(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】多層皮膚構築物ならびにそれを製造および使用する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240517BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240517BHJP
A61K 35/36 20150101ALI20240517BHJP
A61K 35/44 20150101ALI20240517BHJP
A61K 35/35 20150101ALI20240517BHJP
A61K 35/33 20150101ALI20240517BHJP
A61K 35/39 20150101ALI20240517BHJP
A61L 27/60 20060101ALI20240517BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20240517BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20240517BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20240517BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20240517BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20240517BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20240517BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C12N5/071
A61P17/02
A61K35/36
A61K35/44
A61K35/35
A61K35/33
A61K35/39
A61L27/60
A61L27/38 200
A61L27/52
A61L27/20
A61L27/24
A61L27/22
A61L27/18
A61L27/56
(21)【出願番号】P 2020531138
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(86)【国際出願番号】 US2018064471
(87)【国際公開番号】W WO2019113442
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-26
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507189574
【氏名又は名称】ウェイク・フォレスト・ユニヴァーシティ・ヘルス・サイエンシズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーキー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】アタラ,アンソニー
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/115034(WO,A1)
【文献】特表2005-518910(JP,A)
【文献】特開2014-064633(JP,A)
【文献】国際公開第2016/073782(WO,A1)
【文献】特開平11-180878(JP,A)
【文献】特開平10-118103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-5/28
C12Q 1/00-3/00
C12M 1/00-3/10
C12P
G01N
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAPLUS/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きた哺乳動物脂肪細胞(例えば、誘導された前脂肪細胞)、およ
び生きた哺乳動物内皮細胞(例えば、真皮微小血管内皮細胞)を第1のハイドロゲル担体中に含む第1の(「皮下組織様」)層であって、前記生きた哺乳動物脂肪細胞
及び前記生きた哺乳動物内皮細胞が球状体として
共培養されている第1の層と、
前記第1の層上の、または前記第1の層と直接接触する第2の(「真皮様」)層であって、生きた哺乳動物線維芽細胞、生きた哺乳動物毛乳頭細胞、およ
び生きた哺乳動物内皮細胞(例えば、真皮微小血管内皮細胞)を第2のハイドロゲル担体中に組み合わせて含む第2の層であって、前記生きた哺乳動物線維芽細胞
および前記生きた哺乳動物内皮細胞が球状体として共培養され、およ
び、前記生きた哺乳動物毛乳頭細胞が球状体として
培養されている第2の層と、
前記第2の層上の、または前記第2の層と直接接触する第3の(「表皮様」)層であって、生きた哺乳動物角化細胞、生きた哺乳動物メラニン細胞、および生きた哺乳動物免疫細胞(例えば、CD14+単球、ランゲルハンス細胞、真皮樹状細胞、またはそれらのうちの2つ以上の組合せ)を、第3のハイドロゲル担体中に組み合わせて含む、第3の層と
を含み、
前記構築物は、3、4、5、6、7、または8週間の培養後、目に見える色素沈着を有する、人工哺乳動物皮膚構築物。
【請求項2】
前記第3の層の生きた哺乳動物免疫細胞がランゲルハンス細胞および真皮樹状細胞を含む、請求項1に記載の構築物。
【請求項3】
層を成した三層の構築物である、請求項1
または2のいずれか1項に記載の構築物。
【請求項4】
インビトロで毛包構造組織(サイトケラチン14陽性およびサイトケラチン71陽性であることによって示される場合がある内毛根鞘および外毛根鞘)を有し、および/またはプロミニン-1について陽性である、請求項1から
3のいずれか1項に記載の構築物。
【請求項5】
前記第1、第2、および/もしくは第3のハイドロゲル担体が、架橋されたヒアルロン酸(例えば、ポリエチレングリコール架橋剤で架橋された)を含み、ならびに/または前記第1、第2、および/もしくは第3のハイドロゲル担体が、任意選択的にコラーゲン(例えば、5、8、10、または15重量%)、および/もしくはゼラチン(例えば、0.5、1、2、3または5重量%)をさらに含む、請求項1から
4のいずれか1項に記載の構築物。
【請求項6】
(i)前記第1の層が、100、200または300マイクロメートルから400、600または800マイクロメートルまでの厚さを有し、
(ii)前記第2の層が、100、200または300マイクロメートルから400、600または800マイクロメートルまでの厚さを有し、
(iii)前記第3の層が、100、200または300マイクロメートルから400、600または800マイクロメートルまでの厚さを有し、および/あるいは
(iv)前記構築物が、合計300、600もしくは900マイクロメートルから1200、1800もしくは2400マイクロメートルまでの厚さを有する、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の構築物。
【請求項7】
前記第1の層、前記第2の層、および前記第3の層のそれぞれが、0.5、1または10平方センチメートルから50、200または400平方センチメートルまでの重なる表面積を有する、請求項1から
6のいずれか1項に記載の構築物。
【請求項8】
(i)前記脂肪細胞および前記内皮細胞が、前記第1のハイドロゲル担体中に、約2:1、1:1、もしくは1:2の比率で、および/または約100万もしくは200万から800万、1000万、もしくは2000万個の細胞/立方センチメートルの複合密度で含まれ、ならびに/あるいは
(ii)前記線維芽細胞および前記毛乳頭細胞が、前記第2のハイドロゲル担体中に約8:1もしくは6:1から2:1もしくは1:1の比率で含まれ、前記内皮細胞が、前記第2のハイドロゲル担体中に前記線維芽細胞に対して約2:1、1:1もしくは1:2の比率で存在し、および/または前記細胞が、約500万もしくは800万から1500万、2000万、2500万もしくは3000万個の細胞/立方センチメートルの複合密度であり、ならびに/あるいは
(iii)前記角化細胞および前記メラニン細胞が、約20:1もしくは10:1から8:1、5:1、3:1もしくは2:1の比率で、および/または約500万もしくは800万から1500万、もしくは2000万、2500万、3000万もしくは3500万個の細胞/立方センチメートルの複合密度で前記第3のハイドロゲル担体中に含まれ、前記免疫細胞が、前記表皮様層の全細胞の1%または2%から10または15%の量で含まれる、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の構築物。
【請求項9】
前記生きた哺乳動物脂肪細胞がヒト脂肪細胞であり、前記生きた哺乳動物線維芽細胞がヒト線維芽細胞であり、前記生きた哺乳動物毛乳頭細胞がヒト毛乳頭細胞であり、前記生きた哺乳動物角化細胞がヒト角化細胞であり、前記生きた哺乳動物メラニン細胞がヒトメラニン細胞であり、前記生きた哺乳動物内皮細胞がヒト内皮細胞であり、前記生きた哺乳動物免疫細胞がヒト免疫細胞である、請求項1から
8のいずれか1項に記載の構築物。
【請求項10】
(a)前記脂肪細胞および内皮細胞を球状体として共培養し、前記球状体を前記第1のハイドロゲル担体に取り入れて皮下バイオインクを形成し、基材上に前記皮下バイオインクを積層して前記第1の(皮下組織様)層を形成するステップと、
