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  • 特許-次亜塩素酸水の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】次亜塩素酸水の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 11/08 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
C01B11/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020151771
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022045978
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】509068954
【氏名又は名称】株式会社フリーポート
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】川上 哲洋
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-218246(JP,A)
【文献】特開2010-227934(JP,A)
【文献】特開2001-300547(JP,A)
【文献】特開平11-228316(JP,A)
【文献】特開2013-039516(JP,A)
【文献】特開2009-208801(JP,A)
【文献】特開2020-099291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 11/04
C01B 11/08
C02F 1/50
C02F 1/70 -1/78
A61K 33/40
A61P 31/04
A01N 59/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、次亜塩素酸塩と、酸とを含む混合液を作製する混合工程を備え、
前記混合液中において次亜塩素酸を発生させて次亜塩素酸水を製造し、
前記混合工程では、前記混合液の温度を℃以下とし、
有効塩素濃度が500ppm以上の前記次亜塩素酸水を製造する、次亜塩素酸水の製造方法。
【請求項2】
前記混合液に高度サラシ粉を含有させることによって該混合液に前記次亜塩素酸塩を含有させる、請求項1に記載の次亜塩素酸水の製造方法。
【請求項3】
前記有効塩素濃度が2,000ppm以上である、請求項1又は2に記載の次亜塩素酸水の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸水の製造方法に関し、より具体的には、有効塩素濃度が500ppm以上の次亜塩素酸水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、次亜塩素酸水は、殺菌剤や除菌剤として使用されている。
【0003】
前記次亜塩素酸水の製造方法としては、塩酸水や食塩水を電解して調製する方法や、水と次亜塩素酸塩と酸とを混合して調製する方法が挙げられる。例えば、特許文献1では、水と、次亜塩素酸ナトリウムと、コハク酸とから次亜塩素酸水を製造する方法が記載されており、これによって、有効塩素濃度が最大で400ppmの次亜塩素酸水を製造することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-228316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、次亜塩素酸水の用途はさらに広がってきており、例えば、生肉などの生鮮食品の殺菌やうがい薬としての用途が注目されている。このため、用途に応じて濃度を調整し易くするために、有効塩素濃度がより高められた次亜塩素酸水の提供が求められている。
しかしながら、有効塩素濃度のより高い次亜塩素酸水は、製造後の保管において有効塩素濃度が低下し易いという問題点がある。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、有効塩素濃度が500ppm以上であり且つ有効塩素濃度の低下が抑制された次亜塩素酸水の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る次亜塩素酸水の製造方法は、
水と、次亜塩素酸塩と、酸とを含む混合液を作製する混合工程を備え、
