(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】鉄筋籠組立用のねじれ防止金具、およびこれを備える鉄筋籠
(51)【国際特許分類】
E02D 5/34 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
E02D5/34 Z
(21)【出願番号】P 2021203123
(22)【出願日】2021-12-15
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】508283875
【氏名又は名称】株式会社恵信工業
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【氏名又は名称】多田 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】230108279
【氏名又は名称】井上 裕史
(72)【発明者】
【氏名】林 義信
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-106113(JP,A)
【文献】特開2004-353314(JP,A)
【文献】特開2004-003282(JP,A)
【文献】特開2013-083129(JP,A)
【文献】特開2016-180267(JP,A)
【文献】特開2005-344321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22-5/80
E04C 5/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主筋部材に沿って延びるとともに、前記主筋部材が嵌め込まれる主筋嵌込空間を有している本体部と、
前記本体部における前記主筋嵌込空間の開口端から前記主筋部材が延びる方向に対して直交する方向に突出しており、補強枠の側面に当接する突出部とを有
しており、
前記本体部には、前記本体部における前記主筋嵌込空間の前記開口とは反対側をUボルトの凹所に嵌め込んだとき、前記Uボルトの側部に対向する位置に本体部切欠が形成されている
鉄筋籠組立用のねじれ防止金具。
【請求項2】
前記本体部には、前記本体部における前記主筋嵌込空間の前記開口とは反対側をUボルトの凹所に嵌め込んだとき、前記Uボルトの最奥部に対向する位置に本体部切欠が形成されている
請求項
1に記載のねじれ防止金具。
【請求項3】
前記本体部には、連通孔が形成されている。
請求項1
または2に記載のねじれ防止金具。
【請求項4】
前記補強枠の背面側に配置され、前記突出部の先端が嵌め込まれる当接部先端収容孔を有する背面板材をさらに有している
請求項1から
3のいずれか1項に記載のねじれ防止金具。
【請求項5】
前記本体部または前記突出部と前記補強枠とが接着される
請求項1から
4のいずれか1項に記載のねじれ防止金具。
【請求項6】
前記主筋嵌込空間を臨む前記本体部の内面には、前記主筋部材の表面に形成された凸部に係合する係合部が形成されている
請求項1から
5のいずれか1項に記載のねじれ防止金具。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載のねじれ防止金具を備える
鉄筋籠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンクリート杭に使用される鉄筋籠を組み立てる際に用いられるねじれ防止金具、およびこれを備える鉄筋籠に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、高層建築物や橋梁を支える鉄筋コンクリート杭の構築方法として、当該鉄筋コンクリート杭を設置する場所に杭穴を掘削し、当該杭穴にせん断補強用に用いられる構造体である鉄筋籠を設置した後、当該鉄筋籠の周囲に型枠等を組み、型枠内にコンクリートを打設する方法が採用されている。
【0003】
そして、このような鉄筋籠を組み立てる際に溶接が不要な固定金具が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鉄筋コンクリート杭に使用される鉄筋籠は、その径に対する長さの比が非常に大きいことから、杭穴に鉄筋籠を設置するために当該鉄筋籠を転がして移動させたり、立て起したりする際に、補強枠に対する主筋部材の交差角度が直角から大きくずれることによって、鉄筋籠全体がねじれてしまうことがあった(
図8参照)。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、補強枠に対する主筋部材の交差角度を維持して鉄筋籠全体がねじれるのを防止するための鉄筋籠組立用のねじれ防止金具、およびこれを備える鉄筋籠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の局面に従うと、