(b)前記毛乳頭細胞を球状体として培養し、独立して、前記内皮細胞および前記線維芽細胞を球状体として共培養し、前記球状体を前記第2のハイドロゲル担体に取り入れて真皮バイオインクを形成し、前記皮下組織様層上に、真皮バイオインクを積層して、前記第2の(真皮様)層を形成するステップと、
(c)前記角化細胞、前記メラニン細胞および前記免疫細胞を前記第3のハイドロゲル担体に取り入れて、表皮バイオインクを形成し、前記真皮様層上に前記表皮バイオインクを積層して、前記第3の(表皮様)層を形成するステップと
を含み、それによって前記皮膚構築物を形成する方法によって製造される、請求項1から
9のいずれか1項に記載の構築物。
【請求項11】
(a)前記角化細胞、前記メラニン細胞および前記免疫細胞を第3のハイドロゲル担体に取り入れて、表皮バイオインクを形成し、基材上に前記表皮バイオインクを積層して、前記第3の(表皮様)層を形成するステップと、
(b)前記毛乳頭細胞を球状体として培養し、独立して、前記内皮細胞および前記線維芽細胞を球状体として共培養し、前記球状体を前記第2のハイドロゲル担体に取り入れて真皮バイオインクを形成し、前記表皮様層上に前記真皮バイオインクを積層して、前記第2の(真皮様)層を形成するステップと、
(c)前記脂肪細胞および前記内皮細胞を球状体として共培養し、前記球状体を前記第1のハイドロゲル担体に取り入れて皮下バイオインクを形成し、前記真皮様層上に前記皮下バイオインクを積層して、前記第1の(皮下組織様)層を形成するステップと
を含み、それによって前記皮膚構築物を形成する方法によって製造される、請求項1から
9のいずれか1項に記載の構築物。
【請求項12】
前記積層がバイオプリンティングによって行われる、請求項
10または請求項
11に記載の構築物。
【請求項13】
それを必要とする対象の創傷を治療するための医薬の調整における、請求項1から
12のいずれか1項に記載の皮膚構築物の使用であって、任意選択的に前記構築物の前記細胞が自家細胞または同種細胞である、使用。
【請求項14】
前記皮膚構築物が、前記第3の層上に、または前記第3の層と接触する不活性モールド層をさらに含む、請求項
13に記載の使用。
【請求項15】
前記不活性モールド層が、顔面創傷にカスタムフィットするように寸法決めされている(例えば、スキャンデータに基づいて)、請求項
14に記載の使用。
【請求項16】
前記顔面創傷が、額、眉間、鼻根点、鼻(例えば、鼻梁、鼻孔点、鼻尖、鼻尖上部、鼻橋、鼻翼側壁)、鼻唇溝、人中、口唇、下顎、頬、顎、耳(例えば、耳輪、舟状窩、対輪のひだ、対輪、対珠、耳垂、耳珠、耳甲介、窩)、および/または眼を取り囲む皮膚(例えば、眼瞼)の創傷である、請求項
15に記載の使用。
【請求項17】
前記不活性モールド層がポリウレタンを含む、請求項
13から
16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
前記不活性モールド層が多孔質である、請求項
13から
17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
哺乳動物対象の皮膚に適用したときの活性について化合物または組成物をスクリーニングする方法であって、
請求項1から
12のいずれか1項に記載の皮膚構築物を、前記構築物の構成細胞を生きた状態に維持する条件下で準備するステップと、
前記構築物に前記化合物または組成物を接触させるステップと、次いで
前記皮膚構築物の応答を検出するステップと
を含み、そのような応答が存在することは、前記化合物または組成物が哺乳動物対象の皮膚に適用された場合に潜在的に活性であることを示す、方法。
【請求項20】
前記応答が免疫応答(例えば、サイトカイン放出)を含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
皮膚構築物を製造する方法であって、
(a)脂肪細胞および内皮細胞を球状体として共培養し、前記球状体を第1のハイドロゲル担体に取り入れて皮下バイオインクを形成し、基材上に前記皮下バイオインクを積層して、第1の(皮下組織様)層を形成するステップと、
(b)毛乳頭細胞を球状体として培養し、独立して、内皮細胞および線維芽細胞を球状体として共培養し、前記球状体を第2のハイドロゲル担体に取り入れて真皮バイオインクを形成し、前記皮下組織様層上に、前記真皮バイオインクを積層して、第2の(真皮様)層を形成するステップと、
(c)角化細胞、メラニン細胞および免疫細胞を第3のハイドロゲル担体に取り入れて、表皮バイオインクを形成し、前記真皮様層上に前記表皮バイオインクを積層して、第3の(表皮様)層を形成するステップと
を含み、それによって前記皮膚構築物を製造する方法(ヒトの治療方法を除く)。
【請求項22】
皮膚構築物を製造する方法であって、
(a)角化細胞、メラニン細胞および免疫細胞を第3のハイドロゲル担体に取り入れて、表皮バイオインクを形成し、基材上に前記表皮バイオインクを積層して、第3の(表皮様)層を形成するステップと、
(b)毛乳頭細胞を球状体として培養し、独立して、内皮細胞および線維芽細胞を球状体として共培養し、前記球状体を第2のハイドロゲル担体に取り入れて真皮バイオインクを形成し、前記表皮様層上に前記真皮バイオインクを積層して、第2の(真皮様)層を形成するステップと、
(c)脂肪細胞および内皮細胞を球状体として共培養し、前記球状体を第1のハイドロゲル担体に取り入れて皮下バイオインクを形成し、前記真皮様層上に前記皮下バイオインクを積層して、第1の(皮下組織様)層を形成するステップと
を含み、それによって前記皮膚構築物を製造する方法(ヒトの治療方法を除く)。
【請求項23】
前記積層がバイオプリンティングによって行われる、請求項
21または
22に記載の方法。
【請求項24】
前記基材が不活性な基材である、請求項
21から
23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記基材が、治療を必要とする非ヒト対象の創傷であり、任意選択的に、前記細胞が自家細胞または同種細胞である、請求項
21から
23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
浸水条件下、インビトロで前記皮膚構築物を培養するステップと、次いで、前記表皮様層が空気にさらされた状態で、気液界面で、前記皮膚構築物の表皮層別化を促進するのに十分な時間培養するステップとをさらに含む、請求項
21から
24のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生きた、人工的な、皮膚構築物、ならびに創傷治療および化合物試験などのためにそれを製造および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚交換の現在の「ゴールドスタンダード」は、自己皮膚移植片の使用である。しかし、ドナー部位組織の入手可能性、複雑な維持管理、およびそのような組織のコストのために、この治療法は患者にとって制限されていることが多い。また、現在の大部分の人工皮膚または皮膚代替物は、複数の皮膚細胞タイプならびに三層および真皮付属器官のような構造を欠いているため、天然の皮膚を完全に再現していない。現在市販されている皮膚細胞モデルもまた、単純にするために、皮膚腫瘍由来の不死化細胞株、または1つもしくは2つの一次細胞タイプ(例えば、角化細胞および/または真皮線維芽細胞)のいずれかを使用しているだけであるので、制限されている。したがって、それらは、インビボの皮膚の複雑さを十分に表現および再現していない。
【0003】
E. Bellas et al., In vitro 3D full thickness skin equivalent tissue model using silk and collagen biomaterials, Macromol. Biosci 12, 1627-1636 (2012)では、脂肪由来の幹細胞、角化細胞、および線維芽細胞を利用して三層の皮膚様製品を作製するが、細胞が播種されるシルクの足場を使用する必要がある。
【0004】
A. Skardal et al., Bioprinted Amniotic Fluid-Derived Stem Cells Accelerate Healing of Large Skin Wounds, Stem Cells Translational Medicine 1, 792-802 (2012)は、大きな創傷上へ皮膚代替物を直接バイオプリンティングすることを記載しているが、羊水幹細胞と骨髄由来の間葉系幹細胞のみを使用している。
【0005】
A. Monfort et al., Production of a human tissue-engineered skin trilayer on a plasma-based hypodermis, J. Tissue Eng. Regen. Med. 7, 479-490 (2013)は、皮膚様三層製品を記載しているが、脂肪生成細胞、線維芽細胞、および角化細胞のみを採用し、完了するまでに35日を要する逐次培養技術を使用した。同文献480~81。
【0006】
V. Lee et al., Design and Fabrication of Human Skin by Three-Dimensional Bioprinting, Tissue Engineering 20, 473-484 (2014)は、3Dバイオプリンティングで作製された皮膚様製品を記載しているが、別々のコラーゲン層の間に印刷された角化細胞と線維芽細胞のみを利用した。例えば、その中の
