】
記録制御部156は、把持システム1が把持動作した際に取得された制御に関するパラメータ及び把持システム1で盛り付けられた具材の重量の計測データを履歴DB172に記憶する。また、記録制御部156は、収容容器20の収容空間における具材の状態を示す具材状態マップを作成及び更新すると共に、この具材状態マップについても履歴DB172に記憶する。より詳細には、記録制御部156は、把持システム1が把持動作をした際に取得された具材の重量及び具材の反力の計測データや、後述の具材状態判定部152による判定結果や、把持システム1で盛り付けられた具材の重量の計測データに基づいて、収容容器20の収容空間の各領域の具材の状態を検出し、各領域を識別する識別情報に紐づけて記憶することで、具材状態マップを生成する。
【0038】
この場合、具材の状態とは、各領域における具材の残量や、後述の具材状態判定部152が判定した具材の深さや平坦度合である。また、収容容器20の収容空間内の具材が盛り付けられた後に、収容容器20の収容空間が新たに交換された場合には、予め定められた所定量の具材(例えば、収容容器20の収容空間に対して充分な量の具材)が、所定の状態(例えば、表面が平坦な状態)で収容されているものとして具材状態マップが更新される。
【0039】
[ハンド31の構成]
次に、ハンド31、及びハンド31に設置される把持部材31aの構成の詳細について説明をする。
図4は、ハンド31の先端に設置される把持部材31aの形状例を示す模式図である。
なお、
図4においては、一対で用いられる把持部材31aの一方のみが示されている。
図4に示すように、本実施形態における把持部材31aは、天板部と、主板部と、第1側板部と、第2側板部と、により構成されている。天板部は、長方形状の平面を有している。また、主板部は、天板部の有する平面を水平な状態とした場合に、この平面の長手方向の一端から、この平面の長手方向の他端の鉛直下方の離間した位置に向かって傾斜して延在している。さらに、第1側板部と第2側板部は、天板部の有する平面を水平な状態とした場合に、この平面の両端それぞれから鉛直下方に向かって延在している。
なお、以下の説明において、これら一対の把持部材31aのそれぞれを区別することなく説明する際は、単に「把持部材31a」と称する。
【0040】
図5は、把持動作等の動作を実行する場合の、収容容器20の収容空間、ハンド31、把持部材31a、ロボットアーム32、及び具材の位置関係について示す図である。
図5では、鉛直方向をZ方向と称し、このZ方向と直交する第1の水平方向(紙面と直交する方向)をY方向と称し、これらZ方向及びY方向のそれぞれと直交する第2水平方向をX方向と称する。すなわち、Z方向、Y方向、及びX方向はそれぞれ互いに直行する方向である。
【0041】
ハンド31は、ロボットアーム32の先端に配置される。また、把持部材31aは、結合部材により、このハンド31に結合されることで、ハンド31に支持される。そして、このハンド31及びこれに結合された把持部材31aは、制御装置10の制御するロボットアーム32の動作に従って、X方向、Y方向、及びZ方向の各方向における、可動範囲内に移動することが可能である。また、ハンド31は、不図示のアクチュエータによって、一対の把持部材31aをY方向に開閉することで、把持動作を実現する。
また、ハンド31及びこれに結合された把持部材31aは、Z方向を回転軸として回転することが可能である。
このような構成により、本実施形態では、ハンド31及び把持部材31aの、位置や向きを任意に変化させることができ、これにより様々な動きで把持動作や解放動作等の動作を適切に実行することが可能となる。
【0042】
図6は、一対の把持部材31aの開閉について示す図である。
図4に示す把持部材31aは、結合部材により、それぞれの開口部が対向するようにハンド31に結合される。また、
図6におけるX方向、Y方向、及びZ方向の各方向は、
図5において定義した各方向と同一である。一対の把持部材31aは、
図6(a)に示すように開閉方向(Y方向)に沿って、開く動作を行うことで、開状態となる。また、一対の把持部材31aは、把持動作を行うにあたって、
図6(b)に示すように開閉方向(Y方向)に沿って、閉じる動作を行うことで、閉状態となる。
【0043】
そして、一対の把持部材31aが閉状態となり、把持部材31a同士が当接することで、少なくとも先端及び側板部が閉じた内面が具材を把持するための容器形状となる。このような把持部材31aの形状の場合、練りサラダ等の具材に対して、把持部材31aの先端を表面から垂直に差し込み、所定の深さで一対の把持部材31aを閉じて具材を持ち上げることで、ほぼ一定量の具材を把持して収容容器20の収容空間から取り出すことができる。
また、把持をした一対の把持部材31aを解放位置P2の惣菜の容器の上に移送した後に、一対の把持部材31aが開状態となり、容器形状の開口部が露出することで、把持により取り出した具材が解放され、惣菜の容器にほぼ一定量の具材を盛り付けることができる。
【0044】
[検出部40の構成]
次に、検出部40の構成の詳細について説明をする。
図7は、検出部40の近傍を拡大して示す斜視図である。
図7では、
図1と同様に、紙面の左側がベルトコンベア2における搬送の上流であり、紙面の右側がベルトコンベア2における搬送の下流となる。
【0045】
図7に示すように、検出部40は、容器検出センサ41,42と、リフレクタ配置部43と、具材検出センサ44と、を含む。
容器検出センサ41,42は、ベルトコンベア2にて運搬中の容器の位置を検出するセンサである。容器検出センサ41,42は、例えば、光センサにより構成される。容器検出センサ41は、ベルトコンベア2にて搬送中の容器が、移送位置P1に運搬される直前であることを検出する。また、容器検出センサ42は、ベルトコンベア2にて搬送中の容器が、移送位置P1に運搬されたことを検出する。
また、リフレクタ配置部43は、容器検出センサ41,42が検出を行うために投光する光を反射するリフレクタが、容器検出センサ41,42と対向する面に配置された部材である。
【0046】
図示するように、検出部40はベルトコンベア2の搬送面上を跨ぐようにして、リフレクタ配置部43を所定位置に設置する。そして、容器検出センサ41,42が投光する光は、リフレクタ配置部43に配置されたリフレクタにより反射して、容器検出センサ41,42により受光される。これにより、容器検出センサ41,42は、容器の位置を検出することができる。図中では、これら投光及び受光される光の経路を、それぞれ光路L1及び光路L2として図示する。
【0047】
また本実施形態では、リフレクタ配置部43を検出部40の本体の開口部分に挿抜可能な構造となっており、搬送面の幅方向において長さを調整することができる。これにより、ベルトコンベア2の機種によって異なる搬送面の幅方向の長さの違いを吸収して、リフレクタ配置部43を所定位置に設置することができる。ここで、一般的にベルトコンベア2の搬送面は、その機構上、搬送に伴い上下方向等にうねりが生じる。そのため、この影響を避けるべく、所定位置として搬送面の外側の枠部分(すなわち、搬送面ではない部分)にリフレクタ配置部43を設置するとよい。これによりリフレクタ配置部43は、搬送面における上下方向のうねりの影響を受けることなく、具材を盛り付ける容器を検出するために適切な高さに常に固定された状態となる。
【0048】
ここで、容器の高さ(ここでは、搬送面を基準とした相対的な高さ)は、一般的にそれほど高いものではないため、センサ及びリフレクタを数センチないし数ミリ単位の範囲で適切な位置に配置することが望まれる。この点、本実施形態では、このようにリフレクタ配置部43によりリフレクタの位置を所定の位置に固定することで、容器の高さに応じた適切な高さを検出対象範囲として、搬送されている容器の位置を適切に検出することができる。
【0049】
なお、惣菜等の容器としては、色を有している容器が利用されることもあるが、透明な容器も一般的に利用されている。容器検出センサ41,42は、このように色を有している容器や透明の容器の何れについても検出することが可能である。
