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特許7489755繰り返し屈曲デバイス、その製造方法および屈曲跡の抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】繰り返し屈曲デバイス、その製造方法および屈曲跡の抑制方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240517BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20240517BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240517BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240517BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/10
C09J11/06
C09J133/04
C09J201/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018066052
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019172932
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】七島 祐
【合議体】
【審判長】関根 裕
【審判官】塩見 篤史
【審判官】長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-27996(JP,A)
【文献】特開2017-95653(JP,A)
【文献】特開2010-192636(JP,A)
【文献】国際公開第2018/174012(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の屈曲性部材と、他の屈曲性部材と、前記一の屈曲性部材および前記他の屈曲性部材を貼合する1層または複数層の粘着剤層とを備えた繰り返し屈曲デバイスであって、
前記一の屈曲性部材および前記他の屈曲性部材が、前記繰り返し屈曲デバイスの構成部材であり、
前記粘着剤層の少なくとも層が、
JIS K7244-1に準拠して、粘着剤を10%ひずませたときに測定される最大の緩和弾性率値を最大緩和弾性率G(t)max(MPa)とし、当該最大緩和弾性率G(t)maxが測定されてから3757秒後まで前記粘着剤を10%ひずませ続け、その間に測定される最小の緩和弾性率値を最小緩和弾性率G(t)min(MPa)とし、以下の式(I)から算出される緩和弾性率変動値ΔlogG(t)が、1.20以下である粘着剤から構成されており、
前記粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物を架橋してなる粘着剤であり、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が、10万以上、100万以下であり、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを15質量%以上、30質量%以下含有する
ことを特徴とする繰り返し屈曲デバイス。
ΔlogG(t)=logG(t)max-logG(t)min …(I)
【請求項2】
前記粘着剤に3000Paの応力を印加した時に測定されるクリープコンプライアンス値を最小クリープコンプライアンスJ(t)min(MPa-1)とし、当該最小クリープコンプライアンスJ(t)minが測定されてから3757秒後まで3000Paの応力を印加し続け、その間に測定される最大のクリープコンプライアンス値を最大クリープコンプライアンスJ(t)max(MPa-1)とし、以下の式(II)から算出されるクリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)が、2.84以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の繰り返し屈曲デバイス。
ΔlogJ(t)=logJ(t)max-logJ(t)min …(II)
【請求項3】
前記繰り返し屈曲デバイスに含まれる粘着剤層の総数に対する、前記粘着剤から構成されている粘着剤層の数の割合が、10%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の繰り返し屈曲デバイス。
【請求項4】
前記繰り返し屈曲デバイスの厚さに対する、前記粘着剤から構成されている粘着剤層の総厚さの割合が、1%以上、50%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の繰り返し屈曲デバイス。
【請求項5】
一の屈曲性部材と、他の屈曲性部材と、前記一の屈曲性部材および前記他の屈曲性部材を貼合する1層または複数層の粘着剤層とを備えた繰り返し屈曲デバイスの製造方法であって、
前記一の屈曲性部材および前記他の屈曲性部材が、前記繰り返し屈曲デバイスの構成部材であり、
前記粘着剤層の少なくとも層を、
JIS K7244-1に準拠して、粘着剤を10%ひずませたときに測定される最大の緩和弾性率値を最大緩和弾性率G(t)max(MPa)とし、当該最大緩和弾性率G(t)maxが測定されてから3757秒後まで前記粘着剤を10%ひずませ続け、その間に測定される最小の緩和弾性率値を最小緩和弾性率G(t)min(MPa)とし、以下の式(I)から算出される緩和弾性率変動値ΔlogG(t)が、1.20以下である粘着剤であって、
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物を架橋してなり、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が、10万以上、100万以下であり、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを15質量%以上、30質量%以下含有する
粘着剤によって構成する
ことを特徴とする繰り返し屈曲デバイスの製造方法。
ΔlogG(t)=logG(t)max-logG(t)min …(I)
【請求項6】
前記粘着剤から構成されている粘着剤層を有する粘着シートを使用して、前記繰り返し屈曲デバイスの構成部材を貼合することを特徴とする請求項に記載の繰り返し屈曲デバイスの製造方法。
【請求項7】
一の屈曲性部材と、他の屈曲性部材と、前記一の屈曲性部材および前記他の屈曲性部材を貼合する1層または複数層の粘着剤層とを備えた繰り返し屈曲デバイスにおける屈曲跡の抑制方法であって、
前記一の屈曲性部材および前記他の屈曲性部材が、前記繰り返し屈曲デバイスの構成部材であり、
前記粘着剤層の少なくとも層を、
JIS K7244-1に準拠して、粘着剤を10%ひずませたときに測定される最大の緩和弾性率値を最大緩和弾性率G(t)max(MPa)とし、当該最大緩和弾性率G(t)maxが測定されてから3757秒後まで前記粘着剤を10%ひずませ続け、その間に測定される最小の緩和弾性率値を最小緩和弾性率G(t)min(MPa)とし、以下の式(I)から算出される緩和弾性率変動値ΔlogG(t)が、1.20以下である粘着剤であって、
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物を架橋してなり、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が、10万以上、100万以下であり、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを15質量%以上、30質量%以下含有する
粘着剤によって構成する
ことを特徴とする繰り返し屈曲デバイスにおける屈曲跡の抑制方法。
ΔlogG(t)=logG(t)max-logG(t)min …(I)
【請求項8】
前記粘着剤から構成されている粘着剤層を有する粘着シートを使用して、前記繰り返し屈曲デバイスの構成部材を貼合することを特徴とする請求項に記載の繰り返し屈曲デバイスにおける屈曲跡の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰り返し屈曲デバイス、繰り返し屈曲デバイスの製造方法および繰り返し屈曲デバイスにおける屈曲跡の抑制方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デバイスの一種である、電子機器の表示体(ディスプレイ)として、屈曲可能なディスプレイが提案されている。かかる屈曲性ディスプレイは、例えば、湾曲させて円柱状の柱に設置するような据え置き型ディスプレイ用として、あるいは折り曲げたり折り畳んだり丸めたりして持ち運べるモバイルディスプレイ用として、幅広い用途が期待されている。
【0003】
屈曲性ディスプレイの種類としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電気泳動方式のディスプレイ(電子ペーパー)、基板としてプラスチックフィルムを用いた液晶ディスプレイ等が挙げられる。
【0004】