図2を参照されたい。
【0007】
Yoo,XuおよびAtalaらの米国特許出願公開第2009/0208466号(2009年8月)は、3ページ、段落0037~0041において皮膚代替製品を示唆しているが、例えば、どのようにして乳頭細胞をそこに効果的に取り入れることができるかについては、示唆も記載もしていない。
【0008】
AtalaらのPCT公開WO2016/115034(2016年7月)には、三層および乳頭細胞を含む複数の細胞タイプを有する皮膚代替製品が記載されている。しかし、治療用および/または薬物試験の目的で使用することができるものへと皮膚代替製品をさらに改良さる必要性が残っている。
【発明の概要】
【0009】
任意選択的に、生きた哺乳動物脂肪細胞(例えば、誘導された前脂肪細胞)、および任意選択的に生きた哺乳動物内皮細胞(例えば、真皮微小血管内皮細胞)を第1のハイドロゲル担体中に含む第1の(「皮下組織様」)層、
存在する場合、前記第1の層上の、または前記第1の層と直接接触する第2の(「真皮様」)層であって、生きた哺乳動物線維芽細胞、生きた哺乳動物毛乳頭細胞、および任意選択的に生きた哺乳動物内皮細胞(例えば、真皮微小血管内皮細胞)を第2のハイドロゲル担体中に組み合わせて含む第2の層、ならびに
前記第2の層上の、または前記第2の層と直接接触する第3の(「表皮様」)層であって、生きた哺乳動物角化細胞、生きた哺乳動物メラニン細胞、および生きた哺乳動物免疫細胞(例えば、CD14+単球、ランゲルハンス細胞、真皮樹状細胞、またはそれらのうちの2つ以上の組合せ)を、第3のハイドロゲル担体中に組み合わせて含む、第3の層
を含む人工哺乳動物皮膚構築物が本明細書で提供される。
【0010】
一部の実施形態では、構築物は、目に見える色素沈着を有する(例えば、3、4、5、6、7、または8週間の培養後)。
【0011】
一部の実施形態では、第3の層の生きた哺乳動物免疫細胞は、ランゲルハンス細胞および真皮樹状細胞を含む(例えば、5日間の培養後、および3、4、5、6、7、または8週間までの培養後)。
【0012】
一部の実施形態では、皮下組織様層、真皮様層、またはその両方が、生きた哺乳動物内皮細胞を含む。
【0013】
一部の実施形態では、皮下組織様層および真皮様層の両方が、生きた哺乳動物内皮細胞を含む。
【0014】
一部の実施形態では、構築物は、層を成した三層の構築物である。
【0015】
一部の実施形態では、構築物は、インビトロで毛包構造組織(サイトケラチン14陽性およびサイトケラチン71陽性であることによって示される場合がある内毛根鞘および外毛根鞘)を有し、および/またはプロミニン-1について陽性である(例えば、5日間の培養後、および3、4、5、6、7、または8週間までの培養後)。
【0016】
一部の実施形態では、構築物は、
(a)任意選択的に、脂肪細胞および内皮細胞を球状体として共培養し、球状体を第1のハイドロゲル担体に取り入れて皮下バイオインクを形成し、基材上に皮下バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第1の(皮下組織様)層を形成するステップと、
(b)毛乳頭細胞を球状体として培養し、独立して、内皮細胞および線維芽細胞を球状体として共培養し、球状体を第2のハイドロゲル担体に取り入れて真皮バイオインクを形成し、存在する場合には皮下組織様層上に、または存在しない場合には基材上に、真皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第2の(真皮様)層を形成するステップと、
(c)角化細胞、メラニン細胞および免疫細胞を第3のハイドロゲル担体に取り入れて、表皮バイオインクを形成し、真皮様層上に表皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第3の(表皮様)層を形成するステップと
を含み、それによって皮膚構築物を形成する方法によって製造される。
【0017】
一部の実施形態では、構築物は、
(a)角化細胞、メラニン細胞および免疫細胞を第3のハイドロゲル担体に取り入れて、表皮バイオインクを形成し、基材上に表皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第3の(表皮様)層を形成するステップと、
(b)毛乳頭細胞を球状体として培養し、独立して、内皮細胞および線維芽細胞を球状体として共培養し、球状体を第2のハイドロゲル担体に取り入れて真皮バイオインクを形成し、表皮様層上に真皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第2の(真皮様)層を形成するステップと、
(c)任意選択的に、脂肪細胞および内皮細胞を球状体として共培養し、球状体を第1のハイドロゲル担体に取り入れて皮下バイオインクを形成し、真皮様層上に皮下バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第1の(皮下組織様)層を形成するステップと
を含み、それによって皮膚構築物を形成する方法によって製造される。
【0018】
一部の実施形態では、積層はバイオプリンティング(例えば、「インクジェット」タイプの印刷および/またはシリンジ注射タイプの印刷)によって行われる。
【0019】
それを必要とする対象の創傷を治療する方法であって、本明細書で教示する皮膚構築物を治療効果のある量および/または構成で前記創傷に局所的に適用するステップを含む方法も提供される。一部の実施形態では、構築物の細胞は、対象に対して自家細胞または同種細胞である。
【0020】
一部の実施形態では、皮膚構築物は、前記第3の層上に、または前記第3の層と接触する不活性モールド層をさらに含む。一部の実施形態では、不活性モールド層は、顔面創傷にカスタムフィットするように寸法決めされている(例えば、スキャンデータに基づいて)。
【0021】
哺乳動物対象の皮膚に適用したときの活性について化合物または組成物をスクリーニングする方法であって、本明細書で教示する皮膚構築物を、前記構築物の構成細胞を生きた状態に維持する条件下で準備するステップと、前記構築物に前記化合物または組成物を接触させるステップと、および次いで前記皮膚構築物の応答を検出するステップとを含み、そのような応答が存在することは、前記化合物または組成物が哺乳動物対象の皮膚に適用された場合に潜在的に活性であることを示す、方法も提供される。
【0022】
皮膚構築物を製造する方法であって、
(a)任意選択的に、脂肪細胞および内皮細胞を球状体として共培養し、球状体を第1のハイドロゲル担体に取り入れて皮下バイオインクを形成し、基材上に皮下バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第1の(皮下組織様)層を形成するステップと、
(b)毛乳頭細胞を球状体として培養し、独立して、内皮細胞および線維芽細胞を球状体として共培養し、球状体を第2のハイドロゲル担体に取り入れて真皮バイオインクを形成し、存在する場合には皮下組織様層上に、または存在しない場合には基材上に、真皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第2の(真皮様)層を形成するステップと、
(c)角化細胞、メラニン細胞および免疫細胞を第3のハイドロゲル担体に取り入れて、表皮バイオインクを形成し、真皮様層上に表皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第3の(表皮様)層を形成するステップと
を含み、それによって皮膚構築物を製造する方法がさらに提供される。
【0023】
皮膚構築物を製造する方法であって、
(a)角化細胞、メラニン細胞および免疫細胞を第3のハイドロゲル担体に取り入れて、表皮バイオインクを形成し、基材上に表皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第3の(表皮様)層を形成するステップと、
(b)毛乳頭細胞を球状体として培養し、独立して、内皮細胞および線維芽細胞を球状体として共培養し、球状体を第2のハイドロゲル担体に取り入れて真皮バイオインクを形成し、表皮様層上に真皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第2の(真皮様)層を形成するステップと、
(c)任意選択的に、脂肪細胞および内皮細胞を球状体として共培養し、球状体を第1のハイドロゲル担体に取り入れて皮下バイオインクを形成し、真皮様層上に皮下バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第1の(皮下組織様)層を形成するステップと
を含み、それによって皮膚構築物を製造する方法も提供される。
【0024】
一部の実施形態では、積層はバイオプリンティング(例えば、「インクジェット」タイプの印刷および/またはシリンジ注射タイプの印刷)によって行われる。
【0025】
一部の実施形態では、基材は不活性な基材である。
【0026】
一部の実施形態では、基材は、治療を必要とする対象(例えば、ヒト対象)の創傷であり、任意選択的に、細胞は自家細胞または同種細胞である。治療を必要とする対象(例えば、ヒト対象)の創傷を治療する方法における本明細書で教示する皮膚構築物の使用がさらに提供され、任意選択的に、細胞は自家細胞または同種細胞である。