このような構成で、容器検出センサ41,42は、ベルトコンベア2にて搬送中の容器の位置を精度高く検出する。また、容器検出センサ41,42によって検出された容器の位置のデータは、制御装置10に出力される。
【0050】
具材検出センサ44は、容器に盛り付けられている具材を検出するセンサである。具材検出センサ44は、容器検出センサ41,42と同様に、例えば、光センサにより構成される。具材検出センサ44は、容器検出センサ41,42が位置を検出した容器に具材が盛り付けられているか否かを検出する。そして、具材検出センサ44が投光する光は、鉛直下方に投光され、ベルトコンベア2の搬送面、容器に盛り付けられた具材の天面、あるいは、具材が盛り付けられていない容器の底面の何れかに反射して、具材検出センサ44により受光される。これにより、具材検出センサ44は、容器に具材が盛り付けられているか否かを検出することができる。図中では、これら投光及び受光される光の経路を、光路L3として図示する。
【0051】
上述したように、検出部40はベルトコンベア2の搬送面上を跨ぐようにして設置されることから、ベルトコンベア2の鉛直上方の具材を検出するのに適切な高さ(例えば、搬送面から15[cm]程度の高さ)に具材検出センサ44を配置することができる。すなわち、具材検出センサ44についても、所定位置(ここでは、検出部40と容器及び具材の高さと相対的な位置)に固定されることにより、容器に具材が盛り付けられているか否かを、精度高く検出することができる。具材検出センサ44によって検出された具材が盛り付けられているか否かのデータは、制御装置10に出力される。
【0052】
このように、検出部40は、特徴的な構造を有していると共に、ベルトコンベア2の搬送面上を跨ぐように設置されることで、各種センサやリフレクタを、検出のために最適な位置に配置することができる。
【0053】
なお、容器検出センサ41,42や、具材検出センサ44を、投受光器と、これに対向する位置に配置されたリフレクタにより実現される光センサとして説明をしたが、これに限られない。例えば、これらのセンサを、投光器と、これに対向する位置に配置された受光器により実現される光センサにより実現してもよい。
【0054】
[移送機構50の構成]
次に、移送機構50の構成の詳細について説明をする。
図8は、本実施形態における移送位置P1及び解放位置P2の近傍を示す模式図である。この
図8では、ベルトコンベア2における搬送の下流方向を紙面の下側として、ベルトコンベア2、多関節ロボット30、及び移送機構50を示す。
【0055】
図8に示すように、移送機構50は、アクチュエータ51と、スライド部材52と、連結部53と、第1移送部材531と、第2移送部材532と、容器載置部材54と、を含む。また、
図1に示したのと同様に、移送位置P1はベルトコンベア2の搬送面であり、解放位置P2は多関節ロボット30の側面部分に設けられた作業台の上となる。
【0056】
アクチュエータ51は、ベルトコンベア2の鉛直上方に配置され、ベルトコンベア2の進行方向と直交する方向(紙面における左右方向)に直線運動をするアクチュエータである。アクチュエータ51は、例えば、電気式のシリンダ(ロボシリンダ)や、エアシリンダにより実現される。
【0057】
スライド部材52、及び連結部53は、アクチュエータ51の駆動部と連結されており、アクチュエータ51の直線運動に伴って、ベルトコンベア2の搬送方向と直交する方向(紙面における左右方向)に直線運動をする。
連結部53は、さらに、第1移送部材531や第2移送部材532にも連結されており、アクチュエータ51の直線運動は、結果として第1移送部材531や第2移送部材532にも伝達されることから、第1移送部材531や第2移送部材532もアクチュエータ51と同様の直線運動をする。このように、本実施形態の移送機構50は、比較的簡単な構成で駆動機構を実現することができる。
【0058】
図9は、本実施形態における移送位置P1及び解放位置P2の近傍を鉛直上方から俯瞰した図である。
図9には、ベルトコンベア2、収容容器20、多関節ロボット30、連結部53、第1移送部材531、第2移送部材532、及び容器載置部材54を図示する。
【0059】
容器載置部材54は、一端がベルトコンベア2の搬送面に設置され、他端が解放位置P2の存在する作業台の天面に設置される。これにより、容器載置部材54を介して、ベルトコンベア2の搬送面と作業台の天面とが接続される。そして、移送機構50は、アクチュエータ51の水平方向への直線運動を利用して、搬送面の移送位置P1から作業台の天面の解放位置P2まで容器をスライドさせることで容器を移送する。また、逆方向に容器をスライドさせることで、解放位置P2から移送位置P1まで容器を移送する。
【0060】
具体的には、
図9(a)に示すように、移送機構制御部155は、移送位置P1に空の容器が搬送されると、移送機構50を移動させ、第1移送部材531の端(紙面における右側の端)で容器に当接しながら、容器を移送位置P1から解放位置P2に移送する。また、移送機構制御部155は、多関節ロボット30により具材が解放されると、第2移送部材532の端(紙面における左側の端)で容器に当接しながら、容器を解放位置P2から移送位置P1に移送する。
【0061】
このように、移送機構50が移送を行うことにより、ベルトコンベア2の搬送面にある移送位置P1等ではなく、多関節ロボット30の近傍に設けられた解放位置P2にて具材を解放して盛り付けを行うことができる。これにより、解放した具材がベルトコンベア2の搬送面に落下してしまうことを防止できる。
また、収容容器20で把持した後に、近傍の解放位置P2にて盛り付けができるので、多関節ロボット30の移動距離を短縮し、処理時間を短縮することや、移動に伴う具材の飛散を抑制することもできる。さらに、近傍の解放位置P2にて盛り付けができるので、ロボットアーム32を伸ばして遠方で盛り付けを行う場合と比べて、より精度の高い動きが実現でき、適切な盛り付けを実現できる。
【0062】
加えて、移送機構50が移送を行うことから、容器を上流から搬送して供給すればよく、多関節ロボット30の近傍に容器供給装置や容器のストックを配置する必要はない。そのため、省スペース化できるのみならず、収容容器20や、多関節ロボット30の配置位置の自由度を高めることができる。さらに、具材が解放された容器を同じベルトコンベア2の搬送面に再度移送することから、例えば、盛り付け前の容器を搬送する第1ベルトコンベアと、盛り付け後の容器を搬送する第2ベルトコンベアと、のように複数のベルトコンベアを用意する必要もない。
【0063】
[容器載置部材54の構成]
次に、容器載置部材54の構成の詳細について説明をする。
図10は、容器載置部材54の構成を示す斜視図である。
図10(a)及び(b)のいずれにおいても、
図9に示したようにして容器載置部材54を設置した状態を表しており、紙面左側が設置時に移送位置P1側となり、紙面右側が設置時に解放位置P2側となる。
図10(a)及び(b)に示すように、容器載置部材54は、案内部541と、底部542と、スリット543と、を備えている。
【0064】
案内部541は、一対のガイド部として構成される。この案内部541は、移送位置P1側から解放位置P2側に向かってその幅が狭まっていくテーパ状の形状をしており、容器を解放位置P2に案内できる構造となっている。また、この案内部541の解放位置P2側の先端は中心に向かって内側に折り曲げられた形状を有しており、
図10(b)に示すように、この折り曲げ部分で容器を保持することができる。本実施形態では、この容器が保持されている位置が、解放位置P2に相当する。そのため、多関節ロボット30は、この案内部541容器が保持された状態において、具材を容器に解放する。
【0065】
底部542は、移送機構50が移送を行う際に、容器の移送面として機能する。また、底部542には、複数のスリット543が設けられている。このスリット543により、仮に解放位置P2において、解放された具材そのものや具材の汁気等が飛散したとしても、その飛散した具材や汁気等は、スリット543からさらに鉛直下方に落下するので容器の底部に具材が付着することを防止できる。
【0066】