上記のような屈曲性ディスプレイにおいては、当該屈曲性ディスプレイを構成する一の屈曲可能な部材(屈曲性部材)と、他の屈曲性部材とを粘着シートの粘着剤層によって貼合することが一般的であると考えられる。ここで、屈曲不可能な従来のディスプレイ用の粘着シートとしては、例えば、特許文献1及び2に示されるものが知られている。
【0005】
屈曲性ディスプレイは、1回だけ曲面成形するのではなく、特許文献3に記載されているように、繰り返し屈曲させる(折り曲げる)場合がある。また、かかる繰り返し屈曲性ディスプレイにおいては、長期間屈曲状態で固定される場合もある。このような用途の繰り返し屈曲性ディスプレイに従来の粘着シートを使用すると、屈曲状態から解放した後でも、粘着剤層の変形が生じて屈曲性ディスプレイが大きく屈曲したままになり、屈曲跡が付いてしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-174907号公報
【文献】特開2016-774号公報
【文献】特開2016-2764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、繰り返し屈曲させた場合や長期間屈曲状態に置かれた場合において、屈曲状態から解放した後に、屈曲跡が付き難い繰り返し屈曲デバイス、そのような繰り返し屈曲デバイスの製造方法、および繰り返し屈曲デバイスにおいて屈曲跡が付くことを抑制することのできる屈曲跡の抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、1層または複数層の粘着剤層を備えた繰り返し屈曲デバイスであって、前記粘着剤層の少なくとも1層が、JIS K7244-1に準拠して、粘着剤を10%ひずませたときに測定される最大の緩和弾性率値を最大緩和弾性率G(t)max(MPa)とし、当該最大緩和弾性率G(t)maxが測定されてから3757秒後まで前記粘着剤を10%ひずませ続け、その間に測定される最小の緩和弾性率値を最小緩和弾性率G(t)min(MPa)とし、以下の式(I)から算出される緩和弾性率変動値ΔlogG(t)が、1.20以下である粘着剤から構成されていることを特徴とする繰り返し屈曲デバイスを提供する(発明1)。
ΔlogG(t)=logG(t)max-logG(t)min …(I)
【0009】
上記発明(発明1)に係る繰り返し屈曲デバイスは、当該繰り返し屈曲デバイスが有する粘着剤層の少なくとも1層が上記粘着剤からなることにより、所定量ひずませた際の応力変動が小さく、すなわち、元に戻ろうとする力が保持され易く、そのため、除荷した際に変形が元に戻り易い。したがって、当該繰り返し屈曲デバイスは、繰り返し屈曲された場合や長期間屈曲状態に置かれた場合において、屈曲状態から解放した後に復元し易く、屈曲した状態で固まって屈曲跡が付くことを抑制することができる。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記粘着剤に3000Paの応力を印加した時に測定されるクリープコンプライアンス値を最小クリープコンプライアンスJ(t)min(MPa-1)とし、当該最小クリープコンプライアンスJ(t)minが測定されてから3757秒後まで3000Paの応力を印加し続け、その間に測定される最大のクリープコンプライアンス値を最大クリープコンプライアンスJ(t)max(MPa-1)とし、以下の式(II)から算出されるクリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)が、2.84以下であることが好ましい(発明2)。
ΔlogJ(t)=logJ(t)max-logJ(t)min …(II)
【0011】
上記発明(発明1,2)においては、前記粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物を架橋してなる粘着剤であることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明1~3)においては、前記繰り返し屈曲デバイスに含まれる粘着剤層の総数に対する、前記粘着剤から構成されている粘着剤層の数の割合が、10%以上であることが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明1~4)においては、前記繰り返し屈曲デバイスの厚さに対する、前記粘着剤から構成されている粘着剤層の総厚さの割合が、1%以上、50%以下であることが好ましい(発明5)。
【0014】
第2に本発明は、1層または複数層の粘着剤層を備えた繰り返し屈曲デバイスの製造方法であって、前記粘着剤層の少なくとも1層を、JIS K7244-1に準拠して、粘着剤を10%ひずませたときに測定される最大の緩和弾性率値を最大緩和弾性率G(t)max(MPa)とし、当該最大緩和弾性率G(t)maxが測定されてから3757秒後まで前記粘着剤を10%ひずませ続け、その間に測定される最小の緩和弾性率値を最小緩和弾性率G(t)min(MPa)とし、以下の式(I)から算出される緩和弾性率変動値ΔlogG(t)が、1.20以下である粘着剤によって構成することを特徴とする繰り返し屈曲デバイスの製造方法を提供する(発明6)。
ΔlogG(t)=logG(t)max-logG(t)min …(I)
【0015】
上記発明(発明6)においては、前記粘着剤から構成されている粘着剤層を有する粘着シートを使用して、前記繰り返し屈曲デバイスの構成部材を貼合することが好ましい(発明7)。
【0016】
第3に本発明は、1層または複数層の粘着剤層を備えた繰り返し屈曲デバイスにおける屈曲跡の抑制方法であって、前記粘着剤層の少なくとも1層を、JIS K7244-1に準拠して、粘着剤を10%ひずませたときに測定される最大の緩和弾性率値を最大緩和弾性率G(t)max(MPa)とし、当該最大緩和弾性率G(t)maxが測定されてから3757秒後まで前記粘着剤を10%ひずませ続け、その間に測定される最小の緩和弾性率値を最小緩和弾性率G(t)min(MPa)とし、以下の式(I)から算出される緩和弾性率変動値ΔlogG(t)が、1.20以下である粘着剤によって構成することを特徴とする繰り返し屈曲デバイスにおける屈曲跡の抑制方法を提供する(発明8)。
ΔlogG(t)=logG(t)max-logG(t)min …(I)
【0017】
上記発明(発明8)においては、前記粘着剤から構成されている粘着剤層を有する粘着シートを使用して、前記繰り返し屈曲デバイスの構成部材を貼合することが好ましい(発明9)。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る繰り返し屈曲デバイスは、繰り返し屈曲させた場合や長期間屈曲状態に置かれた場合において、屈曲状態から解放した後に、屈曲跡が付き難い。また、本発明に係る繰り返し屈曲デバイスの製造方法によれば、そのような繰り返し屈曲デバイスを製造することができる。さらに、本発明に係る屈曲跡の抑制方法によれば、繰り返し屈曲デバイスにおいて屈曲跡が付くことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る繰り返し屈曲デバイスを製造するための一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスの断面図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスの断面図である。
図4】本発明の別の実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスの断面図である。
図5】実施例で製造した積層体の断面図である。
図6】静的屈曲試験を説明する説明図(側面図)である。
図7】屈曲試験の試験結果としての試験片の変形量を説明する説明図(側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔繰り返し屈曲デバイス〕
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスは、繰り返し屈曲されたり、長期間屈曲状態に置かれるデバイスであって、1層または複数層の粘着剤層を備えている。この粘着剤層によって、複数の構成部材(屈曲性を有する屈曲性部材)が貼合され、もって繰り返し屈曲デバイスが構成される。
【0021】
1.粘着剤層(耐屈曲粘着剤層)
(1)粘着剤層(耐屈曲粘着剤層)の物性
上記粘着剤層の少なくとも1層は、JIS K7244-1に準拠して、粘着剤を10%ひずませたときに測定される最大の緩和弾性率値を最大緩和弾性率G(t)max(MPa)とし、当該最大緩和弾性率G(t)maxが測定されてから3757秒後まで粘着剤を10%ひずませ続け、その間に測定される最小の緩和弾性率値を最小緩和弾性率G(t)min(MPa)とし、以下の式(I)から算出される緩和弾性率変動値ΔlogG(t)が、1.20以下である粘着剤からなる。
ΔlogG(t)=logG(t)max-logG(t)min …(I)
本明細書では、上記粘着剤からなる粘着剤層を、「耐屈曲粘着剤層」という場合がある。また、耐屈曲粘着剤層以外の粘着剤層を、「非耐屈曲粘着剤層」という場合がある。なお、緩和弾性率G(t)の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
【0022】
