(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-16
(45)【発行日】2024-05-24
(54)【発明の名称】軸受装置および工作機械
(51)【国際特許分類】
F16C 41/00 20060101AFI20240517BHJP
F16C 35/077 20060101ALI20240517BHJP
F16C 37/00 20060101ALI20240517BHJP
B23B 19/02 20060101ALI20240517BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240517BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20240517BHJP
G01K 17/08 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C35/077
F16C37/00 B
B23B19/02 A
B23Q17/00 A
G01K1/14 M
G01K17/08
(21)【出願番号】P 2019178948
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 翔平
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-187451(JP,A)
【文献】特開2019-138464(JP,A)
【文献】特開2017-187450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00-19/56,33/30-33/66,
33/72-33/82,35/077,37/00,
41/00-41/04
B23B 19/02
B23Q 17/00
G01K 1/14
G01K 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を支持するための軸受と、
熱流束を検出する熱流束センサと、
前記熱流束センサを支持する第1支持部と、
前記軸受を支持し、かつ前記第1支持部が固定された第2支持部と
、
前記軸受と隣り合う固定間座と、
前記固定間座に取り付けられたハウジングを備え、
前記固定間座は、前記第1支持部および前記第2支持部を含み、
前記第1支持部は、前記第2支持部よりも高い熱伝導率を有し
、
前記第1支持部は、前記ハウジングに接している、軸受装置。
【請求項2】
回転体を支持するための軸受と、
熱流束を検出する熱流束センサと、
前記熱流束センサを支持する第1支持部と、
前記軸受を支持し、かつ前記第1支持部が固定された第2支持部とを備え、
前記第1支持部は、前記第2支持部よりも高い熱伝導率を有し、
前記軸受と隣り合う固定間座と、
前記固定間座に取り付けられたハウジングと、
前記ハウジングに隣り合う前蓋とをさらに備え、
前記前蓋は、前記第1支持部および前記第2支持部を含む、軸受装置。
【請求項3】
前記軸受は、内輪および前記内輪と向かい合う外輪を含み、
前記第1支持部は、前記内輪と前記外輪との間に前記第2支持部から突出している突出部を有し、
前記熱流束センサは、前記突出部に支持されている、請求項1~
2のいずれか1項に記載の軸受装置。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の前記軸受装置と、
前記回転体を回転させるモータとを備える、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置および工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械に用いられる軸受装置の温度は、軸受において焼損などの異常が発生すると正常の状態よりも上昇する。軸受装置の温度変化を検出することによって軸受装置の異常を検出する技術が知られている。
【0003】
例えば、特開2019-138464号公報(特許文献1)には、熱流束センサによって軸受装置の温度変化を検出することが可能な軸受装置が記載されている。この公報に記載された軸受装置においては、回転体が回転することにより軸受装置内の空気温度が変化する。熱流束センサの表面は、軸受装置内の空気温度を計測する。
【0004】
