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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 27/08 20060101AFI20240517BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20240517BHJP
   B43K 1/12 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B43K27/08
B43K8/02 110
B43K1/12 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020189067
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078405
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】主濱 菜央
(72)【発明者】
【氏名】榊原 七月
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-126215(JP,A)
【文献】特開2010-082804(JP,A)
【文献】実開平06-016091(JP,U)
【文献】特開2002-030240(JP,A)
【文献】特開平09-087565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 27/08
B43K 8/02
B43K 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキを含浸させた複数の芯体により単一の先端部を形成する筆記具であって、前記芯体のいずれか一方に含浸されるインキが消色可能なインキであり、その他の芯体に含浸されるインキは前記消色可能なインキが消色される要因では消色しないことを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記消色可能なインキが、色の属性により消色されるインキであることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記消色可能なインキが、熱消色性を有するインキであることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項4】
前記消色可能なインキが、水で消色するインキであることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項5】
前記消色可能なインキが、酸化により消色するインキであることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項6】
前記芯体に含浸されるインキに滲み防止剤が含まれることを特徴とする請求項1~5いずれかに記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルトペン、サインペン、マーキングペン等の筆記具に関するものであり、特に、インキが含浸された複数の芯体により単一の先端部を形成して筆記を行う筆記具に関するものである。本発明において、「前」はペン芯側を指し、「後」とはインキ吸収体側を指す。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを含浸する不織布等からなるフェルトペン等の芯体においては、芯体の太さに応じた単一の線しか描くことは出来ず、その線は変化に乏しいものとなっていた。
そこで、例えば特許文献1には、色彩の異なるインキが含浸された複数の芯体により単一の先端部を形成し、複数本の線を一度に描くことが出来る複数色フェルトペンが提案されている。
しかし、前記複数色フェルトペンにそれぞれ含浸されているインキ成分は、消色出来るインキではない為、一度描いた筆跡を消すことは出来なかった。従って、前記の複数色フェルトペンは、筆記時に筆跡を強調することは出来るが、筆跡の一部は、文字を覆うこととなるため、文字の読みやすさ、即ち視認性に問題があった。従って、例えば、前記複数色フェルトペンで、筆跡の強調を行った書類をモノクロコピーして他人に配布するような場合や、書類に筆記を行った時から時間が経過し改めて見直しを行うような場合においては、書類中の文字の視認がしにくいという不具合が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-302096
【文献】特開2011-126215
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の目的は、筆記時において、複数色の筆跡により書類に書かれた文字を強調することが出来る筆記線が描けるとともに、筆記時から時間が経過して書類を見直す場合や、書類をモノクロコピーして他人に配布する場合においては、文字に覆われた部分の筆跡を消色し、一方文字下に描かれた筆跡部分を消色させずに残すことにより、書類中の文字を強調させるとともに、文字の認識性を確保することができる筆記具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、インキを含浸させた複数の芯体により単一の先端部を形成する筆記具であって、前記芯体のいずれか一方に含浸されるインキが、消色可能なインキであり、その他の芯体に含浸されるインキは前記消色可能なインキが消色される要因では消色しないことを特徴とする筆記具である。
【0006】
請求項2の発明は、前記消色可能なインキが、色の属性により消色されるインキであることを特徴とする請求項1に記載の筆記具である。
【0007】
請求項3の発明は、前記消色可能なインキが、熱消色性を有するインキであることを特徴とする請求項1に記載の筆記具である。
【0008】
請求項4の発明は、前記消色可能なインキが、水で消色するインキであることを特徴とする請求項1に記載の筆記具である。
【0009】
請求項5の発明は、前記消色可能なインキが、酸化により消色するインキであることを特徴とする請求項1に記載の筆記具である。
【0010】
請求項6の発明は、前記芯体に含浸されるインキに滲み防止剤が含まれることを特徴とする請求項1~5いずれかに記載の筆記具である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、筆記時において、複数色の筆跡により文字等が強調され、筆記を行った書類をコピーして他人に書類を配布するような場合や、書類に筆記を行った時から時間が経過しているような場合において、前記筆記線の文字が覆われた部分のみが消色されることにより、筆記時の文字の強調性と、書類見直し時等の文字の視認性の確保を両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】フェルトペン本体の外観斜視図である。
図2】フェルトペン本体の天面図である。
図3】フェルトペン本体仕切り板に対し直行する方向の縦断面図である。
図4】フェルトペン本体仕切り板に対し平行な方向の縦断面図である。
図5】第2芯体の上面斜視図である。
図6】文字部分を覆う筆記線が除去された状態の筆記対象物である。
図7】文字部分を覆う筆記線が除去されていない状態の筆記対象物である。
図8】温度-色濃度の関係を表すヒステリシス曲線