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスは、当該繰り返し屈曲デバイスが有する粘着剤層の少なくとも1層が上記粘着剤からなることにより、所定量ひずませた際の応力変動が小さく、すなわち、元に戻ろうとする力が保持され易い。そのため、除荷した際に変形が元に戻り易い。したがって、当該繰り返し屈曲デバイスは、繰り返し屈曲された場合や長期間屈曲状態に置かれた場合において、屈曲状態から解放した後に復元し易く、屈曲した状態で固まって屈曲跡が付くことを抑制することができる。なお、上記繰り返し屈曲の回数の指標としては、一例として3万回が例示される。
【0023】
繰り返し屈曲デバイスの屈曲跡抑制効果の観点から、上記緩和弾性率変動値ΔlogG(t)は、1.20以下であることを要し、1.00以下であることが好ましく、特に0.80以下であることが好ましく、さらには0.50以下であることが好ましい。なお、緩和弾性率変動値の下限値は特に限定されないが、通常は0.10以上であることが好ましく、特に0.15以上であることが好ましい。
【0024】
上記最大緩和弾性率G(t)maxは、上限値として、1.0MPa以下であることが好ましく、特に0.95MPa以下であることが好ましく、さらには0.90MPa以下であることが好ましい。最大緩和弾性率G(t)maxの上限値が上記であることで、上記緩和弾性率変動値ΔlogG(t)が前述した値を満たし易いものとなる。最大緩和弾性率G(t)maxの下限値は特に限定されないが、通常は0.05MPa以上であることが好ましく、特に0.10MPa以上であることが好ましく、さらには0.15MPa以上であることが好ましい。
【0025】
また、上記最小緩和弾性率G(t)minは、下限値として、0.005MPa以上であることが好ましく、特に0.020MPa以上であることが好ましく、さらには0.035MPa以上であることが好ましい。最小緩和弾性率G(t)minの下限値が上記であることで、上記緩和弾性率変動値ΔlogG(t)が前述した値を満たし易いものとなる。最小緩和弾性率G(t)minの上限値は特に限定されないが、通常は0.50MPa以下であることが好ましく、特に0.45MPa以下であることが好ましく、さらには0.40MPa以下であることが好ましい。
【0026】
本実施形態では、上記耐屈曲粘着剤層を構成する粘着剤が、当該粘着剤に3000Paの応力を印加した時に測定されるクリープコンプライアンス値を最小クリープコンプライアンスJ(t)min(MPa-1)とし、当該最小クリープコンプライアンスJ(t)minが測定されてから3757秒後まで3000Paの応力を印加し続け、その間に測定される最大のクリープコンプライアンス値を最大クリープコンプライアンスJ(t)max(MPa-1)とし、以下の式(II)から算出されるクリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)が、2.84以下であることが好ましい。
ΔlogJ(t)=logJ(t)max-logJ(t)min …(II)
なお、「粘着剤に3000Paの応力を印加した時」とは、粘着剤に応力を印加し、その応力が3000Paに達した時点のことをいう。クリープコンプライアンスJ(t)の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
【0027】
粘着剤のクリープコンプライアンス変動値が上記のように小さいことにより、所定の応力を与えた際のひずみ変動が小さく、すなわち、粘着剤層は変形を生じ難いものとなる。したがって、上記繰り返し屈曲デバイスは、繰り返し屈曲された場合や長期間屈曲状態に置かれた場合において、屈曲状態から解放した後に、変形そのものが抑制され、繰り返し屈曲デバイスに屈曲跡が付くことをより効果的に抑制することができる。
【0028】
繰り返し屈曲デバイスの屈曲跡抑制効果の観点から、上記クリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)は、2.84以下であることが好ましく、2.50以下であることがより好ましく、特に2.00以下であることが好ましく、さらには1.80以下であることが好ましい。なお、クリープコンプライアンス変動値の下限値は特に限定されないが、通常は1.00以上であることが好ましく、特に1.20以上であることが好ましい。
【0029】
上記最小クリープコンプライアンスJ(t)minは、下限値として、1.00MPa-1以上であることが好ましく、特に1.10MPa-1以上であることが好ましく、さらには1.15MPa-1以上であることが好ましい。最小クリープコンプライアンスJ(t)minの下限値が上記であることで、上記クリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)が前述した値を満たし易いものとなる。最小クリープコンプライアンスJ(t)minの上限値は特に限定されないが、通常は5.0MPa-1以下であることが好ましく、特に4.5MPa-1以下であることが好ましく、さらには4.0MPa-1以下であることが好ましい。
【0030】
また、上記最大クリープコンプライアンスJ(t)maxは、上限値として、900MPa-1以下であることが好ましく、特に500MPa-1以下であることが好ましく、さらには300MPa-1以下であることが好ましく、200MPa-1以下であることが最も好ましい。最大クリープコンプライアンスJ(t)maxの上限値が上記であることで、上記クリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)が前述した値を満たし易いものとなる。最大クリープコンプライアンスJ(t)maxの下限値は特に限定されないが、通常は10MPa-1以上であることが好ましく、特に15MPa-1以上であることが好ましく、さらには20MPa-1以上であることが好ましい。
【0031】
上述した緩和弾性率変動値ΔlogG(t)とクリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)との積(ΔlogG(t)×ΔlogJ(t))は、3.3以下であることが好ましく、特に2.0以下であることが好ましく、さらには1.0以下であることが好ましい。上記の積値が上記のように小さいことにより、屈曲時の応力変動またはひずみ変動が小さく、それにより、除荷した際に変形が元に戻り易く、または変形そのものが生じ難い。これにより、繰り返し屈曲デバイスに屈曲跡が付くことをより効果的に抑制することができる。なお、上記積値の下限値は特に限定されないが、通常は0.1以上であることが好ましく、特に0.2以上であることが好ましい。
【0032】
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスに含まれる粘着剤層の総数に対する、上記耐屈曲粘着剤層の数の割合は、10%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、特に35%以上であることが好ましく、さらには50%以上であることが好ましい。耐屈曲粘着剤層の数の割合が上記であることにより、耐屈曲粘着剤層による復元作用、さらには変形抑制作用の影響が繰り返し屈曲デバイスに対して大きく及ぼされ、繰り返し屈曲デバイスに屈曲跡が付くことをより効果的に抑制することができる。なお、耐屈曲粘着剤層の数の割合の上限値は100%である。
【0033】
また、本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスの厚さに対する上記耐屈曲粘着剤層の総厚さの割合は、下限値として、1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、特に3%以上であることが好ましく、さらには5%以上であることが好ましい。なお、「耐屈曲粘着剤層の総厚さ」とは、繰り返し屈曲デバイスに耐屈曲粘着剤層が1層のみ含まれる場合には、その1層の厚さをいい、繰り返し屈曲デバイスに耐屈曲粘着剤層が複数層含まれる場合には、その合計の厚さをいう。耐屈曲粘着剤層の総厚さの割合の下限値が上記であることにより、耐屈曲粘着剤層による復元作用、さらには変形抑制作用の影響が繰り返し屈曲デバイスに対して大きく及ぼされ、繰り返し屈曲デバイスに屈曲跡が付くことをより効果的に抑制することができる。
【0034】
一方、本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスの厚さに対する上記耐屈曲粘着剤層の総厚さの割合の上限値は、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、特に20%以下であることが好ましく、さらには10%以下であることが好ましい。これにより、繰り返し屈曲デバイスで必要とされる、耐屈曲粘着剤層以外の各構成部材の厚さを確保することができる。
【0035】
(2)粘着剤
上記耐屈曲粘着剤層を構成する粘着剤の種類は、前述した物性が満たされれば特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、前述した物性を満たし易く、粘着物性、光学特性等にも優れるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0036】