また、容器載置部材54の、移送位置P1側の先端部分は、鉛直上方に隆起した山型の形状となっている。仮に、このような形状ではなく、平坦な形状の場合、搬送面の高さと、作業台の天面の高さが多少でも相違していると、その部材は、一方から他方に傾いた形状となり、他方から一方側にスライドさせることが困難となる。これに対して、容器載置部材54は、この山型の形状を乗り越えれば他方に下っていくようにスライドすることになるので、搬送面の高さと、作業台の天面の高さが多少相違していたとしても、この相違を吸収して、容器を適切にスライドして移送できる。また、移送後も解放位置P2側にスライドしようとする力が維持されるので、案内部541による容器の保持を、より安定したものとできる。
このように、本実施形態では、容器載置部材54も特徴的な構造とすることで、より確実に容器の移送や、解放時の容器の保持を実現することができる。
【0067】
[載置部55の構成]
次に、載置部55の構成の詳細について説明をする。
図11は、載置部55の構成を示す斜視図である。載置部55は、多関節ロボット30に隣接する位置に配置される。例えば、
図1において収容容器20が載置される位置に載置部55は配置される。
図11(a)及び(b)には、載置部55に加えて、多関節ロボット30、解放位置P2、設置台を図示する。なお、解放位置P2に設置される容器載置部材54については、図示を省略する。
【0068】
図11(a)に示すように、載置部55は、設置台の上に配置される。また、載置部55は、凹型形状となった部分を有している。本実施形態では、上面視で矩形の形状となるように凹型形状が構成されている。また、凹型形状の周囲の三面が壁面を構成しており、他の一面には、持ち手状の部材が配置されている。この持ち手状の部材は、把持システム1を設置する際に、設置台と共に、多関節ロボット30を移動させる際の持ち手として機能する。このような載置部55の形状は、例えば、板金を加工することで実現される。
【0069】
図11(b)に示すように、把持システム1を実際に稼動する際には、載置部55の凹型形状に、収容容器20が載置される。収容容器20内部には、具材(収容容器の構成を明確とするべく図示を省略する)が収容されている。多関節ロボット30は、この収容容器20から具材を把持し、解放位置P2において、把持した具材を解放する。
この場合に、把持部材31aの移送の妨げとならないように、凹型形状に載置された場合に、収容容器20の最も高い位置が、把持部材31aの移送時の位置よりも低い位置となるように、凹型形状を構成することが望ましい。
【0070】
また、解放の際に飛び散った具材が、載置部55の凹型形状に落下するように、凹型形状に載置された場合に、把持部材31aの解放時の位置が、収容容器20の最も高い位置よりも低い位置となるように、凹型形状を構成することが望ましい。
このような構成にすることで、把持や解放時に具材そのものや具材の汁気が飛散したとしても、飛散した汁気等は、多関節ロボット30に隣接する凹型形状に蓄積することになる。そのため、載置部55の外部に汁気等が漏れてしまうことを抑制することができる。
【0071】
また、
図11に持ち手状の部材がある面の側面からの拡大図を図示しているが、ここに表されているように、載置部55の端部は、台座部58を構成する壁面もよりも突出するように構成されている。そのため、仮に凹型形状に蓄積した汁気等がこの面からこぼれてしまっても、こぼれた汁気等が台座部58に接触して台座部58を汚すことはない。そのため、例えば、台座部58の内部に汁気等が接触すると問題が生じる可能性がある電気機器(例えば、アクチュエータ51の制御機器等)を格納することも可能となる。
また、収容容器を凹型形状に載置することで、把持や解放時にロボットアーム32や把持部材31aが、仮に誤って収容容器に衝突してしまったような場合でも、収容容器の位置は凹型形状の周囲の三面の壁面により保持される。そのため、接触に伴い収容容器の位置がズレてしまうことを防止できる。
【0072】
なお、
図11に示した載置部55の構成は、一例に過ぎずこれに限られない。例えば、凹型形状の周囲の四面が全て壁面を構成していてもよい。他にも、例えば、収容容器が円筒形の形状であれば、凹型形状も上面視で丸形の形状となるようにしてもよい。また、上述の説明では、凹型形状との文言を用いているが、これは、凹型形状と称した部分に収容容器を載置した場合に、収容容器の底面の周囲に、底面よりも高さのある部分(すなわち、壁面ないし隆起した部分)があるという、広い概念を含む文言であることを意図して用いられる。
【0073】
[拡張部材60の構成]
次に、拡張部材60の構成の詳細について説明をする。
図12は、拡張部材60の構成を示す斜視図である。拡張部材60は、収容容器20に取り付けて利用される。そして、
図13、及び
図14は、拡張部材60を収容容器20に対して取り付ける様子を示す斜視図である。
【0074】
図12に示すように、拡張部材60は、拡張部61と、第1着脱部62と、第2着脱部63と、を備えている。また、第1着脱部62は、挟持部621,622,623を備えている。さらに、第2着脱部63は、挟持部631,632,633を備えている。
【0075】
拡張部61は、鉛直上方に延在する板状の部材であり、第1着脱部62によって収容容器20の開口面を構成する複数の辺(すなわち、開口面の縁)の、何れかの辺に取り付けられた際に、鉛直上方に延在する壁面を構成する。これにより、その開口面を構成する辺は鉛直方向にて上がることになる。すなわち、拡張部61は、開口面を鉛直方向に拡張することができる。
また、拡張部61は、鉛直上方に向かうにしたがって収容容器20の外側に傾斜する形状となっている。そのため、第1着脱部62によって収容容器20の開口面を構成する複数の辺の、何れかの辺に取り付けられた際に、拡張部61は、収容容器20の水平方向の外側に広がる壁面を構成する。これにより、その開口面を構成する辺は水平方向にて広がることになる。すなわち、拡張部61は、開口面を水平方向に拡張することができる。
結論として、拡張部61は、このような鉛直上方に延在する板状の部材であって、且つ、鉛直上方に向かうにしたがって収容容器20の外側に傾斜する形状を有していることから、収容容器20に取り付けられた場合に、収容容器20の開口面を鉛直上方と水平方向の双方について拡張することができる。
【0076】
第1着脱部62は、拡張部61及び第1着脱部62を、第2着脱部63を介して収容容器20に取り付け及び取り外しするための部分である。第1着脱部62が備える、挟持部621,622,623は板バネとして機能し、第2着脱部63を介して収容容器20に取り付けられた場合に、第2着脱部63を介して収容容器20の壁面を挟み込む力を作用させる。以下では、この挟み込む力を「挟持力」と称する。ここで、挟持部621,623は、収容容器20の内壁面に取り付けられ、外側に向かって挟持力を作用させる。一方で、挟持部623は、収容容器20の外壁面に取り付けられ、内側に向かって挟持力を作用させる。図中では、この挟持力の作用する方向を、矢印にて図示する。
【0077】
第2着脱部63は、第2着脱部63自身を、収容容器20に取り付け及び取り外しするための部分である。第2着脱部63が備える、挟持部631,632,633は、第1着脱部62が備える各挟持部と同様に、板バネとして機能し、収容容器20に取り付けられた場合に、挟持力を作用させる。ここで、挟持部631,633は、収容容器20の内壁面に取り付けられ、外側に向かって挟持力を作用させる。一方で、挟持部633は、収容容器20の外壁面に取り付けられ、内側に向かって挟持力を作用させる。
【0078】
このように、第1着脱部62と、第2着脱部63では、互い違いに異なる方向に挟持力が作用するように、各挟持部が配置されている。すなわち、内側から外側への挟持力、外側から内側への挟持力、そして、内側から外側への挟持力、というように挟持力が作用するように、各挟持部が配置されている。これにより、第1着脱部62と、第2着脱部63は、収容容器20に取り付けられ場合に、取り付け状態を安定させ、着実な取り付けを実現することができる。また、これら各挟持部を、板バネという簡易な機構によって実現することができる。
【0079】