熱流束センサは、熱流束センサの表面の温度と裏面の温度との温度差によって、熱流束を計測する。熱流束センサの表面の温度と裏面の温度との温度差が大きくなるほど、この熱流束センサの出力が大きくなるため、熱流束センサの感度が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公報に記載された軸受装置においては、熱流束センサの裏面は、非回転側に配置された内輪、外輪、または間座の温度を計測する。これらの温度は、軸受装置内の空気温度よりも低い。このため、これらの温度が低くなるほど、熱流束センサの表面の温度と裏面の温度との温度差が大きくなるため、熱流束センサの感度が向上する。
【0007】
しかしながら、上記公報に記載された軸受装置においては、熱流束センサの表面の温度と裏面の温度との温度差が不十分である。よって、熱流束センサの感度は不十分である。したがって、熱流束センサが軸受装置内の温度変化を検出する感度は不十分である。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱流束センサが軸受装置内の温度変化を感度良く検出できる軸受装置および工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の軸受装置は、軸受と、熱流束センサと、第1支持部と、第2支持部とを備えている。軸受は、回転体を支持するためのものである。熱流束センサは、熱流束を検出する。第1支持部は、熱流束センサを支持する。第2支持部は、軸受を支持している。第2支持部には、第1支持部が固定されている。第1支持部は、第2支持部よりも高い熱伝導率を有している。
【0010】
好ましくは、軸受装置は、軸受と隣り合う固定間座をさらに備えている。固定間座は、第1支持部および第2支持部を含んでいる。
【0011】
好ましくは、軸受装置は、固定間座に取り付けられたハウジングをさらに備えている。ハウジングは、冷媒が流通可能な冷媒流路を含んでいる。ハウジングは、冷媒流路に流通する冷媒により冷却されるように構成されている。
【0012】
好ましくは、第1支持部は、ハウジングに接している。
好ましくは、軸受装置は、軸受と隣り合う固定間座と、固定間座に取り付けられたハウジングとをさらに備えている。固定間座は、第1支持部からなる。ハウジングは、第2支持部を含んでいる。
【0013】
好ましくは、軸受装置は、軸受と隣り合う固定間座と、固定間座に取り付けられたハウジングとをさらに備えている。ハウジングは、第1支持部および第2支持部を含んでいる。
【0014】
好ましくは、軸受装置は、軸受と隣り合う固定間座と、固定間座に取り付けられたハウジングと、ハウジングに隣り合う前蓋とをさらに備えている。前蓋は、第1支持部および第2支持部を含んでいる。
【0015】
好ましくは、軸受は、内輪および内輪と向かい合う外輪を含んでいる。第1支持部は、内輪と外輪との間に第2支持部から突出している突出部を有している。熱流束センサは、突出部に支持されている。
【0016】
好ましくは、工作装置は、上記の軸受装置と、回転体を回転させるモータとを備えている。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、熱流束センサが軸受装置内の温度変化を感度良く検出できる軸受装置および工作機械を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る軸受装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1の第1の変形例に係る軸受装置における
図2に対応する断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態1の第2の変形例に係る軸受装置における
図2に対応する断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態2に係る軸受装置における
図2に対応する断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態3に係る軸受装置における
図2に対応する断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態4に係る軸受装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態5に係る半導体装置における
図2に対応する断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態6に係る工作機械の構成を概略的に示す断面図である。
【
図11】比較例に係る軸受装置における