また、アクリル系粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性のものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性のものであってもよいし、熱架橋性のものであってもよいし、非架橋性のものであってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよいが、良好な柔軟性を得るために、活性エネルギー線非硬化性のものであることが好ましい。活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤としては、特に架橋タイプのものが好ましく、さらには熱架橋タイプのものが好ましい。
【0037】
上記耐屈曲粘着剤層を構成する粘着剤は、特に、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋してなる粘着剤であることが好ましい。かかる粘着剤であれば、前述した物性を満たし易く、また、良好な粘着力および所定の凝集力が得られるため、耐久性にも優れたものとなる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0038】
(2-1)粘着性組成物Pの成分
(2-1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、分子内に反応性官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)とを含有することが好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することで、好ましい粘着性を発現することができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよいし、環状構造を有するものであってもよい。
【0040】
アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が-40℃以下であるもの(以下「低Tgアルキルアクリレート」という場合がある。)を含有することが好ましい。かかる低Tgアルキルアクリレートを構成モノマー単位として含有することにより、得られる粘着剤の柔軟性を向上させることができる。
【0041】
低Tgアルキルアクリレートとしては、例えば、アクリル酸n-ブチル(Tg-55℃)、アクリル酸n-オクチル(Tg-65℃)、アクリル酸イソオクチル(Tg-58℃)、アクリル酸2-エチルヘキシル(Tg-70℃)、アクリル酸イソノニル(Tg-58℃)、アクリル酸イソデシル(Tg-60℃)、メタクリル酸イソデシル(Tg-41℃)、メタクリル酸n-ラウリル(Tg-65℃)、アクリル酸トリデシル(Tg-55℃)、メタクリル酸トリデシル(Tg-40℃)等が好ましく挙げられる。中でも、より効果的に柔軟性を向上させる観点から、低Tgアルキルアクリレートとして、ホモポリマーのTgが、-45℃以下であるものであることがより好ましく、-50℃以下であるものであることが特に好ましい。具体的には、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、低Tgアルキルアクリレートを、下限値として50質量%以上含有することが好ましく、特に55質量%以上含有することが好ましく、さらには60質量%以上含有することが好ましい。上記低Tgアルキルアクリレートを50質量%以上含有することにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)を前述した範囲により設定し易くなる。
【0043】
一方、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として上記低Tgアルキルアクリレートを、上限値として80質量%以下含有することが好ましく、特に75質量%以下含有することが好ましく、さらには70質量%以下含有することが好ましい。上記低Tgアルキルアクリレートを上記の含有量で含有することにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に他のモノマー成分(特に反応性官能基含有モノマー)を好適な量導入することができる。
【0044】
また、上記アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が0℃を超えるモノマー(以下「高Tgアルキルアクリレート」と称する場合がある。)を含有することが好ましい。かかる高Tgアルキルアクリレートを構成モノマー単位として含有することにより、得られる粘着剤層が前述した物性を満たし易いものとなる。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として高Tgアルキルアクリレートを含有する場合、その含有量は、5質量%以上であることが好ましく、特に10質量%以上であることが好ましく、さらには15質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、30質量%以下であることが好ましく、特に25質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。
【0046】
上記高Tgアルキルアクリレートとしては、例えば、アクリル酸メチル(Tg10℃)、メタクリル酸メチル(Tg105℃)、メタクリル酸エチル(Tg65℃)、メタクリル酸n-ブチル(Tg20℃)、メタクリル酸イソブチル(Tg48℃)、メタクリル酸t-ブチル(Tg107℃)、アクリル酸n-ステアリル(Tg30℃)、メタクリル酸n-ステアリル(Tg38℃)、アクリル酸シクロヘキシル(Tg15℃)、メタクリル酸シクロヘキシル(Tg66℃)、メタクリル酸ベンジル(Tg54℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg94℃)、メタクリル酸イソボルニル(Tg180℃)、アクリル酸アダマンチル(Tg115℃)、メタクリル酸アダマンチル(Tg141℃)等が挙げられる。上記の中でも、凝集力の観点から、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸イソボルニルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記高Tgアルキルアクリレートには、後述する窒素原子含有モノマーは含まない。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを含有することで、当該反応性官能基含有モノマー由来の反応性官能基を介して、後述する架橋剤(B)と反応し、これにより架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する粘着剤が得られる。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として含有する反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの反応性官能基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記反応性官能基含有モノマーの中でも、水酸基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーが好ましく、柔軟性の観点から水酸基含有モノマーが特に好ましい。
【0050】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の柔軟性の観点から、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを含有する場合、水酸基含有モノマーの含有量は、5質量%以上であることが好ましく、特に10質量%以上であることが好ましく、さらには15質量%以上であることが好ましい。また、当該水酸基含有モノマーの含有量は、30質量%以下であることが好ましく、特に25質量%以下であることが好ましい。水酸基含有モノマーの含有量が上記であることにより、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の柔軟性および粘着性がより良好なものとなり、得られる粘着剤層が前述した物性を満たし易いものとなる。
【0052】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有してもよい。窒素原子含有モノマーとしては、アミノ基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、窒素含有複素環を有するモノマーなどが挙げられ、中でも、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。また、構成される粘着剤の高次構造中で上記窒素原子含有モノマー由来部分の自由度を高める観点から、当該窒素原子含有モノマーは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成するための重合に使用される1つの重合性基以外に反応性不飽和二重結合性基を含有しないことが好ましい。
【0053】
