(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】紫外線処理方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20240517BHJP
B01J 27/055 20060101ALI20240517BHJP
B01J 35/39 20240101ALI20240517BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20240517BHJP
C02F 1/58 20230101ALI20240517BHJP
C02F 1/72 20230101ALI20240517BHJP
【FI】
C02F1/32
B01J27/055 M
B01J35/39
C02F1/42 B
C02F1/58 A
C02F1/72 101
(21)【出願番号】P 2018222573
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-10-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】391031155
【氏名又は名称】株式会社日本フォトサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100077539
【氏名又は名称】飯塚 義仁
(72)【発明者】
【氏名】中村 知克
(72)【発明者】
【氏名】山越 裕司
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】原 賢一
【審判官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-190976(JP,A)
【文献】特開2008-119658(JP,A)
【文献】特開昭49-113451(JP,A)
【文献】特開平7-080479(JP,A)
【文献】特開平6-114384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00-1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水とするための被処理水にペルオキソ二硫酸塩及び銅イオンを溶解させることと、
前記ペルオキソ二硫酸塩及び前記銅イオンを溶解させた前記被処理水を流体のままで収容した容器内において、該収容された流体のままの前記被処理水に対して紫外線照射処理を行うこと
を含む紫外線処理方法。
【請求項2】
前記被処理水に前記銅イオンを溶解させることは、前記被処理水に硫酸銅を溶解させることからなる、請求項1の紫外線処理方法。
【請求項3】
前記紫外線の光源は、低圧水銀ランプ、その他の水銀ランプ、エキシマランプ、LED、レーザーのいずれかである、請求項1又は2の紫外線処理方法。
【請求項4】
前記低圧水銀ランプは、少なくとも波長185nmの紫外線を放射するものである、請求項3の紫外線処理方法。
【請求項5】
紫外線照射処理済の前記被処理水をイオン交換樹脂で処理することをさらに含む、請求項1乃至4のいずれかの紫外線処理方法。
【請求項6】
前記被処理水に前記銅イオンを溶解させることは、該銅イオンを含む溶液を前記被処理水に注入すること、該銅イオンを含む金属プレートを前記被処理水に接液すること、該銅イオンを含む金属プレートを前記被処理水に接液させて電気分解を行うこと、のうち少なくとも1つを含む、請求項1乃至5のいずれかの紫外線処理方法。
【請求項7】
前記銅イオンの濃度は0.001ppm乃至1.0ppmの範囲から選択される、請求項1乃至6のいずれかの紫外線処理方法。
【請求項8】
前記被処理水に対して紫外線照射処理することは、前記被処理水中に溶存する有機物の分解を行うために該被処理水に紫外線を照射することからなる、請求項1乃至7のいずれかの紫外線処理方法。
【請求項9】
超純水とするための被処理水にペルオキソ二硫酸塩及び銅イオンを溶解させる設備と、
前記ペルオキソ二硫酸塩及び前記銅イオンを溶解させた前記被処理水を流体のままで収容した容器内において、該収容された流体のままの前記被処理水に対して紫外線照射処理を行う設備
を備える紫外線処理システム。
【請求項10】
前記紫外線の光源は、少なくとも波長185nmの紫外線を放射する低圧水銀ランプである、請求項9の紫外線処理システム。
【請求項11】