主筋部材に沿って延びるとともに、前記主筋部材が嵌め込まれる主筋嵌込空間を有している本体部と、
前記本体部における前記主筋嵌込空間の開口端から前記主筋部材が延びる方向に対して直交する方向に突出しており、補強枠の側面に当接する突出部とを有しており、
前記本体部には、前記本体部における前記主筋嵌込空間の前記開口とは反対側をUボルトの凹所に嵌め込んだとき、前記Uボルトの側部に対向する位置に本体部切欠が形成されている
鉄筋籠組立用のねじれ防止金具が提供される。
【0009】
好適には、
前記本体部には、前記本体部における前記主筋嵌込空間の前記開口とは反対側をUボルトの凹所に嵌め込んだとき、前記Uボルトの最奥部に対向する位置に本体部切欠が形成されている。
【0010】
好適には、
前記本体部には、連通孔が形成されている。
【0011】
好適には、
前記補強枠の背面側に配置され、前記突出部の先端が嵌め込まれる当接部先端収容孔を有する背面板材をさらに有している。
【0012】
好適には、
前記本体部または前記突出部と前記補強枠とが接着される。
【0013】
好適には、
前記主筋嵌込空間を臨む前記本体部の内面には、前記主筋部材の表面に形成された凸部に係合する係合部が形成されている。
【0014】
この発明の他の局面に従うと、
上述したねじれ防止金具を備える鉄筋籠が提供される。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る鉄筋籠組立用のねじれ防止金具は、主筋部材に沿って延びるとともに、当該主筋部材が嵌め込まれる主筋嵌込空間を有している本体部を有しており、この本体部における主筋嵌込空間の開口端から主筋部材に対して直交する方向に突出しており、補強枠の側面に当接する突出部を更に有している。
【0016】
鉄筋籠における、主筋部材と補強枠とが直交交差している位置においてこの主筋嵌込空間に主筋部材を嵌め込むと、突出部が補強枠の側面に当接し得る位置に配置される。
【0017】
鉄筋籠を転がし移動させたり建て起したりする際に、補強枠に対する主筋部材の交差角度が直角から大きくずれようとすると、当該主筋部材とともにねじれ防止金具の本体部が動くので、突出部が補強枠の側面に当接して当該交差角度がそれ以上ずれることが防止される。
【0018】
これにより、補強枠に対する主筋部材の交差角度を維持して鉄筋籠全体がねじれるのを防止するための鉄筋籠組立用のねじれ防止金具、およびこれを備える鉄筋籠を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明が適用されたねじれ防止金具10の一例を示す(a)正面図、(b)平面図、(c)右側面図である。
【
図2】本発明が適用されたねじれ防止金具10を鉄筋籠100に使用した状態の一例を示す(a)正面図、(b)平面図、(c)右側面図である。
【
図3】他の実施例に係るねじれ防止金具10の一例を示す(a)正面図、(b)平面図、(c)右側面図である。
【
図4】他の実施例に係るねじれ防止金具10を鉄筋籠100に使用した状態の一例を示す(a)正面図、(b)平面図、(c)右側面図である。
【
図5】本発明が適用されたねじれ防止金具10を鉄筋籠100に使用した状態の一例を示す写真である。
【
図6】変形例1に係るねじれ防止金具10の一例を示す(a)正面図、(b)平面図、(c)右側面図である。
【
図7】変形例3に係るねじれ防止金具10を鉄筋籠100に使用した状態の一例を示す正面図である。
【
図8】従来の鉄筋籠における(a)ねじれが生じた状態、および(b)補強枠に対する主筋部材の交差角度が直角から大きくずれた状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<ねじれ防止金具10の構成>
図1および
図2を参照して、本実施形態に係るねじれ防止金具10について説明する。本実施形態に係るねじれ防止金具10は、大略、本体部12と、突出部14とで構成されている。
【0021】
本体部12は、板材を断面U字状に曲げるようにして形成された部分であり、当該U字状の内側部分において、鉄筋籠100を構成する主筋部材102に沿って延びるとともに当該主筋部材102が嵌め込まれる主筋嵌込空間20を有している。
【0022】
突出部14は、本体部12における主筋嵌込空間20の開口端から主筋部材102が延びる方向に対して直交する方向に突出しており、鉄筋籠100を構成する補強枠104の側面106に当接する部分である。なお、この突出部14は、常に補強枠104に当接した状態であってもよいし、普段は補強枠104から離間しているが、補強枠104に対する主筋部材102の交差角度が直角からずれたときに補強枠104に当接してもよい。