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が挙げられ、中でも、より優れた粘着力を発揮するN-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN-アクリロイルモルホリンが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有する場合、窒素原子含有モノマーの含有量は、1質量%以上であることが好ましく、特に3質量%以上であることが好ましい。また、当該窒素原子含有モノマーの含有量は、20質量%以下であることが好ましく、特に15質量%以下であることが好ましく、さらには10質量%以下であることが好ましい。
【0055】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの前述した作用を阻害しないためにも、反応性官能基を含有しないモノマーが好ましい。かかるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の下限値は、10万以上であることが好ましく、特に30万以上であることが好ましく、さらには50万以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の下限値が上記であると、粘着剤の耐久性がより優れたものとなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0058】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値は、150万以下であることが好ましく、特に120万以下であることが好ましく、さらには100万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値が上記であると、得られる粘着剤の柔軟性がより優れたものとなる。
【0059】
粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(2-1-2)架橋剤(B)
架橋剤(B)は、当該架橋剤(B)を含有する粘着性組成物Pの加熱等をトリガーとして、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋し、三次元網目構造を形成する。これにより、得られる粘着剤の凝集力が向上し、粘着剤層が耐久性に優れたものとなる。
【0061】
上記架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、反応性官能基含有モノマー、特に水酸基含有モノマーとの反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0063】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましく、特に0.5質量部以上であることが好ましく、さらには1.0質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、特に5質量部以下であることが好ましく、さらには3質量部以下であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤の凝集力が適度なものとなり、粘着剤層が前述した物性を満たし易いものとなる。
【0064】
(2-1-3)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
【0065】
(2-2)粘着性組成物Pの製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを混合するとともに、所望により添加剤を加えることで製造することができる。
【0066】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0067】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0068】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0069】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0070】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、ならびに所望により添加剤および希釈溶剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。
【0071】
なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0072】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0073】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0074】
(2-3)粘着剤の製造
耐屈曲粘着剤層を構成する粘着剤は、好ましくは粘着性組成物Pを架橋してなるものである。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗膜から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0075】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。
【0076】
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
【0077】
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が十分に架橋されて架橋構造が形成され、粘着剤が得られる。かかる粘着剤は、所定の凝集力を有するものとなる。
【0078】
(2-4)粘着剤の物性
耐屈曲粘着剤層を構成する粘着剤の25℃における貯蔵弾性率(G’)は、下限値として、0.01MPa以上であることが好ましく、特に0.03MPa以上であることが好ましい。また、上記貯蔵弾性率(G’)の上限値は、0.30MPa以下であることが好ましく、特に0.25MPa以下であることが好ましい。
【0079】
また、耐屈曲粘着剤層を構成する粘着剤の25℃における損失弾性率(G”)は、下限値として、0.005MPa以上であることが好ましく、特に0.01MPa以上であることが好ましい。また、上記損失弾性率(G”)の上限値は、0.1MPa以下であることが好ましく、特に0.08MPa以下であることが好ましい。
【0080】
さらに、耐屈曲粘着剤層を構成する粘着剤の25℃における損失正接(tanδ)は、下限値として、0.25以上であることが好ましく、特に0.28以上であることが好ましい。また、上記損失正接(tanδ)の上限値は、0.85以下であることが好ましく、特に0.80以下であることが好ましい。
【0081】
耐屈曲粘着剤層を構成する粘着剤の貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)および損失正接(tanδ)がそれぞれ上記の範囲にあると、得られる粘着剤層が前述した物性を満たし易いものとなる。なお、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)および損失正接(tanδ)の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0082】
(3)粘着シート
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスは、上述した耐屈曲粘着剤層を有する粘着シートを使用して、所望の構成部材(屈曲性を有する屈曲性部材)を貼合することにより、好ましく製造することができる。
【0083】
上記粘着シートの一例としての具体的構成を図1に示す。
図1に示すように、一実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された耐屈曲粘着剤層11Rとから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0084】
(3-1)構成要素
(3-1-1)耐屈曲粘着剤層
耐屈曲粘着剤層11Rは、前述した物性を満たす粘着剤からなるものであり、好ましくは、粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤から構成される。
【0085】
粘着シート1における耐屈曲粘着剤層11Rの厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、下限値として2μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましく、さらには10μm以上であることが好ましい。耐屈曲粘着剤層11Rの厚さの下限値が上記であると、所望の粘着力を発揮し易く、繰り返し屈曲時における浮きや剥がれの発生を効果的に抑制することができる。また、耐屈曲粘着剤層11Rの厚さは、上限値として150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、特に70μm以下であることが好ましく、さらには50μm以下であることが好ましい。耐屈曲粘着剤層11Rの厚さの上限値が上記であると、繰り返し屈曲による、粘着剤または粘着剤を構成する成分の粘着剤層からの染み出しを抑制することができる。なお、耐屈曲粘着剤層11Rは単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。耐屈曲粘着剤層11Rについて、複数層を積層して形成した耐屈曲粘着剤層11Rは、単層として扱う。