前記混合液中において次亜塩素酸を発生させて次亜塩素酸水を製造し、
前記混合工程では、前記混合液の温度を10℃以下とし、
有効塩素濃度が500ppm以上の前記次亜塩素酸水を製造する。
【0008】
斯かる構成によれば、混合液の温度を10℃以下とすることによって、有効塩素濃度を500ppm以上に設定した場合であっても、有効塩素濃度の低下が抑制された次亜塩素酸水を製造することができる。
【0009】
また、前記製造方法は、前記混合液に高度サラシ粉を含有させることによって該混合液に前記次亜塩素酸塩を含有させることが好ましい。
【0010】
斯かる構成によれば、前記混合液に高度サラシ粉を含有させることによって該混合液に次亜塩素酸塩を含有させることによって、有効塩素濃度が500ppm以上の次亜塩素酸水を一度の製造で比較的多く製造することが可能となる。
【0011】
また、前記製造方法は、前記酸がコハク酸であることが好ましい。
【0012】
斯かる構成によれば、酸として酸性度の比較的低いコハク酸を用いることによって、次亜塩素酸の分解が低減されるため、有効塩素濃度のさらに高い次亜塩素酸水を製造することが可能となる。
【0013】
また、前記製造方法は、前記有効塩素濃度が2,000ppm以上であることが好ましい。
【0014】
斯かる構成によれば、有効塩素濃度が2,000ppm以上であることによって、さらに、用途に応じて濃度を調整し易い次亜塩素酸水を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上の通り、本発明によれば、有効塩素濃度が500ppm以上であり且つ有効塩素濃度の低下が抑制された次亜塩素酸水の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、混合液の温度を種々変更して製造した次亜塩素酸水それぞれの有効塩素濃度の経時的な変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る次亜塩素酸水の製造方法について説明する。なお、以下では、次亜塩素酸水の製造方法に続けて、次亜塩素酸水包装体の製造方法が実施される場合を例にして、本実施形態に係る製造方法について説明する。
【0018】
本実施形態に係る製造方法で製造される次亜塩素酸水は、通常pH2.7~7であり、殺菌力を向上させる上では、pH3.5~6.5であることが好ましく、pH4~6であることがより好ましく、pH5~6であることがさらに好ましい。また、用途に応じて希釈して有効塩素濃度を調整し易くする上では、前記次亜塩素酸水の有効塩素濃度は、500ppm以上であることが重要であり、2,000ppm以上であることがより好ましく、4,000ppm以上であることがさらに好ましく、5,000ppm以上であることがより一層好ましい。
【0019】
本実施形態の有効塩素濃度は、KI法を採用する残留塩素比色測定器によって測定することができる。なお、前記有効塩素濃度が前記残留塩素比色測定器の測定可能な濃度範囲を超える場合には、前記次亜塩素酸水を蒸留水で適宜希釈した希釈溶液の有効塩素濃度を測定し、該希釈溶液の有効塩素濃度に希釈倍率を乗じて得られる値を前記有効塩素濃度とすればよい。
【0020】
前記製造方法は、水と、次亜塩素酸塩と、酸とを含む混合液を作製する混合工程を備える。前記有効塩素濃度の低下が抑制された前記次亜塩素酸水を製造する上では、前記混合工程では、前記混合液の温度を10℃以下に維持することが重要である。また、前記混合液の温度は5℃以下であることが好ましく、3℃以下であることがより好ましい。また、前記混合液の温度は、通常-10℃以上である。
【0021】
前記混合工程では、前記次亜塩素酸塩を前記水の一部で希釈した塩基性液と、前記酸を前記水の一部で希釈した酸性液とを混合することによって、前記混合液を作製することが好ましい。また、前記次亜塩素酸塩と、前記酸と、これらの接触を抑制するための接触抑制剤(例えば硫酸ナトリウム)とを含む粉状物を、前記水に混合して前記混合液を作製してもよい。さらに、前記塩基性液及び前記酸性液、又は、前記水の温度を予め5℃以下としておくことが好ましく、これらを混合したときに生じ得る混合熱や中和熱を考慮すると、これらを3℃以下に冷却しておくことがより好ましい。
【0022】