図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。なお、以下では、同一または相当する部分に同一の符号を付すものとし、重複する説明は繰り返さない。
【0020】
[実施の形態1]
〈軸受装置100の構成について〉
主に
図1~
図3を用いて、実施の形態1に係る軸受装置100の構成を説明する。軸受装置100は、軸受3と、熱流束センサ4と、固定間座5と、ハウジング6と、前蓋7と、回転体8と、回転間座9とを含んでいる。本実施の形態において、固定間座5は、第1支持部1および第2支持部2を含んでいる。
【0021】
図1に示されるように、回転体8は、中心軸CLに沿って延在している。回転体8は、軸受3に支持されている。回転体8は、中心軸CLを回転中心として、モータ300(
図10参照)によって回転され得る。回転体8は、軸受3の内輪31(
図2参照)に挿入された状態で回転可能に支持されている。回転体8に、ネジ36により接続部材37が固定されている。
【0022】
軸受3は、回転体8を支持するためのものである。本実施の形態では、軸受装置100は、2つの軸受3を含んでいる。軸受3は、例えば、アンギュラ玉軸受などの転がり軸受3である。
図2に示されるように、軸受3は、内輪31、外輪32、保持器33および転動体34を含んでいる。内輪31は、回転体8を支持している。内輪31および外輪32の間に、転動体34が配置されている。内輪31および外輪32は転動体34に摺動可能に構成されている。外輪32は、ハウジング6に固定されている。
【0023】
本実施の形態において、外輪32は、回転体8が回転している際にも回転しないように、ハウジング6に固定されている。回転体8の延在方向において内輪31の外側にカラー38および内輪押さえ35が配置されている。内輪31は、カラー38と回転間座9によって挟み込まれている。内輪押さえ35が締め付けられることで、カラー38を介して内輪31に応力が加えられることにより、内輪31が回転体8に固定されている。
【0024】
内輪31は、回転輪および非回転輪のいずれか一方である。外輪32は、回転輪および非回転輪のいずれか他方である。本実施の形態において、内輪31は、回転輪である。本実施の形態において、外輪32は、非回転輪である。なお、内輪31が非回転輪であり、かつ外輪32が回転輪であってもよい。
【0025】
転動体34は、例えば、複数の玉を含んでいる。保持器33は、転動体34を保持している。保持器33は、転動体34の複数の玉の各々の間に配置された部分を有している。
【0026】
図1には軸受3は2つ示されているが、軸受3の個数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0027】
図2に示されるように、第1支持部1は、熱流束センサ4を支持している。第1支持部1には、熱流束センサ4の裏面部41が固定されている。第1支持部1は、圧入、接着またはねじ止めなどによって第2支持部2に固定されている。第1支持部1は、回転間座9と間隔をあけて向かい合っている。
図3に示されるように、第1支持部1は、回転体8の中心軸CLを取り囲んでいる。
図3に示されるように、第1支持部1は、熱流束センサ4の配線部材43が挿入可能に構成されている。第1支持部1の形状は、例えば、環形状であってもよいし、C字形状であってもよい。
図1には複数の第1支持部1を含んでいる軸受装置100が示されているが、
図4に示されるように、軸受装置100は単一の第1支持部1を含んでいてもよい。
【0028】
第1支持部1は、第2支持部2よりも高い熱伝導率を有している。第1支持部1の材料は、例えば、アルミニウム(Al)または銅(Cu)などである。第1支持部1の材料は、第2支持部2よりも高い熱伝導率を有している材料であれば、適宜に決められてもよい。
【0029】
図2に示されるように、第2支持部2は、軸受3を支持している。第2支持部2には、第1支持部1が固定されている。第2支持部2の材料は、例えば、鉄(Fe)または鋼などである。第2支持部2の材料は、第1支持部1よりも低い熱伝導率を有している材料であれば、適宜に決められてもよい。
【0030】
図2に示されるように、固定間座5は、軸受3と隣り合っている。本実施の形態においては、固定間座5は、外輪32と隣り合っている外輪間座である。固定間座5は、2つの軸受3の外輪32の間に挟み込まれている。固定間座5は、回転間座9と間隔をあけて向かい合っている。回転間座9は、内輪31と隣り合っている。回転間座9は、2つの内輪31の間に挟み込まれている。
【0031】