図9】インキ消去性の試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は、フェルトペン本体の外面斜視図、図2はフェルトペン本体の断面図、図3は、フェルトペン本体仕切り板に対し直行する方向の縦断面図、図4は、フェルトペン本体仕切り板に対し平行な方向の縦断面図、図5は、第2芯体の上面斜視図である。
【0014】
フェルトペン10は、両端部が開口された円筒状の本体1と、インキが含浸され、フェルト素材からなる第1芯体2及び第2芯体3と、前記芯体2、3の後端と接触するよう配置され、インキを前記芯体2、3へ供給する第1の吸収体4、第2の吸収体5と、前記芯体2、3及び吸収体4、5の間を縦に分割するよう配置され、インキの移行を防止する仕切り板6と、本体1後端に配置され、インキの漏出を防止する尾栓7からなる。
【0015】
本体1は、両端部が開口された中空なる円筒形状を有し、後端の開口部3に、尾栓7が嵌合されている。本体1の上端には、芯体を固定する為、第1段部1a、第2段部1bが形成されており、第1段部1aで内径が絞られ、第2段部2bでさらに内径が絞られている。また、第1段部1aと第2段部1bとの間には、キャップ係合する為の本体突起部1cを備えており、前記本体突起部1cは、キャップの内側に備えられた突起部(図示せず)と係合することにより、本体上端部と、キャップの内側とで形成される空間内の機密が保たれる。
【0016】
第1芯体2は、角柱形状の微細気孔を有するフェルト素材で、後端が吸収体に没入することにより、毛細管現象によって、前記吸収体からインキの吸上げを行うインキ誘導部2aと、前記インキ誘導部2a前端から延接するように配置され、天面が略L字形状でその外周部に傾斜面を形成する筆記部2bからなる。第2芯体3も、同形状であり、第1芯体2と第2芯体3は、仕切り板6を介して対称位置に嵌め合わせるように位置されている。
第1芯体2及び第2芯体3の筆記部下端の幅αは、本体1の第2段部の内壁と仕切り板6との距離βより大きく設計されている為、筆記部の下端が、本体1の第2段部で規制され、芯体が本体1下端側に抜け落ちることが無い。
【0017】
本実施形態において、第1芯体2には、色の属性により消色する蛍光インキが含浸され、第2芯体3には、色の属性によっても消色しない蛍光インキが含浸されている。本発明において、色の属性とは、色が持つ性質のことをいい、具体的には、色相、明度、彩度、輝度等を指し、特に明るさを表す指標に関する性質をいう。
【0018】
吸収体4前端には、芯体2のインキ誘導部2aの後端が、吸収体5前端には、芯体3のインキ誘導部3aの後端がそれぞれ没入しており、第1の吸収体4には、色の属性で消色する蛍光インキが、第2の吸収体5には、色の属性で消色しない蛍光インキが含浸され、それぞれ、没入により接触するインキ誘導部2a及び3aへインキ供給される構成となっている。
【0019】
仕切り板6は、本体10中央を縦に二分割するように配置されており、後端は尾栓7の前端で嵌合により固定されている。仕切り板6前端は、L字形状をなす筆記部2a及び3aを対象位置で分割させる為、L字形状をなしている。
また、本実施形態の筆記具は、インキが混ざらないように、第1芯体と第2芯体との間に、仕切り版6を配置する構成としているが、前記仕切り版6を設けず、芯体2と、芯体3をインキ非透過の接着剤で張り合わせる構成としても良い。
本実施形態では、芯体は第1芯体と第2芯体からなる2色マーカーであるが、芯体は2本に限られず、3本以上あっても良い。
【0020】
筆記時は、前記筆記部外周部近傍を、紙などの筆記対象物に当接させることにより、筆記線を筆記する。図2に示すように、筆記部天面の4辺を当接部8a、8b、8c、8dとし、前記8a~8dの4辺に対し、垂直な方向をそれぞれ、a方向、b方向、c方向、d方向と定義する。
前記当接部8aを筆記対象物に当接させて、a方向に筆記線を描くと、第1芯体2及び第2芯体3に含浸されたインキが紙に筆記され、第1芯体2に含浸されたインキの筆記線は太字、第2芯体3に含浸されたインキの筆記線は細字で紙などの筆記対象物に筆記される。前記当接部8bを筆記対象物に当接させて、b方向に向って筆記線を描くと、芯体2に含浸されたインキのみが紙に筆記される。
前記当接部8cを筆記対象物に当接させて、c方向に向って筆記線を描くと、芯体2及び芯体3に含浸されたインキが紙に筆記され、芯体2に含浸されたインキの筆記線は細字、芯体3に含浸されたインキの筆記線は太字で筆記対象物に筆記される。前記当接部8dを筆記対象物に当接させて、d方向に、筆記線を描くと芯体3に含浸されたインキのみが筆記対象物に筆記される。本実施形態の筆記具によれば、筆記対象物に当接させる当接部を、a~dの内に選択することによって、筆記線のバリエーションを多様なものとすることが出来る。
なお、本発明の課題を解決する為には、筆記部天面の4辺の内、当接部8aを捺印対象物に当接させてa方向に筆記線を筆記するか、又は当接部8cを捺印対象物に当接させてc方向に筆記線を筆記することが望ましい。
また、前記形態のL字形状の当接部8を備える芯体をそれぞれ組み合わせる必要はなく、例えば略角柱形状の芯体中央部に仕切り板6を配置する構成とした筆記具としても良い。
さらに、本発明に用いられる筆記具は、公知のノック式キャップレス機構の筆記具を採用しても良い。
【0021】
本発明の消色可能なインキは、色の属性により消色するインキを包含する。色の属性とは、色彩を決定する要素即ち、明度、輝度、彩度それに準ずる要素を指し、色の属性により消色するインキとは、コピー機などの光学機器により読み取られたインキの属性が一定の閾値から外れたインキを指す。
色の属性により消色するインキの性質を利用して、例えば、モノクロ印刷によるカラー/モノクロ画像変換により、一方のインキを消色させる構成とすることが出来る。
モノクロコピーは、コピー機の設定にもよるが、一般的に、カラー画像の明るさを表す指標を閾値として、閾値以上の値で読み取られた箇所を黒色、閾値以下の値で読み取られた箇所を白色として出力する。コピー機の2値化手段は、単純2値化法、ディザ法、誤差拡散法などが考えられるが、本発明において、2値化手法は問わない。
明るさを表す指標は、JIS Z 8781-4において定められるCIE1976の明度指数であるL*値、JIS Z 8701において定められるXYZ表色系空間における明度指標であるY値、RGB値を元に算出される輝度などが挙げられる。RGB値を元に算出される明るさの指標として、HSV色空間における輝度は下記式(1)、HDTV方式における輝度は下記式(2)、NTSC方式における輝度は下記式(3)で表される。
(1)輝度(HSV色空間) =(RGBの最大値+RGBの最小値)/2
(2)輝度(NTSC方式) =0.21×R+0.72×G+0.07×B
(3)輝度(NTSC方式) =0.30×R+0.59×G+0.11×B
L値は、最小値0、最大値100であり、指数が大きいほど明るい色を表す。また、XYZ表色系とは、[R][G][B]の混色量では、正確に再現できない不都合を数学的に回避するために考えられた表色系であり、Y値は、緑成分とともに原刺激の中で明るさ(視感反射率、視感透過率)を表す刺激値である。Y値は、値が高いほど、明るい色を表すと考えられる。
インクの属性により消色するインクの性質について、少なくともL値(平均値)が77以上、Y値(平均値)が54以上、好ましくは、L値(平均値)が79以上、Y値(平均値)が56以上であることが望ましい。
【0022】
