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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】金車用巻き込まれ防止具
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/04 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
B66D3/04 Z
B66D3/04 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023150859
(22)【出願日】2023-09-19
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】392022721
【氏名又は名称】株式会社和田電業社
(74)【代理人】
【識別番号】100094617
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 正浩
(72)【発明者】
【氏名】和田 功
(72)【発明者】
【氏名】長田 光広
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-225318(JP,A)
【文献】特開2011-072150(JP,A)
【文献】特開平10-109893(JP,A)
【文献】特開平09-267992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00- 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金車に着脱可能に装着される金車用巻き込まれ防止具において、
互いに対向し、前記金車の側面形状より大きい幅で略同一の外形状を有する第1のカバー板及び第2のカバー板と、前記第1と第2のカバー板の下端領域の縁同士を連結する底面板とで内部に前記金車の収容用空間が形成されている箱状本体を備え、
前記箱状本体は、前記第1と第2のカバー板の上端領域の縁同士の間に前記金車を出し入れ可能な開口部を備えると共に、前記開口部の中央部を除く左右の領域をそれぞれ閉じる開閉回動可能な第1の蓋板部材及び第2の蓋板部材と、これら第1と第2の蓋板部材の閉じた状態をそれぞれ解除可能に固定する係止手段とを備えており、
前記底面板は、前記箱状本体の内部に前記金車が収納された状態にて該金車に巻き掛けられているロープの両端側をそれぞれ外方へ挿通させて垂れ下げる2つのロープ用挿通孔が形成されていることを特徴とする金車用巻き込まれ防止具。
【請求項2】
前記第1と第2のカバー板とのそれぞれは、上部が等脚台形状を有し、
前記第1と第2の蓋板部材との各々は、互いに対向する前記上部の等脚台形状の左脚辺同士間と右脚辺同士間とにわたって前記開口部の左右領域を塞ぐ長方形状の平面を有するものであり、各長方形状の一方の長手辺部が前記第2のカバー板の左右の脚辺に回動可能に取り付けられ、他方の長手辺部が前記第1のカバー板の表面側に前記係止手段で固定されるものであることを特徴とする請求項1に記載の金車用巻き込まれ防止具。
【請求項3】
前記第1と第2のカバー板とのそれぞれは、下部が前記上部の等脚台形状と逆向きの等脚台形状を有し、カバー板全体の輪郭が略六角形状であることを特徴とする請求項2に記載の金車用巻き込まれ防止具
【請求項4】
前記第1と第2の蓋板部材とのそれぞれは、前記一方の長手辺部がヒンジを介して回動可能に前記第2のカバー板の縁部に取り付けられており、
前記係止手段は、
前記第1と第2の蓋板部材とのそれぞれの前記ヒンジと反対側の長手辺部に突出して設けられたフック部を有する被掛止部と、
前記第1のカバー板の表面にそれぞれ取り付けられ、前記第1と第2の蓋部部材とがそれぞれ前記開口部を塞いだ状態にて前記フック部に掛止される掛止棒及び該掛止棒が連結されてその回動によって前記掛止棒を掛止固定状態と解除状態との間で変位させるレバーとを有する掛止部と、を備えているパッチン錠であることを特徴とする請求項2に記載の金車用巻き込まれ防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金車に手指が巻き込まれるのを防止するために金車に装着される、金車用巻き込まれ防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送電線架線工事においては、予め張り渡されたワイヤーロープに電線を接続し、ワイヤーロープを巻き取りながらドラムから電線を繰り出して鉄塔間に電線張り渡す延線作業と、延線後に、電線を設計上必要とされる弛みを持たせるように調節しながら電線を鉄塔のがいしに取り付ける緊線作業とが行われている。