前記混合工程では、密封可能な容器を用いることが好ましく、密閉可能な耐圧容器を用いることがより好ましい。このような容器を用いることで、前記混合液中に発生する塩素系ガスが外部に放出され難くなり、前記次亜塩素酸水の前記有効塩素濃度をより高く維持することが可能となる。前記耐圧容器を用いる場合の前記加圧条件としては、前記耐圧容器内の圧力がゲージ圧で0.01~0.3MPaであることが好ましい。これによって、前記有効塩素濃度がより高められた前記次亜塩素酸水を製造することができる。
【0023】
前記混合工程では、紫外線による次亜塩素酸の分解を抑制するために、前記混合液及び前記次亜塩素酸水を遮光した状態で実施することが好ましい。遮光する方法としては、例えば、前記容器を遮光フィルムなどで覆う方法や、紫外線が透過しない室内で実施する方法が挙げられる。
【0024】
前記次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸ナトリウム又は次亜塩素酸カルシウムが好ましい。
【0025】
前記次亜塩素酸ナトリウムとしては、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用してもよい。この場合、一回の製造における前記次亜塩素酸水の製造量を向上させるために、前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液の有効塩素濃度は、120,000ppm以上(12%以上)であることが好ましい。
【0026】
前記次亜塩素酸カルシウムとしては、これを含有するサラシ粉や高度サラシ粉を使用することができる。一回の製造における前記次亜塩素酸水の製造量を向上させるために、有効塩素濃度が60%以上(600,000ppm以上)又は70%以上(700,000ppm以上)の前記高度サラシ粉を使用することが好ましい。
【0027】
前記次亜塩素酸水の有効塩素濃度を上記の所望の値以上とするための各原料の使用量について説明する。まず、所定の濃度の前記次亜塩素酸塩が前記酸及び前記水で希釈されたとして希釈倍率を求め、該希釈倍率で前記所定の濃度を割ることによって算出される仮想の次亜塩素酸水の有効塩素濃度を、前記所望の値に対応させるように、各原料の使用量を決定すればよい。例えば、前記有効塩素濃度が120,000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて、前記有効塩素濃度が4,000ppm(仮想の次亜塩素酸水の有効塩素濃度)以上の前記次亜塩素酸水を製造する場合、該次亜塩素酸ナトリウム水溶液が前記酸及び前記水で30倍(希釈倍率)に希釈されるように、前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液の使用量を設定すればよい。後述の実施例に示されるように、本実施形態の製造方法によれば、前述の仮想の次亜塩素酸水の濃度よりも、実際に製造される次亜塩素酸水の濃度が高くなるため、このような前記次亜塩素酸塩の使用量の設定であっても、有効塩素濃度を所望の値以上とすることができる。
【0028】
前記酸としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、コハク酸などを好適に用いることができる。これらの中でも、比較的酸性度の低い、酢酸、クエン酸、コハク酸を用いることが好ましい。
【0029】
前記酸は、前記次亜塩素酸水のpHが上記値となるまで添加すればよい。例えば、前記混合液のpHが上記値となるまで、前記塩基性液に前記酸性液を加えればよい。
【0030】
前記水としては、イオン交換水や蒸留水が好ましい。また、前記混合液の温度上昇を抑制する上では、前記水の一部は氷であることが好ましい。
【0031】
前記混合液を作製した後は、撹拌や振とうなどを実施することなく、5℃以下で静置することによって前記次亜塩素酸水とすることが好ましい。これによって、前記次亜塩素酸塩と前記酸とが急激に反応することが抑制され、前記塩素系ガスの放出や次亜塩素酸の分解などに起因する前記有効塩素濃度の低下が抑制され得る。
【0032】
前記次亜塩素酸水には、その他の添加剤が含まれていてもよい。該添加剤としては、pHを保持するための緩衝剤や、殺菌剤としての焼成カルシウムなどが挙げられる。
【0033】
前記次亜塩素酸水包装体の製造方法では、前記次亜塩素酸水の製造方法によって製造した前記次亜塩素酸水を密閉可能な包装体内に包装する。前記包装体としては、前記混合液の作製に用いた前記容器をそのまま用いてもよい。すなわち、前記包装体によって、前記混合液を作製し且つ前記次亜塩素酸水を製造し、該次亜塩素酸水を別の容器に移送することなく、前記次亜塩素酸水を包装してもよい。これによって、前記次亜塩素酸水の製造から前記次亜塩素酸水包装体の製造における一連の工程が効率的なものとなる。