【0086】
(3-1-2)剥離シート
剥離シート12a,12bは、粘着シート1の使用時まで耐屈曲粘着剤層11Rを保護するものであり、粘着シート1(耐屈曲粘着剤層11R)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1において、剥離シート12a,12bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
【0087】
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0088】
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に耐屈曲粘着剤層11Rと接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0089】
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
【0090】
(3-2)粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例として、上記粘着性組成物Pを使用した場合について説明する。一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成した後、その塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が耐屈曲粘着剤層11Rとなる。これにより、上記粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0091】
粘着シート1の他の製造例としては、一方の剥離シート12aの剥離面に、粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12aを得る。また、他方の剥離シート12bの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート12aと塗布層付きの剥離シート12bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された塗布層が耐屈曲粘着剤層11Rとなる。これにより、上記粘着シート1が得られる。この製造例によれば、耐屈曲粘着剤層11Rが比較的厚い場合であっても、安定して製造することが可能となる。
【0092】
上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0093】
2.繰り返し屈曲デバイスの構成
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスは、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電気泳動方式のディスプレイ(電子ペーパー)、フレキシブルプリント基板、基板としてプラスチック基板(フィルム)を用いた液晶ディスプレイ、フォルダブルディスプレイ、マイクロLEDディスプレイ、量子ドットディスプレイ等であり、タッチパネルであってもよい。
【0094】
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスの一例としての構成を、図を参照して説明する。
【0095】
図2に示される繰り返し屈曲デバイス10Aは、下から順に、第1のプラスチック基板211と、第1の粘着剤層111と、ガスバリア層付きの第2のプラスチック基板221と、薄膜トランジスタ3と、有機発光ダイオード4と、当該有機発光ダイオード4を封止する第2の粘着剤層112と、ガスバリア層付きの第3のプラスチック基板222と、タッチセンサー5と、第3の粘着剤層113と、第4のプラスチック基板212とを積層して構成される。
【0096】
上記繰り返し屈曲デバイス10Aにおいては、第1の粘着剤層111、第2の粘着剤層112および第3の粘着剤層113のうち、少なくとも1層が耐屈曲粘着剤層であり、それ以外が非耐屈曲粘着剤層である。なお、有機発光ダイオード4を封止する第2の粘着剤層112の厚さは、有機発光ダイオード4を覆うことが可能な厚さであることが好ましく、通常、1~10μmであり、好ましくは3~5μmである。
【0097】
なお、有機発光ダイオード4には、図示しない薄膜封止(Thin Film Encapsulation;TFE)層が積層されていてもよい。薄膜封止層は、通常、窒化ケイ素や酸化アルミニウム等を含むものであり、PVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、またはALD(Atomic Layer Deposition)法等により形成することができ、2層以上設けられていてもよい。また、薄膜封止層の厚さは、通常、100nm~2μmである。
【0098】
図3に示される繰り返し屈曲デバイス10Bは、下から順に、第1のプラスチック基板211と、第1の粘着剤層111と、ガスバリア層付きの第2のプラスチック基板221と、薄膜トランジスタ3と、有機発光ダイオード4と、当該有機発光ダイオード4を封止する第2の粘着剤層112と、ガスバリア層付きの第3のプラスチック基板222と、タッチセンサー5と、第3の粘着剤層113と、第4のプラスチック基板212と、第4の粘着剤層114と、ハードコート層付きの第5のプラスチック基板231とを積層して構成される。
【0099】
上記繰り返し屈曲デバイス10Bにおいては、第1の粘着剤層111、第2の粘着剤層112、第3の粘着剤層113および第4の粘着剤層114のうち、少なくとも1層が耐屈曲粘着剤層であり、それ以外が非耐屈曲粘着剤層である。
【0100】
図4に示される繰り返し屈曲デバイス10Cは、下から順に、第1のプラスチック基板211と、第1の粘着剤層111と、ガスバリア層付きの第2のプラスチック基板221と、薄膜トランジスタ3と、有機発光ダイオード4と、当該有機発光ダイオード4を封止する第2の粘着剤層112と、ガスバリア層付きの第3のプラスチック基板222と、タッチセンサー5と、第3の粘着剤層113と、第4のプラスチック基板212と、第4の粘着剤層114と、第1の波長板(λ/4)71と、第5の粘着剤層115と、第2の波長板(λ/2)72と、第6の粘着剤層116と、偏光板81と、ハードコート層付きの偏光板保護フィルム82とを積層して構成される。
【0101】
上記繰り返し屈曲デバイス10Cにおいては、第1の粘着剤層111、第2の粘着剤層112、第3の粘着剤層113、第4の粘着剤層114、第5の粘着剤層115および第6の粘着剤層116のうち、少なくとも1層が耐屈曲粘着剤層であり、それ以外が非耐屈曲粘着剤層である。
【0102】
上記繰り返し屈曲デバイス10A~10Cを構成する粘着剤層以外の構成部材は、屈曲性を有する屈曲性部材である。これら屈曲性部材のヤング率は、それぞれ0.1~10GPaであることが好ましく、特に0.5~7GPaであることが好ましく、さらには1.0~5GPaであることが好ましい。各屈曲性部材のヤング率がかかる範囲にあることで、各屈曲性部材について繰り返し屈曲させることが容易になる。
【0103】
上記屈曲性部材の厚さは、それぞれ5~3000μmであることが好ましく、特に10~1000μmであることが好ましく、さらには10~500μmであることが好ましい。屈曲性部材の厚さがかかる範囲にあることで、各屈曲性部材について繰り返し屈曲させることが容易になる。
【0104】
繰り返し屈曲デバイス10A~10Cは、複数の粘着剤層の少なくとも1層を耐屈曲粘着剤層とする以外、常法によって製造することができる。耐屈曲粘着剤層として前述した粘着シート1の耐屈曲粘着剤層11Rを使用する場合には、粘着シート1の一方の剥離シート12a(12b)を剥離して、粘着シート1の露出した耐屈曲粘着剤層11Rを、所定の一の構成部材に貼合する。その後、粘着シート1の耐屈曲粘着剤層11Rから他方の剥離シート12b(12a)を剥離して、粘着シート1の露出した耐屈曲粘着剤層11Rと所定の他の構成部材とを貼合する。
【0105】
耐屈曲粘着剤層11R以外の粘着剤層については、所望の粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着シートを上記粘着シート1と同様にして使用することにより、形成することができる。
【0106】
薄膜トランジスタ3は、第2のプラスチック基板221に対して蒸着等を行うことにより、構築することができる。また、タッチセンサー5は、第3のプラスチック基板222に対してITO等の導電材を、蒸着等の処理をすることにより、形成することができる。なお、タッチセンサー5は、第4のプラスチック基板212に対してITO等を蒸着等することにより、形成することもできる。この場合、第3の粘着剤層113は、第3のプラスチック基板222とタッチセンサー5との間に位置することとなる。さらに、タッチセンサー5は、複数層によって構成されてもよく、その場合、タッチセンサー5の間に粘着剤層が存在していてもよい。