紫外線照射処理済の前記被処理水をイオン交換樹脂で処理する設備をさらに備える、請求項9又は10の紫外線処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線(UV)を使用して液体処理を行う、特に超純水製造に適した、紫外線処理方法及びシステムに関し、特に、被処理水中に溶存する有機物を分解することに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体やFPD(フラットパネルディスプレイ)の工場では、製品の製造工程で超純水を用いている。その超純水の水質項目に生菌数とTOC(全有機体炭素)濃度がある。微生物を不活化するための設備としてUV殺菌装置が使用されており、また、TOC濃度を低減するための設備の一つとしてUV酸化装置が使用されている。これらの装置は円筒形の反応容器内に254nm光あるいは185nm光の紫外線を発する低圧水銀ランプが1本もしくは複数本充填されている。このランプは容器内の被処理水に直接触れることがないように石英製のランプ保護管内に1本ずつ挿填されている。被処理水はこのランプ保護管の外側と反応容器の内側との間を紫外線に曝露されながら圧送されている。処理水中の微生物は、254nm光の紫外線に曝露されて不活化される。この不活化は一般的に殺菌とも表現されている。また185nm光の紫外線に曝露された処理水からOHラジカルが生成されて、OHラジカルが酸化剤となってTOCを酸化分解している。同時に、低圧水銀ランプからの185nm光と254nm光により、有機物を直接分解している。同様の反応は波長300nm以下を発する光源(紫外線ランプ)であれば低圧水銀ランプに限らず、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、エキシマランプなどでも起こる。ランプ保護管の素材としては、石英、サファイア、フッ素樹脂などが用いられている。下記特許文献1はこのようなUV処理装置の一例を示す。
【0003】
また、例えば特許文献2に示されるように過酸化水素水を被処理水中に溶解させてUV照射を行うUV酸化装置、あるいは次亜塩素酸塩若しくはオゾンなどを被処理水中に溶解させてUV照射を行うUV酸化装置なども知られている。さらに、例えば特許文献3、非特許文献1及び2に示されるように、被処理水中に過硫酸塩(すなわち、ペルオキソ二硫酸塩)を溶解させUV照射を行うUV酸化装置も知られている。しかし、これら従来のUV酸化装置においては、多くの種類の有機物を分解できるが、たとえば尿素を分解するには多大なエネルギーが必要であり、UV照射のための装置規模が大型化していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2016/143829
【文献】特開2015-93226
【文献】特開2016-196000
【非特許文献】
【0005】
【文献】「フッ素系化合物の物理化学的処理法に関する基礎的研究」環境衛生工学研究・第25巻第3号 (2011)、70-73頁
【文献】「過硫酸イオンを用いた水中のパーフルオロオクタン酸(PFOA)及びその関連物質の光分解」用水と廃水・Vol.48 No.12 (2006) 、1081-1087頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、紫外線(UV)を照射することにより被処理水中に溶存する有機物を分解する技術において、UV照射のための装置規模を増すことなく、有機物分解効率を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る紫外線処理方法は、超純水とするための被処理水にペルオキソ二硫酸塩及び銅イオンを溶解させることと、前記ペルオキソ二硫酸塩及び前記銅イオンを溶解させた前記被処理水を流体のままで収容した容器内において、該収容された流体のままの前記被処理水に対して紫外線照射処理を行うことを含む。
【0008】
本発明に係る紫外線処理システムは、超純水とするための被処理水にペルオキソ二硫酸塩及び銅イオンを溶解させる設備と、前記ペルオキソ二硫酸塩及び前記銅イオンを溶解させた前記被処理水を流体のままで収容した容器内において、該収容された流体のままの前記被処理水に対して紫外線照射処理を行う設備を備える。
【0009】
本発明者らの実験によれば、ペルオキソ二硫酸塩(すなわち過硫酸塩)を溶解させた被処理水中にさらにアルカリ金属以外の金属イオンを溶解させ、その結果得られた被処理水を紫外線で処理する(UV照射する)ことは、ペルオキソ二硫酸塩(すなわち過硫酸塩)のみを溶解させた被処理水を紫外線で処理する場合に比べて、より少ないUVエネルギーで被処理水中の有機物の分解を行うことができることが確認された。また、本発明によれば、特に、被処理水中の尿素の分解を効率的に行うことができることが確認された。したがって、本発明によれば、UV照射のための装置規模を増すことなく、有機物分解効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る紫外線処理システム及び方法の一実施形態を略示するブロック図。図。
【
図2】過硫酸カリウム水溶液の波長対吸光度の一例を示すグラフ。
【