本発明のインキの属性により消色可能なインキに用いる着色剤としては、主に蛍光顔料が用いられ、FZ-2001・2002・2003・2004・2005・2006・2007(シンロイヒ(株)製)、FZ-5012、FZ-5005、FZ-5006、FZ-5009、FZ-6011、FZ-6013、FZ-6014、FZ-6037、FZ-MB、FZ-PR、FZ-SB(シンロイヒ(株)製)、FA-41、FA-43、FA-44、FA-45、FA-46、FA-47、FA-48(シンロイヒ(株)製)、FA-001、FA-005、FA-006、FA-007(シンロイヒ(株)製)、FX-301、FX-303、FX-304、FX-305、FX-306、FX-307、FX-327(シンロイヒ(株)製)、さらには、着色剤としてポリアミド樹脂・ホルムアルデヒド重縮合物・ケトン樹脂などの合成樹脂(担体)中に油性染料や塩基性染料を溶解(固溶)染色させた溶解型蛍光顔料を用いることも出来る。本発明に用いることのできる溶解型蛍光顔料は、例えば、MPI-501・502・503・504・505・506・507・508・501C・503C・504C・505C・506C・507C・508C(以上、日本蛍光化学(株)製)、FM-11・12・13・14・15・16・17・18・25・27・47・103・104・105・106・107・108、SF-3022N・3014N、3015N、3017N、3037N、3038N、5012、5013、5014、5015、5017、5027、5037、5018(以上、シンロイヒ(株)製)等を挙げることができる。
塩基染料(カチロン染料含む)、直接染料、蛍光増白染料等各種の染料群より選択使用でき、特に昼光蛍光染料の一種及び二種以上及び昼光蛍光染料と普通染料(蛍光性の無い染料)との併用が有効であるが、これに限定されるものではない。具体的には、カラーインデックスナンバー(C・I)で示して、BASIC YELLOW 1、BASIC YELLOW 40、BASIC RED 1、BASIC RED 13、BASICVIOLET 7、BASIC VIOLET 10、BASIC ORANGE 22、BASIC BLUE 7、BASIC GREEN 1、DIRECT YELLOW 85、DIRECT ORANGE 8、DIRECTRED 9、DIRECT BLUE 22、DIRECT GREEN 6、FLUORESCENT BRIGHTENING AGENT 55、FLUORESCENT BRIGHTENING WHITEX WS 52、FLUORESCENT 162、FLUORESCENT 112等が挙げられるが、これらのうちではBASIC YELLOW 40、BASIC RED1、BASIC VIOLET 10、FLUORESCENT BRIGHTENING WHITEX WS 52が好ましい。また、前記の輝度は、色相及び濃度で調整することが出来る為、添加量は一概には言えないが、概ね蛍光染料はインキ全量に対して0.1~20重量%程度、好ましくはインキ全量に対して0.5~10重量%程度が用いられる。
また、着色剤としてポリアミド樹脂・ホルムアルデヒド重縮合物・ケトン樹脂などの合成樹脂(担体)中に油性染料や塩基性染料を溶解(固溶)染色させた溶解型蛍光顔料を用いることも出来る。本発明に用いることのできる溶解型蛍光顔料は、例えば、MPI-501・502・503・504・505・506・507・508・501C・503C・504C・505C・506C・507C・508C(以上、日本蛍光化学(株)製)、FM-11・12・13・14・15・16・17・18・25・27・47・103・104・105・106・107・108、SF-3022N・3014N、3015N、3017N、3037N、3038N、5012、5013、5014、5015、5017、5027、5037、5018(以上、シンロイヒ(株)製)等を挙げることができる。
【0023】
さらに、本発明のインキの属性により消色可能なインキに用いる色素は、前記蛍光染料に限られず、公知の染料、有機顔料、無機顔料、加工顔料を用いても良い。
黄色系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1(ハンザイエローG)、2、3(ハンザイエロー10G)、4、5(ハンザイエロー5G)、6、7、10、11、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、16、17、24(フラバントロンイエロー)、55(ジスアゾイエローAAPT)、61、61:1、65、73、74(ファストイエロー5GX)、75、81、83(ジスアゾイエローHR)、93(縮合アゾイエロー3G)、94(縮合アゾイエロー6G)、95(縮合アゾイエローGR)、97(ファストイエローFGL)、98、99(アントラキノン)、100(タートラジンイエローレーキ)、108(アントラピリミジンイエロー)、109(イソインドリノンイエロー2GLT)、110(イソインドリノンイエロー3RLT)、113、115(キノリンイエローレーキ)、117(銅アゾメチンイエロー)、120(ベンズイミダゾロンイエローH2G)、123(アントラキノンイエロー)、124、128(縮合アゾイエロー8G)、129、133、138(キノフタロンイエロー)、139(イソインドリノンイエロー)、147、151(ベンズイミダゾロンイエローH4G)、153(ニッケルニトロソイエロー)、154(ベンズイミダゾロンイエローH3G)、155、156(ベンズイミダゾロンイエローHLR)、167、168、172、173(イソインドリノンイエロー6GL)、180(ベンズイミダゾロンイエロー)等黄色顔料;C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、7、13、14、15、16(バルカンオレンジ)、24、31(縮合アゾオレンジ4R)、34、36(ベンズイミダゾロンオレンジHL)、38、40(ピラントロンオレンジ)、42(イソインドリノンオレンジRLT)、43、51、60(ベンズイミダゾロン系不溶性モノアゾ顔料)、62(ベンズイミダゾロン系不溶性モノアゾ顔料)等橙色顔料を挙げることができる。
【0024】
赤色系顔料としては、C.I.ピグメントレッド1(パラレッド)、2、3(トルイジンレッド)、4、5(lTR Red)、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38(ピラゾロンレッドB)、40、41、42、53:1(レーキレッドC)、81(ローダミン6Gレーキ)、83(マダーレーキ)、88(チオインジゴボルドー)、112(ナフトールレッドFGR)、114(ブリリアントカーミンBS)、122(ジメチルキナクリドン)、123(ペリレンバーミリオン)、144(縮合アゾレッドBR)、146、149(ペリレンスカーレッド)、150、166、168(アントアントロンオレンジ)、170(ナフトールレッドF5RK)、171(ベンズイミダゾロンマルーンHFM)、174(フロキシンBレーキ)、175(ベンズイミダゾロンレッドHFT)、176(ベンズイミダゾロンカーミンHF3C)、177、178(ペリレンレッド)、179(ペリレンマルーン)、180(イソインドリノンレッド2BLT)、185(ベンズイミダゾロンカーミンHF4C)、187、188、189(ペリレンレッド)、190(ペリレンレッド)、194(ペリノンレッド)、202(キナクリドンマゼンタ)、209(ジクロロキナクリドンレッド)、214(縮合アゾレッド)、216、219、220(縮合アゾ)、224(ペリレンレッド)、242(縮合アゾスカーレット)、245(ナフトールレッド)、254等の赤色顔料;