【0107】
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスは、少なくとも1層の耐屈曲粘着剤層を有するため、繰り返し屈曲させた場合(例えば3万回)や長期間屈曲状態に置かれた場合(例えば少なくとも24時間以上)において、屈曲状態から解放した後に、復元し易く、屈曲跡が付き難い。かかる繰り返し屈曲デバイスの屈曲跡抑制効果は、例えば、静的屈曲試験による静的屈曲変形量により評価することができる。なお、屈曲試験として、繰り返し屈曲デバイスを繰り返し(例えば3万回)屈曲させる動的屈曲試験もあるが、繰り返し屈曲デバイスにとって動的屈曲試験よりも静的屈曲試験の方が試験条件として厳しいため、静的屈曲試験で良い結果が得られれば、動的屈曲試験でも良い結果が得られる。したがって、繰り返し屈曲デバイスの屈曲跡抑制効果を確認するにあたり、静的屈曲試験を行えば足りるということができる。
【0108】
静的屈曲試験においては、2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:12μm)で粘着剤層(厚さ:12μm)を挟持してなる積層体であって、200mm×50mmの大きさのものを試験片とする。図6に示すように、この試験片Sを、23℃、50%RHの環境下、立設した2枚のガラス板からなる保持プレートPの間に、屈曲させた状態で、24時間保持する。このとき、2枚の保持プレートPの相互間の距離は6mmに設定し(試験片Sの屈曲径:6mmφ)、試験片Sの長辺(200mm)の略中央部が屈曲部となり、試験片Sの両方の短辺(50mm)が上側に位置するように試験片Sを保持する。この静的屈曲試験を行った後、2枚の保持プレートPの間から試験片Sを取り出し、図7に示すように、屈曲部の凸方向が上側になるように、試験片Sを平板上に載置する。そして、試験直後および試験24時間後に、平板表面から屈曲部(変形部)の頂点までの高さhを静的屈曲変形量として測定する。この静的屈曲変形量を静的屈曲試験の試験結果とし、当該静的屈曲変形量を基準に屈曲跡抑制効果を評価することができる。
【0109】
静的屈曲試験による静的屈曲変形量は、試験直後において、24mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましく、特に10mm以下であることが好ましく、さらには5mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることが最も好ましい。なお、試験直後の静的屈曲変形量の下限値は、0mmであることが好ましい。
【0110】
静的屈曲試験による静的屈曲変形量は、試験24時間後において、10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましく、特に6mm以下であることが好ましく、さらには4mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることが最も好ましい。なお、試験24時間後の静的屈曲変形量の下限値は、0mmであることが好ましい。
【0111】
〔屈曲跡の抑制方法〕
1層または複数層の粘着剤層を備えた繰り返し屈曲デバイスにおいては、粘着剤層の少なくとも1層を、前述した物性を満たす粘着剤から形成することにより、すなわち、粘着剤層の少なくとも1層を前述した屈曲粘着剤層とすることにより、屈曲跡が付くことを抑制することができる。
【0112】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0113】
例えば、粘着シート1における剥離シート12a,12bのいずれか一方または両方は省略されてもよく、また、剥離シート12aおよび/または12bの替わりに所望の構成部材が積層されてもよい。さらに、繰り返し屈曲デバイス10A~10Cにおいては、別の層を備えてもよいし、一部の層が省略されてもよい。
【実施例
【0114】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0115】
〔製造例1〕(粘着シートIの製造)
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル65質量部、アクリル酸イソボニル15質量部、N-アクリロイルモルホリン5質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル15質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。
【0116】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)1.20質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトン(MEK)で希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液(固形分濃度:30.0質量%)を得た。
【0117】
3.粘着シートの製造
上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382150」)の剥離処理面に、コンマコーター(登録商標)で塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。
【0118】
次いで、上記で得られた重剥離型剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」)とを、当該軽剥離型剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、厚さ12μmの粘着剤層を有する粘着シート、すなわち、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:12μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートIを作製した。この粘着シートIの粘着剤層を「粘着剤層I」という。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
【0119】
〔製造例2〕(粘着シートIIの製造)
製造例1で調製した(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を使用し、架橋剤(B)の配合量を0.30質量部に変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートIIを作製した。この粘着シートIIの粘着剤層を「粘着剤層II」という。
【0120】
〔製造例3〕(粘着シートIIIの製造)
アクリル酸ブチル60質量部、アクリル酸メチル20質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
【0121】
上記で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)1.88質量部とを混合し、十分に撹拌して、MEKで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液(固形分濃度:30.0質量%)を得た。得られた粘着性組成物の塗布溶液を使用する以外、実施例1と同様にして粘着シートIIIを作製した。この粘着シートIIIの粘着剤層を「粘着剤層III」という。
【0122】
〔製造例4〕(粘着シートIVの製造)
製造例1で調製した(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を使用し、架橋剤(B)の配合量を0.60質量部に変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートIVを作製した。この粘着シートIVの粘着剤層を「粘着剤層IV」という。
【0123】
〔製造例5〕(粘着シートVの製造)
アクリル酸2-エチルヘキシル60質量部、メタクリル酸メチル20質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
【0124】
上記で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)1.88質量部とを混合し、十分に撹拌して、MEKで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液(固形分濃度:30.0質量%)を得た。得られた粘着性組成物の塗布溶液を使用する以外、実施例1と同様にして粘着シートVを作製した。この粘着シートVの粘着剤層を「粘着剤層V」という。
【0125】
〔製造例6〕(粘着シートVIの製造)
イソブチレン-イソプレン共重合体(日本ブチル社製,製品名「Butyl365」)15質量部と、粘着付与剤(日本ゼオン社製,製品名「クイントンA100」)3質量部とを混合し、十分に撹拌して、トルエンで希釈することにより、ブチルゴムとしての粘着性組成物の塗布溶液(固形分濃度:15質量%)を得た。得られた粘着性組成物の塗布溶液を使用して、加熱処理温度を100℃とする以外、実施例1と同様にして粘着シートVIを作製した。この粘着シートVIの粘着剤層を「粘着剤層VI」という。