図8】被処理水中に溶解させる金属イオンの濃度を0.001ppm乃至1.0ppmの範囲で変化させた実験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、例えば超純水製造システムにおいて適用される、本発明に係る紫外線処理システム及び方法の一実施形態を略示するブロック図である。紫外線(UV)照射装置10は、被処理水を紫外線(UV)で処理するための設備であり、密閉容器10a内に1以上のUVランプ11を配置してなり、供給口10bから容器10a内に流入した被処理水にUVランプ11から放射されたUVを照射し、UV処理済の水を排出口10cから排出する。UV照射装置10の前段に設けられた注入設備12は、被処理水に過硫酸塩(すなわちペルオキソ二硫酸塩)及び金属イオンを注入し、これら過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)及び金属イオンを該被処理水中に溶解させるための設備である。過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)として例えば過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)を被処理水に溶解させるようにしてよい。また、金属イオンとしては、アルカリ金属以外の金属イオンを被処理水に溶解させるものとし、例えばマンガン、鉄、銅、銀、金、チタン、セリウム、ニッケル、ルテニウムの中から選択された少なくとも1つの金属のイオンを被処理水に溶解させるようにしてよい。
【0012】
注入設備12においてアルカリ金属以外の金属イオンを被処理水中に溶解させることは、該金属イオンを含む溶液を該被処理水に注入すること、該金属イオンを含む金属プレートを該被処理水に接液すること、該金属イオンを含む金属プレートを該被処理水に接液させて電気分解を行うこと、のうち少なくとも1つの手法で行うようにしてよく、あるいは、それに限らず、その他適宜の手法で行うようにしてもよい。
【0013】
注入設備12の具体的構成は、被処理水を一時的に滞留させる槽を含んでいて該槽内に過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)及び金属イオンを注入するように構成されていてもよいし、あるいは、被処理水が流れる配管の途中に設けられた注入用バルブ又は溶解器具等によって構成されていてもよいし、あるいは、UV照射装置10の容器10aの供給口10bに取り付けられた注入用アダプタ(バルブ又は溶解器具等)によって構成されていてもよい。なお、注入設備12は、1つの設備からなる必要はなく、過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)を溶解させるための注入設備と、金属イオンを溶解させるための注入設備とが別々に設けられていてよいし、さらには、前者の注入設備と後者の注入設備が適宜離隔されて配置されていてもよく、要するに、UV照射処理の前段階の工程として行われるようになっていればよい。
【0014】
注入設備12によって過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)及びアルカリ金属以外の金属イオンが溶解せしめられた被処理水は、UV照射装置10の供給口10bから容器10a内に供給され、該容器10a内でUVランプ11から放射された紫外線に曝露され、UV処理を受ける。これによって、被処理水内に含まれるTOCが酸化分解され、特に、被処理水中に溶解している過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)とアルカリ金属以外の金属イオンによって、TOCの酸化分解が促進される。
【0015】
UV照射装置10の排出口10cから排出されたUV処理済の被処理水は、後段のイオン交換装置13に送られ、イオン交換樹脂によって処理される。このイオン交換樹脂によって、UV照射装置10における反応によりUV処理済の被処理水中に含まれる有機酸が吸着され、TOC濃度をさらに低減することができる。なお、イオン交換装置13はオプションであり、必要に応じて設ければよい。
【0016】
図2は、過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)の水溶液の波長対吸光度の一例を示すグラフであり、過硫酸カリウムの濃度を100ppmに調整した水溶液の吸光度を1cmセルで測定した結果を示す。図より、波長280 nm付近から吸収が確認され、波長が短くなるにつれて吸光度が高くなることがわかる。すなわち、紫外線光源には波長280 nm以下を発光するものを使用することが有効であると言える。これを満足する光源として工業的に適当なものには、波長185 nmを発光する低圧水銀ランプ、波長254 nmを発光する低圧水銀ランプ、これら以外の水銀ランプ、エキシマランプ、LED(発光ダイオード)、レーザーなどがあるが、これら以外の光源でも良い。ここで、これら以外の水銀ランプとは点灯時の水銀蒸気圧によって、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプなどがある。したがって、UV照射装置10で使用するUVランプ11としては、低圧水銀ランプ、その他の水銀ランプ、エキシマランプ、LED、レーザーのいずれかから選択し得る。
【0017】
本発明に従う方法及び/又は装置によるTOC分解効能について、従来技術と対比して実証するために、以下、いくつかの実験結果を示す。
【0018】
図3乃至