【0034】
前記次亜塩素酸水包装体の製造方法も、前記次亜塩素酸水の製造方法と同様に、紫外線を遮断した条件下で実施することが好ましい。前記次亜塩素酸水を前記容器から該容器とは別の包装体内に導入する場合は、前記包装体に前記不活性ガスを導入しつつ包装を実施することが好ましい。
【0035】
前記包装体としては、例えば、紫外線を透過させない遮光フィルム又は遮光シートによって製造された袋や容器が挙げられる。
【0036】
以上の通り、本実施形態に係る次亜塩素酸水の製造方法によれば、混合工程における混合液の温度が10℃以下に維持されることによって、製造された次亜塩素酸水は、保管中における次亜塩素酸の分解が抑制され、比較的長期にわたって有効塩素濃度の高い状態が維持され得る。
【0037】
また、比較的長期にわたって有効塩素濃度の高い状態が維持されることによって、用途に応じた濃度を調整し易くなる。例えば、うがい薬として前記次亜塩素酸水を使用する場合や、手指の除菌、又はペットの臭いの消臭には、有効塩素濃度が20~40ppm程度に水などで希釈されて使用されることが好ましい。この用途の場合、前記次亜塩素酸水によれば、比較的有効塩素濃度が高いため、このような濃度範囲の調整が容易となり、また、有効塩素濃度の低下が抑制されているため、希釈後の有効塩素濃度が上記濃度範囲内となることが保証され易くなる。この他、ノロウイルスを除去する場合や吐しゃ物の処理、又は悪臭の消臭には、前記次亜塩素酸水は、有効塩素濃度が100~1,000ppm、好ましくは500~1,000ppm程度に、水などで希釈されて使用されることが好ましい。
【0038】
尚、本発明に係る次亜塩素酸水の製造方法は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係る次亜塩素酸水の製造方法は、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明に係る次亜塩素酸水の製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例
【0039】
次に、実施例を挙げて本発明に係る次亜塩素酸水の製造方法についてさらに具体的に説明する。
【0040】
[実施例1]
密閉可能な容器中で、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(120,000ppm)400mLと、35%塩酸100mLと、水20Lとを含む混合液を作製した。混合液の作製中、温度が5℃以下となるように調節した。具体的には、混合液調製中の温度は、最大で2℃であった。該混合液を設定温度5℃の冷蔵庫内で一定時間静置し、次亜塩素酸水を得た。得られた次亜塩素酸水は、pH4.4、有効塩素濃度が4,500~5,000ppmであった。なお、有効塩素濃度は、アドバンテック東洋株式会社製(型式ATK100DA、KI法)の残留塩素比色測定器を用いて測定した。
【0041】
[実施例2]
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の使用量を500mLとし、35%塩酸の使用量を120mLとした以外は、実施例1と同様にして次亜塩素酸水を製造した。なお、混合液調製中の温度は、最大で2.7℃であった。得られた次亜塩素酸水は、pH5.5、有効塩素濃度が5,000ppm以上であった。
【0042】
[実施例3]
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の使用量を200mLとし、35%塩酸の使用量を50mLとした以外は、実施例1と同様にして次亜塩素酸水を製造した。なお、混合液調製中の温度は、最大で4.6℃であった。得られた次亜塩素酸水は、pH5.0、有効塩素濃度が約1,600ppmであった。
【0043】
[実施例4]
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の使用量を250mLとし、35%塩酸の使用量を50mLとした以外は、実施例1と同様にして次亜塩素酸水を製造した。なお、混合液調製中の温度は、概ね5℃以下であった。得られた次亜塩素酸水は、pH6.8、有効塩素濃度が約2,400ppmであった。
【0044】
[実施例5]