図2に示されるように、ハウジング6と回転体8との間には、内部空間30が形成されている。内部空間30は、空気によって満たされている。内部空間30は、第1空間301および第2空間302を含んでいる。第1空間301は、内輪31と外輪32との間に形成されている。第2空間302は、固定間座5と回転間座9との間に形成されている。第2空間302は、第1空間301と連続的に形成されている。第1空間301に配置されている内輪31および外輪32は、後述するように発熱する。このため、第1空間301の空気の温度は、第2空間302の空気の温度よりも高い。
【0032】
図1に示されるように、ハウジング6は、固定間座5に取り付けられている。ハウジング6は、軸受3を挿入可能に構成されている。ハウジング6の形状は、例えば、中空の筒形状である。ハウジング6は、冷媒62が流通可能な冷媒流路61を含んでいる。ハウジング6は、冷媒流路61に流通する冷媒62により冷却されるように構成されている。
【0033】
図1に示されるように、冷媒流路61は、回転体8の中心軸CLを囲んでいる。冷媒62は、例えば、水である。冷媒62は、液体であってもよいし、気体であってもよい。具体的には、冷媒62は、例えば、オイル、または空気などである。
【0034】
図1に示されるように、ハウジング6は、本体部63と、ジャケット外筒64と、Oリング65を含んでいる。本体部63は、軸受3および固定間座5に取り付けられている。ジャケット外筒64は、本体部63に取り付けられている。冷媒流路61は、軸受装置100を冷却するための冷媒を流す流路である。冷媒流路61の両端には、Oリング65が嵌入されている。Oリング65がジャケット外筒64とハウジング6との間の隙間を密封することで、冷媒62が冷媒流路61から漏洩することが抑制される。ハウジング6が冷媒流路61を流れる冷媒62によって冷却されるため、固定間座5が冷却される。よって、第1支持部1および熱流束センサ4が冷却される。
【0035】
〈熱流束センサ4の構成について〉
図2に示されるように、熱流束センサ4は、熱流束Qを検出する。熱流束センサ4は、第1支持部1に配置されている。熱流束センサ4は、裏面部41と、裏面部41と対向する表面部42とを有している。熱流束センサ4の裏面部41は、第1支持部1の表面に接着剤等によって固定されている。熱流束センサ4の表面部42は、内部空間30に配置されている。熱流束センサ4の裏面部41は、第1支持部1の表面温度を計測する。熱流束センサ4の表面部42は、内部空間30の空気の温度を計測する。
図3に示されるように、熱流束センサ4は、配線部材43に接続されている。配線部材43は、図示されない外部機器または内部機器に接続されている。
【0036】
図5に示されるように、熱流束センサ4は軸受3に向かう方向に配置されていてもよい。具体的には、熱流束センサ4は、内輪31または外輪32と転動体34との摺動部に向けて配置されていてもよい。望ましくは、熱流束センサ4は、軸受装置100の発熱部と近づくように配置されている。
【0037】
図2に示されるように、熱流束センサ4は、裏面部41の温度と表面部42の温度との温度差を用いることで、熱流束センサ4の裏面部41と表面部42とを通過する熱流束Qを計測している。具体的には、熱流束センサ4は、熱流束センサ4の裏面部41の温度と表面部42の温度との温度差をゼーベック効果によって出力電圧に変換することによって、熱流束Qを計測する。
【0038】
2点間を通る熱流束は、2点間の温度差によって生じている。熱流束は、温度が高い方から温度が低い方へと向かって流れている。このため、熱流束センサ4を通る熱流束Qの大きさは、熱流束センサ4の裏面部41と表面部42との温度差が大きくなるにつれて、大きくなる。よって、熱流束センサ4の裏面部41と表面部42との温度差が大きくなるにつれて、熱流束センサ4が熱流束Qを検出する感度が高くなる。熱流束センサ4が熱流束Qを検出する感度が高くなることによって、軸受装置100の温度変化が検出される感度が高くなる。
【0039】
したがって、熱流束センサ4の表面部42および裏面部41の一方が最も冷却されない部位(発熱部位)と近づくように配置され、かつ熱流束センサ4の表面部42および裏面部41の他方が最も冷却される部位と近づくように配置されることが望ましい。これにより、熱流束センサ4の裏面部41と表面部42との温度差が大きくなるため、熱流束センサ4を通る熱流束Qが大きくなり、熱流束センサ4の感度が高くなる。本実施の形態においては、熱流束センサ4の表面部42が発熱部位に近づくように配置され、かつ裏面部41が最も冷却される部位に近づくように配置されている。
【0040】