図7は実験例1乃至5の結果を示すグラフであり、横軸に示すUV光源の電力投入量 [kWh/m3]に対する、UV処理後のTOC残存率(詳しくは、-Log(TOC残存率)、すなわち、TOC残存率のマイナス対数値)の関係を縦軸に示している。TOC残存率とは、UV未照射も含めて被処理水をイオン交換樹脂に通過させた後のTOC濃度について、UV照射前に対するUV照射後の比から求めた値である。
図3乃至
図6に示す実験例1乃至4においては、被処理水に含まれるTOC濃度を約1ppmに調整し、
図7に示す実験例5においては、被処理水に含まれるTOC濃度を約30ppbに調整してある。各
図3~
図7において、本発明にしたがって過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)及び金属イオンの両者を溶解させた被処理水をUV処理した実験結果を四角マークでプロットし、従来技術にしたがって過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)のみを溶解させた被処理水をUV処理した実験結果を丸マークでプロットし、過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)及び金属イオンのどちらも溶解させていない被処理水をUV処理した実験結果を三角マークでプロットしてある。また、プロットされた各実験結果の傾きを1次関数(横軸x,縦軸y)で略記し、そこから求められる決定係数R
2の値を併記してある。なお、いずれの実験例においても、被処理水中に溶解させる過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)として過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)を使用し、金属イオンとして硫酸銅(CuSO
4)を使用している。
【0019】
図3に示す実験例1においては、TOC成分としての尿素を初期濃度1ppmで被処理水に含むものを用いており、UV光源として波長185nmのUV光を発する低圧水銀ランプを使用している。なお、この波長185nmのUV光を発する低圧水銀ランプは、同時に254nmのUV光も発するので、図中では「波長185nm、254nm」と記載してある。この実験例1においては、四角マークでプロットした本発明に係る方法に従う実験結果を得るために、被処理水中に100ppmの過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)と0.1ppmの硫酸銅(CuSO
4)を溶解させた。また、丸マークでプロットした従来技術に従う実験結果を得るために、被処理水中に100ppmの過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)のみを溶解させた。図示例において、電力投入量は0乃至2.5[kWh/m3]の範囲である。三角マークでプロットした実験結果に示すように、この電力投入量範囲では、被処理水中に過硫酸カリウムと硫酸銅のいずれも溶解させない場合は、TOC成分の低減効果が見られない。これに対して、丸マークでプロットした実験結果に示すように、被処理水中に過硫酸カリウムのみを溶解させた場合は、TOC成分の低減効果が見られるが、"-Log(TOC残存率)"つまり"TOC残存率のマイナス対数値"の傾きは約0.28であり、所望のTOC低減効果を得るためにはより多くの電力投入が必要であることが判る。例えば、0.6[kWh/m3]の電力投入量では、約70%のTOCが残存する。一方、四角マークでプロットした本発明に従う実験結果においては、"-Log(TOC残存率)"の傾きは約0.49であり、所望のTOC低減効果を得るためにはより少ない電力投入で済むことが判る。例えば、0.6[kWh/m3]の電力投入量では、約50%のTOCが残存するだけである。"-Log(TOC残存率)"の傾きを比べると、四角マークでプロットした本発明に従う実験結果(約0.49の傾き)は、丸マークでプロットした従来技術の実験結果(約0.28の傾き)の約1.75倍のTOC分解性能を発揮することが判る。
【0020】
これにより、波長185nmのUV光源を用いる場合において、本発明に従い、被処理水中に過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)のみならず、金属イオンも溶解させることは、TOC分解性能の向上に大きく寄与することが理解できる。特に、半導体工場で使用する超純水のTOC濃度は0.5乃至1.0 ppbの保証を求められているところ、従来の超純水製造技術にあっては、原水に尿素が含まれている場合、UV処理済み水中のTOC残存濃度が1.0 ppbをわずかに超えることがあり得たので、特に尿素を含むTOCを効率的に分解することが大きな課題となっていた。しかし、本発明によれば、例えば上記のように尿素の分解性能は従来技術の約1.75倍となるので、従来技術では困難であったTOC残存濃度の保証値を安心して確保できるようになる。すなわち、本発明によれば、電力投入量を増すことなく、特に尿素を含むTOCの分解性能を向上し得るので、UV照射のための装置規模を増すことなく、有機物分解効率を改善することができる。
【0021】