【0003】
このような架線工事における各作業では、鉄塔上の高所にいる作業者に対する工具や資材等の引上げや引き下ろしに、金車に掛けられたワイヤーロープを利用している。
【0004】
金車とは、例えば図8に示すように、一対の支持板120の間に挟まれた滑車110が、更に一対の支持板120を外側からその中央位置で上下方向に延びて囲む一対の枠体130の間で、回転軸140によって回転自在に軸支されたものであり、一対の枠体120の上端部間から立設された支持フックFによって金車100が所定位置に吊り下げられる。
【0005】
通常、枠体120の一方の上部は、開閉可能な扉構造を有しており、この上部を開けた状態で滑車110にワイヤロープRを巻き掛けることができるようになっている。また一対の枠体120の下端部間には補助フックfsが設けられている。
【0006】
このような金車100は、その滑車110に巻き掛けられたワイヤーロープRによって、例えば高所と地上との間での工具や資材等を持ち上げたり下ろしたりするのに使用されている。
【0007】
しかし、この金車100の使用において、作業者の手指が移動するワイヤーロープRと回転する滑車110との間に巻き込まれる事故が発生している。
【0008】
そこで、このような手指の巻き込みを防止するために、ワイヤーロープRと滑車110表面との間の巻き込まれ領域EAを覆うように金車に装着される各種防止装置が考えられている。例えば、手指が巻き込まれ領域EAに届かないように、滑車を挟む支持板より大きな外形を有する2枚のカバー板体を金車の両側外面にそれぞれ固定して、巻き込み防止具付き金車としたものが考えられている(例えば特許文献1、2を参照。)。
【0009】
また、金車に別体で特許文献3に開示されているように、金車の側面横幅より大きい横幅を有し、その下端縁同士を間隔を開けてヒンジで連結した2枚の側板で構成され、この2枚の側板を金車を挟んで側面を被うように閉じ、上部同士を連結穴とバインド線とで固定することで金車に装着される巻き込み防止具もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実用新案登録第3233879号公報
【文献】特開2023-9431号公報
【文献】実用新案登録第3233844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、2枚のカバー板体をそれぞれ滑車を挟む支持板にそれぞれ固定した防止具付き金車では、防止具が一体となった製品形態であるため、常に通常の金車よりも大きくなると同時に重い状態で扱うことになり、非使用時の搬送や収容に不便である。
【0012】
しかも、防止具が取り付けられた状態で滑車へのロープ掛けが行われることになるため、カバー板体の少なくとも一方には、支持板の扉構造の開閉に対応する部分を形成しておくことや、ロープ掛けの際に障害となる部分を変位させる機構等を設けておくなど、煩雑な設計と製造が余計に必要となる。
【0013】
このような煩雑な機構を備えた防止具の製造とその取付け工程が防止具付き金車の製造工程に含まれることになるため、その分、工程や部品数が増え、金車の製造工程全体の効率を低下させてしまう恐れがあった。
【0014】
また、金車とは別体で、2枚の側板で金車を挟んで装着される防止具は、2枚の側板を開いた状態で金車の下方から包み込むように当てて閉じ、対向する上部同士をつき合わせて固定するものである。このため、不安定な形態の治具を金車の挟み込み位置を手で保持するという面倒な状態で固定作業を行う必要があり、装着作業は非常に煩雑で非効率的であった。
【0015】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、金車自体の製造工程に影響することのない別個の治具として、従来よりも容易に短時間で金車に装着できる金車用巻き込まれ防止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る金車用巻き込まれ防止具は、例えば、図1図5図6図7に示すように、金車に着脱可能に装着される金車用巻き込まれ防止具において、