[拡張部材60の取り付け]
図13(a)に収容容器20の形状を示す。収容容器20は、本実施形態特有の収容容器により実現されてもよいが、一般的に利用されている汎用の収容容器によって実現することができる。そのため、既存の収容容器を、そのまま本実施形態の収容容器20として利用でき、不必要なコストが生じることはない。
収容容器20は、通常、載置した場合に、鉛直上方の面が開口面となった、直方体の容器として形成される。また、収容容器20には、作業者による運搬や載置が容易となるように、対向する2つの側方の外壁面等に持ち手が配置される。作業者は、収容容器20を交換する際に、この持ち手を握った安定した状態で、運搬や載置部55への載置を行うことができる。
【0080】
図13(b)に示すように、収容容器20を利用する際には、容器カバーが取り付けられ、容器カバーによって収容容器20の内壁面が覆われる。これは、食品の衛生面を管理する目的や、収容容器20の内壁面への具材の付着を防止し、収容容器20の洗浄を容易とするためである。容器カバーは、ポリエチレン等の樹脂素材で構成された、シート状のカバーにより実現される。
【0081】
作業者は、洗浄済みの収容容器20に容器カバーを取り付け、その後、容器カバーに覆われた収容容器20内部の収容空間に具材を収容する。なお、収容容器20の形状、及び拡張部材60の取り付けの様子を明確とするために、
図13及び
図14では、具材については、図示を省略する。
この時点で、容器カバーは、収容容器20の開口面において特に保持されていない。そのため、容器カバーと収容容器20の間には隙間が発生し、容器カバーが弛んだ状態となっている。
【0082】
次に、
図14(c)に示すように、まず拡張部材60の第2着脱部63が収容容器20に取り付けられる。第2着脱部63が備える、挟持部631,632,633は、上述したように挟持力を作用させ、収容容器20の開口面を構成する複数の辺の、何れか辺に対して取り付けられる。これにより、第2着脱部63は、収容容器20に取り付けられると共に、収容容器20の開口面において容器カバーを保持する。そのため、保持前に存在していた容器カバーのたるみを解消することができる。また、図示するように第2着脱部63の各挟持部は、収容容器20に取り付けられた場合に、収容空間下方の深い位置まで延在する形状となっている。この形状により、より確実に、容器カバーを保持することが可能となっている。
【0083】
そのため、その後に行われる、作業者による運搬や、多関節ロボット30による各種動作の過程において、容器カバーが収容容器20を覆っている状態を維持し、容器カバーが捲れ上がるような問題を防止することができる。
【0084】
次に、
図14(d)に示すように、次に、拡張部61及び第1着脱部62が、収容容器20に対して取り付けられる。第1着脱部62が備える、挟持部621,622,623は、既に収容容器20に取り付けられている第2着脱部63の各挟持部を、さらに外側から挟持することで収容容器20への取り付けを実現する。すなわち、厳密には、拡張部61及び第1着脱部62は、第2着脱部63を介して収容容器20に取り付けられる。
【0085】
このようにして、拡張部材60は、収容容器20に対して取り付けられる。そして、
図12を参照して上述したように、この拡張部材60の拡張部61は、鉛直上方に延在する板状の部材であって、且つ、鉛直上方に向かうにしたがって収容容器20の外側に傾斜する形状を有していることから、
図14(d)に示すように、開口面の取り付けられた辺を鉛直上方と水平方向の双方について拡張することができる。
なお収容容器20が収容する具材が全て把持された場合には、収容容器20を交換することになる。この場合には、上記の取り付けとは逆の手順を実行することで、拡張部材60を取り外すことができる。
【0086】
以上説明したように、拡張部材60は、必要に応じて適宜着脱することができる。例えば、作業者が収容容器20の持ち手を握る際に、拡張部材60が取り付けられていると、拡張部材60と作業者の腕とが干渉して、作業者の作業を妨げてしまう。そのため、作業者が持ち手を握りながら収容容器20を運搬する際や、収容容器20を載置部55に載置する際には拡張部材60を取り外しておく。これにより、拡張部材60によって、作業者が収容容器20の持ち手を持つことを妨げることはない。なお、この場合に、第2着脱部63だけを取り付けておくようにしてもよい。これにより、作業者が収容容器20の持ち手を持つことを妨げることなく、且つ、容器カバーを保持することができる。
【0087】
他にも、収容容器20や拡張部材60の洗浄を行う際に拡張部材60を取り外しておくとよい。これにより、収容容器20と拡張部材60それぞれを別個に洗浄することができ、洗浄作業が容易となる。
このように、拡張部材60を、必要に応じて適宜着脱することで、作業者の利便性を向上させることが可能となる。
【0088】
なお、上述の説明では容器カバーを取り付ける場合を例にとって説明したが、本実施形態において容器カバーの取り付けは必須ではなく、容器カバーを取り付けない場合であっても本実施形態を適用することが可能である。
【0089】
[拡張部材60の作用効果]
図15は、拡張部材60を取り付けることによる作用効果について示す模式図である。
図15は、
図8と同様に上面から俯瞰した図であり、ベルトコンベア2における搬送の下流方向を紙面の下側として、収容容器20、多関節ロボット30、及び容器載置部材54を示す。なお、収容容器20は、多関節ロボット30に隣接した位置の載置部55に載置された状態である。
【0090】
収容容器20は、4つの辺によって矩形の開口面を構成している。この開口面を構成するする4つの辺を、それぞれ第1の辺~第4の辺と称する。本例では、拡張部材60は、第1の辺に取り付けられている。そして、
図14(d)に示したように、この拡張部材60の拡張部61は、鉛直上方に延在する板状の部材であって、且つ、鉛直上方に向かうにしたがって収容容器20の外側に傾斜する形状を有していることから、第1の辺の開口面を鉛直上方と水平方向の双方について拡張することができる。
【0091】
次に、この拡張部材60と、多関節ロボット30が実行する把持に関する動作との関係について説明する。多関節ロボット30は、把持を行うにあたって、ロボットアーム32の駆動により、収容容器20の中央付近に把持部材31aを移動する。
【0092】
そして、図中に「(1)把持」として示すように、把持部材31aを用いた把持動作が行われる。また、把持をした具材の重量が規定量でない場合には、一度把持した具材をその場で解放し、再度の把持が行われる。
次に、「(2)除去」として示すように、把持部材31aを上下動させることで、把持部材31aに付着した具材を落下させる除去動作が、必要に応じて行われる。
【0093】
これら把持動作(解放動作及び再把持動作を含む)及び除去動作は、収容容器20の開口面中央付近において行われるため、具材が収容容器20の外側に飛び散る可能性は低い。ただし、この場合に、把持部材31aの位置が、収容容器20の最も高い位置よりも低い位置(すなわち、収容容器20の収容空間内)となるようにして、把持動作及び除去動作を行うことにより、具材が収容容器20の外側に飛び散ることを、より一層抑制することができる。
【0094】
その後、多関節ロボット30は、具材を把持した把持部材31aをその場で待機させる。そして、移送機構50によって容器載置部材54上の解放位置P2に容器が移送されると、多関節ロボット30は、把持部材31aによる具材の移送を開始する。具材を把持した状態の把持部材31aは、ロボットアーム32が駆動することによって、図中に「把持部材の移送経路」として示す経路によって、把持している具材を移送する。この移送経路は、把持から解放までの動作を迅速に完了するために、把持位置から開放位置までの最短ルート(例えば、可能な限り水平移動のみのルート)であって、ロボットアーム32の駆動速度も最速とすることが望ましい。
また、把持部材31aは可能な限り効率的な把持ができる方向に回転して把持を行う。例えば、把持の際の開閉方向が収容容器20の壁面に沿った方向に回転した状態で把持を行う。そのため、その後、解放に適した方向となるように、把持部材31aは、移送の途中で鉛直方向を回転軸として適宜回転を行う。