更に、C.I.ピグメントバイオレット5:1(アルカリブルー)、19(キナクリドン)、23(ジオキサジンバイオレット)、31、32、33、36、38、43、50等紫色顔料を挙げることができる。
【0025】
また、青色系顔料としては、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ)、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6(以上いずれもフタロシアニンブルー)、16(無金属フタロシアニンブルー)、17:1、18(アルカリブルートナー)、19、21、22、24(ビクロチアピュアブルーBOレーキ)、25(ジアニシジンブルー)、56、60(スレンブルー)、64(ジクロロインダントロンブルー)、65(ビオラントロン)、66(インジゴ)等を挙げることができる。
【0026】
また、黒色系顔料としては、C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック)、C.l.ピグメントブラック7(ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック若しくはチャネルブラック等のカーボンブラック)等を挙げることができる。
【0027】
また、緑色系有機顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、10(グリーンゴールド)、36(塩臭素化フタロシアニングリーン)、37、47(ビオラントロングリーン)等を挙げることができる。
【0028】
また、茶色系有機顔料としては、C.I.ピグメントブラウン1、2、3、5、23(縮合アゾブラウン5R)、25(ベンズイミダゾロンブラウンHFR)、26(ペリレンボルドー)、32(ベンズイミダゾロンブラウンHFL)等を挙げることができる。
これらの顔料は単独で用いても2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0029】
本発明のインキの属性により消色可能なインキには、油溶性樹脂を用いることが出来、ロジン樹脂、エステル樹脂、セルロース樹脂、アルデヒド樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂等を用いることができるが、特に、シクロヘキサノン系アルデヒド樹脂、ケトンホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノール樹脂が好ましく用いられる。樹脂はインキ全量に対して、0.1~40重量%を用いることができ、1~20重量%が特に好ましい。
【0030】
本発明のインキの属性により消色可能なインキには、ワックスを用いることが出来、ワックスとしては、炭化水素系ワックスと酸化炭化水素系ワックスをあげることができ、それぞれ単独又は混合して用いることができる。炭化水素系ワックスは、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムワックス、ポリエチレンワックス等を用いることができ、例えば、パラフィンワックス115・125・135・150、NHP-3・5・9・11・14G、SP-0145・0160・1035・1040、Hi-Mic-1070・1080・2045・2065・3090(以上、日本精蝋(株)製)等を使用することができる。酸化炭化水素系ワックスは、酸化パラフィンワックス、酸化マイクロクリスタリンワックス、酸化ペトロラタムワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化サゾールワックス等を用いることができる。これらは、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系ワックスを空気酸化して製造され、アルコール、酸、エステル、ケトンの混合物として存在しているものであって、例えば、ネオワックスE,E-20(以上ヤスハラケミカル社製)、ペトロライトC-7500,C-8500,C-9500,ペトロナウバC,カーディス36,314,319,320,370(以上東洋ペトロライト社製)、F-T合成ワックスB-120,C-20,C-60C-460,E-302,E-321,E-421R,H111EM,J324AM,J324ST,ポリエチレンワックスAX959,AX1539,AV1550,AV1551,AW1050,PE20(以上加藤洋行社製)、OX-1749,OX-0153,OX-261BN,NPS-9210,NPS-9125,OX-1949,OX-020T,NPS-8070,NPS-LS-70(以上日本精蝋社製)等を使用することができる。本発明では、前記炭化水素系ワックス又は酸化炭化水素系ワックスは融点30℃以上100℃以下のものが好ましく用いられる。融点が30℃より小さいものはペン先での皮膜形成力が弱く、融点が100℃より大きいものは溶剤に対する溶解力が弱く十分に、ペン先での皮膜を形成することが出来ない為、キャップを外したまま放置しておくと、ペン先が乾燥して樹脂等が硬化し、筆記不可能となるいわゆるドライアップを十分に防止 することができない。また、前記炭化水素系ワックス又は酸化炭化水素系ワックスの中でも35℃~75℃の融点のものが特に好ましく用いられる。また、前記炭化水素系ワックス及び/又は酸化炭化水素系ワックスは、インキ全量に対して0.01重量%~10重量%の範囲でドライアップ防止効果を発揮するが、0.1重量%~5重量%の範囲が特に好ましい結果を示す。
【0031】
また、本発明の消色可能なインキは、熱消色性のインキも包含する。具体的には、電子供与性呈色性有機化合物と、電子受容性化合物と呈色反応をコントロールする反応媒体の組み合わせからなる。この組み合わせ下では、前記電子受容性化合物が、前記電子供与性呈色有機化合物から、一定の環境条件にて、電子を受け取り、色素が顕在化する。
電子供与基としては、フタリド化合物、フルオラン化合物、スチリノキノリン化合物、ジアザローダミンラクトン化合物、ピリジン化合物、キナゾリン化合物、ビスキナゾリン化合物等が挙げられ、これらのうちフタリド化合物およびフルオラン化合物が好ましい。フタリド化合物としては、例えばジフェニルメタンフタリド化合物、フェニルインドリルフタリド化合物、インドリルフタリド化合物、ジフェニルメタンアザフタリド化合物、フェニルインドリルアザフタリド化合物、およびそれらの誘導体などが挙げられ、これらの中でも、フェニルインドリルアザフタリド化合物、ならびにそれらの誘導体が好ましい。また、フルオラン化合物としては、例えば、アミノフルオラン化合物、アルコキシフルオラン化合物、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0032】
さらに、電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群及びその誘導体、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して電子供与性呈色成分を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等から選択される化合物があり、これらの中でも活性プロトンを有する化合物群から選択される化合物が好ましい。