図4に示す実験例2においては、TOC成分として初期濃度1ppmの尿素を被処理水に含ませることは上記実験例と同じであるが、UV光源として波長254nmのUV光を発する低圧水銀ランプを使用している。実験例1と同様に、この実験例2においても、四角マークでプロットした本発明に係る方法に従う実験結果を得るために、被処理水中に100ppmの過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)と0.1ppmの硫酸銅(CuSO
4)を溶解させ、また、丸マークでプロットした従来技術に従う実験結果を得るために、被処理水中に100ppmの過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)のみを溶解させた。また、上記と同様に、図示例において電力投入量は0乃至2.5[kWh/m3]の範囲であり、三角マークでプロットした実験結果に示すように、波長254nmのUV光源を用いる場合も、この電力投入量範囲では、被処理水中に過硫酸カリウムと硫酸銅のいずれも溶解させない場合は、TOC成分の低減効果が見られない。これに対して、丸マークでプロットした実験結果に示すように、被処理水中に過硫酸カリウムのみを溶解させた場合は、TOC成分の低減効果が見られるが、"-Log(TOC残存率)"の傾きは約0.19である。一方、四角マークでプロットした本発明に従う実験結果においては、"-Log(TOC残存率)"の傾きは約0.22であり、従来技術に比べてTOC分解性能が向上していることが判る。しかし、尿素を含むTOCの分解性能は、上記実験例1に示す波長185nmのUV光源の方が優れていることが判る。
【0022】
図5に示す実験例3においては、TOC成分として初期濃度1ppmのIPA(イソプロピルアルコール)を被処理水に含ませており、UV光源として波長185nmのUV光を発する低圧水銀ランプを使用している。実験例1及び2と同様に、この実験例3においても、四角マークでプロットした本発明に係る方法に従う実験結果を得るために、被処理水中に100ppmの過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)と0.1ppmの硫酸銅(CuSO
4)を溶解させ、また、丸マークでプロットした従来技術に従う実験結果を得るために、被処理水中に100ppmの過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)のみを溶解させた。また、上記と同様に、図示例において電力投入量は0乃至2.5[kWh/m3]の範囲である。三角マークでプロットした実験結果に示すように、被処理水中に過硫酸カリウムと硫酸銅のいずれも溶解させない場合でも、IPAからなるTOC成分の低減効果が見られる(TOC残存率の傾きは約0.37)。丸マークでプロットした実験結果に示すように、被処理水中に過硫酸カリウムのみを溶解させた場合は、一層のTOC成分の低減効果が見られ、"-Log(TOC残存率)"の傾きは約1.08である。一方、四角マークでプロットした本発明に従う実験結果においては、"-Log(TOC残存率)"の傾きは約2.07であり、従来技術に比べてTOC分解性能が向上していることが判る。
【0023】
図6に示す実験例4においては、TOC成分として初期濃度1ppmのIPA(イソプロピルアルコール)を被処理水に含ませており、UV光源として波長254nmのUV光を発する低圧水銀ランプを使用している。実験例1乃至3と同様に、この実験例4においても、四角マークでプロットした本発明に係る方法に従う実験結果を得るために、被処理水中に100ppmの過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)と0.1ppmの硫酸銅(CuSO
4)を溶解させ、また、丸マークでプロットした従来技術に従う実験結果を得るために、被処理水中に100ppmの過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)のみを溶解させた。また、上記と同様に、図示例において電力投入量は0乃至2.5[kWh/m3]の範囲である。三角マークでプロットした実験結果に示すように、波長254nmのUV光源にあっては、被処理水中に過硫酸カリウムと硫酸銅のいずれも溶解させない場合は、IPAからなるTOC成分の低減効果が見られない。これに対して、丸マークでプロットした実験結果に示すように、被処理水中に過硫酸カリウムのみを溶解させた場合は、IPAからなるTOC成分の低減効果が見られ、"-Log(TOC残存率)"の傾きは約0.39である。一方、四角マークでプロットした本発明に従う実験結果においては、"-Log(TOC残存率)"の傾きは約1.06であり、従来技術に比べてTOC分解性能が向上していることが判る。
【0024】
図7に示す実験例5においては、TOC成分として初期濃度30ppbのIPA(イソプロピルアルコール)を被処理水に含ませており、UV光源として波長185nmのUV光を発する低圧水銀ランプを使用している。この実験例5においては、四角マークでプロットした本発明に係る方法に従う実験結果を得るために、被処理水中に2ppmの過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)と0.02ppmの硫酸銅(CuSO