【0027】
一部の実施形態では、方法は、浸水条件下、インビトロで皮膚構築物を培養するステップと、次いで、表皮様層が空気にさらされた状態で、気液界面で、皮膚構築物の表皮層別化を促進するのに十分な時間培養するステップとをさらに含む。
【0028】
本明細書の図面および以下に示される明細書では、本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】バイオプリンティングによる皮膚構築物の形成の概略を提供する図である。
【
図2】本開示によって製造された、目に見える色素沈着を有する皮膚構築物の写真である。
【
図3】4日目および15日目におけるバイオプリント皮膚構築物の層状の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書の図面および以下に示される明細書では、本発明をさらに詳細に説明する。本明細書に引用された全ての米国特許文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
この後、本発明の実施形態が示される添付図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、しかしながら、多くの異なる形態において実施することができ、そして本明細書に示される実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろこれらの実施形態は、本開示が徹底的におよび完全になるように、そして、当業者に本発明の範囲を完全に伝えるように提供される。
【0032】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのためのものであり、本発明の限定となることを意図していない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことが意図される。本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」という用語は、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素および/もしくはグループまたはそれらの組合せの存在を規定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素および/もしくはグループまたはそれらの組合せの存在または追加を排除するものではないことが、さらに理解されるであろう。
【0033】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、代替的に解釈される場合(「または」)の組合せの欠如と同様に、ありとあらゆる可能な組合せ、または関連するリストされた項目の1つもしくは複数を含む。
【0034】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般に用いられる辞書で定義されるものなどの用語は、明細書および特許請求の範囲の文脈における意味と一致した意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書において明示的にそのように定義されない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味に解釈されるべきではないことが、さらに理解されるであろう。周知の機能または構成は、簡潔さおよび/または明快さのために、詳しく記載しないことがある。
【0035】
1つの要素が別の要素の「上に」、「取り付けられて」、「接続されて」、「結合されて」、「接触して」などと言及される場合は、1つの要素は他の要素の直接上に、取り付けられて、接続されて、結合されて、および/もしくは接触していてよい、または介在要素もまた存在していてよいと理解される。一方、1つの要素が、例えば、別の要素の「直接上に」、「直接取り付けられて」、「直接接続されて」、「直接結合されて」、または「直接接触して」と言及される場合は、介在する要素は存在しない。また、別の特徴に「隣接して」配置されている構造または特徴への参照は、隣接する特徴に重なり合うか、または下敷きになる部分を有することができることは、当業者には理解されるであろう。
【0036】
本明細書では、第1、第2などの用語が、様々な要素、構成要素、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されてもよいが、これらの要素、構成要素、領域、層および/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるであろう。むしろ、これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層および/またはセクションを、別の要素、構成要素、領域、層および/またはセクションと区別するためにのみ使用される。
【0037】
本明細書で使用される「哺乳動物」とは、ヒト対象(および細胞の供給源)およびイヌ、ネコ、マウス、サルなど(例えば、獣医学的または研究目的のために)などの非ヒト対象(および細胞の供給源またはタイプ)の両方を表す。
【0038】
本明細書で使用される「ハイドロゲル」は、任意の適したハイドロゲルであってもよい。一般に、ハイドロゲルは水を含み、さらにポリアルキレンオキシド、ポロキサミン、セルロース、ヒドロキシアルキル化セルロース、ポリペプチド、多糖類、炭水化物、タンパク質、それらのコポリマー、またはそれらの組合せからなるか、またはそれらに由来し、特に、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリプロピレンオキシド)ブロックコポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ポリスクロース、ヒアルロン酸、デキストラン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、オボアルブミン、それらのコポリマー、およびそれらの組合せからなるか、またはそれらに由来し、これらの全ては、好ましくは、公知の技術に従って程度を変えて架橋されているか、または当業者には明らかなその変形である。例えば、米国特許第8,815,277号、第8,808,730号、第8,754,564号、第8,691,279号を参照されたい。一部の実施形態では、架橋ヒアルロン酸ハイドロゲル(任意選択的にゼラチンおよび/またはコラーゲンなどの追加のポリマーを含む)が好ましい。
【0039】
1.皮膚構築物およびそれを製造する方法
一部の実施形態では、本発明の皮膚構築物は、
(a)任意選択的に、基材(例えば、多孔質ポリマーメッシュなどの不活性基材、コラーゲンなど、または治療を必要とする対象の創傷)上に、第1のハイドロゲル担体中に生きた哺乳動物脂肪細胞(例えば、誘導された前脂肪細胞)および任意選択的に生きた哺乳動物内皮細胞を含む第1の(「皮下組織様」)層を積層するステップ、
(b)存在する場合は前記第1の層上に(または前記第1の層が存在しない場合は前記基材上に)第2の(「真皮様」)層を積層するステップであって、前記第2の層は、生きた哺乳動物線維芽細胞および生きた哺乳動物毛乳頭細胞、ならびに任意選択的に生きた哺乳動物内皮細胞を第2のハイドロゲル担体中に含む、ステップならびに
(c)前記第2の層上に第3の(「表皮様」)層を積層するステップであって、前記第3の層は、生きた哺乳動物角化細胞、生きた哺乳動物メラニン細胞、および生きた哺乳動物免疫細胞(例えば、CD14+単球)を第3のハイドロゲル担体中に含む、ステップ
によって製造されてもよい。
【0040】
第1、第2および/または第3のハイドロゲル担体は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
これらのステップは逆にしてもよく、すなわち、表皮様層を積層し、次いで真皮様層を積層し、任意選択的に皮下組織様層を積層してもよい。
【0042】
本明細書で使用される「免疫細胞」には、CD14+単球、ランゲルハンス細胞、真皮樹状細胞、またはそれらのうちの2つ以上の組合せが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、免疫細胞は、形成された構築物中のランゲルハンス細胞および真皮樹状細胞の両方を含み、例えば、3、4、5、6、7、または8週間以上インビトロで培養した後に、CD14+単球はランゲルハンス細胞および真皮樹状細胞の両方に分化してもよい。
【0043】
一部の実施形態では、皮下組織様層、真皮様層、またはその両方が、生きた哺乳動物内皮細胞を含む。
【0044】
一部の実施形態では、構築物は、目に見える色素沈着を有する(例えば、3、4、5、6、7、または8週間の培養後)、すなわち、裸眼/肉眼のヒトの目に見える(
図2参照)。
【0045】
一部の実施形態では、構築物は、層を成した三層の構築物である。
【0046】
一部の実施形態では、構築物は、インビトロで毛包構造組織(それぞれサイトケラチン14陽性およびサイトケラチン71陽性であることによって示される場合がある内毛根鞘および外毛根鞘)を有し、および/またはプロミニン-1について陽性である(メラニン細胞/色素沈着を示す)。
【0047】