【0023】
本明細書全体を通して、補強枠104の「正面108」とは、鉄筋籠100の周側面を見たときに正対する面(一般的に補強枠104における幅広の面)をいい、「側面106」とは、当該「正面108」に直交する面(鉄筋籠100を立てたときに、上方あるいは下方に向かう面)をいう。
【0024】
本実施形態に係るねじれ防止金具10の場合、主筋嵌込空間20の開口端の四隅にそれぞれ突出部14が形成されており、主筋部材102が延びる方向に互いに離間して配設された一対の突出部14の間に補強枠104が嵌まるようになっている。なお、本実施形態では、突出部14が4箇所に形成されているが、この突出部14の数は、少なくとも1つあればよい。また、一対または本体部12の平面視中心位置を中心として点対称となる2箇所に突出部14を形成すれば、より好適である。
【0025】
後述するように、ねじれ防止金具10は、本体部12における主筋嵌込空間20に主筋部材102を嵌め込んだ後、当該主筋嵌込空間20の開口22とは反対側をUボルト110の凹所112に嵌め込んでいき、当該Uボルト110と補強枠104との間に挟まれるようにして固定される。
【0026】
本実施形態に係るねじれ防止金具10の本体部12には、このようにねじれ防止金具10をUボルト110の凹所112に嵌め込んだとき、Uボルト110の側部に対向する位置に第1の本体部切欠26が形成されている。この第1の本体部切欠26によりUボルト110の側部が本体部12に干渉しないように形成した場合、Uボルト110の最奥部が本体部12に当接することを阻害することがなく、より強固な係合が規定できる。また、当該第1の本体部切欠26の端縁にUボルト110の側部が当接するように形成する場合、当該端縁とUボルト110の当接側部とがより確実に係合される。これらのケースにおいて、第1の本体部切欠26は、本体部12の表裏面を連通するものであってもよいし、本体部12の表面に形成された凹所(溝)であってもよい。
【0027】
さらに言えば、第1の本体部切欠26を介してUボルト110の側部と主筋部材102とが直接当接するようにしてもよい。これにより、主筋部材102が補強枠104に対して横にずれるのをUボルト110が直接的に抑制できるので、鉄筋籠100全体のねじれをより確実に防止することができる。このケースの場合、第1の本体部切欠26は、本体部12の表裏面を連通するものである。
【0028】
なお、
図3および
図4に示すように、本体部12において、ねじれ防止金具10をUボルト110の凹所112に嵌め込んだとき、Uボルト110の最奥部に対向する位置に第2の本体部切欠24を形成してもよい。この第2の本体部切欠24によりUボルト110の最奥部が本体部12に干渉しないようにしてもよいし、当該第2の本体部切欠24の端縁にUボルト110の最奥部が当接するようにしてもよい。これらのケースにおいて、第2の本体部切欠24は、本体部12の表裏面を連通するもの(例えば、「開口」)であってもよいし、本体部12の表面に形成された凹所(溝)であってもよい。
【0029】
さらに言えば、第2の本体部切欠24を介してUボルト110の最奥部と主筋部材102とが直接当接するようにしてもよい。これにより、Uボルト110が補強枠104に向けて主筋部材102を直接押圧できるので、主筋部材102と補強枠104とをより強く固定することができる。このケースの場合、第2の本体部切欠24は、本体部12の表裏面を連通するもの(例えば、「開口」)である。
【0030】
<ねじれ防止金具10の使用例>
次に、本実施形態に係るねじれ防止金具10の使用例について説明する(
図2および
図5参照)。本体部12における主筋嵌込空間20に主筋部材102を嵌め込んでいく。このとき、主筋部材102は補強枠104に対して別の金具等で固定された状態であってもよいし、未固定の状態であってもよい。
【0031】
主筋嵌込空間20に主筋部材102を嵌め込んだ後、本体部12をさらに補強枠104に近づけていき、突出部14を補強枠104に対して当接する、あるいは、当接し得る近接する位置に到達させる。
【0032】
最後に、主筋嵌込空間20の開口22とは反対側をUボルト110の凹所112に嵌め込み、Uボルト110における一対の先端部を補強枠104に形成されたUボルト挿通孔114に挿通した後、補強枠104の反対側からナット116等を螺着させることによって、Uボルト110を補強枠104に対して固定する。
【0033】
以上で、ねじれ防止金具10の取り付けが完了する。
【0034】
<ねじれ防止金具10の特徴>