活性プロトンを有する化合物及びその誘導体としては、例えばフェノール性水酸基を有する化合物及びその金属塩、カルボン酸及びその金属塩、好ましくは、芳香族カルボン酸、炭素数2~5の脂肪族カルボン酸及びそれらの金属塩、酸性リン酸エステル及びその金属塩、並びにアゾ-ル系化合物及びその誘導体、1、2、3-トリアゾール及びその誘導体が挙げられ、これらの中でも、有効な熱変色特性を発現させることができることから、フェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。
フェノール性水酸基を有する化合物はモノフェノール化合物からポリフェノール化合物まで広く含まれ、更にビス型、またはトリス型フェノール等およびフェノール-アルデヒド縮合樹脂等もこれに含まれる。フェノール性水酸基を有する化合物の中でも、少なくともベンゼン環を2以上有するもの、またはビスヒドロキシフェニルスルフィド構造を有するものが好ましい。また、これら化合物は置換基を有していてもよく、置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等が挙げられる。
【0033】
電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体について説明する。反応媒体成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が挙げられる。
前記反応媒体成分として好ましくは、色濃度-温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n-ペンチルアルコール又はn-ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
【0034】
前記反応媒体の存在下で、前記電子供与性呈色性有機化合物と、電子受容性化合物は、一定温度環境において、結合し色相を呈するようになり、一方、一定の温度に達すると、前記電子供与性呈色性有機化合物と、電子受容性化合物は結合が離れ、前記電子供与性呈色性有機化合物は、反応媒体と結合し、色相を呈さなくなって消色する。
図8は、本発明に係るインキの温度-色濃度の関係を表すヒステリシス曲線である。ヒステリシス曲線において、温度が上昇する過程では、第2の温度t3 に達すると、第1色相は変色し始め、第2の温度t3 より高い温度t4 以上の温度域で完全に第2色相となり、該顔料が第2色相状態にあって温度が下降する過程では、前記第2の温度t3 より低い第1の温度t2 に達すると、第2色相は変色し始め、第1の温度t2 より低い温度t1 以下の温度域で完全に第1色相となり、前記第1の温度t2 と第2の温度t3 の温度の間の温度域で第1色相と第2色相の両相が互変的に選択可能である大きなヒステリシス特性の色彩記憶性感温変色性を示し、ここで前記温度t1 は-15℃乃-5℃の間の温度であり、第1の温度t2 と第2の温度t3 の間の温度域は-5℃乃至60℃の範囲内の温度であり、温度t4 は60℃乃至80℃の間の温度であり、熱又は冷熱の適用により筆跡を着色状態と無色状態の何れか、或いは有色1と有色2の状態の何れかに前記-5℃乃至60℃の温度域で互変的に記憶保持できる筆跡を与える。
なお、前記電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、反応媒体を、公知の手法にて、前記電子供与性呈色性有機化合物、前記電子受容性化合物、反応媒体成分を内包するマイクロカプセルを作成しても良い。
【0035】
本発明の熱消色性のインキは、分散剤としては既知の分散剤を用いることが可能であり、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル、スチレン-マレイン酸共重合体、ケトン樹脂、ヒドロキシエチルセルロースやその誘導体、スチレン-アクリル酸共重合体等の合成樹脂、アクリル系高分子やPO・EO付加物やポリエステルのアミン系オリゴマー等を挙げることができる。前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の分散性をより考慮すると、本発明の組成物に好ましい分散剤はアクリル系高分子であり、より好ましくはカルボキシル基を有するアクリル系高分子であり、さらには側鎖にカルボキシル基を有する櫛形構造のアクリル系高分子である。本発明に特に好ましい分散剤としては、側鎖に複数のカルボキシル基を有する櫛形構造のアクリル系高分子であり、その具体例として製品名:ソルスパース43000、日本ルーブリゾール株式会社製を挙げることができる。
【0036】
本発明の消色可能なインキは、水で消色可能なインキも包含する。水で消色するインキとは、例えば、水、保湿剤、溶解助剤、フタレイン系指示薬と、ph調整剤を添加して、ph9~12に調整されたインキを用いることが出来る。前記ph9~12に調整されたインキは、水と接触することにより、インキのpHが低下して、中性に近づくに伴って、色素の化学構造が変化して消色する。
具体的に用いるフタレイン指示薬としては、α-ナフトールフタレイン、p-クレゾールフタレイン、o-クレゾールフタレイン、m-クレゾールフタレイン、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、キシレノールフタレイン、ジブロモフェノールテトラブロモフェニルスルホンフタレイン、ニトロフェノールスルホンフタレイン等が用いられる。これらのフタレイン系指示薬は、pHが塩基性側で発色し、酸性側で消色するものである。また、フタレイン系指示薬はインキ全量に対して0.1~20重量%程度、好ましくはインキ全量に対して0.5~10重量%程度が用いられる。
【0037】
本発明の水で消色可能なインキに用いる保湿剤としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等が用いられる。また、保湿剤はインキ全量に対して10~90重量%程度、好ましくはインキ全量に対して30~70重量%程度が用いられる。
【0038】
本発明の水で消色可能なインキに用いる溶解助剤としては、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、例えば1,2-プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2-プロピレングリコールモノエチルエーテル、1,2-プロピレングリコールモノプロピレンエーテル、1,3-プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3-プロピレングリコールモノエチルエーテル、1,3-プロピレングリコールモノプロピレンエーテル等が用いられる。
【0039】
本発明の水で消色可能なインキに用いるpH調整剤は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニア水等が用いられる。低級アルカノールアミンは酸性ガスの吸収剤としても作用し、また、アンモニア水はアンモニアガスを発生して酸性ガスを中和する作用もある。前記pH調整剤はインキ全量に対して0.1~40重量%程度、好ましくはインキ全量に対して0.5~30重量%程度が用いられる。
【0040】