図1に示されるように、軸受装置100は、複数の熱流束センサ4を含んでいてもよい。複数の熱流束センサ4は、図示しない制御部に接続されている。複数の熱流束センサ4が計測した熱流束Qまたは熱流束Qの変化率の各々の差は、図示しない制御部によって算出される。これにより、軸受装置100での異常な変化の有無が判定される。例えば、複数の熱流束センサ4が計測した熱流束Qまたは熱流束Qの変化率の各々の差が、予め設定された閾値と比較されることで、軸受装置100での異常な変化の有無が判定されてもよい。
【0041】
図3には中心軸(
図1参照)を中心とする円周上に設けられた1つの熱流束センサ4が示されているが、同一円周上に複数の熱流束センサ4が設けられていてもよい。
【0042】
〈軸受装置100における温度および熱流束Qの変化について〉
次に、
図2を用いて、実施の形態1に係る軸受装置100における温度および熱流束Qの変化について説明する。
【0043】
軸受装置100の温度は、正常状態における運転において、上昇する。具体的には、内輪31および外輪32の軌道面と転動体34との摩擦によって、内輪31および外輪32の表面温度が上昇する。また、モータ300(
図10参照)において発生した熱によって、軸受装置100の全体の温度が上昇する。これらによって、特に、内部空間30の空気の温度は、上昇する。内輪31および外輪32が配置されている第1空間301の空気の温度は、第2空間302よりも上昇する。
【0044】
軸受装置100の温度は、正常状態から逸脱した状態(異常の状態)における運転においても、上昇する。異常状態における軸受装置100の温度上昇は、正常状態における軸受装置100の温度上昇よりも大きい。具体的には、異常の状態における軸受装置100の内部空間30の空気の温度上昇は、正常状態における軸受装置100の内部空間30の空気の温度上昇よりも大きい。
【0045】
例えば、異常状態において内輪31および外輪32への予圧が上昇することで、転動体34と内輪31との接触面圧または転動体34と外輪32との接触面圧が増加する。これにより、転動体34と内輪31または外輪32の軌道面との摩擦が正常状態よりも大きくなる。よって、異常状態において、軸受装置100の温度上昇は、正常状態よりも大きくなる。
【0046】
正常状態および異常状態のいずれにおいても、外輪32および固定間座5は、ハウジング6によって冷却されている。このため、外輪32および固定間座5の表面温度の上昇率は、内部空間30の空気温度の上昇率よりも低い。外輪32および固定間座5の表面温度は、内部空間30の空気温度および内輪31の表面温度よりも低い。なお、内輪31は回転体8と接しているため、外輪32よりも冷却されない。
【0047】
正常状態および異常状態のいずれにおいても、内部空間30の空気の熱容量は、回転体8、軸受3、第1支持部1および第2支持部2の熱容量よりも小さい。このため、内部空間30の空気温度は、第1支持部1の表面温度よりも変化しやすい。具体的には、内部空間30の空気温度は、第1支持部1の表面温度よりも上昇している。よって、第1支持部1と内部空間30の空気との間には、温度差が生じている。したがって、
図2に示されるように、内部空間30から第1支持部1に向かう方向に熱流束Qが発生している。
【0048】
異常状態における内部空間30の空気温度は、正常状態における内部空間30の空気温度よりも高い。このため、異常状態における内部空間30の空気温度と第1支持部1の表面温度と温度差は、正常状態における内部空間30の空気温度と第1支持部1の表面温度との間の温度差よりも大きい。よって、異常状態における熱流束Qは、正常状態における熱流束Qよりも大きい。
【0049】
熱流束センサ4は、熱流束Qを検出することで、熱流束Qの変化、または熱流束Qの単位時間あたりの変化率を計測している。熱流束Qの変化、または熱流束Qの単位時間あたりの変化率について、正常状態から逸脱する変化(異常な変化)がみられた場合に、軸受装置100に異常が発生したと判断される。
【0050】
〈第1支持部1および第2支持部2の温度および熱流束Qの変化について〉
次に、
図2および
図11を用いて、実施の形態1に係る軸受装置100の第1支持部1および第2支持部2における温度および熱流束Qの変化について説明する。
【0051】
図11は、比較例に係る軸受装置100における
図2に対応する断面図である。比較例に係る軸受装置100は、第1支持部1を含んでいない。このため、比較例に係る軸受装置100の熱流束センサ4の裏面部41は、本実施の形態に係る熱流束センサ4が接している部材よりも低い熱伝導率を有する部材と接している。