【0095】
このように、効率的な方法で移送を行った場合、移送経路においてカーブする際に、把持部材31aには大きな遠心力が働く。すると、把持部材31aが十分に把持できていない具材や、把持部材31aに付着している具材が、この遠心力に伴って第1の辺に向かって飛び散り、制御不能となってしまう。
【0096】
しかしながら、本実施形態では、拡張部材60の拡張部61によって、第1の辺の鉛直上方と水平方向の双方について開口面の拡張をしている。そのため、この飛び散った具材は、拡張部61に接触する。そして、拡張部61は、鉛直下方に向かうにしたがって収容容器20の内側に傾斜する形状となっていることから、この接触した具材(すなわち、把持部材31aから飛び散った具材)は、収容容器20の開口面に向かって案内される。これにより、拡張部61は、飛び散った具材を収容容器20の収容空間に落下させることができる。
すなわち、このような拡張部材60の作用効果によって、多関節ロボット30が保持に関する動作(ここでは、保持を実現するための一例である、把持に関する動作)を実行したことに伴って飛び散った具材が、収容容器20の外側に飛び散ることを抑制することができる。
【0097】
そして、図中で「(5)解放」として示すように、把持部材31aは、把持している具材を解放する。なお、解放の際に飛び散った具材が、載置部55の凹型形状に落下するように、把持部材31aの解放時の位置が、収容容器20の最も高い位置よりも低い位置となるようにすることが望ましい。これにより、載置部55の外部に汁気等が漏れてしまうことを抑制することができる。
【0098】
また、本例では、拡張部材60は、第1の辺に取り付けられていることを想定した。これに一例に過ぎず、他の辺についても、拡張部材60を取り付けるようにしてもよい。例えば、第2の辺に、拡張部材60を取り付けることで、把持動作や除去動作に伴い飛び散った具材を収容容器20の収容空間に落下させることができる。この場合、把持部材31aの位置が、拡張部材60の最も高い位置よりも低い位置となるようにして、把持動作及び除去動作を行うことにより、具材が収容容器20の外側に飛び散ることが、より一層抑制することができる。
【0099】
他にも、例えば、第4の辺に、拡張部材60を取り付けることで、解放動作に伴い飛び散った具材を載置部55の凹型形状に落下させることができる。この場合、把持部材31aの位置が、拡張部材60の最も高い位置よりも低い位置となるようにして、解放動作を行うことにより、具材を、より確実に載置部55の凹型形状に落下させることができる。
【0100】
また、拡張部材60の横方向の長さは、必ずしも各辺の長さと同じでなくてもよい。例えば、第4の辺に取り付ける拡張部材60の長さを第4の辺の長さよりも短くし(例えば、第4の辺の半分の長さとし)、第4の辺の多関節ロボット30の近傍の位置に取り付けるようにしてもよい。これにより、多関節ロボット30側への飛び散りを抑制できる共に、把持部材の移送経路を妨げることがない。
【0101】
あるいは、他の辺(例えば、第3の辺)に、第2着脱部63のみを取り付けるようにしてもよい。これにより、対向する辺(例えば、第1の辺と、第3の辺)から、均等な力でバランスよく容器カバーを保持することが可能となる。
【0102】
以上、拡張部材60の作用効果について説明をした。なお、このような拡張部材60が存在しない一般的な技術の場合には、飛び散りを抑制するために、移送速度を低下させる等の手段を講じる必要がある。しかしながら、本実施形態では、拡張部材60が存在することから、移送速度を低下させるような必要はない。従って、本実施形態によれば、多関節ロボット30の生産性を向上させることも可能となる。
【0103】
次に、収容容器20のサイズをより大きいものにする場合と、本実施形態のように拡張部材60を着脱するようにする場合との違いについても説明する。
仮に、収容容器20のサイズを、例えば、通常よりも高さがある特別なサイズとすると、容器カバーが適合しなくなるという問題がある。一般的な汎用の収容容器20は規格品であり、その大きさ(例えば、容器サイズの縦横比や容量)が予め定まっている。そして、容器カバーもこれら規格品のサイズに合致するサイズで販売されている。そのため、収容容器20を特別なサイズとすると、容器カバーもこれに合わせた特別なサイズとする必要が生じ、コスト面で不利益がある。また、載置部55の形状等も変更する必要があり、システム全体としての汎用性が低くなってしまう。
【0104】
また、仮に、収容容器20のサイズを、例えば、通常よりも高さがある特別なサイズとしたとしても、作業者がその高さに応じて収容空間内が満たされるまでより多量の具材を収容してしまうおそれがある。このような状態では、収容された具材を収容面付近で把持や移送することになり、具材の飛び散りを抑制することはできない。すなわち、収容容器20のサイズを、例えば、通常よりも高さがある特別なサイズとした意味を失ってしまう。
これに対して、本実施形態のように着脱可能な拡張部材60を用いるのであれば、これらの問題は発生しない。この観点からも、着脱可能な拡張部材60を用いることについて、優位性があるといえる。
【0105】
[全体動作]
次に、把持システム1の全体動作を説明する。
図16は、把持システム1が実行する具材盛り付け処理の流れを示すフローチャートである。具材盛り付け処理は、例えば、作業者によって具材盛り付け処理を開始させる操作が行われたことを契機として開始される。
【0106】
具材盛り付け処理が開始されると、
図16のステップS11において、多関節ロボット制御部154は、具材盛り付け処理における一連の動作を実行するための動作用のデータ(動作パターンのデータ及びハンド31の差し込み量のデータ等)をパラメータ記憶部171から読み込むことで、具材を把持するための準備を行う。
【0107】
ステップS12において、多関節ロボット制御部154は、動作パターンのデータに従って、収容容器20の収容空間へ、ハンド31を移送する。
【0108】
ステップS13において、具材状態判定部152は、収容容器20の収容空間における具材の状態を示す具材状態マップを履歴DB172から読み込むことで、収容容器20の収容空間における具材の状態を認識する。具材状態判定部152は、その後も、センサ情報取得部151が取得した、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータに基づいて、具材の状態の認識を継続する。
【0109】
ステップS14において、多関節ロボット制御部154は、ステップS11において読み込んだ動作パターンのデータと、ステップS13において認識した収容容器20の収容空間における具材の状態とに基づいて、具材に対して把持部材31aを差し込む深さを決定する。
ステップS15において、多関節ロボット制御部154は、決定された差し込み深さまで、具材に対して把持部材31aを差し込む。この場合、例えば、多関節ロボット制御部154は、多関節ロボット30の制御パラメータ(関節の回転角度等)から差し込み量を算出したり、ステップS12で具材の表面を検出して差し込みを開始してからの経過時間から差し込み量を算出したりすることが可能である。
ステップS16において、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aを閉じて具材を把持する。
【0110】
ステップS17において、具材量判定部153は、把持している把持具材の重量(物理量)を計測し、規定量の具材が把持されているか否かを判定する。規定量の具材が把持されているとは、例えば、目標とする重量に対して、把持した具材の重量が所定誤差以内(±15%以内等)にあることをいう。ただし、把持部材31aに具材が粘着して解放されないケースを考慮し、把持した重量が規定量よりも多い場合の誤差を少ない場合の誤差よりも大きく設定することとしてもよい。
【0111】