【0126】
なお、表1中に、各製造例における(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の組成および架橋剤(B)の配合量((メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対する質量部)を記載する。表1中の略号は以下の通りである。
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
BA:アクリル酸n-ブチル
MA:アクリル酸メチル
MMA:メタクリル酸メチル
【0127】
〔実施例1〕
製造例1で得られた粘着シートIおよび製造例6で得られた粘着シートVIを使用して、図5に示す積層体100を製造した。この積層体100は、下から順に、第1の基材91と、第1の粘着剤層111と、第2の基材92と、第2の粘着剤層112と、第3の基材93と、第3の粘着剤層113と、第4の基材94とを積層してなるものであり、模擬の繰り返し屈曲デバイスに該当する。
【0128】
具体的には、最初に、第1の基材91、第2の基材92、第3の基材93および第4の基材94として、第1~第4のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製,製品名「S10ルミラー」,厚さ:12μm)を用意した。次に、23℃、50%RHの環境下にて、製造例6で得られた粘着シートVIから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層VIを、第1のPETフィルムの一方の面に貼合した。続いて、当該粘着シートVIから重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層VIに、第2のPETフィルムの一方の面を貼合した。
【0129】
次に、23℃、50%RHの環境下にて、製造例1で得られた粘着シートIから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層Iを、上記第2のPETフィルムの他方の面に貼合した。続いて、当該粘着シートIから重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層Iに、第3のPETフィルムの一方の面を貼合した。
【0130】
次に、23℃、50%RHの環境下にて、製造例6で作製した粘着シートVIから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層VIを、上記第3のPETフィルムの他方の面に貼合した。続いて、当該粘着シートVIから重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層VIに、第4のPETフィルムの一方の面を貼合した。最後に、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置し、図5に示される積層体100を得た。
【0131】
〔実施例2~23,比較例1〕
製造例1~6で製造した粘着シートI~VIを使用して、図5に示す積層体100を製造した。このとき、第1の粘着剤層111、第2の粘着剤層112および第3の粘着剤層113が、それぞれ表2に示される粘着剤層I~VIになるように粘着シートI~VIを使用する以外、実施例1と同様にして積層体100を製造した。
【0132】
〔試験例1〕(緩和弾性率の測定)
製造例で作製した粘着シートの粘着剤層を複数層積層し、厚さ0.5mmの積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ0.5mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
【0133】
上記サンプルについて、JIS K7244-1に準拠し、粘弾性測定装置(Anton paar社製,製品名「MCR302」)を用いて、以下の条件で粘着剤を10%ひずませ続け、緩和弾性率G(t)(MPa)を測定した。その測定結果から、最大緩和弾性率G(t)max(MPa)を導出するとともに、当該最大緩和弾性率G(t)maxが測定されてから3757秒後までに測定された最小緩和弾性率G(t)min(MPa)を導出した。
測定温度:25℃
測定点:1000点(対数プロット)
【0134】
得られた最大緩和弾性率G(t)max(MPa)および最小緩和弾性率G(t)min(MPa)から、以下の式(I)に基づいて、緩和弾性率変動値ΔlogG(t)を算出した。結果を表1に示す。
ΔlogG(t)=logG(t)max-logG(t)min …(I)
【0135】
〔試験例2〕(クリープコンプライアンスの測定)
製造例で作製した粘着シートの粘着剤層を複数層積層し、厚さ0.5mmの積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ0.5mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
【0136】
上記サンプルについて、粘弾性測定装置(Anton paar社製,製品名「MCR302」)を用いて、以下の条件で3000Paの応力を印加し続け、クリープコンプライアンスJ(t)(MPa-1)を測定した。その測定結果から、3000Paの応力が印加された時の値を最小クリープコンプライアンスJ(t)min(MPa-1)とし、当該最小クリープコンプライアンスJ(t)minが測定されてから3757秒後までに測定された最大クリープコンプライアンスJ(t)max(MPa-1)を導出した。
測定温度:25℃
測定点:1000点(対数プロット)
【0137】
得られた最小クリープコンプライアンスJ(t)min(MPa-1)および最大クリープコンプライアンスJ(t)max(MPa-1)から、以下の式(II)に基づいて、クリープコンプライアンス変動値ΔlogJ(t)を算出した。結果を表1に示す。
ΔlogJ(t)=logJ(t)max-logJ(t)min …(II)
【0138】
〔試験例3〕(積値の算出)
試験例1で得られたΔlogG(t)と、試験例2で得られたΔlogJ(t)との積値(ΔlogG(t)×ΔlogJ(t))を算出した。結果を表1に示す。
【0139】
〔試験例4〕(動的弾性率の測定)
製造例で作製した粘着シートの粘着剤層を複数層積層し、厚さ0.5mm程度の積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ0.5mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
【0140】
上記サンプルについて、JIS K7244-1に準拠し、粘弾性測定装置(Anton paar社製,製品名「MCR302」)を用いて、以下の条件で動的粘弾性を測定し、25℃における貯蔵弾性率(G’)(MPa)、損失弾性率(G”)(MPa)および損失正接(tanδ)を観測した。結果を表1に示す。
測定周波数:1Hz
測定温度範囲:-20~150℃
【0141】
〔試験例5〕(静的屈曲試験)
実施例および比較例で製造した積層体を200mm×50mmに裁断し、これを試験片とした。得られた試験片を、23℃、50%RHの環境下、図6に示すように、立設した2枚のガラス板からなる保持プレート(相互間距離:6mm)の間に、屈曲させた状態で24時間保持した。この静的屈曲試験を行った後、図7に示すように試験片を平板上に載置し、試験直後および試験24時間後に、平板表面から屈曲部(変形部)の頂点部分までの高さhを静的屈曲変形量として測定した。測定した静的屈曲変形量に基づいて、以下の基準により耐屈曲性(屈曲跡抑制効果)を評価した。結果を表2に示す。
◎:屈曲試験直後の変形量が15mm以下、試験24時間後の変形量が1mm以下
〇:屈曲試験直後の変形量が20mm以下、試験24時間後の変形量が3mm以下(◎のものを除く)
△:屈曲試験直後の変形量が24mm以下、試験24時間後の変形量が9mm以下(◎及び〇のものを除く)
×:上記以外
【0142】
【表1】
【0143】
【表2】
【0144】
表2から分かるように、製造例1~5で作製した粘着シートの粘着剤層を少なくとも1層有する実施例の積層体は、屈曲跡抑制効果に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明に係る繰り返し屈曲デバイスは、繰り返し屈曲可能な有機ELディスプレイ等として好適に使用され得る。
【符号の説明】
【0146】
1…粘着シート
11R…耐屈曲粘着剤層
12a,12b…剥離シート
10A,10B,10C…繰り返し屈曲デバイス
111,112,113,114,115,116…粘着剤層
211,212…プラスチック基板
221,222…ガスバリア層付きのプラスチック基板
231…ハードコート層付きのプラスチック基板
3…薄膜トランジスタ
4…有機発光ダイオード
5…タッチセンサー
71,72…波長板
81…偏光板
82…偏光板保護フィルム
100…積層体
91,92,93,94…基材
S…試験片
P…保持プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7