【0052】
一方で、本実施の形態に係る軸受装置100においては、
図2に示されるように、熱流束センサ4の裏面部41が第2支持部2よりも高い熱伝導率を有する第1支持部1に固定されている。このため、熱流束センサ4は、第2支持部2に固定されている場合よりも、軸受3の温度の変化を早く検出する。また、第1支持部1および第2支持部2がハウジング6によって冷却されるため、熱流束センサ4は、第2支持部2に固定されている場合よりも早く冷却される。このため、熱流束センサ4の裏面部41は、第2支持部2に固定されている場合よりも早く冷却される。
【0053】
したがって、熱流束センサ4の裏面部41と表面部42との温度差は、比較例における温度差よりも、大きくなる。よって、熱流束Qは、比較例における熱流束Qよりも大きくなる。
【0054】
〈作用効果について〉
本実施の形態に係る軸受装置100によれば、
図2に示されるように、熱流束センサ4は、第2支持部2よりも高い熱伝導率を有している第1支持部1に支持されているため、第2支持部2に支持されている場合よりも冷却される。このため、第1支持部1に固定されている熱流束センサ4の裏面部41と内部空間30に配置された熱流束センサ4の表面部42との温度差は、比較例における温度差よりも、大きくなりやすい。よって、熱流束Qは、比較例における熱流束Qよりも大きくなりやすい。したがって、熱流束センサ4が熱流束Qを検出しやすいため、軸受装置100内の温度変化を感度良く検出できる。
【0055】
図1に示されるように、固定間座5は、第1支持部1および第2支持部2を含んでいる。このため、固定間座5に第1支持部1および第2支持部2を設けることが可能となる。したがって、固定間座5の第1支持部1に支持された熱流束センサ4の裏面部41と表面部42との温度差を大きくすることが可能となる。
【0056】
図1に示されるように、ハウジング6が固定間座5に取り付けられており、かつ冷媒流路61に流通する冷媒62により冷却されるように構成されている。このため、ハウジング6によって固定間座5が冷却される。これにより、
図2に示されるように、固定間座5の第1支持部1に支持されている熱流束センサ4の裏面部41が冷却される。このため、熱流束センサ4の裏面部41と、内部空間30の空気温度を計測している熱流束センサ4の表面部42との温度差が大きくなる。よって、熱流束センサ4が検出する熱流束Qが大きくなる。したがって、熱流束センサ4の感度を高めることができる。
【0057】
図5に示されるように、熱流束センサ4が軸受3に向かう方向に配置されているため、熱流束センサ4は、軸受3の温度変化を感度良く検出できる。
【0058】
図1に示されるように、ハウジング6が冷却されるため、ハウジング6によって軸受3が冷却される。これにより、軸受3の温度を低くすることができるため、軸受3の内輪31および外輪32の焼付きを抑制することができる。
【0059】
固定間座5の熱容量は、相対的に大きい。このため、軸受3の表面温度が上昇してから固定間座5の第1支持部1の表面温度が上昇するまでには、時間がかかる。一方で、内部空間30の空気の熱容量は、相対的に小さい。このため、軸受3の表面温度が上昇してから内部空間30の空気温度が上昇するまでの時間は、第1支持部1の表面温度が上昇するまでの時間よりも短い。すなわち、内部空間30の空気温度は、第1支持部1の表面温度よりも鋭敏に変化している。よって、第1支持部1の表面温度と内部空間30の空気温度との温度差によって生じる熱流束Qは、鋭敏に変化している。
【0060】
仮に、第1支持部1の表面温度のみが温度センサによって計測される場合、軸受3の温度上昇が発生してから第1支持部1の温度上昇が検出されるまでに時間がかかる。このため、温度センサが用いられる場合には、例えば、軸受3の温度上昇が検出された時点で、既に軸受3の内輪31または外輪32に焼付きが発生している可能性がある。
【0061】
本実施の形態においては、熱流束センサ4が第1支持部1の表面温度と内部空間30の空気温度との温度差を用いて熱流束Qを検出することによって、軸受3の温度変化が検出されているため、温度センサが用いられる場合よりも鋭敏に軸受3の温度変化が検出され得る。
【0062】
[実施の形態2]
次に、
図6を用いて、実施の形態2に係る軸受装置100の構成を説明する。実施の形態2は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0063】