互いに対向し、前記金車の側面形状より大きい幅で略同一の外形状を有する第1のカバー板及び第2のカバー板と、前記第1と第2のカバー板の下端領域の縁同士を連結する底面板とで内部に前記金車の収容用空間が形成されている箱状本体を備え、
前記箱状本体は、前記第1と第2のカバー板の上端領域の縁同士の間に前記金車を出し入れ可能な開口部を備えると共に、前記開口部の中央部を除く左右の領域をそれぞれ閉じる開閉回動可能な第1の蓋板部材及び第2の蓋板部材と、これら第1と第2の蓋板部材の閉じた状態をそれぞれ解除可能に固定する係止手段とを備えており、
前記底面板は、前記箱状本体の内部に前記金車が収納された状態にて該金車に巻き掛けられているロープの両端側をそれぞれ外方へ挿通させて垂れ下げる2つのロープ用挿通孔が形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る請求項1に記載の金車用巻き込まれ防止具によれば、第1と第2のカバー板の下端領域の縁同士が底面板で連結されて箱状本体が構成され、その内部に金車の収容用空間が形成される。従って、従来のようなカバー板同士を回動させて金車を包み込んだ状態を手で保持する必要なく、安定した固定形態である箱状本体の上部の開口部から金車を内部の収納用空間へ挿入し、開口部の左右領域をそれぞれ第1と第2の蓋板部材で閉じて係止手段で固定するだけで、本金車用巻き込まれ防止具の金車への装着は容易に短時間で完了する。
【0018】
このとき、開口部の左右領域を閉じて固定された第1と第2の蓋板部材が金車の左右肩部に掛止されることによって、実質的な金車への装着状態が得られる。この際、第1と第2の蓋板部材によって、金車の支持フックが突出される開口部の中央部の左右領域、即ち、ロープが滑車に巻き掛けられて移動する領域が覆われることになる。従って、本金車用巻き込まれ防止具の装着と同時に、ロープが滑車に接する巻き込まれ位置に作業者の手指が達する危険はほぼ完全に回避される状態が得られ、優れた巻き込まれ防止機能が発揮される。
【0019】
また、箱状本体の内部に金車が挿入された状態において、金車の滑車に巻き掛けられているロープは、底面板に形成されている挿通孔を通って箱状本体から外方へ下垂させることができる。なお金車の中央下端に補助フックが設けられている場合、底面板には、この補助フックを突出させるための補助フック用挿通孔も設けておけば良い。
【0020】
請求項2に記載の発明に係る金車用巻き込まれ防止具は、例えば、図1図2図3に示すように、前記第1と第2のカバー板とのそれぞれは、上部が等脚台形状を有し、
前記第1と第2の蓋板部材との各々は、互いに対向する前記上部の等脚台形状の左脚辺同士間と右脚辺同士間とにわたって前記開口部の左右領域を塞ぐ長方形状の平面を有するものであり、各長方形状の一方の長手辺部が前記第2のカバー板の左右の脚辺に回動可能に取り付けられ、他方の長手辺部が前記第1のカバー板の表面側に前記係止手段で固定されるものであることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る請求項2に記載の金車用巻き込まれ防止具によれば、第1と第2のカバー板のそれぞれの上部を等脚台形状としたものである。本発明の金車用巻き込まれ防止具では、第1と第2の蓋板部材によって、手指が巻き込まれ得るロープと滑車との間の領域が覆われるため、カバー板自体は、金車の外形状に対してその輪郭を大きく離す必要はなく、金車の外形に沿った効率的な形状とすることができる。
【0022】
そこで、図8に示すような一般的な金車の外形状が略菱形であることから、特に金車に対する掛止部と巻き込まれ防止部として機能する上部を金車の菱形にほぼ沿った等脚台形状とすることで、第1と第2のカバー板の上部を求められる機能を発揮するのに十分でありながら無駄な領域のない効率的な面積に抑えることができる。
【0023】
この場合、第1と第2のカバー板の各上部等脚台形状の上底辺と左右脚辺とが上端領域となり、その間に箱状本体の開口部が形成される。従って、互いに対向する上部等脚台形状の左脚辺同士間と右脚辺同士間にわたって、第1と第2の蓋板部材の各々が開口部を塞ぐものとすれば、互いに対向する上部等脚台形状の上底辺同士の間が開口部の中央部となり、第1と第2の蓋板部材で塞がれることのない略四角形の開口として金車の支持フックを突出させることができる。この開口部の中央部の左右両側の前記左脚辺同士間と右脚辺同士間の各開口端面は長方形状であるため、第1と第2の蓋板部材もこの左右両側開口を塞ぐように同様の長方形状の平面を有するものとすればよい。