本実施形態に係る鉄筋籠組立用のねじれ防止金具10は、主筋部材102に沿って延びるとともに、当該主筋部材102が嵌め込まれる主筋嵌込空間20を有している本体部12を有しており、この本体部12における主筋嵌込空間20の開口22端から主筋部材102に対して直交する方向に突出しており、補強枠104の側面106に当接する突出部14を更に有している。
【0035】
鉄筋籠100における、主筋部材102と補強枠104とが直交交差している位置においてこの主筋嵌込空間20に主筋部材102を嵌め込むと、突出部14が補強枠104の側面106に当接し得る位置に配置される。
【0036】
鉄筋籠100を転がし移動させたり建て起したりする際に、補強枠104に対する主筋部材102の交差角度が直角から大きくずれようとすると、当該主筋部材102とともにねじれ防止金具10の本体部12が動くので、突出部14が補強枠104の側面106に当接して当該交差角度がそれ以上ずれるのが防止される。
【0037】
これにより、補強枠104に対する主筋部材102の交差角度を維持して鉄筋籠100全体がねじれるのを防止するための鉄筋籠組立用のねじれ防止金具10、およびこれを備える鉄筋籠100を提供することができる。
【0038】
(変形例1)
図6に示すように、上述した実施形態に係るねじれ防止金具10に、補強枠104の背面側に配置され、突出部14の先端が嵌め込まれる当接部先端収容孔30を有する背面板材16をさらに加えてもよい。なお、当接部先端収容孔30は、図示するような貫通孔であってもよいし、突出部14の先端が嵌まる有底穴であってもよい。
【0039】
この背面板材16に形成された当接部先端収容孔30に突出部14の先端を嵌め込むことより、背面板材16と本体部12との間に補強枠104を挟み込むことができるので、ねじれ防止金具10をより強く補強枠104に固定できるとともに、本体部12から突設された突出部14の先端を背面板材16が保持することにもなるので、主筋部材102が補強枠104に対して強い力でずれようとしても、突出部14が破損等することなく、当該ずれを防止できる。
【0040】
(変形例2)
また、上述のように、鉄筋籠100を杭穴に設置した後でコンクリートを打設するので、当該コンクリートが隅々まで入り込み易いように、本体部12に連通孔を形成してもよい。この連通孔は当該本体部12の表裏面を互いに連通するものである。連通孔の数は特に限定されるものではないが、本体部12に要求される強度を維持できるのであれば、できるだけ数多く(つまり、連通孔の総面積ができるだけ多く)形成するのが好適である。
【0041】
(変形例3)
さらに、
図7に示すように、上述のようにねじれ防止金具10を主筋部材102および補強枠104に取り付けたとき、突出部14と補強枠104の側面106とを溶接や接着剤等の手段で接着させてもよい。あるいは、主筋部材102の延びる方向に並ぶ一対の突出部14の間における本体部12の開口22の縁(以下、「開口縁32」という。)と、補強枠104の正面108とを同様に溶接や接着剤等の手段で接着させてもよい。もちろん、突出部14と補強枠104の側面106、および、本体部12と補強枠104の正面108の両方を溶接や接着剤等の手段で接着させてもよい。また、変形例1に記載した背面板材16と突出部14とを溶接や接着剤等の手段で接着させてもよい。
【0042】
(変形例4)
また、一般に主筋部材102の表面には凸部118(
図5参照)が形成されている。そこで、主筋嵌込空間20を臨む本体部12の内面に、当該凸部118に係合する係合部(図示せず)を形成してもよい。係合部は、本体部12の内面から突出して凸部118と係合する部分であってもよいし、凸部118が嵌まるような、当該内面に形成された凹部であってもよい。なお、本体部12の内面に形成された凸部や凹部は、主筋部材102の表面の凸部118の形状にぴったりと一致している必要はなく、主筋部材102の移動を抑制できるものであれば、一箇所であっても凸部118に当接するものであればよい。つまり、本明細書全体を通して、「係合部」における「係合」とは、一箇所であっても凸部118に当接することによって主筋部材102の移動を抑制するという意味である。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
10…ねじれ防止金具、12…本体部、14…突出部、16…背面板材
20…主筋嵌込空間、22…(主筋嵌込空間20の)開口、24…(第2の)本体部切欠、26…(第1の)本体部切欠
30…当接部先端収容孔、32…開口縁
100…鉄筋籠、102…主筋部材、104…補強枠、106…(補強枠104の)側面、108…(補強枠104の)正面、110…Uボルト、112…(Uボルト110の)凹所、114…Uボルト挿通孔、116…ナット、118…(主筋部材102の)凸部