一部の実施形態では、構築物に取り入れられる1つまたは複数の細胞タイプが提供され、および/または球状体として培養される。一部の実施形態では、脂肪細胞が提供され、および/または球状体として培養される。一部の実施形態では、内皮細胞が提供され、および/または球状体として培養される。一部の実施形態では、脂肪細胞が提供され、および/または内皮細胞との共培養で球状体として培養される。一部の実施形態では、毛乳頭細胞が提供され、および/または球状体として培養される。一部の実施形態では、線維芽細胞が提供され、および/または球状体として培養される。一部の実施形態では、線維芽細胞が提供され、および/または内皮細胞との共培養で球状体として培養される。一部の実施形態では、角化細胞が提供され、および/または球状体として培養される。一部の実施形態では、メラニン細胞が提供され、および/または球状体として培養される。一部の実施形態では、免疫細胞が提供され、および/または球状体として培養される。一部の実施形態では、1つまたは複数の細胞タイプは提供されず、および/または球状体として培養されない。例えば一部の実施形態では、角化細胞、メラニン細胞、および/または免疫細胞は提供されず、および/または球状体として培養されない。
【0048】
本明細書で使用される「球状体」とは、一般的に、担体媒体中で、三次元または多層の構成に配置された(二次元または単層培養とは対照的な)生細胞の組成物を表す。球状体培養は、例えば、適切な細胞培養器を用いて行うことができる。BennettらのUS2014/0322806を参照されたい。
【0049】
一部の実施形態では、球状体は、直径が約100μm、200μm、または350μmから約500μm、750μm、または1,000μmであり、例えば、約100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1000μmである。球状体は、合計して約1,500、2,000、5,000、10,000、25,000、または50,000個の細胞から、合計して約100,000、500,000、100万、200万、または500万個の細胞を含んでもよい。
【0050】
球状体の好適な担体媒体としては、本発明の組成物(例えば、本発明のハイドロゲル、例えば、架橋ハイドロゲル)が挙げられる。
【0051】
特に、一部の実施形態では、皮膚構築物は、
(a)任意選択的に、脂肪細胞および内皮細胞を球状体として共培養し、球状体を第1のハイドロゲル担体に取り入れて皮下バイオインクを形成し、基材上に皮下バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第1の(皮下組織様)層を形成するステップ、
(b)毛乳頭細胞を球状体として培養し、独立して、内皮細胞および線維芽細胞を球状体として共培養し、球状体を第2のハイドロゲル担体に取り入れて真皮バイオインクを形成し、存在する場合には皮下組織様層上に、または存在しない場合には基材上に、真皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第2の(真皮様)層を形成するステップ、ならびに
(c)角化細胞、メラニン細胞および免疫細胞を第3のハイドロゲル担体に取り入れて、表皮バイオインクを形成し、真皮様層上に表皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第3の(表皮様)層を形成するステップ
によって製造されてもよい。
【0052】
あるいは、一部の実施形態では、皮膚構築物は、
(a)角化細胞、メラニン細胞および免疫細胞を第3のハイドロゲル担体に取り入れて、表皮バイオインクを形成し、基材上に表皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第3の(表皮様)層を形成するステップ、
(b)毛乳頭細胞を球状体として培養し、独立して、内皮細胞および線維芽細胞を球状体として共培養し、球状体を第2のハイドロゲル担体に取り入れて真皮バイオインクを形成し、表皮様層上に真皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第2の(真皮様)層を形成するステップ、ならびに
(c)任意選択的に、脂肪細胞および内皮細胞を球状体として共培養し、球状体を第1のハイドロゲル担体に取り入れて皮下バイオインクを形成し、真皮様層上に皮下バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第1の(皮下組織様)層を形成するステップ
によって製造されてもよい。
【0053】
一部の実施形態では、第1のハイドロゲル担体は、積層されると、予備重合または部分的に重合された形態で積層され、第2のハイドロゲル担体は、予備重合または部分的に重合された形態で積層され、および/または第3のハイドロゲル担体は、予備重合または部分的に重合された形態で積層される。
【0054】
一部の実施形態では、積層ステップ(a)および(b)は、存在する場合、前記第1の層の前記第1のハイドロゲルと前記第2の層の前記第2のハイドロゲルとが少なくとも部分的に互いに架橋する条件下で行われ、ならびに/または、前記積層ステップ(b)および(c)は、前記第2の層の前記第2のハイドロゲルと前記第3の層の前記第3のハイドロゲルとが少なくとも部分的に互いに架橋する条件下で行われる。層は、直接、または介在する架橋可能な層を介して架橋されていてもよい。
【0055】
一部の実施形態では、第1、第2、および/もしくは第3のハイドロゲル担体は、架橋されたヒアルロン酸を含み、ならびに/または第2および/もしくは第3のハイドロゲル担体は、任意選択的に、しかし好ましくは、ゼラチンおよび/もしくはコラーゲンをさらに含む。
【0056】
一部の実施形態では、積層は、第2と第3の層とが少なくとも部分的に互いに架橋し、および/または第1の層と第2の層とが少なくとも部分的に互いに架橋する条件下で行われ、一般的には、積層ステップを十分に近い時間で行うことによって、2つの層の間で架橋反応が起こり得る。
【0057】
一部の実施形態では、部分的または完全な介在層、例えば介在ハイドロゲル層が、第1と第2のハイドロゲル層との間、および/または第2と第3のハイドロゲル層との間に置かれ、第1および第2のハイドロゲル層、ならびに/または第2および第3のハイドロゲル層が、それらのそれぞれの介在ハイドロゲル層と任意選択的に架橋された状態で置かれ得る。「部分的な」介在層とは、層が、第1と第2および/または第2と第3の層が互いに直接接触する空いた部分をその中に有することを意味する。さらに、以下に記載されるような追加の細胞タイプが、任意選択的にそのような介在層とともに積層されてもよい。これらの介在層のハイドロゲルは、存在する場合、第1、第2、および/または第3のハイドロゲル層と同じ材料で形成されてもよく、それらの層と同様に、部分的に架橋された形態で積層されてもよい。
【0058】
一部の実施形態では、(i)前記第1の層は、存在する場合、100、200または300マイクロメートルから400、600または800マイクロメートルまでの厚さを有し、(ii)前記第2の層は、100、200または300マイクロメートルから400、600または800マイクロメートルまでの厚さを有し、(iii)前記第3の層は、100、200または300マイクロメートルから400、600または800マイクロメートルまでの厚さを有し、および/あるいは(iv)前記構築物は、前記第1の層が存在しない場合、合計約200、400もしくは600マイクロメートルから800、1200もしくは1600マイクロメートルまでの厚さを有し、または前記第1の層が存在する場合、合計300、600もしくは900マイクロメートルから1200、1800もしくは2400マイクロメートルまでの厚さを有する。
【0059】
一部の実施形態では、存在する場合の第1の層、前記第2の層、および前記第3の層のそれぞれは、0.5、1または10平方センチメートルから50、200または400平方センチメートルまでの重なる表面積を有する。
【0060】
細胞は、任意の適量で含まれていてもよい。一部の実施形態では、(i)前記脂肪細胞(および存在する場合は内皮細胞)は、100万または200万から800万、1000万、1500万または2000万(好ましくは400万から600万または1000万から2000万)個の細胞/立方センチメートルの量で前記第1のハイドロゲル担体中に含まれ、ならびに/あるいは(ii)前記線維芽細胞および前記毛乳頭細胞は、約8:1もしくは6:1から2:1もしくは1:1(好ましくは5:1から3:1)の比率で、および/または約500万もしくは800万から1500万、2000万、2500万もしくは3000万(好ましくは約1000万または約2000~2500万)個の細胞/立方センチメートルの複合密度(存在する場合は内皮細胞と)で、前記第2のハイドロゲル担体中に含まれ、ならびに/あるいは、(iii)前記角化細胞および前記メラニン細胞は、約20:1もしくは10:1から8:1、5:1、3:1もしくは2:1(好ましくは12:1から3:1)の比率で、および/または約500万もしくは800万から1500万、2000万、2500万、3000万もしくは3500万(好ましくは約1000万または約2000~3000万)個の細胞/立方センチメートルの複合密度(存在する場合は免疫細胞と)で前記第3のハイドロゲル担体中に含まれる。一部の実施形態では、内皮細胞は、線維芽細胞に対して約2:1、1:1、または1:2の比率で真皮様層に存在する。一部の実施形態では、免疫細胞は、表皮様層の全細胞の1%または2%から10%または15%の量で含まれる。
【0061】