本実施の形態において、第1支持部1は、ハウジング6に接している。第1支持部1は、ハウジング6と熱的に接続されている。熱流束センサ4は、第1支持部1を挟み込んでハウジング6と熱的に接続されている。ハウジング6が冷却されることにより、第1支持部1が冷却されるため、熱流束センサ4の裏面部41が冷却される。第2支持部2は、固定間座5の中央を貫通するように配置されている。第1支持部1は、第2支持部2の周囲を囲むように配置されている。
【0064】
〈作用効果について〉
本実施の形態に係る軸受装置100によれば、第1支持部1はハウジング6に支持されているため、ハウジング6によって第1支持部1が直接的に冷却される。よって、第1支持部1に支持された熱流束センサ4の裏面部41は、第1支持部1がハウジング6に接していない場合よりも早く冷却され得る。また、熱流束センサ4の裏面部41と表面部42との温度差は、第1支持部1がハウジング6に接していない場合よりも大きくなり得る。したがって、熱流束センサ4が温度変化を検出する感度を高くできる。
【0065】
[実施の形態3]
次に、
図7を用いて、実施の形態3に係る軸受装置100の構成を説明する。実施の形態3は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0066】
図7に示されるように、本実施の形態において、固定間座5は、第1支持部1からなる。つまり、固定間座5の全体が第1支持部1を構成している。ハウジング6は、第2支持部2を含んでいる。
【0067】
固定間座5は、ハウジング6に支持されている。このため、第1支持部1は、ハウジング6の冷媒流路61(
図1参照)によって冷却される。固定間座5は、ハウジング6よりも高い熱伝導率を有している材料によって形成されている。例えば、固定間座5がアルミニウム(Al)によって形成され、ハウジング6の本体部63(
図1参照)が鉄(Fe)などによって形成されていてもよい。
【0068】
〈作用効果について〉
図7に示されるように、本実施の形態に係る軸受装置100によれば、固定間座5が第1支持部1からなり、ハウジング6が第2支持部2を含んでいる。したがって、ハウジング6の冷媒流路61(
図1参照)によって第1支持部1のみが冷却されるため、熱流束センサ4は固定間座5が第1支持部1のみからならない場合よりも効率良く冷却され得る。このため、熱流束センサ4の裏面部41の温度が効率良く低くされ得るため、熱流束センサ4の裏面部41と表面部42との温度差が効率良く大きくされ得る。よって、熱流束センサ4が温度変化を検出する感度を高くできる。
【0069】
固定間座5が第1支持部1からなるため、固定間座5を単一の材料によって形成することができる。このため、固定間座5の製造コストを減少させることができる。
【0070】
[実施の形態4]
次に、
図8を用いて、実施の形態4に係る軸受装置100の構成を説明する。実施の形態4は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0071】
図8に示されるように、本実施の形態において、ハウジング6は、第1支持部1および第2支持部2を含んでいる。具体的には、第1支持部1は、ハウジング6の本体部63に配置されている。第1支持部1がハウジング6の開口部の近傍に配置されているため、熱流束センサ4がハウジング6の開口部の近傍に配置されている。また、第1支持部1が軸受3の近傍に配置されているため、熱流束センサ4が軸受3の近傍に配置されている。
【0072】
図8に示されるように、本実施の形態において、前蓋7は、第1支持部1および第2支持部2を含んでいる。前蓋7はハウジング6に隣り合うように配置されている。前蓋7は、ハウジング6に対して着脱可能に構成されている。前蓋7は、ハウジング6の開口部に配置されている。前蓋7は、ハウジング6の開口部の一部を封止するように構成されている。前蓋7は、外輪32(
図2参照)と接している。前蓋7は、ハウジング6および固定間座5とともに外輪32(
図2参照)を挟み込むことで、外輪32(
図2参照)を固定している。
【0073】
〈作用効果について〉
図8に示されるように、本実施の形態に係る軸受装置100によれば、ハウジング6は、第1支持部1および第2支持部2を含んでいる。このため、ハウジング6に第1支持部1および第2支持部2を設けることが可能となる。したがって、ハウジング6の第1支持部1に支持された熱流束センサ4の裏面部41と表面部42との温度差を大きくすることが可能となる。
【0074】
前蓋7は、第1支持部1および第2支持部2を含んでいる。このため、前蓋7に第1支持部1および第2支持部2を設けることが可能となる。したがって、前蓋7の第1支持部1に支持された熱流束センサ4の裏面部41と表面部42との温度差を大きくすることが可能となる。