【0024】
従って、各長方形状の平面を有する蓋板部材は、一方の長手辺部が第2のカバー板の左右の脚辺側に回動可能に取り付けられ、他方の長手辺部で第1のカバー板の表面側に係止手段で固定されることによって、開口部の左右両側領域に対する開閉機構が得られる。
【0025】
請求項3に記載の発明に係る金車用巻き込まれ防止具は、例えば、図1図2図3に示すように、前記第1と第2のカバー板とのそれぞれは、下部が前記上部の等脚台形状と逆向きの等脚台形状を有し、カバー板全体の輪郭が略六角形状であることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る請求項3に記載の金車用巻き込まれ防止具によれば、前記第1と第2のカバー板のそれぞれは、上部だけでなく、下部も上部の等脚台形状と逆向きの等脚台形状としてカバー板全体の輪郭を略六角形状とすることで、必要なカバー板の面積をより無駄のない効率的な程度に抑えることができる。
【0027】
従って、第1と第2のカバー板の下部も、一般的な金車の略菱形の外形に沿った輪郭となっている。底面板は、第1と第2のカバー板同士間の下方開口を塞ぐように第1と第2のカバー板の下端領域の縁同士を連結するものであるが、本発明では、この両カバー板の下端領域の縁は、下部の等脚台形状の上底辺と左右脚辺とからなる輪郭辺となる。
【0028】
そのため、底面板は、下部等脚台形状の上底辺同士間を塞ぐ中央領域とこの中央領域の両端からそれぞれ角度を持って連通している左右領域とを有することになるが、一枚部材に角度を付けるだけで簡単に製造できる。このような底面板は、両カバー板の下端領域の縁に良好に沿わせことができるため、連結固定作業も容易である。
【0029】
また、底面板に設けられる補助フック用挿通孔と2つのロープ用挿通孔は、図4(a)(b)に示すように、予め底面板の一枚板部材の中央領域に補助フック用挿通孔を、左右領域のそれぞれにロープ用挿通孔を形成しておき、上記のように角度を付けて両カバー板の下端に固定するだけで当該巻き込まれ防止具への各挿通孔の設置は簡便に済む。
【0030】
請求項4に記載の発明に係る金車用巻き込まれ防止具は、例えば、図1図7に示すように、前記第1と第2の蓋板部材とのそれぞれは、前記一方の長手辺部がヒンジを介して回動可能に前記第2のカバー板の縁部に取付けられており、
前記係止手段は、
前記第1と第2の蓋板部材とのそれぞれの前記ヒンジと反対側の長手辺部に突出して設けられたフック部を有する被掛止部と、
前記第1のカバー板の表面にそれぞれ取り付けられ、前記第1と第2の蓋部部材とがそれぞれ前記開口部を塞いだ状態にて前記フック部に掛止される掛止棒及び該掛止棒が連結されてその回動によって前記掛止棒を掛止固定状態と解除状態との間で変位させるレバーとを有する掛止部と、を備えているパッチン錠であることを特徴とする。
【0031】
本発明に係る請求項4に記載の金車用巻き込まれ防止具によれば、第1と第2の蓋板部材は、一方の長手辺部がヒンジを介して回動可能に第2のカバー板の縁部に取り付けられているため、外方へ回動させるだけで、箱状本体の上部の開口部全体を露呈させることができ、金車の挿入を容易にする。
【0032】
そして、箱状本体の内部に金車が収納された後、反対側へ回動させるだけで、開口部の左右両側領域を閉じて塞ぎ、滑車とロープの間の巻き込まれ領域を覆うことができる。これら第1と第2の蓋部部材を閉じた状態を係止手段で固定すれば直ちに当該巻き込まれ防止具の金車への装着は完了する。
【0033】
ここで、係止手段として、係止工程が容易で短時間で済む簡単且つ安価な機構であるパッチン錠を用いるものである。パッチン錠とは、開閉運動する蓋側に設けられるフック部を有する被掛止部と、本体側に取り付けられて蓋側の閉状態でフック部に引っ掛けられる掛止棒をレバーの回動によって掛止固定状態と解除状態の間で変位させる掛止部とから構成されるものである。パッチン錠の掛止固定状態は、一般的にバネ付勢による張力によって維持される。
【0034】
従って、本発明においては、開閉運動する第1と第2の蓋板部材との前記ヒンジと反対側の長手辺部にフック部を設け、掛止部を第1のカバー板の対応する表面位置に取り付けることによって、箱状本体に対してそれぞれ第1と第2の蓋板部材とを閉状態で解除可能に係止固定するパッチン錠を構成できる。
【0035】