細胞は、確立された培養物、ドナー、またはそれらの組合せから入手してもよい。一部の実施形態では、前記生きた哺乳動物脂肪細胞はヒト脂肪細胞であり、前記生きた哺乳動物線維芽細胞はヒト線維芽細胞であり、前記生きた哺乳動物毛乳頭細胞はヒト毛乳頭細胞であり、前記生きた哺乳動物角化細胞はヒト角化細胞であり、前記生きた哺乳動物内皮細胞はヒト内皮細胞であり、前記生きた哺乳動物免疫細胞はヒト免疫細胞であり、および/または前記生きた哺乳動物メラニン細胞はヒトメラニン細胞である。
【0062】
一部の実施形態では、構築物は、前記第1、第2および/または第3の層の中、および/または間にある神経細胞またはその前駆体をさらに含んでもよい(例えば、総量100万または200万から800万または1000万(好ましくは400万から600万)個の細胞/立方センチメートル)。その前駆体を含む神経細胞が知られている。例えば、米国特許第6,001,654号および第8,785,187号を参照されたい。
【0063】
一部の実施形態では、構築物は、1~5ミリメートル、または3~7ミリメートル、または5~10ミリメートル、または8~16ミリメートル、または10~20ミリメートル、または20~50ミリメートル、または30~80ミリメートル、または50~100ミリメートルの直径または幅を有する。
【0064】
積層は、噴霧法、スプレッディング/塗装、コーティングなどを含むがこれらに限定されない、任意の適切な技術によって行うことができる。一部の好ましい実施形態では、積層ステップは、「インクジェット」タイプの印刷およびシリンジ注射タイプの印刷の両方を含む任意の適切な技術に従って、印刷またはバイオプリンティングによって行われる。このようなバイオプリンティングを実施するための装置は知られており、例えば、Bolandらの米国特許第7,051,654号、Yooらの米国特許出願公開第US2009/0208466号、およびKangらの米国特許出願公開第US2012/0089238号に記載されている。
【0065】
不活性基材上に積層された場合、上記の構築物は、そこから除去され、直ちに使用されてもよく、または任意の適切な培養培地中でインビトロでその支持体上に維持され、さらに増殖させてもよい。構築物は、適切な栄養素および/または培養培地とともに、所望により、その後の使用のための無菌容器またはパッケージに包装(支持体の有無にかかわらず、または別の支持体に移動)してもよい。
【0066】
支持体は、多孔質または非多孔質であってもよい。例えば、構築物、例えば、層の1つまたは複数の生きた細胞へ拡散するために、支持体は培地栄養素を透過する多孔質フィルター、膜、またはメッシュであってもよい。
【0067】
2.創傷治療における使用方法
対象の火傷、切開(外科的切開を含む)、擦過傷、裂傷などの創傷は、本明細書に記載の皮膚構築物を、治療効果のある量および/または構成(例えば、創傷の治癒を助けるために創傷を十分に覆うか、または重ねる)で、その創傷に局所的に適用することによって治療され得る。深くない火傷など、傷の性質によっては、第1の「皮下組織様」層が不要な場合がある。適切な対象には、ヒト対象、および獣医学的(獣医学および医薬スクリーニングを含む)目的のための他の動物(一般的には哺乳動物)対象(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなど)の両方が含まれる。
【0068】
一部の実施形態では、創傷は、額、眉間、鼻根点、鼻(例えば、鼻梁、鼻孔点(rhinion)、鼻尖(infatip lobule)、鼻尖上部(supratip)、鼻橋、鼻翼側壁(alar-sidewall))、鼻唇溝、人中、口唇、下顎、頬、顎、耳(例えば、耳輪、舟状窩、対輪のひだ(antihelical fold)、対輪、対珠、耳垂(lobule)、耳珠、耳甲介、窩(fossa))、眼を取り囲む皮膚(例えば、眼瞼)などの創傷などの顔面創傷であってもよい。
【0069】
一部の実施形態では、皮膚構築物は、創傷治癒のための個別化された形状を提供するために、不活性基材からなるカスタマイズされたモールド上で作製されてもよい。モールドは、CTデータなどの臨床画像データに基づいて作製されてもよく、創傷治癒のための所望の形状および特徴を付与するように任意選択的に変更されてもよい。非限定的な例として、モールドは、本明細書で教示するプリンターから任意選択的に分注されたポリマー材料(例えば、ポリウレタン)から形成されてもよい。一部の実施形態では、創傷は、手術または美容整形手術などの他の医療処置の結果である場合がある。
【0070】
一部の実施形態では、不活性基材上に表皮層が積層され、表皮層上に真皮層が積層され、任意選択的に真皮層上に皮下組織層が積層される(創傷の性質および創傷治療における皮下組織の必要性に応じて)。
【0071】
一部の実施形態では、不活性基材層を含む生きた皮膚構築物は、顔面創傷の複雑な輪郭、形状、および構造にぴったりとフィットするように成形されている。
【0072】
一部の実施形態では、構築物の1つまたは複数の細胞タイプは、治療されるべき対象に対して自家細胞である。一部の実施形態では、構築物の1つまたは複数の細胞タイプは、治療されるべき対象に対して同種細胞である。
【0073】
3.化合物試験における使用方法
本明細書に記載の皮膚構築物は、化合物または組成物のスクリーニング(例えば、有効性、毒性、浸透、刺激、免疫応答、または他の代謝もしくは生理学的活性のスクリーニング)のための生きた動物試験の代替として使用され得る。そのような試験は、本明細書に記載の皮膚代替構築物を、その構築物の構成細胞を生きた状態に維持する条件下で(例えば、酸素添加培養培地中で)用意すること、試験する化合物または組成物(例えば、典型的にはビヒクルまたは担体中に提供される薬物候補、石鹸または化粧品などの外用組成物など)をその構築物に適用すること(例えば、前記第3の層への局所適用によって)、および次いで前記皮膚代替構築物に対する生理学的応答(例えば、損傷、瘢痕組織形成、刺激、浸透、細胞増殖など)を検出すること(例えば、火傷、細胞死、ヒスタミン放出などのマーカー放出、サイトカイン放出、遺伝子発現の変化など)によって実施することができ、そのような生理学的応答が存在することは、前記化合物または組成物が哺乳動物対象の皮膚に適用された場合に、前記化合物または組成物は治療効果、毒性、刺激、浸透、または他の代謝もしくは生理学的活性を有することを示す。代替された皮膚の対照サンプルは、対照化合物または組成物(例えば、生理食塩水、化合物ビヒクルまたは担体)が適用され得るような条件で維持されてもよく、そのため比較結果が得られ、あるいは過去のデータとの比較、または試験化合物もしくは組成物の希釈レベルの適用によって得られたデータとの比較などに基づいて損傷を決定することができる。
【0074】
一部の実施形態では、皮膚構築物は、細胞培養インサートなどの細胞培養皿(例えば、シャーレ、2ウェルプレート、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、48ウェルプレート、96ウェルプレートなど)に配置するように構成されたインサート上に形成され、および/または提供される。細胞培養インサートは知られており、例えば、米国特許第5,652,142号、第5,578,492号、第5,468,638号、第5,470,473号などに記載されている。
【0075】
以下の非限定的な実施例では、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0076】
[実施例1]
7種類の細胞タイプを用いた改善されたバイオプリント皮膚
表皮、真皮、および皮下組織を含む、層を成した三層構造を有する、バイオプリント全層ヒト皮膚構築物を開発した。バイオプリント皮膚構築物は、毛包付属器官、微小血管系、免疫細胞、および色素沈着を含み、天然のヒト皮膚に構造的に類似している。
【0077】
全層のヒト皮膚を、7種類の異なる細胞タイプ:角化細胞、メラニン細胞、CD14+単球、真皮線維芽細胞、真皮微小血管内皮細胞、毛乳頭細胞、および脂肪細胞でバイオプリントした。ヒアルロン酸(HA)とゼラチン(各1%)、およびヒトコラーゲン(10%)を4アームポリエチレングリコール架橋剤(HyStemハイドロゲルキット)で架橋したハイドロゲル中に細胞を供給した。
【0078】
簡単に述べれば、まず、皮下組織を印刷し、印刷の48時間前に、脂肪細胞と内皮細胞を球状体として共培養し、ハイドロゲルに取り入れる。真皮印刷のために、印刷の48時間前に、毛乳頭細胞、ならびに独立して内皮細胞および線維芽細胞を球状体として共培養し、次いで、線維芽細胞、内皮-線維芽細胞および毛包球状体を含む真皮層を印刷する。最後に、角化細胞、メラニン細胞、CD14+単球を含む表皮層が真皮の上に印刷される。しかし、層印刷を逆の順序で行ってもよい。
【0079】
印刷した構築物を、4日間浸水条件下で培養した後、表皮の層別化を促進するために気液界面で培養する。インビトロでは、バイオプリント皮膚構築物は、表皮、真皮、および皮下組織を有する層を成した三層構造を示した。
【0080】
3週間まで、インビトロでは外毛根鞘と内毛根鞘を有する毛包組織が観察された。56日間の培養後、皮膚構築物はその構造組織を維持し、個々の細胞タイプは生存可能であり、構築物内の特定の領域に局在したままであった。
【0081】
皮膚構築物は、裸眼で見える色素沈着を有し(