【0075】
熱流束センサ4がハウジング6の開口部の近傍に配置されているため、熱流束センサ4へのアクセスが容易になる。このため、熱流束センサ4のメンテナンスが容易になる。
【0076】
前蓋7がハウジング6に対して着脱可能に構成されていることにより、熱流束センサ4もハウジング6に対して着脱可能に構成されているため、熱流束センサ4の取り回しが容易になる。このため、特に熱流束センサ4の配線部材43(
図3参照)の取り回しが容易になる。
【0077】
熱流束センサ4を含んでいない既存の軸受装置100の前蓋7を本実施の形態の前蓋7と交換することによって、既存の軸受装置100に本実施の形態の前蓋7に配置された熱流束センサ4を設けることができる。また、前蓋7は容易に交換され得るため、既存の軸受装置100に本実施の形態の前蓋7に配置された熱流束センサ4を設けることが容易である。
【0078】
[実施の形態5]
次に、
図9を用いて、実施の形態5に係る軸受装置100の構成を説明する。実施の形態5は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0079】
図9に示されるように、第1支持部1は、突出部11を有している。突出部11は、内輪31と外輪32との間に第2支持部2から突出している。熱流束センサ4は、突出部11に支持されている。
【0080】
図9に示されるように、突出部11および熱流束センサ4は、内輪31と外輪32との間に入り込んでいる。突出部11および熱流束センサ4は、内部空間30の第1空間301に入り込んでいる。熱流束センサ4は、内輪31または外輪32のいずれか一方と向かい合っている。本実施の形態では、熱流束センサ4は、内輪31と向かい合っている。熱流束センサ4の表面部42は、内輪31または外輪32の発熱部に近接している。発熱部は、具体的には、内輪31または外輪32の軌道面である。熱流束センサ4の表面部42は、具体的には、内輪31または外輪32の軌道面に近接している。本実施の形態では、熱流束センサ4の表面部42は、内輪31の軌道面に近接している。
【0081】
内輪31または外輪32の発熱部が配置されている第1空間301の空気温度は、内輪31または外輪32の発熱部から離れた第2空間302の空気温度よりも高い。軸受3の温度が変化した場合に、第1空間301の空気温度は、第2空間302の空気温度よりも早く変化する。熱流束センサ4は、第1空間301の空気温度を計測している。
【0082】
〈作用効果について〉
本実施の形態に係る軸受装置100によれば、熱流束センサ4は突出部11に支持されている。このため、熱流束センサ4の表面部42が内輪31または外輪32の発熱部に近接できる。このため、熱流束センサ4は、内輪31または外輪32の発熱部が配置されている第1空間301の空気温度を計測できる。よって、軸受装置100内の温度変化をいち早く検出することができる。
【0083】
[実施の形態6]
本実施の形態に係る工作機械200は、上述した実施の形態1から実施の形態5のいずれかに係る軸受装置100を用いることができる。
図10を用いて、実施の形態5に係る工作機械200の構成を説明する。実施の形態6の軸受装置100は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0084】
工作機械200は、実施の形態1から実施の形態5のいずれかに係る軸受装置100と、回転体8を回転させるモータ300とを含んでいる。工作機械200は、例えば、スピンドル装置である。回転体8は、例えば、主軸である。軸受装置100は、モータ300によって回転される回転体8を回転可能に支持している。
【0085】
〈作用効果について〉
本実施の形態に係る工作機械200は、上記の軸受装置100を含んでいる。このため、工作機械200の運転中に熱流束センサ4が軸受装置100内の温度変化を感度良く検出できる。これにより、軸受装置100が焼付くことを抑制することができるため、工作機械200が故障することを抑制することができる。
【0086】
上記の各実施の形態は適宜組み合わせることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 第1支持部、2 第2支持部、3 軸受、4 熱流束センサ、5 固定間座、6 ハウジング、7 前蓋、8 回転体、11 突出部、31 内輪、32 外輪、61 冷媒流路、62 冷媒、100 軸受装置、200 工作機械、300 モータ、Q 熱流束。