このようなパッチン錠によれば、箱状本体内に上部の開口部から金車を挿入した後、開口部の左右領域を第1と第2の蓋板部材とを回動して閉じれば、直ちに両蓋板部材を係止固定できるため、当該巻き込まれ防止具の金車への装着とその安定的な固定が容易に短時間で完了できる。
【0036】
また、パッチン錠は、巻き込まれ防止具の金車への装着後は固定状態が安定して維持されるものでありながら、掛止部のレバーを逆向きに回動させるだけでその固定は直ぐに解除できる。このため、金車の使用後は当該巻き込まれ防止具を金車から簡単に短時間で取り外すことができ、両者の撤収搬送及び収納も簡便に済む。
【発明の効果】
【0037】
本発明による金車用巻き込まれ防止具は、以上説明した通り、互いに対向する第1と第2のカバー板の下端領域の縁同士が底面板で連結されて安定した固定形態として形成された箱状本体を備えたものであり、該箱状本体の上部の開口部から内部の収容用空間に金車を挿入して開口部の左右の領域を第1と第2の蓋板部材で閉じて塞いだ状態で固定するだけで簡便に金車への装着と同時に巻き込まれ防止状態が得られるため、金車自体の製造工程に何ら影響することのない、金車とは別体の着脱可能な巻き込まれ防止具として、従来よりも容易に短時間で効率的に装着できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明に係る金車用巻き込まれ防止具の一実施形態を示す概略全体構成図であり、(a)は箱状本体の開口部が第1と第2の蓋板部材とで閉じられた状態を示す斜視図、(b)箱状本体の開口部が開いた状態を示す斜視図である。
図2図1(b)の状態よりも更に第1と第2の蓋板部材とが外方へ回動された状態を示す斜視図である。
図3図1に示す金車用巻き込まれ防止具の正面図であり、(a)は第1と第2の蓋板部材とが閉じた状態図、(b)は第1と第2の蓋板部材が開いた状態図である。
図4図1に示す金車用巻き込まれ防止具の底面図であり、(a)は第1と第の蓋板部材とが閉じた状態図、(b)は第1と第2の蓋板部材とが開いた状態図である。
図5図1に示す金車用巻き込まれ防止具を金車が箱状本体内に収納され第1と第2の蓋板部材とが開いた状態で示す正面図である。
図6図5に示す金車が箱状本体内に収納された金車用巻き込まれ防止具を第1と第2の蓋板部材とが閉じられ固定された装着完了の状態で示す正面図である。
図7図6に示す装着完了状態の金車用巻き込まれ防止具の斜視図である。
図8】金車用巻き込まれ防止具が未装着の金車を従来の使用状態で例示する概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、図面を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。
【0040】
<実施の形態>
図1乃至図7は、本発明に係る金車用巻き込まれ防止具の一実施の形態を示している。本実施形態における巻き込まれ防止具1は、図1図2図3に示すように、互いに対向し略同一の外形状を有する第1のカバー板10及び第2のカバー板20と、第1と第2のカバー板(10,20)の下端領域の縁同士を連結する底面板40とで内部に金車100の収容用空間が形成されている箱状本体2を備えたものである。
【0041】
箱状本体2の上部には、第1と第2のカバー板(10,20)の上端領域の間に、金車100が出し入れされる開口部3が形成されている。この開口部3の中央部mを除く左右の領域が第1の蓋板部材30aと第2の蓋板部材30bとによって開閉可能に閉じられる。
【0042】
そして、これら第1と第2の蓋板部材(30a,30b)が閉じた状態で後述する係止手段によって固定されることで、本金車用巻き込まれ防止具1の金車100への装着が完了する。
【0043】
本実施形態においては、第1と第2のカバー板(10,20)は、互いに略同一の輪郭形状を有するものであり、それぞれ図3(b)の斜線部分で示すように、上部と下部とがその下底辺同士で連続する互いに逆向きの等脚台形状(U,L)を有し、各カバー板(10,20)は全体で略六角形状の輪郭となっている。
【0044】
従って、箱状本体2は、おおよそ金車100の略菱形の外形に沿った外形状であり、各カバー板(10,20)は無駄の少ない面積に抑えられている。
【0045】
この場合、第1のカバー板10の上端領域が、上部等脚台形状Uの上底辺12と左右の脚辺(11a,11b)とから成り、下端領域は、下部等脚台形状Lの下底辺13と左右の脚辺(14a,14b)とから成る。同様に、第2のカバー板20の上端領域が、上部等脚台形状Uの上底辺22と左右の脚辺(21a,21b)とから成り、下端領域は、下部等脚台形状Lの下底辺23と左右の脚辺(24a,24b)とから成る。