4)を溶解させ、また、丸マークでプロットした従来技術に従う実験結果を得るために、被処理水中に2ppmの過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)のみを溶解させた。また、図示例において電力投入量は0乃至0.[kWh/m3]の範囲である。三角マークでプロットした実験結果に示すように、被処理水中に過硫酸カリウムと硫酸銅のいずれも溶解させない場合でも、IPAからなるTOC成分の低減効果が見られる(TOC残存率の傾きは約1.99)。丸マークでプロットした実験結果に示すように、被処理水中に過硫酸カリウムのみを溶解させた場合は、一層のTOC成分の低減効果が見られ、"-Log(TOC残存率)"の傾きは約3.72である。一方、四角マークでプロットした本発明に従う実験結果においては、"-Log(TOC残存率)"の傾きは7.14であり、従来技術に比べてTOC分解性能がより一層向上していることが判る。
【0025】
上記実験例3~5によれば、従来技術に比べて、本発明は、尿素以外のTOC成分の分解性能も向上させ得ることが判る。
【0026】
本発明において被処理水中に溶解させる過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)は、過硫酸カリウム(K2S2O8)に限らず、他のペルオキソ二硫酸塩であってもよい。また、被処理水中に溶解させる過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)の濃度は、上記実験例に示した100ppmあるいは2ppmに限らず、適宜に決定し得る。なお、注入設備12において過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)の結晶を被処理水中に直接的に注入して溶解させる若しくは過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)の溶液を被処理水中に直接的に注入して溶解させることに限らず、注入設備12において硫酸溶液を電気分解することに基づき過硫酸塩を生成し且つ生成した過硫酸塩が被処理水中に溶解されるようにしてもよい。また、本発明において被処理水中に溶解させるアルカリ金属以外の金属イオンは、硫酸銅(CuSO4)に限らず、他の金属イオンであってもよい。また、被処理水中に溶解させる金属イオンの濃度は、上記実験例に示した0.1ppmあるいは0.02ppmに限らず、適宜に決定し得る。
【0027】
図8は、本発明において被処理水中に溶解させる金属イオンの濃度を0.001ppm乃至1.0ppmの範囲で変化させた実験結果を示すグラフである。被処理水中に溶解させた金属イオンは、上記実験例と同様に硫酸銅(CuSO
4)であり、被処理水中に一緒に溶解させた過硫酸塩(ペルオキソ二硫酸塩)は上記実験例1~4と同様に100ppmの過硫酸カリウム(K
2S
2O
8)である。また、被処理水に含ませたTOC成分は、上記実験例1、2と同様に初期濃度1ppmの尿素である。処理に使用したUV光源は、波長185nmのUV光を発する低圧水銀ランプ及び波長254nmのUV光を発する低圧水銀ランプである。
図8の横軸は被処理水中に溶解させた硫酸銅(CuSO
4)の濃度を示し、縦軸は電力投入量に対する"-Log(TOC残存率)"の傾きを表す。波長185nmのUV光で処理した場合の実験結果を四角マークでプロットし、波長254nmのUV光で処理した場合の実験結果を菱形マークでプロットしてある。例えば、硫酸銅(CuSO
4)の濃度が0.1ppmの場合は、前記
図3及び4に示す実験例1及び2と同様の実験結果を示しており、波長185nmのUV光で処理した場合の電力投入量に対する"-Log(TOC残存率)"の傾きは約0.49であり、波長254nmのUV光で処理した場合の電力投入量に対する"-Log(TOC残存率)"の傾きは約0.22である。同様に、硫酸銅(CuSO
4)の濃度が0.001ppm、0.01ppm、1.0ppm、の場合の各波長に対応する電力投入量対"-Log(TOC残存率)"の傾きを四角マーク及び菱形マークでそれぞれプロットしてある。従来技術を示すために前記
図3及び4において丸マークでプロットした実験結果(金属イオンを溶解させない場合)における電力投入量対"-Log(TOC残存率)"の傾きは、波長185nmで約0.28、波長254nmで約0.19であったことを考慮すると、
図8における最小の硫酸銅濃度0.001ppmにおける電力投入量対"-Log(TOC残存率)"の傾きがそれらよりも大きいことが読み取れる。従って、本発明の実施においては、金属イオン(例えば硫酸銅)が少なくとも0.001ppm以上であれば、TOC分解性能を改善し得ると思われる。また、金属イオン(例えば硫酸銅)の濃度は、一例として、0.001ppm乃至1.0ppmの範囲から好ましく選択され得る。
【符号の説明】
【0028】
10 紫外線照射装置
10a 容器
11 紫外線ランプ
12 注入設備
13 イオン交換装置