本発明の消色可能なインキは、酸化により消色可能なインキも包含する。酸化により消色可能なインキとは、例えば酸化状態と還元状態で異なる色調を呈する酸化還元色素であって、酸化状態で有色であり、還元状態で無色又は淡色となる染料が挙げられる。具体的には、メチレンブルーなどのチアジン系染料、インジゴスルフォン酸カリウム塩などのインジゴイド系染料、ミケスレンブリリアントピンクR等のチオインジゴイド染料等が使用できる。また、酸化還元色素はインキ全量に対して0.1~20重量%程度、好ましくはインキ全量に対して0.5~10重量%程度が用いられる。
また、前記酸化還元色素の酸化反応を促進させる為、還元剤を併用することが出来る。
グルコース、フルクトース、キシロースなどの単糖類、マルトースなどの二糖類、アスコルビン酸およびその塩、亜ジチオン酸およびその塩、システインおよびその塩などが挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、還元力及び安全性の点で単糖類が好ましく、フルクトースがより好ましく、D-フルクトースが特に好ましい。
【0041】
本発明の酸化により消去可能なインキに使用される還元剤は、高温滅菌処理を施した場合に還元作用を発現する天然酸化防止剤を使用することが出来る。熱により分解する物質は、高温滅菌処理後の還元色を維持できないなどの不具合を抱えるため、好ましくない。係る還元剤として好ましいのは、具体的にはローズマリー抽出物の他、トコフェロール、ケルセチンやアントシアニン、茶カテキン等のポリフェノール、没食子酸誘導体、コーヒー酸やフェルラ酸、グルタチオンなどのアミノ酸、β-カロチンやリコピンなどのカロテノイド類である。酸化還元色素と還元剤の組み合わせを選択することは非常に重要であり、滅菌工程における加熱処理温度を考慮する必要がある。また、その使用量は上記酸化還元色素1重量部に対して、上記還元剤が1~100重量部であることが好ましい。
【0042】
本発明の酸化により消去可能なインキには、バインダー樹脂は、酸化還元色素、還元剤、溶媒を支持体上に固着するために用いられる。インキ化する際に適当なバインダー樹脂としては、具体的にはエチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、セルロースアセテートなどのセルロース誘導体やブチラール樹脂、アセタール樹脂、親水基を導入したポリエステル樹脂、その他にアクリル樹脂、ウレタン-ウレア樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。特に酸化還元色素の溶解性とボイル・レトルトなどの高温滅菌処理を考慮し、耐熱性を有する水性樹脂を使用することが好ましい。
【0043】
さらに、本発明の消色可能なインキは、滲み防止剤を含んでいても良い。
滲み防止剤とは、筆記対象物への筆記後、筆記線が浸透・拡散などによって、広がっていくことを防止する目的で添加するものであり、インキの表面張力の低下によって滲みを抑止するレべリング剤(エーテルリン酸エステル界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤)や、インキが筆記対象物中で、凝集して滲むことを抑制する凝集防止剤(ビニルアルコールとアクリル酸の共重合体、ポリアクリル酸アンモニウム)や、溶剤の一部を筆記対象物中で即時に揮発させることにより、筆記対象物中にインキが浸透することを防止する揮発性溶剤(ポリプロピレングリコール)などが挙げられる。
滲み防止剤を添加することにより、筆記対象物への筆記後、筆記線の浸透、拡散が防止される為、芯体2及び芯体3にそれぞれ含浸されたインキが、筆記対象物中で混ざって、インキが消色する範囲が、不明確となるという不具合がない。
なお、本発明における筆記対象物は、吸収面である紙に限られず、ホワイトボートや、フィルム、金属、木材、エラストマーなどが考えられる。
【0044】
前記の滲み防止剤の中でも、レべリング剤は、筆記線のにじみを防止することができ、更にレベリング性も向上することができる。レベリング性が向上することにより筆記線の乾燥性も向上し、筆記対象物中にインキが浸透することを防止される。シリコーン系界面活性剤としては、オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、アルコール変性オルガノポリシロキサン、カルボキシル変性オルガノポリシロキサン等を使用することができ、例えば、ペインタッドA、ペインタッド29、ペインタッド52、ペインタッド54、ペインタッド57、DC Z-60328等(以上、ダウコーニング社製) 、BYK-300、BYK-302、BYK-307、BYK333、BYK-344等(以上、ビックケミー社製)をあげることができる。また、フッ素系界面活性剤としては、パーフロロアシッドアンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンパーフルオロエーテル等を使用することができ、例えば、フロラードFC-176、フロラードFC-430等(以上、住友3M社製)をあげることができる。上記界面活性剤はインキ全量に対して0.01重量%~10重量%を用いることができ、0.05~2重量%が特に好ましい。
【0045】
また、本発明のインキに用いる溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコールや、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素や、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、メチルエチルケトン、ジメチルケトン、ジエチルケトン、4-メトキシ-4-メチルペンタノン等のケトンや、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル等のエステルや、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、2-メトキシプロパノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール等のグリコールエーテルなどから選ばれる一種又は二種以上の混合物が用いられる。その中でも、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノールといった低級脂肪族アルコールは、安全性、速乾性の観点から最も好ましい。また、前記低級脂肪族アルコールと乳酸エステルを混合して使用しても良好な結果が得られ、乳酸エステルは、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルから選択する。乳酸プロピル、乳酸ブチルは、それぞれ異性体が存在するが、ノルマル、イソ、ターシャル等すべての構造のものが使用可能である。また、40~99重量%を用いることができ、50~95重量%が特に好ましい。また、本発明においては、必ずしも有機溶剤を添加する必要は無く、水を添加しても良い。
さらに、本発明に用いる溶剤は、水を主溶剤としたいわゆる水系インキとしても良い。
水系インキに、水溶性有機溶剤を添加することが出来る。水溶性有機溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、またはグリセリンなどのグリコール類、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t-ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコールなどのアルコール類、およびエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシブタノール、または3-メトキシ-3-メチルブタノールなどのグリコールエーテル類などが挙げられる。水溶性有機溶剤の添加量は、水性インキ組成物に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~7質量%であることがより好ましい。