【0046】
従って、第1のカバー板10の上端領域(11a,12,11b)と第2のカバー板20の上端領域(21a,22,21b)との間に箱状本体2の開口部3が形成される。
【0047】
また、互いに対向する上底辺(12,22)同士の間が開口部3の中央部mとなり、この中央部mの左右両側の左脚辺(11a,21a)同士間と右脚辺(11b,21b)同士間に形成される各開口端面が長方形状となっている。そして、第1と第2の蓋板部材(30a,30b)は、この左右両側の長方形状の開口をそれぞれ塞ぐ長方形状の平面を有している。
【0048】
尚、第1と第2の蓋板部材(30a,30b)で塞がれることのない中央部mは、本金車用巻き込まれ防止具1の金車100への装着状態において、支持フックFを箱状本体2の外へ突出させることができる。
【0049】
本実施形態では、第1と第2の蓋板部材(30a,30b)のそれぞれは、長方形状の平面の両側長手辺部から直交方向に立ち上がる延長部(31a,32a)、(31b,32b)が設けられた断面コの字である。
【0050】
そして各蓋板部材(30a,30b)は、一方の延長部(31a,31b)で、図4に示すようにヒンジ(33a,33b)を介して第2のカバー板20の上部等脚台形状Uの左右脚辺(21a,21b)付近にそれぞれ回動可能に取り付けられている。
【0051】
図2に示すように、ヒンジ(33a,33b)を介することにより、各蓋板部材(30a,30b)は、開口部3から大きく離反する位置まで回動可能であり、開口部3への金車100の挿入時に障害することがないため、本金車用巻き込まれ防止具1の金車10への装着はスムーズとなる。
【0052】
また、本実施形態では、第1と第2の蓋板部材(30a,30b)の閉じた状態を解除可能に固定する係止手段として、それぞれバネ式パッチン錠を備えた。各パッチン錠を構成する被掛止部のフック部35が、各蓋板部材(30a,30b)のヒンジ(33a,33b)と反対側の延長部(32a,32b)の各端部に取り付けられ、パッチン錠の掛止部15が第1のカバー板10の表面にそれぞれに取り付けられている。
【0053】
閉じた各蓋板部材(30a,30b)のフック部35に、対応する掛止部15のレバー17を第1のカバー板10表面から離反方向に上げた固定解除状態にて、レバー17に連結されている掛止棒16を引っ掛けた後、該レバー17を回動させて第1のカバー板10表面に達するまで下げると、掛止固定状態となる。
【0054】
箱状本体2の下面は、第1のカバー板10の下端領域(14a,13,14b)と第2のカバー板20の下端領域(24a,23,24b)との間にわたる開口領域で構成され、この開口領域が底面板40によって塞がれている。
【0055】
そして、底面板40には、中央部に補助フック用挿通孔41が形成されていると同時に、その左右領域にロープ用挿通孔(42a,42b)が形成されている。各ロープ用挿通孔(42a,42b)は、箱状本体2の左右幅方向に沿って延びる長尺形状を有しており、この幅内で挿通されたロープRの左右方向の移動を許容できる。
【0056】
尚、本実施形態による金車用巻き込まれ防止具1は、その形状を保持して良好に手指の巻き込まれ防止効果を発揮すると共に、金車100に対して着脱され、繰り返し使用されることを想定すると、特に箱状本体2にある程度以上の機械的強度を付与できる構成素材とする必要がある。
【0057】
この機械的強度の要件を満たせば構成素材として特に限定されるものではないが、それぞれ特定の形状を有する構成部材、即ち第1と第2のカバー板(10,20)、底面板40及び第1と第2の蓋板部材(30a,30b)が各々成形され、これらを互いに接合させて箱状本体2が構築され、またヒンジ(33a,33b)、パッチン錠のフック部35及び掛止部15が箱状本体2に固定されて構成されるものであることから、各作業が比較的容易で低コストで済む素材であることが望ましい。
【0058】
例えば、好適な素材としては、ステンレス等の金属薄板であれば、各構成部材の打ち抜きあるいは切断成形やリベット接合による部材固定などの一般的な作業工程で比較的容易に製造できると共に、屋外での繰り返し使用にその耐腐食性が適切である。
【0059】
以上の構成を備えた本実施形態による巻き込まれ防止具1の金車100ヘの装着手順は、以下の通りである。