混合液調製中の温度を10℃とした以外は実施例1と同様にして次亜塩素酸水を製造した。得られた次亜塩素酸水は、pH4.4、有効塩素濃度4,500~5,000ppm以上であった。
【0045】
[実施例6]
混合液調製中の温度を10℃とした以外は実施例2と同様にして次亜塩素酸水を製造した。得られた次亜塩素酸水は、pH5.5、有効塩素濃度5,000ppm以上であった。
【0046】
[実施例7]
混合液調製中の温度を10℃とした以外は実施例3と同様にして次亜塩素酸水を製造した。得られた次亜塩素酸水は、pH5.0、有効塩素濃度約2,000ppmであった。
【0047】
[実施例8]
混合液調製中の温度を10℃とした以外は実施例4と同様にして次亜塩素酸水を製造した。得られた次亜塩素酸水は、pH6.8、有効塩素濃度約2,200ppmであった。
【0048】
上記実施例1~8の結果が示すように、次亜塩素酸水の有効塩素濃度が予想(前記の仮想の有効塩素濃度)よりも大きい値を示した。例えば、実施例1の結果では、有効塩素濃度120,000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を400mL用い、全体量を20,500mL(400mL+100mL+20L)としたものであり、該次亜塩素酸ナトリウム水溶液が約51倍(20,500mL/400mL=51.3)に希釈されたものである。よって、この希釈倍率から予測される次亜塩素酸水の有効塩素濃度は約2,300ppm(120,000ppm/51.3=2,339ppm)となる。これに対して、実際に製造された次亜塩素酸水の有効塩素濃度は、上記のように4,500~5,000ppmであった。このことは、実施例2~8についても同様であった。よって、実施例1~8の製造方法は、有効塩素濃度の高い次亜塩素酸水を製造する上で、優れた方法であることが分かった。
【0049】
[比較例1]
混合液の温度を20℃(±2℃)とし、実施例1と対応するように(下記経時変化の評価において比較し易くするために)製造直後の有効塩素濃度が4,500~5,000ppmの次亜塩素酸水を製造した。なお、この温度条件の場合、実施例1の次亜塩素酸水及び塩酸の使用量では、塩素系ガスの放出などが原因で、有効塩素濃度を4,500~5,000ppmとすることができなかった。よって、次亜塩素酸水及び塩酸それぞれの使用量を実施例1の値から徐々に増加させながらいくつかの次亜塩素酸水を調製し、その有効塩素濃度が4,500~5,000ppmとなったときの次亜塩素酸水を比較例1として採用した。
【0050】
[比較例2]
混合液の温度を30℃(±2℃)とした以外は、比較例1と同様にして次亜塩素酸水を製造した。
【0051】
[比較例3]
混合液の温度を35℃(±2℃)とした以外は、比較例1と同様にして次亜塩素酸水を製造した。
【0052】
[有効塩素濃度の経時変化に関する評価]
実施例1及び比較例1~3の次亜塩素酸水を、それぞれを製造した容器を保存容器として、暗所にて室温(20±2℃)で30日間にわたって保存し、それぞれの有効塩素濃度の経時的な変化を観察した。結果を図1に示した。
【0053】
図1に示されるように、混合液の温度を5℃以下とした実施例1の次亜塩素酸水は、30日間にわたって有効塩素濃度の低下がほとんど認められなかった。よって、実施例1の次亜塩素酸水は、長期にわたって、高い有効塩素濃度が保証され、用途に応じて使用し易いものであることがわかった。また、従来の次亜塩素酸水は、その分解の抑制のために、通常は、冷蔵庫などの冷所に保存されることが推奨されているところ、実施例に係る次亜塩素酸水は、室温(20±2℃)での保存であっても、分解しにくいことが認められた。
【0054】
また、実施例1と同様に5℃以下で製造した実施例2~4も、実施例1と同様に、有効塩素濃度の低下が抑制されたものであると考えられる。さらに、実施例5~8も、製造直後の有効塩素濃度が実施例1~4と同様の値であり、比較例1の製造時における有効塩素濃度の低下は認められなかったため、実施例1と同様に、有効塩素濃度の低下が抑制されたものであると推定される。
【0055】
一方、比較例1~3の次亜塩素酸水は、有効塩素濃度の低下が認められ、特に、比較例2及び3では顕著な有効塩素濃度の低下が認められた。よって、比較例1~3の次亜塩素酸水は、保存安定性が悪く、一定時間経過すると有効塩素濃度が保証されないものであり、延いては、これを用いて希釈したものの殺菌作用も保証されないものであることがわかった。
図1