規定量の具材が把持されている場合は、ステップS17においてYesと判定され、処理はステップS18に進む。なお、この場合に、必要であれば付着具材の除去動作を行ってからステップS18に進むようにしてもよい。一方で、規定量の具材が把持されていない場合は、ステップS17においてNoと判定され、処理はステップS14から再度行われる。この場合、把持している把持具材が規定量より超過しているのであれば、再度行われるステップS14において、差し込み深さはより浅くなるように再決定される。一方で、把持している把持具材が規定量より不足しているのであれば、再度行われるステップS14において、差し込み深さはより深くなるように再決定される。
【0112】
なお、ステップS14~ステップS17を繰り返す過程で、前回よりも把持部材31aを具材に深く差し込んだとしても、規定量の具材を把持できない場合(規定量を取るために必要な差し込み深さよりも、把持予定位置における具材の深さが浅い場合)等には、具材表面の複数箇所から具材を把持することにより、複数回で把持した合計の具材の量が規定量となるように制御することも可能である。この場合、例えば、具材の表面における複数箇所に把持部材31aを差し込む深さの合計(差し込み量の合計)が、一度で規定量の具材を把持する場合に把持部材31aを具材に差し込む深さと同一となるように制御することができる。また、例えば、2箇所目以降の把持を行う場合に、把持済みの具材を次の把持予定位置に一旦解放し、解放した具材が存在する具材の表面に対して、一度で規定量の具材を把持する場合に差し込む深さまで把持部材31aを具材に差し込み、規定量の具材を改めて一度で把持するように制御することも可能である。
【0113】
ステップS18において、移送機構制御部155は、容器検出センサ41,42の検出結果に基づいて、移送位置P1において容器が検出されたか否かを判定する。容器が検出された場合は、ステップS18においてYesと判定され、処理はステップS19に進む。一方で、容器が検出されていない場合は、ステップS18においてNoと判定され、処理はステップS18の判定を繰り返す。
【0114】
ステップS19において、移送機構制御部155は、具材検出センサ44の検出結果に基づいて、すでに具材が盛り付けられている容器であるか否かを判定する。具体的には、移送機構制御部155は、具材がすでに盛り付けられている場合を想定した、搬送面からの具材の高さについて閾値を設定する。そして、移送機構制御部155は、具材検出センサ44の検出結果に基づいて、一定時間この閾値を超える高さが検出され続けた場合に、具材がすでに盛り付けられていると判定する。
なお、例えば、空の容器のある程度の高さのある部分(例えば、容器の周縁部)が、仮にこの閾値を超えたとしても、それは、短時間に過ぎず一定時間未満となる。従って、この空の容器について、具材がすでに盛り付けられていると、誤って判定してしまうことを防止することができる。この場合、この一定時間の長さは、例えば、容器検出センサ41,42が容器を検出してから、この容器が搬送されて移送位置P1を通り過ぎてしまうまでの時間よりも短い時間の範囲で適宜設定することができる。
【0115】
すでに具材が盛り付けられている場合は、ステップS19においてYesと判定され、処理はステップS18に戻り、ステップS18の判定を再度行う。このようにステップS19においてYesと判定された場合、具材が盛り付けられている容器は、移送機構50第1移送部材531と第2移送部材532の間を通過して、そのままベルトコンベア2の下流に搬送される。一方で、具材が盛り付けられていない場合は、ステップS19においてNoと判定され、処理はステップS20に進む。
なお、この判定を行う理由であるが、上述したように、1つのベルトコンベア2に対して、複数の多関節ロボット30が配置され、これら複数の多関節ロボット30が協働して作業しているような場合に、すでに上流の多関節ロボット30によって具材が盛り付けられている容器が搬送されてくる可能性があるからである。
【0116】
ステップS20において、移送機構制御部155は、移送機構50を駆動させ、容器を移送位置P1から解放位置P2に移送させる。
【0117】
ステップS21において、多関節ロボット制御部154は、解放位置P2において容器への解放を実行する。
なお、少なくともステップS15~ステップS20の間において、
図15を参照して説明したように、拡張部材70により、多関節ロボット30が把持に関する動作を実行した場合に、収容容器20の外部に飛び散るはずの具材を収容容器20の開口面(すなわち、収容容器20の内部)に落下させることが可能となる。
【0118】
ステップS22において、移送機構制御部155は、解放により具材が盛り付けられた容器を、移送位置P1に移送可能なタイミングか否かを判定する。この判定を行う理由であるが、単に多関節ロボット30による解放が終了したことのみを条件として、容器を移送位置P1に移送してしまうと、移送位置P1に運搬された他の容器(他の空容器又は他の多関節ロボット30が具材を盛り付け済みの容器)と衝突してしまう可能性があるからである。そこで、移送機構制御部155は、容器検出センサ41,42の検出結果に基づいて、他の容器が、移送位置P1に運搬されていないことや、移送位置P1に運搬される直前ではないことを確認できたこと条件として、容器を移送位置P1に移送可能なタイミングであると判定する。これにより容器同士の衝突という事態の発生を防止することができる。
【0119】
容器を移送位置P1に移送可能なタイミングであると判定されない場合は、ステップS22においてNoと判定され、処理はステップS22の判定を繰り返す。一方で、容器を移送位置P1に移送可能なタイミングであると判定された場合は、ステップS22においてYesと判定され、処理はステップS23に進む。
【0120】
ステップS23において、移送機構制御部155は、移送機構50を駆動させ、容器を解放位置P2から移送位置P1に移送させる。容器(ここでは、具材を盛り付け済みの容器)は、移送位置P1に移送されると、ベルトコンベア2の搬送面に再度載置され、ベルトコンベア2の下流に向かって搬送される。
【0121】
ステップS24において、記録制御部156は、具材盛り付け処理において取得された制御に関するパラメータ及び盛り付けられた具材の重量の計測データ(履歴データ)を履歴DB172に記憶する。また、記録制御部156は、収容容器20の収容空間における具材の状態を示す具材状態マップを更新し、この更新後の具材状態マップも履歴DB172に記憶する。なお、この場合に、盛り付けられた具材の重量に過不足がある場合には、作業者に対してアラートを出力する等してもよい。
【0122】
ステップS25において、多関節ロボット制御部154は、具材盛り付け処理を終了する条件に適合したか否かを判定する。この場合、具材盛り付け処理を終了する条件としては、予定された数の惣菜の容器に具材を盛り付けたこと、あるいは、作業者によって具材盛り付け処理を終了させる操作が行われたこと等を定義することができる。
具材盛り付け処理を終了する条件に適合していない場合は、ステップS25においてNoと判定されて、処理はステップS12から再度行われる。一方で、具材盛り付け処理を終了する条件に適合している場合は、ステップS25においてYesと判定されて、具材盛り付け処理は終了する。
【0123】
以上のように、本実施形態に係る把持システム1は、拡張部材60の拡張部61によって、第1の辺の鉛直上方と水平方向の双方について拡張をしている。そのため、飛び散った具材を収容容器20の収容空間に落下させることができる。
すなわち、本実施形態に係る把持システム1は、多関節ロボット30が保持に関する動作(ここでは、保持を実現するための一例である、把持に関する動作)を実行したことに伴って飛び散った具材が、収容容器20の外側に飛び散ることを抑制することができる。
【0124】
[変形例1]
上述した本実施形態において、
図12等を参照して拡張部材60の構成を説明したが、これに限られない。例えば、拡張部61を適切に収容容器20に取り付けられるのであれば、拡張部材60の構成を適宜変更することができる。
【0125】
図17は、拡張部材60の変形例である、拡張部材60aの構成を示す斜視図である。