図2参照)、免疫細胞、内皮細胞の存在を示し、毛包構造組織を有していた。特に、56日目に表皮は樹状細胞(DC-SIGN陽性)およびランゲルハンス細胞(ランゲリン陽性)について陽性であった。毛包構造組織は、サイトケラチン14陽性(外毛根鞘)、およびサイトケラチン71陽性(内毛根鞘)であることによって示されるように、内毛根鞘と外毛根鞘を含んでいた。
【0082】
生理学的には、組織は様々な種類の細胞で構成されており、一般的にはニッチの中で互いに極めて接近して生きている。本研究で使用した細胞の球状体培養は、異なる種類の細胞間のより大きい相互作用を促進し、長期間にわたって観察された維持の向上に寄与する場合がある。また、この細胞は、毛包などの特定の構造に分化する可能性がより高いことも観察されている。
【0083】
これらのバイオプリント構築物では、生存率が延長され、異なる細胞の分化の状態は、8週間にわたって強化された。メラニン細胞の場合には、8週間の培養で細胞の生存率が継続的であるだけでなく、バイオプリント構築物上にメラニン色素産生が明確に見える(
図2)。培養中のこのような変更の前に、色素沈着が培養の第1週の後に有意に減少することが観察され、長期的に維持することができなかった。
【0084】
また、免疫細胞は8週間後も生存可能であることがわかり、数が減少しているようには見えない。さらに、ランゲルハンス細胞に加えて、真皮樹状細胞への分化が認められた。以前の研究では、1週間の培養後に免疫細胞の数が減少することが観察されていた。
【0085】
球状体培養技術はまた、毛乳頭細胞の生存率が延長し、それらがインビトロで内毛根鞘および外毛根鞘構造へ分化することを示した。さらに、真皮微小血管内皮細胞は生存可能であり、8週間の培養期間においてその存在が維持されていることが観察される。理論に縛られることを望むものではないが、異なる細胞タイプの球状体を取り入れた後にバイオプリント構築物で観察されたこれらの顕著に異なる効果は、これらの細胞が周囲の微小環境においてさらされている分泌因子に起因するのかもしれない。
【0086】
結論として、バイオプリント皮膚構築物は、ヒト細胞を用いてバイオプリントし、天然のヒト皮膚と同様に、免疫細胞と色素沈着を有する表皮、毛包を有する真皮、および皮下組織を含む層を成した三層構造にインビトロで成熟させたものである。
【0087】
[実施例2]
バイオプリント皮膚構築物のさらなる特性評価
染色は、CD14+単球で構築物をバイオプリントした後、5日目にランゲルハンス(ランゲリン+)細胞と真皮樹状細胞(DC-SIGN)が存在することを示した。内毛根鞘(KRT71)、外毛根鞘(KRT14)および内皮細胞(CD31)も5日目に認められた。
【0088】
21日目に、構築物は、外毛根鞘(KRT14)と内皮細胞(CD31)について陽性染色された。このことは、バイオプリント皮膚構築物は、免疫応答性があり、内皮構造を形成することができ、毛包組織をサポートできることを示している。さらに、MEL5染色は、構築物全体で多数のメラニン細胞の存在を示した。また、メラニン細胞は毛包様構造物と共局在しており、毛包様構造物の色素沈着を示唆している。
【0089】
図3は、4日目および15日目におけるバイオプリント皮膚構築物の層状の構成を示す。染色は、構築物が4日目と15日目にパンサイトケラチンについて陽性であったことを示した。
【0090】
[実施例3]
火傷創傷の治療のための7種類の細胞タイプを用いたバイオプリント皮膚
方法。異なる細胞タイプを、商業的販売業者から調達し、適切な細胞数を達成するために培養して増殖させる。それらの特定の増殖培地で増殖させた細胞タイプのそれぞれを、トリプシン処理し、均質に細胞懸濁液に分散させ、これは、層と層とを重ねる3Dバイオプリンティングのためのバイオインクに取り入れられている。3Dバイオプリンティングに使用されるバイオインクは、ヒアルロン酸(3mg/mL)、ゼラチン(35mg/mL)、グリセロール(100μL/mL)、フィブリノーゲン(30mg/mL)、および細胞から構成され、これは3Dバイオプリンティング後にトロンビン(20μL/mL)で架橋される。構築物の3Dバイオプリンティングは、以前に記載したように行う。皮下組織印刷のために、脂肪細胞(30×106細胞/mL)を、バイオインクに取り入れる。真皮の印刷のために、予めハンギングドロップ培養で48時間増殖させた毛包球状体としての線維芽細胞(30×106細胞/mL)、内皮細胞(15×106細胞/mL)および毛乳頭細胞(15×106細胞/mL)をバイオインクに取り入れる。表皮印刷には、角化細胞(40×106細胞/mL)、メラニン細胞(8×106細胞/mL)、および免疫細胞(2×106細胞/mL)を使用する。構築物は、3cm×3cmの寸法で印刷されている。印刷後、構築物を4日間浸水培養下で成熟させ、その後、それらをヌードマウスの背中の2.5cm×2.5cmの切除創に移植する。これらのマウスを、その後、7週目を除く各週の時点で、8週間まで追跡する。
【0091】
予備的なデータによると、バイオプリント皮膚構築物は、バイオプリントゲルのみおよび治療を行わない創傷の対照と比較して、より迅速な創傷閉鎖を強化することが示されている。治癒率は対照と比較して、バイオプリント群で有意に速かった。バイオプリント皮膚は、対照と比較して、創傷の上により厚い層を成した表皮を形成することを促進した。
【0092】
上記は本発明の例示的なものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。本発明は、以下の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の均等物はそこに含まれる。
出願時の特許請求の範囲は以下の通り。
[請求項1]
任意選択的に、生きた哺乳動物脂肪細胞(例えば、誘導された前脂肪細胞)、および任意選択的に生きた哺乳動物内皮細胞(例えば、真皮微小血管内皮細胞)を第1のハイドロゲル担体中に含む第1の(「皮下組織様」)層と、
存在する場合、前記第1の層上の、または前記第1の層と直接接触する第2の(「真皮様」)層であって、生きた哺乳動物線維芽細胞、生きた哺乳動物毛乳頭細胞、および任意選択的に生きた哺乳動物内皮細胞(例えば、真皮微小血管内皮細胞)を第2のハイドロゲル担体中に組み合わせて含む第2の層と、
前記第2の層上の、または前記第2の層と直接接触する第3の(「表皮様」)層であって、生きた哺乳動物角化細胞、生きた哺乳動物メラニン細胞、および生きた哺乳動物免疫細胞(例えば、CD14+単球、ランゲルハンス細胞、真皮樹状細胞、またはそれらのうちの2つ以上の組合せ)を、第3のハイドロゲル担体中に組み合わせて含む、第3の層と
を含み、
前記構築物は、目に見える色素沈着を有する(例えば、3、4、5、6、7、または8週間の培養後)、人工哺乳動物皮膚構築物。
[請求項2]
前記第3の層の生きた哺乳動物免疫細胞がランゲルハンス細胞および真皮樹状細胞を含む、請求項1に記載の構築物。
[請求項3]
前記皮下組織様層、前記真皮様層、またはその両方が、前記生きた哺乳動物内皮細胞を含む、請求項1または請求項2に記載の構築物。
[請求項4]
前記皮下組織様層および前記真皮様層の両方が、前記生きた哺乳動物内皮細胞を含む、請求項1または請求項2に記載の構築物。
[請求項5]
層を成した三層の構築物である、請求項1から4のいずれか1項に記載の構築物。
[請求項6]
インビトロで毛包構造組織(サイトケラチン14陽性およびサイトケラチン71陽性であることによって示される場合がある内毛根鞘および外毛根鞘)を有し、および/またはプロミニン-1について陽性である、請求項1から5のいずれか1項に記載の構築物。
[請求項7]
前記第1、第2、および/もしくは第3のハイドロゲル担体が、架橋されたヒアルロン酸(例えば、ポリエチレングリコール架橋剤で架橋された)を含み、ならびに/または前記第1、第2、および/もしくは第3のハイドロゲル担体が、任意選択的にコラーゲン(例えば、5、8、10、または15重量%)、および/もしくはゼラチン(例えば、0.5、1、2、3または5重量%)をさらに含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の構築物。
[請求項8]
(i)前記第1の層が、存在する場合、100、200または300マイクロメートルから400、600または800マイクロメートルまでの厚さを有し、
(ii)前記第2の層が、100、200または300マイクロメートルから400、600または800マイクロメートルまでの厚さを有し、
(iii)前記第3の層が、100、200または300マイクロメートルから400、600または800マイクロメートルまでの厚さを有し、および/あるいは
(iv)前記構築物が、前記第1の層が存在しない場合、合計約200、400もしくは600マイクロメートルから800、1200もしくは1600マイクロメートルまでの厚さを有し、または前記第1の層が存在する場合、合計300、600もしくは900マイクロメートルから1200、1800もしくは2400マイクロメートルまでの厚さを有する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の構築物。
[請求項9]
存在する場合の前記第1の層、前記第2の層、および前記第3の層のそれぞれが、0.5、1または10平方センチメートルから50、200または400平方センチメートルまでの重なる表面積を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の構築物。
[請求項10]