【0060】
まず、金車100を支持フックFによって適当な吊り下げ状態とし、滑車110にロープRを巻き掛けておく。この金車100に対して、第1と第2の蓋板部材(30a,30b)を最大限外方へ回動させて箱状本体2の開口部3を全て露呈させた状態で、該箱状本体2を下方から被せていく。
【0061】
これによって、相対的に金車100は開口部3から箱状本体2内へ挿入される。この金車100の挿入は、滑車110に巻き掛けられたロープRの両端を底面板40の左右のロープ用挿通孔(42a,42b)に挿通させ、外側へ垂れ下げながら行う。
【0062】
金車100のほとんどが箱状本体2の内部に収まり、金車100の下端に設けられいる補助フックfsが、底面板40の中央部の補助フック用挿通孔40から下方へ突出する位置まで挿入された時点で、第1と第2の蓋板部材(30a,30b)を回動させて開口部3の左右領域を閉じる。
【0063】
各蓋板部材(30a,30b)がそれぞれ開口部3の左右領域を閉じた状態にて、各パッチン錠のフック部35に掛止棒16を引っ掛けてレバー17を回動させて下げれば、各蓋板部材(30a,30b)が第1のカバー板10の表面側に係止固定されると同時に、第1と第2の蓋板部材(30a,30b)が金車100の支持板120の両肩部分に掛止された状態として、本金車用巻き込まれ防止具1の装着状態が得られる。
【0064】
上記のような数少ない単純な作業手順だけで、本実施形態による金車用巻き込まれ防止具1の金車100への装着は容易に完了する。本金車用巻き込まれ防止具1の装着完了後は、実際に使用する高所に金車100を支持フックFを介して吊り下げれば、ロープRの繰り上げ繰り下げによる工具や資材の昇降に利用できる。
【0065】
その際には、本金車用巻き込まれ防止具1により巻き込まれ領域EAが覆われており、作業者の手指が滑車120とロープRの間に巻きこまれる恐れはなく、作業に効率性と同時に高い安全性が確保される。
【0066】
また、作業終了後、金車100を撤収する際には、各パッチン錠を解除し、第1と第2の蓋板部材(30a,30b)を回動させて開けるだけで、本金車用巻き込まれ防止具1を金車100から取り外すことができる。
【0067】
従って、金車100と本金車用巻き込まれ防止具1とは、個別に搬送・収納でき、取扱いは簡便である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明による金車用巻き込まれ防止具は、送電線架線工事に用いられる金車だけでなく、様々な場面で吊り下げて使用される滑車に対して適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1:金車用巻き込まれ防止具
2:箱状本体
3:開口部
m:開口部の中央部
10:第1のカバー板
20:第2のカバー板
U:上部等脚台形状
L:下部等脚台形状
12,22:上底辺(上部等脚台形状)
11a,11b,21a,21b:脚辺(上部等脚台形状)
13,23:上底辺(下部上部等脚台形状)
14a,14b,24a,24b:脚辺(下部部等脚台形状)
15:掛止部(パッチン錠)
16:掛止棒(パッチン錠)
17:レバー(パッチン錠)
30a,30b:蓋板部材
31a,32a,31b,32b:延長部
33a,33b:ヒンジ
35;フック部(パッチン錠)
40:底面板
41:補助フック用挿通孔
42a,42b:ロープ用挿通孔
100:金車
110:滑車
120:支持板
130:枠体
140:回転軸
F:支持フック
fs:補助フック
R:ロープ
EA:巻き込まれ領域
【要約】
【課題】金車自体の製造工程に影響することのない別個の治具として、従来よりも容易に短時間で金車に装着できる金車用巻き込まれ防止具の提供。
【解決手段】第1と第2のカバー板10,20の下端領域の縁同士が底面板40で連結されて形成された箱状本体2を備えた金車用巻き込まれ防止具1であって、箱状本体2は上端領域に金車が出し入れ可能な開口部3を備えると共に、開口部3の中央部mを除く左右の領域をそれぞれ開閉可能に閉じる第1と第2の蓋板部材30a,30bと、これら蓋板部材の閉じた状態をそれぞれ解除可能に固定する係止手段35,15とを備え、底面板40には金車に巻き掛けられているロープRの両端側を挿通させて垂れ下げるロープ用挿通孔42a,42bが形成されている。
【選択図】図1
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図8