図17に示すように、拡張部材60aは、拡張部61aと、第1着脱部62aと、第2着脱部63aと、を備えている。また、第1着脱部62aは、各挟持部に代えて、差込部621a,622aを備えている。第2着脱部63aは、挟持部631a,632a,633aを備えている。
【0126】
拡張部61aについては、上述した実施形態の拡張部61と同様である。
差込部621a,622aは、鉛直下方に突出した板状の部分である。これら差込部621a,622aは、各挟持部と異なり、特に板バネ等の機能を備える必要はない。
挟持部631a,632a,633aは、上述した実施形態の挟持部631,632,633と同様に、板バネとして機能し、収容容器20に取り付けられた場合に、挟持力を作用させる。挟持部631a,633a対応する位置の天面部分には、差込部621a,622aの形状と対応した形状の切り欠きが設けられている。
【0127】
そして、本変形例では、この切り欠きのそれぞれに、差込部621a,622aのそれぞれを差し込むことで、第1着脱部62aを第2着脱部63aに取り付けることができる。また、引き抜くことで、取り外すことができる。すなわち、抜き差しするのみで、着脱が実現される。
【0128】
収容容器20に取り付ける場合には、上述した実施形態と同様に、まず第2着脱部63aの各挟持部の挟持力により、第2着脱部63aを収容容器20に取り付ける。次に、この第2着脱部63a切り欠きのそれぞれに、差込部621a,622aのそれぞれを差し込むことで、第1着脱部62aは、第2着脱部63aを介して収容容器20に取り付ける。
このような構成であっても、拡張部61を適切に収容容器20に取り付けられる。
【0129】
また、上述した実施形態では、上記の変形例では、作業者の搬送時等に拡張部61aを取り外せるように、2つの着脱部を有する構造としている。これに限らず、拡張部材60を一体型の形状とするようにしてもよい。例えば、上述した実施形態の、拡張部61と第1着脱部62の部分のみで、拡張部材60を実現するようにしてもよい。そして、第1着脱部62を直接収容容器20(を覆う容器カバー)に取り付けるようにしてもよい。
【0130】
[変形例2]
上述した実施形態において、多関節ロボット30は、把持部材31aを用いた把持を行うことにより、対象物の具材を保持していた。ただし、これは保持部材を用いた保持方法の一例に過ぎない。
これに限らず、多関節ロボット30は、他の保持部材により保持をするようにしてもよい。
例えば、多関節ロボット30は、密着した対象物との間の空間を真空に近づける吸着パッドを保持部材として、対象物を吸着することにより対象物を保持するようにしてもよい。あるいは、例えば、多関節ロボット30は、スプーン形状やレードル形状の部材を保持部材として、対象物を掬うことにより対象物を保持するようにしてもよい。他にも、例えば、多関節ロボット30は、トング形状や爪形状の部材を保持部材として、対象物を挟むことにより対象物を保持するようにしてもよい。
また、多関節ロボット30は、具材以外を対象物として保持をするようにしてもよい。例えば、多関節ロボット30は、電子機器等の工業製品の部品等を対象物として保持をするようにしてもよい。
本変形例によれば、上述した実施形態における把持部材による保持に代えて、これらの保持部材によって対象物の保持が実現される。
【0131】
[変形例3]
上述した本実施形態では、多関節ロボット30は、容器の近傍にて盛り付けを行うことから、ロボットアーム32を伸ばして遠方で盛り付けを行う場合と比べて、より精度の高い動きが実現でき、適切な盛り付けを実現できる。そこで、多関節ロボット30は、このより精度の高い動きを利用して、容器に具材を解放した後に、さらに解放した具材を整形する動作や、解放後に把持部材31aに付着した具材を、容器に残さず解放する動作を行うようにしてもよい。
【0132】
この場合に、解放した具材を整形する動作としては、例えば、一度解放した具材を、容器から再度把持して、さらに再度容器に解放することでより安定した形状に整形する動作が考えられる。他にも、例えば、容器に解放した状態から把持部材31aを閉じながら上昇することで山型の形状に整形する動作が考えられる。他にも、例えば、把持部材31aの先端で解放した具材を突っつくことで、具材同士を強固に結合させ、解放した具材が崩れることを防止する整形動作が考えられる。
【0133】
また、解放後に把持部材31aに付着した具材を、容器に残さず解放する動作としては、例えば、把持部材31aを振動させ、これにより把持部材31aに付着した具材を落下させる動作が考えられる。また、容器の鉛直上方から下降し、その際に急停止することで、慣性力で把持部材31aに付着した具材を落下させる動作が考えられる。
【0134】
一般的な技術のように、ベルトコンベアの搬送面で盛り付けを行う場合には、このような動作を行うことは困難である。しかしながら、上述した本実施形態では、多関節ロボット30は、容器の近傍にて、停止している容器に対して動作を行うので、これら例示したような複雑な動作をさらに行うことが可能となる。
【0135】
[変形例4]
上述の実施形態において、一対の把持部材31a(すなわち、2つの把持部材31a)を用いることを想定したが、これに限られない。例えば、3つ以上の複数の把持部材31aを用いるようにしてもよい。そして、各把持部材31aの開口部を近づけることで把持動作を行い、各把持部材31aの開口部を遠ざけることで解放動作を行うような構成としてもよい。
この場合、例えば、3つの把持部材31aを用いるのであれば、鉛直上方から俯瞰した場合に、それぞれの中心角が120°の3つの把持部材31aの先端を中央に近づけたり遠ざけたりするようにする。
このようにしても、上述した案内動作等の各動作を実行することができる。
【0136】
[変形例5]
上述の実施形態において、具材状態判定部152は、力センサ30Bによって計測された具材からの反力(すなわち、具材への接触の検出結果)のデータに基づいて、具材の状態を判定するものとしたが、これに限られない。
【0137】
カメラの設置コスト等が問題とならない場合には、カメラ(すなわち、撮像装置)によって撮影を行うことにより、具材の状態を判定するようにしてもよい。また、上述の実施形態において、多関節ロボット30が把持した具材の重量あるいは惣菜の容器に盛り付けられた具材の重量を重量センサ30Aによって計測するものとしたが、これに限られない。
例えば、撮像装置によって撮像された具材の画像から、具材の体積を推定し、密度と推定された体積を乗算すること等により、具材の重量を算出することも可能である。
この場合、重量センサ30Aを用いることなく、具材の重量を算出する手段を実装することができる。
【0138】
[構成例]
以上のように、本実施形態における拡張部材60は、多関節ロボット30による把持の対象物を収容する収容容器20に着脱可能な拡張部材60であって、第1着脱部62,第2着脱部63と、拡張部61と、を備える。
第1着脱部62,第2着脱部63は、当該拡張部材60を収容容器20に対して取り付け及び取り外しするための部分である。
拡張部61は、収容容器20に取り付けられた場合に、少なくとも鉛直方向において収容容器20の開口面を拡張する形状に構成される。
【0139】
これにより、多関節ロボット30によって把持を行う場合に、収容容器20の開口面を少なくとも鉛直方向において開口面を拡張することができる。そのため、多関節ロボット30が把持に関する動作を実行した場合に、収容容器20の外部に飛び散るはずの具材を収容容器20の開口面(すなわち、収容容器20の内部)に落下させることが可能となる。
すなわち、拡張部材60によれば、多関節ロボット30によって把持を行う場合に、把持の対象物が収容容器20の外側に飛び散ることを抑制することができる。
【0140】
また、この拡張部材60は、必要に応じて適宜着脱することができる。例えば、作業者が収容容器20の持ち手を握る際に、拡張部材60が取り付けられていると、拡張部材60と作業者の腕とが干渉して、作業者の作業を妨げてしまう。そのため、作業者が持ち手を握りながら収容容器20を運搬する際や、収容容器20を載置部55に載置する際には拡張部材60を取り外しておく。これにより、拡張部材60によって、作業者が収容容器20の持ち手を持つことを妨げることはない。なお、この場合に、第2着脱部63のみを取り付けておくようにしてもよい。これにより、作業者が収容容器20の持ち手を持つことを妨げることなく、容器カバーを保持することができる。