(i)前記脂肪細胞および前記内皮細胞が、存在する場合、前記第1のハイドロゲル担体中に、約2:1、1:1、もしくは1:2の比率で、および/または約100万もしくは200万から800万、1000万、もしくは2000万個の細胞/立方センチメートルの複合密度で含まれ、ならびに/あるいは
(ii)前記線維芽細胞および前記毛乳頭細胞が、前記第2のハイドロゲル担体中に約8:1もしくは6:1から2:1もしくは1:1の比率で含まれ、前記内皮細胞が、前記第2のハイドロゲル担体中に前記線維芽細胞に対して約2:1、1:1もしくは1:2の比率で存在し、および/または前記細胞が、約500万もしくは800万から1500万、2000万、2500万もしくは3000万個の細胞/立方センチメートルの複合密度であり、ならびに/あるいは
(iii)前記角化細胞および前記メラニン細胞が、約20:1もしくは10:1から8:1、5:1、3:1もしくは2:1の比率で、および/または約500万もしくは800万から1500万、もしくは2000万、2500万、3000万もしくは3500万個の細胞/立方センチメートルの複合密度で前記第3のハイドロゲル担体中に含まれ、前記免疫細胞が、前記表皮様層の全細胞の1%または2%から10または15%の量で含まれる、
請求項1から9のいずれか1項に記載の構築物。
[請求項11]
前記生きた哺乳動物脂肪細胞がヒト脂肪細胞であり、前記生きた哺乳動物線維芽細胞がヒト線維芽細胞であり、前記生きた哺乳動物毛乳頭細胞がヒト毛乳頭細胞であり、前記生きた哺乳動物角化細胞がヒト角化細胞であり、前記生きた哺乳動物メラニン細胞がヒトメラニン細胞であり、前記生きた哺乳動物内皮細胞がヒト内皮細胞であり、前記生きた哺乳動物免疫細胞がヒト免疫細胞である、請求項1から10のいずれか1項に記載の構築物。
[請求項12]
(a)任意選択的に、前記脂肪細胞および内皮細胞を球状体として共培養し、前記球状体を前記第1のハイドロゲル担体に取り入れて皮下バイオインクを形成し、基材上に前記皮下バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)前記第1の(皮下組織様)層を形成するステップと、
(b)前記毛乳頭細胞を球状体として培養し、独立して、前記内皮細胞および前記線維芽細胞を球状体として共培養し、前記球状体を前記第2のハイドロゲル担体に取り入れて真皮バイオインクを形成し、存在する場合には前記皮下組織様層上に、または存在しない場合には基材上に、真皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)前記第2の(真皮様)層を形成するステップと、
(c)前記角化細胞、前記メラニン細胞および前記免疫細胞を前記第3のハイドロゲル担体に取り入れて、表皮バイオインクを形成し、前記真皮様層上に前記表皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)前記第3の(表皮様)層を形成するステップと
を含み、それによって前記皮膚構築物を形成する方法によって製造される、請求項1から11のいずれか1項に記載の構築物。
[請求項13]
(a)前記角化細胞、前記メラニン細胞および前記免疫細胞を第3のハイドロゲル担体に取り入れて、表皮バイオインクを形成し、基材上に前記表皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)前記第3の(表皮様)層を形成するステップと、
(b)前記毛乳頭細胞を球状体として培養し、独立して、前記内皮細胞および前記線維芽細胞を球状体として共培養し、前記球状体を前記第2のハイドロゲル担体に取り入れて真皮バイオインクを形成し、前記表皮様層上に前記真皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)前記第2の(真皮様)層を形成するステップと、
(c)任意選択的に、前記脂肪細胞および前記内皮細胞を球状体として共培養し、前記球状体を前記第1のハイドロゲル担体に取り入れて皮下バイオインクを形成し、前記真皮様層上に前記皮下バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)前記第1の(皮下組織様)層を形成するステップと
を含み、それによって前記皮膚構築物を形成する方法によって製造される、請求項1から11のいずれか1項に記載の構築物。
[請求項14]
前記積層がバイオプリンティング(例えば、「インクジェット」タイプの印刷および/またはシリンジ注射タイプの印刷)によって行われる、請求項12または請求項13に記載の構築物。
[請求項15]
それを必要とする対象の創傷を治療する方法であって、請求項1から14のいずれか1項に記載の皮膚構築物を治療効果のある量および/または構成で前記創傷に局所的に適用することを含み、任意選択的に前記構築物の前記細胞が自家細胞または同種細胞である、方法。
[請求項16]
前記皮膚構築物が、前記第3の層上に、または前記第3の層と接触する不活性モールド層をさらに含む、請求項15に記載の方法。
[請求項17]
前記不活性モールド層が、顔面創傷にカスタムフィットするように寸法決めされている(例えば、スキャンデータに基づいて)、請求項16に記載の方法。
[請求項18]
前記顔面創傷が、額、眉間、鼻根点、鼻(例えば、鼻梁、鼻孔点、鼻尖、鼻尖上部、鼻橋、鼻翼側壁)、鼻唇溝、人中、口唇、下顎、頬、顎、耳(例えば、耳輪、舟状窩、対輪のひだ、対輪、対珠、耳垂、耳珠、耳甲介、窩)、および/または眼を取り囲む皮膚(例えば、眼瞼)の創傷である、請求項17に記載の方法。
[請求項19]
前記不活性モールド層がポリウレタンを含む、請求項15から18のいずれか1項に記載の方法。
[請求項20]
前記不活性モールド層が多孔質である、請求項15から19のいずれか1項に記載の方法。
[請求項21]
哺乳動物対象の皮膚に適用したときの活性について化合物または組成物をスクリーニングする方法であって、
請求項1から14のいずれか1項に記載の皮膚構築物を、前記構築物の構成細胞を生きた状態に維持する条件下で準備するステップと、
前記構築物に前記化合物または組成物を接触させるステップと、次いで
前記皮膚構築物の応答を検出するステップと
を含み、そのような応答が存在することは、前記化合物または組成物が哺乳動物対象の皮膚に適用された場合に潜在的に活性であることを示す、方法。
[請求項22]
前記応答が免疫応答(例えば、サイトカイン放出)を含む、請求項21に記載の方法。
[請求項23]
皮膚構築物を製造する方法であって、
(a)任意選択的に、脂肪細胞および内皮細胞を球状体として共培養し、前記球状体を第1のハイドロゲル担体に取り入れて皮下バイオインクを形成し、基材上に前記皮下バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第1の(皮下組織様)層を形成するステップと、
(b)毛乳頭細胞を球状体として培養し、独立して、内皮細胞および線維芽細胞を球状体として共培養し、前記球状体を第2のハイドロゲル担体に取り入れて真皮バイオインクを形成し、存在する場合には前記皮下組織様層上に、または存在しない場合には基材上に、前記真皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第2の(真皮様)層を形成するステップと、
(c)角化細胞、メラニン細胞および免疫細胞を第3のハイドロゲル担体に取り入れて、表皮バイオインクを形成し、前記真皮様層上に前記表皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第3の(表皮様)層を形成するステップと
を含み、それによって前記皮膚構築物を製造する方法。
[請求項24]
皮膚構築物を製造する方法であって、
(a)角化細胞、メラニン細胞および免疫細胞を第3のハイドロゲル担体に取り入れて、表皮バイオインクを形成し、基材上に前記表皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第3の(表皮様)層を形成するステップと、
(b)毛乳頭細胞を球状体として培養し、独立して、内皮細胞および線維芽細胞を球状体として共培養し、前記球状体を第2のハイドロゲル担体に取り入れて真皮バイオインクを形成し、前記表皮様層上に前記真皮バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第2の(真皮様)層を形成するステップと、
(c)任意選択的に、脂肪細胞および内皮細胞を球状体として共培養し、前記球状体を第1のハイドロゲル担体に取り入れて皮下バイオインクを形成し、前記真皮様層上に前記皮下バイオインクを積層して(例えば、バイオプリンティングによって)第1の(皮下組織様)層を形成するステップと
を含み、それによって前記皮膚構築物を製造する方法。
[請求項25]
前記積層がバイオプリンティング(例えば、「インクジェット」タイプの印刷および/またはシリンジ注射タイプの印刷)によって行われる、請求項23または請求項24に記載の方法。
[請求項26]
前記基材が不活性な基材である、請求項23から25のいずれか1項に記載の方法。
[請求項27]
前記基材が、治療を必要とする対象(例えば、ヒト対象)の創傷であり、任意選択的に、前記細胞が自家細胞または同種細胞である、請求項23から25のいずれか1項に記載の方法。
[請求項28]
浸水条件下、インビトロで前記皮膚構築物を培養するステップと、次いで、前記表皮様層が空気にさらされた状態で、気液界面で、前記皮膚構築物の表皮層別化を促進するのに十分な時間培養するステップとをさらに含む、請求項23から26のいずれか1項に記載の方法。