【0046】
さらに本発明におけるインキには、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル等の染料溶解助剤、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリンポリオキシプロピレントリオール等の界面活性剤、公知のpH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、高分子分散剤、増粘剤などを適宜配合することもできる。
【0047】
実施例及び比較例に用いたインキ配合を以下に示す。図8は、インキ消去性の試験結果である。芯体2に含浸されるインキ配合及び、芯体3に含浸されるインキ配合の組み合わせを、図8に示した。

(インキ配合1)
溶解型蛍光顔料 FM-108(シンロイヒ(株)製) 8.5%
n-プロパノール 80.5%
アルキルフェノール樹脂 3.0%
パーフルオロアルキルスルホン酸塩 1.0%
ベンジルアルコール 7.0%
以上物質を混合し、蛍光青色インキを得た。

(インキ配合2)
溶解型蛍光顔料 FM-105(シンロイヒ(株)製) 9.0%
n-プロパノール 65.0%
エタノール 15.0%
ケトンホルムアルデヒド樹脂 4.9%
融点47℃のパラフィンワックス 2.0%
ベンジルアルコール 4.0%
以上物質を混合し、蛍光黄色インキを得た。

(インキ配合3)
蛍光顔料 シンロイヒカラーSF-5015(シンロイヒ(株)製) 50.0%
ポリアルキレンオキサイドと脂肪族アルコールとのエーテル 1.0%
(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンとイソデシルアルコールとのエーテル、HLB値:13.9、商品名:ノイゲンLF-80X、第一工業製薬株式会社製)
グリセリン 10.0%
塩化カルシウム 0.25%
防腐剤 0.1%
(4-クロロ-3-メチルフェノール、商品名:ホクサイドPCMC、北興産業株式会社製)
水 38.65%

(インキ配合4)
溶解型蛍光顔料 FM-105(シンロイヒ(株)製) 9.0%
n-プロパノール 65.0%
エタノール 15.0%
ケトンホルムアルデヒド樹脂 4.9%
融点47℃のパラフィンワックス 2.0%
パーフルオロアルキルスルホン酸塩 0.1%
ベンジルアルコール 4.0%
以上物質を混合し、蛍光黄色インキを得た。

(インキ配合5)
ステアリルアミン(化合物A) 2.0%
ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルリン酸(化合物B) 2.0%
イソプロパノール 2.0%
アルキド樹脂ベッコゾール OED-230-70(大日本インキ(株)製) 8.0%
ロジン変性マレイン酸樹脂マルキード33号(荒川樹脂工業(株)製) 18.0%
キシレン 67.0%
顔料C.I.ピグメントイエロー1(ハンザイエローG) 1.0%

(インキ配合6)
溶解型蛍光顔料 FM-16(シンロイヒ(株)製) 8.5%
n-プロパノール 81.5%
アルキルフェノール樹脂 3.0%
ベンジルアルコール 7.0%
以上物質を混合し、蛍光橙色インキを得た。

(インキ配合7)
蛍光顔料FZ-2001(シンロイヒ(株)製) 8.5%
n-プロパノール 81.5%
アルキルフェノール樹脂 3.0%
ベンジルアルコール 7.0%
以上物質を混合し、蛍光緑色インキを得た。

(インキ配合8)
マイクロカプセル顔料 30.0%
アクリル系高分子分散剤 0.4%
(商品名:ソルスパース43000 日本ルーブリゾール(株)製)
ピリジン‐2‐チオール 1‐オキシド,ナトリウム塩 0.2%
(商品名:ソジウムオマジン ロンザジャパン(株)製)
水 69.4%
以上物質を混合し、48℃を超えると、青色から無色に変色するインキを得た。

前記マイクロカプセル顔料は、電子供与性呈色性有機化合物として、3-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド0.6%、電子受容性化合物としてビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド2.4%、2,2-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン1.5%部、反応媒体としてカプリン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル15%からなる可逆熱変色性組成物を内包している。

(インキ配合9)
o-クレゾールフタレイン 2.0%
1,2-プロピレングリコールモノメチルエーテル 10.0%
炭酸ナトリウム 2.0%
1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンナトリウム塩 1.0%
水 55.0%
グリセリン 30.0%
※インキ配合6のph値は、9であった。

(インキ配合10)
メチレンブルー 1.0%
ローズマリー抽出物(還元剤a) 4.0%
水性アクリル樹脂 47.0%
イソプロピルアルコール 24.0%
水 24.0%

(インキ配合11)
溶解型蛍光顔料 FM-16(シンロイヒ(株)製) 10.0%
n-プロパノール 80.0%
アルキルフェノール樹脂 3.0%
ベンジルアルコール 7.0%
以上物質を混合し、橙色インキを得た。

(インキ配合12)
溶解型蛍光顔料 FM-108(シンロイヒ(株)製) 12.0%
n-プロパノール 80.0%
アルキルフェノール樹脂 3.0%
ベンジルアルコール 5.0%
以上物質を混合し、蛍光青色インキを得た。

(インキ配合13)
溶解型蛍光顔料 FM-47(シンロイヒ(株)製) 12.0%
n-プロパノール 80.0%
アルキルフェノール樹脂 3.0%
ベンジルアルコール 7.0%
以上物質を混合し、紫色インキを得た。
【0048】
(実施例1:モノクロコピー後の視認性)
実施例1においては、第2芯体に配合1が、第1芯体に配合2がそれぞれ芯体に含浸された筆記サンプルで、文字がプリントされた普通紙の文字部分を、筆記線の一部が覆うように筆記した後、前記筆記された普通紙のモノクロコピーを行って、モノクロコピーにより複写された普通紙の文字視認性を確認した。モノクロコピーの濃度設定は、「標準」モードと「濃い」モードで合計2回実施した。
モノクロコピーの濃度設定によらず、モノクロコピーによって、文字部分を覆う筆記線(第1芯体によって描かれた筆記線)が消色し、かつ消色しない文字部分以外の筆跡(第2芯体によって描かれた筆記線)がぼやけておらず、極めて鮮明で、全体の視認性が高いと判断された場合は◎。モノクロコピーの濃度設定によらず、モノクロコピーによって、文字部分を覆う筆記線が消色し、全体の視認性が高いと判断された場合は○。モノクロコピーの「濃い」モードにおいて、文字部分を覆う筆記線(第1芯体によって描かれた筆記線)が消色せず、文字の視認性が低いと判断された場合は△。モノクロコピーの濃度設定によらず、文字部分を覆う筆記線(第1芯体によって描かれた筆記線)が全く消色せず、文字の視認性が低いと判断される場合は×として評価した。