他にも、収容容器20や拡張部材60の洗浄を行う際に拡張部材60を取り外しておくとよい。これにより、収容容器20と拡張部材60それぞれを別個に洗浄することができ、洗浄作業が容易となる。
このように、拡張部材60を、必要に応じて適宜着脱することで、作業者の利便性を向上させることが可能となる。
【0141】
拡張部61は収容容器20に取り付けられた場合に、多関節ロボット30が把持に関する動作を実行したことに伴って当該拡張部61に接触させた対象物を、収容容器20の開口面に向かって案内する。
これにより、多関節ロボット30によって把持を行う場合に、把持に関する動作の実行に伴って制御不能となった対象物を、収容容器20の開口面に向かって案内することができる。
【0142】
拡張部61は収容容器20に取り付けられた場合に、多関節ロボット30が把持に関する動作を実行する位置よりも鉛直上方の位置まで収容容器20の開口面を拡張する形状に構成される。
これにより、多関節ロボット30によって把持を行う場合に、把持に関する動作の実行に伴って飛び散った、あるいは、落下した対象物が収容容器20の外側に飛び散ることを、より確実に抑制することができる。
【0143】
多関節ロボット30が実行する把持に関する動作は、把持している対象物の移送、対象物を把持する把持部材の回転、把持している対象物の解放、及び把持部材に付着した対象物の除去、の少なくとも何れかの動作を含む。
これにより、多関節ロボット30が実行する把持に関する動作において、対象物が飛び散る可能性が高い状況において、制御不能となった対象物が収容容器20の外側に飛び散ることを、より確実に抑制することができる。
【0144】
拡張部61は収容容器20に取り付けられた場合に、鉛直上方に向かうに従って水平方向に広がることで、収容容器20の開口面をさらに水平方向にも拡張する形状に構成されている。
これにより、水平方向に飛び散った対象物が収容容器20の外側に飛び散ることを、より確実に抑制することができる。
【0145】
第1着脱部62,第2着脱部63は、収容容器20の開口面を構成する複数の辺の、少なくとも1つの辺に対して拡張部61を取り付け可能とする形状に構成される。
これにより、必ずしも全ての辺に拡張部61を取り付けるのではなく、具材が飛び散る可能性の高い辺にのみ拡張部61を取り付けることが可能となる。
【0146】
第1着脱部62,第2着脱部63は、収容容器20に取り付けられた場合に、収容容器20を覆うカバーが収容容器20を覆っている状態を維持する形状に構成される。
これにより、第1着脱部62,第2着脱部63は、拡張部61を収容容器20に取り付けるのみならず、収容容器20を覆うカバーが収容容器20を覆っている状態を維持することができる。
【0147】
なお、上述の実施形態及び変形例は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の機能を実現する種々の実施形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上述の実施形態及び変形例において、惣菜を盛り付ける把持システムに本発明を適用する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、種々の対象物を把持するシステムに適用することができる。例えば、練ったモルタル、コンクリート、漆喰、粘土等、粘性あるいは粘着性が高い材料を把持するシステムに本発明を適用することができる。本発明は、作業温度又は室温において中粘度以上(5000mPa・s)以上の粘度を有する対象物を把持する際に好適である。
また、上述の実施形態に記載された例を適宜組み合わせて、本発明を実施することが可能である。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、
図3の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。すなわち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が把持システム1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に
図3の例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0148】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0149】
プログラムを記憶する記憶媒体は、装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア、あるいは、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクあるいはフラッシュメモリ等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray Disc(登録商標)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。フラッシュメモリは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリあるいはSDカードにより構成される。また、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体は、例えば、プログラムが記憶されているROMやハードディスク等で構成される。
【0150】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0151】
上記実施形態は、本発明を適用した一例を示しており、本発明の技術的範囲を限定するものではない。すなわち、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができ、上記実施形態以外の各種実施形態を取ることが可能である。本発明が取ることのできる各種実施形態及びその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0152】
1 把持システム、2 ベルトコンベア、10 制御装置、20 収容容器、30 多関節ロボット、30A 重量センサ、30B 力センサ、31 ハンド、31a 把持部材、32 ロボットアーム、40 検出部、41、42 容器検出センサ、43 リフレクタ配置部、44 具材検出センサ、50 移送機構、51 アクチュエータ、52 スライド部材、53 連結部、531 第1移送部材、532 第2移送部材、54 容器載置部材、541 案内部、542 底部、543 スリット、55 載置部、60、60a 拡張部材、61、61a 拡張部、62、62a 第1着脱部、63、63a 第2着脱部、621、622、623、631、632、633、631a、632a、633a 挟持部、621a、622a 差込部、151 センサ情報取得部、152 具材状態判定部、153 具材量判定部、154 多関節ロボット制御部、155 移送機構制御部、156 記録制御部、171 パラメータ記憶部、172 履歴データベース(履歴DB)、711 CPU、712 ROM、713 RAM、714 バス、715 入力部、716 出力部、717 記憶部、718 通信部、719 ドライブ、731 リムーバブルメディア、L1、L2 光路
【要約】
【課題】ロボットによって保持を行う場合に、保持の対象物が収容容器の外側に飛び散ることを抑制する。
【解決手段】拡張部材70は、多関節ロボット30による保持の対象物を収容する収容容器20に着脱可能な拡張部材70であって、第1着脱部72,第2着脱部73と、拡張部71と、を備える。第1着脱部72,第2着脱部73は、当該拡張部材70を収容容器20に対して取り付け及び取り外しするための部分である。拡張部71は、収容容器20に取り付けられた場合に、少なくとも鉛直方向において収容容器20の開口面を拡張する形状に構成される。
【選択図】
図1