【0049】
(第1芯体の筆跡のL*値及びY値測定)
実施例1~6及び比較例1~3については、本発明の筆記具が備える第1芯体によって、普通紙に筆記されたインキ筆跡のL*値及びY値を測定した。測定方法は、第1芯体によって普通紙に筆跡された部分を色査計によって、L*値及びY値を3回測定し、その平均値をとって、色の属性である明るさを表す指標とした。 インクの属性により消色するインクの性質は、少なくともL値(平均値)が77以上、Y値(平均値)が54以上、好ましくは、L値(平均値)が79以上、Y値(平均値)が56以上であることが望ましい。
【0050】
(筆跡のインキ混合)
実施例1~9及び比較例1~3において、筆記対象物へ筆記後の筆記線の混色について確認を行った。試験方法としては、2色マーカーである筆記サンプルで、筆記対象物へ筆記した1時間後に、2色の筆記線が混色するかを目視で確認した。時間経過後においても、2色の筆記線が全く混色しておらず、筆記線の境界が非常に鮮明である場合は○。2色の筆記線が若干混色しているが、筆記線の境界は一応に確認出来る場合は△。滲みにより、2色の筆記線が混色し、筆記線の境界が認識できない場合は×とした。
【0051】
(実施例2、3、4、5、6:モノクロコピー後の視認性)
実施例2においては、第1芯体に配合3が、実施例3においては、第1芯体に配合4が、実施例4においては、第1芯体に配合5が、実施例5においては、第1芯体に配合6が、実施例6においては、第1芯体に配合7が、それぞれ芯体に含浸された筆記サンプルで、実施例1と同様の方法で、モノクロコピー後の視認性、第1芯体の筆跡のL*値及びY値測定、筆跡のインキ混合を確認した。配合3は、水性蛍光顔料インキであり、配合5は、蛍光顔料でない黄色顔料が配合されているが、配合3インキを第1芯体に含浸させている実施例2及び配合5インキを第2芯体に含浸させている実施例4において、消色作業後の視認性が良好であった。図8のL値及びY値に注目すると、消色作業後の視認性評価において、良好な結果が得られたインキは、L値及びY値が高い結果が得られていることから、前記視認性は、明るさを表す指標であるL値及びY値に依存し、水性なのか油性なのか、使用する顔料を問わないものと考えられる。
【0052】
(実施例7:熱消色後の視認性)
実施例7においては、第2芯体に配合1が、第1芯体に配合8がそれぞれ含浸された筆記サンプルで、文字がプリントされた普通紙の文字部分を、第1芯体に含浸された配合8のインキが覆うように筆記した後、従来公知のラバー製のインキ消去具で、筆記された部分を擦り、摩擦熱を発生させて、普通紙の文字視認性を確認した。
また、前記される方法で、筆跡のインキ混合についても確認を行った。
インキ消去具で文字部分を擦ることにより発生する摩擦熱よって、文字部分を覆う筆記線が消色し、消色後の文字の視認性が高いと判断される場合は○。インキ消去具を擦ることにより発生する摩擦熱によって、文字部分を覆う筆記線が消色せず、消色後の文字の視認性が高くないと判断される場合は△。インキ消去具を擦ることにより発生する摩擦熱によって、文字部分を覆う筆記線が全く消色せず、消色後の文字の視認性が低いと判断される場合は×として評価した。
【0053】
(実施例8:水消色後の視認性)
実施例8においては、第2芯体に含浸された配合1と第1芯体に含浸された配合9のインキを備える筆記具サンプルで、文字がプリントされたPETフィルムの文字部分を、第1芯体に含浸された配合9のインキが覆うように筆記を行った後、水を含ませた不織布を塗布し、その後に文字視認性を確認した。また、前記される方法で筆跡のインキ混合についても確認を行った。
水が含まれた不織布を塗布することにより、文字部分を覆う筆記線が消色し、消色後の文字の視認性が高いと判断された場合は○。水が含まれた不織布を塗布することにより、文字部分を覆う筆記線が消色せず、消色後の文字の視認性が高くないと判断される場合は△。水が含まれた不織布を塗布することにより、文字部分を覆う筆記線が全く消色せず、消色後の文字の視認性が低いと判断される場合は×として評価した。
【0054】
(実施例9:酸化・消色後の視認性)
実施例9においては、第2芯体に含浸された配合1と第1芯体に含浸された配合10のインキを備える筆記具サンプルで、文字がプリントされた筆記対象物の文字部分を第1芯体に含浸された配合10のインキが覆うように筆記を行った後、筆記対象物を空気中で、1週間放置させた後に、普通紙の文字視認性を確認した。また、前記される方法で筆跡のインキ混合についても確認を行った。
書類を空気中に放置し、筆記線が酸化されることにより、文字部分を覆う筆記線が消色し、全体の視認性が高いと判断される場合は○。筆記線が酸化されることにより、文字部分を覆う筆記線が完全に消色せず、全体の視認性が高くないと判断される場合は△。筆記線が酸化されることにより、文字部分を覆う筆記線が全く消色せず、全体の視認性が低いと判断される場合は×として評価した。
(比較例1~3:各種試験)
比較例1~3においては、図8に記載のインキがそれぞれ芯体に含浸された筆記サンプルで、モノクロコピー後の視認性、熱消色後の視認性、水消色後の視認性、酸化・消色後の視認性、第1芯体の筆跡のL*値及びY値測定、筆跡のインキ混合の確認を行った。比較例において第2芯体に含まれたインキの消色作業後の視認性は低いと評価されており、そのL値、Y値は、実施例と比べ低い値となっていることからも、前記視認性は、インキの属性を表すL値、Y値に依存していることが判る。
【0055】
図6は、文字部分を覆う筆記線が消色された状態の筆記対象物である。図7は、文字部分を覆う筆記線が消色されていない状態の筆記対象物である。
図8の試験結果に見られるとおり、実施例1~9の2色マーカインキは、モノクロ印刷、熱処理、水の塗布、酸化などの処理を行うことにより、書類中の文字部分にハイライトされたインキが消色し、文字部分の視認が可能となった。例として、実施例1の結果を図6に表す。一方、比較例1~3の2色マーカインキは、モノクロ印刷、熱処理、水の塗布、酸化などの処理を行っても、書類中の文字部分にハイライトされたインキは消色せず、文字部分の視認がしにくいままであった。例として、比較例1の結果を図7に表す。実施例1~6及び比較例1~3の結果から、モノクロ印刷により消色するインキの属性は、少なくともL値(平均値)が77以上、Y値(平均値)が54以上、好ましくは、L値(平均値)が79以上、Y値(平均値)が56以上であることが望ましい。
また、実施例1と実施例3を比較した場合、滲み防止剤であるパーフルオロアルキルスルホン酸塩添加の有無により、筆跡のインキ混合の結果及び文字部分の視認性に差異が生じた。さらに、主溶剤をn-プロパノールとしている実施例1、3、5、6、比較例1~3に着目した場合には、滲み防止剤であるパーフルオロアルキルスルホン酸塩を添加している実施例3が、筆跡のインキ混合の結果が良好であり、文字部分の視認性も極めて良好な結果となった。
【0056】
1 本体
1a 第1段部
1b 第2段部
1c 本体突起部
2 第1芯体
2a 第1 インキ誘導体
2b 第1 筆記部
3 第2芯体
3a 第2 インキ誘導体
3b 第2 筆記部
4 第1吸収体
5 第2吸収体
6 仕切り板
7 尾栓
8a 当接部
8b 当接部
8c 当接部
8d 当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9